当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「エンターテインメントを通じ人々の幸福と豊かな文化の創造に貢献する」を企業理念に掲げ、放送・配信サービスを軸に、多様なジャンルのトップエンターテインメントをお客さまに提供しています。また、デジタルマーケティングやコンタクトセンター運営業務を展開する㈱WOWOWコミュニケーションズ、番組中継・映像制作業務を中心に事業展開しているWOWOWエンタテインメント㈱、放送及びホテル・法人向け映像配信事業を展開している㈱WOWOWプラス、海外プロダクション受注業務を展開しているWOWOW BRIDGE(同)とともに、グループ全体で事業を展開することにより、放送・配信にとどまらないエンターテインメントを提供することを経営の基本方針としております。
当社グループを取り巻く事業環境は、デジタルテクノロジーの進化や生活者のライフスタイル及びコンテンツ接触スタイルの多様化によって急激に変化し、年々厳しさを増しております。
主な事業環境変化は以下のとおりです。
・放送業界全体の縮小傾向
・動画配信サービスの台頭によるコンテンツ及び会員獲得競争激化
・業界内の合従連衡の活発化
・デジタルテクノロジーの進化によるサービスの多様化とデータ利活用の加速
・物価高騰に伴う消費者の買い控えや消費意欲の減退
この様な環境のもと、当社グループは中長期的な成長に向けた収益構造の転換を早期に実現するため、10年戦略と中期経営計画(2021-2025年度)をより進化させた、新しい中期経営計画(2025-2029年度)を策定し、「会員の日常に“夢中”を提供する企業」への進化を目指した新たなビジネスモデルの構築に取り組むべく変革を推進してまいります。

■中期経営計画(2025-2029)の策定にあたって
現在、社会構造は加速度的に変化しており、日本の人口も50歳以上が半数を超えるという、これまで経験したことのない時代を迎えるなかで、エンターテインメントの世界も大きく変わってきています。そのような中、当社の果たす社会的な存在価値として2024年5月に「人生をWOWで満たし、夢中で生きる大人を増やす」というパーパスを策定いたしました。今回、中期経営計画を立案するにあたり、パーパスの実現に向け、新たなビジョン「独自のエンターテインメント発想で、あなたの日常に心動く瞬間を」を策定し、目指すビジネスモデルを定義いたしました。このビジョンには、当社が30年以上にわたり培ったエンターテインメントの領域を拡げ、新たな発想で、人々のライフスタイルを彩るサービスを提供し、感動や驚きなど「心動く瞬間」を日常のあらゆる場面を通じ提供したいとの想いが込められています。本中期経営計画では、パーパス、ビジョンに基づき「会員の日常に“夢中”を提供する企業」への進化を目指します。
■目指す世界観
会員の日常に“夢中”を提供する企業へのビジネスモデルの進化を目指すべく、本中期経営計画では、WOWOWオンデマンドに続く、新たな配信サービスの提供や、ECサービスの強化など、多層的なデジタルサービス接点の拡大と、それらと会員をつなぐ、新たなデジタルプラットフォームの構築に中長期的に取り組んでいきます。デジタル基盤を中心に、WOWOWサービス全体の質の向上を図り、既存の顧客の満足度向上および、新たな会員の獲得による事業成長を目指します。

■中期経営計画における重点戦略
本中期経営計画では、BtoCを中心とした会員領域および、BtoBを中心とした会員外領域を軸に成長を目指します。
・会員領域
メディア・サービス領域においては、放送領域の効率化推進に取組み、その原資をコンテンツの強化、および、他の重点戦略に投資いたします。配信領域では、新サービスとして、WOWOWオンデマンドに続く、自社プラットフォームでの新たな配信サービスの提供を開始し、収益力の強化を図ります。コマースおよびイベント領域においては、総合ECショップのグランドオープンにあわせ商品を拡充すると共に、コンテンツを軸とした多層化サービスを推進してまいります。併せて、会員のライフスタイルに即したサービスなどの新規事業の開発にも取組みます。
・会員領域以外
BtoB向けにグループ全体のシナジーを強化し、外部営業を促進。マーケティング支援、コンテンツ制作、プロダクション業務などの事業拡大を目指します。

2025年度は、新中期経営計画(2025-2029年度)の初年度として、新たなビジネスモデルの構築に挑戦する重要な1年となります。中期経営計画の重点戦略に沿って、顧客基盤の配信へのシフト、会員ビジネスの大幅な強化、グループ連携の強化に向けた投資・取組みを加速させると共に、既存事業の構造改革、コスト削減に取組み事業計画の達成を目指します。
<新中期経営計画(2025-2029年度)の重点戦略>
1.会員領域
・メディア・サービス領域:放送領域での効率化推進、配信サービスの拡大
・コマースおよびイベント領域:コマース事業および多層化サービス推進による収益拡大
2.会員領域以外
・グループシナジー強化による外部売上拡大
<2025年度重点取組み>
■会員領域
メディア・サービス領域
・自社プラットフォームでの新たな配信サービスの開始
・放送領域のコスト削減、効率化の推進
コマースおよびイベント領域
・総合ECショップのグランドオープンおよびコマース事業規模拡大
・エンターテインメント領域での会員向け多層サービス推進
・ライフスタイルに即した新規事業開発
■会員領域以外
・グループ機能の整備・集約の検討と実行
・グループの営業シナジーの推進による外部売上拡大
事業における収益の源泉は、会員からの視聴料であることから、累計正味加入件数が重要な経営指標となります。
利益面では、収益の安定性を確保するため、グループ全体での売上高経常利益率を重要な経営指標としております。中長期的には、累計正味加入件数の増加による収益増と安定的な利益率上昇トレンドの維持及び「メディア・サービス」以外の収入の拡大による新たな収益の柱の創出を最大目標としております。さらに、企業価値向上のために、中長期視点からキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー)の創出を重要な経営指標としております。
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、独自性の高い事業戦略を、強固なガバナンス体制とサステナビリティ基盤で支えてこそ、初めて持続的な成長を図ることができると考えております。事業活動を通じて社会的責任を果たすサステナビリティ基盤は、様々なステークホルダーの信頼を得る上でも必要不可欠な要素です。
当社は、SDGsの国際目標の中で、「質の高い教育をみんなに」、「ジェンダー平等を実現しよう」、「働きがいも経済成長も」、「人や国の不平等をなくそう」、「気候変動に具体的な対策を」の5つを目指し社会の持続的発展に貢献してまいります。
当社グループは「エンターテインメント文化への寄与」「人権尊重」「DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)」「環境」等を重点的に取り組む領域とし、さまざまな活動を行なっております。具体的な取組みは、
当社の信頼価値を高めるためのガバナンスについては以下の<ガバナンス及びリスク管理>の仕組みによりリスクの評価・管理を行っております。
<ガバナンス及びリスク管理>
企業を取り巻く環境が複雑性を増す中、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、「リスク管理委員会」を設置しています。「リスク管理委員会」では、サステナビリティに関連するリスクを含め、重要な企業リスクと部門リスクに選別して管理した上で、年度計画を策定し、事業活動や収益等への影響が大きいリスクに関するグループ全体の取組みを推進・サポートし、当該取組みの進捗のモニタリングを行っております。「リスク管理委員会」で協議及び承認された内容は、定期的に取締役会へ報告され、取締役会において当該報告の内容に関する管理・監督を行っております。
詳細については「
当社は、パーパスを「人生をWOWで満たし、夢中で生きる大人を増やす」と定義し、会員の日常に「夢中」を提供する企業への進化を目指しています。
競合とは異なる新しい価値を生み出し、お客さまがWOWOWに抱く「驚き」「共感」「発見」「感動」の期待に応え、「夢中」をお届けするためには、様々なバックグラウンドや、考え方、年齢や性別、性的指向、障がいの有無等にかかわらず、多様な人財が、今までにないコンテンツやサービスを生み出していく必要があります。多様な人財がお客さまの日常に心動く瞬間をお届けするうえで、あらゆる人財が、個を生かし、心理的安全性が担保された状態で生き生きと活躍できる環境を整備します。
なお、グループ各社において人的資本に関する取組を推進しておりますが、当社では関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組が行われているものの、全てのグループ会社において行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。そのため、本項における各指標値は当社のみの集計値となります。
採用や育成等の重要な人事施策、人員・人件費に関する計画、組織の改定等の人財戦略に関しては、社長執行役員を議長とする経営会議にて、具体的な課題や施策について審議し、「重要事項決裁規程」に基づき決裁しております。進捗状況は経営会議にて報告し、共有しております。
また、グループ各社の人事部門責任者による会議を定期的に開催し、グループ各社の課題や施策の取組状況等について共有、意見交換をしております。
当社のパーパスである「人生をWOWで満たし、夢中で生きる大人を増やす」、さらにはビジョンである「独自のエンターテインメント発想で、あなたの日常を心動く瞬間を」を踏まえた「中期経営計画(2025-2029年度)」に基づき、会員の日常に「夢中」を提供する企業への進化を目指すうえで、多様な人財の採用と多様性の尊重、自律的な成長・キャリア形成支援による育成、発揮能力による処遇、柔軟で自律的な働き方の実現に取り組んでおります。
社内に新鮮な風を吹かせ、当社の新たな事業領域を成長させるためにも、異なる事業や業種で培われた経験・知見が必要不可欠と考えており、強化したい領域のスペシャリストを中心に積極的にキャリア採用を実施しており、現在、社員に占めるキャリア採用者は4割を超えています。
新しく入社した社員が当社の雰囲気や業務に慣れるまでの期間を短くし、いち早く力を発揮できるよう、対面でのオンボーディングを原則とし、職場全体で新入社員を温かく迎え入れる風土を大切にしております。
また、障がいの有無にかかわらず、多様な社員がそれぞれの個性と能力を発揮できる分野で活躍しております。パラアスリートも採用し、競技活動のサポートを行うとともに、パラスポーツの普及・啓発活動にも取り組んでおります。
多様なお客さまの期待にお応えするため、性別を問わず、社員一人ひとりの持ち味や得意分野、志向を踏まえ、発揮される能力に応じたキャリア形成の道を開いています。
採用時の男女比に大きな差はありませんが、2025年3月31日時点におけるスタッフ職の女性比率が46.4%である一方、40代後半以降の女性社員数が男性を大きく下回っているため、管理職における女性比率は目標25%に対して23.8%となっています。この比率を2028年3月までに30%へ向上させることを目標に、キャリア意識を醸成するためのキャリア相談・面談や研修の充実を図ります。
女性が働きやすい環境を整備することは、結果としてすべての社員の働きやすさ向上にも繋がると考えております。性別やスタッフ職・管理職を問わず、育児休業取得の推奨、子の年齢によらず利用できる時間外勤務を伴わない勤務・短時間の勤務といった勤務時間の柔軟性に加え、自宅やサテライトオフィスなどで業務が可能なテレワーク制度を全社員へ展開しております。男性の育児休業取得率は、2年連続で100%を達成し、24年度は38.6日であった平均取得日数を45日に伸ばすべく、育児休業取得者の体験談や、育児支援に関する情報を社内イントラネットに掲示し、育児を希望する社員だけではなくライン管理職や周囲の社員の理解が深まる施策を展開するとともに、育児中の社員同士が集まる場を設定し、情報交換の促進を図っております。さらに、ベビーシッター補助制度をはじめ、年に10日間、有給で取得できる看護等休暇や介護休暇などライフステージに応じた多様なキャリアサポートの充実にも取組み、社員一人ひとりがワークライフバランスを実現しながら活躍できる就業環境の整備を図っております。
年齢、性別、障がいの有無、子育て・介護の状況といった属性ではなく、発揮される能力に基づいて評価・登用を行うことが、社員一人ひとりのモチベーションや働きがいの維持・向上に繋がり、事業計画の達成や社員の納得感を得るうえで重要だと考えております。
社員一人ひとりが自分に期待されている役割に応じた目標を設定し、成果と行動に基づいて評価を行い、その評価を適切に反映した登用を推進しています。
さらに、この方針の一環として、一定の年齢で職務・待遇を決定する職位・ジョブグレード定年制度を2022年度に廃止しております。
当社は、自ら学び成長し、社内外のメンバーと積極的に繋がって共創し、お客さまの体験価値を高めるビジネスを推進する人財を求めております。当社では、社員が必要なスキルや知識、能力を習得・向上させるための自律的な学習機会を支援しています。ビジネスやIT、マネジメントスキルなど時代の潮流に即した実践的な講座をオンラインで学習できるサービスの他、業務やスキル向上に役立つ選択型の研修を充実させています。また、社員が自ら立案した研修プログラムの費用を支援する制度も設けています。
さらに、最新のデジタルテクノロジーを活用するための思考力や発想力を養う研修や、組織のミッションや目標を達成するために、多様な人財がそれぞれの個性や能力を発揮できるようにするマネジメント、リーダーシップを強化するプログラム、次世代の経営リーダーを育成するプログラム等も実施しております。
その結果、2025年3月に実施した働き方アンケートにおいて、59.0%の社員が自律的な学びを進められたと回答し、77.4%の社員が成長実感があると回答しました。
キャリア形成については、社員が主体的にキャリアを形成できるよう、キャリアデザイン研修や自己申告制度を実施しております。これまでの経験や現在の職務・役割を振り返り、自分の強みや課題を洗い出し、将来のキャリア意向を描くために、所属長や人事部門との1on1を行っております。そして、その結果を異動や配置に反映しております。
今後も社員の自律的な学びを促進し、学ぶ意欲を醸成するとともに、社員一人ひとりのキャリア形成を支援し、人財育成に力を入れて取り組んでまいります。
当社の事業の根幹であるエンターテインメントは、異なる意見や考え方を持つ従業員が、年齢や役職にかかわらず率直に話し合い、時にはぶつかり合いながら議論を重ねてこそ創出できるものと考えております。事業の変革期は一層のこと、率直な意見交換とフィードバックが重要であるととらえ2024年10月に、企業パーパスを実現するための従業員の行動指針となるChange Value(変革バリュー)を創設し、そのバリューの一つを「腹を割っているか」としました。「腹を割る」上では、心理的安全性が担保されることが重要であると捉え、継続的に働き方アンケートやライン管理職の多面フィードバックで発言に際しての心理的安全性のモニタリングをしております。2025年3月実施の働き方アンケートにおいて、74.9%の社員が心理的安全性があると回答をしました。
フィードバック文化の醸成およびPDCAの一環として、管理職に対する多面フィードバック(多面評価)の実施や会社の風土や働きがいに対する定期的なアンケート調査の実施、経営による会社方針発表に対するフィードバックの募集等を行い、改善や変革に繋げるフィードバックを推進しております。
(注)1.働き方アンケートは各年度の年度末の状況を確認するアンケートの指数(5段階評価における平均値)及び回答率を記載しております。
2.離職率は、定年退職、早期退職制度の利用による退職、会社都合による退職、臨時従業員の退職を除いて集計しております。
当社の行動指針には「個の可能性を信じ、個を活かす」ことを定めております。性別、人種、国籍、性的指向、障がいの有無等にかかわらず、全ての社員が個の力を最大限に発揮し、多様な価値観や個性を互いに尊重して認め合える安心な環境を整備するために、社内におけるDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の意識の浸透を促し、違いに寛容な組織文化を醸成することを重視しております。
法的婚姻関係に限らず、事実婚や同性パートナーも配偶者として就業規則に定め、定期的にイントラネットで上のDEIに関する記事を掲載するほか、eラーニングを活用しDEIへの理解の浸透を推進しております。
2025年3月に実施した働き方アンケートにおいては、74.6%の社員が職場において個が尊重されていると回答していました。
多様性・生産性・創造性を高めることで企業価値を向上させると同時に、社員一人ひとりがいきいきと働ける組織を協創することを目的として、ライフステージや業務に応じた自分に合うワークスタイルを実現できるよう、全社員を対象としたフルフレックス制度やテレワーク、フリーアドレス等様々な制度や環境を用意しております。
テレワークについては社員の声や意見を考慮し、コミュニケーション不足にならないよう、「会社に来て働く目的」「対面で集まる意味」をあらためて考えました。アイデアを出して企画や施策等を考える打合せや、業務の引き継ぎ、新入社員のオンボーディング、プロジェクトやイベント等の協働する取組の場面では、できる限り対面を優先し、「一緒に仕事をする相手・職場・チーム・会社にとっての最適」をベースにその日の働き方を決める事としております。そして、これらの趣旨を含めて、社長メッセージを全社へ発信しております。
また、育児・介護に加えて、傷病の治療においても仕事の両立を支援するため、時間外勤務を伴わない勤務、短時間勤務を可能としております。
さらには、三大疾病保険、団体長期障害所得補償保険にも会社負担で加入し、安心して治療に専念できる体制を整えております。
お客さまを笑顔にするエンターテインメントをお届けするためには、社員が心身ともに健康であることが不可欠であると考え、社員の健康促進を積極的にサポートしております。
社員の健康管理については、35歳以上の定期健康診断を人間ドックとしており、胃カメラや脳ドック、マンモグラフィなどの検診項目の費用補助を行い、病気の早期発見に努めております。また、インフルエンザの予防接種は会社内で実施し、費用を全額会社が負担しております。
メンタルヘルス対策としては、ストレスチェックを実施し、回答率は90%を超えております。高ストレス者の割合は他社平均を下回る水準を維持しており、各部門の結果はラインマネジメントにフィードバックし、職場環境の改善に役立てております。
さらに、産業医と保健師が連携した体制を整え、社員が心身の不調を感じた際には気軽に健康相談を受けることができます。
2021年度に「健康経営宣言」を掲げ、2021年度および2023年度から2025年度までの4回にわたり「健康経営優良法人」に認定されております。
当社は、人財を事業成長の原動力として位置づけています。社員の退職や採用力の低下による人財不足は、企業競争力に重大な影響を及ぼす可能性があります。社員の自律的な学びやキャリア形成、ワークライフバランスを支援し、働きがいを感じながら能力を最大限に発揮できる環境を整えることで、リスクの低減に努めております。
さらに、社員の心身の健康を守るため、労務管理体制を整えております。勤務時間の管理や休暇取得に関するラインマネジメントへの指導、労働組合との月1回の会議、産業医と保健師とが連携した長時間労働者への医師面談を実施する等、労務管理に関するリスクの低減にも努めております。
当社は企業理念で掲げる「エンターテインメントを通じた人々の幸福と豊かな文化の創造」を実現するためには、人権の担保が不可欠であると考えています。エンターテインメントが誰かの犠牲の上に成り立つことがあってはならないという強い信念のもと、2024年6月に「人権およびDEIに関する方針」を制定し、開示するとともに、当社のコーポレートサイトにて人権に関する外部からの問い合わせ窓口を設置し、社外ステークホルダーからの懸念にも対応可能な体制を整えました。これまでに寄せられた問い合わせについては状況確認と対応を完了しており、当社の事業活動に関連する重大な人権侵害は確認されておりません。
「人権およびDEIに関する方針」に基づき、2024年12月から外部の専門家と連携し、国際機関やNGOが指摘するリスク、当社グループが関連する業界(同業他社等)における事例、さらには当社グループの業務内容のヒアリングおよび従業員の匿名アンケートへの回答等をもとに、当社グループの事業活動における人権リスクを洗い出し、リスクの発生可能性と深刻度の両軸で重要なリスクを特定いたしました。具体的には、以下のようなリスクを認識しております。
・職場でのハラスメントや差別的扱いのリスク
・長時間労働や過重労働のリスク
・芸能事務所等、取引先における深刻な人権侵害のリスク
・サプライチェーン上における児童労働・強制労働のリスク
今後は、これらのリスクの予防・是正を強化すべく、各種施策を進めてまいります。職場におけるハラスメントや差別的扱いの予防・是正に対しては、既に導入している規程や相談窓口、ハラスメントに関するeラーニングに加え、人権尊重およびハラスメントの研修やDEIの一層の充実、ハラスメント相談をより利用しやすくするための窓口の周知徹底や、相談後のフロー開示等、改善を推進してまいります。さらに、人権尊重の観点から、コンテンツ制作やビジネスパートナーの選定のあり方についても検討を進めてまいります。
「エンターテインメントを通じて、人々の幸福と豊かな文化の創造に貢献します」という企業理念を実現するため、当社は、社会的責任を自覚し、公正かつ適切な経営の遂行に際して直面し得る重大なリスクの管理体制を整備・運用することが、極めて重要であると認識し、リスク管理を経営の重要な戦略の一つと位置付けています。
当社は、当社グループの事業活動を取り巻く、さまざまな不確実性に対する的確な管理と、危機発生時における迅速かつ適切な対応によって、問題の回避や損失の極小化及び事業継続の確保に努め、企業価値の向上に取組みます。
当社は、当社グループの事業継続マネジメントを含むリスク管理を推進する体制として、当社の社長執行役員を委員長、リスク管理担当執行役員を副委員長、執行役員及び子会社社長を委員として構成するリスク管理委員会を設置しております。
リスク管理委員会は、原則として事業年度で1回及び必要に応じて会議を開催し、当社グループのリスク管理に関わる活動の計画及び進捗状況を把握し、その対策について継続的な改善を検討します。委員会会議には当社の常勤監査等委員が出席し、報告を受けるとともに意見を述べ、監査のために必要な情報を取得します。
また、リスク管理委員会事務局は、コンプライアンス相談窓口を運営し、違反行為の発生・拡大を防ぎ、違反行為の早期発見と是正による自浄作用を機能させ再発防止を行うことで、コンプライアンスの徹底とコンプライアンス経営の強化を図ります。
リスクが顕在化し、事業継続を脅かす危機に至った場合は、リスク管理委員会の指示により、委員長、副委員長、当該事態に関係する委員により構成される危機対策本部を設置し、対策の実施及び事態の復旧にあたります。
リスク管理に関する活動状況は、定期的及び重大な事態の発生時に取締役会に報告します。
<当社グループのリスク管理推進体制>

「リスク管理方針」及び「リスク管理規程」を定め、運用を行っております。リスク管理委員会事務局は、原則として事業年度で1回及び必要に応じて、ワーキンググループを招集し、事業継続を脅かす事態に繋がる重要なリスク及びBCP策定が必要な事業領域の特定、見直しと、それぞれの主管部門の特定、見直しを行っております。
重要リスク主管部門は、担当する重要リスクの対応について活動計画を策定し、その内容に沿って教育、訓練等を含む活動を実施、推進しております。また、リスク対策マニュアルを整備、改善し、必要な準備や周知を行っております。
BCP主管部門は、特定された事業領域についてのBCPを策定、改善し、必要な準備や教育、訓練、周知を行っております。
各部門は、重要リスク主管部門が定めた活動計画に沿って、自部門での活動の実施、推進を行うとともに、重要リスクに繋がる自部門のリスクの特定、対策の検討及び対応に関する活動計画の策定を行い、活動を実施、推進しております。
子会社は、その事業に合わせて、各社の重要リスクの特定、対策の検討、対応に関する活動計画の策定及びBCPの策定を行い、その内容に沿った活動を行っております。
リスク管理委員会事務局は、これらの活動状況を把握し、リスク管理委員会に報告しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
<重要なリスク>
当社グループの主要な収入は、加入者からの視聴料収入であることから、新規加入者の獲得及び解約による正味加入者数の増減が、当社グループの収入と利益を大きく左右いたします。
家計における可処分所得や情報サービス関連支出には一定の限界があると考えられるため、景気動向または災害の影響等外部環境の変化によって、エンターテインメント・コンテンツに振り向けられる支出割合や優先度が変化し、当社グループの加入件数に係る計画に影響が生じる可能性があります。
さらに、デジタルテクノロジーの進化によって、コンテンツ産業は急激に変化しており、競争激化の様相を強めております。スマートフォンの普及や動画配信を中心とした低価格で利便性の高い新たなサービスの出現に伴い、生活者のコンテンツ接触スタイルが多様化することで、顧客離れが発生し、正味加入者数が減少することで、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは引き続き、加入者の多様化したニーズに対応した、コンテンツの開発やビジネスの構築に取り組んでまいりますが、事業が想定通りに伸長しない場合や、当社グループの計画以上にコンテンツの調達や開発だけでなく、広告宣伝及び販売促進等の加入推進活動の強化が必要になった場合は、このコストが当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは営業放送開始以来、総合エンターテインメントを主軸に放送その他のサービスを提供しており、時代の流れに沿って、視聴者の要望に応え、かつ満足を得られるような各種コンテンツの調達と制作に努めております。
コンテンツの調達面では、安定して視聴者に供給することを第一義と考え、契約先との関係強化等の対策に注力してまいりますが、現在放送、配信しているコンテンツのすべてが、将来にわたっても継続的に確保できるという保証はなく、あるコンテンツの放送・配信を継続できなくなった場合、それに不満な加入者が加入契約を解約することにより、正味加入者の減少に伴い、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、国内の有料、無料を問わず、放送、配信サービスの競合増加、コンテンツ流通のグローバル化の進展により、コンテンツ獲得競争が激化しております。それにより、コンテンツ調達コストが増加し、当社グループが取得を希望するコンテンツが調達できない、または、割高なコンテンツを調達した結果、正味加入者数の減少、または番組調達コストの増加により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、コンテンツの制作面では、「WOWOWにしかできない」「WOWOWでしか見られない」といった、WOWOWならではのエンターテインメントをお客さまへ提供すべく、クリエイターとの関係を強固にし、オリジナルコンテンツを中心とする差別化された希少性、独占性の高いコンテンツの開発に取り組んでおります。
しかしながら、コンテンツの制作面においても、競合の増加により、優秀なクリエイターの確保が困難になることで上質なコンテンツが制作できない、または制作費が高騰する等により、正味加入者数の減少、または番組制作コストの増加により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、年間を通じて、コンテンツの投下時期の集中等により、コストバランスが変動するため、四半期単位で業績が変動することがあります。特に第4四半期においては、スポーツコンテンツが期中を通じて開催されること、大型のアワードや音楽ライブ等が集中し、番組費が増加する傾向にあります。そのため、他の四半期と比較して利益水準を低下させる傾向があります。
BS自体に発生するリスクには、軌道上のBSが正常に作動するかどうか、隕石や宇宙の塵等との衝突、その他軌道上における事故によって故障しないかどうか、BSの設計寿命に相当する期間その機能を維持、継続することができるかどうか等があります。
BS放送サービスは、BS自体の不具合、または地球局の天災、あるいは人為的な原因の事故により停止することがあります。こうしたリスクを低減するため、予備衛星を打ち上げることによりバックアップ体制をとっておりますが、これら不具合または事故により放送サービスが停止した場合、当社グループは加入者からクレームを受ける可能性があります。
なお、当社の有料放送約款では、衛星デジタル有料放送サービスを月のうち半分以上提供しなかった場合においては、衛星デジタル有料放送サービスに係る当該月分の有料放送料金を請求しないことを記載しております。
サービス停止の期間が上記約款に規定の期間を超えると収入が見込めなくなる場合もあり、その場合は当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが所有する設備、あるいはリースした設備に不具合が生じるケースや、地震等の不可抗力により当該設備に損害が発生する可能性があります。
これらの設備のうち、特に番組編成・放送運行システム、配信運行システム、顧客管理システム等の設備について、重大な不具合やサイバー攻撃が生じた場合には、それぞれ現用系統のほか、予備系統や予備データを有し、二重化あるいは三重化された設備になっています。現用系統に不具合が生じても、即時に予備系統に切り替えることで、障害を最小限に止める対策を講じておりますが、発生したリスクの規模によっては、放送、配信サービスの停止、料金徴収等の顧客管理業務の停止等の事態が発生し、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、自社開発した顧客管理システムにおいてアクセス権やプログラム変更に係る内部統制の整備及び運用が適切に行われていない場合には、会員収入計上の根拠となるデータの信頼性が損なわれ、会員収入の計上額を誤る可能性があります。
さらに配信サービスにおいては、サイバー攻撃やアクセス等の一時的な過負荷等により、システムダウン、サービス提供の停止等が発生し、加入獲得の機会損失や加入契約の解約により、正味加入者が減少し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、当社グループの設備は、東京都江東区辰巳に一極集中しており、当該地区が自然災害や、テロ・紛争に巻き込まれた場合、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社の有料放送約款では、衛星デジタル有料放送サービスを月のうち半分以上提供しなかった場合においては、衛星デジタル有料放送サービスに係る当該月分の有料放送料金を請求しないことを記載しております。
サービス停止の期間が上記期間を超えると収入が見込めなくなる場合もあり、その場合は当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、BSデジタル放送で使用するB-CASカードに関しては、持分法非適用関連会社の㈱ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(以下、B-CAS社という)と、カード使用契約並びに暗号化業務の委託契約を締結しております。B-CAS社では、B-CASカードのセキュリティ向上策の実施、そしてさらなるセキュリティ対策の検討をしております。また、当社グループでは、4K8K放送用受信機に搭載されている新CASの開発管理団体である一般社団法人新CAS協議会に出資参画し、CASのICチップ化というさらなるセキュリティ向上がなされた技術的措置を講じております。
今後B-CASカードがICチップに置き換わっていくことで、一定のリスク低減が見込まれます。さらに、当社グループはB-CASカードによる不正視聴が発覚した場合、有料放送事業者各社及びB-CASカードの所有者であるB-CAS社等との連携や、不正視聴機器の利用による不正視聴の法的対処が実現できるよう関係省庁との連携を強化してまいります。
しかしながら、ICカードであるB-CASカードのセキュリティが破られ、当社グループの有料サービスの課金を免れる可能性があります。違法なB-CASカードを無効にできない事態が生じた場合、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
メディアのデジタル化に伴ってコンテンツの複製が容易になったため、私的録画以外の予想し得ない権利侵害行為(例えば違法コピーの販売)から映画やテレビ番組等の著作権を保護する目的で、違法に複製ができないような技術的保護手段が講じられております(コピーガード又はコピー・プロテクション)。そこで、当社グループは、放送権の権利元の要請に応じてコピーガードの信号を放送電波に付加して放送しております。
現時点ですべての権利元から前述のコピーガードのすべての方式について同意を得ておりますが、今後、技術の進歩により、放送権の権利元から新しいコピーガードの方法の採用を要求される、あるいは放送権許諾の条件とされる場合が考えられます。
また、著作権等の知的財産権には、当社グループのみならずコンテンツ制作者、コンテンツ供給者、コンテンツ販売代理店、受託放送事業者、受信機メーカー等が関係しており、それぞれが自らの責任において権利侵害等を犯さぬよう努力しております。しかしながら、これらのリスクが顕在化する可能性を根絶することは事実上困難であり、著作権等の知的財産権をめぐり、関係者間で問題が発生して当社グループに波及した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業は、我が国において多くの法的規制を受けており、総務大臣からの認定又は免許等の対象となっております。今後、放送関連法制度や総務省の判断が何らかの事情により当社に不利な方向に変更された場合、当社グループの経営に悪影響を与える可能性があります。また、当社グループが適用法令や許可条件に従わなかった場合、認定や免許が取り消され、事業を停止又は終了しなければならない可能性があり、当社グループは放送事業に関するサービスの提供または将来の新たな認定や免許取得が困難となる可能性が生じます。
当社グループの主要な業務に係る許認可等の取得状況は以下のとおりです。下記許認可は何れも5年毎の更新が必要であり、取消事由に該当する事象は発生していないものと認識しておりますが、当該許認可等が取り消された場合には、当社グループの事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があります。よって、認定又は免許等の内容の順守を徹底し、日々の放送を行っております。
当社グループは、すべての事業で取り扱う個人情報及び従業員等の個人情報の取り扱いに関し、個人情報保護法及び番号法をはじめとした個人情報の取り扱いに関する法令、国が定める指針その他の規範を遵守いたします。さらに、個人情報の適正な管理の一環として、個人情報保護マネジメントシステムの構築・運用を行うことで、個人情報保護に関する取組みを推進しております。
また、㈱WOWOWコミュニケーションズは「一般財団法人日本情報経済社会推進協会」より、個人情報の適切な取り扱いを行う事業者に付与されるプライバシーマークの付与認定を受けております。
当社グループは、加入者と締結した加入契約により取得した加入者情報・契約情報等の個人情報を管理しており、個人情報をマーケティング等適切な目的に使用する場合には、個人情報の管理に細心の注意を払い、関係企業に守秘義務を負わせる等の対策を徹底しております。それにもかかわらず、結果的に個人情報が当社グループ等から漏洩した場合は、当社グループは加入契約に基づいて法的責任を負う可能性があり、個人情報保護が不十分であるとの社会的批判を受けること等によって、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが調達するコンテンツには海外から現地通貨建てで購入するコンテンツが含まれております。
当社グループは主要通貨間の為替レートの短絡的な変動による悪影響を最小限にするため通貨ヘッジ取引を行っておりますが、急激なレートの変動により当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります(一般的に他の通貨に対する円安は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、円高は好影響をもたらします)。
⑩ コンプライアンスに関するリスク
コンプライアンスの観点から当社グループが対処すべき分野は、当社グループの役職員および派遣社員・スタッフによる不祥事、個人情報に関する事故や下請代金支払遅延等防止法への抵触、さらにインサイダー取引の禁止など、多岐に及んでいます。
当社グループでは、「WOWOW企業行動規範」をはじめとし「個人情報保護方針及び取扱規程」「下請法遵守に関するガイドライン」「内部者取引管理規程」等のルールを定め、定期的な社内告知・研修等でその周知・徹底を行っています。また、当社の「リスク管理・コンプライアンス委員会」において当社グループ内のさまざまなコンプライアンスリスク削減のための検討をしています。
当社グループは、このように不祥事やトラブル、法令違反等への対策を講じていますが、万がー、コンプライアンスに抵触する事態が生じた場合には、当社グループの社会的信用が低下し、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
⑪ 人権に関するリスク
当社グループが事業活動において自ら引き起こす、あるいは助長・関係する人権侵害は、当社グループの社会的信用の低下、経営成績および財政状態に影響を与える恐れがあり、事業活動のリスクであると捉えております。2024年6月には「人権および DEI に関する方針」を定め、人権に対するグループとしての考え方をより明確にしました。また本方針に基づき、当社グループの事業活動における人権リスクを整理し、リスクの発生可能性と深刻度の両軸で重要なリスクを特定いたしました。
<その他の主要なリスク>
当社グループは、当社グループで放送する映画の内容を充実させること及び当該映画の公開による各種収益を得ることを目的として、特定の映画作品に製作・配給投資を行っております。この映画製作・配給投資には、当社企画で他社からも製作出資を募るもの、他社企画の映画に出資者として参加するもの、さらに、日本国内又は特定地域における映画配給権のみに出資するもの等があります。投資した映画は、製作が終了するまでの間に、経済環境や映画の内容変更等様々な理由により製作費等が不足し、追加の投資が必要になるリスクがあります。
また、映画作品は、完成後の劇場公開、DVDその他のビデオグラムの販売、ペイ・パー・ビュー、ペイテレビ等の有料放送、動画配信会社、地上波放送等の無料放送へコンテンツのマルチユースによって収益を得ますが、映画製作・配給投資の事業特性として不確実性を常に含んでいるものであり、これらの公開及び販売状況により、映画作品への投下資金を回収できない可能性があり、さらには利益を得られない可能性もあります。
当社グループは、事業上必要と判断した会社の株式の保有や出資等を行っております。上場株式については株式市場における時価下落、非上場株式等については対象会社の財政状態の悪化等により、保有有価証券の評価損の計上が必要となる可能性があります。また今後の新規サービス展開の実現にむけたM&Aによる「財務リスク」「法務リスク」「経営リスク」「人材リスク」など譲受時の様々なリスクは、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
<今後発生するリスク>
① コマース事業に関するリスク
当社グループは、今後コマース事業に積極的に取り組んでいきます。商品選定および品質管理については細心の注意を払い、商品表示についても適正な形にすべく努めておりますが、当社グループが販売した商品に何らかの不具合や欠陥があった場合、返品や商品の交換、損害賠償等の責任を負う可能性があります。また、販売において不適切な表示があった場合には法令上の処分を受ける可能性があります。このような場合には、当社グループの社会的信用が低下するとともに、事業および業績に影響を与える可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や引き続き好調なインバウンド需要を背景に、緩やかな回復基調が見られました。しかしながら、物価上昇による家計の負担増や世界経済の動向に対する不確実性の高まりなど、依然として先行きは不透明な状況にあります。
このような経済環境の下、当連結会計年度における当社グループの業績は、会員収入が減少したものの、映画事業や番組販売等その他収入の増加や、グループ会社の売上が増加したこと等により、売上高は767億57百万円と前期に比べ18億87百万円(2.5%)の増収となりました。営業利益は売上高の増加に加え、効率的な費用投下を行ったこと等により、20億36百万円と前期に比べ5億85百万円(40.4%)の増益、経常利益は29億97百万円と前期に比べ9億39百万円(45.7%)の増益となりました。
しかしながら、4Kチャンネル「WOWOW 4K」の放送サービス終了及びコンテンツ情報統合管理システムの開発中止決定による減損損失に加え、当社の連結子会社であるフロストインターナショナルコーポレーション㈱におけるのれんおよび無形固定資産について、直近の業績動向等を踏まえ将来の回収可能性を検討の結果、減損損失を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は6億37百万円と前期に比べ4億54百万円(△41.6%)の減益となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりです。
<メディア・コンテンツ>
当連結会計年度は、興行収入約30億円を記録したWOWOW FILMS『ゴールデンカムイ』の続編である「連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―」を放送・配信したほか、「UEFA EURО 2024TM サッカー欧州選手権」、「欧州サッカー UEFAチャンピオンズリーグ」、「LPGA女子ゴルフツアー」、テニスのグランドスラム4大会等のスポーツコンテンツ、SUMMER SОNIC 2024やWEST.、CОMPLEX等の人気アーティストの音楽ライブ等が新規加入を牽引しました。また、当社が配信しているスポーツコンテンツを、外部プラットフォームで視聴できる新サービス「WOWSPO」を、2024年4月よりABEMA、同年12月よりPrime Videoのサブスクリプションにて開始したことで、若年層の会員獲得に繋がりました。
しかしながら、他社の動画配信サービスとの競争激化、目的番組の終了による解約件数増加の影響等により、正味加入件数は純減と厳しい結果となりました。
一方で、メディア・サービス(放送・配信サービス)の構造改革や、新サービスの開発による、新たな収益の創出等の取り組みで、収益の向上を図りました。
メディア・サービス(放送・配信サービス)の構造改革においては、4Kチャンネル「WOWOW 4K」の放送サービス終了により不採算事業の撤退を行なったほか、「ユーロ2024+CL・EL 2024-25 シーズンパス」などを、TVOD(都度課金制)サービス「WOWOWオンデマンドPPV」にて販売しました。
新サービスの開発による、新たな収益の創出においては、コンテンツを軸とした多層サービスの開発・提供を行ないました。2024年11月に劇場版公開した『WEST. 10th Anniversary Live “W” ―Film edition―』は、興行収入5億円を超えるヒットとなりました。そのほか全国のイオンシネマで「UEFAチャンピオンズリーグ」のライブビューイングや、スピッツ初の大規模展覧会「SPITZ,NОW! ~ロック大陸の物語展~ Special Supporter マイナビ」の開催、ECサイト「wowshop」にてオリジナルコンテンツやスポーツコンテンツ等のグッズ、料理道具やおせち等のライフスタイルを提案する商品等の販売を行ないました。また新規事業として、海外作品の日本国内での撮影を請け負うプロダクションサービス事業に参入するためWOWOW BRIDGE(同)を設立し、米国の大手スタジオ・スカイダンスが手がけ、Apple TV+で配信予定のドラマ「Neuromancer」や、当社では2025年夏放送予定、米国ではCBSで放送されるユニバーサル・テレビジョン制作の「FBI:インターナショナル」のプロダクションサービス業務を受注しました。
以上の結果、当連結会計年度におけるメディア・コンテンツセグメントの売上高は、704億72百万円と前期に比べ7億99百万円(1.1%)の増収、セグメント利益は22億65百万円と前期に比べ6億51百万円(40.4%)の増益となりました。
当連結会計年度の加入件数の状況は次表のとおりとなりました。
(注)1. 同一契約者による2契約目と3契約目については、月額2,530円(税込)の視聴料金を990円(税込)に割引しており、当該割引の対象となる契約を「複数契約」と呼称しております。
2. 宿泊設の客室で視聴するための宿泊施設事業者との契約については、視聴料金を個別に定めており、当該契約を
「宿泊施設契約」と呼称しております。
<テレマーケティング>
当連結会計年度は、前連結会計年度に当社グループに加わりましたフロストインターナショナルコーポレーション㈱の売上が通期で寄与いたしましたこと等により、売上高は99億25百万円と前期に比べ5億21百万円(5.6%)の増収となりました。しかしながら、費用面で、当連結会計年度に実施した㈱cinraの買収による取得費用の発生等により、セグメント損失は2億29百万円(前期はセグメント損失1億62百万円)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の期末残高は、前連結会計年度末に比べ1億99百万円減少し、257億23百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は43億44百万円(前期同期は42億93百万円の収入)となりました。主な増加要因は、減価償却費34億39百万円、減損損失23億55百万円及び仕入債務の増加額111億43百万円であり、主な減少要因は、棚卸資産の増加額131億96百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は36億26百万円(前年同期は27億55百万円の使用)となりました。主な要因は、定期預金の預入による支出60億43百万円及び有形固定資産の取得による支出20億32百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果使用した資金は9億27百万円(前年同期は14億33百万円の使用)となりました。主な要因は、配当金の支払額8億45百万円です。
当連結会計年度における売上高実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主要な販売の相手先は一般視聴者であり、主な相手先別に記載するべきものはありません。
3.「メディア・コンテンツ」セグメントには会員収入58,541百万円(対前年増減率△3.2%)を含んでおります。
加入件数の状況、加入方法及び有料放送の料金体系を示すと、以下のとおりです。
A 加入件数の状況
「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」における加入件数の状況をご参照ください。
B 加入方法
加入申込は、カスタマーセンターでの電話による受付及びインターネット、Amazonアプリストア、Apple App Store等を通じて顧客と当社が直接契約する形態と特約店業務委託契約をしている電器店等を通じて行う形態があります。
(B) ケーブルテレビ局経由による視聴の場合
加入申込は、当社が契約しているケーブルテレビ局を通じて行っております。
(C) スカパー!経由による視聴の場合
加入申込は、スカパーJSAT㈱を通じて行っております。
(D) ひかりTV経由による視聴の場合
加入申込は、㈱アイキャストを通じて行っております。
(注)いずれの視聴方法につきましても、番組配信サービス「WOWOWオンデマンド」の配信番組と、テレビのBS放送(BS-9ch)の放送番組をどちらもご覧いただけます。
C 有料放送の料金体系
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって、決算日における資産・負債の数値並びに当該連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行います。
見積り及び判断の基礎としては、過去の実績や合理的と考えられる査定方式を採っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性により、見積りと異なる場合があります。見積りに大きな影響を及ぼす重要な会計方針の主要なものは以下のとおりです。
当社グループは、のれん及び顧客関連資産を含む有形・無形固定資産の価値が毀損していないかどうかを確認するために、資産グループの減損兆候の有無を調査した上で、割引前将来キャッシュ・フローに基づき減損損失の認識の判定を行っております。その結果、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損して、当該差額を減損損失として計上しております。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等を合理的に見積った上で計算するため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の見積りに変更があった場合、当社グループで減損損失が計上される可能性があります。
B 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、当該見積額が減少した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
C 投資有価証券の減損処理
当社グループは、長期的な取引関係維持または将来における事業の多角化を見据え、特定の有価証券を保有しております。これらの株式のうち、市場価格のない株式等以外のものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理をしております。市場価格のない株式等について実質価額が著しく低下したときは、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない限り、減損処理をしております。
将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現在簿価に反映されていない追加的な評価損の計上が必要となる可能性があります。
当連結会計年度において、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
最近5期間における経営成績(重要な経営指標)は、以下のように推移しております。
2021年3月期
累計正味加入件数の減少に伴う会員収入の減少等により、売上高は前期に比べ4.0%の減収となりました。新型コロナウイルス感染症の影響によるスポーツや音楽ライブ等の延期・中止に伴い番組費が減少しましたが、4Kや配信関連費用等が増加したことや、貸倒引当金繰入額を計上したこと等により、経常利益は前期に比べ24.8%の減益、経常利益率は2.4ポイントの減少となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ40.3%の減少となりました。
2022年3月期
累計正味加入件数の減少に伴い会員収入は減少しましたが、テレマーケティング業務等その他収入の増加により、売上高は前期に比べ0.6%の増収となりました。一方、大型スポーツコンテンツへの戦略的な投下により番組費が増加したため、経常利益は前期に比べ22.9%の減益、経常利益率は2.1ポイントの減少となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ7.7%の増加となりました。
2023年3月期
累計正味加入件数の減少に伴う会員収入の減少等により、売上高は前期に比べ3.2%の減収となりました。番組費が大幅に減少したものの、売上高減に伴う利益減の影響等により、経常利益は前期に比べ33.7%の減益、経常利益率は2.1ポイントの減少となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ49.9%の減少となりました。
2024年3月期
累計正味加入件数の減少に伴う会員収入の減少等により、売上高は前期に比べ2.9%の減収となりました。広告宣伝費や番組費が減少したものの、テレマーケティングセグメントにおけるフロストインターナショナルコーポレーション㈱の買収による取得費用の発生等により、経常利益は前期に比べ42.0%の減益、経常利益率は1.9ポイントの減少となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ33.4%の増加となりました。
当連結会計年度における加入件数の状況は、他社の動画配信サービスとの競争激化、目的番組の終了による解約件数増加の影響等により新規加入件数は704,674件(対前年増減率12.6%)、解約件数は812,074件(同13.0%)、新規加入件数から解約件数を差し引きました正味加入件数は△107,400件となり、当連結会計年度末の累計正味加入件数は2,359,712件(同△4.4%)と6期連続純減と厳しい結果になりました。また、当連結会計年度末時点において、複数契約は315,599件(同△6.4%)、宿泊施設契約は88,981件(同5.3%)となりました。
会員収入が減少したものの、映画事業等その他収入の増加やグループ会社の売上増加等により、売上高は767億57百万円と前期に比べ18億87百万円(2.5%)の増収となりました。
売上高の増加に加え、効果的な費用投下を行った結果29億97百万円となり、前期に比べ9億39百万円(45.7%)の増益となりました。
営業活動の結果得られた資金は43億44百万円(前期同期は42億93百万円の収入)となりました。主な増加要因は、減価償却費34億39百万円、減損損失23億55百万円及び仕入債務の増加額111億43百万円であり、主な減少要因は、棚卸資産の増加額131億96百万円です。
当社グループを取り巻く事業環境は、年々競争激化の様相を強めております。それに伴い事業運営のリスク要因等も多種・多様化しております。詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」並びに「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
当社グループの売上高の源泉は加入者からの視聴料です。したがって、加入者を如何にして増やし続けるか、その為に何をするかが重要な課題であり、経営成績に重要な影響を与える要因です。さらに、当社グループの基幹事業はメディア・サービス(放送・配信サービス)です。加入への誘引、加入していただいたお客さまの視聴の継続に大きく影響を及ぼすのは、メディア・サービスの内容、番組、コンテンツです。質の高いコンテンツを獲得することは、必要不可欠であり、経営成績に重要な影響を与える要因です。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の期末残高は、前連結会計年度に比べ1億99百万円減少し、257億23百万円となりました。詳細につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループは、運転資金及び設備投資等の資金につきましては、自己資金により充当しております。
次期の運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金、取引銀行4行と個別契約しております総額32億70百万円の当座貸越契約及び取引銀行4行と2024年5月31日に締結いたしました総額100億円のコミットメントライン契約により確保しております。
当社の連結子会社である㈱WOWOWコミュニケーションズは、2024年10月1日開催の取締役会において、㈱cinraの全株式を取得することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。また、同日付で全株式を取得しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループは、高品位でかつ多様なサービスを提供するために、先端技術、サービスを保有する企業等と連携、規格化検討へ参加する等の活動を中心に研究開発を推進しております。
なお、研究開発費は当社グループ独自には計上しておりません。