第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、放送の公共的使命と社会的責任を常に認識し、メディア・コンテンツおよび都市開発・観光を中心に幅広い事業活動を通じて、国民の皆様の豊かな生活に貢献することを経営の基本方針としております。

当社グループを取り巻く事業環境は、通信やデバイス技術の進歩による生活スタイルの多様化がコロナ禍を経てさらに加速しています。当社グループは、コンテンツのラインナップを一層充実させるとともに、一人ひとりの細分化したニーズに応えるため、様々なメディア・販路を通じて、当社グループが提供するコンテンツやサービスの領域を拡げ、ビジネス圏の拡張を図ってまいります。

当社は、2023年5月18日開催の取締役会において、「“拡がる”フジ・メディア・ホールディングス 中期グループビジョン2023」を策定いたしました。当社グループは、番組やエンタテインメントのヒットコンテンツはもちろん、暮らしの中で触れる商品・サービス・情報や生活空間、あるいは非日常的な体験など“人々が心を潤し生活を豊かにするすべてのもの”を、当社が創り提供していける「コンテンツ」と捉えています。多様な「コンテンツ」を軸にした売上拡大に加え、様々なメディアや販路の強化による生活者との接点の創出・拡充により、グループの一層の事業成長を目指すとともに、企業価値を高めてまいります。

 

「“拡がる”フジ・メディア・ホールディングス 中期グループビジョン2023」における、当社の主な取り組みは、次の通りです。

 

(1) メディア・コンテンツ事業の成長戦略

メディア・コンテンツ事業では、クリエイターの育成やクリエイターコミュニティの形成などヒットコンテンツを創る体制の強化を進めるとともに、ドラマやアニメ、楽曲、コミックなどの権利確保やIP開発、さらには次世代技術の活用も視野に入れたビジネス開発などコンテンツ強化への投資を拡大していきます。また、視聴率の向上、商品価値向上や新たな広告商品の開発により地上波/BS広告のバリューアップを図ります。㈱フジテレビジョンでは、2022年度に再生数・UB(ユニークブラウザ)数・視聴時間の3冠を達成した「TVer」などによるAVOD(広告付き無料配信)や、有料会員数が100万人超となった有料配信の「FOD」など配信事業の一層の成長を図ります。また、差別化できる豊富なコンテンツをもとに、㈱ニッポン放送や㈱ポニーキャニオンをはじめグループを挙げて配信・ネットビジネスの拡大を進めます。さらに、新しいウェブメディアの開発・取得及び活用を進めるとともに、海外マーケットへの進出も加速するなど、生活者とのコンタクトポイントの拡大と創出を進めてまいります。

 

(2)都市開発・観光事業の成長戦略

都市開発・観光事業では、本年3月に㈱サンケイビルへの200億円の増資を実施しました。増資をもとに一定の財務規律を維持しながら投資を拡大し、都市開発分野における大規模開発案件の発掘や、物流施設・データセンターに続くアセットタイプの拡充など、成長投資への活用を加速していくことでグループの業績を牽引してまいります。観光分野では、コロナ禍で営業赤字を計上していた㈱グランビスタホテル&リゾートの業績回復が進み2022年度は4期ぶりに黒字を計上しました。さらにコロナの感染症法上の位置づけが5類に移行したことを受け、一層の拡大が見込まれる国内及びインバウンドの需要を取り込み高い成長を目指していきます。2024年の開業に向けて須磨海浜水族園・海浜公園の再整備事業(「神戸須磨シーワールド」)を進めるほか、需要の回復に合わせホテル開発などを進めてまいります。

 

(3)成長投資と資本収益性向上に向けた取り組み

当社グループは、事業において獲得する収益に加え、外部借入、また保有資産の見直し等によって創出するキャッシュをもとに成長投資を進めます。同時に、株主還元を重視する方針のもと、安定的な配当を継続し、資本効率の改善を目指します。

2022年度は創出したキャッシュを㈱サンケイビルへの増資等の原資として成長投資に活用するとともに、株主還元を重視する観点から記念配当を行うこととしました。また本年5月には、100億円を上限とする自己株式の取得を決議し、株主価値の向上に努めております。

成長投資と構造改革による利益の拡大と併せて、保有資産の構成の見直し等による資本効率の改善を図ることで資本収益性を向上させ、PBR(株価純資産倍率)の上昇を目指してまいります。

 

以上の取り組みにより、2025年度に連結営業利益400億円を目指し、当社グループの一層の事業成長と企業価値の向上を図ってまいります。

 

本年2月に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関するテストイベント計画立案等業務委託契約等の入札に関する独占禁止法の違反について、当社子会社である㈱フジクリエイティブコーポレーションおよびその専務取締役が起訴されました。当社グループでは事態を厳粛に受け止め、法令遵守の徹底に努めてまいります。

 

当社では、2020年に監査等委員会設置会社に移行し、独立社外取締役を取締役の1/3以上とするなど、ガバナンス体制の向上を進めてきました。本年6月には独立社外取締役が過半数を占める経営諮問委員会を設置いたしました。経営陣幹部や取締役候補の指名、報酬等についての取締役会機能の独立性・客観性を強化し、コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) ガバナンス

当社グループは、公共性の高いメディアグループとして、サステナビリティへの取り組みを積極的に進めており、2022年5月に持続可能な社会の実現に向けた取り組みをグループ全体で推進していく上での指針となる「サステナビリティ宣言」を策定しました。グループの各事業会社に対し、サステナビリティの課題に関する取り組みや、その目標の管理等に関して、監督と指示を行っていく考えです。

当社グループは、主に常勤の取締役及び常勤の監査等委員である取締役によって構成される「経営会議」を設置しており、経営の重要課題に関する協議や取締役会に付議される重要事項等について事前審議を行うとともに、各部門の業務執行の状況に関し情報の共有を図っています。サステナビリティの課題に関しても経営会議において各部門より適宜報告を受けております。

当社はグループ横断的にサステナビリティの課題に対応するため、2022年6月より代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会を中心に、「グループのコンプライアンス及びリスクの管理に関する委員会」(以下「グループコンプライアンス等委員会」という)とも連携しながら、サステナビリティの課題解決に向けた取り組みを一層強化してまいります。


 

(2) 戦略

①気候変動について

当社グループは、気候変動への対応を重要な経営課題の一つであると認識し、本年5月に行ったTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示の中で、複数のシナリオを想定し、気候変動が当社グループの事業にもたらすリスクと機会について、放送事業、通販事業および都市開発・観光事業を軸に特定し、その対応策をまとめております。

 

(シナリオ分析の前提)

事業範囲:㈱フジ・メディア・ホールディングス、㈱フジテレビジョン、㈱DINOS CORPORATION、㈱サンケイビル

基準年:2030年

設定シナリオ

社会像

(a)ネットゼロ

シナリオ

・持続可能な社会を実現する2050年ネットゼロに向けて、厳しい政策がとられ技術革新が進む

・21世紀末の温度上昇は1.5℃未満にとどまる

(参考シナリオ:IPCC SSP1-1.9、IEA WEO2022 NZE)

(b)現行政策

シナリオ

・現在実施されている政策がそのまま継続され、追加的な措置は行われない

・21世紀末の温度は最大3.5℃上昇し、気候変動の影響を大きく受ける

(参考シナリオ:IPCC SSP2-4.5、IEA WEO2022 STEPS)

 

 

(シナリオ分析の結果)

(a) ネットゼロシナリオ(脱炭素政策のもと気温の上昇は1.5℃程度)

リスク

・カーボンプライシングの導入、GHG排出規制の強化に伴う対応コストの増加

・脱炭素への取り組みが遅れた場合のブランド力の低下や企業価値の棄損

機会

・環境課題への積極的な対応による広告収入の増加

・環境配慮型物件や環境配慮型商品の売上拡大

・気候変動への積極的な対応によるブランド力や企業価値の向上

対応策

 省エネルギー設備の積極的な導入や再エネ電力の活用によるGHG排出量の削減、番組制作工程の見直しや効率化、環境配慮型商品設計などを通じた脱炭素への取り組みなどを積極的に行います。

 気候変動、環境課題への社会の関心を捉えたコンテンツの制作強化や環境配慮型物件・商品の開発などを促進すること等により、リスクを最小化し、脱炭素社会における事業機会の拡大を目指してまいります。

 

 

(b) 現行政策シナリオ(最大3.5℃気温上昇。気象災害が激甚化し猛暑日が増加)

リスク

・気象災害の激甚化による放送トラブルの発生

・気象災害に伴うサプライチェーンの寸断

・広告主の罹災に伴う広告収入の減少

機会

・気象災害や猛暑日の増加による高安全性・高気密性物件への需要拡大

・ネットゼロシナリオほどではないが、環境配慮型物件・商品の売上拡大、気候変動への積極的な対応によるブランド価値向上が期待される。

対応策

 放送トラブル防止のためのBCPの徹底や定期的な訓練の実施によりレジリエンスを確保していくとともに、災害発生時には迅速かつ正確な災害報道を通じ早期の災害復旧に貢献してまいります。

 気象災害に伴うサプライチェーンの寸断時には、被災時の拠点確保や複線化による早期復旧を目指します。

 

各シナリオにおいて特定されたリスク・機会は、サステナビリティ委員会やグループコンプライアンス等委員会に報告、適切な対応を行い、当社グループにおける気候変動リスクに対するレジリエンスを確保するとともに事業機会の拡大を目指してまいります。引き続き、シナリオ分析や財務への影響の精緻化、リスク・機会及び対応策の経営計画への具体的な反映を通じて、気候変動対応を積極的に進めてまいります。

TCFD提言に基づく情報開示につきましては当社ホームページに掲載しております。

[掲載ページ] https://www.fujimediahd.co.jp/ir/pdf/tcfd230516.pdf

 

②人的資本について

当社グループにおいて多様な「価値」を生み出す要となるのは「人」です。ジェンダーや国籍、年齢に関係なく、全ての従業員・スタッフが個性を発揮し活き活きと働くことができること、安心して働き続けられる環境があることは、事業活動を円滑に循環させ、永続させていくために不可欠と考えています。

当社グループでは、子育てや介護等のために休業・休職をせざるを得ない従業員等の多様な働き方に対応した環境の整備を進めるとともに、多様性確保に向けた人材育成方針として、各階層で必要な研修を実施することとし、ハラスメント・コンプライアンス・LGBTQ等の研修を行っています。中核子会社である㈱フジテレビジョンでは、2022年度の男性育休取得率は76.3%ですが、更なるワークライフバランスの充実を図るべく2023年3月に民間団体が主催する「男性育休100%宣言」に賛同し、男性育休の取得率100%を目指してより働きやすい環境づくりを推進しております。また、2023年4月から、パートナーシップ宣誓など多様性を認める取り組みを制度化し、慶弔や休暇などが分け隔てなく取得・活用できる環境を整えました。

メディア事業を取り巻く環境が劇的に変化している中で当社グループの持続的な成長を図り企業価値を向上させていくためには、多様な視点や価値観を尊重し、当社グループの事業運営に取り込んでいくことが必要であると考えています。新たな事業領域に対応するため、グローバルな視点や価値観を有する外国人の採用や、高い専門性を有する人材のキャリア採用を進めています。また、とりわけ経営の中核を担う管理職においても、多様性の確保が重要であると考えています。当社グループでは2023年5月に公表した中期グループビジョンの中で、従業員301名以上のグループ会社の女性管理職比率を、2022年度の19%から2030年度までに30%以上とすることを目標としております。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、グループ経営に重要な影響を与えるコンプライアンス上の問題及びリスクへの対応を図るため、グループ各社の代表取締役社長を構成メンバーとするグループコンプライアンス等委員会を組織し、「グループのコンプライアンス及びリスクの管理等に関する規程」(以下「グループコンプライアンス等規程」という)に基づき、各事業を統括しております。当社グループに重大な影響を与えるサステナビリティリスクに関しても、サステナビリティ委員会等において特定・評価したうえで、グループコンプライアンス等委員会と連携しながら対応策の検討を行います。


(4) 指標及び目標

当社グループは、温室効果ガスの削減目標として2030年度までに㈱フジテレビジョン、㈱サンケイビル、㈱DINOS CORPORATIONの3社で排出量50%削減(2013年度比)、2050年度までにカーボンニュートラルの達成を目指すことを掲げております。

また、人材育成方針として、従業員301名以上のグループ会社の女性管理職比率を、2022年度の19%から2030年度までに30%以上とすることを目標としております。

グループ各社の女性管理職比率、男性育児休業等取得率、男女間賃金格差については、第1 企業の概況 5 従業員の状況 に記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要リスクは、以下の通りであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

当社では、「グループのコンプライアンス及びリスクの管理等に関する規程」(以下「グループコンプライアンス等規程」という)等に基づき、当社グループの代表取締役社長を構成メンバーとする「グループのコンプライアンス及びリスクの管理に関する委員会」(以下「グループコンプライアンス等委員会」という)を組織化すること等により、グループ経営に重要な影響を与えるリスクに対して適切な管理を行っております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) メディア・コンテンツ事業に関するリスク

①景気変動等による影響

当社グループのメディア・コンテンツ事業の中核である放送事業の売上高の多くはCM枠の販売による広告収入で構成されています。今後、景気変動のほか大規模災害や新型コロナウイルス等感染症の拡大その他の様々な要因に基づき国内景気が悪化するなどして国内の総広告費が減少した場合、CM枠の販売価格を決定する上で重要な要素である視聴率が低下した場合、そのほか当社グループの他のメディア及びコンテンツ関連事業において景気悪化等の影響が波及した場合には、当社グループの業績等に負の影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに関して、当社グループでは、㈱フジテレビジョンを中心に収益力を強化するメディア・コンテンツ事業と、投資を拡大し中長期的に一層の成長を目指す都市開発・観光事業をグループの中心事業としつつ、今後もコンテンツのラインナップの一層の充実とともに、様々なメディアや販路を通じて、当社グループが提供するコンテンツやサービスの領域を拡げ、ビジネス圏の拡張を図る方針としております。

以上の考えに基づき、当社グループは過度に特定の事業に頼ることなく、多種多様な事業を展開して強固な事業ポートフォリオを構築することで互いのビジネスを補完しあい、安定的でバランスのよい成長を目指していく方針です。

②メディア・コンテンツ事業を取り巻く競争環境

昨今、インターネットでの動画配信や音楽配信、動画広告が飛躍的に拡大し、生活者のコンテンツへの接触方法も多様化・細分化が加速しています。こうした環境変化により、生活者による既存のメディアへの接触時間が減少し、媒体価値が低下した場合には、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。

当該リスクに関して、当社グループでは、今後のさらなる成長が期待される配信・ネットビジネスの拡大を大きな経営課題と認識しており、将来のメディア戦略や配信等の新たなビジネスモデルを検討の上、進めていく方針としております。放送と配信が連動したセールス及びプロモーションの推進や、データマーケティング、広告配信技術の活用など、顧客やユーザーの目線に立ったサービスと、広告主のニーズに応えるビジネスモデルの構築によって収益の拡大を目指し、投資の拡大も含め検討を進めていきます。さらに新しいウェブメディアの開発や、海外マーケットへの進出も加速するなど、生活者とのコンタクトポイントの拡大と創出を進めてまいります。

 

(2) 都市開発・観光事業に関するリスク

都市開発・観光事業は、景気変動のほか大規模災害や新型コロナウイルス等の感染症の拡大その他の様々な要因に基づく景気動向の影響を受けやすく、都市開発事業の中核事業であるビル事業・資産開発事業・住宅事業は、国内経済情勢と連動した不動産市況の動向によっては、空室の発生・賃料水準の下落及び販売価格の下落により当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。

また、観光事業においても、景気の悪化等によるインバウンドを含む旅行・観光需要の減少、国際情勢の変化等により利用客が減少し、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。

当該リスクに関して、当社グループでは、本事業に加えて、㈱フジテレビジョンを中心に収益力を強化するメディア・コンテンツ事業をグループの中心事業と位置づけ、さらに多様なコンテンツと様々なメディアや販路の強化によりグループの一層の事業成長を目指す方針としており、事業ポートフォリオとしてのバランスのよい成長を目指していきます。また、本事業の中核であるビル事業・資産開発事業・住宅事業では、一定の財務規律のもとで、資産の開発や売却、さらにはREITを活用した保有資産リスクの分散化など経営環境に応じた保有資産の見直し等によりリスクを適切にコントロールしております。観光事業は、コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行したことを受け、国内及びインバウンド需要の一層の拡大が見込まれるなど、中長期的に高い成長を期待できる分野と考えています。また2024年の開業に向けて須磨海浜水族園・海浜公園の再整備事業(「神戸須磨シーワールド」)を進めるほか、需要の回復に合わせホテル開発を進めるなど、引き続きリスクをコントロールしながら長期的な視点で投資を継続していく方針です。

 

(3) 設備投資及び投資等について

当社グループは、持続的な成長を促進していくために、適切な設備投資及び投資を継続し、当社グループ事業の強化を図る方針ですが、投資額に見合う十分な利益を確保することができない可能性もあります。

当該リスクに関して、当社グループでは、設備投資及び投資について専門部局をメンバーとする会議体や専門部署等を配するなどして、専門的見地から検討を進めることとしております。なお、大型の出資・投資案件については、経営会議にも付議し、取締役会でも決議を行う等、複数のチェック体制を確保し、慎重かつ多角的に検討する仕組みとしております。

 

 (4) 当社グループ事業に対する法的規制に関するリスク

当社は、放送法に基づく認定放送持株会社として総務大臣の認定を受けております。認定放送持株会社の認定には放送法で定める要件に適合する必要があり、当該要件に適合しなくなった場合は、認定を取り消される可能性があります。また、当社グループの中核事業である放送事業では、放送法・電波法に基づく放送免許又は認定を受け、事業を行っております。

仮に法令に基づく認定若しくは放送免許の取消し等の処分を受けた場合又は再免許を受けることができなかった場合は、当社グループの業績等に負の影響を及ぼす可能性があります。当社では、要件や認定条件への適合状況についてモニタリングとチェック体制を強化し適切な運用を図るよう努めております。

当社グループでは、グループ経営に重要な影響を与える法的な問題及びリスクに対しては、グループコンプライアンス等規程に基づき、取締役及び使用人等の法令順守について適切な体制を構築しております。また、当社では内部監査規程に基づき、当社の内部監査部門が、当社グループのコンプライアンスの状況を定期的に監査しております。

 

(5) 大規模災害等による事業継続に関するリスク

大規模災害等により、当社グループの中核である放送事業において、番組を放送するために使用している放送機材及び放送施設に障害が発生した場合や、その他イベントや映画における興行の中止や減少、通信販売事業、映像音楽事業などにおける商品等の製造、調達や流通への被害、都市開発・観光事業における保有・開発資産の毀損等が発生した場合には、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。

当該リスクに関して、当社グループでは、放送設備等に障害が発生した場合でも、バックアップ用放送設備または放送用リース設備の代替システムの利用等により放送を継続する仕組みを備えております。ただし、既存対応では対処しきれない自然災害が発生した場合等は、放送を長期間停止するリスクが想定されます。

なお、当社グループでは、年に数回、安否回答確認訓練やBCP訓練を定期的に開催し、平常時から防災意識の向上と連絡体制の確認に努めております。

 

(6)気候変動に関するリスク

当社グループでは、気候変動は環境・社会、事業活動にとっての脅威であり、これらへの対応は重要な経営課題の一つであると認識し、2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明しました。また、気候変動が当社グループの事業にもたらすリスクと機会について、放送事業、通販事業及び都市開発・観光事業を軸に特定し、その対応策などについて検討を進め、本年5月にTCFD提言に基づく情報開示を行いました。当社グループは分析結果とその対応策を経営計画へ反映するなどして、引き続き気候変動への対応を積極的に進めてまいります。

TCFD提言に基づく情報開示につきましては当社ホームページに掲載しております。

[掲載ページ] https://www.fujimediahd.co.jp/ir/pdf/tcfd230516.pdf

 

(7) 個人情報の取扱いに関するリスク

当社グループは、視聴者情報、番組出演情報、通信販売事業ほか各事業における顧客情報などのデータベースを管理・運営しておりますが、当該情報が外部から不正にアクセスされた場合や、個人情報の外部流出等が発生した場合には、当社グループの業績及び企業としての社会的信用に負の影響を与える可能性があります。

当該リスクに関して、当社グループでは、データベースにおける顧客等の個人情報について社内でのアクセス権限を設定するなどその取扱いには十分な注意を払い、セキュリティの強化に努めております。

 

(8) 新型コロナウイルス感染症の影響継続に関するリスク

新型コロナウイルス感染症が5月8日をもって5類感染症に移行し、当社グループの事業活動においても、主催イベント等での集客、インバウンドを含む観光需要が本格的に回復基調に転じています。一方で、新型コロナウイルス感染症が完全に終息したわけではなく、当社グループでは、当該感染症の影響について事業遂行上の主要なリスクとして認識しており、日常における基本的な感染対策とともに、アフターコロナの生活様式や消費行動の変化に適応できるよう努めてまいります。

また、その他にも当社グループの従業員に新型コロナウイルスの感染が拡大した場合、一時的に当社グループ事業の活動に支障が生じ、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。当社グループではこれらのリスクに対応するため、予防や拡大防止に対して今後の状況に応じて適切な管理体制を構築してまいります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

①財政状態及び経営成績の状況

(経営成績の概況)

政府の月例経済報告によると、当連結会計年度の日本経済は「先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。」と記されており、企業の業況判断は「持ち直しの動きがみられる」とされております。

当社グループにおいても、行動制限の解除によるイベントの本格的な再開、全国旅行支援、入国規制の緩和による旅行・観光需要の回復などが業績に寄与する一方で、原材料費の上昇および円安等を背景とした物価上昇の影響を受けました。

こうした状況の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業が共に増収となり、全体では前年同期比2.0%増収535,641百万円となりました。

営業利益は、都市開発・観光事業が増益となりましたが、メディア・コンテンツ事業は減益となり、前年同期比5.8%減益31,401百万円となりました。経常利益は、持分法による投資利益の減少が響き、前年同期比14.2%減益39,053百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益における投資有価証券売却益や退職給付信託設定益の計上が寄与し、前年同期比88.3%増益46,855百万円となりました。

 

 

報告セグメントの業績の状況は以下の通りであります。

 

 

売 上 高

セグメント利益

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

(百万円)

(百万円)

(%)

(百万円)

(百万円)

(%)

メディア・

コンテンツ事業

415,036

420,836

1.4

23,072

17,484

△24.2

都市開発・観光事業

105,493

108,841

3.2

11,153

15,070

35.1

その他事業

17,681

20,394

15.3

654

931

42.3

調整額

△13,124

△14,430

△1,541

△2,086

合  計

525,087

535,641

2.0

33,338

31,401

△5.8

 

 

(メディア・コンテンツ事業)

当社グループの中核子会社である㈱フジテレビジョンの放送・メディア事業収入は、194,279百万円で前年同期比4.5%の減収となりました。

主力の放送事業のうち、全国放送を対象とするネットタイムセールスは、レギュラー番組が前年並みの推移となりましたが、単発番組では「FIFAワールドカップ カタール2022」、「東アジアE-1サッカー選手権2022」や「東京マラソン2023」が貢献したものの、前期の「東京2020オリンピック」や「北京2022オリンピック」の規模には及ばず減収となりました。その結果、ネットタイムセールスの売上高は69,253百万円で前年同期比3.6%の減収となりました。

関東地区への放送を対象とするローカルタイムセールスは、10,621百万円で前年同期比4.1%の減収となりました。

スポットセールスは、視聴率の苦戦や原材料価格の高騰および円安等を背景とした物価上昇の影響により、減収となりました。業種別で、前年を上回ったものは19業種のうち「交通・レジャー・観光」「不動産・住宅設備」「衣料・身回品・雑貨」など5業種に留まりました。その結果、スポットセールスの売上高は80,506百万円で前年同期比9.4%の減収となりました。

民放公式テレビポータル「TVer」などを通じた配信広告セールスは、10月クール木曜劇場「silent」をはじめとした連続ドラマの再生回数が牽引し、大きな伸びとなり、配信広告売上高は4,866百万円で前年同期比73.8%の増収となりました。

コンテンツ・ビジネス事業では、シルク・ドゥ・ソレイユの大型作品「アレグリア-新たなる光-」などイベント開催数や規模が回復した催物事業収入、「ONE PIECE FILM RED」、「沈黙のパレード」、「Dr.コトー診療所」などヒット作が相次いだ映画事業収入、連続ドラマのヒットにより会員数が大きく伸長した動画配信サービス「FODプレミアム」や「FNNプライムオンライン」のデジタル事業収入などが前年を上回りました。その結果、コンテンツ・ビジネス事業の売上高は43,120百万円で前年同期比24.2%の増収となりました。

以上により、㈱フジテレビジョン全体の売上高は、前年同期比0.4%減収237,400百万円となりました。営業利益は前年同期比31.9%減益7,677百万円となりました。

㈱ビーエスフジは、放送事業収入、その他事業収入ともに堅調に推移し、増収増益となりました。

㈱ニッポン放送は、放送収入の減少が響き売上高全体では減収となりましたが、イベント事業での原価率の改善や配信等のデジタル領域での収入増加により増益となりました。

㈱ポニーキャニオンは、劇場版アニメ映画「五等分の花嫁」、アニメ「東京リベンジャーズ」やOfficial髭男dismの楽曲が寄与したほか、イベント・コンサート収入が回復したことで増収となりましたが、音楽・映像パッケージの減収や原価率の上昇が響き減益となりました。

㈱フジパシフィックミュージックは、著作権使用料収入が引き続き堅調に推移したほか、音楽番組・コンサート関連の映像制作収入も寄与し増収増益となりました。

㈱DINOS CORPORATIONは、ファッションが復調傾向となったほか、食品や寝具などの売上も好調に推移しました。一方、テレビ通販やリビング・美容健康系のカタログ通販が前期ほど振るわなかったほか、イミニ事業の会社分割に伴う減収により、全体の売上高は前期を下回り、営業利益は積極的な販促費投下などによる費用増もあり、減益となりました。

㈱クオラスは、テレビ広告やWEB広告など広告収入が増加したほか、経済活動の再開に伴いイベント関連収入が好調に推移し増収増益となりました。

㈱グレイプは、運営するウエブメディア「grape」などのPV数が堅調に推移したほか、新規事業の通販アフィリエイト収入が寄与し、当期の売上高および営業利益に貢献しました。

以上の結果、メディア・コンテンツ事業全体の売上高は、前年同期比1.4%増収420,836百万円となり、セグメント利益は同24.2%減益17,484百万円となりました。

 

(都市開発・観光事業)

㈱サンケイビルは、オフィス・住宅ともに賃貸収入が堅調に推移したほか、分譲マンションの販売や保有物件の売却等も計画を上回る推移となりましたが、保有物件の売却規模が前期に及ばず減収減益となりました。

㈱グランビスタホテル&リゾートは、全国旅行支援や入国規制の緩和に伴うインバウンド需要の回復などによりホテル稼働が大きく改善したことで増収となり、4期ぶりの営業黒字に転換しました。

以上の結果、都市開発・観光事業全体の売上高は、前年同期比3.2%増収108,841百万円となり、セグメント利益は同35.1%増益15,070百万円となりました。

 

(その他事業)

その他事業全体の売上高は前年同期比15.3%増収20,394百万円、セグメント利益は同42.3%増益931百万円となりました。

 

持分法適用会社では、伊藤忠・フジ・パートナーズ㈱、フジテレビ系列局、㈱産業経済新聞社、㈱WOWOWなどが持分法による投資利益に貢献しました。

 

(財政状態の概況)

当期末の総資産は1,382,646百万円となり、前期末比46,655百万円3.5%)増加しました。

流動資産は414,797百万円で、前期末比21,777百万円5.5%)増加しました。これは主に、有価証券が7,853百万円、棚卸資産が6,628百万円、現金及び預金額が5,708百万円それぞれ増加したこと等によります。

固定資産は967,849百万円で、前期末比24,878百万円(2.6%)増加しました。これは主に、土地が14,818百万円、投資有価証券が6,432百万円、建物及び構築物が4,527百万円それぞれ増加したこと等によります。

負債は533,877百万円で、前期末比6,674百万円1.3%)増加しました。

流動負債は174,898百万円で、前期末比35,576百万円(25.5%)増加しました。これは主に、短期借入金が12,094百万円、「その他」に含まれる1年内償還予定の社債が10,000百万円それぞれ増加したこと等によります。

固定負債は358,978百万円で、前期末比28,902百万円(7.5%)減少しました。これは主に、退職給付に係る負債が11,964百万円、社債が10,000百万円それぞれ減少したこと等によります。

純資産は848,769百万円で、前期末比39,981百万円(4.9%)増加しました。これは、剰余金の配当を9,014百万円行った一方で、親会社株主に帰属する当期純利益46,855百万円を計上したこと等によります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当期における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは、61,779百万円の収入となり、前期比7,919百万円14.7%)の収入増加となりました。これは、棚卸資産の増減額が16,326百万円の収入減少、退職給付に係る負債の増減額が7,425百万円の支出増加となった一方で、税金等調整前当期純利益が30,110百万円増加したこと等によります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、32,770百万円の支出となり、前期比14,019百万円30.0%)の支出減少となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が11,674百万円増加した一方で、有価証券の売却及び償還による収入が26,800百万円増加したこと等によります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、5,269百万円の支出となり、前期比19,623百万円(78.8%)の支出減少となりました。これは、長期借入金の返済による支出が16,885百万円増加した一方で、社債の償還による支出が10,000百万円減少し、長期借入れによる収入が24,400百万円増加したこと等によります。

上記の他、㈱グレイプとイミニ免疫薬粧㈱の新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額918百万円を加味した結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、130,155百万円となり、前期末に比べ27,557百万円26.9%)の増加となりました。

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

自己資本比率(%)

56.5

58.6

57.9

59.7

60.6

時価ベースの自己資本比率(%)

27.4

19.9

22.6

19.5

19.2

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

2.1

14.7

6.3

5.1

4.5

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

90.2

14.4

33.5

35.8

43.8

 

(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産

2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※  各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※  株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※  キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

※  有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

(a) 生産実績

該当事項はありません。

(b) 受注実績

該当事項はありません。

(c) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

メディア・コンテンツ事業

420,836

1.4

都市開発・観光事業

108,841

3.2

その他事業

20,394

15.3

調整額

△14,430

535,641

2.0

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

㈱電通

94,594

18.0

85,781

16.0

㈱博報堂DYメディアパートナーズ

52,477

10.0

51,241

9.6

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。当連結会計年度においてはグループ各社で配信やコンテンツ・ビジネスが拡大し収益構造の転換が進展するとともに、観光事業では力強い回復も見られグループ全体としては増収となりましたが、地上波テレビ広告収入の減少や通販事業での外出機会の増加による売上減などの影響を受け、営業利益は31,401百万円となり前年同期比5.8%の減益となりました。

計画対比では、都市開発・観光事業は㈱グランビスタホテル&リゾートがインバウンド需要の回復等を捉え4期ぶりの営業黒字になったことなどで営業利益の目標を上回りましたが、メディア・コンテンツ事業が配信やコンテンツ・ビジネスが拡大したもののテレビ広告収入の減少、通販事業や映像音楽事業の減益が大きかったことにより目標を下回りました。その結果、連結営業利益は350億円の目標を下回りました。

当社グループでは、コロナ禍を経て生活スタイルの多様化が加速する中、新たに策定した中期グループビジョンのもと、多様なコンテンツやサービス、商品、体験等を、様々なメディアや販路を通じて提供することでビジネス圏の拡張を図り、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。

 

  (セグメント区分別の分析)

(メディア・コンテンツ事業)

メディア・コンテンツ事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。

メディア・コンテンツ事業は、中核子会社㈱フジテレビジョンが地上波テレビ広告収入の減少により減収減益となりましたが、「TVer」などで展開するAVOD(広告付き無料配信)が再生数・UB(ユニークブラウザ)数・総視聴時間の「3冠」を達成したことで配信広告収入を飛躍的に伸ばしたほか、有料配信サービスの「FOD」では有料会員数が100万人を超え事業が拡大しました。さらにヒット作が相次いだ映画事業や、配信許諾料収入、ライツ収入なども収益に大きく貢献しました。セグメント全体では、広告収入を伸ばした㈱ビーエスフジやイベント関連売上が拡大した㈱クオラスの貢献、またウェブメディアが好調な㈱グレイプを連結に加えたこともあり増収となりました。

メディア・コンテンツ事業は、引き続きテレビの視聴率及びコンテンツ価値の向上に注力し、地上波テレビ広告収入の拡大を図ります。また「TVer」などAVODの高い成長を目指すのに加え、映像、音楽、音声、情報等の配信の一層の拡大を図ります。ヒットコンテンツの創出に向けてはグループ各社で企画制作体制を強化するほか、独自のコンテンツやIP(知的財産権)の開発、さらには新規事業領域の開拓などを進め、「コンテンツの力で稼ぐ」事業構造をさらに強固なものにしてまいります。

 

(都市開発・観光事業)

都市開発・観光事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。

特に㈱グランビスタホテル&リゾートにおいては、全国旅行支援やインバウンド需要の回復によりホテル稼働が大きく改善したほか、鴨川シーワールドが過去最高の業績となるなど観光需要の力強い回復により4期ぶりに営業黒字となりました。㈱サンケイビルでは、前年の大型物件売却の反動があり減収減益となりましたが、住宅事業の貢献等により、セグメント全体では増収増益となりました。

都市開発・観光事業は、一定の財務規律の中で資産の規模を拡大し成長を図ってまいります。本年3月には㈱サンケイビルに対して200億円の増資を実行し、投資余力を増強しました。今後も需要の変化に対応して物流施設やデータセンターなど開発する資産の幅を拡充するとともに、大規模な開発案件の発掘も進めてまいります。観光事業は、引き続き高い伸びが期待できる成長産業と位置付け、リスクとのバランスを見極めながら投資を行ってまいります。

 

(その他事業)

その他事業の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。

 

② 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
(財務戦略の基本的な考え方)

当社グループは、グループ各社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、成長分野への投資を推進し、株主還元の充実を図っていくことを財務戦略の基本方針としています。

メディア・コンテンツ事業の中核をなす㈱フジテレビジョンは、大規模災害や疾病等の事業上のリスクにより大幅な収入減が長期間生じた際にも、社会的なインフラとして放送を継続する役割を担っており、それを可能とする強固な財務体質と十分な手元流動性を確保しております。併せて都市開発・観光事業では、withコロナの下、行動制限の解除や入国規制の緩和などにより国内旅行やインバウンド需要が回復傾向にあり、REITを含めた戦略投資や観光需要回復に向けた成長投資への資金確保が必要になると考えております。

自己資本比率、有利子負債残高、ROE等の指標を注視して、一定の財務健全性を確保しながら資本効率を高め、グループ全体の企業価値向上に努めてまいります。

(資金需要の内容)

当社グループの資金需要は、営業活動に関わる支出として、放映権の取得費用、番組制作のための人件費、外注費、著作権等の使用料、通信販売商品の仕入、新規不動産の取得ならびに開発費、既存ビルの設備改修ほか、販売費及び一般管理費(代理店手数料、宣伝広告費、人件費等)があります。

また投資活動に関わる支出として、コンテンツ制作力の増強を図るための放送用設備・機器等の設備投資、メディア戦略強化のための投資資金、グループの資本政策に伴う株式の取得資金等があります。

(資金調達)

当社グループの事業活動を維持し拡大していくためには資金の安定的な確保が求められますが、そのために内部資金を中心に外部資金も有効に活用しております。効率的な投資を可能にするために現在10,000百万円の社債を発行しておりますが、更に機動的な資金調達をすべく50,000百万円の社債発行登録枠を確保しております。また都市開発・観光事業では建物及び土地の調達にあたり、一定の財務規律の下、金融機関からの借入を活用しています。2023年3月には当社から㈱サンケイビルに対し200億円の増資を実施し、同社の自己資本の増強と借入余力の拡大を図りました。

併せて安定的な外部資金調達を図るために、格付投資情報センターより格付を取得しており、本報告書提出時点でシングルAプラス(安定的)となっております。当社グループは強固な財務体質を有しており、さらに営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力が高いことから、当社グループの成長を維持するための運転資金、設備投資及び投融資に要する資金を調達することは可能と認識しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループにおいて、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えている会計上の見積りに係る項目は、以下の通りであります。

なお、会計上の見積りに係る項目のうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響に重要性があると判断している都市開発・観光事業における棚卸資産評価損と固定資産の減損損失につきましては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に算出方法や主要な仮定等の詳細を記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響についての考え方についても当該箇所に記載しております。

(繰延税金資産)

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の検討にあたり、課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性がないと判断した部分については評価性引当額を計上しております。将来の課税所得の見積りは、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来課税所得見込額とタックスプランニングに基づいておりますが、今後の業績の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、繰延税金資産の取崩等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。

(退職給付に係る資産及び負債)

当社及び一部の連結子会社では確定給付型の退職金制度を採用しており、退職給付債務算定において原則法を採用しています。退職給付債務算定における数理計算は、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率などの計算基礎に基づいており、割引率は安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しております。また、年金資産の長期期待運用収益率は、年金資産が退職給付の支払に充てられるまでの時期、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定しております。これらの前提条件の見積りと実績の差異は、数理計算上の差異として計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。

 

5 【経営上の重要な契約等】

本社建物の賃貸借契約について

当社は当社が所有する本社建物を、連結子会社である㈱フジテレビジョンに賃貸する賃貸借契約を締結しております。契約の概要は以下の通りです。

契約会社名:㈱フジ・メディア・ホールディングス

契約相手方:㈱フジテレビジョン(連結子会社)

賃貸借物件:フジテレビ本社ビル

契約期間 :2018年10月1日から2年間、期間満了以降は2年毎に自動更新

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、研究開発を戦略的事業の一環として捉え、放送・配信や番組制作の各分野において、技術的優位性を確保し、魅力的なサービスに発展させるため、先進技術の導入に積極的に取り組んでおります。また、これらの活動を通じ、広くICT分野の発展に貢献しています。

(メディア・コンテンツ事業)
 メディア・コンテンツ事業における研究開発活動は、主にテレビ放送事業を行う㈱フジテレビジョンに係るものであります。当連結会計年度における成果は次の通りであります。 
 インターネット技術等の技術革新とスマートフォンやタブレット型端末に加え、コネクティッドTV(インターネット接続テレビ)の普及により、動画視聴形態やコンテンツへのニーズが多様化しました。また、データ解析技術、クラウド、AI、5G技術の活用等は、放送業界でも重要性が高まっており、これらの技術の研究開発に、以下の2つを柱として取り組んでおります。

①放送・配信分野におけるビジネスモデルを支える技術についての研究開発
 ②番組制作分野における付加価値向上と制作効率化を実現する技術についての研究開発

放送・配信分野では、コネクティッドTV上での放送と見逃し配信動画視聴の利便性向上を目的とした放送通信連携技術や、ライブ配信での広告挿入技術や低遅延配信技術の研究開発に取り組んでいます。また、大規模なテレビ視聴データを安全に収集できるシステムを構築し、視聴者ニーズを捉えた番組制作や、マーケティング戦略への活用方法を研究しています。

番組制作分野においては、効率的かつ高品質な番組素材中継回線構築の可能性を探るため、5Gスタンドアローン方式によるSLA保証型ネットワークスライシング技術を用いた映像伝送の研究開発を通信キャリアと共同で実施しており、「東京マラソン2023」において世界で初めてこの技術を用いたワイヤレスカメラ映像伝送に成功しました。

社外からの評価としては、当連結会計年度に発表された2021年度(第49回)映像情報メディア学会技術振興賞において、「災害情報カメラ収録システム“TOREZO”」が進歩開発賞(現場運用部門)を、「AI画像解析アプリ“メタロウ”」がコンテンツ技術賞をそれぞれ受賞しました。“TOREZO”は、従来、FNN系列局が個別に運用していた情報カメラの映像を全国で一括管理して収録し、地震発生時には、自動的に地震による揺れ映像を切り出すことで系列局全てが地震映像を即座に送出できるシステムで、地震報道の迅速化に貢献したことが評価されました。また、“メタロウ”は、映像コンテンツ内の人物の名前をAIがリアルタイムで推定するアプリで、当社の電子写真システムやFNN選挙特番等において人物名の確認作業にかかる多大な時間と労力の削減だけでなく人為的ミスの低減にも繋がったことが評価されました。なお、“メタロウ”の要素技術は、2023年3月8日に特許登録されております。

放送分野の発展を目指し、標準化活動にも積極的に取り組んでおります。総務省情報通信審議会やARIB(電波産業会)、A-PAB(放送サービス高度化推進協会)での4K・8K超高精細度テレビジョン放送の標準化や地上デジタル放送の高度化技術の検討、IPTVフォーラムでの放送通信連携技術の標準化、ITU-R(国際電気通信連合 無線通信委員会)での国際標準化等の活動等に積極的に参加しています。なお、国際標準化活動においてその功績が認められ、日本ITU協会賞「奨励賞」を受賞しました。

今後も研究開発を事業戦略の一環として捉え、継続的に取り組んで参ります。

なお、当連結会計年度の研究開発費は398百万円であります。