文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は平成8年の創業時に、MVNO事業モデルという新たな通信事業の在り方を考案し、安全・安心にデータを運ぶ(通信する)ことを自らの使命として事業を展開して参りました。当社は、この使命を遂行するため、以下の方法によるセキュアかつ信頼できる通信の開発及び提供に注力する方針です。
① 情報を運ぶための通信網の構築及び運用
通信網の構築・運用には、当社が創業時から提唱・実践しているMVNO事業モデルを採用しています。MVNO事業モデルには、①既存の通信事業者の通信網を活用するため巨額投資が不要である、②複数の通信事業者の通信網を活用することで、二重、三重に信頼性を高めた通信を提供ことが可能である、③海外の通信事業者の通信網を活用することでグローバルな事業展開が可能である、などの利点があります。
② セキュアなプラットフォームの構築及び運用
セキュアなプラットフォームの構築及び運用には、隔離された通信経路の確立と通信内容の暗号化が根幹となります。当社は、ICチップとしての側面を持つSIMを活用し、鍵生成ロジックや電子証明書等を搭載することで、現在インターネットで広く利用されているSSL/TLS等の暗号化通信方式の弱点を克服した、セキュアな通信を提供します。
(2)経営環境及び経営戦略
当社は、平成28年1月、格安SIM事業者から、パートナー企業に安全・安心な通信に基づくモバイル・ソリューションを提供するイネイブラー事業者に転換する新事業戦略を策定し、現在この戦略に沿って事業を遂行しています。MVNO事業者は令和元年12月末日時点で1,092社に達し、その多くが格安SIMという単一セグメントに集中することで、MVNO業界は過当競争の状況になっています。しかしながら、このような経営環境においても、MVNO事業モデルには、上記(1)①に記載したとおり、多くの利点があります。当社はこの利点を活かして差別化したサービスを開発し、強力なパートナー企業と共にお客様に提案していきます。
また、当社は、SIMの認証基盤を発展させることで、上記(1)②のプラットフォームを、インターネットで安全・安心な金融取引を行うことができるプラットフォーム、FPoS(FinTech Platform over SIM、エフポス)として開発しました。FPoSについては、平成30年に金融庁の支援のもとで実証実験が行われ、平成31年1月に金融庁が公表した実験結果において、金融庁の監督指針に準拠していることが示されています。
FPoSは、スマートフォンで安全に送金や取引を行うなど、金融取引全般に活用することができるほか、実印と同様の効力がある電子署名をスマートフォンでできるようにするもので、行政、医療、教育、小売等の様々な分野で活用することができるものです。当社は、各分野のパートナー企業とともに、事業展開を図っていく戦略です。
当社は、以上の経営方針・経営戦略に基づいた取組みを積極的に進め、その結果としての売上拡大及び収益化の実現を目指しています。現時点では、当社の売上の大部分は格安SIMによるものですが、FPoSを活用したイネイブラー事業者として他にはない機能を持つSIM商品等の提供を行うことで、より幅広いMVNO事業者に対して多様な通信及びプラットフォームを提供していきます。
(3)対処すべき課題
当社は、上記の経営方針・経営戦略等を踏まえ、以下の点を優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として認識しています。
① 公正な競争環境の確保のための取組み
当社は、創業以来、利用者のニーズに合った多様なサービスの提供を可能とし、電気通信事業をさらに成長・発展させることのできる事業モデルとして、MVNO事業を提唱しており、MVNO事業が成立した後は、MNOとMVNOとの間で公正な競争環境を確保するための取組みを進めています。公正な競争環境の確保は、MVNOが本来の目的を果たして成長するための最大の課題であり、将来にわたり、長期的に取り組むべきものと認識しています。
競争環境のうち、携帯電話の販売手法については、令和元年10月に改正電気通信事業法が施行され、高額なキャッシュバックの提供等のMNOによる行き過ぎた囲い込みに一定の歯止めがかかるようになりました。また、MVNOがMNOから調達するデータ通信サービスの接続料については、従来はMNOにおける過年度の「実績原価」に基づいて算出されていましたが、令和2年度に適用される接続料からは当年度の原価を合理的に予測した「将来原価」に基づいて算出されることとなりました。このように、MNOとMVNOの間の競争環境は改善が進みつつあります。
一方、MVNOがMNOから調達する音声通話サービスの卸料金は10年前から据え置かれたままとなっており、MNOから高額の卸料金で音声通話サービスを調達するMVNOは、音声通話定額サービスを提供するMNOと競争することのできない状況が続いています。当社は、長年にわたり、この問題の是正をNTTドコモに申し入れてきましたが、協議は不調に終わり、令和元年11月に総務大臣裁定を申請しました。総務大臣裁定において当社の主張が認められた場合には、音声通話サービスの競争環境も大きく改善します。
② MVNO事業モデルの進化による黒字化の達成
当社は5期連続で損失を計上しており、早期に安定的な黒字化を達成することは喫緊の課題です。そのため、公正な競争環境の確保のための取組みを進めつつ、MVNO事業の本来の役割に立ち返ってその事業モデルを進化させることに取り組んでいます。
まず、SIM事業の月額課金商品については、実際に使用した分だけお支払いいただく料金プランに一定の評価をいただいています。当連結会計年度の後半以降は、改正電気通信事業法の施行による短期的な影響として、携帯電話事業者のキャッシュバックを目的とする新規利用者が減少したことで売上成長が鈍化しましたが、引き続き、利用者の利便性の向上に着目し、MNOとの差別化を図ることのできる商品の拡充に取組みます。
SIM事業のプリペイド商品については、政府のインバウンド推進政策を受け、訪日旅行者向けの商品が順調な売上成長を続けてきました。当連結会計年度の第4四半期以降は、新型コロナウイルスの影響で売上が大幅に減少し、従前のレベルに回復するには相当の時間を要することが想定されますが、引き続き、在日旅行者向けの商品など、MNOとの差別化を図ることのできる商品の拡充に取組みます。
なお、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務及び在宅学習が広がり、テレワーク向け商品の需要が高まっています。当社は、機動的にサービス設計及び商品調達ができる強みを生かし、この分野の開拓を進める計画です。
また、MSP事業については、決済代行事業者向けクレジットカード情報非保持化支援サービスやモバイル専用線を用いたソリューション・サービスの提供を推進していきます。MSP事業には、改正電気通信事業法や新型コロナウイルスの感染拡大による影響はなく、むしろ、インターネットの活用が進み、セキュリティへの要請が高まるにつれ、商機は拡大するものと想定されます。当社は、引き続き、この分野の開拓を進めます。
③ 早期黒字化とのバランスを考慮した戦略的な取組み
当社は、早期の安定的な黒字化を目指す一方で、イネイブラー事業者として成長するための戦略的な取組みとして、FinTechプラットフォーム事業及びローカル基地局によるソリューション事業に注力しています。
まず、FinTechプラットフォーム事業に関しては、金融庁の「FinTech実証実験ハブ」を活用して平成30年8月から10月にかけて実証実験を行ったほか、平成30年11月にはサービス提供主体となるmy FinTech株式会社を、令和2年1月にはFinTechプラットフォームの肝となるサブSIMの開発及び供給を担うセキュアID株式会社を設立しました。現在は、電子認証局の構築準備や銀行システムとの接続検証を行い、FinTechプラットフォームの商用化に向けた準備を進めています。
また、ローカル基地局によるソリューション事業に関しては、日本においては周波数幅等の制約により現時点では十分な品質のサービスを提供することが難しいため、米国のCBRS(市民ブロードバンドサービス)の商用化を先行させ、米国で得た知見を日本の事業に活用する予定です。
これらの戦略的な取組みを断念すれば、早期の黒字化の実現は容易になりますが、それでは、当社がイネイブラー事業者として成長することができません。従って、当社は、早期黒字化とのバランスを取りながら、これらの戦略的な取組みを進めていく必要があります。当社マネジメントには、同様の課題に取り組んだ経験を持つ者が多く、着実に対処していけるものと考えています。
④ 優秀な人材の確保及び育成
当社がイネイブラー事業者として成長するための戦略的な取組みには、多種多様な調査や企画、さらに技術開発や事業開発が必要であり、これを担うことができる人材の確保及び育成が極めて重要となります。例えば、FinTechプラットフォーム事業に関して言えば、金融業界に関する法律、制度、経営課題、技術課題等、顧客の事業領域に対する一定の知見が必要です。当社グループは、そのために優秀な人材の採用を進めるとともに、採用した人材に会社の優先順位に応じた多様な業務を担当させることによって、様々なノウハウや技術を身に付けさせています。当社が直面する課題は前例のないもので、既に知識や経験のある企業がどこかに存在するわけではありません。一方、当社には、MVNO事業モデルを定着させるに至るまでに、法制度の活用、携帯事業者との交渉やネットワーク構築などを通じて培った経験とノウハウがあるため、これらを活用して人材を育成し、戦略的な取組みを推進していきます。
⑤ 技術開発及び設備投資等の先行投資資金の確保
財務上の課題としては、安定的な通期黒字化を実現するまでの技術開発及び設備投資等の先行投資のための資金の確保が挙げられます。当社は、平成28年1月の新事業戦略の策定後、同戦略を実現するための資金を確保する手段として、平成28年7月に日本通信株式会社第3回新株予約権(第三者割当て)を、平成30年3月に日本通信株式会社第4回新株予約権(第三者割当て)を、いずれもクレディ・スイス証券株式会社を割当先として発行しており、これらの新株予約権が行使されたことにより、これまでに3,704百万円の資金を調達しました。さらに、当社は、令和2年4月にクレディ・スイス証券株式会社を割当先として日本通信株式会社第5回新株予約権(第三者割当て)を発行しました。当社は、割当先が同新株予約権を行使する時期及び数量をコントロールすることができるため、当社の資金ニーズに応じ、株式価値の希薄化に配慮した柔軟な資金調達を実現することが可能です。
当社は、上記のような課題に取り組みながら、安全・安心な通信及びプラットフォームを提供する事業者として成長していく計画です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のあると認識している主要なリスクとしては以下のようなものがあります。必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載していますが、当社株式への投資に関連するリスクのすべてを網羅するものではありません。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 市場について
① 技術の進歩及び制度の整備について
当社は創業以来、モバイル通信の市場で事業を展開しています。モバイル通信のうち、音声通話の市場は、携帯電話の普及が進み、飽和状態にあります。一方、データ通信の市場は、スマートフォンやタブレット端末の普及が急速に進んでいますが、その普及の速さゆえに、セキュリティやプライバシーに関わる課題が広く認識されるようになっています。モバイル通信の活用範囲及び市場規模の更なる拡大の成否は、これらの課題が技術及び制度の両面において適切に解決され、誰もが安心して利用できる通信手段になりうるか否かにかかっています。
無線通信やセキュリティ等の技術は日進月歩の発展を遂げているため、技術面の課題はいずれ克服されていくものと考えますが、技術の進歩が停滞または遅延した場合には、当社グループが事業を展開する市場規模の拡大も停滞または遅延する可能性があります。また、無線通信やセキュリティ等の制度面の課題については、行政及び各事業者が高度な問題意識を持って取り組むことで早期に整備されていくものと考えますが、制度の整備が停滞または遅延した場合には、当社グループが事業を展開する市場規模の拡大も停滞または遅延する可能性があります。いずれの場合も、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 訪日旅行者向け商品の市場について
当社は、SIM事業のプリペイド商品において訪日旅行者向け商品を販売しており、近年は、政府のインバウンド推進政策を受け、順調な売上成長を続けてきました。しかしながら、訪日旅行者向け商品の販売は当該旅行者数の増減に左右されるため、国内外の社会経済状況に大きく影響されます。国内外で大規模な自然災害が発生した場合、国内外で危険な感染症が蔓延した場合、諸外国との外交関係が悪化した場合、為替レートが急激に変化した場合、世界経済の後退が深刻化した場合などは、訪日旅行者数が減少し、当社の訪日旅行者向け商品の販売が低迷するため、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、令和2年1月以降は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により訪日旅行者数が大幅に減少し、当連結会計年度の第4四半期の売上は大きく減少しました。訪日旅行者数が従前のレベルに回復するには相当の時間を要することが想定されますが、当社グループは、テレワーク向け商品等の新たな分野を開拓することで、訪日旅行者向け商品の減少が令和3年3月期以降の当社グループの業績に与える悪影響を最小限に留める計画です。
(2) 当社サービスの仕組みについて
① モバイル通信網等について
当社は、携帯電話事業者から調達したモバイル通信サービスを活用して、音声通話サービス、セキュリティ技術、IP電話等の各種アプリケーション、または通信端末等を組み合わせることで当社独自の通信サービスを設計し、一般消費者を含む様々な顧客層及びパートナー企業にモバイル通信のソリューションを提供しています。
当社サービスの基盤となっているのはモバイル通信サービスですが、現時点において、モバイル通信サービスを提供する仕組みは、下図のとおり、ドコモ及びソフトバンクのモバイル通信網等のネットワーク(以下、「モバイル通信網等」という)、専用線接続部分並びに当社グループのデータセンター等から構成されています。なお、当社グループのデータセンターにおける主要なシステムは、株式会社インターネットイニシアティブが運営するデータセンター内に収容しています。
図1 モバイル通信サービスを提供する仕組み
モバイル通信サービスを提供する仕組みのうち最も主要な部分は、携帯電話事業者のモバイル通信網等ですが、これは、当社が携帯電話事業者と締結した契約に基づいて調達しています。
従って、当社が携帯電話事業者とモバイル通信網等を調達する契約を締結することができない場合は、当社はモバイル通信サービスを提供することができません。また、当社が携帯電話事業者とモバイル通信網等を調達する契約を締結した場合も、当社が当該契約を同様の条件で継続することができる保証はなく、当該契約が携帯電話事業者によって解除される等により終了した場合は、当社はモバイル通信サービスの提供を継続することができない事態に陥ります。
当社は、携帯電話事業者が積極的に訴求しない分野での潜在需要を喚起する等により、通信市場全体の拡大を図り、携帯電話事業者に対する交渉力の維持・増強に努めています。しかし、当社が将来にわたり携帯電話事業者との契約を更新することができるという保証、または、従前と同様の条件で調達を受けられるという保証はなく、今後、調達条件の改善に成功するという保証もありません。さらに、携帯電話事業者の事業方針の変更等により、当社が従前より不利な条件での調達を余儀なくされる可能性があるほか、携帯電話事業者自身が顧客にとってより魅力的な自社サービスを展開し、それを当社に対する提供条件には反映させないこと等により、当社と携帯電話事業者との契約が維持されたとしても、結果的に当社サービスの競争力が失われる事態となる可能性もあります。当社が携帯電話事業者からの調達条件を維持もしくは改善することができなかった場合、または携帯電話事業者からの調達条件が悪化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、上記のリスクを最小限に留めるため、携帯電話事業者からデータ通信のモバイル通信網等を調達するにあたっては、電気通信事業法上の制度である相互接続に基づく契約を締結し、安定した事業基盤を確保するために最大限の努力をしています。そのため、5G等の新たなモバイル通信網等を調達する契約を締結することができない可能性、及び、既存のモバイル通信網等の調達に関する契約を解除される可能性は、いずれも高くないものと認識しています。また、携帯電話事業者から音声通話サービスを調達するにあたっては、相互接続より携帯電話事業者の裁量の余地がより大きい卸契約によっていますが、卸契約も電気通信事業法の規律を受けることから、電気通信事業法に基づく総務大臣裁定を申請するなど、モバイル通信網等の調達条件の改善に努めています。
なお、モバイル通信網等の調達にかかわらず、当社グループの今後の事業展開において、携帯電話事業者に依存する側面が大きいことは否定できません。すなわち、当社サービスの利用可能地域の拡大は、携帯電話事業者のモバイル通信網等における通信可能地域の拡大が前提となり、通信速度または通信容量の向上は、携帯電話事業者におけるモバイル通信網等の性能の向上が前提となります。
② モバイル通信網等のネットワーク設備の障害について
携帯電話事業者のモバイル通信網等の維持管理は携帯電話事業者において行われており、当社グループが顧客に当社サービスを確実に提供するためには、携帯電話事業者のモバイル通信網等が適切に機能していることが前提となります。携帯電話事業者のモバイル通信網等が適切に機能していないことにより、当社サービスの全部もしくは一部が停止し、または当社サービスの水準が低下する事態が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、携帯電話事業者においてモバイル通信網等の適切な維持・管理が行われていた場合でも、アクセスの集中等の一時的な過負荷、外部からの不正な手段による侵入、内部者の過誤、または大規模地震を含む自然災害、停電もしくは事故等の原因により、携帯電話事業者のモバイル通信網等に障害が発生する可能性があります。このような障害により、当社サービスの全部もしくは一部が停止し、または当社サービスの水準が低下する事態が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、耐震構造または免震構造を有し停電対策を備えた施設にデータセンターを収容しています。さらに、データセンター内のネットワークシステムについては、その通信状態を終日監視する体制を整備し、継続的に通信状態をテストすることにより、障害等の発生を早急に感知することに努めています。また、携帯電話事業者との障害連絡体制を整え、障害発生時にも極力短時間で復旧できる準備体制を整えています。
しかしながら、大規模地震を含む自然災害、停電または事故等の原因による障害の発生を完全に防ぐことはできません。また、障害が発生した場合、迅速に対処するためには多大なコスト負担が必要となるため、発生した障害の規模等によっては、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、自社開発を含め、多数のネットワーク機器及びコンピュータ・システム(ソフトウェアを含む)を使用しています。これらの機器及びシステムにおいて、不適切な設定、バグ等の不具合(外部から調達する一般的なソフトウェアの不具合を含む)が顕在化した場合には、サービスの全部もしくは一部の停止、またはサービスの水準の低下が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ ネットワークシステムについて
当社グループが提供するモバイル通信サービスは、モバイル通信網を使用するため、利用場所、利用時の電波の状況、及び基地局の混雑度等により、通信速度が異なります。また、インターネット接続を利用する場合には、インターネットの通信速度に依存します。さらに、携帯電話事業者から当社グループのデータセンターまでを接続する専用線の通信速度並びにデータセンター内のネットワーク設備及びコンピュータ・システムの処理速度にも依存します。加えて、当社グループのデータセンターから法人顧客までを専用線で接続している場合には、当該専用線の通信速度にも依存します。
当社グループは、現在の顧客数及びその利用実態を把握し、また今後の顧客数及び利用実態を予測することにより、必要かつ十分なネットワークシステムの容量を確保するよう努めています。しかしながら、当社グループが確保したネットワークシステムの容量が需要に対して不足した場合には、通信速度が低下する原因となる可能性があり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方、このような事態を回避するために、需要に対して必要以上にネットワークシステムの容量を増強した場合にも、過大な費用が発生することで、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 技術革新について
当社グループが提供するモバイル通信サービスでは、LTE・3Gのモバイル通信技術、無線LAN技術、TCP/IPネットワーク技術、マイクロソフトWindowsオペレーティングシステム、認証技術において業界標準となっているRadius認証システム等を使用しています。これらの技術標準等が急激に大きく変化した場合、その変化に対応するための技術開発に多大な費用が生じ、当社グループの収益を圧迫し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、技術標準等の変化への対応が遅れた場合、または、当社サービスに使用している技術もしくはサービスが陳腐化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 事業の内容について
① 通信端末の調達について
当社グループは、モバイル通信サービスで使用する通信端末を複数の企業から調達していますが、調達条件はその時点の市場環境の影響を受けます。
当社グループは、通信端末の調達条件を改善するよう努めていますが、そのような努力にもかかわらず、調達条件が悪化した場合には、事業原価の上昇や通信端末を適時に顧客に供給できないことによる事業機会の逸失により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、通信端末に品質上の問題があった場合には、サービスを継続できない等の事態が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、令和2年1月以降の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、通信端末のサプライチェーンにも混乱が生じており、この状況が長期間継続する場合は、事業原価の上昇や通信端末を適時に顧客に供給できないことによる事業機会の逸失により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 通信端末の陳腐化リスク等について
モバイル通信サービスで使用する通信端末は、通信端末メーカーまたは代理店から調達しますが、最低発注量が大きく、需要に対し過大な発注をせざるを得ない場合もあり、このような場合、在庫の陳腐化リスクを負うことになります。当社グループでは、通信端末メーカーと緊密な情報交換を行い、販売状況を見極めながら必要数量の予測を的確に行うよう努めていますが、調達した通信端末が陳腐化した場合、または発注時期の遅延により適時に顧客に供給できず事業機会を逸失した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 通信端末の製造物責任等について
当社は、モバイル通信サービスで使用する通信端末を通信端末メーカーまたは代理店から調達して販売しています。当社は、通信端末を調達するにあたり、品質等の検査を行っていますが、それにもかかわらず、当該通信端末に検収時に判明しない欠陥があり、事故等の被害が生じた場合には、当社は、製造物責任法に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。また、製品事故に至らなくても、当該通信端末の技術基準等に問題があった場合は、製品の回収義務を負う可能性があります。これらの場合は、多額のコストが発生するだけでなく、当社グループの信用を大きく毀損し、売上の低下や収益の悪化など、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ マーケティング力及び技術開発力について
当社グループの業績は、顧客が求め、または顧客に受け入れられるサービスを的確に把握し、新たなサービスを提供していくこと、すなわち激変する業界にあって迅速に動向を把握し、あるいは予測しながら経営を行っていくためのマーケティング力及び技術開発力に依拠すると考えています。当社グループが、かかる能力を適切に維持し、または向上できない場合には、事業機会を逸し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 人材の確保について
当社グループは、新たな領域で事業を行っているため、少数の個人の経験、スキル及びノウハウに負うところが大きく、そのような人材を失うことによる事業への影響の可能性は否定できません。当社グループは、事業の拡大に伴い、適切な人材を確保し、体制の充実に努める方針ですが、優秀な人材を適時に採用することは容易ではありません。当社グループが、事業の拡大に必要な適切な人材を確保することができなかった場合、採用した従業員が短期間で退職した場合、または、限られた人材に依存している業務において従業員に業務遂行上の支障が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 競合について
当社が提供するモバイル通信サービスは、その市場が成長期にあることから、現在の競合に加え、今後の更なる新規参入による競争激化が予想されます。特に、当該サービス分野は、通信事業者が提供する通信サービスの側面と、コンピュータ関連業者が提供するシステムサービスの側面とを併せ持つことから、以下のとおり、通信事業及びコンピュータ関連事業から、競合するサービスが現れる可能性があると考えています。
① 携帯電話事業者について
通信回線設備を有する携帯電話事業者は当社グループと比較して圧倒的に潤沢な経営資源を有し、それらを活用することで、より低価格・高機能な商品を単独で提供することが可能です。
従来、携帯電話事業者の収益源は音声通話によっていましたが、昨今のスマートフォン等の急速な普及からデータ通信による収益が音声通話を上回るようになっており、現在、データ通信市場では、携帯電話事業者を含めた競争が激化しています。
このような状況において、携帯電話事業者は、自社または自社と資本関係のあるグループ内のMVNOにより、当社グループと競合するサービスの展開を強化しています。また、資本力に勝るMVNO事業者が携帯電話事業者となる事例も現れています。このような携帯電話事業者が、その強大な資本力を背景に、当社グループより商品力に優れたサービスを提供した場合、当社グループの競争力の低下または価格競争の激化による売上高の減少が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、携帯電話事業者は、当社グループにとってモバイル通信網等の調達先でもあります。携帯電話事業者が提供するサービスと当社グループが提供するサービスの競合が激化した場合、携帯電話事業者は、自己のサービスを拡大するため、当社との取引条件を変更する可能性があり、その場合、当社グループの価格設定や提供しうるサービスが制限されることにより、既存顧客を失う事態、または新規顧客の獲得が伸び悩む事態が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② MVNOについて
当社グループと競合するMVNOの多くは、固定回線系ネットワークサービスを提供する事業者、大規模小売店を展開する事業者等がモバイル通信サービスに新規参入したものです。これらの事業者は、既存事業において安定的な顧客基盤及び事業基盤を有しており、これらを活用して新規事業であるモバイル通信サービスを拡大する機会に恵まれています。これらの事業者が、既存事業の収益を源泉にモバイル通信サービスのシェア拡大を優先する場合、または、モバイル通信サービスを専ら既存事業を維持・拡大する手段として活用する場合は、モバイル通信サービスにおいて戦略的な価格政策を打ち出す可能性もあり、かかる事態が発生した場合には、既存顧客を失う事態、または新規顧客の獲得が伸び悩む事態が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ SI(システムインテグレーター)について
SIは、コンピュータ・システム領域において、顧客ごとに最適化したシステムのカスタマイズを事業としているため、システムの企画・立案からプログラムの開発、必要なハードウェア・ソフトウェアの選定・導入、及び完成したシステムの保守・管理までを総合的に行い、システム導入後においても保守業務が継続することから、顧客との結び付きは深いものになります。また、多種多様なシステムを統合するため、高いネットワークスキルを有しています。SIが携帯電話事業者と提携する等により、通信サービスの提供能力を獲得した場合には、当社グループにとって強力な競合相手となる可能性があり、そのような場合、既存顧客を失う事態、または新規顧客の獲得が伸び悩む事態が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、イネイブラー事業者として、SIを含むパートナー企業にモバイル・ソリューションを提供する戦略を推進しています。当社グループとSIがパートナーシップを構築することは、両者に利益をもたらし、結果的に、競合による上記のリスクの低減につながります。
(5) パートナービジネスへの依存について
当社グループは、イネイブラー事業者として、パートナー企業にモバイル通信サービス及びモバイル・ソリューションを提供することを事業の中核に据えています。そのため、当社事業の中長期的な成長の成否は、パートナー企業との間で、取引関係・契約関係を含めた信頼関係を構築することができるか、また、構築した信頼関係を維持・拡大することができるか否かにかかっています。当社は、パートナー企業との協業を成功させるため、最大限の経営資源を投入して、競争力のあるモバイル通信サービス及びモバイル・ソリューションの開発に努めるとともに、パートナー企業のオペレーションを支援するためのパートナープラットフォームの開発を強化しています。しかしながら、パートナー企業との間で、取引関係・契約関係を含めた信頼関係を構築することができなかった場合、信頼関係の構築に当社が想定する以上の時間を要した場合、または構築した信頼関係を維持・拡大することができなかった場合は、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 知的財産権及び法的規制等について
① 知的財産権の保護について
当社グループに帰属する知的財産の保護は、関連法規及び契約の規定に依存しています。当社グループは、知的財産を保護するため、他社の技術やノウハウの動向を把握し、必要に応じて特許出願等を行うよう努めていますが、出願した特許等が必ず権利登録されるという保証はありません。
また、当社グループが出願した特許等が権利登録された場合でも、取得した権利が十分なものではない可能性、または、第三者によって侵害される可能性があります。このような場合には、他社により、当社グループと同様の技術が開発され、または当社グループのサービスが模倣されることで、当社グループの事業の継続に支障を来す可能性があります。また、かかる侵害者に対する訴訟その他の防御策を講じるため、限られた経営資源を割くことを余儀なくされる事態が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 第三者からのライセンスについて
当社グループは、モバイル通信サービスの提供にあたり、複数の第三者から、技術またはブランド(商標)等のライセンスを受けています。将来において、当社グループが現在供与されているライセンスを更新することができない事態、新たなサービスや通信端末を提供するために必要なライセンスの供与を受けることができない事態、または適切な条件でライセンスの更新もしくは供与を受けることができない事態が生じる可能性があり、そのような事態が生じた場合には、当社サービスの優位性が失われ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制等について
当社グループの事業は、電気通信事業法をはじめとする各種法令に基づく規制を受けています。これらの規制が変更され、または新たな法令が適用されることにより事業に対する制約が強化された場合、事業活動が制限され、またはコストの増加につながる可能性があります。他方、事業に対する制約が緩和された場合、新規参入の増加により競争が激化し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、令和元年10月の改正電気通信事業法の施行により、携帯電話事業者の過度なキャッシュバックが規制の対象となったことで、当該キャッシュバックを目的とする超短期の契約者が減少し、当連結会計年度下半期の当社グループの売上は大きく減少しました。しかしながら、改正電気通信事業法による悪影響は短期的なものに留まり、中長期的には、電気通信業界における公正な競争環境が整備されることで利用者の流動性が高まり、当社グループの業績に好影響を及ぼすものと認識しています。
④ 個人情報の保護について
当社は、当社サービスを提供するにあたり、顧客の氏名、住所、生年月日、電話番号等の個人情報を取得することがあり、個人情報保護法に基づき、個人情報取扱事業者としての義務を負っています(なお、当社は、個人情報の第三者提供は行っておりません。また、現時点において、匿名加工情報や仮名加工情報を活用する計画はありません。)。
当社が取得した個人情報は、当社並びに当社連結子会社であるクルーシステム株式会社及びJCI US Inc.において業務上取扱いますが、当社グループでは、取得した個人情報について、業務上必要な範囲内のみで利用し、適正な権限を持った者のみがアクセスできるようにしています。また、社員、契約社員及び派遣社員の全員が入社時及び毎年、秘密保持誓約書を提出するものとし、個人情報に接する機会の多いコールセンターの構成員は原則として正社員のみとしています。しかしながら、このような個人情報保護のための対策を施しているにもかかわらず、当社グループからの個人情報の漏洩を完全に防止できるという保証はありません。万一、当社グループが保有する個人情報が社外に漏洩した場合には、顧客からの信用を喪失することによる販売不振や、当該個人からの損害賠償請求等が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) その他
① 業績の予測について
MVNO事業の歴史はまだ浅く、特に、当社グループが展開するデータ通信MVNOは新たな事業領域であることから、当社グループが今後の業績を予測するにあたり、過去の実績や、通信事業の業界一般の統計に必ずしも依拠することができません。また、今後のMVNO事業の業績に影響を与える可能性のある同事業の利用者数の推移、市場の反応等を正確に予測することも極めて困難です。従って、現時点において当社グループが想定する収益の見通しに重大な相違が生じる可能性があるほか、今後予想し得ない支出等が発生する可能性もあり、かかる事態が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 資金調達について
当社グループは、ネットワーク設備、ソフトウェア、システム等の開発及び調達等に投資し、当社サービスの更なる差別化を推進して事業拡大を図る計画ですが、計画を実行する上で必要な投資資金の確保が困難な場合、事業機会を逸し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは5期連続して親会社株主に帰属する当期純損失を計上していますが、当連結会計年度末において現金及び預金651百万円を保有し、必要な運転資金を確保しています。また、令和2年4月6日に発行した第5回新株予約権(第三者割当て)177,700個により、資金需要に応じた資金調達手段も確保しています。
③ 新株予約権(第三者割当て)による株式の希薄化について
当社は、令和2年3月19日開催の取締役会決議に基づき、令和2年4月6日に第5回新株予約権(第三者割当て)177,700個(17,770,000株)を発行しました。当該新株予約権の行使期間は令和5年4月6日までであり、当該新株予約権が行使された場合、当社の1株当たりの株式価値が希薄化し、株価に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は、当該新株予約権の割当先が当該新株予約権を行使する時期及び数量をコントロールすることができるため、当社の資金ニーズに応じ、株式価値の希薄化に配慮した柔軟な資金調達を実現することが可能です。
④ ストックオプションによる株式の希薄化について
当社グループは、当社グループに対する貢献意欲及び経営への参加意識を高めるため、ストックオプションによるインセンティブ・プランを採用しており、令和2年3月19日開催の当社取締役会決議に基づき、当社並びに当社連結子会社の取締役、監査役、執行役員及び従業員に対し、令和2年4月10日に第20回新株予約権(ストックオプション)33,522個(3,352,200株)を発行しました。当該新株予約権の行使期間は令和9年4月10日までであり、当該新株予約権が行使された場合、当社の1株当たりの株式価値が希薄化し、株価に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当該新株予約権の行使価格は、同新株予約権の発行日前日の当社株式終値の2倍であるため、当該新株予約権が行使されることは、当社の株主価値が増大したことを意味します。そのため、当該新株予約権は、その行使による相応の希釈化を伴ったとしても、結果として中長期的な企業価値・株主価値の向上に寄与し、既存株主の利益にも貢献できるものと判断しています。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社並びに連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりです。
①財政状態の分析
当連結会計年度末における流動資産は1,280百万円となり、前連結会計年度末に比べ79百万円減少しました。これは主に未収入金が32百万円増加、貸倒引当金が24百万円減少した一方、売掛金が137百万円減少したことによるものです。固定資産は196百万円となり、前連結会計年度末に比べ124百万円減少しました。これは主に有形固定資産が40百万円、無形固定資産が88百万円減少したことによるものです。
この結果、総資産は1,481百万円となり、前連結会計年度末に比べ205百万円減少しました。
当連結会計年度末における流動負債は903百万円となり、前連結会計年度末に比べ85百万円減少しました。これは主に未払金が12百万円、前受収益が23百万円増加した一方、買掛金が39百万円、預り金が48百万円、その他が29百万円減少したことによるものです。固定負債は29百万円となり、前連結会計年度末に比べ11百万円減少しました。これは主に長期借入金が21百万円減少したことによるものです。
この結果、負債は933百万円となり、前連結会計年度末に比べ96百万円減少しました。
当連結会計年度末における純資産は548百万円となり、前連結会計年度末に比べ108百万円減少しました。
この結果、自己資本比率は36.0%(前連結会計年度末は37.5%)となりました。
②経営成績の状況
当社は、安全・安心にデータを運ぶ(通信する)ことを自らの使命(ミッション)として事業を展開しています。当社は、当連結会計年度においても、引き続き、SIM事業の収益改善を図りながら、中長期的な成長ドライバーであるFinTechプラットフォームである「FPoS」(Fintech Platform over SIM、エフポス)の商用化に向けた取組みを進めています。
なお、当連結会計年度の第4四半期以降は、新型コロナウイルスの感染拡大(以下、「コロナ問題」といいます)という未経験の事態に直面し、現時点においても収束が見通せない状況にあることから、当社は、コロナ問題がもたらす事業環境の変化を見極めながら事業を進めています。
SIM事業
(ⅰ)一般消費者向けのスマートフォン用SIM商品について
2019年10月1日に改正電気通信事業法が施行され、携帯電話事業者の過度なキャッシュバック・キャンペーンが実質的に終了したことで、キャッシュバックを目的とする超短期の契約者が減少し、短期的には、当連結会計年度下半期の売上及び利益に大きなマイナス影響がありました。しかしながら、電気通信事業法の改正は、公正な事業環境の実現を目指すものであり、中長期的には、契約者の流動性が高まり、当社事業にプラスの影響を及ぼすものと考えています。
なお、一般消費者向けのスマートフォン用SIM商品には、コロナ問題による影響はあまり見られません。経済の減速が長期化する中、スマートフォンの通信費は家計における必要費であり、携帯電話料金の引き下げに向けた要求は、これまで以上に高まってくることが想定されます。当社が2019年11月にMVNOへの音声サービスの卸料金の適正化を求めて申請した総務大臣裁定は、コロナ問題による緊急事態宣言の影響で遅れていますが、当社の主張が認められた場合には、当社はデータ通信と音声を含めた通信サービスにおいて、より競争力のあるサービスを提供することができるようになります。
(ⅱ)訪日旅行者向けの商品について
当社の訪日旅行者向けの商品は、政府のインバウンド推進政策を受け、順調な売上成長を続けてきましたが、コロナ問題による訪日旅行者の大幅な減少に連動し、第4四半期の売上は大きく減少しました。今後、コロナ問題が終息した後においても、訪日旅行者数および同商品の売上が従前のレベルに回復するには相当の時間を要することが想定されます。
(ⅲ)テレワーク向けの商品について
コロナ問題により、在宅勤務および在宅学習が急速に広がっています。当社はこれまでに培った安全な通信に関する特許技術や実績をもとに、政府、地方自治体、大学、一般企業向けに、2020年3月から、在宅勤務および在宅学習向けの通信サービスの提供を開始しました。コロナ問題が収束した後においても、在宅勤務および在宅学習はある程度定着することが想定されるため、当社は引き続きこの分野の開拓を進めてまいります。
FPoSの商用化に向けた取組み
当社は、スマートフォンで安全な金融取引を実現することを掲げ、FinTechプラットフォームである「FPoS」(Fintech Platform over SIM、エフポス)を開発し、商用化に向けた取り組みを進めています。
コロナ問題により、インターネットを活用する社会への転換が進み、スマートフォンで様々な取引が完結する社会を希求する動きは加速していきます。銀行取引、支払決済、送金など、多岐にわたる金融取引をスマートフォンで安全に行うことができれば、社会インフラは大きくアップグレードされます。
また、在宅勤務の阻害要因としてハンコ文化の弊害が話題になりますが、印鑑の持つ良さは残しつつも、必要な場合は契約や申請を電子的に完結できるようにする必要があります。FPoSは、実印と同様の効力がある電子署名をスマートフォンでできるようにするもので、FPoSの普及は、安全な金融取引を実現するのみならず、契約の電子締結を実現することになります。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は3,510百万円(前年同期は3,518百万円)、営業利益は、FPoSの商用化に向けた特許出願費用や認定取得のための弁護士費用等の増加により670百万円の損失(前年同期は502百万円の損失)、経常利益は、営業利益までの損失に加え、為替差損等を計上したことにより669百万円の損失(前年同期は495百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益までの損失に加え、特別損失に事業構造改善費用及び減損損失を計上したことにより840百万円の損失(前年同期は499百万円の損失)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は651百万円となり、前連結会計年度末に比べ8百万円増加しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは633百万円の支出(前連結会計年度は338百万円の支出)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失836百万円の計上によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは57百万円の支出(前連結会計年度は109百万円の支出)となりました。これは主に固定資産の取得によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは702百万円の収入(前連結会計年度は169百万円の収入)となりました。これは主に株式の発行による収入によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当社グループのサービス提供の実績は、販売実績とほぼ一致していますので、生産実績に関しては(d) 販売実績の項をご参照ください。
(b) 仕入実績
当社グループの当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
なお、セグメントについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)セグメント情報」をご参照ください。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 平成31年4月1日 至 令和2年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
日本事業(千円) |
1,834,986 |
97.7 |
|
海外事業(千円) |
115,771 |
140.4 |
|
合計(千円) |
1,950,757 |
99.5 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2.金額は仕入価額で表示しています。
(c) 受注実績
当社グループは 、受注から販売までの所要日数が短く常に受注残高は僅少であり、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しています。
(d) 販売実績
当社グループの販売実績は、出荷金額に基づいており、当連結会計年度販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 平成31年4月1日 至 令和2年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
日本事業(千円) |
3,335,893 |
99.0 |
|
海外事業(千円) |
198,019 |
100.5 |
|
合計(千円) |
3,533,913 |
99.0 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上である相手先は次のとおりです。
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前連結会計年度 (自 平成30年4月1日 至 平成31年3月31日) |
当連結会計年度 (自 平成31年4月1日 至 令和2年3月31日) |
||
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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株式会社U-NEXT |
1,028,073 |
28.8 |
552,081 |
15.6 |
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に基づいて作成しています。その作成は経営者による会計方針の選択及び適用、並びに資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績等を勘案して合理的な見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループが連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に次の会計方針に関する事項が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えます。
(ⅰ)収益の認識
当社グループは、次のサービスラインごとに売上の計上基準を分けています。
(a)プリペイド・サービス(bモバイル)及び機器向けサービス
当該期間の通信サービスを提供するもの(例:12ヶ月間使い放題のSIM)は当該期間にわたって売上高を按分して計上。
(b)月額課金サービス
移動体通信端末の売上は出荷基準
通話料及びその他付加価値サービスの売上は役務提供基準
(ⅱ)貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案して、回収不能見込額を計上しています。販売先の財務状況及び支払能力に重要な変動が生じた場合、これらの貸倒引当金の見積に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(ⅲ)たな卸資産の評価
当社グループは、総平均法に基づく原価法(貸借対照表価額については、収益性の低下による簿価切下げの方法)により評価しています。将来の市場環境に重要な変動が生じた場合、これらのたな卸資産の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(ⅳ)固定資産の減損
当社グループは、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能価額まで減損する会計処理を適用しています。経済環境の著しい悪化等により営業収益が大幅に低下する場合等には、減損損失が発生する可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(ⅰ)経営成績の分析
SIM事業の月額課金ビジネスは堅調に推移しており、おかわり課金方式(データ使用量に応じて課金する仕組み)のユーザー数は引き続き増加しています。また、2018年6月から提供を開始した改正割賦販売法(2018年6月施行)に準拠したクレジットカード決済のためのソリューション・サービスを含むモバイルソリューションも、引き続き成長しています。
しかしながら、2019年10月に改正電気通信事業法が施行されたことにより、携帯電話事業者の過度なキャッシュバック・キャンペーンが実質的に終了したことでキャッシュバックを目的とする超短期の契約者が減少したことによる影響及び新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う訪日外国人向けのプリペイド通信サービスの減収により、当連結会計年度の売上高は前期比0.2%減の3,510百万円(前連結会計年度は3,518百万円)となりました。
売上総利益は前期比2.9%減の998百万円となりました。月額課金ユーザー数増加に対応するべく帯域を増速した結果、売上原価は増加しましたが、固定費を適切にコントロールすることで売上総利益率は、前年度とほぼ同じ28.4%となりました。
販売費及び一般管理費はFPoSの商用化に向けた特許出願費用や認定取得のための弁護士費用等の増加により、前年比9.0%増の1,669百万円となり、その結果、営業損失は670百万円(前連結会計年度は502百万円の営業損失)となりました。
経常利益は、営業利益までの損失に加え、為替差損等を計上したことにより669百万円の損失(前年同期は495百万円の損失)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益までの損失に加え、特別損失に事業構造改善費用及び減損損失を計上したことにより840百万円の損失(前年同期は499百万円の損失)となりました。
(ⅱ)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきまして、事業上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
運転資金は基本的に内部資金より充当しています。また、開発費用や設備投資に係る長期に亘る資金需要に関しては、当事業年度において日本通信株式会社第4回新株予約権(第三者割当て)により739百万円の資金を調達しました。
(1)連結子会社間の合併
当社グループは、当連結会計年度において、連結子会社であるArxceo Corporationのネットワーク不正アクセス防御技術の開発を停止したことを受け、また、併せて米国事業の効率化を図るため、米国子会社4社(JCI US Inc.、Contour Networks Inc.、Computer and Communication Technologies Inc.及びArxceo Corporation)を米国子会社1社(JCI US Inc.)に統合する子会社再編を行いました。子会社再編の方法は、平成31年4月に、事業統括会社であるJCI US Inc.の商号をContour Inc.に、事業会社であるContour Networks Inc.の商号をJCI US Inc.にそれぞれ変更したうえで、令和元年6月までに、JCI US Inc.(旧 Contour Networks Inc.)が存続会社となり、他の3社(Contour Inc.(旧 JCI US Inc.)、Computer and Communication Technologies Inc.及びArxceo Corporation)を吸収合併したものです。これにより、米国事業はJCI US Inc.(旧 Contour Networks Inc.)に一本化され、同社が消滅会社3社の資産及び負債並びに契約上の地位等の一切の権利義務を承継し、引き続き米国における事業展開を推進します。
なお、当社グループが展開する事業に対する実質的な影響は認められず、また、当社が100%出資する連結子会社間の合併であり、重要性が高くないことから、合併の概要についての記載は省略します。
(2)当社グループが締結している経営上の重要な契約等
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会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
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日本通信㈱ |
株式会社インターネットイニシアティブ |
日本 |
広域複合ネットワークサービス契約 |
データセンターの運営・管理 |
平成14年2月4日から 平成15年2月3日まで (1年単位の自動更新) |
|
日本通信㈱ |
株式会社NTTドコモ |
日本 |
相互接続協定書 |
レイヤー2による3Gネットワークの相互接続に関する協定 |
契約期間の定めなし (締結日:平成21年3月13日) |
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JCI US Inc. (旧 Contour Networks Inc.) |
Sprint Spectrum L.P. |
米国 |
Private Label PCS Services Agreement |
レイヤー2接続に関する契約 |
開始日:平成22年3月17日 (その後は1年単位の自動更新) |
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日本通信㈱ |
株式会社NTTドコモ |
日本 |
卸電気通信役務の提供に関する契約書 |
3G音声卸サービスに関する契約 |
平成22年4月15日から 平成25年4月30日まで (3年単位の自動更新) |
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日本通信㈱ |
株式会社NTTドコモ |
日本 |
第3種Xiサービスの提供に関する契約書 |
LTE音声卸サービスに関する契約 |
平成25年1月16日から 第3種Xiサービスの 廃止がなされるまで |
|
JCI US Inc. (旧 Contour Networks Inc.) |
Verizon Wireless LLC |
米国 |
Telematics Agreement |
無線による音声通話サービス及びデータ通信サービスの仕入れ |
平成25年10月29日から 平成26年12月31日まで (1年単位の自動更新) |
|
日本通信㈱ |
VAIO株式会社 |
日本 |
VAIO商標ライセンス契約書 |
商標のライセンス |
平成26年12月24日から 平成27年12月23日まで (1年単位の自動更新) |
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日本通信㈱ |
Quanta Computer Inc. |
台湾 |
ORIGINAL DESIGN MANUFACTURER AGREEMENT |
通信端末の生産委託契約 |
平成27年3月17日から 令和2年3月16日まで (2年単位の自動更新) |
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日本通信㈱ |
ディーリンクジャパン株式会社 |
日本 |
基本取引契約書 |
通信端末の仕入れ |
平成28年2月5日から 平成29年2月4日まで (1年単位の自動更新) |
|
会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
|
日本通信㈱ |
株式会社U-NEXT |
日本 |
MVNE業務委託基本契約書 |
MVNE業務の受託契約 |
平成28年7月18日から 平成29年7月17日まで (1年単位の自動更新) |
|
日本通信㈱ |
ソフトバンク株式会社 |
日本 |
相互接続協定書 |
レイヤー2による3G及びLTEネットワークの相互接続に関する協定 |
契約期間の定めなし (締結日:平成29年1月31日) |
|
日本通信㈱ |
ソフトバンク株式会社 |
日本 |
L2接続に係る卸電気通信役務の基本契約 |
卸音声サービス及び卸SMSに関する契約 |
契約期間の定めなし (締結日:平成29年8月16日) |
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日本通信㈱ |
Taisys Technologies Co., Ltd |
台湾 |
Master Agreement for Purchase and Sale of Product and Service |
海外ローミングサービスの仕入れ |
平成30年1月19日から 令和2年1月18日まで (2年単位の自動更新) |
(注)上記契約の相手方名称は、すべて令和2年3月31日現在の商号によります。
また、本書提出日現在、上記契約は有効に更新されています。
当社グループは、携帯電話事業者の設備を借用して、他社には技術的に模倣困難なサービスを開発し、提供しています。従って、そうした当社独自のサービスが、携帯電話事業者のサービスに比べて如何に差別化されているかは極めて重要です。
当連結会計年度における研究開発費は
なお、このような研究開発活動で得られた技術及び知見は、日本事業、海外事業のセグメントを超えて共用されていますので、セグメントの内訳金額はありません。