文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループを取り巻く競争環境が大きく変わりつつある中、この変化をチャンスととらえ、加速するデジタル社会の進展とあらゆる空間におけるビジネスフィールドの拡張を見据え、当社グループの果たすべき役割を定めたグループミッションを掲げています。
Space for your Smile
不安が「安心」にかわる社会へ
不便が「快適」にかわる生活へ
好きが「大好き」にかわる人生へ
Space for your Smileには、私たちの目指す世界が描かれています。宇宙も、空も、海も、陸も、家族が集うリビングも、ひとりの自由な場所も、これらすべてのSpaceが笑顔で満たされるように。日常のちょっとした幸せから、まだ見ぬ未来の幸せまで、ひとりひとりの明日がよりよい日になっていく、そんな世界を創りつづけます。
このグループミッションを、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決するとともに企業価値の向上に努めてまいります。
宇宙関連市場においては、航空機向けの移動体衛星通信や、安全保障領域、防災・減災等での衛星データ利活用の需要が拡大しております。一方、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に開始され、価格及びサービスの競争が激化する等ビジネスの環境が大きく変化しております。
メディア関連市場においては、動画配信サービスとのコンテンツ及び顧客の獲得競争が激しくなる等厳しい市場環境が続いております。一方、新たな視聴デバイスの普及や、リアルイベントに加えオンラインでのライブイベント等のメディア消費の多様化により、市場機会が広がっております。
(3) 経営方針・経営戦略
中長期的な価値創造に向け、当社グループは「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」「人的資本強化」「経営基盤拡充」という4つの大きな柱から構成される経営戦略を掲げております。
2030年度に向けて、宇宙事業はスペースインテリジェンス事業を成長ドライバーとし、メディア事業は放送・配信事業、光アライアンス事業で利益水準を維持・拡大することにより、目指す姿を、当期純利益280億円以上へと引き上げました。
<既存事業の収益性強化・新領域事業の展開>
2025年度においては、「収益基盤強化」「事業の進化」「新規領域の開拓」の3つの軸で事業に取り組んでまいります。両事業のビジョン、取り組みは以下になります。
(宇宙事業)
40年にわたり培ってきた宇宙・衛星サービス分野での経験を活かし、全ての空間を対象とした革新的な通信ネットワーク及び地球規模のデータ収集ネットワークを構築し、超スマート社会の実現に貢献してまいります。
収益基盤強化:通信関連事業では、衛星フリートの最適化等を実行し、収益力を一層高めてまいります。また、2027年以降の次世代衛星投入を見据えた移動体向け・グローバル向け販売を拡充してまいります。
事業の進化:2025年2月に発表した、自社保有低軌道衛星コンステレーションの構築をはじめとして、静止軌道中心であったビジネスをMulti-Orbitへ拡大し、衛星オペレーターから宇宙ソリューションプロバイダーへの転換を進めてまいります。
新規領域の開拓:宇宙状況把握、光データリレー、スペースデブリ除去等、新たな技術を活用したサービスの実現を目指してまいります。
(メディア事業)
衛星放送・動画配信ネットワークを持つプレイヤーとしての確固たるポジションを維持しながら、人と人、企業、社会をつなぐエンタメプラットフォームとして多様で創造性豊かな社会の実現に貢献してまいります。
収益基盤強化:放送・配信事業では、多くの加入者の皆様に選ばれている主力商品と、優良顧客基盤の維持に注力し、収益力を一層高めてまいります。
事業の進化:光アライアンス事業の再送信サービスでは、アライアンス先との連携強化を通じて、接続世帯数を拡大してまいります。また、CATVパススルーサービスでは、CATV事業者の抱える課題へのソリューション対応力を高め、利用拡大を図ってまいります。
新規領域の開拓:アニメコンテンツIPビジネスのさらなる成長と周辺事業の戦略的拡大、コネクテッドTVサービスに挑戦してまいります。
<人的資本強化>
求める人財の採用・育成と各事業の注力分野への積極的な人的資本投下を図る「人財戦略」と人財が力を発揮するための「エンゲージメント強化」の2つを柱としております。 当社グループの人的資本の考え方や取り組みにつきましては、「第2 事業の状況」の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本・多様性」に記載しております。
<経営基盤拡充>
企業価値の向上に向けて、下図に示す取り組み等を継続的に実行し、連動させていくことで、資本コストと株価を意識した経営の実現を目指します。
(成長投資)更なる成長に向けた積極的な投資により、余剰資金を収益性の高い資産へ転換。
(資金調達)投資の実行等による資金需要に対して、外部借入等による調達を実行。
(株主還元)株主還元を拡充すべく、配当方針を、配当性向50%以上、1株当たり年間配当金の下限38円以
上に変更。詳細は、「第4 提出会社の状況」の「3 配当政策」に記載しております。
(役員報酬)株主と同じ目線での経営を一層促進すべく、役員報酬における株式報酬比率を引き上げ。
(投資管理)ハードルレート(7%)を意識した質の高い投資の実行と収支管理の徹底。

加えて、社会と会社の持続的な成長を目指し、サステナビリティ経営の深化を図ります。詳細につきましては、「第2 事業の状況」の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。その他、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメント、個人情報保護、情報セキュリティマネジメントの詳細につきましては、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」、「第4 提出会社の状況」の「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。
2025年度の連結業績目標は以下のとおりです。
営業収益 1,276億円
営業利益 308億円
経常利益 315億円
親会社株主に帰属する当期純利益 210億円
EBITDA 480億円
(注)EBITDAは、親会社株主に帰属する当期純利益、法人税等合計、支払利息、減価償却費、のれん償却額の合計として算定しております。
宇宙事業及びメディア事業において、近年のデジタル技術の急激な進化に伴い事業環境が変化していく中で、既存サービスの顧客維持や成長市場の需要の取り込みのための各種施策のほか、M&Aや事業提携にも積極的に取り組み、経営戦略に掲げる「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」を図ってまいります。
(宇宙事業)
宇宙事業においては世界規模で宇宙産業市場が拡大する一方、新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格開始される等、競争が激化しております。また、昨今の国際情勢を踏まえ、宇宙空間の重要性が高まっております。
このような競争環境下において、以下に示す取り組みを推進することにより事業領域を拡大し、宇宙事業の持続的な成長を目指してまいります。
① 通信関連事業
国内衛星通信分野においては、既存顧客に対する通信回線サービスの長期契約更新の提案に加え、衛星機器や当社グループの地上局設備を活用したサービス等を合わせて提供していくことで、事業基盤を強化してまいります。後継衛星についても、ビームや帯域に可変性を持たせたデジタルペイロードを採用する等、新しい技術を積極的に活用し、お客様の多様なニーズに柔軟に対応してまいります。
また、「宇宙基本計画」等に基づき、安全保障領域を含む政府主導のプロジェクトへの参画、政府系衛星の運用、観測・監視サービス等、40年にわたる衛星通信事業を通じて培ってきた知見を活かした新たなサービスの提供を進め、積極的に活動領域を拡げてまいります。
グローバル・モバイル分野においては、運用中のハイスループット衛星及び今後投入予定のフルデジタル衛星を活用し、航空機でのインターネット利用等の成長市場に向けた高速かつ大容量の通信サービスの提供を拡大することにより、競争力の強化と収益の拡大を目指してまいります。また、衛星カバレッジの拡大や、通信容量の増強に向けた海外事業者との連携やM&Aについても検討を進め、アジア・オセアニア地域を中心に海外における営業展開を強化してまいります。
更に、未来社会が求める様々な通信要件に応えるため、パートナー企業と連携しながら、静止衛星に非静止衛星等を加えた多層的な通信ネットワークの構築を目指してまいります。
② スペースインテリジェンス事業
低軌道衛星コンステレーションの構築及び保有を行い、また、地球観測衛星事業者等との業務提携を推進し、衛星画像販売サービスを強化することにより、収益の拡大を目指してまいります。また、パートナー企業とも連携しながら、地球観測衛星から得られる画像や位置情報等の様々なデータを活用したサービスの開発と販売活動を推進し、安全保障や防災・減災に加え、金融、保険、農林水産、物流等、新たな市場の開拓に取り組んでまいります。
③ 開拓領域
㈱Space Compassのほか、パートナー企業と連携しながら、HAPS(高高度プラットフォーム)を用いた通信ネットワーク及び光通信技術や宇宙コンピューティング技術を取り入れた宇宙空間でのICTインフラ基盤の構築を目指してまいります。衛星量子鍵配送、宇宙状況把握等、新たな技術を用いたサービスの事業化に取り組み、事業領域の更なる拡大を目指してまいります。
(メディア事業)
メディア事業においては、メディア消費の多様化や国内外の動画配信サービスとのコンテンツ獲得及び顧客獲得の競争激化等、市場環境が激しく変化しており、従来の延長線上にある各種施策だけでは放送サービスの加入者数の減少を免れない状況にあります。このような競争環境下において、以下の展開を着実に推進することにより、収益性の改善及び新たな収益の獲得を図ってまいります。
④ 放送・配信事業
加入基盤の維持・拡大には、魅力的かつ差別化されたコンテンツが揃っていることに加え、様々なコンテンツジャンル毎にファンの嗜好に合わせたファン・マーケティングを実践し、「スカパー!」ならではの顧客体験を継続して提供することが重要となってまいります。「スカパー!番組配信」や、グッズ販売やイベント等のリアルサービスを充実し、「スカパー!」に触れていただく機会を増やし、長期間にわたりサービスを楽しんでいただけるよう取り組んでまいります。
テレビ1台分の料金で3台まで追加料金なしで50チャンネルが見放題となる「スカパー!基本プラン」の契約件数は順調に増加し、2025年3月末時点で741,839件に達しました。家庭内の複数の部屋で視聴人数・視聴時間が増加することで、解約率の抑制や他商品の追加契約の促進につながっております。ファン・マーケティングによって興味を持たれた顧客にも「スカパー!基本プラン」をお勧めして、当社グループのサービスを長く楽しんでいただけるよう各種施策を検討・実行してまいります。
プロ野球においては、2025年シーズンもセ・パ全12球団公式戦を放送・配信いたします。「スカパー!プロ野球セットアプリ」の機能を更に充実させ、“プロ野球見るならスカパー!”として、プロ野球ファンからの期待に応えられるよう取り組んでまいります。その他のスポーツジャンルにおいても、引き続きファンの皆様の期待に応えられるよう、サービスの拡充に取り組んでまいります。
また、採算性や将来性の観点からこれまで実施していた施策を見直していくことで、コスト削減及び生産性の向上を図ってまいります。
更に、CTV領域の事業参入に向けた、放送サービス契約者及びパートナー企業の顧客向けの「スカパー!+ネットスティック」の先行提供に続き、CTVプラットフォームを活用した他社との連携の検証を進めてまいります。
また、放送・配信事業での収益拡大に向け、国内外の配信サービスを展開する事業者を支援する「メディアHUBクラウド」等、既存アセットを活用したメディアソリューションサービスの受注拡大に取り組んでまいります。
⑤ 光アライアンス事業
ご家庭内のインターネットブロードバンドサービスの中心となっている光回線において提供している地上デジタル・BSデジタル等の再送信サービスは、様々なケーブルテレビ事業者との協業も含め、引き続き提供エリアを拡大しながら拡販を図ってまいります。光アライアンス事業販路における顧客接点も強化し、新規の多チャンネル契約獲得やアップセル等、放送サービスの基盤維持に向けても取り組んでまいります。また、有料放送市場の維持・発展に向けて、ケーブルテレビ事業者向けパススルー方式による視聴鍵管理機能の提供に取り組んでまいります。
⑥ 開拓領域
アニメを中心とした映像コンテンツの企画、製作投資、販売、及び周辺事業の推進を通じて、グローバルにビジネスを展開する「グローバルIP事業」の更なる成長と周辺事業の戦略的拡大を進めてまいります。
また、新たな収益源の確立のため、メディア・エンターテインメント業界でのweb3関連事業やリアルイベント等を通じて、ファンの体験を拡張するべく様々な取り組みを推進してまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ共通
① サステナビリティへの考え方
当社グループはグループミッション「Space for your Smile」を持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会課題を解決するとともに、企業価値の向上を目的としてサステナビリティ経営を推進しております。すべてのSpaceが笑顔で満たされるためには、一人ひとりが関わる地球、社会、宇宙がよりよい世界であることが大切だと考え、SDGsやESGにも対応する9つの重要課題テーマについて事業活動を通じて取り組んでおります。その事業活動が当社だけでなく、気候変動・環境問題や人権尊重等、サプライチェーンやステークホルダーに与える影響に十分配慮して正しく行動するとともに、対話を通じて選ばれ続ける企業としての信頼を築くことにも努めております。
9つの重要課題テーマのもとには、2030年に目指すありたい姿と私たちのミッションと使命をより具体的に表現するマテリアリティをそれぞれ特定しており、事業推進による価値創造においてグループ共通の基軸となっております。
サステナビリティに関する具体的な進捗や各種データ等については、毎年発行する統合報告書や当社グループサステナビリティサイトにおいて開示しております。
・
https://www.skyperfectjsat.space/ir/library/jsat_report/(2025年9月末「統合報告書2025」(日本語版)発行予定)
・
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/
③ ガバナンス及びリスク管理
<ガバナンス>
当社グループは、サステナビリティ委員会(2024年度実績:5回開催、委員長は経営管理担当 久保勲、委員は中核事業会社であるスカパーJSAT㈱の各部門の執行役員含む複数名)を中心として、サステナビリティに関するガバナンス体制を構築しております。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する全体方針及び目標の策定、各種施策の実施状況の把握及び評価を行い、経営会議及び取締役会へ定期的に報告しております。サステナビリティ委員会からの報告を受け、取締役会による監督が適切に図られる体制をとっております。全体方針、及び目標策定等の重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て決議を行っております。
なお、サステナビリティのリスク及び機会については、マテリアリティ実現に向けた戦略・実行計画の策定を担う経営企画部を中心に、各関係組織が連携してそれぞれの洗い出し、評価、施策を検討し実行しております。気候変動を含む環境及び人権に関するマテリアリティの実現については、サステナビリティ委員会が実行を担っており各部門組織、グループ会社とも連携しながら、サステナビリティに関するガバナンスに取り組んでおります。
<サステナビリティに関するガバナンス体制>

サステナビリティに係る会議体開催状況(2024年度)
・取締役会
・サステナビリティ委員会
<リスク管理>
当社グループでは、リスクマネジメント委員会(原則半期ごと)にて、事業を取り巻く様々なリスクに対して識別、評価及び適切な管理を行い、リスクの未然防止・低減に取り組んでおります。具体的なリスクの内容、管理体制は
④ 戦略並びに指標及び目標
<戦略>
当社グループのサステナビリティ経営は、経営方針・経営戦略に連動し、グループとして取り組むべきSDGsやESGにも対応する9つの重要課題テーマを基軸に、社会課題を解決するとともに企業価値の向上を目指しております。重要課題テーマのもとに、2030年に目指すありたい姿及び実現に向けたアクションをより具体的に表現したマテリアリティを特定し、長期目標、及び年度ごとの短期目標・KPIを設定しております。
重要課題テーマとマテリアリティの特定プロセスでは、事業活動の現状把握と分析、SDGsの169ターゲットやISO26000といったグローバルな指針やガイドラインへの照会、取引先企業・団体へのヒアリングや、外部有識者とのダイアログ等を通じ、社内の全部門によるディスカッションを行っております。マテリアリティに対しては、当社グループの持続的な成長への寄与の観点と、ステークホルダーや社会からの要請を反映した視点の両評価軸で分析し、1年間のPDCAサイクルを通じて社内外の環境変化に応じて見直しを行っております。
9つの重要課題テーマとマテリアリティの特定プロセスの詳細については、サステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/
<指標及び目標>
9つの重要課題テーマとマテリアリティに関連する短期目標、2024年度実績の概要は下表のとおりです。2025年度の長期目標・KPIを含む全文と詳細はサステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/targets_kpis
重要課題テーマ「パートナーシップの促進」は、全てのマテリアリティに関わるため、個別の目標は設定しておりません。
マテリアリティについては、2024年度に目標の進捗や事業の状況の変化に合わせた見直し、2025年度以降のマテリアリティを23から20に集約いたしました。2025年度の重要課題テーマ及びマテリアリティと長期目標・短期目標・KPIの一覧は、サステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/targets_kpis/
各部門組織/グループ会社が各々の業務や事業を通じて、マテリアリティに係る目標・KPIを指標及び目標として達成に取り組む中、2024年度はサステナビリティ委員会及び経営企画部を中心に、「環境」「人的資本」「人権」「サプライヤー」の4つの重点領域において方針に基づいた取り組みを行いました。
これらの取り組みが社外から評価され、2024年度には 『FTSE Blossom Japan Index』 に初選定されたほか、『FTSE Blossom Japan Sector Relative Index』に2年連続選定、『MSCI ESGレーティング』において「AA」評価を獲得しております。また、環境分野での国際的な非営利団体CDPより「B」スコアに認定されています。
(2) 気候変動への取り組みとTCFD提言に基づく情報開示
① 気候変動への取り組み
当社グループは「脱炭素社会と循環型経済の実現に向けた環境への寄与」を重要課題テーマ(マテリアリティ)の1つとして、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでおります。
2025年度中に当社グループの事業活動における温室効果ガス(注1)をゼロにするカーボンニュートラル達成を掲げており、グループ会社の再生可能エネルギーへの切り替えを進めております。2024年度には拠点1か所が新たに実質再生可能エネルギー由来の電力に切り替わりました。最新の実質再生可能エネルギー比率はサステナビリティサイト「環境」で開示します(2025年9月予定)。引き続き再生可能エネルギーへの切り替えを推進するとともに、カーボンクレジットを活用し、2025年度中にカーボンニュートラルを達成する見込みです。
加えて、2050年までにサプライチェーン全体として温室効果ガス排出ゼロを目指しており、2024年度はスカパーJSAT㈱におけるScope 3を算出し、排出量を把握しました。2025年度にはグループ会社における排出量を把握するとともに、サプライチェーンを含む削減に向けた取り組みを検討してまいります。
また、2024年度に衛星通信サービス全体のカーボンフットプリントを算出し、サステナビリティサイトにて、当社サービスの利用に伴う排出量を開示しております。
気候変動への対応は、衛星通信・地球観測分野において大きなビジネス機会であると捉えております。人工衛星は太陽光発電を利用しており、衛星通信システムは、地上機器も含めた効率的な電力利用により地上回線に比べて約5分の1の消費電力で通信が可能になります(注2)。環境に配慮したサービスを提供することにより、当社グループのみならずお客様のCO2排出削減にも寄与してまいります。地球観測分野では、気候変動に関連する様々な地球データや地表画像を取得し、防災・減災に役立てることが可能です。将来的な宇宙データセンター事業の展開を目指しており、大量の消費電力を必要とする地上のデータセンターの課題に対し、宇宙の技術で貢献してまいります。
(注1)Scope 1(自らによる直接排出)及びScope 2(供給されたエネルギー利用に伴う間接排出)が対象
(注2)当社調べ
② TCFD提言に基づく情報開示
当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、TCFD提言に基づく当社グループの体制・取り組み等について積極的に開示することで、ステークホルダーの皆様との対話を進めております。TCFDの提言に従って気候変動が及ぼす事業への影響について、シナリオ分析に基づいたリスクと機会を評価し、その結果を経営施策に反映することにより戦略策定を進めております。
<ガバナンス>
当社グループは、気候関連のリスク及び機会について、サステナビリティ委員会の事務局である経営企画部を中心に、社内関連部署が連携してリスク及び機会の洗い出し、並びに評価等の詳細な検討を行っており、その検討結果につきましては、サステナビリティ委員会に報告され、同委員会において議論しております。重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会・経営会議へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。同委員会で議論された内容は、定期的に取締役会にて問題提起・報告がなされ、取締役会による監督が適切に図られる体制を取っております。
また、特定したリスクについては、取締役会で取締役の中から任命されたリスクマネジメント統括責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会へも報告され、議論しております。リスクマネジメント委員会は、気候関連リスクを含む、グループ全体のリスクを管理しております。なお、当社グループは気候変動のリスク及び機会の一部を重要課題テーマ及びマテリアリティとして定めており、その推進に当たっては、サステナビリティ委員会が実行しております。
<ガバナンス体制>

<戦略>
当社グループは、気候変動による世界的な平均気温の4℃上昇が社会に及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を1.5/2℃未満に抑制することに貢献していくことが重要であると考えております。1.5/2℃未満目標への対応力を強化すべく、気候関連のリスク・機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略の策定を進めるため、2021年度より当社グループを対象にTCFDが提言する気候変動のシナリオ分析と気候関連リスク・機会の選定、財務インパクトの評価を実施しております。
<シナリオ分析>
シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の社会経済シナリオ「共通社会経済経路(SSP、Shared Socioeconomic Pathways)」やIEA(国際エネルギー機関)の「World Energy Outlook(WEO)2022」等、専門機関が描く1.5/2℃未満と4℃のシナリオを使用しております。シナリオは以下をご参照下さい。
・ IEA Stated Policies Scenario (STEPS)
・ IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)
・ IPCC:AR6 SSP1-1.9, AR5 RCP2.6, SSP2 RCP4.5, SSP3 RCP8.5
■時間軸
当社グループでは、気候変動に関する戦略の策定にあたり時間軸を定めて検討しております。2030年以降を長期、1年未満を短期、その間を中期と設定し、時間軸を分けて分析を実施しております。
■対象事業・地域
分析対象事業は、全ての事業(宇宙事業・メディア事業)とし、対象地域はグローバルとしております。また、当社グループが保有する各拠点は、気候変動に伴い異常気象が増加した場合には、物理的リスクの顕在化による影響を受ける可能性があります。そのため、国内に保有する各拠点及び海外を含む事務所等、全13拠点の洪水リスクを算定いたしました。その結果、山口ネットワーク管制センターの周辺にて2030年時点で河川由来の洪水リスクが確認されました。一方で、山口ネットワーク管制センターは高台にあり、停電には非常用電源等の備えがあるため、重大な影響が発生する可能性は想定し難いと考えております。対応として事業継続計画(BCP)の強化を行っております。
■気候関連リスクに関する重要性評価
TCFDが提唱するシナリオ分析に基づき、気候関連リスクの特定をした上で、そのなかで重要度の高いリスク・機会によってもたらされる事業インパクトをシナリオごとに定量・定性評価しております。各リスク・機会の発現時期及びインパクトの多寡を勘案した上で財務計画・事業戦略への影響を踏まえて優先的に取り組む項目について、当社グループの対応状況の把握、対応策の検討、具体的アクションを経営層とも議論し検討を行っております。
■移行計画
スカパーJSATグループは、2025年度までにScope 1、2のカーボンニュートラル達成を目標として掲げ、グループの使用電力を実質再生可能エネルギーに切り替え、省エネ施策の拡大を通じて確実に温室効果ガス(GHG)排出削減に取り組んでまいります。またScope 3については、調達先に対してグリーン調達の浸透を中心にサプライヤーと協働してGHG削減を図ることで、2050年のScope 1~Scope 3全体のカーボンニュートラル達成に向けて取組んでまいります。なお、Scope 3の取り組みについては、今後多様化させていく必要があると認識しております。
更に、当社グループの強みである衛星関連サービスを積極的に展開していくことで、社会全体の脱炭素化への寄与と事業の成長の双方の実現を目指しております。

■1.5 /2℃未満/4℃シナリオにおける気候関連リスク・機会
当社グループでは2022年以降、継続的にシナリオ分析を行うことでリスク・機会を見直し、高度化を図っております。リスクについては事業や財務への影響は限定的であります。機会については当社グループ事業の財務インパクトの分析を行い、環境価値を定量化しております。抽出した機会については、事業戦略に気候変動観点を取り入れていくことを検討しております。
1.5 /2℃未満/4℃シナリオにおける気候関連リスク・機会評価結果について、重要度中以上の移行リスクと機会は以下のとおりです。なお重要度については緊急度と影響度によるマトリクス評価で低・中・高に分類しております。
気候関連リスク・機会分析結果の一覧はサステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/esg/tcfd/
<リスク管理>
当社では、当社グループにおける気候関連リスク及び機会を洗い出し評価するために、サステナビリティ委員会の事務局である経営企画部を中心に、グループ内関連部署が連携してシナリオ分析等を行い、気候関連リスク及び機会を識別・評価しております。更に、リスク及び機会におけるそれぞれの項目に対して対応策を検討しております。検討されたリスク及び機会の重要度評価につきましては、サステナビリティ委員会に報告され、議論しております。重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。
また、特定したリスクについては、取締役会で取締役の中から任命されたリスクマネジメント統括責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会へも報告され、議論しております。リスクマネジメント委員会は気候関連リスクを含む、グループ全体のリスクを管理しております。
■リスク評価項目及び気候変動リスクの管理プロセス
当社グループは、気候変動をはじめ、業務における潜在的なリスク評価を実施しております。リスク評価の基準を定めるに当たっては、関連法令、国際基準、類似ビジネスにおける過去の事故事例等も参照し、ビジネスの業種・業態や事業を行っている国・地域に応じて、それぞれの評価項目における潜在リスクの重要度と影響度を判断しております。
気候変動リスクについては、事業におけるリスクとの時間軸や性質の違いを踏まえて、サステナビリティ委員会にて対応・改善策・管理・評価等を行っております。リスクマネジメント委員会では、サステナビリティ委員会で行っている気候変動対応プロセスを確認し、全社的なリスク管理の網羅性を担保しております。
<指標と目標>
気候変動に関する指標と目標指標について、以下に示しております。
(a) 気候変動に関する指標と目標指標
(b)GHG排出量実績推移(単位:t-CO2)
(注1)2022年まではSJHグループ国内連結子会社の海外拠点、国外連結子会社を除く。
(注2)2024年度GHG排出量実績については、後日サステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_e/
(3) 人的資本・多様性
① 人的資本への考え方
当社グループは、社会と会社の持続的な成長を実現するために、人的資本が非常に重要であると考え、人材を人財と称しております。経営戦略である「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」を実現するために、「人的資本強化」は、「経営基盤拡充」とあわせて、企業価値向上に必要不可欠な基盤として取り組みを強化してまいります。重要課題テーマの一つに「多様な人財の活躍」を掲げ、マテリアリティとして「環境の変化に対応し、変革を推進しうる人財の確保・育成」、「DE&Iを実現し、一人ひとりの活躍を支える安心安全な組織づくり」、「健康経営の推進」をそれぞれ定め、長期・短期計画及び施策を策定し、実行してまいります。
② 戦略
「人的資本強化」の実現に向けては、求める人財の採用・育成や、各事業の注力分野への積極的な人的資本投下を図るための「人財戦略」と人財が力を発揮するための「エンゲージメント強化」の2つを柱としております。
下図に、当社グループにおける経営戦略と、中核事業会社であるスカパーJSAT㈱における人的資本強化に紐づいた取り組み方針「人財戦略」と「エンゲージメント強化」を示します。なお、以降、特段の説明がない限りはスカパーJSAT㈱について記載いたします。


<人財戦略>
人財戦略では、環境の変化に対応し、変革・成長・改善の原動力となる人財を求める人財像とし、「従業員一人ひとりの能力を引き出し、最大化して事業に貢献する」という人財育成方針のもと、求める人財を採用・育成すること、及び注力分野への積極的な配置やハイパフォーマーの早期抜擢等により、個々のパフォーマンスの最大化、生産性向上を図ります。2023年度に改定した人事制度では、従業員一人ひとりの能力開発支援と能力を発揮しうる環境提供を整え、従業員自らがキャリアビジョンに向けて主体的に能力開発を進めることが可能な仕組みに整えました。具体的には等級制度の見直しや、役割や等級を超えてアサインを可能とするジョブアサインによる登用を実施しております。2024年度にはタスクとスキルの可視化を進め、スキルマップの構築も行いました。今後は、自律的なスキル強化の他、最適な人財配置に繋げていく予定です。その他、キャリアセミナーやカフェテリア形式の研修の拡充、志願制のアセスメント実施により、自律的なキャリア形成に取り組みました。加えて、女性の管理職候補者が増加しております。
<エンゲージメント強化>
エンゲージメント強化では、人財戦略にて確保・育成した人財が最大限に力を発揮できるよう、「安心安全な組織づくり」を通じて、組織の活性化を目指します。安心安全な組織には、互いを尊重し、一人ひとりの活躍を支える心理的安全性の高い環境が必要であると考えております。誰もが働きやすい多様な働き方の実現に向けた社内環境の整備、女性・シニア世代の活躍の推進、キャリア採用の拡充等による多様性のある環境を実現し、国籍等の外面的な違いや価値観等の内面的な違いにかかわらず、個々の従業員の能力が公正に評価、処遇されている状態を目指しています。また、多様な働き方や価値観の理解を深めるため、上司と部下による1on1を通じた信頼関係の構築、組織診断結果に基づく組織単位の改善活動等を実施し、コミュニケーション活性化にも取り組んでいます。従業員一人ひとりが、健康でイキイキと働けるよう、健康経営方針改定し、推進体制も強化しました。2024年度には健康経営優良法人2025(大規模法人部門) の認定を取得しており、今後、健康経営を一層推進していきます。
(注1) 一般事業主行動計画(対象期間:2025年4月1日~2030年3月31日)
③ リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に示すリスクマネジメント委員会で取り組んでおります。主なリスクの概要及び対策は以下のとおりです。
④ 指標及び目標
人的資本に関する指標及び目標は、当社グループのマテリアリティに対する目標・KPIとして設定しております。人的資本は、9つの重要課題テーマのうち「⑧多様な人財の活躍」に該当し、その中で、人財戦略において示した重要課題「環境の変化に対応し、変革を推進しうる人財の確保・育成」、「DE&Iを実現し、一人ひとりの活躍を支える安心安全な組織づくり」、及び「健康経営の推進」の3つをマテリアリティとして特定しております。
各マテリアリティには長期目標として、2030年にありたい姿を定めております。また、2030年達成を目指す長期のKPIとして労働生産性(一人当たり利益)の向上、女性管理職比率を社員男女構成比相当にすること、エンゲージメント指標の継続的な向上、健康経営優良法人(ホワイト500)の認定取得を実現することを設定しております。
短期のKPIには 、スキルスコアの向上、管理職候補人財の増加、育児休業復職の100%維持、男性育児休業取得率の前年比増、エンゲージメント指数の前年比改善、法定健診受診率の向上、高ストレス者割合の前年比改善、健康経営度調査の偏差値向上を設定しております
人的資本に関する長期・短期の達成目標とKPIは、長期目標達成に向けた視点とともに、女性活躍推進法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法、労働安全衛生法、障害者雇用促進法等の法律やコーポレートガバナンス・コードも踏まえて設定し、公表しております。
(注1) 長期・短期達成目標/KPIの数値は、中核事業会社であるスカパーJSAT㈱のみ集計しております。
(注2) 付加価値/従業員数(派遣社員を含む)
付加価値は、経常利益、人件費、賃借料、減価償却費、金融費用、租税公課を合計して算出しております。
(注3) 該当年度内に育休開始した男性社員/該当年度内に配偶者出産した男性社員
(注4) 復職者数/年度中における育児休業終了者数
(注5) 当該年度末までに受診した社員/健診の対象者(役員、正社員、契約社員)
(注6) ストレスチェックを実施した社員/ストレスチェック対象者(正社員、契約社員)
(注7)エンゲージメント調査各設問における肯定的回答割合
管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異については、
その他の人的資本に関連する指標は、WEBサイトのサステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_s/
(1) リスクマネジメント体制について
当社は純粋持株会社であり、当社グループ全体のリスクマネジメントの推進と必要な情報の共有化を図るため、中核の事業会社であるスカパーJSAT㈱と共同で当社グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を定めています。その基本方針及び管理体制に基づき、リスクマネジメント統括責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会で、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止・リスクの低減に取り組んでいます。
具体的には、原則半期ごと、必要に応じて適宜、リスクマネジメントの対象とするリスク及びリスク評価の見直しを行い、各リスクの評価結果を踏まえ、当該リスクへの対策を策定しております。まず、リスク評価に関しては、各リスクの発生頻度と影響度の積をリスクレベルと定義し、当社グループの各リスクの発生頻度と影響度のスコアを分析して、一定以上のリスクレベルとなるものを重大リスク(優先的に対策を講じるべきリスク)として定めます。また、洗い出されたリスクの中で対策緊急度の高いリスクについては、リスクレベルにかかわらず重大リスクとして定めます。これらの重大リスクに対して、当該リスクの所管部署について重点施策を策定し、リスクマネジメント委員会にて協議・検討を行った上で、当社取締役会等に報告され、定期的に進捗がモニタリングされるシステムを構築しています。
スカパーJSAT㈱では、内部統制に係る様々な委員会を設けて日々活動を行っており、リスクマネジメント委員会においても必要に応じて情報共有を受けております。なお、気候変動関連のリスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、サステナビリティ委員会にて別途詳細に検討を行った結果とその内容の報告を受けて、リスクマネジメント委員会においても必要な協議を行っております。
また、実際にリスクが顕在化した場合は、BCP(事業継続計画)や情報セキュリティ、サイバーセキュリティ等、各リスクに対応したマニュアルに従って、迅速かつ適切に対応を行うことに加え、適宜リスクマネジメント委員会を招集する体制を整え、適切にグループ全体のリスクをコントロールしております。

以下に記載のリスクは、当社グループが当連結会計年度において、重大リスクと認識しているリスク項目につき、その対策と併せて記載するものです。ここで取り上げたリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅しているわけではありません。また、当社グループが認識していない未知のリスク、あるいは今後重要性が増して当社グループの事業、財政状態、経営成績等に重大な影響を及ぼすリスクが生じる可能性があります。なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(2) 当社グループが認識する重大リスクについて
<宇宙事業>
<メディア事業>
<全般>
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
なお、本文中の記載金額は、億円単位の表示は億円未満四捨五入とし、百万円単位の表示は百万円未満切捨てとしております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかに回復しております。
当社グループを取り巻く環境としては、宇宙関連市場においては、航空機向けの移動体衛星通信や、安全保障領域、防災・減災等での衛星データ利活用の需要が拡大しております。一方、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に開始され、価格及びサービスの競争が激化する等ビジネスの環境が大きく変化しております。
メディア関連市場においては、動画配信サービスとのコンテンツ及び顧客の獲得競争が激しくなる等厳しい市場環境が続いております。一方、新たな視聴デバイスの普及や、リアルイベントに加えオンラインでのライブイベント等のメディア消費の多様化により、市場機会が広がっております。
このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。
メディア事業における視聴料・業務手数料・基本料収入が23億円減少した一方で、宇宙事業におけるスペースインテリジェンス事業及び開拓領域の増収19億円やグローバル・モバイル分野の増収8億円等により営業収益、営業利益は増加いたしました。
また、持分法による投資損失が8億円増加した一方で、特別利益に投資有価証券及び子会社株式の売却益を合計6億円計上した他、投資有価証券評価損の計上があった前期と比較して特別損失が9億円減少したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益についても増益となりました。
なお、EBITDAは前期比6億円減少し、474億円となっております。
当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(経営成績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)
<宇宙事業>
(通信関連事業)
既存顧客との長期契約締結による国内衛星通信事業の基盤強化として、東日本高速道路㈱、中日本高速道路㈱、西日本高速道路㈱との間で、2024年4月に10年間の次期衛星通信サービス契約を締結いたしました。
将来のグローバル・モバイル分野を中心とする成長市場の通信需要に対応するため、Thales Alenia Space France SAS(以下「Thales社」)との間で、フルデジタル衛星(軌道上でカバーエリアや伝送容量を柔軟に変更することで極めて自由度の高い通信サービスを行う能力を有する大容量衛星)「JSAT-31」の調達契約を2024年5月に締結いたしました。また、Thales社との間で、日本エリア向けにサービスを提供する通信衛星の後継機となる「JSAT-32」の調達契約を2025年2月に締結いたしました。既存衛星に、これらの通信衛星及び現在調達中のフルデジタル衛星「Superbird-9」を加えた衛星フリートにより、革新的な次世代通信サービスを展開し、既存顧客の利用拡張や新規案件の獲得を目指してまいります。
新たな通信技術の確立に向けて、2024年11月に横浜衛星管制センター内に非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)の技術検証環境「Universal NTNイノベーションラボ」を構築いたしました。ユーザが意識することなく、いつでも、どこでも最適な通信経路にシームレスに自動で接続できる革新的なネットワークの実現を目指してまいります。
(スペースインテリジェンス事業)
衛星画像販売サービスの収益拡大に向けて、政府向け衛星画像提供に関わる新たな契約を締結いたしました。また、地球観測衛星データの安定供給能力の強化を目的とした自社保有低軌道衛星コンステレーションの構築に向けて、約230百万米ドルの投資を決定いたしました。本投資では、2025年2月に米国に設立した連結子会社JSAT Beyond Innovation LLCが、米国Planet Labs PBCから次世代光学観測衛星「Pelican」を10機調達し、保有する予定です。世界最高水準の解像度となる衛星画像の活用により、安全保障領域等の需要拡大に対応するとともに、防災・減災をはじめとする多様な需要を取り込み、事業を拡大してまいります。
(開拓領域)
新たな技術を用いたサービスの事業化について、以下の取り組みを実施いたしました。
日本電信電話㈱との合弁会社である㈱Space Compassは、㈱NTTドコモとともに、2024年5月にAirbus Defence and Space Limited及びAALTO HAPS Limitedとの資本業務提携に合意いたしました。この資本業務提携では、ケニア上空の高度約20kmの成層圏を飛行するHAPS(高高度プラットフォーム)を介した、スマートフォンへのデータ通信実証に成功いたしました。今後は、HAPSの早期商用化に向けた開発を推進し、宇宙RAN(Radio Access Network)事業のサービス実現を加速してまいります。更に、新明和工業㈱及び㈱三菱総合研究所とともに、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「経済安全保障重要技術育成プログラム」における「HAPSによるリモートセンシングを用いたMDA(海洋状況把握)システムと運航管理技術の開発・実証」を通じて、HAPSを活用したリモートセンシング実現に向けた取り組みも進めてまいります。
連結子会社㈱Orbital Lasersは、2024年8月に国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)と「高度計ライダー衛星 衛星システム/衛星運用システム概念設計」に関する研究開発契約を締結いたしました。JAXAが研究開発を進める高度計ライダー衛星に係る概念設計に取り組みつつ、将来の事業化の道筋を描いてまいります。
低軌道における衛星管制・地上局サービスの強化に向けて、超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューションを提供する㈱アークエッジ・スペースと、2025年2月に資本業務提携契約を締結いたしました。超小型衛星の管制業務や地上局相互利用、超小型衛星ミッションを活用した事業における連携を進めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度の宇宙事業の経営成績は次のとおりとなりました。
スペースインテリジェンス事業及び開拓領域の収益の増加19億円や、北米子会社の収益拡大及び円安の影響によるグローバル・モバイル分野の収益の増加8億円があった一方で、4K放送終了等による放送トラポン収入の減少28億円等により、営業収益は前期とほぼ同水準となりました。しかしながら、Horizons-4事業の開始等に伴う北米子会社の営業費用の増加6億円等により、営業利益は減益となりました。
また、持分法による投資損失の増加5億円や、投資有価証券売却益4億円等により、セグメント利益についても減益となりました。
<メディア事業>
(放送・配信事業)
スポーツコンテンツの取り組みとして、「プロ野球セット」で2024年シーズンプロ野球セ・パ12球団の公式戦全試合を生放送・配信するとともに、国内サッカー三大タイトルの1つであり、Jリーグの全60クラブが参戦する「JリーグYBCルヴァンカップ」の全試合、及び海外サッカー「ドイツ ブンデスリーガ」の全試合を放送・配信いたしました。
リアルサービスとして、「ドイツ ブンデスリーガ」からVfBシュトゥットガルトを招聘し、公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)及び㈱NTTドコモとの共催により、「Jリーグインターナショナルシリーズ2024 powered by docomo」を開催しました。また、web3サービス「スカパー!投票」での「サッカー試合結果予想企画」等、リアルとバーチャルを掛け合わせた施策にも取り組んでおります。
“これだけ観たい”に応えるPPV(ペイ・パー・ビュー)型のコンテンツ提供サービスとして、月額放送サービス未加入でも番組コンテンツ単位の視聴が可能となる「スカパー!Sチケット」を2024年12月より開始いたしました。
コネクテッドTV(以下「CTV」)領域での事業参入に向けて、「スカパー!+ネットスティック」(TVに接続するだけで、普段スマホで視聴しているコンテンツを簡単にテレビの大画面で楽しめたり、多彩な動画配信サービスを横断してコンテンツの視聴や検索ができる端末)を開発しており、2024年10月から放送サービス契約者及びパートナー企業の顧客を対象としたモニター向けサービスを提供しております。これまで放送・配信事業で培ってきた経験を活かし、「コンテンツとの出会い」や、「観たい」を追求したサービスを提供し、衛星放送プラットフォーマーから放送・配信を横断したハイブリッド型プラットフォーマーへの進化を目指してまいります。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でのビジネス拡大に向け、生成AIを活用したハイブリッド型コンタクトセンターの早期実現を推進するため、2025年1月に㈱ベルシステム24ホールディングスへ当社の完全子会社であった㈱スカパー・カスタマーリレーションズ株式の51%を売却し、同社を合弁会社といたしました。本合弁会社化で推進するDX化により、顧客に提供するサービス品質の更なる向上、「スカパー!」カスタマーセンターオペレーションの更なる効率化の促進及び放送サービスの収益性向上を目指してまいります。
(光アライアンス事業)
光ファイバーによる地上デジタル・BSデジタル等の再送信サービスでは、着実に提供エリア拡大を進めており、2025年3月末時点における提供エリアは37都道府県にわたり、提供可能世帯数は約4,364万世帯、接続世帯数は286万世帯に達しております。また、ケーブルテレビ事業者向けパススルー方式による視聴鍵管理機能の提供サービスは、2025年3月末時点で34局の導入が決定しております。
(開拓領域)
アニメを中心とした映像コンテンツの企画・製作投資・販売、及び周辺事業を推進すべく、2024年4月に連結子会社として㈱スカパー・ピクチャーズを設立いたしました。出資第1作目として、「チ。-地球の運動について-」をアニメ化し、2024年10月より放送・配信しております。
web3領域では、㈱Crypto Garageとクリエイター支援を目的として、web3関連の事業及びサービスの共創連携について、2024年12月に基本合意いたしました。クリエイター及び視聴者の行動変容を促す動機やその要因を検証するため、2025年1月より「クリエイター支援プラットフォーム」の実証実験を開始しております。
当連結会計年度における放送サービスの加入件数は次のとおりとなりました。
以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。
光アライアンス事業におけるFTTH収入の増加3億円がありましたが、放送・配信事業における視聴料・業務手数料・基本料収入が23億円減少したこと等により、営業収益は減少いたしました。一方で、営業費用における4K放送終了等による通信費の減少27億円、設備の運用効率向上に伴う減価償却費の削減13億円等により、営業利益は前期比19億円の増益となりました。
また、特別利益に子会社株式売却益3億円を計上した他、投資有価証券評価損の計上があった前期と比較して特別損失が9億円減少したこと等により、セグメント利益についても増益となりました。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。
当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注1) セグメント間取引については相殺消去しております。
(注2) 主な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
当連結会計年度末における資産合計は4,034億円となり、前連結会計年度末比(以下「前期比」)20億円減少いたしました。
流動資産は、衛星画像の仕入等により前渡金が22億円増加いたしましたが、Xバンド事業に関する債権回収等による売掛金の減少41億円等により、前期比27億円減少いたしました。
有形固定資産及び無形固定資産は、設備投資による増加244億円、減価償却費による減少183億円等により、前期比47億円増加いたしました。
投資その他の資産は、Horizons 3e事業に関する貸付金の回収等により、前期比40億円減少いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は1,192億円となり、前期比142億円減少いたしました。
主な減少はXバンド事業及びHorizons 3e事業に関する借入金の返済等による有利子負債の減少107億円、未払法人税等の減少14億円であります。
当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,842億円となり、前期比122億円増加いたしました。主な増加は親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加129億円であります。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益と減価償却費の合計462億円に加え、売上債権の減少41億円や、法人税等の支払88億円等により、424億円の収入(前期は424億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出240億円、㈱Space Compassへの追加出資等に係る関係会社株式の取得による支出73億円、Horizons 3e事業に関する貸付金の回収による収入47億円等により、258億円の支出(前期は154億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出110億円、配当金支払による支出62億円等により、167億円の支出(前期は211億円の支出)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比2億円増加し、1,145億円となりました。
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、グループミッション「Space for your Smile」を、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に、企業価値を向上させることを目指しております。このミッションの実現のため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、基礎収益力の向上に向けた成長分野への投資を推進することを財務戦略の基本方針としています。
(資金需要の主な内容及び資金調達)
当社グループにおける主な資金需要は、事業活動上の必要な運転資金、宇宙事業における通信衛星設備等の調達やメディア事業における放送・配信設備の拡充等における設備投資資金、戦略的なM&A資金等です。これらの資金需要は、主に営業キャッシュ・フローにより賄っておりますが、必要に応じて社債発行や借入による資金調達を行っております。また、機動的な資金調達を可能とすべく400億円の社債発行登録枠を確保しております。
なお当社グループでは、一定の手元流動性を維持する資金計画を作成・実行するとともに、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約(合計132億円)を締結して資金の流動性リスクに備えております。また、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内資金の活用により、資金効率の向上に努めております。
(借入金の状況と返済方針)
当連結会計年度末における借入金残高は452億円となっておりますが、このうちXバンド事業に関する金融機関からの借入金322億円については当該事業に係る防衛省に対する債権の回収により、Horizons 3e事業に関する金融機関からの借入金115億円については当該事業に係る営業キャッシュ・フローにより返済する予定としております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって当社グループが用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 貸倒引当金
売上債権や貸付金等の貸倒損失に備えるため、過去の債権回収実績や債務者の財政状態より算出した回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。このため、将来債務者の財政状態悪化により支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② 固定資産の減損
管理会計上の区分に基づいた各事業用資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナス又はマイナスの見込みの場合、当該資産グループの回収可能価額を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、その差額を減損損失として計上しております。このため、将来事業用資産グループの収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
③ 投資の減損
所有する有価証券、投資有価証券及び出資金の投資価値が著しく下落した場合、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。このため、将来の市況悪化や投資先の業績悪化により、現在の投資簿価に反映されていない損失が発生した場合や投資簿価の回収が困難となった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来回収が見込まれる一時差異等に係る税金の額を計上しておりますが、その回収可能性は将来の合理的な課税所得の見積りにより判断しております。このため、業績悪化による課税所得の見積りの変更等により回収可能性の見直しが必要となる場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
2024年4月1日以前に締結されたXバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業に関する借入契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は