第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更は次のとおりである。

 以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 事業等のリスク」の項目番号に対応している。「(1)福島第一原子力発電所事故」については、当事業年度の第2四半期報告書で東京電力改革・1F問題委員会(以下「東電委員会」)に関する追加の記載を行ったが、当四半期報告書において、東電委員会に関しては新たに見出しを設け、項目番号(14)として記載している。

 本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。

(1)福島第一原子力発電所事故

 福島第一原子力発電所では、安全確保を最優先に、「東京電力㈱福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(以下「中長期ロードマップ」)に沿って、国や関係機関の協力を得ながら廃止措置等に向けた取り組みを進めている。しかしながら、汚染水の処理・保管や地下水の流入抑制等の汚染水対策や、これまで経験のない技術的困難性を伴う燃料デブリの取り出し等、廃止措置等には多くの課題があること等から、中長期ロードマップ通りに取り組みが進まない可能性がある。その場合、当社グループの業績、財政状態及び事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 また、原子力事故の発生による格付の低下等により、資金調達力が低下していることから、当社グループの業績、財政状態及び事業運営は影響を受ける可能性がある。

(14)東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会)

 平成28年7月に当社が公表した「激変する環境下における経営方針」等を踏まえ、同年9月に経済産業省は東電委員会の設置を公表した。東電委員会は、同年10月から集中的に検討を行い、同年12月20日に東電改革の大きな方向を「東電改革提言」として取りまとめた。本提言では、廃炉、賠償、除染・中間貯蔵など福島第一原子力発電所事故に関連して確保すべき資金の金額や、これらの資金確保に向けて当社グループが実施すべき原子力事業や送配電事業の再編・統合等の経営改革の具体が示されており、東電委員会は、その内容を「新・総合特別事業計画」の改訂に反映するよう国に要請している。

 また、同時期に経済産業省が設置した「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(貫徹小委)において、原子力事故の賠償や廃炉費用に関する制度措置が議論されており、これを踏まえて、今後、法令の制定、改正がなされる予定である。

 当社は、今後、これらの状況を踏まえて「新・総合特別事業計画」の改訂を行うことから、当社グループの業績、財政状態及び事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

(参考)[東電改革提言](東電改革提言は、経済産業省のホームページ上で閲覧することができる)

はじめに

2011年、福島原発事故発生直後の対応

・2011年、東京電力は国の一時的支援を得て、福島への責任を果たすためにその存続が許された。

・当時も、東京電力を破たん処理すべしという議論もあったが、賠償や廃炉事業、そして電力の安定供給が損なわれることのないよう、あくまで福島の責任は東京電力が負うことを基本とし、国は原子力損害賠償支援機構(現原子力損害賠償・廃炉等支援機構。以下、「原賠機構」という。)を設立、東京電力に出資(1兆円)と賠償の一時的援助(5兆円)を行うこととした。

・国は、実施した一時的支援をある程度時間をかけて回収する中で、東京電力は廃炉や負担金の納付について、自らの経営改革で資金を捻出し、その責任を全うすることとなった。当時、東京電力は、経営陣を交代し、給与をカットし、不要な資産を売却するなどの事業変革を実行した。

 

2013年、福島原発の事故収束を進める中で国と東京電力の役割を再定義

・2013年の段階で、除染が本格化し、中間貯蔵事業も具体化、廃炉事業も抜本的な汚染水対策を講ずることとした。賠償・除染に関する原賠機構による一時的支援総額は5兆円から9兆円に拡大し、廃炉・汚染水対策に要する資金見込みも1兆円から2兆円にその規模が拡大した。

・国は、福島復興に国も前面に立つとの方針を掲げ、中間貯蔵施設や除染、廃炉に関連した予算を措置し、また、原賠機構が保有する東京電力株式の売却益は、除染に関する国からの一時的支援の回収に充当することを決定した。

・これに呼応し、東京電力は、経営改革を加速、2014年1月にはホールディング制への移行を表明、同年10月には、燃料・火力事業の再編・統合について中部電力との協議を開始、2015年4月にはJERAが誕生し、2016年4月にホールディング制に移行した。

 

 そして今回、新たな局面に

・そして今回、震災から6年が経過しようとする中、廃炉事業は、燃料デブリの取り出しという新工程を視野にいれた検討に移る。このためには、従来の2兆円とは別に、追加の資金を準備するステージが到来する。賠償や除染に関しては、営業損害や風評被害の継続、作業費用の増大などを背景に、確保すべき資金が増大している。

・2016年4月から全面自由化が始まる中で、東京電力は電力市場の構造的な変化に直面しており、現状のままでは福島復興や事故収束への歩みが滞りかねない状況にある。

・こうした状況の中、本委員会は、福島の被災者の方々が安心し、国民が納得し、現場が気概を持って働けるような東電改革を具体化するよう、経済産業大臣から検討を依頼された。

・これを受け、本委員会は、本年10月から集中して検討し、東電改革の大きな方向に関して、その結果を以下の通りとりまとめたので、ここに報告する。

 

1.福島の長期展望と電力市場の構造変化を見据えた持続可能な仕組みの構築

~国の事故対応制度の整備、東京電力の抜本改革

(1)福島事業を長い目で展望した上での必要な資金規模

① 廃炉、その進展

・東京電力福島第一原子力発電所(以下、「1F」という。)の廃炉に関しては、1Fの環境改善などの準備工程を終えて、燃料デブリ取り出しという未踏の工程に入る。現状、東京電力は、廃炉に要する資金として見込んだ2兆円を事故収束対応に充当しているが、有識者へのヒアリングにより得られた見解の一例に基づけば、燃料デブリ工程を実行する過程で、追加で最大6兆円程度の資金が必要であり、合計すれば最大8兆円程度の資金を要する状況となっている。[参考1]

・廃炉に要する資金は、これまで通り、国民負担増や国から東京電力への出資を拡大することで対処するのではなく、東京電力が責任を持って対処する。東京電力は、30年程度を要する廃炉事業を自らの経営改革によりやり遂げるため、収益力を上げ、年間平均3,000億円程度の資金を準備する。国は、事故炉廃炉事業を適正かつ着実に実施するための事故炉廃炉管理型積立金制度の創設等を行うとともに、規制分野である送配電事業の合理化分を優先的に充当する。

・なお、燃料デブリの取り出しは、新たな技術的チャレンジであり、東京電力は、原賠機構の監督・支援の下、世界の叡智を結集してイノベーションを進め、事業の効率化、そして工期の短縮を目指す。

 

② 賠償、避難指示解除と自立支援への局面に

・賠償に関しては、営業損害や風評被害が続く中で、現在の5.4兆円から約8兆円の支援枠が必要となっている。

・賠償に要する資金は、これまで通り、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下、「原賠機構法」という。)に基づき、東京電力と原子力事業者である大手電力会社が納付する負担金によって、ある程度の時間をかけて充当していく。東京電力は、30年程度を要する賠償を自らの経営改革によりやり遂げるため、収益力を上げ、年間平均2,000億円程度の資金を準備する。

・ただし、今回、国は、国民全体で福島を支える、需要家間の公平性を確保するといった観点から、原発事故への対応に関する制度不備を反省しつつ、福島原発事故の前には確保されていなかった賠償の備え不足についてのみ、託送制度を活用して広く新電力の需要家も含めて負担を求めることとしている。国は、この託送制度を活用して回収する金額について、その上限を閣議決定で定め(2.4兆円。新電力のシェア10%を前提とすれば新電力負担の上限は総額で2,400億円、年間で60億円、標準家庭で月額18円)、消費者への電気料金明細票等でこの額を明示し、かつ、消費者庁からの意見も聞き、独立した電力・ガス取引監視等委員会による第三者的チェックを受け、決定するとしている。また、送配電部門の合理化などにより総じて託送料金の値上げを回避し、加えて、大手電力会社から新電力への安価な電力を提供する仕組み(ベースロード電源市場)を整備し、新電力の競争力強化を支援するとしている。(新電力の販売電力量の3割について調達コストがkWh当たり1円下がった場合、年間250億円程度削減のコスト削減効果)。

・本委員会は、賠償については、原賠機構法に基づいて原子力事業者による負担金で対応するということを基本としつつ、新電力及びその消費者に関しては、上限の設定、透明性の確保、新電力の競争力強化措置を講じることが、本委員会が提示する東電改革の全体に関する国民の納得感を得るためにも極めて重要であると考える。国が、わかりやすい説明を徹底し、新電力やその消費者に理解を求めていくことを、強く要請する。

・なお、国は、避難指示が解除され復興が進展していく中で、福島相双復興官民合同チームの法定化などを始め、被災者や被災事業者の自立支援策を充実していくことで、対処していく。

 

③ 除染・中間貯蔵、復興事業とともに

・除染・中間貯蔵に関しては、現在3.6兆円の支援枠を見込んでいるが、事業に要する費用の上振れなどにより、約6兆円の支援枠が必要となっている。

・除染・中間貯蔵に要する資金に関しても、これまで通り、原賠機構が保有する東京電力株式の売却益の拡大や国の予算で対応する。

・なお、除染や中間貯蔵の事業実施に当たっては、福島復興を加速する観点から、全体工程の効率化・加速化の取組に、国は協力して連絡調整等の態勢を整える。

 

(2)新たな局面に対応するための東京電力と国の役割分担、東電改革の必要性

・廃炉、賠償、除染・中間貯蔵等の福島原発事故に関連して確保すべき資金の総額は、約22兆円と見込まれる。

・今回を契機に、以下のように、国の事故対応制度と事故事業者の抜本的改革で対処するという原則を確立し、対処する。

・国の事故対応制度は、①一時的支援と改革実現のモニタリング、②福島復興加速化や賠償等の必要な事業の実施、③事故炉廃炉のための制度(管理型積立金制度及び送配電合理化分の事故炉廃炉への充当制度)の整備の3点となる。今回は、国民全体で福島を支える観点から、原発事故への対応に関する制度不備を反省しつつ、福島原発事故の前には確保されていなかった賠償の備え不足についてのみ、広く需要家に負担を求めることとしたが、今後は、基本的にこの3点で対処する。[参考2]

・この事故対応制度の中で、事故事業者である東京電力が主たる対応を果たす原則は変わらず、総額約22兆円のうち、東京電力が捻出する資金は約16兆円と試算される。東京電力は、数十年単位で対処する賠償・廃炉については、その所要資金として年間5,000億円規模の資金を確保し、除染に関しては、より長い時間軸の中で、企業価値向上による株式売却益4兆円相当を実現する経営改革を実現することが必須となる。[参考3]

・今後、東京電力は、賠償・廃炉に係る資金確保や経営改革による収益拡大に注力していく必要があり、緊張感を持ってこれらを実現していくべきであるが、その実現のためには円滑な資金調達などが求められることも想定される。かかる場合には、例えば関係金融機関が資金調達面で必要に応じて協力するなど、東京電力の各種のステークホルダーが何らかの形で支援に参画することも期待したい。

・また、今回の措置を消費者の視点で整理すれば、

1)1F廃炉は東京電力の改革努力で対応し、

2)賠償は、原発事故への対応に関する制度不備を反省しつつ、託送制度を活用した備え不足分の回収はするものの、託送料金の合理化等を同時に実施し、新電力への安価な電力提供を行う、

3)除染・中間貯蔵は、東京電力株式の売却益の拡大と国の予算措置によって対応する、

ことから、今回の措置により、総じて、電力料金は値上げとはならないようにする。また、本提言で提示する東電改革は、福島への責任を果たすために、今までにないコスト合理化や収益拡大を目指すものである。東京電力の試みが契機となり、これが電力産業全体に広がることで、さらに大きな消費者利益が実現する。東電改革の実現が福島の安定と国民利益の拡大を同時に達成する鍵となる。[参考4]

 

以下、こうした問題意識も踏まえて、電力市場の環境変化を明らかにし(「2.電力市場を巡る環境変化」)、東電改革の内容を明示し(「3.東電改革、2011年の緊急体制から本格的体制を築く」)、かつ、これを実行に移すための方策を提示する(「4.実行体制を早期に確立、早期着手を」)。

 

2.電力市場を巡る環境変化

(1)国内電力市場の成熟と全面自由化の開始

・福島事業の規模拡大の一方で、電力産業を取り巻く環境は大きく変化している。

・一つは電力自由化の進展である。電力自由化の下、異業種が参入し、競争も進む。電力技術の側面でも、発電技術の変化やデジタル化など、今まで以上のスピードで現状を破壊する可能性を秘めた動きが見え始めている。設備・研究開発・人材への投資を国内市場縮小下で実行しない限り、東京電力は競争力を維持できず収益力も減退、福島への責任を果たすことはできない。

・福島原発事故を契機に、原子力への安全要請は益々高まっている。他方で、原発依存度が低減する中で、コストを抑制しながらも、安全・防災投資や人材・技術を維持するためには、個社を超えた連携が不可欠となる。

・送配電事業も、国内需要が構造的に減少する中で、再生可能エネルギーの導入拡大やIT技術革新の進展を背景として、ネットワーク投資を拡大せねばならない。需要減少下で、託送コストを抑えつつ、ネットワーク投資を拡充し、また、デジタル化対応をしていくには、やはり個社での対応のみでは展望は開けない。

 

(2)成長する世界市場を視野に入れた改革が必須

・海外に目を転じれば、世界のエネルギー需要や電力需要は着実に増加する。経済的で安全、高品質の電気を供給できる電力産業は、世界的にみれば成長産業である。例えば、欧州の電力会社は、自国マーケットを手堅く押さえ、スケールメリットを活かして新興国等、世界市場で収益を上げるというビジネスモデルを採用している。この結果、公益事業者であった電力会社も、グローバル・プレーヤーとして、競争力ある成長企業へと躍進している。[参考5]

・燃料・火力事業で先行して共同事業体を設立したJERAの完全統合は、必要不可欠である。これが実現すれば、世界最大級のLNG調達会社・火力発電会社となる。海外市場での事業展開も十分可能なグローバル・プレーヤーになる可能性がある。

・送配電事業も原子力事業も、再編・統合を目指すことにより事業規模を拡大すれば、これを基礎に海外市場への展開が可能になる潜在力がある。

・東京電力は、成長する世界のエネルギー市場への展開を狙うことで、福島への責任を安定的、長期的に果たすことが可能になる。

 

(3)エネルギーの大きな潮流変化をとらえた長期的戦略の必要性

・長期の時間軸に立てば、電力産業を取り囲むエネルギーの潮流は大きく変わる。

・2030年を見据えたエネルギー政策の基本方針であるエネルギー基本計画は、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限導入、火力発電の高効率化、安全性の確認された原子力発電所の再稼働を掲げているが、現状から見れば、大きなエネルギー構成の変革を要請していることにほかならない。

・2050年にまで視野を広げれば、世界が参加するパリ協定により、我が国は地球温暖化ガス80%削減を目指し、多くの国も同様の抜本的な削減目標を掲げている。このことは、既存のエネルギー技術の改良ではなく、より安全な原子力技術を活用しながら、革新的な技術開発を実現できたエネルギー事業者が電力の安定を担っていくことを意味する。こうした大きな流れの中で、非連続な技術革新とこれを可能とする異業種との連携を、今から実行する企業に東京電力は変わらねばならない。

 

3.東電改革、2011年の緊急体制から本格的体制を築く

~課題解決に向けた共同事業体を設立、再編・統合を目指す

(1)経済事業

~他電力と共同事業体を設け、再編・統合を目指しグローバル企業へ

・国内市場が構造的に縮小する中で、ローカル市場を前提とした発送電一貫の今までの体制での対応には限界がある。先行する燃料・火力分野の共同事業体であるJERAの事例に倣い、送配電事業・原子力事業についても、課題解決に向けた共同事業体を他の電力会社の信頼と協力を得て早期に設立し、再編・統合を目指す。再編・統合を目指す以上は、各事業の性格に応じて時間軸を設定し、ステップ・バイ・ステップで進める。

・東京電力の経済事業は、電力の低廉かつ安定的な供給を実現しつつ、世界市場を狙うグローバル企業を目指す。こうした試みは、電力産業が共通して抱える危機感を克服する上での先駆的な取組である。東京電力の取組が電力産業全体に広がれば、大きな国民利益につながる。

・経済事業の理念は、「世界市場で勝ち抜くことで、福島への責任を果たす」とする。

 

[共同事業体を設けて解決すべき課題例]

燃料・火力 ・共同調達による燃料価格の抑制

・価格変動の激しい資源の市場化への対応

・海外展開(上流権益獲得、発電ビジネスの拡大)

・CO2抑制技術の確立

 

小売    ・異業種連携による需要減少下での事業領域の拡大

・膨大な顧客データの活用

・デジタル化に伴う新ビジネスの展開

 

送配電   ・広域運用による調整力効率化

・連系線投資(再生可能エネルギーの導入拡大に対応した増強)

・国際連系線調査・検討

・経年設備の更新、保守高度化、設備スリム化との両立

・共同調達によるコスト効率化

・海外展開

・配電事業のデジタル化とビジネスモデルの転換

(IoTやAIを使った分散型グリッド等)

 

原子力   ・人材や技術の維持

・安全投資や防災対応の共同化

・共同調達によるコスト効率化

・共同研究開発

・海外展開

・廃炉事業

 

(2)原子力事業

~発災事業者としての自覚の下、地元本位と安全最優先で信頼回復を

・原子力発電所の再稼働は、確実に収益の拡大をもたらし、福島事業の安定にも貢献する。

・しかしながら、東京電力は原発事故を起こした発災事業者である。単に規制基準をクリアするだけでは国民からの理解は到底得られない。福島原発事故の検証に基づき、自主的なバックフィット(最新知見の取り入れ)に対する躊躇やメルトダウン隠蔽問題を生んだ過去の企業文化と決別し、現状に満足せず、外部からの意見に耳を傾け、安全性を絶えず問い続ける企業文化、責任感を確立する必要がある。

・このため、先進的な他の電力会社の協力を躊躇なく要請し、海外の先進的原子力事業者のチェックも受け入れ、自社技術力の強化等により、安全性向上と効率化を実現する。地元との対話を重ね、地元本位・安全最優先の事業運営体制を確立する。地元本位確立のための行動計画を早急に地元に提示し、真摯な対話を開始する。こうした過程で根本的な改革を実行、原子力発電所の再稼働を実現する。

・また、東京電力の原子力事業も重要な経済事業であり、安全最優先での信頼回復を前提にすれば、電力コストの低減、エネルギー安全保障や地球温暖化対策の確保にも貢献する。原発依存度低減の中で、安全防災を支える技術と人材を確保し、継続的な安全投資を行いつつ、海外市場や廃炉ビジネスへの展開を図るためには個社での努力では限界がある。こうした共通課題の解決に向けて、他の原子力事業者との共同事業体を設け、再編・統合を目指す。これにより、企業価値向上に貢献する。

・東京電力の原子力事業と福島事業は多くの分野において技術・人材を共有する。新たな事業形態を実現していく中でも、人的一体性を確保することは重要である。

・原子力事業の理念は、「地元本位、安全最優先」とする。

 

(3)福島事業

~まずは廃炉・賠償の貫徹、そして国際的なテクノロジー企業へ

・東京電力存続の原点は福島事業にある。廃炉事業は、長期間、相当な規模の資金を投入して行う国家的事業であり、福島復興事業は、東京電力が国と共同で行うべき責任事業である。

・廃炉事業は、国と原賠機構が関与することで、東京電力が、無人ロボット開発技術等も含む幅広い技術について、グローバルレベルのエンジニアリング能力を強化し、事業を貫徹する。廃炉事業の過程で生まれる技術は、内外の廃炉事業を支える可能性がある。福島復興事業を展開する過程で、多様な産業や国際的なプロジェクトの誘致も進む。こうした環境の中で、福島事業は国際的なテクノロジー企業(福島での国際コンソーシアム)を目指す。

・廃炉事業は、長期にわたり、かつ、東京電力の1Fに多様な主体(他の電力会社はもとより、メーカー、ゼネコン、エンジニアリング企業、さらには内外の研究機関)が参画・協力して実行する事業である。多様な主体が関わり、数多くの工程がある廃炉事業を実行する上で、リスクを下げ、リソースを最適化し、工程通りに仕事を仕上げていくことは容易ではない。リスク・リソース・時間の3つの要素を最適化する事業体制を、東京電力は原賠機構の監督と支援の下に築き上げる。その際、関係子会社や協力会社との関係を抜本的に見直し、現場技術者・管理者の訓練・育成を通じて、強い技術的基礎を確立する。

・福島事業の理念は、「福島事業が東京電力存続の原点、国と協力しながら世界最先端の技術を集積、福島への責任を果たす」とする。

 

(4)経済事業と福島事業とのブリッジ

・東京電力存続の原点である福島事業を支えるためには、まずは廃炉と賠償のため当面の資金を確保することが重要である。これは、主として送配電事業や原子力事業が担う。除染のための企業価値向上は、腰を据えてより長い時間軸の中で対応する。再編・統合が先行する燃料・火力事業、異業種連携に着手した小売事業が貢献する。加えて、送配電事業や原子力事業も、海外展開なども視野に入れ、将来的な企業価値向上に貢献する。[参考6]

・JERAの先行例を参考に、共同事業体を設立する過程で、経済事業による福島事業への貢献ルール(資金面、人材面)を開発する。

・経済事業においては「稼ぐことが福島事業への貢献」、福島事業においては「福島事業が東京電力存続の原点」。この考え方をトップの姿勢で社内に徹底する。

・なお、上記(3)の福島事業における国の参画と制度支援は、人材の士気、福島事業の安定性を生み、再編パートナーの安心にもつながる。

 

4.実行体制を早期に確立、早期着手を

(1)東京電力は、次世代への早期権限移譲を実現[参考7]

・福島事業も、原子力事業も、経済事業も、かつてない大改革と言える。

・特に原子力事業、経済事業は、過去と決別した新たな発想が必要である。また、改革初期は相当なエネルギーを要し、改革が実現するまでには相当な時間を要する。このため、腰を据えてより長い時間軸の中で粘り強く取り組むことができる体制が必要であり、その担い手は次代を担う世代が中心となる。こうした世代に対する思い切った権限移譲を実現し、過去の発想としがらみにとらわれず、大胆に実行できる体制を早急に構築し、非連続の東電改革を早期に着手することを求める。

・特に経済事業を束ねるホールディングスや、新たな試みを行う原子力事業と送配電事業、改革着手済みの燃料・火力事業や小売事業については、これら事業の担い手として、次世代人材を思い切って登用すべきである。若手の採用や外部人材の招請を通じて、その刺激の中で、「福島事業が東京電力存続の原点、経済事業こそ福島への責任の基礎」という全く新しい東電文化を生むことが必要である。

・東京電力は、JERAの先行例を参考に、再編・統合を目指した共同事業体の提案を受け付ける公正なプロセスを開始する。このプロセスを通じて、東京電力が、他の電力会社から事業に対等に取り組みうるパートナーであるとの信頼を勝ち得るよう努力することで、東電改革を電力産業の構造変化につなげていく。

・これらの改革を進めるため、本委員会は、東京電力において、指名委員会等設置会社のガバナンスの下、社外取締役を中心とした取締役会と執行陣が密接に連携して改革初動を全うすることを期待する。

 

(2)国は、改革実行という視点で関与し、福島事業の安定と経済事業の早期自立を促す

・国は、東京電力の筆頭株主であり、福島への責任を果たすための改革を後押しする立場にある。このため、東電改革の基本(経済事業はグローバル企業へ、原子力事業は地元本位と安全最優先の事業体へ、福島事業は国の協力を得て世界的なテクノロジー企業へ)を実行できる東京電力の経営体制を国は求めるべきである。国は、この視点に合致する限り、外部の人材が過半を占める指名委員会等設置会社の仕組みを最大限活用し、東京電力の意思決定を尊重する。

・国は、福島事業の安定と、経済事業の早期自立を求める。[参考8]

・国は、2016年度末に予定されている経営評価も経て、2019年度に国の関与の基本的な考え方についてレビューを行い、判断する。それまでに、経済事業、原子力事業、福島事業の各々の改革の進捗を確認しながら、自立の可能性を見極める。

・また、東京電力による一連の改革の取組を確実なものとするため、東京電力が、経営レベル、事業会社レベル、事業所レベルの各層において、ベンチマークを達成目標として設定し、厳格に進捗管理を行い、その評価結果を責任とリンクさせることを要請する。国は、その進捗を上記レビューにおいて確認する。[参考9]

 

(3)東電委員会の今後の対応

・本委員会は、本提言が、国が認定する東京電力の新・総合特別事業計画の改訂に反映され、東京電力の手で実行に移されるよう、国に要請する。

・また、これから半年は改革初動の時期であり、今後の改革の成否を左右する。福島事業、経済事業、原子力事業とも、次世代を中核とした新たな改革実行の体制が立ち上がり、他の電力会社などと真剣な協議も始まる極めて重要な時期となる。

・そこで、本委員会は、国から要請を受けて、新・総合特別事業計画の改訂内容と東電改革の実行体制が、この提言内容に沿ったものであるかどうかを確認する。

 

おわりに

(1)東京電力に対する要請

・今回提示する東電改革は、経済産業大臣の要請に応じてとりまとめたが、その内容は、東京電力に対する要請にほかならない。

・先にも述べたとおり、東京電力は、福島への責任と、電力の低廉かつ安定的な供給を果たすために存続を許されている。この原点に今一度立ち帰り、福島の責任を全うするために自ら何をなすべきか。他の電力会社や全国の消費者からの協力を得る中で、こうした協力に対してどう応えていくべきなのか。この問いかけに対して、東京電力が、自ら回答を見出し、主体的に行動する。重要なことは、ここにあると本委員会は考える。

・本委員会は、検討過程で、東京電力自身が改革への意思を表明し、その具体案を提示した点を評価する。提言内容を、東京電力自身の言葉で表明し、東京電力が一丸となって、福島のために、そして国民還元実現のために、早期に行動を起こすことを期待する。

 

(2)国に対する要請

・本委員会は、国に対して、福島への責任を果たすための改革を確実に実行に移すよう、東京電力に働きかけることを要請する。

・また、信頼回復の上での原子力発電所の再稼動が重要な課題であることに鑑み、国としても、国民理解の向上に向けて、主体的に取り組むことを求める。

・一方で、東電改革は、原発事故対応制度や安全確保体制の確立の一翼を担う。福島の復興の基礎となる。国内から世界へと電力産業がその構造を大きく変えていくきっかけともなる。これが実現する過程で、国民利益の拡大も可能となる。

・したがって、本委員会は、改革提案を契機に、国が、東電改革を、事故対応制度の整備につなげ、福島復興につなげ、電力改革につなげ、国民利益につなげることも要請する。

 

(3)最前線を支える現場に対するメッセージ

・福島事業はテクノロジー企業へ。経済事業はグローバル企業へ。福島事業こそ東京電力存続の原点である。安定供給を支える現場の力と技術を結集して世界市場を切り開き、福島への責任を果たす。

・これが東電改革を担う現場へのメッセージである。東電改革の実行は、現場の一人一人の行動と努力にかかっている。東京電力が、現場の一人一人の営みを積み重ねていけば、福島の責任を全うし、その中で、未来の電力産業の糧となる技術や人材が生まれてくる。

・責任を自覚し行動する先に、未来が見えてくる。東京電力を支える現場の一人一人が気概を持って挑戦・行動することを期待する。

 

(4)福島に対するメッセージ

・今回提示する東電改革は、福島という原点に立ち返り、国と東京電力は何をなすべきかについて、議論をとりまとめたものである。

・経済事業は他の電力会社や異業種と共同して収益力を上げ、これをもって福島への責任を果たす。福島事業は、国と協力して技術と人材を維持・拡大、開発しながら、廃炉と復興事業を成し遂げていく。福島事業には国は関与を続け、経済事業は早期自立を促す。

・本委員会は、この東電改革が、福島復興の礎にもつながるものと考える。本提言では、2019年に東電改革を、福島事業の進捗という視点からもレビューするよう国に求めている。これにより、福島の方々の安心につながっていくことを期待する。

 

(5)国民に対するメッセージ

・福島への責任を果たすために東京電力は何をなすべきか。国からの支援を受けて存続している以上、東京電力はどのように国民への還元を実現していくのか。この問いかけに対する回答が、今回提示する東電改革である。

・福島への責任、そして国民還元の双方を目指すものであるだけに、改革の内容は、今までにないコスト改革や世界市場開拓をも視野に入れている。その実現に当たっては、東京電力自身の自己改革はもとより、他の電力会社やメーカー、国との協力が不可欠となる。このため、東電改革は、我が国にとって意義のある新しい電力産業全体の改革を呼ぶきっかけとなるものである。これにより、東京電力の管内を超えて、広く国民への還元につながると本委員会は考える。

・改めて、東京電力の改革が、福島復興の基礎となり、国民にとって意義のある新しい電力産業を築いていく礎になることを本委員会は期待する。

 

参考資料

[参考1]廃炉に向けた行程

参考2東京電力と国の役割

参考3確保すべき資金の全体像

参考4消費者の視点から見た全体像

参考5世界と日本の電力市場

参考6東京電力の改革ステップと収益拡大目標

参考7トップ及び次世代を担うリーダーに必要な資質

参考8国の関与のあり方

参考9責任とリンクしたベンチマーク(BM)

(以下、参考資料は省略。)

 

2【経営上の重要な契約等】

 該当事項なし。

3【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績の状況

 収入面では、燃料費調整制度の影響などにより電気料収入単価が低下したことなどから、電気料収入は前年同四半期比16.8%減の3兆2,353億円となった。

 これに地帯間販売電力料や他社販売電力料などを加えた売上高は、前年同四半期比13.8減の3兆8,776億円、経常収益は同13.8減の3兆9,252億円となった。

 一方、支出面では、原子力発電が全機停止するなか、燃料価格の低下や為替レートの円高化により燃料費が大幅に減少したことに加え、引き続きグループ全社を挙げてコスト削減に努めたことなどから、経常費用は前年同四半期比12.1%減の3兆6,191億円となった。

 この結果、経常利益は前年同四半期比29.8%減の3,061億円となった。

 また、特別利益は原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金2,942億円や持分変動利益364億円を合わせ3,306億円を計上した一方、特別損失に原子力損害賠償費3,012億円を計上したことなどから、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同四半期比8.9%減の3,082億円となった。

 また、当第3四半期連結累計期間における各セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。

 なお、第1四半期連結会計期間より、報告セグメントの名称及びセグメント利益の算定方法を変更するとともに、セグメント利益を営業利益から経常利益に変更しており、以下の前年同四半期比較については、前年同四半期の数値をこれらの変更を踏まえて組み替えた数値で比較している。

[ホールディングス]

 売上高は、前年同四半期比28.2%増の6,886億円となり、経常利益は同213.9%増の992億円となった。

[フュエル&パワー]

 売上高は、前年同四半期比36.6%減の1兆1,877億円となり、経常利益は同60.6%減の1,072億円となった。

[パワーグリッド]

 売上高は、前年同四半期比0.4%増の1兆2,225億円となり、経常利益は同7.4%減の599億円となった。

[エナジーパートナー]

 売上高は、前年同四半期比15.2%減の3兆7,463億円となり、経常利益は同42.8%減の387億円となった。

 

(2)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第3四半期連結累計期間において、新たに発生した課題はない。

 また、前事業年度の有価証券報告書に記載した課題について重要な変更はない。

 

(3)研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は、8,068百万円である。

 なお、当第3四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はない。

 

(4)従業員の状況

① 連結会社の状況

 当第3四半期連結累計期間において、連結会社の従業員数の著しい増減はない。

 

② 提出会社の状況

 当第3四半期累計期間において、当社の従業員数は前事業年度末から24,557名減少し、7,883名となっている(平成28年12月31日現在)。これは、平成28年4月1日に、当社が営む燃料・火力発電事業(燃料輸送事業及び燃料トレーディング事業を除く)、一般送配電事業及び小売電気事業等を、それぞれ会社分割の方法によって「東京電力フュエル&パワー株式会社」、「東京電力パワーグリッド株式会社」及び「東京電力エナジーパートナー株式会社」に承継させたことにより減少したものである。

 

(5)生産及び販売の状況

 当社グループは、水力・原子力発電等を行う「ホールディングス(従来の「コーポレート」から名称変更)」、火力発電等を行う「フュエル&パワー」、送電・変電・配電による電力の供給等を行う「パワーグリッド」及び電気の販売等を行う「エナジーパートナー(従来の「カスタマーサービス」から名称変更)」の4つのセグメントがコスト意識を高めるとともに自発的に収益拡大に取り組みつつ、一体となって電気事業を運営している。加えて、電気事業が連結会社の事業の大半を占めており、また、電気事業以外の製品・サービスは多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくないため、生産及び販売の状況については、電気事業のみを記載している。

 なお、電気事業については、販売電力量を四半期ごとに比較すると、冷暖房需要によって販売電力量が増加する第2四半期・第4四半期と比べて、第1四半期・第3四半期の販売電力量は相対的に低水準となる特徴がある。

 

① 発電実績

種別

平成28年度第3四半期累計

(百万kWh)

水力発電電力量

7,826

火力発電電力量

137,848

原子力発電電力量

新エネルギー等発電電力量

50

発電電力量合計

145,724

 

② 販売実績

a 販売電力量

種別

平成28年度第3四半期累計

(百万kWh)

電灯

59,880

電力

117,242

電灯電力合計

177,122

 

b 料金収入

種別

平成28年度第3四半期累計

(百万円)

電灯

1,387,986

電力

1,847,335

電灯電力合計

3,235,322

 (注)上記料金収入には消費税等は含まれていない。

 

(6)設備の状況

 前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設、除却等について、当第3四半期連結累計期間に重要な変更はない。また、当第3四半期連結累計期間に新たに確定した主要な設備の新設、除却等の計画はない。

 なお、前連結会計年度末における設備の新設等の計画の当第3四半期連結累計期間の完了分は、次のとおりである。

 

(火力発電設備)

地点名

出力(千kW)

着工

運転開始

川崎2号系列

685

平成25/1

平成28/6

横浜7号系列(増出力)

+54

平成26/12

平成28/7、28/12

横浜8号系列(増出力)

+27

平成27/4

平成28/5

 (注)1.川崎2号系列は3軸の建設工事の完了である。現在、他社の蒸気タービンの不具合事例を踏まえた応急対策工事を行っていることから、当初設計と比べて、定格出力が、71.0万kWから68.5万kWに低下している。

2.横浜7号系列は1軸及び4軸の取替工事の完了である。なお、3軸は平成29年8月に取替工事の完了を予定している。

3.横浜8号系列は4軸の取替工事の完了である。なお、1軸は平成29年4月、2軸は平成30年1月に取替工事の完了を予定している。

4.前事業年度の有価証券報告書に記載した富津2号系列(増出力)については、1軸の取替工事が平成28年7月に完了している。なお、2軸は平成30年3月、3軸は平成31年8月、4軸は平成30年8月、5軸は平成29年4月、6軸は平成31年3月、7軸は平成29年8月に取替工事の完了を予定している。1軸の取替工事による2号系列の定格出力に変更はない。平成31年8月に予定している3軸の取替工事完了後、2号系列の定格出力が12万kW増加する予定。

 

(送電設備)

件名

電圧(kV)

亘長(km)

着工

運転開始

大井ふ頭線新設

275

0.1

平成26/11

平成28/12