第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針等

 当社グループを取り巻く経営環境は、国内エネルギー需要の減少が見込まれるなか、電力に加え平成29年4月よりガスの小売全面自由化が始まり、分野・地域を超えた競争が激化するなど、厳しい状況が継続している。当社グループは、平成29年5月に公表した「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」(新々・総特)に基づき、福島への責任を貫徹するとともに、非連続の経営改革をやり遂げ、企業価値の向上を実現していく。(http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170518004/20170518004-1.pdf)

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 新々・総特のとおり、賠償・廃炉に必要な資金を確保しつつ、2026年度以内に連結経常利益で3,000億円/年超、2027年度以降には4,500億円規模の利益水準を達成することを目指す。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題等

 当社グループは、新々・総特に基づき、より一層の収益力拡大とこれを通じた企業価値向上の実現によって福島への責任を貫徹するため、「ひらく」、「つくる」、「やり遂げる」の3つの合言葉のもと、「主体性を持って福島事業をやり遂げる」、「組織をひらき、信頼をつくる」、「自分の力で事業を切りひらく」、「エネルギーの未来をつくる」、「稼ぐ力をつくる」という5つの宣言を掲げた。

 この宣言に基づき、すべての取り組みをシンカ(進化・深化)させていくことで、株主や投資家のみなさまをはじめ多くの関係者の方々のご期待に沿うことができるようグループ一丸となって取り組んでいく。

 

[ホールディングス]

<福島事業>

①福島復興に向けた取り組み

 被害者の方々の一刻も早い生活・事業の再建に向け、引き続き「3つの誓い」に基づき、迅速かつきめ細かな賠償を最後のお一人まで貫徹する。

 また、国や自治体等のご要請に応じた復興・除染推進活動の継続など、生活基盤や産業基盤の再建に向けた取り組みに引き続き全面的に協力していく。帰還困難区域において復興拠点の整備が行われているなかで、当社としても、2020年度頃を目途に、現在富岡町に所在する福島復興本社の機能を双葉町内に移転することを目指すなど、まち機能の回復や地域の活性化等に貢献していく。

 このほか、風評被害払拭に向け「ふくしま」に触れ体験する機会を増やすために、外食業界や小売業界等での福島県産品の取り扱い促進に向けた活動や、福島県産品の安全性に関する正確な情報を効果的に提供する活動を拡大するなど、グループの総力をあげて福島復興の一層の加速化に取り組んでいく。

 

②福島第一原子力発電所の廃炉

 福島第一原子力発電所の汚染水対策については、汚染水発生量の低減やタンクの容量確保・漏えいリスク低減等の取り組みを着実にすすめ、中・長期的なリスクを確実に低下させていく。

 使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、平成30年度中頃における3号機の燃料取り出し開始を目途に、安全確保対策を徹底したうえで、新たに判明した現場状況に適切に対応しながら、慎重に作業をすすめていく。また、1号機、2号機の燃料取り出しについても、2023年度の取り出し開始を目途に準備作業を行っていく。

 燃料デブリの取り出しについては、格納容器内の調査を継続的に実施するとともに、「気中・横から」格納容器底部にアプローチするという燃料デブリ取り出し工法の基本方針に基づき、これまでの研究開発成果が実際の現場に適用可能であることを確認しながら、準備作業を具体化していく。

 安全確保の最優先・リスク低減重視の姿勢を堅持し、廃炉作業全体の最適化をはかりつつ、地域・社会とのコミュニケーションについても一層強化していく。

 

<経済事業>

安全最優先の原子力運営体制構築と柏崎刈羽原子力発電所再稼働に向けた取り組み

 原子力事業においては、「福島原子力事故を決して忘れることなく、昨日よりも今日、今日よりも明日の安全レベルを高め、比類無き安全を創造し続ける原子力事業者になる」との決意のもと、安全を絶えず問いかける企業文化を確立していく。

 事業運営体制については、一層の信頼獲得に加え、様々な課題に一元的に対応し、主体的かつ責任をもって業務を遂行できるよう、原子力事業を社内カンパニー化し、安全最優先・地元本位の体制を構築していく。

 柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた取り組みについては、引き続き、注水・冷却手段、電源の多様化など安全性向上対策を着実にすすめるとともに、工事計画認可申請及び保安規定変更認可申請の審査に真摯かつ丁寧に対応していく。また、本年3月に公表した新潟本社行動計画「まもる・そなえる・こたえる」に基づき、地域のみなさまの声をしっかりと伺いながら、原子力防災の充実・強化や、地域の一員としての地域活性化への貢献などに取り組んでいく。

 これらの取り組みに加え、企業価値向上や安全性向上等につながる原子力事業者共通の課題解決に向け、他事業者などとの連携強化・協働をはかっていく。建設中の東通原子力発電所については、拡張可能性のある長期的有望地点として、共同事業化に係る枠組みのなかで検討をすすめ、立地地域をはじめとする関係者のみなさまのご理解をいただきながら、パートナー候補への働きかけを継続していく。

 

④当社グループの事業運営と「稼ぐ力」向上のための取り組み

 当社グループ内の経営資源を最適活用するため、グループ全体でのガバナンス・モニタリングの仕組みづくりに取り組むとともに、海外事業を含めた新たな領域においてビジネスを展開することにより「稼ぐ力」を強化し、グループ全体の利益を拡大していく。

 特に、低炭素社会の実現にも貢献する国内外の再生可能エネルギー事業については、ノウハウや技術力など電気事業者としてこれまで培ってきた強みを活かして事業推進に向け取り組んでいく。

 また、送配電・原子力分野における再編・統合など他社との協業による企業価値向上の取り組みについては、他電力会社など関係者への働きかけを継続し検討をすすめていく。

 さらに、重要な資産である人財についても、グループの人財資源を把握して全体最適を実現する配置が可能となる共通基盤を構築し、既存事業の効率化や新規事業における活用をはかっていく。また、労働時間の短縮や育児・介護のための在宅勤務制度の導入、ダイバーシティ推進・能力開発支援に取り組むことで、「稼ぐ力」と社員活力の向上をはかっていく。

 これらの取り組みを通じ、当社グループは世界で通用するグローバルユーティリティー企業を目指すとともに、エネルギーの未来をつくり、お客さまに新たな価値を提供していく。

 

 

なお、福島第二原子力発電所については、福島第一原子力発電所の廃炉とトータルで地域の安心に沿うもの等とす

  るべく、全号機を廃炉とする方向で、具体的に検討を進めていく。

 

フュエル&パワー

 中部電力株式会社との包括的アライアンスについては、平成31年4月の事業統合の完成に向けて、許認可・契約等の承継やシステムの統合などの事業承継手続きを確実に実施していく。あわせて、株式会社JERAのグローバルなエネルギー企業としての自律的な事業運営と迅速な意思決定を確保しつつ、株主として適切なガバナンス体制の構築をはかっていく。こうした取り組みによる統合効果の早期発揮を通じ、国際競争力のあるエネルギーを安定的に供給するとともに、グループの企業価値向上を実現していく。

 また、競争力の強化に向けて、火力発電所におけるバリューアップ・プロジェクトの取り組みを推しすすめるとともに、燃料調達や卸電力販売などの分野における最適なポートフォリオの構築や、市場変化・設備状況に対する機敏性と柔軟性を兼ね備えた市場対応型運営の実施、グループ外への卸電力販売や卸ガス販売などに積極的に取り組むことにより、圧倒的な競争力を獲得していく。さらに、これまで培ったノウハウやアセットを活用したO&Mサービスなど、知識集約型ビジネスへの事業領域の拡大をすすめていく。

 

パワーグリッド

 送配電事業基盤の強化、新たな送配電ネットワークの価値創造、事業領域の拡大という「3つの挑戦」に取り組むとともに、再編・統合など他社との協業・連携も視野に事業展開を加速していく。

 既存設備の有効活用に加え、設備スリム化と経年劣化対策を同時に達成する投資やグローバルな資機材の調達の拡大など、これまでの考え方にとらわれない斬新な発想で最適な設備形成を目指すとともに、ICTやロボット等の先端技術の導入による設備保全の高度化をはかることなどにより、平成30年度には国内トップレベルの低廉な託送原価(平成28年度に比べ500億円以上の削減)を実現するよう送配電事業基盤の強化をすすめていく。また、広域連系や再生可能エネルギーの接続可能容量の拡大、スマートネットワークの構築に取り組むとともに、高いセキュリティ・安定度・利便性をもった強靭で柔軟な送配電ネットワークの価値を創造していく。

 さらに、スマートメーターシステム等の送配電設備や人財リソースを、IoTプラットフォームサービスや共同検針、海外事業などの積極的な展開につなげることにより事業領域を拡大し、一層の成長を実現していく。

 

[エナジーパートナー]

 新たな競争時代における事業環境の変化を大きなチャンスととらえ、多様なアライアンス・パートナーとの連携を積極的にすすめ、全国での電力販売を拡大していく。加えて、ガスや省エネルギー、IoTサービスなどの新たな付加価値を生み出すビジネスの推進により、単に電気を販売するだけでなく、省エネ、快適性、安心、安全等の効用を提供するビジネスへと収益構造を転換し、従来の枠を超えた「総合エネルギーサービス企業」への転換をはかっていく。

 ガス事業については、本年4月から、法人・個人事業主のお客さま向けに都市ガス料金プランの提供を開始するとともに、日本瓦斯株式会社と共同で設立した東京エナジーアライアンス株式会社を通じて販売網を一層強化し、2019年度末時点におけるご家庭用の契約軒数100万軒という目標を1年前倒しで達成することを目指す。

 また、他事業者が都市ガスに加え電気や他の付加価値サービスをあわせて提供することが可能となるプラットフォーム事業や、省エネリフォーム事業、顧客接点を活用して各種サービスを提供する事業などを推進し、事業領域を拡大していく。

 これらの取り組みを通じ、お客さま第一の視点でサービス品質や営業力を強化し、「稼ぐ力」を備えた強い営業集団への変革をはかっていく。

 

(注) 本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載している。また、必ずしもこれに該当しない事項についても、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示している。

 平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震及び津波に伴う福島第一原子力発電所事故により、放射性物質の放出や電気の安定供給の支障等、広く社会のみなさまにご迷惑をおかけするとともに、当社グループの経営状況は大幅に悪化した。

 これに対し当社は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「機構」)とともに策定し、平成29年5月に国の認定を受けた「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」(以下「新々・総特」)のもと、株主や投資家のみなさまをはじめ多くの関係者の方々からのご協力をいただきながら、適切な賠償の実施や着実な廃炉の実施を最優先課題として、様々な経営改革に全力で取り組んでいる。

 また、「責任と競争」の両立を目的としたホールディングカンパニー制のもと、賠償、福島復興、廃炉の責務を全うすべく、東京電力フュエル&パワー株式会社(燃料・火力発電事業)、東京電力パワーグリッド株式会社(送配電事業)及び東京電力エナジーパートナー株式会社(小売電気事業)の各基幹事業会社の自律的経営による競争力の発揮や持株会社である当社の適切なガバナンスに基づくグループの経営資源の最適配分により、厳しい競争を勝ち抜きグループ全体の企業価値の向上に取り組んでいる。

 しかしながら、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況にあり、以下のリスクが顕在化した場合、事業に大きな影響を与える可能性がある。

 本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。

 

①福島第一原子力発電所事故

 福島第一原子力発電所では、安全確保を最優先に、「東京電力㈱福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(以下「中長期ロードマップ」)に沿って、国や関係機関の協力を得ながら廃止措置等に向けた取り組みを進めている。しかしながら、汚染水の処理・保管や地下水の流入抑制などの汚染水対策や、これまで経験のない技術的困難性を伴う燃料デブリの取り出しなど、廃止措置等には多くの課題があること等から、中長期ロードマップ通りに取り組みが進まない可能性がある。その場合、当社グループの業績、財政状態及び事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 また、原子力事故の発生による格付の低下等により、資金調達力が低下していることから、当社グループの業績、財政状態及び事業運営は影響を受ける可能性がある。

 

②電気の安定供給

 東北地方太平洋沖地震の影響等による福島第二及び柏崎刈羽原子力発電所の全号機停止により、当社グループは電気の供給力が低下していることから、供給力の確保と需要面の対策を進めている。しかしながら、自然災害、設備事故、テロ等の妨害行為、燃料調達支障などにより、長時間・大規模停電等が発生し、安定供給を確保できなくなる可能性がある。これらの場合、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があるとともに、社会的信用を低下させ、事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

③原子力発電・原子燃料サイクル

 原子力事故を踏まえた、国による原子力政策の見直しや原子力規制委員会による安全規制の見直し等により、持株会社である当社及びその関係会社の原子力発電事業や原子燃料サイクル事業の運営は影響を受ける可能性があるとともに、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 原子力発電所については、どのような事態が起きても過酷事故には至らないようにするという決意のもと、安全対策の強化や組織の改革に取り組んでいる。なお、柏崎刈羽原子力発電所については、現段階では再稼働の時期は見通せない状況にあり、この状況が続いた場合、火力燃料費の増加や不要となる核燃料資産の発生等により、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 また、原子力発電・原子燃料サイクルは、使用済燃料の再処理、放射性廃棄物の処分、原子力発電施設等の解体等に、多額の資金と長期にわたる事業期間が必要になるなど不確実性を伴う。バックエンド事業における国による制度措置等によりこの不確実性は低減されているが、制度措置等の見直しや制度外の将来費用の見積額の増加、六ケ所再処理施設等の稼働状況、同ウラン濃縮施設に係る廃止措置のあり方などにより、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

④事業規制・環境規制

 電気事業における制度変更を含めたエネルギー政策の見直し、地球温暖化に関する環境規制の強化など、当社グループを取り巻く規制環境の変化により、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。また、環境規制の強化等による再生可能エネルギーの大幅な増加により電力品質が低下するなど、円滑な事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

⑤販売電力量

 販売電力量は、経済活動や生産活動を直接的に反映することから、景気の影響を受けることがある。また、冷暖房需要は夏季・冬季を中心として天候に影響されることがある。加えて、平成28年4月から始まった小売の全面自由化による競争の激化、節電や省エネルギーの進展等により影響を受ける可能性がある。これらにより、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

⑥お客さまサービス

 当社グループは、お客さまサービスの向上に努めているが、不適切なお客さま応対等により、お客さまの当社グループのサービスへの満足度や社会的信用等が低下し、当社グループの業績、財政状態及び円滑な事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

⑦金融市場の動向

 企業年金資産等において保有している国内外の株式や債券は、株式市況や債券市況等により時価が変動することから、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 また、支払利息に関しては、今後の金利動向等により影響を受けることがある。

 

⑧火力発電用燃料価格

 火力発電用燃料であるLNG、原油、石炭等の価格は、燃料国際市況や外国為替相場の動向等により変動し、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。ただし、一定の範囲内の燃料価格の変動については、燃料価格や外国為替相場の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」により、業績への影響は緩和される。

 

⑨安全確保、品質管理、環境汚染防止

 当社グループは、安全確保、品質管理、環境汚染防止、透明性・信頼性の高い情報公開の徹底に努めているが、作業ミス、法令・社内ルール違反等による、事故や人身災害、大規模な環境汚染の発生や、不適切な広報・情報公開により、当社グループへの社会的信用が低下し、円滑な事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

⑩企業倫理遵守

 当社グループは、企業倫理を遵守した業務運営を定着させるための取り組みに努めているが、法令違反等の企業倫理に反した行為が発生した場合、当社グループへの社会的信用が低下し、円滑な事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

⑪情報管理

 当社グループは、大量のお客さま情報をはじめ、業務上の重要な情報を保有している。社内規程の整備や、従業員教育等を通じ情報の厳正な管理に留意しているが、これらの情報の流出等が発生した場合には、当社グループの社会的信用が低下し、円滑な事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

⑫電気事業以外の事業

 当社グループは、海外事業を含む電気事業以外の事業を実施している。これらの事業は、当社グループの経営状況の変化、他事業者との競合の進展、規制の強化、外国為替相場や燃料国際市況その他の経済状況の変動、政情不安、自然災害などにより、投融資時点で想定した結果をもたらさない可能性がある。この場合、当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

⑬機構による当社株式の引受け

 当社は、平成24年7月31日に機構を割当先とする優先株式(A種優先株式及びB種優先株式。以下A種優先株式及びB種優先株式をあわせて「本優先株式」という。)を発行した。

 A種優先株式には、株主総会における議決権のほか、B種優先株式及び普通株式を対価とする取得請求権が付されている。また、B種優先株式には、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会における議決権は付されていないが、A種優先株式及び普通株式を対価とする取得請求権が付されている。

 機構は、本優先株式の引受けにより総議決権の2分の1超を保有しており、株主総会における議決権行使等により、当社グループの事業運営に影響が生じる可能性がある。

 今後、機構によりB種優先株式のA種優先株式を対価とする取得請求権の行使がなされた場合、又は本優先株式について、普通株式を対価とする取得請求権の行使がなされた場合には、既存株式の希釈化が進む可能性がある。特に、普通株式を対価とする取得請求権が行使された場合には、既存株式の希釈化が進む結果として、持株会社である当社の株価が下落する可能性があるほか、当該普通株式を機構が市場売却した場合には、売却時の市場環境等によっては、さらに持株会社である当社の株価に影響を及ぼす可能性がある。

 

⑭新々・総特に基づく経営改革

 新々・総特の下、当社グループは、福島への責任を果たしていくため、賠償・廃炉の資金確保や企業価値の向上を目指して非連続の経営改革に取り組んでいるが、新々・総特に記載の生産性改革、共同事業体の設立を通じた再編・統合及びその他の経営改革が計画通りに進まない場合には、当社グループの業績、財政状態及び事業運営に影響を及ぼす可能性がある。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

イ.財政状態

[資産・負債・純資産]

 当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ3,142億円増加し、12兆5,918億円となった。これは、現金及び預金が増加したことなどによるものである。

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ56億円増加し、9兆9,345億円となった。これは、有

利子負債の増加などによるものである。

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ3,085億円増加し、2兆6,572億円となった。これ

は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによるものである。この結果、自己資本比率は

21.1%と前連結会計年度末に比べ2.0ポイント上昇した。

 

ロ.経営成績

[概要]

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比9.2%増の5兆8,509億円、経常利益は同12.0%増の2,548億

円、親会社株主に帰属する当期純利益は同139.5%増の3,180億円となった。

[売上高]

 当連結会計年度における各セグメントの売上高(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが9,577

億円(前連結会計年度比4.3%増)、フュエル&パワーが1兆8,284億円(前連結会計年度比11.8%増)、パワ

ーグリッドが1兆7,420億円(前連結会計年度比3.0%増)、エナジーパートナーが5兆5,324億円(前連結会

計年度比7.7%増)となった。

 販売電力量は、電灯は前連結会計年度比4.3%減の827億kWh、電力は同3.0%減の1,504億kWhとなっ

た。

[経常損益]

 当連結会計年度における各セグメントの経常損益(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが

1,422億円の経常利益(前連結会計年度は208億円の経常損失)、フュエル&パワーが519億円の経常利益(前

連結会計年度比2.4%減)、パワーグリッドが790億円の経常利益(前連結会計年度比29.2%減)、エナジーパ

ートナーが1,159億円(前連結会計年度比55.1%増)となった。

[親会社株主に帰属する当期純利益]

 当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、原賠・廃炉等支援機構資金交付金3,819億円を特別利益に計

上する一方で、災害特別損失213億円や原子力損害賠償費2,868億円を特別損失に計上したことなどから、

3,278億円となった。ここから、法人税、住民税及び事業税208億円、法人税等調整額△113億円、非支配株主

に帰属する当期純利益1億円を加減し、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、3,180億円と

なった。なお、1株当たり当期純利益は198円52銭となった。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末

に比べ2,441億円(26.0%)増加し、1兆1,843億円となった。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、前連結会計年度比3.9%減の7,521億円となった。これ

は、火力燃料購入に関する支出が増加したことなどによるものである。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、前連結会計年度比8.8%増の5,205億円となった。これ

は、定期預金の払戻による収入が減少したことなどによるものである。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、125億円(前連結会計年度は6,039億円の支出)となっ

た。これは、短期借入れによる収入が増加したことなどによるものである。

 

③ 生産及び販売の実績

 当社グループは、水力・原子力発電等を行う「ホールディングス」、火力発電等を行う「フュエル&パワー」、送電・変電・配電による電力の供給等を行う「パワーグリッド」及び電気の販売等を行う「エナジーパートナー」の4つのセグメントがコスト意識を高めるとともに自発的に収益拡大に取り組みつつ、一体となって電気事業を運営している。加えて、電気事業が連結会社の事業の大半を占めており、また、電気事業以外の製品・サービスは多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくないため、生産及び販売の実績については、電気事業のみを記載している。

 

イ.発電実績

種別

平成29年度

(百万kWh)

前年同期比

(%)

水力発電電力量

12,212

121.7

火力発電電力量

184,384

96.9

原子力発電電力量

新エネルギー等発電電力量

72

106.2

発電電力量合計

196,668

98.1

 

ロ.販売実績

(a) 販売電力量

種別

平成29年度

(百万kWh)

前年同期比

(%)

電灯

82,686

95.7

電力

150,437

97.0

電灯電力合計

233,123

96.5

(注)東京電力エナジーパートナー株式会社(単体ベース)

 

(b) 料金収入

種別

平成29年度

(百万円)

前年同期比

(%)

電灯

2,030,931

102.0

電力

2,543,076

104.4

電灯電力合計

4,574,007

103.3

(注)1.上記料金収入には、消費税等は含まれていない。

   2.東京電力エナジーパートナー株式会社(単体ベース)

 

   (c) 託送収入

種別

平成29年度

(百万円)

前年同期比

(%)

託送収益

1,552,398

103.4

(注)1.上記料金収入には、消費税等は含まれていない。

   2.セグメント間取引消去前

 

ハ.資材の状況

重油及び原油等の受払状況

種別

平成29年度

期首残高

受入量

前年同期比

(%)

払出量

前年同期比

(%)

期末残高

石炭

(t)

392,617

8,637,677

109.3

8,380,384

102.1

649,910

重油

(kl)

271,549

690,174

43.7

779,156

47.4

182,567

原油

(kl)

66,245

123,773

252.9

126,397

30.2

63,621

LNG

(t)

478,863

20,996,603

93.9

20,803,124

92.2

672,342

LPG

(t)

42,619

211,637

64.5

157,099

41.0

97,157

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものである。

 

① 経営成績等

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く経営環境は、国内エネルギー需要の減少が見込まれるなか、電力に加え昨年4月よりガスの小売全面自由化が始まり、分野・地域を超えた競争が激化するなど、厳しい状況が継続している。
 当社グループは、新々・総合特別事業計画(第三次事業計画)に基づき、企業価値向上を果たし福島への責任を貫徹するため、ガス事業に参入し事業領域を拡大するなど「稼ぐ力」の強化に向けた取り組みをすすめてきた。
 当社グループの当連結会計年度の販売電力量(連結)は、電力小売全面自由化の影響などにより、前連結会計年度比1.4%減の2,403億kWhとなった。
 当連結会計年度の連結収支については、収益面では、燃料費調整制度の影響などにより電気料収入単価が上昇したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比9.2%増の5兆8,509億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は8.8%増の5兆8,995億円となった。
 一方、費用面では、原子力発電が引き続き全機停止するなか、グループをあげてコスト削減に努めたものの、燃料価格の上昇などにより燃料費や購入電力料が増加したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比8.7%増の5兆6,447億円となった。
 この結果、経常利益は前連結会計年度比12.0%増の2,548億円となった。また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金3,819億円を特別利益として計上した一方、災害特別損失と原子力損害賠償費を合わせた3,081億円を特別損失として計上したことなどから、親会社に帰属する当期純利益は3,180億円となった。
 当連結会計年度の自己資本比率については、前連結会計年度の19.1%から21.1%に、デット・エクイティ・レシオについては、前連結会計年度の2.56から2.27となるなど、引き続き財務体質の改善がすすんだ。
 また、当年度もパワーグリッドが継続的に社債を発行するなど、円滑な事業運営が可能となる資金調達に取り組んだ。
 当連結会計年度における各セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
[ホールディングス]
 収益面では、当連結会計年度よりパワーグリッドからの廃炉等負担金収益を計上したことなどにより、売上高(営業収益)は前連結会計年度比4.3%増の9,577億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は、各基幹事業会社からの配当による営業外収益の増加などにより、13.5%増の1兆1,430億円となった。一方、費用面では、徹底的なコスト削減に努めたことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比2.6%減の1兆7億円となった。
 この結果、経常利益は前連結会計年度比1,631億円増の1,422億円となった。
[フュエル&パワー]
 収益面では、販売電力量が減少したものの燃料価格の上昇により火力電力料収入が増加したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比11.8%増の1兆8,284億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は11.8%増の1兆8,484億円となった。
 一方、費用面では、定期点検期間の短縮などコスト削減に努めたものの、燃料価格の上昇により燃料費が増加したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比12.3%増の1兆7,964億円となった。
 この結果、経常利益は前連結会計年度比2.4%減の519億円となった。
[パワーグリッド]
 収益面では、エリア需要が気温の影響などにより前連結会計年度比1.7%増の2,766億kWhとなったことにより託送収入が増加したことなどから、売上高(営業収益)は3.0%増の1兆7,420億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は3.0%増の1兆7,582億円となった。
 一方、費用面では、設備保全の合理化などコスト削減に努めたものの、当連結会計年度より廃炉積立金の原資となる廃炉等負担金を計上したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比5.3%増の1兆6,792億円となった。
 この結果、経常利益は前連結会計年度比29.2%減の790億円となった。
[エナジーパートナー]
 収益面では、販売電力量(連結)が前連結会計年度比1.4%減の2,403億kWhとなったものの、燃料費調整制度の影響などにより電気料収入単価が上昇したことなどから、売上高(営業収益)は7.7%増の5兆5,324億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は7.8%増の5兆5,403億円となった。
 一方、費用面では、燃料価格の上昇により購入電力料が増加したものの、電源調達の効率化などコスト削減に努めたことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比7.1%増の5兆4,243億円となった。
 この結果、経常利益は前連結会計年度比55.1%増の1,159億円となった。

 

② 資本の財源及び資金の流動性

イ.キャッシュ・フロー等

(a) キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。

 

(b) 有利子負債

 平成30年3月31日現在の社債、長期借入金、短期借入金については、以下のとおりである。

 

当連結会計年度(平成30年3月31日)

 

1年以内

(百万円)

1年超

2年以内

(百万円)

2年超

3年以内

(百万円)

3年超

4年以内

(百万円)

4年超

5年以内

(百万円)

5年超

(百万円)

社債

853,058

420,560

227,722

86,178

222,123

421,250

長期借入金

903,469

482,234

561,198

64,803

33,862

165,243

短期借入金

1,581,266

合計

3,337,794

902,794

788,920

150,981

255,985

586,493

 上記については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)2.金融商品の時価等に関する事項(注4)社債、長期借入金及びその他の有利子負債の連結決算日後の返済予定額」にも記載。

 

ロ.財務政策

 東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に伴う多額の損失の発生や原子力発電所の停止等による燃料費の増加等により財務基盤と収益構造が大幅に悪化するとともに、自律的な資金調達力が低下したことを受け、総合特別事業計画(平成24年5月に主務大臣より認定。)に基づき、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、「機構」)から1兆円の出資を受けるとともに、取引金融機関に対しては、その後の新・総合特別事業計画等(平成26年1月に主務大臣より認定。)においてもあわせて、追加与信及び借換え等による与信の維持等をお願いし、ご協力をいただいてきた。

 新々・総合特別事業計画(平成29年5月に主務大臣より認定。)等においても、取引金融機関に対し、前回総特での協力要請の通り引き続き与信を維持することなどをお願いし、ご協力をいただいている。これらの機構や金融機関の支援・協力のもとで、自己資本比率の改善、公募社債市場への復帰などの取組は進んでおり、平成29年度はパワーグリッドにおいて4,000億円の公募社債を発行した。引き続き社債の発行を継続するなど、当社グループの自律的な資金調達力の回復もはかっていく。

 また、当社グループでは、グループ全体でより効率的な資金の運用を図る観点からグループ金融制度を採用している。

 

③ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等

 「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」に記載のとおり、賠償・廃炉に必要な資金を確保しつつ、2026年度以内に連結経常利益で3,000億円/年超、2027年度以降には4,500億円規模の利益水準を達成することを目標に掲げている。

 当連結会計年度における経常利益は2,548億円となった。

 

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、該当事項なし。

 なお、当社の100%子会社である東京電力フュエル&パワー株式会社は、平成30年5月9日開催の取締役会において、東京電力フュエル&パワー株式会社が営む燃料受入・貯蔵・送ガス事業及び既存火力発電事業等を会社分割の方法によって、株式会社JERAに承継させることを決議し、同日、株式会社JERAと吸収分割契約を締結した。

 詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりである。

 

 

5【研究開発活動】

 当社グループの技術開発については、「東京電力㈱福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」ならびに「新々・総合特別事業計画」に基づき、「中長期ロードマップに基づいた廃炉の推進に向けた技術開発」及び「原子力安全の確保と電気の安定供給の達成に資する技術開発」を中心として取り組んでいる。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は、19,848百万円である。なお、セグメント毎の研究開発費の内訳は、ホールディングスが10,065百万円、フュエル&パワーが1,724百万円、パワーグリッドが6,975百万円、エナジーパートナーが1,082百万円である。