当社グループを取り巻く経営環境は、カーボンニュートラルの実現を目指す世界的な潮流、激甚化・広域化する自然災害に対応したレジリエンス強化の要請、ウクライナ情勢を受けた全世界的な燃料価格の高騰など、大きく変化している。
このような事業環境の変化に対応していくため、第四次総合特別事業計画(以下、「四次総特」という。)のもと、原子力事業における一連の不適切事案等により毀損した地域や社会の皆さまからの信頼回復に最優先で取り組むほか、多核種除去設備等処理水(以下、「ALPS処理水」という。)の海洋放出については、2021年4月に国から示された基本方針を踏まえ、安全性の確保と風評影響を最大限抑制するための取り組みを主体的に行っていく。
加えて、カーボンニュートラルや防災を軸とした新たな価値を提供するビジネスモデルへと転換を図り、更なる収益力拡大と企業価値向上を実現していく。
(https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210804004/20210804004-1.pdf)
[東京電力ホールディングスグループ経営理念]

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
四次総特のとおり、賠償・廃炉に関して、当社グループ全体で年間約5,000億円程度の資金を確保する。加えて、年間約4,500億円規模の利益創出も可能な収益基盤を目指す。
小売事業の競争激化や原子力発電所の長期停止、ESG・SDGsに代表される社会的課題に対する意識の高まり、自然災害の激甚化・広域化に伴う防災・電力レジリエンスの強化に向けた社会的要請に加え、新型コロナウイルス感染症の流行がもたらした経済・社会活動の変容など、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化している。
このような事業環境変化のなかでも、多様化する社会的な要請にお応えするため、当社グループは安定供給の継続に最大限尽力しながら、「カーボンニュートラル」と「防災」を軸とした、新たな価値を提供するビジネスモデルへと事業構造の変革を図り、収益力向上につなげていく。
また、当社グループは一丸となって、福島第一原子力発電所の事故を決して風化させることなく、福島への責任を全うするため、「復興と廃炉の両立」を推進していくとともに、引き続き、2021年4月に国から示された「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえ、安全を最優先として海洋放出を進めるとともに、関係者の皆さまの理解醸成に向けた丁寧な説明を積み重ねていく。
柏崎刈羽原子力発電所においては、2023年12月27日、原子力規制委員会が、「申請者の原子炉設置者としての適格性についての確認結果(平成29年12月27日)」の結論を変更する理由はないと判断するとともに、原子力規制検査の対応区分を「第4区分」から「第1区分」に変更し、燃料移動禁止命令を解除した。その際、原子力規制委員会からは「核物質防護の向上に向け、自然環境も踏まえたハード面、ソフト面における継続的改善」「改善活動に緩みがないか当社自らがチェックする一過性にしない取組」「これらの取組を、経営層、幹部職員、担当職員が代わっても世代を超えて継承するための人材育成を含めた取組」の3点を行うよう求められている。また、適格性についても、改めて原子炉設置者としての責任を自覚し、保安規定に定めた「原子力事業者としての基本姿勢」を遵守する取組を行うよう求められていることから、引き続き適切に対応していく。
電力供給の面では、2023年度冬季は、暖冬傾向が続いた中、皆さまの省エネ・節電への継続的なご協力により、安定供給を確保することができた。
2024年度夏季は、7月の東京エリアの厳気象H1需要に対する予備率は4.6%と最低限必要な予備率(3.0%)を確保しているものの、電源の計画外停止や燃料調達リスク等に備え、引き続き最大限対応していく。
また、昨今、電力業界では、公正な競争や事業者への信頼を揺るがす事案が発生している。このような状況を踏まえ、当社グループとしては、社内体制の強化や社員教育などを通じて、関係法令の遵守を徹底するとともに、不適切な行為の防止に努めていく。
さらにはコロナ期に実施した在宅勤務拡大等の経験を活かし、ワークライフバランス実現と幸福度向上を目的に、社員一人ひとりが快適に働くことができる環境づくりや、人と組織が最大限のパフォーマンスを発揮できる働き方の実現を目指して、“TEPCO Work Innovation”を推進していく。
当社は、これまでの賠償に加え、新たに中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償などを進め、当年度末までに累計11兆2,524億円をお支払いしてきた。追加賠償については、自治体にもご協力いただき、請求されていない方々へご請求の呼びかけを行うなど、最後のお一人まで賠償を貫徹するための取り組みを進めてきた。
また、全ての特定復興再生拠点区域において避難指示が解除されるなど、復興の進展がみられるなか、地域に根差した活動を行うために、環境再生・復興推進活動の継続に加え、ほかの自治体に続き双葉町においても社員寮の整備を実施した。
福島第一原子力発電所については、敷地舗装や陸側遮水壁等による地下水流入量の低減を継続するなど、汚染水発生量の低減を図ってきたほか、燃料デブリ取り出しに向け、2号機においては、燃料デブリの試験的取り出し装置を進入させるために、原子炉格納容器に通じる作業用貫通孔内の堆積物の除去作業を実施するなど、廃炉作業を進めてきた。
また、ALPS処理水の海洋放出については、国際原子力機関(以下、「IAEA」という。)から国際的な安全基準に合致しているとの評価をいただき、2023年8月に政府による放出開始の判断が示されたことを受けて、放出を開始した。放出開始後も、引き続きIAEAによるレビューを受け、海域モニタリングを強化するなど、客観性・透明性の確保に取り組むとともに、ホームページや国内外のメディアなどの様々な媒体を通じて、正確でわかりやすい情報発信に努めてきた。
福島第二原子力発電所については、廃止措置計画に定めた廃止措置工程に基づき、第1段階となる解体工事準備期間の主要な作業プロセスである、使用済燃料乾式貯蔵施設の設置に向けた準備を進めている。
当社は、2021年4月に原子力規制委員会から柏崎刈羽原子力発電所において燃料の移動を禁止する命令を受けた後、同委員会による検査に真摯に対応してきた。具体的には、核セキュリティに関する改善措置計画に基づく対策や、業務における気づきを改善につなげる是正処置プログラムの実効性を高める施策を講じ、自律的に改善する仕組みの定着をはかってきた。加えて、社長の直轄組織として核物質防護モニタリング室を設置し、改善措置を一過性のものとしない仕組みを構築するなど、核セキュリティの向上に取り組んできた。こうした取り組みを原子力規制委員会に確認いただき、昨年12月、同命令が解除された。
原子力規制委員会から受けた指摘を踏まえ、当社としては核物質防護の向上に向け、核物質防護設備の再構築や核物質防護業務の体制強化などハード・ソフト両面で継続的に改善を進めている。また、改善活動を一過性のものとしないようにPPCAP(核物質防護に関する様々な問題を是正・改善する是正処置プログラム)の定着とモニタリングに取り組むとともに、発電所で働く各階層の人財についても、社長の責任の下で育てていけるように改善を進めている。引き続き原子力改革の実績を一つひとつ積み上げ、地域の皆さまから信頼されるよう全力で取り組んでいく。
7号機の安全対策工事については、燃料装荷前に必要となる使用前事業者検査が全て完了し、その内容について原子力規制庁より確認を受けており、その上で燃料を原子炉に装荷し、それにより可能となる検査を含めた再稼働に向けた発電設備の健全性確認を進めている。
なお、緊急時の即応体制を確立するため、緊急時対策本部要員、現場対応要員を含めた宿直体制に強化した。加えて、福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、過酷事故の総合訓練や、現場での事故対応訓練を繰り返し行っている。
新たな事業の創出に向け、エネルギーソリューションをはじめとするグループ各社の強みを活かして、自治体や他企業との協働のもと、カーボンニュートラルで災害に強いまちづくりを目指してきた。
具体的には、再生可能エネルギーの地産地消を効果的かつ効率的に推進するエネルギーマネジメント事業に関する協定を脱炭素先行地域に選定された自治体と締結するなど、連携を強化してきた。
また、交通事業者とは鉄道沿線を再生可能エネルギーの拠点とするため、太陽光発電設備の設置やバスの電動化の検討を進めてきた。加えて、通信事業会社とは電力の供給と需要をバランスさせる調整力の脱炭素化を加速させるため、蓄電所事業を実施するための会社を設立するなど、様々なインフラ事業者とのプロジェクトを進めている。
・供給力確保とクリーンエネルギー供給基盤の構築
燃料調達の不確実性が世界的に増大し、安定供給の重要性が高まるなか、燃料の価格高騰・調達リスクを踏まえた供給力の確保や、カーボンニュートラル達成に向けた再生可能エネルギーと低炭素火力を組み合わせたクリーンエネルギー供給基盤の構築を株式会社JERAに求めるとともに、その課題解決に向けて、同社と協働してきた。
株式会社JERAは、具体的な取り組みとして、JERA Global Markets社を通じたLNG調達の最適化等により燃料を安定的かつ機動的に確保したほか、最新鋭の姉崎火力発電所新2・3号機並びに横須賀火力発電所2号機の営業運転開始など、供給力の確保に努めてきた。また,2035年度までに2013年度比でCO2排出量60%以上の削減を目指す「JERA環境コミット2035」を踏まえ、水素・アンモニアへの燃料転換や、Parkwind社・株式会社グリーンパワーインベストメントの買収など、再生可能エネルギー事業も進めている。
・送配電ネットワークの強靭化と事業領域の拡大
電力供給の信頼度確保と低廉な託送原価水準の実現を目指し、効率的でサステナブルな事業運営に取り組むとともに、送配電ネットワークの新たな価値創造や事業領域の拡大を進めてきた。
具体的には、新しい託送料金制度であるレベニューキャップ制のもと、健全な送配電ネットワークの維持と強靭性の向上に向けた取り組みを進め、設備保全の省力化・自動化や他社と連携した調達改革等に取り組んできた。また、インフラ事業者間の更なる相互連携によるレジリエンス強化と効率化等を目指し、全国共通のドローン航路プラットフォームの構築に向けて設立した事業体の体制を拡大した。さらに、データセンターの普及を通じた電力設備の効率や持続可能性の向上等を目指し、NTTグループとデータセンターの共同開発に向けた新会社を設立したほか、英国の洋上風力発電所における送電事業を開始するなど、国内外で事業領域の拡大に向けた取り組みを加速してきた。
加えて、一般送配電事業の中立性・信頼性確保に向けて、過半数を社外委員で構成する内部統制委員会を新たに設置したほか、法令遵守に関する役員の明確化や実行組織・体制の整備・強化を行うなど内部統制システムの強化にも取り組んできた。
・お客さまと社会のニーズに沿うサービスの展開
世界的なカーボンニュートラルの潮流に加え、燃料価格の変動を背景とする安定した電気料金プランへのお客さまのニーズの高まりを受けて、新たな価値の提供に取り組んできた。
具体的には、特別高圧・高圧の標準メニューとして、卸電力取引所におけるスポット市場価格の変動の影響を受けない「市場調整ゼロプラン」などの電気料金プランを新設した。
また、カーボンニュートラルの実現に取り組むお客さまや発電事業者さまと再生可能エネルギー電源の新規開発を進め、遠隔地の発電設備で発電された電力と環境価値をセットでお客さまに提供するサービスを推進してきた。多くのお客さまに採用いただくとともに、災害時におけるBCP対策用のエネルギーサービスも提供し、地域の防災機能の強化にも貢献してきた。
・事業の基盤強化と領域拡大に向けた取り組み
国内水力発電事業において、既設水力発電所のリパワリングを継続的に実施し、5箇所の発電所で工事を完了したほか、カイゼン活動やデジタル技術の活用等による水力発電所の運用・保守業務の高度化を推進するなど、発電電力量の更なる増加や、事業基盤の強化に着実に取り組んできた。
また、国内の洋上風力発電事業者の公募において、当社を含むコンソーシアムが長崎県西海市江島沖における事業者に選定されたほか、2022年に子会社化した英国のフローテーション・エナジー社を通じて、スコットランド海域における洋上風力発電事業に必要な海底リース権の取得に向けた独占交渉権を獲得するなど、国内外における洋上風力発電事業の拡大を図ってきた。
さらに、秋田県湯沢市で地熱発電所開発を行う小安地熱株式会社に出資参画し、重要電源開発地点の指定を受けた地熱発電所の建設に初めて携わるなど、カーボンニュートラル社会の実現に向けた電源の多様化を推進してきた。
当社は、「最後の一人まで賠償貫徹」、「迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」、「和解仲介案の尊重」に基づき、個別のご事情を丁寧にお伺いしながら賠償を進めていく。中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償については、請求されていない方々に対して広報活動等を通じてご請求を呼びかけるなど、着実に実施していく。
併せて、新たに認定された特定帰還居住区域における環境整備の開始など、復興のステージに合わせた地域のニーズを的確に捉え、地域に根差した活動など、復興・ご帰還に向けた取り組みを進めていく。
また、異業種のパートナーとともに、福島県浜通り地域において廃炉関連産業を形成し、地元企業の参画拡大や人財育成、雇用の創出に取り組み、福島の復興に貢献していく。
長期にわたる廃炉の貫徹に向け「廃炉中長期実行プラン」のもと、現場・現物を踏まえたプロジェクト管理と安全・品質管理の機能の強化を図り、安全・着実かつ計画的に廃炉作業を進めていく。1号機については、使用済燃料プールからの燃料取り出しに向け、大型カバー設置などを着実にするほか、2号機については、国際廃炉研究開発機構と連携して燃料デブリの試験的取り出しに向けた作業を進めていく。
また、「復興と廃炉の両立」の方針のもと、地元企業の参画拡大や域外企業の誘致を通じて、浜通り地域における廃炉関連産業の形成を推進し、地域の雇用創出や人財育成、産業・経済基盤の創造に貢献していく。
ALPS処理水の海洋放出にあたっては、実施計画に基づく安全・品質の確保や科学的根拠に基づく情報の国内外への発信、海域モニタリングの強化など、政府の基本方針を踏まえた取り組みを着実に進めていく。
また、IAEAによるレビューを通じた客観性・透明性の確保に努めていく。さらに、ALPS処理水の放出に伴う風評影響を最大限抑制すべく、国内外の理解醸成に向けた科学的根拠に基づく情報発信に加えて、風評影響を受けうる産業への対策をさらに強化していくとともに、ALPS処理水の放出により被害が生じた場合には、迅速かつ適切に賠償していく。併せて、社内において関係部署を横断的に統括する体制を整備し、これらの取り組みを確実に進めていく。
柏崎刈羽原子力発電所においては、再稼働に向けて原子炉本体を含む発電設備全体の健全性を確認するなど、原子力規制委員会による確認を受けながら一つひとつの工程を着実に進めている。健全性の確認を進めるなかで新たに判明した事項があれば、必要な対策を確実に講じ、安全性の確保を最優先に取り組んでいく。
また、原子力災害時の避難へのご懸念に対しては、原子力防災訓練を繰り返し行い、緊急時においても迅速かつ円滑に応急対策を講じられるよう継続的に対応力の向上を図るとともに、自治体が作成する避難計画の実効性を高めるため,関係する自治体のみなさまのご意見を踏まえ、最大限の支援を行っていく。あわせて、自然災害への備えとして当社施設の活用など、住民の方々への支援についても検討を進めていく。
こうした取り組みについて、発電所構内への視察の受け入れやコミュニケーションブース・説明会の開催等を通じて、地域のみなさまとの対話を積み重ね、透明性が高く信頼される発電所を目指していく。
カーボンニュートラルの実現と価格も含めた安定供給を両立するため、これまで培ってきた多様なノウハウを活かした事業構造変革を加速していく。
具体的には、地産地消の分散型再生可能エネルギーや電化システム、蓄電池の導入等による設備サービス事業を進め、エネルギーコストの削減やカーボンニュートラルの実現などをしていくとともに、当社の強みの一つであるエネルギーマネジメントによって、地域単位でのエネルギー需給の安定化を実現し、防災機能を備えたまちづくり事業を推進していく。
こうした環境性と経済性を追求したトータルソリューションを通じて、多様な地域課題の解決に取り組み、お客さまのご期待を超える価値の創造を実現していく。
株式会社JERAを取り巻くグローバルな事業環境は、カーボンニュートラルの潮流の加速や燃料価格の不安定化・高騰リスクなど、急激に変化している。これを踏まえ、同社は供給力の確保及び「JERAゼロエミッション2050」に向けた再生可能エネルギーの開発・導入や水素・アンモニア等を組み合わせたゼロエミッション火力発電の実現に向けた取り組みを行っている。
東京電力フュエル&パワー株式会社は、株式会社JERAにおけるこのような課題に対して、事業計画の策定への関与と事業計画の進捗に対するモニタリング等による質の高いコミュニケーションを通じ、その課題への対策が株式会社JERAの施策に随時、柔軟に反映されるよう、支援・監督していく。また、本年1月に発生した武豊火力発電所における火災事故に対しては、株式会社JERAにおける原因究明、再発防止対策の策定及び着実な対策の実行と早期復旧を注視していく。
電力需要の減少により託送事業の規模・収入が伸び悩む可能性がある一方、経年化が進んだ設備について、カーボンニュートラルの促進や地域のレジリエンス強化など送配電ネットワークに対する新たな要請や、施工力確保・材料調達に関する課題も踏まえながら、設備の保全や拡充等を効率的に進める必要がある。こうした状況下でも、安定的かつ低廉な電力供給を確保するため、送配電ネットワークを健全な状態で効率的に維持し続け、その強靭性を高めるとともに、他業種を含めた事業者との協業・連携等を通じて、新たな価値創造に挑戦していく。
また、情報漏えい等により一般送配電事業者の信頼が損なわれている事態を重く受け止め、引き続き内部統制システムの一層の強化を図り、一般送配電事業の中立性・信頼性を確保していく。
燃料価格の変動等に対応して、お客さまのエネルギーコストの安定化、電力の安定供給の確保及びカーボンニュートラルの同時達成を実現しつつ、利益を確保していく。
具体的には、太陽光発電設備と蓄電池の組み合わせなどにより、再生可能エネルギーを最大限活用した地産地消ビジネスを展開し、省コストとカーボンニュートラルの推進に取り組んでいく。
また、安定供給と電源コストの最適化に向けて、デマンドレスポンスを推進していく。法人分野においては、デマンドレスポンスに対応する機器の導入サポートを提供し、家庭用分野においては、エコキュートの活用などにより、電力供給が電力需要を上回りやすい時期の昼間帯に需要を創出・シフトするほか、サービスの拡充に向けて蓄電池の充電・放電を遠隔制御する技術を実証していく。
引き続き、国内水力発電所のリパワリングによる発電電力量の増加や、河川流量予測技術などを用いた効率的なダム運用に取り組み、貴重な水資源を最大限に活かした安定的かつ低廉な電気の供給を図っていく。また、国内水力発電事業で培った土木構造物の点検方法や設備の不具合リスクへの対処等に関する知見を活かし、海外においても、出資先事業者と連携した効率的な水力発電所の運営を推進していく。
洋上風力発電事業については、長崎県西海市江島沖での事業開始に向けた準備を着実に進めるほか、地域に根差した着床式洋上風力発電の案件を積み上げ、国内外における事業拡大に向けた競争力強化に取り組んでいく。加えて、浮体式洋上風力発電についても、国内での研究開発や海外での実証参画によって得た知見をもとに、技術の早期確立に努めていく。
(注) 本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。
本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。
当社グループは、気候変動のリスク及び機会を含むESG対応を重要な経営課題と認識し、当社の取締役会は責任者(ESG担当役員)を選任している。責任者は四半期ごとに業務執行状況を当社の取締役会に報告しており、当社の取締役会は、戦略、行動計画及び業績目標の進捗等を確認するなど気候変動のリスク及び機会について監督している。
また、当社の社長を委員長とするESG委員会にて定期的にESG課題について審議しており、みらい経営委員会やリスク管理委員会と連携している。重要なテーマについては、当社の取締役会等で活発な議論を行っている。
[東京電力ホールディングス株式会社の体制]

当社グループは、ビジョン達成に向けた価値創造を実現するための戦略として、2022年4月にカーボンニュートラルに関する事業方針を公表した。
2019年に日本のエネルギー企業として初めてTCFD提言に賛同して以降、再生可能エネルギー発電事業会社を分社化するなど先行的な取り組みを進めており、安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けて事業構造を変革し、社会とともに持続可能な成長を実現していく。
今後は、現在の大規模電源・大量送電から、自家発電・自家消費といった地産地消型の社会に移行していくと想定されるが、当社グループの強みである「電力を中心としたエネルギーに関する幅広く、また深い技術や知見」は、どのようなシナリオとなっても必要不可欠である。
このような状況を踏まえ、当社グループは、ベースロード電源として水力・原子力・地熱を活用していくとともに、洋上風力をはじめとした再生可能エネルギーの開発に取り組んでいく。また、「貯めて使う」地産地消型システムを推進するため、これまでの電気(kWh)の販売事業から、お客さまに密着した設備サービス事業にビジネスモデルの軸を大胆にシフトし、お客さま設備から生み出されるエネルギー資源を集めて、需給調整・環境価値取引等のニーズに応えられるようアグリゲーション事業を展開する。
これらの新たな事業は社会・コミュニティ等の「まち」単位で、面的に拡大していく。ビジネスモデルの変革にあたっては、設備サービス・アグリゲーション事業の全国展開を最重点分野とし、アライアンスを進めながら現在の事業体制の組み換えも含めたグループ再編も視野に入れた事業構造変革を検討していく。
[ビジネスモデルの変革]

当社グループはカーボンニュートラルの実現に向けて、「2030年度に販売電力由来のCO2排出量を基準年度比で50%削減(※)」、さらには「2050年におけるエネルギー供給由来のCO2排出実質ゼロ」という目標を掲げ取り組んでいく。
(※)Scope1、2、3の販売電力由来。Scope1、2は2019年度比、Scope3は2013年度比。
2022年度の販売電力由来のCO2排出量の実績は6,510万t-CO2であった。
[カーボンニュートラルロードマップ]

なお、2022年度の当社及び基幹事業会社を対象とした温室効果ガス排出量はScope1が20万t-CO2、Scope2(※)が490万t-CO2であった。
(※)電力購入先ごとの排出係数に基づき算定する基準(マーケット基準)にて算出している。
当社及び基幹事業会社は、資源価格の高騰や気候変動による災害の激甚化など、事業を取り巻く環境が大きく変化する中、経営理念やグループ経営計画の達成に向け、グループの使命である電力の安定供給の不断の実行とカーボンニュートラルの実現のための事業構造変革と経営基盤の強化に総力をあげて挑戦している。この挑戦への原動力であり、持続的な成長の源である「人」をかけがえのない財産と捉え、人的資本への投資を積極的に進めている。
当社及び基幹事業会社は、人財リソースの確保への対応を重要な経営課題と認識しており、取締役会は、執行役の中から人財戦略の責任者(CHRO)を選任し、毎月の業務執行状況の報告を受けるなどして、人財戦略、行動計画及び業績目標の進捗等をモニタリング・監督している。また当社の執行役会並びに執行役を中心とした経営会議等では、全社的な課題の抽出や対応方針について審議している。
当社及び基幹事業会社は、経営戦略と連動した人財戦略として、人と組織のありたい姿を示したHR-Visionを掲げ、5つの優先領域を設定し、各重点施策に取り組んでいる。電気事業を支える人財を安定的に確保するとともに、事業構造変革と経営基盤の強化に向けて、DXや事業創造など重要経営課題に必要な人財の確保や配置が急務となっている。そのため、必要な人財を中長期的に計画し、採用、育成、配置するリソースマネジメントを強化することで、「両利きの経営」をさらに加速していく。また、ダイバーシティ&インクルージョンの実現、仕事と働き方の変革、エンゲージメント向上等基盤強化に向けた取り組みを通じて、社員一人ひとりの意欲や能力、組織のパフォーマンスの最大化を目指す。
また、CHROをはじめ、各事業主体のCOOや企画担当役員をメンバーとしたHR委員会を設け、HRに関する全社大の重要経営課題について議論を行っている。その中では、事業戦略と人財戦略との整合を図るとともに、HRや各主体が課題解決に向けて責任を持って取り組むサイクルを構築している。
[人財戦略について]

※ 上記は当社及び基幹事業会社を対象としている。
電気事業を支える人財の確保に向けて、採用手法の多様化により、新卒社員、即戦力社員を計画的に採用するとともに、若年層のリテンションやミドル層、シニア層がより意欲・パフォーマンス高く活躍し続けられる魅力ある仕組みを整備している。一方で、重要経営課題に必要な人財を優先配置するとともに、既存スキームの効率化やビジネスモデルの変革創造、事業領域の拡大等、中長期にわたり事業戦略上重要なスキル領域(DX、事業創造、海外事業、法務)を特定し、その担い手となる人財を質・量ともに計画的に確保していく。
「既存事業の選択・深化」と「新規事業の拡大」といった「両利きの経営」を加速するために、経営リーダー、電力プロフェッショナル、事業創造人財、DX人財、グローバル人財等、既存・新規の事業運営を支える人財を定義し、研修・配置を通じた育成プログラムの強化や、社員の能力・経験等の人財情報をデータベースとして一元管理し、仕事と適財とをマッチングする適所適財の取り組み(タレントマネジメント基盤の整備)を進めている。あわせて、自己啓発や人財公募等の挑戦・選択機会を提供することで、社員の自律的な成長やパフォーマンス向上につながる環境づくりを進めている。
特に、経営リーダーの育成に向けては、ビジネスを牽引できる経営リーダーを安定・継続的に輩出できるよう、候補人財の選抜や育成を目的とした戦略的人財育成委員会を設置し、選抜、育成、モニタリング等の育成サイクルに経営層が直接関わり、指名委員会と連携した後継者育成の仕組みを構築している。
人と組織がともに成長するためには、多様な人が集い、お互いの違いを尊重し、受け入れるとともに、多様な視点を活かし、行動することが必要となる。こうした行動が創造性の高い、レジリエントな組織を生み出す。D&Iの理解を深めるため、育児や介護と仕事の両立、障がい、LGBT等のセミナーを開催するとともに、ガイドラインやハンドブックを発行している。また、当事者のみならず、上司や同僚等を対象とした施策も強化し、インクルーシブな職場づくりを推進していく。
ワークライフバランス実現と幸福度向上を目的に、社員一人ひとりが快適に働くことができる環境づくりを進めている。働き方の選択肢の多様化や労働時間マネジメントの適正化などの働き方改革とカイゼン・DXを用いた業務改革に一体的に取り組むことで、人と組織が最大限のパフォーマンスを発揮できる働き方の実現を目指している。また、1on1ミーティング等のきめ細かな対話や、マネジメント教育の充実、対話機会の創出を進めることにより、社員の成長や組織の活力向上を促進している。
人と組織の活力、生産性を高める上では、社員のエンゲージメントを向上させることが極めて重要と考え、社員一人ひとりの「働きがい」、「成長実感」、「ワークライフバランス」をエンゲージメント指標として設定し、全社員対象の社員意識調査で測定している。調査の結果は、経営会議や企業倫理委員会等に報告すると同時に、社外有識者からもご意見をいただき、全社的な施策の検討・実施につなげている。また、速やかに各組織にフィードバックし、自らの強みや弱みを踏まえ、エンゲージメント向上につながる施策を自律的に展開している。
さらには、社員意識調査の結果を活用して、活力ある働き方を実践している現場第一線職場へ訪問・ヒアリングを行い、取り組みを社内広報で紹介するなど、好事例の社内展開にも取り組んでいる。
また、東京電力グループは2021年8月、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、人権尊重の取り組みに対する姿勢を明確に示した「東京電力グループ人権方針」を策定、公表している。これまでの人権への取り組みの強化に加え、国際基準に沿った人権尊重の取り組みを進め、人権への負の影響の防止と軽減に努めている。2021年度より人権デュー・ディリジェンスを開始し、2022年度から人権影響調査の範囲を順次拡大しており、2023年度は人権研修の強化、連結子会社に対するサポートを重点的に実施した。具体的には連結子会社の自律的な推進に対する支援を目的に「ガイドライン」を策定している。
救済メカニズムについては、社員向けの相談窓口に加え、あらゆるステークホルダーがアクセス可能な通報窓口を2021年10月に開設し、東京電力グループの事業活動が人権への負の影響を引き起こした、またはそれに関与したことが明らかになった際は、適切な手続き・対話を通じて救済・是正に取り組んでいる。
当社及び基幹事業会社は、人財戦略の総合KPIとして、「社員幸福度」と「人的資本ROI」を設定している。
また、「社員幸福度」、「人的資本ROI」の向上に向けて、HR-Visionや5つの優先領域への取り組みにおける主要なKPIを設定し、成果や進捗を評価しているほか、依願退職率や長時間労働者数等のリスクに関するKPIを設定し、指標のモニタリングを行っている。
今後も企業価値向上に寄与する効果的・効率的な人的資本への投資の実行に向けて、人的資本の可視化、KPIのモニタリングや刷新を進める。
[指標について]

2023年度末の管理職に占める女性労働者の割合は6.0%(2022年度末5.9%、2021年度末5.8%、2020年度末5.5%)であり、女性の採用・育成強化等により、次世代女性リーダーの拡大を進めている。
比率は上昇傾向にあるも、当初目標である2025年度末管理職に占める女性労働者の割合10%の目標に対する実績の乖離は大きい。
目標の達成に向けては、後進の育成のみならず職場でのジェンダーバイアスや障壁について、経営層と女性管理職がオープンに議論する場を設けている。
2023年度の男性労働者の育児休業等取得率は87%である。セミナー開催やメッセージ配信により性別役割分業意識を払拭し、性別等の属性に関わらず誰もが活躍できる職場環境を整えるとともに、男女ともに家庭と仕事の両立を実現できる働き方の変革に取り組んでいる。
2023年度の労働者の男女の賃金の差異は82.5%である。当社及び基幹事業会社では、同じ役割であれば男女で賃金の差は設けていないが、主に以下の要因により女性より男性の賃金が高くなっていると考えている。
イ.女性の出産・育児期のキャリアの断絶
性別役割分業意識による出産・育児期のキャリア断絶により、一時的に仕事をペースダウンする女性が多く、結果として賃金が高い傾向にある管理職層の比率が女性に比べ男性の方が高くなっている。
ロ.若年層女性従業員の増加
女性活躍推進の観点から女性の採用を強化しており、結果として賃金の低い傾向にある若年層の比率が男性に比べ女性の方が高くなっている。
ハ.扶養手当など諸手当の支給有無の差
女性よりも男性の方が家族を扶養している割合が高い等、諸手当が支給されている比率が女性に比べ男性の方が高くなっている。
イ.キャリア継続への支援
2023年4月より、育児休業を取得した社員の復職支援施策として、関東近郊35か所の企業主導型保育所の利用を可能とする制度を導入している。
また、育児休業の取得等により不足しがちな経験を補完するため、キャリア実現の意識を高めるキャリア形成支援を行うとともに、リーダー育成等の様々な研修を提供している。
加えて、リモートワーク制度やフレックスタイム制度の活用により、通勤時間の削減や柔軟な勤務が可能となり、社員の働き方の選択肢が拡大している。引き続きTEPCO Work Innovationを推進し、場所や時間に囚われず働き、キャリアを継続できる環境を整えていく。
ロ.若年層女性従業員の確実な育成
当社及び基幹事業会社では、長期的な視点で人財を育成している。若年層に対しては、階層別研修をはじめ、自律的な学びの機会を付与し、個人が持つ能力を発揮できるよう成長を後押ししている。
(https://www.tepco.co.jp/about/ir/library/annual_report/index-j.html)
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載している。また、必ずしもこれに該当しない事項についても、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示している。
当社では、社長を統括責任者、最高リスク管理責任者をリスク運用・管理責任者とするリスク管理体制を整えており、各基幹事業会社の社長、リスク管理担当役員等と連携することにより、平時・リスク顕在化時における当社グループのリスク管理を統括している。取締役及び執行役は、当社及びグループ会社の事業活動に関するリスクを定期的に、また必要に応じて把握・評価し、毎年度の経営計画に適切に反映している。また、グループ全体のリスク管理が適切になされるよう社内規程を整備している。
当該リスクは、社内規程に従い、業務所管箇所が、職務執行の中で管理することを基本とし、複数の所管に関わる場合は、組織横断的な委員会などで審議の上、適切に管理している。
経営に重大な影響を及ぼすおそれのあるリスクについては、執行役社長を委員長とする「リスク管理委員会」において、リスクの顕在化を予防するとともに、万一顕在化した場合には迅速かつ的確に対応することにより、経営に及ぼす影響を最小限に抑制している。加えて、従業員に対して、関係法令教育や社内規程・マニュアルの教育を定期的に実施している。
しかしながら、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況にあり、以下のリスクが顕在化した場合、事業に大きな影響を与える可能性がある。なお、各リスク項目の記載順序については、事業への影響度や発現可能性などを踏まえて判断した重要度に基づいている。
本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
[資産・負債・純資産]
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ1兆323億円増加し、14兆5,954億円となった。これは、流動資産が増加したことなどによるものである。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ6,163億円増加し、11兆574億円となった。これは、有利子負債が増加したことなどによるものである。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ4,160億円増加し、3兆5,380億円となった。これは、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによるものである。この結果、自己資本比率は24.1%と前連結会計年度末に比べ1.3ポイント上昇した。
[概要]
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比14.7%減の6兆9,183億円、経常損益は4,255億円の利益(前連結会計年度は2,853億円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損益は2,678億円の利益(前連結会計年度は1,236億円の損失)となった。
[売上高]
当連結会計年度における各セグメントの売上高(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが7,085億円(前連結会計年度比11.8%増)、フュエル&パワーが38億円(前連結会計年度比0.9%減)、パワーグリッドが2兆2,050億円(前連結会計年度比22.0%減)、エナジーパートナーが5兆7,443億円(前連結会計年度比9.9%減)、リニューアブルパワーが1,581億円(前連結会計年度比1.2%増)となった。
総販売電力量は、前連結会計年度比5.8%減の2,287億kWhとなった。
[経常損益]
当連結会計年度における各セグメントの経常損益(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが△1,271億円(前連結会計年度670億円)、フュエル&パワーが1,749億円(前連結会計年度△303億円)、パワーグリッドが1,567億円(前連結会計年度比117.8%増)、エナジーパートナーが3,261億円(前連結会計年度△3,282億円)、リニューアブルパワーが451億円(前連結会計年度比13.1%減)となった。
[親会社株主に帰属する当期純利益]
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、特別利益に原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金1,389億円を計上した一方、特別損失に原子力損害賠償費1,511億円、災害特別損失1,109億円を計上したことなどから、3,023億円となった。ここに、法人税、住民税及び事業税349億円、法人税等調整額△22億円、非支配株主に帰属する当期純利益17億円を計上し、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、2,678億円となった。なお、1株当たり当期純利益は167円18銭となった。
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,177億円(72.2%)増加し、1兆2,351億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、6,730億円(前連結会計年度は756億円の支出)となった。これは、税金等調整前当期純利益が増加したことなどによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、前連結会計年度比79.7%増の6,987億円となった。これは、投融資の回収による収入が減少したことなどによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、前連結会計年度比69.2%増の5,414億円となった。これは、短期借入れによる収入が増加したことなどによるものである。
当社グループは、原子力発電等を行う「ホールディングス」、火力発電等を行う「フュエル&パワー」、送電・変電・配電による電力の供給等を行う「パワーグリッド」、電気の販売等を行う「エナジーパートナー」及び再生可能エネルギー発電等を行う「リニューアブルパワー」の5つのセグメントがコスト意識を高めるとともに自発的に収益拡大に取り組みつつ、一体となって電気事業を運営している。加えて、電気事業が連結会社の事業の大半を占めており、また、電気事業以外の製品・サービスは多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくないため、生産及び販売の実績については、電気事業のみを記載している。
(注) 1.上記発電実績には、連結子会社の一部を含んでいる。
2.2019年4月1日付けで㈱JERAが承継会社となり、東京電力フュエル&パワー㈱の燃料受入・貯蔵・送ガス事業及び既存火力発電事業等を吸収分割により承継させた。これにより、火力発電電力量は東京電力パワーグリッド㈱の離島における発電電力量である。
(a) 総販売電力量
(注) 連結子会社の一部を含んでいる。
(b) 電気料収入
(注) 1.連結子会社の一部を含んでいる。
2.電気料収入は小売販売電力量に相当する。
3.「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」及び「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づき実施される「電気・ガス価格激変緩和対策事業」により、国が定める値引き単価による電気料金の値引きを行っており、その原資として補助金(以下、「当該補助金」という。) 476,848百万円を受領している。内訳は「パワーグリッド」が6,206百万円、「エナジーパートナー」が470,642百万円である。電気料収入には当該補助金収入を含んでいない。
(c) 託送収入
(注) セグメント間取引消去前。
東京電力エナジーパートナー株式会社は、2024年1月17日に認可を受けた東京電力パワーグリッド株式会社の託送供給等約款の見直しにともない、託送料金の変動分を電気料金に反映すべく、2024年2月6日に経済産業大臣に特定小売供給約款の変更を届出し、2024年4月1日から実施している。
2024年4月1日から見直しされる主要契約種別の料金単価は下記のとおりである。
電気料金表
(消費税等相当額を含む料金単価)
(注) 1.上記契約種別のほか、臨時電灯、臨時電力、農事用電力がある。
2.料金単価欄の「夏季」とは毎年7月1日から9月30日までの期間をいい、「その他季」とは毎年10月1日から翌年の6月30日までの期間をいう。
3.低圧電力は、2024 年9月検針日以降のご使用分より力率割引・割増を廃止することにともない基本料金を変更する。
4.原油・LNG(液化天然ガス)・石炭などの燃料価格の変動に応じ毎月自動的に料金を調整する燃料費調整制度が導入されている。なお、燃料費調整制度の算定方法は、「(参考)燃料費調整」に記載している。
(参考)燃料費調整
特定小売供給約款における燃料費調整
(注) 定額制供給についても、同様に基準単価がある。
東京電力パワーグリッド株式会社は、2023年12月1日、電気事業法第18条第1項に規定された「託送供給等約款」の変更に係る認可申請(発電側課金制度の導入に伴う供給条件の設定及び電気事業法第17条の2第4項の規定により2023年11月24日に経済産業大臣から承認された「託送供給等に係る収入の見通し」の変更に基づく新たな料金を設定)を経済産業大臣に行い、2024年1月17日に経済産業大臣の認可を受け、2024年4月1日から実施している。
主要託送供給料金は下記のとおりである。
託送供給料金表
(消費税等相当額を含む料金単価)
(注) 1.上記契約種別のほか、臨時接続送電サービス、発電量調整受電計画差対応電力、接続対象計画差対応電力、需要抑制量調整受電計画差対応電力、給電指令時補給電力がある。
2.SBとは、電流制限器又はその他適当な電流を制限する装置。
3.時間帯別接続送電サービスにおける「昼間時間」とは、毎日午前8時から午後10時までの時間をいい、「夜間時間」とは、「昼間時間」以外の時間をいう。ただし、日曜日、祝日(「国民の祝日に関する法律」に規定する休日)及び1月2日・3日、4月30日、5月1日・2日、12月30日・31日は、全日「夜間時間」扱いとする。
4.系統設備効率化割引とは、需要地近郊や既に送配電設備が手厚く整備されている地域など、送配電設備の追加増強コストが小さい地域に接続する電源に対して、発電側課金の負担額を軽減するものである。
5.従来適用してきた近接性評価割引は、新たに導入する割引制度と趣旨や割引の考え方が重複している面もあることから廃止する。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものである。
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、燃料価格や卸電力市場価格の低下がみられたものの、円安の継続や資材価格の高騰などにより、依然として厳しい状況が続いている。こうした状況のもと、当社グループは、経営の効率化や電気料金の見直しにより収益基盤の安定化を図るとともに、カーボンニュートラルや防災を軸とした新たなエネルギーサービス事業を展開するなど、事業環境の変化に対応できる柔軟な事業構造への転換を進めてきた。
当社グループの当連結会計年度の小売販売電力量は、主に特別高圧・高圧のお客さまが東京電力エナジーパートナー株式会社に電力需給契約を切り替えたことにより、前連結会計年度に比べ6.2%増の1,962億kWhとなったが、卸販売電力量が減少したことから、総販売電力量は、前連結会計年度に比べ5.8%減の2,287億kWhとなった。
当連結会計年度の連結収支については、収益面では、燃料価格や卸電力市場価格の低下等により、パワーグリッド及びエナジーパートナーにおける売上が減少したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度に比べ14.7%減の6兆9,183億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は12.0%減の7兆1,495億円となった。
一方、費用面では、徹底したコスト削減に加え電気の調達費用が減少したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度に比べ20.0%減の6兆7,240億円となった。
この結果、経常利益は4,255億円(前連結会計年度は2,853億円の経常損失)となった。
また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金1,389億円を特別利益として計上する一方、原子力損害賠償費と災害特別損失を合わせ2,620億円を特別損失として計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は2,678億円となった。
当連結会計年度における各セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
[ホールディングス]
販売電力料収入が増加したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度に比べ11.8%増の7,085億円となった。
一方、特別負担金を計上したことなどから、経常損益は前連結会計年度比1,941億円減の1,271億円の損失(前連結会計年度は670億円の経常利益)となった。
[フュエル&パワー]
持分法適用関連会社である株式会社JERAにおいて、燃料費調整制度の期ずれによる好転影響があったことなどから、経常損益は前連結会計年度比2,052億円増の1,749億円の利益(前連結会計年度は303億円の経常損失)となった。
[パワーグリッド]
燃料価格や卸電力市場価格の低下により需給調整に係る売上が減少したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比22.0%減の2兆2,050億円となった。
一方、電気の調達費用が減少したことなどから、経常利益は前連結会計年度比117.8%増の1,567億円となった。
[エナジーパートナー]
卸販売電力量の減少などにより、売上高(営業収益)は前連結会計年度比9.9%減の5兆7,443億円となった。
一方、燃料費等調整制度の期ずれによる好転影響があったことや、電気の調達費用が減少したことなどから、経常損益は前連結会計年度比6,543億円増の3,261億円の利益(前連結会計年度は3,282億円の経常損失)となった。
[リニューアブルパワー]
子会社の売上高が増加したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比1.2%増の1,581億円となった。一方、修繕費が増加したことなどから、経常利益は前連結会計年度比13.1%減の451億円となった。
(a) キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。
(b) 有利子負債
2024年3月31日現在の社債、長期借入金、短期借入金、コマーシャル・ペーパーについては、以下のとおりである。
当連結会計年度(2024年3月31日)
上記については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)2.金融商品の時価等に関する事項(注2)社債、長期借入金及びその他の有利子負債の連結決算日後の返済予定額」にも記載。
当社グループとして、総合特別事業計画(2012年5月に主務大臣より認定。)において機構から1兆円の出資を受けるとともに、取引金融機関に対し追加与信及び借換え等による与信を維持することなどをお願いしており、ご協力をいただいている。これらの機構や金融機関の支援・協力のもとで、自己資本比率の改善、公募社債市場への復帰を2017年3月に実現しており、2023年度はパワーグリッドにおいて3,600億円の公募社債を発行し、リニューアブルパワーにおいて500億円のグリーンボンドを発行した。引き続き社債の発行を継続するなど、当社グループの自律的な資金調達力の回復もはかっていく。
金融機関からの借入金や社債の発行により調達した資金は、電気事業等に必要な設備資金、借入金返済及び社債償還等に充当している。設備投資計画については、「第3 設備の状況」のとおりであり、借入金返済及び社債償還の予定については、「② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況 イ.キャッシュ・フロー等 (b) 有利子負債」のとおりである。
また、当社グループでは、グループ全体でより効率的な資金の運用を図る観点からグループ金融制度を採用している。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
四次総特のとおり、賠償・廃炉に関して、当社グループ全体で年間約5,000億円程度の資金を確保する。加えて、年間約4,500億円規模の利益創出も可能な収益基盤を目指す。
当連結会計年度における経常利益は4,255億円となった。
該当事項なし。
当社グループの技術開発については、「東京電力ホールディングス㈱福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」並びに「四次総特」に基づき、「中長期ロードマップに基づいた廃炉の推進に向けた技術開発」、「原子力安全の確保と電気の安定供給の達成に資する技術開発」及び「カーボンニュートラル実現に向けた技術開発」を中心として取り組んでいる。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、