文中の将来に関する事項は、提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものであり、当社グループとしてその実現を約束するものではない。
(1) 経営理念
これまで、「安全最優先」と「社会的責任の全う」を経営の基軸に位置付け、「お客さまと社会のお役に立ち続ける」ことを使命とする経営理念のもと、事業活動を展開してきたが、金品受取り問題等では、「社会的責任の全う」という点について、社内外から厳しいご指摘をいただいた。これを受け、新しい関西電力グループとして創生し、持続的に成長していくための指針として、2021年3月に「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」を策定した。
この経営理念は、当社グループの最上位概念として、お客さまや社会にとっての「『あたりまえ』を守り、創る」という存在意義のもと、「『公正』『誠実』『共感』『挑戦』」という価値観を大切にして事業活動を行い、持続可能な社会を実現することを掲げている。
(2) ゼロカーボンビジョン2050
国における2050年カーボンニュートラル宣言など地球温暖化対策への社会的な要請が一層高まる中、さらなる地球温暖化問題への対応を自主的かつ積極的に推進していく必要があるとの考えのもと、2021年2月、当社グループは「関西電力グループ『ゼロカーボンビジョン2050』」を策定し、事業活動に伴うCO2排出を2050年までに全体としてゼロとすることを宣言した。ビジョンにおいては、ゼロカーボン実現に向けた取組みの3つの柱として、「①デマンドサイドのゼロカーボン化」、「②サプライサイドのゼロカーボン化」、「③水素社会への挑戦」を掲げている。
また、2022年3月には、ビジョン実現に向けた道筋である「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を策定し、中間地点として2030年度の目標を設定するとともに、ゼロカーボン社会の実現に向けて取り組む内容を、「お客さまや社会の皆さまとともに取り組むこと」、「関西電力グループ自ら取り組むこと」の2つの観点で整理した。
これまでの取組みの進捗や世界的な脱炭素化の潮流の高まりを踏まえ、2024年4月に「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を改定し、新たにScope3を含むGHG排出量目標を設定するなど、取組みを加速させている。
今後も当社は再生可能エネルギーの主力電源化や、原子力の最大限活用、火力のゼロカーボン化、ゼロカーボン水素の活用に取組み、排出量削減を着実に進める。また、電化や蓄電池などの多種多様なソリューションの提案により、お客さまや社会の皆さまと共に社会全体のCO2排出量を削減していく。
引き続き、お客さまや事業パートナー、自治体など、あらゆるステークホルダーの皆さまと力を合わせ、様々な取組みを進めていく。
(3) 関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)
当社グループは、2021年、5ヵ年の実行計画として「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」を策定した。その後、国際情勢を受けたエネルギー市場の不安定化や脱炭素化の潮流、デジタル技術の一層の進展等、当社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、2024年4月、中期経営計画のアップデートを行った。アップデートでは、2025年度の財務目標と後半2年間の取組みに加え、中長期の目指す姿を示している。
中期経営計画の最終年度にあたる2025年度についても、引き続き、事業運営の大前提となる「ガバナンス確立とコンプライアンス推進」および3本柱(EX、VX、BX)に沿った取組みをグループ一丸となって推進し、中期経営計画の目標達成に向けて全力を尽くしていく。
財務目標(連結)(2024年4月公表)
(注)1 ROA〔総資産事業利益率〕=事業利益〔経常利益+支払利息〕÷ 総資産〔期首・期末平均〕
2 ROIC〔投下資本利益率〕=税引後事業利益 ÷ 投下資本〔期首・期末平均〕
3 各セグメント損益には、連結子会社および持分法適用会社からの受取配当金を含まない。
(4) 関西電力グループ 2025年度計画
当社グループは、中期経営計画の進捗状況や経営環境の変化を踏まえ、2025年4月に「関西電力グループ 2025年度計画」を策定した。
・事業運営の大前提「ガバナンス確立とコンプライアンス推進」
適正な事業運営のため、経営の透明性・客観性を確保するとともに、一人ひとりが「気づく」「言える」
「行動する」を実践できるよう、引き続き、組織風土改革および内部統制強化を両輪で推進
・取組みの3本柱
EX:「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」に基づき、脱炭素化を牽引
VX:既存事業の周辺領域・重なり合う領域で、お客さまや社会の脱炭素ニーズの多様化・高度化をふまえた
新たな価値提供を加速
BX:「人」、「しくみ」、「財務」の視点で、経営のリーダーシップのもと、4つの「高める」の取組みお
よびDX推進・コスト構造改革等を加速
(5) ガバナンス確立とコンプライアンス推進に向けた取組み
金品受取り問題をはじめとする一連の不適切事象に共通する課題として、環境変化とリスクへの確実な対応や組織風土面に問題があるとの認識のもと、内部統制の抜本的な強化と、組織風土改革の取組みを、両輪で推進する。
内部統制強化では、事業運営の適正性確保に向け、法令・ルールの遵守に留まらず、自律的かつ継続的な改善ができる組織作りを目指す。
組織風土改革では、役員・従業員一人ひとりが誇りを持ち、業務に活き活きと取り組むことができ、安心して仕事ができる会社を目指す。
文中の将来に関する事項は、提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものである。
(1) ガバナンス
当社グループは、経営の最上位概念である「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」において、お客さまや社会にとっての『「あたりまえ」を守り、創る』という存在意義のもと、『「公正」「誠実」「共感」「挑戦」』という価値観を大切にして事業活動を行うことで持続可能な社会を実現することを掲げている。また、この経営理念のもと、具体的にどのように行動すべきかを「関西電力グループ行動憲章」において定めており、当社グループの全ての役員、従業員が本憲章に基づいて行動することで、当社グループの持続的成長ならびに持続可能な社会の実現を目指している。
・「関西電力グループ行動憲章」
<基本的な考え方 抜粋>
「関西電力グループ行動憲章」は、「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」のもと、関西電力グループの役員、従業員が、具体的にどのように行動すべきかを示したものであり、全ての社内規程等の前提として、私たちの事業活動における判断の拠り所となるものです。関西電力グループの事業活動は、お客さま、社会のみなさま、株主・投資家のみなさま、ビジネスパートナー、従業員といった様々なステークホルダーのみなさまによって支えられています。こうしたみなさまから頂戴する信頼こそが、関西電力グループが企業としての使命を果たし、持続的に成長を遂げていくための基盤です。関西電力グループは、コンプライアンスを実践・徹底すること、すなわち、法令遵守はもとより時代の要請する社会規範とは何かを常に考え、経営理念に基づき行動し続けることで、社会の一員としての責務を果たします。また、グループの事業活動に対して様々なステークホルダーのみなさまから寄せられる期待に誠実にお応えすることにより、みなさまからの信頼を確固たるものとしていきます。このような認識のもと、関西電力グループは、全ての役員、従業員がそれぞれの持てる知恵を結集し、協働することで、社会の持続的発展に貢献します。
1.コンプライアンスの実践・徹底
2.公正な事業活動
3.適正な情報開示・管理と対話
4.人権の尊重とダイバーシティの推進
5.安全の確保
6.お客さまに選ばれる商品・サービスの提供
7.よりよき環境の創造を目指した取組み
8.地域社会の課題解決・発展に向けた取組み
9.危機管理の徹底
10.役員の責任と本憲章の徹底
・経営理念・行動憲章の実践に向けた活動
当社グループは、2021年3月に策定した経営理念および行動憲章を従業員一人ひとりが真に理解し、日々の業務において実践していくための活動計画を定めており、本計画に基づいて、経営層と従業員との意見交換、各種研修、各職場でのディスカッション、メールマガジンの配信、グループ会社支援等の活動を積極的に行っている。この活動の一環として、「経営理念」、「コンプライアンスチェック」、「安全行動の誓い」を記載した携帯用のコンダクトカードを全従業員に配布しており、従業員は、このカードの裏面に自らの行動宣言を明記し、日々の業務における行動や目標の確認に活用している。
・サステナビリティ推進体制
当社グループは、お客さまと社会のお役に立つ企業グループとして持続的な成長・発展をとげるとともに、グローバルな社会課題の解決を通じた持続可能な社会の実現を目指してサステナビリティに資する取組みを推進している。こうした取組みをより一層推進するため、社長を議長とした「サステナビリティ推進会議」を設置し、社会の持続的な発展に貢献するためのサステナビリティ推進活動に関する総合的方策の策定を行い、具体的な活動を展開している。こうした体制のもと、各事業本部などはサステナビリティ推進会議で策定された方針に基づき、それぞれの活動を展開している。グループ会社においても、当社とコミュニケーションを取りながら、自律的にサステナビリティ活動を展開している。
また、業務執行を担う執行役の報酬については業績連動報酬を支給しており、非財務指標として、CO2排出削減量・社外ESG評価・従業員、組織エンゲージメントを採用している。
役員の報酬等については、P.86
(体制図)

・取締役会
独立社外取締役を議長とし、サステナビリティに関する事項を含む当社グループの経営に関わる重要事項について決議している。
・執行役会議
社長を議長とし、取締役会の決定した基本方針に基づいて、当社グループ全般の重要な業務執行方針および計画ならびに業務執行に関し審議するとともに、必要な報告を受け、迅速かつ適切な会社運営を実施している。
・サステナビリティ推進会議
社長を議長とし、当社グループ全体のサステナビリティに関するリスク・機会を含む総合的方策の策定や、実践状況の確認を行っている。
・内部統制部会
コンプライアンス推進本部長(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を主査とし、サステナビリティ関連を含む重要リスク項目の抽出、その管理状況の把握・評価を行っている。リスク評価結果については、定期的に取締役会まで報告し、必要に応じてリスク管理の仕組み、体制の改善を行っている。
<気候変動>
当社グループは、気候変動問題を経営上の重要課題として認識し、以下の会議体にて評価・管理し、必要に応じて、各業務執行部門に対して、助言・指導を行っている。(サステナビリティ全般に組み込まれている共通のガバナンス体制については、P.15(1)ガバナンスを参照。)
・ゼロカーボン委員会
社長を委員長とし、「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」の実現に向けて、「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を策定し、ゼロカーボンの実現に向けた取組み状況の共有や計画の具体化を行い、気候変動への対応を推進している。
なお、2024年4月の「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」改定にあたっては、ゼロカーボン委員会にて議論を行い、取締役による意見交換会を経たうえで、取締役会で決議されている。
https://www.kepco.co.jp/sustainability/environment/zerocarbon/index.html
https://www.kepco.co.jp/sustainability/environment/zerocarbon/pdf/zerocarbon_roadmap_01.pdf
(気候変動に関するガバナンス体制図)

(2) 戦略
当社グループが持続的な成長をとげるとともに、SDGs等のグローバルな社会課題の解決を通じて社会の持続的な発展に貢献することを目的とし、中期経営計画(2021-2025)の策定に合わせて下記10個のマテリアリティ(重要課題)を特定している。
その中でも、気候変動への対応については、「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」を中期経営計画と並んで、理念体系における「存在意義」の具体化として位置づけ、カーボンニュートラルの達成に向けて、「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を策定し、脱炭素に向けた取組みを推進している。
(特化したマテリアリティと関連するSDGS)

(マテリアリティ特定プロセス)

<気候変動>
・シナリオ分析
当社グループは、将来の気候変動に関するリスクおよび機会が与える財務上の影響を把握し経営戦略の検討に反映するため、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に係る政府間パネル(IPCC)等を参考に、当社独自のシナリオ分析を行っている。具体的には、1.5℃、2℃および4℃程度の気温上昇といった複数のシナリオにおいて、2050年における日本国内の電力需要や電源別設備容量に加えて、関西エリアの電力需要等を想定・分析している。
(シナリオ分析結果)

(気象庁の予測による年最大日降水量の将来変化※(平均値))

・気候変動に関するリスク・機会の特定と対策
ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニーを目指す当社グループは、上述の1.5℃シナリオ(2050年カーボンニュートラル達成)をメインシナリオに設定し、気候変動が当社グループに与える影響を評価するとともに、4℃シナリオについても同様の評価を行った。1.5℃シナリオにおける移行リスク・4℃シナリオにおける物理リスクを評価することにより、各シナリオのリスクを網羅できると考えている。なお、以下分析結果については、当社グループ戦略へ適切に反映している。


・当社グループの気候変動戦略
これまでの取組みの進捗を踏まえ、2050年ゼロカーボン社会実現に向け、ゼロカーボン化に向けた取組みを更に加速するため、2024年4月に「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を改定した。ゼロカーボンロードマップに基づいた戦略を展開し、「お客さまや社会の皆さまとともに取り組むこと」と、再エネ、原子力、ゼロカーボン火力等の「関西電力グループ自ら取り組むこと」を着実に実施することで、当社グループ事業は、いずれのシナリオにおいても、レジリエンスを確保できると評価している。
<人的資本>
関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)で掲げた、経営基盤の強化に向けたBXの取組みにおける人財基盤強化の全体像は下図のとおり。


・人財育成方針・社内環境整備方針
(3) リスク管理
当社グループは、「関西電力グループ リスク管理規程」に則り、組織目標の達成に影響を与える可能性のある事象をリスクとして認識、評価したうえで、必要な対策を実施するとともに、対策後にその評価を行い、改善していく一連のプロセスにより、当社グループへの影響を適切なレベルに管理している。
サステナビリティ関連を含む当社グループの事業活動に伴うリスクについては、各業務執行部門(グループ会社含む)が自律的に管理することを基本としつつ、組織横断的に重要とされるリスクに関しては、専門性を備えたリスク管理箇所が、各業務執行部門に助言・指導を行うことで、リスク管理の強化を図っている。
当社グループのリスク管理体制、リスク管理状況、事業等のリスクについては、P.28「
<気候変動>
気候変動リスクは、財務リスク等、気候変動以外のリスクとともに重要リスク項目として抽出されており、内部統制部会のなかで、俯瞰的にリスク管理状況を把握・管理している。
気候変動に関連する個別リスクについてはゼロカーボン委員会等で議論・評価し、評価結果等は適宜内部統制部会へ報告している。また、検討状況を執行役会議等にも提示し、必要なリスク対策をグループ全体の計画・方針に反映することで、将来にわたる持続的成長を実現していく。
(4) 指標及び目標
<気候変動>
「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」の実現に向け、当社グループは「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を策定し、中間地点とした2030年度の目標を設定している。加えて、当社グループは2023年度より、ゼロカーボン関係の取組状況について社内管理指標を設定し、目標達成に向けて、進捗の管理を実施している。また、従来設定していた2025年度に発電によるCO2排出量を2013年度比で半減する目標は、原子力7基の再稼動実現により、2年前倒しで達成したことから、2024年4月のゼロカーボンロードマップ改定にあたり、新たにチャレンジングな温室効果ガス(GHG)削減目標を設定している。

(GHG排出量(Scope1,2,3))

※1 「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver.2.6)」(環境省/経済産業省)に基づきサプライチェーン全体の温室効果ガスの排出量を算定。排出原単位については「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.4)」に基づき算定。算定対象について、2021年度は当社および関西電力送配電(株)、2022年度からは(株)関電エネルギーソリューション、関電不動産開発(株)、(株)オプテージを追加。
※2 「地球温暖化対策の推進に関する法律(以下、温対法という)」に基づく報告(事業者)中の直接的な温室効果ガス排出量(エネルギー起源CO2、SF6*、N2O)と、温対法に基づく報告(事業者)に含まれない車両燃料由来のCO2排出量を合算。 *暦年値
※3 温対法に基づく報告(事業者)のうち、間接的なCO2排出として、他社から購入した電気と熱によるCO2排出量を合算。電気は電気事業者別排出係数の調整後排出係数を使用。熱は熱供給事業者ごとの排出原単位を2023年度から使用。
※4 スコープ1およびスコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)。
※5 Σ({自社が購入・取得した製品またはサービスの金額データ)*×(排出原単位)}
*2021、2022年度はガス事業にかかるガス購入分もカテゴリー1に計上。2023年度からは燃料およびエネルギー活動と再整理し、カテゴリー3に計上。なお、使用済燃料再処理等拠出金費等の原子力関連の費目については、現時点で適切な排出原単位がなく合理的な算定が困難と判断し、算定からは除外。
※6 Σ({設備投資額)*×(排出原単位)} *無形固定資産(ソフトウェア)含む。
※7 Σ({燃料・熱消費量)×(排出原単位)}*1+Σ({他社購入電力量)×(排出原単位)}*2+Σ({他社販売電力量)×(電気事業者別排出係数)}*3
*1:ガス事業にかかるガス購入分につき、燃料およびエネルギー活動として再整理し、2023年度からカテゴリー3にて計上。
なお、排出原単位はIDEA(Ver.3.4)を利用。
*2:他社購入電力の採掘・輸送にかかるCO2排出。
*3:他社販売電力の生成にかかるCO2排出。
※8 Σ({貨物自動車・資機材の燃料消費量)×(排出原単位)} 2023年度から(株)関電エネルギーソリューションのローリー配送によるLNG販売に伴うCO2排出量を計上しており、Σ({輸送距離)÷(燃費)×(単位発熱量)×(排出係数)×44/12}にて算定。
※9 ①産業廃棄物処分(埋立・リサイクル)および②産業廃棄物輸送*による排出量
*省エネ法(荷主)に基づく/委託輸送分を計上・自家輸送はスコープ1に計上。
Σ{①(廃棄物処理量〔有価物除く〕)×(廃棄物種類・処理方法別の排出原単位)}+②Σ({燃料消費量)×(排出原単位)}
※10 Σ{(従業員数)×(排出原単位)}
※11 Σ{(従業員数)×(営業日数)×(排出原単位)}勤務形態・都市階級別にて計上。
※12 ①ガス販売および②不動産販売ならびに③通信サービス販売事業による排出量①Σ({ガス総販売量)×(排出原単位)}+②Σ({不動産の売却量〔戸数or延床面積〕)×(排出原単位)×(残存法定耐用年数)}+③Σ{(対象年度の開通実績数)×(生涯排出期間)×(1日当たりの使用製品の電力使用量)×(排出原単位)}
※13 ①不動産販売および②通信サービス販売事業による排出量①Σ({不動産売却量〔㎡〕)×(排出原単位)}+②Σ({物販重量)*×(排出原単位)} *売り切り製品以外は算定から除外。
※14 Σ({エネルギー使用量)×(排出原単位)}算定対象については、2022年度は関電不動産開発(株)、(株)オプテージ。2023年度は(株)関電エネルギーソリューションを追加。賃貸する不動産、情報通信機器、エネルギー関連設備等のお客さま使用に伴うCO2排出量。
※15 事業特性上の理由等から該当なし。
※16
https://www.kepco.co.jp/share_corporate/pdf/2024/report2024.pdf
<人的資本>
上記(2)戦略において記載した、人財の多様性の確保を含む人財育成方針および社内環境整備に関する方針に基づき、当社および関西電力送配電株式会社では、以下の指標を用いている。
なお、連結ベースでの指標及び目標の開示については、各社毎に事業内容および事業環境が多岐に亘るため、連結グループに属する全ての会社を総合した指標は、設定していない。
(インプット指標)
(注)1 実践研修受講後に実施するアンケートにおいて、研修を契機とする習得した知識の業務での実践や、DXに関する自律的な学習の実施等、従業員の自律性に基づく追加アクションを行ったと回答した者の比率を表す。
2 医療・運輸職員を除く。
3 延べ100万労働時間あたりの労働災害による休業1日以上の死傷者数のことで、災害の発生頻度を表す。
(アウトプット指標)
(注)1 過去1年間において、成長志向を持ち、自らアクションを起こした者の比率
2 過去1年間において、成長実感が得られた者の比率
3 多様性を活かす職場であると感じている者の比率
4 ①職場において、いかなるハラスメントも許さないという意識が定着していると感じている者の比率
②働き方について、時間・場所ともに満足している者の比率
5 社内アンケートにおける、以下3設問に対して「(かなり+わりと)あてはまる」と回答した者の比率
①「あなたは、自分の仕事にやりがいや誇りを感じている。」
②「あなたは、将来において、会社での仕事のやりがいが高まっていると思う。」
③「あなたは関西電力・関西電力送配電が好きですか。」
当社グループ(当社および連結子会社)は、「関西電力グループ リスク管理規程」に則り、組織目標の達成に影響を与える可能性のある事象をリスクとして認識、評価したうえで、必要な対策を実施するとともに、対策後にその評価を行い、改善していく一連のプロセスにより、当社グループへの影響を適切なレベルに管理している。
当社グループの事業活動に伴うリスクについては、各業務執行部門が自律的に管理することを基本とし、組織横断的かつ重要なリスク(情報セキュリティ、子会社の経営管理、人財基盤、市場リスク、財務報告の信頼性、環境、エネルギー政策、災害、コンプライアンス(競争環境における法令含む)、調達の適正性)については、必要に応じてリスクの分野ごとに専門性を備えたリスク管理箇所を定め、業務執行部門に対して、助言・指導を行うことで、リスク管理の強化を図っている。さらに、リスクを統括的に管理する内部統制部会を設置し、CCOを「リスク管理統括責任者」とする体制のもと、当社グループの事業活動に伴うリスクを適切なレベルに管理するよう努めている。
内部統制部会は、リスク評価結果等を定期的に組織風土改革会議および取締役会へ報告し、必要に応じてリスク管理の仕組み、体制の改善を行っている。さらに、リスク管理体制の整備と運用に関して、経営監査室による内部監査を受け、監査結果を基に改善を図っている。
リスク管理体制 (2025年6月25日時点)

2024年度中に内部統制部会を7回開催し、当社グループの事業活動に大きく影響を与える重要リスク項目を抽出し、その管理状況を全社的視点から把握・評価している。
重要リスク項目は、リスク対策を実効的かつ適切に行っていく観点から、経営層で議論を重ね、収支に影響を与える各構成要素に着目して抽出し、事業別(事業ウェイトの大きい電気事業特有と全事業共通)と要因別(戦略、オペレーション、ハザード、財務・金融)の観点で、体系立てて整理するとともに、システム不具合等、近時のリスク事象への対応を踏まえた項目としている。電気事業特有のリスクは、《1》気候変動、《2》原子力関連リスク、《3》広域停電等、《4》競争環境の急激な変化への対応遅れ、全事業共通のリスクは、《5》法規制・規制政策変更、《6》イノベーションの停滞、《7》資産価値毀損、《8》人財基盤の揺らぎ、《9》サプライチェーンの不安定化・断絶、《10》ITガバナンス・情報セキュリティリスク、《11》ガバナンス・コンプライアンスリスク、《12》環境問題(環境法令違反等)、《13》自然災害・国際情勢の変化等、《14》市場・市況変動リスクである。
(分類、重要リスク項目、具体的なリスクの内容は、下表のとおり)

重要リスク項目に関連するリスクについては、事業毎の実態・特性を見極めつつ、発生可能性や影響度などの観点から重要度を評価した上で、対策の検討を行い、期中のリスク対策結果を踏まえ、改めて期末に重要度評価を実施することで、リスク管理のPDCAを回している。
(3) 事業等のリスク
当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性のある「重要リスク項目」の具体的な内容は、以下に記載のとおりである。なお、本記載内容は、提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものであり、今後、経済状況や原子力発電を含むエネルギー政策、ならびに環境政策の変化等の影響を受ける可能性がある。なお、影響額については、一定の前提に基づき算定した理論値であり、前提諸元が急激かつ大幅に変動する場合等には、影響額により算出される変動影響が実際の費用変動と乖離する場合がある。
《1》気候変動
当社グループは、TCFD提言を踏まえて気候変動が当社グループに与える影響を評価し、分析結果については、当社グループ戦略へ適切に反映している。気候変動に関するリスクとして、下記の移行リスクと物理リスクを認識しており、これらのリスクによって、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
<移行リスク>
政策:CO2排出に対する新たな環境規制の導入・強化、国のエネルギー政策において示される電源構成の変化等
技術:分散型電源導入拡大等による系統電力需要の減少、電源構成の変化による需給調整の不安定化等
市場:脱炭素にかかるお客さまニーズにお応えできないことによる競争力の低下、他社との競争激化や制度変更
等に伴う再エネ開発の減少等
評判:ゼロカーボン社会へ向けた変化に対応できないこと等による、当社評価の低下等
<移行リスク>に対応し、持続可能な社会を実現するため、「ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー」として、事業活動に伴うCO2排出を2050年までに全体としてゼロとすることを「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」において宣言している。今後、デマンドサイドの役割が拡大していく中で、ゼロカーボンソリューションプロバイダーとして、全ての部門(家庭・業務、産業、運輸)において、お客さまのゼロカーボン化を実現する最適なソリューションを提案・提供していく。また、分散型エネルギーリソースの活用やレジリエンスの強化等、多様化する社会ニーズも踏まえて再エネを最大限導入・主力電源化し、それを可能にする送配電系統の高度化、出力安定性に優れエネルギー密度が高い原子力エネルギーの安全最優先を前提とした最大限活用、再エネ大量導入に必要な調整力等に優れた火力のゼロカーボン化に取り組む。加えて、水素社会の実現に向けて、非化石エネルギーを活用したゼロカーボン水素の製造・輸送・供給・発電用燃料としての使用に挑戦していく。「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」の実現に向けて、2030年度を中間地点と位置づけ、当社グループの取組みの道筋を目標とともに「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」で取りまとめており、これまでの取組みの進捗等を踏まえ、2024年4月にロードマップを改定しScope3を含むGHG排出量目標を新たに設定するなど、取組みをさらに加速させている。
国際的には、トランプ米大統領が、就任直後に地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定からの離脱を表明し、世界第2位の温室効果ガス排出国であるアメリカのパリ協定からの離脱は、今後、世界の温暖化対策への取組みやスピードに影響を及ぼす可能性はあるものの、国内では、2025年2月に第7次エネルギー基本計画等が策定され、エネルギーの安定供給確保とGXの同時実現に向けた明確な方向性が示された。当社は従来から脱炭素化の観点のみならず、責任あるエネルギー事業者として安定供給とゼロカーボン化を両立するという方針であり、カーボンニュートラルの達成に向けて、目指すべき方向性は変わらないと考えている。
<物理リスク>
急性:異常気象激甚化等
慢性:降水量の変化による水力発電の稼動率の低下
急性リスクについては、台風・豪雨等(気候変動に起因する異常気象等)により、当社グループ設備への被害・損害、操業への支障や他社からの電気・資機材の調達等への支障が生じ、当社グループサービスの提供が困難になることで、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
急性リスクに対応するため、自然災害に対する迅速復旧に向けた防災訓練の実施、自治体・高速道路会社等との協定締結や、災害時の被害最小化に向けて、送配電系統等設備のレジリエンス強化等、必要な対応を実施していく。
慢性リスクについては、降水量の減少により水力の発電量が減少することで、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
慢性リスクに対応するため、水力発電所の運転実績に応じた最適な運用方法への見直しや効率的・安定的な設備運用等、必要な対応を実施していく。
《2》原子力関連リスク
原子力発電は、エネルギーセキュリティの確保、経済性、地球環境問題への対応の観点から優れた特性を有しており、エネルギー資源の乏しい我が国において、将来にわたって経済の発展や豊かな暮らしを支えるための重要な電源である。一方で、原子力発電は、大量の放射性物質を取扱い、運転停止後も長期間にわたり崩壊熱を除去し続ける必要があるなどの固有の特性を有する。このため、原子力施設の建設・運転・廃止措置、使用済燃料や放射性廃棄物の輸送・貯蔵・処理・処分等の全ての局面において、自然現象、設備故障、人的過誤、破壊・テロ活動、核燃料物質の転用・拡散等により、放射線被ばくや環境汚染を引き起こすリスクがある。原子力発電において、適切な管理を怠って重大な事故を起こせば、長期にわたる環境汚染を生じさせ、立地地域をはじめ社会のみなさまに甚大な被害を及ぼすだけでなく、我が国のみならず世界に対し経済・社会の両面で影響を与えうるなど、社会的信用の低下が生じる事象等が発生し、当社グループの存続可能性に疑義が生じる重大な影響を与える可能性がある。
原子力発電の安全性を向上させるため、全ての役員および原子力発電に携わる従業員が、「ここまでやれば安全である」と過信せず、原子力発電の特性とリスクを十分認識し、絶えずリスクを抽出および評価して、それを除去ないし低減する取組みを継続する。こうした取組みを深層防護の各層において実施することにより、事故の発生防止対策を徹底し、そのうえで万一、事故が拡大し、炉心損傷に至った場合の対応措置も充実させる。また、「原子力安全推進委員会」において、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策の推進や安全文化の醸成、福島第一原子力発電所事故を踏まえた自主的・継続的な取組みに関して、広い視野から確認、議論を行い、全社一丸となり、取組みを推進している。さらに、社外の有識者を主体とする「原子力安全検証委員会」において、独立的な立場から助言等を得て、安全性向上の取組みに反映している。
我が国において重要な電源である原子力発電を将来にわたって一定規模確保するためには、安全の確保、技術・人財基盤の維持等が必要であり、これらを実現するためには、安全性の確認された40年超プラントの運転に加えて、新増設・リプレースが必要になると考えている。当社グループとしては、原子力発電所の安全確保を大前提として、有効に活用していきたいと考えている。
当社グループは他の電力会社と比較して原子力発電の比率が高く、新規制基準等への適合性の確保、各種基準・法令等の変更への対応や原子力差止め訴訟等の結果により、発電所の停止が長期化した場合には、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある(2024年度実績ベースでは、原子力利用率が1%悪化する場合の費用増加影響は53億円程度)。これらのリスクに対応するため、新規制基準等への適合性を確保し、各種基準・法令等の変更に適切に対応していくとともに、訴訟等においても各原子力発電所の安全性に関する主張・立証を適切に行っていく。なお、2023年6月に原子炉等規制法が改正され、高経年化した発電用原子炉の安全規制が見直された。当社グループにおいては、見直し後の安全規制に基づき7基全ての認可を得ており、今後も運転経験や最新知見を踏まえ、劣化評価の見直しの検討を行い、必要に応じて長期施設管理計画の変更を行うこととしている。
当社グループの原子力発電所は7基全てが福井県に集中して立地しているため、局所的な災害により複数の発電所が同時に停止した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。当社は、火力や再生可能エネルギーなどの自社電源および他社電源の柔軟・有効活用なども含め、電源の多様性を確保している。
原子力発電の燃料となるウランは、政情の安定した国々に埋蔵されていることから安定確保が可能である。また、少しの燃料で長期間発電に使うことが可能なうえ、使い終わった燃料は再処理することで再び燃料として使用できることなどから、準国産のエネルギー資源になる。原子力発電所で使用した燃料中のプルトニウム等を燃料として再利用する「原子燃料サイクル」を進めることは、資源に乏しい我が国にとって、エネルギー資源の有効活用およびエネルギーを安定的に確保していくために効果的であるといえる。
使用済燃料は、発電所内の使用済燃料プールで一定期間貯蔵したあと、再処理工場へ搬出する。万が一、プールが満杯になれば発電所を運転できなくなるため、計画的に搬出する必要があることから、当社は「使用済燃料対策ロードマップ」に基づき、「六ヶ所再処理工場への使用済燃料の搬出」、「使用済MOX燃料再処理実証研究に伴う仏国オラノ社への使用済燃料の搬出」および「中間貯蔵施設の2030年頃の操業開始」を進めている。また、2024年の六ヶ所再処理工場の操業計画の見直しに伴い、2025年2月に見直し公表した「使用済燃料対策ロードマップ」では、六ヶ所再処理工場への当社の使用済燃料の搬出において、2030年度まで3年間で198トン(同期間における再処理量の約6割)と明確化し、使用済MOX燃料の再処理実証研究においても、実証研究の実効性向上を目的としたデータの充実化のための使用済燃料の搬出容量枠を約200トン追加している。このロードマップに従って取り組むことで、使用済燃料貯蔵量はプールが満杯にならず推移し、将来的には使用済燃料貯蔵量が減少する見通しであることを示しており、使用済燃料対策に全力で取り組んでいく。
原子力施設の廃止措置や使用済燃料の再処理・処分などの原子力バックエンドコストは、今後の制度の見直しや将来費用の見積額の変動等により費用負担額が増加した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。また、原子力バックエンド事業は、超長期の事業であり不確実性を伴うが、国による制度措置等により事業者のリスクが軽減されている。原子力損害賠償・廃炉等支援機構一般負担金については、今後の負担総額や負担金率の変動等により、当社グループの負担額が増加した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
廃止措置は長期の事業であり不確実性を伴うため、当社グループの廃止措置は大きく4段階に分け、約30年かけて実施することとしている。廃止措置の実施にあたっては、必要な対策等を講じ、安全の確保を最優先に着実に行っている。現在、美浜発電所1、2号機は、第2段階の「原子炉周辺設備解体撤去期間」であり、管理区域内での解体を実施している。解体により発生する廃棄物については、放射能レベル区分に応じて処理する計画であり、これを確実に実現すべく準備を進めている。一方、大飯発電所1、2号機は、第1段階の「解体準備期間」であり、タービン建屋内機器等解体工事等の作業を計画どおり進めるとともに、第2段階への移行に必要な炉内外の放射能調査も計画どおり進めている。
《3》広域停電等
当社グループは、エネルギー事業と送配電事業等を通じて、お客さまへの電気の安定供給を担っている。当該各事業における設備・運用の不備等により、当社グループ起因による停電を招く恐れがあり、エリアの大部分への広域停電となれば、お客さまの社会・経済活動に多大な影響を及ぼし、当社グループの事業運営に大きく影響する可能性がある。
このため、当社グループでは、設備の適切な運用や巡視に努めていることに加えて、事故の再発防止を徹底している。特に、送配電設備の事故防止に向けては、今後進展していく設備の高経年化を見据え、必要な施工力を確保するとともに効率的・効果的な設備改修を進めている。また、調達面では非常用安全在庫の備蓄や安定調達、調達リスクを考慮したサプライヤー選定等を行い、リスク低減を図っている。さらに、発電事業においては、「需給ひっ迫を予防するための発電用燃料に係るガイドライン」に基づく必要な燃料在庫の確保により、リスク低減を図っている。
加えて、万が一、需給ひっ迫が発生した場合には、国や電力広域的推進機関および他の一般送配電事業者と連携し、緊急時の供給力確保対策を取ることとしている。
《4》競争環境の急激な変化への対応遅れ
昨今の世界的な脱炭素化の潮流の高まりを踏まえ、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー由来の電力供給や蓄電池等を活用したエネルギーの効率的な利用に関する顧客のニーズが高まっている。
このような顧客のニーズ変化を受け、従来の大規模発電所だけではなく、地元やエネルギー使用地点に近い場所に分散設置された太陽光発電や風力発電等の発電設備から電力を供給する分散型エネルギーシステムへの移行も進みつつある。こうした動きに対し、当社の取組みが他事業者に劣後する場合、顧客や販売電力量の減少といった影響を受ける可能性がある。
こうしたリスクに対応するため、太陽光発電や風力発電等の分散型エネルギーの活用を提案している。さらに、発電量、電気使用量を精緻に予測し、空調、蓄電池、EV等の各設備をAIで最適制御するエネルギーマネジメントシステムを開発、提案するなど、顧客に対する最適なエネルギーサービスを提供している。
電力システム改革の検証や各種制度の見直しの結果、各種市場からの収支変動等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
次に、小売販売電力量が、冷暖房需要の主たる変動要因である気象(特に気温)や景気の動向、省エネルギーの進展、技術革新による電気の利用形態の変化および他事業者との競争状況等により変動する場合がある。また、販売価格が、他事業者との競争状況等により変動する場合もある。その結果、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。ガス販売量および販売価格についても、上記に準じ変動する場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。さらに、燃料価格や外国為替相場等の動向によって火力燃料費・購入電力料が変動した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。燃料価格や外国為替相場の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」によって一定の調整が図られるものの、燃料価格の高騰が継続する場合、燃料費調整制度において平均燃料価格が上限を超えることにより、燃料価格の上昇を一部料金反映できない可能性がある。
これらのリスクに対応するため、競合他社との差別化につながる最適なエネルギーサービスを開発・提供していくことで、顧客の維持・拡大に取り組んでいく。また、政策動向のリスクに対しては、国の電力システムにかかる政策や規制動向について情報収集するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど、適宜対応していく。さらに、電力調達においても、多様な調達先の確保をはじめ、長期・短期契約の組み合わせなど、燃料・電力等の市況変動に影響されにくい調達ポートフォリオの構築や、法人分野の料金における市場価格の変動に対応した料金メニューの設定等により価格変動に伴う収支影響の緩和を図るなど、リスクの抑制に取り組んでいる。
《5》法規制・規制政策変更
小売全面自由化を踏まえた内外無差別な卸販売等の競争政策、容量市場、長期脱炭素電源オークション、非化石価値取引市場、ベースロード市場や需給調整市場といった電力市場整備等、電力システム改革に関する制度の見直し、その他政策動向等により、他事業者との競争のさらなる拡大や各種市場からの収支変動等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
これらのリスク対応について、2025年度は、電力システム改革の検証結果を踏まえた制度改正の議論が国の審議会で行われるため、国の電力システムにかかる政策や規制動向について必要な情報収集を実施するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど必要な対応を実施していく。
また、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画においては、DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中で、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する方向性が明記され、再エネ導入や原子力事業環境整備の進展が期待されるものの、これらの政策が停滞した場合には当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
次に、成長志向型カーボンプライシング構想として、CO2排出に対して、化石燃料賦課金導入、企業間の排出量取引制度(GX-ETS)稼働、発電事業者を対象にした有償オークションへの移行といった方向性が示されている。温室効果ガスの多排出事業にあたる発電事業に対しては、過度な排出規制の導入により、火力発電所の稼働率低下や追加的な費用負担といった影響が生じる可能性がある。
これらのリスク対応について、2025年度は、カーボンプライシングの詳細制度設計が実施される見通しであり、国のエネルギー・環境政策や規制動向について、必要な情報収集を実施するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど必要な対応を実施していく。
エネルギー事業においては、将来的に電力需要の増加が見込まれる中で脱炭素化に向けて適切に対応していく必要があるが、事業期間中の市場環境の変化等に伴って収入・費用が変動することによって、電源への投資が適切に回収できず、収支が悪化するリスクがある。
こうした状況下で投資判断を行うために、国の電力システムにかかる政策や規制動向について必要な情報収集を実施するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど必要な対応を実施し投資回収の予見性を高めていく。
送配電事業においては、必要な投資の確保とコスト効率化を両立させ、高経年化する送配電設備の確実な増強と更新や再生可能エネルギー主力電源化、レジリエンス強化を進めていく必要があるが、これらが実現できない場合、収支悪化リスクおよび安定供給に支障をきたすリスクがある。
2023年度より、新たな託送料金制度が導入され、本制度下において、第1規制期間(2023-2027年度)に達成すべき目標を明確にした事業計画を策定し、その実施に必要な見積費用(収入の見通し)は国から承認されている。これにより、必要な設備の維持・拡充にかかる費用は見積費用に織り込まれ、概ね確保されている。一方で、昨今の市況価格の上昇に伴い支出が増加している中、これらの費用は現状の制度上反映されていないことから、費用回収できないリスクがある。この点については、制度措置に関する議論の中で訴求するなど必要な対応を講じていく。需給調整市場における調整力調達費用等は事後検証のうえ調整されるため、収支悪化リスクおよび安定供給に支障をきたすリスクは低減されている。
※送配電事業は関西電力送配電(株)が担う。
情報通信分野においては、デジタルインフラの地方分散など取り巻く政策方針の変更によって競争環境や市場環境が大きく変化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。これらのリスクに対応するため、国の情報通信政策や規制動向について、必要な情報を収集し、公正な競争環境の維持・推進に向けた政策提言を継続的に行うとともに、規制環境に合わせた新サービスの開発、既存サービスの拡充、継続したコスト低減等により競争環境の変化に対応できる経営基盤の強化に取り組む。
不動産分野においては、政策金利の一層の上昇により住宅ローン金利が大幅に上昇した場合、住宅購入者の購買意欲が減退し、分譲住宅事業の業績に影響を与える可能性がある。また、都市計画や建築関連法令等の政策変更により、物件開発コストの増加や保有土地の価値毀損等の影響を受ける可能性がある。これらのリスクに対しては、情報の収集と分析により適時適切に対応していく。
《6》イノベーションの停滞
当社グループは、イノベーション推進により目指す状態を、「新事業、新サービスを生み出す力」と「既存事業のオペレーション変革力の双方が優れていること」かつ「イノベーションが自律的かつ持続的に巻き起こせる仕組み(システム)が確立されていること」と定義しており、これらを推進するための体制強化や仕組みの構築を行っている。
しかしながら、政策・経済・社会・技術等の外部環境の変化に適応できずに業務変革や新規事業・サービス創出に向けた活動が停滞することにより、事業の構造転換に支障が生じ、ステークホルダーからの評価が著しく低下する可能性がある。
そのため、将来の外部環境の変化により的確に対応することを目指し、中長期的な技術・社会動向等を調査し、事業機会・脅威を考察することで、先手を打った事業活動を展開していく体制や仕組みの充実を進めている。また、コーポレートベンチャーキャピタル「合同会社K4Ventures」を投資主体に、順次ベンチャー企業等への投資を実施しており、当社やグループ各社との協業を促進するとともに、最新の技術やビジネスモデルを早期に情報収集し、さらなる新規事業・サービス創出を展開していく。
《7》資産価値毀損
主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合では、石炭火力については、各国の温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標に沿って、2030年代前半または、気温上昇を1.5度に抑えることが可能な期間内に排出削減対策が講じられていない既存の石炭火力発電をフェーズアウトする方針が示されている。
このような事業環境において、火力に対するCO2排出規制強化、法改正(新規制基準に対する追加要求事項等)や訴訟による原子力不稼動事象の顕在化等により既存電源の稼動率が低下することで資産価値が大幅に毀損するリスクがある。
これらのリスクに対応するため、国の電力システムにかかる政策や規制動向について必要な情報収集を実施するとともに、事業者にとって合理的な内容とするべく審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど、必要な対応を実施していく。
また、送配電事業においては、高経年化設備の更新等に必要な投資を収入として確保できない場合、資産価値が毀損するリスクがある。ただし、新たな託送料金制度により、必要な費用は見積費用(収入の見通し)に概ね織り込まれていること、エリア需要の変動は翌規制期間に調整されること、また、災害復旧等にかかる制御不能な費用増は事後調整されることから、中長期的な事業運営の安定性および予見性が一定程度向上しており、資産価値毀損のリスクは低減されている。一方で、昨今の市況価格の上昇に伴い支出が増加している中、これらの費用は現状の制度上反映されていないことから、費用回収できないリスクがある。この点については、制度措置に関する議論の中で訴求するなど必要な対応を講じていく。
なお、上記以外にも、情報通信事業や生活・ビジネスソリューション事業において、競合他社に対する技術力の劣後、顧客志向の変化に伴うサービスの陳腐化や市場環境の変化等が発生することで、資産価値が毀損するリスクがある。ハイパースケールデータセンターは、事業展開の遅延および建設費用の高騰等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。加えて、当社グループは、オーガニックな成長にこだわらず、M&Aも活用し、成長の加速を目指している。しかしながら、適切な対象会社や提携先を発見できる保証はなく、また、これらの調査の段階で確認または想定されなかった事象がM&Aの実行後に発生または判明する場合や、M&A実施後の事業展開が計画どおりに進まない可能性があり、その場合は当初期待した業績への寄与の効果が得られない可能性があることや、対象事業等の資産価値毀損も考えられ、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。これらのリスクに対し、新サービスの開発・既存サービスの拡充等により、競争環境の変化に対応できる経営基盤の強化に取り組んでいる。
国内再エネ・国際事業ならびにグループ事業や新規事業等への投資については、市場規模や規制等の市場に係る動向や開発計画の遅延等により、想定していた収益性が確保できず資産価値が毀損するリスクがある。このようなリスクに対応するため、投資の妥当性の評価や投資後のモニタリングと撤退・再建策の検討・実施も含めた一連のマネジメントプロセスの構築・運用等により、投資リスクの適正な管理に努めている。
《8》人財基盤の揺らぎ
労働災害の発生等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
美浜発電所3号機事故をはじめとする事故や災害から得た数々の教訓から、「安全を守る。それは私の使命、我が社の使命」との社長宣言のもと、当社グループの事業活動に係わる全ての人の安全を守ることを最優先に、安全活動を続けている。この宣言に込めた思いを継承していくため、「関西電力グループ安全行動憲章」をグループワイドで共有し、「安全行動の誓い」を規範として安全行動をたゆまず実践することで、安全の実績を着実に積み重ね、ゆるぎない安全文化を構築していく。さらに、グループワイドで災害防止に向けた取組みをより一層促進するため、「安全・健康・『働き方』改革 推進部会」や「安全衛生委員会」にて安全活動の継続的な改善を行うとともに、協力会社等と”相方向”の情報共有やコミュニケーションを深めることで、「災害ゼロ」を目指している。
従業員の意欲の低下や多様で優秀な人財の安定的な確保に支障をきたすなど、人財基盤の強化が進まず、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受け、持続的な成長が妨げられる可能性がある。
2024年度には経営戦略と連動した人財戦略のもと、人財基盤の強化に向けて中期経営計画の推進に必要となる人財確保等の方策を講じるとともに、リスクを統括的に管理する内部統制部会において、業務執行部門それぞれの人財基盤にかかる課題認識やリスク管理・対策の実施状況を評価し、各業務執行部門とリスク管理箇所との間にリスク認識の齟齬がないことや、リスク認識を踏まえた人財確保等の方策が実効的に実施されていることを確認した。このように、人財確保等の方策について内部統制部会での客観的な評価を行ったうえで執行役会議へ報告するリスクマネジメントを通じ、必要に応じて組織横断的な改善を行っている。
人財基盤強化の前提として、2021年に策定した「関西電力グループ人権方針」に基づき、あらゆる事業活動において、人権を尊重する取組みを推進している。その上で、従来より、経営理念・中期経営計画の実現に向けて必要となる人財ポートフォリオを構築すべく、労働市場の変化や事業環境の変化に即した多様な採用コースを用意するとともに、経歴・性別・国籍等にとらわれることなく、多様な人財の積極的な採用を進めることで、優秀な人財の確保とダイバーシティ&インクルージョンを推進している。加えて、従業員一人ひとりの個性を起点として、その強みを最大限に活かす視点での人財育成を実施している。具体的には、2018年に設立した「関西電力グループアカデミー」の中で体系化した研修や育成制度を通じて、従業員の自律的なキャリア形成を促し自発的な成長を支援するだけでなく、研修・異動・評価を連動させて運用し、個人の能力や適性に応じて公平・公正に管理職への登用等を実施することで、潜在的な能力を引き出すとともに、従業員エンゲージメントの向上を図っている。
また、「働き方」改革・健康経営の推進責任者である社長のもと、人事労務担当役員が委員長を務める「安全・健康・『働き方』改革 推進部会」での議論を通じて、より柔軟に働ける勤務制度の整備や従業員の健康増進に向けた方針・施策を策定し、労働組合・健康保険組合・医療スタッフ等と連携しながら、従業員一人ひとりが成長意欲や挑戦意欲をもち、健康で活き活きと輝き、豊かな人生を歩むことができるよう、グループ大で「働き方」改革・健康経営の取組みを推進している。
なお、国や社会の動向といった今日的な観点に加え、当社の経営状況や労働力確保等の状況も踏まえ、2025年度から定年延長を含む、新たな評価・報酬体系を導入している。社員の定年を65歳まで引き上げることで、第一線職場における要員不足に対応するだけでなく、ベテラン層から中堅、若年層への確実な技術継承を行っていくとともに、“今の挑戦”をより重視する制度へ見直し、魅力的な挑戦機会を提供する仕組みを導入することで、従業員一人ひとりが、挑戦意欲や成長意欲を持って活き活きと働くことができる環境、労働状況を整備していく。また、2025年度の賃金改定においては、中期経営計画の取組みを一層強く推し進めるために改定を実施したほか、初任給の引き上げを実施している。
《9》サプライチェーンの不安定化・断絶
取引先における人手不足や採算性悪化により取引先が事業撤退し、もしくは当社グループに対し、取引停止を申し入れることで、資機材等の安定的な調達が困難となる可能性がある。
これらのリスクに対応するため、関西電力グループ調達基本方針に基づき、取引先との対話活動を充実させ、対話活動を通して顕在化した課題に対し、迅速・適切に対応することで、既存の取引先との強固なパートナーシップを確立するとともに、新規取引先を積極的に開拓することで、複数取引先の確保を図る等、安定調達の実現に向けた取組みを進めている。
《10》ITガバナンス・情報セキュリティリスク
当社グループは、AI(人工知能)などのデジタル技術活用や業務の抜本的見直しが遅延する等により、DX(デジタルトランスフォーメーション) 推進が効率的・効果的に実施されない場合、他事業者との競争に劣後し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。DXを推進し、既存事業の生産性向上や新たな価値創出に取り組むとともに、DXの取組みを加速すべく、役員をトップとし全体戦略の検討や方向づけを行う「DX戦略委員会」、デジタル専業子会社で施策実施に必要な技術支援を行う「K4 Digital株式会社」、施策の検討や展開を行う「各部門」の三位一体でDXを推進している。また、DX戦略委員会での議論結果は、執行役会議での議論を経てDXビジョン・戦略として策定している。
情報システムの要件漏れやプログラムバグの混入等により法令対応が適切に行われず、情報システムの不具合や停止が発生し、お客さま情報の不適切な取扱いや電力市場への誤入札等の社会的信用の低下につながる事案の発生により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。情報システムの品質を確保するため、標準のシステム開発手順を社内ルールとして規定のうえ、開発に直接従事していないIT専門家が第三者視点でルールの遵守状況を確認・監査している。また、IT部門と各部門が連携し、全社横断的にIT投資額や人的資源の確保、リスク対応の妥当性、運用中のシステムにおける法令・規制への対応状況を確認している。さらに、経営上重要なシステム開発プロジェクトは執行役会議に付議し、計画の妥当性を確認している。これらの取組みを継続し、情報システムの不具合や停止を低減していく。
外部からのサイバー攻撃等により、当社グループ設備への被害や損害が生じ、電力の安全・安定供給や当社グループサービスへの支障の発生、当社グループ保有のお客さま情報、重要情報の社外流出による社会的信用の低下につながる事案が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。重要インフラ事業者である当社グループは電力の安全・安定供給を重要な責務として、関係法令・サイバーセキュリティ経営ガイドライン・社内規定等に則って情報セキュリティ対策を継続的に強化するとともに、日々高度化する社外のサイバー攻撃事例や最新の情報セキュリティの技術情報を入手し、早期対策の実施に努めている。また、大阪・関西万博開催に伴うサイバー攻撃等の脅威の高まりに対応するため、全社でサイバー攻撃対応訓練を実施するなどサイバーレジリエンスの強化を図っている。
当社グループが保有するお客さま情報をはじめ、業務上取扱う重要情報について、適切な取扱いがなされず社外へ流出することで、社会的信用の低下につながる事案が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。当社グループが保有する個人情報の適切な保護・利用のため、個人情報保護法やガイドライン等を遵守するとともに、プライバシー権等にも配慮した対策を実施している。また、個人情報を含む業務情報を適切に取扱うために、組織的・人的・物理的・技術的側面から情報セキュリティ対策を継続して講じている。
《11》ガバナンス・コンプライアンスリスク
当社は、会社法に基づいて、業務の適正を確保するための体制を定め、その結果を記載した事業報告に当該体制の決議内容及び運用状況の概要を開示している。業務の適正を確保するための体制の有効性が確保されない場合には、ステークホルダーからの信頼を失墜し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
当社グループは「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」(2021年3月策定)に基づき、ステークホルダーのみなさまのご期待にお応えし続けることで、持続的な企業価値の向上と社会の持続的発展に貢献していく。その実現に向けた経営の最重要課題は、コーポレート・ガバナンスの強化であると認識し、当社のコーポレート・ガバナンスにおいては、経営の透明性・客観性を高めることを目的に、執行と監督を明確に分離した「指名委員会等設置会社」の機関設計を採用し、取締役会議長は独立社外取締役、構成委員の過半数は独立社外取締役としている。また、取締役会直下に法定外の「コンプライアンス委員会」を設置している。さらに、当社はグループ各社に対して、「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」および「関西電力グループ行動憲章」等の経営の基本的方向性や行動の規範について、浸透を図るとともに、子会社管理に係る社内規程に基づき、子会社における自律的な管理体制の整備を支援、指導すること、子会社の経営層に対して、各種会議体でのコミュニケーションを通した経営状況の定期的な把握や、会社法をはじめとする法令等に基づく責務・役割の徹底を図るために、外部講師による集合研修を実施すること等により、企業集団の業務の適正を確保している。加えて、子会社における重要な意思決定については、事前に関与することや、特に当社グループの成長の柱となる事業を担う中核会社については、重要な業務執行方針および計画を執行役会議で審議することにより、グループ全体の企業価値の毀損を未然に防止し、またはこれを最小化するよう努めている。
金品受取り問題をはじめとする一連の不適切事象を踏まえ、環境変化とリスクへの確実な対応や組織風土面に問題があるとの認識のもと、内部統制の抜本的な強化と組織風土改革の取組みを両輪で推進している。当社グループの事業活動に伴うリスクを適切なレベルに管理し、当社グループの持続的な成長を実現するため、内部統制部会を設置し、内部統制システムの整備・運用状況の評価、改善に係る総合的方策の検討ならびに不備事項の改善指示および改善状況の確認・支援を行っている。また、内部統制の抜本的な強化や組織風土改革をはじめとした再発防止策を総合的に推進するため、組織風土改革会議を設置し、一連の不適切事象に係る全社的な課題の把握・分析、再発防止に向けた総合的方策の策定等を行っている。
重大なコンプライアンス違反の発生等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
当社はこれまでの金品受取り問題、新電力顧客情報の不適切な取扱い、独占禁止法違反といった不適切な事象の発生を受け、取締役会の監督のもと、それぞれ業務改善計画に基づき対応を実施しており、2023年7月に、コンプライアンス推進本部を新設するとともに、コンプライアンス推進の最高責任者としてCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を設置してグループ全体のコンプライアンス推進やリスクマネジメント等、内部統制の抜本的な強化を進めている。
なお、コンプライアンスに関わる当社グループの不適切な事案の詳細については、以下に記載のとおりである。
(金品受取り問題および役員退任後の嘱託等の報酬に関する問題)
当社グループは、当社の役員等が社外の関係者から金品を受け取っていた問題および役員退任後の嘱託等の報酬に係る問題により、お客さまや社会のみなさまから賜わる信頼を失墜させた。
本問題については、第三者委員会を設置し、2020年3月14日に調査報告書を受領した。その報告書の内容を厳粛かつ真摯に受け止め、電気事業法に基づく業務改善命令に対する業務改善計画を取りまとめ、2020年3月30日に経済産業大臣に提出した。
その後、2020年6月に指名委員会等設置会社に移行し、外部の客観的な視点を取り入れた新たな経営管理体制のもと、ガバナンス改革をはじめとする業務改善計画の取組みを進めており、その実行状況を2020年6月29日、10月13日、2021年3月2日および12月27日に経済産業大臣へ報告した。
今後も取組みを確実に実行するとともに、外部の客観的な視点を踏まえ実行状況を検証し、必要に応じて改善策を加えるなど、引き続き、新たな関西電力グループの創生に向け、全力で取り組んでいく。
(特別高圧電力および高圧電力の取引に関する独占禁止法違反)
当社は、特別高圧電力および高圧電力の取引に関し、2021年4月13日および同年7月13日に、独占禁止法違反に係る被疑事実があるとして、公正取引委員会による立入検査を受け、2023年3月30日に、同委員会から、不当な取引制限を禁止する独占禁止法第3条に違反する行為があったと認定された。なお、当社は排除措置命令および課徴金納付命令のいずれも受けていない。
当社は、2023年4月にコンプライアンス委員会から、原因究明および再発防止策の提言を受け、当社再発防止策を決定した。また、2023年7月14日に業務改善命令を受領し、同年8月10日に業務改善計画を経済産業大臣に提出した。業務改善計画の取組状況については、電力・ガス取引監視等委員会から、1年間のフォローアップを受けており、2024年9月30日に開催された同委員会の専門会合において、「業務改善計画に基づき、着実に取組を進めている」との総括評価を頂戴している。真にコンプライアンスを徹底できる企業へと再生できるよう、これからも引き続き真摯に取組んでいく。
(新電力顧客情報の不適切な取扱いによる電気事業法違反等)
他の小売電気事業者のお客さま情報の不適切な取扱いおよびお客さま情報の漏洩に係る問題について、2022年12月27日に電力・ガス取引監視等委員会から、2023年1月13日に個人情報保護委員会および経済産業省から報告徴収を受領し、それぞれ翌月に回答した。さらに、本件に関し、経済産業省から2023年2月21日に緊急指示を2023年4月17日に業務改善命令を受領した。この間、当社および関西電力送配電の各社社長を本部長・委員長とする「緊急対策本部」・「調査検証・改革委員会」をそれぞれ2023年1月末に設置し、本件に関する事実調査や原因究明を実施した。判明した事実や原因に基づき業務改善計画を取りまとめ、当社コンプライアンス委員会の確認を経て、2023年5月12日に経済産業大臣に提出した。2024年6月、電力・ガス取引監視等委員会において、新電力顧客情報の不正閲覧に係る業務改善計画に係る1年間の取組み実績に対し、内部統制のフレームワーク(COSOフレームワーク)に沿った採点が行われ、多くの項目で実効的に進めているとの評価を頂いた。真にコンプライアンスを徹底できる企業へと再生できるよう、これからも引き続き真摯に取組んでいく。
(当社グループ子会社における不適切事案等)
関西電力送配電株式会社において、過去に柱上変圧器におけるPCBの不適切な取扱いがあったことが判明した。当社コンプライアンス委員会による調査を実施し、当社は、2025年1月に同委員会から調査結果と再発防止策の提言を受けた。また、株式会社KANSOテクノスにおいては、国等から受託した業務の精算報告に関する不適切な取扱いが判明し、社外弁護士による調査を実施のうえで、当社は、2025年4月に調査結果と再発防止策の提言を受けた。グループをあげて徹底した再発防止に努めていく。
株主をはじめとしたステークホルダーのみなさまへの情報開示が不足する等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
情報開示の充実を図るため、コーポレートガバナンス・ガイドラインにおいて適切な情報開示と透明性の確保に関する考え方を定め、これに基づき、株主をはじめとしたステークホルダーのみなさまに向けて、有価証券報告書やコーポレート・ガバナンス報告書、統合報告書等にて会社の財政状態・経営成績等の財務情報や経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る非財務情報等について、積極的に開示を行っている。
テレビCMや新聞広告等の内容、プレス発表、ホームページ、SNS等での情報開示不足や情報の分かりにくさからくる否定的反応により、当社グループのブランドイメージが低下する可能性がある。また、原子力発電に対する社会からの受容性低下や事故や不祥事が発生した場合の対応次第で、社会的信用の低下につながり、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
《12》環境問題(環境法令違反等)
重大な環境コンプライアンス違反等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
これらのリスク対応について、当社グループは、気候変動問題への取組みをはじめ、生物多様性の向上、資源循環の推進や地域環境保全等といった事業活動に密接に関係する環境問題への対応について、中長期的にめざす方向性を「関西電力グループ環境方針」として定め、環境コンプライアンスの実践・徹底等に取り組んでいる。
具体的には、事業活動において周辺環境や人の健康に影響を及ぼすことがないよう、社内ルールの整備や実務知識付与のための専門教育等を実施し、環境コンプライアンス違反の防止を図るとともに、当社グループ内での同種事象の発生防止対策の実効性を高めるため、各現場の法令遵守に関する仕組みの整備状況に加え、運用状況の確認を進めている。
また、生物多様性への対応としては、発電所建設に当たっては環境アセスメントを実施し、動植物や生態系への影響を最小限に抑えるとともに、水源涵養林の持続的な管理や黒部ダム周辺の在来種保護など、地域の特性に応じた生物多様性の保全に取り組んでいる。
《13》自然災害・国際情勢の変化等
台風・豪雨(気候変動に起因する異常気象等)・地震・津波等の自然災害、武力攻撃、感染症により、当社グループ設備への被害・損害、操業への支障や他社からの電気・資機材の調達等への支障が生じ、当社グループサービスの提供が困難になることで、当社グループに対する社会的信用の低下等が発生することが要因となり、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
従業員とその家族の安全を確保するとともに、電力・ガスを始めとする当社グループサービスの安定供給の責務を果たすため、「災害に強い設備づくり」や「早期復旧に向けた防災体制の確立」を基本に防災部会等を定期的に開催し、災害関連主要リスクに適切に対策を講じるなど、防災対策に取り組んでいる。
海外事業においては、紛争の勃発や緊張状態の高まりを常に注視している。投資済み案件については現時点では大きな影響はないことを確認しており、新規投資については最新の国際情勢を踏まえ適切に判断している。
火力燃料の確保に対しては、調達地域、契約期間、契約相手先、価格指標の分散により、安定調達に資する調達ポートフォリオの構築を行うとともに、多様な取引先との継続的な情報交換ネットワークを構築し、国際情勢の変化と影響の迅速な把握に努めている。
水素事業においても、国際情勢の変化に伴い、サプライチェーン構築における水素調達国の政策変更・情勢不安・経済停滞により上流案件組成への影響、また燃料価格高騰により水素事業の競争力が低下し、サプライチェーン構築が困難となる可能性がある。水素キャリア※1やカラー※2、調達国の分散等、多面的に検討・参画することでリスク最小化に努めている。
※1:気体のままでは貯蔵や長距離の輸送の効率が低い水素を、液体や水素化合物(アンモニア、メチルシクロヘ
キサン等)にして効率的に貯蔵・運搬する方法。
※2:水素は、その製造方法によって、グレー水素(CO2を排出)、ブルー水素(CO2を回収)、グリーン水素(再
エネにて製造)の大きく3種類に区別される。
サプライチェーンに対しては、平常時から、主要な生産拠点の把握、情報収集を間断なく行うとともに、新規取引先を積極的に開拓することで、複数取引先の確保を図る等、安定調達の実現に向けた取組みを進めている。
経済安全保障は、社会の重要なインフラを担う当社グループにとって重要なリスクの一つであると認識しており、経済安全保障推進法の規定内容の遵守はもちろん、経済安全保障上重要な技術や情報の流出防止等の観点でリスク対策を実施している。
同法における「基幹インフラにおける重要設備の導入・維持管理委託の事前審査」について、関西電力の発電事業、ガス製造事業、関西電力送配電の一般送配電事業を対象に2024年5月より制度運用が開始され、これに対応する社内ルール整備が完了したため、以降、適切に対応していく。
《14》市場・市況変動リスク
事業活動に伴い、金利や為替の変動および各種商品の価値・価格等の変動に起因する収支変動の不確実性がある。販売方策の工夫、デリバティブ取引の活用等により、一定以上の損失の回避や収益の安定化、利益またはキャッシュ・フローの安定化を図っている。
当社グループの有利子負債残高(連結)は、2025年3月末時点で、4,471,794百万円(総資産の46.3%に相当)であり、有利子負債残高の96.4%(4,311,944百万円)は長期借入金、社債の長期資金である。長期資金の多くは固定金利であるものの、一部は変動金利での調達であるため、今後調達する長期借入金、社債等を含め、市場金利の動向は当社グループの業績に影響を与える可能性があり、引き続き、その動向を注視する。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
<経営成績等の状況の概要>
当社グループは、2024年、長期的な方向性を見据えながら、中期経営計画の今後2カ年の内容をアップデートし、計画に掲げた取組みを強力に推進してきた。
総販売電力量は1,560億kWhと、前連結会計年度に比べて15.8%増加した。
収入面では、販売電力料収入が増加したことなどから、売上高は4,337,111百万円と、前連結会計年度に比べて277,733百万円の増収(+6.8%)となった。
支出面では、他社購入電力料が増加したことなどから、営業費用は3,868,234百万円と、前連結会計年度に比べて537,791百万円の増加(+16.1%)となった。
この結果、当連結会計年度の営業利益は468,877百万円と、前連結会計年度に比べて260,058百万円の減益(△35.7%)、経常利益は531,686百万円と、前連結会計年度に比べて234,283百万円の減益(△30.6%)となった。また、英国で配電事業を行うエレクトリシティ・ノース・ウエスト社の株式の一部を売却したことに伴い、61,412百万円を特別利益に計上したものの、親会社株主に帰属する当期純利益は420,364百万円と、前連結会計年度に比べて21,506百万円の減益(△4.9%)となった。
セグメントの経営成績(相殺消去前)は、次のとおりである。
(注) 各セグメント損益には、連結子会社および持分法適用会社からの受取配当金を含まない。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概要は、次のとおりである。
<生産、受注及び販売の状況>
当社および連結子会社における生産、受注及び販売の実績については、その大半を占めるエネルギー事業のうち当社の数値を記載している。
(注) 1 火力発電電力量は、汽力発電電力量と内燃力発電電力量の合計である。
2 新エネルギー発電電力量は、汽力発電設備におけるバイオマスと新エネルギー等発電等設備における太陽光による発電電力量である。
3 発受電電力量と総販売電力量は、提出日(2025年6月25日)現在において把握している電力量を記載している。
4 揚水発電所の揚水用電力量とは、貯水池運営のための揚水用に使用する電力量である。
5 2023年度出水率は、1992年度から2021年度までの30カ年平均に対する比である。
2024年度出水率は、1993年度から2022年度までの30カ年平均に対する比である。
6 四捨五入の関係で、合計が一致しない場合がある。
7 発受電電力量の合計と総販売電力量の差は損失電力量等である。
(注) 1 総販売電力量は、提出日(2025年6月25日)現在において把握している電力量を記載している。
2 四捨五入の関係で、合計が一致しない場合がある。
自社発電認可最大出力
主要燃料の受払状況
(注) 四捨五入の関係で、合計が一致しない場合がある。
<財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析>
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。重要な会計方針については、「第5 経理の状況」に記載している。
連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の計上額に影響を与える見積りを行う必要がある。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。このうち、特に重要なものについては、「第5 経理の状況」の連結財務諸表の注記事項(重要な会計上の見積り)に記載している。
[エネルギー事業]
第7次エネルギー基本計画やGX2040ビジョンで掲げられたエネルギー安定供給と脱炭素の両立に着実に対応すべく、「ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー」として、再エネの主力電源化や原子力の最大限活用、火力のゼロカーボン化、ゼロカーボン水素の活用も含めた電源のゼロカーボン化に取り組み、また、お客さまのゼロカーボン化を実現する最適なソリューションをご提案・ご提供するとともに、水素社会に向けた検討・実証にも取り組むなど、お客さまや社会のゼロカーボン化の実現に向けて当社グループのリソースを結集していく。また、デジタル技術の活用や、競争力のある電源ポートフォリオの構築、燃料調達や需給運用の合理化といったコスト構造改革の取組み等により、強靭な企業体質への改革に努めるとともに、エネルギーソリューションを軸とした様々なサービスの開発・提供を通じて事業の拡大を図り、中期経営計画で掲げた目標の達成に取り組む。
(業績)
収入面では、販売電力料収入が増加したことなどから、外部顧客への売上高は3,540,779百万円と、前連結会計年度に比べて205,099百万円の増収(+6.1%)となり、内部売上高を含めた売上高は3,774,142百万円と、前連結会計年度に比べて234,943百万円の増収(+6.6%)となった。
支出面では、他社購入電力料が増加したことなどから、経常費用は増加した。
この結果、セグメント利益は411,321百万円と、前連結会計年度に比べて172,546百万円の減益(△29.6%)となった。
(当連結会計年度の取組み)
原子力発電事業については、美浜発電所、高浜発電所および大飯発電所の7基全てのプラントが運転を継続している。原子力プラントの高経年化対策については、法律に基づいた技術評価を実施し、安全性を確認したうえで運転を行っている。また、2023年6月に改正された関連法令に基づき見直しが行われた安全規制や運転期間に関する制度に対しても、適切に対応を進めている。今後とも、原子力プラントの安全・安定運転および安全性・信頼性のより一層の向上に取り組んでいく。
再生可能エネルギーに関して、水力発電事業については、設備更新によって最大出力を増加させた新丸山発電所が営業運転を開始し、また、奥多々良木発電所3、4号機では長期脱炭素電源オークションを活用した設備更新を進めてきた。洋上風力発電事業については、2024年12月に山形県遊佐町沖での洋上風力発電事業者公募において事業者に選定されたほか、新たに北海道松前沖、檜山地方沖および島牧沖において、地域のみなさまや関係行政機関からのご意見を賜わりつつ、環境保全に十分配慮しながら事業実施の可能性を検討してきた。また、2024年5月には国内の太陽光発電事業を投資対象としたファンドを設立するなど、太陽光発電によるコーポレートPPA(電力購入契約)の一層の拡大に取り組んでいるほか、2024年12月からは紀の川蓄電所の運転を開始するなど、電力需給の安定化や再生可能エネルギーの導入加速に貢献している。加えて、系統用蓄電池をはじめとした分散型リソースの運用については、E-Flow合同会社※1がAIを活用したシステムを通じ、卸電力取引市場、需給調整市場および容量市場※2において最適な市場取引を行っている。
国外においては、スペインの大手電力会社イベルドローラ社から株式を取得し、ドイツにおけるヴィンダンカー洋上風力発電事業へ参画した。加えて、再生可能エネルギー事業におけるリーディングカンパニーである同社と戦略的協業に関する覚書を締結し、グローバルな事業拡大の取組みを始めている。一方で、英国の配電会社エレクトリシティ・ノース・ウエスト社の株式の一部売却により売却益を獲得するなど、ポートフォリオの組替えも機動的に進めている。
火力発電事業については、南港発電所1〜3号機の長期脱炭素電源オークションを活用した設備更新が決定し、2025年3月をもって既存設備を廃止した。高経年化が進んでいる姫路第一発電所は、最新の高効率コンバインドサイクル機への設備更新の検討を開始した。また、水素の利活用として、姫路第二発電所での水素混焼発電実証の取組みを進め、当年度は、水素混焼発電に必要となる設備の設計・製作、据付および試運転を行い、大阪・関西万博期間中の実証試験開始に向けて、着実に準備を進めてきた。
※1:2023年4月設立。VPP事業、系統用蓄電池事業、再エネアグリゲーション事業の3事業に重点を置き、2030
年度までに全国で分散型エネルギーリソースの市場取引量250万kW、売上高300億円を目指している。
※2:卸電力取引市場:発電事業者と小売電気事業者が電力量(kWh)を取引する市場。
需給調整市場:一般送配電事業者が周波数調整や需給調整を行うための調整力(⊿kW)を効率的に調達・
運用する市場。
容量市場:将来にわたる日本全体の供給力(kW)を効率的に確保する市場。
ご家庭のお客さまへのサービスについては、従来のオール電化住宅向けなどのメニューに加え、省エネ給湯機エコキュートのリース料金と一定量までの電気料金がセットになったサブスクリプション(定額)メニュー「はぴeセット」を推進した。さらに、2024年4月には蓄電池のリース料金と一定量までの電気料金がセットになった「はぴeセット ストレジ」の提供を開始し、サービスラインナップを拡充した。また、当社の電気とガスをセットにして提案活動を展開し、年度末時点での関電ガスの契約件数は約163万件となった。法人のお客さまへのサービスについては、脱炭素の計画策定から具体策の実行までをトータルサポートする「ゼロカーボンパッケージ」において、より一層サービス内容の充実を図ってきた。具体的には、太陽光発電オンサイトサービス※3、コーポレートPPA、分散型エネルギーリソースの最適制御等を行うエネルギーマネジメントシステムである「SenaSon」、法人のお客さま等が所有する車のEV化を支援する「カンモビパッケージ」のサービス拡充に取り組んだ。また、タイ、ベトナムに加え、2024年11月には新たにインドネシアに現地法人を設立し、東南アジアを中心に海外進出する日系企業の工場に対して、最適なエネルギーシステムの構築・運用に関するソリューション提案を通じて、省エネ・省コスト・省CO2などの多様なニーズにお応えする取組みを推進している。
中核会社の株式会社関電エネルギーソリューションにおいては、全国300を超える地点でユーティリティサービスを提供しており、病院やデータセンター等の大型案件への注力、首都圏活動の強化など、事業拡大に努めてきた。また、2025年3月には、大規模なお客さま設備の運転制御を、当社が遠隔で代行し最適運用する「おまかSave-Pro」をリリースするなど、サービスの高度化にも取り組んでいる。
※3:お客さまの建物の屋根などに、当社が太陽光発電設備を設置、所有したうえで、設置後の運用・メンテナ
ンスまでをワンストップで行うもので、初期投資ゼロで太陽光発電による電気をご使用いただけるサービ
ス。
[送配電事業]
電力系統の運用や送電、変電、配電設備の計画・工事などを行い、中立・公平な立場で安全に安定した電気をお客さまにお届けしている。
脱炭素化やレジリエンス強化をはじめ、エネルギーに関する社会ニーズが多様化する中、それを支える基盤である送配電事業の重要性はこれまで以上に高まっていると認識しており、電力ネットワークの次世代化を進めるとともに、分散型電源などの多様な系統利用者の要請にも柔軟に系統利用サービスを提供し続け、お客さまや社会のご期待にお応えし続けていく。
(業績)
収入面では、エリア需要の増加などにより、託送収益が増加したことなどから、外部顧客への売上高は389,120百万円と、前連結会計年度に比べて47,240百万円の増収(+13.8%)となり、内部売上高を含めた売上高は1,097,551百万円と、前連結会計年度に比べて81,275百万円の増収(+8.0%)となった。
支出面では、需給調整取引に伴う費用や修繕費が増加したことなどから、経常費用は増加した。
この結果、セグメント利益は55,794百万円と、前連結会計年度に比べて68,288百万円の減益(△55.0%)となった。
(当連結会計年度の取組み)
関西電力送配電株式会社において、託送料金制度のもと策定した5ヵ年(2023~2027年度)の事業計画に基づき、高経年化設備の計画的更新や、脱炭素化・レジリエンス強化に資する電力ネットワークの次世代化、サービスレベルの向上などを着実に進めることで、電気の安全・安定供給に取り組んだ。また、トヨタ生産方式(カイゼン)・DXを通じた生産性向上や徹底した効率化を推進した。
[情報通信事業]
FTTHを利用した光インターネット、光電話、光テレビの3つのサービスをeo光ブランドで関西一円に展開しているほか、全国をターゲットにモバイル事業「mineo(マイネオ)」および法人ソリューション事業などを展開している。
(業績)
収入面では、株式会社オプテージにおいて、eo電気の燃料費調整額が減少したことなどから、外部顧客への売上高は223,584百万円と、前連結会計年度に比べて1,785百万円の減収(△0.8%)となった。一方で、株式会社関電システムズにおいて、システム開発案件が増加したことなどから、内部売上高を含めた売上高は312,631百万円と、前連結会計年度に比べて11,250百万円の増収(+3.7%)となった。
支出面では、株式会社オプテージにおいて、容量拠出金が増加したことや、委託費等の販売管理費が増加したことなどから、経常費用は増加した。
この結果、セグメント利益は46,945百万円と、前連結会計年度に比べて547百万円の減益(△1.2%)となった。
(当連結会計年度の取組み)
株式会社オプテージにおいて、FTTHサービス「eo光」について、2024年10月にオンライン申込専用の新プラン「eo光シンプルプラン10ギガコース」の提供を開始するなどして、約171万件のお客さまに選ばれている。さらに、2025年4月からは、eo光テレビ新コース「CSベーシック」「CSプレミアム」を追加し、サービスラインナップを拡充した。
MVNO事業については、「mineo(マイネオ)」において2025年3月から基本データ容量で選ぶプラン「マイピタ」に50GBコースを追加するなどし、約135万件のお客さまに選ばれている。
また、法人向け事業については、2026年1月から都市型データセンター「曽根崎データセンター」を新たに運用開始する予定のほか、2026年度中には「生成AI向けコンテナ型データセンター」を開設し、「AI学習用GPUサーバ」の提供を予定している。
[生活・ビジネスソリューション事業]
不動産賃貸・分譲・管理、レジャーなどの総合不動産事業に加え、リース、コールセンター運営、メディカル・ヘルスケアなど、お客さまの安心・快適・便利な生活やビジネスを実現するサービスを展開している。
(業績)
収入面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、引渡戸数の増加や販売単価が向上したことなどから、外部顧客への売上高は183,626百万円と、前連結会計年度に比べて27,178百万円の増収(+17.4%)となり、内部売上高を含めた売上高は221,408百万円と、前連結会計年度に比べて26,386百万円の増収(+13.5%)となった。
支出面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、商品原価等の売上原価が増加したことなどから、経常費用は増加した。
この結果、セグメント利益は26,208百万円と、前連結会計年度に比べて3,819百万円の増益(+17.1%)となった。
(当連結会計年度の取組み)
安心・快適・便利な生活やビジネスを実現する様々な事業を展開している。特に、関電不動産開発株式会社においては、住宅分譲事業では、関西圏、首都圏でタワーマンションなどの販売が好調に推移するとともに、関西初の全邸オール電化かつZEH仕様の戸建住宅やマンションに加え関電グループのVXサービスを組み入れた「スマートエコタウン星田」の開発を行ってきた。
また、賃貸事業では、築50年超のオフィスビル「堂島関電ビル」でテナントのみなさまと協働し「ESG×SDGs」に配慮した大規模リニューアルを実施するとともに、堂島浜や難波等の関西圏での再開発プロジェクトの推進に加え、首都圏においても複合施設の再開発に向けた準備を行っている。
海外事業についても、米国や豪州等で様々な住宅開発や賃貸事業に参画し、日系企業の幹事会社としての事業推進にも着手している。
当期経常利益を531,686百万円計上したことに加え、英国で配電事業を行うエレクトリシティ・ノース・ウエスト社の株式の一部を売却したことに伴い、61,412百万円を特別利益に計上したことなどから、税金等調整前当期純利益は594,572百万円となった。ここから法人税等合計と非支配株主に帰属する当期純利益を差し引きした親会社株主に帰属する当期純利益は420,364百万円となり、前連結会計年度に比べて21,506百万円の減益(△4.9%)となった。
資産は、設備投資額が減価償却費を上回ったことや、現金及び預金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べて619,737百万円増加(+6.9%)し、9,652,655百万円となった。
負債は、有利子負債が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べて154,466百万円減少(△2.3%)し、6,545,202百万円となった。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益(420,364百万円)を計上したことや、新株式発行及び自己株式の処分(378,787百万円)を実施したことなどから、前連結会計年度末に比べて774,204百万円増加(+33.2%)し、3,107,452百万円となった。
これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べて6.6%上昇し、31.8%となった。
また、1株当たり純資産は、前連結会計年度末に比べて204.73円増加し、2,752.01円となった。
当社グループは、エネルギー事業等を行うための設備投資や債務償還などに必要な資金を可能な限り自己資金にて賄い、不足する資金については主に社債や借入金によって資金調達を行い、コマーシャル・ペーパー等により短期的な運転資金を調達することにより、流動性を確保している。
営業活動によるキャッシュ・フローについては、法人税等の支払が増加したことや、受取手形、売掛金及び契約資産などが増加したことなどから、前連結会計年度に比べて収入が579,690百万円減少(△50.2%)し、575,299百万円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローについては、投融資の回収収入が増加したことなどから、前連結会計年度に比べて支出が85,695百万円減少(△20.0%)し、342,353百万円の支出となった。
財務活動によるキャッシュ・フローについては、新株式発行及び自己株式の処分を実施したことや、有利子負債の返済額が減少したことなどから、前連結会計年度に比べて収入が626,580百万円増加し、137,673百万円の収入となった。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて377,004百万円増加(+66.8%)し、941,432百万円となった。
(5)中期経営計画の財務目標および進捗状況
連結財務目標および進捗状況
(注) 1 ROA〔総資産事業利益率〕=事業利益〔経常損益+支払利息〕÷総資産〔期首・期末平均〕
2 ROIC〔投下資本利益率〕=税引後事業利益÷投下資本〔期首・期末平均〕
セグメント別財務目標および進捗状況
(注) 1 各セグメント損益には、連結子会社および持分法適用会社からの受取配当金を含まない。
2 ROA〔総資産事業利益率〕=事業利益〔セグメント損益+支払利息〕÷セグメント資産〔期首・期末平均〕
該当事項なし。
当社および連結子会社における研究開発活動としては、中期経営計画の達成に向け、『ゼロカーボンへの挑戦(EX)に資する研究開発』『サービス・プロバイダーへの転換(VX)に資する研究開発』および『強靭な企業体質への改革(BX)に資する研究開発』を中心に取組んでいる。
それぞれの取組みについては次のとおりである。
1.ゼロカーボンへの挑戦(EX)に資する研究開発
・原子力発電所における地震・津波・高経年化などの安全性向上を主目的とした研究開発
・水素や再生可能エネルギーなどゼロカーボンを見据えた研究開発
・再生可能エネルギー・分散型電源等の普及拡大に伴う電力品質に関する研究開発 など
2.サービス・プロバイダーへの転換(VX)に資する研究開発
・EVバスの運行管理とエネルギーマネジメントシステムを一体化させた各種先端技術開発のための研究開発
・省エネ、エネルギー診断などのエネルギー事業に必要な商品・サービスに関する研究開発
・将来の分散型電源を見据えたVPP事業・系統用蓄電池事業・再エネアグリゲーション事業のための研究開発
・新規事業開発に係る研究開発 など
3.強靭な企業体質への改革(BX)に資する研究開発
・設備機能向上によるレジリエンス強化に資する研究開発
・発電効率向上や設備の寿命延伸、作業効率化・設備のスリム化などのコスト削減につながる研究開発 など
なお、当連結会計年度における当社および連結子会社の研究開発費の金額は、エネルギー事業について主として上記1~3の研究課題に関して