第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社は、きめ細やかな販売活動や多様なサービスの提供により収益拡大を図るとともに、カイゼン活動やDX(デジタルトランスフォーメーション)などの取り組みを通じ効率化・コスト低減を一層強力に推進してきた。

2024年度の連結経常利益は、前年度の燃料費等調整制度の大幅な期ずれ差益が解消したことによる収支の悪化などにより、前連結会計年度に比べ232億64百万円減の640億51百万円となった。

 

[ほくでんグループが中長期で目指す姿]

(1) ほくでんグループの新たな経営理念

ほくでんグループは、経営環境が絶えず変化するなかにおいても、さらなる事業成長と持続可能な社会の実現に向けて変革を続け、北海道を基盤とした経営を進めていく。このような思いを改めて整理し、さらに具体的な行動につながるよう新たな経営理念として位置づけた。

 

 


 

(2) ほくでんグループ経営ビジョン2035

北海道では、次世代半導体工場や大型データセンターといったデジタル産業の立地が計画されるなど、北海道の発展に向けた強力な追い風が吹いている。一方、高齢化や人口減少が進んでいくことに変わりはなく、将来的には働き手不足などにより公共サービスや社会インフラの維持が難しくなる可能性もあることから、これらの課題解決に向けた取り組みも必要となる。

このようななか、北海道とともにほくでんグループが力強く成長していくため、2025年3月、2035年において目指す姿として、「ほくでんグループ経営ビジョン2035」を策定した。本ビジョンにおいて定めた経営テーマや持続的な企業価値向上方策を踏まえた取り組みを展開し、経営目標の達成を目指していく。

 

 

<2035年に向けたほくでんグループの経営テーマ>

ほくでんグループが北海道の発展に貢献できるとの認識のもと、「北海道の発展に向けたGX※実現への挑戦」と「新たな価値創造に向けた挑戦」、これらを下支えする「持続的な成長に向けた経営基盤の強化」の3点を2035年に向けたほくでんグループの経営テーマとして位置づけた。経営テーマに掲げた取り組みを進め、ほくでんグループの事業成長と北海道の発展の両立を目指す。

※ GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた対応を成長の機会と捉え国際 的な産業競争力を高めていくために、経済社会システム全体を変革させることを目指すもの

 


<持続的な企業価値向上方策(経営モデル)>

経営テーマに掲げた取り組みを進めるにあたり、「①事業ポートフォリオの最適化」「②事業ごとのROICスプレッド※1の拡大」「③キャッシュの最適配分と資本構成の最適化」「④成長投資」の各方策を展開し、持続的な企業価値向上を実現していく。

 


※1 ROICスプレッド:ROIC(投下資本利益率)-WACC(加重平均資本コスト)

※2 次世代エネルギー投資:水素、アンモニア、CCUS※3などへの投資
                       (次世代エネルギーは収益化が見込まれる段階で事業ポートフォリオに組み込み)

※3 CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization, and Storage(CO2の回収・有効活用・貯留)の略

 

 

<2035年に向けたほくでんグループの事業領域>

事業ポートフォリオの最適化を進めるうえで、ほくでんグループの事業を「エネルギー(発電・送配電・小売)/非エネルギー」と「実装済(基幹エネルギー等)/本格実装前(次世代エネルギー)」という2つの切り口により区分した。


※1 北海道の脱炭素エネルギーを活用するための積極的な投資により、北海道にとどまらず、全国への脱炭素エネルギーの供給に結びつけていくビジネスモデル

(将来的には電力のみならず、次世代エネルギーについても全国へ供給することを想定)

※2 O&M:Operation(運用)& Maintenance(保守)の略

※3 インタラクションサービス:エネルギー分野にとどまらない様々な商品やサービスを一体的に提供する事業

 

<「ほくでんグループ経営ビジョン2035」における経営目標>

経営テーマや持続的な企業価値向上方策を踏まえた取り組みを展開し、以下の経営目標を達成していく。

 


※ 泊発電所再稼働に伴う料金値下げを考慮

 

 

<2050年カーボンニュートラルの実現に向けた挑戦>

ほくでんグループは、2050年の北海道におけるエネルギー全体のカーボンニュートラルの実現に最大限挑戦している。

ほくでんグループのサプライチェーン排出量(スコープ1+2+3)※1について、2013年度比で2030年度に46%削減、2035年度に60%削減の目標を掲げており、この達成に向けて、再生可能エネルギー電源の導入拡大や泊発電所の全基再稼働、火力発電所の脱炭素化などに取り組んでいく。

また、再生可能エネルギー電源の開発や、脱炭素に向けたお客さまサポート、省エネのご提案、空気熱を活用したヒートポンプ機器などでの電化推進を通じて、2030年度に150万トン、2035年度に250万トンの排出削減に貢献していく。

 


※1 スコープ1:当社事業所からの直接排出(主に火力発電所)

スコープ2:当社が需要家として供給を受けた電気、熱等の使用に伴う間接排出

スコープ3:上記以外の間接排出(主に他社購入電力に伴う間接排出)

※2 従来の製品・サービス(ベースライン)と新たな製品・サービスの温室効果ガス排出量の差分であり、製品・サービスを通じて社会全体の気候変動の緩和(インパクト)への貢献を定量化したもの

 

[2025年度の取り組み事項]

中長期的な電力需要増加への着実な対応や社会課題解決に貢献する事業共創などにより新たな成長機会を掴み取り、ほくでんグループが北海道とともに力強く成長していくため、2025年度は以下の取り組みを進めていく。

(1)北海道の発展に向けたGX実現への挑戦

①泊発電所の再稼働とさらなる安全性向上に向けた取り組み

原子力発電は、燃料供給の安定性や長期的な価格安定性、発電時にCO2を排出しないなどの特長があり、カーボンニュートラルの実現と安定供給の確保を支える重要な電源である。

2024年12月、泊発電所3号機の新規制基準適合性審査において、審査上の論点に関する一通りの説明を終了し、2025年3月には、これまでの審査内容を踏まえた泊発電所3号機の原子炉設置変更許可申請に係る補正書を原子力規制委員会に提出した。引き続き、2027年のできるだけ早期の泊発電所3号機再稼働に向け、設計及び工事計画認可審査への対応や、新たな防潮堤設置を含む安全対策工事などに総力を挙げて取り組んでいく。また、泊発電所の再稼働後には適正な水準で電気料金の値下げを行う。

福島第一原子力発電所のような事故を決して起こさないとの強い決意のもと、これまでの安全対策にとどまることなく、重大事故リスクを一層低減するようこれからも取り組んでいく。「世界最高水準の安全性」を目指し継続的に技術力の維持・向上を図るとともに、様々な機会を活用して安全性向上の取り組みをお伝えするなど、みなさまから信頼いただけるよう努めていく。

 

②再生可能エネルギー電源のさらなる拡大に向けた取り組み

再生可能エネルギー電源について、「2035年度までに300万kW以上増(開発規模ベース)」の達成に向けて、新規地点の開発や出資参画の検討を進めている。

2024年、風力発電事業において、檜山沖における洋上風力発電事業及び上ノ国町における陸上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書の縦覧を実施しており、事業化に向けた検討を進めていく。また、当社は、苫東バイオマス発電合同会社が進める苫小牧市の木質バイオマス発電事業に出資参画している。

引き続き、再生可能エネルギー電源のさらなる導入拡大に向けた取り組みを進めていく。

 

 

③将来に向けた供給力の確保と火力発電の脱炭素化に向けた取り組み

中長期的な北海道エリアの電力需要増加を見据えた供給力の確保のため、LNG火力発電所である石狩湾新港発電所2号機(56.94万kW)の2030年度の運転開始及び同発電所3号機(56.94万kW)の2033年度の運転開始に向けて着実に取り組んでいく。

また、天候の変化により急な出力変動などが生じる可能性のある再生可能エネルギー電源の大量導入を進めていくなかにおいても、電力の安定供給を果たしていくためには、火力発電の持つ調整力等が重要となる。このため、燃焼時にCO2を排出しない水素やアンモニアといった脱炭素燃料への転換やCCUS導入などに向けた検討を進めている。具体的には、苫東厚真発電所4号機で石炭にアンモニアを熱量比で20%混焼するための各種検討を進めるとともに、石狩湾新港発電所2号機においても水素への燃料転換に向けた検討を進めていく。また、CCUSに係る取り組みとして、2024年10月には、苫小牧エリアにおけるCCS※事業に係る設計作業等を独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構から受託している。

さらに、水素やアンモニアについては、火力発電における活用のほか、産業部門や運輸部門をはじめとした様々な分野での社会実装に向けて、国や自治体、他企業とも連携しながら利活用の検討を進めている。

  ※ CCS:Carbon dioxide Capture and Storage(CO2の回収・貯留)の略

 

④需要増加や再生可能エネルギー電源の導入拡大を見据えた系統整備などの取り組み

北海道電力ネットワーク株式会社では、再生可能エネルギー電源のさらなる導入拡大、大規模・長時間停電を回避するためのレジリエンス(災害などに対する回復力・復元力)強化、大規模需要の進出への適切な対応など、中長期を見据えた次世代型電力ネットワークの構築に向けた取り組みを進めている。

再生可能エネルギー電源のさらなる導入拡大などに向けた系統整備として、現在の新北海道本州間連系設備と同一ルートにおいて30万kWの連系線増強工事を進めている。また、日本海ルートにおける北海道本州間の海底直流送電の整備計画に関して、2025年2月に北海道電力ネットワーク株式会社、東北電力ネットワーク株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社、電源開発送変電ネットワーク株式会社の4社が実施案を検討する事業者として決定され、関係者の協力・支援のもと、共同で検討を進めている。

レジリエンス強化の取り組みの一つとして、北海道胆振東部地震で発生したブラックアウトの再発防止対策である統合型系統安定化システムを運用しており、需給バランスを維持するための最適な制御を高速で行うことにより一層の系統安定化を図っている。

 

(2)新たな価値創造に向けた挑戦

①お客さまへの提供価値の拡大・創造

エネルギーサービスプロバイダ事業によるエネルギー利用の最適化や再生可能エネルギーの価値を活用したソリューションサービスの提供などにより、お客さまのご要望にお応えすることで電力契約を獲得していく。また、スマート電化の推進やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)コンサルティングなどの取り組みにより、お客さまの省エネやCO2排出量削減に貢献していく。

加えて、これまでに培ってきたつながりを活かし、お客さまや地域とのコミュニケーションを通じて、お困りごとや社会課題の解決などにつながるサービスラインアップの拡充を進めている。光回線インターネットサービス「ほくでん光」のほか、ヘルスケアアプリ「ほくでんヘルスケア」、がんリスク検査キット「サリバチェッカー」などを提供している。

 

②事業共創による価値創造

北海道の持続的な発展に貢献するため、北海道が有する強みや地域社会が抱える課題から事業機会を見出し、新たな価値を創出していく。

北海道の基幹産業である農林水産業のほか、今後は福祉、観光などの分野でも、幅広く地域との共創に関する事業を展開していく。農業の担い手不足への対応に加えて、フードマイレージ(食料輸送にかかる環境負荷)の削減に資する省エネ型小型植物工場事業の展開や、磯焼け課題解決を目指したウニ畜養事業の実施に向けた検討などに取り組んでいる。

また、北海道電力ネットワーク株式会社では、電気の検針を行うスマートメーターの通信ネットワークを活用して、水道やLPガスメーターの指針値などの情報を提供するⅠoT通信サービスを提供しており、自治体や事業者に導入されている。

 

 

(3)持続的な成長に向けた経営基盤の強化

①カイゼン活動・DXの活用による事業変革

ほくでんグループでは、あらゆる業務について、不断の見直しにより抜本的な効率化・費用低減を実現する。高い効果が期待できる大型カイゼンプロジェクトの確実な推進やグループ会社へのさらなる展開など、カイゼン活動を強力に進め、生産性4倍増を目標に着実に成果を積み上げていく。

また、DXを「『デジタル技術を活用した業務変革』と『変化に挑戦し続けるための意識変革』による企業改革」と定義し、ロボットなどの活用による火力発電所の運用高度化などを実施している。さらに、AIを含むデジタル技術の活用などにより、高付加価値化や新たな事業価値の創出を進めていく。

 

②人的資本経営の推進

ほくでんグループ人材戦略に基づき人材育成や環境整備に取り組んでいる。従業員一人ひとりの成長・活躍を後押しし、今ある価値を高めながら、新たな価値を生み出していく企業風土を創造していく。

「心身ともに健康であること」が従業員のウェルビーイングにつながるとの考えのもと、一人ひとりの健康づくりや働きやすい職場づくりに向けた活動を積極的に展開しており、経済産業省と日本健康会議から「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を6年連続で取得している。また、女性管理職の増加に向けた取り組みなど、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、ダイバーシティ&インクルージョンを推進している。

 

③地域・社会に関する取り組み

ほくでんグループは、地域社会に根差した取り組みを通じて地域との結びつきを強めており、2021年から実施している道民の森での植樹活動・勉強会などの取り組みを通じて、生物多様性の保全や教育活動に貢献している。

2024年7月、当社は、一般社団法人北海道プロ野球独立リーグと地方創生に関する連携協定を締結し、同年9月には、プロサッカークラブ「北海道コンサドーレ札幌」とクラブパートナー契約を締結した。人々のつながりの創出など、スポーツが持つ力を活用しながら、地域活性化に寄与していく。

グループ会社においても、北電総合設計株式会社が自治体などから重要文化財建築物等の保存活用計画の策定や耐震診断、各種設計や工事監理等の業務を受託しており、地域社会の文化の保存・活用に寄与している。

 

④コーポレートガバナンスの充実とコンプライアンス・リスク管理の徹底

ステークホルダーのみなさまとの協働や、適切な情報開示・透明性の確保などに積極的に取り組むことで、透明・公正かつ迅速果断な意思決定を支えるコーポレートガバナンスを充実させていく。コンプライアンスを徹底する組織風土を醸成するとともに、事業に関わるリスクを適切に認識し、リスク管理の徹底に努めていく。

また、ほくでんグループは、グループの事業活動に関わるすべての方々の人権を尊重しており、「ほくでんグループ人権方針」を定めている。人権デュー・ディリジェンスの継続的な実施や救済メカニズムの構築などにより、人権尊重の取り組みを推進している。

 

2025年4月、当社従業員が、北海道電力ネットワーク株式会社が作成した非公開情報に該当し得る情報を含む資料を所持していた事案が判明したことに対し、当社及び北海道電力ネットワーク株式会社は、電力・ガス取引監視等委員会より電気事業法の規定に基づく報告徴収を受領し、事案に関する事実関係、発生原因及び再発防止策などについて取りまとめ、同年5月30日、同委員会へ報告した。

当社及び北海道電力ネットワーク株式会社は、電気事業法及び電気事業法施行規則等で定められる行為規制に抵触し得る不適切な取り扱いを行っていたことについて大変重く受け止め、従業員の意識変革や情報管理体制の強化、行為規制遵守に係る体制整備など再発防止策を講じていく。

 

  なお、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであるが、将来に関する事項については、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものである。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

ほくでんグループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

ほくでんグループは事業の持続的な成長と持続可能な社会の実現に向け、ESG(環境・社会・ガバナンス)を含むサステナビリティについての取組を重視している。サステナビリティを巡る社会の動向など、経営に与える影響が大きいリスクや収益機会を整理し、役付執行役員(社長執行役員、副社長執行役員、常務執行役員)等で構成する業務執行会議において審議を行ったうえで、取締役会において年度経営方針を策定している。

人権については、「ほくでんグループ人権方針」において、人権に関する国際的規範・原則、及び各国のビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)を支持・尊重し、ほくでんグループの事業活動に関わる全ての方々の人権を尊重する取組を推進している。具体的には、当社人事労務部担当執行役員をトップとする「人権委員会」のもと、本方針の周知浸透・教育、人権デュー・ディリジェンスの実施や救済メカニズムの運用により、ほくでんグループの事業活動における人権への負の影響の予防・軽減に努めている。

 

(2) 重要なサステナビリティ項目

重要なサステナビリティ項目である人的資本及び気候変動対策に関する考え方及び取組は、次のとおりである。

① 人的資本

ほくでんグループにおける主要な事業を営む当社及び北海道電力ネットワーク株式会社は、雇用管理を両社一体的に実施しているため、以下の事項は、当社と北海道電力ネットワーク株式会社の人的資本に関する方針を記載している。

a. 戦略

ⅰ.全体像

経営環境が大きく変化する中、持続的に成長できる企業であるための基盤は「人」であるとの考えのもと、2024年3月に「ほくでんグループ人材戦略」を策定している。この戦略の実行を通じて、「今ある価値」を高めながら「新たな価値」を生み出していく企業風土を創造し、事業の持続的な成長に挑み、持続可能な社会の実現に貢献していく。

これらを成し遂げるため、人材育成と環境整備を2つの基本コンセプトとして定めており、さらにその基本コンセプトを達成するための取組を5つの視点で分類し、具体的施策を推進している。

 

ⅱ.人材育成方針

必要なスキルを身に付け、自律的に挑戦・変化していく人材を育成することを目的に、以下2つの視点で取組を進めている。

■視点① 「ほくでん力」の向上と挑戦・変化への支援

電気事業で培ってきた安定供給に対する責任感・使命感、技術やノウハウを集合することで発揮される力を「ほくでん力」と定義し、それを向上するための従業員のスキル・ノウハウ等の維持・向上の支援を行っている。

様々なスキルの取得に向け、意欲ある従業員の学びを促進する研修・通信教育の拡充や、従業員が自律的にキャリアを考え、それを実現する自己成長の機会を得るための自律的なキャリア形成支援施策の導入を進めている。また、従業員一人ひとりが挑戦意欲を高め、働きがい・成長を実感できる考課処遇制度への見直しを進めている。

 

■視点② 人材ポートフォリオの構築

将来的に求められる人材ポートフォリオと現状のギャップを把握し、適切な解決策(採用・育成・配置等)を検討・実施していくため、タレントマネジメントシステムにより人材のスキルや経験等を的確に把握・管理し、緊急性が高い重要な案件に関しては、迅速に人材を配置できる仕組みを構築している。

今後の経営環境の変化を見据え、経営人材候補者やデジタル人材を早期かつ計画的に育成していく観点から、若年層から管理職までの研修体系を整備している。また、人材確保にあたっては、経験者採用の拡大に向け、「ダイレクトリクルーティング」「カムバック採用」「リファラル採用」といった新たな採用手法も導入している。さらに2025年3月から、新卒採用選考を受け選考合格や内定を辞退された方を対象に、辞退後の3年間に再応募した場合、採用選考における面接回数を原則1回に優遇する「再応募スペシャルパス制度」を導入しており、より多様な人材の確保に繋げている。

 

ⅲ.社内環境整備方針

多様な人材が互いに認め合い、働きがいと成長を感じながら活躍する環境を整備することを目的に、以下3つの視点で取組を進めている。

■視点③ ダイバーシティ&インクルージョンの推進

多様な視点や価値観が社内に存在することは持続的な成長に向けた強みとなり得ると認識し、性別・入社歴・国籍等にとらわれず人材の多様性の確保に努めている。

女性の活躍推進については、①女性の採用比率が低い、②女性の管理職比率が低い、③男性の育児休業取得者が少ないという大きく3つの課題があるとの認識のもと、数値目標を掲げて取組を進めている。また、障がい者の活躍推進に向け一層活き活きと働ける環境を整備するため、雇用・職域拡大を目指すとともに、グループ会社における新規事業立ち上げによる雇用拡大を進めている。さらに、高い技術力や知見を備えた人材に長く継続的に力を発揮してもらうため、2026年度から「社員の定年年齢の60歳から65歳への引き上げ」と「65歳から70歳までの再雇用制度の導入」を実施する。

 

■視点④ 柔軟な働き方の支援

従業員にとってより一層働きやすい環境を構築するため、従業員の状況に応じた働き方を可能とする仕組みを整備し、生産性の向上に努めている。

これまでの在宅勤務制度の対象者・適用回数等の拡充や時間単位休暇の取得要件拡大等に加え、フレックス勤務制度の対象職場の拡大やコアタイム(必ず勤務しなければならない時間)の撤廃、週休3日制の導入などの検討・実施を進め、休暇取得日数の拡大や総実労働時間の低減を目指していく。

 

■視点⑤ 健康経営の推進

従業員一人ひとりの健康を経営の重要なテーマに定め、誰もが心身ともに健康な状態で働き続けることで満足度や働きがいを高め、取引先や地域社会の健康増進にも貢献しつつ、当社の持続的成長につなげることを目指した健康経営に取組んでいる。

取組にあたり、人事労務担当役員が統括する健康経営推進委員会を設置するなど、各種健康経営施策や労働安全確保に繋がる活動を推進している。そうした取組が評価され、経済産業省と日本健康会議が認定する「健康経営優良法人(ホワイト500)」に6年連続で認定されている。

b. 指標及び目標

雇用管理を一体的に実施している当社及び北海道電力ネットワーク株式会社においては、前記「a. 戦略」において記載した人材育成方針及び社内環境整備方針に関連する指標のデータ管理や具体的な取組を行っているものの、ほくでんグループに属する全ての会社において行っていないため、ほくでんグループにおける記載が困難である。このため、次の指標に関する目標及び実績は、ほくでんグループにおける主要な事業を営む当社及び北海道電力ネットワーク株式会社のものを記載している。

 

人材育成方針に関わる指標及び目標>

2025年3月31日現在

視 点

指 標

2024年度実績(目標)

(注1)

視点① 「ほくでん力」の向上と
挑戦・変化への支援

従業員一人当たりの
教育投資額

131千円

視点② 人材ポートフォリオの構築

全社DX人材育成カリキュラム
受講完了率 (注2)

94.8(100%)

経験者採用比率

32

自発的離職率 (注3)

1.8

 

(注) 1 当社と北海道電力ネットワーク㈱は、雇用管理を両社一体的に実施しているため、当該指標の目標値や実績値についても両社一体で算出している。また、目標値については当社及び北海道電力ネットワーク㈱において現状で設定しているもののみ記載している。

   2 全社DX人材育成カリキュラム受講完了率は、受講対象従業員と、そのうち全社DX人材育成カリキュラムを受講した従業員の2025年3月31日までの累計での比率である。

   3 自発的離職率は、2024年4月1日時点の在籍従業員のうち、2025年3月31日までに自発的に離職(自己都合)した従業員の比率である。

 

 

社内環境整備方針に関わる指標及び目標>

2025年3月31日現在

視 点

指 標

2024年度実績(目標)
 (注1)

視点③ ダイバーシティ&

インクルージョンの推進

女性採用比率 (注2)

15.9(13%以上)

女性管理職人数 (注2)

15(21人以上)

男性育児休業取得率 (注2)

47.0(30%以上)

障がい者雇用率 (注3)

2.64

視点④ 柔軟な働き方の支援

年次有給休暇取得率

85.5(100.0%)

視点⑤ 健康経営の推進

健康経営に関する社外認定

健康経営優良法人

「ホワイト500」

6年連続で認定 (注4)

労働災害度数率 (注5)

0.56

 

(注) 1 当社と北海道電力ネットワーク㈱は、雇用管理を両社一体的に実施しているため、当該指標の目標値や実績値についても両社一体で算出している。また、目標値については当社及び北海道電力ネットワーク㈱において現状で設定しているもののみ記載している。

     2 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律及び次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画(2023年4月1日~2026年3月31日)に基づく目標値である。

     3 障がい者雇用率については、障害者雇用促進法第43条第7項に基づき公共職業安定所に報告している「障害者雇用状況報告書」に記載している2024年6月1日現在の雇用率である。

     4 大規模法人のうち、保険者(健康保険組合等)と連携して優良な健康経営を実践している法人を日本健康会議において認定・公表する制度で、このうち上位500法人が「健康経営優良法人」(通称「ホワイト500」)として認定される。

     5 労働災害度数率:延べ100万労働時間あたりの労働災害による休業1日以上の死傷者数を示し、災害の発生頻度を表す。

 

<人材戦略のゴールに関わる指標及び目標>

人材戦略のゴールである「今ある価値を高めながら、新たな価値を生み出していく企業風土の創造」を実現するためには、従業員が仕事に対して熱意を持って前向きな姿勢で取り組み、当社や所属する組織との心理的なつながりが良好であることが前提となるため、それを測る指標として「ワークエンゲージメント」と「エンプロイーエンゲージメント」を設定している。

2025年3月31日現在

人材戦略のゴール

指 標

エンゲージメントスコア
 (注1)

2024年度実績(目標)

今ある価値を高めながら、

新たな価値を生み出していく
企業風土の創造

ワークエンゲージメント(注2)
 

50.8(51.0)

エンプロイーエンゲージメント
(注3)

48.5(50.0)

 

(注) 1 当社と北海道電力ネットワーク㈱は、雇用管理を両社一体的に実施しているため、当該指標の目標値や実績値についても両社一体で算出している。

     2 ワークエンゲージメント:仕事に対する熱意や姿勢を表す。

     3 エンプロイーエンゲージメント:所属する会社や組織との心理的つながりを表す。

 

 

気候変動対策

a. ガバナンス及びリスク管理

社長を委員長とする環境委員会において気候変動対策を含むほくでんグループの重要な環境施策を議論する体制としており、同委員会での議論を踏まえ、気候変動対策を含むほくでんグループの経営方針や重要な環境施策について業務執行会議において審議を行い、特に重要な事項は必要に応じて取締役会に付議している。

リスク管理については、全社的な統合リスク管理体制の下で気候変動に伴うリスクを含め、リスクの体系的な把握、対応方策の立案・実行、対応状況の確認等を行っている。経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、社長を委員長とする「統合リスク管理委員会」にて対応方針と対応状況を確認し助言を行うとともに、毎年のグループの経営方針に反映し、取締役会に付議するなど、経営管理サイクルのなかでリスクの発現防止と低減に努めている。

b. 戦略

気候変動に伴うリスクと機会を検討するにあたり、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の公表データが示す1.5℃シナリオや4℃シナリオを参照している。泊発電所3号機の再稼働に向けた審査状況や、電力需要の増加に伴うCO2対策費の増加などの状況変化等を踏まえて、気候変動に伴うリスクと機会を特定した。

 

<気候変動に伴うリスク>

 

区分

リスクの内容

発現時期

影響度

主な対応策

1.5

政策・

法規制

CO2排出に対する政策・法規制の強化に伴う費用の増加

短~長期

・泊発電所の早期再稼働

・再生可能エネルギー開発推進

・火力発電の脱炭素化推進(水素・アンモニア利活用、CCUS活用など)

・調達する電力の低・脱炭素化

技術

脱炭素化対応の遅れによる既設火力の稼働率低下に伴う収益の減少

中・長期

・火力発電の脱炭素化推進(水素・アンモニア利活用、CCUS活用など)

新技術に係る投資回収の遅延

中・長期

・事業リスク洗い出し、経済性評価

市場

脱炭素化対応の遅れによる企業進出の鈍化、お客さまの脱炭素意識の高まりに伴う化石燃料由来の電力販売不振による収益の減少

短期

・泊発電所の早期再稼働

・再生可能エネルギー開発推進

・火力発電の脱炭素化推進(水素・アンモニア利活用、CCUS活用など)

再生可能エネルギーの大量導入による競争環境の変化に伴う収益の減少

中・長期

・事業領域拡大

・電化推進策の展開、道外企業の誘致

評判

脱炭素化対応の遅れによる資金調達への影響

短~長期

・泊発電所の早期再稼働

・再生可能エネルギー開発推進

・火力発電の脱炭素化推進(水素・アンモニア利活用、CCUS活用など)

4

急性

台風・暴風雪などの自然災害の激化・頻発による対応費用の増加

短~長期

・過去事例や新たな知見を踏まえた設備対策

・迅速な復旧(訓練など)

慢性

気象パターンの変化などに伴う

発電電力量の減少

短~長期

・発電の効率向上や運用最適化

 

 

 

<気候変動に伴う機会>

 

区分

機会の内容

実現時期

貢献度

主な対応策

1.5

資源の

効率/

製品・

サービス

石油系エネルギーへの依存度が高い暖房需要・運輸などの電化、再生可能エネルギーなどポテンシャルを活かした半導体関連産業やデータセンターの進出などによる電力需要の増加

短・中期

・電化推進策の展開、道外企業の誘致

・再生可能エネルギー電力供給などお客さまニーズへの対応

お客さまの脱炭素意識の高まりを踏まえた、ソリューションサービスによる収益の増加

短~長期

・О&М事業推進

・エネルギー・マネジメント事業推進

CO2フリー水素の供給に伴う収益の増加

長期

・水素・アンモニア事業推進

エネル

ギー源

脱炭素エネルギーの供給基地の主力となる原子力・再生可能エネルギーの発電電力量の増加

短~長期

・泊発電所の早期再稼働

・再生可能エネルギー開発推進

・発電の効率向上や運用最適化

革新的技術の実用化による火力電源の低・脱炭素化に伴う発電電力量の増加

中・長期

・火力発電の脱炭素化推進(水素・アンモニア利活用、CCUS活用など)

市場

グリーンボンド発行などによる資金調達の多様化・安定化

短・中期

・グリーン/トランジション・ファイナンス活用などによる資金調達の多様化・安定化

4

レジリ

エンス

早期復旧を通じた信頼性向上による、電気の優位性確保・需要の増加

短・中期

・過去事例や新たな知見を踏まえた設備対策

・迅速な復旧(訓練など)

・自治体などとの協力体制構築、情報発信

 

[発現・実現時期] 長期:10年超、中期:10年程度、短期:5年程度

[影響・貢献度] 大:100億円超/年、中:10億~数十億円/年程度、小:数億円/年程度

 ※気候変動に伴うリスク・機会の影響評価は、ほくでんグループ全体で実施。

 

 

 

<気候変動に伴うリスク・機会の財務影響(試算)>


 

<ほくでんグループの事業基盤である北海道における気候変動に伴う機会>

北海道における再生可能エネルギー発電事業の適地としてのポテンシャル等を背景に、次世代半導体工場や大型データセンターといったデジタル産業の立地が計画されており、中長期的には道内の電力需要規模の大幅な増加が見込まれる。

また、北海道の家庭部門のエネルギー消費に着目すると、積雪寒冷といった地域特性から、冬季の暖房使用等を背景に石油系エネルギーへの依存度が全国よりも高く、北海道は脱炭素に資する電化率向上のポテンシャルが大きい。

 


 

c. 指標及び目標

「カーボンニュートラルに向けた移行計画」に基づき、温室効果ガス排出削減・削減貢献の目標達成を目指していく。

 

<温室効果ガス排出削減・削減貢献の目標>

目標年度

目 標

2030年度

・温室効果ガス排出削減(スコープ1+2+3):2013年度比で46%削減

・温室効果ガス削減貢献:150万tの削減に貢献

2035年度

・温室効果ガス排出削減(スコープ1+2+3):2013年度比で60%削減

・温室効果ガス削減貢献:250万tの削減に貢献

2050年度

・北海道におけるエネルギー全体のカーボンニュートラルの実現に最大限挑戦

 

 

 

 

<温室効果ガス排出・削減貢献の実績>

項 目

実績

温室効果ガス排出量

2,130万t-CO2[2023年度実績](2013年度比△352万t-CO2[△14%])

温室効果ガス削減貢献量

6.4万t-CO2[2024年度実績]

 

(注)1 温室効果ガス排出量の2024年度実績は、今後公表する「ほくでんグループレポート」の2025年度版に掲載を予定している。

 

<カーボンニュートラルに向けた移行計画> 
 温室効果ガス排出削減の目標の達成に向けて、再生可能エネルギー電源の導入拡大や泊発電所の全基再稼働、火力発電所の脱炭素化などに取り組んでいく。また、再生可能エネルギー電源の開発や、脱炭素に向けたお客さまサポート、省エネのご提案、空気熱を活用したヒートポンプ機器などでの電化推進を通じて、2030年度に150万トン、2035年度に250万トンの排出削減に貢献していく。
 

 


 

 

3 【事業等のリスク】

ほくでんグループの業績に影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがある。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものである。

ほくでんグループでは、これらのリスクを認識した上で、発現の回避や発現した場合の対応に努めていく。

 

(1) 原子力発電の状況

泊発電所の安全確保を経営の最重要課題と位置づけ、社長のトップマネジメントのもと、「安全性向上計画」に基づき、安全性のより一層の向上に取り組んでいる。具体的には、原子力発電所の新規制基準への適合はもとよりさらなる安全性・信頼性向上に向けた安全対策工事や、重大事故などを想定した原子力防災訓練の実施など、安全対策の多様化や重大事故等対応体制の強化・充実に取り組んでいる。また、2024年3月には泊発電所の津波対策として新たな防潮堤の設置工事を開始した。工事の完了時期は未定だが、着工から3年程度での完成を目標とし、さらに少しでも早い完成を目指して取り組んでいる。

泊発電所の再稼働に向けて、新規制基準の適合性審査への対応に取り組んでおり、2025年3月には、これまでの審査内容を踏まえた3号機の原子炉設置変更許可申請に係る補正書を提出した。その後、2025年4月の原子力規制委員会において3号機の原子炉設置変更許可申請に関する審査の結果の案が取りまとめられた。

引き続き、原子炉設置変更許可の取得に向けて対応を進めるとともに、早期の再稼働に向けて、設計及び工事の計画認可(設工認)や使用前事業者検査等に対応していく。

しかしながら、今後の審査の状況や防潮堤設置工事の進捗などによって泊発電所の停止がさらに長期化し燃料費の増大が続く場合などには、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

(2) 設備障害・供給支障

発電設備や流通設備については、点検・保守の着実な実施などによる設備の信頼性維持や、安定的な燃料調達、資機材サプライチェーンの維持管理に努めているが、自然災害や故障等により設備に障害が生じた場合、燃料供給や資機材サプライチェーンの途絶により設備の運転・維持管理が困難になる場合には、その復旧工事や発電所の停止に伴う他の発電所の焚き増しなどのために費用が増加するなど、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

(3) 電気事業を取り巻く制度の変更等

電気事業のさらなる競争活性化等を目的とした市場やルールの整備・見直しなど、国の制度変更により、業績に影響が及ぶ可能性がある。

原子力発電に伴う原子力バックエンド事業は、超長期にわたる事業であり不確実性を伴うが、使用済燃料の再処理や放射性廃棄物の処分のために必要となる費用については、法令等に基づき定められた単価を用いて算定した金額を拠出する制度が措置されており、廃炉の実施に必要となる費用については、法令等に基づき定められた金額を拠出する制度が措置されている。これらの制度措置により、事業者のリスクは軽減されているが、当該制度が見直される場合は、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

(4) 気候変動に関する影響

気候変動への関心が高まる中、ほくでんグループのサプライチェーン排出量(スコープ1+2+3)について、2013年度比で2030年度に46%削減、2035年度に60%削減の目標を掲げており、この達成に向けて、再生可能エネルギー電源の導入拡大や泊発電所の全基再稼働、火力発電所の脱炭素化などに取り組んでいく。

また、再生可能エネルギー電源の開発や、脱炭素に向けたお客さまサポート、省エネのご提案、空気熱を活用したヒートポンプ機器などでの電化推進を通じて、2030年度に150万トン、2035年度に250万トンの排出削減に貢献していく。

これらの取り組みにより、2050年の北海道におけるエネルギー全体のカーボンニュートラルの実現に向けて最大限挑戦していく。

しかしながら、カーボンプライシングなどの地球温暖化対策に関する環境規制の強化、脱炭素化に的確に対応できない場合における競争力の低下などにより、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

 

(5) 燃料・卸電力市場価格の変動

燃料調達費用については、燃料価格や為替レートの変動による影響を、電力購入費用については、卸電力市場価格の変動による影響を受ける。そのため、バランスのとれた電源構成を目指すとともに、長期契約・スポット調達の組み合わせや調達先など契約方法の多様化、デリバティブ取引の活用などにより価格変動リスクの分散・回避に努めている。また、自社による発電と電力市場取引による電気の調達を経済合理性の観点から最適に組み合わせることで費用低減を図っている。

低圧のお客さまには燃料価格の変動を一定の範囲内で反映する燃料費調整制度、高圧・特別高圧のお客さまには卸電力市場価格の変動についても反映する燃料費等調整制度を適用することにより、燃料・卸電力市場価格の変動による業績への影響は緩和される。

 

(6) 電力需要・販売電力量の変動

景気の悪化などによる経済活動・生産活動の低下、省エネルギーの進展、人口の減少、気温の影響などにより電力需要が減少した場合や、他事業者との競争激化により販売電力量が減少した場合には、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

(7) 降雨降雪量の変動

年間の降雨降雪量により、豊水の場合は燃料費の低減要因、渇水の場合は燃料費の増加要因となることから、業績に影響が及ぶ可能性がある。

なお、「渇水準備引当金制度」により一定の調整が図られるため、業績への影響は軽減される。

 

(8) 金利の変動

今後の市場金利の動向によっては新たな資金調達に係るコストが増加し、業績に影響が及ぶ可能性がある。

なお、2024年度末におけるほくでんグループの有利子負債は、全て固定金利で調達している。

 

(9) 電気事業以外の事業

電気事業以外の事業については、事業内容の事前評価、事業運営の適切な管理に努めているが、事業環境の悪化などにより、当初の見込みどおりの事業遂行が困難になる可能性がある。

 

(10) 感染症の拡大

電力の安定供給確保に向け、感染症の拡大を防止する対策を実施しているが、感染拡大により業務遂行への支障が生じた場合は、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

(11) コンプライアンスの遵守

「ほくでんグループCSR行動憲章」や「コンプライアンス行動指針」を定め、法令やコンプライアンスの遵守を徹底するとともに、コンプライアンスに関わる取り組みを円滑かつ効果的に推進するため、社長を委員長とする「企業倫理委員会」を四半期毎に開催し、外部有識者が取り組みの有効性を確認している。また、北海道電力ネットワーク株式会社においては「行為規制等遵守委員会」を設置し、外部有識者による評価・提言を基に行為規制等の遵守に向けた取り組みの実効性を高めるとともに、一般送配電事業の中立性・信頼性確保のための全社的な活動を推進している。

しかしながら、法令違反や企業倫理等に反する行為が発生した場合、社会的信用が低下し、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

(12) 情報の管理

ほくでんグループが保有するお客さま等に関する業務情報については、情報セキュリティの確保や社内ルールの整備、従業員教育の実施により厳正な管理に努めているが、情報流出により問題が発生した場合、社会的信用が低下し、業績に影響が及ぶ可能性がある。

 

  なお、上記のリスクのうち、合理的に予見することが困難であるものについては、可能性の程度や時期、影響額を記載していない。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績の分析

① 経営成績

当連結会計年度の小売販売電力量は、夏季の気温が前年度に比べ低かったことによる冷房需要の減少や冬季の高気温による暖房需要の減少などにより、対前年度増減率△4.1%となった。他社販売電力量は、再生可能エネルギーの買取増加に伴う販売量の増加などにより、対前年度増減率6.0%となった。

売上高は、燃料価格の低下に伴う燃料費等調整額の減少などにより、前連結会計年度に比べ517億31百万円△5.4%)減9,020億53百万円となり、営業外収益を加えた経常収益は、511億68百万円△5.3%)減9,056億27百万円となった。

経常利益は、前連結会計年度の燃料費等調整制度の大幅な期ずれ差益が解消したことによる収支の悪化などにより、前連結会計年度に比べ232億64百万円(△26.6%)減640億51百万円となった。

また、親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益に加え、核燃料売却益を特別利益に計上したことなどにより、642億18百万円となった。

 

 セグメント別の経営成績(セグメント間取引消去前)は、次のとおりである。

 

 [北海道電力]

当連結会計年度の売上高は、燃料価格の低下に伴う燃料費等調整額の減少などにより、前連結会計年度に比べ735億89百万円△8.5%)減7,880億51百万円となった。経常利益は、前連結会計年度の燃料費等調整制度の大幅な期ずれ差益が解消したことによる収支の悪化などにより、前連結会計年度に比べ152億71百万円(△22.1%)減536億89百万円となった。

 

 [北海道電力ネットワーク]

当連結会計年度の売上高は、最終保障供給による電力料の減少はあったが、再生可能エネルギーの買取増加に伴う卸販売収入が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ73億93百万円2.4%)増3,211億89百万円となった。

経常利益は、需給調整市場における調整力確保費用が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ95億51百万円(△89.5%)減11億15百万円となった。

 

 [その他]

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ10億25百万円△0.7%)減1,539億54百万円となり、経常利益は、電気通信事業の携帯電話事業者への回線提供収入が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ5億80百万円5.0%)増121億72百万円となった。

 

 

 生産、受注及び販売の実績

当社及び連結子会社の業種は広範囲かつ多種多様であり、また、「北海道電力」が担う発電・小売事業や「北海道電力ネットワーク」が担う一般送配電事業、離島における発電事業が事業の大半を占めることから、当該事業の発受電実績、販売実績及び資材の状況についてのみ記載している。

 

    a.発受電実績

種別

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

対前年度増減率(%)

発受電電力量

(百万kWh)

水力発電電力量

2,992

△16.8

火力発電電力量

16,167

5.1

原子力発電電力量

新エネルギー等発電等電力量

117

12.1

19,276

1.0

他社受電電力量

17,427

△2.8

揚水発電所の揚水用電力量等

△451

40.7

合計

36,252

△1.2

出水率(自流)(%)

89.8

 

(注) 1 他社受電電力量には、連結子会社や持分法適用会社からの受電電力量が含まれている。

 2 揚水発電所の揚水用電力量等とは貯水池運営のための揚水用に使用する電力量及び蓄電池の充電電力量である。

 3 出水率は、自社の1993年度から2022年度までの当該累計期間の30ヶ年平均に対する比である。

 

  b.販売実績

[販売電力量]

種別

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

対前年度増減率

(%)

小売(百万kWh)

低圧

電灯

7,805

△2.7

電力

1,764

△3.5

 計

9,569

△2.9

高圧・特別高圧

13,160

△3.4

   小計

22,729

△3.2

その他

71

△77.7

   合計

22,800

△4.1

他社販売(百万kWh)

10,770

6.0

 

(注) 1 小計欄は、北海道電力㈱の販売電力量を示す。

2 その他欄は、北海道電力ネットワーク㈱の販売電力量を示す。なお、対前年度増減率の算定

上は、2023年10月1日に当社が吸収合併した北海道電力コクリエーション㈱の販売電力量が

含まれている。

[料金収入]

種別

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

対前年度増減率

(%)

電灯・電力料

(百万円)

599,222

△2.2

地帯間・他社販売電力料

(百万円)

176,925

1.8

託送収益

(百万円)

43,285

2.7

 

(注) 1 北海道電力㈱、北海道電力ネットワーク㈱の合計(内部取引消去後)の実績を示す。なお、対前年度増減率の算定上は、2023年10月1日に当社が吸収合併した北海道電力コクリエーション㈱の料金収入が含まれている。

 2 「デフレ完全脱却のための総合経済対策」及び「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」に基づき実施される「電気・ガス価格激変緩和対策事業」、「酷暑乗り切り緊急支援」及び「電気・ガス料金負担軽減支援事業」により、国が定める値引き単価による電気料金の値引きを行っており、その原資として受領する補助金26,055百万円については、「電気事業雑収益」に計上している。

 

   c.資材の状況

  石炭、重油及びLNGの状況

 

品名

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

期首残高

受入量

  対前年度

   増減率(%)

払出量

   対前年度

   増減率(%)

期末残高

石炭(t)

544,659

4,150,570

14.9

%

4,071,554

4.9

%

623,675

重油(kℓ)

128,527

321,786

△31.2

%

280,990

△44.6

%

169,323

LNG(t)

134,119

454,421

13.5

%

461,569

40.5

%

126,971

 

 (注) 本表には、当社及び北海道電力ネットワーク㈱の主な使用燃料を記載している。

   

(2)財政状態の分析

 [資産]

 当連結会計年度末の総資産は、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」等が施行されたことにより、「原子力発電施設解体引当金に関する省令」が廃止され、電気事業会計規則が改正されたことに伴い資産除去債務相当資産を取崩したことや、減価償却の進行などはあったが、設備投資による固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,023億11百万円増2兆2,440億3百万円となった。

 [負債]

 当連結会計年度末の負債合計は、資産と同様の法令等の改廃に伴う資産除去債務の取崩しはあったが、未払廃炉拠出金を計上したことや有利子負債の増加に加え、工事代金の計上による未払債務の増加などにより、前連結会計年度末に比べ285億3百万円増1兆8,366億67百万円となった。

 [純資産]

 当連結会計年度末の純資産合計は、配当金の支払いはあったが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べ738億7百万円増4,073億36百万円となった。

 以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.6ポイント増の17.5%となった。

  

(3)キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ456億12百万円増1,563億22百万円となった。

 

 [営業活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の減少などにより、前連結会計年度に比べ505億47百万円減の1,255億88百万円の収入となった。

 

 [投資活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、核燃料の売却による収入の増加などはあったが、固定資産の取得による支出の増加などにより、前連結会計年度に比べ98億60百万円増の907億2百万円の支出となった。

 

 [財務活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の増加などにより、前連結会計年度(746億54百万円の支出)に比べ853億80百万円増の107億26百万円の収入となった。

 

 

(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ほくでんグループの資金需要は、主に電気事業に係る設備投資や債務償還に必要な資金であり、自己資金のほか、社債の発行及び金融機関からの借入により調達を行っており、短期的な資金需要にはコマーシャル・ペーパーを活用している。また、「北海道電力グリーンボンド」や「北海道電力トランジションボンド」、「トランジション・リンク・ローン」などのグリーン・ファイナンス及びトランジション・ファイナンスの枠組みも活用しながら、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めていく上での資金調達手段の多様化・安定化に努めている。

資金調達にあたっては、月次での資金繰計画に基づく適切な資金管理を行っており、緊急の資金需要に対しては、現金及び現金同等物の保有に加え、当座貸越契約やコミットメントライン契約により充分な流動性を確保している。また、ほくでんグループキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)により、参加会社の資金管理・資金調達・外部支払を一元化しており、グループ内における資金の効率化を図っている。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

ほくでんグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表を作成するにあたり採用する重要な会計方針については「第5 経理の状況」に記載している。

ほくでんグループは、連結財務諸表を作成するにあたり、繰延税金資産の回収可能性、退職給付に係る負債及び資産、資産除去債務などに関して、過去の実績等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。このうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載している。

 

(6)経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2024年度の連結経常利益は、640億51百万円となり、「ほくでんグループ経営ビジョン2030」で示した第Ⅰフェーズの経営目標「連結経常利益230億円以上/年」を達成している。

ほくでんグループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2025年3月に公表した「ほくでんグループ経営ビジョン2035」において、泊発電所3号機再稼働前の目標として「連結経常利益400億円以上」などを設定しており、経営目標の達成を目指し、きめ細やかな販売活動や多様なサービスの提供により収益拡大を図るとともに、カイゼン活動やDXなどの取り組みを通じた効率化・コスト低減を一層強力に推進していく。

 

5 【重要な契約等】

該当事項なし

 

6 【研究開発活動】

 当連結会計年度における研究開発費の総額は2,239百万円である。内訳としては、「北海道電力」が2,128百万円、「北海道電力ネットワーク」が95百万円、「その他」が15百万円である。なお、「北海道電力」の研究開発費には、北海道電力ネットワーク株式会社から委託を受けた研究開発が含まれている。

 ほくでんグループにおける研究開発は、当社の総合研究所が中心となって推進しており、経営計画等に基づいた研究開発を重点的に実施している。当連結会計年度における主な研究開発は次のとおりである。

 

 (1)電力の安定供給・設備保守費用低減に資する技術開発の取り組み

発電所金属材料の損傷・余寿命評価や溶接補修技術の高度化による設備更新・保守費用の低減を進めるとともに、ドローンを活用した点検業務の高度化・効率化などに取り組んでいる。

 

 (2)カーボンニュートラル関連など事業領域拡大につながる研究の取り組み

 北海道苫小牧西部エリアにおける国産グリーン水素サプライチェーン構築に向けた検討や輸送分野におけるエネルギーの効率的な利用に向けたEV充電ビジネスの研究などに取り組んでいる。

 また、ブルーカーボン事業向け海藻生育技術開発やバイオマス普及促進など、地域と連携したカーボンニュートラルに向けた研究に取り組んでいる。