第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものである。

 

電力小売市場における競争の激化や技術革新によるビジネスモデルの変化などに伴い、当社を取り巻く経営環境は厳しさ、複雑さが増している。当社は、このような環境変化を成長に向けた機会ととらえ、新しいサービスや付加価値をお客さまに提供するなど、これまで以上にお客さまにお選びいただくための取り組みを進めていく必要がある。

また、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震による大規模停電などを契機として、電力の安定供給や電力設備の強靭化(レジリエンス強化)の重要性があらためて認識されているとともに、より競争力のある設備形成が必要となっている。

このようななか、2019年度は、本年4月より東北電力グループスローガンとして設定した「より、そう、ちから。」のもと、より一層の競争力強化や強固な経営基盤の確立に向けて、企業グループが一丸となって以下の各施策に注力していく。

 

<利益創出力の徹底強化>

東北6県及び新潟県における電力販売については、お客さまのメリットにつながる新料金プランや新サービスの開発・提案などの販売施策を推進し、家庭用・法人用分野の双方において、引き続き、価格・非価格両面から販売力・競争力のさらなる強化をはかっていく。特に、家庭用分野では、くらしのトータルサービス「より、そう、ちから。+ONe」など、新しいサービスを展開していくとともに、法人分野では、石油・ガスから電気への熱源転換の提案などを通じて、省エネやコスト低減につながる提案活動を展開していく。

これまでの供給エリアを越えた電力販売については、株式会社シナジアパワーを通じて、関東圏の高圧・特別高圧のお客さまへの積極的な提案活動を展開するとともに、株式会社東急パワーサプライへの卸供給などにより、小売・卸売両面からさらなる販売拡大に取り組んでいく。また、東北電力エナジートレーディング株式会社による積極的な卸電力市場取引を通じて、収益力のさらなる強化をはかっていく。

発電事業については、能代火力発電所3号機(60万キロワット)の運転開始時期の前倒しや上越火力発電所1号機(57.2万キロワット)の着実な開発のほか、設備の経年化が進む秋田火力発電所2号機(35万キロワット)の長期計画停止や秋田火力発電所3号機(35万キロワット)の廃止などにより、電源のさらなる競争力向上に向けた取り組みを進めていく。

当社は、こうした取り組みを進めるとともに、発電部門と販売部門を一体的に運用し、環境変化に柔軟かつ迅速に対応することにより総合力を発揮し、さらなる競争力強化と利益の拡大を目指していく。

原子力発電については、安定供給、経済効率性、環境適合の観点から重要なベースロード電源であり、再稼働により火力燃料費の低減効果が期待できることなどから、引き続き、新規制基準への適合性にとどまらず、より高いレベルの安全確保に向けて、安全対策工事を着実に進めていく。また、原子力発電所の再稼働には、地域のみなさまのご理解が何より重要であることから、社員一人ひとりがコミュニケーション活動にしっかり取り組むことで、地域のみなさまとの信頼関係の構築に努めていく。

 

<生産性・効率性のさらなる向上>

コスト削減・効率化については、経営効率化推進会議のもと、これまでも全社をあげて取り組んでいるが、さらなる競争力強化に向けて、仕様・工法の見直しや競争発注の拡大に向けた取り組みを一層追求していく。さらに、最先端デジタル技術による火力発電所の運用効率向上や「スマートグラスシステム」を活用した変電所の運転・保修業務の品質向上・効率化など、IoT・AI・ビッグデータ・ドローンなどの新たな技術の採用によるコスト削減・効率化に向けた取り組みを進めていく。

働き方改革については、社長を委員長とする「働き方改革推進委員会」を中心に、「みな、おす、ちから。」のスローガンのもと、全社一体となって取り組みを推進し、従業員の意識改革や生産性のさらなる向上をはかっていく。具体的には、在宅勤務制度やフレックスタイム制度の活用などにより、より働きがいのある、働きやすい環境を整備することで、ワーク・ライフ・バランスの実現をはかるとともに、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)やAIの活用による大量・定型業務の自動化などを通じ、業務の削減・効率化と業務品質の向上を進めていく。当社は、このような取り組みにより、従業員一人ひとりがイキイキと働く元気な会社を実現し、お客さまや地域のみなさまに信頼され選ばれる会社を目指していく。

 

<新たな事業機会への挑戦>

再生可能エネルギーについては、当社企業グループが責任ある事業主体となるべく、風力発電を主軸に、太陽光や水力、地熱、バイオマスなどの全般において、これまで培ってきたノウハウを活用しながら新たな開発や事業参画に取り組むことにより、東北6県及び新潟県を中心に200万キロワットの開発を目指していく。

ガス事業については、石巻ガス株式会社との電力・ガス販売の業務提携をはじめとした地域の都市ガス事業者との連携強化などを通じて、重油などから環境負荷の低い天然ガスへの燃料転換や電力・ガスの最適な組み合わせによるトータルエネルギーソリューションなど、お客さまニーズにより沿う取り組みのさらなる充実をはかっていく。

新規事業や新規サービスの創出などについては、デジタルトランスフォーメーション(IoTやAIなどのデジタル技術の活用による企業変革)の進展を踏まえ、デジタルイノベーションの取り組みを推進していく。具体的には、地域に分散して存在するエネルギーリソースを遠隔制御し集約することで、あたかも一つの発電所のように機能させる「バーチャルパワープラント(VPP)」技術活用による仙台市、郡山市及び新潟市などとの地域防災力強化・環境負荷低減に向けた取り組みや、電気自動車の蓄電池を電力需給バランスの調整機能として活用する「V2G実証プロジェクト」などの取り組みを進めている。

また、こうした新たな事業機会を追求するための専門組織を設置し、体制面の強化をはかることで、将来の事業領域の拡大につながる新たなビジネスモデルの構築に向けて積極的に取り組んでいく。

 

<法的分離に向けた取り組み>

当社は、2020年4月に予定されている送配電部門の法的分離に向け、一般送配電事業を分社化し、事業持株会社(東北電力株式会社)のもとに、100%子会社である送配電会社を配置する体制へ移行することとしている。また、円滑な分社化に向け、2019年4月に、分割準備会社として「東北電力ネットワーク株式会社」を設立し、事業承継に関わる吸収分割契約を締結している。

法的分離にあたっては、事業持株会社において、発電及び販売部門の経営資源を一体的に活用し、総合力を発揮していくとともに、事業持株会社と送配電会社それぞれの事業において、機動的な意思決定のもと、自律性向上と価値創造力の強化をはかっていく。

引き続き、「東北電力ネットワーク株式会社」の社名に込めた「お客さまとの絆、地域とのつながりを大事にする」という思いのもと、分社化に向けた準備を着実に進めるとともに、グループシナジーの発揮によるグループ全体の企業価値向上やグループガバナンスの充実など、グループ経営の強化に努めていく。

 

<電力設備の強靭化に向けた取り組み>

災害に強い電力供給体制を構築するための対策や停電の早期復旧に向けた取り組みなどを議論することを目的として設置された国の「電力レジリエンスワーキンググループ」において、2018年11月、電力設備の強靭化に向けた対策に関する中間とりまとめが行われた。

当社は、新技術の採用による設備点検の効率化などを進めるとともに、中間とりまとめにおいて示された各種対策なども踏まえながら、大規模停電を回避する設備形成や維持運用、停電が起きた場合の迅速な復旧などについて、各部門が連携し、安定供給の確保に万全を期していく。

 

<地域の復興・発展への貢献>

東日本大震災の被災地では、再生に向けた街づくりが進むなか、当社は、引き続き、被災地の地元電力会社として、地域の活性化を積極的に支援するとともに、電力の安定供給を通じた復興支援に努めていく。また、福島県内においては、一時帰宅や帰還に向けて、電力設備の改修や維持管理にもしっかりと取り組んでいく。

加えて、今後とも、それぞれの地域がおかれた状況やニーズの違いを踏まえながら、将来の成長・発展に資するプロジェクトなどを積極的に支援していく。

 

 

こうした各施策の推進により、当社は、東北電力グループ中期経営方針に掲げた電気事業、海外事業、ガス事業の3つの分野における以下の目標及び「2020年度までに自己資本比率(連結決算ベース)25%以上(将来的には30%)」とする財務目標の達成を目指していく。

 

 

2015年度実績

2020年度

2030年度

電気事業

販売電力量

(域外・卸売を含んだ増分)

参考:域内販売電力量

+35

億kWh

+150

億kWh

751

億kWh

海外事業

海外発電事業持分出力

20

万kW

60

万kW

120

万kW

ガス事業

販売ガス量

34

万t

45

万t

60

万t

 

 

当社は、経営理念である「地域社会との共栄」、「創造的経営の推進」のもと、経営環境の変化に適切に対応しながら、地域とともに成長してきた。

当社を取り巻く環境はさらに大きく変化していくが、この環境変化をチャンスと前向きにとらえ、東北電力グループスローガン「より、そう、ちから。」のもと、企業グループが一体となって変革を加速し、これまで以上にお客さまに「より沿う」、地域に「寄り添う」取り組みを積極的に推進することにより、企業価値向上をはかりながら、みなさまのご期待にしっかりとお応えしていく。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社企業グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があるリスクには、主に以下のものがある。企業グループでは、これらのリスクを認識したうえで、リスクの低減に努めるとともに、発生した場合は、的確な対応に努めていく。

なお、以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであり、今後のエネルギー政策の変更や電力システム改革などの影響を受ける可能性がある。

 

(1) 原子力発電を取り巻く制度変更等による影響

当社は、安全確保を大前提に原子力を一定程度活用していくことが重要と考えており、新規制基準への適合に加え、さらなる安全性向上に向けて自主的な対策を進めるなどの取り組みを行っている。

ただし、原子力発電を取り巻く環境が厳しさを増している中、今後の政策・規制変更等により、原子力発電所の停止が長期化するなど安定運転に影響を与える場合、火力燃料費の増加等により、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

(2) 電気事業を取り巻く制度変更等による影響

ベースロード市場の創設による新市場取引の導入などの電力システム改革の進展、エネルギー基本計画に基づく政策の動向、それによる電気事業者及び他エネルギー事業者との競争の進展などにより、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

(3) 原子力のバックエンド事業コストの変動による影響

原子力のバックエンド事業は、超長期の事業で不確実性を伴うが、国による制度措置等により事業者のリスクが軽減されている。

ただし、国の政策変更や、関連する制度措置の見直し、将来費用の見積額の変動、再処理施設の稼働状況により、費用負担が増加するなど、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

(4) 経済状況、天候状況並びに東日本大震災などによる販売電力量の変動による影響

電気事業における販売電力量は、景気動向や気温の変動、さらには省エネルギーの進展などによって変動することから、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

また、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、東北地域は大きな被害に見舞われた。震災後8年を経てもなお、被災地の復興は途上であり、電力需要について、震災前の水準への回復が遅れる可能性がある。

なお、年間の降雨降雪量により、豊水の場合は、燃料費の低下要因、渇水の場合は、燃料費の増加要因となるが、「渇水準備引当金制度」により一定の調整が図られるため、業績への影響は限定的と考えられる。

 

(5) 燃料価格の変動による影響

電気事業における火力発電燃料費は、石炭、LNG、重・原油などのCIF価格及び為替レートの変動により、影響を受けるため、当社は、バランスのとれた電源構成を目指すことなどによって燃料価格変動リスクの分散に努めている。

電気事業には、燃料価格及び為替レートの変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」が適用されるが、燃料価格などが著しく変動した場合には、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

 

(6) 自然災害及び操業トラブルの発生による影響

企業グループは、お客さまに高品質な電力を安定的に供給するため、設備の点検・修繕を計画的に実施し、設備の信頼性向上に努めているが、地震・津波や台風等の自然災害、事故やテロ等不法行為などにより、大規模な停電が発生し、設備の損傷や電源の長期停止などに至った場合は、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

(7) 金利の変動による影響

今後の市場金利の動向及び格付の変更により、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

ただし、有利子負債残高の多くは固定金利で調達した社債や長期借入金であることなどから、市場金利の変動による影響は限定的と考えられる。

 

(8) 情報流出による影響

企業グループは、大量の個人情報や設備情報など重要な情報を保有している。重要な情報の適切な取扱いを図るため、基準等の整備や従業員に対する教育啓発、委託先管理の徹底等、情報セキュリティ対策の強化を図っているが、重要な情報の流出により問題が発生した場合は、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

(9) 電気事業以外の事業による影響

企業グループは、エネルギー分野では、電気事業を中核に、省エネルギー対策を中心とする付加価値提案型事業(ESCO事業)やガス事業との連携を強化している。また、情報通信事業などのエネルギー分野以外では、選択と集中を徹底しながら、収益性を重視した自立性の高い事業展開を推進している。これら事業の業績は、他事業者との競合状況、ガスシステム改革の進展など、事業環境の変化により影響を受けることがあることから、電気事業以外の事業の業績により、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

(10) 企業倫理に反した行為による影響

企業グループは、企業倫理・法令遵守が全ての事業活動の前提になるとの考えのもと、企業倫理・法令遵守の体制を構築し、定着に向けて取り組んでいるが、法令違反等の企業倫理に反した行為が発生した場合、企業グループに対する社会的信用が低下し、企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものである。

 

(1) 業績の状況

<当社を取り巻く経営環境>

2018年度は、電力システム改革に伴う各種市場整備やエネルギー業界における大手企業の業務提携に進展がみられた。また、電力及びガスの小売全面自由化による競争の激化や再生可能エネルギー導入拡大の継続などにより、当社においては、これまでの供給エリアにおける販売電力量の減少や火力発電の稼働率低下など、需給構造に顕著な変化がみられた。さらに、2020年4月には、送配電部門の法的分離(別会社化)という大きな転換点を迎える。

東北地域においては、東日本大震災から8年が経過し、復興道路などのインフラ面の整備や住まいの再建・街づくりなど、復旧・復興の動きが進む一方、被災地における水産加工業などの業績回復の伸び悩みや、根強く残る風評被害に加え、特に福島県内では住民の方々の帰還が緒に就いたばかりであり、復興は未だ道半ばと言わざるを得ない状況である。

このようななか、当社は、コーポレートスローガン「より、そう、ちから。」のもと、これまで以上にお客さまや地域のみなさまのご期待にお応えしつつ、地域とともに持続的に成長していくため、様々な施策を展開してきた。

 

<収益力拡大と徹底した効率化>

東北6県及び新潟県における電力販売については、小売全面自由化を機に、高圧以上の法人分野における競争がさらに激化しており、他の事業者へ契約を切り替えるお客さまが増加している状況にある。このようななか、当社は、価格競争力を強化するとともに、お客さまの電気使用状況に合わせた最適な料金プランやエネルギーソリューションの提案の充実などに取り組んできた。

具体的には、家庭用分野では、これまでの電気料金プランや会員制Webサービス「よりそうeねっと」の充実に加え、お客さまのくらしをサポートする「マカプゥコンシェルジュ」などをプラスしたくらしのトータルサービス「より、そう、ちから。+ONe」を展開し、電気にとどまらない様々な分野のサービスを順次開始している。また、法人分野では、高圧のお客さまを対象に、IoTやAIの活用により最適な電気の使い方を支援する当社独自のエネルギーマネジメントシステム「エグゼムズ(exEMS)」の本格サービスを開始している。

これまでの供給エリアを越えた電力販売については、「首都圏でも東北電力!よりそう、でんき ずっとつながるキャンペーン」の実施などにより、首都圏向け電気料金プラン「よりそう、でんき」の加入拡大をはかるとともに、株式会社シナジアパワーを通じた販売や株式会社東急パワーサプライへの卸供給などにより、積極的な販売活動を展開してきた。

こうした収益力拡大に向けた取り組みに加え、社長を議長とする経営効率化推進会議のもと、資材・役務に関する調達価格低減に向けた設計・仕様の見直しや競争発注拡大などの調達改革の推進や、新技術の採用などにより、構造的なコスト低減をはかるなど、徹底した効率化に継続して取り組んできた。

 

<最適な設備形成と再生可能エネルギー導入拡大に向けた取り組み>

火力発電については、原子力発電所が停止しているなか、供給力の中心として安定運用に努めるとともに、高い経済性と環境負荷低減を両立した電源構成の実現に向けた取り組みを進めてきた。具体的には、能代火力発電所3号機の建設工事や上越火力発電所1号機の建設計画を着実に推進するとともに、経年化した火力発電所の休廃止を段階的に進めてきた。

水力発電については、経年化が進行した発電所の大規模改修工事を進め、水資源の有効活用をはかりつつ、効率的な運用に努めてきた。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーについては、環境面やエネルギー安全保障の面から重要な電源であり、当社はこれまでも、グループ企業と連携しながら開発に取り組んできたが、引き続き、拡大に向け検討を進めていく。

また、急増する再生可能エネルギーの当社送電線への接続申し込みについては、受け入れに容量面の制約があることから、広域的な需給調整や送電網の整備計画の策定などを行う電力広域的運営推進機関と連携のうえ、送電網の整備・拡充や工事費の低減、既存の送電線の利用効率向上に向けた取り組みなどを行ってきた。

送配電については、日々の設備巡視・点検や保修工事などの的確なメンテナンスにより安定供給に努めるとともに、新技術の採用などにより、一層の効率化を推進してきた。

 

<原子力発電所の安全性向上に向けた取り組み>

原子力発電については、新規制基準への適合性審査へ的確に対応してきた。女川原子力発電所2号機については、原子力規制委員会から、基準地震動、基準津波に対して「概ね妥当な検討がなされている」との評価を受けた以降、2018年12月から発電所設備に関する審査がさらに加速してきており、審査を重ねるなかで、追加で必要となる対策や工事など、安全対策工事の全体像を見通せる状況になってきている。また、東通原子力発電所1号機については、「震源として考慮する活断層」の評価に関する審査及び調査が進められている。いずれの審査に対しても、引き続き、着実に対応していく。加えて、継続的な訓練を行うことにより、ハード・ソフト両面から安全対策の強化をはかるなど、再稼働に向けた取り組みを着実に進めていく。

なお、女川原子力発電所1号機については、安全性向上対策を行うための技術的制約や発電機出力規模、再稼働した場合の運転年数などを総合的に勘案し、廃止することとした。当社としては、安全確保を最優先に廃止措置に取り組んでいく。

 

<強固な経営基盤の確立>

当社は、競争の激化や送配電部門の法的分離など、激変する経営環境を踏まえた事業体制を構築するため、カンパニー制を導入し、「発電・販売カンパニー」及び「送配電カンパニー」を設置した。

発電・販売カンパニーは、最適な電源構成の実現や燃料調達の効率化、新料金プランや新サービスの開発・提案などにより、コスト競争力・販売力の強化をはかり、低廉で高品質な総合エネルギーサービスの提供に努めてきた。さらに、卸電力取引市場や燃料先物取引の活用による統合的なトレーディングを行う東北電力エナジートレーディング株式会社を通じた卸電力売買を行うなど、発電部門と販売部門が連携し、総合力を発揮することで、競争力の強化と収益の拡大をはかってきた。

送配電カンパニーは、引き続き、東北6県及び新潟県における電力の安定供給を果たすとともに、中立性・公平性のより一層の確保に努めてきた。加えて、設備工事における工事費負担金の精算誤りなどを踏まえ、業務品質保証体制を強化し、業務品質の向上をはかるとともに、再生可能エネルギーの当社送電線への接続受け入れの拡大に向けた取り組みや、設備点検の効率化などによるコスト低減に向けた取り組みなどを行ってきた。

また、こうした組織面での対応にとどまらず、経営面においても、コーポレート・ガバナンスの一層の強化をはかるため、「役付執行役員の新設」及び「監査等委員会設置会社への移行」を柱とする経営機構の見直しを行った。これにより、経営と執行の役割分担を明確化し、これまで以上に迅速かつ機動的な意思決定や業務執行を行うことができる体制を構築するとともに、業務執行状況などの監督機能を強化し、企業グループ全体の求心力を高め、ガバナンスの向上に取り組んでいる。

 

<決算概要>

当連結会計年度の企業グループの収支については、当社において、電力小売全面自由化に伴う競争激化による販売電力量(小売)の減少はあったものの、エリア外や卸電力取引所への販売電力量(卸売)が増加したことなどから、売上高としては2兆2,443億円となり、前連結会計年度に比べ、1,729億円(8.3%)の増収となった。

なお、売上高には再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく再エネ特措法交付金・再エネ特措法賦課金及び間接オークション導入に伴う自己約定分等が合計4,083億円含まれているが、費用側にも計上されることから、当社の収支に影響を与えるものではない。

一方で、企業グループ一体となって、継続的な効率化の取り組みによる経費全般の削減などに努めたものの、当社において、渇水の影響や燃料価格の上昇による燃料費の増加などにより、経常費用が増加したことから、経常利益は657億円となり、前連結会計年度に比べ、226億円(25.7%)の減益となった。

また、東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する原町火力発電所復旧遅延損害に係る受取損害賠償金を特別利益に、女川原子力発電所1号機の廃止を決定したことに伴う関連損失を特別損失に計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は464億円となり、前連結会計年度に比べ、7億円(1.6%)減少した。

 

 

※ 地域間連系線をより効率的に利用し、電気料金の最大限の抑制及び事業者の事業機会の拡大を実現するため、「先着優先」ルールを廃止し、卸電力取引所で売買契約が成立した事業者へ利用枠を割り当てる「間接オークション」が2018年10月1日より開始された。

 

当連結会計年度におけるセグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は次のとおりである。

 

[電気事業]

当社の販売電力量(小売)は、前連結会計年度に比べ夏場の気温が高かったことによる冷房需要の増加があるものの、競争激化による契約の切り替えや冬場の気温が高かったことによる暖房需要の減少などから、前連結会計年度に比べ4.3%減の689億キロワット時となった。

このうち、電灯需要については、4.8%減の227億キロワット時、電力需要については、4.1%減の461億キロワット時となった。

これに対応する供給については、引き続き原子力発電所の運転停止などに伴う供給力の減少があるものの、火力発電所の補修時期の調整などにより安定した供給力を確保した。

 

収支の状況については、当社において、電力小売全面自由化に伴う競争激化による販売電力量(小売)の減少はあったものの、エリア外や卸電力取引所への販売電力量(卸売)が増加したことなどから、売上高としては2兆159億円となり、前連結会計年度に比べ、1,583億円(8.5%)の増収となった。

なお、売上高には再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく再エネ特措法交付金・再エネ特措法賦課金及び間接オークション導入に伴う自己約定分等が合計4,083億円含まれているが、費用側にも計上されることから、当社の収支に影響を与えるものではない。

一方で、継続的な効率化の取り組みによる経費全般の削減などに努めたものの、当社において、渇水の影響や燃料価格の上昇による燃料費の増加などにより、営業費用が増加したことから、営業利益は648億円となり、前連結会計年度に比べ、191億円(22.8%)の減益となった。

 

[建設業]

売上高は、電力関連工事が減少したことなどから2,758億円となり、前連結会計年度に比べ、125億円(4.3%)の減収となった。

一方で、売上高減少に伴い工事原価が減少したことなどにより、営業費用が減少したことから、営業利益は108億円となり、前連結会計年度に比べ、42億円(28.4%)の減益となった。

 

[その他]

売上高は、ガス事業が増加したことなどから2,250億円となり、前連結会計年度に比べ、65億円(3.0%)の増収となった。

一方で、ガス事業における増加などにより、営業費用が増加したことから、営業利益は107億円となり、前連結会計年度並みとなった。

 

(2) 財政状態の分析

資産は、流動資産において短期投資などが減少したものの、固定資産において、「原子力発電施設解体引当金に関する省令」(平成元年通商産業省令第30号)の改正に伴う資産除去債務相当資産や、女川原子力発電所1号機廃止に伴う原子力廃止関連仮勘定の増加があったことなどから、前連結会計年度末に比べ364億円(0.9%)増の4兆2,586億円となった。

負債は、資産除去債務が増加したものの、有利子負債が減少したことなどから、前連結会計年度末並みの3兆4,249億円となった。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ350億円(4.4%)増の8,337億円となった。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末から0.6ポイント上昇し、17.9%となった。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

減価償却費が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ612億円(18.9%)減の2,628億円の収入となった。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

固定資産の取得による支出が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ233億円(8.5%)減の2,505億円の支出となった。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

社債の償還及び借入金の返済による支出が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ330億円(91.0%)増の693億円の支出となった。

 

この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に比べ572億円(23.6%)減の1,849億円となった。

 

また、キャッシュ・フロー指標の変動は次のとおりである。

 

前連結会計年度
(自 2017年4月1日
 至 2018年3月31日)

当連結会計年度
(自 2018年4月1日
 至 2019年3月31日)

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

7.5

9.1

 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

14.6

13.4

 

(注)1  キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

    2  インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業活動によるキャッシュ・フロー/利息の支払額

 

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

① 資本の財源

当社は、電気事業における安定供給に必要な発電設備や送配電設備の形成を目的とした設備投資及び社債などの償還資金に充当するため、自己資金のほか、社債の発行及び金融機関からの借入を組み合わせて安定的に資金を調達している。また、短期的な資金需要に対しては、コマーシャル・ペーパーなどを活用し機動的に資金を調達している。

 

② 資金の流動性に係る情報

月次での資金計画などにより資金管理に努めており、また、当座貸越契約やコミットメントライン契約により、必要に応じて資金調達ができる体制を整えることで充分な流動性を確保している。

 

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

当社企業グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であるため「生産実績」を定義することが困難であり、建設業においては請負形態をとっているため「販売実績」という定義は実態にそぐわない。

よって、生産、受注及び販売の実績については、記載可能な情報を「(1)業績の状況」においてセグメントの業績に関連付けて記載している。

なお、当社個別の事業の状況は次のとおりである。

 

① 供給力実績

種別

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

  至 2019年3月31日)

前年度比(%)

自社発電電力量

 

 

 

水力発電電力量

(百万kWh)

7,372

87.9

火力発電電力量

(百万kWh)

53,830

99.3

原子力発電電力量

(百万kWh)

△215

96.3

新エネルギー等発電電力量

(百万kWh)

732

97.6

融通・他社受電電力量

(百万kWh)

35,007

△6,821

105.3

101.1

揚水発電所の揚水用電力量

(百万kWh)

△92

102.8

合計

(百万kWh)

89,813

100.3

出水率

(%)

90.5

 

(注) 1 自社発電電力量については、発電端電力量から送電端電力量に変更している。

2 融通・他社受電電力量には、連結子会社からの受電電力量(酒田共同火力発電㈱ 4,743百万kWh、東北自然エネルギー㈱ 581百万kWh他)を含んでいる。

3 融通・他社受電電力量の上段は受電電力量、下段は送電電力量を示す。

4 融通・他社受電電力量には系統運用等を含んでいる。

5 揚水発電所の揚水用電力量とは貯水池運営のため揚水用に使用する電力である。

6 出水率は、1987年度から2016年度までの30ヶ年平均に対する比である。

 

② 販売実績

種別

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

 至 2019年3月31日)

前年度比(%)

販売電力量(百万kWh)

電灯

22,745

95.2

電力

46,130

95.9

小売 計

68,876

95.7

卸売

16,220

118.8

合計

85,096

99.4

 

(注) 1 卸売には特定融通等を含んでいる。

2 個々の数値の合計と合計欄の数値は、四捨五入の関係で一致しない場合がある。

 

 

 

③ 資材の状況

 石炭及び燃料油等の受払状況

区分

単位

2018年
3月末
在庫量

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

 至 2019年3月31日)

2019年
3月末
在庫量

受入

前年度比
(%)

払出

前年度比
(%)

石炭

t

567,411

8,132,654

100.0

7,998,022

98.2

702,043

重油

kl

95,489

307,791

74.8

269,634

67.3

133,646

原油

kl

65,466

106,810

50.6

84,998

38.0

87,278

LNG

t

218,444

4,569,731

103.5

4,573,305

104.9

214,870

 

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はない。

 

 

5 【研究開発活動】

当社企業グループは、電力の安定供給を通じた地域の復興・発展に貢献しながら、お客さまから選択され、地域と共に成長することを目指す「東北電力グループ中期経営方針」等に基づき、研究開発を実施している。

 

現在、研究開発は、当社の研究開発センター及び各連結子会社の設計・開発担当部門などにより推進されており、当連結会計年度における当社及び連結子会社の研究開発費は8,743百万円である。このうち電気事業は7,700百万円、建設業は232百万円、その他は810百万円となっている。

 

[電気事業]

当社の研究開発は、電力の安全確保・安定供給に資する研究開発を根底に据え、「新たなICTなど先端技術を活用した、競争力及び収益力強化」「高効率発電、再エネ対応技術高度化等による、最適な電源構成及び低炭素社会の実現」「将来の成長と競争力強化を支える、先駆的技術の獲得」の重点領域に注力して取り組んでいる。

 

(1) 新たなICTなど先端技術を活用した、競争力及び収益力強化に資する研究開発

既存の設備又は事業に新たなICTなど先端技術を活用し、設備運用の高度化、新サービスの開発と展開によるお客さまサービスの向上、分散型電源と蓄電池の組合せ技術等に関する研究開発

 

(2) 高効率発電、再エネ対応技術高度化等による、最適な電源構成及び低炭素社会の実現に資する研究開発

次世代高効率ガスタービンに代表される発電設備の高効率化、再生可能エネルギー活用に向けた次世代送配電技術や発電設備の運用性向上、高効率ヒートポンプなどの高効率機器の開発、原子力の安全性向上、新たなCO2削減技術等、コスト競争力強化やCO2排出抑制に向けた研究開発

 

(3) 将来の成長と競争力強化を支える、先駆的技術の獲得に資する研究開発

設備運用及び保守の効率化と高度化、お客さまサービス向上等に適用が期待されるAI、ロボット等に関する研究開発、未利用エネルギー利用技術等の先駆的技術の獲得を目指した研究開発

 

[建設業]

(1) 安全確保と品質向上に関する技術開発

電柱建て替えにおける元穴建柱工法の高度化による組立作業の効率化などを目的とした研究・開発  など

 

(2) 収益力拡大に向けた技術開発

再生可能エネルギーの固定価格買取制度の改正に伴い、新ニーズへの対応に向けた太陽光発電設備における保守・メンテナンス手法の研究・開発  など

 

[その他]

(1) 光通信市場向け商品開発

次世代製品の開発及び派生製品開発によるビジネス市場拡大、レーザー集光モジュールの製品開発  など

 

(2) コスト削減、売上拡大に向けた研究開発

通制Ⅳ型子局のコストダウン開発や、高速伝送対応開閉器制御用子局の開発など市場の維持・拡大に向けた製品開発  など