第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)東北電力グループ中長期ビジョン

当社企業グループを取り巻く環境は、電力小売全面自由化の進展による競争の激化、及び本年4月の送配電事業の分社化に加えて、再生可能エネルギーの導入拡大やデジタル化に伴う電力需給構造の変化など、大きな転換点を迎えております。また、新型コロナウイルス感染拡大もこうした電力需給構造の変化を進展させる契機になると考えられます。

これまで当社は、発電・送配電・販売の一貫体制での事業運営で、震災からの地域の復興と財務基盤の回復や、全面自由化後の競争力強化などに的確に対応してまいりました。今後とも、電力供給事業につきましては、再生可能エネルギーを含めた最適な電源ポートフォリオや事業効率を最大限に高めることにより電気の価値の最大化を目指すとともに、引き続き電力の安定供給という使命を果たし続けてまいります。さらに、女川及び東通地点の原子力発電所につきましては、地域のみなさまのご理解をいただき、着実に再稼働に向けて取り組んでまいります。あわせて、女川原子力発電所1号機の廃止措置にもしっかりと対応してまいります。

事業基盤である東北6県及び新潟県では、他地域と比較して人口減少や少子高齢化が加速しており、今後、交通、教育、福祉など、様々な分野で社会課題が顕在化していくことも想定され、社会構造が大きく変化しようとしております。こうした変化の激しい時代においては、自らが変革を推し進め、主体的に挑戦していかなければ、今後も、当社企業グループが存在意義を果たし続け、社会とともに持続的成長を実現することは困難となります。

このような強い危機感のもと、当社企業グループは、「東北発の新たな時代のスマート社会の実現に貢献し、社会の持続的発展とともに成長する企業グループ」を2030年代のありたい姿とする「東北電力グループ中長期ビジョン」を策定いたしました。

さらに、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、様々な課題が浮き彫りになるとともに、今後、デジタル化や分散化は一層加速し、暮らしや働き方など社会経済システムに大きな変化をもたらす可能性があります。当社企業グループは、これらの課題解決に資するスマート社会の実現に貢献できるよう、スピード感を持って中長期ビジョンの達成に取り組んでまいります。

 

※スマート社会:地域における人口減少や少子高齢化など様々な分野で顕在化する社会課題を、次世代のデジタル技術やイノベーションの活用などにより解決し、地域に住む方々が快適・安全・安心に暮らすことができる社会

 


2030年代のありたい姿と事業ドメイン

 

(2)ビジネスモデル転換期の取り組み方針

中長期ビジョンでは、2030年代のありたい姿の実現に向け、向こう5年間(2020~2024年度)を、「ビジネスモデル転換期」と位置づけております。

3つの力点 (“Change”、“Challenge”、“Create” )に基づき、基盤事業の「電力供給事業」の構造改革を通じた徹底的な競争力強化により安定的に収益を確保するとともに、成長事業の「スマート社会実現事業」に挑戦し、経営資源を戦略的に投入していくことで、ビジネスモデルを転換してまいります。

 

[力点1]“Change”電力供給事業の抜本的変革による競争力の徹底強化

再生可能エネルギーを含めた経済性・環境性に優れた最適な電源ポートフォリオと、電力取引市場も活用した積極販売により、お届けする電気の価値の最大化を目指してまいります。

具体的には、まず、原子力発電については、引き続き、適合性審査に的確に対応していくとともに、新規制基準への適合性にとどまらず、より高いレベルの安全確保に向けて、最新の知見も取り入れながら、安全対策工事を着実に進め、早期の再稼働を目指してまいります。原子力発電所の再稼働には、地域のみなさまのご理解が何より重要であることから、社員一人ひとりが、双方向を基本としたコミュニケーション活動にしっかり取り組むことで、地域のみなさまとの信頼関係の構築に努めてまいります。

火力発電については、LNGを使用する上越火力発電所1号機(57.2万キロワット)の着実な開発のほか、環境性や経済効率性の低い経年火力発電所の休廃止を検討・実施し、さらなる電源の競争力の強化や、再生可能エネルギー導入拡大に伴う需給変動への対応を進めてまいります。

再生可能エネルギーについては、当社企業グループが責任ある事業主体となるべく、風力発電を主軸に、水力発電や太陽光発電、地熱発電、バイオマス発電などの全般において、これまで培ってきたノウハウを活用しながら新たな開発や事業参画に取り組むことにより、東北6県及び新潟県を中心に200万キロワットの開発を目指してまいります。

電力販売については、これまでの電力小売に加え、お客さまの快適・安全・安心に資するサービスを提供してまいります。

また、新たな電力取引市場の創設など、電力の市場化が進む中で、発電した電気の価値を最大化し、収益拡大を図るため、株式会社シナジアパワーや株式会社東急パワーサプライへの卸売、市場取引などを積極的に進めるとともに、市場でのトレーディング機能を最大限活用しながら、電力卸売の付加価値向上に資するサービスを検討・推進してまいります。

送配電については、東北6県及び新潟県の電力の安定供給の使命を果たし続けるため、自然災害への対応力向上など、レジリエンス強化に取り組んでまいります。また、設備の高経年化対策とAI・IoTの活用などによる徹底的なコスト低減を両立するとともに、効率的な設備形成のあり方や需給変化に適応した系統運用等の検討、スマート社会の実現に向けた電力ネットワークの高度化に取り組んでまいります。

 

[力点2]“Challenge”スマート社会実現事業の早期収益化への挑戦

企業グループの連携により総合力を発揮しながらマーケティング機能を拡充し、電力小売の競争力を徹底強化するとともに、お客さまの豊かさの最大化や社会課題の解決に資する多様なサービスや取り組みを展開してまいります。

具体的には、まず、電力小売については、マーケティング機能の拡充により、競争力を徹底強化するとともに、お客さまのライフステージやビジネスニーズに着目したサービスを拡充し、エネルギーとサービスをトータルパッケージで提供することで、お客さまの満足度向上と収益力強化の両立を目指してまいります。

ガス販売については、東北6県及び新潟県の都市ガス事業者との連携により、電力・ガスのセット提案やトータルエネルギーソリューションの提供等を進めることで、収益を拡大してまいります。

新規事業や新規サービスの創出などについては、公共インフラの保守・点検業務へのドローンの活用、電化による生産性向上を目指すスマート農業、電気自動車のカーシェアリングなどのモビリティサービス、家電製品の自動制御などを含む見守りサービス、これら複数のサービスをトータルで提供するタウンマネジメントなどの検討・展開を進めてまいります。

また、地域に分散して存在しているエネルギーリソースを「バーチャルパワープラント(VPP)」により集約・活用する地域のエネルギーの有効活用や、IoTを活用し、太陽光発電や蓄電池といった分散型電源も組み合わせてエネルギーを最適制御するスマートハウス、スマートビルといった暮らし・ビジネス関連のサービス充実などにも取り組んでまいります。

こうした取り組みを加速するため、本年7月のコーポレート組織の再編にあわせ、事業創出部門を設置し、体制を強化してまいります。

 

[力点3]“Create”企業価値創造を支える経営基盤の進化

「東北電力グループCSR方針」・「東北電力グループ行動指針」を基盤に、「中長期ビジョン」に沿った取り組みを進めることで、東北発の新たな時代のスマート社会を実現し、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献するESG経営を推進してまいります。

環境については、「東北電力グループ環境方針」のもと、当社企業グループが一体となったマネジメントにより、環境に係る取り組みを通じた企業価値向上や環境保全活動等を着実に推進してまいります。また、気候変動緩和・適応への取り組みや、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)最終報告書等も踏まえた環境情報開示の充実に取り組んでまいります。

社会については、安全最優先の企業文化の構築やレジリエンスの強化に取り組んでまいります。また、生産性向上とワーク・ライフ・バランスの実現を両立するため、多様なワークスタイル、ICT(情報通信技術)環境整備、デジタルイノベーションの推進、社内ルールの見直しなどによる働き方改革の加速とともに、ダイバーシティや健康経営を推進してまいります。

ガバナンスについては、「気づく・話す・直す」の基本姿勢のもと、「東北電力グループ企業倫理・法令遵守活動方針」に基づき、当社企業グループ各社が「企業倫理・法令遵守活動計画」を策定、自律的活動を展開し、当社企業グループ全体でコンプライアンスの実効性を高めてまいります。また、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、経営の機動性、健全性、透明性などを高めるためのコーポレート・ガバナンスの強化に継続して取り組んでまいります。

 

(3)中長期ビジョンにおける財務目標

当社は、競争激化や需給構造の変化により、現金を生み出す力(キャッシュ創出力)の向上が課題となっております。また、今後、成長事業を推進するためのキャッシュが必要になります。しかし、経常利益など会計上の利益では、現金支出を伴わない減価償却費などの費用が大きく、当社のキャッシュ創出力を適切にはかることができません。そのため、新たに「連結キャッシュ利益」を財務目標として設定いたしました。

「連結キャッシュ利益」は、営業利益に減価償却費などの現金支出を伴わない費用を加えるとともに、会計上は営業収益として整理されない関連会社(持分法適用会社)の損益についても加えることになります。これにより、当社企業グループのキャッシュ創出力を適切に示し、販売活動や効率化の成果などを指標に反映することができるものと考えております。当社は、2024年度に連結キャッシュ利益3,200億円以上を達成し、長期的に持続可能なキャッシュ創出力の基盤を構築するとともに、将来的にはさらなる成長を目指します。

 

※連結キャッシュ利益=営業利益+減価償却費+核燃料減損額+持分法投資損益(営業利益は、燃料費調整制度のタイムラグ影響を除く。)

 


 

(4)地域の復興・発展への貢献

東日本大震災の被災地では、不通となっていたJR常磐線が全線開通するなど、今後も再生に向けたまちづくりが進められます。

当社といたしましては、経営理念である「地域社会との共栄」のもと、被災地の地元電力会社として、地域の課題解決に資するスマート社会の実現に向けた事業を通じて、それぞれの地域がおかれた状況やニーズの違いを踏まえながら、将来の成長・発展に資するプロジェクトなどを積極的に支援することで、地域の復興・発展に貢献してまいります。

また、東北電力グループスローガン「より、そう、ちから。」のもと、総合力を発揮し、当社企業グループだからできる「よりそう」価値を創造し、社会の持続的発展と当社企業グループの成長の両立をはかり、みなさまのご期待にしっかりと応えてまいります。

 

2 【事業等のリスク】

当社企業グループの中核である電気事業は、電力の安定供給のために発電設備や流通設備等が必要不可欠であり、設備の損傷や電源の長期停止といった設備リスクは、事業運営における重要なリスクとして認識しております。また、電気という日常生活、産業活動に不可欠なインフラを供給するという社会的使命を果たす電気事業は、国のエネルギー政策の動向や関連する制度措置の見直しといった規制リスクを有しており、事業環境における重要なリスクとして認識しております。加えて、電気事業における主要コストである火力燃料費は、原油などのCIF価格及び為替レートの変動の影響を大きく受けることなどから、市場リスクについても重要なリスクとして認識しております。

これらのリスクが顕在化した場合には、当社企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があると認識しており、当社企業グループでは、これらのリスクの低減に努めるとともに、発生した場合は、的確な対応に努めております。

以下では、当社企業グループの業績及び財政状態への影響が大きいリスクを取り上げておりますが、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであり、すべてのリスクを網羅している訳ではありません。当社企業グループの事業は、現在は未知のリスク、あるいは現時点では重要と見做されていない他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、当社は、定期的に業務上や財務上のリスク調査を実施し、リスクの認識、分析・評価、対応策の検討を行い、重要なリスクについては、その内容に応じて社内取締役をトップとする委員会等を設置し、各種リスクを適切に管理し、未然防止に努めております。

 

(1)設備リスク等の事業運営におけるリスク

a.自然災害及び設備事故の発生による影響

地震・津波や台風等の自然災害、事故やテロ、サイバー攻撃等の不法行為などにより、当社が受電する他社の発電所を含め設備が損傷した場合や電源の長期停止などに至った場合は、設備復旧費用や発電費用の上昇などにより、当社企業グループの業績及び財政状態は重大な影響を受ける可能性があります。

当社企業グループは、これらの設備リスクを低減し、お客さまに高品質な電力を安定的に供給するため、設備の点検・修繕を計画的に実施するとともに、サイバーセキュリティ対策を講じ、設備の信頼性向上に努めております。

 

(2)規制リスク等の事業環境におけるリスク

a.電気事業を取り巻く制度変更等による影響

既に取引が開始した非化石価値取引市場やベースロード市場、今後創設が予定される需給調整市場・容量市場などの新市場取引の導入等による電力システム改革の進展、エネルギー基本計画に基づく政策の動向、それによる電気事業者及び他エネルギー事業者との競争の進展、環境関連規制の強化等による設備対策の増加などにより、当社企業グループの業績及び財政状態は長期にわたり影響を受ける可能性があります。

このため、国のエネルギー政策動向や電気事業を取り巻く制度変更等に関して、引き続き動向を注視してまいります。

 

b.原子力発電を取り巻く制度変更等による影響

原子力発電を取り巻く環境が厳しさを増している中、今後の政策・規制変更等により、当社が保有するあるいは当社が受電する原子力発電所の停止が長期化する場合など、火力燃料費の増加継続などにより、当社企業グループの業績及び財政状態は長期にわたり影響を受ける可能性があります。

当社は、安全確保を大前提に原子力を一定程度活用していくことが重要と考えており、新規制基準への適合に加え、さらなる安全性向上に向けて自主的な対策を進めるなどの取り組みを行っております。

なお、一定の前提を置いた試算ではありますが、女川原子力発電所2号機が再稼働した場合は年間で300億円程度、東通原子力発電所1号機が再稼働した場合は年間で200億円程度の火力燃料費が減少するものと想定しております。

 

c.原子力のバックエンド事業コストの変動による影響

原子力のバックエンド事業は、超長期の事業で不確実性を伴いますが、国による制度措置等により事業者のリスクが軽減されております。

ただし、国の政策変更や、関連する制度措置の見直し、将来費用の見積額の変動、再処理施設の稼働状況等により、費用負担が増加するなど、当社企業グループの業績及び財政状態は長期にわたり影響を受ける可能性があります。

このため、原子力のバックエンド事業に係る国の政策や関連する制度措置の動向に関して、引き続き動向を注視してまいります。

 

d.気候変動に関するリスク

自然災害の激甚化による設備被害増大など、気候変動による影響を受けた場合、当社企業グループの業績及び財政状態は長期にわたり影響を受ける可能性があります。

また、低炭素社会への移行が国際的に求められている中、石炭火力発電所の稼働・資金調達には一定の制約等がありうることを認識しておりますが、電気を安定して供給するための当社の電源ポートフォリオには、石炭火力の活用も引き続き必要な状況です。

これらの気候変動に関するリスクに対して、再生可能エネルギーの開発の取組みを拡大するとともに、需給両面でのCO2排出削減などの緩和策や、自然災害へのレジリエンス向上などの適応策に引き続き取り組んでおります。

 

(3)価格変動リスク等の市場リスク

a.需要及び販売価格の変動による影響

電気事業における販売電力量や託送電力量並びに販売価格は、電力小売全面自由化による競争激化、少子高齢化による人口減少や景気動向、気温の変動、さらには省エネルギーの進展などによって変動することから、当社企業グループの業績及び財政状態は重大な影響を受ける可能性があります。

また、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、東北地域は大きな被害に見舞われ、震災後9年を経てもなお、被災地の復興は途上であり、電力需要について、震災前の水準への回復が遅れる可能性があります。

当社企業グループは、東北6県及び新潟県以外の地域での販売電力量拡大に向けて、関東圏での小売・卸売の拡大により、当社企業グループの業績及び財政状態への影響緩和に努めております。

 

b.燃料費の変動による影響

電気事業における火力燃料費は、石炭、LNG、重・原油などのCIF価格及び為替レートの変動による影響を受けます。電気事業には、燃料価格及び為替レートの変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」が適用されますが、燃料価格などが著しく変動した場合には、当社企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があります。

このため、当社は、バランスのとれた電源構成を目指すことなどによって燃料費変動リスクの分散に努めております。

また、年間降雨降雪量により、豊水の場合は燃料費の減少要因、渇水の場合は燃料費の増加要因となりますが、「渇水準備引当金制度」により一定の調整が図られるため、業績への影響は限定的と考えられます。

なお、当社火力燃料費は、一定の前提を置いた試算ではありますが、1バレル当たりの原油価格が1米ドル変動すると年間26億円、1米ドルの為替レートが1円変動すると年間30億円、出水率が1パーセント変動すると年間8億円の変動影響があるものと想定されますが、火力発電所の稼働状況などにも影響を受けるため、燃料価格及び為替レートのみで決定はされません。

 

c.金利の変動による影響

当連結会計年度末の有利子負債残高は2兆4,126億円となりました。当社では、金利の変動影響を回避するため、固定金利での資金調達を基本としておりますが、今後の市場金利の動向及び格付の変更により、当社企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があり、金利が1パーセント変動すると年間34億円の影響があると試算されます。

ただし、有利子負債残高の多くは固定金利で調達した社債や長期借入金であることなどから、市場金利の変動による影響は限定的と考えております。

 

d.退職給付費用・債務の変動による影響

退職給付費用及び債務は、割引率など数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出しております。割引率や運用利回りの変動により、当社企業グループの業績は影響を受ける可能性があります。

このため、企業年金資産の分散投資によるリスク低減や、連合型確定拠出年金制度の導入により、当社企業グループ全体での退職給付債務の削減による財務リスクの軽減を図り、業績への影響緩和に努めております。

 

(4)その他のリスク

a.情報流出による影響

当社企業グループは大量の個人情報や設備情報など重要な情報を保有しており、重要な情報の流出により問題が発生した場合は、損害賠償金の支払いや当社企業グループに対する社会的信用の低下などにより、当社企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があります。

当社企業グループでは、重要な情報の適切な取扱いを図るため、基準等の整備や従業員に対する教育啓発、委託先管理の徹底等、情報セキュリティ対策の強化を図っております。

 

b.企業倫理に反した行為による影響

法令違反等の企業倫理に反した行為が発生した場合、法令上の罰則や当社企業グループに対する社会的信用の低下などにより、当社企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があります。

当社企業グループでは、企業倫理・法令遵守が全ての事業活動の前提になるとの考えのもと、企業倫理・法令遵守の体制を構築し、定着に向けた啓発活動等に取り組んでおります。

 

c.新型感染症拡大による影響

新型コロナウイルス等の新型感染症の拡大が長期化した場合、消費の低迷や生産活動の停滞等による電力需要の減少等によって、当社企業グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があります。

また、当社管内での流行時には発電所の運転人員等の確保や、世界的な感染拡大の状況によっては発電燃料の調達に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、感染症の大規模流行に備え、電力の安定供給を維持するための事業継続計画を策定しており、当社管内の流行段階に応じて、縮小や中断が可能な業務から順次業務を絞り込みながら業務運営を行うこととしているほか、燃料の調達ソースの多様化・分散化により調達安定性を確保し、燃料の供給が途絶するリスクの低減を図り電力の安定供給に努めていくとともに、中長期的な事業環境変化にも対応していくこととしております。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)事業の経過

① 企業グループを取り巻く経営環境

2019年度のわが国経済は、消費税率引上げなどの影響を受けつつも緩やかに拡大しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、消費が落ち込むとともに企業収益も製造業を中心に悪化しており、厳しい状況となっております。また、東北地域における経済についても、景況感が急速に悪化するなど、先行きの不透明感が拡大しております。

東北6県及び新潟県では、他地域と比較して人口減少や少子高齢化が加速しており、今後、様々な分野で社会課題が顕在化していくことも想定され、社会構造が大きく変化しようとしております。また、東日本大震災の被災地では、鉄道、道路、港湾などを中心に復興は着実に進んでおりますが、昨年10月の令和元年東日本台風(台風19号)の影響により、送配電設備を含め東北各地で甚大な被害を受けました。

電力業界においては、電力小売全面自由化による競争激化に加えて、再生可能エネルギーの導入拡大、脱炭素化、デジタル化の進展などによる電力需給構造の変化がみられました。

このようななか、当社企業グループは、東北電力グループスローガン「より、そう、ちから。」のもと、これまで以上にお客さまや地域のみなさまのご期待に応えつつ、地域とともに持続的に成長していくため、様々な施策を展開してまいりました。

 

(発電・販売事業)

② 利益創出力の強化と新ビジネスの検討

電力販売では、2016年4月の小売全面自由化以降、新電力との厳しい競争が続いております。そのため、家庭用のお客さま向けには、「東北電力 冬のくらし全力応援! +ONeキャンペーン」をはじめとする各種プロモーションを展開するとともに、固定価格買取制度の買取期間満了を迎えた家庭用太陽光発電設備をお持ちのお客さま向けサービスである「ツナガルでんき」の提供も開始いたしました。また、法人のお客さま向けには、当社独自のエネルギーマネジメントシステム「エグゼムズ(exEMS)」の提供に加え、「BCP(事業継続計画)関連支援サービス」の拡充や、「福利厚生アウトソーシングサービス」の新たな提供など、競争力強化に向け、ソリューションサービスの充実にも取り組んでまいりました。

関東圏においては、株式会社シナジアパワーや株式会社東急パワーサプライを通じて、販売電力量を拡大してまいりました。また、東北電力エナジートレーディング株式会社による市場取引を通じた収益力強化にも取り組んでまいりました。

地域に分散して存在するエネルギーリソースを遠隔制御し集約することで、あたかも一つの発電所のように機能させる「VPP(バーチャルパワープラント)」については、地域の自治体との協働のほか、世界最大規模のVPP事業者であるネクストクラフトベルケ社との戦略的連携により、将来の事業化に向けた実証を進めております。

 

③ 発電事業の競争力強化

火力発電については、供給力の中心として安定運用に努めるとともに、高い経済性と環境負荷低減の両立に向けた取り組みを進めてまいりました。具体的には、本年3月、石炭を使用する発電設備としては、世界最高水準の熱効率を有する能代火力発電所3号機(60万キロワット)の営業運転を開始し、昨年5月、LNGを使用する上越火力発電所1号機(57.2万キロワット)の建設工事に着手いたしました。また、秋田火力発電所2号機及び3号機を廃止するなど、経年化が進む発電所の休廃止を段階的に進めてまいりました。

燃料調達については、燃料費の低減や調達の柔軟性確保に向けた取り組みに加え、東北電力エナジートレーディング株式会社と連携した燃料先物取引の活用など、リスクの抑制や収益性の拡大に取り組んでまいりました。

 

④ 再生可能エネルギーに関する取り組み

当社企業グループでは、再生可能エネルギーについて、東北6県及び新潟県には風力発電などに適した地点が多いことを踏まえ、風力発電を主軸に、200万キロワットの開発に取り組んでおります。具体的には、秋田県北部洋上風力発電事業など複数の開発可能性調査に出資参画しており、本年の3月末時点においては、開発案件が事業化された場合の持分出力の累計は約30万キロワットとなっております。

また、水力発電について、これまで積極的に取り組んできており、当社は205ヵ所で合計約245万キロワットの発電所を保有しております。これらの発電所を効率的に運用するため、本年3月、発電所とダムを一体的に遠隔監視制御する「水力運用センター」の本格運用を開始いたしました。

 

⑤ 原子力発電所の安全性向上

原子力発電については、新規制基準への適合性審査に対し、全社をあげて対応してまいりました。女川原子力発電所2号機については、本年2月、原子力規制委員会から原子炉設置変更許可を受けました。引き続き、設計及び工事の計画認可などに係る審査に対しても万全を期して対応してまいります。また、東通原子力発電所1号機については、震源として考慮する活断層、基準津波及び基準地震動の評価に関する審査が進められております。当社といたしましては、新規制基準への適合にとどまらず、より高いレベルでの安全確保に向けて、最新の知見も取り入れながら、設備面と運用面の両面から、さらなる安全性の向上に向けて着実に取り組んでまいります。

原子力発電所の再稼働については、地域のみなさまのご理解が何よりも重要と考えております。今後とも、地域のみなさまからご理解をいただけるよう、丁寧な理解活動にしっかりと取り組んでまいります。

女川原子力発電所1号機については、本年3月、廃止措置計画が認可されました。当社といたしましては、廃止措置計画に基づき、安全確保を最優先に廃止措置に取り組んでまいります。

なお、女川原子力発電所2号機の安全対策工事については、2020年度の完了を目指して取り組んでまいりましたが、原子炉設置変更許可がなされたことを受け、全体工程がより詳細に見通せる状況となったことから、あらためて工事の完了時期を評価した結果、2022年度の完了を目指して工事を進めていくことといたしました。

 

(送配電事業)

⑥ 災害対応と電力設備強靭化

昨年10月、東北地方に甚大な被害をもたらした令和元年東日本台風(台風19号)に対し、これまでの経験を踏まえ、迅速に防災体制を整え、被害状況の早期把握と復旧作業を行いました。河川の浸水や土砂崩れによる道路の寸断などで復旧作業に着手できず、停電が長期化した一部地域については、ホームページやツイッターに加え、自治体に派遣した連絡要員を通じてきめ細かな情報提供に努めました。

また、昨年9月、千葉県を中心に甚大な被害をもたらした令和元年房総半島台風(台風15号)への対応において、東京電力パワーグリッド株式会社に対し、延べ3,665名の要員などの応援派遣を行い、停電が広域化・長期化するなかで、被害状況の把握、配電線の改修作業、高圧発電機車による供給など、電力の復旧に協力しました。

さらに、大規模停電を回避する設備形成や維持運用、様々な状況を想定した訓練に加え、災害時における迅速な復旧活動などを目的として、陸上自衛隊、海上自衛隊、東日本高速道路株式会社及び各自治体などと協定を締結し、連携をはかるなど、対応力の強化に取り組んでまいりました。

 

⑦ 送配電事業の効率化

送配電事業については、日々の設備巡視・点検や保修工事などの的確なメンテナンスにより安定供給・業務品質の向上と効率化の両立に努めてまいりました。具体的には、ドローンによる送電線の自動追尾点検の試行導入、AIを活用した送電鉄塔の腐食劣化度合いを判定するシステムの開発・運用、スマートグラスシステムを活用した変電所の運転・保修の実施など、新技術の採用により、一層の効率化を推進してまいりました。

 

⑧ 再生可能エネルギーの連系拡大に向けた取り組み

太陽光発電や風力発電を行う事業者などからの送電網への接続申込みの増加を踏まえ、既存の送電設備を最大限活用する施策に取り組んでまいりました。

また、国の認可法人である電力広域的運営推進機関と連携し、東北東京間連系線などの送電網の整備・拡充や、東北北部エリアの電源接続案件募集プロセスの実施など、再生可能エネルギーの連系拡大に取り組んでまいりました。

 

 

⑨ 送配電事業の分社化

当社は、本年4月からの送配電部門の法的分離に対応し、当社企業グループのさらなる企業価値の向上に向けて、100%子会社である「東北電力ネットワーク株式会社」に一般送配電事業等を分社いたしました。

同社は、安全確保を最優先に、東北6県及び新潟県における電力の安定供給を果たし、中立性・公平性のより一層の確保と的確かつ質の高いサービス提供に努めてまいります。

 

(2)経営成績の分析

当連結会計年度の企業グループの収支については、当社において、電力小売全面自由化に伴う競争激化の影響などにより、販売電力量(小売)は減少したものの、東北6県及び新潟県以外への販売電力量(卸売)が増加したことなどから、売上高は2兆2,463億円となり、前連結会計年度に比べ、20億円(0.1%)の増収となりました。

なお、売上高には、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく再エネ特措法交付金・再エネ特措法賦課金及び間接オークションに伴う自己約定分等が合計4,959億円含まれておりますが、費用側にも計上されることから、当社の収支に影響を与えるものではありません。

経常利益については、販売電力量(小売)の減少影響などがあったものの、能代火力発電所3号機の運転開始による燃料費改善効果や、企業グループ一体となって生産性・効率性のさらなる向上に努めたことなどに加えて、燃料費調整制度のタイムラグ影響が利益を大きく押し上げたことから、999億円となり、前連結会計年度に比べ、342億円(52.1%)の増益となりました。

また、令和元年東日本台風(台風19号)による被害設備の復旧に要する費用など61億円を特別損失に計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は630億円となり、 前連結会計年度に比べ、165億円(35.7%)増加しました。

 

※燃料費調整制度は、為替レートなどの変化に伴う、輸入燃料の価格変動を、毎月、自動的に電気料金に反映させ調整する制度であります。具体的には、燃料価格の3カ月平均の値から燃料費調整単価を算定し、それを2カ月後の電気料金に反映させる仕組みとなっており、燃料価格の変動が実際に料金収入に反映されるまで一定のタイムラグが生じることとなります。

 


 

当連結会計年度におけるセグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は次のとおりであります。

 

[電気事業]

当社の販売電力量(小売)は、前連結会計年度に比べ冬の気温が高かったことによる暖房需要の減少や競争激化による契約の切り替え、産業用での生産減などから、前連結会計年度に比べ2.5%減の672億キロワット時となりました。

このうち、電灯需要については、4.1%減の218億キロワット時、電力需要については、1.7%減の454億キロワット時となりました。

一方、当社の販売電力量(卸売)は、東北6県及び新潟県以外への卸売が増加したことなどから、8.8%増の177億キロワット時となりました。

この結果、当社の販売電力量(全体)は、0.3%減の848億キロワット時となりました。

これに対応する供給については、引き続き原子力発電所の運転停止などに伴う供給力の減少があるものの、火力発電所の補修時期の調整や能代火力発電所3号機の新設などにより安定した供給力を確保しました。

 

収支の状況については、当社において、電力小売全面自由化に伴う競争激化の影響などにより、販売電力量(小売)は減少したものの、東北6県及び新潟県以外への販売電力量(卸売)が増加したことなどから、売上高は2兆256億円となり、前連結会計年度に比べ、97億円(0.5%)の増収となりました。

営業利益については、販売電力量(小売)の減少影響などがあったものの、能代火力発電所3号機の運転開始による燃料費改善効果や、生産性・効率性のさらなる向上に努めたことなどに加えて、燃料費調整制度のタイムラグ影響が利益を大きく押し上げたことから、1,011億円となり、前連結会計年度に比べ、362億円(55.8%)の増益となりました。

 

[建設業]

公共投資は底堅く推移し、民間設備投資は高水準の企業収益を背景に増加基調で推移したものの、受注競争の激化やオリンピック需要の増加などによる労務費・資材費の上昇傾向が続きました。

連結子会社の株式会社ユアテックにおいては、関東圏での収益拡大、リニューアル営業の強化、海外事業の強化を柱に事業を展開してまいりました。

この結果、売上高は、海外を含む一般向け工事が増加したものの、電力関連工事が減少したことなどから2,731億円となり、前連結会計年度に比べ、27億円(1.0%)の減収となりました。

営業利益については、売上高減少に伴い工事原価が減少したものの、情報システム関連費用が増加したことなどから、87億円となり、前連結会計年度に比べ、21億円(19.6%)の減益となりました。

 

[その他]

売上高は、サービス業や情報通信事業において、増加したことなどから2,282億円となり、前連結会計年度に比べ、32億円(1.4%)の増収となりました。

営業利益については、製造業において製品販売量の減少により利益が減少したことなどから、97億円となり、前連結会計年度に比べ、10億円(10.0%)の減益となりました。

 

(3) 財政状態の分析

資産は、能代火力発電所3号機運転開始により電気事業固定資産が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ644億円(1.5%)増の4兆3,230億円となりました。

負債は、発電所建設などに充てるための有利子負債が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ340億円(1.0%)増の3兆4,589億円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ304億円(3.7%)増の8,641億円となりました。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末から0.4ポイント上昇し、18.3%となりました。

なお、東日本大震災により大幅に棄損した財務基盤を回復させることを目的に、「東北電力グループ中期経営方針(2017年~2020年度)」では、「2020年度までに自己資本比率(連結決算ベース)25%以上」を財務目標として設定しておりました。

これまでの経営効率化の成果等により、自己資本額としては震災前とほぼ同程度の水準、自己資本比率は一定の水準(2016年度末比1.5ポイント上昇)にまで回復することができました。

 

(4) キャッシュ・フローの状況の分析

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

燃料費調整制度のタイムラグ影響による利益増などにより収入が増加したことから、前連結会計年度に比べ1,087億円(41.4%)増の3,715億円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

能代火力発電所3号機や上越火力発電所1号機の新設工事などにより設備投資が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ600億円(24.0%)増の3,106億円の支出となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

発電所建設などに充てるための有利子負債が増加し、社債の発行が増加したことなどから、前連結会計年度の支出から収入に転じ、67億円の収入(前連結会計年度は693億円の支出)となりました。

 

この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に比べ673億円(36.4%)増の2,523億円となりました。

 

フリー・キャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ465億円(152.1%)増の771億円となりました。

 

   ※ フリー・キャッシュ・フロー

     <算出方法>

       営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー - 利息及び配当金の受取額

            - 利息の支払額

                                              (単位:億円)

 

  前連結会計年度

(自 2018年4月1日

  至 2019年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

増 減

営業活動によるキャッシュ・フロー(A)

2,628

3,715

1,087

投資活動によるキャッシュ・フロー(B)

△2,505

△3,106

△600

利息及び配当金の受取額(C)

11

11

0

利息の支払額(D)

△195

△174

21

フリー・キャッシュ・フロー(A+B-C-D)

306

771

465

 

 

 

また、キャッシュ・フロー指標の変動は次のとおりであります。

 

前連結会計年度
(自 2018年4月1日
 至 2019年3月31日)

当連結会計年度
(自 2019年4月1日
 至 2020年3月31日)

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

9.1

6.5

 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

13.4

21.3

 

(注)1  キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

    2  インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業活動によるキャッシュ・フロー/利息の支払額

 

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

① 資金調達方針並びに状況

当社は、電気事業における安定供給に必要な発電設備や送配電設備の形成を目的とした設備投資及び社債などの償還資金に充当するため、資金調達環境の動向を注視しながら、資金需要や有利子負債、現金及び現金同等物の適正な保有額などを総合的に勘案し、社債の発行及び金融機関からの借入金を組み合わせて安定的に資金を調達しております。

社債については、当連結会計年度において、一般担保付社債を総額2,350億円発行しております。これらは、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりA+、株式会社日本格付研究所(JCR)よりAAの長期債格付を取得しております。なお、当社は、2020年3月27日に「電気事業法等の一部を改正する等の法律(平成27年法律第47号)」(平成27年6月成立)に基づき、経済産業大臣の認定のもと、2020年度から5年間に限り、一般担保付社債の発行が可能となる経過措置を受けております。

また、当社は、2020年2月に、再生可能エネルギーの開発などを資金使途とした「東北電力グリーンボンド」を発行し、当社の再生可能エネルギー事業に対する積極的な取り組みを資金調達面から支えるとともに、さらなる資金調達の多様性や安定性の確保に努めております。

上記による資金調達の結果、当連結会計年度末の社債発行残高及び借入金残高はそれぞれ1兆500億円、1兆3,626億円となっております。

短期的な資金需要に対しては、機動的なつなぎ資金調達の手段としてコマーシャル・ペーパーなどを活用しております。コマーシャル・ペーパーは、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりa-1の短期債格付を取得しており、当連結会計年度は2,000億円の発行限度枠を設定しております。

 

② 資金の流動性に係る情報

当社は、月次での資金計画などにより、資金需要を的確に把握することに努めるとともに、金融機関との間に当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結していることから、電力需要の変動などに伴い、営業活動によるキャッシュ・フローが減少した場合でも、必要に応じて極度枠の範囲内で速やかに資金調達ができる体制を整えることにより、充分な流動性を確保しております。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社企業グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況」に記載されているとおりであります。

当社企業グループは、固定資産の減損、繰延税金資産、貸倒引当金、退職給付に係る負債及び資産、資産除去債務などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。このうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況」の追加情報に記載しております。

 

繰延税金資産

当社企業グループでは、繰延税金資産の回収可能性について、毎期検討を行っております。繰延税金資産は将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しております。電力小売全面自由化の進展による競争の激化など当社企業グループを取り巻く環境は大きく変化しているものの、繰延税金資産の認識に際しては、課税所得が生じる可能性の判断において、近い将来に収益力を大きく変化させるような経営環境の変化が見込まれないとの認識に基づき、将来獲得しうる課税所得の時期及び金額を合理的に見積り、金額を算定しております。

課税所得が生じる時期及び金額は、将来の事業環境や当社の事業活動の推移、その他の要因によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度以降の連結経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

(6) 生産、受注及び販売の実績

当社企業グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であるため「生産実績」を定義することが困難であります。また、建設業においては請負形態をとっており、「販売実績」という定義は実態にそぐわないため、生産、受注及び販売の実績については、記載可能な情報を「(2)経営成績の分析」においてセグメントの業績に関連付けて記載しております。

なお、当社個別の事業の状況は次のとおりであります。

 

① 供給力実績

種別

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

前年度比(%)

自社発電電力量

 

 

 

水力発電電力量

(百万kWh)

8,086

109.7

火力発電電力量

(百万kWh)

52,223

97.0

原子力発電電力量

(百万kWh)

△215

100.2

新エネルギー等発電電力量

(百万kWh)

670

91.6

融通・他社受電電力量

(百万kWh)

37,203

△6,462

106.3

94.7

揚水発電所の揚水用電力量

(百万kWh)

△79

86.3

合計

(百万kWh)

91,425

101.8

出水率

(%)

100.2

 

(注) 1 融通・他社受電電力量には、連結子会社からの受電電力量(酒田共同火力発電㈱4,553百万kWh、東北自然エネルギー㈱547百万kWh他)を含んでおります。

2 融通・他社受電電力量の上段は受電電力量、下段は送電電力量を示しております。

3 融通・他社受電電力量には系統運用等を含んでおります。

4 揚水発電所の揚水用電力量とは貯水池運営のため揚水用に使用する電力であります。

5 出水率は、1988年度から2017年度までの30ヶ年平均に対する比であります。

6 個々の数値の合計と合計欄の数値は、四捨五入の関係で一致しない場合があります。

 

② 販売実績

種別

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

 至 2020年3月31日)

前年度比(%)

販売電力量(百万kWh)

電灯

21,813

95.9

電力

45,354

98.3

小売 計

67,167

97.5

卸売

17,652

108.8

合計

84,819

99.7

 

 (注) 1 卸売には特定融通等を含んでおります。

 2 個々の数値の合計と合計欄の数値は、四捨五入の関係で一致しない場合があります。

 

 

 

③ 資材の状況

 石炭及び燃料油等の受払状況

区分

単位

2019年
3月末
在庫量

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

 至 2020年3月31日)

2020年
3月末
在庫量

受入

前年度比
(%)

払出

前年度比
(%)

石炭

t

702,043

8,379,094

103.0

8,388,607

104.9

692,530

重油

kl

133,646

118,326

38.4

149,430

55.4

102,542

原油

kl

87,278

25,053

23.5

65,774

77.4

46,557

LNG

t

214,870

4,279,501

93.7

4,302,570

94.1

191,801

 

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

      (会社分割による一般送配電事業の分割準備会社への承継に係る吸収分割契約の締結)

当社は、2019年4月25日の取締役会決議により、2020年4月1日に、当社が営む一般送配電事業及び離島における発電事業等を、会社分割の方法によって分割準備会社である「東北電力ネットワーク株式会社」(以下、「承継会社」といいます)に承継させることとし、同日、承継会社との間で吸収分割契約を締結いたしました(以下、この会社分割を「本件吸収分割」といいます)。

これに基づき、2019年6月26日開催の第95回定時株主総会において関連議案が承認可決されるとともに、2020年3月13日に、一般送配電事業の分割について、電気事業法に基づく経済産業大臣の認可を取得し、2020年4月1日に、本件吸収分割の効力が発生いたしました。

 

(1)本件吸収分割の背景・目的

東北電力グループを取り巻く環境は、2016年4月の電力小売全面自由化以降、地域や業種を超えた競争が進展するとともに、電力市場の整備や再生可能エネルギーの導入拡大、デジタルイノベーションの加速など、大きく変化しております。

激変する事業環境のなかにおいても、東北電力グループが電力の安定供給などの公益的使命を果たしながら、地域とともに持続的に成長していくため、2017年1月に策定した「東北電力グループ中期経営方針(2017~2020年度)」に基づき、財務基盤の強化や収益拡大に向けた取り組みを進めてきました。

こうしたなか、2020年4月の送配電部門の法的分離に対応し、東北電力グループのさらなる企業価値向上に向けた組織体制を構築するため、当社は、2020年4月に、一般送配電事業等を分社化し、発電事業及び小売電気事業等を運営する「事業持株会社(東北電力株式会社)」のもとに、100%子会社である「送配電会社(東北電力ネットワーク株式会社)」を配置する体制へ移行いたしました。

事業持株会社(東北電力株式会社)は、グループ全体の経営戦略の策定や経営資源の最適配分等を行うとともに、発電部門・販売部門の連携により総合力を発揮することで、低廉で高品質な総合エネルギーサービスをお客さまに提供し、競争力の強化とさらなる収益性の向上を目指してまいります。

送配電会社(東北電力ネットワーク株式会社)は、安全確保を最優先に、東北6県及び新潟県における電力の安定供給を果たし、中立性・公平性のより一層の確保と的確かつ質の高いサービス提供に努め、引き続き、地域社会との共栄・お客さまからの信頼の向上を目指してまいります。

当社は、このような組織体制の構築を通じて、機動的な意思決定のもと、各事業の自律性向上と価値創造力の強化をはかるとともに、グループシナジーの発揮によるグループ全体の企業価値向上に努め、東北電力グループスローガン「より、そう、ちから。」のもと、お客さま、地域社会、そして株主のみなさまのご期待にお応えしてまいります。

 

 

(2)本件吸収分割の要旨 
    ①本件吸収分割の日程

吸収分割契約承認取締役会(当社)

2019年4月25日

吸収分割契約承認取締役決定(承継会社)

2019年4月25日

吸収分割契約締結

2019年4月25日

吸収分割契約承認定時株主総会(当社)

2019年6月26日

吸収分割契約承認臨時株主総会(承継会社)

2019年6月26日

吸収分割効力発生日

2020年4月1日

 

 

 ②本件吸収分割の方式

当社を分割会社とし、当社の100%子会社である東北電力ネットワーク株式会社(分割準備会社)を承継会社とする吸収分割です。

 

 ③本件吸収分割に係る割当ての内容

本件吸収分割に際し、承継会社である東北電力ネットワーク株式会社は、普通株式3,548万株を発行し、それらをすべて当社に対して割当て交付いたしました。

 

 ④本件吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠

承継会社は、当社の100%子会社であり、本件吸収分割により承継会社が発行する全株式を当社に割当て交付するため、当社と承継会社間で協議し、割当てる株式数を決定しております。

 

 

(3)分割した事業部門の概要

 ①分割した部門の事業内容

一般送配電事業、離島における発電事業及びこれらに附帯関連する事業

 

 ②分割した資産、負債の項目及び金額(2020年4月1日現在)

資産

負債

項目

金額

項目

金額

固定資産

1,828,465百万円

固定負債

64,414百万円

流動資産

192,875百万円

流動負債

273,360百万円

合計

2,021,341百万円

合計

337,774百万円

 

 

(4)本件吸収分割後の承継会社の状況(2020年4月1日現在)

 

承継会社

a.商号

東北電力ネットワーク株式会社

b.所在地

宮城県仙台市青葉区本町一丁目7番1号

c.代表者の役職・氏名

取締役社長 坂本 光弘

d.事業内容

一般送配電事業、離島における発電事業 等

e.資本金

24,000百万円

f.決算期

3月31日

 

 

5 【研究開発活動】

当社企業グループは、「東北発の新たな時代のスマート社会の実現に貢献し、社会の持続的発展とともに成長する企業グループ」を2030年代のありたい姿とする「東北電力グループ中長期ビジョン」等に基づき、研究開発を実施しております。

 

現在、研究開発は、当社の研究開発センター及び各連結子会社の設計・開発担当部門などにより推進されており、当連結会計年度における当社及び連結子会社の研究開発費は85億円であります。このうち電気事業は75億円、建設業は2億円、その他は7億円となっております。

 

[電気事業]

当社の研究開発は、電力の安全確保・安定供給に資する研究開発を根底に据え、「新たなICTなど先端技術を活用した、競争力及び収益力強化」「高効率発電、再エネ対応技術高度化等による、最適な電源構成及び低炭素社会の実現」「将来の成長と競争力強化を支える、先駆的技術の獲得」の重点領域に注力して取り組んでおります。

 

(1) 新たなICTなど先端技術を活用した、競争力及び収益力強化に資する研究開発

既存の設備又は事業に新たなICTなど先端技術を活用し、設備運用の高度化、新サービスの開発と展開によるお客さまサービスの向上、分散型電源と蓄電池の組合せ技術等に関する研究開発

 

(2) 高効率発電、再エネ対応技術高度化等による、最適な電源構成及び低炭素社会の実現に資する研究開発

次世代高効率ガスタービンに代表される発電設備の高効率化、再生可能エネルギー活用に向けた次世代送配電技術や発電設備の運用性向上、高効率ヒートポンプなどの高効率機器の開発、原子力の安全性向上、新たなCO2削減技術等、コスト競争力強化やCO2排出抑制に向けた研究開発

 

(3) 将来の成長と競争力強化を支える、先駆的技術の獲得に資する研究開発

設備運用及び保守の効率化と高度化、お客さまサービス向上等に適用が期待されるAI、ロボット等に関する研究開発、未利用エネルギー利用技術等の先駆的技術の獲得を目指した研究開発

 

[建設業]

(1) 安全確保と品質向上に関する技術開発

電柱建て替えにおける元穴建柱工法の高度化による組立作業の効率化などを目的とした研究開発  など

 

(2) 収益力拡大に向けた技術開発

再生可能エネルギーの固定価格買取制度の改正に伴い、新ニーズへの対応に向けた太陽光発電設備における保守・メンテナンス手法の研究開発  など

 

[その他]

(1) 光通信市場向け商品開発

自己支持形細径SZ光ファイバーケーブルの開発や、レーザー加工装置用光部品の開発  など

 

(2) 売上拡大に向けた研究開発

広域IPネットワークを活用した監視制御システムの開発や、高速伝送対応開閉器制御用子局の開発など市場の維持・拡大に向けた製品開発  など