第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりである。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 一連の不適切事案を踏まえた再発防止に向けた取り組み

  当社グループは、公正取引委員会からの独占禁止法に基づく排除措置命令・課徴金納付命令の受領をはじめとする一連の不適切事案の発生を厳粛に受け止め、本年3月、一連の不適切事案に係る根本原因を分析し、再発防止策の策定、実施状況の確認などを統括する組織として「不適切事案再発防止対応本部」(本部長:代表取締役副社長執行役員)を設置した。

  同対応本部を中心に、法令遵守の徹底、ガバナンス・内部統制システムの改善等、全社横断的な再発防止策を策定し、全社を挙げて着実に実行することで、同様の事象を二度と発生させることのないよう、取り組んでいく。

 

  ○一連の不適切事案に係る対応体制(イメージ図)


 

 

  ○各事案の概要及び主な再発防止策(2023年5月23日現在)


 

  上記のほか、電気料金メニューに係る当社ウェブサイト等の一部記載について、景品表示法に違反している疑いがあるとして、本年1月に消費者庁の委託を受けた公正取引委員会の調査が開始され、当社はこの調査に全面的に協力している。

 

(2) グループ経営ビジョン「エネルギアチェンジ2030」の実現に向けた取り組み

  コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進む中、世界的な脱炭素化に向けた潮流加速への対応や、揺れ動く国際情勢のもとでエネルギーの安定供給確保が課題となるなど、電気事業をはじめとする当社グループを取り巻く環境は大きく変化している。

  燃料価格や卸電力取引市場価格の高騰等により当年度の連結経常利益は過去最大の赤字となり、また連結自己資本比率も低下するなど、非常に厳しい経営状況にあるが、足元では業績及び財務基盤の回復に最大限注力しつつ、その先にある2030年度をターゲットとするグループ経営ビジョン「エネルギアチェンジ2030」(以下、「経営ビジョン」という。)の実現に向けて、以下の諸課題に取り組んでいく。

 

 ① エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化

  当社グループの使命である電力の安定供給を今後も果たしていくため、電気料金の見直しを実施させていただくこととした。当社は、見直し後の料金に織り込んだ経営効率化を着実に実施していくとともに、利益の安定化を目指し、大型電源の安定稼働や、燃料価格や卸電力取引市場価格の変動リスクの低減に向けた対応等を進めていく。

  また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進するため、新たに「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」を策定し、2030年度までに小売事業及び発電事業におけるCO2排出量半減(2013年度比)をはじめとする目標の達成に向けて取り組みを進めている。こうした方針・目標のもと、当社グループは、S+3E(安全性、安定供給、経済性、環境への適合)を同時達成する電源構成の実現を目指しながら、脱炭素化と競争力強化に向けて積極的に取り組んでいく。

 

 (イ)原子力発電所の再稼働・運転開始及び開発に向けた取り組み

    原子力発電は、安定供給、経済性、環境への適合の観点から重要な役割を担うベースロード電源であり、また、確立した脱炭素技術としても、一定比率を維持していく必要があると考えている。

    島根原子力発電所においては、地震・津波対策などの設備面の安全対策の着実な実施のほか、原子力災害発生時に備えた訓練等の継続的な実施や関係自治体との連携強化など、原子力防災対策にも積極的に取り組み、更なる安全性を不断に追求していく。

    島根2号機については、原子力規制委員会より原子炉設置変更許可を受領しており、また新規制基準に係る安全対策に関して、昨年2月に松江市から、同年6月には島根県からそれぞれ安全協定に基づく事前了解の回答をいただくなど、すべての関係自治体から回答をいただいた。

    引き続き、新規制基準への適合性審査に適切に対応していくとともに、地域のみなさまからご理解を得られるよう丁寧な説明を行いながら、島根2号機・3号機の早期の再稼働・運転開始に向け、最大限取り組んでいく。

    加えて、将来にわたっての重要な電源として新規原子力発電所の開発も必要であると考えており、上関原子力発電所の開発に引き続き取り組んでいく。

 

 (ロ)火力発電の脱炭素化に向けた取り組み

    当社は、昨年11月、経済的に利用可能な最良の技術(BAT)である超々臨界圧(USC)を採用し、バイオマス燃料との混焼により環境性にも配慮した電源である三隅発電所2号機の営業運転を開始した。また、同機の運転開始を踏まえ、非効率な経年火力発電所4基の廃止を決定した。

    加えて、当社は、「火力発電のトランジション計画」のもと、水素・アンモニア発電について、経済的・技術的な課題等の解決後に遅滞なく導入できるよう、2030年までに実装準備を進めていくとともに、「大崎クールジェンプロジェクト」による石炭火力発電の高効率化、CO2分離・回収技術の開発及びカーボンリサイクルなどの脱炭素化に向けた研究・開発にも取り組んでいく。

    (注)廃止を決定した経年火力発電所4基のうち、下松3号機は本年1月に、水島2号機は本年4月に廃止済み。残る下関1号機・2号機の2基は2024年1月に廃止予定。

 

 (ハ)お客さまニーズに合わせたエネルギーサービスの展開

    当社グループでは、再生可能エネルギーを活用した電気料金メニューや、太陽光発電PPA(電力購入契約)サービス等の提供のほか、本年3月には、省エネ・CO2削減コンサルティングのサービス提供を開始するなど、カーボンニュートラル実現に向けたお客さまの取り組みをサポートするための脱炭素ソリューションの提供や新たなサービスの開発を進めている。

    当社グループは、引き続き、更なるサービスの開発・向上に取り組むことで収益拡大を図るとともに、脱炭素社会の実現に貢献していく。

    (注)省エネ・CO2削減コンサルティング=エネルギー使用の現状把握・分析から脱炭素化施策の実行に至る計画(ロードマップ)策定までをパッケージ化して提供するサービス。

 

 (ニ)電力の安定供給の確保

    当社グループは、設備保全の高度化・合理化やレジリエンス(災害に対する強靭性及び回復能力)強化の観点から、最新のDX技術を積極的に活用しながら、設備の計画的かつ確実な点検・補修、更新工事などを行うとともに、業務品質の維持・向上に向け、実践的な訓練や点検作業を通じ、保有する技術・技能の向上と着実な継承に努めていく。

    また、災害時に迅速かつ円滑に災害対応を実施するため、引き続き、社外関係機関や自治体等との連携強化に努めていく。

 

 

 ② 更なる成長に向けた新たな事業への挑戦

   当社グループは、多様化する社会の変化から可能性を見つけ出し、新たな事業領域の開拓に挑戦していく。

 

 (イ)海外事業の領域拡大に向けた取り組み

    当社グループは、海外事業を利益の一角を担える事業にしていくため、これまで培ってきた電気事業の知見を活用し、海外事業への出資参画を進め、収益力の強化に取り組んでいる。

    引き続き、再生可能エネルギーを中心に発電事業の発掘・獲得を進めるとともに、ネットワーク・小売事業や電力周辺事業に加え、新たなエネルギービジネスに積極的に対応し、事業領域を拡大していく。

 

 (ロ)再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取り組み

    再生可能エネルギーを地球環境問題への対応だけでなく成長領域の一つと位置づけ、経営ビジョンで掲げる目標達成に向け、水力や風力等の導入に積極的に取り組んでいる。2023年度内には新規導入量の目標である約30万kWを達成できるペースで増加しており、引き続き最大限の導入及び活用の拡大に取り組む。再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、調整力の重要性も増すことから、今後は「再生可能エネルギーの導入拡大」と「調整力確保」を両輪として取り組んでいく。

 

 (ハ)エネルギア創造ラボの取り組み

    エネルギア創造ラボでは、「地域の未来の創造」と「電気の未来の創造」をコンセプトに掲げ、カーボンニュートラル、DX、SDGsをテーマにベンチャー企業等の先進的な製品・サービスを地域に展開することで、新たな収益源とするとともに地域の課題解決に貢献していく。

    本年3月末時点で16件(ファンドを含む。)の投資を行っており、今後も多様なサービス展開を推進するため、早期成長が見込めるベンチャー企業への投資を行い、新たな利益の創出を目指していく。

    また、再生可能エネルギーや蓄電池、EV等を活用した新たなエネルギーサービスの開発に向けて、先進技術を有するベンチャー企業等との連携や実証実験等に取り組み、サービスメニューを順次拡大していく。

 

 ③ 多様な人材が活躍できる更なる環境づくり

   経営ビジョンにおけるミッション「すべての人が持ち場で輝く」の実現に向けて、新たに「多様な人材の活躍推進方針」を策定した。

   この方針において、「企業理念」及び「エネルギアグループ企業行動憲章」(以下、「企業行動憲章」という。)に基づき、社員一人ひとりの「自律性」とその力を結集した組織としての「多様性」の更なる推進とともに、個人が組織の中で臆することなく自身の強みを発揮できるよう、個人と組織の「関係性」向上に取り組み、個人の成長と組織の成長のベクトルを合わせていくことを明確にしている。

   グループが一体となって、この方針を踏まえた人材マネジメントを実行し、その進捗の定量的把握と継続的改善を通じて、個人と組織が持続的に成長する企業文化を醸成するよう取り組んでいく。

   また、人権を取り巻く社会情勢が大きく変化している中、グローバルスタンダードな人権尊重の考え方に沿って、より幅広に人権尊重の取り組みを推し進めるべく、新たに「中国電力グループ人権方針」を策定した。この方針のもと、人権の尊重に留意し業務に取り組んでいく。

 

 ④ ESG経営の推進

   昨今、サステナビリティに関する取り組みの重要性が高まる中、当社グループは、持続可能な社会の実現に向けた貢献を自らの使命とし、企業行動憲章にもその旨を明記のうえ、ESGを重視した経営を推進している。

   世界的な課題でもある2050年カーボンニュートラル実現に向け、脱炭素電源への設備投資等を進めていくため、昨年9月には、段階的な脱炭素移行(トランジション)への活用を資金使途とするトランジション・リンク・ハイブリッド・ローンによる資金調達を実施するなど、ESGファイナンスの活用も進めている。

   当社グループにおけるESGの取り組みをステークホルダーのみなさまに分かりやすくお伝えするため、引き続き、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等の主要なフレームワークに対応するとともに、価値創造の担い手である人材に関する取り組みなど、ESG情報の開示の充実に取り組んでいく。

 

 

〇 中国電力グループ経営ビジョン「エネルギアチェンジ2030」

 


 

 

〇中国電力グループ カーボンニュートラル戦略基本方針


 

 

○火力発電のトランジション計画

 カーボンニュートラル実現に向けて、S+3Eを前提に、設備更新時期や技術開発動向等を踏まえ、バイオマス発電や水素・アンモニア発電、IGFC+CCUS/カーボンリサイクル等、新技術の導入・開発等に取り組む。

 水素・アンモニア発電については、第6次エネルギー基本計画を踏まえ、2030年代のLNG火力への水素10%混焼・石炭火力へのアンモニア20%混焼の実現に向けて検討を加速させるとともに、経済的・技術的な課題等の解決後に遅滞なく導入できるよう、2030年までに実装準備を進めていく。


 

○中国電力グループが目指す2050年カーボンニュートラルの姿


 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりである。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)サステナビリティ共通
  ① ガバナンス・戦略

当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」は、それぞれESGの観点を包含しており、持続可能な経営のあり方を示すものである。また、経営ビジョンにおいて、「エネルギーの安定供給確保」「気候変動の緩和」「地域社会との協働・共創」「あらゆる人々の活躍の推進」を重点課題に設定するとともに、企業行動憲章において、持続的な社会実現に向けた当社グループの使命を明らかにし、これらの実践を通じて経営理念を体現するとともに、サステナビリティ経営を推進している。

サステナビリティを巡る課題への対応については、経営ビジョンや企業行動憲章に掲げる項目の実現に向け、中国電力グループ中期経営計画(以下、「中期経営計画」という。)において具体的施策を策定のうえ取り組んでおり、定期的に経営会議・取締役会に付議し、レビューを受けている。

 

② リスク管理

当社グループの使命は、社会からの信頼を基盤に、健全な事業活動を通じて社会に有用な価値を創造し、成長していくことで、持続可能な社会の実現に貢献することである。

リスク管理基本方針に基づき、リスク管理の専任組織が、サステナビリティに関するリスクも含めたグループ全体のリスク管理の推進・支援にあたっている。リスク管理の専任組織を中心とした体制のもと、リスクの洗い出し・評価に基づき、リスク対応策を中期経営計画に反映するとともに、リスク管理状況や対応策の進捗について、経営会議・取締役会に付議し、レビューを受けている。なお、気候変動や人材確保に係る具体的なリスクについては、「3 事業等のリスク」に記載している。

 

③ 指標及び目標

指標及び目標の具体的な進捗状況等については、「(2)気候変動への対応」「(3)人的資本」に記載している。

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

当社は、気候変動問題への取り組みを重要な課題として認識し、安全確保(Safety)を大前提とした、安定供給(Energy Security)、経済性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)の「S+3E」を基本に、バランスのとれた電源構成の構築を目指しながら、持続可能な未来社会の実現に向け、「2050年カーボンニュートラル」に挑戦する。

なお、詳細については、「中国電力グループ統合報告書2022」に記載している。また、2022年度の取り組み実績は、「中国電力グループ統合報告書2023」で開示する予定である。

① ガバナンス

当社では、社長を環境管理の最高責任者とし、カーボンニュートラル推進本部長を全社環境管理推進者としている。全社環境管理推進者を委員長とする「全社環境委員会」において、気候変動問題をはじめとする環境問題に関する方針・計画や、取り組みに関する重要事項の審議を原則年2回開催しており、実施状況などを社長に報告している。

取締役会は、社長から「中国電力グループ環境行動計画」の実施状況などについて年2回報告を受け、環境管理の職務執行を監督している。

さらに、当社グループ事業のカーボンニュートラルに向けた取り組みを強力に推進するとともに、カーボンニュートラルに向けたお客さま・地域社会との連携のより一層の強化を図るため、社長直属の専任組織「カーボンニュートラル推進本部」を設置した。カーボンニュートラル推進本部長を議長とする「カーボンニュートラル推進会議」において、当社グループにおけるカーボンニュートラルに向けた取り組み状況を一元的に把握・評価するとともに、更なる取り組みの推進を図っている。

 

 <環境マネジメント・カーボンニュートラル推進体制>


 

 

② 戦略

当社は、脱炭素化に向けた世界的な潮流を、当社グループの成長の機会と捉え、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、積極的かつ戦略的に取り組みを推進するため、当社グループが目指す方向性を明確化するとともに取り組みを具体化するものとして「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」を策定している。

「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」では、当社が提供するエネルギーの脱炭素化とお客さま・地域の脱炭素化に取り組むことを方針として定め、2030年度目標を設定し、その目標達成に向け、カーボンニュートラル電力の活用拡大、火力発電のトランジション、再生可能エネルギー電源の確保、エネルギーサービスの展開、新規ビジネスの検討、地域課題への対応及び次世代ネットワークの構築を重点施策として掲げている。

なお、当社は、気候変動に関するリスク・機会を評価するにあたって、国際エネルギー機関(IEA)・気象庁等の公表データを参照し、1.5℃シナリオと4℃シナリオを前提としてシナリオ分析を実施している。

 

 

 <気候変動に関するリスク・機会>


 

<気候変動関連リスク・機会の主な財務影響>


 

③ リスク管理

全社リスク管理体制のもと、気候変動を含む主管業務に関するリスクの洗い出し・評価を行い、発生を予見できるリスクについては未然防止する活動に、発生を予見することが困難なリスクについては被害を最小限に抑える管理活動に重点を置き、対応策の検討を行い、経営計画に反映して継続的に管理している。なお、詳細については、「(1)サステナビリティ共通」に記載している。

また、業績等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、「3 事業等のリスク」にも記載している。

 

 

④ 指標及び目標

当社は、2050年カーボンニュートラルへの挑戦に向けた中間目標として、2030年度までに小売事業におけるCO排出量の2013年度比半減を目指していく。

さらに、新たに発電事業においても、2030年度までにCO排出量の2013年度比半減を目指すこととしたほか、「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」に基づく国全体の排出係数の実現に向けて挑戦することを表明した(注)。



(注)本目標は、電気事業低炭素社会協議会の策定した「カーボンニュートラル行動計画」における目標であり、国が掲げる▲46%目標に向け、需給両面における様々な課題の克服を想定した場合の電源構成比率や電力需要の見通しに基づくものである。この見通しが実現した場合の国全体での排出係数は、0.25kg-CO2/kWh程度(使用端)である。

 

<サプライチェーン温室効果ガス排出量>

項目

2021年度実績

スコープ1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)

1,850(万t-CO2)

スコープ2(他社から供給された電気の使用に伴う間接排出)

0.003(万t-CO2)

スコープ3(その他の間接排出)

1,088(万t-CO2)

 

 

(3)人的資本

① 戦略

<多様な人材の活躍推進>

当社グループは、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関するグループ全体の包括的な方針として、「多様な人材の活躍推進方針」を策定している。

当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」のなかでも「創造。」、つまり、変化に対応し新たな価値を創造する担い手となるのは“人”である。こうした認識のもと、当社は、2016年の電力小売全面自由化を契機に、変化の時代に対応した人材・組織づくりとして、社員一人ひとりが資質を磨き「自ら考え行動」すること、多様な個性・知見を有する社員個々の力を結集し組織力を高めていくこと、いわば、「自律性」と「多様性」の推進に取り組んできた。この取り組みを更に推進するとともに、個人が組織のなかで臆することなく自身の強みを発揮できるよう、個人と組織の「関係性」向上にも取り組み、個人の成長と組織の成長のベクトルを合わせていくことが、経営ビジョンにおけるミッション「すべての人が持ち場で輝く」を実現する道筋である。

こうした考えで取りまとめた「多様な人材の活躍推進方針」のもと、グループ一体となって多様な人材が活躍できる更なる環境づくりに取り組んでいく。

 


 

 

当社及びグループ会社は、「多様な人材の活躍推進方針」を踏まえ、それぞれの経営事情や事業特性等に応じて自律的・主体的に必要な施策を実施していく。以下、当社における現在の主な取り組みを記載している。

 

a.自ら考え行動する人材の育成

変化の時代に求められる人材像を「人材ビジョン」として掲げて認識を共有したうえで、社員一人ひとりの自律的な自己研鑽の支援と研修の充実化を進めている。管理職は、社員自らが年度首に自律的・主体的に設定した成長目標を参考にして育成計画を策定し、社員本人の成長に資する業務付与を行うとともに、日常の仕事を通じて指導・育成している。

 

b.多様な人材の採用

中長期的な想定に基づく人員計画を策定し、計画人数の確保を図るとともに、事業状況や成長領域への事業展開を踏まえつつ、多様な価値観・経験を有する人材の採用に積極的に取り組んでおり、他企業経験者や高度な専門能力を有する人材などを2020年度10人、2021年度14人、2022年度8人採用している。

 

c.女性社員の活躍推進

女性社員の活躍に関する数値目標を設定のうえ、より一層の活躍を推進している。適性や育成計画に基づく幅広い業務付与により能力発揮を促すとともに、研修会などを通じて、管理職や女性社員の意識改革に取り組んでいる。女性社員の活躍に関する指標・目標及び実績については、「② 指標及び目標」に記載している。

 

d.多様な働き方の推進

多様な働き方の実現に向けて、フレックスタイム勤務制度や在宅勤務制度、配偶者同行休職制度の導入など、働き方の選択肢の充実を図っている。

また、育児・介護のための休職制度や短時間勤務制度、生活上の様々なニーズに対応するための当社独自の休務制度など、仕事と家庭の両立支援制度を整備するとともに、男性の育児参加を推進し、男女ともに仕事と家庭を両立できる職場風土の醸成に取り組んでいる。男性社員の育児休業取得率は、2020年度13.6%、2021年度23.0%、2022年度40.0%である。

 

e.個人と組織の「関係性」向上

多様な人材の活躍に向けて社員個々の力を最大限に引き出すため、組織運営の鍵を握る管理職のマネジメント力向上支援に取り組むとともに、個人と組織の「関係性」の高さを「心理的安全性」や「従業員エンゲージメント」など、組織文化の指標により可視化する取り組みに着手している。

 

 

<人権の尊重>

当社グループは、すべての人々の人権を尊重することを事業活動の根底におき、いかなる差別も行わず、人権が真に尊重される社会の実現に向けて取り組むことを企業行動憲章に掲げる行動原則の一つとして明示している。その具体的行動指針として、当社グループの全役員及び全従業員が人権尊重の考え方を共有し、実践していくため、「中国電力グループ人権方針」を策定している。

 


 

これまでも、同和問題やハラスメントなどの人権問題についての認識を深め、人権問題の解決に向けた行動につながるよう、当社においては、全社員対象の職場研修をはじめ、新入社員・新任ライン長など階層別の研修を毎年計画・実施するなど、人権啓発に取り組んでいる。

「中国電力グループ人権方針」のもと、事業活動の中で社会から求められている人権尊重の考え方を深く理解し、人権に関する課題に真摯に向き合い、人権の尊重に留意して業務に取り組むことで、人権が真に尊重される職場や社会の実現に努めていく。

 

<労働安全衛生の確保>

当社グループは、事業活動の基盤となる安全と心身の健康を確保することを最優先し、労働災害の防止、健康の保持増進に取り組むことを企業行動憲章に掲げる行動原則の一つとして明示している。

当社においては、安全管理や健康経営に関わる諸施策を推進していくための「安全健康推進業務運営方針」を定めている。この方針のもと、当社グループに関わる全ての人がお互いを尊重し、安全と健康を気づかいあう職場風土の醸成に取り組むとともに、ライン管理者による安全管理の徹底と職場自主活動の推進を両輪として、先取り安全と基本ルールの遵守並びにコミュニケーションの促進を柱に、職場で働く一人ひとりの安全の確保と心身の健康保持増進に向けて継続的に活動を展開している。

具体的には、安全健康意識の高揚を目的とした全社安全健康推進強調旬間の実施、元請・協力会社及び委託員の災害防止に向けた指導・支援、健康診断結果等に基づく健康指導や運動・禁煙支援等を通じた社員の自主健康づくりの継続的支援等に取り組んでいる。

 

<人材マネジメントの継続的改善の取り組み>

当社グループは、「多様な人材の活躍推進方針」を踏まえた人材マネジメントを実行し、その進捗を定量的に把握のうえ、内部の議論及び外部との対話を通じて人材マネジメントの課題を特定し、改善する一連のサイクルとして「人材マネジメントサイクル」の確立を目指している。

同方針と整合的な指標について検討を進め、できるところから開示していく考えであり、外部からのフィードバックも受け止めながら人材マネジメントの継続的改善に取り組んでいく。

 

(人材マネジメントサイクルの全体イメージ)


 

 

 

② 指標及び目標

上記「① 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する「多様な人材の活躍推進方針」に関し、「自律性」と「多様性」を更に推進していくための重要な取り組みの一つである女性社員の活躍に係る指標について、当社グループにおける主要な事業を営む当社及び中国電力ネットワーク株式会社の目標及び実績を以下に記載している。今後、その他の指標についても検討を進め、できるところから開示していく。

 

〔女性社員の活躍に関する指標〕

 

指標

目標

実績(注)1

2020年度

2021年度

2022年度

中国電力㈱

課長以上ポストに就く者に占める女性社員の割合(注)2

2024年度末までに2019年度期首の2倍以上

(3.7%以上)

1.8%

2.3%

3.4%

管理職以上に占める

女性社員の割合

(注)3

2024年度末までに2019年度期首の1.2倍以上

(8.7%以上)

8.1%

8.9%

10.0%

技術系女性社員の

人数

2024年度末までに2019年度期首の1.2倍以上

(59人以上)

49人

51人

55人

中国電力ネットワーク㈱

管理職以上の

女性社員の人数

(注)3

2024年度末までに2019年度期首の1.2倍以上

(3人以上)

3人

3人

3人

技術系女性社員の

人数

2024年度末までに2019年度期首の1.2倍以上

(30人以上)

30人

33人

36人

 

(注)1 各年度3月31日時点。

2 「5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の 男女の賃金の差異」に記載の「① 管理職に占める女性労働者の割合」と同じ。

3 「管理職以上」とは、係長級以上ポストに就くことができる者を指す。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社のリスク管理体制

当社では、リスク管理に対する基本的な考え方を示した「リスク管理基本方針」及び「リスク管理規程」に基づき、全社リスク管理体制を整備し、必要な対策を実施している。グループ会社においても同様の取り組みを展開し、グループ一体となってリスク管理を推進している。また、当社では、コンプライアンス推進部門内に、リスク管理の専任組織を設置し、グループ全体のリスク管理の推進・支援にあたっている。

また、当社では、危機管理の体制及びその運営に関する基本事項を定めた「危機管理規程」に基づき、「リスク戦略会議」や、危機に際して具体的な施策等を検討・実施する「緊急対策本部」の設置について定めている。

 

リスク管理体制図


 

 

事業等のリスク

以下では、当社グループの事業その他に関するリスクについて、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項及び顕在化した不適切事案の対応状況を記載している。当社グループは、経営ビジョンの実現に向けて、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避や発生した場合のリスク低減の対応に努めていく。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 原子力発電に関するリスク

① 原子力発電

当社は、福島第一原子力発電所において発生した事故を踏まえ、地震・津波対策、外部電源の信頼性確保、フィルタ付ベント設備の設置といったシビアアクシデント対策等、2013年7月に施行された新規制基準への適合はもちろんのこと、更なる安全性を不断に追求している。しかしながら、原子力に関する政策変更や法規制・基準の見直し、新規制基準適合性審査の状況、従来から係争中の島根2・3号機の運転差止訴訟及び2023年3月10日に提起された島根2号機運転差止仮処分に対する司法判断等によっては、発電所の運転停止が長期化し、代替火力燃料・電力に係る市場調達費用の増加、温室効果ガス排出に係る対応費用の発生により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社としては、新規制基準適合性審査の先行実績や規制動向を注視し、当社の原子力発電所の安全対策に、計画的かつ適切に取り組んでいく。

 

② 原子燃料サイクル・原子力バックエンド事業

原子力のバックエンド事業は、超長期の事業であり不確実性を有していることを踏まえ、使用済燃料再処理に要する費用と特定放射性廃棄物最終処分に要する費用については、それぞれの実施主体である使用済燃料再処理機構と原子力発電環境整備機構に拠出する制度が国により措置され、また、原子力発電施設の廃炉については、現行の解体引当金を積み立てる制度から、使用済燃料再処理機構から改組される使用済燃料再処理・廃炉推進機構に拠出金を拠出する制度へ見直すことが定められ、事業者のリスクが軽減されている。しかしながら、今後の制度の見直し、将来費用の見積り額の変更及び再処理工場の稼働状況等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社としては、再処理事業者等の関係先と連携し、事業の着実な実施に取り組んでいく。

 

(2) 政策・制度の見直しに関するリスク

① 電気事業に係る政策・制度

国は、小売電気事業者間の足元の競争状態を踏まえ、さらなる競争促進に向けて、競争と安定を両立する市場・取引環境の整備や需要家が魅力的・安定的な電気料金サービスを選べる事業競争環境の整備を検討しているところであり、この動向によっては、当社の相対的な競争力の低下や経営環境の変化により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

また、電源が有する価値については、容量市場や卸電力取引市場等の各種市場で取引を行うこととなるが、制度変更及び各種市場からの収益変動等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社としては、こうした制度変更等のリスクも認識しつつ、総合エネルギー事業全体としての利益最大化に取り組んでいく。

 

 

② 気候変動に係る政策・制度

国は、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な新たな目標として、2021年4月に2030年度の温室効果ガス排出量46%削減(2013年度比)を掲げた。2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、S+3Eの大原則をこれまで以上に追求していくために、あらゆる政策を総動員していくとされている。2023年5月には「GX推進法」が可決され、カーボンプライシングの具体策として、2028年度から化石燃料輸入事業者等に対し「炭素に対する賦課金」が、2033年度から発電事業者に対し「有償オークション」が導入されることとなっている。こうした今後の環境政策やカーボンプライシングの制度設計の動向によっては、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社グループは、2023年3月、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」を策定した。目標として、小売事業・発電事業ともに、2030年度CO2排出量半減(2013年度比)等を設定し、重点施策として掲げた、再生可能エネルギーの導入拡大、安全確保を大前提とした原子力発電の活用、火力発電のトランジション(バイオマス発電、水素・アンモニア発電等)、ネットワーク設備の高度化及び「お客さま・地域の脱炭素化」に資するサービスの開発と事業展開に着実に取り組んでいく。

   また、当社は、経済産業省が主導で設立した自主的な取り組みである「GXリーグ」に参画し、温室効果ガスの

  排出削減を着実に進めるとともに、お客さまや取引先と協働し、持続的な社会の実現に向けて挑戦していく。

 

(3) 市場価格変動等に関するリスク

① 燃料価格、外国為替相場及び卸電力市場

燃料価格や外国為替相場の変動は、「燃料費調整制度」により電気料金に反映され、業績への影響は緩和されるが、一部のお客さまには燃料費調整の上限価格が設定されているため、上限価格を超える部分は電気料金に反映できない。また、卸電力市場価格の変動は、当社の卸電力取引所における電源調達費用や「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」における回避可能費用に影響を与える可能性がある。これらにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社は、今後の大型電源の稼働による電源構成に占める火力発電及び卸電力調達の割合の低減並びにデリバティブ取引等の金融手法の活用に加え、2023年度からは卸電力取引所における取引価格の変動を電気料金に反映する市場価格調整を高圧以上のお客さまに導入することにより、燃料価格、外国為替相場及び卸市場価格の変動リスクの低減に努めている。

 

② 金融市場

2023年3月末時点で、当社グループの有利子負債残高は3兆220億円であり、市場金利の変動及び格付の変更に伴う調達金利の変動により支払利息が増減し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。ただし、有利子負債残高の多くは固定金利で調達した長期資金(社債や長期借入金)であるため、業績への影響は限定的と考えられる。

 

③ 退職給付費用・債務

2023年3月末時点で当社グループの退職給付債務は2,199億円及び年金資産は2,256億円である。退職給付費用は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されており、金利・株価等の変動に伴う割引率や運用利回りの変動により、退職給付費用が増減し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。ただし、当社グループは年金資産をリスクを抑えた資産構成で運用しているため、業績への影響は限定的と考えられる。

 

④ 原材料・資機材価格等

新たな感染症の流行、天災地変及び海外紛争等による原材料・資機材の需給ひっ迫に伴う価格高騰や長納期化により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社としては、調達環境に応じた発注方式の採用、取引先への早期の発注情報の提供や早期発注、修理への振替 等により、リスクの低減に努めている。

 

 

(4) 災害・トラブルの発生に関するリスク

① 自然災害及び設備事故等

電気事業を中核事業とする当社グループは、電力供給設備及び業務システム等の多くの設備を保有しており、大規模な地震及び台風等の激甚災害、テロ等の不法行為その他の理由によるトラブルの発生により、これら設備が被害を受ける可能性がある。その結果として、設備の復旧や代替火力燃料・電力の市場調達等に係る費用の増加、停電の長期化等による社会的信用の低下等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社グループとしては、国の法令等に準拠した電力設備設計や計画的な修繕、従業員に係る災害予防、災害応急 対策及び災害復旧を図るための防災等に係る各種業務計画の策定並びに事業継続のための体制整備について、国の審議会の検討結果等も踏まえ適切に対応している。

 

② 新たな感染症の流行

新たな感染症が流行した場合には、発電所の運転人員等の確保が困難となるなど、電力の安定供給や円滑な業務運営に支障が生じ、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社としては、感染症の流行時においても、安全確保を最優先に、電力の安定供給をはじめとした企業活動のために必要不可欠な業務を継続するため、新型インフルエンザ等対策業務計画を策定しており、あらかじめ事業継続体制を定めたうえで、必要な人員を確保することとしている。

 

(5) 競争環境の変化に関するリスク

① 小売電気事業

市況の変動等に伴い、小売電気事業における他事業者との競争環境が変化することにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社グループとしては、家庭用から事業用までエネルギーに関する多様なニーズに対し、付加価値の高いサービスを提供し、事業基盤である中国地域のお客さまに引き続き選択していただけるよう取り組んでいくとともに、新たなサービスの拡充等により、収益の拡大に向け取り組んでいく。

また、新たな市場での市場取引をはじめ、収益性が見込める販売チャネルを活用し、電力販売利益の最大化を図る。

 

② 海外事業

当社グループは、経営ビジョンで掲げる利益・財務目標の達成に向け、海外事業を当社グループの利益の一翼を担う事業にしていくため、海外発電事業案件の発掘・投資を進めるとともに、送配電・小売事業や電力周辺事業に加え、新たなエネルギービジネスにも積極的に取り組み、事業領域の拡大を図っている。

カントリーリスクの顕在化や脱炭素化の急速な進展に伴う環境・エネルギー関連の政策変更等の外部環境変化が生じた場合、投資額に見合うリターンを得られず、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

新規案件の投資決定にあたっては、事業主管箇所において予め定めた基準に基づき評価を行うとともに、投資評価箇所による評価及び経営層への報告の仕組みを通じて、リスク管理を徹底している。また、出資済案件については、出資先の取締役会・株主総会を通じて経営管理を行うことにより、リスク低減に取り組んでいる。

 

(6) オペレーショナルリスク

① コンプライアンス違反事案の発生

当社グループは、あらゆる業務運営においてコンプライアンス最優先に進めることを経営の基本とし、コンプライアンス徹底の取り組みに努めるとともに、コンプライアンスに反する行為に対しては、速やかな是正措置をとることとしているが、仮に重大なコンプライアンス違反事案が発生した場合には、当社グループへの社会的信用の低下や、円滑な業務運営に支障が生じることなどにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

なお、当社における個別のコンプライアンス違反事案及び対応状況並びに業績等への影響については、下記「②一連の不適切事案」に記載している。

当社としては、コンプライアンス経営推進宣言における3つの行動「良識に照らします、率直に話します、積極的に正します」を踏まえ、役員の率先垂範のもと、コンプライアンス最優先の業務運営の徹底に取り組んでいく。また、グループ会社においてもコンプライアンス最優先の業務運営が行われるよう、各社を支援・指導していく。

 

② 一連の不適切事案

当社は、他の旧一般電気事業者等と共同して顧客の獲得を制限していたとして、2022年12月1日、公正取引委員会から、独占禁止法に基づく排除措置命令書(案)及び課徴金納付命令書(案)に係る意見聴取通知書を受領した。これを受け、課徴金納付命令書(案)の内容を踏まえ、2022年度第3四半期連結会計期間において、707億円を独占禁止法関連損失引当金繰入額として特別損失に計上した。また、2023年3月30日、同委員会から排除措置命令及び707億円の課徴金納付命令を受領した。これらに対し、当社は、同年4月28日に各命令の取消訴訟提起の意思を表明したところであるが、すでに一部の行政機関からは入札資格の停止や補助金支給停止が課されているほか、今後はお客さま等から損害賠償請求を受けるなどにより、当社の業績は影響を受ける可能性がある。

また、本件について、当社は、2023年3月30日付で、電力・ガス取引監視等委員会(以下、「監視等委員会」という。)から報告徴収を、資源エネルギー庁から報告指示を受領し、それぞれ同年4月12日付及び同年4月7日付で事実関係及び是正措置等について報告したところであり、今後何らかの処分又は指導を受ける可能性がある。

当社は、電気料金メニューに係るホームページ等の一部記載について景品表示法に違反している疑いがあるとして、2023年1月12日、消費者庁の委託を受けた公正取引委員会から、調査開始の通知を受けた。当社としては、このたび指摘を受けた当社ホームページ等の記載については速やかに修正を行い、また、同委員会の調査に全面的に協力しているところであるが、今後の消費者庁の判断によっては、課徴金納付を命じられるなどにより、当社の業績は影響を受ける可能性がある。

なお、当社は、一般社団法人日本卸電力取引所のスポット市場を介して電力の売買を実施するにあたり、取引に係る発電所情報の公表等に関して、一部、不適切な対応があったとして、2023年3月31日付で監視等委員会から業務改善勧告を受領し、今後の改善計画について同年4月28日に報告した。

また、当社及び中国電力ネットワーク株式会社(以下、「中国電力ネットワーク」という。)が2022年12月27日付の監視等委員会からの依頼に基づき調査を行ったところ、当社と中国電力ネットワークが共有している一部のシステムにおいて、中国電力ネットワークが所有する他の小売電気事業者と契約中のお客さまの情報が当社から閲覧できる状態となっていることを確認した(なお、当該システムについては概ね改修を完了しており、未改修部分についても今後、改修予定である)。本件について、当社及び中国電力ネットワークは、2023年1月30日付で監視等委員会及び個人情報保護委員会から報告徴収を受け、監視等委員会から、同年4月17日付で、中国電力ネットワークは業務改善命令を、当社は業務改善勧告をそれぞれ受領し、今後の改善計画について同年5月12日に報告した。

加えて、当社は、経済産業省が管理・運営する「再生可能エネルギー業務管理システム」を利用するため、中国電力ネットワークに付与された専用のID及びパスワードを当社社員が使用していたことについて、2023年4月17日付で資源エネルギー庁から行政指導を受け、今後の改善計画について同年5月12日に報告した。

当社は、これらの改善計画に基づき、再発防止に全社を挙げて取り組んでいるところである。

 

③ 人材確保等

経営ビジョンを実現し、当社グループが持続的に成長していくためには、その担い手である社員一人ひとりの活躍が不可欠である。エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化や更なる成長に向けた新たな事業への挑戦等に必要な人材の確保・育成ができなかった場合、もしくは多数の人材が流出した場合には、事業の成長や円滑な業務運営に支障が生じ、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社グループとしては、中長期的な想定に基づく人員計画を策定し、計画人数の確保を図るとともに、経験者採用を積極的に実施することで多様な価値観・経験を有する人材の確保・活用を推進している。人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関するグループ全体の包括的な方針として策定した「多様な人材の活躍推進方針」のもと、グループ一体となって多様な人材が活躍できる更なる環境づくりに取り組んでいく。

 

④ 業務情報(個人情報含む)の漏えい

当社グループは、電気事業におけるお客さまの情報をはじめとして、多くの業務情報を保有している。これらの業務情報が外部に漏えいした場合、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社としては、管理体制を構築するとともに、情報管理基本方針及び個人情報保護方針等の社内ルールの整備及び定期的な教育・訓練の実施により、業務情報の漏えいの未然防止に取り組んでいる。また、技術的セキュリティ対策の継続的な見直し等により、厳重に業務情報の管理を行っている。

 

⑤ サイバー攻撃、システム障害

サイバー攻撃やシステム障害により機密性の高い内部情報等の流出、業務の停滞及びサービス停止が発生した場合、社会的信用の低下や事後対応費用の発生等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

当社グループとしては、社外のサイバーテロ演習等への参加、標的型攻撃メール訓練等の情報セキュリティ対策を実施するとともに、サイバー攻撃を早期に検出し対応するための対策を継続的に実施し、また、計画的な設備更新など、システム障害の未然防止に取り組みつつ、システム障害が発生した場合に速やかな初動・復旧体制の整備等を行うことにより、万一の事態に備えている。

 

⑥ DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応遅延

デジタル技術の活用による生産性向上や新たな価値創造に国内外の企業が精力的に取り組んでいる中、当社グループにおいて業務のデジタル化やデータ利活用が進まない場合、市場の変化に即応した商品・サービスの開発・提供や既存事業の労働生産性向上・コスト削減等の対応が後手に回り、競争力の低下を招くことで、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

   当社グループとしては、横断的にDXを推進するための専任組織を設置し、業務のデジタル化やデータを活用し 

  た既存サービスの付加価値向上、柔軟に働ける環境の整備等の競争力強化に向けた基盤固めに取り組んでいる。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。

 

 (1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いているが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性がある。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

 (2) 経営成績

 ① 事業全体

当連結会計年度におけるわが国の経済情勢をみると、ウクライナ情勢などを背景とした世界的な原材料価格の高騰や供給面の制約などの影響を受けたものの、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進む中で、個人消費や設備投資を中心に景気は緩やかに持ち直した。当中国地方においても、ほぼ全国と同様の状況で推移した。

このような中で、当連結会計年度の経営成績は、売上高(営業収益)は、燃料価格上昇に伴う燃料費調整額の増加や電力市場価格等の上昇に伴う他社販売電力料の増加などから、1兆6,946億円と前連結会計年度に比べ5,579億円の増収となった。

営業損益は、燃料価格上昇に伴う燃料費調整制度の期ずれ影響などにより、688億円の損失となり、前連結会計年度に比べ81億円の減益となった。

支払利息などの営業外損益を加えた経常損益は1,067億円の損失となり、前連結会計年度に比べ449億円の減益となった。

渇水準備金を取崩し、特別利益及び特別損失を計上して、法人税などを控除した結果、親会社株主に帰属する当期純損益は1,553億円の純損失となり、前連結会計年度に比べ1,156億円の減益となった。

 

 

区分

前連結会計年度
(億円)

当連結会計年度
(億円)

差引
(億円)

増減率
(%)

売上高(営業収益)

11,366

16,946

5,579

49.1

経常損失(△)

△618

△1,067

△449

親会社株主に帰属する
当期純損失(△)

△397

△1,553

△1,156

(参考)
営業損失(△)

△607

△688

△81

 

 

(参考)中国電力個別決算

区分

前事業年度
(億円)

当事業年度
(億円)

差引
(億円)

増減率
(%)

売上高(営業収益)

9,949

15,024

5,075

51.0

経常損失(△)

△758

△984

△225

当期純損失(△)

△463

△1,535

△1,071

(参考)
営業損失(△)

△896

△968

△71

 

 

 

 ○前提となる主要諸元(中国電力個別)

項目

前事業年度

当事業年度

総販売電力量

564.3億kWh

546.0億kWh

為替レート(インターバンク)

112円/$

135円/$

原油CIF価格

77.2$/b

102.7$/b

海外炭CIF価格

160.9$/t

358.8$/t

 

 

② 生産、受注及び販売の実績

当社及び連結子会社の業種は広範囲かつ多種多様であり、また、当社の電気事業が事業の大半を占めることから、当社の電気事業の販売実績、発受電実績及び資材の状況を記載している。

 

a.販売実績

種別

前連結会計年度
(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)

当連結会計年度
(自 2022年4月1日
 至 2023年3月31日)

前年同期比

(%)

総販売電力量
(百万kWh)

小売販売電力量

電灯

16,444

15,507

94.3

電力

30,663

29,821

97.3

他社販売電力量

9,323

9,275

99.5

56,429

54,603

96.8

料金収入
(百万円)

電灯料

350,186

424,909

121.3

電力料

414,584

647,349

156.1

他社販売電力料

98,241

165,027

168.0

863,012

1,237,285

143.4

 

(注)1 他社販売電力量及び他社販売電力料には、インバランス・調整電源等に係る他社販売電力量及び他社販売電力料を含んでいない。

2 小売販売電力量には、自社用を含んでいない。

3 電灯料及び電力料には、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に基づき実施されている「電気・ガス価格激変緩和対策事業」により受領した補助金28,490百万円(電灯・電力計)を含んでいない。

   4 四捨五入の関係で合計と一致しない場合がある。

 

b.発受電実績

種別

前連結会計年度
(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)

当連結会計年度
(自 2022年4月1日
 至 2023年3月31日)

前年同期比

(%)

発受電
電力量
(百万kWh)

自社

水力発電電力量

3,515

3,086

87.8

火力発電電力量

29,775

30,401

102.1

原子力発電電力量

新エネルギー等
発電電力量

9

16

185.8

他社受電電力量

28,849

26,411

91.5

揚水発電所の揚水用電力量

△1,163

△1,392

119.7

合計

60,985

58,522

96.0

出水率(%)

96.7

76.1

 

(注)1 他社受電電力量は、インバランス・調整電源等に係る電力量を含んでおり、当連結会計期間末日現在で把握している電力量を記載している。

    2 揚水発電所の揚水用電力量とは、貯水池運営のための揚水用に使用する電力である。

    3 当連結会計年度の出水率は、1991年度から2020年度までの30か年の年平均に対する比である。

    4 発受電電力量合計と総販売電力量の差は損失電力量等である。

    5 四捨五入の関係で合計と一致しない場合がある。

 

 

c. 資材の状況

    主要燃料の受払状況

 

品名

単位

2021年
3月末
在庫量

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

2022年
3月末
在庫量

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

2023年
3月末
在庫量

受入

払出

受入

払出

石炭

568,027

5,481,037

5,627,300

421,764

7,117,660

6,695,731

843,693

バイオマス

2,793

312,600

312,555

2,838

446,020

412,384

36,474

重油(注)

kl

112,143

396,314

462,627

45,830

542,012

470,499

117,343

LNG

144,040

2,117,653

2,154,456

107,237

1,746,668

1,723,136

130,769

 

(注)助燃用重油を含む

 

 ③ セグメント情報

 ○ 総合エネルギー事業

売上高(営業収益)は、燃料価格上昇に伴う燃料費調整額の増加や電力市場価格等の上昇に伴う他社販売電力料の増加などから1兆5,726億円と前連結会計年度に比べ5,323億円の増収となった。

営業損益は、燃料費調整制度の期ずれ影響などにより、833億円の損失となった。

 

 ○ 送配電事業

売上高(営業収益)は、再生可能エネルギーの買取義務量の増に伴う他社販売電力料の増加や最終保障供給料金の増加などから5,602億円と前連結会計年度に比べ1,241億円の増収となった。

営業利益は、基準接続託送収益の減少や需給調整に係る費用の増加などから、56億円となり、前連結会計年度に比べ160億円の減益となった。

 

 ○ 情報通信事業

売上高(営業収益)は、電気通信関係事業収入が増加したことなどから、457億円と前連結会計年度に比べ 4億円の増収となった。

営業利益は49億円となり、前連結会計年度に比べ11億円の増益となった。

 

 

区分

総合エネルギー

事業
(億円)

送配電事業
(億円)

情報通信事業
(億円)

売上高

前連結会計年度

10,403

4,360

452

当連結会計年度

15,726

5,602

457

差 引

5,323

1,241

4

営業費用

前連結会計年度

11,298

4,143

414

当連結会計年度

16,560

5,545

407

差 引

5,261

1,402

△6

営業利益又は
営業損失(△)

前連結会計年度

△895

217

37

当連結会計年度

△833

56

49

差 引

62

△160

11

 

 

 

 (3) 財政状態

資産は、三隅発電所2号機の営業運転開始による電気事業固定資産の増加や現金及び預金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ4,731億円増加し、4兆400億円となった。

負債は、有利子負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ6,260億円増加し、3兆5,845億円となった。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上及び配当金の支払いなどにより、前連結会計年度末に比べ1,529億円減少し、4,554億円となった。

この結果、自己資本比率は、11.1%となった。

 

区分

前連結会計年度末
(億円)

当連結会計年度末
(億円)

差引
(億円)

資産

35,669

40,400

4,731

 

(うち電気事業固定資産)
(うち固定資産仮勘定)
(うち流動資産)

(13,122)
(11,913)
(3,394)

(14,907)
(11,075)
(6,471)

(1,784)
(△837)
(3,077)

負債

29,585

35,845

6,260

 

(うち有利子負債)

(25,277)

(30,220)

(4,943)

純資産

6,084

4,554

△1,529

 

(うち自己資本)

(6,057)

(4,474)

(△1,582)

 

 

 

 (4) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

(当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況)

 ○ 営業活動によるキャッシュ・フロー

税金等調整前当期純損失の計上などにより、626億円の支出となった。

 ○ 投資活動によるキャッシュ・フロー

前連結会計年度に比べ186億円増加2,250億円の支出となった。

この結果、差引フリー・キャッシュ・フローは、2,877億円のマイナスとなった。

 ○ 財務活動によるキャッシュ・フロー

社債・借入金による資金の調達を行ったことなどにより、4,649億円の収入となった

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,790億円増加し、2,456億円となった。

区分

前連結会計年度
(億円)

当連結会計年度
(億円)

差引
(億円)

○営業活動によるキャッシュ・フロー

3

△626

△630

○投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,063

△2,250

△186

  差引フリー・キャッシュ・フロー

△2,060

△2,877

△816

○財務活動によるキャッシュ・フロー

2,125

4,649

2,523

 

うち社債・借入金による純増減

2,331

4,703

2,371

 

うち配当金の支払額

△181

△54

126

現金及び現金同等物(増減額)

66

1,790

 

現金及び現金同等物(期末残高)

665

2,456

1,790

 

 

(連結キャッシュ・フローの推移)

当面、島根原子力発電所の安全対策工事の設備投資といった大型電源工事によりフリー・キャッシュ・フローはマイナスが続くが、大型電源の稼働後には、反転していくものと試算しており、2030年度までの10年間で、キャッシュ・フローの均衡を図る。

 

(キャッシュ配分の考え方)

大型電源工事期間中は、キャッシュアウトの抑制に努める。

その時々の事業環境等を踏まえ、適宜、見直しながら、既存領域や成長領域への投資、株主還元等のバランスを取ってキャッシュ配分を行う。

 

② 資本の財源

エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化や更なる成長に向けた新たな事業への挑戦などに必要な資金を、主に社債及び長期借入金により調達している。

また、グループ全体の資金を効率的に活用するため、キャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を通じてグループ内資金融通を行っており、グループ全体で必要な資金を当社が一括して調達している。

さらに、中長期的に安定的かつ低利な資金調達を実現するため、取引先金融機関の拡大やトランジション・リンク・ハイブリッド・ローンの調達、個人向け社債、外貨建社債、転換社債、ハイブリッド社債、トランジションボンド及びトランジション・リンク・ボンドの発行などによる調達手段・調達先の多様化に取り組んでいる。

なお、当社は、一般担保付社債の経過措置に係る認定に基づき、最長2024年度まで一般担保付社債を発行していく。

 

③ 資金の流動性

月次資金繰りに基づき十分な現金及び預金を保有するとともに、金融機関とのコミットメントライン契約や当座貸越契約などにより、不測の資金需要に備える体制をとっている。

 

 (5) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の売上高(営業収益)は、燃料価格上昇に伴う燃料費調整額の増加などから、1兆6,946億円と前連結会計年度に比べ5,579億円の増収となった。

連結経常損益は1,067億円の損失と前連結会計年度に比べ449億円の減益となり、連結決算開始以降最も厳しい結果となった。これは、ウクライナ情勢などの影響による記録的な燃料価格の高騰を受け、燃料費調整制度の期ずれ差損が増加したことや燃料費調整単価が上限を超過し続けたことが主な要因と認識している。

今後に向けては、島根原子力発電所2号機の早期再稼働、ヘッジ取引を活用した燃料価格や電力市場価格変動リスクの低減及びグループを挙げた経営効率化に取り組み、収支・財務状況の立て直しを図る。

 

 (6) 目標とする経営指標の達成状況等

当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2020年1月に公表した経営ビジョンにおいて、2030年度に実現を目指す利益・財務の目標として「連結経常利益600億円以上」及び「連結自己資本比率25%」を設定している
 当連結会計年度においては連結経常損失1,067億円、連結自己資本比率11.1%となっている。

利益・財務の目標の実現に向けては、電気料金の見直しなどの取り組みを進めるとともに、安全確保を大前提に、島根原子力発電所及び三隅発電所2号機の稼働・運転開始などにより経済性・環境性・リスク耐性を高めていく。競争力のある電源を活用し利益の拡大を図りつつ、市場価格の変動等の外生的要因による収支変動などのリスクへの対応を進めていくことにより、業績の回復及び利益の安定化を図る。加えて、海外事業をはじめ、更なる成長に向けた新たな事業へも挑戦していく。

 

区分

2020年度

2021年度

2022年度

連結経常利益又は
連結経常損失(△)

300億円

△618億円

△1,067億円

連結自己資本比率

19.4%

17.0%

11.1%

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項なし

 

 

 

6 【研究開発活動】

経営ビジョンにおける「エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化」、「新たな事業への挑戦」を進めていくために、研究開発として取り組む方向性を3つの「戦略的イノベーション領域」として設定し、重点的に取り組んでいる。

研究開発によるイノベーションを目指し、早期の実用化・ビジネス化に繋げていくために、他業種とのアライアンスやオープンイノベーションを積極的に活用している。

また、中国地方の大学をはじめとした産学官の連携、電力中央研究所などとの密接な協力関係を保ちながら、効率的に推進していくこととしている。この取り組みとして、国立大学法人広島大学との包括的研究協力に関する協定を締結し、産学の連携を通して最先端の技術開発を行っている。

 研究開発活動とともに、グループ会社を含めて知的財産活動にも積極的に取り組んでおり、経営ビジョン実現に向けて、研究開発を含め、事業運営のあらゆる場面で生み出される技術・ノウハウ・アイデア等の知的資産を知財化し、電気事業を支える基盤技術として蓄積している。こうした取り組みの結果、当連結会計年度における当社グループの特許出願件数は226件、同新規登録件数は178件となった。商用の検索システムで集計したデータによる当連結会計年度末での当社の特許登録件数は3,222件であり、費用対効果を勘案し保有特許を厳選した結果、前年度よりやや減少したものの、エネルギー業界トップを維持している。

なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は86億円であり、うち総合エネルギー事業に係る研究開発費は76億円、総合エネルギー事業以外に係る研究開発費は9億円である。

 

(1) 戦略的イノベーション領域に関する取り組み

① デジタル技術を活用した電力システムのイノベーション

AI/IoT等のデジタル技術を活用して、電力設備の運用・保守技術の高度化に関する研究開発を実施しており、ドローン等を活用した設備保全の高度化に取り組んでいる。

② 脱炭素化に向けたエネルギー・環境技術のイノベーション

大崎クールジェン株式会社を通じて、「CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電」の実証事業を実施し、2022年度に完了した。石炭ガス化燃料電池複合発電にCO2の分離・回収、貯留及び有効利用を組み合わせたシステムは石炭火力の脱炭素化を可能とし、バイオマス混焼が実現すればCO2排出量を実質ゼロ以下とすることに繋がるため、石炭と木質バイオマスの混合燃料ガス化技術開発を推進する。

カーボンリサイクルの取り組みとして、回収したCO2を活用し土木材料(通称:CO2-TriCOM)やコンクリート(通称:CO2-SUICOM)、油脂(Gas-to-Lipids)を生成する技術の開発を実施している。

また、石炭灰リサイクル材を活用した水域底質環境の改善効果の実証を行い、これによる干潟・藻場への炭素固定効果について研究を実施している。

その他、太陽光発電が大量に導入された場合の電力系統へ与える影響調査・分析など、電力の品質確保や安定供給に向けた電力系統安定化技術等の研究開発に取り組んでいる。

③ 地域・他業種と融合した新サービスの創出

再生可能エネルギーの有効活用に向けて、蓄電池を活用し、インバランス回避や市場での収益向上を行う実証試験や、EVを活用し、その他のリソースと組み合わせエネルギーマネジメントを行う実証試験を実施し、新たなサービス開発に向けて取り組んでいる。

 

(2) 電気事業を支える基盤技術に関する取り組み

設備信頼度の維持・向上及び修繕費の低減を図るため、設備の健全性を非破壊で診断する技術の開発など、設備経年化へ適切に対応する技術の研究開発に取り組んでいる。

また、火力・原子力発電所の海水系統での付着生物による発電効率の低下を防止するため、付着抑制技術の研究開発にも取り組んでいる。

 

(3) その他

地域社会・経済の発展に貢献し、お客さまから選択し続けられるため、中国地域経済・産業動向の調査分析の実施及びエネルギア地域経済レポートなどを通じた情報提供、戦略的企業経営の支援、データの利活用に関する研究などに取り組んでいる。