当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループを取り巻く経営環境は、ウクライナや中東での紛争など、ここ数年来エネルギー価格やエネルギー安全保障に多大な影響を与えてきた事象に加え、足元では米国の関税政策など、国際情勢の影響により不確実性が高まっている。
国内においても、脱炭素化の潮流加速や電気事業のビジネスモデルの市場中心への移行、内外無差別な卸売※1の強化などにより、経営環境は大きく変化している。
そのような中、本年2月、「第7次エネルギー基本計画」が、「GX2040ビジョン」や「地球温暖化対策計画」と合わせて閣議決定され、S+3E※2の原則のもと、徹底した省エネルギーと合わせ、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い電源を最大限活用するなどの方向性が示された。また、これまでの電力需要減少という前提が見直され、データセンターや半導体工場の新増設などを背景として、電力需要は増加していくとの見通しが示されるなどの変化もみられる。
当社グループは、こうした経営環境の変化に柔軟に対応しながら、「信頼回復」と「収益・財務基盤回復」を最重要課題として位置付け、以下の方向性で諸課題に取り組んでいる。
信頼回復に向けては、一連の不適切事案の再発防止に注力し、着実な実施がみられたことを踏まえ、昨年9月に「法令遵守に関するコミットメント」を公表し、今後もコンプライアンスの遵守に向けた取り組みを継続していくことを幅広いステークホルダーに宣言した。
収益・財務基盤回復に向けては、「中国電力グループ中期経営計画(2024-2025)」に掲げる、2年間で連結経常利益1,500億円以上の確保、2025年度末の連結自己資本比率15%以上への回復を目指している。当年度決算においては、連結経常利益を1,285億円計上し、連結自己資本比率15%への回復を達成したが、有利子負債は増加しており、著しく毀損した財務基盤の回復は未だ途上にあることから、引き続きその回復・強化を進めつつ、将来の競争力強化や成長に向けた取り組みを進めていく。
当社グループが基盤とする中国地域は、鉄鋼、化学、自動車をはじめ国内有数の製造業が集積している。人口減少・高齢化などの課題がある中でも、将来にわたり地域とともに成長していくため、エネルギー事業者として、低炭素で安定したエネルギー供給体制を実現すること、さらには地域の脱炭素化をリードすることで、産業立地の維持・推進、ひいては地域活性化に貢献したいと考えている。
そのため、島根2号機の安定運転継続と島根3号機の早期稼働に全力で取り組むと同時に、火力発電所の脱炭素化も進めていく必要があり、将来に向けては、水素・アンモニアの実装準備や、CCUS※3の活用検討なども進めていく考えである。
2050年カーボンニュートラル実現に向けては、新規原子力発電所の立地点である上関地点を有していること、また、風況のよい山陰沖における浮体式洋上風力の開発可能性など、当社グループにはポテンシャルがあると考えている。
脱炭素化ニーズの高まりや、電力需要の増加見通しなどの状況の変化は当社グループが大きく成長するチャンスとなるととらえている。原子力発電所の稼働をはじめとする電源構成の低炭素化、電力・燃料のトレーディング技術の高度化、新たな料金メニュー・サービスの提供などにより、当社グループは、株主さま、お客さまや地域のみなさまの信頼を基盤に、持続的な成長を果たしていきたいと考えている。
これらの取り組みに加え、サステナビリティ経営推進に向けて、地球環境との調和、株主のみなさまをはじめとするステークホルダーのみなさまとの建設的な対話、多様な人材の活躍推進、コーポレート・ガバナンスの充実・強化など、ESGの取り組みを進めていく。
このような中長期的な取り組みの実現に向け、現在、新たなグループ経営ビジョンの検討を進めている。
※1 内外無差別な卸売=発電から得られる利潤を最大化するという考え方に基づき、社内外・グループ内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に電力卸売を行うこと。
※2 S+3E=安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy Security)、
経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の同時達成を目指すこと。
※3 CCUS=分離・貯留したCO2を利用すること。
(1) 各事業における取り組み
以上の方向性を踏まえ、各事業においては、それぞれの目指す姿の実現に向けて、主要課題に着実に取り組んでいく。


(2) ESGの取り組み
サステナビリティ経営の推進に向けては、以下のようなESGの取り組みを進めていく。
① 環境
当社グループは、事業活動に伴う環境負荷を可能な限り低減するため、グループ一体となって環境保全に取り組む責務があると認識している。
事業活動にあたっては、「中国電力グループ環境行動計画」に基づき、「地球温暖化対策」、「循環型社会形成」、「地球環境保全」などの取り組みを通して、環境経営を推進する。
これらの環境(気候変動・自然等)に関する取り組みについて、開示情報(TCFD・TNFD等)の充実化を進める。
また、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」において示した、「エネルギーの脱炭素化」及び「お客さま・地域の脱炭素化」を2本柱とした取り組みを通じて、事業基盤である中国地域のお客さまのカーボンニュートラルの実現にも貢献する。


② ステークホルダーとの対話
当社は、株主のみなさまをはじめ、お客さま、地域社会や取引先など幅広いステークホルダーのみなさまとの建設的な対話を通じ、時代とともに変化する社会からの要請やお客さまなどのニーズを的確にとらえ事業活動に反映するとともに、当社グループへのご理解と信頼を一層獲得していく。
③ 人的資本
当社グループの成長には、多様な経験や価値観を持つ社員一人ひとりの活躍が不可欠である。
グループ全体の方針として掲げる「多様な人材の活躍推進方針」をはじめ、“人”に関する中長期的な「方針」と、その進捗をモニタリングする「指標」を設定し、内部の議論・外部との対話を通じて人材マネジメントの継続的改善を図るサイクルの確立を目指している。
社員一人ひとりの成長意欲をベースにした人材育成、女性活躍推進をはじめとしたダイバーシティの推進、社員の主観を定量化した「従業員エンゲージメント」や「心理的安全性」などの組織文化に関する指標の把握などを通じて、個人と組織の持続的な成長につなげていく。
また、すべての事業活動の基盤として、人権が真に尊重される社会の実現に向けた「中国電力グループ人権方針」に基づく人権啓発活動や、災害ゼロを目指した安全の確保と健康経営の推進にも取り組んでいく。

④ コーポレート・ガバナンス
当社グループは、経営の透明性・公正性の維持・向上、経営環境の変化に対する迅速・果断な意思決定を行うことができる体制の構築が重要であると考えている。
業績連動型株式報酬による中長期的な業績向上と企業価値の増大へのインセンティブ付与、本年1月に新たに設定した取締役会の構成に係る目標(2030年度までに社外取締役比率50%以上、女性取締役比率30%以上)の達成や、当社グループ全体のリスクマネジメントの推進などにより、コーポレート・ガバナンスの充実・強化に継続的に取り組んでいく。
こうした当社グループの取り組みについては、引き続き、開示内容の充実に努めつつ、統合報告書等を通じてステークホルダーのみなさまにわかりやすくお伝えしていく。
当社グループを取り巻く環境は大きく変化しているが、当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」を体現すべく、役員・社員が一丸となって、株主のみなさまをはじめとするステークホルダーのみなさまから信頼いただけるよう取り組むとともに、その信頼を基盤に、事業活動を通じて社会に有用な価値を創造することで、持続的な成長を図り、企業価値及び株主価値の向上に努めていく。

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)サステナビリティ共通
① ガバナンス・戦略
当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」は、それぞれESGの観点を包含しており、持続可能な経営のあり方を示すものである。また、グループ経営ビジョンにおいて、「エネルギーの安定供給確保」「気候変動の緩和」「地域社会との協働・共創」「あらゆる人々の活躍の推進」を重点課題に設定するとともに、エネルギアグループ企業行動憲章(以下、「企業行動憲章」という。)において、持続可能な社会実現に向けた当社グループの使命を明らかにしており、これらの実践により経営理念を体現することを通じて、サステナビリティ経営を推進している。
サステナビリティ課題への対応については、グループ経営ビジョンや企業行動憲章に掲げる項目の実現に向け、中国電力グループ中期経営計画(以下、「中期経営計画」という。)において具体的な施策を策定のうえ進捗管理を行い、原則毎週開催する経営会議や、通常月1回開催する取締役会に定期的に付議し、PDCAサイクルを回している。
また、各施策の具体的な取り組みは、主管となる各組織を中心に推進しており、特に組織横断的な検討を要するものについては会議体を設置し対応している。各組織・会議体は、サステナビリティ課題への対応状況について、経営会議や取締役会に適時・適切なタイミングで付議している。
② リスク管理
当社では、全社リスク管理体制を整備しており、リスク管理の専任組織が、サステナビリティに関するリスクも含めたグループ全体のリスク管理の推進・支援にあたっている。当該組織を中心とした体制のもと、各組織においてリスクの洗い出し、評価、対応策の検討を行い、リスク対応策を中期経営計画に反映するとともに、リスク管理状況や対応策の進捗については、経営会議・取締役会に付議し、レビューを受けている。
なお、リスク管理体制や、気候変動や人材確保に係る具体的なリスクについては、
③ 指標及び目標
指標及び目標の具体的な進捗状況等については、「(2)気候変動への対応」「(3)人的資本」に記載している。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
当社は、気候変動問題への取り組みを重要な課題として認識し、安全確保(Safety)を大前提とした、安定供給(Energy Security)、経済性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)の「S+3E」を基本に、バランスのとれた電源構成の構築を目指しながら、持続可能な社会の実現に向け、「2050年カーボンニュートラル」に挑戦する。
なお、TCFD提言への取り組みについては「中国電力グループ統合報告書2024」から抜粋しており、詳細は統合報告書に記載している。また、2024年度の取り組み実績は、「中国電力グループ統合報告書2025」で開示する予定である。
① ガバナンス
当社は、気候変動問題への取り組みを重要な課題として認識し、カーボンニュートラルに関する取り組み状況を一元的に把握・評価し、推進していくための「カーボンニュートラル推進会議」、 気候変動問題をはじめとする環境問題への取り組みを推進するための「全社環境委員会」が会議体として設置されている。
各会議体での審議事項のうち重要事項については、取締役会まで報告している。
また、取締役(社外取締役及び監査等委員である取締役を除く。)の賞与の一部に、CO2排出量削減の取り組み結果を反映している。
<環境マネジメント・カーボンニュートラル推進体制(有価証券報告書提出日現在)>

※1 環境行動計画の実施結果報告を含む。
※2 重要な見直しは取締役会へ付議。
※3 海外の子会社等は含まない。
<取締役会への報告事項ならびにカーボンニュートラル推進会議における議題>

② 戦略
当社は、脱炭素化に向けた世界的な潮流を、当社グループの成長の機会と捉え、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、積極的かつ戦略的に取り組みを推進するため、当社グループが目指す方向性を明確化するとともに取り組みを具体化するものとして「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」を策定している。
「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」では、当社が提供するエネルギーの脱炭素化とお客さま・地域の脱炭素化に取り組むことを方針として定め、2030年度目標を設定し、その目標達成に向け、カーボンニュートラル電力の活用拡大、火力発電のトランジション、再生可能エネルギー電源の確保、エネルギーサービスの展開、新規ビジネスの検討、地域課題への対応及び次世代電力ネットワークの構築を重点施策として掲げている。なお、当社は、気候変動に関するリスク・機会を評価するにあたって、国際エネルギー機関(IEA)・気象庁等の公表データを参照し、1.5℃シナリオと4℃シナリオを前提としてシナリオ分析を実施している。
<気候変動に関するリスク・機会>

※1 デマンドレスポンスの略。需要家のエネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること。
※2 Power Purchase Agreement(=電力購入契約)の略。
※3 CO2固定化技術を利用した土木材料、コンクリートを活用する技術(CO2-TriCOM)及びCO2からバイオプロセスにより高付加価値の脂質を生産する技術
(Gas-to-Lipids)。
※4 島根2号機は2025年1月に営業運転再開。
<気候変動関連リスク・機会の主な財務影響>

※1 排出量は2023年度の実績を基に試算。炭素価格はIEA「World Energy Outlook 2023」のうち、「NZEシナリオ」「先進国(ネットゼロ公約国)」を参照し、140$/tCO2と想定して試算。
※2 過去稼働時10年の平均設備利用率に基づく試算。
※3 2023年度実績を基に試算。確定的なものではなく、試算に用いる年度実績により変動する。
※4 将来の財務影響に係る指標として実績額を記載。
※5 電源の脱炭素関連投資額の内訳は、④指標及び目標に記載。
③ リスク管理
全社リスク管理体制のもと、気候変動を含む主管業務に関するリスクの把握・評価を行い、発生を予見できるリスクについては未然防止・早期発見に重点を置いて管理している。また、発生を予見することが困難なリスクについては発生後の影響を最小限に食い止める活動に重点を置き、このようなリスクが顕在化した場合には、その影響を矮小化することなく、様々なステークホルダーの立場から見た必要かつ迅速な対応を行うこととしている。
また、業績等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、
④ 指標及び目標
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度目標を定め、目標達成に向け必要な投資を行っていく。実施状況については、中国電力グループ環境行動計画の中で管理している。
<気候関連の目標>

<サプライチェーン温室効果ガス排出量>
(注1)中国電力及び中国電力ネットワークの合計数値。
(注2)サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver.2.6)」(環境省 経済産業省)に基
づき算出。
<CO2排出量削減目標達成に向けた取り組み(概観)>
自社発電事業においては、原子力発電の稼働に加え、LNG火力のリプレースをはじめアンモニアの混焼やCCS※1といった各種取り組みを推進し、CO2排出削減を図る。
小売事業においては、経済性・環境性を総合的に評価した最適な電力調達を実現し、2030年度のCO2排出量目標の達成を目指す。

※1 CCS(Carbon dioxide Capture and Storage): CO2回収・貯留技術。
※2 SPT(Sustainability Performance Target):「中国電力株式会社サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」において
設定した目標。
※3 CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):分離・貯留したCO2の利用。
※4 安全対策工事に関わる投資額。
※5 送配電事業における総投資額。
(注1)CO2排出削減効果は、自社発電の排出削減量として試算。
(注2)経済的及び技術的側面などから多角的に検討を進め、その結果により見直す可能性がある。
(3)人的資本
① ガバナンス・戦略
当社グループは、取り巻く環境変化に柔軟かつ迅速に対応し、持続的な企業価値向上を果たしていくため、「経営戦略をいかに実現するか」という観点から、“人”に関する様々なマネジメントに取り組んでいる。
こうした取り組みを時々の情勢、課題に応じて不断に見直すとともに、日々の取り組みを通じて、ありたい姿を見据えた企業文化の醸成につなげるべく、“人”に関する中長期的な「方針」とその進捗をモニタリングする「指標」を設定し、内部の議論及び外部との対話を通じて継続的にマネジメントの改善を図る一連のサイクルとして「人材マネジメントサイクル」の確立を目指している。
<人材マネジメントサイクルの全体イメージ>

このサイクルのうち、内部の議論については、中期経営計画において定期的に、また必要に応じて、人材マネジメントの領域に属する採用、異動配置、評価、育成、報酬、働き方、安全・健康などの方針、指標及び具体的施策を経営会議・取締役会に付議しており、労働組合との意見交換も行っている。
また、取締役(社外取締役及び監査等委員である取締役を除く。)の賞与の一部に、従業員エンゲージメント、課長以上女性比率・副長クラス以上女性比率の達成状況を反映している。
“人”に関する取り組みは息の長いものとなるが、ありたい姿をしっかりと見据え、改善を重ねながら持続的な企業価値向上に挑戦していく。以下、人的資本に関する方針、取り組みについて記載している。その進捗をモニタリングする人材マネジメント指標については「③ 指標及び目標」に記載している。
a.多様な人材の活躍推進
当社グループは、当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」のなかでも「創造。」、つまり、変化に対応し新たな価値を創造する担い手となるのは“人”であるという認識のもと、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関するグループ全体の包括的な方針として、「多様な人材の活躍推進方針」を策定している。

この方針のもと、グループ一体となって多様な人材が活躍できる更なる環境づくりに取り組んでいくこととしており、当社及びグループ会社は、それぞれの経営事情や事業特性等に応じて自律的・主体的に必要な施策を実施していく。以下、当社における現在の主な取り組みを記載している。
(a)「自律性」と「多様性」の更なる推進
ⅰ.一人ひとりの成長意欲をベースにした人材育成
社員は、中長期的にありたい姿やチャレンジしたい仕事などの成長目標及びこれを実現するために主体的に取り組むべきことを申告し、管理職は、その内容を参考にして育成計画を策定している。その育成計画をもとに、社員の成長に資する業務付与を行うとともに、日常の仕事を通じたOJT、階層別や応募型のOff-JTも効果的に組み合わせて育成を図っている。加えて、各人の意欲に応じて自律的にキャリア形成できる環境を整備する観点から、従来の社内公募制度を拡充した社内兼業の仕組みを設けている。
このほか、オンライン動画学習を導入し、階層別研修のカリキュラム内容に応じて利用するとともに、OJTや自己啓発支援などにも活用している。また、自律的な知識・スキル習得の促進を図るため、資格試験に合格した者に祝金を贈与しており、2025年度からは対象資格を拡大するとともに贈与金額を増額している。
ⅱ.多様な働き方の推進
多様な働き方の実現に向けて、フレックスタイム勤務制度や在宅勤務制度、生活上の様々なニーズに対応するための当社独自の休務制度など、働き方の選択肢の充実を図っている。
また、育児・介護のための休職制度や短時間勤務制度、育児・介護施設等の利用に要する費用の補助など、仕事と家庭の両立支援制度を整備するとともに、男女ともに仕事と家庭を両立できる職場風土を醸成するよう、中期経営計画において男性育児休職取得の向上に関する目標を設定のうえ、男性の育児参加を推進している。
<多様な働き方の実現及び仕事と家庭の両立支援のための主な制度・取り組み>
(注)入社から退職までの期間における生活上の様々なニーズ(育児・ボランティア・自己啓発等)へ弾力的かつ幅広く対応するために設けた休暇制度。
ⅲ.女性社員の活躍推進
中期経営計画において女性管理職の増加に関する目標を設定のうえ、課長以上ポストに就く女性社員の増加及びそのすそ野の拡大を図っている。適性や育成計画に基づく幅広い業務付与により能力発揮を促すとともに、研修会などを通じて、管理職や女性社員の意識改革に取り組んでいる。
これまでの取り組みにより女性管理職は着実に増加しているが、性別に関係なく誰もが活躍できる企業であることをありたい姿として、そのために目指すべきは、「各職階の男女比が社員の男女比と等しく、男女ともに仕事とプライベートを両立しており、男女間の賃金差異が解消された状態」と定義のうえ、女性社員のより一層の活躍の推進を中長期的に図っていくこととしている。
(b)個人と組織の「関係性」向上
ⅰ.組織文化に関する指標の把握
多様な人材の活躍に向けて社員個々の力を最大限に引き出すため、社員の主観(個人の思い)を定量化した「従業員エンゲージメント」や「心理的安全性」などの組織文化に関する指標を、全社員を対象とした自己申告制度において毎年調査している。その申告内容は上司と部下のコミュニケーションの材料としても活用している。
ⅱ.管理職のマネジメント支援
組織運営の鍵を握る管理職のためのマネジメント支援情報を継続的に発信するとともに、従業員エンゲージメントの向上に向け、組織文化に関する指標のマネジメントへの活かし方を示したハンドブックを全管理職へ配布している。また、マネージャー・課長クラスを対象にした「リーダーのための心理的安全性研修」や副長クラスを対象にした「リーダーシップトレーニング研修」を実施している。
(c)人材(量・質)の確保と成長
中長期的な視点から人員構成の変化を予測し、安定的かつ継続的な採用者数の確保や離職者数の抑制等、適材適所の人材配置に取り組むとともに、事業状況や成長領域への事業展開を踏まえつつ、他企業経験者や高度な専門能力を有する人材など多様な価値観・経験を有する人材の採用にも計画的かつ積極的に取り組んでいる。また、結婚、育児、介護、配偶者の転勤や、転職等のキャリアアップにより当社を自己都合退職した者を対象に、時期を問わず募集・再雇用する「おかえリターン制度」を設け、柔軟かつ効率的な人材の確保にも取り組んでいる。
b.人権の尊重
当社グループは、すべての人々の人権を尊重することを事業活動の根底におき、いかなる差別も行わず、人権が真に尊重される社会の実現に向けて取り組むことを企業行動憲章に掲げる行動原則の一つとして明示している。その具体的行動指針として、当社グループの全役員及び全従業員が人権尊重の考え方を共有し、実践していくため、「中国電力グループ人権方針」を策定している。

これまでも、同和問題やハラスメントなどの人権問題についての認識を深め、人権問題の解決に向けた行動につながるよう、当社においては、全社員対象の職場研修をはじめ、新入社員・新任ライン長など階層別の研修を毎年計画・実施するなど、人権啓発に取り組んでいる。
「中国電力グループ人権方針」のもと、事業活動の中で社会から求められている人権尊重の考え方を深く理解し、当社にとって特に重要な人権への負の影響を特定して人権デュー・ディリジェンスを実践し、人権に関する課題に真摯に向き合い、人権の尊重に留意して業務に取り組むことで、人権が真に尊重される職場や社会の実現に努めている。
c. 安全と健康の推進
当社グループは、事業活動の基盤となる安全と心身の健康を確保することを最優先し、労働災害の防止、健康の保持増進に取り組むことを企業行動憲章に掲げる行動原則の一つとして明示している。
当社においては、安全管理や健康経営に関わる諸施策を推進していくための「安全健康推進業務運営方針」を毎年定めている。この方針のもと、当社グループに関わる全ての人がお互いを尊重し、安全と健康を気づかいあう職場風土づくりを推進するための施策を展開している。以下、当社における現在の主な取り組みを記載している。
(a)災害ゼロの追求
災害ゼロを目指して、社員一人ひとりの安全意識の高揚と安全行動の習慣化に向けて取り組んでいる。
<主な取り組み>
・作業時等の安全確保を目的としたDXの推進
・危険予知活動及びリスクアセスメントによる先取り安全の徹底
・当社と工事受注者が工事施工に伴う安全確保の協力体制を確立し、一体となって災害の防止を図ることを目的に請負工事安全対策協議会を設置・運営
(b)心とからだの健康づくり
社員一人ひとりの健康の保持増進が生産性の向上や活力ある職場づくりにつながるという考えのもと、健康経営を推進している。
<主な取り組み>
・産業保健スタッフによる健康指導や健康教育の実施
・健康保険組合とのコラボヘルスによる健康イベント(ウォーキングラリー、体重測定チャレンジ等)の
実施
・ストレスチェック結果を活用した職場環境改善活動とメンタルヘルス不調の未然防止
・メンタルヘルス不調者への適切な対応と円滑な職場復帰に向けた支援
② リスク管理
全社リスク管理体制のもと、多様な人材の活躍推進、人権の尊重、安全と健康の推進に関するリスクの洗い出し、評価、対応策の検討を行い、経営計画等に反映して継続的にリスク管理を実践している。
また、業績等に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクについては、
③ 指標及び目標
上記「① ガバナンス・戦略」において記載した「多様な人材の活躍推進方針」「中国電力グループ人権方針」に関し、「女性管理職の増加」「男性育児休職取得の向上」「人権啓発活動の実践継続」という3つの共通テーマに沿った指標及び目標をグループ各社が設定し、そのすべてを達成することを中期経営計画における目標としている。具体的には、当社及び連結子会社13社(注1)の計14社を対象として上記3つの共通テーマそれぞれについて「目標達成企業割合100%」を目標としている。
2024年度末時点では一部未達企業があるものの、引き続きグループ一体となって2025年度末の達成を目指す。
(注)1 著しく社員数の少ない一部の連結子会社を除く。
2 取得対象者がいなかった1社を除いて集計している。
中期経営計画における当社の指標及び目標並びに当社の人材マネジメント指標については、以下のとおり。
a.中期経営計画における当社の指標及び目標
(注)1 「5 従業員の状況(4)提出会社及び連結子会社における管理職に占める女性労働者の割合等」に記載の
「管理職に占める女性労働者の割合」と同じ。
2 「副長クラス以上」とは、係長級以上ポストに就くことができる者を指す。
3 「5 従業員の状況(4)提出会社及び連結子会社における管理職に占める女性労働者の割合等」に記載の
「男性労働者の育児休業取得率」と同じ。
4 直近の男性育児休職取得実績等を踏まえ、従前は「50%以上」としていた2025年度目標を上方修正した。
b.当社の人材マネジメント指標
(注)1 特例子会社及び関係会社特例認定を受けた会社を含めた雇用率。
2 当社は、変化の時代に求められる人材像を「人材ビジョン」として掲げて認識を共有している。
3 病院医療職を除く。
4 当該年度中の自己都合による退職者数/当該年度首在籍者数。病院医療職を除く。
5 新型コロナウイルス感染症り患による労働災害を除く。
6 要指導者とは、健康上の理由で就労上の制限等が必要な者。
7 全国平均を100とした職場の健康問題のリスクの指標(100より低いほど良好な状態)。
当社のリスク管理体制
当社では、リスク管理に対する基本的な考え方を示した「リスク管理基本方針」及び「リスク管理規程」に基づき全社リスク管理体制を整備し、必要な対策を実施している。また、全社及び各グループ企業のリスクを統合し、経営会議の協議を経て優先的に監視するリスクを決定し、取締役会に報告している。
具体的には、各業務主管部門(1線)がリスクを把握・評価し、所定の手続きを経たうえで対応策を策定・実施するとともに、個別の重要なリスクの管理状況については取締役の職務執行状況報告を通じて取締役会に報告している。
コンプライアンス推進部門(2線)は、各業務主管部門が実施するリスク対応策について、全社的な調整、体制整備を行うなど、リスク管理業務を総括するとともに、管理状況をモニタリングしている。
内部監査部門(3線)は、各業務主管部門においてリスクを管理するための内部統制が有効に機能していることを確認・評価している。
また、グループ企業においても、各社の状況に応じた取り組みを実施するとともに、当社は各社のリスク管理状況を把握し、必要な支援を行うことでグループ全体でのリスク管理を推進している。
さらに、当社では、危機管理の体制及びその運営に関する基本事項を定めた「危機管理規程」に基づき、「リスク戦略会議」において当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼし、かつ緊急的・全社的な対応を必要とするリスクへの対応に関する事項を協議し、対応方針を指示するほか、必要に応じ「緊急対策本部」を設置し、具体的な施策等を検討・実施することとしている。
リスク管理体制図

事業等のリスク
以下では、当社グループの事業その他に関するリスクについて、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を業績等への影響度の高い順に記載している。当社グループは、グループ経営ビジョンの実現に向けて、これらのリスクの発生の可能性を認識したうえで、発生の回避や発生した場合の影響の低減に努めていく。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 原子力関連リスク
① 原子力発電
② 原子燃料サイクル・原子力バックエンド事業
(2) 調達リスク
① 資機材調達
② 資金調達
(3) 市場変動リスク
(4) 市場競争リスク
(5) 国内電気事業以外の事業に関するリスク
(6) 災害リスク
(7) 電力規制リスク
(8) コンプライアンスに関するリスク
(9) 人材に関するリスク
(10) 環境規制リスク
(11) サイバー攻撃、システム障害リスク
(12) 情報漏えいリスク
(13) 人権侵害リスク
(14) DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応遅延によるリスク
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いているが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。
当連結会計年度におけるわが国の経済情勢をみると、堅調な企業業績を背景に、設備投資が拡大し雇用・所得環境が改善するなど、景気は緩やかに回復した。ただし、物価上昇の影響により個人消費は力強さを欠いたほか、年度末にかけては米国の関税政策による影響等から景気の不透明感が高まった。中国地域においても、ほぼ全国と同様の状況で推移した。
このような中で、当連結会計年度の経営成績については、売上高(営業収益)は、燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などにより、1兆5,292億円と前連結会計年度に比べ995億円の減収となった。
営業利益は、島根原子力発電所2号機の再稼働による収支改善などはあったが、燃料費調整制度の期ずれ差益の縮小及び総販売電力量の減少に加え、送配電事業の減益などにより、1,291億円と前連結会計年度に比べ776億円の減益となった。
支払利息などの営業外損益を加えた経常利益は1,285億円と前連結会計年度に比べ655億円の減益となった。
特別損益を計上して、法人税などを控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は984億円と前連結会計年度に比べ350億円の減益となった。
② 生産、受注及び販売の実績
当社及び連結子会社の業種は広範囲かつ多種多様であり、また、当社の電気事業が事業の大半を占めることから、当社の電気事業の販売実績、発受電実績及び資材の状況を記載している。
a.販売実績
(注)1 小売販売電力量には、自社用を含んでいない。
2 他社販売電力量には、インバランス・調整電源等に係る他社販売電力量を含んでいない。
3 他社販売電力料には、インバランス・調整電源等に係る他社販売電力料、容量確保契約金額等を含んでいない。
4 電灯料及び電力料には、「電気・ガス料金支援」により国から受領した補助金(前連結会計年度109,442百万円、当連結会計年度41,900百万円(電灯・電力計))を含んでいない。
5 総販売電力量は、四捨五入の関係で合計と一致しない場合がある。
(注)1 他社受電電力量は、インバランス・調整電源等に係る電力量を含んでおり、当連結会計期間末日現在で把握している電力量を記載している。
2 揚水発電所の揚水用電力量とは、貯水池運営のための揚水用に使用する電力である。
3 当連結会計年度の出水率は、1993年度から2022年度までの30か年の年平均に対する比である。
4 発受電電力量合計と総販売電力量の差は損失電力量等である。
5 四捨五入の関係で合計と一致しない場合がある。
c. 資材の状況
(注)助燃用重油を含む
売上高(営業収益)は、燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などにより、1兆4,080億円と前連結会計年度に比べ1,010億円の減収となった。
営業利益は、燃料費調整制度の期ずれ差益の縮小などにより、951億円と前連結会計年度に比べ517億円の減益となった。
売上高(営業収益)は、最終保障供給料金の減少はあるものの、市場価格上昇による再生可能エネルギー販売の増加に加えて、エリア需要の増加等による基準接続託送収益の増加などにより、5,115億円と前連結会計年度に比べ311億円の増収となった。
営業利益は、基準接続託送収益の増加はあったものの、需給調整関連費用の増加などから、252億円と前連結会計年度に比べ253億円の減益となった。
売上高(営業収益)は、情報関係事業収入が増加したことなどにより、494億円と前連結会計年度に比べ19億円の増収となった。
営業利益は47億円と前連結会計年度に比べ4億円の減益となった。
(3) 財政状態
資産は、島根原子力発電所2号機の営業運転再開による電気事業固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ2,276億円増加し、4兆3,609億円となった。
負債は、有利子負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,352億円増加し、3兆6,550億円となった。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べ924億円増加し、7,058億円となった。
この結果、自己資本比率は、16.2%となった。
税金等調整前当期純利益の計上などにより、1,860億円の収入となった。
設備投資の増加などにより、前連結会計年度に比べ1,568億円増加の3,588億円の支出となった。
この結果、差引フリー・キャッシュ・フローは、1,728億円のマイナスとなった。
社債・借入金による資金の調達を行ったことなどにより、1,611億円の収入となった。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ117億円減少し、2,866億円となった。
投資額が高水準であるためフリー・キャッシュ・フローは 1,728 億円のマイナスとなっている。今後も、エネルギーの安定供給、電源の脱炭素化、経営の安定化、将来の競争力強化に不可欠な島根原子力発電所3号機や柳井発電所2号系列のリプレース等へ多額の投資が必要となる。資金調達を円滑に行うため、引き続きグループを挙げて利益を創出するとともに、こうした電源の早期運転開始に向けた審査・工事の迅速化と、資材調達の合理化による総投資額削減を最優先課題として取り組み、フリー・キャッシュ・フローの黒字化を図っていく。
エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化や更なる成長に向けた新たな事業への挑戦などに必要な資金を、主に社債及び長期借入金により調達している。
また、グループ全体の資金を効率的に活用するため、キャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を通じてグループ内資金融通を行っており、グループ全体で必要な資金を当社が一括して調達している。
さらに、中長期的に安定的かつ低利な資金調達を実現するため、取引先金融機関の拡大やサステナブル・ファイナンスの活用、個人向け社債、外貨建社債、転換社債、ハイブリッド社債などによる調達手段・調達先の多様化に取り組んでいる。
なお、当社の発行する社債には電気事業法に基づき一般担保が付与されていたが、2025年4月1日以降に発行する社債には、一般担保は付与されない。2025年度以降に新規に発行する無担保社債について、投資家保護を重視し、既に発行済の一般担保付社債と同様に、社債管理者を設置している。
月次資金繰りに基づき十分な現金及び預金を保有するとともに、金融機関とのコミットメントライン契約や当座貸越契約などにより、不測の資金需要に備える体制をとっている。
当社グループの当連結会計年度の売上高(営業収益)は、総販売電力量の減少及び燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などから、1兆5,292億円と前連結会計年度に比べ995億円の減収となった。
連結経常利益は、島根原子力発電所2号機の再稼働による収支改善などはあったが、燃料費調整制度の期ずれ差益の縮小及び総販売電力量の減少に加え、送配電事業の減益などにより、1,285億円と前連結会計年度に比べ655億円の減益となった。
2024年度は最重要課題の一つである島根原子力発電所2号機の再稼働を果たすことができた。島根原子力発電所2号機の再稼働は、電力の安定的な供給に寄与するとともに、燃料価格変動の影響を緩和できることから業績の安定化・財務基盤の強化につながる。また、カーボンニュートラルに向けても非常に重要であり、当社の経営の大きな節目となった。
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「信頼回復」と「収益・財務基盤回復」を最重要課題として位置付けた「中国電力グループ中期経営計画(2024-2025)」で掲げる、2年間で連結経常利益1,500億円以上の確保、2025年度末の連結自己資本比率15%以上への回復を目指し取り組んでいる。
当連結会計年度において連結経常利益を1,285億円計上し、連結自己資本比率15%への回復を1年前倒しで達成できたものの、有利子負債は増加しており、著しく毀損した財務基盤の回復は未だ途上にある。
今後も将来の電力の安定供給、脱炭素化、経営の安定化に不可欠な島根原子力発電所3号機や柳井発電所2号系列のリプレース等へ多額の投資が必要となる。これらの電源の運転開始を目指す2030年頃までは資金調達を確実に行いつつ、引き続き、安全確保を大前提とした島根原子力発電所の安定稼働、電力卸・小売事業の収益力強化、経営全般にわたる効率化、市場リスクをはじめとするリスク管理の高度化に取り組むことで、グループを挙げて利益を創出し、財務基盤の回復・強化に優先的に取り組む。
該当事項なし
グループ経営ビジョンにおける「エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化」、「新たな事業への挑戦」を進めていくために、研究開発として取り組む方向性を3つの「戦略的イノベーション領域」として設定し、重点的に取り組んでいる。
研究開発によるイノベーションを目指し、早期の実用化・ビジネス化に繋げていくための他業種とのアライアンス及び、大学や電力中央研究所をはじめとする研究機関等との密接な協力関係を保ちながら効率的に研究開発を進めていくなど、産学官の連携を推進している。この取り組みの一環として、当社グループが事業領域とするエネルギーや環境に関する分野などにおける最先端の技術開発に向け、国立大学法人広島大学との包括的研究協力に関する協定、多岐にわたる分野で数々の実績を誇るヨーロッパ有数の研究機関であるTNOオランダ応用科学研究機構との協業に関する覚書を締結している。
研究開発活動とともに、グループ会社を含めて知的財産活動にも積極的に取り組んでおり、グループ経営ビジョン実現に向けて、価値創造を行ううえで重要となる当社独自の強み(コア価値)の創造・実装と知財ポートフォリオの再構築を推進している。具体的には、2022年度からコア価値創造に向けた取り組みに着手し、GX・DX及び新事業・新サービスといった重点分野の権利確保に注力している。こうした取り組みの結果、当連結会計年度における当社グループの特許出願件数は197件、同新規登録件数は172件となった。商用の検索システムで集計したデータによると、当連結会計年度末時点における当社の特許登録件数は1,924件であり、エネルギー業界トップレベルを維持している。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
AI/IoT等のデジタル技術を活用して、電力設備の運用・保守技術の高度化に資する技術開発に取り組んでいる。発電効率の向上及び保守費用削減のため、火力発電所の取水路に付着する生物幼生の画像検出手法の開発等に取り組んでいる。また、AI活用による貯水池式水力発電所における発電計画策定の最適化について、順次開発し、実運用を開始している。
② 脱炭素化に向けたエネルギー・環境技術のイノベーション
大崎クールジェン株式会社を通じて、「CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電」の実証事業を実施し、2022年度に完了した。2023年度から2024年度にかけては、石炭と木質バイオマスの混合ガス化技術の開発に取り組み、石炭ガス化技術を用いたネガティブエミッション化の見通しを得ている。
また、カーボンリサイクルの取り組みとして、回収したCO2を活用し土木材料(通称:CO2-TriCOM)やコンクリート(通称:CO2-SUICOM)、脂質(Gas-to-Lipids)を生成する技術の開発を実施している。
さらに、石炭灰造粒物を活用した水域底質環境の改善効果、これによる干潟・藻場への炭素固定効果について実証を実施している。近年は、福山港内港や日本橋など複数の地点で石炭灰造粒物を敷設し、悪臭の解消や生物の増加の確認、また、石炭灰造粒物によるカーボンリサイクル技術のインドネシアへの展開可能性についての調査を実施した。
地域のカーボンニュートラルに貢献するため、再生可能エネルギー、蓄電池、EV等の分散型リソースを最適に制御するエネルギーマネジメント技術の開発に取り組んでいる。
また、火力発電所において取水路に付着する生物幼生を検出する手法を応用し開発した、カキ養殖採苗を支援するアプリ「カキNavi」の事業化に向けて取り組んでいる。
その他、エネルギー関連技術や保有するビッグデータ等を活用して、健康・見守り分野、農業分野、モビリティ分野、地域レジリエンス分野において、地域課題解決に向けたサービスの開発に取り組んでいる。
設備信頼度の維持・向上及び修繕費の低減に資する技術開発に取り組んでいる。また、石炭火力発電所の燃料コスト低減や、揚水発電所がある貯水池の濁水発生期間の短縮に資する技術開発に取り組んでいる。
地域社会・経済の発展に貢献し、お客さまから選択し続けられるため、中国地域経済・産業動向の調査分析の実施及びエネルギア地域経済レポート等を通じた情報提供、戦略的企業経営の支援等に取り組んでいる。