第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

当社グループを取り巻く経営環境は、ウクライナや中東での紛争など、ここ数年来エネルギー価格やエネルギー安全保障に多大な影響を与えてきた事象に加え、足元では米国の関税政策など、国際情勢の影響により不確実性が高まっている。

国内においても、脱炭素化の潮流加速や電気事業のビジネスモデルの市場中心への移行、内外無差別な卸売※1の強化などにより、経営環境は大きく変化している。

そのような中、本年2月、「第7次エネルギー基本計画」が、「GX2040ビジョン」や「地球温暖化対策計画」と合わせて閣議決定され、S+3E※2の原則のもと、徹底した省エネルギーと合わせ、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い電源を最大限活用するなどの方向性が示された。また、これまでの電力需要減少という前提が見直され、データセンターや半導体工場の新増設などを背景として、電力需要は増加していくとの見通しが示されるなどの変化もみられる。

当社グループは、こうした経営環境の変化に柔軟に対応しながら、「信頼回復」と「収益・財務基盤回復」を最重要課題として位置付け、以下の方向性で諸課題に取り組んでいる。

信頼回復に向けては、一連の不適切事案の再発防止に注力し、着実な実施がみられたことを踏まえ、昨年9月に「法令遵守に関するコミットメント」を公表し、今後もコンプライアンスの遵守に向けた取り組みを継続していくことを幅広いステークホルダーに宣言した。

収益・財務基盤回復に向けては、「中国電力グループ中期経営計画(2024-2025)」に掲げる、2年間で連結経常利益1,500億円以上の確保、2025年度末の連結自己資本比率15%以上への回復を目指している。当年度決算においては、連結経常利益を1,285億円計上し、連結自己資本比率15%への回復を達成したが、有利子負債は増加しており、著しく毀損した財務基盤の回復は未だ途上にあることから、引き続きその回復・強化を進めつつ、将来の競争力強化や成長に向けた取り組みを進めていく。

当社グループが基盤とする中国地域は、鉄鋼、化学、自動車をはじめ国内有数の製造業が集積している。人口減少・高齢化などの課題がある中でも、将来にわたり地域とともに成長していくため、エネルギー事業者として、低炭素で安定したエネルギー供給体制を実現すること、さらには地域の脱炭素化をリードすることで、産業立地の維持・推進、ひいては地域活性化に貢献したいと考えている。

そのため、島根2号機の安定運転継続と島根3号機の早期稼働に全力で取り組むと同時に、火力発電所の脱炭素化も進めていく必要があり、将来に向けては、水素・アンモニアの実装準備や、CCUS※3の活用検討なども進めていく考えである。

2050年カーボンニュートラル実現に向けては、新規原子力発電所の立地点である上関地点を有していること、また、風況のよい山陰沖における浮体式洋上風力の開発可能性など、当社グループにはポテンシャルがあると考えている。

脱炭素化ニーズの高まりや、電力需要の増加見通しなどの状況の変化は当社グループが大きく成長するチャンスとなるととらえている。原子力発電所の稼働をはじめとする電源構成の低炭素化、電力・燃料のトレーディング技術の高度化、新たな料金メニュー・サービスの提供などにより、当社グループは、株主さま、お客さまや地域のみなさまの信頼を基盤に、持続的な成長を果たしていきたいと考えている。

これらの取り組みに加え、サステナビリティ経営推進に向けて、地球環境との調和、株主のみなさまをはじめとするステークホルダーのみなさまとの建設的な対話、多様な人材の活躍推進、コーポレート・ガバナンスの充実・強化など、ESGの取り組みを進めていく。

このような中長期的な取り組みの実現に向け、現在、新たなグループ経営ビジョンの検討を進めている。

 

※1 内外無差別な卸売=発電から得られる利潤を最大化するという考え方に基づき、社内外・グループ内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に電力卸売を行うこと。

※2 S+3E=安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy Security)、
経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の同時達成を目指すこと。

※3 CCUS=分離・貯留したCOを利用すること。

 

(1) 各事業における取り組み

 以上の方向性を踏まえ、各事業においては、それぞれの目指す姿の実現に向けて、主要課題に着実に取り組んでいく。

 


 

 

 


 

 

(2) ESGの取り組み

    サステナビリティ経営の推進に向けては、以下のようなESGの取り組みを進めていく。

 ① 環境

  当社グループは、事業活動に伴う環境負荷を可能な限り低減するため、グループ一体となって環境保全に取り組む責務があると認識している。

  事業活動にあたっては、「中国電力グループ環境行動計画」に基づき、「地球温暖化対策」、「循環型社会形成」、「地球環境保全」などの取り組みを通して、環境経営を推進する。

  これらの環境(気候変動・自然等)に関する取り組みについて、開示情報(TCFD・TNFD等)の充実化を進める。

  また、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」において示した、「エネルギーの脱炭素化」及び「お客さま・地域の脱炭素化」を2本柱とした取り組みを通じて、事業基盤である中国地域のお客さまのカーボンニュートラルの実現にも貢献する。

 


 

 


 

② ステークホルダーとの対話

    当社は、株主のみなさまをはじめ、お客さま、地域社会や取引先など幅広いステークホルダーのみなさまとの建設的な対話を通じ、時代とともに変化する社会からの要請やお客さまなどのニーズを的確にとらえ事業活動に反映するとともに、当社グループへのご理解と信頼を一層獲得していく。

 

 

③ 人的資本

    当社グループの成長には、多様な経験や価値観を持つ社員一人ひとりの活躍が不可欠である。

    グループ全体の方針として掲げる「多様な人材の活躍推進方針」をはじめ、“人”に関する中長期的な「方針」と、その進捗をモニタリングする「指標」を設定し、内部の議論・外部との対話を通じて人材マネジメントの継続的改善を図るサイクルの確立を目指している。

社員一人ひとりの成長意欲をベースにした人材育成、女性活躍推進をはじめとしたダイバーシティの推進、社員の主観を定量化した「従業員エンゲージメント」や「心理的安全性」などの組織文化に関する指標の把握などを通じて、個人と組織の持続的な成長につなげていく。

また、すべての事業活動の基盤として、人権が真に尊重される社会の実現に向けた「中国電力グループ人権方針」に基づく人権啓発活動や、災害ゼロを目指した安全の確保と健康経営の推進にも取り組んでいく。

 


 

④ コーポレート・ガバナンス

    当社グループは、経営の透明性・公正性の維持・向上、経営環境の変化に対する迅速・果断な意思決定を行うことができる体制の構築が重要であると考えている。

    業績連動型株式報酬による中長期的な業績向上と企業価値の増大へのインセンティブ付与、本年1月に新たに設定した取締役会の構成に係る目標(2030年度までに社外取締役比率50%以上、女性取締役比率30%以上)の達成や、当社グループ全体のリスクマネジメントの推進などにより、コーポレート・ガバナンスの充実・強化に継続的に取り組んでいく。

 

 

こうした当社グループの取り組みについては、引き続き、開示内容の充実に努めつつ、統合報告書等を通じてステークホルダーのみなさまにわかりやすくお伝えしていく。

当社グループを取り巻く環境は大きく変化しているが、当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」を体現すべく、役員・社員が一丸となって、株主のみなさまをはじめとするステークホルダーのみなさまから信頼いただけるよう取り組むとともに、その信頼を基盤に、事業活動を通じて社会に有用な価値を創造することで、持続的な成長を図り、企業価値及び株主価値の向上に努めていく。

 


 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)サステナビリティ共通
  ① ガバナンス・戦略

当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」は、それぞれESGの観点を包含しており、持続可能な経営のあり方を示すものである。また、グループ経営ビジョンにおいて、「エネルギーの安定供給確保」「気候変動の緩和」「地域社会との協働・共創」「あらゆる人々の活躍の推進」を重点課題に設定するとともに、エネルギアグループ企業行動憲章(以下、「企業行動憲章」という。)において、持続可能な社会実現に向けた当社グループの使命を明らかにしており、これらの実践により経営理念を体現することを通じて、サステナビリティ経営を推進している。

サステナビリティ課題への対応については、グループ経営ビジョンや企業行動憲章に掲げる項目の実現に向け、中国電力グループ中期経営計画(以下、「中期経営計画」という。)において具体的な施策を策定のうえ進捗管理を行い、原則毎週開催する経営会議や、通常月1回開催する取締役会に定期的に付議し、PDCAサイクルを回している。

また、各施策の具体的な取り組みは、主管となる各組織を中心に推進しており、特に組織横断的な検討を要するものについては会議体を設置し対応している。各組織・会議体は、サステナビリティ課題への対応状況について、経営会議や取締役会に適時・適切なタイミングで付議している。

 

② リスク管理

当社では、全社リスク管理体制を整備しており、リスク管理の専任組織が、サステナビリティに関するリスクも含めたグループ全体のリスク管理の推進・支援にあたっている。当該組織を中心とした体制のもと、各組織においてリスクの洗い出し、評価、対応策の検討を行い、リスク対応策を中期経営計画に反映するとともに、リスク管理状況や対応策の進捗については、経営会議・取締役会に付議し、レビューを受けている。

なお、リスク管理体制や、気候変動や人材確保に係る具体的なリスクについては、「3 事業等のリスク」に記載している。

 

③ 指標及び目標

指標及び目標の具体的な進捗状況等については、「(2)気候変動への対応」「(3)人的資本」に記載している。

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

当社は、気候変動問題への取り組みを重要な課題として認識し、安全確保(Safety)を大前提とした、安定供給(Energy Security)、経済性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)の「S+3E」を基本に、バランスのとれた電源構成の構築を目指しながら、持続可能な社会の実現に向け、「2050年カーボンニュートラル」に挑戦する。

なお、TCFD提言への取り組みについては「中国電力グループ統合報告書2024」から抜粋しており、詳細は統合報告書に記載している。また、2024年度の取り組み実績は、「中国電力グループ統合報告書2025」で開示する予定である。

 

 

① ガバナンス

当社は、気候変動問題への取り組みを重要な課題として認識し、カーボンニュートラルに関する取り組み状況を一元的に把握・評価し、推進していくための「カーボンニュートラル推進会議」、 気候変動問題をはじめとする環境問題への取り組みを推進するための「全社環境委員会」が会議体として設置されている。

各会議体での審議事項のうち重要事項については、取締役会まで報告している。

また、取締役(社外取締役及び監査等委員である取締役を除く。)の賞与の一部に、CO排出量削減の取り組み結果を反映している。

 

<環境マネジメント・カーボンニュートラル推進体制(有価証券報告書提出日現在)>

 


 ※1 環境行動計画の実施結果報告を含む。

 ※2 重要な見直しは取締役会へ付議。

 ※3 海外の子会社等は含まない。

 

 <取締役会への報告事項ならびにカーボンニュートラル推進会議における議題>


 

 

② 戦略

当社は、脱炭素化に向けた世界的な潮流を、当社グループの成長の機会と捉え、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、積極的かつ戦略的に取り組みを推進するため、当社グループが目指す方向性を明確化するとともに取り組みを具体化するものとして「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」を策定している。

「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」では、当社が提供するエネルギーの脱炭素化とお客さま・地域の脱炭素化に取り組むことを方針として定め、2030年度目標を設定し、その目標達成に向け、カーボンニュートラル電力の活用拡大、火力発電のトランジション、再生可能エネルギー電源の確保、エネルギーサービスの展開、新規ビジネスの検討、地域課題への対応及び次世代電力ネットワークの構築を重点施策として掲げている。なお、当社は、気候変動に関するリスク・機会を評価するにあたって、国際エネルギー機関(IEA)・気象庁等の公表データを参照し、1.5℃シナリオと4℃シナリオを前提としてシナリオ分析を実施している。

 

気候変動に関するリスク・機会

 


 ※1 デマンドレスポンスの略。需要家のエネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること。

 ※2 Power Purchase Agreement(=電力購入契約)の略。

 ※3  CO固定化技術を利用した土木材料、コンクリートを活用する技術(CO-TriCOM)及びCOからバイオプロセスにより高付加価値の脂質を生産する技術
(Gas-to-Lipids)。

  ※4 島根2号機は2025年1月に営業運転再開。

 

<気候変動関連リスク・機会の主な財務影響>


 

 ※1 排出量は2023年度の実績を基に試算。炭素価格はIEA「World Energy Outlook 2023」のうち、「NZEシナリオ」「先進国(ネットゼロ公約国)」を参照し、140$/tCO2と想定して試算。

 ※2 過去稼働時10年の平均設備利用率に基づく試算。

 ※3 2023年度実績を基に試算。確定的なものではなく、試算に用いる年度実績により変動する。

 ※4 将来の財務影響に係る指標として実績額を記載。

 ※5 電源の脱炭素関連投資額の内訳は、④指標及び目標に記載。

 

③ リスク管理

全社リスク管理体制のもと、気候変動を含む主管業務に関するリスクの把握・評価を行い、発生を予見できるリスクについては未然防止・早期発見に重点を置いて管理している。また、発生を予見することが困難なリスクについては発生後の影響を最小限に食い止める活動に重点を置き、このようなリスクが顕在化した場合には、その影響を矮小化することなく、様々なステークホルダーの立場から見た必要かつ迅速な対応を行うこととしている。

また、業績等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、「3 事業等のリスク」にも記載している。

 

④ 指標及び目標

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度目標を定め、目標達成に向け必要な投資を行っていく。実施状況については、中国電力グループ環境行動計画の中で管理している。

 <気候関連の目標>


 

<サプライチェーン温室効果ガス排出量>

項目

2022年度実績

2023年度実績

スコープ1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)

1,961

万t-CO2

1,805

万t-CO2

スコープ2(他社から供給された電気の使用に伴う間接排出)

0.004

万t-CO2

0.003

万t-CO2

スコープ3(スコープ2以外の間接排出)

1,300

万t-CO2

1,327

万t-CO2

 

(注1)中国電力及び中国電力ネットワークの合計数値。

(注2)サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver.2.6)」(環境省 経済産業省)に基

        づき算出。

 

<CO排出量削減目標達成に向けた取り組み(概観)>

自社発電事業においては、原子力発電の稼働に加え、LNG火力のリプレースをはじめアンモニアの混焼やCCS※1といった各種取り組みを推進し、CO排出削減を図る。

小売事業においては、経済性・環境性を総合的に評価した最適な電力調達を実現し、2030年度のCO排出量目標の達成を目指す。

 


※1 CCS(Carbon dioxide Capture and Storage): CO回収・貯留技術。

※2 SPT(Sustainability Performance Target):「中国電力株式会社サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」において

   設定した目標。

※3 CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):分離・貯留したCOの利用。

※4 安全対策工事に関わる投資額。

※5 送配電事業における総投資額。

 

(注1)CO排出削減効果は、自社発電の排出削減量として試算。

(注2)経済的及び技術的側面などから多角的に検討を進め、その結果により見直す可能性がある。

 

 

(3)人的資本

① ガバナンス・戦略

  当社グループは、取り巻く環境変化に柔軟かつ迅速に対応し、持続的な企業価値向上を果たしていくため、「経営戦略をいかに実現するか」という観点から、“人”に関する様々なマネジメントに取り組んでいる。

  こうした取り組みを時々の情勢、課題に応じて不断に見直すとともに、日々の取り組みを通じて、ありたい姿を見据えた企業文化の醸成につなげるべく、“人”に関する中長期的な「方針」とその進捗をモニタリングする「指標」を設定し、内部の議論及び外部との対話を通じて継続的にマネジメントの改善を図る一連のサイクルとして「人材マネジメントサイクル」の確立を目指している。

 

<人材マネジメントサイクルの全体イメージ>


  このサイクルのうち、内部の議論については、中期経営計画において定期的に、また必要に応じて、人材マネジメントの領域に属する採用、異動配置、評価、育成、報酬、働き方、安全・健康などの方針、指標及び具体的施策を経営会議・取締役会に付議しており、労働組合との意見交換も行っている。

また、取締役(社外取締役及び監査等委員である取締役を除く。)の賞与の一部に、従業員エンゲージメント、課長以上女性比率・副長クラス以上女性比率の達成状況を反映している。

  “人”に関する取り組みは息の長いものとなるが、ありたい姿をしっかりと見据え、改善を重ねながら持続的な企業価値向上に挑戦していく。以下、人的資本に関する方針、取り組みについて記載している。その進捗をモニタリングする人材マネジメント指標については「③ 指標及び目標」に記載している。

 

 

 

a.多様な人材の活躍推進

当社グループは、当社グループの経営理念「信頼。創造。成長。」のなかでも「創造。」、つまり、変化に対応し新たな価値を創造する担い手となるのは“人”であるという認識のもと、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関するグループ全体の包括的な方針として、「多様な人材の活躍推進方針」を策定している。


この方針のもと、グループ一体となって多様な人材が活躍できる更なる環境づくりに取り組んでいくこととしており、当社及びグループ会社は、それぞれの経営事情や事業特性等に応じて自律的・主体的に必要な施策を実施していく。以下、当社における現在の主な取り組みを記載している。

 

(a)「自律性」と「多様性」の更なる推進

ⅰ.一人ひとりの成長意欲をベースにした人材育成

社員は、中長期的にありたい姿やチャレンジしたい仕事などの成長目標及びこれを実現するために主体的に取り組むべきことを申告し、管理職は、その内容を参考にして育成計画を策定している。その育成計画をもとに、社員の成長に資する業務付与を行うとともに、日常の仕事を通じたOJT、階層別や応募型のOff-JTも効果的に組み合わせて育成を図っている。加えて、各人の意欲に応じて自律的にキャリア形成できる環境を整備する観点から、従来の社内公募制度を拡充した社内兼業の仕組みを設けている。

このほか、オンライン動画学習を導入し、階層別研修のカリキュラム内容に応じて利用するとともに、OJTや自己啓発支援などにも活用している。また、自律的な知識・スキル習得の促進を図るため、資格試験に合格した者に祝金を贈与しており、2025年度からは対象資格を拡大するとともに贈与金額を増額している。

 

 

ⅱ.多様な働き方の推進

多様な働き方の実現に向けて、フレックスタイム勤務制度や在宅勤務制度、生活上の様々なニーズに対応するための当社独自の休務制度など、働き方の選択肢の充実を図っている。

また、育児・介護のための休職制度や短時間勤務制度、育児・介護施設等の利用に要する費用の補助など、仕事と家庭の両立支援制度を整備するとともに、男女ともに仕事と家庭を両立できる職場風土を醸成するよう、中期経営計画において男性育児休職取得の向上に関する目標を設定のうえ、男性の育児参加を推進している。

 

<多様な働き方の実現及び仕事と家庭の両立支援のための主な制度・取り組み>

在宅勤務

自宅等で業務を行うことが可能

フレックスタイム勤務

始業7時~11時、終業14時~21時の間で選択可能

時間単位の年次有給休暇

年次有給休暇を1時間単位で取得可能

ライフサポート休暇 (注)

育児、介護、不妊治療、ボランティア、自己啓発などに
利用可能

配偶者同行休職

配偶者の転勤等に同行するため1回につき3年まで休職可能

育児短時間勤務

勤務時間を最大2時間短縮可能
対象となる子の年齢は小学3年生の年度末まで

介護短時間勤務

勤務時間を最大2時間短縮可能

業務と育児・介護・治療の両立支援措置

福利厚生制度として育児・介護及び不妊治療関連の費用を補助

 

(注)入社から退職までの期間における生活上の様々なニーズ(育児・ボランティア・自己啓発等)へ弾力的かつ幅広く対応するために設けた休暇制度。

 

ⅲ.女性社員の活躍推進

中期経営計画において女性管理職の増加に関する目標を設定のうえ、課長以上ポストに就く女性社員の増加及びそのすそ野の拡大を図っている。適性や育成計画に基づく幅広い業務付与により能力発揮を促すとともに、研修会などを通じて、管理職や女性社員の意識改革に取り組んでいる。

これまでの取り組みにより女性管理職は着実に増加しているが、性別に関係なく誰もが活躍できる企業であることをありたい姿として、そのために目指すべきは、「各職階の男女比が社員の男女比と等しく、男女ともに仕事とプライベートを両立しており、男女間の賃金差異が解消された状態」と定義のうえ、女性社員のより一層の活躍の推進を中長期的に図っていくこととしている。

 

(b)個人と組織の「関係性」向上

ⅰ.組織文化に関する指標の把握

多様な人材の活躍に向けて社員個々の力を最大限に引き出すため、社員の主観(個人の思い)を定量化した「従業員エンゲージメント」や「心理的安全性」などの組織文化に関する指標を、全社員を対象とした自己申告制度において毎年調査している。その申告内容は上司と部下のコミュニケーションの材料としても活用している。

 

ⅱ.管理職のマネジメント支援

組織運営の鍵を握る管理職のためのマネジメント支援情報を継続的に発信するとともに、従業員エンゲージメントの向上に向け、組織文化に関する指標のマネジメントへの活かし方を示したハンドブックを全管理職へ配布している。また、マネージャー・課長クラスを対象にした「リーダーのための心理的安全性研修」や副長クラスを対象にした「リーダーシップトレーニング研修」を実施している。

 

(c)人材(量・質)の確保と成長

中長期的な視点から人員構成の変化を予測し、安定的かつ継続的な採用者数の確保や離職者数の抑制等、適材適所の人材配置に取り組むとともに、事業状況や成長領域への事業展開を踏まえつつ、他企業経験者や高度な専門能力を有する人材など多様な価値観・経験を有する人材の採用にも計画的かつ積極的に取り組んでいる。また、結婚、育児、介護、配偶者の転勤や、転職等のキャリアアップにより当社を自己都合退職した者を対象に、時期を問わず募集・再雇用する「おかえリターン制度」を設け、柔軟かつ効率的な人材の確保にも取り組んでいる。

 

 
b.人権の尊重

当社グループは、すべての人々の人権を尊重することを事業活動の根底におき、いかなる差別も行わず、人権が真に尊重される社会の実現に向けて取り組むことを企業行動憲章に掲げる行動原則の一つとして明示している。その具体的行動指針として、当社グループの全役員及び全従業員が人権尊重の考え方を共有し、実践していくため、「中国電力グループ人権方針」を策定している。


 

これまでも、同和問題やハラスメントなどの人権問題についての認識を深め、人権問題の解決に向けた行動につながるよう、当社においては、全社員対象の職場研修をはじめ、新入社員・新任ライン長など階層別の研修を毎年計画・実施するなど、人権啓発に取り組んでいる。

「中国電力グループ人権方針」のもと、事業活動の中で社会から求められている人権尊重の考え方を深く理解し、当社にとって特に重要な人権への負の影響を特定して人権デュー・ディリジェンスを実践し、人権に関する課題に真摯に向き合い、人権の尊重に留意して業務に取り組むことで、人権が真に尊重される職場や社会の実現に努めている。

 

 
c. 安全と健康の推進

当社グループは、事業活動の基盤となる安全と心身の健康を確保することを最優先し、労働災害の防止、健康の保持増進に取り組むことを企業行動憲章に掲げる行動原則の一つとして明示している。

当社においては、安全管理や健康経営に関わる諸施策を推進していくための「安全健康推進業務運営方針」を毎年定めている。この方針のもと、当社グループに関わる全ての人がお互いを尊重し、安全と健康を気づかいあう職場風土づくりを推進するための施策を展開している。以下、当社における現在の主な取り組みを記載している。

 

(a)災害ゼロの追求

災害ゼロを目指して、社員一人ひとりの安全意識の高揚と安全行動の習慣化に向けて取り組んでいる。

 

<主な取り組み>

・作業時等の安全確保を目的としたDXの推進

・危険予知活動及びリスクアセスメントによる先取り安全の徹底

・当社と工事受注者が工事施工に伴う安全確保の協力体制を確立し、一体となって災害の防止を図ることを目的に請負工事安全対策協議会を設置・運営

 

(b)心とからだの健康づくり

社員一人ひとりの健康の保持増進が生産性の向上や活力ある職場づくりにつながるという考えのもと、健康経営を推進している。

 

<主な取り組み>

・産業保健スタッフによる健康指導や健康教育の実施

・健康保険組合とのコラボヘルスによる健康イベント(ウォーキングラリー、体重測定チャレンジ等)の

  実施

・ストレスチェック結果を活用した職場環境改善活動とメンタルヘルス不調の未然防止

・メンタルヘルス不調者への適切な対応と円滑な職場復帰に向けた支援

 

② リスク管理

全社リスク管理体制のもと、多様な人材の活躍推進、人権の尊重、安全と健康の推進に関するリスクの洗い出し、評価、対応策の検討を行い、経営計画等に反映して継続的にリスク管理を実践している。

また、業績等に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクについては、「3 事業等のリスク」に記載している。

 

③ 指標及び目標

上記「① ガバナンス・戦略」において記載した「多様な人材の活躍推進方針」「中国電力グループ人権方針」に関し、「女性管理職の増加」「男性育児休職取得の向上」「人権啓発活動の実践継続」という3つの共通テーマに沿った指標及び目標をグループ各社が設定し、そのすべてを達成することを中期経営計画における目標としている。具体的には、当社及び連結子会社13社(注1)の計14社を対象として上記3つの共通テーマそれぞれについて「目標達成企業割合100%」を目標としている。

2024年度末時点では一部未達企業があるものの、引き続きグループ一体となって2025年度末の達成を目指す。

 

方針

共通テーマ

(グループ全体)

2025年度目標

2024年度実績

多様な人材の活躍推進方針

女性管理職の増加

目標達成

企業割合

100%

78.6%(11社/14社)

男性育児休職取得の向上

92.3%(12社/13社)(注)2

中国電力グループ人権方針

人権啓発活動の実践継続

92.9%(13社/14社)

 

(注)1 著しく社員数の少ない一部の連結子会社を除く。

   2 取得対象者がいなかった1社を除いて集計している。

 

中期経営計画における当社の指標及び目標並びに当社の人材マネジメント指標については、以下のとおり。

a.中期経営計画における当社の指標及び目標

方針

共通テーマ

(グループ全体)

当社の指標

2025年度目標

2024年度実績

多様な人材の

活躍推進方針

女性管理職の増加

課長以上ポストに就く者に占める女性社員の割合
(注)1

5%以上

4.2%

副長クラス以上に占める女性社員の割合
(注)2

13%以上

12.0%

男性育児休職取得の向上

男性育児休職取得率
(注)3

100%

(注)4

70.0%

中国電力グループ人権方針

人権啓発活動の実践継続

職場人権研修受講率

100%

100%

 

(注)1 「5 従業員の状況(4)提出会社及び連結子会社における管理職に占める女性労働者の割合等」に記載の

         「管理職に占める女性労働者の割合」と同じ。

      2 「副長クラス以上」とは、係長級以上ポストに就くことができる者を指す。

      3 「5 従業員の状況(4)提出会社及び連結子会社における管理職に占める女性労働者の割合等」に記載の

         「男性労働者の育児休業取得率」と同じ。

      4  直近の男性育児休職取得実績等を踏まえ、従前は「50%以上」としていた2025年度目標を上方修正した。

 

b.当社の人材マネジメント指標

項目

当社の指標

実績

備考

2022年度

2023年度

2024年度

「自律性」と「多様性」の更なる推進

課長以上ポストに就く者に
占める女性社員の割合

3.4%

3.8%

4.2%

2024年度実績は上表a.の再掲

部長ポストに就く者に
占める女性社員の割合

1.9%

1.9%

1.9%

 

副長クラス以上に占める
女性社員の割合

10.0%

10.9%

12.0%

2024年度実績は上表a.の再掲

技術系女性社員数

55人

63人

65

 

男性育児休職取得率

40.0%

52.0%

70.0%

2024年度実績は上表a.の再掲

男性育児休職平均取得日数

74日

52日

66

 

小学生以下の子を育てる社員の所定外労働時間(平均)

28.0時間/月

27.8時間/月

27.7時間/月

 

労働者の男女の賃金の差異

全労働者

69.8%

70.7%

70.9%

 

正規雇用労働者

70.6%

71.4%

71.7%

 

非正規雇用労働者

48.1%

51.8%

49.7%

 

障がい者雇用率(注)1

2.61%

2.64%

2.81%

 

人材ビジョン
実践度(注)2

78.7%

81.9%

・年1回、4月に全社員を対象とした自己申告制度において調査(2023年度から実施)。有効回答率は93.4%。

・指標は肯定回答者の割合

(肯定回答者数/有効回答者数)

・各設問の回答を5~1点にスコア化し、一設問あたり4点以上の者を肯定回答者として集計。

個人と組織の「関係性」

向上

従業員
エンゲージメント

42.9%

45.2%

心理的安全性

68.3%

69.4%

働きやすさ実感度

82.8%

84.3%

人材

(量・質)の確保と成長

経験者採用の社員数(注)3

61人

79人

112

 

離職率(注)4

0.92%

1.64%

1.13%

 

入社3年後定着率(新卒)(注)3

94.1%

2020年度入社

95.0%

2021年度入社

94.7%

2022年度入社

 

 

 

 

項目

当社の指標

実績

備考

2022年度

2023年度

2024年度

人権の尊重

職場人権研修受講率

99.8%

100%

100%

2024年度実績は上表a.の再掲

安全と健康の

推進

災害度数率(注)5

0.00

1.00

0.29

 

疾病休務率(注)5
(アブセンティーイズム)

0.95%

1.14%

1.09%

 

要指導者率(注)6
(プレゼンティーイズム)

1.57%

1.28%

1.28%

 

高ストレス者率

6.6%

6.8%

6.9%

 

総合健康リスク(注)7

73.5

74.2

73.9

 

 

(注)1 特例子会社及び関係会社特例認定を受けた会社を含めた雇用率。

   2 当社は、変化の時代に求められる人材像を「人材ビジョン」として掲げて認識を共有している。

   3 病院医療職を除く。

   4 当該年度中の自己都合による退職者数/当該年度首在籍者数。病院医療職を除く。

     5 新型コロナウイルス感染症り患による労働災害を除く。

     6 要指導者とは、健康上の理由で就労上の制限等が必要な者。

   7 全国平均を100とした職場の健康問題のリスクの指標(100より低いほど良好な状態)。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社のリスク管理体制

当社では、リスク管理に対する基本的な考え方を示した「リスク管理基本方針」及び「リスク管理規程」に基づき全社リスク管理体制を整備し、必要な対策を実施している。また、全社及び各グループ企業のリスクを統合し、経営会議の協議を経て優先的に監視するリスクを決定し、取締役会に報告している。

具体的には、各業務主管部門(1線)がリスクを把握・評価し、所定の手続きを経たうえで対応策を策定・実施するとともに、個別の重要なリスクの管理状況については取締役の職務執行状況報告を通じて取締役会に報告している。

コンプライアンス推進部門(2線)は、各業務主管部門が実施するリスク対応策について、全社的な調整、体制整備を行うなど、リスク管理業務を総括するとともに、管理状況をモニタリングしている。

内部監査部門(3線)は、各業務主管部門においてリスクを管理するための内部統制が有効に機能していることを確認・評価している。

また、グループ企業においても、各社の状況に応じた取り組みを実施するとともに、当社は各社のリスク管理状況を把握し、必要な支援を行うことでグループ全体でのリスク管理を推進している。

さらに、当社では、危機管理の体制及びその運営に関する基本事項を定めた「危機管理規程」に基づき、「リスク戦略会議」において当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼし、かつ緊急的・全社的な対応を必要とするリスクへの対応に関する事項を協議し、対応方針を指示するほか、必要に応じ「緊急対策本部」を設置し、具体的な施策等を検討・実施することとしている。

 

リスク管理体制図

 


 

事業等のリスク

以下では、当社グループの事業その他に関するリスクについて、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を業績等への影響度の高い順に記載している。当社グループは、グループ経営ビジョンの実現に向けて、これらのリスクの発生の可能性を認識したうえで、発生の回避や発生した場合の影響の低減に努めていく。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

 (1) 原子力関連リスク

  ① 原子力発電

 

リスクの内容

及び影響

当社は、福島第一原子力発電所において発生した事故を踏まえ、地震・津波対策、外部電源の信頼性確保、フィルタ付ベント設備の設置といったシビアアクシデント対策等、2013年7月に施行された新規制基準への適合はもちろんのこと、更なる安全性を不断に追求しているところ、原子力に関する政策変更や法規制・基準の見直し、新規制基準適合性審査の状況、トラブルや工事の輻輳化等による工期延長、従来から係争中の島根2・3号機の運転差止訴訟に対する司法判断等によっては、発電所の運転停止や運転開始時期の遅延が長期化し、代替火力燃料・電力の市場調達に係る費用の増加、温室効果ガス排出に係る対応費用の発生により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社としては、新規制基準適合性審査の先行実績や規制動向を注視し、当社の原子力発電所の安全対策に、計画的かつ適切に取り組んでいく。

 

 

  ② 原子燃料サイクル・原子力バックエンド事業

 

リスクの内容

及び影響

原子燃料サイクル・原子力バックエンド事業は、超長期の事業であり不確実性を有していることを踏まえ、使用済燃料の再処理及び廃炉に要する費用については使用済燃料再処理・廃炉推進機構に拠出する制度が、また、特定放射性廃棄物最終処分に要する費用については原子力発電環境整備機構に拠出する制度が、それぞれ国により措置されており、事業者のリスクが軽減されている。しかしながら、今後の制度の見直し、拠出金額の変動や再処理工場の稼働状況等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社としては、これらの制度に基づき適切に対応するとともに、再処理事業者である日本原燃株式会社等の関係先と連携し、本事業の着実な実施に取り組んでいく。

 

 

 

 (2) 調達リスク

  ① 資機材調達

 

リスクの内容

及び影響

新たな感染症の流行、天災地変及び海外紛争等による原材料・資機材の需給ひっ迫に伴う価格高騰や長納期化により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループとしては、調達環境に応じた発注方式の採用、取引先への早期の発注情報の提供や早期発注、調達から修理への振替等により、リスクの低減に努めている。

 

 

 

 

  ② 資金調達

 

リスクの内容

及び影響

当社グループは、事業活動のための設備投資等に伴う長期・継続的な資金調達を必要としているが、世界経済の動向等による金融市場の変動、当社の財務状況の悪化による格付の低下、カーボンニュートラルをはじめとしたESG全般への取り組みの遅れ及び不適切事案の発生等が資金調達の安定性に影響を及ぼす可能性がある。当社は、資金調達を社債発行及び銀行等の金融機関からの借入に依存しており、これらのリスクの発現により安定した資金調達が困難になる可能性がある。

金利変動リスクについて、2025年3月末時点で、当社グループの有利子負債残高は3兆1,813億円であり、その多くは固定金利で調達しているが、一部は変動金利で調達しており、市場金利変動によって支払利息が変動する可能性がある。

対応策

当社としては、中長期にわたり安定的かつ持続的な資金調達を重視し、2023年4月より導入したサステナブルファイナンスフレームワークの活用等、金融機関・投資家への積極的な情報開示を通じて、建設的な対話に取り組んでいる。資金調達手法の多様化・取引先金融機関の拡大に向けて、当社グループのカーボンニュートラルをはじめとしたESG全般の取り組みに対する理解促進を図るとともに、格付の維持に努め、金融機関・投資家等から安定的に支援していただけるよう、関係構築・強化に努めていく。

金利変動リスクについては、金利環境を勘案の上、定期的にモニタリングを行っている。また、資本コストを意識した経営を通じて、事業の収益性向上を図っていく。

 

 

 

 (3) 市場変動リスク

 

リスクの内容

及び影響

燃料価格や外国為替相場の変動は、「燃料費調整制度」により電気料金に反映され、業績への影響は緩和される。ただし、燃料価格の変動が電気料金に反映されるまでにタイムラグ(期ずれ)があること、燃料費調整の前提とした電源構成と実際の電源構成との間に差異が生じうること、一部のお客さまには燃料費調整の上限価格が設定されていることなどにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。また、卸電力市場価格の変動は、当社の卸電力取引所における電源調達費用や「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」における回避可能費用に影響を与える可能性があり、これらにより当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社は、原子力発電の稼働による電源構成に占める火力発電及び卸電力調達の割合の低減並びにデリバティブ取引等の金融手法の活用に取り組むとともに、高圧以上のお客さまに導入している「市場価格調整制度」について、卸電力取引所の市場価格に連動して算定される回避可能費用に加えて同市場からの電源調達に係る市場価格の変動を電気料金に反映する制度に見直しており、燃料価格、外国為替相場及び卸市場価格の変動リスクの低減に努めている。

 

 

 

 (4) 市場競争リスク

 

リスクの内容

及び影響

市況の変動や電気事業制度の変更等に伴い、小売電気事業における他事業者との競争環境が変化することにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループとしては、家庭用から事業用まで電化や脱炭素化をはじめとした多様なニーズに対し、付加価値の高いサービスを提供し、お客さまに引き続き選択していただけるよう取り組んでいく。また、販売方針・戦略の策定や電源調達の最適化、新たな料金・サービスの拡充等について検討し、中国地域内外での販売電力量・売上高を拡大することにより、電力販売利益の最大化を図る。

 

 

 

 (5) 国内電気事業以外の事業に関するリスク

 

リスクの内容

及び影響

当社グループは、グループ経営ビジョンに掲げる利益・財務目標の達成に向け、海外事業、情報通信事業などの国内電気事業以外の事業に取り組んでいる。海外事業におけるカントリーリスクの顕在化や脱炭素化の急速な進展に伴う環境・エネルギー関連の政策変更等の外部環境変化のほか、各事業を取り巻く環境変化による業績悪化が生じた場合や、投資額に見合うリターンを得られない場合に、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

海外事業における新規案件の投資決定にあたっては、事業主管箇所においてあらかじめ定めた基準に基づき評価を行うとともに、投資評価箇所による評価及び経営層への報告の仕組みを通じて、リスク管理を徹底している。また、出資済案件については、出資先の取締役会・株主総会を通じて経営管理を行うことにより、リスク低減に取り組んでいる。

その他の事業についても、業績の状況等を定期的にモニタリングしており、業績悪化の兆候が見られる場合は必要な対策を実施している。

 

 

 

 (6) 災害リスク

 

リスクの内容

及び影響

電気事業を中核事業とする当社グループは、電力供給設備及び業務システム等の多くの設備を保有しており、大規模な地震及び台風等の激甚災害、テロ等の不法行為、感染症、その他の理由によるトラブルの発生により、これら設備への被害又は操業への支障が生じる可能性がある。その結果として、設備の復旧や代替火力燃料・電力の市場調達等に係る費用の増加、停電の長期化等による社会的信用の低下等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループとしては、国の法令等に準拠した電力設備設計や計画的な修繕、従業員の災害予防、災害応急対策及び災害復旧を図るための防災等に係る各種業務計画の策定並びに事業継続のための体制整備について、国の審議会の検討結果等も踏まえ適切に対応している。

 

 

 

 (7) 電力規制リスク

 

リスクの内容

及び影響

電気事業に係る法令やガイドライン等の変更により、相対的な競争力の低下や、卸電力取引市場・容量市場等からの収益の変動等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループとしては、こうした制度変更等の動向及び事業への影響を把握し、必要な対応を行うことで利益最大化に取り組んでいく。

 

 

 

 (8) コンプライアンスに関するリスク

 

リスクの内容

及び影響

当社グループは、あらゆる業務運営においてコンプライアンス最優先に進めることを経営の基本とし、コンプライアンス徹底に取り組んでいる。

コンプライアンスに反する行為に対しては、速やかな是正措置をとることとしているが、法令違反等の重大なコンプライアンス違反事案が発生した場合には、当社グループへの社会的信用の低下や円滑な業務運営への支障が生じることなどにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

なお、2023年1月以降に発生した一連の不適切事案(独占禁止法違反疑い事案、景品表示法違反事案、卸電力市場高値入札事案、新電力お客さま情報の不適切な取扱い事案及び再生可能エネルギー業務管理システム不正閲覧事案)については、それぞれの再発防止策に継続的に取り組んでおり、独占禁止法違反疑い事案については2024年9月に、新電力お客さま情報の不適切な取扱い事案については同年8月に電力・ガス取引監視等委員会による集中改善期間がそれぞれ終了している。

一方、独占禁止法違反疑い事案に関して、当社は2023年3月30日、公正取引委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令を受け、これを履行したが、同年9月28日、公正取引委員会の各命令は承服しがたいものとして、各命令の全部の取消を求める訴訟を東京地方裁判所に提起し、現在係争中である。訴訟の結果によっては、今後お客さまから損害賠償請求を受けるなどにより、当社の業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社としては、コンプライアンス経営推進宣言における3つの行動「良識に照らします」、「率直に話します」、「積極的に正します」や2024年4月に見直したエネルギアグループ企業行動憲章を踏まえ、役員の率先垂範のもと、コンプライアンス最優先の業務運営の徹底に取り組んでいく。一連の不適切事案については、それぞれの再発防止策を着実に実施するとともに、不適切事案に通ずる役員・社員の思考・行動様式の変革に引き続き取り組むことで、信頼回復に努める。また、同憲章にも掲げる「コンプライアンス経営の推進」に基づき、グループ企業におけるコンプライアンス最優先の業務運営を支援・指導し、当社グループは、社会の一員としての責任を果たしていく。

 

 

 

 

 (9) 人材に関するリスク

 

リスクの内容

及び影響

グループ経営ビジョンを実現し、当社グループが持続的に成長していくためには、その担い手である社員一人ひとりの活躍が不可欠である。エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化や更なる成長に向けた新たな事業への挑戦等に必要な人材の確保・育成ができなかった場合、若しくは多数の人材が流出した場合には、事業の成長や円滑な業務運営に支障が生じ、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループとしては、中長期的な視点から人員構成の変化を予測し、安定的かつ継続的な採用者数の確保や離職者数の抑制、適材適所の人材配置に取り組むとともに、キャリア採用を積極的に実施することで多様な価値観・経験を有する人材の確保・活用を推進している。人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関するグループ全体の包括的な方針として策定した「多様な人材の活躍推進方針」のもと、グループ一体となって多様な人材が活躍できる更なる環境づくりに取り組んでいく。

 

 

 

 (10) 環境規制リスク

 

リスクの内容

及び影響

国は、2050年カーボンニュートラルの実現と経済成長の両立に向けて、2026年度から排出量取引制度を本格稼働(一定の排出規模以上の企業の参加義務化、国が策定した指針と整合する目標設定 等)し、2033年度には発電事業者への有償オークションを導入、また、2028年度から化石燃料賦課金を導入するなど、段階的にカーボンプライシングを導入する計画であり、こうした環境規制に係る制度により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループは、2023年4月、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」を公表した。目標として、小売事業・発電事業ともに、2030年度CO2排出量半減(2013年度比)等を設定し、重点施策として掲げた、再生可能エネルギーの導入拡大、安全確保を大前提とした原子力発電の活用、火力発電のトランジション(バイオマス発電、水素・アンモニア発電、CCUS等)、ネットワーク設備の高度化及び「お客さま・地域の脱炭素化」に資するサービスの開発と事業展開に着実に取り組んでいく。

また、当社は、経済産業省が主導で設立した自主的な取り組みである「GXリーグ」に参画し、温室効果ガスの排出削減を着実に進めるとともに、お客さまや取引先と協働し、持続的な社会の実現に向けて挑戦していく。

 

 

 

 (11) サイバー攻撃、システム障害リスク

 

リスクの内容

及び影響

サイバー攻撃やシステム障害による機密性の高い内部情報等の流出、業務の停滞及びサービス停止が発生した場合の社会的信用の低下や事後対応費用の発生等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループとしては、社外のサイバーテロ演習等への参加、標的型攻撃メール訓練等の情報セキュリティ対策を実施するとともに、サイバー攻撃を早期に検出し対応するための対策を継続的に実施し、また、計画的な設備更新など、システム障害の未然防止に取り組みつつ、システム障害が発生した場合に速やかな初動・復旧体制の整備等を行うことにより、万一の事態に備えている。

 

 

 (12) 情報漏えいリスク

 

リスクの内容

及び影響

当社グループは、電気事業におけるお客さまの情報をはじめとして、多くの業務情報を保有している。これらの業務情報が外部に漏えいした場合、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社としては、管理体制を構築するとともに、情報管理基本方針及び個人情報保護方針等の社内ルールの整備及び定期的な教育・訓練の実施により、業務情報の漏えいの未然防止に取り組んでいる。また、技術的セキュリティ対策の継続的な見直し等により、厳重に業務情報の管理を行っている。

 

 

 

 (13) 人権侵害リスク

 

リスクの内容

及び影響

当社グループ及び燃料の調達や発電事業への出資参画などのサプライチェーンにおいて、ハラスメント、重大災害、同和問題等の差別、強制労働・児童労働、性的マイノリティへの差別等の人権侵害が発生した場合、人々の生命や健康、尊厳が脅かされるとともに、当社グループは社会的信用を失墜し、訴訟、顧客流出、投資抑制、株価下落などにより業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループは、従来様々な啓発活動に取り組んできたが、2023年度に「中国電力グループ人権方針」を策定し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の考え方に則り、「人権デュー・ディリジェンス」の実践に取り組んでいる。当社は特に影響が大きいと考えられる人権への負の影響としての人権侵害リスクを特定し、教育啓発活動やサプライチェーンへの働きかけなどを通じ、負の影響の防止・軽減などに取り組んでおり、グループ全体での取り組み拡大に向けて、継続的に推進していく。

 

 

 

 (14) DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応遅延によるリスク

 

リスクの内容

及び影響

デジタル技術の活用による生産性向上や新たな価値創造に国内外の企業が精力的に取り組んでいる中、当社グループにおいて業務のデジタル化やデータ利活用が進まない場合、市場の変化に即応した商品・サービスの開発・提供や既存事業の労働生産性向上・コスト削減等の対応が後手に回り、競争力の低下を招くことで、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

対応策

当社グループとしては、グループ経営ビジョン実現に向けた抜本的な生産性向上及び新たな価値創出を進めていくため、業務のデジタル化・データ利活用による事業・業務の変革に部門横断的に取り組むとともに、これを支えるセキュアで迅速性・拡張性の高いIT環境の構築を計画的に進めている。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。

 

 (1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いているが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性がある。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

 (2) 経営成績

 ① 事業全体

当連結会計年度におけるわが国の経済情勢をみると、堅調な企業業績を背景に、設備投資が拡大し雇用・所得環境が改善するなど、景気は緩やかに回復した。ただし、物価上昇の影響により個人消費は力強さを欠いたほか、年度末にかけては米国の関税政策による影響等から景気の不透明感が高まった。中国地域においても、ほぼ全国と同様の状況で推移した。

このような中で、当連結会計年度の経営成績については、売上高(営業収益)は、燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などにより、1兆5,292億円と前連結会計年度に比べ995億円の減収となった。

営業利益は、島根原子力発電所2号機の再稼働による収支改善などはあったが、燃料費調整制度の期ずれ差益の縮小及び総販売電力量の減少に加え、送配電事業の減益などにより、1,291億円と前連結会計年度に比べ776億円の減益となった。

支払利息などの営業外損益を加えた経常利益は1,285億円と前連結会計年度に比べ655億円の減益となった。

特別損益を計上して、法人税などを控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は984億円と前連結会計年度に比べ350億円の減益となった。

 

区分

前連結会計年度
(億円)

当連結会計年度
(億円)

差引
(億円)

増減率
(%)

売上高(営業収益)

16,287

15,292

△995

△6.1

経常利益

1,940

1,285

△655

△33.8

親会社株主に帰属する

当期純利益

1,335

984

△350

△26.2

(参考) 営業利益

2,067

1,291

△776

△37.5

 

 

(参考)中国電力個別決算

区分

前事業年度
(億円)

当事業年度
(億円)

差引
(億円)

増減率
(%)

売上高(営業収益)

14,481

13,422

△1,058

△7.3

経常利益

1,456

952

△503

△34.6

当期純利益

1,120

829

△291

△26.0

(参考)営業利益

1,358

839

△518

△38.2

 

 

② 生産、受注及び販売の実績

当社及び連結子会社の業種は広範囲かつ多種多様であり、また、当社の電気事業が事業の大半を占めることから、当社の電気事業の販売実績、発受電実績及び資材の状況を記載している。

 

a.販売実績

種別

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)

前年同期比

(%)

総販売電力量
(百万kWh)

小売販売電力量

電灯

15,048

15,529

103.2

電力

29,557

26,192

88.6

他社販売電力量

8,018

10,024

125.0

52,623

51,745

98.3

料金収入
(百万円)

電灯料

368,407

391,268

106.2

電力料

691,263

558,797

80.8

他社販売電力料

137,056

140,986

102.9

1,196,727

1,091,051

91.2

 

(注)1 小売販売電力量には、自社用を含んでいない。

2 他社販売電力量には、インバランス・調整電源等に係る他社販売電力量を含んでいない。

3 他社販売電力料には、インバランス・調整電源等に係る他社販売電力料、容量確保契約金額等を含んでいない。

4 電灯料及び電力料には、「電気・ガス料金支援」により国から受領した補助金(前連結会計年度109,442百万円、当連結会計年度41,900百万円(電灯・電力計))を含んでいない。

   5 総販売電力量は、四捨五入の関係で合計と一致しない場合がある。

 

b.発受電実績

種別

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)

前年同期比

(%)

発受電
電力量
(百万kWh)

自社

水力発電電力量

3,379

3,592

106.3

火力発電電力量

28,249

24,947

88.3

原子力発電電力量

1,980

新エネルギー等
発電電力量

49

109

221.6

他社受電電力量

26,493

26,486

100.0

揚水発電所の揚水用電力量

△1,153

△1,385

120.1

合計

57,018

55,729

97.7

出水率(%)

93.6

101.1

 

(注)1 他社受電電力量は、インバランス・調整電源等に係る電力量を含んでおり、当連結会計期間末日現在で把握している電力量を記載している。

    2 揚水発電所の揚水用電力量とは、貯水池運営のための揚水用に使用する電力である。

    3 当連結会計年度の出水率は、1993年度から2022年度までの30か年の年平均に対する比である。

    4 発受電電力量合計と総販売電力量の差は損失電力量等である。

    5 四捨五入の関係で合計と一致しない場合がある。

 

 

c. 資材の状況

    主要燃料の受払状況

 

品名

単位

2023年
3月末
在庫量

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

2024年
3月末
在庫量

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

2025年
3月末
在庫量

受入

払出

受入

払出

石炭

843,693

5,388,889

5,843,867

388,715

5,956,389

5,674,608

670,496

バイオマス

36,474

570,278

570,148

36,604

590,681

593,371

33,914

重油(注)

kl

117,343

401,727

431,478

87,592

90,678

101,046

77,224

LNG

130,769

1,753,100

1,764,388

119,481

1,570,922

1,492,598

197,805

 

(注)助燃用重油を含む

 

 ③ セグメント情報

 ○ 総合エネルギー事業

売上高(営業収益)は、燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などにより、1兆4,080億円と前連結会計年度に比べ1,010億円の減収となった。

営業利益は、燃料費調整制度の期ずれ差益の縮小などにより、951億円と前連結会計年度に比べ517億円の減益となった。

 

 ○ 送配電事業

売上高(営業収益)は、最終保障供給料金の減少はあるものの、市場価格上昇による再生可能エネルギー販売の増加に加えて、エリア需要の増加等による基準接続託送収益の増加などにより、5,115億円と前連結会計年度に比べ311億円の増収となった。

営業利益は、基準接続託送収益の増加はあったものの、需給調整関連費用の増加などから、252億円と前連結会計年度に比べ253億円の減益となった。

 

 ○ 情報通信事業

売上高(営業収益)は、情報関係事業収入が増加したことなどにより、494億円と前連結会計年度に比べ19億円の増収となった。

営業利益は47億円と前連結会計年度に比べ4億円の減益となった。

 

 

区分

総合エネルギー

事業
(億円)

送配電事業
(億円)

情報通信事業
(億円)

売上高

前連結会計年度

15,090

4,804

474

当連結会計年度

14,080

5,115

494

差 引

△1,010

311

19

営業費用

前連結会計年度

13,621

4,298

422

当連結会計年度

13,128

4,863

447

差 引

△493

564

24

営業利益

前連結会計年度

1,469

505

52

当連結会計年度

951

252

47

差 引

△517

△253

△4

 

 

 

 (3) 財政状態

資産は、島根原子力発電所2号機の営業運転再開による電気事業固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ2,276億円増加し、4兆3,609億円となった。

負債は、有利子負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,352億円増加し、3兆6,550億円となった。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べ924億円増加し、7,058億円となった。

この結果、自己資本比率は、16.2%となった。

 

区分

前連結会計年度末
(億円)

当連結会計年度末
(億円)

差引
(億円)

資産

41,332

43,609

2,276

 

(うち電気事業固定資産)
(うち固定資産仮勘定)
(うち流動資産)

(15,234)
(11,864)
(6,505)

(19,429)
(9,550)
(6,958)

(4,194)
(△2,314)
(452)

負債

35,198

36,550

1,352

 

(うち有利子負債)

(30,042)

(31,813)

(1,771)

純資産

6,134

7,058

924

 

(うち自己資本)

(6,048)

(7,075)

(1,026)

 

 

 (4) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

(当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況)

 ○ 営業活動によるキャッシュ・フロー

税金等調整前当期純利益の計上などにより、1,860億円の収入となった。

 ○ 投資活動によるキャッシュ・フロー

設備投資の増加などにより、前連結会計年度に比べ1,568億円増加3,588億円の支出となった。

この結果、差引フリー・キャッシュ・フローは、1,728億円のマイナスとなった。

 ○ 財務活動によるキャッシュ・フロー

社債・借入金による資金の調達を行ったことなどにより、1,611億円の収入となった

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ117億円減少し、2,866億円となった。

区分

前連結会計年度
(億円)

当連結会計年度
(億円)

差引
(億円)

○営業活動によるキャッシュ・フロー

2,713

1,860

△853

○投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,020

△3,588

△1,568

  差引フリー・キャッシュ・フロー

693

△1,728

△2,421

○財務活動によるキャッシュ・フロー

△171

1,611

1,783

 

うち社債・借入金による純増減

△214

1,779

1,994

 

うち配当金の支払額

△18

△127

△108

現金及び現金同等物(増減額)

528

△117

 

現金及び現金同等物(期末残高)

2,984

2,866

△117

 

 

 投資額が高水準であるためフリー・キャッシュ・フローは 1,728 億円のマイナスとなっている。今後も、エネルギーの安定供給、電源の脱炭素化、経営の安定化、将来の競争力強化に不可欠な島根原子力発電所3号機や柳井発電所2号系列のリプレース等へ多額の投資が必要となる。資金調達を円滑に行うため、引き続きグループを挙げて利益を創出するとともに、こうした電源の早期運転開始に向けた審査・工事の迅速化と、資材調達の合理化による総投資額削減を最優先課題として取り組み、フリー・キャッシュ・フローの黒字化を図っていく。

 

② 資本の財源

エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化や更なる成長に向けた新たな事業への挑戦などに必要な資金を、主に社債及び長期借入金により調達している。

また、グループ全体の資金を効率的に活用するため、キャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を通じてグループ内資金融通を行っており、グループ全体で必要な資金を当社が一括して調達している。

さらに、中長期的に安定的かつ低利な資金調達を実現するため、取引先金融機関の拡大やサステナブル・ファイナンスの活用、個人向け社債、外貨建社債、転換社債、ハイブリッド社債などによる調達手段・調達先の多様化に取り組んでいる。

なお、当社の発行する社債には電気事業法に基づき一般担保が付与されていたが、2025年4月1日以降に発行する社債には、一般担保は付与されない。2025年度以降に新規に発行する無担保社債について、投資家保護を重視し、既に発行済の一般担保付社債と同様に、社債管理者を設置している。

 

③ 資金の流動性

月次資金繰りに基づき十分な現金及び預金を保有するとともに、金融機関とのコミットメントライン契約や当座貸越契約などにより、不測の資金需要に備える体制をとっている。

 

 (5) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の売上高(営業収益)は、総販売電力量の減少及び燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などから、1兆5,292億円と前連結会計年度に比べ995億円の減収となった。

連結経常利益は、島根原子力発電所2号機の再稼働による収支改善などはあったが、燃料費調整制度の期ずれ差益の縮小及び総販売電力量の減少に加え、送配電事業の減益などにより、1,285億円と前連結会計年度に比べ655億円の減益となった。

2024年度は最重要課題の一つである島根原子力発電所2号機の再稼働を果たすことができた。島根原子力発電所2号機の再稼働は、電力の安定的な供給に寄与するとともに、燃料価格変動の影響を緩和できることから業績の安定化・財務基盤の強化につながる。また、カーボンニュートラルに向けても非常に重要であり、当社の経営の大きな節目となった。

当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「信頼回復」と「収益・財務基盤回復」を最重要課題として位置付けた「中国電力グループ中期経営計画(2024-2025)」で掲げる、2年間で連結経常利益1,500億円以上の確保、2025年度末の連結自己資本比率15%以上への回復を目指し取り組んでいる。

当連結会計年度において連結経常利益を1,285億円計上し、連結自己資本比率15%への回復を1年前倒しで達成できたものの、有利子負債は増加しており、著しく毀損した財務基盤の回復は未だ途上にある。

今後も将来の電力の安定供給、脱炭素化、経営の安定化に不可欠な島根原子力発電所3号機や柳井発電所2号系列のリプレース等へ多額の投資が必要となる。これらの電源の運転開始を目指す2030年頃までは資金調達を確実に行いつつ、引き続き、安全確保を大前提とした島根原子力発電所の安定稼働、電力卸・小売事業の収益力強化、経営全般にわたる効率化、市場リスクをはじめとするリスク管理の高度化に取り組むことで、グループを挙げて利益を創出し、財務基盤の回復・強化に優先的に取り組む。

 

区分

2022年度

2023年度

2024年度

連結経常利益又は
連結経常損失(△)

△1,067億円

1,940億円

1,285億円

連結自己資本比率

11.1%

14.6%

16.2%

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項なし

 

 

 

 

6 【研究開発活動】

グループ経営ビジョンにおける「エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化」、「新たな事業への挑戦」を進めていくために、研究開発として取り組む方向性を3つの「戦略的イノベーション領域」として設定し、重点的に取り組んでいる。

研究開発によるイノベーションを目指し、早期の実用化・ビジネス化に繋げていくための他業種とのアライアンス及び、大学や電力中央研究所をはじめとする研究機関等との密接な協力関係を保ちながら効率的に研究開発を進めていくなど、産学官の連携を推進している。この取り組みの一環として、当社グループが事業領域とするエネルギーや環境に関する分野などにおける最先端の技術開発に向け、国立大学法人広島大学との包括的研究協力に関する協定、多岐にわたる分野で数々の実績を誇るヨーロッパ有数の研究機関であるTNOオランダ応用科学研究機構との協業に関する覚書を締結している。

 研究開発活動とともに、グループ会社を含めて知的財産活動にも積極的に取り組んでおり、グループ経営ビジョン実現に向けて、価値創造を行ううえで重要となる当社独自の強み(コア価値)の創造・実装と知財ポートフォリオの再構築を推進している。具体的には、2022年度からコア価値創造に向けた取り組みに着手し、GX・DX及び新事業・新サービスといった重点分野の権利確保に注力している。こうした取り組みの結果、当連結会計年度における当社グループの特許出願件数は197件、同新規登録件数は172件となった。商用の検索システムで集計したデータによると、当連結会計年度末時点における当社の特許登録件数は1,924件であり、エネルギー業界トップレベルを維持している。

なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は67億円であり、うち総合エネルギー事業に係る研究開発費は56億円、総合エネルギー事業以外に係る研究開発費は11億円である。

 

(1) 戦略的イノベーション領域に関する取り組み

① デジタル技術を活用した電力システムのイノベーション

AI/IoT等のデジタル技術を活用して、電力設備の運用・保守技術の高度化に資する技術開発に取り組んでいる。発電効率の向上及び保守費用削減のため、火力発電所の取水路に付着する生物幼生の画像検出手法の開発等に取り組んでいる。また、AI活用による貯水池式水力発電所における発電計画策定の最適化について、順次開発し、実運用を開始している。

② 脱炭素化に向けたエネルギー・環境技術のイノベーション

大崎クールジェン株式会社を通じて、「CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電」の実証事業を実施し、2022年度に完了した。2023年度から2024年度にかけては、石炭と木質バイオマスの混合ガス化技術の開発に取り組み、石炭ガス化技術を用いたネガティブエミッション化の見通しを得ている。

また、カーボンリサイクルの取り組みとして、回収したCO2を活用し土木材料(通称:CO2-TriCOM)やコンクリート(通称:CO2-SUICOM)、脂質(Gas-to-Lipids)を生成する技術の開発を実施している。

さらに、石炭灰造粒物を活用した水域底質環境の改善効果、これによる干潟・藻場への炭素固定効果について実証を実施している。近年は、福山港内港や日本橋など複数の地点で石炭灰造粒物を敷設し、悪臭の解消や生物の増加の確認、また、石炭灰造粒物によるカーボンリサイクル技術のインドネシアへの展開可能性についての調査を実施した。

③ 地域・他業種と融合した新サービスの創出

地域のカーボンニュートラルに貢献するため、再生可能エネルギー、蓄電池、EV等の分散型リソースを最適に制御するエネルギーマネジメント技術の開発に取り組んでいる。

また、火力発電所において取水路に付着する生物幼生を検出する手法を応用し開発した、カキ養殖採苗を支援するアプリ「カキNavi」の事業化に向けて取り組んでいる。

その他、エネルギー関連技術や保有するビッグデータ等を活用して、健康・見守り分野、農業分野、モビリティ分野、地域レジリエンス分野において、地域課題解決に向けたサービスの開発に取り組んでいる。

 

(2) 電気事業を支える基盤技術に関する取り組み

設備信頼度の維持・向上及び修繕費の低減に資する技術開発に取り組んでいる。また、石炭火力発電所の燃料コスト低減や、揚水発電所がある貯水池の濁水発生期間の短縮に資する技術開発に取り組んでいる。

 

(3) その他

地域社会・経済の発展に貢献し、お客さまから選択し続けられるため、中国地域経済・産業動向の調査分析の実施及びエネルギア地域経済レポート等を通じた情報提供、戦略的企業経営の支援等に取り組んでいる。