文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものである。
(1) 基本方針
当社グループは、「エネルギーを中心として、人々の生活に関わる様々なサービスを高い品質で提供し続けることにより、快適・安全・安心な暮らしと地域の発展に貢献する」というグループミッションを掲げており、お客さまから最も信頼されるパートナーとして、エネルギーから情報通信、ビジネス・生活サポートまで、多様なサービスをワンストップで提供できる「マルチユーティリティー企業グループ」への変革・成長をはかっていく。
(2) 経営環境および対処すべき課題
ロシアのウクライナ侵攻を契機としたエネルギー危機の発生に伴い、これまで国内ではエネルギーセキュリティの確保と経済成長のバランスがより重視されてきたが、2030年が近づくにつれて、脱炭素の重要性を再認識する国際的な流れの影響が出始めている。また、データセンターや半導体工場の新増設等による中長期的な電力需要の増加が見込まれており、こうした状況も踏まえ、本年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画およびGX2040ビジョンにおいても、電力の安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指すという方向性が示されている。
さらには、生成AIの急速な普及や関連するデジタル技術の著しい進歩、電力の脱炭素化・高度化利用のニーズに伴い、情報通信事業のみならずエネルギー事業においても新たなビジネスチャンスが到来しつつある。
当社グループは、こうした事業環境の変化を次なる成長ステージに向けたチャンスと捉え、中核である電気事業においては、エネルギー供給を支える責任ある事業者としての安定供給はもとより、売上・コスト両面の改善による収益力の向上をはかっていく。また、海外での発電事業や国内でのエネルギーソリューションサービス、情報通信事業などを中心とする成長事業の拡大にも全力で取り組んでいく。さらに、DXの推進やESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みなどにより、企業体質の変革と価値創出の基盤強化を積極的に進めることによって、持続的な企業価値の向上を実現していく。
① 電気事業における売上・コスト両面の改善による収益力の向上
発電・販売事業においては、伊方発電所3号機をはじめとした自社電源の安全・安定運転の継続を徹底するとともに、火力発電の低炭素化・脱炭素化や再生可能エネルギーの開発拡大に向けた取り組みを着実に推進していく。また、電源調達コストを踏まえたうえで他事業者との競争環境も意識した小売料金水準の設定やお客さまニーズに応える料金メニュー・サービスの提供、卸販売における収益拡大、非化石電源を含めた電源調達の最適化、資材調達プロセスのさらなる効率化等に取り組み、売上・コスト両面の改善による収益力の向上をはかっていく。
送配電事業においては、高経年化設備の計画的な更新など、レベニューキャップ制度下において策定した事業計画を着実に遂行するとともに、より一層の効率化施策の深掘りを進めていく。
また、災害対策については、大規模自然災害への備えに終わりはないとの考えのもと、絶えず情報の収集や分析に努めるとともに、新たな知見や方策を適時適切に自らの対策に反映させるなど、万全を期していく。
② エネルギー事業・情報通信事業を中心とする成長事業の拡大
デジタル化・脱炭素化の進展を足掛かりとした新たなお客さまニーズの発掘やエネルギーソリューションサービスの推進、国際事業における再生可能エネルギーを中心とした新規優良案件への参画拡大、また、情報通信事業における既存事業の収益性の向上と新たなサービスの開発・事業化に向けた取り組みの推進など、エネルギー事業・情報通信事業を中心とする成長事業の拡大に努めていく。
さらに、建設・エンジニアリング事業における受注機会の拡大や送配電資産を活用した新たなサービスの開発を進めるとともに、地域の課題解決を起点とする事業や多様なパートナーシップを活かした事業の展開にもグループを挙げて取り組んでいく。
③ 企業体質の変革と価値創出の基盤強化
資産のスリム化や設備投資の厳選など資本効率の向上に向けた取り組みを徹底するとともに、引き続きDXを強力に推進し、ビジネスモデルや業務プロセス、組織風土などの改革や生産性向上はもとより、新規事業・新サービスの創出など新たな価値の創造にも取り組んでいく。また、電力の需給両面の取り組みによる2050年カーボンニュートラルへの挑戦や、経営戦略と連動した人材戦略に基づく人的資本経営、四国地域の活性化に資する地域共生活動やコンプライアンスの推進など、持続的な価値創出の基盤強化につながる取り組みを積極的に進めていく。
当社グループは、こうした取り組みを通じて、2025年度を最終年度とする現行の中期経営計画に掲げた経営目標の達成に全力を尽くしていく。
また、現在、2026年度以降の新たな中期経営計画の策定を進めており、ステークホルダーの方々に、今後の持続的な価値創出・拡大に向けた具体的な道筋をお示しできるよう努めていく。
(3) 経営目標
上記のような取り組みを通じて、2021年3月に策定した「よんでんグループ中期経営計画2025」で掲げた、以下の経営目標の達成を目指していく。(一部経営目標について2024年4月に見直し)
※ ROAは「事業利益(経常利益+支払利息)÷総資産(期首・期末平均)」にて算定
<サステナビリティ全般>
当社グループは、「よんでんグループ行動憲章」に則り、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)の観点も踏まえ、企業の社会的責任を果たしつつ、事業活動を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指している。
(ガバナンス)
上記の実現に向けた取り組みの実効性を高めるため、「サステナビリティ推進会議」(委員長:当社社長)を設置し、経営層による統括のもと、マテリアリティに対する取り組みや、ESG(環境・社会・ガバナンス)に係る下部委員会(委員長:社内取締役)の活動状況について協議するなど、グループ一体となって推進する体制を構築している。「サステナビリティ推進会議」には、当社および四国電力送配電(株)の社内取締役のほか、オブザーバーとして当社および四国電力送配電(株)の各内部監査部門の長、監査等委員会の長および四国電力送配電(株)の監査役ならびに社外の弁護士も出席している。また、「サステナビリティ推進会議」において審議された一連の取り組みについては、社外取締役5名を含む6名が委員を務める「監査等委員会」に報告することで、監視・監督を行っている(「監査等委員会」については、
上記取り組みのうち、気候変動問題については、上記の「サステナビリティ推進会議」に加え、「カーボンニュートラル推進委員会」(委員長:当社社長)が中心となり、当社全体の取り組みを統括・推進している。
なお、各会議体の審議の過程において、特に重要と位置づけられたものは、「取締役会」を含む上位会議体に付議し、各年度の経営計画等に反映することで、取り組みの改善・充実をはかっている(「取締役会」については、
◆サステナビリティ推進体制

マテリアリティ等の詳細については、「よんでんグループ統合報告書2024」を参照
「よんでんグループ統合報告書2024 – サステナビリティを高める取り組み - (P24~27)
- サステナビリティを高める事業経営 -(P48~73)」
(リスク管理)
当社では、リスク管理の重要性を強く認識して事業運営を進めており、リスク管理の基本的方針や行動原則などを定めた「リスク管理規程」を制定している。この規程に基づき、経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、毎年、経営陣がチェック・アンド・レビューを実施し、次年度の経営計画に反映することで、リスク管理のPDCAサイクルを繰り返し、リスクの発生防止と低減に努めている。
サステナビリティに係るリスクのうち、特に人権侵害リスクについては、事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権尊重を表明する「よんでんグループ人権方針」を定め、2024年度より取り組みの強化をはかっている。具体的には、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、人権への負の影響の特定および防止・軽減措置の実施・確認、実効性の評価を通じて、人権侵害リスクの適切な管理に努めているほか、社内外に相談窓口を設け、人権侵害に係る相談があった場合は、相談者のプライバシーを保護しつつ、その是正のための措置を講じている。また、これらの一連の取り組みについては、当社ウェブサイトに掲載している。
このほか、全社横断的なリスクについては、必要に応じて専門委員会を設置し、総合的な判断のもとで適切に対処しており、自然災害などの非常事態においても、被害の最小化と早期復旧がはかれるよう、個別の規程等を整備し、管理体制を明確化している。さらに、危機情報を速やかに集約する窓口として「危機ホットライン」を設置し、適切な情報共有や被害の最小化・早期復旧をはかるとともに、全従業員対象のe-ラーニング研修などを活用することにより、危機管理意識の徹底に努めている。
リスク管理体制の詳細については、「よんでんグループ統合報告書2024」を参照
「よんでんグループ統合報告書2024 - リスクマネジメントの推進 -(P70~71)」
人権尊重に係る取り組みについては、当社ウェブサイトを参照
<気候変動問題への対応>
(戦略)
当社グループでは、気候変動問題への対応を重要な経営課題と認識しており、一定の将来シナリオのもと、気候変動関連のリスクや機会が、当社の事業運営にどのような影響を及ぼすのか、継続的に確認・評価するとともに、その結果を踏まえ、必要な対策を立案し、実行に移している。
具体的には、国際エネルギー機関等が示すシナリオをもとに、1.5℃シナリオ、4℃シナリオを選定し、気候変動関連のリスクと機会を抽出している。そして、それらが、今後、当社事業にどのような影響を及ぼすのか、主要なものについて確認・評価したところ、主に「非化石電源の比率拡大/火力電源の規制強化」や「カーボンプライシングの導入」によるコスト増加の可能性がある一方で、「非化石電源の価値向上」や「電化の進展/低・脱炭素電力ニーズの拡大」による収支好転も期待できることを確認している。
加えて、リスクの最小化と機会の最大化をはかるために検討した対応策は、経営計画や2050年カーボンニュートラルへの挑戦(ロードマップ)などに反映し、具体的な取り組みを推進している。
◆各シナリオから抽出した主要なリスク・機会と対応策
※ 短期:~2025年、中期:~2030年、長期:~2050年
(指標および目標)
2030年度に、自社の温室効果ガスの排出量(自社発電の燃料使用等に伴う直接排出量)について2013年度比で30%削減(1,221万t→850万t)、小売部門からのCO2排出量について2013年度比で半減(1,962万t→980万t程度)という目標を掲げており、引き続き、原子力の最大活用や再生可能エネルギーの主力電源化、火力発電の高効率化などによる「電源の低炭素化・脱炭素化」と、産業・運輸部門も含めた電化の推進等の取り組みなどによる「電気エネルギーのさらなる活用」を推進することで、目標の達成を目指していく。
◆当社発電部門からのCO2排出量 ◆当社小売部門からのCO2排出量

◆サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の2023年度実績※1
※1
当社および連結子会社(排出量が僅少な企業を除く)について算定
※2 自社発電の燃料使用等に伴う直接排出量
※3 他社から購入した電気の自社事業場(オフィス)使用等に伴う間接排出量
※4 他社から調達した売電用の電気等に含まれる間接排出量
※5 2023年度は、卸市場価格の低下により、例年に比べて卸販売電力量が減少し、排出量が抑制された
当社グループでは、TCFD提言に基づく情報開示を行っており、気候変動問題への対応の詳細については、「よんでんグループ統合報告書2024」を参照。
「よんでんグループ統合報告書2024 - 気候変動問題への取り組み -(P49~53)」
なお、2024年度の削減状況については、2025年秋頃に公表予定の
<人的資本>
(戦略)
当社グループでは、「人」こそがサステナビリティ(持続的な価値創造)を推進するための最大の原動力(最大の財産)であるという考えのもと、従業員が「やりがい」や「充実感」を持って積極的かつ創造的に仕事に取り組み、持てる能力を最大限発揮できるよう、一人ひとりの人格や多様性を尊重し、価値観や経験、技術・技能を活かせる職務の付与・育成をはかるとともに、風通しの良い活力ある職場環境の整備に取り組んでいく方針としている。
この方針のもと、「よんでんグループ中期経営計画2025」に掲げる、電気事業と電気事業以外の事業を両輪に持続的な企業価値の創出を目指すとの経営戦略に連動した人材戦略として、
・電力の安定供給を支えるDNAを継承する人材
・電気事業以外の重点領域の拡大やDXを推進する人材
の自律的な成長・活躍に向けた人材マネジメント施策を推進している。
「よんでんグループ中期経営計画2025」については、当社ウェブサイトを参照
具体的には、「未来を切り拓く人材の獲得・育成」、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」、「従業員が能力を発揮できる環境づくり」を、人的資本におけるサステナビリティを高めるための重点課題として特定したうえで、以下のとおり推進している。
[重点課題1]未来を切り拓く人材の獲得・育成
・電気事業においては、電力の安定供給を支える人材を安定的に確保し、日常業務を通じた職場内教育(OJT)を中心に、階層別研修や自己啓発支援等により、若手・中堅層の早期戦力化をはかるとともに、各技術系部門が策定した実践的な教育プログラムに基づく計画的な育成を行い、技術・技能の継承に努めている。
・電気事業以外の重点領域と位置づける国際事業・新規事業等の拡大に向けては、2024年度の定時採用より、国際事業など事業開発分野の中核を担う人材として育成する「事業開発コース」を設置するとともに、キャリア採用を継続し、即戦力としての活躍が期待できる人材や高度な専門能力を有する人材の獲得を進めている。
また、社内インターン、海外派遣研修、ベンチャー企業での就業体験などを通じ、挑戦意欲のある人材の育成に取り組んでいる。さらに、DX社内ポータルサイトやe-ラーニングを活用した社員のDXリテラシーの向上を通じ、DXを推進する人材の育成に努めている。
[重点課題2]ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進
・多様な視点、経験、個性を掛け合わせることで、魅力的なアイデアやイノベーションを生み出し、新たな価値創出や社会的課題の解決を推進していくために、従業員一人ひとりが、お互いを尊重して認め合う職場風土の醸成と、個々人の状況に応じた活躍機会と最適なサポートの提供を行っている。
・具体的には、性別等の属性によらない個人の能力・適性を重視した柔軟配置、女性従業員の採用拡大やキャリア形成支援および管理職への積極的な登用、育児休業の取得促進を含めた仕事と育児・介護の両立支援制度の整備・利用促進、障がい者や高年齢層など多様な人材の積極的な活用を進めるとともに、人権尊重やハラスメント防止に取り組んでいる。
[重点課題3]従業員が能力を発揮できる環境づくり
・経営層による情報発信や現場との意見交換を通じて、従業員の声を踏まえた多様な活躍・成長機会の提供や働きやすい職場風土の醸成を目指している。
・活力ある組織風土のさらなる醸成に向けてエンゲージメント調査を実施し、各職場における改善アクションのサイクルを回すとともに、従業員の多様な価値観や生活スタイルを尊重した柔軟な働き方を可能とする制度を整備し、利用を促進するなど、 従業員が能力を発揮できる環境づくりにつなげている。
・また、災害のない安全で健康な職場づくりは、安定した企業活動を行ううえでの原点との考えのもと、労働災害の撲滅に取り組むとともに、従業員が心身ともに健やかでいきいきとした生活を送り、能力を遺憾なく発揮できるよう健康経営を推進している。
(指標および目標)
上記の重点課題に対応していくうえで特に重点的に実施している施策について、当社グループにおける主要な事業を営む当社および四国電力送配電㈱の指標および目標を以下のとおり設定している。
[目標および実績は四国電力㈱と四国電力送配電㈱の2社合計]
(注)1 社内のDX人材認定制度により、中級レベル以上(※)の認定を受けたDX人材の人数
※中級:組織のDXを推進していくために必要な知識・スキルを有する人材
上級:組織の中心となってDXをリード・マネジメントしていくための専門知識・スキルを有する人材
(注)2 係長級以上
(注)3 「特例子会社」制度の活用による、四国電力㈱・四国電力送配電㈱他、計4社の雇用率
目標値は2026年7月時点の法定雇用率
(注)4 ㈱アトラエが提供するエンゲージメントサーベイ(Wevox)を導入
(注)5 管理監督者は除く
(注)6 自己都合退職のみ
(注)7 全国平均は100であり、数値が低いほど良好
その他の施策の詳細については、「よんでんグループ統合報告書2024」を参照
「よんでんグループ統合報告書2024 - 人的資本経営の実践 -(P56~59)」
「よんでんグループ統合報告書2025」について、2025年秋頃に当社ウェブサイトにおいて公表予定
当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主なリスクには、次のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。
電気事業に係るリスク
(1) エネルギー政策や電気事業制度
① エネルギー政策や電気事業制度の変更
当社グループでは、わが国のエネルギー需給に関する基本方針等を定めた「エネルギー基本計画」を踏まえ、特定の電源・燃料に過度に依存しないバランスの良いエネルギー供給体制を構築している。また、電気事業制度の見直しに適切に対応しつつ、安定的な電力供給の維持や収益機会の拡大に取り組んでいる。
今後、エネルギー政策や電気事業制度が大幅に見直された場合、その内容次第では、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある。
② 環境規制の強化
当社グループでは、原子力や再生可能エネルギーなどのゼロエミッション電源の最大活用に加え、LNGコンバインドサイクルの導入・石炭火力のUSC(超々臨界圧機)化による火力発電設備の高効率化などを通じて温室効果ガスの削減をはかっている。
今後、脱炭素社会の実現に向けて環境規制が大幅に強化され、火力発電所の運転制約や、低・脱炭素化電源を確保するための投資の増加、カーボンプライシングによる負担の増加等により、供給コストが増大した場合には、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある。
(2) 原子力事業を取り巻く環境
① 原子力発電所に係る訴訟への対応
当社は、伊方発電所3号機に係る訴訟については、勝訴を目指し、同発電所の安全性を丁寧に主張している。
今後、現在係属中の訴訟の結果により、長期に亘り同発電所の運転停止を余儀なくされる場合、代替の火力燃料費の増加などにより、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある。
② 原子力発電所に係る基準・法令等への対応
当社グループでは、原子力規制委員会が定めた新規制基準への適合をはじめとして、原子力発電事業に係る各種法令に則り、伊方発電所を安全・安定的に運転するための取り組みを進めている。
今後、新規制基準等への適合性の確保や各種基準・法令等の変更への対応において、伊方発電所の稼働が制約を受ける場合や追加の安全対策が必要となる場合、代替の火力燃料費の増加や設備投資の増加などにより、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある。
③ 原子燃料サイクルや原子力発電所廃止への対応
原子力発電における使用済燃料の再処理や放射性廃棄物の処分など原子燃料サイクルに係る費用や、原子力発電施設の解体費用については、国が定める制度措置等により不確実性が低減されている。
今後、制度措置の見直しなどが行われる場合、将来費用の見積額の増加や、再処理施設の稼働時期の遅延等により、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある。
(3) 市場動向
① 市場競争の進展
当社グループでは、小売市場での厳しい競争に勝ち抜くため、料金・サービス両面における施策の拡充を推進するとともに、新市場を最大限に活用することにより、収益機会の拡大と供給コストの低減をはかっている。
今後、さらに競争が進展した場合、販売電力量の大幅な減少や小売・卸販売単価の下落等により、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある。
② 電力需要の変動
当社グループでは、データセンターをはじめとした企業・工場等の新規立地に向けた誘致活動や、法人分野における工場の生産プロセスの電化推進、家庭分野でのサブユーザーへ新築電化率の向上に向けた営業活動等を通じて、電力需要の拡大に取り組んでいる。
今後、人口減少や省エネ機器・分散型電源・蓄電池等の普及拡大、冷夏・暖冬など、経済・社会情勢や天候影響等により、電力需要が想定以上に低下すれば、設備の稼働率低下に伴う固定費の回収不足などにより、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある。
③ 燃料価格や為替相場の変動
当社の火力発電用燃料調達費用については、原油、石炭などの市場価格や為替相場により変動するが、長期契約や調達の多様化などを通じて、変動リスクの抑制・分散をはかっている。
今後、調達先における設備トラブルや自然災害、国際関係の緊張の高まりなどにより、燃料価格および為替相場が著しく変動した場合、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。ただし、燃料価格および為替相場の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」の適用により、業績への影響は緩和される。
(4) 設備・操業のトラブル等
当社グループでは、高品質のサービスを提供するため、設備の保守・点検を着実に実施している。また、様々
な自然災害リスクを想定し、最新の知見を反映した設備の安全性確保対策を適宜、適切に実施するとともに、自
治体、他事業者との連携強化や復旧訓練の共同実施、災害情報発信ツールの普及拡大等にも取り組んでいる。
今後、大規模な地震・津波・台風等の自然災害や設備の故障、事故等により設備の損傷や操業トラブルが発生
した場合、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
その他事業活動に係るリスク
(1) 電気事業以外の事業
当社グループでは、持続的な企業価値の創出に向けて、情報通信事業や国際事業を中心とした電気事業以外の事業について、その将来性や収益性を吟味しながら取り組むことにより、市場エリア・事業領域の拡大をはかっている。
今後、物価変動を含む内外市場環境の急速な変化や、国際関係の緊張の高まり、進出国におけるカントリーリスクの顕在化等により、個々の事業・案件の収益が当初の見込みより大幅に下回る場合などには、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
(2) コンプライアンス
当社グループでは、事業活動に関する全ての法令の遵守と、社会からの信頼と評価を得るための企業倫理の徹底をはかるため、グループ各社に「コンプライアンス推進委員会」を設置するとともに、「よんでんグループコンプライアンス推進協議会」を設置し、グループ全体でコンプライアンスを推進している。
また、電気事業法上の行為規制や独占禁止法の遵守は、自由化された現行電気事業制度の根幹をなすものと認識し、教育・研修を通じた法令に対する正しい理解の浸透と、意識改革の徹底に取り組んでいる。
こうした取り組みにも関わらず、法令違反や企業倫理に反した行為が発生した場合、当社グループへの社会的信用が低下し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
(3) 人材確保に係るリスク
当社グループでは、電力の安定供給やカーボンニュートラルをはじめとした電気事業における各種課題への対応、成長領域での事業創出・拡大に向けて、将来の人員見通しをもとに事業運営に必要な人材の確保・育成に取り組んでいる。また、人材の定着をはかる観点から、従業員一人ひとりの人格や多様性を尊重し、能力を最大限発揮できる活力ある職場環境の整備に努めている。
今後、必要な人材の確保・育成が円滑に進まない場合や多数の人材が流出した場合、持続的な事業運営に支障をきたし、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
(4) 資材調達に関するリスク
当社グループでは、原材料価格の高騰や労務費の上昇、人手不足感が続く事業環境下においても、調達価格の
上昇抑制と安定的な資材調達をはかるため、取引先と対等な立場でコミュニケーションをはかり適正転嫁に努め
つつ、仕様の見直し等の効率化や、製造・施工体制の確保に向けた取引先への働きかけ・早期発注等の調達施策
に取り組んでいる。
今後、国際的な緊張の高まり等により原材料価格が急激に上昇した場合や、人手不足によるサプライチェーン
のひっ迫等により安定的な資材調達が困難となった場合、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
(5) サイバーセキュリティ・システムトラブルに関するリスク
当社グループでは、増加・巧妙化するサイバー攻撃に対して、組織的・人的・物理的・技術的対策を講じ、情報セキュリティの維持・改善をはかっている。また、システムの信頼性・品質を確保するために、設備の多重化やデータのバックアップ・遠隔地保管や、システム開発・保守時のガバナンス確保に取り組んでいる。
こうした取り組みにも関わらず、サイバー攻撃やシステムトラブル等により重要なシステムの停止・データ損失等が発生した場合には、事業運営に支障をきたし、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
(6) 退職給付費用および債務に係るリスク
当社グループの退職給付費用および債務は、割引率など数理計算上の前提条件に基づいて算出している。
今後、金利変動に伴う割引率の変更など、数理計算上の前提条件について、大幅な見直しがある場合、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
2024年度のわが国経済は、企業の生産活動に弱めの動きもみられたものの、個人消費や設備投資が持ち直し、雇用も改善するなど、全体としては緩やかに回復した。四国の経済も、全国とほぼ同様の状況で推移した。
こうしたなか、当社グループは、伊方発電所3号機をはじめとする自社電源の安全・安定運転の継続等により電力の安定供給に努めつつ、中核である電気事業では事業基盤の強化と収益性を確保するとともに、電気事業以外の事業では情報通信事業・国際事業を中心とした成長事業の拡大をはかることなどにより、持続的な企業価値創出を進めてきた。
なお、昨年11月に四国エリアにおいて大規模停電が発生し、地域の皆さまに多大なご迷惑をおかけした。今回の事象について、当社グループとして極めて重く受け止めており、四国エリアのエネルギー供給を担う事業者としての責任を改めて肝に銘じ、電力の安定供給により一層尽力してまいる。
当連結会計年度の売上高は、小売販売収入が燃料費調整額の大幅減により減少したものの、卸販売収入が販売電力量の増加や容量市場の開始に伴う容量確保契約金額の計上等により大きく増加したことから、前連結会計年度に比べ639億96百万円(+8.1%)増収の8,513億99百万円となった。また、営業費用は、火力単価が低下したものの、総販売電力量の増や容量市場の開始に伴う容量拠出金の計上等により需給関連費が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ534億49百万円(+7.5%)増加の7,623億26百万円となった。
この結果、前連結会計年度に比べ、営業利益は、105億46百万円(+13.4%)増益の890億73百万円、支払利息など営業外損益を差引き後の経常利益は、115億15百万円(+14.4%)増益の916億11百万円、法人税等差引き後の親会社株主に帰属する当期純利益は、78億8百万円(+12.9%)増益の683億24百万円となった。
セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は、次のとおりである。
[発電・販売事業]
売上高は、小売販売収入が燃料費調整額の大幅減により減少したものの、卸販売収入が販売電力量の増加や容量市場の開始に伴う容量確保契約金額の計上等により大きく増加したことから、前連結会計年度に比べ396億2百万円(+5.9%)増収の7,096億28百万円となった。
経常利益は、前連結会計年度に比べ55億79百万円(+15.6%)増益の413億61百万円となった。
[送配電事業]
売上高は、託送収益や需給調整収益が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ119億93百万円(+5.0%)増収の2,520億81百万円となった。
経常利益は、前連結会計年度に比べ60億32百万円(+30.0%)増益の261億6百万円となった。
[情報通信事業]
売上高は、個人向け光通信サービスの加入者数やデータセンター契約数の増などから、前連結会計年度に比べ12億44百万円(+2.5%)増収の503億99百万円となった。
経常利益は、前連結会計年度に比べ2億49百万円(+2.4%)増益の106億22百万円となった。
売上高は、電化機器販売の増などから、前連結会計年度に比べ8億1百万円(+3.1%)増収の266億44百万円となった。
経常利益は、燃料費調整額の期ずれ影響の縮小によるLNG販売利益の減などから、前連結会計年度に比べ11億26百万円(△16.7%)減益の56億6百万円となった。
売上高は、発電所関連工事の減などから、前連結会計年度に比べ100億11百万円(△15.3%)減収の552億56百万円となった。
経常利益は、前連結会計年度に比べ3億71百万円(△6.3%)減益の54億90百万円となった。
[その他]
売上高は、前連結会計年度に比べ3億82百万円(+1.1%)増収の359億77百万円となった。
経常利益は、前連結会計年度に比べ4億72百万円(+19.2%)増益の29億32百万円となった。
(資産)
資産は、長期投資が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ584億29百万円(+3.6%)増加の1兆6,874億84百万円となった。
(負債)
負債は、社債・借入金が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ192億45百万円(△1.5%)減少の 1兆2,466億40百万円となった。
(純資産)
純資産は、利益の確保などから、前連結会計年度末に比べ776億75百万円(+21.4%)増加の4,408億43百万円となった。
③キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
利益は増加した一方、法人税等の支払額が増加したことなどから、収入が前連結会計年度に比べ138億54百万円(△9.6%)減少の1,298億21百万円となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ43億72百万円(△4.5%)減少の929億45百万円の支出となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債・借入金の返済などにより、前連結会計年度に比べ88億56百万円(△25.9%)減少の253億25百万円の支出となった。
以上の結果、当連結会計年度末における現金および現金同等物は、前連結会計年度末に比べ118億45百万円増加し、1,301億42百万円となった。
[発電・販売事業および送配電事業]
(注) 四捨五入の関係で、合計が合わない場合がある。
(注) 1 販売電力量は、四捨五入の関係で、合計が合わない場合がある。
2 料金収入の電灯および電力には、国の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」、「酷暑乗り切り緊急支援」および「電気・ガス料金負担軽減支援事業」により受領する補助金を含んでいる。
石炭、重油およびLNGの受払実績
<石炭>
<重油>
<LNG>
生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、受注生産形態をとらない品目も多いことから、生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示していない。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものである。
①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
(ⅰ)経営成績の分析
※ ROA=事業利益(経常利益+支払利息)÷総資産(期首・期末平均)
<ROAとROE>
指標算定の分子となる利益(事業利益、親会社株主に帰属する当期純利益)は、2021・2022年度については燃料価格の高騰影響により赤字となったが、2023・2024年度は高水準となった。
以上の結果、ROAは、2022年度には△1.0%に低下したが、2024年度は5.9%まで上昇した。
また、ROEは、2022年度には△7.5%に低下したが、2024年度は17.1%まで上昇した。
(ⅱ)財政状態の分析
※ 有利子負債倍率=社債・借入金÷自己資本
<総資産>
伊方発電所の安全対策工事や西条発電所1号機リプレース工事などによる事業用資産の増に加え、海外事業投資の増などから増加傾向にあり、2020年度末から2024年度末にかけて約2,600億円増加した。
<社債・借入金>
設備投資や海外事業投資に伴い、2020年度末から2024年度末にかけて約1,300億円増加した。
<自己資本>
2021・2022年度の赤字影響により、2022年度末に2,900億円台まで減少したが、2023・2024年度の利益が高水準となったため、2024年度末は約4,400億円まで増加した。
以上の結果、自己資本比率は、2022年度末には18.3%に低下したが、2024年度末は26.0%まで上昇した。
また、有利子負債倍率は、2022年度末には3.2倍に上昇したが、2024年度末は2.0倍まで低下した。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報
(ⅰ)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
◇キャッシュ・フローの推移 (単位:億円)
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
利益の確保や減価償却による回収などにより、2020年度から2024年度の5ヵ年平均で823億円程度の収入となった。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
伊方発電所の安全対策工事、西条発電所1号機リプレース工事および海外発電事業への出資などにより、2020年度から2024年度の5ヵ年平均で992億円程度の支出となった。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
フリーキャッシュ・フローに応じて変動しており、2024年度は253億円の支出となった。
(ⅱ)資本の財源および資金の流動性について
当社の主な資金需要は設備資金であり、自己資金および社債・長期借入金により調達している。なお、季節要因などによる短期的な資金需給の調整には、コマーシャル・ペーパーを活用している。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成している。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況」に記載している。
当社グループは、連結財務諸表を作成するにあたり、繰延税金資産の回収可能性、固定資産の減損、貸倒引当金、退職給付に係る負債などに関して、過去の実績等を勘案し、合理的と考えられる見積りおよび判断を行っているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
該当事項なし。
当社グループは、技術力・競争力の向上を目的として、㈱四国総合研究所を中心に、電力の供給・利用などの研究開発に取り組んでいる。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
主要な研究課題は次のとおりである。
設備の長寿命化技術、運用保守の高度化・効率化技術、デジタル技術などに関する研究開発を行っている。
再生可能エネルギーの導入拡大へ向けた対応や、分散型エネルギーリソースの活用、水素等関連技術の活用など、カーボンニュートラル推進に向けた研究開発を行っている。