第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、「ずっと先まで、明るくしたい。」をブランド・メッセージとする「九電グループの思い」のもと、「低廉で良質なエネルギーをお客さまにお届けすることを通じて、お客さまや地域社会の生活や経済活動を支える」ことを使命に、事業活動を進めている。
 当社グループの経営環境は、本年4月にスタートした一般送配電事業等の分社化をはじめ、人口減少の進展などによる電力需要の成長鈍化や、小売全面自由化による販売競争の激化、太陽光をはじめとした分散型電源の導入拡大、ベースロード市場や容量市場等の新たな市場の創設など、大きな転換期にある。一方、海外では、新興国や開発途上国での人口増加や経済発展などに伴い、エネルギーの需要の増大に対応した供給体制の整備が強く求められている。
 また、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、持続可能な経済成長やまちづくり、気候変動リスクへの対策など、経済・社会・環境の3つの側面から国際社会が達成すべき目標が示されており、その実現に向けて、企業の役割や貢献に対する期待・要請が高まってきている。
 このような経営環境の中、九州、そして、アジア・世界の持続的発展に向けて、当社グループがどのような貢献ができるかを示し、地域・社会とともに発展・成長していくという私たちの姿勢を発信するため、昨年6月、「九電グループ経営ビジョン2030」を策定した。
 この経営ビジョンのもと、全力を挙げて以下の取組みを推進し、お客さまから信頼され、選ばれ続ける企業グループを目指していく。

 

 

「九電グループ経営ビジョン2030」

 

○ 2030年のありたい姿


 

○ ありたい姿実現に向けた戦略


 

○ 経営目標


 

(参考)<九州電力グループ中期経営方針で定めた財務目標(2017年6月公表)>

                                 (連結ベース)

項 目

目 標

自己資本比率(2021年度)

20%程度

経常利益(2017~2021年度平均)

1,100億円以上

成長投資(2017~2021年度累計)

4,200億円

 

 

  (1) エネルギーサービス事業の進化

低炭素で持続可能な社会の実現に挑戦し、より豊かで、より快適な生活をお届けする

○ 環境に優しく、低廉なエネルギーを安定的にお届けし続けるとともに、S(安全)+3E(エネルギーの安定供給、環境保全、経済性)の観点から、最適なエネルギーミックスを追求する。
 再生可能エネルギーについては、地熱や水力に加え、洋上風力やバイオマス発電などを、安定供給や環境への影響を考慮しながら、国内外で積極的に開発していく。
 原子力発電については、エネルギーセキュリティ面や地球温暖化対策面などで総合的に優れた電源であることから、安全の確保を大前提として、最大限活用していく。また、当面の最重要課題である特定重大事故等対処施設の早期完成に向けて、工事の安全を確保しつつ、引き続き全力で取り組むとともに、玄海原子力発電所1、2号機の廃止措置等についても、安全を最優先に進めていく。さらに、地域の皆さまの安心と信頼を高めていくため、分かりやすい情報発信やフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション活動を継続していく。
 火力発電については、最新鋭の石炭火力である松浦発電所2号機や高効率のLNG火力である新大分発電所3号系列など、環境面と競争力、供給安定性のバランスのとれた電源を活用していく。
 なお、当期、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需要減少などにより発電用LNGに余剰が生じたが、引き続き引取時期の後ろ倒しなどの対策に取り組み、余剰量の最小化等に努めていく。
 さらに、今後、容量市場、非化石価値取引市場、需給調整市場など電源の持つ新たな価値を取引する市場が順次創設されていくが、投資回収の可能性向上等につながるものであることから、制度趣旨に則り、これを最大限活用していく。
 

○ エネルギー情勢やお客さまニーズの多様化など、環境変化を先取りし、エネルギーサービスを進化させる。
 競争環境が厳しさを増す中でも引き続きお客さまにお選びいただけるよう、低廉で魅力ある料金プラン・サービスの提案など、エネルギーサービスの充実を図っていく。また、九州各地の営業所を拠点に、お客さまとの接点を重視した「顔の見える営業」を展開するとともに、今年7月に、「支社」と「営業センター」を新たに「支店」に統合し、電力小売りやグループ会社商品の販売等をこれまで以上に一体的に行い、総合力を発揮できる体制とするなど、営業力の一層の強化に取り組んでいく。さらに、オール電化の更なる推進や電気自動車の普及促進等により需要創出を図っていく。
 九州域外における電気事業については、九電みらいエナジー株式会社による電力販売が順調に拡大しており、引き続き他社との連携等による営業強化に努めるとともに、域外での安定・安価な電源確保のため、千葉県でのLNG火力発電所の開発について、東京ガス株式会社と共同での検討を進めていく。

 

○ 海外電気事業については、一層の収益拡大を目指して、リスク管理機能を強化しつつ、国内外で蓄積した事業ノウハウやネットワークを活かして、更なる進出エリアや事業領域の拡大を図る。
 当期は、タイの発電事業や米国4件目のガス火力発電事業、UAEのガス火力発電造水事業等に参画しており、これまでのアジア・米州に加え、今後は、欧州・中東・アフリカ地域に事業を拡大していく。また、マイクログリッド事業など新たな分野での事業展開にも取り組んでいく。

 

○ 本年4月、一般送配電事業等を承継した九州電力送配電株式会社では、一層の公平性・透明性・中立性を確保しつつ、安定供給とコスト低減の両立を実現する。
 また、再生可能エネルギーの普及や効率的な設備運用を目指し、ネットワーク技術の高度化を推進するとともに、引き続き太陽光など再生可能エネルギーの出力制御量の最小化に努めていく。さらに、お客さまとの接点を活かした電化の推進や自治体と連携した企業誘致等により、同社においても主体的に九州エリアの電力需要創出に取り組むとともに、これまで一般送配電事業等で培った技術や資産を活用し、新規事業・海外事業展開に取り組んでいく。

 

(2)  持続可能なコミュニティの共創

九州各県の地場企業として、新たな事業・サービスによる市場の創出を通じて、地域・社会とともに発展していく

○ 地域・社会の課題解決に向けて、当社グループの強みを活かせる都市開発や、公共インフラの運営、ICTサービス等の事業分野を中心に取り組む。
 福岡市青果市場跡地の再開発など、都市部を中心に計画されている大型開発プロジェクトに積極的に取り組むとともに、オフィス賃貸・住宅販売等の既存の不動産事業に加え、ホテル事業への投資など新たな事業分野を開拓し、収益力の強化を図っていく。
 また、民間委託が進む空港運営事業では、福岡空港・熊本空港の運営事業に参画しており、今後も、当社グループの強みを活かしたインフラ運営等の事業に取り組んでいく。
 さらに、ドローンによる空撮・測量やデータセンターなどのICTサービス事業、経理・人事労務業務の受託などビジネスサポート事業、高齢者の介護・見守りなど生活支援事業に取り組むとともに、観光や一次産業分野などの新たな領域にも挑戦していく。
 これらの取組みに加え、九電グループ挙げてのイノベーションの取組みである「KYUDEN i-PROJECT」を引き続き推進し、新たな事業やサービスの創出に力を入れていく。

 

(3) 経営基盤の強化

経営を支える基盤の強化を図り、グループ一体となって挑戦し、成長し続ける

○ 安全・健康・ダイバーシティを重視した組織風土をつくる。
 安全については、「九電グループ安全行動憲章」に基づき、継続的な教育・訓練を実施するとともに、今年7月、組織横断的な立場で九電グループの安全のレベルアップを牽引する「グループ安全統括室」を設置するなど、永続的な安全への取組みを進めていく。
 また、「九州電力健康宣言」のもと、従業員の健康保持・増進を図るとともに、女性活躍をはじめとしたダイバーシティの更なる推進や、変革や新たな事業展開を担う多様な人材の確保・育成、テレワークの利用拡大や育児支援の充実など柔軟な労働環境の整備等に取り組んでいく。
 

○ 働きがいのある職場を永続的に追求する。
 働き方改革の趣旨に則り、やりがいを持って活き活きと働くことができる職場を追求するため、風通しの良い組織・風土づくりや日常業務の改善・改革、IoTやAIを活用したデジタルトランスフォーメーションなどにより、創造的で付加価値の高い業務やライフスタイルにあった働き方の実現等に取り組んでいく。
 

 

○ ステークホルダーからの信頼向上に継続的に取り組む。
 本年1月に発生した託送料金計算システム等の障害により、お客さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまに多大なご迷惑をおかけいたしましたことに対し、深くお詫び申しあげるとともに、今回の根本原因を踏まえ、今後、類似の事象を二度と発生させないよう、再発防止策の徹底を図っていく。
 また、電力他社において役職員による金品受領等が明らかとなり、電気事業や原子力発電に対する信頼を大きく失墜させる事態に至った。当社では、かねてよりコンプライアンス経営の徹底に努めており、同様の事例がないことを確認しているが、今回の事案を真摯に受け止め、引き続き、更なるコンプライアンス意識の浸透を図り、公益事業者としての自覚と高い倫理観に基づいた事業運営を行っていく。
 これらの取組みに加え、当社グループの持続的成長と企業価値の向上に向け、コーポレート・ガバナンスの強化や、CSR経営の推進、迅速で分かりやすい情報発信の徹底を図るとともに、SDGsをはじめ、社会から解決を求められている課題に対して、当社グループの経営資源を活用し、積極的に取り組んでいく。
 さらに、株主価値向上に向け、財務体質を改善し、株主還元の更なる充実に取り組んでいく。 
 

当社グループとしては、これらの取組みを通じて、ステークホルダーの皆さまへの価値提供を果たしていく。

 

(文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したもの)

 

2 【事業等のリスク】

当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績、財務状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。

 

(1) 競争環境等の変化

① 国内電気事業

当社グループの総販売電力量は、気温・気候の変化、経済・景気動向などの避けがたい外部環境の影響を受けるほか、2016年4月に開始された電力小売全面自由化に伴う競合他社の新規参入などによる競争環境の変化、電力取引市場における卸電力取引の動向などにより、影響を受ける可能性がある。

なお、2019年度の当社グループの総販売電力量は807億kWhで前年度比100.1%となっている。

また、当社グループにおいて、国内電気事業を通じて得られる収入は、当社グループの営業収益の大半を占めており、総販売電力量が大きく減少した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは魅力ある料金プラン・サービスの提案、全社一丸となった営業活動の強化などにより、九州外も含めて販売拡大に取り組むとともに、ガス販売事業などを推進することで、国内電気事業の収益減少リスクの低減に取り組んでいる。

なお、九州電力送配電株式会社では、行為規制を踏まえ、九州エリアの電力需要創出を目的とした活動に取り組んでいる。

 

② 海外事業

当社グループでは、収益拡大を図る観点から、海外事業に投資を行っている。海外における当社グループの持分出力は、2020年3月末現在で242万kWとなっており、2030年度までに500万kWに拡大することを目標としている。

海外事業は国内電気事業などとは異なるリスクを保有しており、カントリーリスクの顕在化、特に環境・エネルギー関連の政策変更などの外部環境変化が生じた場合、投資額に見合うリターンを得られず、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは担当組織を設置し、海外事業投資に関するノウハウなどを一元化するとともに、海外事業に対する往査や参画案件の管理体制の整備を行うなど、リスクの低減に取り組んでいる。また、海外事業におけるリスクマネジメントとして、案件ごとに収益性評価やリスク評価を行うとともに、必要に応じてポートフォリオの最適化に取り組んでいる。

 

③ エネルギー関連事業、ICTサービス事業、その他の事業

当社グループは、国内電気事業・海外事業以外に、当社グループの強みを活かして、エネルギー関連事業、ICTサービス事業、都市開発・まちづくり事業、不動産事業など幅広く事業を営むとともに、新たな収益源を生み出す観点から、新規領域を含めたイノベーションにも取り組んでいる。

しかしながら、他社との競争激化や市場の縮小など、各事業領域の事業環境の変化により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

また、新規領域の事業については、既存事業領域と異なるリスクを有しており、場合によっては、投資額に見合うリターンを得られず、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは新規事業の実施にあたり、収益性評価やリスク評価などを行うことで、リスク低減に取り組んでいる。

 

(2) 原子力発電を取り巻く状況

① 原子力の安定稼働

当社グループは、エネルギーセキュリティ面や地球温暖化対策の観点から、原子力発電は重要であると考えており、福島第一原子力発電所事故の教訓などを踏まえて施行された国の新規制基準を遵守することに加え、更なる安全性・信頼性向上への取り組みを自主的かつ継続的に進めながら、安全の確保を大前提に、原子力を最大限活用することとしている。

しかしながら、当社グループにおいては、特定重大事故等対処施設の設置期限への対応や、2020年3月末現在、玄海原子力発電所及び川内原子力発電所の運転停止などを求める5件の係属中の訴訟があり、設置期限への対応遅れや訴訟の結果によっては、原子力発電所の運転停止を余儀なくされ、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループは特定重大事故等対処施設の設置について、川内原子力発電所では、鋭意工事を進めており、玄海原子力発電所についても、鋭意工事を進めるとともに国の審査へ迅速かつ丁寧に対応するなど、当社グループの総力を挙げて早期に設置するよう努めている。また、訴訟においては、当社グループの主張を十分に尽くし、原子力発電所の安全性などについてご理解いただけるよう努めている。

 

② 原子燃料サイクル・原子力バックエンド事業

当社グループは、原子燃料サイクル事業の実施主体である日本原燃株式会社に対して、2020年3月末時点で794億円の保証債務を保有しており、日本原燃株式会社の財務状態が悪化した場合、保証の履行を債権者より求められる可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは日本原燃株式会社の再処理事業等の早期竣工及びその後の安定稼働に向けて、応援要員の派遣等の支援を行っている。

また、超長期の事業である原子力施設の廃止措置や使用済燃料の貯蔵・再処理・処分などの原子力バックエンド事業等の費用は、今後の制度見直しや将来費用の見積額の変更、使用済燃料の貯蔵の状況などによって変動することから、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

現時点において、当社グループは、国の制度措置等に基づき、必要な費用を引当て・拠出していることから、これらのリスクは一定程度低減されている。

 

(3) 市場価格の変動

① 燃料費の変動

当社グループの発電事業における主要な火力燃料は、海外から調達するLNG、石炭であり、その購入額はCIF価格及び外国為替相場の変動の影響を受けるため、これらの変動状況によっては、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは燃料の輸入などに伴う外貨建て債務などについて、必要に応じて通貨スワップ取引及び燃料価格スワップ取引などを活用してリスクヘッジを行うこととしている。

なお、制度措置として燃料価格や外国為替相場の影響を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」が設けられており、当社グループの業績への影響は一定程度緩和されている。

また、当社グループはLNG燃料の安定調達を目的として、年間の引取数量義務が課されている原油価格連動の長期購入契約を締結しているが、電力の需給運用上、LNG燃料が余剰となって売却する場合がある。その際、LNG市況が低迷していると転売値差により損失(LNG転売損)が発生する可能性があり、これらのリスクが顕在化することによって、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

2019年度においては、転売値差が拡大したため、181億円のLNG転売損が発生している。

かかるリスクに対し、当社グループでは後年度への引取り後倒しに加え、船舶向けLNG燃料供給(LNGバンカリング)などによる国内外でのLNG需要創出など、あらゆる施策を実施して余剰LNGの発生リスクの低減を図っている。

 

② 金利の変動

当社グループは、基幹事業である国内電気事業において、電力の安定供給に必要な発電設備や送変電設備、配電設備といった多数の設備を保有している。

また、電力の安定供給を継続していくためには、これら設備の建設や更新工事を計画的に進めていく必要があり、多額の資金を調達する必要がある。

当社グループは、これらの資金を主として金融機関からの借入及び社債の発行により調達しており、当社グループの有利子負債残高は、2020年3月末時点で3兆4,062億円(総資産の69%に相当)となっている。このため、今後の市場金利の変動により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

ただし、有利子負債残高の94%が社債や長期借入金であり、その大部分を固定金利で調達していることなどから、金利の変動による当社グループへの影響は限定的と考えられる。

 

(4) 電気事業関係の制度変更等

① エネルギー基本計画に基づく制度設計

エネルギー政策については、エネルギーの需給に関する基本的な方針などを定める「第5次エネルギー基本計画」が2018年7月に閣議決定されたことを受けて、この計画を実現するための制度設計などの検討が進められている。

上記を含めた電気事業を取り巻く制度の変更などに伴って、当社グループが保有する発電設備や送変電設備、配電設備などの電力供給設備に対する設備投資、費用などが増大した場合や、当社グループが保有する発電設備の稼働率が低下した場合は、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

 

② 電力システム改革に伴う市場・ルールの整備

電力取引市場における更なる競争活性化を目的として2019年度ベースロード市場が創設された。これにより競合他社がベースロード電源を調達することによる競争激化や、当社が、市場供出分を補填するための代替供給力を確保する必要が生じる可能性がある。

また、公益的課題への対応として、容量市場、非化石価値取引市場などの創設により、発電事業者の電源維持に関する事業環境整備が期待されるが、制度設計によっては、十分な対価が得られず、電源の維持が困難となる可能性がある。

 

上記①、②にかかるリスクに対し、迅速かつ的確に対応できるよう、当社グループ内に担当組織を設置し、エネルギー政策、電気事業に係る制度、及び環境規制などに関する情報を積極的に収集の上、関係箇所で連携し、全社戦略の検討を実施している。

 

(5) 気候変動に関する取り組み

近年、気候変動への関心が国内外で高まっており、特に2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議での「パリ協定」採択以降、世界各国で低炭素社会実現に向けた取り組みが急務となっている。

こうした中、低炭素化に向けた規制見直しが実施された場合、それに伴い、当社グループが保有する電力供給設備に対する設備投資、費用が増大するなど、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

また、世界の金融・資本市場においては、ESG情報を投資判断に活用することが急速に拡大しており、低炭素化への取り組みが不十分、あるいは気候変動に関する情報開示に的確に対応していないなどと判断された場合、株主・投資家から信頼・評価を失い、株価低迷や資金調達の困難化など、経営成績等に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対応するため、当社グループでは、国のエネルギー基本計画におけるエネルギーミックス実現を目指し、再生可能エネルギーの積極的な開発と最大限の受入れ、安全の確保を大前提とした原子力発電の活用、火力発電所の熱効率維持・向上を通じた「電源の低炭素化」と、家庭部門におけるオール電化、業務部門や工場等におけるヒートポンプの活用、及び運輸部門の電動化など、省エネ・省CO2につながる「電化の推進」によるエネルギー需給両面からのCO2排出抑制に取り組んでいる。

また、当社は、地球温暖化問題に取り組む責任があるエネルギー事業者として、2019年7月に賛同したTCFD提言を踏まえて、低炭素化への取り組みに関する情報開示を更に推進していく。

 

(6) 設備事故・故障、システム障害

① 自然災害

当社グループは、電気事業が社会と経済活動の基盤となり、お客さまの大切なライフラインに欠かせない重要な事業であることを認識し、電力の安定供給に努めている。

また、これら電力の安定供給に必要な発電設備や送変電設備、配電設備などの電力供給設備をはじめ、電気事業の遂行に必要となる多数の設備を保有しているが、地震・津波・台風・集中豪雨などにより大規模災害が発生した場合には、これら設備が損壊し、広範囲・長期間に及ぶ停電が発生する可能性があり、その結果として収入の減少や多額の復旧費用の支出を余儀なくされ、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは設備の耐力強化を図るとともに、自治体(県・市町村)や自衛隊などの関係機関との連携を図りながら、電力供給設備などへの災害予防、災害応急対策及び災害復旧に努めている。

特に原子力施設については、(2)にも記載のとおり、国の新規制基準を踏まえ、重大事故を起こさないための対策や、万が一の重大事故に対処するための対策の強化を図っている。

 

② 設備の高経年化等

当社グループは九州各地に発電設備や送変電設備、配電設備などの多数の電力供給設備や情報通信設備などを保有している。

特に、高度経済成長期に電力需要の伸びにあわせて建設した電力供給設備については高経年化が進んでおり、設備の劣化に伴い事故・故障発生確率が上昇する可能性がある。万一、大規模発電所や超高圧送電線などで重大な設備事故が発生した場合、設備被害により当社グループの経済損失が発生するとともに、広範囲・長期間の停電により社会経済活動に重大な影響を及ぼす可能性がある。また高経年設備の増加に伴い、点検・補修などの頻度が増加し、修繕費などの支出が増加する可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは設備巡視による危険箇所の事前把握や、設備状態に応じたきめ細やかなメンテナンスに取り組んでいる。また、経年の進んだ電力供給設備に対する重点的な点検・補修に加え、計画的な高経年設備の更新に取り組んでいる。さらに、ドローンや画像解析、AIなどの新技術を活用した設備保全の高度化・効率化にも取り組んでいる。

 

③ システム障害

当社グループにおいて、情報処理システムは、業務遂行に必要不可欠となっているとともに、社外に対してもICTサービス事業を提供しており、重要な事業基盤となっている。

一旦、システム障害が発生した場合、社内業務が混乱するだけでなく、社外に対しても多大な影響を与える 可能性がある。この場合、当社グループの信頼が失墜するとともに、事後対応費用が発生し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは24時間365日のシステム運用監視や計画的な設備更新など、システム障害の未然防止に取り組んでいる。

 

④ サイバー攻撃

当社グループに対するサイバー攻撃は年々増加しており、攻撃方法も巧妙かつ悪質化するなどその脅威はますます増大している。

当社グループでは国内電気事業、ICTサービス事業など、幅広く事業を展開しており、サイバー攻撃により、機密性の高い内部情報や個人情報が流出する可能性がある。

また、海外では電力供給設備に対するサイバー攻撃による停電が発生しており、当社グループの電力供給設備がサイバー攻撃を受けた場合、電力の供給が停止する可能性がある。

いずれの場合にも、当社グループの信頼が失墜するとともに、事後対応費用が発生し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループではサイバーセキュリティ対策室を中心に、多層防御として、組織的・人的・物理的・技術的な対策を講じており、当社グループ全体の情報セキュリティレベルの維持向上を図っている。

 

(7) オペレーショナルリスク

① 業務上の不備

当社グループは国内電気事業、エネルギー関連事業、ICTサービス事業など幅広く事業を展開しており、従業員の過失などによる各種業務上の不備が生じた場合、お客さまへのサービス提供に支障が出るなど、社内外に大きな影響を及ぼす可能性がある。

また、当社グループの基幹事業である国内電気事業においては、電力システム改革や再生可能エネルギーの普及などにより、従来と比べ需給運用が複雑化している。そのような状況においても、電力の安定供給は当社グループの重要な使命であり、万一、電力供給設備の運用や作業時のミスにより、感電などの人の死傷や広範囲の停電などが発生した場合、当社グループの信頼が失墜するとともに、事後対応費用が発生し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは電力供給設備の作業時のミス未然防止に向けて、綿密な事前の計画、作業管理体制を整備するとともに、作業の教育・訓練を実施している。

また、当社の「全社安全推進委員会」とグループ会社が参画する「グループ安全推進部会」を中心としてグループ一体となった安全推進体制のもと、「九電グループ安全行動憲章」に基づく取り組みを通じて、災害撲滅に努めている。

 

② 法令違反等

当社グループは、九州エリアを中心に多くの拠点を持ち、電気をはじめ様々な商品やサービスをお客さまに提供しており、関連する法令や規制は多岐にわたる。また海外での事業運営においては、当該国の法的規制の適用を受けている。

当社グループでは、これらの様々な法的規制の遵守に努めているが、各種法令などに対する理解が不十分、または法令等が変更された際の対応が適切でなく、法令などに違反したと判定された場合や、従業員による個人的な不正行為などを含めて社会的要請に反した行動などによりお客さまからの信頼を失墜する事態に至った場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社では法令理解の浸透を通じた法的規制の遵守はもとより、社会的規範や企業倫理を守ることをコンプライアンス経営と定め、社長を委員長とするコンプライアンス委員会のもと、業務執行機関の長を「コンプライアンス責任者」として、活動計画を策定・実践するとともに、社内外に相談窓口を設置するなどの体制を整備し、コンプライアンスを推進している。

また、グループ会社に対しては、コンプライアンス情報の共有や意見交換などを行い、グループ会社と一体となった取り組みを推進しているほか、グループ会社の指導・支援に関する管理部門の役割を明確化するなど、当社グループ全体での推進体制の強化を図っている。

 

③ 感染症の流行

2019年12月に中国で新型コロナウイルス感染者が報告されて以来、全世界的に感染者数が拡大し、国内では政府から「緊急事態宣言」が発令されるなど、社会・経済に多大な影響が生じている。

新型コロナウイルスに限らず、病原性の高い新たな感染症が流行し、当社グループ内で蔓延した場合、事業継続に支障をきたす可能性がある。また、これらの感染症の世界的な流行に伴い、サプライチェーンの維持が困難化し、電力の安定供給や円滑な業務運営にリスクが高まる可能性があり、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づき「新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」を策定しており、新型コロナウイルスの感染が更に拡大したり、新たな感染症が発生した場合であっても、同計画に準じて、安全確保を最優先として、電力の安定的かつ適切な供給体制維持を図るなど、事業継続できるように備えている。

 

④ 人材・スキル不足

当社グループは、優秀な人材の確保とそのスキル向上により、継続的にお客さまに質の高い商品、サービスを提供することが重要であると認識している。

中でも当社グループの基幹事業である国内電気事業においては、技術・ノウハウの継承が必要であり、人材の確保・育成ができなかった場合、もしくは多数の人材が流出した場合には、当社グループの持続的な成長を妨げ、業績に影響を及ぼす可能性がある。

かかるリスクに対し、当社は毎年、中長期的な想定に基づく採用計画を策定し、必要な人材の確保に努めている。また、当社の教育の指針である「九州電力教育憲章」に基づき、教育方針・計画を定め、従業員一人ひとりが向上の意欲を持ち、人間的・能力的成長を促すとともに、人材育成を重視する職場風土づくりに向けて、様々な教育・研修を実施している。更に当社グループ合同で研修を行うなど、グループの総合力強化を目指した人材育成にも取り組んでいる。

そのほかにも、従業員のワーク・ライフ・バランスの充実に向けた柔軟な働き方の推進、働き方改革による労働生産性向上への取り組みを進めるとともに、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めている。

 

(8) その他

① 固定資産の減損

当社グループは多数の設備を保有しており、その資産及び資産グループが産み出す将来キャッシュ・フローは、当社グループが置かれる経営環境の変化の影響を受ける。

このため、総販売電力量の減少や原子力発電所の計画外停止、発電設備の稼働率低下など、様々なリスクの顕在化によって収益性が低下した結果、将来キャッシュ・フローが減少し投資額の回収が見込めなくなった場合は、固定資産の減損により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

 

② 繰延税金資産の取崩し

当社グループでは、当社において、主に過年度の原子力発電所停止の長期化を原因として税務上の繰越欠損金が生じているが、これに係る繰延税金資産については、将来の課税所得の見積りに基づいて、その回収可能性を判断している。

このため、総販売電力量の減少や原子力発電所の計画外停止など、課税所得に重要な影響を及ぼすリスクが顕在化し、将来の課税所得の悪化が見込まれることになった場合は、繰延税金資産の取崩しにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①  経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、緩やかな回復が続いていたが、このところ新型コロナウイルス感染症の世界的拡大による影響から、厳しい状況となっている。九州経済も、設備投資の増加などにより、緩やかに拡大していたものの、年度末にかけて個人消費や輸出・生産を中心に弱めの動きとなっている。

当社グループにおいては、収支の改善や財務基盤の回復に向け、電気料金の値下げや新料金プランの創設、営業体制の強化などによる販売電力量の拡大や、新たな海外事業への参画などによる収益力の強化に取り組むとともに、事業活動全般にわたる徹底した効率化に、グループ一体となって取り組んできた。

当連結会計年度の業績については、グループ一体となって費用削減に取り組んでいるなか、松浦発電所2号機の運転開始等に伴う火力発電単価の低下による燃料費の減少などはあったが、電灯電力料の減少や、卸電力取引の市況低迷などによる他社販売電力料の減少に加え、松浦発電所2号機の運転開始に伴い減価償却費が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ経常利益は減益となった。

また、最近の業績動向等を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性について検討した結果、繰延税金資産を一部取り崩したことにより法人税等が増加したことなどから、親会社株主に帰属する当期純損益は4億円の損失となった。

当連結会計年度の連結収支については、収入面では、ICTサービス事業において増収となった一方で、国内電気事業において、再エネ特措法交付金の増加はあったものの、電灯電力料や他社販売電力料の減少などにより減収となったことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度に比べ41億円減(△0.2%)の2兆130億円となった。営業外収益が増加したことから、経常収益は23億円増(+0.1%)の2兆300億円となった。
 支出面では、グループ一体となって費用削減に取り組んでいるなか、国内電気事業において、火力発電単価の低下などによる燃料費の減少はあったものの、減価償却費や再生可能エネルギー等からの他社購入電力料、連結子会社の電力調達費用の増加などにより費用増となったことに加え、ICTサービス事業においても費用増となったことなどから、経常費用は148億円増(+0.8%)の1兆9,899億円となった。

以上により、経常利益は前連結会計年度に比べ124億円減(△23.8%)の400億円となった。

また、繰延税金資産を一部取り崩したことにより法人税等が増加したことなどから、親会社株主に帰属する当期純損益は313億円減4億円の損失となった。

 

 

報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。

 

 

当連結会計年度

(2019年4月1日から

2020年3月31日まで)

前年度比
(%)

金額(百万円)

国内電気事業

売 上 高

1,848,395

99.4

営業利益

42,471

65.5

その他エネルギーサービス事業

売 上 高

193,970

95.4

営業利益

11,464

98.2

ICTサービス事業

売 上 高

112,696

106.9

営業利益

6,257

128.7

その他の事業

売 上 高

28,851

97.8

営業利益

4,833

80.2

 

 

(注) 1 上記の記載金額には消費税等を含んでいない。

    2 当連結会計年度より報告セグメントを変更している。

 

②  資産、負債及び純資産の状況

資産は、原子力安全性向上対策工事等に伴う固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,540億円増(+3.2%)の4兆9,480億円となった。

負債は、有利子負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,813億円増(+4.4%)の4兆3,101億円となった。有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ1,831億円増(+5.7%)の3兆4,062億円となった。

純資産は、配当金の支払などにより、前連結会計年度末に比べ272億円減(△4.1%)の6,379億円となり、自己資本比率は12.3%となった。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、国内電気事業において燃料代支出の減少はあったが、電灯電力料や他社販売電力料収入の減少に加え、使用済燃料再処理等拠出金の増加などにより、前連結会計年度に比べ561億円収入減(△19.8%)の2,268億円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や投融資による支出の増加などにより、前連結会計年度に比べ602億円支出増(+16.5%)の4,246億円の支出となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債及びコマーシャル・ペーパーの発行や長期借入れによる収入の増加などにより、前連結会計年度の407億円の支出から1,579億円の収入に転じた。

以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ397億円減少2,054億円となった。

 

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループの事業内容は、国内電気事業が大部分を占め、国内電気事業以外の事業の生産、受注及び販売の状況は、グループ全体からみて重要性が小さい。また、国内電気事業以外の事業については、受注生産形態をとらない業種が多いため、生産及び受注の状況を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため、以下では、生産及び販売の状況を、国内電気事業の大部分を占める当社個別の実績によって示している。

 

① 需給実績

 

種     別

当事業年度

(2019年4月1日から

2020年3月31日まで)

前年度比
(%)


 

 

 

 

 


 

 水力発電電力量

(百万kWh)

4,809

94.3

 火力発電電力量

(百万kWh)

25,891

97.6

 原子力発電電力量

(百万kWh)

28,667

99.5

 新エネルギー等発電電力量

(百万kWh)

1,048

101.0

 融通・他社受電電力量

(百万kWh)

15,992

98.1

 (新エネルギー等再掲)

(12,616)

(111.5)

 揚水発電所の揚水用電力量

(百万kWh)

△2,229

109.5

   合     計

(百万kWh)

74,178

97.9

 損失電力量等

(百万kWh)

3,781

107.2

 小売販売電力量

(百万kWh)

70,398

97.5

 出水率

(%)

94.6

 -

 

 

(注) 1 百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。

   2 自社の発電電力量は送電端の数値を記載している。

3 「新エネルギー等」は、太陽光、風力、バイオマス、廃棄物及び地熱の総称である。

4 融通・他社受電電力量は、受電電力量から送電電力量を控除した電力量を記載している。

5 揚水発電所の揚水用電力量とは、貯水池運営のための揚水用に使用する電力量である。

6 小売販売電力量の中には自社事業用電力量(147百万kWh、前年度比102.8%)を含んでいる。

7 出水率は、1988年度から2017年度までの30か年平均に対する比である。

 

② 販売実績

 販売電力量及び料金収入

 

当社個別

 

種     別

当事業年度

(2019年4月1日から

2020年3月31日まで)

前年度比
(%)

販売電力量

(百万kWh)

小 売

70,398

97.5

卸 売

7,505

95.6

合 計

77,903

97.3

料金収入

(百万円)

電灯料・電力料

1,311,195

95.7

地帯間・他社販売電力料

53,045

67.9

合 計

1,364,240

94.2

 

 

(注) 1 販売電力量の百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。

   2 電灯料・電力料は小売販売電力量、地帯間・他社販売電力料は卸売販売電力量に対応する料金収入である。

   3 上記の記載金額には、消費税等を含んでいない。

 

〔参考〕当社グループ合計

 

種     別

当事業年度

(2019年4月1日から

2020年3月31日まで)

前年度比
(%)

販売電力量

(百万kWh)

小 売

73,206

100.6

卸 売

7,505

95.6

合 計

80,711

100.1

 

 

(注) 1 販売電力量の百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。

   2 当社グループ合計の販売電力量は、当社及び連結子会社(九電みらいエナジー株式会社)の数値を記載している。

 

 

③ 資材の状況

 石炭、重油、原油、LNGの受払状況

 

区分

当事業年度(2019年4月1日から2020年3月31日まで)

期首残高

前年度比
(%)

受入

前年度比
(%)

消費

期末残高

前年度比
(%)

発電用

前年度比
(%)

その他

前年度比
(%)

石炭(t)

515,332

126.4

6,587,779

129.7

6,588,747

132.4

16,060

498,304

96.7

重油(kl)

115,611

87.2

214,978

96.2

218,608

95.3

△239

112,220

97.1

原油(kl)

26,628

92.5

△40

7.3

26,668

100.2

LNG(t)

296,492

425.6

1,096,136

49.8

1,068,117

56.0

157,105

229.9

167,406

56.5

 

 

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

ア 売上高及び営業利益

売上高(営業収益)は、前連結会計年度に比べ41億円減(△0.2%)の2兆130億円となった。一方、営業費用は186億円増(+1.0%)の1兆9,492億円となった。以上により、営業利益は227億円減(△26.3%)の638億円となった。

 

報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。

[国内電気事業]

当社グループ合計の小売販売電力量については、当社個別では夏季の天候不順や暖冬影響等により減少したものの、九電みらいエナジー株式会社が関東エリアで契約を伸ばしていることなどから、前連結会計年度に比べ0.6%増732億kWhとなった。また、当社グループ合計の卸売販売電力量は前連結会計年度に比べ4.4%減75億kWhとなった。この結果、当社グループ合計の総販売電力量は前連結会計年度に比べ0.1%増807億kWhとなった。

供給面については、原子力をはじめ、火力・揚水等発電設備の総合的な運用及び国のルールに基づく再エネ出力制御の実施により、安定して電力を供給することができた。

業績については、売上高は、再エネ特措法交付金の増加はあったものの、電灯電力料や他社販売電力料の減少などにより、前連結会計年度に比べ104億円減(△0.6%)の1兆8,483億円となった。一方、営業費用は、グループ一体となって費用削減に取り組んでいるなか、火力発電単価の低下などによる燃料費の減少はあったものの、減価償却費や再生可能エネルギー等からの他社購入電力料、連結子会社の電力調達費用が増加したことなどから、119億円増(+0.7%)の1兆8,059億円となった。以上により、営業利益は、223億円減(△34.5%)の424億円となった。

 

[その他エネルギーサービス事業]

その他エネルギーサービス事業は、電気設備の建設・保守など電力の安定供給に資する事業、お客さまのエネルギーに関する様々な思いにお応えするため、ガス・LNG販売、再生可能エネルギー事業等を展開している。また、九電グループが培ってきた技術・ノウハウを活かし、海外エネルギー事業の強化などにも取り組んでいる。

売上高は、電気計測機器の取替工事の増加などはあったが、発電所建設・補修工事の減少やLNG販売価格の低下などにより、前連結会計年度に比べ93億円減(△4.6%)の1,939億円、営業利益は、2億円減(△1.8%)の114億円となった。

 

[ICTサービス事業]

ICTサービス事業は、保有する光ファイバ網やデータセンターなどの情報通信事業基盤や事業ノウハウを活用し、データ通信、光ブロードバンド、電気通信工事・保守、情報システム開発、データセンター事業等を展開している。

売上高は、情報システム開発受託や情報システム機器販売の増加などにより、前連結会計年度に比べ72億円増(+6.9%)の1,126億円、営業利益は、13億円増(+28.7%)の62億円となった。

 

[その他の事業]

その他の事業は、不動産、有料老人ホーム事業等を展開している。

売上高は、不動産販売の減少などにより、前連結会計年度に比べ6億円減(△2.2%)の288億円、営業利益は、11億円減(△19.8%)の48億円となった。

 

イ 営業外収益・費用

営業外収益は、持分法による投資利益の計上などにより、前連結会計年度に比べ65億円増(+62.5%)の169億円となった。また、営業外費用は、前連結会計年度に計上した持分法による投資損失の影響などにより、37億円減(△8.4%)の407億円となった。

 

ウ 経常利益

経常収益が前連結会計年度に比べ23億円増(+0.1%)の2兆300億円となり、経常費用が148億円増(+0.8%)の1兆9,899億円となったことから、経常利益は124億円減(△23.8%)の400億円となった。

 

エ 渇水準備金引当又は取崩し 

当連結会計年度は、出水率が94.6%と平水(100%)を下回ったことから、渇水準備引当金を1億円取り崩した。

 

オ 法人税等

法人税等は、繰延税金資産を一部取り崩したことにより法人税等調整額が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ188億円増385億円となった。

 

カ 親会社株主に帰属する当期純損益

親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ313億円減4億円の損失となった。1株当たり当期純損益は64.10円減の6.05円の損失となった。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  ア キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当社グループのキャッシュ・フローの状況については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載している。

 

イ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、燃料代などの支払いや設備投資及び投融資、並びに借入金の返済及び社債の償還などに資金を充当している。

これらの資金需要に対して、自己資金に加え、社債や借入金により資金調達を行うとともに、一時的な資金需要の変動に対しては、コマーシャル・ペーパーなどにより機動的な対応を行っている。

また、流動性リスクについては、月次での資金繰により資金需要を的確に把握するよう努めるとともに、コミットメントラインや当座貸越、及びキャッシュ・マネジメント・サービスなどを活用することとしている。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。重要な会計方針については、「第5 経理の状況」に記載している。
 当社グループは、連結財務諸表を作成するにあたり、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、貸倒引当金、退職給付に係る負債及び資産、資産除去債務などに関して、過去の実績等を勘案し、合理的と考えられる見積り、判断を行っているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。このうち、特に重要なものは以下に記載のとおりである。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

当社において、主に過年度の原子力発電所停止の長期化により生じた税務上の繰越欠損金については、経営者が承認した事業計画等に基づく将来の課税所得の見積りにより、回収可能と判断した部分について繰延税金資産を計上している。

当該課税所得の見積りについては、連結財務諸表作成時点で利用可能な情報に基づいた最善の見積りを行っているが、総販売電力量の減少や原子力発電所の計画外停止など、将来事象の仮定または予測に変化が生じ、将来の課税所得の悪化が見込まれることになった場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断を見直す可能性がある。

 

④ 目標とする経営指標の達成状況等

当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「自己資本比率(2021年度)20%程度」、「経常利益(2017~2021年度平均)1,100億円以上」などの財務目標を設定しており、当連結会計年度においては、自己資本比率12.3%、経常利益400億円、2017~2019年度平均では経常利益554億円となった。

連結経常利益は1,100億円を下回ったものの、昨年6月に策定した「九電グループ経営ビジョン2030」における「連結経常利益(2030年度)1,500億円」などの経営目標も踏まえ、今後、海外事業や再生可能エネルギー事業をはじめとする成長事業への投資による収益の拡大や徹底した効率化による競争力強化などの取組みを推進していく。

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社は、2019年4月26日の取締役会決議により、2020年4月1日に、当社が営む一般送配電事業及び離島における発電事業等を会社分割の方法により「九州電力送配電株式会社」(以下、「承継会社」という。)に承継させることとし、2019年4月26日、承継会社との間で吸収分割契約を締結した(以下、この会社分割を「本件吸収分割」という。)。
 これに基づき、2019年6月26日開催の第95回定時株主総会において関連議案が承認可決されるとともに、2020年3月13日、一般送配電事業の分割について、電気事業法に基づく経済産業大臣の認可を取得し、2020年4月1日、本件吸収分割の効力が発生した。

 

(1) 本件吸収分割の背景・目的

わが国においては、「電力の安定供給の確保」、「電気料金の抑制」、「需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大」を目的として電力システム改革が進められており、その一環として、2015年6月の電気事業法改正により、送配電部門の中立性を一層確保する観点から、2020年4月に一般送配電事業者が小売電気事業や発電事業を行うことが原則禁止される「兼業規制による法的分離」が義務付けられた。
 当社は、この法的分離に適切に対応し、九電グループの価値向上と競争力ある事業運営体制を構築する観点から、当社が営む一般送配電事業等を当社の完全子会社である九州電力送配電株式会社に承継させる吸収分割を実施した。
 これにより当社は、発電事業及び小売電気事業を一体で担う事業持株会社として、お客さまのより豊かで快適な生活に資するエネルギーサービスをお届けするとともに、競争力を高め、更なる収益拡大を図っていく。
 また、九州電力送配電株式会社は、公平性・透明性・中立性を一層高めるとともに、電力の安定供給と、保全・運用業務の効率化・高度化などによる経済性との両立により、お客さまからの信頼向上を目指していく。
 こうした事業運営体制の構築を通じて、法的分離後も、当社と九州電力送配電株式会社が引き続き、エネルギー事業者としての責務を全うするとともに、九電グループ全体の価値の持続的な向上を目指していく。

(2) 本件吸収分割の要旨

ア 本件吸収分割の日程

吸収分割契約承認 取締役会(当社)      2019年4月26日
吸収分割契約承認 取締役決定(承継会社)   2019年4月26日
吸収分割契約締結                 2019年4月26日
吸収分割契約承認 定時株主総会(当社)     2019年6月26日
吸収分割契約承認 臨時株主総会(承継会社) 2019年6月26日
吸収分割効力発生日                         2020年4月1日

イ 本件吸収分割の方式

当社を分割会社とし、当社の100%子会社である九州電力送配電株式会社を承継会社とする吸収分割である。

ウ 本件吸収分割に係る割当ての内容

  本件吸収分割に際し、承継会社である九州電力送配電株式会社は、普通株式3,360万株を発行し、すべて当社に対して割当て交付した。

エ 本件吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠

  承継会社は、当社の100%子会社であり、本件吸収分割に際して承継会社が発行する株式のすべてが当社に交付されることから、当社と承継会社間で協議し、割当てる株式数を決定している。

オ 本件吸収分割により増減する資本金

当社の資本金に変更はない。

カ 承継会社が承継する権利義務

 九州電力送配電株式会社は、当社との間で締結した2019年4月26日付の吸収分割契約の定めに従い、当社が営む一般送配電事業、離島における発電事業及びこれらに付帯関連する事業に関して有する権利義務を効力発生日に承継した。
 なお、本件吸収分割による承継会社への債務の承継については、免責的債務引受の方法によるものとする。
 また、当社の既存の公募社債に係る債務等については承継しない。

 

 

(3) 分割した資産、負債の項目及び金額(2020年4月1日現在)

資産

負債

項目

金額

項目

金額

固定資産

1,756,631百万円

固定負債

38,000百万円

流動資産

108,394百万円

流動負債

140,972百万円

合計

1,865,026百万円

合計

178,972百万円

 

 

(4) 本件吸収分割後の承継会社の状況(2020年4月1日現在)

 

承継会社

ア 商号

九州電力送配電株式会社

イ 所在地

福岡県福岡市中央区渡辺通二丁目1番82号

ウ 代表者の役職・氏名

代表取締役社長 廣渡 健

エ 事業内容

一般送配電事業、離島における発電事業及びこれらに付帯関連する事業

オ 資本金

20,000百万円

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、「九電グループ経営ビジョン2030」に掲げる「2030年のありたい姿」実現に向け、エネルギーサービス事業における「S+3E」を堅持しつつ、「当社グループの持続的成長と地域社会の発展」の視点を基本に以下を重点課題として研究開発に取り組んでいる。

(1) 電力の安全・安定供給やコスト低減のための研究開発

・高度なセンサ技術やAI・IоTなどのデジタル技術を活用した電力設備(発電・送変電・配電設備)の保全・運用に関する研究

・再生可能エネルギーの大量連系時における電力系統安定性、電力品質維持に関する研究

・火力発電所の適用炭種拡大や発電設備の保全業務の高度化・効率化に関する研究 など

(2) 再生可能エネルギーの導入拡大や低炭素社会実現のための研究開発

・再生可能エネルギーの導入拡大や出力制御量低減に資する発電量と需要予測精度向上に関する研究

・需要家側エネルギーリソースを活用した需給バランス調整に関する研究

・温排水等の未利用エネルギー有効利用に関する研究

・大型車向け充放電器開発など運輸部門の電化に関する研究

・既存石炭火力発電所からのCO2排出量削減に向けたバイオマス混合新燃料の開発

・水素や電力貯蔵技術等の新たなエネルギーリソースに関する技術動向調査 など

(3) 持続可能なコミュニティの共創に向けた研究開発

・ICTを活用した地域課題解決に資する研究

・低炭素で災害に強いまちづくりに必要な地域エネルギーシステムに関する研究

・九州の主力産業である農業の活性化に向けたスマート農業や植物工場に関する研究 など

当連結会計年度の当社グループの研究開発費は5,525百万円であり、うち、国内電気事業に係る研究開発費は4,831百万円、その他エネルギーサービス事業に係る研究開発費は135百万円、ICTサービス事業に係る研究開発費は557百万円である。