第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、「ずっと先まで、明るくしたい。」をブランド・メッセージとする「九電グループの思い」のもと、「低廉で良質なエネルギーをお客さまにお届けすることを通じて、お客さまや地域社会の生活や経済活動を支える」ことを使命に、事業活動を進めている。

なお、当社は、2023年3月、公正取引委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令を、九電みらいエナジー株式会社は排除措置命令を受けた。また、2023年4月、当社と九州電力送配電株式会社は、非常災害時等の対応業務以外で、九州電力送配電株式会社が所有するシステムを当社従業員が使用するなどにより、新電力顧客情報等を閲覧していたことが判明した件について、経済産業省より業務改善命令等を受領した。これらの事案の発生を受け、再発防止及びコンプライアンスを最優先にした事業活動をより一層徹底していく。

 

1 経営環境

 

世界情勢の不安定化に伴う燃料価格の高騰、電力需給のひっ迫などが発生し、人々の生活や社会経済活動を支える電力を低廉かつ安定的に供給することの重要性がこれまで以上に高まっている。

また、世界的な脱炭素の潮流は、国内ではクリーンエネルギー中心の社会経済や産業構造への転換に向けた動きとして、2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」にも色濃く反映されている。

当社グループは、日本政府の方針である「2050年カーボンニュートラル」や「2030年温室効果ガス排出削減目標」の達成に向け、エネルギー事業者としての積極的な貢献が期待されている。

さらに、デジタル技術の進展に伴うお客さまニーズの多様化や柔軟な働き方に対応すべく、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によるビジネスモデルや業務プロセスの抜本的変革が必要不可欠となるなど、現在の経営環境は大きな転換期にある。また、企業の価値創出の原動力として、人的資本経営の重要性がより一層高まっている。

 

2 中長期的な経営戦略

 

当社グループは、九州から未来を創る企業グループとして、経営環境が大きく変化するなかにおいても、事業を通じて「社会価値」と「経済価値」の双方を創出し、サステナブルな社会への貢献と九電グループの企業価値の向上を実現するサステナビリティ経営を推進している。

そのうえで、中長期の目指す姿として「九電グループ経営ビジョン2030」と「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」を定め、グループ一体となって取組みを進めている。

さらに、これらのビジョン実現に向けた経営上の重要課題「マテリアリティ」を特定し、その解決に向けた取組みを中期経営計画として具体的に反映させることで、着実な実践を図り、お客さまから信頼され、選ばれ続ける企業グループを目指していく。(図1、2)

 

 

[図1 マテリアリティ(サステナビリティ実現に向けた経営上の重要課題)]


 

 

[図2 サステナビリティに係る理念等の体系]


 

 

[九電グループ経営ビジョン2030(2019年6月策定)]

2030年のありたい姿の実現に向けた3つの戦略を掲げるとともに、その実現に向けた中間目標として、2025年度を対象に、財務目標(連結経常利益・自己資本比率)を設定している。(図3、4)
 さらに、2023年度から経営指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、「事業部門による主体的・自立的なROIC改善」と「ポートフォリオ管理の強化」を柱としたグループ大のマネジメントサイクルを推進することで、これまで以上に資本効率性を意識した経営を目指していく。(連結ROIC目標値:2025年度2.5%、2030年度3.0%)

[図3 九電グループ経営ビジョン2030]

〇 2030年のありたい姿


 

〇 経営目標(2030年度)


 

[図4 財務目標(2025年度)]

項 目

目 標

〇連結経常利益

・国内電気事業

・成長事業

1,250億円以上

750億円

500億円

〇自己資本比率

20%程度

 

                          ※ハイブリッド社債の資本性を考慮

 

 

 

[九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050(2021年4月策定)]

日本の脱炭素をリードする企業グループとなることを目指した「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」において、「電源の低・脱炭素化」と「電化の推進」に取り組む方針を定めるとともに、その実現に向けたアクションプランでは、2030年の経営目標(環境目標)や、KPI(重要業績評価指標)を設定するなど、カーボンニュートラル実現への道筋を示している。(図5)
 2050年のサプライチェーン温室効果ガス(GHG)排出量の「実質ゼロ」に挑戦するとともに、九州の電化率向上への貢献などにより、社会のGHG排出削減に大きく貢献していくことで、当社グループの事業活動全体の「カーボンマイナス」を2050年よりできるだけ早期に実現していく。

 

[図5 カーボンニュートラルの実現]

〇 九電グループが目指す姿


 

 

 

 

3 中長期的な経営戦略の実現に向けた取組み

 

戦略Ⅰ エネルギーサービス事業の進化

エネルギー情勢やお客さまニーズの多様化など、環境変化を先取りし、エネルギーサービスを進化させ、環境に優しく、低廉なエネルギーを安定的にお届けし続ける。

 

○ 発電・販売事業については、S(安全)+3E(エネルギーの安定供給、環境保全、経済性)の観点から、容量市場など新たな電力取引市場も最大限活用しつつ、最適なエネルギーミックスを追求していく。

再生可能エネルギーについては、グループ内の再エネ事業の統合を進め、国内外で開発を推進し、主力電源化を図っていく。

原子力発電については、CO排出抑制面やエネルギーセキュリティ面等で総合的に優れた電源であり、安全の確保を大前提として最大限活用していく。原子力の自主的かつ継続的な安全性向上に取り組むとともに、川内原子力発電所の運転期間延長認可取得に向けた対応などを着実に進めていく。また、分かりやすい情報発信やフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション活動を継続することで、地域の皆さまに「安心できる」と感じていただけるよう取り組んでいく。

火力発電については、最新鋭のLNG火力発電所の開発や、非効率石炭火力のフェードアウト対応に加え、水素・アンモニアの混焼に必要な技術の確立やサプライチェーンの構築など、環境面やコスト競争力、供給安定性のバランスを追求しつつ活用していく。

電力の安定供給については、電力需給変動リスクや燃料価格変動リスク等を踏まえた供給力の確保や燃料調達等を徹底するとともに、電力販売については、競争環境や、社会全体の環境意識の高まりを踏まえ、引き続きお客さまにお選びいただけるよう、エネルギーサービスの充実を図っていく。

 

○ 送配電事業については、九州電力送配電株式会社を中心に、公平性・透明性・中立性の確保に重きを置いた運営に努めていく。そのうえで、安定供給とコスト低減の両立を実現するとともに、再生可能エネルギーの最大限の受入れや効率的な設備運用等を目指し、送配電ネットワークの次世代化を推進していく。また、これまで培った技術力や資産などを活用し、事業領域の拡大に取り組んでいく。

 

○ 海外事業については、不安定な世界情勢や資源価格の大幅な変動などの多様化するリスクの見極めを行いつつ、当社がこれまで蓄積したノウハウやネットワークを活かして、進出エリアや事業領域の更なる拡大を図り、一層の収益拡大を目指していく。

 

戦略Ⅱ 持続可能なコミュニティの共創

地域・社会の課題解決に向けて、グループの強みやエネルギーサービス事業とのシナジー等を発揮できる都市開発やICTサービス等の事業に加え、新規事業・サービスの創出にも取り組んでいく。

 

○ 都市開発事業については、エネルギーやデジタルなど当社グループならではの付加価値の高い事業を展開し、収益を拡大するとともに、交流人口拡大や賑わいの創出など地域・社会の持続的発展に貢献していく。

 

○ ICTサービス事業については、DXが進展するなか、光ブロードバンド事業やモバイルサービス事業、データセンター事業等の既存事業に加え、ドローンサービスや地域情報プラットフォームサービスなど、地域・社会のニーズにお応えする新たなサービス創出にグループを挙げて取り組んでいく。

 

○ 自治体や地域団体との協働による産業振興や交流人口拡大に向けた事業など、地域課題解決に資する取組みを通して、九州地域全体の地方創生や当社グループの新たな事業創出につなげていく。

 

 

 

戦略Ⅲ 経営基盤の強化

持続的成長と中長期の企業価値向上に向けたグループ一体の挑戦により、経営を支える基盤を強化していく。

 

○ 事業活動に関する積極的かつタイムリーな情報発信や、広聴・提言機能の強化により、お客さまや地域の声を踏まえた経営を推進していく。

 

○ 安全と健康を最優先する企業活動を徹底することで、事業に関わる全ての人たちの安全を守り、その先にある安心・信頼につなげるとともに、全ての従業員が心身ともに健康で、活き活きと働ける会社をつくっていく。

 

○ 人的資本経営については、社員の自律性を刺激し活かす仕組みづくりや、知・経験の多様性を活かし共創する組織風土づくり、時間や場所に捉われず柔軟な働き方ができる仕組みづくり等、従業員エンゲージメントを高め、人財の価値を最大限引き出す取組みを推進していく。これらの取組みを通じて、人と組織が成長し続ける文化を醸成し、未来の価値を創出する企業グループを目指していく。

 

○ ICTを用いた業務効率化・高度化などDXの取組みを通じて、生産性の向上と新たな企業価値創造の強固な基盤を創っていく。

 

○ コーポレート・ガバナンスの充実や、コンプライアンス経営の推進、情報セキュリティの確保の徹底を図っていく。

  特にコンプライアンス経営については、独占禁止法に基づく行政処分を受けた件について、厳粛に受け止めるとともに、各命令の内容を精査・確認のうえ、今後の対応を慎重に検討していく。あわせて、今回の命令内容を踏まえた対策も織り込みながら、独占禁止法遵守に向けた取組みの一層の強化を図っていく。

  また、新電力顧客情報等の閲覧に関して、経済産業省より業務改善命令等を受領した件については、二度とこのような事態を引き起こすことがないよう、社長を筆頭とする経営層のリーダーシップのもと、社外の知見もいただきながら、全社員が一丸となって再発防止に取り組み、信頼回復に努めていく。

 

○ 財務基盤の安定化に向けて、当社は、株式会社みずほ銀行、株式会社日本政策投資銀行及び株式会社三菱UFJ銀行に対して、第三者割当の方法により、2,000億円の優先株式を発行することを2023年6月28日開催の定時株主総会に付議し、承認を得た。

  さらに、株主価値向上に向け、財務体質を改善し、株主還元の更なる充実に取り組んでいく。

 

 当社グループとしては、これらの取組みを通じて、ステークホルダーの皆さまへの価値提供を果たしていく。

 

(文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したもの)

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 (1) サステナビリティ全般

当社グループは、「九電グループサステナビリティ基本方針」のもと、事業活動を通じて地域やグローバルな社会課題解決に貢献することで、持続可能な社会への貢献とグループの中長期的な企業価値向上の実現を目指している。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。

 


 

<ガバナンス>

サステナビリティ経営の実践に向け、カーボンニュートラルをはじめとするESG(環境・社会・ガバナンス)の取組みを強力に推進するため、取締役会の監督下に、社長を委員長とし、社外取締役や関係統括本部長等を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を設置している。本委員会では、サステナビリティ全般に係る戦略・基本方針の策定(マテリアリティの特定)、施策実施状況の進捗管理に加え、気候変動や人的資本等の重要なサステナビリティ課題に関する戦略、リスク・機会についての審議・監督を行っている。また、本委員会の下には、「カーボンニュートラル・環境分科会」及び「地域・社会分科会」を設置し、環境・社会問題全般について、より専門的な見地から審議を行っている。

年に2回以上開催する本委員会の審議結果は、取締役会に遅滞なく報告しており、取締役会はサステナビリティに係る活動全般を監督している。

 

■サステナビリティ経営推進体制図

 


 

<戦略>

当社グループは、「九電グループの思い」及び「九電グループサステナビリティ基本方針」のもと、中長期的に目指す姿として、「九電グループ経営ビジョン2030」と「カーボンニュートラルビジョン2050」を定め、グループ一体となった取組みを推進している。

これらの方針・ビジョン実現に向けた経営上の重要課題をマテリアリティとして特定し、その解決に向けた具体的取組みを中期経営計画(中期ESG推進計画)に落とし込むことで、着実な実践を図っている。

持続的に企業価値(経済価値)を高めていくためには、「短期」のみならず、「中長期」の社会情勢や経営環境の変化を見据えたうえで、今後の成長の障壁となりうるマテリアリティに焦点をあてた取組みを強化することが極めて重要である。そのため、当社グループは、企業価値(経済価値)につながる要素を「①短期の機会最大化」「②中長期の機会拡大」「③リスクの低減」の3つに分解し、それぞれの視点からマテリアリティ解決に向けた取組みを推進している。

 

■サステナビリティ経営を通じた企業価値向上モデル

 


 

<リスク管理>

当社グループの経営に影響を与えるリスクについて、毎年リスクの抽出、分類、評価を行い、全社及び部門業務に係る重要なリスクを明確にしている。把握したリスクについては、対応策を各部門及び事業所の事業計画に織り込むとともに、複数の部門等に関わるリスク及び顕在化の恐れがある重大なリスクについて、関連する部門等で情報を共有した上で、対応体制を明確にし、適切に対処している。特に、社会と企業のサステナビリティ実現に係るリスクについては、サステナビリティ推進委員会及び取締役会にて審議し、マテリアリティの見直し要否の判断につなげるとともに、対応策を中期ESG推進計画やカーボンニュートラルアクションプラン等に反映し、進捗管理を行うことで着実な実践を図っている。

当社グループの経営成績、財務状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは、「3 事業等のリスク」に記載している。

 

<指標と目標>

当社グループでは、マテリアリティごとに目指す姿を設定するとともに、その着実な実現に向け、中期ESG推進計画において、各取組みの中期目標及び年度目標を設定の上、取組みの進捗を管理している。

 

■2023年度中期ESG推進計画


 

 

 (2) 気候変動

世界共通の課題である気候変動への対応は、エネルギー事業者にとって、事業のあり方そのものに影響しうる大きなリスクであると同時に、持続的成長に向けたビジネス変革への新たなチャンスである。当社グループは、責任あるエネルギー事業者として、また、再生可能エネルギー開発の長い歴史を持ち、東日本大震災以降いち早く原子力の再稼働を実現した低・脱炭素の業界トップランナーとして、今後も脱炭素社会をけん引するとともに、その取組みを更なる企業成長につなげるため、気候変動への対応をマテリアリティと位置づけ、グループ一体となった取組みを推進している。

 

<ガバナンス>

気候変動対応については、サステナビリティ推進委員会を中心としたガバナンス体制のもと、その取組みを推進している。

詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <ガバナンス>」に記載している。

 

<戦略>

当社グループが持続的に気候変動の緩和に貢献し、かつ成長し続けることができるよう、上昇温度が1.5℃と4℃のシナリオを想定し、リスク・機会等の分析を行っている。

また、その分析結果を踏まえた対応戦略については、「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」に反映させるとともに、具体的な行動計画を毎年策定する「中期ESG推進計画」の中に落とし込み、戦略実現の実効性を高めている。

 いずれのシナリオにおいても、低・脱炭素のトップランナーとして、アクションプランの取組みを実践することで、機会の最大化・リスクの最小化を実現していく。

 

■主なリスク・機会と対応戦略

項目

対応戦略

リスク

政策・規制

カーボンプライシング

・GHG(温室効果ガス)排出量削減

・エネルギー政策への提言・関与

非効率石炭フェードアウト

・アンモニア・水素の混焼技術確立

・LNG・カーボンフリー燃料等への振替

技 術

系統の安定性低下

・デジタルの活用による需給運用・系統安定化技術の高度化

評 判

資金調達コスト上昇

・アクションプランの着実な実行

・KPI(重要業績評価指標)進捗等含めた情報開示の充実

物 理

資源開発地の操業不能

・供給ソースの分散化

台風等による設備被害

・無電柱化の推進、災害対応力の向上

機会

技 術

再エネ開発推進による収益拡大

・強みである地熱・水力の開発

・導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマス等の開発

原子力設備利用率向上

・定期検査短縮、長期サイクル運転、電気出力向上

市 場

電化の進展による販売電力量増

・電化率向上に向けた家庭・住宅関連業者との連携強化

製品・

サービス

カーボンニュートラルニーズ拡大

・DER(分散型エネルギーリソース)制御技術・蓄電池を用

 いたアグリゲートビジネスの展開

・EⅤを活用した新たなビジネスモデルの検討

レジリエンスニーズ拡大

・ドローンサービスや無停電電源装置等の関連製品・サービス

 における他社との協業、競合他社との差別化

 

※:1.5℃、4℃のシナリオごとで各項目のリスク・機会の影響度・発現可能性は異なる

 

<リスク管理>

気候変動に係るリスクは、他のサステナビリティ課題に係るリスクと共に管理している。

詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <リスク管理>」に記載している。

 

<指標と目標>

低・脱炭素の業界トップランナーとして、2050年のサプライチェーンGHG排出量の実質ゼロにとどまらず、社会のGHG排出削減に大きく貢献する「カーボンマイナス」を2050年より早期に実現するというゴールを設定している。また、2030年の経営目標として、2050年からのバックキャストでチャレンジングな目標・KPIを設定し、その着実な達成に向けて、進捗を管理している。

 


 

■サプライチェーンGHG排出量の推移

 


 

 (3) 人的資本

脱炭素やDXの潮流等により経営の不確実性が大きく高まるとともに、働き手の価値観が多様化する中、人的資本充実に向けた取組みを加速し、その多様な価値観を価値創出につなげることが極めて重要である。

このため、九電グループは、以下の「人的資本充実に向けた基本的考え方」に基づき、「人と組織が成長し続ける組織文化の醸成により未来の価値を創出」するための人財戦略を展開し、持続的な企業価値向上を図る。

 

■人的資本充実に向けた基本的考え方

・「個人の思い(Will)と組織のビジョン等を結び付け、人と組織が共に成長しながら価値創出につなげて

 いく」ことを人的資本経営の中心とする。
・この実現に向け、経営層の強いリーダーシップのもと、人と組織が共に成長する企業文化の醸成に向けた

 仕組みづくりに取り組む。

 

 

<ガバナンス>

人的資本経営については、サステナビリティ推進委員会を中心としたガバナンス体制のもと、その取組みを推進している。

詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <ガバナンス>」に記載している。

また、人財戦略と経営戦略との連動をより一層強化するため、人的資本充実に向けた戦略立案・具体的取組みの推進にあたり、コーポレート戦略部門と人材活性化本部の協働体制を整備している。

 

<戦略>

「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向けて一人ひとりの主体的・自律的な行動を喚起するため、働き方改革、安全に関わる取組み、健康経営等の働きやすさを高める取組みや、人事処遇制度の見直し、社内公募・社内兼業等の働きがいを高める取組みを行っている。また、事業環境や領域の変化に応じ、経営戦略の実現に必要な専門知識・技術・経験等を有する人財や経営をリードする人財等の戦略人財を確保・育成している。

一方、事業環境や個々人の価値観が大きく変化する中において、一人ひとりの力を最大限引き出し、生産性向上やイノベーションにつなげていくには、組織風土変革にまで踏み込んだ取組みが不可欠である。

このため、対話を通じて組織のビジョン等への共感(従業員エンゲージメント)を高めることで、一人ひとりの意欲・能力の向上を図るとともに、それを組織の中で活かし、価値創出につなげる組織開発の取組みを強化する。また、これらを実現するためのQXプロジェクト(Qden Transformationプロジェクト)を立ち上げ、経営層の強いリーダーシップのもと、全社を挙げて取組みを加速していくとともに、人と組織が共に成長する企業文化の定着を図る。

 

 戦略実現に向けては、主要課題ごとに以下の通り取り組んでいく。

 

○ 価値共創・イノベーションの推進

一人ひとりの自律的な成長・挑戦を促すため、自己選択型研修や自己啓発支援等、自律的な学び・キャリア形成に関する自己選択機会を提供する等、主体的なチャレンジを支援する取組みを行っている。また、従業員のアイデアを起点に、社外とも連携しながら新しいビジネスやサービスを共創する取組みとして、「KYUDEN i-PROJECT」を実施している。QXプロジェクトでは、同様の課題認識を持つ個人同士のアイデア交流や、課題解決に向けた知見を有する個人からの助言等により、従業員一人ひとりの「しよう」「したい」という思い(Will)に基づく提案を実現につなげ、成果を高める仕組みづくり等を通じて、生産性・価値創出力の向上に取り組んでいく。

 

■従業員の主体的なチャレンジを支援する取組み

・社内公募、ジョブ・チャレンジ制度
・人財バンク制度
・社外での副業及び社内兼業の実施
・私費留学等の学び休職

 

 

○ ダイバーシティ&インクルージョンの推進

他企業経験者等の採用等を通じて、多様な知・経験を有する人財を確保するとともに、性別にかかわらない活躍支援等を実施しているまた、一人ひとりが時間と場所に捉われず、ライフスタイルに合わせて活躍できる環境づくりに取り組むとともに、育児の経験を通じた人間的な成長やタイムマネジメント力、新たな発想力の向上等をねらいとして、男性の育児休職取得推進にも継続的に取り組んでいる。QXプロジェクトでは、マネジメントのあり方変革に向けた研修や職場状況の診断等を通じて、知・経験の多様性を活かし共創する企業文化への変革・定着に取り組む。

 

 

■多様な経験等を有する人財の確保・活躍推進

項 目

主な取組み

多様な知・経験を有する

人財の確保

・他企業経験者等の採用(高度専門人財、他企業経験者等)

・副業・兼業の実施(社外での副業や社内兼業、社外人財の活用)

性別にかかわらない

活躍支援

・女性のキャリア形成を支援する個別相談及び情報提供

・男性、女性を対象とした仕事と家庭の両立に向けたセミナーの開催

時間と場所に捉われない

柔軟な働き方

・コアタイムのないフレックス勤務制度の導入

・フルリモート勤務の導入(本店職場)

知・経験の多様性を活かし共創する組織文化への変革・定着

・マネジメント変革に向けた研修(多様性を活かすマネジメント、

 エンゲージメントを高めるマネジメント等)

・エンゲージメントや共創等に関する職場状況の診断・フィードバック

 

 

○ 安全と健康の最優先

「安全はすべてに優先する」という認識のもと、その基本方針を示した「九電グループ安全行動憲章」を意識と行動のベースとして、安全に関わる取組みを推進している。2023年4月には、経営の基盤である当社グループ従業員の安全への決意と実践力を育み、グループの総力をあげて安全文化を創造し、進化させるための安全教育施設として、「安全みらい館」を新設した。また、あらゆる事業運営の基盤である従業員の健康を維持・増進することにより、従業員の意欲や活力を高め、その力で組織を活性化することで、永続的な会社の発展につなげることを目的とし、「九州電力健康宣言」及び「九州電力健康経営方針」のもとで、健康経営を推進している。

 

■健康経営の概要図                     ■健康経営の体制図

 


 

○ 戦略人財の確保・育成

「戦略人財の確保・育成」に向けては、経営戦略の実現に必要な専門知識・技術・経験等を有する人財を計画的に採用するとともに、高度な専門性を持つ人財を市場価値に基づき処遇する新たなキャリアルートを設けている。また、あらゆる業務の生産性向上や新たな価値創出に資するDX推進に向けて、全社員を対象とした教育や、DXを牽引する人財を育成するための専門的な教育を実施するとともに、高度な知見を有する社外人財の登用や協業にも積極的に取り組んでいる。さらに、事業環境が変化する中で経営をリードする人財の計画的な育成に向けて、経営者に必要なマインド・視座・判断軸を早い段階から涵養するため、経営リーダー塾を実施するとともに、複数の領域を経験するための人事ローテーションや、経営者としての経験を目的としたグループ会社の要職への配置等も実施している。

 

<リスク管理>

人的資本に係るリスクは、他のサステナビリティ課題に係るリスクと共に管理している。

詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <リスク管理>」に記載している。

 

<指標と目標>

「人と組織が成長し続ける組織文化の醸成により未来の価値を創出」することを目指す姿とし、その達成状況を測定する指標として、従業員の熱意や会社への共感度合いを示す「従業員エンゲージメント」及び価値創出につながっていることを評価する「一人当たり付加価値」をKGIとしている。また、目指す姿の実現に向けて、主要課題ごとにKPIを設定し、取組みの進捗状況を把握・管理している。

 

KGI

(2030年度)

主要課題

中期目標

(年度の記載がないものは2030年度)

2022年度実績

・従業員エンゲー

 ジメントの向上

 -従業員満足度

  スコア80%※1

 

・一人当たり付加

 価値※2の向上

 -2021年度比

  1.5倍

価値共創・イノベーションの推進

個人のWillを活かし、新たな価値を創出

・事業・サービス化件数(KYUDEN i-PROJECT)

 :30件以上(2030年度までの累計)

・提案・エントリー件数※3:10,000件

 

・13件(累計)

 

・新規施策

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

知・経験の多様性を活かす組織

・女性管理職就任率※4:30%以上※1

・マネジメント変革研修

 :全組織の長受講(2025年度)※1

・21.5%

・新規施策

安全と健康

最優先

・委託・請負先も含めた重大な労働災害ゼロ

・健康優良法人認定※1

・ストレスチェックにおける総合健康リスク

 :80pt以下※1

・16件

・ホワイト500認定

・76pt

 

戦略人財の

確保・育成

・DXフォロワー※5研修

 :全社員受講(2025年度)※1

・DXリテラシー研修

 :全社員受講

 

※1:実績集計範囲は当社及び九州電力送配電株式会社(その他の指標は当社グループ全体)

※2:売上高から外部購入価値(燃料費や委託費等)及び減価償却費を差し引いたもの(経常利益+人件費+賃借料+

   金融費用+租税公課等)

※3:個人やチームでの提案件数、全社アワード(表彰)へのエントリー件数

※4:候補層における一般的な係長級以上への就任率(役員を除く)

※5:デジタル技術及びデータ活用の基礎知識を有し、DXを自分事として捉え、積極的に推進する人財

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループ当社及び連結子会社の経営成績、財務状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。

 

(1) 競争環境等の変化

① 国内電気事業

当社グループは、発電・販売事業及び送配電事業を行っており、2022年度連結売上の大部分を占めている。

発電・販売事業については、気温・気候の変化、経済・景気動向、カーボンニュートラルへ向けた電化や省エネの進展、競合他社との競争状況の変化や燃料市場・電力取引市場の状況など外部環境変化により、総販売電力量や販売価格が大きく変動した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

なお、2022年度の当社グループの総販売電力量は960億kWhで前年度に比べ1.3%減となっている。

かかるリスクに対し、当社グループでは、原子力発電を最大限活用することなどにより供給量の確保や原価の低減に取り組んでいる。また、魅力ある料金プランやサービスを提供し、全社一丸となった営業活動の強化などにより国内電気事業の収益減少リスクの低減に取り組んでいる。

 

② 海外事業

当社グループは、これまで国内外の電気事業で培ってきた技術やノウハウを活用し、収益拡大が期待できる成長分野として、発電や送電などの海外事業を行っている。2023年3月末現在の海外事業における持分出力は284万kWで、2030年度までに500万kWに拡大することを目標としている。

海外事業には、カントリーリスクの顕在化、物価・金利・為替の変動、環境・エネルギー政策の見直しなど特有のリスクがある。また近年は、脱炭素化の流れの中、再生可能エネルギー、送配電、デジタル化などによる新たなビジネスやイノベーションなど事業機会が多様化しており、同時にリスクも多様化している。このため当初想定のリターンが得られず、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループは、案件ごとの管理体制の整備やモニタリングを実施し、リスクの早期把握や低減などのリスクマネジメントを行っている。また、案件ごとの収益性やリスクの評価を定期的に行い、事業ポートフォリオの最適化や収益向上を図っている。

 

③ その他エネルギーサービス事業

当社グループは、電気設備の建設・保守などの電力の安定供給に資する事業、ガス・LNG販売事業、石炭販売事業や再生可能エネルギー事業に取り組んでいる。

他事業者との競争、燃料国際市況の変動、再生可能エネルギーを巡る制度変更などの外部環境変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは、効率化によるコスト削減及び新たな技術への取組みにより、お客さまニーズに応じたエネルギーサービスを提供し、収益の向上を図るとともに、再生可能エネルギーを取り巻く事業環境変化を的確に捉えた開発を推進している。また、ガス・LNG販売事業のうち燃料上流権益については、案件ごとに収益性評価やリスク評価を行っている。

 

④ ICTサービス事業、都市開発事業、新規領域の事業

当社グループは、エネルギーサービス事業以外に、当社グループの強みを活かした成長事業として、ICTサービス事業、都市開発事業を展開している。

これらの事業は、社会ニーズの変化、技術の進展・普及、他社との競争激化、物価上昇など、事業環境の変化により、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

また、新たな収益源を生み出す観点から、新規領域を含めたイノベーションにも取り組んでいるが、既存事業領域と異なるリスクを有しており、顕在化した場合は、投資額に見合うリターンを得られず、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは案件ごとに、収益性評価やリスク評価などを行っている。

 

(2) 原子力発電を取り巻く状況

① 原子力の安定稼働

当社グループは、原子力発電をGHG排出抑制面やエネルギーセキュリティ面などで総合的に優れた電源であると考えており、国の新規制基準を遵守することに加え、更なる安全性・信頼性向上への取組みを自主的かつ継続的に進めているなど、安全の確保を大前提に、原子力を最大限活用することとしている。

しかしながら、法令・基準などの変更により原子力発電所の稼働が制約される場合や原子力発電所に係る訴訟の結果によっては、原子力発電所の運転停止を余儀なくされ、原子力より割高である代替電源費用の発生や設備投資の増加など当社グループの業績に大きな影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し当社グループは、法令・基準などの変更については、国の審査に真摯かつ丁寧に対応するとともに、追加の安全対策が必要な場合は着実に工事を進めていく。また、訴訟においては、当社グループの主張を十分に尽くし、原子力発電所の安全性などについてご理解いただけるよう努めている。

 

② 原子燃料サイクル・原子力バックエンド事業

当社グループは、原子燃料サイクル事業の実施主体である日本原燃株式会社に対して、2023年3月末時点で780億円の保証債務を保有しており、日本原燃株式会社の財務状態が悪化した場合、保証の履行を債権者より求められる可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは日本原燃株式会社の再処理事業等の早期竣工及びその後の安定稼働に向けて、応援要員の派遣等の支援を行っている。

また、超長期の事業である原子力施設の廃止措置や使用済燃料の再処理・処分などの原子力バックエンド事業等の費用は、今後の制度見直しや将来費用の見積額の変更などによって変動することから、当社グループの業績に影響を与える可能性はあるが、現時点において、当社グループは、国の制度措置等に基づき、必要な費用を計上・拠出していることから、これらのリスクは一定程度低減されている。

上記の費用のうち、当社が実施主体である原子力施設の廃止措置に係る費用については、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に規定された特定原子力発電施設の廃止措置について資産除去債務を計上するとともに、これに対応する費用は「原子力発電施設解体引当金に関する省令」等の規定に基づき、毎年度、原子力発電施設解体引当金等取扱要領に定められた算式(解体に伴って発生する廃棄物の種類及び物量から解体に要する費用を見積もる方法)により算定した原子力発電施設解体費の総見積額を発電設備の見込運転期間にわたり、定額法により費用計上している。ただし、エネルギー政策の変更等に伴って原子炉を廃止する場合については、特定原子力発電施設の廃止日の属する月から起算して10年が経過する月までの期間にわたり、定額法により費用計上している。また、使用済燃料再処理機構や原子力発電環境整備機構が実施主体である使用済燃料の再処理・処分などに係る費用については、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律」及び「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に規定する拠出金を、原子力発電所の運転に伴い発生する使用済燃料や特定放射性廃棄物等の量に応じて費用計上している。

 

(3) 市場価格の変動

① 燃料価格の変動

当社グループの発電事業における主要な燃料であるLNGや石炭の調達価格は、燃料調達先の設備・操業トラブル、自然災害や政治・経済動向などによる燃料国際市況の変動及び外国為替相場の変動影響を受けることがあり、調達価格の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

特にLNGについては、長期間貯蔵することが困難であり貯蔵量が限られることから、供給元の情勢などによるLNG供給の減少、電力需要の急伸及び発電所の計画外停止などにより、電力の安定供給のためLNGを緊急に調達した場合、調達価格によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは、燃料の調達先の分散化や燃料トレーディングなどによる燃料調整機能と電力の自社需給関連機能を一体的に運用することで調整機能を高め、調達の安定性・柔軟性の確保を行っている。

また、燃料の購入などに伴う外貨建債務などについては、必要に応じて為替予約取引や燃料価格スワップ取引などを利用することにより、為替変動リスク及び燃料価格変動リスクを低減している。

なお、燃料価格や外国為替相場の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」により、当社グループの業績への影響は緩和されている。ただし、反映までの期ずれがあることや、経過措置料金に反映できる上限があるなどの理由により緩和は一定程度となる。

 

② 金利の変動

当社グループは、国内電気事業に必要な発電設備、送変電設備及び配電設備といった多数の設備を保有している。これら設備の建設や更新工事などを計画的に進めていくために多額の資金が必要である。

当社グループは、これらの必要資金に充当するため自己資金のほか金融機関からの借入及び社債の発行により資金調達しており、当社グループの有利子負債残高は、2023年3月末時点で3兆9,915億円総資産の71%に相当となっている。このため、今後の市場金利の変動が、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

ただし、有利子負債残高の96%が社債や長期借入金であり、その大部分を固定金利で調達していることなどにより、金利の変動による当社グループへの影響を限定化している。

 

③ 卸電力取引所における取引価格の変動

当社グループでは、低廉で安定した電気をお客さまにお届けするため、自社電源の運用や相対取引の他に、卸電力取引所を活用して電源調達を行っている。また、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」による電源調達を行っており、調達価格は卸電力取引所の取引価格と連動する。

卸電力取引所の取引価格は、売り入札(供給)と買い入札(需要)のバランスによって決定するため、猛暑・厳冬などによる電力需要の急伸又は発電所の計画外停止・電力系統の事故などによる供給力の低下により取引価格が急騰した場合は、購入電力料が増加し、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは、燃料価格や電力需給の動向に関する想定に基づき、電源調達手段を組み合わせた電源ポートフォリオの最適化やデリバティブ取引の活用などを行っている。

 

(4) 電気事業関係の制度変更等

政府は、「第6次エネルギー基本計画」や「GX実現に向けた基本方針」のもと、エネルギーの安定供給をはじめ、電力市場の競争の深化やカーボンニュートラルの実現などの公益的課題の達成に向け、エネルギー政策に関する制度設計や市場整備を進めている。

上記を含めた電気事業を取り巻く制度の変更などに伴い、規制や制度に適合するための設備投資や費用などの増加、当社グループが保有する発電設備の稼働率の低下や各種電力取引市場からの収益変動などが発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、迅速かつ的確に対応できるよう、エネルギー政策、電気事業に係る制度、環境規制などに関する情報を積極的に収集の上、関係箇所で連携し、戦略や具体的対応の検討を実施している。

 

(5) 気候変動に関する取組み

気候変動への関心が高まる中、世界的に低・脱炭素社会実現に向けた取組みが進んでおり、政府はGX(グリーントランスフォーメーション)を通じて脱炭素、エネルギーの安定供給、経済成長を同時に実現すべく、国内でも「GX実現に向けた基本方針」に基づいた規制の見直し・強化が予想される。

特に、カーボンプライシングの導入や化石燃料の規制が実施された場合、発電設備などの電力供給設備に対する投資、費用が増大するなど、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

また、消費者や社会からの脱炭素ニーズの高まりや環境技術の進展に適応できない場合、事業の停滞など当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

さらに、金融・資本市場でも、ESG環境・社会・ガバナンス情報を重視する傾向が強まっており、低・脱炭素化への取組みが不十分、あるいは気候変動に関する情報開示に的確に対応していないなどと判断された場合、株主・投資家から信頼・評価を失い、株価低迷や資金調達の困難化など、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対応するため、当社グループは、「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」を策定し、エネルギー供給面(電源の低・脱炭素化)と需要面(電化の推進)の両面から低・脱炭素化に取り組み、日本の脱炭素をリードする企業グループ及び「カーボンマイナス」の実現を目指す。

この具現化に向けて、「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を策定し、2030年の経営目標(環境目標)や、その達成に向けたKPI(重要業績評価指標)を設定した。なお、温室効果ガス削減目標について国内大手エネルギー事業者で初めて「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」から認定を取得した。

また、当社グループは、気候変動対応を含めたESGの取組みを推進するため、「サステナビリティ推進委員会」、担当役員及び専任部署を設置し、情報開示の充実やステークホルダーとの対話を推進している。

 

(6) 設備事故・故障、システム障害

① 自然災害

当社グループは、お客さまの生活や社会経済活動に欠かせない電力の安定供給に必要な発電設備や送変電設備、配電設備などの電力供給設備をはじめ、電気事業の遂行に必要となる多数の設備を広範囲に設置している。

地震・津波・台風・集中豪雨など自然災害が発生した場合には、設備・サプライチェーンが被害を受け、広範囲・長期間の停電により社会経済活動に重大な影響を及ぼし、社会的信用が低下する可能性があるとともに、収益の減少や多額の復旧費用など、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは、設備の耐力強化や復旧資機材の事前確保などを進めるとともに、自治体や自衛隊などの関係機関との協力体制構築により、災害予防、災害応急対策及び災害復旧に取り組んでいる。

また、九州電力送配電株式会社は一般送配電事業者10社連名による「災害時連携計画」を作成し、大規模災害が発生した場合には、他社からの応援受け入れや関係機関との連携などによる迅速な復旧対応が可能な体制を構築している。

なお、原子力施設については、自然災害に対する国の新規制基準の対応に加え、国内外の最新知見などを活かしながら継続的に自主的対策を実施することで、自然災害に対する強化を図っている。

 

② 設備の高経年化等

当社グループは九州を中心に発電設備、送変電設備、配電設備などの多数の電力供給設備や情報通信設備などを保有している。

大規模発電所や超高圧送電線などで、経年劣化により故障発生確率が上昇し、重大な設備事故が発生した場合、当社グループの経済損失が発生するとともに、広範囲・長期間の停電により社会経済活動に重大な影響を及ぼし、社会的信用が低下する可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは設備巡視による危険箇所の事前把握や設備状態に応じたきめ細やかなメンテナンスに取り組んでいる。また、経年の進んだ電力供給設備に対する重点的な点検・補修に加え、計画的な高経年設備の更新に取り組んでいる。さらに、ドローン、画像解析、AIなどの新技術を活用した設備保全の高度化・効率化にも取り組んでいる。

 

③ システム障害

当社グループでは、お客さま情報や社内情報などを扱う情報処理システムを開発・運用している。また、成長事業として、社外に対してICTサービスを提供している。

このため、これら情報処理システムの動作不具合や停止などのトラブルにより、情報漏洩、業務の停滞及びICTサービス支障が発生した場合、事後対応費用や信頼の失墜など当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは24時間365日のシステム運用監視や計画的な設備更新など、システム障害の未然防止に取り組む一方、システム障害が発生した場合の速やかな初動・復旧体制の整備などを行い、万一の事態に備えている。

 

④ サイバー攻撃

当社グループに対するサイバー攻撃は年々増加しており、攻撃方法も巧妙かつ悪質化するなど、その脅威はますます増大している。

当社グループでは国内電気事業、ICTサービス事業など、幅広く事業を展開しており、サイバー攻撃により、機密性の高い内部情報や個人情報が流出する可能性がある。

また、海外では電力供給設備に対するサイバー攻撃による停電が発生しており、当社グループの電力供給設備がサイバー攻撃を受けた場合、電力の供給が停止する可能性がある。

いずれの場合にも、当社グループの信頼が失墜するとともに、事後対応費用が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループではサイバーセキュリティ対策室を中心に、多層防御として、組織的・人的・物理的・技術的な対策を講じており、当社グループ全体の情報セキュリティレベルの維持向上を図っている。

 

(7) オペレーショナルリスク

① 業務上の不備

当社グループは、国内電気事業をはじめ、幅広く事業を展開しており、従業員の過失などによる業務上の不備が生じた場合、お客さまへのサービス提供に支障が出るのみならず社会活動に大きな影響を及ぼす可能性がある。

特に、国内電気事業においては、電力システム改革や再生可能エネルギーの普及などにより、従来と比べ需給運用が複雑化している。作業ミスなどにより、感電など人の死傷や広範囲・長期間の停電などが発生した場合、当社グループの信頼が失墜するとともに、事後対応費用など当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは電力供給設備の作業時のミス未然防止に向けて、綿密な事前の計画、作業管理体制を整備するとともに、作業の教育・訓練を実施している。

また、労働災害・事故の防止にあたっては、「九電グループ安全行動憲章」に基づき、事業に関わるすべての人たちの安全と安心の永続的な確保に向け、重大災害の防止対策や災害の未然防止に向けた先取り型の安全諸活動にグループ一体となって取り組んでいる。この取組みにあたっては、社長を委員長とする「九州電力安全推進委員会」を中心とした安全推進体制を整備し、安全を最優先する風土・文化の醸成に努めている。

 

② 法令違反等

当社グループは、国内電気事業をはじめ、幅広く事業を展開しており、関連する法令や規制は多岐にわたる。また海外での事業運営においては、当該国の法的規制の適用を受けている。

当社グループでは、これらの様々な法的規制の遵守に努めているが、各種法令や電力システム改革に伴う行為規制などに対する理解が不十分または法令などが変更された際の対応が適切でなく、法令などに違反したと判定された場合や、従業員による個人的な不正行為などを含めて社会的要請に反した場合は、行政指導や行政処分、信頼の失墜、事後対応費用など、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

かかるリスクに対し、当社では法令理解の浸透を通じた法的規制の遵守はもとより、社会的規範や企業倫理を守ることをコンプライアンス経営と定め、社長を委員長とするコンプライアンス委員会のもと、業務執行機関の長を「コンプライアンス責任者」として、活動計画を策定・実践するとともに、社内外に相談窓口を設置するなどの体制を整備し、コンプライアンスを推進している。

また、グループ会社に対しては、コンプライアンス情報の共有や意見交換などを行い、グループ会社と一体となった取組みを推進しているほか、グループ会社の指導・支援に関する管理部門の役割を明確化するなど、当社グループ全体での推進体制の強化を図っている。

なお、当社及び九電みらいエナジー株式会社は、公正取引委員会から独占禁止法第3条不当な取引制限の禁止に違反する行為があったとして、2023年3月30日に排除措置命令及び課徴金納付命令を受けた。これに伴い、今後の課徴金納付の可能性に備えるため、当該課徴金納付命令に基づく金額27億円を、独禁法関連損失引当金繰入額として特別損失に計上している。

また、九州電力送配電株式会社及び当社において、行為規制にかかる情報漏洩及びその情報の不正閲覧があり、2023年4月17日、両社は経済産業大臣から電気事業法に基づく業務改善命令を受けた。

これらの事案の発生を受け、再発防止及びコンプライアンスを最優先にした事業活動をより一層徹底していく。

 

 

③ 人権侵害

従業員、お客さま及びサプライチェーンにおいて、差別、製品・サービスによる事故、環境汚染・破壊、地域住民の権利の不適切な制限及びハラスメントといった人権侵害が起きた場合、社会的信用の低下とともに取引停止・調達困難・訴訟などによる業務支障や費用増加の可能性がある。

かかるリスクに対し、当社グループでは、「九電グループ人権方針」を策定し、教育・研修の実施やサプライチェーンの管理など人権尊重に係る取組みを行っている。

 

④ 環境汚染・破壊

環境負荷を低減する取組みが不十分な場合や、サプライチェーンにおいて当社グループまたは取引先が環境汚染などを引き起こした場合、社会的信用の低下とともに取引停止・調達困難・訴訟などによる業務支障や費用増加の可能性がある。 

かかるリスクに対し、当社グループでは、環境アセスメントによる生物多様性の保全措置の実施、産業廃棄物の適正管理・処理の実施、資源循環の推進、グリーン調達の推進など、事業活動に伴う環境負荷及び環境リスクの低減に取り組んでいる。

 

⑤ 人財・スキル不足

デジタル化の進展に伴う当社の事業運営に求められる能力・スキルの高度化や、国内の労働力人口の減少が進む中、継続的に質の高い商品、サービスをお客さまに提供するためには、優秀な人財の確保やそのスキル向上が重要である。

当社グループの国内電気事業は、電力供給設備の運用に技術・ノウハウの継承が必要であり、必要な人財の確保・育成ができなかった場合には、業務品質の低下や生産性の低下など当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

また、成長事業における新たな事業創出などにより、収益を生み出せる人財を確保・育成していく必要があり、そうした人財の確保・育成ができなかった場合、今後の持続的な成長を妨げ、業績に影響を及ぼす可能性がある。

かかるリスクに対し、当社は毎年、中長期的な想定に基づく採用計画を策定し、新卒採用に加えて、高度・専門人財などの中途採用も実施することで新たな事業領域を含め必要な人財の確保に努めている。また、「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向け、特に必要となる行動を整理し、それらを職場で実践することで、成長につなげていくことができる人財の育成に取り組んでおり、専門力向上、技術継承、イノベーション創出、DXなどに資する様々な教育・研修を実施している。

更に、当社グループの総合力強化を目指し、グループ合同研修の実施や当社とグループ会社間の人財交流を行うなど、グループ全体の人財育成にも取り組んでいる。

そのほかにも、ダイバーシティ推進の観点から、女性、高年齢者、障がい者など、属性のみならず、多様な知や経験を有する人財が活躍できる職場環境を整備するとともに、人事処遇制度を見直し、多様な人財が更なる働きがいを持って仕事に取組める環境づくりを進めている。

 

(8) その他

① 固定資産の減損

当社グループは多数の設備を保有しており、その資産及び資産グループが生み出す将来キャッシュ・フローは、当社グループが置かれる経営環境の変化の影響を受ける。

このため、総販売電力量の減少、販売価格の低下、原子力発電所の計画外停止、発電設備の稼働率低下など、様々なリスクの顕在化によって収益性が低下した結果、将来キャッシュ・フローが減少し投資額の回収が見込めなくなった場合は、固定資産の減損により、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

② 繰延税金資産の取崩し

当社グループでは、主に当社において、過年度の原子力発電所停止の長期化や当年度のロシア・ウクライナ情勢などに伴う燃料価格・卸電力市場価格の上昇などを原因として税務上の繰越欠損金が生じているが、これに係る繰延税金資産については、将来の課税所得の見積りに基づいて、その回収可能性を判断している。

このため、総販売電力量の減少、販売価格の低下、原子力発電所の計画外停止など、課税所得に重要な影響を及ぼすリスクが顕在化し、将来の課税所得の悪化が見込まれることになった場合は、繰延税金資産の取崩しにより、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①  経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大や物価上昇のなか、感染拡大防止と経済活動の両立等による個人消費の回復などにより、緩やかに持ち直している。九州経済も、同様に個人消費が回復するとともに、輸出・生産について自動車生産が回復するなど、総じて持ち直している。

当社グループにおいては、「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向けて、グループ全体が更に一体感を増し、国内電気事業をはじめ、海外事業・ICTサービス事業・都市開発事業など、様々な分野において挑戦を加速してきた。また、安全性の確保を前提とした原子力の最大限の活用などによる「電源の低・脱炭素化」や「電化の推進」など、カーボンニュートラルの実現に向けた取組みを着実に進めるとともに、事業活動全般にわたる徹底した効率化に、グループ一体となって取り組んできた。

当連結会計年度の業績については、燃料価格の上昇により燃料費調整の期ずれ影響の差損が発生したことに加え、原子力発電所の稼働減により燃料費が増加したことや、卸電力市場価格の上昇により購入電力料が増加したことなどから、赤字となった。

当連結会計年度の小売販売電力量については、域内の契約電力は増加しているものの、域外の契約電力が減少していることなどにより、前連結会計年度に比べ3.6%減の765億kWhとなった。また、卸売販売電力量については、8.9%増の194億kWhとなった。この結果、総販売電力量は1.3%減の960億kWhとなった。

小売・卸売に対する供給面については、原子力をはじめ、火力・揚水等発電設備の総合的な運用等により、また、エリア需給については、調整力電源の運用及び国のルールに基づく再エネ出力制御の実施等により、安定して電力を供給することができた。

当連結会計年度の連結収支については、収入面では、国内電気事業において、燃料価格の上昇に伴う燃料費調整の影響などにより小売販売収入が増加したことに加え、卸売販売収入が増加したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度に比べ4,779億円増(+27.4%)の2兆2,213億円、経常収益は4,834億円増(+27.4%)の2兆2,461億円となった。

支出面では、国内電気事業において、燃料価格の上昇や原子力発電所の稼働減などにより燃料費が増加したことに加え、卸電力市場価格の上昇などにより購入電力料が増加したことなどから、経常費用は6,024億円増(+34.8%)の2兆3,327億円となった。

以上により、経常損益は866億円の損失、親会社株主に帰属する当期純損益は渇水準備引当金の取崩しや、有価証券売却益及び独禁法関連損失引当金繰入額をそれぞれ特別利益及び特別損失に計上したことなどから564億円の損失となった。

 

 

報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。

 

 

当連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

対前年度増減率
(%)

金額(百万円)

発電・販売事業

売 上 高

1,930,937

27.2

経常損失(△)

△143,558

送配電事業

売 上 高

708,980

18.5

経常利益

14,120

96.6

 海外事業

売 上 高

6,245

44.2

経常利益

4,459

82.1

その他エネルギーサービス事業

売 上 高

261,140

34.4

経常利益

29,240

54.7

ICTサービス事業

売 上 高

119,389

6.2

経常利益

6,526

6.9

都市開発事業

売 上 高

24,957

0.2

経常利益

3,218

△1.7

 

 (注) 1 当連結会計年度より報告セグメントを変更している。

      2 対前年度増減率の数値は、セグメント変更後の区分により作成している。

 

 [参考]国内電気事業再掲

 

当連結会計年度
(2022年4月1日から
  2023年3月31日まで)

対前年度増減率
(%)

金額(百万円)

 国内電気事業

売 上 高

2,008,619

28.0

経常損失(△)

△129,871

 

 (注) 「発電・販売事業」と「送配電事業」との内部取引消去後の数値を記載している。

 

②  資産、負債及び純資産の状況

資産は、原子力安全性向上対策工事等に伴う固定資産の増加に加え、棚卸資産などの流動資産が増加したことから、前連結会計年度末に比べ2,613億円増(+4.9%)の5兆6,036億円となった。

負債は、有利子負債が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ3,204億円増(+6.9%)の4兆9,864億円となった。有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ3,534億円増(+9.7%)の3兆9,915億円となった。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上や配当金の支払いによる減少などにより、前連結会計年度末に比べ591億円減(△8.7%)の6,172億円となった。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.7ポイント低下し10.4%となった。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、国内電気事業において、小売販売収入や卸売販売収入の増加はあったが、燃料代支出や購入電力料支出の増加などにより、前連結会計年度に比べ2,273億円収入減(△88.2%)の305億円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投融資の回収による収入の増加はあったが、設備投資による支出の増加などにより、前連結会計年度に比べ79億円支出増(+2.5%)の3,288億円の支出となった。

 

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れやコマーシャル・ペーパーの発行・償還による収入の増加などにより、前連結会計年度に比べ2,453億円収入増(+308.9%)の3,247億円の収入となった。

以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ288億円増加し、2,706億円となった。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループの事業内容は、国内電気事業(発電・販売事業及び送配電事業)が大部分を占め、国内電気事業以外の事業の生産、受注及び販売の状況は、グループ全体からみて重要性が小さい。また、国内電気事業以外の事業については、受注生産形態をとらない業種が多いため、生産及び受注の状況を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため、以下では、生産及び販売の状況を、国内電気事業における実績によって示している。

 

① 発受電実績

 

種     別

当連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

対前年度増減率
(%)

電力量(百万kWh)


 

 

 

 

 

 水力発電電力量

 

4,417

△2.7

 火力発電電力量

 

35,506

36.9

 原子力発電電力量

 

20,077

△37.0

 新エネルギー等発電電力量

 

1,330

0.5

 融通・他社受電電力量

 

41,779

0.1

 (水力再掲)

(1,536)

(19.8)

 (新エネルギー等再掲)

(19,473)

(9.3)

 揚水発電所の揚水用電力量等

 

△2,309

0.2

   合     計

 

100,801

△2.2

 損失電力量等

 

4,834

△16.7

 総販売電力量

 

95,967

△1.3

 出水率

 

88.2%

 -

 

 

(注) 1 百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。

   2 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社、九電みらいエナジー株式会社)の合計値(内部取引消去後)を記載している。

3 発電電力量は、送電端の数値を記載している。

4 「新エネルギー等」は、太陽光、風力、バイオマス、廃棄物及び地熱の総称である。

5 揚水発電所の揚水用電力量等は、貯水池運営のための揚水用に使用する電力量及び自己託送の電力量である。

6 出水率は、当社の自流式水力発電電力量の1991年度から2020年度までの30か年平均に対する比である。

 

② 販売実績

 

種     別

当連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

対前年度増減率

(%)

販売電力量

(百万kWh)

 小売販売電力量

76,546

△3.6

 

  電灯

24,172

△3.3

 

 電力

52,374

△3.8

 卸売販売電力量

19,420

8.9

 総販売電力量

95,967

△1.3

料金収入

(百万円)

小売販売収入

1,519,895

23.8

 

 電灯料

571,772

10.3

 

 電力料

948,123

33.5

卸売販売収入

273,022

42.8

合 計

1,792,918

26.3

 

 

(注) 1 販売電力量の百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。

2 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社、九電みらいエナジー株式会社)の合計値(内部取引消去後)を記載している。

3 小売販売収入は小売販売電力量、卸売販売収入は卸売販売電力量に対応する料金収入である。

4 卸売販売電力量には間接オークションに伴う自己約定を含んでいる。

5 電灯料及び電力料には「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」により国が定める値引きの原資として受領する補助金収入は含んでいない。

 

③ 資材の状況

 石炭、重油、原油、LNGの受払状況

 

区分

当連結会計年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

期首残高

対前年度
増減率
(%)

受入

対前年度
増減率
(%)

消費

期末残高

対前年度
増減率
(%)

発電用

対前年度
増減率
(%)

その他

対前年度
増減率
(%)

石炭(t)

407,325

△10.7

7,577,001

43.9

7,379,733

38.6

7,604

596,989

46.6

重油(kl)

84,559

△23.3

215,115

0.9

214,519

△0.9

24,134

8.8

61,021

△27.8

原油(kl)

917

△95.5

△3

920

0.3

LNG(t)

184,810

3.7

2,247,023

26.1

2,131,417

33.2

117,477

△32.6

182,939

△1.0

 

 

(注) 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社)の合計値を記載している

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

ア 売上高(営業収益)及び経常損益

売上高(営業収益)は、前連結会計年度に比べ4,779億円増(+27.4%)の2兆2,213億円、経常収益は4,834億円増(+27.4%)の2兆2,461億円となった。一方、経常費用は6,024億円増(+34.8%)の2兆3,327億円となった。以上により、経常損益は1,190億円減866億円の損失となった。

 

報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。

[発電・販売事業]

発電・販売事業は、国内における発電・小売電気事業等を展開している。

売上高は、燃料価格の上昇に伴う燃料費調整の影響などによる小売販売収入の増加に加え、卸売販売収入が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ4,133億円増(+27.2%)の1兆9,309億円となった。

経常損益は、燃料価格の上昇により燃料費調整の期ずれ影響の差損が発生したことに加え、原子力発電所の稼働減により燃料費が増加したことや、卸電力市場価格の上昇などにより購入電力料が増加したことなどから、赤字幅が1,405億円拡大し1,435億円の損失となった。

 

[送配電事業]

送配電事業は、九州域内における一般送配電事業等を展開している。

売上高は、卸売販売収入が再生可能エネルギー電源からの買取増に伴う卸売販売電力量の増等により増加したことや、託送収益がインバランスに係る収益の増加及び需給調整市場に係る調整交付金の単価増等により増加したことなどから、前連結会計年度に比べ1,106億円増(+18.5%)の7,089億円となった。

経常利益は、購入電力料がインバランスに係る費用の増加及び再生可能エネルギー電源からの買取額の増加等により増加したが、売上高が増加したことなどから69億円増(+96.6%)の141億円となった。

 

[海外事業]

海外事業は、海外における発電・送配電事業等を展開している。

売上高は、送電事業に係る収入の増加などにより、前連結会計年度に比べ19億円増(+44.2%増)の62億円、経常利益は、持分法による投資利益の増加などもあり、20億円増(+82.1%)の44億円となった。

 

[その他エネルギーサービス事業]

その他エネルギーサービス事業は、電気設備の建設・保守など電力の安定供給に資する事業、お客さまのエネルギーに関する様々な思いにお応えするため、ガス・LNG販売、石炭販売、再生可能エネルギー事業等を展開している。

売上高は、ガス・LNG販売価格の上昇や連結子会社において2022年11月に石炭販売事業を開始したことなどにより、前連結会計年度に比べ668億円増(+34.4%)の2,611億円、経常利益は103億円増(+54.7%)の292億円となった。

 

[ICTサービス事業]

ICTサービス事業は、保有する光ファイバ網やデータセンターなどの情報通信事業基盤や事業ノウハウを活用し、データ通信、光ブロードバンド、電気通信工事・保守、情報システム開発、データセンター事業等を展開している。

売上高は、情報システム開発受託の増加などにより、前連結会計年度に比べ69億円増(+6.2%)の1,193億円、経常利益は4億円増(+6.9%)の65億円となった。

 

[都市開発事業]

都市開発事業は、都市開発・不動産・社会インフラ事業等を展開している。

売上高は、オール電化マンション販売の減少はあるものの、不動産賃貸収入の増加などにより、前連結会計年度並みの249億円、経常利益は前連結会計年度並みの32億円となった。

 

イ 渇水準備金引当又は取崩し 

当連結会計年度は、電気事業法の規定に基づき、特例許可による渇水準備引当金の一部取崩しについて、経済産業大臣から許可を得たことや出水率が88.2%と平水(100%)を下回ったことから、渇水準備引当金を50億円取り崩した。特例許可の詳細については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係)」に記載している。

 

ウ 特別利益 

当連結会計年度は、有価証券売却益により112億円を特別利益に計上した。

 

エ 特別損失 

当連結会計年度は、独禁法関連損失引当金繰入額により27億円を特別損失に計上した。

 

オ 法人税等

法人税等は、当連結会計年度に発生した繰越欠損金に係る繰延税金資産を計上したことなどによる影響で、法人税等調整額が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ353億円減△185億円となった。

 

カ 親会社株主に帰属する当期純損益

親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ633億円減564億円の損失となった。1株当たり当期純損益は133.90円減123.81円の損失となった。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  ア キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当社グループのキャッシュ・フローの状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載している。

 

イ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、燃料代などの支払いや設備投資及び投融資、並びに借入金の返済及び社債の償還などに資金を充当している。

これらの資金需要に対して、自己資金に加え、社債や借入金により資金調達を行うとともに、一時的な資金需要の変動に対しては、コマーシャル・ペーパーなどにより機動的な対応を行っている。

また、流動性リスクについては、月次での資金繰により資金需要を的確に把握するよう努めるとともに、コミットメントラインや当座貸越、及びキャッシュ・マネジメント・サービスなどを活用することとしている。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。重要な会計方針については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表  注記事項  (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。
 当社グループは、連結財務諸表を作成するにあたり、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、海外発電事業への投資及び海外における発電所建設等のサービスに係る金融資産の評価、貸倒引当金、退職給付に係る負債及び資産、資産除去債務などに関して、過去の実績等を勘案し、合理的と考えられる見積り、判断を行っているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。このうち、特に重要なものは繰延税金資産の回収可能性と海外発電事業への投資及び海外における発電所建設等のサービスに係る金融資産の評価であり、詳細については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

④ 目標とする経営指標の達成状況等

当社グループは、「九電グループ経営ビジョン2030」に向けた中間目標として、「連結経常利益1,250億円以上(2025年度)」「自己資本比率20%程度(2025年度末)」の財務目標を設定しており、当連結会計年度においては、原子力発電所の稼働減による燃料費の増加や、燃料価格上昇に伴う燃料費調整制度の期ずれ影響等により、経常損益は866億円の損失、自己資本比率10.4%となった。

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した財務目標及び経営目標の実現に向けて、カーボンニュートラルに貢献する電化の推進などによる国内電気事業の収益拡大に加え、再生可能エネルギー事業や海外事業をはじめとする成長事業への投資による収益拡大などの取組みを引き続き推進していく。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項なし。

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、「九電グループ経営ビジョン2030」に掲げる「2030年のありたい姿」並びに「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」及び「九電グループ カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」に基づき、エネルギーサービス事業における「S+3E」を堅持しつつ、社会と当社グループのサステナビリティを実現する上で優先的に取り組むべき経営上の課題(マテリアリティ)解決に必要な以下の研究開発に取り組んでいる。

(1) 「脱炭素社会の牽引」に資する研究開発

・分散型エネルギーリソースのアグリゲーション技術など再生可能エネルギーの主力電源化に関する研究

・安全性の確保を大前提とした原子力の最大限活用に資する研究

・水素製造・利活用、CCUS・カーボンリサイクルに関する研究

・ヒートポンプの活用などによる産業部門の電化に関する研究

・EV向けの充放電器やEMSの開発など運輸部門の電化に関する研究 など

(2) 「エネルギーサービスの高度化」に資する研究開発

・高度なセンサ技術やAI・IоTなどのデジタル技術を活用した電力設備の保全・運用に関する研究

・電力設備の保全業務の高度化・効率化に関する研究

・再生可能エネルギーの大量連系時における系統安定性、電力品質維持に関する研究 など

(3) 「スマートで活力ある社会の共創」に資する研究開発

・ICTの活用などによる地域課題解決や新たなサービスの創出に関する研究

・カーボンニュートラル推進やレジリエンス強化といった自治体等のニーズに応じた地域エネルギーシステムに関する研究

・九州の主力産業である農業の活性化に向けたスマート農業に関する研究 など

当連結会計年度の当社グループの研究開発費は4,798百万円であり、うち、発電・販売事業に係る研究開発費は3,101百万円、送配電事業に係る研究開発費は1,161百万円、その他エネルギーサービス事業に係る研究開発費は167百万円、ICTサービス事業に係る研究開発費は367百万円である。