文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月29日)現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」というミッション達成のため、2050年に向けて発電事業のカーボンニュートラル実現に挑んでいくこと、そのマイルストーンとしてCO2排出量を2025年度までに920万トン削減※1、2030年までに46%削減となる2,250万トン削減※1することを目標に掲げており、国内外でのCO2フリー電源※2開発の加速化、既存資産による新たな価値創造(アップサイクル)、新たな領域への挑戦の三つを組み合わせて、カーボンニュートラル実現に取り組む中で企業価値の向上を目指します。また、電力安定供給やレジリエンス(強靭性)強化の要請に応えつつカーボンニュートラル実現に取り組んでいくために、それを支える強固な事業基盤の構築を図っていきます。
当社グループは、サステイナブルな成長を実現し、その成果を全てのステークホルダーと共に分かち合い、持続可能な社会の発展に貢献していきます。
※1 当社グループ国内発電事業CO2排出量の2013年度実績比
※2 発電時にCO2を排出しない、水力や風力、太陽光などの再生可能エネルギー電源、並びに原子力電源
(2) 当社グループを取り巻く経営環境と対処すべき課題
わが国の電気事業は、日本政府による2050年カーボンニュートラル宣言、国際社会に向けた2030年度CO2削減目標の決定及び非効率石炭火力のフェードアウトなどの気候変動問題への対応と、2016年4月から開始された電力小売の全面自由化と卸規制の撤廃、2020年4月からの発送電分離や、新たな市場の創設(2020年の容量市場や2021年の需給調整市場等)などの電気事業制度改革の進展により、事業環境は大きく変化しております。また、世界的な脱炭素化の潮流の加速、エネルギー需給構造の分散化やデジタル化の進展に加え、世界的なエネルギー資源の供給不安から資源価格が高騰し大きく変動するなど、エネルギー業界は大きな転換期を迎えています。
このような状況のなか、当社グループは、2021年2月に発表したJ-POWER "BLUE MISSION 2050"において、2050年に向けた国内発電事業のカーボンニュートラル実現と2030年の国内発電事業CO2排出量の削減目標を掲げ、2021年4月にはこうした取り組みの第一歩として中期経営計画(2021年度~2023年度)を発表しました。
中期経営計画に基づき、国内外でのCO2フリー電源開発の加速化、既存資産による新たな価値創造(アップサイクル)、新たな領域への挑戦の三つを組み合わせて、カーボンニュートラル実現に取り組むなかで企業価値の向上を目指します。
2030年のCO2排出量の削減に向けては、2022年5月に中間地点である2025年度のCO2排出削減量(2013年度比920万トン)を設定しました。また、2023年5月に発表した「中期経営計画の取組み状況」では、石炭火力でのバイオマスやアンモニアの混焼、国内でのCCS※3への取組みを更に加速化することとし、2030年のCO2排出削減目標を2013年度比46%(2,250万トン、従来は44%)に引上げました。
電力安定供給やレジリエンス(強靭性)強化の要請に応えつつ、こうした取組みを進めていくために、それを支える強固な事業基盤の構築を図っていきます。収益力と資本効率の向上に注力するとともに、ESG※4経営を推進してサステイナブルな成長を実現し、その成果を全てのステークホルダーと共に分かち合い、持続可能な社会の発展に貢献していきます。
※3 Carbon dioxide Capture and Storage、CO2の分離・回収・貯留
※4 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を組み合わせた用語
① CO2フリー電源の開発加速化
a.グローバルな再生可能エネルギーの開発加速化
当社グループは、水力発電・風力発電を中心に国内最大規模の設備出力を有する再生可能エネルギーのトップランナーであり、海外においても風力発電・太陽光発電等を中心に再生可能エネルギーの開発に取り組んできました。今後は優先的な投資配分と人員増強により、国内及び海外における再生可能エネルギー開発をさらに加速していきます。
2017年度以降に運転開始した再生可能エネルギーのプロジェクトは、イギリスのトライトン・ノール洋上風力発電プロジェクト、新桂沢発電所(水力発電)、江差風力発電所や鬼首地熱発電所リプレース工事を加えて、43.2万kWとなりました。
国内においては、建設段階にある陸上・洋上風力発電(上ノ国第二、南愛媛第二、石狩、響灘洋上ウインドファーム)、水力発電(おなばら)及び地熱発電(安比)の各プロジェクトの着実な推進に加え、開発調査段階の地点の培養や新たな地点の発掘を進め、再生可能エネルギーの設備出力を拡大していきます。また、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みで注目されている洋上風力発電でも一般海域での洋上風力開発案件への参画を目指します。
海外においては、オーストラリアのケーツーハイドロ揚水発電プロジェクトやフィリピンでのミンダナオ島水力発電事業を着実に推進しつつ、新たな大規模再生可能エネルギー開発案件への参画に向けた取り組みを加速していきます。
b.安全を大前提とした大間原子力計画の着実な推進
当社グループは、青森県下北郡大間町にて、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する大間原子力発電所(出力138.3万kW、運転開始時期未定)の建設を進めております。
同発電所は、エネルギー安定供給を支えるベースロード電源であり、気候変動問題対応の社会的要請に応えるCO2フリー電源としての役割に加えて、フルMOX運転により原子燃料サイクルの中核を担います。特に、日本政府が「プルトニウム利用の基本的な考え方」(2018年7月原子力委員会決定)を示しプルトニウムの保有量減少を求める中、多くのプルトニウムの消費が可能な大間原子力発電所の重要性はより高まっています。
引き続き一層の安全性の向上を不断に追求するとともに、地域の皆様にご理解・ご信頼を頂けるように、より丁寧な情報発信・双方向コミュニケーションに努めながら、着実な推進を図っていきます。
2014年12月、原子力発電所に係る新規制基準への適合性審査を受けるため、原子力規制委員会に対し、原子炉設置変更許可申請書及び工事計画認可申請書を提出いたしました。現在、当社グループは、原子力規制委員会の適合性審査に真摯かつ適切に対応しており、引き続き必要な安全対策などを着実に実施することで、早期の建設工事本格再開を目指します。
c.再生可能エネルギーの導入拡大への貢献
これからの再生可能エネルギーの大量導入に向けて、再生可能エネルギーの適地(北海道、東北、九州等)で発電された電気を消費地まで届けるための電力ネットワークの拡充が要請されています。当社グループでは、現在実施中の新佐久間周波数変換所と関連送電線の増強工事を着実に推進するとともに、洋上風力発電の普及に不可欠な高圧直流送電システムの構築・運用に関する調査にも取り組みました。これまで培った直流送電線・海底ケーブル等の幅広い技術と知見を活かして更なる事業機会を追求していきます。
また、電力ネットワーク設備の高経年化や激甚化する自然災害へのレジリエンス強化にも取り組み、電力の安定供給にも引き続き貢献していきます。
② 既存資産による新たな価値創造(アップサイクル)
新規設備を導入するだけではなく、既に保有する資産を高付加価値なものに再構築するなど新たな価値を創造(アップサイクル)することで、電力の安定供給を維持しつつ、経済合理性を持って早期に新技術を適用し、環境負荷の低減を実現していきます。
a.再生可能エネルギー資産のアップサイクル
当社グループの70年にわたる再生可能エネルギー開発の中で蓄積してきた知見を活かし、水力発電・風力発電を中心に、再生可能エネルギー資産の価値最大化に取り組んでいきます。
当社グループは、戦後の電力不足解消のために建設され、60年以上にわたって電力の安定供給に寄与してきた佐久間発電所を、次世代水力発電所にアップサイクルすることを決定しております(NEXUS佐久間プロジェクト)。既存のダムや水路は流用しながら水車・発電機等の主要電気設備や建屋等を最新技術により刷新することで、貴重な純国産の再生可能エネルギーを次世代にも引き継いでいくべく、2020年代後半の着工を目指し、主要電気設備や建屋の設計と着工に向けた事前準備工事を進めていきます。
これに加えて、水力発電においては、最新の水車・発電機の適用(尾上郷、長山)や小水力の開発(おなばら)により、豊富な水資源の最大限の活用と、それに伴う設備出力・発電電力量の増加に取り組んでいきます。また、激甚化する自然災害へのレジリエンス強化にも努めていきます。
風力発電においては、設備の寿命を迎えた風車を最新の大型風車に建て替えることにより(苫前、さらきとまない、仁賀保)、好風況地点の最大限の活用、風車数減少による環境負荷の低減、発電電力量の増加を同時に実現していきます。
b.既設火力資産のアップサイクル
当社グループは、石炭ガス化技術(石炭から生成したガスを水素とCO2に変換する技術)とCO2分離・回収技術の組合せによるCO2フリーの水素発電の実現を目指して、これまで技術開発・実証試験に取り組んできました。
松島地点は、オイルショック後のエネルギー源多様化の要請に応えた、わが国で初めての輸入石炭を燃料とする火力発電所です。運転開始以来40年が経過した同発電所に新技術の石炭ガス化設備を付加することにより、将来のCO2フリー水素発電の実現に向けた第一歩を踏み出します(GENESIS松島計画)。2021年9月より環境影響評価の手続を開始しており、既存の発電設備を活用することにより、電力安定供給を維持しつつ、経済合理性を持って早期に新技術の実用化を図っていきます。
また、石炭火力発電によるCO2排出量を削減するため、バイオマス導入の取組みを拡大するとともに、適切なタイミング・規模でアンモニア混焼を導入すべく、燃料調達や輸送・貯蔵・受入・混焼の実施体制確立を目指していきます。
③ 新たな領域への挑戦
これからのカーボンニュートラルへの移行やデジタル技術をはじめとするイノベーションの進展により、社会・経済構造の大きな変革が想定されています。当社グループは、エネルギー利用の分散化、脱炭素化とデジタルトランスフォーメーションをキーワードに、新たな事業領域への拡大を目指していきます。
水素社会の実現には大量かつ安定的な水素供給が必要となり、再生可能エネルギーに加えて、化石燃料からのCO2フリー水素製造が必要です。当社グループは、国内外でのCO2フリー水素の製造・供給及び発電利用の具体化を迅速かつ効率的に進めるべく、2021年度より水素・CCSについて部門横断的に相互が協力して取り組む体制を構築しています。化石燃料からのCO2フリー水素製造においては、日本国内での石炭ガス化技術の実用化の取組みに加えて、水素サプライチェーン構築の日豪共同の実証試験を完了しており、今後、商用化に向けて取り組んでいきます。また、再生可能エネルギーからのCO2フリー水素製造においても、国内外で複数のプロジェクトの組成又はプロジェクトへの参画を目指しており、CO2フリー水素製造の可能性を追求していきます。
また、天候により出力が急激に変動する再生可能エネルギーの導入拡大のためには、出力変動を補う調整力の確保が重要となります。当社グループは、保有する大規模揚水発電による調整力の提供のみならず、電力小売を通じ、保有する豊富な再生可能エネルギーを活用した需要家への環境価値提供や、需要家が保有する水道施設等のリソースを遠隔・統合制御することによる調整力の確保・活用など、新たな付加価値の創出にも取り組んでいきます。
加えて、これまで取組みを進めてきたスタートアップ企業とのネットワーク拡大を通じた新事業の創出においても、様々な分散型サービス提供の可能性を探求していきます。
④ 事業基盤の強化
当社グループは、ウクライナ等を巡る国際情勢の影響により経済情勢が不透明ななか、引き続き電力安定供給やレジリエンス強化の要請に応えつつ、カーボンニュートラル実現に取り組んでいくために、それを支える強固な事業基盤を構築していきます。
a.海外における事業基盤の拡大
当社グループは半世紀以上にわたり、世界各地で電源の開発及び送変電設備等に関するコンサルティング事業を行ってきました。そして、国内事業と海外コンサルティング事業で培った経験・信用・ネットワークを活かして、2000年より本格的に海外での発電事業に参画し、2010年以降は主に火力電源の新規開発によって規模及び収益を拡大してきました。その結果、海外事業は、設備出力と利益貢献の両面において、当社グループの主力事業のひとつに成長しております。
当社グループがイギリス、アメリカ及びインドネシアにおいて建設工事を進めてきた大型プロジェクト(トライトン・ノール洋上風力発電プロジェクト、ジャクソン火力発電所、バタン発電所)は、2022年のそれぞれ4月、5月及び8月に運転を開始いたしました。また、アメリカ、オーストラリア及びアジアを重点地域とし、多様化する発電設備等の開発ニーズに応じて、再生可能エネルギーをはじめとした新規開発案件への参画を目指していきます。
b.収益力・資本効率の向上
デジタル化による業務プロセスの変革や設備保守の高度化等をはじめとして、これまでの発電コスト低減や管理間接部門経費の削減の取組みを加速するとともに、火力発電所の計画外停止低減や小売事業者向け販売等のリスク管理強化に取り組むことにより、収益力のさらなる向上を図っていきます。
また、既存資産に対しては、設備信頼性とバランスをとりつつ更新投資を抑制するとともに、適宜保有資産の見直し・入替えを図り、新規投資に対しては資本効率を踏まえて経営資源を配分することで、資本効率の向上を図っていきます。保有資産の見直し・入替えでは、2023年2月に米国でのジャクソン火力発電所の一部権益を譲渡して確実に開発者利益を獲得しており、譲渡で得た資金は新たなプロジェクトの投資に充当していきます。
c.人財育成
世代を問わず学び続ける風土を醸成し、多様な人財の自律的な成長を支援することで、様々な経営課題に挑戦する人財を育成していきます。柔軟な働き方の実現を通じて個人の多様なニーズに応えるとともに、職場の安全と従業員の健康を十分に確保することで、多様な人財が意欲的に活躍し、継続的なイノベーションを促進する人財育成・職場づくりに取り組んでいきます。これらに加えて、戦略的人財活用や幹部人財の育成などにも取り組み、様々な経営課題に挑戦する人財開発を推進していきます。
d.DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組み
データの蓄積・連携・共有と分析による意思決定(データドリブン)を基軸に、安全・安心、効率性・即応性と稼ぐ力の三つのSの創出に取り組んでいます。
こうした取組みにより、社員の「よりょく」(与力(新たな力)、余力(ゆとりの力)と予力(予見の力)の三つの総称)を創出することにより、サステイナブル経営と企業価値の向上を支えるとともに、ワークインライフの推進と労働生産性の向上に取り組んでいきます。
e.ESG経営の推進
当社グループは、時代ごとの様々なエネルギーに関する社会課題の解決に事業を通して貢献してきました。「エネルギーと環境の共生」を基調に、2000年代初頭より気候変動問題への対応にもいち早く着手するなど、未来を見据えた持続的な成長を目指しています。
2021年度よりESGの担当役員と総括部署を設置しており、2022年8月には当社グループにとっての重要な社会的な課題(マテリアリティ)に関する取組み項目について、その進捗管理のための目標(KPI)を設定し、この進捗状況も役員※5報酬(業績連動報酬)の評価指標に加えることにしました。また、2022年6月には人権尊重に関して「J-POWERグループ人権基本方針」を策定しています。気候変動問題をはじめとする環境問題への対応、社会の良き一員としての事業活動やガバナンスの強化など、これまでの取組みを更に強化していきます。
※5 取締役及び執行役員(社外取締役及び監査等委員等を除く)
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として、以下を採用しております。
(注)上記財務目標は、有価証券報告書提出日(2023年6月29日)現在において予測できる事情等を基礎とした当社グループの合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
J-POWERグループは「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」という企業理念に基づき、環境、社会、ガバナンスの観点から、企業価値を向上させるための取組みを進めています。
社会的に重要な課題を抽出し、ステークホルダーの方々の関心、企業理念との関連、J-POWERグループ事業への影響等を考慮して、「エネルギー供給」「気候変動対応」「人の尊重」「地域との共生」「事業基盤の強化」の5つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、それぞれに対しマテリアリティの目標(KPI)を定めています。
当社は事業活動を通じて、財務価値の向上と同時にマテリアリティの目標(KPI)を達成し、持続的な企業価値向上と社会課題の解決の両立に努めていきます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

<サステナビリティ基本方針>
私たちJ-POWERグループは「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」という企業理念のもと、ステークホルダーとの信頼関係を基礎として、国内外での事業活動を通じて、豊かな社会を実現します。
J-POWERグループではサステナビリティに関する重要な事項は取締役会において決定しています。
また、社長執行役員より指名されたESG総括担当役員を責任者としたサステナビリティ推進体制を構築しています(2023年6月株主総会以降、責任者はESG総括の社長執行役員となる予定)。会議体として「サステナビリティ推進会議」を設けているほか、グループ全体として「J-POWERグループサステナビリティ推進協議会」を設置し、環境に関する取組みを含めたサステナビリティの推進を図っています。サステナビリティ推進会議では、サステナビリティ全般に関する戦略、企画、施策及びリスク管理等の審議を年3回以上実施しています。このうち重要な事項は取締役会あるいは常務会に提案/報告しています。
2023年3月31日現在

最近の取締役会への主な報告事項
・気候変動問題に関する国際動向
・GXリーグに関する対応方針
・気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく開示方針
・CO2削減実績(Scope1~Scope3)
・気候変動に関する社外ステークホルダーとの対話状況
・ESG評価機関等の社外評価状況
・人権対応に関する取組み状況
ガバナンス体制における最近の主なサステナビリティ審議・決定事項
<気候変動>
当社グループの5つのマテリアリティのうち、「気候変動対応」は、当社の財務的価値への影響が大きいと考えることから、本項目では気候変動対応に関する戦略について記載します。なお、当社ホームページ上でTCFD提言に基づく開示を行っており、その戦略部分を抜粋して記載しております。TCFD開示の最新版は
※TCFD開示の詳細は当社ホームページを参照下さい。
https://www.jpower.co.jp/sustainability/environment/climate/
J-POWERでは、環境問題から生じるさまざまなリスクと機会の把握に努めており、リスクを常に確認しながら取組みを進め、競争力の強化を図っています。中でも気候変動については、政府による規制強化への対応を含め、新技術の採用など、複数の領域での対策が必要になると考えられます。
これらは当社の事業領域にも多くの影響を及ぼす可能性があり、事業上のリスクになりますが、適切に対応できれば競争力の強化や新たな事業機会の獲得にもつながると認識しています。この認識に基づき気候変動に関するリスクを整理し、重要度やステークホルダーからの関心も踏まえ、特に重要度が高いリスクを特定しました。
リスクと機会の分析では1.5℃/4℃上昇ケースを想定し、それぞれ分析しています。1.5℃上昇ケースでは強力な施策・規制が実施され、日本においても再生可能エネルギー比率が大幅に高まり、電源の脱炭素化が急激に進展していくと想定しました。また、温暖化対策が徹底されない4℃上昇ケースの場合は、2100年時点で世界平均地上気温は4℃以上、平均海面水位は1メートル近く上昇することが予測されています。十分な気候変動対策を取らない場合、特に2050年以降気象災害の物理リスクの顕在化が懸念されます。


(2050年シナリオ分析)
J-POWERグループでは、パリ協定でうたわれている今世紀末の平均気温上昇を産業革命以前の1.5℃未満に抑える1.5℃シナリオをベースに気候変動シナリオ分析を実施しました。1.5℃シナリオでは2050年CO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とする必要があります。1.5℃シナリオのNZEシナリオでは2050年日本の電源構成についての記載はないものの、2050年ネットゼロ宣言を実施している日本では、WEO2021のAPSシナリオがNZEシナリオと近いと判断し、本シナリオではAPSシナリオ(JPN)の2050年の電源構成をレファレンスし、メインシナリオとしました。IEAの予測において、EUと米国では2050年に、変動性再生可能エネルギー(VRE:Variable Renewable Energy)である太陽光と風力の合計が7割となっています。一方で、日本では2050年に、VREの割合は4割、再生可能エネルギー合計で6割、原子力が2割、水素・アンモニア+CCUS付き火力が2割となっています。これは、日本の電力系統が欧米のようにメッシュ状ではなく串型で地域間連系が弱く、融通性及び柔軟性に乏しいこと、そして、VREの適地に乏しいことによりVREの導入に制約があり、調整力をアンモニア・水素、CCUS付き火力により提供する必要があるためと当社では考えています。 ただし、2050年の実際の環境はこのメインシナリオの前提通りとならない可能性もあります。そこで、メインシナリオのみならず、特にJ-POWERグループにとって影響が大きいと考えられる再生可能エネルギーと火力発電に関する前提条件を変化させた場合のシナリオについても分析しました。

約30年後の2050年までには、日本の既存の発電所のほとんどが老朽化により運転が困難となったり収益力が低下したりするため、2050年に向けて発電事業を継続する会社は、J-POWERグループに限らず、いずれかの時点でほぼすべての電源を廃止して新たな電源に投資する必要があります。そのため、各社の電源ポートフォリオは2050年カーボンニュートラルに向けて必然的に洗い替えされますが、特に化石燃料由来の電源をCO2フリー電源に移行しバランスの取れた電源ポートフォリオを形成するには困難を伴うため、それぞれの会社が持つ技術や知見に大きく左右されることとなります。J-POWERグループは、これまでにバランスの取れた電源ポートフォリオを形成・運営し、またCO2フリー水素製造・発電の研究開発、再生可能エネルギーの開発・原子力の建設も実施するなど、豊富で幅広い技術と知見を蓄積してきており、柔軟に投資対象を選択することが可能です。したがって、特定の電源種別にこだわる必要がないため、2050年のどのようなシナリオにも対応でき、その時々で最も高いリターンが見込まれるCO2フリー電源に投資することでポートフォリオの最適化を目指します。また、現状の設備のほとんどは2050年までには老朽化し、投資回収も終わるため、座礁資産化することもありません。

(2030年シナリオ分析)
ここまでは2050年のカーボンニュートラル達成時の電源構成の変化に伴うシナリオ分析を行いました。しかし、2050年に向けてどのようなペースでCO2排出を削減しなくてはならないかについても、さまざまなシナリオが考えられ、シナリオによってJ-POWERグループに及ぼす影響も変わってきます。ここでは、2050年より前の段階、一例として2030年を取り上げて、J-POWERグループに求められるCO2排出削減量による影響を分析します。
2030年シナリオ分析のメインシナリオは、J-POWER "BLUE MISSION 2050"で示した国内発電事業のCO2実排出量40%削減*とします。メインシナリオでは2013年度比44%削減となり、日本政府のNDC(国別削減目標)と概ね整合しています。また、メインシナリオのマイルストーンとして2025年度CO2排出削減量は700万トンとなります。2030年までの8年間という期間は時間的制約が大きく、電源の新設や建替え、新技術の商用化、インフラとしての送電線増強などが限定的とならざるを得ないため、2030年の電源ポートフォリオは現状の電源ポートフォリオに大きく依存することとなります。

*2017-2019年度3ヵ年平均実績比
一方、さらなるCO2排出削減が求められるシナリオとしてNZEシナリオをレファレンスしたリスクシナリオについても分析します。こちらは当社のCO2実排出量を60%削減するシナリオとなります。リスクシナリオでは、再生可能エネルギーの最大限導入(シェア6割弱)、CCUS付き火力や蓄電池など技術イノベーションが進み、カーボンプライシングが導入された世界となります。系統全体での慣性力の確保、経済性などいずれの電源も導入に向けて、さまざまな課題を乗り越えられることを想定したシナリオであり、変動性再生可能エネルギーが大量に導入された場合、蓄電池費用、火力発電等に関する調整費用や系統増強費用などのシステム統合費用を含む電力コストは現状より増加するとの試算もあり、一定程度の販売電力料金の増加を想定しています。
2030年に向けていずれのシナリオにおいても、石炭火力はCO2排出量の削減に伴い、利益低下のリスクがありますが、GENESIS松島計画、バイオマス・アンモニア燃料の混焼、CCUS等を活用し、カーボンプライシング導入による発電コストの増加(マージン低下)抑制を目指します。また、日本全体で急速にCO2排出量を減らそうとする場合、電気事業を巡る環境に副次的な変化が生じ、それがJ-POWERグループの損益に対して影響を与える可能性があります。そのためJ-POWERグループは再生可能エネルギー新規開発、調整力価値の最大化、電力ネットワーク増強プロジェクト獲得、持分法適用関連会社を通して実施している分散型エネルギーサービス事業の拡大等により収益拡大を目指します。



<人的資本、多様性>
○人財育成方針
(J-POWERグループと人財)
J-POWERグループは、マテリアリティとして、「人の尊重」を掲げており、社員一人ひとりを社会の持続可能な発展と企業の成長を担う「人財」と捉え、世代を問わず学び続ける風土を醸成し、多様な人財の自律的成長を支援することで、複数の専門知識と広い視野に基づき経営課題に挑戦する人財を育成します。
なお、人的資本に関する情報は、
(人財確保)
J-POWERグループは、持続可能な成長のために安定的な採用を行うとともに、幅広い分野・世代から多様な人財を求め、活躍の場を提供したいと考えています。また、性別、国籍、職歴、経験、年齢、障がいの有無などに関係なく、多様な人財が持てる力を十分に発揮し、活躍できる制度・職場環境づくりを進めています。
(ダイバーシティ推進)
J-POWERは、グローバル社員のうち役付社員を中核人財と位置づけ、その多様性の確保について、女性、外国人及び中途採用者の2030年までの目標を設定しました。
また、女性活躍推進については、新規採用者に占める女性比率の目標を改定して採用数を増やし、ダイバーシティを推進して生産性や競争力を高め、企業価値向上につなげる取組みを行っています。
多様な人財が活躍できる職場づくりに向けて、2022年4月にダイバーシティ推進の専任組織を設置しました。専任組織は、特に出産・育児などのライフイベントを迎えた女性従業員が安心して働き続けることができるように、休業中のキャリア開発支援や円滑な復職に向けた相談体制の充実に取り組んでおります。
(高齢者活用)
J-POWERグループは、高年齢者雇用に関し、65歳定年制を目指し、段階的に定年年齢を引き上げています。また、従来の定年後継続雇用制度や、グループ内で就労先を紹介する人財登録制度と合わせ、70歳に到達するまで、経験・技術と労働意欲を持つ高年齢者が活躍できる仕組みを整備済みです。
(障がい者雇用)
J-POWERは、障がい者雇用に関し、「障がい者就労支援・職場環境相談窓口」の設置や、事業所建物のバリアフリー化など、就業環境整備や職場の理解促進に取り組んでおり、今後も雇用率の上昇に努めていきます。
(人財育成)

J-POWERは、複数の専門的知識と広い視野に基づき経営課題に挑戦する自律的な「プロフェッショナル人財」を人財ビジョンとして掲げ、その育成施策としてCDP(Career Development Program)を導入しています。
CDPでは、従業員のキャリアステージ及び勤務箇所・業務に応じて会社が必要とする人財像を人財要件として明示するとともに、勤務箇所のローテーションを通じて従業員のキャリアステージに応じた能力の習得を促進しています。従業員が自らの将来展望を申告する自己申告制度や、各種研修制度・自己研鑽制度、公募制度を通じて、社員一人ひとりの自律的なキャリア形成や新たなチャレンジを支援しています。また、女性従業員が出産などのライフイベントに伴う一時的な就業制約に際してもなお主体的にキャリア形成していけるように、女性CDPを提示しています。若年社員にはOJTトレーナーやメンターを配置し、職場への定着やキャリアアップを支援しています。加えて、国内外機関への派遣研修や、次世代経営幹部の養成を目的とした選抜型リーダーシップ研修も行っています。
○社内環境整備方針
(多様な働き方の推進)
J-POWERグループは、従業員一人ひとりが、自律的に仕事と生活を充実させ、創造性の高い仕事に注力できる職場環境・風土づくりを推進しています。家庭で育児や介護にかかわる社員が安心して働けるよう、育児・介護に伴う時短勤務者を対象としたフレックスタイムや、看護・介護休暇の時間単位取得などの制度を充実させるとともに、リーフレットを用いた従業員への理解促進活動を通じて、制度利用を促進しています。加えて、最大2時間のスイングタイム制度(自己選択による労働時間の繰り上げ・繰り下げ勤務制度)やテレワーク勤務制度の導入(一部現業機関を除く)などを通じて、多様な働き方を推進しております。
また、働きやすい職場環境づくりのために、労働時間や職場環境、ハラスメント、産休・育休に関する相談窓口を設置し、相談者のプライバシーを保護しながら制度の説明や面談等を実施しています。また、社内研修やポスターなどによる啓発を通じて、社内の理解促進やハラスメントの未然防止に取り組んでいます。J-POWERでは2021年度より従業員満足度調査を実施し、今後重点的に取り組むべき人事労務施策に活用していく計画です。
(安全確保・健康増進)
J-POWERグループは、事業活動の基盤として、「安全かつ健康で働きがいのある職場づくり」を目指しています。重篤な労働災害の根絶に向け、設備(リスクアセスメントの上で速やかに設備対策を講じる)・管理(推奨事例・危険情報の共有)・人(人間の行動特性を意識した安全行動の実践)の三位一体を意識したより実効性のある安全活動の構築をスローガンとして掲げ、労働災害の未然防止に注力しています。
また、従業員とその家族の健康保持・増進のため、「治療から予防へ」を合言葉に、健康経営を推進しています。特に生活習慣病とメンタルヘルス不調に対する予防を重視しており、人間ドックの受診促進やストレスチェック結果の活用、特定健診・保健指導、健康保持増進活動などを実施することで、心とからだの健康づくりを推進しています。
当社は、財務健全性と企業価値の維持・向上を目的として、企業活動に伴う様々なリスクを把握の上、サステナビリティに関するリスクはサステナビリティ推進会議にて分析・評価し、対策を検討しています。
推進体制としてサステナビリティ推進会議には地球環境戦略部会、人権部会を設置しており、環境及び人権に関する事項のリスク評価を実施し、サステナビリティ推進会議で審議の上、取締役会あるいは常務会に提案/報告しています。
取締役会は定期的な事業遂行状況の報告を受けることにより、ESG・サステナビリティの観点も含むリスクの早期把握に努めているほか、社内での意思決定の過程における相互牽制、各種会議体での審議、社内規程に基づく平時からの危機管理体制の整備などにより、ESG・サステナビリティに関するリスクを含めて企業活動の遂行にあたってのリスクの認識と回避策を徹底するとともに、リスク発生時の損失による影響の最小化を図っています。
<管理体制>

当社グループは、「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」という企業理念のもと、事業活動を通じて、豊かな社会の実現に貢献することで企業価値向上に取り組んできました。社会的に重要な課題から特定した5つのマテリアリティに関して目標(KPI)を下表のとおり設定しております。
また、上記「(2) 戦略」において記載した、気候変動対応と人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針の指標と目標も含め設定しています。
これら指標と目標に関する実績は2023年8月末頃に
GHG排出量実績
以下には、当社の財政状態、経営成績並びに現在及び将来の事業等に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2023年6月29日)において当社が入手可能な情報等に基づいて判断したものです。また、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、当社が必ずしも重要なリスクとは考えていない事項であっても、事業等のリスクを理解する上で投資家にとって参考となる情報は記載しております。また、以下の記述は、別段の意味に解される場合を除き、連結ベースでなされており、「当社」には当社並びに当社の連結子会社及び持分法適用会社(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)の定義に従います。)が含まれております。
(1) 気候変動問題について
当社は、LNG等他の化石燃料を使用する発電所と比較して、発電量当たりのCO2排出量が相対的に多い石炭火力発電所を多数有しておりますが、化石電源のゼロエミッション化を2050年に向けた目標として掲げ、その実現に向けて石炭火力の高効率化・低炭素化等に取り組んでおります。
また、CO2フリー電源である再生可能エネルギーの導入拡大、原子力発電の開発などにも取り組んでおります。さらに、2015年7月に当社を含む電気事業者により策定された「電気事業における低炭素社会実行計画」に基づき、電気事業全体での目標の達成に向けて最大限努力しております。
日本国内では、2030年のエネルギーミックスにおいて石炭火力発電が電力供給の一定比率を担うとされているものの、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すという政府目標が示され、電力部門においては、再生可能エネルギーの最大限の導入や安全最優先で原子力政策を進めるとされている一方、非効率石炭火力のフェードアウトの検討も進められています。
また、カーボンニュートラル目標と安定供給の両立に資する電源を対象に、新規の設備投資に対して長期予見性を付与する仕組みである「長期脱炭素電源オークション」の導入が予定されております。
当社としてもこれらの動向を注視しつつ、カーボンニュートラル目標に貢献する電源の開発や、気候変動問題の解決に資する事業の運営に取り組んでまいります。
一方で、2030年度の温室効果ガスの削減目標を2013年度比46%とするという政府の方針も示される中、今後、気候変動問題への対応に関する新たな法的規制等が導入されること等により、事業計画・事業運営に大幅な変更や制約等が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 電気事業制度改革の進展等による当社の料金収入等への影響について
2013年4月に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」に基づく電気事業制度改革によって、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しております。電気事業法改正により、2016年4月には電力小売参入が全面自由化されるとともに、卸電気事業者に関する規制(事業許可制や料金規制)が撤廃されました。また、2020年4月には当社及び旧一般電気事業者は送配電部門の法的分離を実施しました。今後さらに、旧一般電気事業者に対する電気小売料金規制(経過措置)の見直しが行われる予定です。
制度改革における電気事業類型の見直しに伴い、2016年4月より当社は改正前の電気事業法で規定されていた卸電気事業者から、発電事業及び送電事業を営む電気事業者となりました。発電事業に関する料金は、原価主義に基づく料金規制等が撤廃され、市場競争環境下で販売先との協議により決定されることになります。また、送電事業に関する料金は、健全な送配電ネットワーク維持のため引き続き規制分野として原価主義に基づく料金制度となっております(当社の電気料金については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照)。
当社の営業収益の大半は、国内における旧一般電気事業者への販売による料金収入であるため、当社は、市場競争が進んでいく発電事業分野で、持続的に当社の発電事業が価値を発揮できるような取組みを進めております。具体的には、旧一般電気事業者を主とする販売先との適切な料金協議や電力販売の多様化による収益基盤の安定化の取組みに加えて、発電設備の保守高度化による競争力の強化等の取組みも進めております。
しかしながら、かかる取組みにもかかわらず、今後の長期的な電力需要の推移、更なる市場競争の進展、販売先との協議、法的規制等によって事業計画・事業運営に大幅な変更等が生じ、又は予期せぬ設備トラブル等により発電コストに見合った収益を確保できない場合、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 大間原子力発電所建設計画について
大間原子力発電所計画は、1995年8月の原子力委員会決定によって、国及び電気事業者の支援の下、当社が責任を持って取り組むべきとされた全炉心でのMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料利用を目指した改良型沸騰水型軽水炉(フルMOX-ABWR)であり、軽水炉でのMOX燃料利用計画の柔軟性を広げるという政策的な位置付けを持つものとされております。このため、全炉心でのMOX燃料利用に関する技術開発部分について、「全炉心混合酸化物燃料原子炉施設技術開発費補助金交付要綱」に基づき、政府から補助金の交付を受けております。また、既に沖縄電力㈱を除く旧一般電気事業者9社と基本協定を締結しており、その中で旧一般電気事業者9社による適正原価等での全量受電が約されております。加えて、計画の現況についても旧一般電気事業者9社と定期的に確認しております。
大間原子力発電所計画は、全炉心でのMOX燃料利用の原子力発電所として、地元大間町、青森県の同意を得て、1999年8月に電源開発調整審議会により電源開発促進法で定める国の電源開発基本計画に組み入れられ、2008年4月には「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく原子炉設置許可、5月には電気事業法に基づく工事計画認可(第1回)を経済産業大臣から受け、着工に至っております。この時点で予定していた建設費は4,690億円でした。その後、2011年3月に発生した東日本大震災直後より工事を休止しておりましたが、2012年10月より工事を再開しております。
当社は、2013年7月に施行された原子力発電所に係る新規制基準への適合性審査を受けるため、2014年12月16日に原子力規制委員会に対し、原子炉設置変更許可申請書及び工事計画認可申請書を提出しました。具体的な取組みは多岐にわたりますが、シビアアクシデントを防止するために、設計基準事故対策の強化及び地震・津波等への想定や対応策の強化を行うとともに、新規制基準において新設された重大事故等対策として、炉心損傷の防止及び格納容器の破損防止のための対策を行っております。さらに、航空機衝突等のテロ対策として、原子炉格納容器の破損による外部への放射性物質の異常な放出を抑制するため原子炉の減圧等の遠隔操作を可能とする特定重大事故等対処施設を設置することとしています。
事業者として適合性審査の進展に予断を持つことはできませんが、上記申請の中でとりまとめた追加の安全強化対策工事を、2024年後半に開始し、2029年後半に終了することを目指しております。
しかしながら、原子力事業を取り巻く状況の変化、原子力規制委員会の審査の状況、新規制基準への追加の対応等により、工程が延伸する可能性があります。これらの場合には、建設費の増加や関連費用が更に発生する可能性があります。なお、安全強化対策工事については、先行して適合性審査に合格した同型炉の安全強化対策の内容や規模も参考に更なる対策の実施を検討しており、2014年12月16日の上記申請書に記載した工事費見通し約1,300億円についても、それに伴う相応の増額を見込んでおります。加えて、原子力発電においては、国の原子力政策の見直しなど原子力事業を取り巻く状況の大幅な変化や更なる市場競争の進展、予期せぬ事態の発生等による計画変更等のリスク、また、運転開始後には、放射性物質の貯蔵と取扱いに関するリスク、他の発電設備と同様、自然災害、不測の事故等のリスクも存在します(「(7) 自然災害、疫病の流行等について」を参照)。
一方で、全炉心でMOX燃料の利用が可能な大間原子力発電所は、国がエネルギー基本計画において基本的方針としている原子燃料サイクルに大きく貢献できる発電所です。電気事業連合会から2020年12月にプルサーマル計画が、2023年2月にプルトニウム利用計画がそれぞれ公表されておりますが、2022年度末のプルサーマルの実施状況を踏まえれば、年間最大6.6tPutのプルトニウムを回収可能な六ヶ所再処理工場が安定的に稼働するためには、フルMOX運転時に年間約1.7tPutのプルトニウムを消費できる大間原子力発電所は必要不可欠と考えております。
当社は、これらの大間原子力の重要性を踏まえ、原子力規制委員会の適合性審査に真摯かつ適切に対応し、必要な安全対策等を着実に実施して全社を挙げて安全な発電所づくりに取り組むとともに、ここに記載した原子力発電事業の様々なリスクに対しても可能な限り対策を講じ、事業者として関係者とも協力しながら経済性を確認しつつ事業を推進していく所存ですが、仮にリスクが顕在化した場合、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 海外発電事業をはじめとする国内外での新たな事業への取組みについて
当社は、収益基盤の強化を目指して、海外発電事業をはじめとする国内外での新たな取組みを進めております。
具体的には、海外発電事業については、海外諸国でのコンサルティング事業の経験を活かしてIPP(独立系発電事業者)プロジェクトへの取組み等を進めております。
また、国内電気事業については、高効率石炭火力発電所等の新規開発や、風力・地熱・廃棄物等の再生可能エネルギーを利用した発電事業等に加えて、電力小売販売等にも取り組んでおります。
しかしながら、これらの事業は、状況の大幅な変化、需要や市場環境の変化、規制の変更等の予期せぬ事態の発生等により、当社が期待したほどの収益を生まない可能性があり、これらの事情により事業計画の変更、事業・建設の取り止め等があれば、これに伴う関連費用の発生、追加資金拠出等により、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、これらの事業の中には第三者との合弁形態で運営されているものがあり、事業環境の変化に伴う合弁形態の見直しや、当社が少数持分保有者に留まる合弁形態のために経営統制等に関与できない事態等が生じた場合、合弁事業の結果が、必ずしも当社の業績に有益な貢献をもたらさない可能性があります。さらに、海外での事業については、為替リスクに加え当該国の政情不安等によるリスク(カントリーリスク)が存在します。
(5) 資金調達について
当社は、これまで発電所等への多額の設備投資を行っており、そのための設備資金を主として借入れ及び社債発行によって調達してきました。今後も、再生可能エネルギー発電設備や大間原子力発電所の新規開発をはじめとする国内外での新たな事業等への投資、既存の債務の償還等のための資金調達を必要とする見通しです。今後の資金調達にあたり、その時点における金融情勢、当社の信用状態又はその他の要因のために当社が必要資金を適時に適正な条件で調達することができなければ、当社の事業展開並びに財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 石炭火力発電用燃料について
当社の石炭火力発電所は海外炭を主たる燃料としております。当社は、海外炭の調達にあたっては、供給の安定性と経済性を同時に追求するため、オーストラリア、インドネシア、北米などに調達地域を多様化しております。また、石炭の安定確保のために、一部の炭鉱においては権益を保有しております。なお、当社による海外炭の調達は、主として長期契約又は期間1年程度の契約により行われており、補完的にスポットでの購入も行っております。長期契約に基づく石炭の購入価格は、通常、1年に1回市場価格を踏まえて調整されます。
当社の燃料費は、海外炭の価格変動、輸送船舶の需給状況、燃料調達先の設備・操業トラブル等により影響を受けますが、主要な石炭火力発電所の電力料金の燃料費相当部分については、販売先との間で燃料調達に係る市況の変動を適宜反映することとしているため、当社の業績への影響は限定的です。ただし、石炭価格の急激な上昇等があった場合、これに伴う燃料費の上昇分を料金に反映させるまでにタイムラグがあるため、一時的に業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、石炭価格が大幅に下落し、当社が権益を保有している炭鉱の業績に影響が生じた場合、当社の財政状態及び経営成績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 自然災害、疫病の流行等について
自然災害、人為的なミス、テロ、燃料供給の中断又はその他の不測の事態により、当社の発電設備若しくは送・変電設備等又はこれらの設備を運転制御する情報システム等に重大な事故等があった場合、当社の事業運営に支障を来たし、ひいては周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、当社が事業を実施している国及び地域における重要なインフラストラクチャーである発電設備及び送・変電設備の事故等の防止、関係者の安全確保並びに周辺環境の保全のため、保安・防災体制の確立、事故・災害の予防対策及び応急・復旧対策並びに環境モニタリング等に全社をあげて取り組んでおります。
しかしながら、事故等のために当社の発電設備又は送・変電設備等が操業を停止した場合、さらには事故等のため周辺環境に悪影響を及ぼした場合には、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は発電設備又は送・変電設備等の維持・運営等にあたり、電力安定供給のための対策を実施していますが、疫病の流行その他の不測の事態により、設備の運営、建設・補修工事又は大規模な点検等に必要な人員、原材料及び資機材等の確保が困難となる場合には、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 法的規制について
当社事業の大半を占める電気事業については、電気事業法による規制を受けております。
2014年6月の電気事業法改正により、2016年4月以降、改正前の電気事業法で定められていた卸電気事業者に関する規制(事業許可制や料金規制)は撤廃されましたが、当社は、引き続き同法に規定される発電事業及び送電事業を営む電気事業者として、事業規制及び保安規制、並びにこれらの規制に伴う変更・中止命令及び送電事業については許可の取消しに関する規定の適用を受けております。この他、当社の事業運営は様々な法令の適用を受けております。このため、当社がこれらの法令・規制を遵守できなかった場合、又はこれらの法令・規制の改正があった場合には、当社の事業運営や財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、原子力事業者による相互扶助の考え方に基づいて、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に対応できる支援組織を中心とした仕組みを構築することを目的とする「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」により、原子力事業者は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の業務に要する費用に充てるための負担金を納付することを義務付けられております。当社は、現在進めている大間原子力発電所計画について、同発電所が「原子力損害の賠償に関する法律」に定める原子炉の運転等を開始した後に、負担金を納付することとなりますが、かかる負担金の額によっては当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 業務情報の管理
当社は、個人情報をはじめ機密を要する多くの重要な情報を保有しています。これらの情報については情報セキュリティ対策の推進、従業員教育等の実施により厳重に管理しておりますが、外部に流出した場合、当社のレピュテーションや業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の収入面は、電気事業の販売電力量は減少しましたが、電力販売価格の上昇等により、売上高(営業収益)は前連結会計年度に対し69.8%増加の1兆8,419億円となりました。これに営業外収益を加えた経常収益は前連結会計年度に対し68.6%増加の1兆8,666億円となりました。
一方、費用面は、電気事業の火力の燃料費や他社購入電源費の増加等により、営業費用は前連結会計年度に対し66.2%増加の1兆6,580億円となりました。これに営業外費用を加えた経常費用は前連結会計年度に対し64.0%増加の1兆6,958億円となりました。
経常利益は、石炭販売価格の上昇による豪州連結子会社の増益等もあり、前連結会計年度に対し134.5%増加の1,707億円となり、法人税等を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に対し63.1%増加の1,136億円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(電気事業)
電気事業の販売電力量は、水力は出水率が前連結会計年度を下回った(99%→94%)こと等により、前連結会計年度に対し4.3%減少の88億kWhとなりました。火力については、発電所利用率が前連結会計年度を下回った(当社個別:67%→65%)こと等により、前連結会計年度に対し4.8%減少の456億kWhとなりました。卸電力取引市場等から調達した電力の販売は、前連結会計年度に対し21.2%減少の128億kWhとなり、電気事業全体では前連結会計年度に対し8.5%減少の684億kWhとなりました。
売上高(電気事業営業収益)は、電力販売価格の上昇により、前連結会計年度に対し61.6%増加の1兆4,202億円となりました。
セグメント利益は、火力の燃料価格上昇による燃料費の増加や電力取引価格の上昇による他社購入電源費の増加があったものの、売上の増加等により、前連結会計年度に対し104.6%増加の545億円となりました。
(電力周辺関連事業)
売上高(その他事業営業収益)は、豪州連結子会社の石炭販売収入において販売価格が上昇したこと等により、前連結会計年度に対し31.9%増加の3,217億円となりました。
セグメント利益は、売上の増加等により、前連結会計年度に対し259.3%増加の928億円となりました。
(海外事業)
海外事業の販売電力量は、タイで販売電力量が減少したものの、米国ジャクソン火力発電所が2022年5月4日に営業運転を開始したことにより、前連結会計年度に対し29.0%増加の142億kWhとなりました。
売上高(海外事業営業収益)は、米国ジャクソン火力発電所の営業運転開始に加え、電力販売価格の上昇等により、前連結会計年度に対し91.3%増加の2,775億円となりました。
セグメント利益は、2022年12月に発生した米国の寒波による設備トラブルに伴う減益があったものの、米国ジャクソン火力発電所の営業運転開始や為替の影響等により、前連結会計年度に対し3.1%増加の226億円となりました。
(その他の事業)
売上高(その他事業営業収益)は、前連結会計年度に対し39.2%増加の293億円となりました。
セグメント利益は、前連結会計年度に対し46.3%増加の18億円となりました。
資産については、流動資産の増加や円安の影響等により、前連結会計年度末から2,965億円増加し3兆3,626億円となりました。
一方、負債については、前連結会計年度末から678億円増加し2兆1,699億円となりました。このうち、有利子負債額は前連結会計年度末から993億円増加し1兆8,858億円となりました。なお、有利子負債額のうち3,050億円は海外事業のノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です。
また、純資産については、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に加え、為替換算調整勘定や繰延ヘッジ損益の増加等により前連結会計年度末から2,286億円増加し1兆1,927億円となりました。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の29.9%から32.3%となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や棚卸資産の増加があったものの、税金等調整前当期純利益の増加等により、前連結会計年度に対し274億円増加の1,558億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、インドネシアバタン発電所プロジェクトへの投融資の反動減等により、前連結会計年度に対し280億円減少の1,508億円の支出となりました
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの償還による支出の増加があったものの、社債や借入れによる資金調達の増加に加え、米国ジャクソン火力発電所の権益一部譲渡による収入等により、前連結会計年度に対し119億円増加の960億円の収入となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対し1,117億円増加の3,342億円となりました。
当社グループが実施する事業のうち、電気事業の受給実績、販売実績、資材の状況及び海外事業の販売実績について記載しております。
(注)発受電電力量は、水力・汽力・風力発電電力量等の合計です。
① 販売実績
(注)発電事業の販売電力量及び電力料は、水力・汽力・風力等の合計です。
② 主要顧客別売上状況
(注)割合は電気事業営業収益に対する割合です。
c.資材の状況
① 石炭、重油及び軽油の受払状況
(イ) 石 炭
(ロ) 重 油
(ハ) 軽 油
○ 海 外 事 業
① 販売実績
(注)タイ及びアメリカにおけるプロジェクトのうち、主要な販売実績について記載しております。
② 主要顧客別売上状況
(注) 1 割合は海外事業営業収益に対する割合です。
2 PJM は米国東部地域における独立系統運用機関(Independent System Operator)です。
3 米国ジャクソン火力発電所が2022年5月4日に営業運転を開始したことにより、当連結会計年度においてPJMに対する売上状況が著しく増加しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、当連結会計年度末における資産及び負債の報告数値並びに当連結会計年度における収益及び費用の報告数値に影響を与える見積りを行う必要があります。当該見積りについては、経営者は過去の実績や見積り時点で入手可能な情報等に基づく仮定を用いて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
当社グループは、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、以下のものが重要であると考えております。
a.固定資産の減損
当社グループは、継続的に収支の把握を行っている管理会計上の区分を基本として資産をグルーピングしております。減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産及び資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識します。
減損の兆候の判定並びに減損損失の認識及び測定に当たっては、過去の実績や入手可能な情報等を踏まえた合理的な見積り及び仮定に基づき検討しておりますが、経営環境、市況又は事業計画の変化により当該見積り及び仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
b.有価証券の減損
当社グループは、時価のある有価証券について、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価を以て貸借対照表価額とし、評価差額を減損損失として認識します。また、時価のない有価証券について、当該会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく下落したときは、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合を除き、相当の減額を行い、評価差額を減損損失として認識します。
回復可能性の検討に当たっては、過去の実績や入手可能な情報等を踏まえた合理的な見積り及び仮定に基づき検討しておりますが、経営環境、市況又は事業計画の変化により当該見積り及び仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
c.退職給付費用及び債務
当社及び一部の国内子会社は、数理計算上で設定される前提条件(割引率、将来の退職金ポイント累計、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等)に基づき、従業員に係る退職給付費用及び債務を算出しておりますが、実際の算出結果が前提条件と異なる場合、特に株価等市況が大きく変化し年金資産の実運用収益率が影響を受けた場合又は割引率が低下した場合、数理計算上の差異が大きくなり、その償却により人件費が影響を受けます。
d.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に当たって、将来の課税所得を合理的に見積もっております。将来の課税所得の見積りに当たっては、合理的な要因に基づく業績予測等を前提としておりますが、経営環境の変化又は税制改正による法定実効税率の変更等が生じ、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を減額し費用を計上します。また、当該変更等により計上金額を上回る繰延税金資産を将来回収できると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を増額し収益を計上します。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(イ)営業収益
営業収益は、前連結会計年度に対し7,573億円(69.8%)増加の1兆8,419億円となりました。
このうち電気事業営業収益は、電力販売価格の上昇により、前連結会計年度に対し5,414億円(61.8%)増加の1兆4,179億円となりました。
海外事業営業収益は、米国ジャクソン火力発電所の営業運転開始に加え、電力販売価格の上昇等により、前連結会計年度に対し1,324億円(91.3%)増加の2,775億円となりました。
また、その他事業営業収益は、豪州連結子会社の石炭販売価格が上昇したこと等により、前連結会計年度に対し833億円(132.2%)増加の1,464億円となりました。
(ロ)営業費用及び営業利益
営業費用は、前連結会計年度に対し6,604億円(66.2%)増加の1兆6,580億円となりました。
電気事業営業費用は、修繕費の減少はあったものの、火力の燃料費や他社購入電源費の増加等により、前連結会計年度に対し5,161億円(62.6%)増加の1兆3,406億円となりました。
海外事業営業費用は、米国ジャクソン火力発電所の営業運転開始に加え、タイGulf JPで燃料費が増加したこと等により、前連結会計年度に対し1,303億円(110.2%)増加の2,485億円となりました。
また、その他事業営業費用は、前連結会計年度に対し139億円(25.5%)増加の688億円となりました。
営業利益は、石炭販売価格の上昇による豪州連結子会社の増益等もあり、前連結会計年度に対し968億円(111.4%)増加の1,838億円となりました。
(ハ)営業外収益と費用及び当期経常利益
営業外収益は、持分法投資利益は減少したものの、固定資産売却益の計上等により、前連結会計年度に対し22億円(10.0%)増加の247億円となりました。なお、当連結会計年度の持分法投資利益は、2022年12月に発生した米国の寒波による設備トラブルや中国プロジェクトでの減損等により減少しております。
営業外費用は、為替差損の大幅な減少があったものの、米国ジャクソン火力発電所の営業運転開始に伴う支払利息の増加や固定資産除却損の計上等により、前連結会計年度に対し11億円(3.3%)増加の378億円となりました。為替差損は、主にタイGulf JPが保有するドル建て借入金の決算時における為替変動の評価により発生します。当連結会計年度は、前連結会計年度に比べドルに対するバーツ安の進行が大きく縮小しました。
経常利益は、営業利益の増加等により、前連結会計年度に対し979億円(134.5%)増加の1,707億円となりました。
(ニ)親会社株主に帰属する当期純利益
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に対し979億円(134.5%)増加の1,707億円となりました。
法人税等合計は、豪州連結子会社での課税所得の増加に加え、当社の繰越欠損金控除に伴う繰延税金資産の取崩し等により、前連結会計年度に対し537億円増加しました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に対し2億円(4.0%)増加の53億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に対し440億円(63.1%)増加の1,136億円となりました。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
○ 営業収益
(電気事業営業収益)
当社グループの電気事業営業収益は主に、当社グループの発電設備で発電した電力の販売による収入、卸電力取引市場等から調達した電力の販売による収入、並びに一般送配電事業者からの託送料収入により構成されます。販売電力量は、小売電気事業者等の電力需給動向により影響を受けるため、当社グループの電力量料金に係る収入は間接的に小売電力需要の影響を受けます。
(イ) 発電設備容量
当社グループは、発電施設の建設にあたり、長期的な電力需要の見通し、市場競争の進展度合い等の想定されうる将来の事業環境を前提に、当該発電施設の収益性を判断し、開発計画を策定しております。想定以上の事業環境の変化により当社が期待する収益性を確保できない可能性はありますが、基本的に発電設備容量の増加は販売電力量及び販売電力料の増加に結びつきます。
(ロ) 電力需要
日本の最終電力需要の見通しによっては、長期的に建設・運転可能な発電所数等が左右されることになり、間接的に当社グループの収益に影響します。また、電力需要は冷夏・暖冬等の天候によっても影響を受けます。
(ハ) 電気料金等
発電事業に関する料金は、小売電気事業者等への販売料金と卸電力取引市場への販売料金により構成されます。小売電気事業者等への販売料金は、電気事業法の改正に伴い、2016年4月より卸規制等が撤廃され、販売先との協議により決定しております。卸電力取引市場への販売料金は電力市場価格に基づくため、当該価格変動の影響を受けます。一方、送電事業に関する料金は、健全な送配電ネットワーク維持のため、引き続き規制部門として送電事業で必要と想定される適正な原価に適正な利潤を加えて算定しております。
発電事業に関する小売電気事業者等への販売料金及び送電事業に関する料金の詳細な条件は契約当事者間で協議の上、適宜改定を行っています。また、料金の構成としては、揚水を除く発電設備については、原則として基本料金と販売電力量に応じた従量料金としています。一方、揚水発電設備、送・変電設備については、原則として全額を基本料金としております。
なお、火力発電設備の従量料金の大半を占める燃料費相当部分については、海外炭の価格動向など市況の変動が大きいため、原則として販売先との間で燃料調達に係る市況の変動を適宜反映する仕組みを導入しております。
また、卸電力取引市場等から調達する電力についての販売料金は、販売先との契約により決定し、適宜改定を行っております。
(海外事業営業収益)
当社グループの海外事業営業収益は主に、タイにおける当社の連結子会社とタイ電力公社(EGAT)との長期電力販売契約に基づく販売電力料収入及びアメリカにおける当社の連結子会社の電力市場での販売電力料収入です。
タイにおいては、販売電力料収入には固定料金である基本料金収入と販売電力量に応じた電力量料金収入があります。当社の連結子会社の販売電力量は、販売先であるタイ電力公社の電力需給動向により影響を受けるため、当社の連結子会社の電力量料金に係る収入は間接的に電力需要の影響を受けます。
また、アメリカにおいては、販売電力料収入には販売容量に応じた容量収入と販売電力量に応じた電力量料金収入があります。当社の連結子会社の容量収入は容量市場における容量需給動向により変動します。当社の連結子会社の販売電力量は、電力市場における電力需給動向により影響を受けるため、当社の連結子会社の電力量料金に係る収入は電力需要の影響を受けます。
○ 営業費用
(電気事業営業費用)
(イ) 減価償却費
重要な減価償却資産の減価償却の方法は、定額法によっております。今後、新たに大規模な設備が資産計上されると減価償却費も増加します。
(ロ) 燃料費
火力発電所の燃料に使用する石炭については、主として長期契約若しくは期間1年程度の契約により行っております。また、補完的にスポットでの調達も行っております。長期契約に基づく石炭の購入価格は、通常、1年に1回市場価格を踏まえて調整されます。当社の燃料費は、石炭の価格変動、輸送船舶の需給状況、燃料調達先の設備・操業トラブル等の影響を受けます。
(ハ) 人件費
従業員に係る退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件(割引率、将来の退職金ポイント累計、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等)に基づき算出されておりますが、実際の算出結果が前提条件と異なる場合、特に株価等市況が大きく変化し年金資産の実運用収益率が影響を受けた場合又は割引率が低下した場合、数理計算上の差異が大きくなり、その償却により人件費が影響を受けます。
(ニ) 修繕費
設備信頼性を維持するため計画的な補修を実施しておりますが、定期点検の内容、規模等により修繕費は変動します。
(ホ) 他社購入電源費
電力市場価格や販売先との契約に基づく販売電力量等により、卸電力取引市場等からの電力の調達に要する他社購入電源費は変動します。
(海外事業営業費用)
(イ) 燃料費
タイにおける火力発電に用いる燃料の天然ガスは、タイ石油公社(PTT)と長期燃料供給契約を締結し購入しております。当社の連結子会社の燃料費は、ガス価格の変動、タイ石油公社の設備・操業トラブル等の影響を受けます。
また、アメリカにおける火力発電に用いる燃料の天然ガスは、市場から購入しております。当社の連結子会社の燃料費は、ガス価格の変動の影響を受けます。
○ 営業外収益・費用
営業外費用には、支払利息のほか為替差損があり、金利及び為替の変動によって影響を受けます。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(イ) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(ロ) 資金需要の動向
当社グループの主な資金需要は、電気事業及び海外事業への設備投資並びに長期負債の借換資金です。当連結会計年度の電気事業に係る設備投資は、前連結会計年度より173億円増加の1,072億円、海外事業に係る設備投資は、前連結会計年度より263億円減少の129億円です。
(ハ) 資金調達の方法及び状況
当社グループの資金需要は設備投資と債務の借換に係るものが大半であるため、資金調達は長期資金で手当てすることを原則としています。
長期資金調達に際しては、低利かつ安定的な資金調達手段として普通社債の発行及び金融機関からの借入を行っており、当連結会計年度末の普通社債発行残高は8,440億円、借入残高は1兆283億円となりました。
短期資金については、運転資金に加え、調達の即応性を高める観点から機動的なつなぎ資金調達を実施することとしており、これら短期の資金需要を満たすために3,000億円のコマーシャル・ペーパーの発行限度枠を設定しています。
なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は、前連結会計年度末から993億円増加し1兆8,858億円となりました。
○ 長期有利子負債
当連結会計年度末の長期有利子負債は、社債7,740億円、長期借入金8,933億円です。なお、長期借入金のうち2,843億円はノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です。
○ 短期有利子負債
当連結会計年度末の短期有利子負債は、1年以内に償還予定の社債700億円、1年以内に返済予定の長期借入金1,349億円及び短期借入金107億円です。なお、1年以内に返済予定の長期借入金及び短期借入金のうち238億円はノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です。
d.目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおり、2023年度に実現を目指す財務目標として「連結経常利益900億円以上」及び「連結自己資本比率30%以上」を設定しています。
当連結会計年度における連結経常利益は1,707億円、連結自己資本比率は32.3%となりました。
(主たる事業に係る契約等)
当社グループの主たる事業は発電事業及び送電事業です。発電事業では旧一般電気事業者10社や新電力といった小売電気事業者等に対して、各社との出力・電力量、料金等を定めた契約に基づき、当社が所有する発電設備で発電した電力又は卸電力取引市場等から調達した電力を供給しております。また、送電事業では子会社が所有する送・変電設備により、沖縄電力㈱を除く一般送配電事業者9社の電力託送を、各社との契約に基づき行っております。
なお、発電事業に関する料金は、電気事業法の改正に伴い、2016年4月より卸規制等が撤廃され、販売先との協議により決定しております。一方、送電事業に関する料金は、健全な送配電ネットワーク維持のため、引き続き規制部門として送電事業で必要と想定される適正な原価に適正な利潤を加えて算定しております。
当社グループにおける研究開発活動は、J-POWER "BLUE MISSION 2050"の実現のために進める「新たな価値の創出」と、これまで電気事業で培った知見を活かしつつ事業環境の変化に対応し、持続的に競争力強化を図るための「既存事業の強化」の2項目に重点を置いています。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、
主な研究開発は、次のとおりです。
① 新たな価値の創出(CO2フリー水素製造、CO2回収・利用・貯留、グリーンオイル、石炭・バイオマスガス化など)
② 既存事業の強化(風力発電技術、衛星画像データ利用の遠隔監視、発電所保守運用の最適化・デジタル化、系統シミュレーション技術など)