第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について、重要な変更が発生しました。なお、文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものです。

 

(大間原子力発電所計画について)

大間原子力発電所計画は、1995年8月の原子力委員会決定によって、国及び電気事業者の支援の下、当社が責任を持って取り組むべきとされた全炉心でのMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料利用を目指した改良型沸騰水型軽水炉(フルMOX-ABWR)であり、軽水炉でのMOX燃料利用計画の柔軟性を広げるという政策的な位置付けを持つものとされております。このため、全炉心でのMOX燃料利用に関する技術開発部分について、「全炉心混合酸化物燃料原子炉施設技術開発費補助金交付要綱」に基づき、政府から補助金の交付を受けております。また、既に沖縄電力㈱を除く旧一般電気事業者9社と基本協定を締結しており、その中で旧一般電気事業者9社による適正原価等での全量受電が約されております。加えて、計画の現況についても旧一般電気事業者9社と定期的に確認しております。

大間原子力発電所計画は、全炉心でのMOX燃料利用の原子力発電所として、地元大間町、青森県の同意を得て、1999年8月に電源開発調整審議会により電源開発促進法で定める国の電源開発基本計画に組み入れられ、2008年4月には「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく原子炉設置許可、5月には電気事業法に基づく工事計画認可(第1回)を経済産業大臣から受け、着工に至っております。この時点で予定していた建設費は4,690億円でした。その後、2011年3月に発生した東日本大震災直後より工事を休止しておりましたが、2012年10月より工事を再開しております。

当社は、2013年7月に施行された原子力発電所に係る新規制基準への適合性審査を受けるため、2014年12月16日に原子力規制委員会に対し、原子炉設置変更許可申請書及び工事計画認可申請書を提出しました。具体的な取組みは多岐にわたりますが、シビアアクシデントを防止するために、設計基準事故対策の強化及び地震・津波等への想定や対応策の強化を行うとともに、新規制基準において新設された重大事故等対策として、炉心損傷の防止及び格納容器の破損防止のための対策を行っております。さらに、航空機衝突等のテロ対策として、原子炉格納容器の破損による外部への放射性物質の異常な放出を抑制するため原子炉の減圧等の遠隔操作を可能とする特定重大事故等対処施設を設置することとしています。

当社は、上記申請の中で取り纏めた追加の安全強化対策工事をできるだけ早期に開始し、2029年後半に終了することを目指して全社を挙げて取り組んでおりますが、事業者として適合性審査の進展について確定的な見通しを持つことはできず、工事の終了時期については予断を持てない状況です。

具体的には、原子力事業を取り巻く状況の変化、原子力規制委員会の審査の状況、新規制基準への追加の対応等により、工程が延伸する可能性があります。これらの場合には、建設費の増加や関連費用が更に発生する可能性があります。なお、安全強化対策工事については、先行して適合性審査に合格した同型炉の安全強化対策の内容や規模も参考に更なる対策の実施を検討しており、2014年12月16日の上記申請書に記載した工事費見通し約1,300億円についても、それに伴う相応の増額を見込んでおります。加えて、原子力発電においては、国の原子力政策の見直しなど原子力事業を取り巻く状況の大幅な変化や更なる市場競争の進展、予期せぬ事態の発生等による計画変更等のリスク、また、運転開始後には、放射性物質の貯蔵と取扱いに関するリスク、他の発電設備と同様、自然災害、不測の事故等のリスクも存在します。

一方で、全炉心でMOX燃料の利用が可能な大間原子力発電所は、国がエネルギー基本計画において基本的方針としている原子燃料サイクルに大きく貢献できる発電所です。電気事業連合会から2020年12月にプルサーマル計画が、2024年2月にプルトニウム利用計画がそれぞれ公表されておりますが、2023年度末のプルサーマルの実施状況を踏まえれば、年間最大6.6tPutのプルトニウムを回収可能な六ヶ所再処理工場が安定的に稼働するためには、フルMOX運転時に年間約1.7tPutのプルトニウムを消費できる大間原子力発電所は必要不可欠と考えております。

当社は、これらの大間原子力の重要性を踏まえ、原子力規制委員会の適合性審査に真摯かつ適切に対応し、必要な安全対策等を着実に実施して全社を挙げて安全な発電所づくりに取り組むとともに、ここに記載した原子力発電事業の様々なリスクに対しても可能な限り対策を講じ、事業者として関係者とも協力しながら経済性を確認しつつ事業を推進していく所存ですが、仮にリスクが顕在化した場合、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当中間連結会計期間の収入面は、タイで電力販売価格が低下したことや販売電力量が減少したこと、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したこと等による減収があったものの、発電事業では火力発電所利用率の上昇(46%50%)による販売電力量の増加や卸電力取引市場等から調達した電力の販売が増加したことに加え、容量市場が開始したこと等により、売上高(営業収益)は前中間連結会計期間に対し1.4%増加6,407億円となりました。営業外収益は固定資産売却益や持分法投資利益の増加等により、前中間連結会計期間に対し61.8%増加262億円となり、中間経常収益は前中間連結会計期間に対し3.0%増加6,669億円となりました。

一方、費用面は、発電事業の他社購入電源費等の増加があったものの、火力や海外事業の燃料費の減少等により、営業費用は前中間連結会計期間に対し2.8%減少5,699億円となりました。営業外費用は為替差損の増加等により、前中間連結会計期間に対し38.2%増加259億円となり、中間経常費用は前中間連結会計期間に対し1.6%減少5,958億円となりました。

経常利益は、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したことによる減益があったものの、発電事業での販売粗利の改善等もあり、前中間連結会計期間に対し67.5%増加710億円となり、法人税等を差し引いた親会社株主に帰属する中間純利益は、前中間連結会計期間に対し74.3%増加483億円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

なお、当中間連結会計期間より、報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しており、前中間連結会計期間との比較・分析は、変更後の区分に基づいております。報告セグメントの変更については、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等) セグメント情報」の「2 報告セグメントの変更等に関する事項」に詳細を記載しております。

(発電事業)

発電事業の販売電力量は、再生可能エネルギーは水力の出水率が前中間連結会計期間を下回った(92%89%)こと等により、前中間連結会計期間に対し1.4%減少56億kWhとなりました。火力については、発電所利用率が前中間連結会計期間を上回ったこと等により、前中間連結会計期間に対し9.9%増加177億kWhとなりました。卸電力取引市場等から調達した電力の販売は、前中間連結会計期間に対し48.4%増加81億kWhとなり、発電事業全体では、前中間連結会計期間に対し15.3%増加315億kWhとなりました。

売上高(電気事業営業収益及びその他事業営業収益)は、販売電力量の増加や容量市場の開始等により、前中間連結会計期間に対し11.9%増加4,511億円となりました。

セグメント利益は、他社購入電源費の増加等があったものの、売上の増加に加え、販売粗利の改善等により前中間連結会計期間から407億円増益392億円となりました。

 

(送変電事業)

売上高(電気事業営業収益)は、託送収益の増加により、前中間連結会計期間に対し2.8%増加249億円となりました。

セグメント利益は、売上の増加はあったものの、販管費の増加等により、前中間連結会計期間に対し5.8%減少50億円となりました。

 

(電力周辺関連事業)

売上高(その他事業営業収益)は、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したこと等により、前中間連結会計期間に対し23.6%減少459億円となりました。

セグメント利益は、売上の減少等により、前中間連結会計期間に対し49.6%減少139億円となりました。

 

(海外事業)

海外事業の販売電力量は、タイで販売電力量が減少したこと等により、前中間連結会計期間に対し7.3%減少104億kWhとなりました。

売上高(海外事業営業収益)は、タイで電力販売価格が低下したことや販売電力量が減少したこと等により、前中間連結会計期間に対し16.3%減少1,326億円となりました。

セグメント利益は、為替差損の増加があったものの、持分法投資利益が増加したこと等により、前中間連結会計期間に対し13.5%増加125億円となりました。

 

(その他の事業)

売上高(その他事業営業収益)は、前中間連結会計期間に対し15.2%増加85億円となりました。

セグメント利益は、前中間連結会計期間に対し9.4%増加1億円となりました。

 

資産については、2024年7月31日付で子会社となったGENEX POWER LIMITED(以下、「GENEX」)の資産受け入れや円安の影響等により、前連結会計年度末から2,111億円増加3兆6,869億円となりました。

一方、負債については、GENEXの負債引き受けや円安の影響等により、前連結会計年度末から1,084億円増加2兆2,510億円となりました。このうち、有利子負債額は前連結会計年度末から730億円増加1兆9,400億円となりました。なお、有利子負債額のうち3,990億円は海外事業のノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です。

また、純資産については、親会社株主に帰属する中間純利益の計上に加え、為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末から1,027億円増加1兆4,359億円となりました。

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の35.0%から35.6%となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前中間純利益は増加したものの、売上債権の増加等により、前中間連結会計期間に対し98億円減少856億円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、GENEX株式の取得による支出や定期預金の増加等により、前中間連結会計期間に対し422億円増加の649億円の支出となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済による支出が減少したものの、社債の償還による支出の増加等により、前中間連結会計期間に対し405億円増加の575億円の支出となりました。

 

以上の結果、現金及び現金同等物の当中間期末残高は、前連結会計年度末残高に対し280億円減少3,425億円となりました。

 

(3) 研究開発活動

当中間連結会計期間における当社グループ全体の研究開発費の総額は、44億円です。

なお、当中間連結会計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

 

3 【経営上の重要な契約等】

(GENEX POWER LIMITEDの株式取得に関する契約)

当社は、2024年4月12日に、当社グループがオーストラリア(以下、「豪州」)にて再生可能エネルギー及び蓄電設備の開発・建設・運営事業を展開する豪州企業GENEX POWER LIMITED(以下、「GENEX」)の発行済株式の100%を取得(以下、「本件株式取得」)し、GENEXを子会社化するための手続きを開始することを決定しました。

本件株式取得にあたっては、豪州上場会社の株式を100%取得する方法の一つである豪州会社法に基づくScheme of Arrangement(以下、「SOA」)の手続きにより、当社の指名する連結子会社(出資比率:100%)を通じてGENEXの全株主の保有する株式を現金にて取得するため、当社がGENEXとの間で本件株式取得に関する合意内容を定めるTransaction Implementation Deedを締結いたしました。

その後GENEXの株主総会における承認、ニューサウスウェールズ州最高裁判所による承認等を経て、SOA実行日である2024年7月31日付でGENEXは当社の子会社となりました。

詳細につきましては、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。