文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」というミッション達成のため、2050年に向けて発電事業のカーボンニュートラル実現に挑んでいくこと、そのマイルストーンとする2030年までのCO2排出削減目標の達成に一定の見通しを得て、2030年以降の世界も見据えたカーボンニュートラル化の加速に向けて、資本効率も意識しつつ国内外においてカーボンニュートラルアセット中心となる事業ポートフォリオへの変換を目指します。また、電力安定供給やレジリエンス(強靭性)強化の要請に応えつつカーボンニュートラル実現に取り組んでいくために、それを支える強固な事業基盤の構築を図っていきます。
当社グループは、サステナブルな成長を実現し、その成果を全てのステークホルダーと共に分かち合い、持続可能な社会の発展に貢献していきます。
(2) 当社グループを取り巻く経営環境と対処すべき課題
世界情勢が不安定・不透明となる中、世界の電力需要は引き続き増加が見込まれ、エネルギー安全保障の重要性が一層強く認識される状況にあります。その一方、カーボンニュートラルに向けた現実的な解も求められています。
わが国では、2025年2月に第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。S+3E(安全性を前提に、安定供給、経済効率性の向上、環境への適合を図る)という基本的視点のもと、DXやGXの進展による電力需要増加への対応とエネルギー安全保障の観点から、脱炭素電源を最大限活用しつつ、特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスの取れた電源構成を目指すとされました。各分野における課題と対応の方向性が示され、今後、エネルギー産業を中心に社会全体でこれらの課題に取り組んでいくことになります。
当社グループは、カーボンニュートラル実現による企業価値向上を目指す2050年に向けた長期ビジョンとしてJ-POWER“BLUE MISSION 2050”を策定しています。中期経営計画(2024-2026)では、2030年以降のカーボンニュートラルの加速に対応するため、5つの重点項目を示しています。この取組みに注力することで、事業ポートフォリオとビジネスモデルの変換を進め、上述のように変化する環境の中で、電力安定供給と気候変動対応の両立を図り、企業価値の向上を目指します。

※1 電源開発送変電ネットワーク㈱(J-POWER送変電)の取組み
① 持続可能な収益源の確立と成長
a.国内再生可能エネルギー事業
当社グループではカーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの開発を加速してきましたが、競争が増す中、規模拡大だけでなく収益性を向上させる必要性もますます高まっています。このため、新規開発に加え、既存の発電所をより効率的な発電所に更新する取組みや稼働率の向上など既存資産を最大限に活用する取組みにより再生可能エネルギーの発電電力量を増大しつつ、コーポレートPPA※2など新たな販売方法の導入により環境価値の実現を目指します。
2024年度には、長山発電所(水力)、上ノ国第二風力発電所、姫路市大塩太陽光発電所などの新設・更新による設備出力の拡大に加えて、稼働率向上などに取組みました。また、風力(新南大隅、上ノ国第三)及び太陽光(姫路市大塩)においてコーポレートPPAを締結したほか、従来太陽光を対象に実施してきた再エネアグリゲーションサービス※3の対象範囲を陸上風力にも拡大しました。今後も発電電力量増大と環境価値実現に向けた取組みを進めてまいります。
※2 企業や自治体などの需要家が、発電事業者から再生可能エネルギーの電力・環境価値を長期に亘って購入する契約。
※3 他社の再生可能エネルギー発電所に対し、発電予測・計画値同時同量管理業務・電力取引業務を提供するサービス。


b.海外事業
世界では今後も多くの事業機会が見込まれるため、それを取り込むことにより当社グループの成長につなげてまいります。発電事業のみならず、再生可能エネルギーなどの開発者利益の獲得を軸に、資本効率を改善しながら事業セグメントと事業エリアを拡大し、多様な時間軸で利益創出できるビジネスモデルへのトランジションを目指します。
2024年度には、アセットポートフォリオ組替えの一環として、米国ガス火力の持分売却を行う一方、豪州の再生可能エネルギー発電等事業会社の子会社化、インドネシア国の水力発電事業会社への出資参画を行いました。2025年4月には国際事業本部をアジア・米州オセアニア・欧州中東のエリア別の3部体制に再編しており、新体制のもと、増加する新規開発案件や多様化する事業を機動的・効率的に推進してまいります。

② 2030年代事業ポートフォリオへの布石
当社グループは2030年以降のカーボンニュートラル化の加速に向けて国内火力のトランジションを進め、資本効率も意識しながら、2030年代に国内外でカーボンニュートラルアセットが事業ポートフォリオの中心となるよう、変換を目指します。
a.CO2フリー水素・アンモニア戦略
当社グループは将来的なCO2フリー水素発電を実現するための石炭ガス化発電(IGCC)技術※4を商用化するGENESIS松島計画※5を推進しています。既設松島火力発電所は2024年度末をもって稼働停止し、1号機は廃止、2号機はGENESIS松島計画に向けて休止しております。
また、水素やアンモニア、CCS※6などサプライチェーンの上流から下流にわたる多様な可能性を追求する観点で、2024年度はオマーン国での水素/アンモニア製造・供給事業を実施する権利を落札し、事業化検討に着手しました。また、西日本におけるCCS事業の事業化検討を引き続き実施するとともに、豪州沖・マレー半島沖でのCCS事業の検討・調査に参画・着手、2025年4月にはCCSに関する組織・機能を集約した新組織を設置しました。このような取組みにより、脱炭素技術の確保を図り、確実な火力トランジションを目指します。
※4 ガス化炉で石炭から水素や一酸化炭素などのガスを生成し、発電に利用する技術。
※5 経年化した松島火力発電所に新技術の石炭ガス化設備を付加。
※6 Carbon dioxide Capture and Storage、CO2の分離・回収・貯留。
b.電力ネットワーク増強への貢献※7
これからの再生可能エネルギーの大量導入に向けて、再生可能エネルギーの適地(北海道、東北、九州など)で発電された電気を消費地まで届けるための電力ネットワークの増強が要請されています。
当社グループは、保有する佐久間周波数変換所の保守を通じて東西日本を結ぶ電力運用に貢献していますが、佐久間周波数変換所増強計画を推進することで、電力系統の広域的運用に貢献します。また、これまでの実績を基に電力ネットワーク増強に貢献する事業機会を追求し、収益への貢献を図ります。
※7 電源開発送変電ネットワーク㈱(J-POWER送変電)の取組み
c.安全を大前提とした大間原子力発電所計画の推進
当社グループは、青森県下北郡大間町にて、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する大間原子力発電所の建設を進めています。同発電所は、エネルギー安定供給を支えるベースロード電源であり、気候変動問題対応の社会的要請に応えるCO2フリー電源としての役割に加えて、日本政府がプルトニウムの保有量減少を求める中でフルMOX運転により多くのプルトニウム消費が可能となる原子燃料サイクルの中核を担う発電所として重要性が高まっています。
現在実施中の原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査は、2024年11月に基準津波、2025年5月に基準地震動について概ね妥当と評価されるなど、着実に進展しております。引き続き必要な安全対策などを着実に実施することで早期の建設工事本格化を目指し、長期脱炭素電源オークション制度※8の活用も念頭に置きながら大間原子力発電所計画を着実に推進します。
※8 カーボンニュートラル実現に資する新規電源投資を促すため、原則20年間にわたり落札価格が交付される入札制度。
d.新たな事業領域の創造
カーボンニュートラルへの移行やデジタル技術をはじめとするイノベーションの進展により、社会・経済構造の大きな変革が想定されています。当社グループはスタートアップなどへの投資と連携を通じ、当社グループが有する技術・ノウハウとの融合による価値創造を目指します。
2024年度には、イノベーションの実装を加速するための新組織のもと、環境価値に時間的価値を付与する環境価値プラットフォーム※9の開発や、環境配慮型高機能リサイクル繊維の事業化の検討などに着手しました。引き続き、幅広い領域でのさらなる価値の探索と事業開発に向けた取組みを進めてまいります。
※9 非化石電源が発電した時間を正確に記録し需要データを紐づけて、時間帯ごとの環境価値を顕在化させる仕組みを提供するサービス。現行の時間帯証明がない非化石証書を活用した取引では困難な、同時性のある再生可能エネルギー調達の証明に寄与し、企業の実効的なGXの推進に貢献する。
③ 収益力・投資効率の向上
当社グループはROIC(投下資本利益率)を資本効率を図る指標とし、セグメント別ROICを算定、公表しています。設備運用見直しや環境価値実現などによる利益の拡大、高収益・成長分野への資本重点投下、アセットの入れ替えを通じた資金回収の早期化など、事業特性を踏まえた資本効率向上策の検討・実践を各事業部門に促し、全社ROICの向上を目指します。
④ グループ競争力の強化
個人を尊重し、多様な業務経験機会を確保し、従業員のチャレンジを支援する人財制度を整備・充実し、知恵と技術のさきがけとなる多彩な人財を育成し続けることで、日本と世界が直面する様々な社会課題の解決に貢献しつつ、企業価値の向上を目指します。また、当社グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進ビジョン“DX 3S+D”※10の実現に向けた具体的施策の推進により人財の「よりょく」(余力(ゆとりの力)、与力(創意工夫の力)、予力(予測・予見の力)を表す造語)を創出し、グループ競争力の強化を目指します。
※10 「Strength 稼ぐ力」「Smartness 効率性」「Safety 安心・安全」+「D データドリブン」
⑤ ESG経営の深化
当社グループはESG経営推進体制を整備し、また5つのマテリアリティを特定してESG経営を推進してきました。今後もPDCAサイクルを回しながらESG経営の深化を図ります。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、新中期経営計画において、2030年代に実現を目指す財務目標として「ROE8%以上」を設定しています。当財務目標の実現に向けては、ROIC(投下資本利益率)の導入を通じて、資本効率を高めることを意識しつつ、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として2026年度「連結経常利益900億円」を採用しています。
2024年度の連結経常利益は1,400億円となりました。引き続き経営目標達成に向けて取り組んでまいります。
(注)上記財務目標は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において予測できる事情等を基礎とした当社グループの合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
※11 (NOPAT+持分法投資損益)/(有利子負債+株主資本−非稼働資産)、NOPAT(税引後営業利益)には事業部門に直課可能な営業外損益・特別損益を含む
当社グループは「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」という企業理念のもと、ステークホルダーとの信頼関係を基礎として、国内外での事業活動を通じて、豊かな社会を実現することを、サステナビリティ基本方針として定め、様々な取組みを進めています。当社サステナビリティ基本方針等の詳細は、
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループではサステナビリティに関する重要な事項は取締役会において決定しており、社長執行役員がESG総括として責任者を務めるサステナビリティ推進体制を構築しています。会議体として「サステナビリティ推進会議」を設け、またグループ全体で協調して取組みを行うべく、グループ各社が参加する「J-POWERグループサステナビリティ推進協議会」を設置し、サステナビリティの推進を図っています。サステナビリティ推進会議では、サステナビリティ全般に関する戦略、企画、施策及びリスク管理等の審議を年3回以上実施しています。このうち重要な事項は取締役会あるいは常務会に提案/報告することで、取組み状況のモニタリングや、経営計画・事業計画への反映を行っています。また、2023年度より役員の業績連動報酬の指標として、中長期的な企業価値向上に向けた取組みであるマテリアリティ(エネルギー供給、気候変動対応、人の尊重、地域との共生、事業基盤の強化)を評価に導入しております。

ガバナンス体制における近時の主なサステナビリティ審議・決定事項

当社グループでは、さらなる企業価値の向上に向け、重要な社会的な課題を抽出し、ステークホルダーの方々の関心、企業理念との関連、事業への影響等を考慮して、「エネルギー供給」「気候変動対応」「人の尊重」「地域との共生」「事業基盤の強化」の5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。特定に際しては第三者からの意見を踏まえた案を作成後、サステナビリティ推進会議、常務会での議論のうえ、取締役会で決議を行いました。2022年には目標(KPI)を設定し、さらに2023年からは役員報酬(業績連動報酬)の評価指標に5つのマテリアリティを非財務指標として加えております。当社グループは事業活動を通じて、財務価値の向上と同時にマテリアリティの目標(KPI)を達成し、持続的な企業価値向上と社会課題の解決の両立に努めていきます。

<気候変動>
当社グループの5つのマテリアリティのうち、「気候変動対応」は、当社の財務的価値への影響が大きいと考えることから、個別の戦略について記載します。なお、当社グループはTCFD提言に基づく開示を行っており、その戦略部分を抜粋して記載しております。
なお、2024年度GHG排出量に関しては第三者検証を受審中であり、確定値は2025年9月頃に
リスクと機会の分析では1.5℃/4℃上昇ケースを想定し、それぞれ分析しています。1.5℃上昇ケースでは強力な施策・規制が実施され、日本においても再生可能エネルギー比率が大幅に高まり、電源の脱炭素化が急激に進展していくと想定しました。また、温暖化対策が徹底されない4℃上昇ケースの場合は、2100年時点で世界平均地上気温は4℃以上、平均海面水位は1m近く上昇することが予測されています。十分な気候変動対策を取らない場合、特に2050年以降における気象災害の物理リスクの顕在化が懸念されます。


(2050年シナリオ分析)
当社グループでは、パリ協定でうたわれている今世紀末の平均気温上昇を産業革命以前の1.5℃未満に抑える努力を追求する1.5℃シナリオをベースに日本全体の気候変動シナリオ分析を実施しました。1.5℃シナリオでは2050年CO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とする必要があります。IEA公表の1.5℃シナリオである「WEO2024」NZEシナリオでは2050年の日本の電源構成は示されていませんが、「WEO2024」APSシナリオが2050年にカーボンニュートラルを達成している日本の電源構成を示していることから、本シナリオ分析ではこれを2050年のメインシナリオとしました。なお2030年度、2040年度の電源構成は日本政府の第6次、第7次エネルギー基本計画をレファレンスしています。
IEAの予測において、EUと米国では2050年に変動性再生可能エネルギー( VRE:Variable Renewable Energy)である太陽光と風力の合計が7割となっています。一方、日本では2050年に、VREの割合は4割で再生可能エネルギー合計でも6割、原子力が2割、水素・アンモニア+CCS付き火力が2割となっています。すなわち日本の電力系統が欧米のようにメッシュ状ではなく串型で地域間連系が弱く、融通性及び柔軟性に乏しいこと、並びにVREの適地に乏しく導入量に制約があることから、安定供給の観点から供給力や調整力をCO2フリーの火力発電により提供する必要があります。
なお、2050年に向けてはイノベーションの進展など不確定要素が多いことから、メインシナリオのみならず、特に当社グループにとって影響が大きいと考えられる再生可能エネルギーと火力発電に関する前提条件を変化させた場合のシナリオも分析しました。なお、日本政府はカーボンプライシングの導入を決定(2026年度:排出量取引制度の本格稼働、2033年度:発電事業者を対象にした有償オークション開始)しており、今後の制度の詳細がシナリオにも影響を与えると考えます。

日本全体のシナリオ分析から、約25年後の2050年カーボンニュートラル達成に向けて当社グループを含む発電事業者は、再生可能エネルギーを重点的に開発する一方で、安定供給の観点から一定程度、石炭火力・ガス火力も最終的にCO2フリー水素へと転換していく必要があります。当社はCO2フリー水素への転換にあたっては、償却の進んだ既存の発電所インフラを活用しながら最新のイノベーションを段階的に設備投資(アップサイクル)により取り入れていくことが経済合理的であると考えます。また、開発済みの再生可能エネルギーを持続的に利用していくうえでもアップサイクルは重要な手段であると考えます。
当社グループはこれまでに再生可能エネルギー(水力・風力・地熱・太陽光)、火力からなるバランスの取れた電源ポートフォリオを形成・運営し、また原子力の建設、CO2フリー水素製造・発電の技術開発も実施するなど、豊富で幅広い技術と知見を蓄積しています。したがって、今後、再生可能エネルギーの拡大を加速するとともに、イノベーションの進展や経済性の動向を見据えながら柔軟に既存発電設備のアップサイクルに取り組むことで、2050年の日本の電源構成の「メインシナリオ」のみならず、「再エネ拡大加速シナリオ」「水素導入拡大シナリオ」のいずれにも対応することができます。

当社グループでは、気候変動問題への取組みを加速するべく、J-POWER“BLUE MISSION 2050”を策定しています。「CO2フリー電源の拡大」「電源のゼロエミッション化」「電力ネットワークの安定化・増強」を3つの柱としてカーボンニュートラルと水素社会実現に着実に取り組んでいます。
当社は人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献することをミッションとし、これまで水力、火力、風力、地熱による発電及び送変電事業に取り組んできました。ミッション達成のために、これまで当社が長年培った総合的な技術力とバランスの取れたポートフォリオをさらに発展させ、多方面からアプローチしていきます。
2050年に向けては発電事業のカーボンニュートラルの実現に段階的に挑んでいきます。そのマイルストーンとして、CO2排出量を2013年度比で2025年度920万t、2030年46%(2,250万t)削減を掲げています。

(2030年シナリオ分析)
当社グループは、2050年カーボンニュートラルのマイルストーンとして、パリ協定に基づく日本のNDCと一致した2030年CO2排出量46%削減を目標としており、2030年シナリオ分析では46%削減に向けた具体的な取組みと財務影響を試算します。なお、仮に2035年、2040年における日本のNDCに沿って削減した場合の当社排出量の想定値も図示しています。
2030年には火力の稼働抑制やバイオマス/アンモニア混焼、既存設備のアップサイクル、国内でCCSを実施することでCO2削減目標を着実に達成します。また、火力発電の販売電力量減少に伴う影響を再生可能エネルギー拡大への取組みで補うことで気候変動対応に伴う財務影響の抑制を図ります。2035年、2040年に向けて排出量については国内火力のトランジションの方向性に沿った取組みを進めることで、NDC同等のCO2排出量削減を目指します。国内再生可能エネルギー拡大については2030年度までに年間40億kWh増加(2022年度比)の目標を掲げています。当社が再生可能エネルギー等のCO2フリー電源を開発した場合、日本全体では他の火力電源の代替となり、日本全体のCO2排出削減に貢献します。当社のCO2フリー電源がもたらす削減貢献量は2024年時点の約470万tから2030年には約1,060万tに増加すると試算しています。

今後日本では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた各種施策(カーボンプライシング導入、CO2排出削減手段の開発・導入への支援等)に取り組むことで、日本全体のエネルギーコストが増加することが想定されます。以下の財務影響の試算にはコスト増につながる内容も含みますが、当社グループは経済合理性のある取組みによりエネルギーコスト上昇の抑制に努めます。日本のカーボンプライシングは2026年度以降、排出量取引制度が本格稼働し、2033年度には発電事業者を対象とした有償オークションが開始予定です。これらは当社のコスト増加要因となりえますが、一方で当社のCO2フリー電源の環境価値の向上による増益要因にもなりえます。


<人的資本、多様性>
○人財育成方針
(J-POWERグループと人財)
当社グループは、マテリアリティとして「人の尊重」を掲げており、従業員一人ひとりを社会の多様なニーズに対して価値を提供する源であると捉え、豊かな個性とチャレンジ精神を有した多彩な人財の育成に取り組んでいます。
なお、人的資本に関する情報は、
(人財確保)
当社グループは、持続可能な成長のために安定的な採用を行うとともに、幅広い分野・世代から多様な人財を求め、活躍の場を提供したいと考えています。また、性別、国籍、職歴、経験、年齢、障がいの有無などに関係なく、多様な人財が持てる力を十分に発揮し、活躍できる制度・職場環境づくりを進めています。
(ダイバーシティ推進)
当社は、グローバル社員のうち役付社員を中核人財と位置づけ、その多様性の確保について、女性、外国人及び中途採用者の2030年までの目標を設定しました。
また、女性活躍推進については、新規採用者に占める女性比率の目標を改定して採用数を増やし、ダイバーシティを推進して生産性や競争力を高め、企業価値向上につなげる取組みを行っています。
多様な人財が活躍できる職場づくりに向けて、ダイバーシティ推進の専任組織を設置し、特に出産・育児などのライフイベントを迎えた女性従業員が安心して働き続けることができるように、キャリア開発支援や休業からの円滑な復職に向けた相談・支援体制の充実に取り組んでおります。
(高齢者活用)
当社グループは、高年齢者雇用に関し、65歳定年制を目指し、段階的に定年年齢を引き上げています。また、従来の定年後継続雇用制度や、グループ内で就労先を紹介する人財登録制度と合わせ、70歳に到達するまで、経験・技術と労働意欲を持つ高年齢者が活躍できる仕組みを整備済みです。
(障がい者雇用)
当社は、障がい者雇用に関し、「障がい者就労支援・職場環境相談窓口」の設置や、事業所建物のバリアフリー化など、就業環境整備や職場の理解促進に取り組んでおり、今後も障がい者雇用の推進に努めていきます。
(人財育成)

当社グループでは、社員が目指す人財像を、複数の専門的知識と広い視野を持ち、プロジェクトと人財をマネジメントしながら経営課題に果敢に挑戦していくことのできる自律的な人財、すなわち「プロフェッショナル人財」と位置付けています。
プロフェッショナル人財の育成と多様な人財の活躍推進は、「人財要件」「ローテーション」「キャリア形成支援制度」によって構成されているCDP(Career Development Program)を通じて取り組んでいます。OJTとOff-JTを組み合わせ、中長期的・総合的な視点に立ち、会社と社員の双方の価値向上につながる人財育成を進めています。
女性社員が出産などのライフイベントに伴って一時的な就業制約が発生した場合でも主体的にキャリア形成を実現していけるよう、女性社員CDPを提示しています。
また、将来の電源構成やビジネスモデルの変化に柔軟に対応するために、事業部門やグループ会社の垣根を越えた横断的なCDPで機動的な人財配置を目指しています。
職種、事業部門、職務別また職位に応じて会社が必要とする人財像を「人財要件」として定義し、必要な能力(行動要件)、知識・技能、推奨される資格や研修などを明示しています。社員は自身のキャリア形成及び能力開発の指標として活用できます。
社員のキャリアステージ全体を大きく「基礎知識・技術習得期」「エキスパート期」「プロフェッショナル期」の3つに分け、勤務箇所のローテーションを通じて、それぞれのステージに応じた能力の習得を促進しています。
○社内環境整備方針
(多様な働き方の推進)
当社グループは、従業員一人ひとりが、自律的に仕事と生活を充実させ、創造性の高い仕事に注力できる職場環境・風土づくりを推進しています。家庭で育児や介護にかかわる社員が安心して働けるよう、育児・介護に伴う時短勤務者を対象としたフレックスタイムや、看護・介護休暇の時間単位取得などの制度を充実させるとともに、リーフレットを用いた従業員への理解促進活動を通じて、制度利用を促進しています。加えて、最大2時間のスイングタイム制度(自己選択による労働時間の繰り上げ・繰り下げ勤務制度)やテレワーク勤務制度の導入(一部現業機関を除く)などを通じて、多様な働き方を推進しております。
また、働きやすい職場環境づくりのために、労働時間や職場環境、ハラスメント、産休・育休に関する相談窓口を設置し、相談者のプライバシーを保護しながら制度の説明や面談等を実施しています。また、社内研修やポスターなどによる啓発を通じて、社内の理解促進やハラスメントの未然防止に取り組んでいます。加えて、エンゲージメント調査を実施し、今後重点的に取り組むべき人事労務施策に活用していく計画です。
(安全確保・健康増進)
当社グループは、事業活動の基盤として、「安全かつ健康で働きがいのある職場づくり」を目指しています。重要課題である「重篤な災害の根絶」に向け、「本質安全化」を進めるとともに、設備(設備的対策)・管理(組織的な安全管理)・人(安全意識の向上)の三位一体での実効性のある活動を推進しています。
また、グループ従業員とその家族の健康保持・増進のため、「治療から予防へ」を合言葉に、健康経営を推進しています。特に生活習慣病とメンタルヘルス不調に対する予防を重視しており、人間ドックの受診促進やストレスチェック結果の活用、特定健診・保健指導、健康保持増進活動などを実施することで、心とからだの健康づくりを推進しています。
<人権>
当社グループは人権尊重に対する姿勢を明示し責任を果たすため、2022年に「J-POWERグループ人権基本方針」を制定しました。本方針は、国際人権章典、ILO国際労働基準、OECD多国籍企業行動指針、国連グローバル・コンパクトの人権に関する原則、及び国連のビジネスと人権に関する指導原則などの国際規範を基に定めており、本方針に基づき、人権デューデリジェンスの仕組みを構築しております。ESG総括(社長執行役員)を責任者とするサステナビリティ推進会議の下部に人権部会を立ち上げ、コーポレート部門、事業部門など関係各部の多様な視点に基づいて、人権リスクマップを作成し、人権に対する負の影響及びリスクを把握、整理を行い、サプライチェーンを含むすべてのステークホルダーの人権尊重の取組みを推進しております。また当社グループ従業員や取引先の従業員が利用可能な相談窓口を設置しており、負の影響等が生じた場合には、適切な手続きを通じて救済措置に取り組みます。これらの取組みは取締役会まで報告されています。
当社は、財務健全性と企業価値の維持・向上を目的として、企業活動に伴う様々なリスクに対処するため、各事業部が自律的に管理することを基本とし、全社横断的に管理すべき重要なリスクについては各専門の部会にて把握・分析・評価のうえ、対応策の検討、実施を行っており、取締役会にて統合的にリスクを管理しています。
取締役会は定期的な事業遂行状況の報告を受けることにより、ESG・サステナビリティの観点も含むリスクの早期把握に努めているほか、社内での意思決定の過程における相互牽制、各種会議体での審議、社内規程に基づく平時からの危機管理体制の整備などにより、ESG・サステナビリティに関するリスクを含めて企業活動の遂行にあたってのリスクの認識と回避策を徹底するとともに、リスク発生時の損失による影響の最小化を図っています。
サステナビリティに関するリスクはサステナビリティ推進会議にて分析・評価し、対策を検討しております。推進体制としてサステナビリティ推進会議の下部組織には地球環境戦略部会、人権部会を設置し、環境及び人権に関する事項のリスク評価を実施し、サステナビリティ推進会議で審議の上、取締役会あるいは常務会に提案/報告しています。
当社グループは、社会的に重要な課題から特定した5つのマテリアリティに関して、下表のとおり目標(KPI)を設定しております。なお、これら指標と目標に関する2024年度実績は、2025年9月頃に
(注) 当社では労働者の子の誕生年度毎に育児休業及び育児目的休暇の取得率を管理しています。
<気候変動:温室効果ガス(GHG)排出量実績>
(注)1 当社グループでは本書で報告するGHG排出量についてデータの信頼性向上を目的として、第三者検証を受審し「独立した第三者による保証報告書」を受領しております。なお、2024年度GHG排出量に関しては第三者検証を受審中であり、確定値は2025年9月頃に
2 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
以下には、当社の財政状態、経営成績並びに現在及び将来の事業等に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年6月25日)において当社が入手可能な情報等に基づいて判断したものです。また、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、当社が必ずしも重要なリスクとは考えていない事項であっても、事業等のリスクを理解する上で投資家にとって参考となる情報は記載しております。また、以下の記述は、別段の意味に解される場合を除き、連結ベースでなされており、「当社」には当社並びに当社の連結子会社及び持分法適用会社(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)の定義に従います。)が含まれております。
(1) 気候変動問題について
当社は、LNG等他の化石燃料を使用する発電所と比較して、発電量当たりのCO2排出量が相対的に多い石炭火力発電所を多数有しておりますが、化石電源のゼロエミッション化を2050年に向けた目標として掲げ、その実現に向けて石炭火力の高効率化・低炭素化等に取り組んでおります。
また、CO2フリー電源である再生可能エネルギーの導入拡大、原子力発電の開発などにも取り組んでおります。さらに、2015年7月に当社を含む電気事業者により策定された「電気事業における低炭素社会実行計画」に基づき、電気事業全体での目標の達成に向けて最大限努力しております。
日本国内では、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すという政府目標が示され、第7次エネルギー基本計画においては、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することに加え、火力発電について、安定供給に必要な発電容量を維持・確保しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量を減らしていくことが示されています。
カーボンニュートラル目標と安定供給の両立に資する電源を対象に、新規の設備投資に対して長期予見性を付与する仕組みである「長期脱炭素電源オークション」が2023年度より導入されました。
また、2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」等に基づき、2023年度から排出量取引制度(GX-ETS)が導入され、2026年度から本格稼働が予定されています。加えて、2028年度から化石燃料輸入事業者等を対象に炭素に対する賦課金が導入され、2033年度から発電事業者を対象とした有償オークションが段階的に導入される予定です。
当社としてもこれらの動向を注視しつつ、カーボンニュートラル目標に貢献する電源の開発や、気候変動問題の解決に資する事業の運営に取り組んでまいります。
一方で、2035年度、2040年度の温室効果ガスの削減目標をそれぞれ2013年度比60%、73%とするという政府の方針も示される中、今後、炭素に対する賦課金やその他気候変動問題への対応に関する新たな法的規制等が導入されること等により、事業計画・事業運営に大幅な変更や制約等が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 電気事業制度改革の進展等による当社の料金収入等への影響について
2013年4月に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」に基づく電気事業制度改革によって、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しております。電気事業法改正により、2016年4月には電力小売参入が全面自由化されるとともに、卸電気事業者に関する規制(事業許可制や料金規制)が撤廃されました。また、2020年4月には当社及び旧一般電気事業者は送配電部門の法的分離を実施しました。今後さらに、旧一般電気事業者に対する電気小売料金規制(経過措置)の見直しが行われる予定です。
制度改革における電気事業類型の見直しに伴い、2016年4月より当社は改正前の電気事業法で規定されていた卸電気事業者から、発電事業及び送電事業を営む電気事業者となりました。発電事業に関する料金は、原価主義に基づく料金規制等が撤廃され、市場競争環境下で販売先との協議により決定されることになります。また、送電事業に関する料金は、健全な送配電ネットワーク維持のため引き続き規制分野として原価主義に基づく料金制度となっております(当社の電気料金については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照)。
当社の営業収益の大半は、国内における旧一般電気事業者への販売による料金収入であるため、当社は、市場競争が進んでいく発電事業分野で、持続的に当社の発電事業が価値を発揮できるような取組みを進めております。具体的には、旧一般電気事業者を主とする販売先との適切な料金協議や電力販売の多様化による収益基盤の安定化の取組みに加えて、発電設備の保守高度化による競争力の強化等の取組みも進めております。
しかしながら、かかる取組みにもかかわらず、今後の長期的な電力需要の推移、更なる市場競争の進展、販売先との協議、法的規制等によって事業計画・事業運営に大幅な変更等が生じ、又は予期せぬ設備トラブル等により発電コストに見合った収益を確保できない場合、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 大間原子力発電所計画について
大間原子力発電所計画は、1995年8月の原子力委員会決定によって、国及び電気事業者の支援の下、当社が責任を持って取り組むべきとされた全炉心でのMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料利用を目指した改良型沸騰水型軽水炉(フルMOX-ABWR)であり、軽水炉でのMOX燃料利用計画の柔軟性を広げるという政策的な位置付けを持つものとされております。このため、全炉心でのMOX燃料利用に関する技術開発部分について、「全炉心混合酸化物燃料原子炉施設技術開発費補助金交付要綱」に基づき、政府から補助金の交付を受けております。また、既に沖縄電力㈱を除く旧一般電気事業者9社と基本協定を締結しており、その中で旧一般電気事業者9社による適正原価等での全量受電が約されております。加えて、計画の現況についても旧一般電気事業者9社と定期的に確認しております。
大間原子力発電所計画は、全炉心でのMOX燃料利用の原子力発電所として、地元大間町、青森県の同意を得て、1999年8月に電源開発調整審議会により電源開発促進法で定める国の電源開発基本計画に組み入れられ、2008年4月には「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく原子炉設置許可、5月には電気事業法に基づく工事計画認可(第1回)を経済産業大臣から受け、着工に至っております。この時点で予定していた建設費は4,690億円でした。その後、2011年3月に発生した東日本大震災直後より工事を休止しておりましたが、2012年10月より工事を再開しております。
当社は、2013年7月に施行された原子力発電所に係る新規制基準への適合性審査を受けるため、2014年12月16日に原子力規制委員会に対し、原子炉設置変更許可申請書及び工事計画認可申請書を提出しました。具体的な取組みは多岐にわたりますが、シビアアクシデントを防止するために、設計基準事故対策の強化及び地震・津波等への想定や対応策の強化を行うとともに、新規制基準において新設された重大事故等対策として、炉心損傷の防止及び格納容器の破損防止のための対策を行っております。さらに、航空機衝突等のテロ対策として、原子炉格納容器の破損による外部への放射性物質の異常な放出を抑制するため原子炉の減圧等の遠隔操作を可能とする特定重大事故等対処施設を設置することとしています。
当社は、上記申請の中で取り纏めた追加の安全強化対策工事をできるだけ早期に開始し、2029年後半に終了することを目指して全社を挙げて取り組んでおりますが、事業者として適合性審査の進展について確定的な見通しを持つことはできず、工事の終了時期については予断を持てない状況です。
具体的には、原子力事業を取り巻く状況の変化、原子力規制委員会の審査の状況、新規制基準への追加の対応等により、工程が延伸する可能性があります。これらの場合には、建設費の増加や関連費用が更に発生する可能性があります。なお、安全強化対策工事については、先行して適合性審査に合格した同型炉の安全強化対策の内容や規模も参考に更なる対策の実施を検討しており、2014年12月16日の上記申請書に記載した工事費見通し約1,300億円についても、それに伴う相応の増額を見込んでおります。加えて、原子力発電においては、国の原子力政策の見直しなど原子力事業を取り巻く状況の大幅な変化や更なる市場競争の進展、予期せぬ事態の発生等による計画変更等のリスク、また、運転開始後には、放射性物質の貯蔵と取扱いに関するリスク、他の発電設備と同様、自然災害、不測の事故等のリスクも存在します(「(7) 自然災害、疫病の流行等について」を参照)。
一方で、全炉心でMOX燃料の利用が可能な大間原子力発電所は、国がエネルギー基本計画において基本的方針としている原子燃料サイクルに大きく貢献できる発電所です。電気事業連合会から2020年12月にプルサーマル計画が、2025年2月にプルトニウム利用計画がそれぞれ公表されておりますが、2024年度末のプルサーマルの実施状況を踏まえれば、年間最大6.6tPutのプルトニウムを回収可能な六ヶ所再処理工場が安定的に稼働するためには、フルMOX運転時に年間約1.7tPutのプルトニウムを消費できる大間原子力発電所は必要不可欠と考えております。
当社は、これらの大間原子力の重要性を踏まえ、原子力規制委員会の適合性審査に真摯かつ適切に対応し、必要な安全対策等を着実に実施して全社を挙げて安全な発電所づくりに取り組むとともに、ここに記載した原子力発電事業の様々なリスクに対しても可能な限り対策を講じ、事業者として関係者とも協力しながら経済性を確認しつつ事業を推進していく所存ですが、仮にリスクが顕在化した場合、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 海外発電事業をはじめとする国内外での新たな事業への取組みについて
当社は、収益基盤の強化を目指して、海外発電事業をはじめとする国内外での新たな取組みを進めております。
具体的には、海外発電事業については、海外諸国でのコンサルティング事業の経験を活かしてIPP(独立系発電事業者)プロジェクトへの取組み等を進めております。
また、国内電気事業については、高効率石炭火力発電所等の運営や、水力・風力・地熱等の再生可能エネルギーを利用した発電事業等に加えて、電力小売販売等にも取り組んでおります。
しかしながら、これらの事業は、状況の大幅な変化、需要や市場環境の変化、規制の変更等の予期せぬ事態の発生等により、当社が期待したほどの収益を生まない可能性があり、これらの事情により事業計画の変更、事業・建設の取り止め等があれば、これに伴う関連費用の発生、追加資金拠出等により、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、これらの事業の中には第三者との合弁形態で運営されているものがあり、事業環境の変化に伴う合弁形態の見直しや、当社が非支配持分保有者に留まる合弁形態のために経営統制等に関与できない事態等が生じた場合、合弁事業の結果が、必ずしも当社の業績に有益な貢献をもたらさない可能性があります。さらに、海外での事業については、為替リスクに加え当該国の政情不安等によるリスク(カントリーリスク)が存在します。
(5) 資金調達について
当社は、これまで発電所等への多額の設備投資を行っており、そのための設備資金を主として借入れ及び社債発行によって調達してきました。今後も、再生可能エネルギー発電設備や大間原子力発電所の新規開発をはじめとする国内外での新たな事業等への投資、既存の債務の償還等のための資金調達を必要とする見通しです。今後の資金調達にあたり、その時点における金融情勢、当社の信用状態又はその他の要因のために当社が必要資金を適時に適正な条件で調達することができなければ、当社の事業展開並びに財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 石炭火力発電用燃料について
当社の石炭火力発電所は海外炭を主たる燃料としております。当社は、海外炭の調達にあたっては、供給の安定性と経済性を同時に追求するため、オーストラリア、インドネシア、北米などに調達地域を多様化しております。また、石炭の安定確保のために、一部の炭鉱においては権益を保有しております。なお、当社による海外炭の調達は、主として長期契約又は期間1年程度の契約により行われており、補完的にスポットでの購入も行っております。長期契約に基づく石炭の購入価格は、通常、1年に1回市場価格を踏まえて調整されます。
当社の燃料費は、海外炭の価格変動、輸送船舶の需給状況、燃料調達先の設備・操業トラブル等により影響を受けますが、主要な石炭火力発電所の電力料金の燃料費相当部分については、販売先との間で燃料調達に係る市況の変動を適宜反映することとしているため、当社の業績への影響は限定的です。ただし、石炭価格の急激な上昇等があった場合、これに伴う燃料費の上昇分を料金に反映させるまでにタイムラグがあるため、一時的に業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、石炭価格が大幅に下落し、当社が権益を保有している炭鉱の業績に影響が生じた場合、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 自然災害、疫病の流行等について
自然災害、人為的なミス、テロ、燃料供給の中断又はその他の不測の事態により、当社の発電設備若しくは送・変電設備等又はこれらの設備を運転制御する情報システム等に重大な事故等があった場合、当社の事業運営に支障を来たし、ひいては周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、当社が事業を実施している国及び地域における重要なインフラストラクチャーである発電設備及び送・変電設備の事故等の防止、関係者の安全確保並びに周辺環境の保全のため、保安・防災体制の確立、事故・災害の予防対策及び応急・復旧対策並びに環境モニタリング等に全社をあげて取り組んでおります。
しかしながら、事故等のために当社の発電設備又は送・変電設備等が操業を停止した場合、さらには事故等のため周辺環境に悪影響を及ぼした場合には、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は発電設備又は送・変電設備等の維持・運営等にあたり、電力安定供給のための対策を実施していますが、疫病の流行その他の不測の事態により、設備の運営、建設・補修工事又は大規模な点検等に必要な人員、原材料及び資機材等の確保が困難となる場合には、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 法的規制について
当社事業の大半を占める電気事業については、電気事業法による規制を受けております。
2014年6月の電気事業法改正により、2016年4月以降、改正前の電気事業法で定められていた卸電気事業者に関する規制(事業許可制や料金規制)は撤廃されましたが、当社は、引き続き同法に規定される発電事業及び送電事業を営む電気事業者として、事業規制及び保安規制、並びにこれらの規制に伴う変更・中止命令及び送電事業については許可の取消しに関する規定の適用を受けております。この他、当社の事業運営は様々な法令の適用を受けております。このため、当社がこれらの法令・規制を遵守できなかった場合、又はこれらの法令・規制の改正があった場合には、当社の事業運営や財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、原子力事業者による相互扶助の考え方に基づいて、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に対応できる支援組織を中心とした仕組みを構築することを目的とする「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」により、原子力事業者は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の業務に要する費用に充てるための負担金を納付することを義務付けられております。当社は、現在進めている大間原子力発電所計画について、同発電所が「原子力損害の賠償に関する法律」に定める原子炉の運転等を開始した後に、負担金を納付することとなりますが、かかる負担金の額によっては当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) コンプライアンス・人権尊重について
当社は、事業を遂行するうえで守るべき遵法精神・企業倫理に則った行動の規範として、「企業行動規範」を制定し、社員への浸透を図っております。また、法令や社内規程、社会規範等のコンプライアンスを徹底し、全社のコンプライアンス活動を推進するため「コンプライアンス行動指針」を制定するとともに、コンプライアンス推進策の審議及び実施状況評価、対応を図る組織として会長を委員長とする「J-POWERグループコンプライアンス委員会」を設置しております。
人権尊重の取組みについては、「J-POWERグループ人権基本方針」を制定し、社長を責任者とするサステナビリティ推進会議の下部に「人権部会」を設置して人権に関する課題を関係部で横断的に議論を行い、サプライチェーンを含むすべてのステークホルダーの人権尊重の取組みを推進しております。
しかしながら、当社にて、人権侵害も含めたコンプライアンスに反した行為が発生した場合には、当社のレピュテーションや業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 業務情報の管理について
当社は、個人情報をはじめ機密を要する多くの重要な情報を保有しています。これらの情報については情報セキュリティ対策の推進、従業員教育等の実施により厳重に管理しておりますが、外部に流出した場合、当社のレピュテーションや業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の収入面は、タイで電力販売価格が低下したことや販売電力量が減少したこと、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したこと等による減収があったものの、発電事業では卸電力取引市場等から調達した電力の販売が増加したことや火力発電所利用率の上昇(55%→58%)による販売電力量の増加に加え、容量市場が開始したこと等による増収により、売上高(営業収益)は前連結会計年度に対し4.7%増加の1兆3,166億円となりました。営業外収益は持分法投資利益の減少等により、前連結会計年度に対し19.3%減少の399億円となり、経常収益は前連結会計年度に対し3.8%増加の1兆3,566億円となりました。
一方、費用面は、火力や海外事業の燃料費の減少があったものの、発電事業の他社購入電源費の増加等により、営業費用は前連結会計年度に対し2.3%増加の1兆1,783億円となりました。これに営業外費用を加えた経常費用は前連結会計年度に対し2.3%増加の1兆2,165億円となりました。
経常利益は、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したことによる減益や持分法投資利益の減少があったものの、発電事業での販売粗利の改善等もあり、前連結会計年度に対し18.2%増加の1,400億円となり、法人税等を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に対し18.9%増加の924億円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。報告セグメントの変更については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に詳細を記載しております。
(発電事業)
発電事業の販売電力量は、再生可能エネルギーは水力の出水率が前連結会計年度を下回った(96%→91%)こと等により、前連結会計年度に対し1.9%減少の100億kWhとなりました。火力については、発電所利用率が前連結会計年度を上回ったこと等により、前連結会計年度に対し7.4%増加の412億kWhとなりました。卸電力取引市場等から調達した電力の販売は、前連結会計年度に対し41.6%増加の165億kWhとなり、発電事業全体では、前連結会計年度に対し12.4%増加の678億kWhとなりました。
売上高(電気事業営業収益及びその他事業営業収益)は、販売電力量の増加や容量市場の開始等により、前連結会計年度に対し10.5%増加の9,673億円となりました。
セグメント利益は、他社購入電源費の増加等があったものの、売上の増加に加え、販売粗利の改善等により前連結会計年度に対し236.4%増加の685億円となりました。
(送変電事業)
売上高(電気事業営業収益)は、託送収益の増加等により、前連結会計年度に対し1.8%増加の504億円となりました。
セグメント利益は、売上の増加はあったものの、固定資産除却費や委託費の増加等により、前連結会計年度に対し61.2%減少の28億円となりました。
(電力周辺関連事業)
売上高(その他事業営業収益)は、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したこと等により、前連結会計年度に対し14.2%減少の1,026億円となりました。
セグメント利益は、売上の減少等により、前連結会計年度に対し27.7%減少の340億円となりました。
(海外事業)
海外事業の販売電力量は、タイで販売電力量が減少したこと等により、前連結会計年度に対し9.7%減少の179億kWhとなりました。
売上高(海外事業営業収益)は、タイで電力販売価格が低下したことや販売電力量が減少したこと等により、前連結会計年度に対し5.6%減少の2,446億円となりました。
セグメント利益は、持分法投資利益が減少したこと等により、前連結会計年度に対し22.1%減少の345億円となりました。
(その他の事業)
売上高(その他事業営業収益)は、前連結会計年度に対し5.1%増加の181億円となりました。
セグメント利益は、前連結会計年度に対し287.1%増加の6億円となりました。
資産については、2024年7月31日付で子会社となったGENEX POWER LIMITED(以下、「GENEX」)の資産受け入れや円安の影響等により、前連結会計年度末から1,929億円増加し3兆6,687億円となりました。
一方、負債については、GENEXの負債引き受けや円安の影響等により、前連結会計年度末から625億円増加し2兆2,052億円となりました。このうち、有利子負債額は前連結会計年度末から119億円増加し1兆8,790億円となりました。なお、有利子負債額のうち3,260億円は海外事業のノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です。
また、純資産については、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に加え、為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末から1,303億円増加し1兆4,635億円となりました。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の35.0%から36.4%となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益は増加したものの、売上債権の増加等により、前連結会計年度に対し36億円減少の2,503億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、GENEX株式の取得による支出があったものの、定期預金の預入による支出の減少等により、前連結会計年度に対し391億円減少の1,228億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済による支出の減少があったものの、資金調達が減少したこと等により、前連結会計年度に対し678億円増加の1,336億円の支出となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対し24億円増加の3,730億円となりました。
当社グループが実施する事業のうち、発電事業の受給実績、販売実績、資材の状況及び海外事業の販売実績について記載しております。
(注)発受電電力量は、水力・汽力・風力発電電力量等の合計です。
① 販売実績
(注)発電事業の販売電力量及び電力料は、水力・汽力・風力等の合計です。
② 主要顧客別売上状況
(注)割合は営業収益に対する割合です。
c.資材の状況
① 石炭、重油及び軽油の受払状況
(イ) 石 炭
(ロ) 重 油
(ハ) 軽 油
○ 海 外 事 業
① 販売実績
(注)タイ及びアメリカにおけるプロジェクトのうち、主要な販売実績について記載しております。
② 主要顧客別売上状況
(注)割合は営業収益に対する割合です。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、当連結会計年度末における資産及び負債の報告数値並びに当連結会計年度における収益及び費用の報告数値に影響を与える見積りを行う必要があります。当該見積りについては、経営者は過去の実績や見積り時点で入手可能な情報等に基づく仮定を用いて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
当社グループは、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、以下のものが重要であると考えております。
a.固定資産の減損
当社グループは、継続的に収支の把握を行っている管理会計上の区分を基本として資産をグルーピングしております。減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産及び資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識します。
減損の兆候の判定並びに減損損失の認識及び測定に当たっては、過去の実績や入手可能な情報等を踏まえた合理的な見積り及び仮定に基づき検討しておりますが、経営環境、市況又は事業計画の変化により当該見積り及び仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
b.有価証券の減損
当社グループは、時価のある有価証券について、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価を以て貸借対照表価額とし、評価差額を減損損失として認識します。また、時価のない有価証券について、当該会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく下落したときは、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合を除き、相当の減額を行い、評価差額を減損損失として認識します。
回復可能性の検討に当たっては、過去の実績や入手可能な情報等を踏まえた合理的な見積り及び仮定に基づき検討しておりますが、経営環境、市況又は事業計画の変化により当該見積り及び仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
c.退職給付費用及び債務
当社及び一部の国内子会社は、数理計算上で設定される前提条件(割引率、将来の退職金ポイント累計、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等)に基づき、従業員に係る退職給付費用及び債務を算出しておりますが、実際の算出結果が前提条件と異なる場合、特に株価等市況が大きく変化し年金資産の実運用収益率が影響を受けた場合又は割引率が低下した場合、数理計算上の差異が大きくなり、その償却により人件費が影響を受けます。
d.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に当たって、将来の課税所得を合理的に見積もっております。将来の課税所得の見積りに当たっては、合理的な要因に基づく業績予測等を前提としておりますが、経営環境の変化又は税制改正による法定実効税率の変更等が生じ、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を減額し費用を計上します。また、当該変更等により計上金額を上回る繰延税金資産を将来回収できると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を増額し収益を計上します。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(イ)営業収益
営業収益は、前連結会計年度に対し586億円(4.7%)増加の1兆3,166億円となりました。
このうち電気事業営業収益は、販売電力量の増加や容量市場の開始等により、前連結会計年度に対し892億円(9.9%)増加の9,886億円となりました。
海外事業営業収益は、タイで電力販売価格が低下したことや販売電力量が減少したこと等により、前連結会計年度に対し145億円(5.6%)減少の2,446億円となりました。
また、その他事業営業収益は、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したこと等により、前連結会計年度に対し159億円(16.1%)減少の833億円となりました。
(ロ)営業費用及び営業利益
営業費用は、前連結会計年度に対し260億円(2.3%)増加の1兆1,783億円となりました。
電気事業営業費用は、火力の燃料費の減少があったものの、他社購入電源費の増加等により、前連結会計年度に対し458億円(5.3%)増加の9,068億円となりました。
海外事業営業費用は、燃料費の減少等により、前連結会計年度に対し201億円(8.9%)減少の2,066億円となりました。
また、その他事業営業費用は、前連結会計年度に対し3億円(0.6%)増加の648億円となりました。
営業利益は、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格が低下したことによる減益等があったものの、発電事業での販売粗利の改善等もあり、前連結会計年度に対し326億円(30.8%)増加の1,383億円となりました。
(ハ)営業外収益と費用及び当期経常利益
営業外収益は、持分法投資利益の減少等により、前連結会計年度に対し95億円(19.3%)減少の399億円となりました。なお、持分法投資利益は100億円(41.1%)減少し144億円となっていますが、これは、前連結会計年度の米国での土地売却益計上の反動等で減少したものです。
営業外費用は、豪州でGENEXを買収したことに伴う支払利息の増加等により、前連結会計年度に対し15億円(4.1%)増加の381億円となりました。
持分法投資利益の減少等による営業外収益の減少はあったものの、営業利益が増加したこと等により、経常利益は前連結会計年度に対し215億円(18.2%)増加の1,400億円となりました。
(ニ)親会社株主に帰属する当期純利益
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に対し215億円(18.2%)増加の1,400億円となりました。
法人税等合計は、当社で課税所得が増加したこと等により、前連結会計年度に対し37億円(11.0%)増加の375億円となりました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に対し31億円(45.4%)増加の100億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に対し146億円(18.9%)増加の924億円となりました。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
○ 営業収益
(電気事業営業収益)
当社グループの電気事業営業収益は主に、当社グループの発電設備で発電した電力の販売による収入、卸電力取引市場等から調達した電力の販売による収入、容量市場からの収入、並びに一般送配電事業者からの託送料収入により構成されます。販売電力量は、小売電気事業者等の電力需給動向により影響を受けるため、当社グループの電力量料金に係る収入は間接的に電力需給の影響を受けます。
(イ) 発電設備容量
当社グループは、発電施設の建設にあたり、長期的な電力需要の見通し、市場競争の進展度合い等の想定されうる将来の事業環境を前提に、当該発電施設の収益性を判断し、開発計画を策定しております。想定以上の事業環境の変化により当社が期待する収益性を確保できない可能性はありますが、基本的に発電設備容量の増加は販売電力量及び販売電力料の増加に結びつきます。
(ロ) 電力需要
日本の最終電力需要の見通しによっては、長期的に建設・運転可能な発電所数等が左右されることになり、間接的に当社グループの収益に影響します。また、電力需要は冷夏・暖冬等の天候によっても影響を受けます。
(ハ) 電気料金等
小売電気事業者等への販売料金は、電気事業法の改正に伴い、2016年4月より卸規制等が撤廃され、販売先との協議により決定しております。卸電力取引市場への販売料金は電力市場価格に基づくため、当該価格変動の影響を受けます。一方、送電事業に関する料金は、規制部門として適正な原価に適正な利潤を加えて算定しております。
発電事業に関する小売電気事業者等への販売料金及び卸電力取引市場などから調達する電力についての販売料金の詳細な条件は契約当事者間で協議の上、契約により決定し、適宜改定を行っています。
なお、火力発電設備の従量料金の大半を占める燃料費相当部分については、海外炭の価格動向など市況の変動が大きいため、原則として販売先との間で燃料調達に係る市況の変動を適宜反映する仕組みを導入しております。
(海外事業営業収益)
当社グループの海外事業営業収益は主に、タイにおける当社の連結子会社とタイ電力公社との長期電力販売契約に基づく販売電力料収入及びアメリカにおける当社の連結子会社の電力市場での販売電力料収入です。
タイにおいては、販売電力料収入には固定料金である基本料金収入と販売電力量に応じた電力量料金収入があります。当社の連結子会社の販売電力量は、販売先であるタイ電力公社の電力需給動向により影響を受けるため、当社の連結子会社の電力量料金に係る収入は間接的に電力需給の影響を受けます。
また、アメリカにおいては、販売電力料収入には販売容量に応じた容量収入と販売電力量に応じた電力量料金収入があります。当社の連結子会社の容量収入は容量市場における容量需給動向により変動します。当社の連結子会社の販売電力量は、電力市場における電力需給動向により影響を受けるため、当社の連結子会社の電力量料金に係る収入は電力需給の影響を受けます。
○ 営業費用
(電気事業営業費用)
(イ) 減価償却費
重要な減価償却資産の減価償却の方法は、定額法によっております。今後、新たに大規模な設備が資産計上されると減価償却費も増加します。
(ロ) 燃料費
火力発電所の燃料に使用する石炭については、主として長期契約若しくは期間1年程度の契約により行っております。また、補完的にスポットでの調達も行っております。長期契約に基づく石炭の購入価格は、通常、1年に1回市場価格を踏まえて調整されます。当社の燃料費は、石炭の価格変動、輸送船舶の需給状況、燃料調達先の設備・操業トラブル等の影響を受けます。
(ハ) 人件費
従業員に係る退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件(割引率、将来の退職金ポイント累計、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等)に基づき算出されておりますが、実際の算出結果が前提条件と異なる場合、特に株価等市況が大きく変化し年金資産の実運用収益率が影響を受けた場合又は割引率が低下した場合、数理計算上の差異が大きくなり、その償却により人件費が影響を受けます。
(ニ) 修繕費
設備信頼性を維持するため計画的な補修を実施しておりますが、定期点検の内容、規模等により修繕費は変動します。
(ホ) 他社購入電源費
電力市場価格や販売先との契約に基づく販売電力量等により、卸電力取引市場等からの電力の調達に要する他社購入電源費は変動します。
(海外事業営業費用)
(イ) 燃料費
タイにおける火力発電に用いる燃料の天然ガスは、タイ石油公社と長期燃料供給契約を締結し購入しております。当社の連結子会社の燃料費は、ガス価格の変動、タイ石油公社の設備・操業トラブル等の影響を受けます。
また、アメリカにおける火力発電に用いる燃料の天然ガスは、市場から購入しております。当社の連結子会社の燃料費は、ガス価格の変動の影響を受けます。
○ 営業外収益・費用
営業外費用には、支払利息のほか為替差損があり、金利及び為替の変動によって影響を受けます。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(イ) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(ロ) 資金需要の動向
当社グループの主な資金需要は、発電事業、送変電事業及び海外事業への設備投資並びに長期負債の借換資金です。当連結会計年度の発電事業に係る設備投資は、前連結会計年度より158億円減少の779億円、送変電事業に係る設備投資は、前連結会計年度より100億円増加の288億円、海外事業に係る設備投資は、前連結会計年度より184億円増加の222億円です。
(ハ) 資金調達の方法及び状況
当社グループの資金需要は設備投資と債務の借換に係るものが大半であるため、資金調達は長期資金で手当てすることを原則としています。
長期資金調達に際しては、低利かつ安定的な資金調達手段として普通社債の発行及び金融機関からの借入を行っており、当連結会計年度末の普通社債発行残高は7,468億円、借入残高は1兆1,209億円となりました。
短期資金については、運転資金に加え、調達の即応性を高める観点から機動的なつなぎ資金調達を実施することとしており、これら短期の資金需要を満たすために3,000億円のコマーシャル・ペーパーの発行限度枠を設定しています。
なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は、前連結会計年度末から119億円増加し1兆8,790億円となりました。
○ 長期有利子負債
当連結会計年度末の長期有利子負債は、社債6,529億円、長期借入金9,981億円です。なお、長期借入金のうち3,031億円はノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です。
○ 短期有利子負債
当連結会計年度末の短期有利子負債は、1年以内に償還予定の社債939億円、1年以内に返済予定の長期借入金1,228億円及び短期借入金81億円です。なお、1年以内に返済予定の長期借入金のうち256億円はノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です。
d.目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、中期経営計画(2024-2026)において、2026年度に実現を目指す経営目標として「連結経常利益900億円」を設定しています。また、経営目標達成時の主な経営指標水準として、「親会社株主に帰属する当期純利益620億円」「ROE 5.0%程度」及び「稼働資産ROIC 3.5%程度」を設定しています。
当連結会計年度における連結経常利益は1,400億円、親会社株主に帰属する当期純利益は924億円、ROEは7.2%、稼働資産ROICは5.1%となりました。引き続き経営目標達成に向けて取り組んでまいります。
(主たる事業に係る契約等)
当社グループの主たる事業は発電事業です。発電事業では旧一般電気事業者10社や新電力といった小売電気事業者等に対して、各社との出力・電力量、料金等を定めた契約に基づき、当社が所有する発電設備で発電した電力又は卸電力取引市場等から調達した電力を供給しております。
なお、発電事業に関する料金は、電気事業法の改正に伴い、2016年4月より卸規制等が撤廃され、販売先との協議により決定しております。また、小売電気事業者等への販売料金及び卸電力取引市場などから調達する電力についての販売料金の詳細な条件は契約当事者間で協議の上、契約により決定し、適宜改定を行っています。
(GENEX POWER LIMITEDの株式取得に関する契約)
当社は、2024年4月12日に、当社グループがオーストラリア(以下、「豪州」)にて再生可能エネルギー及び蓄電設備の開発・建設・運営事業を展開する豪州企業GENEX POWER LIMITED(以下、「GENEX」)の発行済株式の100%を取得(以下、「本件株式取得」)し、GENEXを子会社化するための手続きを開始することを決定しました。
本件株式取得にあたっては、豪州上場会社の株式を100%取得する方法の一つである豪州会社法に基づくScheme of Arrangement(以下、「SOA」)の手続きにより、当社の指名する連結子会社(出資比率:100%)を通じてGENEXの全株主の保有する株式を現金にて取得するため、当社がGENEXとの間で本件株式取得に関する合意内容を定めるTransaction Implementation Deedを締結いたしました。
その後GENEXの株主総会における承認、ニューサウスウェールズ州最高裁判所による承認等を経て、SOA実行日である2024年7月31日付でGENEXは当社の子会社となりました。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。
(持分法適用関連会社の異動を伴うGreen Country Energy, LLCの持分譲渡契約の締結)
当社は、2024年6月28日に100%子会社であるJ-POWER North America Holdings Co., Ltd.を通じて持分を50%保有するGreen Country Energy, LLCの当社持分の全てをPublic Service Company of Oklahomaに譲渡することを決定しました。これを受けて、同日付でGreen Country Energy, LLCの直接の親会社であり当社が持分を50%保有するGreen Country Holding LLCが持分譲渡契約を締結しております。
今後は、譲渡に向けた米国における許認可などの各種手続きを進めてまいります。ただし、米国連邦政府や州政府による認可やその他契約上の条件等によって、本譲渡契約内容に変更等が生じる可能性や本譲渡が実行されない可能性があります。
なお、本譲渡が実行された場合、 Green Country Energy, LLC は当社の持分法適用関連会社から外れる予定です。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。
(持分法適用関連会社の異動を伴うJ-POWER Frontier Consolidation, L.P.他9社の持分譲渡契約の締結)
当社は、2024年8月30日開催の取締役会において、100%子会社であるJ-POWER North America Holdings Co., Ltd.を通じて持分を50%保有する、J-POWER Frontier Consolidation, L.P.及びJ-POWER Frontier Consolidation GP, LLC(以下、2社をまとめて「Frontier」)の当社持分の全てをACR IV FRONTIER HOLDINGS LLCに譲渡することを決議しました。これを受けて、2024年9月27日付でFrontierの直接の親会社であり当社が持分を50%保有するJ-POWER USA Generation Capital, LLCが持分譲渡契約を締結しております。
各種手続きを進め、J-POWER USA Generation Capital, LLCは、保有するFrontierの当社持分の全てについて、2025年4月21日付で譲渡しております。
なお、譲渡日をもって、Frontier及びJ-POWER Frontier Consolidation, L.P.の子会社又は関連会社である8社は、当社の持分法適用関連会社から外れております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載しております。
当社グループでは、2030年代にカーボンニュートラルアセットが中心となる事業ポートフォリオへの変換に向けた研究開発活動に取り組んでおります。その活動は、新たな収益事業の開発に向けた「新たな事業機会の創出」、当社事業に新しい技術を適用した「トランジション推進」、そして既存電気事業の収益性向上と競争力強化を目指した「既存事業の強化」の3つの取組み区分に整理して推進しています。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、
主な研究開発は、次のとおりです。