文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
2050年カーボンニュートラルに向けた動きが加速するなか、少子高齢化による社会構造の変化、国際情勢の変化による社会・経済への影響など、当社グループを取り巻く環境は一層厳しさを増しております。当社グループでは2050年以降のカーボンニュートラル時代を見据え、2030年を中間点と位置付けた北ガスグループ経営計画「Challenge2030」を2022年に策定いたしました。2024年度は「Challenge2030」のフェーズ1最終年度にあたり、「エネルギーと環境の最適化による快適な社会の創造」に向けた3つの主要施策について、取り組みを加速させてまいります。
Challenge1
2050年以降のカーボンニュートラル時代を展望しつつ、2030年を中間点として位置づけ、北ガスグループのさらなる成長を図り、省エネを基盤としてあらゆる手段、可能性を探りながら、脱炭素社会への備えを進めていきます
Challenge2
資源・環境制約が強まる中、次世代プラットフォームの構築によるデジタル化で省エネの定量化と価値化を図り、デマンドサイドデータ活用による総合エネルギーサービス事業への展開を推進し、量の拡大に依存しない価値創造型の強固な事業基盤を構築していきます
Challenge3
地方自治体さま等との連携により、地域資源の活用に北ガスグループの総力をあげて取り組み、全道への展開と新たな事業の可能性を追求していきます
Challenge4
従来の慣行から抜け出し、非効率・不合理なものを排除し、事業にとって最適なものを追い求めるとともに、DXを最大限活用、機能させ、業務改革を遂行していきます
Challenge5
次代を担う人材として、資格取得等により実践的で高度な専門家集団、DX推進人材等、北ガスグループ全体での人材育成を推進し、北ガスグループ機能の強化を図っていきます
Challenge6
社会、経済の急激な変化、災害等に迅速・柔軟に対応できるよう、DX活用により日常の中に備えを作り込み、意思決定の迅速化と明確化の基盤を構築していきます
<3つの主要施策について>
Ⅰ.総合エネルギーサービス事業の進化による分散型社会の形成
機能的で効果的な省エネルギーの追求を大前提に、天然ガスの普及拡大を推進するとともに、ガスマイホーム発電やガスコージェネレーションシステムに、再生可能エネルギーも組み合わせた新たなエネルギーモデルの導入を進めます。また、北ガス版家庭用エネルギーマネジメントシステムである「EMINEL」や、地域のエネルギーセンターを核としたCEMSの導入など、エネルギーマネジメントシステムの標準化を推進し、エネルギー効率が高く災害にも強い分散型エネルギー社会を形成します。
道内各地域との連携により、地域特性を活かした地産地消のエネルギーモデルの構築等に取り組んでおります。2023年6月には苫前町と新たな地域連携協定を締結いたしました。引き続き、グループの総力をあげて総合エネルギーサービス事業の全道への展開と、新たな事業の可能性を追求してまいります。
Ⅱ.カーボンニュートラルへの挑戦
お客さまとの協働による省エネルギーの推進・天然ガスへの燃料転換を図るとともに、再生可能エネルギー電源の導入拡大やガス・電気の脱炭素化、水素・e-methane(合成メタン)等の次世代技術にも挑戦しております。2023年12月より、e-methane製造のコスト低減・環境価値提供を目指す実証実験を開始いたしました。
また、太陽光、バイオマス、風力等の既存の再生可能エネルギー電源に加え、「北ガス石狩風力発電所」の建設を進めており、2030年度末までに、CO2排出削減貢献量140万トン、再生可能エネルギー電源の取扱量15万kWを目指します。
Ⅲ.デジタル技術の活用による事業構造変革
デジタル技術や事業に関するあらゆるデータを繋ぐ情報共通基盤「Xzilla(くじら)」による事業構造の抜本的な変革を進めます。2023年10月に稼働した「Xzilla」は社内外の様々なデータの活用が可能なシステムとして、新たな価値を創造し「お客さまとの関係の深化」と「事業プロセスの変革」の実現を目指しています。「Xzilla」を最大限に活用することで、お客さまにサービスを提供するまでのバリューチェーンを変革し、量の拡大だけに依存しない価値創造型の事業基盤を構築してまいります。
また、紙を介したお客さまとのやりとりの仕組みを変革し、お客さまとの重要な接点である会員サイト「TagTag」のコンテンツの充実や利便性の向上に努め、双方向・リアルタイムなどデジタルの特徴を活かしたサービスを展開してまいります。さらに、料金の請求・入金・回収に関わる新たな業務システムの構築を進めており、お客さまの利便性向上と併せ、事務作業自動化などの業務改革の実現を目指しております。引き続き、デマンドサイドとサプライサイドのデータを活用したエネルギーマネジメントの高度化を進め、適切な設備形成による事業コストの低減に繋げてまいります。
なお、「Challenge 2030」の期間を3年ごとのフェーズに区分し、環境変化に柔軟かつ機動的に対応していきます。
第一期間となるフェーズ1(2022~2024年度)の取組については、以下のとおり。
■お客さま件数・エネルギーシェアにこだわり、天然ガス普及の最大化によるお客さま基盤の拡大を進める
■次世代プラットフォームやデジタル技術活用の核となる情報共通基盤をリリースし、事業構造の抜本的な変革を
図る
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
エネルギーサービス事業を営む当社グループでは、気候変動に係るリスクや収益機会について、常に意識した事業活動を行っており、経営会議にてその影響や活動の状況を確認し、重要なものについては取締役会や常務会へ付議しております。
北ガスグループ経営計画「Challenge2030」において、省エネを基盤としてあらゆる手段、可能性を探りながら、脱炭素社会への備えを進めていく方針のもと、下記を主要戦略として取り組みを進めてまいります。
■総合エネルギーサービス事業の進化による分散型社会の形成・地域との連携による地産地消のエネルギーモデルの構築
■カーボンニュートラルへの挑戦
■デジタル技術の活用による事業構造変革
総合エネルギーサービス事業の推進により徹底的な省エネを図るとともに、再生可能エネルギー電源の導入拡大や地域資源の活用、水素・メタネーション等の次世代技術にも取り組み、北海道の低・脱炭素化をけん引してまいります。
当社グループでは、事業リスクのひとつとして自然災害や気温影響等の気候変動を含むリスクについて特定・評価しており、各部門・グループ会社にてリスク低減に向けた対応策の検討やモニタリングを実施し、経営会議に報告のうえ、重要なリスクについては取締役会や常務会へ付議しております。
北ガスグループ経営計画「Challenge2030」において、2030年度のCO2削減貢献量の目標を140万トンとして取り組みを進めております。なお、2022年度における当社グループのSCOPE1~3のCO2排出量実績は、約294万トンであります。


①年齢や性別、個々人の生活環境等の多様性を尊重し、従業員の様々な能力が最大限に発揮できるよう人事処遇制度の整備、多様な人材の採用、働き方改革等に積極的に取り組んでいきます。
②従業員の継続したスキル向上のための研修プログラムの多様化やキャリア支援を通じて、当社の目指す「感じ」「考え」「行動」する人材像への成長を促し、企業の持続的な競争力向上を図っていきます。
人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
① 女性活躍推進
提出会社である北海道ガスでは、新卒採用における女性の採用比率40%以上を目指すとともに、これまで女性が少なかった技術系職場に女性を積極的に配置し、職域の拡大を図っております。加えて、女性のキャリア形成を支援するための教育・研修の充実など、スキルアップに向けた様々な取り組みを進めており、女性の管理職登用を促進してまいります。

② 多様な働き方推進
提出会社である北海道ガスでは、産前産後休暇・育児休業の取得促進等により、育児と仕事を安心して両立できる制度や環境づくりを充実させており、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定(くるみん認定)をこれまで2回取得しております。さらに、2022年7月には、くるみん認定基準を満たした上で、不妊治療と仕事を両立しやすい環境整備に取り組む企業の認定制度として新たに創設された「くるみんプラス認定」を、北海道で初めて取得いたしました。
また、子供が産まれた男性従業員を対象に、「育児や休業に対する不安の解消やキャリア形成のための面談」を実施するなど、育児休業を取得しやすい環境整備を進めてきました。その結果、男性従業員の育児休業取得率は着実に向上しております。

③ 人材育成・能力開発
提出会社である北海道ガスでは、社員一人ひとりの能力開発・能力発揮の最大化に向けて、「評価」・「研修」・「育成・面談」を連動させ、一貫性を持って人材育成を図っていくことを、人材育成の基本方針としております。2022年には、従業員の知識レベルの向上を目的とした人事処遇制度改正を実施しました。主要資格に対する手当支給など、従業員のモチベーションを高めながら能力開発に取り組んでおります。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
LNGや天然ガス等の原料調達に関して不測の事態が生じ長期にわたり調達ができない場合には、都市ガスや電力の供給に支障を及ぼす可能性があります。
原料の大半を占めるLNGは海外からの輸入に頼っていますが、複数の長期契約で供給源を特定しないポートフォリオ契約による調達先の多様化を進めているため、供給プロジェクトのトラブルやLNG船のトラブル時にも代替調達が可能となっています。このほかにも、緊急融通調達体制を構築し、迅速なスポット調達を組み合わせることで、より安定的かつ柔軟なLNG調達を実現しています。
② 自然災害の発生
大規模な自然災害により、LNG基地等の製造設備やガス導管等の供給設備に被害が発生した場合、都市ガスの供給に支障を及ぼす可能性があります。また、不測の大規模な停電が発生した場合、都市ガスの製造・供給に支障を及ぼす可能性があります。さらに、当社発電設備に支障が発生した場合には、電力の市場調達が必要となり、その対応に伴う費用等により、電力収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは多様化、複雑化する「事業中断リスク」を最小限に止めるため、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定するとともに、製造・供給設備等の耐震性向上や津波対策、非常時の自家発電設備の整備による停電対応力強化を進めることで、災害による影響を最小限に止める対策を実施しております。
③ ガス製造・供給設備のトラブルの発生
LNG基地等の都市ガス製造設備やガス導管等の供給設備に事故・故障等のトラブルが発生し、都市ガスの供給に支障を及ぼす可能性があります。
当社グループは、計画的な設備点検に加え、設備の稼働状況に応じた設備更新とメンテナンスを実施することで、トラブルの未然防止に努めております。また、大規模な供給支障に備えた事業継続計画(BCP)を策定するとともに、各種保安対策や教育・訓練の計画的実施、都市ガス製造設備のバックアップ対策、並びに設備電源の二重化等、不測の事態が発生した際の影響を最小化するための対策を進めております。
④ ガス事故の発生
ガス事故の発生によりお客さま被害が発生した場合、対応に要する直接的費用の発生に加え、社会的信用の低下等により、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、災害等においても事業継続性が高い供給防災センターに全社保安指令機能を集約し、専任要員を24時間配置することに加え、グループ会社と協同した保安処理体制構築や消防機関等との連携により、ガス事故の防止や二次災害防止に努めております。
⑤ ガス消費機器・設備に関するトラブルの発生
ガス消費機器・設備に関する重大な不具合が発生した場合、対応に要する直接的費用の発生に加え、社会的信用の低下等により、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、お客さまへのガス設備安全点検の品質向上、安全型機器への取替や警報器設置の促進、ガス機器の安全使用の周知等により、保安の強化に努めております。
⑥ 感染症の流行
新型コロナウィルス等の感染症の蔓延により一時的に業務が停止し、事業活動や事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また、影響が長期化した場合、都市ガスの製造・供給や保安体制の維持が困難となる可能性があるほか、ガスの販売量減少による財政状況の悪化、商材等のサプライチェーンの遅延、債権回収不能など複合的な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、新型コロナウィルスの取り扱いが感染症法上の5類に変更された2023年5月以降、基本的な考え方として感染時の取り扱いは、感染症法上および国が推奨する対策に準じること、日常の感染予防については、個人の判断を尊重しつつも、制限に対する効果を踏まえた感染対策(手指の消毒など)を継続することとしております。また、「新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」を策定し、これに基づく対策を講じることで、感染症による事業中断リスクの最小化に努めております。
① エネルギー・環境に関わる政策・制度等の変更リスク
エネルギーや環境に関わる国の政策・制度が変更された場合、市場競争の激化によるお客さまの離脱や規制対応に要する費用の発生等により、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。加えて、脱炭素に向けた社会の動向やお客さまニーズに適切に対応できなかった場合は、市場における競争力の低下により、事業収支に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、将来のカーボンニュートラル時代を見据え、国策や制度、業界動向などの環境変化に加え、お客さまのニーズを的確に把握するため、お客さまや関係機関との緊密な対話に努めるとともに、デジタル技術の高度利用やお客さまとの協働による省エネルギーの推進、太陽光・風力等の再生可能エネルギー電源の導入拡大、自治体との連携による地域資源の活用、水素・メタネーション等の次世代技術への取り組み等、社会の要請を踏まえた総合エネルギーサービス事業を展開することで、お客さまに選択されるよう努めております。
② 原材料調達価格の変動
原材料価格が、原油価格・為替・市場相場等の変動によって高下した場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。都市ガスの主要原料であるLNGの売買契約のうち、原油価格に連動するものについては、原油価格の変動により事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建てで売買契約を締結しているものについては、為替の変動が事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
ただし、原料価格が変動しても、変動分については、ガス料金に反映する「原料費調整制度」を適用しているため、中長期的には事業収支への影響は軽微であります。
また、電力事業においても同様に、電源調達価格が変動した場合に事業収支に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、自社電源の活用、電源調達先の分散等により調達リスクを回避し、電源調達コストの低減に努めております。
③ 気温影響によるガス需要の変動
当社グループの売上高の過半が都市ガスおよびLNG販売によるため、気温の推移が平年値から乖離する等によりガス需要が想定から変動した場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。特に、積雪寒冷地の北海道では、冬季から春先にかけて需要が大きくなるため、当該期間の気温推移が事業収支に与える影響は大きくなる傾向があります。
当社グループでは、気象の影響を受けづらい産業用やコージェネ用のガス販売強化や、総合エネルギーサービスによるエネルギーシェア拡大、付加価値の提供等により、気温による事業収支への影響の軽減に取組んでおります。
④ 商品・技術開発の遅延
積雪寒冷地に適し、省エネやCO2削減につながる商品や次世代のエネルギー技術などの開発を進めておりますが、開発に遅延が生じた場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、商品に対するお客さまの使用感や要望等についての定期的なアンケート調査や、機器の使用状況に関するデータ計測、市場環境の各種情報収集等により、お客さまのニーズや商品の課題、社会環境の変化等の的確な把握に努めております。そのうえで、新商品・技術を適切なタイミングに遅延なく市場投入できるよう、開発メーカーや地域の大学と密に連携をはかり、数年先までの工程を共有しながら商品・技術の企画・開発に取り組んでおります。
⑤ 設備投資による影響
インフラ事業の性質から、業容拡大や増産を目的とした大規模な設備投資の実施により、費用負担が増加し、一時的に事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また係る設備投資が、その後の経済情勢の変化等により、所期の成果を出せないことで、有利子負債依存度が高まる可能性があります。
当社グループでは、投資の実施にあたっては、事前にリスクや事業性を検証した上で経営会議や常務会、取締役会に諮る等、総合的な経営判断の下に投資を決定しています。
⑥ 資金調達・資産運用による影響
市況や金融の混乱により資金調達・資産運用の環境が悪化が発生した場合、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資金調達先や年金資産運用先については多様化を図っております。また、有利子負債は、長期で固定化した資金調達とすることで、借入期間中の金利変動リスクを限定的にするよう備えております。
⑦ コンプライアンス違反の発生
法令、定款に照らして不適切な行為、ならびに企業倫理、社会規範に反する行為が発生した場合、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、倫理・法令遵守の基本的な考え方として「北ガスグループ倫理方針」「北ガスグループ行動規範」を定めるとともに、コンプライアンス遵守に関する教育・啓発等により、グループ全体でコンプライアンス向上に取り組んでおります。また、法令改正情報を迅速に把握し、社内共有する仕組みや顧問弁護士との連携強化により、ガス事業法をはじめとした関係法令の遵守に努めております。さらに、内部監査により、業務が適正に遂行されているか確認を行っております。
⑧ 取引先の信用問題や事故の発生
取引先の倒産や事故等があった場合、債権未回収や業務支障を招き、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、取引開始時における信用調査等、与信管理を徹底しております。
① ITシステム・通信回線の不具合の発生
ITシステムや通信回線の不具合により、業務処理の誤りや業務停滞を引き起こした場合、有形無形の損失が発生する可能性があります。特に、売上高の多くを占めているガスと電力の供給に係る契約や料金計算、債権等につきましてはITシステムで管理しており、これらのシステムの不具合等により当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
ITシステム構築にあたっては、システム開発標準を定め、これに則りシステム設計・プログラミング・テスト・評価等を行うことで、ITシステムの品質維持・向上を図っております。
また、ITシステムのサーバーは、津波の心配がなく耐震性に優れた施設が完備されているデータセンターに設置するとともに、データのバックアップを毎日実施し、万一の不具合発生時の早期復旧に備えております。
さらに、グループ会社を含めた主要拠点間の通信設備は、故障時にも通信が途切れることのないように冗長化しているほか、何らかの原因で通信設備が利用できない場合でも、インターネット回線を利用して外部から安全にアクセスすることができるルートを用意しております。
② 個人情報等の社内情報の流出
当社グループでは、お客さま情報をはじめ、多くの個人情報や営業機密情報を有しております。それらの社内情報が不適切な形で外部流出した場合、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報管理に関する各種規程を整備するとともに、グループ全体を対象とした情報セキュリティ推進体制を構築し、情報セキュリティに関する教育・啓発や自主点検を実施しております。また、誤操作等による情報漏えいを防止するための訓練並びにシステム的な対策の実施等、個人情報等の流出防止と事故発生時の影響の最小化に取り組んでおります。
③ サイバー攻撃
日々発生するサイバー攻撃は、巧妙化、高度化しており、その対策が十分ではない場合、基幹システムの停止・動作不良、社内情報の流出等が発生し、業務やお客さまへの対応が停滞するばかりではなく、当社グループの社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、システム的な各種セキュリティ対策の実施やインシデント対応訓練を実施する他、適宜、情報セキュリティの脆弱性に関する確認を行い防御策の見直しを行う等、サイバー攻撃への対策に取り組んでおります。また、情報系システム・インフラを起因とする情報事故対応体制として「北ガスグループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)」を設置し、万一情報漏洩事故が発生した際の被害を最小限に止めるための体制強化を図っております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの事業環境は、新型コロナウイルス感染症の5類移行により経済活動の正常化が進み、持ち直しの動きがみられました。一方、国際情勢の不安定化や大幅な円安が進行するなど、エネルギー情勢は依然として予断を許さない状況が続いています。加えて、世界的な脱炭素化の潮流はより一層加速しており、エネルギー事業全体を取り巻く環境は大きく変容し、複雑化しております。
このような状況のもと、当社グループは、「総合エネルギーサービス事業」の展開に向けた取組みを積極的に進めるとともに、当社独自のエネルギーマネジメントシステムの普及拡大、北海道内の自治体との連携によるエネルギー地産地消の拡大、太陽光発電設備の新設等、低炭素・脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めてまいりました。
連結売上高につきましては、ガス販売量の増加や電力事業における家庭用のお客さま件数及び販売量が拡大したものの、前連結会計年度は原料価格の高騰に伴う販売単価の上昇がありましたため、前連結会計年度に比べ0.5%減の173,885百万円となりました。
経常利益は、ガス販売量の増加や電力事業における家庭用のお客さま件数および販売量拡大等により、同18.6%増の15,883百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、同16.7%増の11,627百万円となりました。
なお、当社グループの連結業績は、冬季から春先にかけてガスおよびLPG販売等エネルギー関連の需要が大きく、多くの売上が計上されるという季節的変動要因があります。
セグメント別の業績は次のとおりです。
① ガス
当連結会計年度末の取付メーター件数は、住宅着工件数が減少するなか、集合物件を堅調に獲得したこと等により、前連結会計年度末に比べ0.6%増加し、同3,447件増の604,329件となりました。なお、当社の小売お客さま件数につきましては、同1,552件減の490,968件となりました。
都市ガス販売量は、家庭用につきましては、春先と冬場の気温が高く推移したことに伴う暖房需要の減少に加え、水温の上昇に伴う給湯需要の減少等により、同1.5%減の213百万㎥となりました。業務用につきましては、観光業の回復や夏場の高気温に伴うホテルや商業施設の稼働率向上に加え、工業用での新規物件の稼働等により、同4.1%増の402百万㎥となりました。以上の結果、他のガス事業者向け卸供給を含めました総販売量は同3.0%増の645百万㎥となりました。
ガス全体の売上高は、都市ガス販売量が増加したものの、前連結会計年度は原料費調整制度における原料価格の高騰に伴う販売単価の上昇がありましたため、同5.5%減の106,601百万円となりました。
セグメント利益は、ガス販売量の増加等により、同0.4%増の13,557百万円となりました。
② 電力
当連結会計年度末のお客さま件数は、WEBマーケティング等のデジタルを活用した営業活動に加え、ガスをご利用のお客さまへのポイントサービスの開始やキャンペーンの強化等により、前連結会計年度末に比べ8.5%増加し、19,873件増の253,956件となりました。また、電力販売量は、低圧では家庭用の件数拡大に加え、夏場の猛暑に伴い冷房需要が増加したものの、高圧では契約先の減少等があり、卸売では卸電力取引市場価格が低位に推移したことに伴い日本卸電力取引所(JEPX)への卸販売量を減少させたことにより、同1.0%減の969百万kWhとなりました。
売上高は、低圧の販売量の増加等により、前連結会計年度に比べ5.7%増の30,399百万円となりました。
セグメント利益は、低圧の販売量の増加に加え、前連結会計年度は燃料費調整制度における上限超過影響等があったため、同331.8%増の2,911百万円となりました。
③ エネルギー関連
売上高は、LPG事業および熱事業における原料価格下降に伴う販売単価低下による減収影響があったものの、ガス機器等の器具販売・施工、リフォームの拡大等により、前連結会計年度に比べ9.0%増の39,853百万円となりました。
セグメント利益は、ガス機器等の器具販売・施工、リフォームの増収等により、同18.5%増の1,554百万円となりました。
④ その他
売上高は、自動車販売の増加等により、前連結会計年度に比べ14.4%増の3,844百万円となりました。
セグメント利益は、学校等へのシステム販売の減少等により、同7.5%減の246百万円となりました。
(目標とする経営指標の実績)
2023年度における当社グループの経営指標の実績は下記のとおり。
(注) 1 本書面では、ガス量はすべて1㎥当り45メガジュール(10,750キロカロリー)で表示しております。
当連結会計年度末の総資産につきましては、設備投資による固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ2,568百万円増加し、186,366百万円となりました。負債は、社債や長期借入金等の有利子負債や買掛金が減少したこと等により、同8,436百万円減少し、107,365百万円となりました。純資産は、利益剰余金の増加等により、同11,004百万円増加し、79,001百万円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、原料LNG価格の低下に伴い原料在庫が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ24,981百万円増加し、31,677百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産の取得の減少等により、同5,806百万円支出額が減少し、16,755百万円の支出となりました。これらを合計した当期のフリー・キャッシュ・フローは30,788百万円のプラスとなりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還や長期借入金の返済による支出等により、8,171百万円の支出となりました。なお、有利子負債につきましては、フリー・キャッシュ・フローを有利子負債の返済資金に充当したことで、同5,385百万円減少し、75,162百万円となりました。現金及び現金同等物の期末残高は同6,750百万円増加し、9,469百万円となりました。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループにおける資金需要は、主に、設備投資、有利子負債返済、運転資金となります。
資金調達に関しては、安定的な長期の調達を基本としつつ、期中に必要となる運転資金に関しては、マーケットの状況を勘案のうえ、短期借入金・短期社債(電子CP)等を調達する方針です。当連結会計年度末における有利子負債残高は75,162百万円となっております。
なお、資金調達の多様化を図るため、主要な取引先金融機関との良好な取引関係維持に加え、国内2社の格付機関から格付を取得しております。株式会社日本格付研究所の格付は、「A+(安定的)」、株式会社格付投資情報センターの格付は、「A+(安定的)」となっております。また、当社グループ内の資金は、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の導入により効率的な資金管理を行っております。
(4) 生産、受注及び販売の実績
当社グループにおきましては、「都市ガス事業」が売上高及び営業費用共に連結財務諸表の大半を占めており、当該セグメントが当社グループの生産、受注及び販売活動の中心となっております。
以下は、「都市ガス事業」における当社の生産、受注及び販売の実績について記載しております。
当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。
都市ガス事業については、その事業の性質上、受注生産を行っておりません。
当連結会計年度における都市ガス販売実績は次のとおりであります。
2024年3月末における地区別取付メーター件数及び普及率は次のとおりであります。
(注) 1 世帯数は、供給区域の住民基本台帳及び各自治体の資料から推計した一般世帯数であります。
2 ( )内数値は対前年増減率(%)であります。
供給約款料金に対しては、下記の料金が適用されます。この区分によるa基本料金およびb従量料金の合計とし、各月の使用量に応じてA・B・C・D・Eのいずれかの料金表が適用されます。また、一般ガス供給約款で定める料金以外に、選択約款による料金や個別交渉による大口向けの料金があります。
a 基本料金
基本料金は、1か月につき次のとおりであります。
従量料金は、使用量に次の単位料金を乗じて算定しております。
(注) 1 支払期限日(検針日の翌日から30日目)を経過した後に支払われる場合には、その経過日数に応じて1日当たり0.0274%の割合で算定した延滞利息が発生します。
2 上記の料金は1m3当たり45MJです。なお、消費税10%分が含まれております。
3 当社は、為替レートや原油価格など外的な要因で変動する原料価格をガス料金に反映する原料費調整制度を導入しております。2023年4月から2024年3月までの調整額は次のとおりであります。
※ 1m3当たり調整額は、経済産業省の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」に参画し実施した値引き後の金額となっております。
2023年4月検針分~9月検針分 1m3当たり調整額△30.00円
2023年10月検針分~2024年3月検針分 1m3当たり調整額△15.00円
なお、年間契約量が1,000万m3以上のお客さまは本値引きの対象外とされております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、過年度実績や経営計画、入手可能で合理的な情報に基づく仮定等から会計上の見積りを行っておりますが、見積りは不確実性を伴うため、実際の結果は異なる場合があります。
石狩LNG基地について下記のとおり賃貸借契約を締結しております。
当社グループにおける研究開発活動は、当社が主に都市ガス事業において行っており、「技術開発研究所」を中心に、積雪寒冷地に適したエネルギー利用機器の開発やエネルギー利用技術の研究を実施しております。当連結会計年度における研究開発費は
「技術開発研究所」の基本理念を以下に示します。
① 寒冷地技術の研究開発を推進し、技術の蓄積・普及を図ります。
② エネルギー利用技術の高度化を追求し、環境負荷低減に努めます。
③ カーボンニュートラル社会の実現に向けたエネルギー技術への対応を図ります。
④ 地域社会と密接な交流を深めつつ、北国の生活文化に貢献します。
これらの基本理念に基づき、他企業・大学等の外部研究機関とも協力し、研究開発活動を推進しております。
主な研究内容は、以下のとおりであります。
① 家庭用燃料電池「エネファーム」の寒冷地仕様開発
② 家庭用ガスエンジンコージェネレーション「コレモ」の開発
③ ガスマイホーム発電のネットワーク化による仮想発電所構築
① ガスセントラルヒーティングの最適化・価値向上
② ガスマイホーム発電と太陽光発電・蓄電池、ヒートポンプ等との連携による最適運用
③ 高断熱住宅の換気・湿度制御による空調システム
④ AI(人工知能)による画像認識を用いた融雪システム
① ガス機器のIoT化・ビッグデータを活用した情報の利用高度化
② ガス導管の保安レベル、施工性向上とコスト低減に貢献する新技術・新工法開発
③ IoT、衛星測位技術を活用したガス供給インフラのローコストオペレーション、スマート保安
① ガス機器の故障原因の究明および対策の実施
① 地域の各大学との連携・共同研究の推進
② 若手研究者支援と技術シーズの発掘を目的とした「北海道ガス大学研究支援制度」の実施