第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

地政学的リスクの長期化や米国の政策動向、カーボンニュートラル化の潮流など、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続いています。

当社グループでは、2050年以降のカーボンニュートラル時代を見据え、2030年を中間点と位置付けた北ガスグループ経営計画「Challenge2030」の取り組みを進めています。2025年度はフェーズ2の初年度にあたり、フェーズ1での取り組みを進化させるとともに、環境変化にも対応しながら「エネルギーと環境の最適化による快適な社会の創造」の実現に向けて、引き続き、3つの主要施策に取り組んでまいります。

 

北ガスグループ経営改革「Challenge2030」の基本的な考え方

Challenge1

2050年以降のカーボンニュートラル時代を展望しつつ、2030年を中間点として位置づけ、北ガスグループのさらなる成長を図り、省エネを基盤としてあらゆる手段、可能性を探りながら、脱炭素社会への備えを進めていきます

 

Challenge2

資源・環境制約が強まる中、次世代プラットフォームの構築によるデジタル化で省エネの定量化と価値化を図り、デマンドサイドデータ活用による総合エネルギーサービス事業への展開を推進し、量の拡大に依存しない価値創造型の強固な事業基盤を構築していきます

 

Challenge3

地方自治体さま等との連携により、地域資源の活用に北ガスグループの総力をあげて取り組み、全道への展開と新たな事業の可能性を追求していきます

 

Challenge4

従来の慣行から抜け出し、非効率・不合理なものを排除し、事業にとって最適なものを追い求めるとともに、DXを最大限活用、機能させ、業務改革を遂行していきます

 

Challenge5

次代を担う人材として、資格取得等により実践的で高度な専門家集団、DX推進人材等、北ガスグループ全体での人材育成を推進し、北ガスグループ機能の強化を図っていきます

 

Challenge6

社会、経済の急激な変化、災害等に迅速・柔軟に対応できるよう、DX活用により日常の中に備えを作り込み、意思決定の迅速化と明確化の基盤を構築していきます

 

 

3つの主要施策について

 

Ⅰ.総合エネルギーサービス事業の進化による分散型社会の形成

事業基盤となるガスのお客さま獲得に加え、電力のお客さま件数をグループ一体となって着実に伸長させたほか、LNG販売についても、船舶向けなどの新規需要を積極的に取り込み、成果をあげております。「第7次エネルギー基本計画」において天然ガスは重要なエネルギー源と位置付けられるなか、フェーズ2では、カーボンニュートラルに寄与する天然ガスの更なる普及拡大、エネルギーマネジメントシステムの標準化を推進してまいります。

 

 ■天然ガスの普及拡大

エリアマーケティングを深化させ、都市ガス供給区域内における天然ガスへの燃料転換を推進するとともに、船舶燃料のLNGバンカリング供給(船舶燃料としてLNGの供給を行うこと)を実施し、更なる需要拡大とエネルギーシェアの向上を目指してまいります。

 ■エネルギーマネジメントシステムの標準化

家庭用エネルギーマネジメントシステム「EMINEL」を進化・発展させ、集合住宅向けに導入可能な新モデルを開発いたします。エネルギーマネジメントシステムの標準化による省エネの拡大を図るとともに、双方向コミュニケーションによるデマンドレスポンスにも取り組み、エネルギー利用の最適化を追求いたします。

 ■ガススマートメーターの本格導入

遠隔での閉栓・検針作業・初期保安措置等が可能なガススマートメーターの導入を本格化し、お客さま利便性と安全性・レジリエンスの向上に取り組んでまいります。

 

Ⅱ.カーボンニュートラルへの挑戦

フェーズ1では、再生可能エネルギー電源の開発・地域連携の推進により、全道各地で環境価値の創出・活用のノウハウを着実に積み重ねてまいりました。引き続き、再生可能エネルギー電源の地産地消など環境価値をお客さまに届けるビジネスモデルの確立を目指すとともに、将来のカーボンニュートラル実現に向けた次世代技術への取り組みを進めてまいります

 

 ■再生可能エネルギー電源開発の加速

フェーズ1で得られた知見や発電データを活かした電源開発の効率化、電源の価値最大化を図り、FIP制度や補助金等を活用しつつ、発電容量の大きい高圧太陽光や陸上風力発電の自社開発を進めてまいります。

 ■地域と連携したクレジットの創出・活用

地域の環境価値創出・管理・活用の一括マネジメントを行い、環境価値化に係る事務手続きや利用先確保等の諸課題を解決し、エネルギーと環境価値の地産地消をサポートしてまいります。

 ■将来のカーボンニュートラルに向けた次世代技術の実証

ひびきLNG基地(福岡県)における西部ガス様等とのメタネーション設備の共同実証に参画しており、このメタネーション設備にて運転の知見を習得いたします。

 

Ⅲ.デジタル技術の活用による事業構造変革

フェーズ1では、情報プラットフォーム「Xzilla(くじら)」を2023年にリリースし、事業構造変革に向けた重要な基盤整備を完了しました。また会員制WEBサイト「TagTag」を2024年にリニューアルし、お客さまとの双方向コミュニケーションを深化させています。今後も、デジタル技術や事業に関するあらゆるデータを繋ぐ「Xzilla」の活用を通じて、事業構造の抜本的な変革を進め、お客さまサービスの向上と高付加価値型の事業基盤を構築いたします。

 

 ■情報プラットフォーム「Xzilla」の最大活用と業務構造改革

「Xzilla」に連携するシステムを拡大し、事業に関わる全てのビッグデータを繋ぎ合わせ、これらを分析・活用することにより、お客さまサービスの向上と、労働集約型業務を中心とする事業プロセスの改革を実施いたします。持続可能で筋肉質な事業構造への変革を図り、要員を創出して戦略分野への配置を進めてまいります。

 

上記に加え、人的資本投資の拡充に向けても積極的に取り組んでまいります。従業員の様々な能力が最大限に発揮できる人事処遇制度の整備や、多様な人材の採用、女性の職域拡大、定年延長によるシニア人材の活躍推進、働き方改革等のほか、DX人材の育成プログラムの展開、各種研修プログラムの更なる多様化やキャリア支援等を通じ、多様な人材の確保と企業の持続的な競争力向上を図ってまいります。

当社事業の根幹である安全・安心かつ安定したエネルギー供給の確保に向けては、エネルギーインフラが集約する苫小牧地区におけるインフラ整備の検討を実施いたします。半導体関連などの産業集積を背景とした新規需要や、カーボンニュートラル・低炭素化で加速する燃料転換等による需要拡大に応え、北海道全体の天然ガスサプライチェーンの供給セキュリティを向上させるとともに、将来的なe−メタン導入等の実証フィールドの整備を見据えた新しいLNG基地の建設検討を進めてまいります。

 

 ○目標とする経営指標(Challenge 2030)

項目

目標(2030年度)

連結売上高

2,000億円

連結営業利益

160億円

連結有利子負債

500億円台

自己資本比率

50%超

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

ガバナンス

エネルギーサービス事業を営む当社グループでは、気候変動に係るリスクや収益機会について、常に意識した事業活動を行っており、経営会議にてその影響や活動の状況を確認し、重要なものについては取締役会や常務会へ付議しております。

 

戦略

北ガスグループ経営計画「Challenge2030」において、省エネを基盤としてあらゆる手段、可能性を探りながら、脱炭素社会への備えを進めていく方針のもと、下記を主要戦略として取り組みを進めてまいります。

  ■総合エネルギーサービス事業の進化による分散型社会の形成・地域との連携による地産地消のエネルギーモデ

  ルの構築

  ■カーボンニュートラルへの挑戦

  ■デジタル技術の活用による事業構造変革

総合エネルギーサービス事業の推進により徹底的な省エネを図るとともに、再生可能エネルギー電源の導入拡大や地域資源の活用、水素・メタネーション等の次世代技術にも取り組み、北海道の低・脱炭素化をけん引してまいります。

 

リスク管理

当社グループでは、事業リスクのひとつとして自然災害や気温影響等の気候変動を含むリスクについて特定・評価しており、各部門・グループ会社にてリスク低減に向けた対応策の検討やモニタリングを実施し、経営会議に報告のうえ、重要なリスクについては取締役会や常務会へ付議しております。

 

 

指標及び目標

北ガスグループ経営計画「Challenge2030」において、2030年度のCO2削減貢献量の目標を140万トンとして取り組みを進めております。なお、2023年度における当社グループのSCOPE1~3のCO2排出量実績は、約300万トンであります。

 


 


 

人的資本に関する基本方針

①年齢や性別、個々人の生活環境等の多様性を尊重し、従業員の様々な能力が最大限に発揮できるよう人事処遇制度の整備、多様な人材の採用、働き方改革等に積極的に取り組んでいきます。

②従業員の継続したスキル向上のための研修プログラムの多様化やキャリア支援を通じて、当社の目指す「感じ」「考え」「行動」する人材像への成長を促し、企業の持続的な競争力向上を図っていきます。

 

人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

① 女性活躍推進

 提出会社である北海道ガスでは、新卒採用における女性の採用を積極的に行ってまいりました。その結果、社員に占める女性割合は2019年度の15.3%から2024年度には17.2%まで上昇しております。また、これまで女性が少なかった技術系職場に女性を積極的に配置し、職域の拡大を図っております。加えて、女性のキャリア形成を支援するための教育・研修の充実など、スキルアップに向けた様々な取り組みを進めており、女性の管理職登用を促進してまいります。

 


 

② 多様な働き方推進

 提出会社である北海道ガスでは、産前産後休暇・育児休業の取得促進等により、育児と仕事を安心して両立できる制度や環境づくりを充実させており、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定(くるみん認定)をこれまで2回取得しております。さらに、2022年7月には、くるみん認定基準を満たした上で、不妊治療と仕事を両立しやすい環境整備に取り組む企業の認定制度として新たに創設された「くるみんプラス認定」を、北海道で初めて取得いたしました。

 また、子供が産まれた男性従業員を対象に、「育児や休業に対する不安の解消やキャリア形成のための面談」を実施するなど、育児休業を取得しやすい環境整備を進めてきました。その結果、男性従業員の育児休業取得率は着実に向上しております。

 


③ 人材育成・能力開発

 提出会社である北海道ガスでは、社員一人ひとりの能力開発・能力発揮の最大化に向けて、「評価」・「研修」・「育成・面談」を連動させ、一貫性を持って人材育成を図っていくことを、人材育成の基本方針としております。2022年には、従業員の知識レベルの向上を目的とした人事処遇制度改正を実施しました。主要資格に対する手当支給など、従業員のモチベーションを高めながら能力開発に取り組んでおります。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 災害・事故発生によるリスク

 ① 原料調達に関する不測の事態

LNGや天然ガス等の原料調達に関して不測の事態が生じ長期にわたり調達ができない場合には、都市ガスや電力の供給に支障を及ぼす可能性があります。

原料の大半を占めるLNGは海外からの輸入に頼っていますが、複数の長期契約で供給源を特定しないポートフォリオ契約による調達先の多様化を進めているため、供給プロジェクトのトラブルやLNG船のトラブル時にも代替調達が可能となっています。このほかにも、緊急融通調達体制を構築し、迅速なスポット調達を組み合わせることで、より安定的かつ柔軟なLNG調達を実現しています。

 

 ② 自然災害の発生

大規模な自然災害により、LNG基地等の製造設備やガス導管等の供給設備に被害が発生した場合、都市ガスの供給に支障を及ぼす可能性があります。また、不測の大規模な停電が発生した場合、都市ガスの製造・供給に支障を及ぼす可能性があります。さらに、当社発電設備に支障が発生した場合には、電力の市場調達が必要となり、その対応に伴う費用等により、電力収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは多様化、複雑化する「事業中断リスク」を最小限に止めるため、事業継続計画(BCP:Business  Continuity  Plan)を策定するとともに、製造・供給設備等の耐震性向上や津波対策、非常時の自家発電設備の整備による停電対応力強化を進めることで、災害による影響を最小限に止める対策を実施しております。

 

ガス製造・供給設備のトラブルの発生

都市ガスの製造設備や供給設備に漏えい・故障等のトラブル・事故が発生し、都市ガス供給の支障やお客さま被害が生じた場合には、対応に要する直接的・間接的な費用の発生に加え、社会的信用の低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、計画的な設備の点検と更新に加えて、製造設備のバックアップ対策や設備電源の二重化並びに導管網の整備等、不測の事態が発生した際の影響を最小化する対策に取り組んでおります。

また、大規模な災害や供給支障に備えた事業継続計画(BCP)を策定するとともに、高い事業継続性を有する供給防災センターで、専門職員が24時間365日全社の保安指令を担う体制を整備し、各種保安対策や教育・訓練の計画的な実施を行うことにより、ガス事故の防止や二次災害防止に努めております。

 

 ④ ガス消費機器・設備に関するトラブルの発生

ガス消費機器・設備に関する重大な不具合が発生した場合、対応に要する直接的費用の発生に加え、社会的信用の低下等により、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、お客さまへのガス設備安全点検の品質向上、安全型機器への取替や警報器設置の促進、ガス機器の安全使用の周知等により、保安の強化に努めております。

 

 

 ⑤ 感染症の流行

感染症の蔓延により、一時的に業務が停止し、事業活動や収支に影響を及ぼす可能性があります。また、影響が長期化した場合、都市ガスの製造・供給や保安体制の維持が困難となるほか、販売量の減少、サプライチェーンの停滞、債権回収の遅延といった複合的な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」に基づき、国内外で感染症が蔓延した場合においても事業の継続を可能とするための対策を講じることで、事業中断リスクの最小化に努めております。

 

(2) 事業遂行に伴うリスク

 ① エネルギー・環境に関わる政策・制度等の変更リスク

エネルギーや環境に関わる国の政策・制度が変更された場合、市場競争の激化によるお客さまの離脱や規制対応に要する費用の発生等により、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。加えて、脱炭素に向けた社会の動向やお客さまニーズに適切に対応できなかった場合は、市場における競争力の低下により、事業収支に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、将来のカーボンニュートラル時代を見据え、国策や制度、業界動向などの環境変化に加え、お客さまのニーズを的確に把握するため、お客さまや関係機関との緊密な対話に努めるとともに、デジタル技術の高度利用やお客さまとの協働による省エネルギーの推進、太陽光・風力等の再生可能エネルギー電源の導入拡大、自治体との連携による地域資源の活用、水素・メタネーション等の次世代技術への取り組み等、社会の要請を踏まえた総合エネルギーサービス事業を展開することで、お客さまに選択されるよう努めております。

 

 ② 原材料調達価格の変動

原材料価格が、原油価格・為替・市場相場等の変動によって高下した場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。都市ガスの主要原料であるLNGの売買契約のうち、原油価格に連動するものについては、原油価格の変動により事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建てで売買契約を締結しているものについては、為替の変動が事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、原料価格が変動しても、変動分については、ガス料金に反映する「原料費調整制度」を適用しているため、中長期的には事業収支への影響は軽微であります。

また、電力事業においても同様に、電源調達価格が変動した場合に事業収支に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、自社電源の活用、電源調達先の分散等により調達リスクを回避し、電源調達コストの低減に努めております。

 

 ③ 気温影響によるガス需要の変動

当社グループの売上高の過半が都市ガス及びLNG販売によるため、気温の推移が平年値から乖離する等によりガス需要が想定から変動した場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。特に、積雪寒冷地の北海道では、冬季から春先にかけて需要が大きくなるため、当該期間の気温推移が事業収支に与える影響は大きくなる傾向があります。

当社グループは、気象の影響を受けづらい産業用やコージェネ用のガス販売強化や、総合エネルギーサービスによるエネルギーシェア拡大、付加価値の提供等により、気温による事業収支への影響の軽減に取り組んでおります。

 

 

 ④ 商品・技術開発の遅延

積雪寒冷地に適し、省エネやCO2削減につながる商品や次世代のエネルギー技術などの開発を進めておりますが、開発に遅延が生じた場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、商品に対するお客さまの使用感や要望等についての定期的なアンケート調査や、機器の使用状況に関するデータ計測、市場環境の各種情報収集等により、お客さまのニーズや商品の課題、社会環境の変化等の的確な把握に努めております。そのうえで、新商品・技術を適切なタイミングに遅延なく市場投入できるよう、開発メーカーや地域の大学と密に連携をはかり、数年先までの工程を共有しながら商品・技術の企画・開発に取り組んでおります。

 

 ⑤ 設備投資による影響

インフラ事業の性質から、業容拡大や増産を目的とした大規模な設備投資の実施により、費用負担が増加し、一時的に事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また係る設備投資が、その後の経済情勢の変化等により、所期の成果を出せないことで、有利子負債依存度が高まる可能性があります。

当社グループは、投資の実施にあたっては、事前にリスクや事業性を検証した上で経営会議や常務会、取締役会に諮る等、総合的な経営判断の下に投資を決定しております。

 

 ⑥ 資金調達・資産運用による影響

市況や金融の混乱により資金調達・資産運用の環境が悪化した場合、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、資金調達先や年金資産運用先については多様化を図っております。また、有利子負債は、長期で固定化した資金調達とすることで、借入期間中の金利変動リスクを限定的にするよう備えております。

 

 ⑦ コンプライアンス違反の発生

法令、定款に照らして不適切な行為、ならびに企業倫理、社会規範に反する行為が発生した場合、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、倫理・法令遵守の基本的な考え方として「北ガスグループ倫理方針」「北ガスグループ行動規範」を定めるとともに、コンプライアンス遵守に関する教育・啓発等により、グループ全体でコンプライアンス向上に取り組んでおります。また、法令改正情報を迅速に把握し、社内共有する仕組みや顧問弁護士との連携強化により、ガス事業法をはじめとした関係法令の遵守に努めております。さらに、内部監査により、業務が適正に遂行されているか確認を行っております。

 

 ⑧ 取引先の信用問題や事故の発生

取引先の倒産や事故等があった場合、債権未回収や業務支障を招き、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、取引開始時における信用調査等、与信管理を徹底しております。

 

 

(3) 情報管理・システム運用に関するリスク

 ① ITシステム・通信回線の不具合の発生

ITシステムや通信回線の不具合により、業務処理の誤りや業務停滞を引き起こした場合、有形無形の損失が発生する可能性があります。特に、売上高の多くを占めているガスと電力の供給に係る契約や料金計算、債権等につきましてはITシステムで管理しており、これらのシステムの不具合等により当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

ITシステム構築にあたっては、システム開発標準を定め、これに則りシステム設計・プログラミング・テスト・評価等を行うことで、ITシステムの品質維持・向上を図っております。

また、ITシステムのサーバーは、津波の心配がなく耐震性や電源供給に優れた施設に設置するとともに、データのバックアップを毎日実施し、万一の不具合発生時の早期復旧に備えております。

さらに、グループ会社を含めた主要拠点間の通信設備は、故障時にも通信が途切れることのないように冗長化しているほか、何らかの原因で通信設備が利用できない場合でも、インターネット回線を利用して外部から安全にアクセスすることができるルートを用意しております。

 

 ② 個人情報等の社内情報の流出

当社グループでは、お客さま情報をはじめ、多くの個人情報や営業機密情報を有しております。それらの社内情報が不適切な形で外部流出した場合、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、情報管理に関する各種規程を整備するとともに、グループ全体を対象とした情報セキュリティ推進体制を構築し、情報セキュリティに関する教育・啓発や情報管理に関する職場点検、システム的な対策の実施等、個人情報等の流出防止と事故発生時の影響の最小化に取り組んでおります。

 

 ③ サイバー攻撃

サイバー攻撃は、巧妙化、高度化しており、その対策が十分ではない場合、基幹システムの停止・動作不良、社内情報の流出等が発生し、業務やお客さまへの対応が停滞するばかりではなく、当社グループの社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、システム的な各種セキュリティ対策の実施やインシデント対応訓練を実施する他、適宜、情報セキュリティの脆弱性に関する確認を行い防御策の見直しを行う等、サイバー攻撃への対策を実施しております。さらにサプライチェーンを狙った攻撃にも備えるため、情報保有量の多い取引先とセキュリティ向上の取り組みを行うなど、取引先と一体となってリスク低減を図っております。

また、情報系システム・インフラを起因とする情報事故対応体制として「北ガスグループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)」を設置し、万一情報漏洩事故が発生した際の被害を最小限に止めるための体制を整えております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、物価上昇を背景とする個人消費の伸び悩みがみられるなか、賃金・雇用情勢の改善や堅調なインバウンド需要などにより国内景気は緩やかな回復が続きました。一方、地政学的リスクの長期化や米国の政策動向、脱炭素化の潮流などがエネルギー情勢に大きな影響を与えており、依然として予断を許さない状況が続いております。

このような状況のもと、当社グループは、「エネルギーと環境の最適化による快適な社会の創造」に向けて、当社独自のエネルギーマネジメントシステムの普及拡大、北海道内の自治体との連携によるエネルギー地産地消の拡大、再生可能エネルギーを活用した電源の開発、情報共通基盤の整備をはじめとしたDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み等を進めてまいりました。

連結売上高につきましては、ガス販売量の増加や電力事業における家庭用のお客さま件数及び販売量が拡大したものの、原料費調整制度における販売単価の低下等により前連結会計年度に比べ2.1%減170,295百万円となりました。

経常利益は、ガス販売量や電力事業における家庭用の販売量の増加はありましたものの、デジタル基盤強化に伴う経費の増加等により同9.2%減14,428百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、同10.5%減10,404百万円となりました。

なお、当社グループの連結業績は、冬季から春先にかけてガスおよびLPG販売等エネルギー関連の需要が大きく、多くの売上が計上されるという季節的変動要因があります。

セグメント別の業績は次のとおりです。

 

① ガス

当連結会計年度末の取付メーター件数は、新築戸建や分譲マンションの完成戸数が減少しているものの、千歳地区を中心とした賃貸物件の獲得等により、前連結会計年度末に比べ、289件増604,618件となりました。なお、当社の小売お客さま件数につきましては、同2,468件減の488,500件となりました。

都市ガス販売量は、家庭用につきましては、春先や初冬の低気温に伴い暖房需要が増加したこと等により同2.6%増219百万㎥となりました。業務用につきましては、観光業の回復に伴いホテルや飲食店等の稼働率が向上したものの、大型物件の改修工事等に伴う影響により同1.6%減395百万㎥となりました。以上の結果、他のガス事業者向け卸供給を含めました総販売量は同0.3%増647百万㎥となりました。

ガス全体の売上高は、都市ガス販売量が増加したものの、原料費調整制度における販売単価の低下等により同1.6%減104,856百万円となりました。

セグメント利益は、デジタル基盤強化に伴う経費の増加等により同6.9%減12,626百万円となりました。

 

② 電力

 当連結会計年度末のお客さま件数は、高圧・特高のお客さま件数は減少したものの、キャンペーンの展開やマスPRの強化等により、低圧家庭用のお客さま件数が増加したことにより、全体として前連結会計年度末に比べ2,653件増256,609件となりました。また、電力販売量は、家庭用のお客さま件数の増加に伴い低圧の販売量が増加した一方、高圧・特高のお客さま件数が減少したこと等により同12.7%減846百万kWhとなりました。

売上高は、家庭用のお客さま件数および販売量は拡大したものの、高圧・特高・卸供給の販売量が減少したこと等により同4.2%減29,131百万円となりました。

セグメント利益は、前連結会計年度の電気料金改定により燃料費調整制度の調整上限を撤廃したことや、卸電力取引市場価格が低位に推移したこと等により同23.9%増3,607百万円となりました。

 

③ エネルギー関連

LPG販売量は増加したものの、新築分譲マンションの完成戸数減に伴う器具販売の減少等により、売上高は前連結会計年度に比べ0.6%減39,604百万円となり、セグメント利益は同31.6%減1,063百万円となりました。

 

④ その他

水道検針事業の終了等により、売上高は前連結会計年度に比べ13.4%減3,329百万円となり、セグメント利益は同40.1%減147百万円となりました。

 

(目標とする経営指標の実績)

2024年度における当社グループの経営指標の実績は下記のとおり。

項目

2024年度

連結売上高

1,702億円

連結営業利益

143億円

連結有利子負債

691億円

自己資本比率

44.1%

 

 

(注) 1 本書面では、ガス量はすべて1㎥当り45メガジュール(10,750キロカロリー)で表示しております。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産につきましては、設備投資による固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ9,065百万円増加し、195,431百万円となりました。負債は、社債や長期借入金等の有利子負債が減少したこと等により同419百万円減少し、106,945百万円となりました。純資産は、利益剰余金の増加等により、同9,485百万円増加し、88,486百万円となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が減少したこと等により前連結会計年度に比べ1,844百万円減少し、29,832百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産の取得の増加等により、同3,304百万円支出額が増加し、20,059百万円の支出となりました。これらを合計した当期のフリー・キャッシュ・フローは9,773百万円のプラスとなりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還や長期借入金の返済等により、7,918百万円の支出となりました。なお、有利子負債につきましては、フリー・キャッシュ・フローを有利子負債の返済資金に充当したことで、同6,007百万円減少し69,154百万円となりました。現金及び現金同等物の期末残高は同1,854百万円増加し、11,324百万円となりました。

 

   (資本の財源及び資金の流動性)

当社グループにおける資金需要は、主に、設備投資、有利子負債返済、運転資金となります。

資金調達に関しては、安定的な長期の調達を基本としつつ、期中に必要となる運転資金に関しては、マーケットの状況を勘案のうえ、短期借入金・短期社債(電子CP)等を調達する方針です。当連結会計年度末における有利子負債残高は69,154百万円となっております。

なお、資金調達の多様化を図るため、主要な取引先金融機関との良好な取引関係維持に加え、国内2社の格付機関から格付を取得しております。株式会社日本格付研究所の格付は、「A+(安定的)」、株式会社格付投資情報センターの格付は、「A+(安定的)」となっております。また、当社グループ内の資金は、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の導入により効率的な資金管理を行っております。

 

 

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

当社グループにおきましては、「都市ガス事業」が売上高及び営業費用共に連結財務諸表の大半を占めており、当該セグメントが当社グループの生産、受注及び販売活動の中心となっております。

以下は、「都市ガス事業」における当社の生産、受注及び販売の実績について記載しております。

 

① 生産実績

 当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

 

区分

生産量(千m3)

対前年増減率(%)

都市ガス

石狩LNG基地

593,177

△1.4

函館みなと工場

52,105

△0.2

北見工場

11,447

0.5

656,730

△1.3

 

 

② 受注実績

 都市ガス事業については、その事業の性質上、受注生産を行っておりません。

 

③ 販売実績

  都市ガス販売実績

  当連結会計年度における都市ガス販売実績は次のとおりであります。

 

区分

販売量

対前年増減率(%)

都市ガス

家庭用

219,165

千m3

2.6

その他

395,948

千m3

△1.6

615,114

千m3

△0.2

他事業者向け供給

32,086

千m3

9.1

総販売量

647,200

千m3

0.3

月平均調定件数

449,600

△0.5

調定件数1件当たり月平均販売量

114.0

3

0.3

 

 

区分

販売高(百万円)

対前年増減率(%)

都市ガス

家庭用

36,245

△0.1

その他

47,228

△2.8

83,473

△1.7

 

 

  取付メーター件数及び普及率

 2025年3月末における地区別取付メーター件数及び普及率は次のとおりであります。

 

地区別

世帯数(世帯)

取付メーター件数(件)

普及率(%)

札幌地区

913,822

(1.2)

469,305

(△0.1)

51.4

(△1.2)

函館地区

111,579

(△0.3)

63,310

(△0.3)

56.7

(0.0)

小樽地区

43,038

(△1.0)

31,218

(△0.4)

72.5

(0.6)

千歳地区

48,036

(0.6)

22,118

(3.4)

46.0

(2.7)

北見地区

43,976

(△0.3)

18,667

(0.7)

42.4

(1.0)

1,160,451

(0.9)

604,618

(0.0)

52.1

(△0.8)

 

 (注) 1 世帯数は、供給区域の住民基本台帳及び各自治体の資料から推計した一般世帯数であります。

 2 ( )内数値は対前年増減率(%)であります。

都市ガス料金

供給約款料金に対しては、下記の料金が適用されます。この区分によるa基本料金およびb従量料金の合計とし、各月の使用量に応じてA・B・C・D・Eのいずれかの料金表が適用されます。また、一般ガス供給約款で定める料金以外に、選択約款による料金や個別交渉による大口向けの料金があります。

 

a 基本料金

基本料金は、1か月につき次のとおりであります。

料金表
種別

1か月の使用量

基本料金(税込)
(ガスメーター1個につき)

0m3から15m3まで

946.00円

15m3を超え50m3まで

1,454.20円

50m3を超え200m3まで

2,013.00円

200m3を超え800m3まで

7,700.00円

800m3を超える場合

9,900.00円

 

b 従量料金

従量料金は、使用量に次の単位料金を乗じて算定しております。

料金表
種別

1か月の使用量

基準単位料金(税込)

(1m3につき)

0m3から15m3まで

200.69円

15m3を超え50m3まで

166.81円

50m3を超え200m3まで

155.63円

200m3を超え800m3まで

127.20円

800m3を超える場合

124.45円

 

(注) 1 支払期限日(検針日の翌日から30日目)を経過した後に支払われる場合には、その経過日数に応じて1日当たり0.0274%の割合で算定した延滞利息が発生します。

 2 上記の料金は1m3当たり45MJです。なお、消費税10%分が含まれております。

3 当社は、為替レートや原油価格など外的な要因で変動する原料価格をガス料金に反映する原料費調整制度を導入しております。2024年4月から2025年3月までの調整額は次のとおりであります。

 

検針月

1m3当たり調整額(税込)

2024年4月

15.12

円 

2024年5月

16.69

円 

2024年6月

22.71

円 

2024年7月

26.61

円 

2024年8月

24.48

円 

2024年9月

6.06

円 

2024年10月

8.46

円 

2024年11月

16.51

円 

2024年12月

25.59

円 

2025年1月

24.02

円 

2025年2月

14.30

円 

2025年3月

15.77

円 

 

※ 1m3当たり調整額は、経済産業省の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」に参画し実施した値引き後の金額となっております。

   2024年4月検針分~5月検針分    1m3当たり調整額△15.00円

   2024年6月検針分                   1m3当たり調整額△ 7.50円

   2024年9月検針分~10月検針分    1m3当たり調整額△17.50円

      2024年11月検針分          1m3当たり調整額△10.00円

      2025年2月検針分~3月検針分    1m3当たり調整額△10.00円
 

   なお、年間契約量が1,000万m3以上のお客さまは本値引きの対象外とされております。

 

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、過年度実績や経営計画、入手可能で合理的な情報に基づく仮定等から会計上の見積りを行っておりますが、見積りは不確実性を伴うため、実際の結果は異なる場合があります。

 

 

5 【重要な契約等】

石狩LNG基地について下記のとおり賃貸借契約を締結しております。

 

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約品目

契約期間

北海道ガス株式会社

石狩LNG桟橋株式会社

賃貸借契約

機械設備等

2018年7月31日から

2038年3月31日まで

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、当社が主に都市ガス事業において行っており、「技術開発研究所」を中心に、積雪寒冷地に適したエネルギー利用機器の開発やエネルギー利用技術の研究を実施しております。当連結会計年度における研究開発費は283百万円であります。

 

「技術開発研究所」の基本理念を以下に示します。

①  寒冷地技術の研究開発を推進し、技術の蓄積・普及を図ります。

②  エネルギー利用技術の高度化を追求し、環境負荷低減に努めます。

③  カーボンニュートラル社会の実現に向けたエネルギー技術への対応を図ります。

④  地域社会と密接な交流を深めつつ、北国の生活文化に貢献します。

これらの基本理念に基づき、他企業・大学等の外部研究機関とも協力し、研究開発活動を推進しております。

 

主な研究内容は、以下のとおりであります。

(1) ガスマイホーム発電の持続的普及拡大に向けた技術開発

① 家庭用燃料電池「エネファーム」の寒冷地仕様開発

② 家庭用ガスエンジンコージェネレーション「コレモ」の開発

③ ガスマイホーム発電のネットワーク化による仮想発電所構築

 

(2) 環境変化に対応した最適なシステムに関する研究・開発

① ガスセントラルヒーティングの最適化・価値向上

②  ガスマイホーム発電と太陽光発電・蓄電池、ヒートポンプ等との連携による最適運用

③  高断熱住宅の換気・湿度制御による空調システム

④ AI(人工知能)による画像認識を用いた融雪システム

 

(3) デジタル技術の活用・新技術の開発による業務効率化

① ガス機器のIoT化・ビッグデータを活用した情報の利用高度化

② ガス導管の保安レベル、施工性向上とコスト低減に貢献する新技術・新工法開発

③ IoT、衛星測位技術を活用したガス供給インフラのローコストオペレーション、スマート保安

 

(4) ガス機器の品質向上の取り組み

① ガス機器の故障原因の究明および対策の実施

 

(5) 大学・外部機関との連携による研究領域の拡大

① 地域の各大学との連携・共同研究の推進

② 若手研究者支援と技術シーズの発掘を目的とした「北海道ガス大学研究支援制度」の実施