












(2)中期経営計画の進捗について
■主要計数
(注)1 スライド差補正後利益
2 2023年度ROA・ROE・D/Eレシオは米国会計基準遡及適用後の数値
3 発行済みハイブリッド社債及びハイブリッドローンの資本性50%を調整
当社グループは、グループ経営理念「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を体現していくため、サステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)を特定し、事業活動を通じて取り組んでいます。これにより、社会的価値と経済的価値を両立して創出していくことを実現していきます。
<監督>
■取締役会 取締役会では、経営計画・経営方針その他の当社の経営の重要な意思決定をしており、マテリアリティも2023-2025年度中期経営計画と合わせて決議しました。その上で、経営計画におけるサステナビリティに関わる重点管理指標について執行役より報告を受け、サステナビリティに関する専門性をもった複数の社外取締役の知見や経験も活かし、進捗をモニタリング・監督しています。また、報酬委員会は、達成状況が執行役(取締役を兼務する者も含む)の賞与に反映される業績評価指標を毎年検討・決議しており、この指標はサステナビリティに関わる重点管理指標とも連動しています。
<執行体制>
■経営会議 経営会議では、当社グループ各組織で推進するマテリアリティに基づく事業活動について、案件の審議・調整を行い、重要事項を取締役会に報告しています。
■サステナビリティ委員会 執行役社長が委員長を務め、東京ガスグループ経営会議メンバー及び関係部長を委員とするサステナビリティ委員会を年3回開催し、サステナビリティに関する議題を共有、議論しています。委員会では主に、サステナビリティを取り巻く状況変化をアップデートした上で、マテリアリティに関する指標を評価・モニタリングし、グループ全体の方向性の検討と調整を行い、サステナビリティ経営を推進しています。

サステナビリティ推進体制
当社グループは全社的リスク管理(ERM=Enterprise Risk Management)体制を構築し、「リスク統制規則」の中で重要リスクを明文化しています(詳細は
なお、本マテリアリティは、経営に関わる重要事項として経営会議で討議の上、2023-2025年度中期経営計画「Compass Transformation 23-25」と併せて取締役会にて決議しました。各マテリアリティについて設定した指標と目標は、サステナビリティ委員会で進捗をモニタリングする等管理しています。
当社グループは、マテリアリティを踏まえて経営ビジョン・中長期計画を策定しています。
具体的な戦略として、長期経営ビジョンであるグループ経営ビジョン「Compass2030」において「『CO2ネット・ゼロ』をリード」「『価値共創』のエコシステム構築」「LNGバリューチェーンの変革」の3つの挑戦を掲げています。また、その実現に向けた2023-2025年度中期経営計画「Compass Transformation 23-25」では、「従来のエネルギーの枠を超えたソリューションと事業群で、社会の持続的発展とお客さまへの一層の価値提供を追求すべく、当社グループ自らがビジネスモデルを変革」する期間と位置づけ、グリーントランスフォーメーション(GX)・デジタルトランスフォーメーション(DX)・お客さまとのコミュニケーション変革(CX)を軸に以下の3つの主要戦略を設定し、取組みを推進しています(詳細は
中期経営計画「Compass Transformation 23-25」における3つの主要戦略
a エネルギー安定供給と脱炭素化の両立
b ソリューションの本格展開
c 変化に強いしなやかな企業体質の実現
当社グループは、各マテリアリティについて指標と目標を設定し、サステナビリティ委員会等で進捗をモニタリングしています。
マテリアリティに関する主な指標・目標と実績
(注) 1 当社の目標・実績
2 2025年度目標について、割合は育児休職の取得率100%、日数は育児休職と育児を目的とした休暇を合わせた取得日数1ヶ月以上
当社グループは、気候変動への対応を、事業活動を通じて解決すべき重要課題として認識しており、マテリアリティの一つとして「脱炭素社会への責任あるトランジション」を特定しています。
当社グループの事業を取り巻く環境を踏まえ、気候変動が事業に及ぼす影響を定性・定量的に把握し、事業戦略のレジリエンスの確認・対応策の検討に活用することを目的に、シナリオ分析に取り組んでいます。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)が公表しているシナリオ等を参照しながら事業環境を想定し、想定されるリスクと機会を特定・整理しています。

各シナリオにおける一部リスク要因については、その財務影響を試算しました。一例として、カーボンプライシング等の政策・法規制の導入は、エネルギー消費が抑制されることで都市ガス事業収支に影響を及ぼす可能性があります。WEO2023 NZEシナリオ(1.5℃シナリオ)では、2030年に日本の天然ガス消費量は10%減少が予測されており、仮に当社グループの都市ガス販売量に同じ影響がある場合、過去実績を基に試算すると、売上高約1,000億円に相当します。また、猛暑や暖冬等の異常気象が発生した場合、給湯・暖房用を中心とする家庭用及び一部の業務用ガス販売量が変動し、都市ガス事業収支に影響を及ぼす可能性があります。IPCC第6次報告書SSP-8.5(4℃シナリオ)では2030年に気温が0.5℃上昇すると予測されており(2011-2020年基準)、過去実績を基に試算すると、売上高約150億円に相当します。
当社グループは、リスクと機会に適切に対応することを目指し、カーボンニュートラルエネルギーおよびソリューション事業の拡大に取り組んでいきます。「東京ガスグループ カーボンニュートラルロードマップ 2050」では、CO2ネット・ゼロの実現に向けて、2040年、2050年を見据えた具体的な道筋を示しました。2020、2030年代のトランジション期には化石燃料の中で最もCO2排出量が少なく、再エネ導入拡大に向けた調整力・供給力としても活用が期待される天然ガスを最大限高度利用しながら、併行して再エネの活用を進めます。また、e-メタンや水素等、新技術の社会実装に向けた技術開発にも積極的に取り組み、2030年時点で当社の都市ガス販売量の1%(※1)に相当するe-メタン導入を目標としています。2040年代は、さらなる脱炭素化技術の拡大・普及を実現し、2050年までにガス・電力の脱炭素化を目指します。
(※1)卸、発電を除いた当社の都市ガス販売量の1%(2020年度時 約8,000万Nm3/年)
カーボンニュートラル社会の実現に向け、社会全体のCO2削減貢献及び当社グループCO2排出量削減等の取り組みの進捗・管理をすべく、以下の指標・目標を設定しています。
マテリアリティに関する主な指標・目標と実績
(注)1 他の化石燃料よりも低炭素な天然ガスへの燃料転換、高効率機器導入、再エネ導入等による社会全体のCO2排出量削減の効果。計上方法は第三者機関DNVビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社によるアドバイスを受けています。
2 22年度から24年度まで「自社活動排出CO2ネット・ゼロ」達成率を掲げてきました。25年度よりプロセス管理指標として「活動実施率」(2030年度ネット・ゼロ達成に向けて当該年度に目標化した施策の実施率)を追加し、取り組みを強化します。
3 GHG(温室効果ガス)排出量は2023年度実績値を掲載しています。
内訳や算定基準等については、2024年9月発行「東京ガスグループ
(https://www.tokyo-gas.co.jp/sustainability/download/pdf/sr2024.pdf)」の49・50ページを参照ください。
2024年度実績値は、2025年9月発行予定の「東京ガスグループ
(https://www.tokyo-gas.co.jp/sustainability/download/index.html)」の「環境データ」を参照ください。
(5)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
当社グループは、2022年4月に新たなグループ経営理念「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を公表しました。これに先駆けて当社グループはこれまで、事業環境が大きく変化する中にあっても社会から必要とされる企業グループであり続けるため、自らガバナンスを変え、戦略を変え、組織・マネジメントを変え、変革に向けた取組みを行ってきました。さらなる変革のステップを踏み出すためには、唯一、価値を創り出すことのできる「人」つまりグループ員一人ひとりが行動を変容していくことが不可欠であるとの想いから、グループ員一人ひとりが自ら行動を変容していくための拠り所として、自分たちが何者か・何のために存在するのかを表した「存在意義」とグループ員が大切にする「価値観」を定めました。
2023年2月には、2023-2025年度グループ中期経営計画「Compass Transformation 23-25」を公表しました。「変化に強いしなやかな企業体質の実現」を主要戦略の一つと位置づけ、その実現に向けて「人的資本経営の強化」を掲げました。当社グループの果たすべき役割を実行していくのはグループ員に他ならないことをステークホルダーの皆さまと共有しています。グループ員一人ひとりの使命に対するエンゲージメントを高め、ホールディングス(HD)型グループ体制のもとで各カンパニー・基幹事業会社が組織としての強みを発揮していくことを目指し、グループ員一人ひとりと東京ガスグループ双方が成長を実感できる人的資本経営を実践していきます。
<人的資本経営実践に向けたポイント>
<ポイント1>人材シフトと事業変化への対応力強化
カンパニー・基幹事業会社が、各々の市場でインパクトのある仕事を生み出し競争力を強化するため、戦略的人員採用・配置・育成・リスキリングを行います。加えて、DX分野や脱炭素分野等、当社として更に競争力を高めていく必要がある分野において、突出した高い専門性を有する高度専門人材の採用を進めます。
<ポイント2>プロ人材としての成長・挑戦、自律的キャリア形成促進
タレントマネジメントシステムやデータを活用し、一人ひとりの適性や意志を反映したキャリア形成やスキル構築の機会を提供します。また、会社が機会を提供するだけでなく、自らが機会をつかむ社外兼業・社内公募等を推進・拡充していきます。
<ポイント3>知・経験のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
当社グループに集う多様な人材の多様な背景・考え・働き方を尊重して背中を押し、育て、やりがいの大きい業務で成果を出してもらうことを通じて会社の成長と社会の発展につなげていきます。中でも女性活躍はダイバーシティの端緒と位置付けて様々な取組みを進めています。2023年には当社の女性執行役員数が増加し3名になるなど、各役職段階に占める女性の割合が着実に増加しており、多様な人材が活躍できる土壌が形成されています。また、変化に強いしなやかな企業体質の実現に向けて、男女ともに柔軟な働き方や仕事と育児の両立を推進しています。
戦略実行の中心にあるのは人であり、従業員エンゲージメントの向上は必須と考えています。エンゲージメントを定期測定し指数を施策に反映することで、人事制度・運用やマネジメントを高度化していきます。
(注) 1 連結子会社の実績は、
2 2025年度目標は、2023-2025 年度中期経営計画で設定したもの。
3 東京ガスネットワーク㈱への転籍(2024年4月~)に伴う母数変動の影響を考慮して、東京ガス㈱・東京ガスネットワーク㈱を合算した値は、10.9%(前年度比+0.6ポイント)。
4 2024年度の育児休職取得者のうち、育児を目的とした休暇も含めて1ヶ月以上取得した者の割合は94.5%。平均日数は、66.3日。
5 2025年度目標到達点について、割合は育児休職の取得率100%、日数は育児休職と育児を目的とした休暇を合わせた取得日数1ヶ月以上。
(注) 1 翌年度の4月時点実績
2 2020年度~2021年度については、育児・介護休業法に規定された計算方法に基づく算出なし
3 詳細は、当社「
download/index.html)」、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社は天然ガスをはじめとする都市ガス原料の大半を海外から輸入しているため、原料輸入先のカントリーリスクやガス田・LNG液化基地でのトラブル、LNG船の運航途上でのトラブル、東京湾での入港規制等により原料が長期にわたり調達できない場合には、都市ガスの供給に支障を来し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、1969年の受入開始以来、安定調達を続けている主要原料のLNGについては、現在、4カ国10プロジェクトから購入し、調達先の多様化を進めています。また、自社管理LNG船等を活用した柔軟な配船やトレーディングの活用等により、安定的かつ柔軟なLNG調達に取り組み、原料調達リスクの低減を進めています。
なお、ロシア・ウクライナ問題や中東情勢等の地政学リスクに起因した原料調達支障は、2025年5月末現在発生しておりませんが、関係各所と連携しつつ、引き続き都市ガスの安定供給に努めていきます。
② 自然災害
当社グループは、都市ガスの製造・供給設備を事業活動の基盤としている装置産業であるため、大規模な自然災害が発生した場合には、LNG基地等の製造設備や導管等の供給設備等に損害を受け、都市ガスの供給に支障を来す可能性があり、その復旧対応等に伴う費用が収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、主要設備は阪神・淡路大震災、東日本大震災クラスの大地震でも十分耐えられる構造になっており、さらに二次災害を防止するための予防対策等を実施しています。また、内閣府想定の大規模地震災害に備えた事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)の策定をはじめ、地震、台風、津波、富士山噴火等の自然災害に対する非常事態体制の整備、定期的な訓練の実施及び近年の大型台風等の風水害リスクに対するレジリエンス向上策の実施等、災害の影響を最小限に止める対策を実施しています。
当社グループは、お客さまの生活や産業を支える都市ガスの製造・供給及び発電を行っているため、都市ガスの製造・供給に伴う大規模な漏洩・爆発事故や供給支障が発生した場合には、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生し、事業収支にも影響を及ぼす可能性があります。また、発電に支障が発生した場合には、電力の市場調達が必要となり、その対応に伴う費用等により、電力収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、ガスの大規模供給支障事故に備えたBCPの策定をはじめ、各種保安対策を計画的に実施するとともに、非常事態体制を整備し、定期的な訓練を実施する等事故・供給支障の防止に取り組んでいます。また、当社は複数のLNG基地を有し、基地間での補完が可能なため、ガスの供給停止に至る可能性は低いと考えます。
当社グループの業務従事者の病原性や感染力の高い感染症への感染により、万一、都市ガスの製造・供給及び発電に支障を来した場合には、当社の事業収支に影響を及ぼすとともに社会的責任の発生等有形無形の損害が生じる可能性があります。
このため、流行発生の予見は困難ですが、病原性や感染力の高い感染症に備え、BCPの策定や非常事態体制の整備により影響を最小化する対策を実施しています。
⑥ 不測の大規模停電
当社のLNG基地は信頼性の高い受電系統を配しており、LNG基地への電力供給が停止する可能性は低いと考えられますが、ガスの需要量や製造・供給設備の状況によってはガスの製造・供給に支障を来し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、関東エリアで不測の大規模停電が発生した場合に備えて、BCPの策定をはじめ影響を最小限に止める対策を実施しています。また、系統電源からの電力供給が停止した場合には、停電によるガス需要減も見込まれるとともに、自家用発電設備で稼働することが可能なため、停電時にも一定量のガス送出が可能となっています。さらに、当社は複数のLNG基地を有し、仮に1つのLNG基地が停止しても、基地間での補完が可能であり、必要なガスの製造が概ね可能となっています。
また、ガス供給については、圧力調整器の動力がガス自身の圧力差であり電力が不要であることから、大規模停電が発生した場合においてもガス供給を継続することが可能です。一方、ガスの圧力や流量の監視・コントロールする設備や災害対応を行う保安拠点ビルについては、商用電源を利用していますが、停電時には商用電源から非常用電源に切り替わり、継続して使用可能となっています。
当社グループは、都市ガス供給上及び消費機器の使用に係る保安責任を負うことから、都市ガス供給に関わる事故やガス機器等に起因する事故が発生した場合には、その対応に伴う直接・間接の損害が発生する可能性があります。
このため、お客さまとの保安接点機会である開栓時及び定期保安点検時におけるガス工作物の健全性の確認、消費機器の安全性の確認を通じ、引き続きガスの安全使用を徹底するとともに、家庭向けガス警報器の普及促進や業務用厨房への業務用換気警報器の設置を継続します。これらの取り組みにより、ガスによる重大事故は着実に減少しています。
発生の予見は困難ですが、他社における都市ガス事故が都市ガス業界全体の信頼に重大な影響を及ぼし、有形無形の損害を被る事態が発生する可能性があります。
このため、平時から都市ガスの防災対策やガス機器の安全性向上対策を深化すると共に、お客さま・行政・マスコミ等に対し、当社の取り組みやガスの安全な使用方法等に関する周知活動を行っています。万一、事故が発生した際には、事故に関連する情報等について正確かつ誠実な広報を行い、ステークホルダーに正しく理解いただけるよう取り組みます。
所有する不動産や株式をはじめとした有価証券等の資産の市場価格が変動する場合、または年金資産が市場変動の影響により運用計画未達成となる場合には、会計基準にしたがって損失を計上する可能性があります。また、有利子負債について金利変動により支払利息が増加する可能性があります。
これらの損失影響を抑制するため、不動産については長期安定収益を志向する物件の取得、株式については保有意義が希薄化した証券の順次売却の実施、年金運用については特定の市場変動の影響を過度に受けないような分散投資の実施等の対応を行っています。また、当社の有利子負債は大部分が概ね固定金利で調達していることに加え、借り換え時期を分散していることから、金利変動による影響は限定的です。
電力市場やLNG価格の変動が、収支に影響を及ぼす可能性があります。このため、当社は需要・供給両面での市場リスクマネジメントに取り組んでいます。
ガス小売全面自由化による他企業との競合激化や原油価格の変動、及び脱炭素の潮流による制度・お客さま志向の変化等LNGそのものが他エネルギーとの競争力を失う場合には、需要が減少し、収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループは、環境性・効率性・快適性の高いガス利用設備の導入や販売体制の強化をはじめとする営業強化及び効率化の徹底による競争力向上に取り組んでいます。
主として都市ガスの原料としているLNGの調達先との契約更改・価格交渉の動向によっては、収支に影響を及ぼす可能性があります。また、LNGは主に原油価格に連動して価格が決定されるため、原油価格の変動が収支に影響を及ぼす可能性があることに加え、ドル建ての売買契約になっているため、円の対ドル為替レート変動が収支に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、長期契約のLNGプロジェクトからの調達量を上回る需要増、感染症の拡大等に伴う経済活動の制限による需要減、出荷基地・輸送上のトラブルの発生、新規LNGプロジェクトの供給開始遅延等が生じ、スポットLNGの追加調達や転売が必要となる場合には、スポット市況により、収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社は調達先の多様化、契約条件の多様化、グローバルなLNGトレーディング強化等により、原料費の低減と安定化に取り組んでいます。
一方、原料費が変動しても「原料費調整制度」により、最大5ヶ月後にはガス料金に転嫁されます。ただし、原料費調整制度に基づき算定される平均原料価格(1トン当たり)が調整上限を超過した場合には超過分は未回収となります。また、会計年度を越えてガス料金に反映される場合には、年度収支に原料費の未回収・過回収による影響が及ぶ可能性があります。
ガス・電力事業においては、小売全面自由化に続き、送配電部門・ガス導管部門の法的分離が実施される等、制度の見直しが進められており、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しています。今後のエネルギー政策の動向や他事業者との競争激化により、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、ガスは徹底的な効率化による競争力向上、電力は拡販と効率化の両立に取り組むと共に、ソリューション事業ブランドIGNITUREのもとお客さまの新たな生活様式や価値観に対応したソリューション商材を提供していくことでガス・電力に次ぐ新たな収益基盤の確立を図っていきます。
当社の連結売上高の多くが都市ガス・電力の販売によるものであるため、猛暑や暖冬等の異常気象が発生した場合には、家庭用ガス・電力販売量や一部の業務用ガス・電力販売量が変動し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、気象の影響を受けづらい工業用やコージェネ用都市ガス販売に加え、Compass2030や東京ガスグループ2023-2025年度中期経営計画で掲げている、都市ガス・電力販売以外のソリューションビジネス・不動産・海外事業の拡大等による事業バランスの変更を図っていきます。
中長期的な省エネ活動の進展及び産業構造の変化等により、将来の工業用・商業用の既存ガス需要の一部が減少する可能性があります。また、さらなる世帯人員の減少・生活形態の変化や省エネ機器の普及等により家庭用の既存需要の一部が減少する可能性があります。
将来のCO2削減に向けた社会的要請や機運が一層高まる中で、それらの開発や実用化が、将来、他社と比較して遅延した場合には、その新技術を活用できない、若しくはその活用に必要な知財使用・購入コストや代替技術開発コストが増加すること等により、結果的に競争力が低下し、経営成績等に中長期的に影響を及ぼす可能性があります。
このため、カーボンニュートラルロードマップ2050で掲げたカーボンニュートラル社会へのシームレスな転換を牽引するため、ガスはe-methane(合成メタン)導入、電力は再生可能エネルギーの拡大を主軸として脱炭素化を推進すると共に、それらの普及拡大に向け、グリーンイノベーション基金事業での従来よりも大幅な高効率化を目指す革新的メタネーション技術開発、洋上風力の浮体式基礎の連続製造・施工技術の確立、低コストグリーン水素製造に向けた水電解用セルスタック開発等の実現を目指します。
また、オープンイノベーションを戦略的に活用し、スピードや知財マネジメントを意識しつつ、自社開発、社外からの知見の取り込み状況の見える化、およびその進捗管理を適宜実施しています。
事業活動の継続のためのサプライチェーンの強靭化は重要な経営課題の1つであり、当社グループでは、様々な取り組みを実施しています。
取引先の収支悪化や労働力不足等による事業縮小・撤退リスク、紛争や政治的不安定による地政学リスク、自然災害などのサプライチェーンリスクに対し、事業継続のために必要な重要業務で使用する部品・材料等の棚卸とリスク評価を実施し、その結果に応じた調達先の多様化、必要最低限の在庫確保、代替部品・材料の検証などの対策に取り組んでいます。
また、人権デュー・デリジェンスの観点を含めた「サステナブル調達ガイドライン」、サプライチェーン全体の共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」を定め、サプライチェーンリスクに対して強靭でサステナブルなサプライチェーンの構築に努めています。
当社では、事業継続上重要な業務領域における人材確保のため、協力企業との連携による教育・研修プログラムを導入し、専門性を持つ人材の育成を強化しています。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、業務効率化や自動化を推進することで、担い手の負担軽減と労働生産性の向上を図っています。さらに、多様な働き方を促進し、幅広い人材の参加を可能にする環境整備を進めています。これらの取り組みにより、担い手不足リスクの軽減と事業運営の安定性を確保しています。
Compass2030で掲げた海外への展開において、原油・ガス・電力価格及び外国為替相場は、常に変動することから、収支に影響を及ぼす可能性があります。特に、2023年12月に米国のTGナチュラル・リソーシズ社を通じて天然ガス開発・生産事業会社を新たに買収したこと、2025年3月にシェブロン社とシェールガス共同開発契約を締結したことでヘンリーハブ価格(ガス価格)の変動による影響をより大きく受ける構造となりました。そのため、へッジの活用や生産コスト低減などに加えて、安定的なエネルギー販売先の確保など米国内での中下流領域への事業を拡大することで、収益の安定化を目指していきます。また、LNGインフラ事業や再エネを含む脱炭素分野等、事業の多様化や資産入替により、リスクを分散していきます。その他、米国政府の動向や政策にも注力し、リスク低減を図りながら事業を推進しています。
自由化の進展や技術革新により、中期的に既存ガス商材に対する競合の激化、競争力低下の恐れがあります。さらに、国や自治体の制度・政策等動向によっては、既存事業における競争環境が悪化する可能性があります。
このため、Compass2030及びカーボンニュートラルロードマップ2050で示した通り、カーボンニュートラル社会へのシームレスな転換を牽引すると共に、価値共創のエコシステム構築の取組みとして、デジタルマーケティング力を活かした商圏拡大、リアルの強みとAI・デジタル技術を活かしたニーズを先取りしたソリューション提供、低・脱炭素商材の提供等を推進し、新たな市場を開拓し差別化・収益化を図ります。
当社は設備投資、出資、融資及び債務保証に関する案件に対しては投資評価委員会において採算性及びリスク評価を行い、その結果を踏まえて経営会議若しくは取締役会に付議する等、総合的な経営判断の下に投資を決定しています。
しかし、パイプラインやLNG基地建設等の安定供給基盤の強化や、電力事業、再エネ事業、エネルギーサービス事業、ガス田の開発等の海外事業やLNG輸送事業、IT及び保有不動産の活用に係わる大規模投資が、その後の経済情勢の変化等によっては、適切に回収されない、又は所期の成果を生み出せず、特別損失として収支に悪影響を及ぼす可能性があります。
このため、経済情勢の変化等は通年管理しており、その短・中期的影響を踏まえ未回収リスクの発現時は決算に反映させています。
お客さまの個人情報が外部へ流出した場合には、対応に要する直接的な費用、被害が深刻なお客さまからの信頼や当社グループのブランドイメージの毀損等により、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、グループ全体を対象とした情報セキュリティ推進体制の構築と監理機能の強化、情報セキュリティ教育や個人情報保護法教育、自主検査の実施、流出事故発生時のエスカレーションルールの徹底等を行うと共に、その構築・運用状況を定期的な社内審査により確認し、必要な改善を行う体制を強化する等の人的・組織的対策と外部からの不正アクセスやコンピュータウィルスによるシステムへの攻撃に対する侵入防止対策等の技術的対策により、個人情報の流出防止と事故発生時の影響の最小化に取り組んでいます。このほか、2024年7月に発生した当社子会社への不正アクセス事案を受け、社員教育や技術的総点検等を実施しました。
② ITシステムの停止・動作不良
基幹ITシステムが停止した場合や動作不良を起こした場合には、お客さま対応業務の縮小・停滞・お約束不履行の発生等による当社グループのブランドイメージ毀損、通常と異なる手段で業務継続をするための追加費用の発生等のリスクがあります。また、ITシステムの停止・動作不良は、プログラム・オペレーティングシステム・データベース・機器の不具合等様々な原因で発生します。
このため、発生防止及び発生時の影響の最小化を目指して、対障害性・耐災害性に優れた堅牢なデータセンターの設置やクラウドサービスの選定、各種セキュリティ対策及び定期的な訓練の実施等、システムの安定稼動に必要な対策を実施しています。また、万一発生した際には、再発防止及び再発時の影響の最小化のため、根本原因の徹底追究、他システムも含めた情報共有・点検等を実施していきます。なお、都市ガスの製造・供給調整に関するITシステムは、独自にバックアップシステムの整備及び自営無線の整備等の安全対策を施しているため、当該システムの停止・動作不良により都市ガスの製造・供給へ大きな影響が及ぶ可能性は低いものとなっています。
近年、サイバー攻撃のリスクが増大しています。サイバー攻撃の脅威が想定以上に高度化、複雑化し、個人情報の流出、基幹ITシステム及び都市ガスの製造・供給及び発電に関する制御システムの停止・動作不良等が発生した場合には、お客さま対応の停滞、被害が深刻なお客さまからの信頼や当社グループのブランドイメージの毀損、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生し、事業収支にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
このため、情報系と制御系の部門横断的な体制を強化し、定期的な審査の実施、子会社等も含めたグループ大でのセキュリティ管理の強化、各種セキュリティ対策やインシデント対応訓練を実施する等、サイバー攻撃の影響を最小限に止める対策を実施すると共に、サイバーセキュリティ基本法や経済安全保障推進法など各種法令に従い、重要インフラ事業者として適切に対応しています。
コンプライアンス違反は、事業を加速させている海外も含め、世の中の企業コンプライアンスに対する意識の高まりと共に顕在化の可能性も高まっており、法令・定款に照らして不適切な行為、情報開示における不適切な対応、若しくは企業倫理・社会的規範に反する行為等が発生した場合には、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の毀損等有形無形の損害が発生し、結果として事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、コンプライアンスを業務運営の基盤と位置付け、社長を委員長とする経営倫理委員会において審議する「コンプライアンス推進活動計画」の下に、グループ全体でコンプライアンス向上の取り組みを実施し、法令・企業倫理・社会的規範の遵守の周知徹底や、その状況等を内部監査により確認する等コンプライアンスの推進に取り組んでいます。
気候変動問題においては、世界的に脱炭素化に向けた潮流が強まっており、化石燃料の競争力低下により収支に影響を及ぼす可能性があります。
その対応としては、カーボンニュートラルロードマップ2050で示した通り、足元ではこれまでに推進してきた天然ガスの高度利用と並行して再生可能エネルギー等の分散型リソースの活用促進や、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)における調整後排出係数がゼロとなる都市ガスメニューの開発に取り組み、ガス・電力の脱炭素化の準備を進めており、2030年代には脱炭素化技術を実装・拡大していきます。また、2026年度から本格稼働するGX-ETSへの対応を新たに検討しています。加えて、2040年時点でCO2排出量を2022年度比で6割削減、国内のお客さまに供給するガス・電力の5割をカーボンニュートラル化し、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指します。
不適切なお客さま対応等が発生した場合には、SNS等を通じて容易に拡散され、当社グループのブランドイメージの毀損による企業競争力の低下や既存顧客の流出等の有形無形の損害が発生し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、CSの向上を経営上の重要課題と位置付け、頂いたお客さまの声を該当する部門へ速やかに届けて改善策を講じる等、グループ全体でCSの向上を進めています。
事業活動における人権尊重を経営上の重要課題として位置付けていますが、事業を加速させている海外も含め、世の中の「ビジネスと人権」に関する意識がますます高まっています。こうしたリスクの所在や発生源、影響を及ぼしうる取引先やサプライチェーン上の課題を適切に把握して対応しなければ、訴訟費用の発生にとどまらず、社会的信用の毀損等有形無形の損害が発生し、結果として事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社は、国連の指導原則に基づく「東京ガスグループ人権方針」を制定してグループ内への浸透を図ると共に「人権デュー・デリジェンス」の仕組みを構築し、当社グループの人権リスクを特定し、その防止・軽減を図っております。サプライチェーン上の人権尊重への対応として、人権の観点を含む「サステナブル調達ガイドライン」(2024年3月改訂)の周知やアンケート実施、救済メカニズムの整備等により人権課題の実態把握及び改善に向けた取り組みを強化しています。
また、コンプライアンス部担当役員を委員長とする「中央人権啓発推進委員会」を設置し、その中で毎年、当社グループの「人権啓発活動計画」を定め、人権啓発活動に取り組んでいます。
当連結会計年度の期首より、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおり、当社の米国連結子会社であるTokyo Gas America Ltd.及びその傘下連結子会社において従来の国際財務報告基準(IFRS)にかえて米国会計基準を適用しており、当該会計方針の変更を遡及適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っています。
また、当連結会計年度より、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に記載のとおり、報告セグメントの区分を変更しており、変更後の区分に基づいて前連結会計年度との比較・分析を行っています。
① 経営成績等の状況の概要
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における我が国の経済は、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあって、緩やかな回復基調にありました。しかし、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通して個人消費に及ぼす影響や、通商政策などアメリカの政策動向による影響などが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。加えて、金融資本市場の変動等の影響に注視が必要な状況にあります。
また、エネルギー業界を取り巻く環境としては、脱炭素化、デジタル化の潮流に加え、自然災害の激甚化や社会インフラの経年劣化といった課題が顕在化しています。
そのような環境変化の中、当社はグループ中期経営計画「Compass Transformation 23-25」にて、3つの成長戦略「エネルギー安定供給と脱炭素化の両立」「ソリューションの本格展開」「変化に強いしなやかな企業体質の実現」を掲げて、さまざまな施策に取り組んできました。2025年3月末に公表した「持続的な企業価値向上に向けた取組方針」と合わせ、中期経営計画で掲げた諸目標を達成することで、ステークホルダーの期待に応え、当社グループの企業価値向上の実現を目指しています。
売上高は、ガスの原料費調整による売上単価の減少及び電力の販売量の減少等により、前連結会計年度比1.0%減の2,636,809百万円となりました。
売上原価、販売費及び一般管理費を合計した営業費用は、前連結会計年度比2.4%増の2,503,718百万円となりました。
期中の円安傾向の影響を受けて原材料費が増加したこと等により、売上原価は前連結会計年度比1.8%増の2,230,573百万円となりました。北米上流シェール事業の規模拡大に伴い諸経費が増加したこと等により販売費及び一般管理費は前連結会計年度比7.3%増の273,144百万円となりました。
売上高が減少する一方で、営業費用が増加したことにより、営業利益は前連結会計年度比38.7%減の133,090百万円となりました。
営業外収益の合計は、前連結会計年度の40,959百万円から、27,154百万円となりました。これは、前連結会計年度に為替差益13,341百万円を計上していましたが、当連結会計年度は為替差益の計上がなかったことが主な要因です。
営業外費用の合計は、前連結会計年度の35,336百万円から、46,646百万円となりました。これは、支払利息が前連結会計年度比13,155百万円増の31,206百万円となったことが主な要因です。
この結果、経常利益は前連結会計年度比49.0%減の113,599百万円となりました。
特別利益の合計は、前連結会計年度の27,389百万円から、6,807百万円となりました。これは、投資有価証券売却益が前連結会計年度比20,325百万円減の4,806百万円となったことが主な要因です。
特別損失の合計は、前連結会計年度の3,478百万円から、14,190百万円となりました。これは、前連結会計年度になかった投資有価証券評価損14,190百万円を当連結会計年度に計上したことが主な要因です。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果から、親会社株主に帰属する当期純利益は同55.2%減の74,194百万円となりました。
売上高に対する親会社株主に帰属する当期純利益率は、前連結会計年度の6.2%から3.4ポイント減少し、2.8%となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の401円09銭から、192円22銭となりました。
⑦ セグメント情報
イ エネルギー・ソリューション
売上高は、ガスの原料費調整による売上単価の減少及び電力の販売量の減少等により、前連結会計年度から82,392百万円(3.4%)減少し、2,340,481百万円となりました。営業費用は、前連結会計年度から3,256百万円(0.1%)減少し、2,219,792百万円となりました。持分法による投資利益は、1,014百万円と前連結会計年度比341百万円(25.1%)減少しました。この結果、セグメント利益は前連結会計年度から79,476百万円(39.5%)減少し、121,703百万円となりました。
(ガス)
都市ガス販売量は、前連結会計年度比0.8%減の11,215百万m3となりました。家庭用需要は、高気温影響等による需要減等により、前連結会計年度比2.2%減の2,663百万m3となりました。業務用需要は、高気温影響等による需要減等により、同0.3%減の2,267百万m3となりました。工業用需要は、需要家の稼働減等により、同1.3%減の4,681百万m3となりました。また、他事業者向け供給は、供給先の稼働増等により、同2.6%増の1,604百万m3となりました。
(注) 1 小売お客さま件数は、ガス小売事業者としてのガス料金請求対象件数
2 取付メーター数は、導管事業者としてのメーター取付数
3 業務用は、商業用、公用及び医療用
4 都市ガス販売量は45MJ(メガジュール)/m3
(電力)
販売量は、前連結会計年度比8.0%減の23,440百万kWhとなりました。小売では、件数増により、前連結会計年度比7.4%増の14,437百万kWhとなりました。卸他では、卸先の需要減により、同25.2%減の9,003百万kWhとなりました。
(注) 小売お客さま件数は、電力小売事業者としての電気料金請求対象件数
売上高は前連結会計年度から1,390百万円(0.4%)増加し、327,849百万円となりました。営業費用は、前連結会計年度から560百万円(0.2%)増加し、330,978百万円となりました。この結果、セグメント損益は前連結会計年度に比べ831百万円改善し、3,128百万円の損失となりました。
ハ 海外
売上高は、前連結会計年度から63,170百万円(53.5%)増加し、181,242百万円となりました。営業費用は前連結会計年度から70,570百万円(76.9%)増加し、162,302百万円となりました。持分法による投資利益は、3,928百万円と前連結会計年度比2,953百万円(302.9%)増加しました。この結果、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ4,446百万円(16.3%)減少し、22,868百万円となりました。
売上高は、前連結会計年度から13,286百万円(14.6%)減少し、77,827百万円となりました。営業費用は前連結会計年度から14,503百万円(21.1%)減少し、54,394百万円となりました。持分法による投資利益は、587百万円と前連結会計年度比144百万円(19.7%)減少しました。この結果、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ1,074百万円(4.7%)増加し、24,020百万円となりました。
なお、参考のため、セグメント別の売上高及び構成比を示します。
(注) 各セグメントの売上高には、事業間の内部取引を含んでいます。
当社グループが供給する都市ガスの主要原料であるLNGは海外から輸入しており、ドル建ての売買契約になっているため、円/ドル為替の変動リスクを受けます。また、ドル建てのLNG価格は主として原油価格に連動して決定されるため、国際原油価格市場の変動リスクも受けます。
ただし、原料購入価格が変動しても変動分について最大5ヶ月遅れ(注1)で都市ガス料金に反映する「原料費調整制度(注2)」が適用されるため、年度を区切ると回収超過や回収不足が発生(スライドタイムラグ)しますが、中長期的には収支への影響は軽微です。
為替及び原油価格の変動が翌連結会計年度の売上総利益に与える影響額は、以下のとおりです。
為替:1円/ドルの円安により、約7億円減
原油価格:1ドル/バレルの価格上昇により、約14億円減
翌連結会計年度見通しにおける年平均為替相場と原油価格は、当連結会計年度が152.62円/ドル、82.41ドル/バレルであったのに対し、それぞれ150.00円/ドル、75.00ドル/バレルを想定しています。
(注) 1 都市ガス料金への反映は、契約により5ヶ月遅れではない場合もあります。
2 調整の上限があり、原料費調整制度に基づき算定される平均原料価格(1トン当たり)が、
2022年3月から5月までの平均原料価格の160%を超過した場合には超過分は未回収となります。
当社グループの年度売上高の過半が都市ガスの販売によるもので、その販売量は気温の影響を受けます。家庭用においては、主な都市ガスの利用目的は給湯・暖房であるため、暖冬の場合には都市ガス販売量が減少し減収・減益要因となります。業務用においては、主な利用目的が空調であるため、夏場においては気温が低い場合、冬場においては気温が高い場合に、それぞれ都市ガス販売量が減少し減収・減益要因となります。
当連結会計年度の平均気温(※)は上期で24.1℃、下期で11.0℃(通期で17.6℃)でしたが、翌連結会計年度の平均気温は通期で16.5℃を想定しています。
(※)平均気温は、各日における平均気温を月間で平均したものです。
③ 金利の変動
当社の有利子負債は、長期・短期ともに概ね固定金利であるため、借入れ期間中の金利変動リスクは軽微ですが、借換え時等においては金利変動のリスクを受ける可能性があります。
当社の保有する株式のうち、上場株式の株価はマーケットリスクに晒されています。保有株式の取扱いについては、管理規則を設けています。
当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益の計上及び減価償却費の計上等があったものの、有形固定資産の取得、無形固定資産の取得及び自己株式の取得等により、現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ119,563百万円減少し、当連結会計年度末には244,320百万円となりました(前期末比32.9%減)。
営業活動の結果増加した資金は、当連結会計年度において363,120百万円となりました。
これは、法人税等の支払(39,633百万円)等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上(106,216百万円)及び減価償却費の計上(263,842百万円)等があったことによるものです。
また、これは、前連結会計年度に比べて46,797百万円の収入の増加となります(前期比14.8%増)。
投資活動の結果減少した資金は、当連結会計年度において263,526百万円となりました。
これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入(115,524百万円)等があったものの、設備投資等に伴う有形固定資産の取得による支出(185,918百万円)及び無形固定資産の取得による支出(120,151百万円)等により資金が減少したことによるものです。
また、これは、前連結会計年度に比べて98,488百万円の支出の減少となります(前期比27.2%減)。
財務活動の結果減少した資金は、当連結会計年度において255,979百万円となりました。
これは、自己株式の取得による支出(120,055百万円)、コマーシャル・ペーパーの減少(67,000百万円)、長期借入金の返済による支出(52,095百万円)及び配当金の支払(28,531百万円)等があったことによるものです。
また、これは、前連結会計年度に比べて197,644百万円の支出の増加となります(前期比338.8%増)。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末から42,515百万円(1.1%)減少し、3,855,093百万円となりました。これは、鉱業権の増加があったものの、現金及び預金やその他流動資産が減少したこと等によるものです。また、総資産利益率(ROA)は、前連結会計年度末の4.4%から1.9%に下落しました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末から85,162百万円(4.0%)減少し、2,053,623百万円となりました。これは、コマーシャル・ペーパー償還等による有利子負債の減少等によるものです。
コマーシャル・ペーパー及び長期借入金の減少等に伴い、当連結会計年度末の有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ102,946百万円(7.2%)減少し、1,336,298百万円となりました。有利子負債比率(有利子負債÷総資産)は、有利子負債の下落率の方が大きかったため、前連結会計年度末の36.9%から34.7%に下落しました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ42,648百万円(2.4%)増加し、1,801,470百万円となりました。これは、株主資本について剰余金の配当や自己株式の取得等により75,257百万円減少したものの、為替換算調整勘定の増加等によりその他の包括利益累計額が107,224百万円増加したことによるものです。
自己資本比率は、前連結会計年度末の43.4%から44.8%に上昇し、自己資本利益率(ROE)は、前連結会計年度末の10.2%から4.3%に下落しました。負債資本倍率(D/Eレシオ)は、前連結会計年度末の0.85から0.77へと下落しました。また、ハイブリッドファイナンスを考慮した後の負債資本倍率(D/Eレシオ)は、0.73となりました。
当社グループの製品・サービスは広範囲かつ多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくありません。また、都市ガスの販売が外部顧客に対する売上高及び営業費用の多くを占めています。
このため、以下は、エネルギー・ソリューションセグメントにおける都市ガスの生産実績について記載しています。
最近2連結会計年度の都市ガスの生産実績は次のとおりです。
都市ガスについては、その性質上受注生産は行いません。
都市ガスは導管を通じて直接需要家に販売していますが、一部については他事業者向け供給を行っています。
最近2連結会計年度の都市ガスの販売実績は次のとおりです。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
重要な会計上の見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
<事業全体>
当連結会計年度の連結決算は、2期連続の減収減益となりました。
減益となった主な要因は、エネルギー・ソリューションセグメントにおいて、①前期に発生していたガス事業のスライド差益が剥落したこと、②電力事業において一過性の費用および制度対応費用が増加したことです。
<セグメント別>
エネルギー・ソリューションセグメントは、都市ガスの販売量の減少及び原料費調整制度による単価下落に加え、電力販売量の減少及び単価下落等により、売上高は前期比△824億円(△3.4%)の2兆3,404億円となり、都市ガス・LNG販売のスライド差益の剥落及び電力事業における一過性の費用や制度対応費用の増加等により、セグメント利益は前期比△794億円(△39.5%)の1,217億円となりました。
ネットワークセグメントは、検針日基準により前期の3月中旬から下旬の低気温影響を取り込んだ結果、家庭用のガス託送量が増加したこと等により、売上高は前期比+14億円(+0.4%)の3,278億円、スマートメーター取替促進のための費用増があったものの、セグメント損益は前期より8億円改善し、31億円の損失となりました。
海外セグメントは、北米シェールガス事業においてロッククリフ社買収により生産規模が拡大したこと等により、売上高が前期比+632億円(+53.5%)の1,812億円となりましたが、豪州権益売却による利益剝落の影響が大きく、セグメント利益は前期比△45億円(△16.3%)の228億円となりました。
都市ビジネスセグメントは、不動産販売収益の減少及びホテル事業におけるパークハイアット東京のリニューアル工事に伴う休館等により、売上高が前期比△133億円(△14.6%)の778億円となりましたが、不動産販売の利益率が上昇したこと等により、セグメント利益は前期比+11億円(+4.7%)の240億円となりました。
<認識>
エネルギー・ソリューションセグメントのガス事業におけるスライド差益の剥落や、海外セグメントにおける北米シェールガス事業のガス価格の低迷等、市況の影響を大きく受けたことに加えて、エネルギー・ソリューションセグメントの電力事業における発電所の点検修繕費等の増加や、都市ビジネスセグメントにおけるホテル事業のリニューアルに伴う休館等、一過性の要因により減益となりました。その一方で、ガスの小売件数は増加基調を維持しており、電力の小売件数は400万件を超え、国内の顧客基盤はより強固なものになりました。また、北米シェールガス事業ではバリューチェーンの構築に向けて生産規模が拡大しました。
当社が顧客基盤やエネルギーアセット等の強みを活かしながら、持続的に成長し続ける企業グループになるためには、資産効率向上のための事業ポートフォリオマネジメントを推進するとともに、未来を先取りしたビジネスモデルを確立させていくことが必須であります。企業価値向上に向けた資本政策についても、引き続き取り組んでまいります。
当社グループの主な資金需要は、中長期的な成長に必要な設備投資及び投融資向けの資金です。
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フロー3,631億円に対して、投資活動によるキャッシュ・フローは△2,635億円となり、フリーキャッシュフロー(営業活動によるキャッシュ・フローから、投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いた額)が996億円となりました。
2023年2月22日発表の「東京ガスグループ 2023-2025年度 中期経営計画」に基づき、事業ポートフォリオマネジメントの強化を通じて、健全な財務体質と成長投資を両立し、持続的な成長・企業価値向上を実現していきます。
イ 投資・資本効率性
投資に伴うリスク及び採算性に留意し個別の投資判断を行うとともに、投資効率の維持・向上及び株主資本の有効活用に努めます。また、稼ぐ力を考慮した投資・資産売却により、資産効率性を向上していきます。
具体的には、ROA(総資産利益率)・ROE(自己資本利益率)を主要経営指標と位置付け、2025年度における到達点を、ROAは4%程度、ROEは8%程度と定め上記の実現を図ります。
ロ 財務体質
現在の資金調達力を維持し財務健全性を確保するとともに、資本コストを意識した最適な資本構成の実現に努めます。
具体的には、D/Eレシオ(負債資本倍率)を主要経営指標と位置付け、2025年度における到達点を0.9倍程度と定め上記の実現を図ります。
ハ 株主還元
配当に加え、消却を前提とした自己株式取得を株主還元の一つとして位置付け、総還元性向(連結当期純利益に対する配当と自己株式取得の割合)は、各年度4割程度を目安とします。
また、配当については、安定配当を維持しつつ、中長期の利益水準を総合的に勘案し、成長に合わせて緩やかな増配を実現していきます。
n年度総還元性向=((n年度の年間配当金総額)+(n+1年度の自己株式取得額))÷n年度連結当期純利益
当社は、2025年3月31日に、当社の米国子会社であるTokyo Gas America Ltd.が出資するTG Natural Resources LLC(以下「TGNR社」という。)を通じて、Chevron U.S.A. INC.(以下「CVX社」という。)と東テキサス地域におけるシェールガス共同開発契約(以下「本契約」という。)を締結しました。
(1) 契約締結の理由
本契約締結は、静岡ガス株式会社への130百万米ドルでのイーグルフォード層シェールガス権益の譲渡も含め、当社の資産効率向上を目的とした資産ポートフォリオ見直しの一環で取り組んでいるものです。
(2) 契約の相手会社の名称
Chevron U.S.A. INC.
(3) 契約の締結時期
2025年3月
(4) 契約の内容
シェールガス共同開発契約
(5) 契約の締結が営業活動へ及ぼす重要な影響
本契約は、TGNR社の主要資産に隣接するCVX社のシェールガスの資産を、CVX社と共同で開発・操業するためのものです。TGNR社はCVX社保有資産の70%の取得対価として、先行して75百万米ドル、開発に応じて複数年かけて段階的に450百万米ドルを支払うことで、TGNR社のキャッシュ・フロー内で資産を取得します。
当社グループは、研究開発を経営戦略の一つとして位置付け、経営ビジョンCompass2030に沿って、以下の3つの挑戦に取り組んでいます。
・「CO2ネット・ゼロ」をリード
・「価値共創」のエコシステムの構築
・LNGバリューチェーンの変革
研究開発の推進にあたっては、投入原資の選択と集中を図るとともに、スピードと採算性を重視して取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発費総額は
主な研究開発活動は、エネルギー・ソリューションセグメントを中心に行われており、当セグメントにおける研究開発費は
当連結会計年度における具体的な研究成果は、以下のとおりです。
(1) 「CO2ネット・ゼロ」をリード
① 王子ホールディングス株式会社、王子製紙株式会社と、王子製紙苫小牧工場における再生可能エネルギー由来のグリーン水素と回収したCO2によるe-methaneの製造に向けた共同検討を開始しました。2030年までに苫小牧工場へ数十m3/h級のe-methane設備の導入を目指すとともに、2030年以降には設備を1,000m3/h級(一般家庭2万世帯分に相当)へ拡大することも見据えています。
② ポルトガルで稼働中の浮体式洋上風力発電所「ウインドフロート・アトランティック」を運営するウインドプラス社への投資を行い、浮体式洋上風力発電の操業経験を蓄積し、その中でも、特にデジタルや次世代技術を駆使した先進的なO&M手法の習得を目指します。
③ 株式会社加藤鉄工バーナー製作所と共同で、水素燃焼式のパッケージバーナを開発しました。100℃以下から500℃程度まで幅広い温度に対応するパッケージバーナで、天然ガス仕様のものと同様に食品加工、液加熱、乾燥、非鉄金属の熱処理等、さまざまな加熱設備の熱源として活用することが可能です。
④ 横浜市と締結した協定に基づき、横浜市北部下水道センターの再生水(下水処理した水をろ過した水)と消化ガス(下水汚泥を処理する工程で発生するバイオガスで、CH4とCO2の混合ガス)をメタネーション実証設備に輸送し、水素およびe-methane製造の原料として利用する共同実証を開始しました。
⑤ 薄型軽量太陽光パネルを、接着剤を用いてスレート屋根に設置する新工法を開発しました。スレートは工場等において広く採用されている屋根材で、軽量で耐久性等に優れる一方、耐荷重や施工安全性等の観点から太陽光発電設備の設置難易度が高く、これまで太陽光の導入は進んできませんでしたが、スレート屋根の課題に対応したパネル設置方法を開発し、信頼性の高い新たな施工方法を確立しました。
(2) 「価値共創」のエコシステムの構築
① JFEスチール株式会社及び株式会社ガスターと共同で、世界初の遠隔から瞬時に一酸化炭素を検知する高感度な携帯型レーザー式一酸化炭素検知器を開発しました。東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社がすでに実用化している赤外吸収現象を利用した反射式のレーザー式メタン検知器の技術を応用し、一酸化炭素の検知に最適な2.3μm帯の波長のレーザーを使用することで、一酸化炭素の高度な遠隔検知を実現しました。
(3) LNGバリューチェーンの変革
① 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が公募した「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業/デジタルライフラインの先行実装に資する基盤に関する研究開発」における実施予定先に採択されました。本研究開発は、経済産業省が進めるデジタルライフライン全国総合整備計画のインフラ管理DXワーキンググループで検討している取り組みに関連するものです。上下水道・電力・ガス・通信等のインフラ管理事業者は、各々が保有する設備情報を個別に保持し更新管理を行っていましたが、共通のデータ連携システムを開発し、当該システムによって事業者間の業務共通機能に必要なデータセットを提供することで、協調領域として業務の共通化・自動化やリソースの最適活用等を図ります。