第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 会社の経営の基本方針

  当社は、「お客さまの視点に立った企業活動を通じ、より快適な生活と豊かな社会の実現に貢献いたします」を経営理念として、エネルギーの安定供給と保安の確保に努めるとともに、お客さま満足の向上に努めることにより、お客さまから選ばれる企業を目指すことを基本方針としている。

 

(2) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題

エネルギー関連事業者は、お客さま獲得競争が激化するなかで、カーボンニュートラルへの対応をはじめ、お客さまや社会からの期待に迅速に対応することが求められている。

こうした状況のなか、「中期経営計画2022-2024」の最終年である本年は、2024年のありたい姿である「さらに多くのお客さまに“新しい価値”を届ける存在となる」の実現に向け、引き続き四つの重点戦略である「低炭素・脱炭素社会への貢献」「総合生活産業事業者への進化」「安全・安心の取り組みの強化」「経営基盤の強化」に取り組んでいく。

一つ目の「低炭素・脱炭素社会への貢献」では、再生可能エネルギー電源の開発・投資を推進するとともに、カーボンニュートラル都市ガスの供給拡大や天然ガスシフトなどによりお客さま先でのCO2排出量削減に取り組むほか、事業活動におけるペーパーレス化・電子化を一層推進し、カーボンニュートラルに貢献する。

二つ目の「総合生活産業事業者への進化」では、お客さまにとっての“くらしのかかりつけ”を担うため、小売電気事業やリフォーム事業の拡大、くらしサポートサービスの拡充などを通じて、さらに多くのお客さまへ新しい価値をお届けしていく。これらのくらしサポートサービスの拡充の一環として、本年2月に、お客さまの暮らしに豊かさや彩りをプラスするお花の定期便サービスを開始している。

三つ目の「安全・安心の取り組みの強化」では、保安・工事の高度化、首都直下地震や激甚化・多発化する自然災害へのレジリエンスの強化に向けて取り組む。

四つ目の「経営基盤の強化」では、CX・DX戦略に基づきCXとDXを一体で推進し、お客さまに“新しい価値” をお届けするとともに、市川工場跡地の再開発をはじめとした保有資産の活用を通じて、エリア価値の向上と地域課題の解決を目指して取り組む。

以上のようにオール京葉ガスが一体となり、さらに多くのお客さまへ新しい価値を提供できるよう、引き続き果敢に挑戦・まい進していく。

また、東京証券取引所における上場市場の再編にあたり示された上場維持基準の達成に向けて、企業価値の向上とガバナンスの高度化に継続的に取り組んでいく。

※ オール京葉ガスとは、お客さまに提供する価値を高めるための当社、グループ会社を含めたビジネスパートナーで構成する連携体制のことである。

 

 

(3) 目標とする経営指標

当社は、「中期経営計画2022-2024」及び「長期経営ビジョン2030」において、経営目標を以下のとおり設けている。

 

2024年

2030年

ありたい姿

さらに多くのお客さまに

“新しい価値”を届ける

存在となる

“つぎの「うれしい!」”をご提供することで、お客さまの“期待を超える”

存在となる

低炭素・脱炭素

 社会への貢献※1

事業活動に伴うCO2※2の削減

50%※3

排出量ゼロ※3

カーボンニュートラルガスの導入

1%※4

5%※4

再生可能エネルギー電源の開発

55地点※5

75地点※5

R&Dの推進

脱炭素・SDGsへの貢献

総合生活産業

 事業者への進化※1

お客さまアカウント数※6獲得

136万件※7

150万件※7

安全・安心の

 取り組みの強化※8

保安の高度化

重大事故ゼロ※9

スマートメーターの導入

導入開始

導入の推進

レジリエンスへの投資

100億円※10

300億円※11

 経営基盤の強化※1

DXの推進

新たな価値の提供

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

個性を活かし合う組織風土の実現による定着率向上※12

連結経常利益(2022-2024累計)

180億円以上

 

 

 

 

 ※1 オール京葉ガスでの取り組み

 ※2 京葉ガス事業所のガス・電気のエネルギー使用、社用車の走行により排出するCO2

 ※3 2020年比(クレジット活用含む)

※4 販売量に占める割合

※5 当該年までの累計地点数

 ※6 お客さまアカウント数は、ガス(都市ガス・LPG)・電気・その他サービスにおける契約数(継続的に提供す

   るサービス)

 ※7 当該年までの累計件数

※8 京葉ガスの都市ガス事業

※9 重大事故:当社設備の故障などに起因する人身事故・大規模供給停止、当社が原因となるガスに起因する爆発事故、お客さま先でのガス機器使用に伴う死亡事故

 ※10 2022-2024年の累計投資額

 ※11 2022-2030年の累計投資額

  ※12 2020年比

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)サステナビリティの基本的な考え方

 当社グループは、経営理念「私たちはお客さまの視点に立った企業活動を通じ、より快適な生活と豊かな社会の実現に貢献いたします。」に基づく事業活動を実践している。

さらに、「長期経営ビジョン2030」及び「中期経営計画2022-2024」を策定し、2030年のありたい姿である「“つぎの「うれしい!」”をご提供することで、お客さまの“期待を超える”存在となる」ことを目指して、様々な取り組みを推進している。具体的には、4つの重点戦略、「低炭素・脱炭素社会への貢献」「総合生活産業事業者への進化」「安全・安心の取り組みの強化」「経営基盤の強化」を着実に進めている。

また、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定し、地域の脱炭素化に取り組んでいる。

当社グループはこれらの取り組みを通じて、社会の持続的発展に貢献できるものと考えている。

 

  (2)ガバナンス

 当社グループにおけるサステナビリティ経営に関するガバナンスは、主に以下の当社の機関が担っている。

① 取締役会

取締役会は、経営上のサステナビリティ関連のリスク及び機会を含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負う機関である。取締役会の構成については第4提出会社の状況 4コーポレート ・ ガバナンスの状況等の 「(1)コーポレート・ガバナンスの概要 」及び「(2)役員の状況」の通りである 。

 

② 執行役員会

執行役員会は、サステナビリティに関する取り組みも含めた重要な業務執行にかかわる協議・報告を実施している。執行役員会の構成、活動状況は第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等の 「(1)コーポレート・ガバナンスの概要」 及び「(2)役員の状況」の通りである 。

 

③ 監査役会

監査役会は、会社法等諸法令や定款・諸規程等に基づき、サステナビリティに関する取り組みも含めて、取締役の意思決定の過程や職務執行状況の監査を実施している。監査役会の構成、活動状況は第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等の「(1)コーポレート・ガバナンスの概要 」、「(2)役員の状況」及び「(3)監査の状況」の通りである 。

 

④ 環境委員会

当社は、環境保全を経営上の重要な活動と位置づけ、社長を委員長とする環境委員会を設置して全社での活動を推進している。

環境委員会では、2022年4月、オール京葉ガスとして“持続可能な社会”を実現するために「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定し、カーボンニュートラル社会の実現に向けた指標と目標を設定した。

 

 

(3)戦略

〈カーボンニュートラル実現に向けた取り組み〉

当社グループを取り巻く環境や時代のニーズは脱炭素やDXなどにより目まぐるしく変化しており、そのニーズに応え、推進していく取り組みが求められている。その中で、低炭素・脱炭素社会の実現への貢献に向けて、最終消費先でのCO2排出抑制や再生可能エネルギー電源の拡大、カーボンニュートラルガスの導入に取り組む。

また、当社グループは、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」において2050年のカーボンニュートラルを実現するため、3つの“Challenge”に取り組む。

Challenge-1 お客さま先における取り組み

 

CO2削減に貢献するエネルギー・サービス・商品を積極的に提供するとともに、より快適で安心なくらしをお届けする。

 

(取り組み内容)

 ・低炭素ガス体エネルギーの供給拡大(カーボンニュートラルガスの供給等)

 ・カーボンフリーでんきの活用(カーボンフリーでんきなどを活用したサービス展開等)

 ・省エネの推進(建築物・住宅における省エネ設備の普及促進、一般消費者に対する省エネ情報提供の充実※1等)

 ・地域との連携(自治体との「ゼロカーボンシティの実現に向けた連携に関する協定」の締結等)

 

Challenge-2 脱炭素への手法・新技術等の取り組み

 

国内外で再生可能エネルギーを積極的に開発するとともに、脱炭素・SDGsに資するR&D(研究開発)を推進する。

 

(取り組み内容)

 ・再生可能エネルギーの開発(再生可能エネルギーファンドへの出資等)

 ・脱炭素への貢献手法(Jクレジットの創出・活用、森林保全等)

 ・R&Dの推進(バイオガス活用等)

 

Challenge-3 自社・グループ会社・取引先の取り組み

 

オール京葉ガスの事業活動※2におけるCO2排出量を早期に実質ゼロとし、取引先と連携して積極的にカーボンニュートラルに取り組む。

 

(取り組み内容)

 ・事業活動のカーボンニュートラル化(ペーパーレス化・DX等)

 

※1 電力・ガス会社による省エネに関する情報提供やサービスの充実度、取組状況を基に経済産業省が5段階で評価・公表する「省エネコミュニケーション・ランキング制度」において、当社は都市ガス・電気の2部門で2年連続最高評価の五つ星を獲得

※2 オール京葉ガスの事務所のガス・電気・エネルギーの使用、社用車の走行によるCO2排出(クレジット活用含む)

 

〈人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略〉

「長期経営ビジョン2030」で掲げた2030年のありたい姿である、「“つぎの「うれしい!」”をご提供することで、お客さまの“期待を超える”存在となる」の実現に向けて、3つの事業領域(地域エネルギー領域・トータルライフサポート領域・エリアマネジメント領域)を設定し、その実現に資する人財の確保(育成・採用)を推進する。

 

①地域エネルギー
領域

②トータルライフサポート
領域

③エリアマネジメント
領域

ガス(都市ガス・LPG)・電気事業及び再生可能エネルギーの電源開発に関する領域

様々なサービスを通じて、お客さまの“くらしのかかりつけ”を担う領域

不動産事業及び地域課題の解決に向けた取り組みを志向する領域

 

 

 

a) 多様な働き方推進

  当社では、従業員それぞれが様々な環境(ライフイベント等)にある中でも安心して働けるように、フレックスタイム制や在宅勤務、テレワーク勤務の導入、育児・介護両立支援制度の充実など多様な働き方を推進している。

 

b) 人財育成・能力開発の推進

  当社では、人財育成方針として“「自ら考え、行動できる」ことを基盤に、「成長と挑戦を続ける人財」を目指す”を掲げており、人事制度・職場・従業員本人が三位一体となった取り組みが不可欠であるという考えのもとで高付加価値人財の育成に取り組んでいる。

 

人事制度(会社)

・評価制度や自己啓発支援制度を中心とした人事諸制度により、本人並びに職場が主体的に成長・育成に取り組む風土を醸成する。
・社員研修により共通スキルの早期習得、並びに上位等級で求められる役割等の理解を促し、従業員の向上心の高まりを図る。

職場(上司)

・個々のメンバーの弱み・強みを踏まえた育成計画に基づき、日々のOJTを基本とし、外部講習への参加や資格取得を促す等により育成に取り組む。

従業員本人

・自らが自身のキャリア構築のイメージを持ち、短期的、中長期的に必要となる知識や技能、資格を計画的に習得することに努める。

 

 

  また、当社が掲げるCX・DX戦略の達成に資する人財を育成するべく、全従業員向けにITリテラシー研修を実施している。

 

c) 健康経営の推進

 「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することであり、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性向上等、組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される。

  当社においても今後社員数の減少(入社人数が多い世代が退職することに伴う自然減)が見込まれる中で一人ひとりの生産性の向上が求められていることを受け、「健康経営」の考え方に基づく取り組みをより効率的に展開して行く。

 

d) 女性の活躍推進

  当社は、社員の多様性を活かす取り組みとして、「女性社員の活躍」を推進している。

  女性社員一人ひとりに生き生きと自分らしく働いてほしいという考えのもと、多様な価値観を尊重した人財の育成や、女性社員が活躍しやすい風土の創造と醸成を図る取り組みを行っている。

 

 

(4)リスク管理

当社グループの事業活動において生じる可能性のあるサステナビリティ関連のリスクを含む様々なリスクに適切に対応するため、経営計画の策定にあたってこれらを総合的に評価し、各リスクに係る施策を決定し、遂行する。

当社グループの事業活動に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、その発生を防止し、または、発生時における迅速かつ適切な対応を行うため、社長、役付執行役員または各本部長を担当する執行役員を最高責任者とする管理体制を構築し、必要な施策を講じる。また、その他のリスクについては、それぞれについて規程・マニュアル等を整備し、また、必要な施策を講じることにより、これを管理する。

なお、当社が認識する事業等のリスクに関する詳細は、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」の通りである。

 

(5)指標及び目標

〈カーボンニュートラル実現に向けた指標及び目標〉

当社グループは、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」において以下の目標を、2030年目標として設定した。

 

項目

目標値

CO2削減貢献量

80万t1

カーボンフリー電源取扱量

30万kW※2

都市ガスのカーボンニュートラル化率

5%

 

※1 オール京葉ガスの2013年CO2排出量の約48%に相当

※2 国内外における電源開発、FIT電源、調達等を含む

 

また、当社グループでは、低炭素・脱炭素社会の実現への貢献に向けて「長期経営ビジョン2030」及び「中期経営計画2022-2024」において目標を定めている。詳細は、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」の通りである。

 

〈人財の育成及び社内環境整備に関する指標及び目標〉

当社は、「長期経営ビジョン2030」および「中期経営計画2022-2024」に基づき、経営戦略の早期達成に資する人財を確保(育成・採用)すべく、以下の取り組みを推進する。

 

■女性活躍推進

当社では、新卒採用における女性の応募者・採用割合共に増加傾向だが依然少ない状況であり、人財確保が難しいこと、女性の職域は拡大しているが管理職に占める女性の割合が低いことなどを課題と捉え、女性活躍推進法に基づく行動計画(2022年4月1日~2025年3月31日)を策定し、具体的な取り組み内容を定めることで、さらなる女性の活躍領域の拡大を推進する。

 

(目標1)新卒採用における女性の応募者数採用割合共に30%以上を維持する。

 

2021年

2022年

2023年

応募者数

採用数

応募者数

採用数

応募者数

採用数

総数

487人

19人

657人

16人

477人

24人

うち女性社員

181人

7人

231人

7人

174人

10人

割合

37.2%

36.8%

35.2%

43.8%

36.5%

41.7%

 

※エントリーシートを提出した人数

 

 

(目標2)管理職の増加に資する、指導的地位(5等級以上)に占める女性割合を14%とする。

指導的地位(5等級以上)に占める女性割合

2021年

2022年

2023年

5等級以上社員

666人

669人

675人

うち女性社員

70人

80人

86人

割合

10.5%

12.0%

12.7%

 

※管理職の到達年次の層が少ないため、次期管理職を含めた数値としている。 

※当社の職能資格等級制度は、社員を職務能力に応じて1~10の等級に区分しており、等級に応じて役職の任用や給与等の処遇が決まる。

※指導的地位に占める女性割合が低い要因としては、以下の要因が挙げられる。

・1999年まで労働基準法で女性の夜間勤務が禁止されており夜間工事への立ち会いが不可能であったため女性の採用人数が少なかったこと。

・当時は一般事務に従事する女性が多く、指導的地位に就くにあたり十分な経験を積めていない女性社員が多いこと。

・近年は上記のような制限は撤廃され、女性社員も男性同様の業務に従事することが増えている。従って、今後は指導的地位に占める女性社員が増加することが見込まれる。

 

(目標3)女性のキャリア形成をサポートするために、男女問わず働きやすい環境を整備する。 

取り組み内容(2022年4月~)

1 育児介護休業法の改正を踏まえた上司からの働きかけの強化

2 男性育休取得インタビューの継続

3 役職別研修等で管理職への継続的な教育や、外部セミナー紹介の実施

4 育休取得後の仕事と家庭両立モデルケース紹介(育休取得後3年ほど経過した社員にインタビュー等)

5 女性の健康支援に資するセミナーの開催

 

 

 

■男性育児休業取得推進

 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し、男性の育児と仕事の両立支援の取り組みを推進する。

男性育児休業取得率

2021年

2022年

2023年

育休取得人数

4人

10人

7人

取得可能者における割合

36.4%

43.5%

44.0%

 

※次世代育成支援対策推進法に基づき2021年に定めた目標(目標設定期間:2021年4月1日~2025年3月31日)では、7%以上を掲げていたが、育児介護休業法の改正を踏まえた上司からの働きかけの強化や男性育休取得インタビューの社内イントラへの掲載等の取り組みを推進したことで、計画初年度から大幅に取得率が増加している状況である。

 

(注)「人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」及び「人財の育成及び社内環境整備に関する指標及び目標」については、当社グループに属する全ての会社で実施されているものではなく、連結子会社における記載が困難であることから、提出会社単体で記載している。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) ガス事故

ガスの製造・供給に関する重大な漏洩・爆発事故等が発生した場合、お客さまへの安定供給に支障を及ぼす可能性がある。さらに、お客さまの身体・財産等に被害を与えてしまった場合には、訴訟・損害賠償費用の発生や社会的信頼の喪失等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、ガス製造・受入設備の定期整備、ガス導管の経年対策など、ガス事故や供給支障の防止に取り組むとともに、保安に携わる社員に対する教育・訓練を通じた人財育成を積極的に行っている。また、防災供給センターを中心とした365日24時間の保安体制を構築し、安全の確保に努めている。

(2) 自然災害

当社グループの事業基盤は千葉県北西部に集中しているため、同地区に大規模な地震等の自然災害が発生した場合、導管等の供給設備やお客さまのガス設備に重大な被害が発生し、都市ガスの供給に支障を及ぼす可能性がある。また、その復旧対応に伴う費用が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、ガス導管の耐震化などの設備対策や、災害発生時に該当地区のガス供給を停止することによる二次災害の防止、早期復旧のための災害対応業務及び優先度の高い通常業務を発災直後から適切に実施するための基準整備などを実施している。また、大規模な地震を想定した全社的な訓練を定期的に実施しており、発災時の対応能力の強化に努めている。

(3) 競争の激化

ガス小売自由化等に伴う競争の激化による、お客さまの流出やガス販売価格の値下げ圧力などが、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、電気料金メニューの刷新やお客さまのくらしをより便利に・豊かにするくらしサポートサービスの拡充を実施、また、業務用の客さまに対しては環境性・経済性等の向上に寄与する提案を推進するなど、新規のお客さまの獲得やお客さまの流出防止に努めている。

(4) 基幹情報システムの支障

ガスの製造・供給監視、ガス料金や電気料金の計算等を行う基幹情報システムに重大な支障が発生した場合、お客さまへの安定供給や円滑なサービスの提供が損なわれ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、耐災害性に優れた堅牢な建物への設置、冗長化による耐障害性の高い通信及びシステム、機能維持のための適切な保守及び各種セキュリティ対策等により、システムの安定稼働に必要な対策を実施している。

(5) コンプライアンスに関するリスク

コンプライアンスの徹底については日頃より万全を期しているが、万一、ガス事業法その他の法令等に照らして不適切な行為や、企業倫理に反した行為等が発生した場合には、社会的信頼を喪失し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、社長を委員長とするコンプライアンス委員会を設置しコンプライアンスに関する施策を検討・実施するとともに、年2回の教育研修などを通じ、コンプライアンス意識を着実に浸透させている。

(6) 情報漏洩

公益事業者として、大勢のお客さまの個人情報等の管理には万全を期しているが、万一お客さま情報が社外に流出した場合には、社会的信頼を喪失するとともに、損害賠償費用等が発生する可能性がある。

このため、情報システム利用、情報システムセキュリティ対策及び個人情報保護に関する規程を策定し、事業活動において取り扱う情報の適正な保護・管理、漏洩防止に努めている。また、お客さま情報を取り扱う委託先全箇所に対し、情報の取り扱いに関する順守状況等の確認を定期的に実施しており、当社・委託先双方の個人情報保護に関する意識の向上を図っている。

 

(7) 気候変動とお客さまの消費行動の変容

ガス事業におけるガスの販売量は、気温・水温によって増減するため、暖冬や猛暑等の気候変動により、大きく変動する可能性がある。

また、お客さまのエネルギー消費行動の変容(節約意識の高まり等)が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、工業用などの気温・水温の影響を受けにくい需要や、ガス販売量が低下する夏場の需要を押し上げる効果のあるガス空調需要の拡大に努めるとともに、ガス機器の拡販等によるガス需要の拡大やお客さまの新規獲得に努める。

(8) 原料価格の変動と原料調達の支障

都市ガスの原料であるLNG等は、その価格が原油価格や為替相場等の変動の影響を受けており、その変動によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

また、国際情勢の変化などにより当社の原料調達先におけるLNG輸入に不測の事態が生じた場合、当社の安定的な原料調達に支障を及ぼす可能性がある。

このため、調達先の多様化を実施するとともに、原油価格や為替相場の推移などから最適な原料調達に努めている。なお、原料価格変動の影響については、原料費調整制度の適用によりガス販売価格に反映させることができるが、反映までのタイムラグにより、決算期を越えて業績に影響を及ぼす可能性がある。

(9) 卸電力取引所の取引価格の変動

電力小売事業において、電力調達先かつ供給余力を活用した電力の販売先である卸電力取引所における取引価格は、電気の需要と供給のバランス等により決定されており、需給バランスの状態によっては大きく価格変動する可能性があり、その変動によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、電力調達先や調達方法の多様化を進め、特に価格変動が大きくなるリスクが高い需要期において卸電力取引所からの調達割合を低減させるなど、安定的な電力調達に努めている。

また、卸電力市場価格動向や自社の需給状況を注視するとともに、販売方法の多様化やデリバティブ取引の活用の検討などを行い、収支変動リスクの抑制に努める。

(10)ガス消費機器・設備に関するトラブル

ガス消費機器・設備は維持管理責任を伴うお客さまの資産であるが、当社の責めによる重大なトラブルが発生し、お客さまの身体・財産等に被害を与えてしまった場合には、訴訟・損害賠償費用の発生や社会的信頼の喪失等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、法令に基づく頻度でお客さま宅を訪問し、ガス消費機器の安全に関する調査やご説明を実施し、お客さまのガス保安の強化に努めている。また、保安業務の担当者に対しては、教育・訓練のための専門施設にて、社内資格制度に基づく資格講習や定期的な保安教育を実施することで、保安人財の育成に努めている。

(11)感染症の流行

新型インフルエンザ等感染症が流行した非常時において、ガス事業の継続が困難となる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、新型インフルエンザ等感染症対策に関する業務計画及び事業継続計画を策定し、非常時においても都市ガスの供給を維持するよう対策を実施している。

(12)脱炭素化の進展

世界的に脱炭素化に向けた議論が進められ、国内においても、政府が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言している。国のエネルギー政策変更や新たな環境政策が実施され、競争の激化や当社グループを取り巻く環境が大きく変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、カーボンニュートラルガスの供給、カーボンフリーでんきの導入や再生可能エネルギー電源の開発を進めている。また今後の社会動向を注視するとともに、その動向に合わせた対策を検討・実施していく。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度の我が国経済は、景気の緩やかな回復が見られるものの、先行きについては、世界的な金融引き締めに伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢などの影響にも十分注意する必要がある。エネルギー業界においては、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などを背景に世界的にエネルギー価格が高騰しており、多くを輸入に頼る我が国のエネルギー事業者にとって大変厳しい状況が続いている。

 このような状況のなか、「長期経営ビジョン 2030」で掲げた 2030 年のありたい姿である「“つぎの「うれしい!」”をご提供することで、お客さまの“期待を超える” 存在となる」の実現に向け、3つの事業領域である「地域エネルギー領域」「トータルライフサポート領域」「エリアマネジメント領域」において、それぞれの事業を推進してきた。

当期の売上高については、燃料費調整による販売単価の上方調整などにより電力小売事業の売上高が増加したことなどから、前期に比べ 3.4%増加の122,853百万円となった。売上原価については、電力調達の安定化に向けたコストの増加などにより、前期に比べ3.2%増加の86,446百万円となった。この結果、営業利益は前期に比べ4,253.4%増加の1,704百万円、経常利益は234.8%増加の2,431百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は566.2%増加の1,460百万円となった。

 

セグメント別の業績は、次のとおりである。

① ガス

  当連結会計年度末の都市ガスお客さま件数は前連結会計年度末に比べ1.0%増加し、1,049,909件となった。当連結会計年度のガス販売量は、家庭用については、気温・水温が前連結会計年度に比べ高めに推移したことや、物価高騰による節約意識の高まりなどにより、11.0%減少した。また、業務用については、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限の解除によりお客さま設備の稼働が増加したことや夏場の気温が高く推移したことにより空調需要が増加したことなどで商業用のガス販売量が増加した。一方で、工業用のお客さま設備の稼働が減少したことなどにより、業務用合計では2.9%減少した。この結果、ガス販売量合計では、前連結会計年度に比べ6.7%減少の661百万㎥となった。

 ガス事業の売上高については、ガス販売量の減少などにより、前連結会計年度に比べ0.4%減少の93,224百万円となった。ガス販売量は減少したもののスライドタイムラグの改善による増益の影響(*)等により、営業利益は前連結会計年度に比べ104.3%増加の8,946百万円となった。

(*)ガス原料価格の変動が、原料費調整制度に基づくガス販売単価に反映されるまで一定の時間差があることで、一時的な増減益要因となる。

 

② 電力小売

  電力小売事業の売上高は、燃料費調整による販売単価の上方調整などにより、前連結会計年度に比べ8.0%増加の16,217百万円となった。一方で電力調達の安定化に向けたコストの増加などにより、4,628百万円の営業損失(前連結会計年度は1,069百万円の営業損失)となった。
 

③ 不動産

  不動産事業の売上高は、前連結会計年度に比べ3.3%増加の1,421百万円となった。営業利益は0.8%減少の712百万円となった。

 

 

④ その他

  ガス工事・ガス機器販売等その他の売上高は、ガス機器販売の増加や連結の範囲の変更の影響などにより前連結会計年度に比べ30.1%増加の14,327百万円となった。営業利益は前連結会計年度に比べ22.5%増加の967百万円となった。

(注) 1 本報告書でのガス量はすべて1m3当たり45メガジュール(MJ)換算で表示している。

 

(2) 財政状態

総資産は、前連結会計年度末に比べ13,632百万円増加の161,096百万円となった。これは、投資有価証券の増加などにより固定資産が7,866百万円増加したことや現金及び預金の増加などにより流動資産が5,765百万円増加したことによるものである。

負債は、前連結会計年度末に比べ10,619百万円増加の68,561百万円となった。これは、長期前受金の増加などにより固定負債が10,809百万円増加した一方、支払手形及び買掛金の減少などにより流動負債が190百万円減少したことによるものである。

純資産は、前連結会計年度末に比べ3,012百万円増加の92,534百万円となった。これは、その他有価証券評価差額金が増加したことなどによるものである。

この結果、自己資本比率は55.5%となった。

 

(3) キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ21,415百万円増加の28,330百万円の収入となった。これは、税金等調整前当期純利益が前連結会計年度に比べ1,134百万円増加したことや長期前受金の増減額が前連結会計年度に比べ14,287百万円増加したことなどによるものである。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ9,432百万円支出増加の25,064百万円の支出となった。これは、定期預金の純増減額が前連結会計年度に比べ9,000百万円増加したことなどによるものである。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ12,722百万円減少の2,626百万円の支出となった。これは、長期借入による収入が前連結会計年度に比べ12,200百万円減少したことなどによるものである。

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,039百万円増加の14,159百万円となった。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

当社グループにおいては、ガス事業が生産及び販売活動の中心となっている。

  このため、以下はガス事業セグメントにおける生産及び販売の状況について記載している。

① 生産実績

最近2連結会計年度におけるガスの生産実績は、次のとおりである。

 

製品

項目

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

ガス

製造ガス(千m3)

194,454

163,313

製品ガス仕入(千m3)

524,691

506,744

 

 

② 受注状況

ガスについては、その性質上受注生産を行わない。

 

③ 販売実績

ガスは、導管を通じて直接お客さまに販売している。

最近2連結会計年度におけるガスの販売実績は次のとおりである。

 

項目

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

数量(千m3)

金額(百万円)

数量(千m3)

金額(百万円)

ガス販売

 

 

 

 

 家庭用

327,271

55,474

291,157

55,929

 その他

381,798

37,802

370,571

36,915

709,070

93,277

661,728

92,844

取付ガスメーター数(件)

1,039,263

1,049,909

 

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの販売活動の中心であるガス事業において、その販売量は気温・水温の変動により影響を受ける。家庭用ガス販売の主な用途は暖房・給湯需要であるため、暖冬の場合には販売量が減少し、減益要因となる。さらに、家庭用以外のガス販売では、商業施設やホテル向けを含む商業用や、学校や官公庁向けを含むその他用において、暖房・冷房用の需要が冬場・夏場の気温の変動の影響を受けるため、販売量が増減する。
 また、当社グループが供給するガスの原料であるLNG等の価格は、原油価格や為替相場等の変動の影響を受ける。原料価格の変動は原料費調整制度によりガスの販売価格に反映され、中長期的には回収されるが、その反映までにタイムラグが生じることにより、連結会計年度末時点において経営成績等に影響を及ぼすことがある。

さらに、電力小売事業において、電力調達先かつ供給余力を活用した電力の販売先である卸電力取引所における取引価格は、電気の需要と供給のバランス等により決定されており、需給バランスの状態によっては大きく価格変動する可能性があり、その変動によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主な資金需要は、ガス導管を中心とした設備投資資金であり、そのための資金調達については、自己資金及び金融機関からの借入れを基本としている。
  なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は30,910百万円、現預金残高は26,183百万円である。

 

 

(7) 目標とする経営指標の実績

中期経営計画(2022-2024)の、当社の経営指標の実績は以下のとおりである。

中期経営計画(2022-2024)経営目標

2023年実績

低炭素・脱炭素社会

への貢献に関する目標

事業活動に伴うCO2の削減50%

16.8%

カーボンニュートラルガスの導入1%

0.4%

再生可能エネルギー電源の開発55地点 

64地点

R&Dの推進(脱炭素・SDGsへの貢献)

国内外の再エネ関連事業を対象とした再エネファンドに関する情報交換・投資検討を実施

総合生活産業事業者への進化に関する目標

お客さまアカウント数の獲得136万件

133万件

安全・安心の
取り組みの強化に関する目標

保安の高度化

重大事故ゼロ

スマートメーターの導入開始

実証試験・情報収集継続

レジリエンスへの投資100億円

82億円(2022年-2023年累計)

経営基盤の強化に関する目標

DXの推進(新たな価値の提供)

・基幹システム見直しの為のグランドデザイン策定

・業務の廃止・簡略化の実施

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

(個性を活かし合う組織風土の実現による

 定着率向上)

入社後3年以内離職率:8.8%

経理指標に関する目標

 連結経常利益180億円以上(2022-2024累計)

31億円(2022年-2023年累計)

 

※2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は世界のエネルギー需給構造に大きな影響を及ぼし、当社の事業環境についても、エネルギー調達価格の高騰や激しい変動、また諸物価の上昇に伴うお客さまのエネルギー消費行動の変化による需要減少など、計画策定時とは大きく異なる状況で推移している。これにより、2022-2024累計の経常利益は当初計画数値の180億円を下回る見通しである。

 

(8) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されている。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要な事項については、入手可能な情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づき、会計上の見積りを行っている。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はない。

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、主に当社が、「お客さまの豊かで快適な暮らしを支える新しい価値を創造して提供し続ける」という理念の下、総合エネルギー事業の強化、保安の高度化、ICT技術活用による業務効率、品質の向上、供給基盤の強靭化・導管事業の深化等に資する技術開発・調査研究に取り組んでいる。

当連結会計年度の主な活動状況としては、ガス事業における供給技術の開発として、「ガス工事のコストダウン・環境負荷低減に寄与する非開削工法」の開発や「超高層住宅のパイプスペースにおけるガスメーター設置方式」の調査・研究を行っている。また、ICT技術を活用し、ガス導管内の露点や圧力を遠隔で管理できる「ガス導管内露点・圧力遠隔管理システム」を他事業者と共同で開発し、2023年度日本ガス協会技術大賞を受賞した。

なお、当連結会計年度における研究開発費は全額ガスセグメントに関するものであり、その金額は24百万円である。