第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 会社の経営の基本方針

  当社は、「お客さまの視点に立った企業活動を通じ、より快適な生活と豊かな社会の実現に貢献いたします」を経営理念として、エネルギーの安定供給と保安の確保に努めるとともに、お客さま満足の向上に努めることにより、お客さまから選ばれる企業を目指すことを基本方針としている。

 

(2) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題

現在、人口減少や少子高齢化による社会構造の変化、気候変動や激甚化する自然災害、株式市場からの要請、そして脱炭素社会の実現に向けた潮流など、経営環境が大きく変化している。

こうした状況のなか、当社グループは「中期経営計画2025-2027」に定めたありたい姿である「都市ガスの安定供給・保安確保という社会的使命を担い続けるとともに、新しい価値を広くご提供することで、お客さまの“期待に応える”存在となる」の実現に向け、三つの事業領域の成長と経営基盤の強化に取り組む。

「エネルギー領域」では、安定供給と保安の確保を第一として、レジリエンスの強化や保安人財の育成などに着実に取り組むことで、ガス事業者としての使命を果たしていく。また、環境性の高いエネルギーである都市ガスと電気の拡大をはかるとともに、再生可能エネルギーのさらなる拡大やゼロカーボンシティ実現への貢献などを通じて、カーボンニュートラルの推進に関する地域の牽引役を目指していく。

「ライフサービス領域」では、ライフステージに応じた対面接点とデジタル接点の最適な組み合わせによる接点機会の増大をはかるとともに、くらしサポートサービスやリフォーム事業の強化、業務用サービスの拡大などに取り組むことで、お客さまにとっての“くらしのかかりつけ”を目指していく。

「リアルエステート領域」では、リーフシティ市川(*)でのエリアマネジメントの確立をはかることで、地域・社会の活性化に貢献していく。また、不動産事業のさらなる展開により、収益の拡大を目指していく。

そして、これら三つの事業領域を支える「経営基盤の強化」では、人財戦略の取り組みなどを通じて従業員の行動変容を促し、働きがいを高めることで経営計画の達成と持続的な企業成長を目指すとともに、相互に関連するCXの向上とDXの推進を一体として取り組むことで、お客さまへ新しい価値をお届けしていく。

また、2025年2月に、東京証券取引所における上場市場の再編にあたり示された上場維持基準への適合を達成した。今後も本基準に適合した状態を継続的に維持できるよう、企業価値とガバナンスの向上に取り組む。

(*)当社市川工場跡地開発事業におけるエリア愛称。

 

(3) 目標とする経営指標

当社は、「中期経営計画2025-2027」において、経営目標を以下のとおり設けている。

指標

2027年目標

ありたい姿

都市ガスの安定供給・保安確保という社会的使命を担い続けるとともに、新しい価値を広くご提供することで、お客さまの“期待に応える”存在となる

事業活動に伴うCO2※1の削減

排出量ゼロ

カーボンオフセット都市ガスの導入

2%※2

再生可能エネルギー電源の開発

80地点※3

R&Dの推進

脱炭素・SDGsへの貢献

お客さまアカウント数※4の獲得

145万件

保安の高度化

重大事故ゼロ※5

スマートメーターの導入

導入の推進

レジリエンスへの投資

100億円※6

不動産事業の拡大

10%以上の利益成長※7

CX・DX戦略の推進

・ガス事業における生産性の向上※7

・ペーパーレス化:100%削減

人財戦略の推進

エンゲージメントスコアの向上

資本収益性の向上

ROE 4.5%以上

 

 

 

※1 京葉ガス事業所のガス・電気のエネルギー使用、社用車の走行により排出するCO2

※2 都市ガス販売量に占める割合

※3 累計地点数

※4 ガス(都市ガス・LPG)・電気・その他サービスにおける利用者数

※5 当社ガス事業における設備の故障などに起因する人身事故・大規模供給停止、当社が原因となるガスに起因する爆発事故、お客さま先でのガス機器使用に伴う死亡事故

※6 2025-2027年の累計投資額

※7 2024年比

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)サステナビリティの基本的な考え方

 当社グループは、当社の経営理念「私たちはお客さまの視点に立った企業活動を通じ、より快適な生活と豊かな社会の実現に貢献いたします。」に基づく事業活動を実践している。

 「安全・安心の取り組みの強化」「低炭素・脱炭素社会への貢献」「地域社会の価値創造」「人的資本経営の推進」「CX・DXの推進」を重点取組項目とし、「長期経営ビジョン2030」 に掲げる2030年のありたい姿「“つぎの「うれしい!」”をご提供することで、お客さまの“期待を超える”存在となる」を目指して、「中期経営計画2025-2027」を推進している。

また、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定し、地域の脱炭素化に取り組んでいる。

さらに、「人的資本経営の推進」に向けて、「人」に対する投資が持続的に企業価値を高めていくという「人的資本経営」の考え方を基に「人財戦略2025」を策定し、従業員一人ひとりの力を最大限に活かすための具体的な取り組みを設定した。

当社グループはこれらの取り組みを通じて、社会の持続的発展に貢献できるものと考えている。

 

  (2)ガバナンス

 当社グループにおけるサステナビリティ経営に関するガバナンスは、主に以下の当社の機関が担っている。

① 取締役会

取締役会は、経営上のサステナビリティ関連のリスク及び機会を含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負う機関である。取締役会の構成については第4提出会社の状況 4コーポレート ・ ガバナンスの状況等の 「(1)コーポレート・ガバナンスの概要 」及び「(2)役員の状況」の通りである。

 

② 執行役員会

執行役員会は、サステナビリティに関する取り組みも含めた重要な業務執行にかかわる協議・報告を実施している。執行役員会の構成、活動状況は第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等の 「(1)コーポレート・ガバナンスの概要」 及び「(2)役員の状況」の通りである。

 

③ 監査役会

監査役会は、会社法等諸法令や定款・諸規程等に基づき、サステナビリティに関する取り組みも含めて、取締役の意思決定の過程や職務執行状況の監査を実施している。監査役会の構成、活動状況は第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等の「(1)コーポレート・ガバナンスの概要 」、「(2)役員の状況」及び「(3)監査の状況」の通りである。

 

④ 環境委員会

当社は、環境保全を経営上の重要な活動と位置づけ、社長を委員長とする環境委員会を設置して全社での活動を推進している。

環境委員会では、2022年4月、オール京葉ガスとして“持続可能な社会”を実現するために「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定し、カーボンニュートラル社会の実現に向けた指標と目標を設定した。

 

(3)戦略

〈カーボンニュートラル実現に向けた取り組み〉

当社グループを取り巻く環境や時代のニーズは脱炭素やDXなどにより目まぐるしく変化しており、そのニーズに応え、推進していく取り組みが求められている。その中で、低炭素・脱炭素社会の実現への貢献に向けて、最終消費先でのCO2排出抑制や再生可能エネルギー電源の拡大、カーボンオフセット都市ガスの導入に取り組む。

また、当社グループは、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」において2050年のカーボンニュートラルを実現するため、3つの“Challenge”に取り組む。

Challenge-1 お客さま先における取り組み

 

CO2削減に貢献するエネルギー・サービス・商品を積極的に提供するとともに、より快適で安心なくらしをお届けする。

 

(取り組み内容)

 ・低炭素ガス体エネルギーの供給拡大(カーボンオフセット都市ガスの供給等)

 ・カーボンフリーでんきの活用(カーボンフリーでんきなどを活用したサービス展開等)

 ・省エネの推進(建築物・住宅における省エネ設備の普及促進、一般消費者に対する省エネ情報提供の充実※1等)

 ・地域との連携(自治体との「ゼロカーボンシティの実現に向けた連携に関する協定」の締結等)

 

Challenge-2 脱炭素への手法・新技術等の取り組み

 

国内外で再生可能エネルギーを積極的に開発するとともに、脱炭素・SDGsに資するR&D(研究開発)を推進する。

 

(取り組み内容)

 ・再生可能エネルギーの開発(再生可能エネルギーファンドへの出資等)

 ・脱炭素への貢献手法(Jクレジットの創出・活用、森林保全等)

 ・R&Dの推進(バイオガス活用等)

 

Challenge-3 自社・グループ会社・取引先の取り組み

 

オール京葉ガスの事業活動※2におけるCO2排出量を早期に実質ゼロとし、取引先と連携して積極的にカーボンニュートラルに取り組む。

 

(取り組み内容)

 ・事業活動のカーボンニュートラル化(ペーパーレス化・DX等)

 

※1 電力・ガス会社による省エネに関する情報提供やサービスの充実度、取組状況を基に経済産業省が5段階で評価・公表する「省エネコミュニケーション・ランキング制度」において、当社は都市ガス・電気の2部門で3年連続最高評価の五つ星を獲得(2022年度から2024年度)

※2 オール京葉ガスの事務所のガス・電気・エネルギーの使用、社用車の走行によるCO2排出(クレジット活用含む)

 

 

〈人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略〉

人的資本経営の考え方を基本に、「変化を恐れず、成長とチャレンジを続ける」「学びと多様な価値観への受容の姿勢を持ち、新たな発想を行動につなげる」といった人財の育成・確保を目指して以下の人財戦略を実行していく。「人財戦略2025」の取り組みを通じて、行動変容を促し、従業員自ら成長する意識やチャレンジする意識を醸成することで、従業員の働きがいを高めていく。

 

a) エンゲージメントの把握・向上

 エンゲージメントを高めていくことで、より成長意識や能力の発揮度を高めていく。

  ・エンゲージメント把握のための従業員意識調査(毎年)

  ・当該調査の設問の見直し

 

b) 個の能力の最大化

 生産性を高めるとともに新たな事業領域で活かせる能力を習得させていく。

  ・新規事業の発展に資する能力の獲得・学習機会の拡充

  ・発揮能力に応じた処遇の実施

  ・マネジメント能力向上

  ・職場で役立つ能力の見える化

 

c) 自律的なキャリアの形成

自身のキャリアを上長と共有した上で、それに準じたキャリアを選べるようにすることで、学習意欲につなげられるようにする。

 ・自律的キャリア形成支援制度の整備

 ・キャリアや育成ビジョンの上司部下間での共有

 ・従業員の能力の見える化

 

d) ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの強化

多様性を尊重した働き方や、心理的安全性を高める取り組みを推進し、多様な考え方が融合することで、より強い組織をめざす。

 ・各種ライフイベント対応時の処遇の見直し

 ・心理的安全性の向上

 ・アンコンシャスバイアスの解消

 ・時間や場所に捉われない働き方の推進

 

e) 健康経営の推進

 健康意識レベルを向上させ、全ての従業員が健康に活き活きと働くことで生産性の向上を図っていく。

 ・ヘルスリテラシーの向上

 ・外部評価の活用

 ・健康改善活動の実施

 

f) 人財の確保

 経営戦略実行に必要な人財を確保していく。

 ・採用手段の多様化

 ・キャリア採用者の定着

 ・65歳以降の活躍機会の提供

 ・魅力ある職場環境の維持向上

 ・事業展開に応じた専門人財の確保

 

 

(4)リスク管理

当社グループの事業活動において生じる可能性のあるサステナビリティ関連のリスクを含む様々なリスクに適切に対応するため、経営計画の策定にあたってこれらを総合的に評価し、各リスクに係る施策を決定し、遂行する。

当社グループの事業活動に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、その発生を防止し、または、発生時における迅速かつ適切な対応を行うため、社長、役付執行役員または各本部長を担当する執行役員を最高責任者とする管理体制を構築し、必要な施策を講じる。また、その他のリスクについては、それぞれについて規程・マニュアル等を整備し、また、必要な施策を講じることにより、これを管理する。

なお、当社グループが認識する事業等のリスクに関する詳細は、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」の通りである。

 

(5)指標及び目標

〈カーボンニュートラル実現に向けた指標及び目標〉

当社グループは、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」において以下の目標を、2030年目標として設定した。

項目

目標値

CO2削減貢献量

80万t1

カーボンフリー電源取扱量

30万kW※2

都市ガスのカーボンニュートラル化率

5%

 

※1 オール京葉ガスの2013年CO2排出量の約48%に相当

※2 国内外における電源開発、FIT電源、調達等を含む

 

また、当社グループでは、低炭素・脱炭素社会の実現への貢献に向けて「中期経営計画2025-2027」において目標を定めている。詳細は、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」の通りである。

 

〈人財の育成及び社内環境整備に関する指標及び目標〉

 当社は、「人財戦略2025」において以下の目標を、2030年目標として設定した。

項目

目標値

a)エンゲージメントの把握・向上

エンゲージメントスコアの向上※1 

b)個の能力の最大化

・ガス事業に係る生産性30%向上※2 

・教育の一人あたり受講回数増加※3 

・「上司のマネジメント」に関するスコアの向上※3 

c)自律的なキャリアの形成

「自身のキャリアアップの実現」に係るスコアの向上※3 

 d)ダイバーシティ、

  エクイティ&インクルージョンの強化

・女性役職者10%以上

・男性育児休職取得率向上※3 

・心理的安全性に係るスコアの向上※1 

e)健康経営の推進

・BMI判定の改善

・複数回特定保健指導受診者の割合減少※3 

f)人財の確保

経営戦略実行に必要な人財の確保

 

※1 対2025年比

※2 ガス事業にかかわる一人当たりのお客さま件数(取付ガスメーター数)、対2021年比 

※3 対2023年比

 

 

なお、当社は、「長期経営ビジョン2030」および「中期経営計画2022-2024」に基づき、経営戦略の早期達成に資する人財を確保(育成・採用)すべく、以下の取り組みを推進した。

 

■女性活躍推進

①新卒採用における女性の応募者数採用割合共に30%以上を維持する。

 

2022年

2023年

2024年

応募者数

採用数

応募者数

採用数

応募者数

採用数

総数

657人

16人

477人

24人

444人

23人

うち女性

231人

7人

174人

10人

149人

8人

割合

35.2%

43.8%

36.5%

41.7%

33.6%

34.8%

 

※エントリーシートを提出した人数

 

②管理職の増加に資する、指導的地位(5等級以上)に占める女性割合を14%とする。

指導的地位(5等級以上)に占める女性割合

2022年

2023年

2024年

5等級以上社員

669人

675人

668

うち女性社員

80人

86人

91

割合

12.0%

12.7%

13.6%

 

※管理職の到達年次の層が少ないため、次期管理職を含めた数値としている。 

※当社の職能資格等級制度は、社員を職務能力に応じて1~10の等級に区分しており、等級に応じて役職の任用や給与等の処遇が決まる。

※指導的地位に占める女性割合が低い要因としては、以下の要因が挙げられる。

・1999年まで労働基準法で女性の夜間勤務が禁止されており夜間工事への立ち会いが不可能であったため女性の採用人数が少なかったこと。

・当時は一般事務に従事する女性が多く、指導的地位に就くにあたり十分な経験を積めていない女性社員が多いこと。

・近年は上記のような制限は撤廃され、女性社員も男性同様の業務に従事することが増えている。従って、今後は指導的地位に占める女性社員が増加することが見込まれる。

 

③女性のキャリア形成をサポートするために、男女問わず働きやすい環境を整備する。 

取り組み内容(2022年4月~)

1 育児介護休業法の改正を踏まえた上司からの働きかけの強化

2 男性育休取得インタビューの継続

3 役職別研修等で管理職への継続的な教育や、外部セミナー紹介の実施

4 育休取得後の仕事と家庭両立モデルケース紹介(育休取得後3年ほど経過した社員にインタビュー等)

5 女性の健康支援に資するセミナーの開催

 

 

 

 

■男性育児休業取得推進

 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し、男性の育児と仕事の両立支援の取り組みを推進する。

男性育児休業取得率

2022年

2023年

2024年

育休取得人数

10人

7人

17

取得可能者における割合

43.5%

44.0%

85.0%

 

※次世代育成支援対策推進法に基づき2021年に定めた目標(目標設定期間:2021年4月1日~2025年3月31日)では、7%以上を掲げていたが、育児介護休業法の改正を踏まえた上司からの働きかけの強化や男性育休取得インタビューの社内イントラへの掲載等の取り組みを推進したことで、計画初年度から大幅に取得率が増加している状況である。

 

(注)「人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」及び「人財の育成及び社内環境整備に関する指標及び目標」については、当社グループに属する全ての会社で実施されているものではなく、連結子会社における記載が困難であることから、提出会社単体で記載している。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) ガス事故

ガスの製造・供給に関する重大な漏洩・爆発事故等が発生した場合、お客さまへの安定供給に支障を及ぼす可能性がある。さらに、お客さまの身体・財産等に被害を与えてしまった場合には、訴訟・損害賠償費用の発生や社会的信頼の喪失等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、ガス製造・受入設備の定期整備、ガス導管の経年対策など、ガス事故や供給支障の防止に取り組むとともに、保安に携わる社員に対する教育・訓練を通じた人財育成を積極的に行っている。また、365日24時間の保安体制を構築し、安全の確保に努めている。

(2) 自然災害

当社グループの事業基盤は千葉県北西部に集中しているため、同地区に大規模な地震等の自然災害が発生した場合、導管等の供給設備やお客さまのガス設備に重大な被害が発生し、都市ガスの供給に支障を及ぼす可能性がある。また、その復旧対応に伴う費用が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、ガス導管の耐震化などの設備対策や、災害発生時に該当地区のガス供給を停止することによる二次災害の防止、早期復旧のための災害対応業務及び優先度の高い通常業務を発災直後から適切に実施するための基準整備などを実施している。また、大規模な地震を想定した全社的な訓練を定期的に実施しており、発災時の対応能力の強化に努めている。

(3) 競争の激化

ガス小売自由化等に伴う競争の激化による、お客さまの流出やガス販売価格の値下げ圧力などが、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、お客さまのくらしをより便利に・豊かにするくらしサポートサービスの拡販や、業務用のお客さまに対して環境性・経済性等の向上に寄与する提案を推進するなど、新規のお客さまの獲得やお客さまの流出防止に努めている。

(4) 基幹情報システムの支障

ガスの製造・供給監視、ガス料金や電気料金の計算等を行う基幹情報システムに重大な支障が発生した場合、お客さまへの安定供給や円滑なサービスの提供が損なわれ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、耐災害性に優れた堅牢な建物への設置、冗長化による耐障害性の高い通信及びシステム、機能維持のための適切な保守及び各種セキュリティ対策等により、システムの安定稼働に必要な対策を実施している。

(5) コンプライアンスに関するリスク

コンプライアンスの徹底については日頃より万全を期しているが、万一、ガス事業法その他の法令等に照らして不適切な行為や、企業倫理に反した行為等が発生した場合には、社会的信頼を喪失し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、社長を委員長とするコンプライアンス委員会を設置しコンプライアンスに関する施策を検討・実施するとともに、年2回の教育研修などを通じ、コンプライアンス意識を着実に浸透させている。

(6) 情報漏洩

公益事業者として、大勢のお客さまの個人情報等の管理には万全を期しているが、万一お客さま情報が社外に流出した場合には、社会的信頼を喪失するとともに、損害賠償費用等が発生する可能性がある。

このため、情報システム利用、情報システムセキュリティ対策及び個人情報保護に関する規程を策定し、事業活動において取り扱う情報の適正な保護・管理、漏洩防止に努めている。また、お客さま情報を取り扱う委託先全箇所に対し、情報の取り扱いに関する順守状況等の確認を定期的に実施しており、当社・委託先双方の個人情報保護に関する意識の向上を図っている。

 

(7) 気候変動とお客さまの消費行動の変容

ガス事業におけるガスの販売量は、気温・水温によって増減するため、暖冬や猛暑等の気候変動により、大きく変動する可能性がある。

また、お客さまのエネルギー消費行動の変容(節約意識の高まり等)が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、工業用などの気温・水温の影響を受けにくい需要や、ガス販売量が低下する夏場の需要を押し上げる効果のあるガス空調需要の拡大に努めるとともに、ガス機器の拡販等によるガス需要の拡大やお客さまの新規獲得に努めている。

(8) 原料価格の変動と原料調達の支障

都市ガスの原料であるLNG等は、その価格が原油価格や為替相場等の変動の影響を受けており、その変動によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

また、国際情勢の変化などにより当社の原料調達先におけるLNG輸入に不測の事態が生じた場合、当社の安定的な原料調達に支障を及ぼす可能性がある。

このため、調達先の多様化を実施するとともに、原油価格や為替相場の推移などから最適な原料調達に努めている。なお、原料価格変動の影響については、原料費調整制度の適用によりガス販売価格に反映させることができるが、反映までのタイムラグにより、決算期を越えて業績に影響を及ぼす可能性がある。

(9) 卸電力取引所の取引価格の変動

電力小売事業において、卸電力取引所における取引価格の変動は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、電力調達の多様化やデリバティブ取引の活用などにより、収支変動リスクの抑制に努めている。

(10)ガス消費機器・設備に関するトラブル

ガス消費機器・設備は維持管理責任を伴うお客さまの資産であるが、当社の責めによる重大なトラブルが発生し、お客さまの身体・財産等に被害を与えてしまった場合には、訴訟・損害賠償費用の発生や社会的信頼の喪失等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、法令に基づく頻度でお客さま宅を訪問し、ガス消費機器の安全に関する調査やご説明を実施し、お客さまのガス保安の強化に努めている。また、保安業務の担当者に対しては、教育・訓練のための専門施設にて、社内資格制度に基づく資格講習や定期的な保安教育を実施することで、保安人財の育成に努めている。

(11)感染症の流行

新型インフルエンザ等感染症が流行した非常時において、ガス事業の継続が困難となる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、新型インフルエンザ等感染症対策に関する業務計画及び事業継続計画を策定し、非常時においても都市ガスの供給を維持するよう対策を実施している。

(12)脱炭素化の進展

世界的に脱炭素化に向けた議論が進められ、国内においても、政府が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言している。国のエネルギー政策変更や新たな環境政策が実施され、競争の激化や当社グループを取り巻く環境が大きく変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、カーボンオフセット都市ガスの供給、カーボンフリーでんきの導入や再生可能エネルギー電源の開発を進めている。また今後の社会動向を注視するとともに、その動向に合わせた対策を検討・実施していく。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度の我が国経済は、景気の緩やかな回復が見られるものの、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。エネルギー業界を取り巻く経営環境は、ガス・電力の自由化による競争激化、地政学リスクの高まりによる原料価格の高騰、脱炭素社会の実現に向けた潮流など厳しい状況にある。

 このような状況のなか、当社グループは中期経営計画2022-2024に定めたありたい姿である「さらに多くのお客さまに“新しい価値”を届ける存在となる」の実現に向け、「低炭素・脱炭素社会への貢献」、「総合生活産業事業者への進化」、「安全・安心の取り組みの強化」、「経営基盤の強化」への諸施策に着実に取り組んできた。

当期の売上高については、原料費調整制度による販売単価の下方調整などによりガス売上高が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ 5.9%減少の115,609百万円となった。売上原価については、原料価格下落の影響でガス原材料費が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ6.6%減少の80,704百万円となった。この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ21.4%減少の1,339百万円、経常利益は6.8%減少の2,266百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は特別損益が改善したこと等により、前連結会計年度に比べ11.2%増加の1,623百万円となった。

 

セグメント別の業績は、次のとおりである。

① ガス

  当連結会計年度末の都市ガスお客さま件数は前連結会計年度末に比べ1.1%増加し、1,061,916件となった。当連結会計年度のガス販売量は、家庭用については、お客さま件数が増加した影響などにより前連結会計年度に比べ1.4%増加した。また、業務用については、商業用のお客さま設備の稼働が減少したことなどにより0.2%減少した。この結果、ガス販売量合計では、前連結会計年度に比べ0.5%増加の665,053千㎥となった。

 ガス事業の売上高については、原料費調整制度による販売単価の下方調整などにより、前連結会計年度に比べ7.5%減少の86,208百万円となった。営業費用については、原料価格の下落や諸経費の削減により減少したが、スライドタイムラグによる減益影響(*)等により、営業利益は前連結会計年度に比べ37.9%減少の、5,552百万円となった。

(*)ガス原料価格の変動が、原料費調整制度に基づくガス販売単価に反映されるまで一定の時間差があることで、一時的な増減益要因となる。

 

② 電力小売

  電力小売事業の売上高については、燃料費調整による販売単価の下方調整などにより、前連結会計年度に比べ5.3%減少の15,350百万円となった。営業費用については、電力調達コストの減少等により14.4%減少した結果、2,496百万円の営業損失(前連結会計年度は4,628百万円の営業損失)となった。
 

③ 不動産

  不動産事業の売上高については、リーフシティ市川における土地賃貸収入が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ18.8%増加の1,688百万円となり、営業利益は25.0%増加の890百万円となった。

 

④ その他

  ガス工事・ガス機器販売等その他の売上高については、ガス工事売上高の増加などにより前連結会計年度に比べ2.2%増加の14,641百万円となった。営業利益は前連結会計年度に比べ10.8%増加の1,071百万円となった。

(注) 本報告書でのガス量はすべて1m3当たり45メガジュール(MJ)換算で表示している。

 

(2) 財政状態

総資産は、前連結会計年度末に比べ7,154百万円増加の168,250百万円となった。これは、投資有価証券の増加などにより固定資産が12,114百万円増加した一方で、現金及び預金の減少などにより流動資産が4,960百万円減少したことによるものである。

負債は、前連結会計年度末に比べ812百万円増加の69,374百万円となった。これは、繰延税金負債の増加などにより固定負債が271百万円増加したことや1年以内に期限到来の固定負債の増加などにより流動負債が541百万円増加したことによるものである。

純資産は、前連結会計年度末に比べ6,341百万円増加の98,876百万円となった。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が969百万円増加したことや、その他有価証券評価差額金が5,614百万円増加したことによるものである。

この結果、自己資本比率は56.8%となった。

 

(3) キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ18,321百万円減少の10,008百万円の収入となった。これは、長期前受金の増減額が前連結会計年度に比べて14,475百万円減少したことなどによるものである。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ15,413百万円支出減少の9,651百万円の支出となった。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出が前連結会計年度に比べ3,218百万円増加した一方で、定期預金の純増減額が5,379百万円の収入(前連結会計年度は9,000百万円の支出)となったことなどによるものである。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,604百万円支出減少の1,022百万円の支出となった。これは、長期借入れによる収入が前連結会計年度に比べ2,400百万円増加したことなどによるものである。

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ665百万円減少の13,493百万円となった。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

当社グループにおいては、ガス事業が生産及び販売活動の中心となっている。

  このため、以下はガス事業セグメントにおける生産及び販売の状況について記載している。

① 生産実績

最近2連結会計年度におけるガスの生産実績は、次のとおりである。

 

製品

項目

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

ガス

製造ガス(千m3)

163,313

170,224

製品ガス仕入(千m3)

506,744

505,609

 

 

② 受注状況

ガスについては、その性質上受注生産を行わない。

 

③ 販売実績

ガスは、導管を通じて直接お客さまに販売している。

最近2連結会計年度におけるガスの販売実績は次のとおりである。

 

項目

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

数量(千m3)

金額(百万円)

数量(千m3)

金額(百万円)

ガス販売

 

 

 

 

 家庭用

291,157

55,929

295,339

51,591

 その他

370,571

36,915

369,713

34,232

661,728

92,844

665,053

85,824

都市ガスお客さま件数(*)

1,049,909

1,061,916

 

(*) 都市ガスお客さま件数:取付ガスメーター数

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの販売活動の中心であるガス事業において、その販売量は気温・水温の変動により影響を受ける。家庭用ガス販売の主な用途は暖房・給湯需要であるため、暖冬の場合には販売量が減少し、減益要因となる。さらに、家庭用以外のガス販売では、商業施設やホテル向けを含む商業用や、学校や官公庁向けを含むその他用において、暖房・冷房用の需要が冬場・夏場の気温の変動の影響を受けるため、販売量が増減する。
 また、当社グループが供給するガスの原料であるLNG等の価格は、原油価格や為替相場等の変動の影響を受ける。原料価格の変動は原料費調整制度によりガスの販売価格に反映され、中長期的には回収されるが、その反映までにタイムラグが生じることにより、連結会計年度末時点において経営成績等に影響を及ぼすことがある。

さらに、電力小売事業において、電力調達先かつ供給余力を活用した電力の販売先である卸電力取引所における取引価格は、電気の需要と供給のバランス等により決定されており、需給バランスの状態によっては大きく価格変動する可能性があり、その変動によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主な資金需要は、ガス導管を中心とした設備投資資金であり、そのための資金調達については、自己資金及び金融機関からの借入れを基本としている。
  なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は30,550百万円、現預金残高は20,138百万円である。

 

 

(7) 目標とする経営指標の実績

中期経営計画(2022-2024)の、当社の経営指標の実績は以下のとおりである。

中期経営計画(2022-2024)経営目標

2024年実績

低炭素・脱炭素社会

への貢献に関する目標

事業活動に伴うCO2の削減50%

50%

カーボンオフセット都市ガスの導入1%

0.8%

再生可能エネルギー電源の開発55地点 

72地点

R&Dの推進(脱炭素・SDGsへの貢献)

・米国再エネ関連ファンドへ出資​

・国内系統用蓄電池事業投資検討実施

総合生活産業事業者への進化に関する目標

お客さまアカウント数の獲得136万件

135.3万件

安全・安心の
取り組みの強化に関する目標

保安の高度化

重大事故ゼロ

スマートメーターの導入開始

実証試験・先行導入準備を完了

情報収集継続

レジリエンスへの投資100億円

112億円(2022年-2024年累計)

経営基盤の強化に関する目標

DXの推進(新たな価値の提供)

・基幹システム再構築に向けたグランドデザイン策定、プロジェクト組織設置および再構築の着手​

・業務の廃止・簡略化の結果ペーパーレス75%達成

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

(個性を活かし合う組織風土の実現による定着率向上)

入社後3年以内離職率:7.8%

 

連結経常利益180億円以上(2022-2024累計)

54億円(2022年-2024年累計)

 

※2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は世界のエネルギー需給構造に大きな影響を及ぼし、当社の事業環境についても、エネルギー調達価格の高騰や激しい変動、また諸物価の上昇に伴うお客さまのエネルギー消費行動の変化による需要減少など、計画策定時とは大きく異なる状況で推移したため、目標値を下回った。

 

(8) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されている。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要な事項については、入手可能な情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づき、会計上の見積りを行っている。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はない。

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、主に当社が、都市ガスの安定供給と保安の確保、業務効率化・品質向上等に資する技術開発・調査研究に取り組んでいる。

当連結会計年度の主な活動状況としては、ガス事業における供給技術の開発として、「ガス工事のコストダウン・環境負荷低減に寄与する非開削工法」の開発や「超高層住宅のパイプスペースにおけるガスメーター設置方式」の調査・研究を行っている。

なお、当連結会計年度における研究開発費は全額ガスセグメントに関するものであり、その金額は23百万円である。