(1) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
当社グループは、2022年3月に公表した「東邦ガスグループビジョン」において、当社グループの従業員が共通認識に立ち、新たな時代を切り拓けるよう2050年の社会像を思い描くとともに、中間地点となる2030年代半ばに目指す姿として、「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」「エネルギーの枠を超えたくらし・ビジネスのパートナー」「持続可能な社会の実現をリードする企業グループ」の3つを掲げている。
目指す姿の実現に向けた第二ステップの前半戦にあたる新たな中期経営計画(計画期間:2025~2027年度)を本年3月に策定した。この新たな中期経営計画に沿って、事業・財務・人材の各戦略を統合的に推進し、稼ぐ力を引き上げながら、都市ガス・LPGなどのコア事業から電気・海外などの戦略事業へ経営資源をシフトし、企業価値の向上に向けた事業構造の変革を加速していく。
<東邦ガスグループ 中期経営計画>
■取り巻く経営環境
■全体戦略および数値計画
※ 2023年度末の残高に対する比率。2027年度末の政策保有株式の残高は、自己資本対比で20%未満となる想定。
■財務戦略
※1 営業キャッシュ・フロー 600億円程度(2027年度)
政策保有株式等の売却 300億円程度(2025~2027年度累計)
※2 D/Eレシオ 上限目安0.8倍
■事業戦略
※1 地域を基点とした課題解決型ビジネスの総称。くらし・行政サポート、エンジニアリング、まちづくり・不
動産開発、情報サービス、アグリ・フード等の事業群
※2 グリーン水素等の非化石エネルギー源を原料として製造する合成メタン
■人材戦略(戦略事業との連動)
事業戦略実現に資する人材マネジメント、健康経営やダイバーシティ、柔軟な働き方の推進を通じて、企業価値の向上や目指す姿の実現の原動力となる従業員一人ひとりの成長を支え、その輝きや活力を創出・向上する。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下の通りである。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス、戦略、リスク管理並びに指標及び目標
当社グループは、「東邦ガスグループ サステナビリティ方針」のもと、環境性に優れたエネルギーの安定的な供給と新たな価値の共創を通じて、持続可能な社会の実現に貢献すべく、サステナビリティに関するガバナンスの強化と適切なリスク管理に努めている。
また、「東邦ガスグループビジョン実現のための価値創造の取組みテーマ(マテリアリティ)」を以下の通り特定の上、当社グループの事業活動を通じ、社会的価値と経済的価値の両立を目指した価値創造に取り組んでいる。
<当社グループのマテリアリティ>
1.カーボンニュートラルの推進
2.多様なエネルギーとサービスの提供
3.安全・安心かつ安定したエネルギーの供給
4.社会課題解決を通じた地域への貢献
5.働きがい・働きやすさの向上とダイバーシティの推進
6.コンプライアンス・ガバナンスの強化
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ推進部担当執行役員を委員長とし、当社と主要関係会社の取締役・部長等で構成する「サステナビリティ委員会」を設置し、マテリアリティを含むサステナビリティに関する方針・目標等に係る事項等について審議するとともに、必要に応じて経営会議及び取締役会に付議することとしている。
また、当社グループが重要な経営課題と認識している気候変動に関しては、当社の代表取締役社長を委員長とし、当社の関連部署の担当執行役員等で構成する「カーボンニュートラル推進委員会」を設置。カーボンニュートラルに関わる方針・計画の策定をはじめとする重要な事項について、その方向性を定めるための議論をしている。さらに、気候変動に関しては、リスクや機会、戦略、リスク管理、指標報告などの重要事項について、経営会議を経て、取締役会へ付議し、取締役会はそれらの執行状況を監督している。
②戦略
当社グループでは、「東邦ガスグループ 中期経営計画2025-2027」において、マテリアリティを踏まえた「アク ションプラン」※を策定している。
※当社ウェブサイトに公表している
③リスク管理
当社グループでは、気候変動を含むサステナビリティ全般に関するリスクや機会について、「サステナビリティ委員会」に付議している。また、リスク管理規程に基づき、グループ全体のリスク要因を毎年洗い出した上で、リスクごとに主管部署が対応策を検討し、リスク低減に計画的に取り組んでいる。
総合的な進捗状況・評価等は、経営会議を経て、取締役会に年1回以上付議し、取締役会は当社グループのリスクの管理状況とマテリアリティの執行状況を監督している。
④指標及び目標
当社グループでは、指標及び目標として「マテリアリティに関する主な目標」※を設定し、進捗に関して「サステナビリティ委員会」並びに経営会議を経て、取締役会に付議している。
※当社ウェブサイトに公表している
(2) 気候変動への取組み
当社グループは、2020年4月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)へ賛同し、TCFDの提言に沿った気候変動への取組みを推進してきており、2021年7月には「東邦ガスグループ 2050年カーボンニュートラルへの挑戦」を策定・公表している。
引き続き、お客さま先の低・脱炭素化を推進するとともに、将来のガス自体の脱炭素化を見据えた技術開発に取り組む。また、水素の普及拡大、電気の低・脱炭素化にも取り組み、カーボンニュートラルへの移行を推進する。
①戦略
当社グループでは、TCFDの提言に沿って、将来の気候変動によるリスクや機会、対応する戦略を把握・評価するため、2050年断面のシナリオ分析を実施している。
シナリオ分析については、外部シナリオの中から、気温上昇を1.5℃に抑える「1.5℃シナリオ」と低炭素化が進まない「4℃シナリオ」を選定。選定した2つのシナリオから導かれる2050年の社会像に基づき、リスクと機会の洗い出しを実施。リスク・機会の双方に関して対応策を講じることで、レジリエンス性の向上に取り組んでいる。
財務影響が比較的大きいリスクとしては、省エネの進展及び熱分野の過度の電化シフトが起こる場合などが挙げられる。また、財務影響が比較的大きい機会としては、脱炭素技術(e-methane・水素等)の普及などが挙げられる。
なお、これらのリスクや機会への対応策は、当社ウェブサイトに公表している「東邦ガスグループ 2050年カーボンニュートラルへの挑戦」で整理している。また、戦略に関する詳細な情報については、当社ウェブサイトに公表している「統合レポート2024」の
②指標及び目標
当社グループでは、指標及び目標として環境行動目標等※1を設定し、これらの進捗は、経営会議を経て、取締役会に付議し、取締役会はそれらの執行状況を監督している。
なお、GHG(温室効果ガス)排出量の2023年度実績※2は、スコープ1が5万2千トン、スコープ2が5万6千トン、スコープ3が1,008万4千トンであった。
※1 当社ウェブサイトに公表している
※2 内訳及び算定基準等は、当社ウェブサイトに公表している
(3) 人材育成方針、社内環境整備方針
①戦略
当社グループは、企業理念の中で示す経営方針の1つとして「意欲と能力の発揮を重視し、ひとを育てます」と掲げており、従業員一人ひとりが最大限に能力を発揮し、成果や成長に繋げられるよう、「人材マネジメント」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「柔軟な働き方・生産性向上」「安全・健康管理」の4つの観点から、制度の拡充や組織風土の醸成に取り組み、持続的な企業価値の向上を実現する。
<人材の育成に関する方針>
当社グループは、2022年3月に公表した「東邦ガスグループビジョン」において、2030年代半ばに目指す姿として「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」「エネルギーの枠を超えたくらし・ビジネスのパートナー」「持続可能な社会の実現をリードする企業グループ」の3つを掲げている。
このグループビジョンの達成に向けては、これまでの延長ではない新たな取組みに挑戦し、事業構造を変革していかなければならない。そのためには、当社グループ一丸となった挑戦をしていく必要があり、その挑戦の主体は、従業員一人ひとりであると考える。
そこで、当社グループは、従業員の挑戦を後押しするため、人材への投資を拡充するとともに、各従業員がパフォーマンスを最大限発揮できる環境を整備していく。また、コア事業を支える人材とともに、戦略事業や業務変革・効率化など、変革期の事業運営を牽引するマネジメント力や専門性を備えた人材の採用、育成、活躍促進に注力することで、「東邦ガスグループビジョン」の達成に向けた人材育成を実施していく。
<社内環境整備に関する方針>
ア.人材マネジメント
採用や育成・配置、公正かつ適正な評価・処遇を通じて、コア事業を支える人材、変革期の事業を牽引する
マネジメント力や専門性を備えた人材の活躍を促進する。
・コア事業の現場力強化に向け、計画的な人材確保と育成に取り組む。
・変革を牽引する戦略事業(電気・海外事業)やDX推進を担う人材を育成するとともに、より専門性の高い
人材を確保するためのコースを新設する。
・若手の早期役職登用、グループ内外への出向やMBA留学等を通じ、将来の経営人材の育成を進める。
イ.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
当社グループが企業価値を向上させ持続的に成長するためには、様々な分野の知識や経験、価値観を持つ人
材が意見を出し合うことで、新たな発想を生み出すことが必要との認識のもと、多様な人材を確保し、特性に
合わせた支援を行うことで、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進する。
・女性、育児・介護者、シニア、障がい者など、各々が最大限に能力を発揮できる制度や環境を構築する。
・その構築の土台となる心理的安全性の高い組織づくりに取り組む。
ウ.柔軟な働き方・生産性向上
働き方に関する制度の見直しや業務のオンライン化を進めることで働き方の柔軟性を高め、従業員の仕事と
生活の充実、および一層の生産性向上を図る。
・テレワークや時間単位の休暇など、働きやすさの向上に資する制度の整備と、活用しやすい風土の醸成に取
り組む。
・デジタル化の推進や、グループ会社間でのコーポレート機能の支援を通じて、グループ全体の生産性を高め
る。
エ.安全・健康管理
「働く人の安全と健康」は企業としての基盤であると考え、当社グループ全体で安全衛生活動の推進に取り組
み、従業員の安全と健康の確保とともに、安心・快適な職場づくりに努める。
・交通災害や作業災害の防止に加え、健康診断やストレスチェックを実施し、従業員の安全確保と健康維持に
努める。
・健康経営に取り組むことで、従業員の健康増進とパフォーマンス向上に努める。
・食堂や会議室のリニューアル、IT環境の充実等を通じて、快適な職場環境を形成する。
②指標及び目標
以下の指標及び目標を用いて、それぞれの人材戦略が推進されているかを継続的に測っていく。
なお、各指標のデータ管理及び具体的な取組みは、連結グループに属する全ての会社では行われておらず、連結グループにおける記載が困難であるため、当社及び一部の連結子会社の実績を記載している。
(注)1 各部署においてDX推進を主導する担当者に、以下の3段階による教育プログラムを実施することで育
成した「DX推進人材」の人数。
<教育プログラム>
①ベース教育(基礎知識) ②コア教育(実務上の課題解決による実践教育)
③オプション教育(システム開発・RPAスキル等)
2 総合職採用人数に占める女性の割合。
3 子が生まれた男性従業員のうち、育児休業や育児目的の特別休暇を取得した従業員の割合。なお、育児
休業を取得した割合は67.1%。
4 従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践するもの。従業員等への健康投資を行うこと
で、活力向上や生産性の向上をもたらし、業績向上につながると期待される。
5 ㈱リンクアンドモチベーションによるエンゲージメント調査結果より。
有価証券報告書に記載した事業の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの経営成績及び財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクとしては、以下のようなものがある。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものである。
当社グループの主要な事業である都市ガス・LPG・電気事業は、当地域の社会・経済動向のほか、猛暑や暖冬等の気候変動、小売全面自由化に伴う競争環境の変化、省エネルギーの進展や産業構造の変化、お客さまのエネルギー選好の変化等により、販売量が変動し、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。なお、2025年4月に発表された米国の関税措置の動向によっては、当地域のエネルギー需要が影響を受ける可能性がある。
当社グループは、新規需要開発を推進するとともに、新サービス等による付加価値の提供やデジタル技術活用等により、当地域におけるトータルエネルギーシェアの拡大を進めている。
都市ガスの原料であるLNG(液化天然ガス)の価格は、原油価格・為替相場等の変動の影響を受ける。原料価格の変動は、原料費調整制度によって一定の範囲内でガス販売価格に反映されることから業績への影響は緩和されるが、反映までのタイムラグにより期間収支に影響を受ける可能性がある。
また、LNG調達先との契約更改、価格交渉の動向により原料価格が変動した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
電力調達は発電事業者・卸電力取引市場等からの調達と自社電源を組み合わせているが、調達価格が変動した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、発電事業者との相対契約の弾力性向上に取り組むとともに、調達比率の最適化を図り、調達コストの低減と収支安定化のバランスを図っている。
当社グループの保有する株式・年金資産等は株価・金利等が変動することによって、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、市場金利の動向により調達金利が変動することによって、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。ただし、有利子負債の大部分は固定金利で調達した長期借入金や社債であり、短期の金利変動による影響は限定的である。
変動金利での調達は、一部に金利スワップ取引を利用して固定化を行っている。
2050年カーボンニュートラルに向けた動きが広がり、新たな環境規制や制度の導入等により追加的な対応や費用負担が発生した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、2021年7月、「東邦ガスグループ2050年カーボンニュートラルへの挑戦」、2022年3月、「東邦ガスグループビジョン」、2025年3月、新たな中期経営計画(2025~2027年度)を策定し、カーボンニュートラルの実現に向けた対応の方向性と具体的な取組みを示した。中期経営計画期間では、海外プロジェクトの案件探索‧事業性検討、国内e-methane実証(知多e-methane製造‧地域CO2循環モデル)、CO2分離回収技術の開発、CO2活用(CCU)・貯留(CCS)の事業性検討、自治体や協業先と連携したカーボンクレジットの創出‧案件探索、知多緑浜水素製造プラントを核とした水素供給‧需要創出に取り組む。
(6) 自然災害等による影響
大規模な自然災害により、製造設備や供給設備、お客さま設備に広範に被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、不測の大規模停電等が発生した場合にも、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、自家発電設備や防消火設備等の設置に加え、防災体制の整備や工業用水等の備蓄など、災害の影響を最小限に止める対策を実施するとともに、ガス導管の耐震化など製造設備や供給設備等の耐震性の向上を図っている。
都市ガスの主な原料であるLNGは海外から輸入しているため、輸入先のカントリーリスクや天然ガス生産設備・液化設備での操業上のトラブル、LNG船の運航上でのトラブル等により、原料が長期にわたり調達できない場合には、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
LNGの低廉かつ安定的な調達に向け、当社グループは、LNG調達地域の分散化により安定的な調達体制構築や受入基地の柔軟な運用に取り組んでいる。また、上流権益・中流事業や、LNG船への出資等により、調達するLNGのバリューチェーンへの関与を強化している。
事故等による大規模な設備トラブルに伴い都市ガスの製造、供給に重大な支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、工場やガス導管等の高経年設備の修繕、他工事による損傷防止、ガス導管の定期的な点検を実施するとともに、緊急保安体制を整備することで、一層のリスク低減に努めている。
(9) 情報システム支障による影響
システム障害やサイバー攻撃等により基幹となる情報システムに重大な支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、システムの維持管理を徹底するとともに、各種のセキュリティ対策を実施し、サイバー攻撃対策訓練の実施やセキュリティ規程類に基づくチェックを継続的に行っている。
ガスの消費機器・設備に関する重大なトラブルが生じた場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、ガス消費機器の調査、安全点検、メンテナンス業務等の品質向上とともに、安全使用のための周知や安全機器への取替促進を行っている。
当社グループ及び委託先が取り扱う商品・サービス等に関する品質にトラブルが発生した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、社内外の研修等を通じて、当社グループ及び委託先が取り扱う商品・サービス等の品質向上に取り組んでいる。
調達先の工場操業停止等により商品・資機材等に重大な納入遅延が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、調達先と連携し生産及び納期状況を確認するとともに、調達多様化に向けた代替調達先の調査・検討を実施している。
(13) 投資環境の変化による影響
原油価格等の市況の変化や景気動向等によっては、国内外投資について、将来の収益性の低下等により、適切に回収されず、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、海外投資については、事業を行う各国における法規制や商慣習等の変化により、事業運営の遅延や停滞、費用の増加などが発生する可能性がある。
当社グループは、案件ごとに収益性やリスク等の事業性を慎重に吟味の上、必要な投資を行っている。また、市況の変化や景気動向等を注視し、減損の兆候がある場合、減損損失の認識・測定の要否に関する判定を行っている。
法令、約款、若しくは企業倫理や社会的規範に反する行為が発生した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、コンプライアンス委員会を設置して、コンプライアンス活動の進捗確認と課題把握を行うとともに、教育・啓発や点検・調査活動を推進し、コンプライアンスの徹底を図っている。また、コンプライアンスに関する相談窓口を社内外に設置している。
なお、当社は、2024年3月4日、電力・ガスの営業行為において、公正取引委員会から独占禁止法に基づく警告等を受けた。また、2024年7月26日、経済産業大臣からガス事業法に基づく業務改善命令、電力・ガス取引監視等委員会から業務改善指導等を受領し、2024年8月23日、当該業務改善命令等に対応する業務改善計画を提出した。当社は同様の事例を二度と発生させないよう、法令遵守及び再発防止を徹底する。
当社グループが取得、管理しているお客さまの個人情報が外部に流出した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、個人情報保護委員会を設置して、個人情報保護に関する活動計画等の審議を行うとともに、教育・啓発や自主監査の活動を推進し、情報管理の徹底に取り組んでいる。
新型コロナウイルス等の感染症が大規模に流行した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当連結会計年度(以下、当期という。)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
(1)経営成績
当地域の経済は、個人消費をはじめ総じて緩やかな回復を続けた。しかしながら、その先行きは、米国の政策動向の影響、ウクライナや中東の情勢など様々な不確実性を伴い、注視が必要な状況にある。
また、昨年1月の能登半島地震の発生、8月の南海トラフ地震臨時情報の発表などにより、エネルギーの安定供給と災害対策の重要性が改めて認識された。政策面では、国の第7次エネルギー基本計画において、将来にわたり天然ガスを重視する方針とともに、カーボンニュートラル化に向けて水素やe-methane等を活用していく方向性が示された。
このような状況のもと、当社グループは、安全・安心、安定供給を確保しつつ、カーボンニュートラルの推進、エネルギー事業者としての進化など前中期経営計画に沿った取組みを着実に推進してきた。
当期末のお客さま数は、ガス・LPG・電気の合計で前期末と比べて8万7千件増加し308万6千件となった。ガスのお客さま数は、同3千件増加し175万件となった。LPGのお客さま数は、同3万件増加し64万5千件となった。電気のお客さま数は、同5万3千件増加し69万1千件となった。
ガス販売量は、前期と比べて0.6%減少し33億5千万㎥となった。用途別では、家庭用は、夏場の気温が高めに推移した影響等により同0.2%の減少となった。業務用等は、お客さま先設備の稼働が前期を下回ったこと等により同0.7%の減少となった。LPGの販売量は同1.9%増加し47万4千トン、電気の販売量は、お客さま数の増加や夏場の気温が高めに推移した影響等により同9.2%増加し28億1千5百万kWhとなった。
売上高は、前期と比べて230億2千4百万円増加し6,560億1千万円となった。売上原価は、同217億1千5百万円増加し4,831億6千5百万円となった。供給販売費及び一般管理費は、同40億1千8百万円増加し1,419億5千7百万円となった。これらの結果、経常利益は前期と比べて83億8千5百万円減少し324億1千2百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同18億4千9百万円減少し254億5千4百万円となった。
当期は、原料費調整制度による原材料費と売上高の期ずれ差益が縮小したことなどにより、前期と比べて減益となった。
<参考>平均気温・原油価格・為替レート
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。
当期末の都市ガスのお客さま数は175万件(前期末比3千件増)となった。
販売量は33億5千万㎥(前期比0.6%減)となり、用途別では、家庭用は夏場の気温が高めに推移した影響等により0.2%減、業務用等はお客さま先設備の稼働が前期を下回ったことにより0.7%減となった。
ガス事業の売上高は、4,292億9千9百万円(前期比2.4%増)となった。
当期末のLPGのお客さま数は64万5千件(前期末比3万件増)となり、販売量はお客さま数の増加に伴い47万4千トン(前期比1.9%増)となった。
LPG・その他エネルギー事業の売上高は、1,016億1百万円(前期比0.1%増)となった。
<電気>
当期末の電気のお客さま数は69万1千件(前期末比5万3千件増)となり、販売量はお客さま数の増加や夏場の気温が高めに推移した影響などにより28億1千5百万kWh(前期比9.2%増)となった。
電気事業の売上高は、960億1千8百万円(前期比8.4%増)となった。
その他事業の売上高は、空調設備工事の受注増などにより611億1千2百万円(前期比12.4%増)となった。
(単位:百万円、%表示は対前期増減率)
当社グループにおいては、当社及び子会社が行うガス事業が生産及び販売活動の中心であり、外部顧客に対する売上高及び営業費用において連結合計の大半を占めている。ガス事業以外のセグメントにおける生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であるが、生産規模は小さく、また受注生産形態をとらない製品も多い。このため以下は、ガス事業セグメントについて記載している。
当社及び水島瓦斯㈱においてガスの生産を行っている。
最近2連結会計年度のガスの生産実績は次のとおりである。
ガス事業については、その性質上受注生産は行っていない。
当社は愛知県、三重県、岐阜県で、水島瓦斯㈱は岡山県内においてそれぞれガスの販売を行っている。
最近2連結会計年度におけるガス販売実績は次のとおりである。
総資産は、前期末比242億4千1百万円の増加となった。これは、現金及び預金が増加したことなどによる。
負債は、前期末比326億9千8百万円の増加となった。これは、社債が増加したことなどによる。
純資産は、前期末比84億5千7百万円の減少となった。これは、自己株式を取得したことなどによる。
これらの結果、自己資本比率は前期末の62.2%から59.1%となり、総資産当期純利益率(ROA)は、前期の 3.8%から3.4%となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上などにより、830億9千6百万円の収入となった。前期比では、357億2千万円の収入の増加となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資をはじめとして451億6千5百万円の支出となった。前期比では、30億8千7百万円の支出の増加となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いなどにより、187億6千9百万円の支出となった。前期比では、45億2千5百万円の支出の増加となった。
これらの結果、当期における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べ196億4千7百万円増加し、450億7千9百万円となった。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりである。
資金調達については社債、コマーシャル・ペーパー及び銀行等金融機関からの借入により行っている。社債については、国内無担保社債を昨年10月に200億円発行した。なお、当期中の社債償還はない。当期末の借入金は、前期末に比べて1億2千6百万円増加した。また、適時に資金繰計画を作成・更新するなどの方法により、流動性リスクを管理している。
前中期経営計画(2022~2025年度)では、収益性、効率性、健全性の経営目標を掲げ、3年目となる当期は、エネルギー安定供給の責務を果たしつつ、カーボンニュートラルの推進、エネルギー事業者としての進化を着実に進めてきた。
具体的な活動としては、カーボンニュートラル関連では、知多市と連携したバイオガス由来のCО2を活用したe-methane製造実証や知多緑浜工場における水素製造プラントの運転を開始した。また、株式会社JERAと共同での火力発電所への投資を決定し、インドネシアでの天然ガス販売事業をはじめ複数の海外事業に参画した。加えて、地域共生活動としても新たに東海三県の11の自治体と包括連携協定を締結することで、累計19自治体まで拡大し、脱炭素化や災害対策など、地域の持続性を高める取組みを推進した。
○目標とする経営指標
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。
この連結財務諸表作成にあたり、見積りが必要な事項については、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
(注) 本書面でのガス販売量は、すべて1㎥当たり45メガジュール換算で表示している。
特記すべき事項はない。
当社グループでは、カーボンニュートラル関連技術及び、多様な価値の創造に資するデジタル技術の開発・活用を強化・推進するとともに、天然ガスの普及・促進のためにその高効率・高度利用や、安定供給・保安の確保に向けた研究開発に継続的に取り組んでいる。また、事業領域拡大に資する新たな研究開発にも順次着手している。
現在、当社グループの研究開発は、当社のイノベーション推進本部等において行っている。
具体的には以下のとおりである。
<カーボンニュートラル関連技術、デジタル技術の開発・活用>
CO2分離回収技術、メタネーション技術、ガス差圧発電システム等の未利用エネルギー活用技術、水素燃焼バーナの開発、緑浜水素プラントの整備、水素ステーションの整備・運営、蓄電池等を活用したバーチャルパワープラントの開発・実証、CCUSの調査を実施している。また、デジタル技術を活用した新サービスの開発やマーケティング、機械学習等を活用した予測・最適化技術の開発、業務プロセスの変革に資する生成AI等の活用技術の開発、新規技術・新サービスの創出を図るオープンイノベーションの活用等を推進している。
<天然ガスの高効率・高度利用>
家庭用分野では、エネファームの機能向上や低コスト化などに取り組んでいるほか、快適な生活を実現する温水機器や厨房機器などの商品性向上、調理・入浴等に関する研究に取り組んでいる。
業務用分野では、電力負荷の平準化にもつながるガス空調システムとして、ガスエンジンヒートポンプの新機種開発などに取り組んでいる。
<安定供給・保安の確保>
安定供給・保安の確保や安全・安心の一層の向上を目指して、ガス管劣化予測技術の高度化や、製造・供給設備の適切な維持管理に資する研究開発等に取り組んでいる。
また、ガス供給のコストダウンに向けて導管工事を効率的に行う非開削工法、導管の検査や修理などを効率的に実施する技術、製造設備の改良などの開発を行っている。
<事業領域拡大に向けた技術開発>
「くらし」や「ビジネス」の課題解決に繋がる技術・商品開発に取り組んでいる。農業分野では、名古屋大学発スタートアップ企業の株式会社TOWINGと、「サステナブルな次世代農業を起点とする超循環社会」の実現に向けた業務提携により、高機能バイオ炭「宙炭」や宙炭製造プラントの研究開発などに取り組んでいる。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、