2024年度のわが国経済は、物価高で個人消費が伸び悩んだものの、円安の進行による好調な企業収益や人手不足下でのデジタル化・省力化需要を背景とした設備投資の増加、インバウンド需要の拡大等により、緩やかな回復傾向が続きました。
エネルギーに関しては、国内における人口減少や工場の海外移転等による需要の減少に加えて、電力・ガス小売全面自由化により、市場の競争は激しい状況が続いており、エネルギー資源の需給バランスの不安定化や激しい価格変動等、LNG調達環境の不確実性等のリスクはさらに高まっております。また、気候変動問題に対応する国内外におけるカーボンニュートラル潮流の加速やデジタル化の進展、価値観の多様化、労働人口の減少、自然災害の甚大化、国際情勢の悪化等、経営環境の変化はスピードを増している一方、カーボンニュートラル社会実現へのトランジションエネルギーとして、CO2排出量の少ない天然ガスに対する期待が高まっております。
こうした経営環境のもと、当社グループは、「暮らしとビジネスの“さらなる進化”のお役に立つ企業グループ」として、天然ガス・電力・LPG等のエネルギーとその周辺サービスや、都市開発・材料・情報等のエネルギー以外の様々な商品・サービスを通じて、「お客さま価値」「社会価値」「株主さま価値」「従業員価値」の創造を目指します。そのためには、持続的な成長を実現することが最大の経営課題であると認識し、2017年に長期経営ビジョン2030「Going Forward Beyond Borders」を、2024年には新中期経営計画2026「Connecting Ambitious Dreams」を策定しました。
また、2021年に、当社グループの事業活動におけるカーボンニュートラルの実現の方向性や取り組みを示した「カーボンニュートラルビジョン」を策定し、2023年には、2030年までのエネルギートランジションに向けた考え方や具体的な方策を示した「エネルギートランジション2030」を、2025年2月には、2050年に向けたロードマップとソリューションを示した「エネルギートランジション2050」を、それぞれ策定しています。
当社グループは、これらのビジョン・計画に沿って、時代を超えて選ばれ続ける革新的なエネルギー&サービスカンパニーとなることを目指します。また、経営環境の変化に対応しながら、安定供給やトランジション期における低炭素化等「今日の安心」をまもり続けるとともに、カーボンニュートラル等社会課題の解決が進む「未来の日常」の創造に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
(3) 経営指標
中期経営計画2026では、各事業の収益性向上や財務健全性の維持、事業の成長に応じた株主還元の実現を掲げ、着実に取り組みを進めていきます。
① 収益性、成長性
ROIC(投下資本利益率)(※)5%程度、ROE8%程度を目標に掲げ、資本効率の向上を通じて、各事業の成長力の向上を目指します。
※ (経常利益+支払利息-受取利息-法人税等)÷(有利子負債+自己資本)
有利子負債は、当社にリスクのないリース負債を除きます。
② 財務健全性
連結自己資本比率(※)45%以上、連結D/E比率(有利子負債/自己資本)(※)0.8以下を目指します。
※ 利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)の資本性50%を調整
③ 株主さまへの還元
原則、減配を実施せず、増配又は維持を目指す累進配当を基本に据えて、株主資本を基準に配当を行う株主資本配当率(DOE)3%を目指します。
中期経営計画2026では、重点戦略「3つの約束」として、カーボンニュートラルと天然ガスの高度利用の両輪で社会課題の解決を進める「ミライ価値の共創」、多様な人材が集い切磋琢磨し合う企業文化を目指す「従業員の輝き向上」、資産価値の最大化を図るアセットライトな経営意識の徹底を中心とする「経営基盤の進化」を掲げます。これらの取り組みを通じて、社会課題の解決に資する価値創造と、「国内エネルギー事業」「海外エネルギー事業」「ライフ&ビジネス ソリューション事業」を3つの柱とした、将来の経営環境の変化に対応するポートフォリオ経営の実践を目指します。それらの実現に向け、以下のとおり、課題に取り組みます。
多数の生産者から分散して調達することにより、天然ガス等の原燃料の安定確保に努めるとともに、契約価格指標の多様化等により、市場競争力を高める原燃料調達を目指します。
また、原燃料調達の不測の事態に対しては、トレーディング等で培ったノウハウを活かし、迅速かつ柔軟に原燃料の確保を図ります。
新規電源の開発、卸電力市場やアライアンス先からの調達等を通じ、競争力のある電源ポートフォリオの構築を進めます。特に再生可能エネルギーは、カーボンニュートラル化に向けて開発や事業参画を推進し、協業等を通じて調達先の拡大や案件取得を進めていきます。
安全かつ安定的な操業を最優先にして、ガス製造・供給設備、発電設備等の維持・増強・改修、地震・津波等の自然災害対策及び感染症の流行等の事態への対策等、安定供給とレジリエンスの向上に継続的に取り組みます。また、万一のガス漏れ等の緊急時への対応を引き続き行い、お客さま先の保安の確保に努めていきます。
燃料電池等のガスコージェネレーションシステムやガス冷暖房の普及、電力・LPG販売の拡大、「D-Lineup」等の提案メニューの拡充、分散型電源と再生可能エネルギーを組み合わせたエネルギーネットワークの構築等を通じて、カーボンニュートラル化やレジリエンスの向上といった社会課題の解決に貢献していきます。また、デジタルを活用したライフサービスプラットフォームの「スマイLINK」や「住ミカタ・サービス」、リノベーション等のライフサポートサービス、建物・設備の管理やメンテナンス、空調・換気、水処理、省エネルギーや設備稼働状況等の見える化等、エネルギー周辺サービスを拡充するとともに、固定通信サービスや冷蔵食品の定期宅配サービスの「FitDish」、お客さまのライフスタイルやビジネスニーズに応じたエネルギー料金メニューも総合的に提供することで、お客さまの快適な生活の実現やビジネスの発展に貢献していきます。さらに、各地のエネルギー事業者を含めた様々なパートナーとの連携等を通じ、幅広くマーケタービジネスを拡大していきます。
天然ガス火力発電所等の新規エネルギーインフラ開発を推進します。また、LNGの導入等を検討しているお客さまに対し、これまでの事業展開で培ったノウハウを活かし、ニーズに応じたソリューションを提案することでエンジニアリング事業を推進していきます。
一般ガス導管事業者として、託送供給の中立性・透明性の確保や利便性の向上を図りつつ、地域社会や需要家のニーズに応えながら、都市ガス需要の維持・拡大に継続的に取り組みます。
天然ガス等の安定調達と収益獲得のため、現在取り組んでいる北米サビン社によるシェールガス開発等を着実に推進するとともに、北米フリーポートプロジェクトの液化事業や豪州ゴーゴン・イクシスプロジェクトの生産事業の安全かつ安定的な操業に向け働きかけていきます。IPP事業では、ガス火力発電事業の安定的な操業に努めるとともに、再生可能エネルギー等の開発・取得を進めていきます。
マーケタービジネスでは、国内で培った知見を活かし、ガス・電力・エネルギーサービス事業の運営や新規案件の開発等に着実に取り組むとともに、事業参画等を通じて新しい領域におけるノウハウの取得を進めます。さらに、ニーズに応じたソリューションを提案することで、エネルギーインフラ開発やエンジニアリング事業を推進していきます。
③ ライフ&ビジネス ソリューション事業
エネルギー事業で培った技術と知見を基盤に、都市開発・材料・情報等の事業で、固有の強みを活かした商品・サービスを提供することで、国内外のお客さまの快適・便利・健康の実現をサポートし、お客さまの豊かな暮らしやビジネスの発展に貢献していきます。
「Daigasグループ企業行動憲章」に基づき、サステナビリティ経営を実践し、国内外における当社グループのサプライチェーンに関わる皆さまとともに、お客さまや社会からのさらなる信頼獲得に努めていきます。
環境の側面では、カーボンニュートラル社会へのトランジション期において、石炭・重油等から天然ガスへの燃料転換や高効率な設備の導入等を推進するとともに、再生可能エネルギーの導入や、カーボンニュートラルなLNGや都市ガスの普及等により、お客さま先や自らの事業活動におけるCO2排出削減の取り組みを一層拡大してまいります。さらに、カーボンニュートラル社会の実現に向け、e-メタン・水素等の技術開発やサプライチェーン構築を進めていきます。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を踏まえて、カーボンニュートラル化への取り組みに関する情報開示の充実に取り組みます。
社会の側面では、国際規範に則り、2021年4月に制定した「Daigasグループ人権方針」に基づき、人権や労働・安全衛生への取り組みを進めるとともに、女性取締役の登用等によるDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の風土醸成を進めていきます。
ガバナンスの側面では、コンプライアンスの意識向上の取り組みを継続するとともに、リスク管理の体制強化や実効性の向上、情報セキュリティ対策等を推進します。
また、燃料電池をはじめとするガス機器・設備のさらなる高効率化とコストダウン、新たな材料や情報処理、カーボンニュートラル化等に関する技術開発を推進します。
当社グループのアウトプットの最大化に向けて、多様な人材が集い切磋琢磨しあうことで従業員の力が最大限発揮される環境づくりを進めていきます。人材の面では、多様で専門性の高い人材の獲得を拡大するとともに、従業員の成長を促進する制度・育成策を強化していきます。組織の面では、タレントマネジメントにより適所適材の配置を実現するとともに、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進や、働き方・仕事の進め方の変革、成長と挑戦を促す組織風土のさらなる醸成等に取り組んでいきます。
会社と人材の双方向のコミュニケーションを通じて各取り組みを活性化させ、従業員のエンゲージメント向上を図ります。
グループの内部統制システムの運用状況の確認及び評価を継続的に行い、所要の措置を講じることにより、実効性の高い内部統制を行っていきます。これらの仕組みのもと、以上の課題に対処するとともに、「Daigasグループ企業理念」を実践し、持続的成長に向けて不断の努力を続けていきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス、リスク管理、戦略並びに指標及び目標
① ガバナンス
「Daigasグループ企業理念」を実践し、持続的成長を実現するために、環境、コンプライアンス、社会貢献、人権尊重をはじめESG分野に関する課題解決等、当社グループのサステナビリティ活動全般の推進及びガバナンスの充実・強化に取り組んでおります。
サステナビリティ全般に関するガバナンス体制としては、当社グループのサステナビリティ活動を統括する役員「サステナビリティ推進統括(取締役常務執行役員)」を委員長とし、関連する組織長等を委員とする「サステナビリティ推進委員会(※1)」を設置しております。「サステナビリティ推進委員会」は原則年3回開催し、組織横断的にサステナビリティ活動の審議・推進を行っております。また、社長執行役員を議長とする経営会議のうち、原則年3回を「サステナビリティ推進会議(※2)」として開催し、サステナビリティ経営における重要課題(マテリアリティ)と指標及び目標の設定、実績状況等については、「サステナビリティ推進会議」にも上程し、審議を実施しております。そのうえで、サステナビリティ活動の重要な事項を取締役会に諮り、意思決定及び監督を行っております。また、サステナビリティ活動全般に対するガバナンスを充実するため、環境会計分野や社会学分野の専門性や企業運営・組織運営に関する豊富な経験と幅広い識見を有する社外取締役を選任しております。
(※1)2025年4月1日付の機構改正に伴い「ESG推進委員会」から名称変更しております。
(※2)2025年4月1日付の機構改正に伴い「ESG推進会議」から名称変更しております。
なお、コーポレート・ガバナンスの詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

当社グループの事業領域が拡大する中、全社横断のリスク(サステナビリティ、コンプライアンス、経理・財務、サイバーセキュリティ、海外投資、人権尊重等)を包括的に管理する体制を構築するとともに、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある重要リスクを選定し、重点的に予防保全対応策を講じることで、効率的かつ効果的なリスク管理を実施しています。
リスク管理体制としては、当社グループのリスク管理を統括する役員「リスク管理統括(取締役常務執行役員)」を委員長とし、関連する組織長等を委員とする「リスク管理委員会」を設置しております。「リスク管理委員会」は原則年2回開催し、定期的に重要リスクの見直し・選定を行い、重要リスクの予防保全対策を審議・推進し、経営会議にて、リスク予防保全活動の計画・実績等について報告・審議します。また、取締役会にて経営に重要な影響を与える事項の意思決定及びリスク管理プロセスの監督を行っております。

この他、気候変動に関するリスク管理は、「サステナビリティ推進委員会」、「サステナビリティ推進会議」にて報告・審議を行っております。また、取締役会において、気候変動リスクや持続可能性を踏まえて、投資判断を含む経営の基本方針に関する意思決定及び監督を行っております。新規投資案件については、シナリオ分析においてICP(インターナル・カーボン・プライシング)を用いて経済性の影響度を把握し、影響度が大きい場合にはリスクへの対応策の有無及びその有効性も合わせて評価することとしております。なお、気候変動に関連する内容は、「(2) 気候変動に関する戦略並びに指標及び目標」及び「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (4) 気候変動対応等の環境リスク」をご参照ください。
③ 戦略
当社グループは中期経営計画2026策定に際し、サステナビリティ経営におけるマテリアリティを新たに特定しました。事業環境の変化やサステナビリティ関連の社会動向を勘案し、国際的なガイドライン(GRIスタンダード等)及びステークホルダー・有識者の意見等を踏まえて、中長期的な「自社グループの将来の財務インパクト」と「社会・環境へのインパクト」よりマテリアリティを特定しました。
なお、マテリアリティは、「サステナビリティ推進会議」及び社外取締役を委員長とする「経営に関する諮問委員会」でも審議を実施し、中期経営計画2026とあわせて取締役会にて決議しました。

④ 指標及び目標
当社グループのマテリアリティは下記のとおりであります。各マテリアリティに関しては、サステナビリティ指標並びに2026年度・2030年度の目標を2024年3月に設定するとともに、「サステナビリティ推進委員会」、「サステナビリティ推進会議」にて進捗確認・審議を実施しております。そのうえで、当該進捗状況及びサステナビリティ活動の重要な事項を取締役会に諮り、監督を行っております。
(※1)2017年度以降にお客さま先や自社事業活動に導入する高効率設備や低炭素エネルギー等により、算定年度1年間にCO2排出を削減すると推定される効果を算定しております。
(※2)アドバンテッジタフネス調査を利用している企業のワークエンゲージメント結果における偏差値。
(※3)2024年度実績は算定中のため、2023年度実績を記載又は「―」としております。2024年度実績については、2025年7月に当社ウェブサイト(URL https://www.osakagas.co.jp)において公表予定の
(※4)エネファームの販売における不適切行為が発生。本件については、2025年3月27日、消費者庁に対して景品表示法に基づく自主報告を行いました。同庁の調査中であり、真摯に対応してまいります。
(2) 気候変動に関する戦略並びに指標及び目標
① 戦略
当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づいて、気候変動がもたらす「リスク」と「機会」を明確にし、「リスク」を低減し、「機会」を拡大するための対応策の検討に向けて複線的なシナリオ分析を実施しております。具体的には、IEA(国際エネルギー機関)が「World Energy Outlook 2021」で公表した1.5℃シナリオと2.6℃シナリオを用いて「リスク」と「機会」を洗い出し、2030年に向けた短中期と2050年に向けた長期に分けて評価し、対応策を検討しました。
当社グループは、天然ガスを主要な原燃料として、日本の関西エリアを中心にガス・電力事業を営んでおり、今後、国内での炭素税導入や税率の大幅な引き上げによって税負担が大幅に増加する場合や、顧客の非化石燃料への転向等によりガス・電力販売が大幅に減少する場合、それぞれの「リスク」の財務影響度は大きくなります。
一方、再生可能エネルギーや脱炭素技術の開発・普及を促進すれば、当社グループにとって、それぞれの「機会」の財務影響度は大きくなると考えております。中期経営計画において「低・脱炭素社会の実現」を重点取り組みに掲げ、再生可能エネルギーの普及貢献に積極的に取り組んでおり、2030年度の再生可能エネルギー事業拡大による売上影響額は1,000億円規模を見込んでおります。
なお、このような気候変動に関する「リスク」と「機会」に適切に対応するためにも、多様な事業によるポートフォリオ経営を推進していくことにより、持続的成長を図っていきます。

※リスクと機会に対する主な戦略・対応策は「カーボンニュートラルビジョン」「エネルギートランジション2030」「エネルギートランジション2050」をご参照ください。
https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2021/__icsFiles/afieldfile/2021/01/25/210125_3_1.pdf
https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2023/__icsFiles/afieldfile/2023/03/30/230309_4_1_1.pdf
https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2025/__icsFiles/afieldfile/2025/02/27/250227_2_3.pdf
当社グループは、2021年1月に「カーボンニュートラルビジョン」を公表し社会全体のCO2排出量の削減に寄与する天然ガスの利用拡大に加えて、メタネーション等のイノベーションによる都市ガス原料そのものの脱炭素化、再生可能エネルギーの導入を軸とした電源の脱炭素化によって、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指しております。そのための指標と目標については、2030年度に「再生可能エネルギー普及貢献量:500万kW」、「国内電力事業の再生可能エネルギー比率:50%程度」、「CO2排出削減貢献量:1,000万トン」の3点を目指すべきマイルストーンとして掲げております。
また、2023年3月に「エネルギートランジション2030」を発表し、エネルギーの低・脱炭素化への移行に向けた道筋の全体像と、2030年に向けた具体的な取り組みやお客さまにご提供できるソリューションを取り纏めました。2030年度は前述に加え、メタネーションの社会実装に向けた取り組みとして、既存の都市ガスインフラへのe-メタン1%導入に挑戦します。
2025年2月には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けてエネルギートランジションのロードマップをより明確にするとともに、ステークホルダーの皆さまとミライ価値を共創していくためのソリューションをまとめた「エネルギートランジション2050」を公表しました。
GHG排出量については、2023年度実績はスコープ1が444万トン、スコープ2が32万トン、スコープ3が2,087万トン、合計2,563万トン(ビューローベリタスジャパン株式会社による第三者検証済みの数値)となりました。算定対象は、当社と、2023年度の連結子会社159社のうち、データ把握が困難かつ環境負荷の小さい会社を除いた連結子会社68社の計69社です。2024年度実績については、2025年7月に当社ウェブサイト(URL https://www.osakagas.co.jp)において公表予定の「Daigasグループ 統合報告書2025」をご参照ください。
なお、「再生可能エネルギー普及貢献量(再エネ普及貢献量)」「国内電力事業の再生可能エネルギー比率(再エネ電源比率)」「CO2排出削減貢献量」の実績については、上記「(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス、リスク管理、戦略並びに指標及び目標 ④ 指標及び目標」をご参照ください。
① 戦略
a 人材育成方針
当社グループは、「国内エネルギー事業」「海外エネルギー事業」「ライフ&ビジネス ソリューション事業」を3つの柱とするポートフォリオ経営の実践を目指しております。それらに対応する要員の質や量の確保、適所適材に基づく多様な人材の活躍推進を通じたパフォーマンスの最大化を図るべく、事業環境の変化に柔軟に対応できる人材や専門性の高い人材の採用、育成に取り組みます。
特に、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みや海外エネルギー事業展開の加速、デジタルトランスフォーメーションによる変革等の経営戦略実現に向け、専門性の高い人材の必要性が高まるなか、キャリア採用を拡大しながら人材を確保していきます。
加えて、将来にわたる経営戦略の達成には持続的な組織運営が重要であるとの認識のもと、計画的な要員確保や人材育成を意識した配置、登用に取り組みます。
b 社内環境整備方針
当社グループは、教育・研修や自己啓発支援等を通じて従業員の自律的なキャリア形成を支援し、エンゲージメントの向上や労働生産性の向上による持続的成長を目指します。また、「従業員の輝き向上」に資する取り組みの一環として、人事制度の一部を改定しました。具体的には、評価・給与制度の見直し、定年延長等を行うことにより、年齢に関わらない「挑戦と成長」を後押ししていきます。
中長期的な企業価値向上のためには非連続なイノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは多様な個人の掛け合わせと考えております。そのため、DE&Ⅰ(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、経験や感性、価値観等の多様性を積極的に取り込みます。従来、女性、高齢者、障がい者、外国人等に対する活躍支援を進めており、少数派であるがゆえの不利益が生じることのないよう配慮し、より一層の能力発揮に向けた環境整備をしていきます。
② 指標及び目標
当社グループでは、上記「① 戦略」において記載した、人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略に向けて、連結グループ各社でその事業特性・課題に応じて取り組みを行っておりますが、必ずしもすべての会社で共通の指標に関する目標を定めていないため、ワークエンゲージメントスコア以外の目標及び実績は、当社のものを記載しております。
当社では、グループ内での確保が難しい専門性の高い人材を中心にキャリア採用を拡大し、それぞれの事業を強化するとともに、多様な価値観を受容することでイノベーションを生み出していきます。2024年度のキャリア採用での入社者は43人(正規雇用労働者におけるキャリア採用比率は37.4%)となりました。
その他の目標及び実績については、上記「(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス、リスク管理、戦略並びに指標及び目標 ④ 指標及び目標」をご参照ください。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営戦略に関するリスク
① 経済金融社会情勢、景気等の変動、市場の縮小
当社グループは、「国内エネルギー事業」「海外エネルギー事業」「ライフ&ビジネス ソリューション(LBS)事業」の3つの事業分野それぞれを成長させることで経営環境の変化に対応するポートフォリオ経営を実践しておりますが、国内外における経済・金融・社会情勢の悪化、大規模な感染症の流行等により、売上高の減少や資金調達の不調、共同事業者・取引先の倒産、人口減少、人材確保の難化、工場の海外移転・操業停止等の事象が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② 気温、水温の変動によるエネルギー需要への影響
当社グループは、エネルギー需要の変動影響に対応するため、ガス器具やエネルギーサービスといったエネルギー周辺分野においても販売拡大等の取り組みを進めておりますが、気温、水温の変動によりガス販売量や電力販売量が大きく変動した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 各種国際規範、政策、法令、制度等の変更
当社グループは、環境・社会・ガバナンスに関する国際規範やその他国内外の規範・政策・法令・制度等に基づいてそれぞれの事業を遂行しておりますが、それらの変更により追加的な義務等が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 競争の激化及びそれに伴う消費者の事業者選択
当社グループは、お客さまに選ばれ続ける事業者を目指し、あらゆる事業分野において市場競争力を高めるため、付加価値の向上や原材料費の低減、技術開発やデジタルトランスフォーメーション等の取り組みを進めておりますが、当社グループを取り巻く競争環境が変化し、他燃料との競争や2016年度の電力小売全面自由化・2017年度のガス小売全面自由化等の変化に伴う新規参入事業者等との競争激化や、技術革新により相対的に競争力が著しく低下した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場リスク
① 為替、調達金利の価格変動
当社グループは、為替、調達金利の変動に対するヘッジや外貨調達を通じた影響の抑制、原材料価格、物流費等の上昇に対するコストの低減に取り組んでおりますが、市場の動向により為替や調達金利の大幅な変動が生じた場合や、物価上昇の販売価格への適切な反映が困難な場合において、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② 原燃料費の変動
当社グループは、LNG調達における契約価格指標の多様化やヘッジによる収支影響の抑制、原料費調整制度によるガス料金の単位料金調整等の取り組みを進めておりますが、為替相場や原油価格等の変動、LNG調達先との契約更改、価格交渉の動向等により、原燃料費が変動した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 電力調達価格の変動
当社グループは、電力需要に対し、自社電源に加え、他社電源からの調達契約や卸電力取引所等の市場からの調達等により対応し、安定供給に努めておりますが、調達価格やインバランス価格が変動した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 原料等の調達に関するリスク
当社グループは、ガス、電力の原燃料であるLNG等の大半を海外からの輸入に頼っているため、多数の生産者からの分散調達を進めるとともに、LNGトレーディングを通じた需給調整等に取り組み、安定的かつ柔軟な原燃料調達を目指しておりますが、調達先の設備や操業等に関するトラブルや調達先における自然災害、カントリーリスク等により原燃料が想定通りに調達できない場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 気候変動対応等の環境リスク
当社グループは、気候変動問題に伴う規制の変更や将来的なカーボンニュートラル社会の実現に向けた社会動向の変化、エネルギー需要の変動等に対応するため、石炭・重油等から天然ガスへの燃料転換、再生可能エネルギーや高効率な商品・設備の導入並びにカーボンニュートラル化等に関する技術開発やサプライチェーン構築等の取り組みを進めておりますが、温暖化傾向の継続や国内外の規制の変更、技術開発の遅延、想定を超える需要家・投資家の選好変化等が生じた場合、対応コストの増加や販売量の減少等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 情報・制御システムにおけるセキュリティリスク
当社グループは、セキュリティ対策の推進・モニタリング、情報管理に関する周知・教育の徹底、情報システムの構築・更新等に取り組んでおりますが、高度なサイバー攻撃や当社施設への侵入等の外部要因、又は書類・データの紛失や計画の遅延等の内部要因により、ガスの製造、発電、ガス・電力の供給や料金に関するシステム等の基幹的なITシステムの停止や誤作動、開発の遅延・中止、お客さま情報や技術情報をはじめとする重要情報の社外への流出が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 経理財務に関するリスク
当社グループは、投資評価委員会による案件の経済性・リスク評価等の総合的な経営判断を踏まえ、取締役会等において各種成長投資の意思決定を実施しておりますが、国内外の経済情勢の変化等により、投資が適切に回収できない場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) ガス製造・発電・ガス供給・消費機器・サービスに関するリスク
① ガス製造・発電及びガス・電力の供給に関するトラブル
当社グループは、都市ガスの製造・供給及び発電・電力の供給を安全かつ安定的に維持するため、緊急時に備えた各種訓練の実施、定期的な設備の点検・更新等、地震・津波対策を始めとする事故・供給支障の防止に向けた取り組みを進めておりますが、想定を超える自然災害や事故、技術的課題等によるガスの製造、発電、ガス及び電力の供給に関するトラブル等が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② ガス消費機器等の製品、設備に関するトラブル
当社グループは、製品の安定供給に努め、安全型機器の普及促進等及びそれに伴う点検・周知等の取り組みを進めておりますが、工場の操業停止等による納入の遅延やガス消費機器や設備に関する重大なトラブルが発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 取扱商品・サービスの品質に関するトラブル
当社グループは、当社が取り扱う商品・サービスを安心・安全にご利用いただくために、品質管理の徹底等に取り組んでおりますが、品質上のトラブル等が発生した場合、社会的信用の低下や対応する費用の支出等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 大規模な災害、事故、感染症等に関するリスク
当社グループは、自然災害やテロ、事故、感染症等の発生に備え、設備の一元的な管理、集中的な点検や継続的な改善、災害保険等の各種保険への加入、大規模災害や事故発生時の「事業継続計画(BCP)」や感染症等発生時の対応に関する業務計画の策定や見直し等の取り組みを進めるとともに、安全かつ安定的な事業運営に向けて、国内外の参画プロジェクトにおける協力的関係の構築に努めておりますが、大規模地震やその他自然災害、テロ、不測の大規模停電、事故の発生や感染症の大規模な流行等の事態が起こることにより、天然ガスの生産・液化設備、都市ガスの製造・供給及び発電等の施設に支障や、参画プロジェクトの操業に関するトラブル等が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 海外投資に関するリスク
当社グループは、海外事業における主体的な事業の運営や成長投資の意思決定における厳正な案件評価等のリスク対応策を進めるとともに、安定調達に向け、参画プロジェクトにおける安全で安定的な操業に資する協力的関係の構築に努めておりますが、事業の領域が拡大する中、当社グループが事業を行っている国における政策、規制の実施や変更、経済社会情勢の悪化、原油価格やガス価格等の市況変動、技術的課題や自然災害による被害等の要因によるプロジェクトの遅延・中止や採算の悪化等の事業環境変化が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(10) コンプライアンスリスク
当社グループは、コンプライアンスへの意識向上に向け、継続的な社内研修、定期的なリスクの把握と対応状況の点検・フォロー・改善等により問題の発生を未然に防止する取り組みを進めておりますが、万一、国内外で法令等に反する行為が発生した場合、社会的信用の低下や費用の発生等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 人的資本に関するリスク
当社グループは、労働人口の減少下においても人材の獲得に努めておりますが、労働市場を取り巻く環境変化等によって人材の確保が困難となる場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 人権リスク
当社グループは、事業活動における人権尊重を経営上の重要課題として位置付け、国連の指導原則に基づく「Daigasグループ人権方針」を制定しグループ内への浸透を図るとともに、「人権デュー・ディリジェンス」を実施することで、人権の尊重と持続的な成長の実現に向けた取組みを実施しておりますが、適切に人権尊重に対応できなかった場合、社会的信用の低下や費用の発生等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、以上のリスクに備え、本文記載の対策に加え、業務執行状況の適切な把握と監督によって、リスクが顕在化する可能性の程度や時期を考慮しながら、リスク発生時の業績への影響を低減するように努めます。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当期におけるわが国経済は、物価高で個人消費が伸び悩んだものの、円安の進行による好調な企業業績や、人手不足下でのデジタル化・省力化需要を背景とした設備投資の増加、インバウンド需要の拡大等により、緩やかな回復傾向が続きました。
こうした経営環境のもと、当社グループは、「暮らしとビジネスの“さらなる進化”のお役に立つ企業グループ」となることを目指し、積極的に事業活動を展開してまいりました。
当期の売上高は、国内エネルギー事業で、電力販売量が増加したものの、LNG販売量が減少したことや原料費調整制度に基づきガス販売単価が低めに推移したことなどにより、前期に比べて140億円減(△0.7%)の2兆690億円となりました。経常利益は、国内エネルギー事業で、原料価格等の変動が販売単価に反映されるまでのタイムラグによる増益影響(*)が縮小したことなどにより、369億円減(△16.3%)の1,896億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、17億円増(+1.3%)の1,344億円となりました。
(*)原料価格及び燃料価格の変動が、原料費及び燃料費調整制度に基づく販売単価に反映されるまでには一定の時間差があるため、一時的な増減益要因となります。
売上高は、国内エネルギー事業で、電力販売量が増加したものの、LNG販売量が減少したことや原料費調整制度に基づきガス販売単価が低めに推移したことなどにより、前期に比べて140億円減(△0.7%)の2兆690億円となりました。当社グループのセグメント別売上高の中で最も大きな割合を占める国内エネルギーセグメントの売上高は、電力販売量が増加したものの、LNG販売量が減少したことや原料費調整制度に基づきガス販売単価が低めに推移したことなどにより、前期に比べて327億円減(△1.9%)の1兆7,379億円となりました。
ガス供給件数は、前期末に比べて1.3%増の511万4千件となり、ガス販売量は、前期に比べて0.1%増の66億5千万m3となりました。
ガス販売量の状況を用途別に見ると、家庭用ガス販売量は、気温・水温が高く推移した影響等により、前期に比べて3.6%減の16億5千9百万m3となりました。業務用等のガス販売量は、業務用におけるお客さま設備の稼働増加等により、前期に比べて1.4%増の49億9千2百万m3となりました。
家庭用のガス機器・サービスにつきましては、給湯、暖房、調理等の機器・設備の開発及び販売拡大に努めました。また、ガス機器・水まわりの修理等や防災・防犯に関する「住ミカタ・サービス」や、デジタルを活用したライフサービスプラットフォーム「スマイLINK」、インターネットサービス「さすガねっと」等の各種サービスの提供とさらなるメニュー拡充に努めました。
2025年1月、食と住まいのショールーム「hu+g MUSEUM(ハグミュージアム)」がオープン10周年を迎えました。また、2025年2月には、施設の一部をリニューアルし、体験型でエネルギーを学べる「hu+g BASE(ハグベース)」を新設いたしました。
業務用のガス機器・サービスにつきましては、コージェネレーションシステム、冷暖房システム、厨房機器、ボイラ、工業炉、バーナ等の商品の開発及び販売拡大に努めました。また、エンジニアリング力を活用し、脱炭素化・分散化・デジタル化の視点でお客さまの様々な経営課題を解決する「D-Lineup(ディーラインアップ)」等、お客さまのニーズに応じた高付加価値のソリューションの提供に努めました。
都市ガスのカーボンニュートラル化の有望技術として期待される高効率なSOECメタネーション技術等、低・脱炭素化に資する触媒・燃焼技術等の研究開発にも取り組んでおります。
2024年6月、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で実施しているSOECメタネーションの技術開発事業において、0.1Nm3/hのe-メタンを製造する試験装置が完成し、試験を開始いたしました。2025年3月、再生可能エネルギー由来の水素とバイオガスを用いたメタネーション実証事業において、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場内で発生する生ごみやCO2を用いて7Nm3/hのe-メタンを製造する実証設備「化けるLABO(ラボ)」が竣工し、実証を開始いたしました。
カーボンニュートラル社会へのトランジション期における取り組みとして、石炭・重油等から天然ガスへの燃料転換や高効率な設備の導入等を推進し、お客さま先でのCO2排出削減に努めました。
安定供給・保安の確保につきましては、天然ガスの調達先の多様化、AI技術活用も含めた製造・供給設備の保全と計画的な改修、安全機能を備えたガス機器の普及促進等に継続的に取り組みました。
また、大阪ガスネットワーク(株)は、2024年11月、東京ガスネットワーク株式会社及び東邦ガスネットワーク株式会社と、災害時の相互支援・連携強化に向けた合同訓練を実施するなど、引き続き、地震対策・津波対策に取り組みました。
低圧電気供給件数は、前期末に比べて4.8%増の192万2千件となり、電力販売量は、前期に比べて10.9%増の169億8千2百万kWhとなりました。
ガスとセットでお得にご利用いただける料金メニュー、お客さまのライフスタイルや趣味にあわせた料金メニュー、脱炭素に資する料金メニュー等、多彩な電気料金メニューの提供に努めました。
2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギー電源の拡大に積極的に取り組みました。海外エネルギーセグメントに含まれる海外分も含め、再生可能エネルギー電源の普及貢献量は、当期末時点で約370万kWとなりました。
当期中に参画した主な再生可能エネルギー電源は、岩手県における2か所の太陽光発電所(発電容量計約4万kW、営業運転開始済。出資比率40%)等であります。
2024年10月、宮崎県日向市における日向バイオマス発電所(発電容量約5万kW、出資比率35%)が、2024年11月には、愛知県田原市における愛知田原バイオマス発電所(発電容量約7万kW、出資比率25%)が、それぞれ営業運転を開始いたしました。
兵庫県姫路市における姫路天然ガス火力発電所1号機及び2号機(発電容量計約125万kW、2026年5月までに営業運転開始予定)については、建設工事を順調に進めております。また、2025年3月、株式会社日本政策投資銀行をはじめとする3社と共同で、3号機(発電容量約62万kW)を建設することを決定いたしました。
海外エネルギーセグメントの売上高は、米国及び豪州の上流事業等の増収により、前期に比べて117億円増(+10.0%)の1,281億円となりました。
米国テキサス州でシェールガス生産開発事業を行うサビン社(Sabine Oil & Gas Corporation。出資比率100%)は、新規の井戸開発を中心に、順調に事業展開しております。
2025年2月、アラブ首長国連邦アブダビ首長国の国営石油会社Abu Dhabi National Oil Company PJSCとの間で、LNG売買契約を締結いたしました。当社は、この契約に基づき最大約80万トン/年のLNGを調達する予定であり、トランジション期に重要な役割を担うエネルギーである天然ガスの安定調達・開発・供給に取り組んでまいります。
また、アジアにおいては、当社の子会社であるOsaka Gas Singapore Pte. Ltd.が、2024年4月、合弁子会社を通じて、インドで都市ガス事業等を行う事業会社の持株会社であるAG&P LNG Marketing Pte. Ltd.の持分の一部を取得いたしました。また、2025年3月、合弁子会社を通じて、インドで再生可能エネルギー電源開発等を行う事業会社Clean Max Enviro Energy Solutionsとの間で、再生可能エネルギー電源の開発・保有を行う合弁会社を設立するための契約を締結いたしました。
北米、南米、欧州、中東、豪州及びアジアのエネルギー事業者等との間で、e-メタン等の製造・日本への輸出等に向けた共同検討を進めております。
今後もカーボンニュートラルに資するe-メタン等のサプライチェーン構築に向けて取り組んでまいります。
ライフ&ビジネス ソリューションセグメントの売上高は、材料ソリューション事業や都市開発事業等での増収により、前期に比べて84億円増(+3.1%)の2,824億円となりました。
都市開発事業を展開する大阪ガス都市開発(株)は、当期中に「アーバネックス早稲田テラス」(東京都)等の19物件の賃貸マンションを取得し、資産の拡充に努めました。また、「シーンズ京都鴨川河原町」(京都府)等の5物件の分譲マンションが竣工いたしました。
また、京都リサーチパーク(株)が運営する京都リサーチパーク地区(KRP地区)において、2027年竣工を目指して、レンタルラボを備える新棟建設を推進しております。
情報ソリューション事業を展開する(株)オージス総研は、企業情報システムのコンサルティング・設計・開発・運用や、AI・クラウドサービス等、総合的なITサービスの提供やお客さまのDX推進支援に努めました。また、2025年1月、フィリピンで基幹業務システムのパッケージ商品の導入・運用支援を行うFasttrack Solutions Inc.グループの事業を取得し、東南アジアにおける基幹業務システム関連事業を開始いたしました。
材料ソリューション事業を展開する大阪ガスケミカル(株)は、ファイン材料、炭素材製品、保存剤等、付加価値の高い材料等の開発及び販売拡大に努めました。木材保護塗料「キシラデコール」シリーズ製品が、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)において大阪府や大阪市等が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」の内部・外部壁面に採用されました。
売上原価は、原材料費が減少したことなどにより、前期に比べて92億円減(△0.6%)の1兆6,634億円となりました。販売費及び一般管理費は、ほぼ前期並みの2,448億円となりました。
国内エネルギーセグメントでは、営業利益は、原料価格等の変動が販売単価に反映されるまでのタイムラグによる増益影響が縮小したことなどにより、135億円減(△15.3%)の748億円となりました。
海外エネルギーセグメントでは、営業利益は、米国及び豪州の上流事業等の増益により、前期に比べて24億円増(+4.7%)の539億円となりました。
ライフ&ビジネス ソリューションセグメントでは、営業利益は、情報ソリューション事業等での減益により、前期に比べて22億円減(△7.3%)の287億円となりました。
以上の結果、営業利益は、前期に比べて118億円減(△6.9%)の1,607億円となりました。
営業外収益は、前期に比べて240億円減の542億円となりました。これは持分法による投資利益が減少したことなどによるものであります。営業外費用は、前期に比べて10億円増の253億円となりました。これは支払利息が増加したことなどによるものであります。
以上の結果、経常利益は、前期に比べて369億円減(△16.3%)の1,896億円となりました。
特別利益は、前期に比べて254億円増の254億円となりました。これは当期に投資有価証券売却益を計上したことによるものであります。特別損失は、前期に比べて47億円減の258億円となりました。これは減損損失(※)が減少したことなどによるものであります。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べて17億円増(+1.3%)の1,344億円となりました。1株当たり当期純利益は、前期の320.60円に対し、当期は333.31円となりました。
(※) 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係) ※5 減損損失」をご参照ください。
当社グループは、当期の収益性、成長性の経営指標として、ROIC(投下資本利益率)4.7%、ROE(自己資本利益率)7.2%、EBITDA(※)2,800億円を計画として掲げ、ROIC5.4%、ROE8.2%、EBITDA(※)3,089億円の実績となりました。
また、当社グループは、2024年3月に策定した中期経営計画2026「Connecting Ambitious Dreams」における2026年度の収益性、成長性の経営指標として、ROIC(投下資本利益率)5%程度、ROE(自己資本利益率)8%程度を計画として掲げております。
上記の経営指標の推移を踏まえながら、当社グループは引き続き収益性、成長性の向上に努めます。
(※) 営業利益+減価償却費+のれん償却額+持分法投資損益
(注) 1 上記のセグメント別売上高、セグメント損益には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでおります。
2 本報告書では、ガス量はすべて1m3当たり45MJ(メガジュール)で表示しております。
当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、前期に比べて289億円収入減の2,836億円の収入となりました。これは、利息及び配当金の受取額が前期に比べて387億円増加した一方で、売上債権の増加による支出が前期に比べて558億円増加したことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べて396億円支出増の2,556億円の支出となりました。これは、投資有価証券の売却による収入が前期に比べて250億円増加した一方で、有形固定資産の取得による支出が前期に比べて362億円増加したこと、関係会社株式の取得による支出が前期に比べて350億円増加したことなどによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べて760億円支出減の340億円の支出となりました。これは、長期借入による収入が前期に比べて326億円増加したこと、非支配株主からの払込みによる収入が前期に比べて214億円増加したこと、コマーシャル・ペーパーの純減による支払が前期に比べて210億円減少したことなどによるものであります。
以上の活動の結果、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べて50億円増の823億円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、社債、借入金及び自己資金を財源としながら、ガス事業の基盤である本支供給管等の品質向上投資や、国内エネルギー、海外エネルギー、ライフ&ビジネス ソリューション事業への成長投資を行っていきます。
当期末の総資産は3兆2,005億円となり、前期末に比べて2,203億円増加しました。これは、投資の進捗等に伴い、有形固定資産及び投資有価証券が前期末に比べて、それぞれ1,227億円、304億円増加したことなどによるものであります。
当期末の負債は1兆4,612億円となり、前期末に比べて860億円増加しました。これは、支払手形及び買掛金が前期末に比べて207億円増加したことや、社債が前期末に比べて410億円増加したなど、有利子負債が増加したことなどによるものであります。
当期末の純資産は1兆7,392億円となり、前期末に比べて1,342億円増加しました。これは、株主資本が利益剰余金の増加等により前期末に比べて556億円増加したことや、その他の包括利益累計額が為替換算調整勘定の増加等により前期末に比べて555億円増加したことなどによるものであります。
以上の結果、当期末の自己資本比率は52.8%となり、前期末に比べて0.2ポイント減少しました。
当社グループの財務戦略の基本的な考え方は以下のとおりです。
a 社会インフラを担う事業者として、将来の経営環境変化や有事にも耐えられる健全な財務基盤を維持する
b 事業の成長と投資を通じて、キャッシュ・フローと収益性・効率性を向上させ、持続的な成長と中長期的
な企業価値向上を実現する
c 対話や価値共創を進め、ステークホルダーの期待にバランス良く応える
当社グループは、健全な財務基盤を維持するために高い財務規律を設けるとともに、エネルギー価格、為替、金利等の収支変動抑制のためのデリバティブの活用や、有事に備えたリスク管理を実施しております。そして、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために、ROICを導入しつつ、高格付を活かした経済的かつ安定的な事業運営・資金調達に取り組むこととしております。また、お客さまやビジネスパートナー、成長投資・株主還元、従業員等のステークホルダーの期待にバランス良く応えます。
当社グループは、2017年3月に策定した長期経営ビジョン2030「Going Forward Beyond Borders」・2024年3月に策定した中期経営計画2026「Connecting Ambitious Dreams」において経営指標を定めました。財務健全性指標としては、連結自己資本比率(※)45%以上、連結D/E比率(有利子負債/自己資本)(※)0.8以下を中長期的に維持していくことを掲げております。
(※) 利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)の資本性50%を調整
今後も長期経営ビジョン2030・中期経営計画2026の実現に向け、財務健全性を考慮した上で、成長投資と株主還元により更なる企業価値の向上を図っていきます。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループにおいては、国内エネルギーセグメントにおいて当社及び名張近鉄ガス㈱等が営むガス事業が生産活動の中心となっており、販売活動では、ガス事業に加えて、当社等が営む電力事業の比重も高まりつつあります。また、当該セグメント以外のセグメントが生産・販売する製品やサービスは広範囲かつ多様であり、受注形態をとらないものも多くあります。
このため、以下は、国内エネルギーセグメントにおけるガス事業の生産実績及び販売実績、並びに電力事業の販売実績について記載しております。
(ガス)
当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。
(ガス)
ガス販売については、その性質上受注生産は行いません。
(ガス)
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) ( )内数値は前期比(%)であります。
(電力)
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) ( )内数値は前期比(%)であります。
該当事項はありません。
当社において、研究開発は最も重要な成長戦略の一つであります。メタネーションを始めとしたカーボンニュートラル社会の実現に貢献する研究開発や新規ビジネスの創出につながる研究開発に取り組んでいます。また、保安の確保・高度化に資する研究開発はもちろんのこと、デジタル技術を活用した業務の効率化や設備関連費用の低減、お客さまの利便性向上、既存サービスの高度化、クリーンな天然ガスの用途拡大や高度利用を目指した研究開発にも継続的に取り組んでおります。
当社は、コア技術として、石炭・石油から都市ガスを製造していた時代からの触媒・材料技術、LNG気化器・PC(プレストレスト・コンクリート)型LNGタンク・LNG冷熱発電・LNG受入基地等の設計・建設技術、ガス空調・天然ガスコージェネレーション・燃料電池・燃焼技術等のエネルギー利用技術等を保有しており、各々の分野で研究開発を進めております。
有機材料・活性炭等各種材料の開発、情報通信技術等、エネルギー分野にとどまらず、ライフ&ビジネス ソリューション分野への取り組みを進めております。
知的財産分野では、保有特許分析等に基づく戦略的な知的財産戦略を展開しております。また、当社保有技術と外部の保有技術を積極的に融合・活用することにより、開発の加速と効率化、新規技術・商品開発の創出を図る「オープンイノベーション」活動を積極的に推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当社は、ガスの製造、供給及び拡販に寄与する研究開発を行っております。
ガス製造分野では、安定操業・安定供給を確保するためのLNG基地製造設備の建設・診断・評価技術、保全業務の効率化等に取り組んでおります。
ガスの輸送・供給分野では、大阪ガスネットワーク㈱が、車載式レーザー分光式検知器による漏えい調査効率化や、スマートフォンの撮影動画からガス管竣工図面を自動作成する技術等、保安レベルの向上及び業務効率化に取り組んでおります。また、災害予測や被災後の迅速な復旧に資するシステム開発や、新たな工法・検査・修繕技術によるガス導管の建設・保全費用の低減を目指した研究開発を行っております。加えて、お客さまの利便性向上にもつながる「スマートメーター」の研究開発にも取り組んでおります。
家庭用ガス利用分野では、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」で世界最高レベルの発電効率を実現するとともに、カーボンニュートラル実現に向けて電力系統においてエネファームを供給力・調整力として活用するためのVPP実証等、更なる商品性向上に向けた技術開発に取り組んでおります。また、電気とガスのベストミックスによるエネルギーマネジメントや、お客さまのウェルビーイングに繋がるⅠoT等、新たなミライ価値を創出する先進的な商品開発にも取り組んでおります。エネルギーマネジメントについては、神戸市と連携し、3電池(燃料電池、蓄電池、太陽電池)を活用して仮想の街区内での再生可能エネルギーを最大限地産地消することを目指した技術検証を実施しました。実験集合住宅NEXT21では、近未来の集合住宅の在り方を模索するため、効率的なエネルギーシステム、再生可能エネルギーの利用促進やデマンドレスポンス、健康・快適な住空間、災害に備える住まい等の居住実験も進めております。
業務用・産業用ガス利用分野では、様々なニーズにお応えするバーナ・工業炉の開発や、ガスコージェネレーションシステム、ガスヒートポンプを用いた空調機等、省エネ・省CO2に貢献する機器のさらなる高効率化やコスト低減、遠隔モニタリングを活用した省エネ支援サービスや故障予測技術の開発等に取り組んでおります。工場向けⅠoTサービス「D-Fire」、空調分野のソリューションサービス「D-Airing」、自家消費型太陽光発電サービス「D-Solar」、水処理サービス「D-Aqua」への取り組み、オンサイト型バイオガス化システム「D-Bioメタン」やバイオマスボイラシステム「D-Bio Steam」、脱臭プロセスのCO2削減を行うサービス「D-Remove」等、お客さまのカーボンニュートラル実現に貢献するための取り組みや商品開発を実施しております。加えて、お客さまのコージェネレーションシステム等を活用して創出するネガワット価値を取引するサービス「D-Response」も提供しております。
カーボンニュートラル社会の実現に向けては、非化石原料からの合成メタン(e-メタン)を製造するメタネーションの研究開発において、非常に高い効率が期待されるSОECメタネーションや早期社会実装を目指すサバティエメタネーション、大阪・関西万博で実証を進める地産地消エネルギー利用促進を目指すバイオメタネーション等の研究開発を進めております。また、グリーン水素製造等の研究開発、水素・アンモニア燃料の利用技術開発、低コストでコンパクトな水素製造装置の商品化開発、バイオガス精製・利用の技術開発等にも取り組んでおります。
大阪ガスリキッド㈱は、産業ガスや水素オンサイト事業の需要拡大に繋がるシステム技術や新商品の開発、冷熱を利用した各種樹脂・食品原料の低温粉砕に関する技術開発を行っております。
当セグメントにおける研究開発費は
Jacobi Carbons AB及び水澤化学工業㈱を含む大阪ガスケミカルグループでは、炭素材料・光電子材料・活性炭・保存剤・無機吸着剤等に係る研究開発を、㈱KRIはナノ材料や次世代電池、水素・燃料電池、環境・バイオといった先進材料・新エネルギー等に係る研究開発を、オージス総研グループでは、AI、クラウドコンピューティング等のソフトウェア及び情報システムに係る研究開発を行っております。当セグメントにおける研究開発費は