第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります

 

 私たちの日常生活は、2019年以降新型コロナウイルスによって大きな影響を受けましたが、2022年10月から再び海外からのお客様をお迎えし始めました。我々アゴーラは、コロナとの戦いに追われる日々でしたが、現在は、会社の全員が活力を取り戻しています。これにより、すべてのお客様に「A Collection of Beautiful Japan」体験を提供するというビジョンを実現するための機会が与えられ、当社の全員が興奮とエネルギーに満ちています。

 我々アゴーラは常に未来への計画を立てており、会社の長期的な持続可能な成長戦略と事業計画を確保することに主眼を置いてきました。「美しい日本のコレクション」の実現のために、2019年以降、市場でのブランド認知度を高め、ビジョンをさらに促進することを目的として、2019年のTSUKI(東京都中央区)等のオープンにより新しいアーバン ブティック ホテルのポートフォリオを拡大する戦略を発表してきました。それ以来、この戦略とビジョンをさらに発展させるべく、コロナ禍ではありましたが、アゴーラ東京銀座(東京都中央区)、アゴーラ京都烏丸(京都市下京区)、アゴーラ京都四条(京都市下京区)の3つの新しい施設を開業することに成功しました。さらに2022年11月には、世界的に有名な建築家、隈研吾氏が監修したONE@Tokyo(東京都墨田区)を開業するなどを行う一方で、2022年6月のアゴーラ金沢の撤退、2023年3月の今井荘の不動産の売却により、今井荘の運営を終了するなどをおこなう等、非中核事業の売却や撤退を行いつつ、新たに高利回りホテルを運営しすることで利益改善を達成しました。そして、堺のランドマークとなる大浜北町プロジェクトも順調に進めており建物も出来上がってきました。2025年5月のオープンを予定しています。海外に向けてリリースを配信するなどメディアリレーションの確立により、国内外でのアゴーラの認知度が高めてまいりました。引き続き、アゴーラの「美しい日本のコレクション」を実現するためのブランディングを推進していきます。

 我々アゴーラは「美しい日本のコレクション」をすべてのお客様に体験していただくというビジョンを実現するために、不動産を変革し、顧客をはじめ従業員にも感動的な空間と機会を提供しております。ホスピタリティビジネスでの成功では、卓越性が成功の鍵であります。そして、卓越性を発揮するには人材が重要であり、チームワークと従業員のコミットメントを強化して卓越性を追求しております。人的資源の拡大と投資に焦点を当て、グローバルな視野とアットホームなサービスを提供できる人材の育成に注力。研修プログラムを通じて継続的な人材育成とキャリアアップを推進しております。

 その他投資事業においては、引き続き想定されるリスクをコントロールしたうえで業績向上に寄与するよう努めてまいります。マレーシアの霊園事業につきましても現地と密接なコミュニケーションをとり、リスクをコントロールするとともに契約の獲得をすすめてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)ガバナンス

 当社は、社長直轄の諮問機関である「Ex-com」を設置し、業務執行をおこなう取締役及び各部門の責任者で構成しています。詳細は、「有価証券報告書4.コーポレート・ガバナンスの状況等」をご確認ください。この「Ex-com」は、当社の全社的な課題、あるいは自部門における課題を共有し、その経営課題の対応方針や方向性を議論・検討することを目的としています。また、「Ex-com」の中に専門的な分科会として「サスティナビリティ委員会」を設置し、気候変動を含むSDGsに関連するリスク及び機会への取り組みの検討等を行っています。

 

(2)戦略

 世界中の国や企業が目標達成に向けて取り組んでいるSDGs[Sustainable Development Goals]持続可能な開発目標は、2030年まであと10年を切り、具体的に取り組むことは、企業としての使命であり、社会的責任でもあります。気候や資源、未来のために当社グループとして、どう貢献していくかを真摯に考え、「Ex-com」において、長期的な視点で、環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)に配慮したESGを推進しSDGの目標達成に取りくむ当社のマテリアリティを以下のとおり定めております。

 

・ECO CO2削減

・地域貢献社会福祉活動

・安心安全 人材育成

・地球環境を守る取り組み

・新たな価値創造と地域社会との共生

・見える化で信頼を高め企業の価値創出

 

 当社グループは、旅行・観光業に携わり、お客様、パートナー、ステークホルダーと協力してイノベーションを生み出し、未来の社会に貢献しています。ヨーロッパ発祥のSDGs(持続可能な開発目標)は、日本にも古くから伝統や文化を持つ武士道の精神など、深い歴史や哲学があります。私たちは「美しい自然、美しい四季、美しい景色、美しい日本」を通じて、伝統と創造を融合させ、地域と環境の調和を築いています。雇用と事業の創出を通じて人々を結びつけ、未来の社会に向けて「自由で持続可能な旅」を実現するために全力を尽くしています。

 COVID-19の影響を受けた4年間を経て、2023年には状況が安定し、日本は再び海外からのお客様を迎えることができました。私たちのビジョンは、「美しい日本のコレクション」をすべてのお客様に提供することであり、不動産の景観を再構築し、素晴らしい空間を創造し、会社の目標を達成するだけでなく、多くの顧客と従業員にインスピレーションを与えています。

 気候変動の影響を含みサスティナビティについて見極めることは重要であり、その機をみて攻めに転じ成長戦略とし、一方で、守りの戦略として成長・事業を阻むリスクの軽減に努めてまいりました。COVID-19によって大きな影響を受けたように、「いつ頃、何が、どの程度、生じるか」を正確に予測し、対応することは難しく、現時点で可能な範囲で把握した上で、将来どのような社会になり得るのか、長期的に持続可能な成長戦略を持ち、その時に当社はどうするのかを想定しながら、段階的に準備をすることが肝要であると認識し、グループ経営の戦略の一つとして取組みを強化し、持続的に事業計画を達成することに主眼を置いてきました。その取り組みとして、COVID-19が蔓延していた時期にアゴーラ金沢(石川県金沢市)、今井荘(静岡県賀茂郡)を閉鎖し、アゴーラ東京銀座(東京都中央区)、アゴーラ京都烏丸(京都市下京区)、アゴーラ京都四条(京都市下京区)、ONE@Tokyo(東京都墨田区)の4つの新規物件をオープンしました。このことは、外部環境の変化が当社の持続的な事業を阻むものでありましたが、その機をみて攻めに転じ、中核となる資産を獲得し、未開発の建設や資産の再配置などにより高利回りプロジェクトに資本を再投資することで、安定したキャッシュ・フローと資本の増加を生み出し大幅な投資収益が達成されました。そして、これらのホテルは海外のお客様にも人気が高まりご好評をいただいております。2024年の当社の事業収入に大きな影響を与えることでしょう。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、IPCC第6次評価報告書までに「地球温暖化の主な原因が人間活動である可能性」が極めて高いと結論づけています。また旅行・観光業による世界のGDPへの貢献度は10%を超えており、2021年11月にWorld Travel & Tourism Councilが発表した調査レポート「A NET ZERO ROADMAP FOR TRAVEL & TOURISM」によれば、現在、旅行・観光業が占める世界のGHG排出量の割合は8%~11%と推定されます。旅行・観光業は事業領域が広く、同業種に携わるものとして、地球温暖化ガス排出量の削減に取り組む責任は大きいと考え、当社は、日本政府が表明ししている2050年までの「ネットゼロ目標」を共有し、その課題達成に向けた取組みを行ってまいります。

 また、事業を問わず、当社のサステナビリティに関する他の重要課題は事業所を設置している現地との密着であります。例えば、宿泊事業において地元との持続的な関係作りは重要と考え、ホテルの新規開業の際にはその現地の町に対する贈り物と見立て、ホテルにリボンを模したデコレーション等を行っております。ホテルと地元の密接につながることにより、観光づくり、宿泊のご利用に繋がるものと考えており、ひいては、現地のおもてなしする人材の確保に繋がる重要な取り組みであると考えております。現在、大阪府堺市において建設しているホテル(大浜北町プロジェクト)は、堺市所有の土地を借りて開発を行っており、当社の開発については堺市の旧港活性化プロジェクトの一部となっており、緑化計画なども堺市と連携して進めております。また、中世以降、人・モノ・情報が行き交う国際貿易の中心地となった旧堺港について、堺市やその関係者とともに、人の賑わいの創出に協力しホテル利用、人材の確保につなげてまいります。この他にも、ホテルの従業員が地元の調理師学校などの教育施設に赴き、料理技術の講義を行う取り組みを進めており、当ホテルへの就職希望者の興味喚起および次世代の人材づくりの一助として取り組んでおります。

 

当社の人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

 

1. 人材開発:

 ・キャリアビジョンとキャリアプランは、人材開発部門を通じて設定される

 ・専門的な知識や能力を高める研修制度を設ける

 ・資格取得支援制度を設ける

 ・月次・年次表彰により社員のモチベーションを高める

 ・キャリアアップは会社の目標や個人の課題達成と連動させる

 ・今後の目標:強みと弱みを明確に把握した上で研修を実施する

 

2. 前向きな職場環境:

 ・多面的なトレーニング、スキルアップ、人事評価のプロセス

 ・会社の目標に沿った人材配置

 ・長期的に働ける快適な職場環境

 ・女性の昇進・昇給、管理職後継者の育成

 

 エネルギッシュで騒がしく活動に満ちた不動産とホスピタリティの世界では、卓越性が成功の鍵です。会社の組織的・文化的な壁を越えて、業界に大きな影響を与えることができるより大きな領域に到達することはかなり難しいことです。どのような状況においても、私たちは常に卓越性を追求しなければなりません。卓越と平凡を区別するものは、どんな状況において可能な限り最善の結果を追求することです。ホスピタリティビジネスでは、“人”が成功のための最も重要な要素です。私たちは従業員のチームワークと仕事に全力を尽くす姿勢によって卓越した業績を達成しさらに強い企業になれると確信しています。私たちは人材の拡充と、人材への投資が不可欠だと考えています。グローバルな視野と知識を持ちながら、温かい心を持ち、アットホームで質の高いホテルサービスを提供できる人材の育成に注力していきます。そのような人材の育成を支援する組織・体制を構築するとともに、継続的な人材育成とキャリアアップを実現するための研修制度も充実させました。私たちは、人材開発部門を中心に、キャリアビジョンやキャリアプランを設定し、社内人材の育成を行っています。具体的には、新入社員研修、フォローアップ研修、アライアンスホテル間の交流研修などの育成プログラムに加え、業務遂行に必要な専門知識や能力の向上、必要な資格の取得を目的とした研修や資格取得支援制度を設けています。また、全社員を対象とした月次・年次表彰制度を設け、モチベーションの向上を図っています。人事評価制度では、会社目標に対する計画や個人業務の達成プロセスを評価することで、昇給・昇格によるキャリアアップを実現しています。今後は、上司と部下がお互いに得意なこと、足りないことを理解した状態で研修を実施できるようにしてまいります。このような多面的な研修やスキルアップ支援、人事評価プロセスを通じて、社員のキャリアプランを支援し、会社の目標に合った人材の適正配置に努めます。また、働きやすい職場環境を整備することで、社員が働きやすく、長く働ける環境をつくり、女性の昇進・昇給や管理職の後継者確保につなげていきます。

 

(3)リスク管理

 特に重要性が高いと評価した気候関連リスク・機会は、IPCCの温暖化により、今後発生する影響を示す4つのシナリオ(RCP8.5、RCP6.0、RCP4.5、RCP2.6)のうち、物理シナリオはRCP4.5シナリオ。また、移行シナリオとしては、IEA ASPシナリオおよびNEZシナリオとし、以下のような事業環境を想定しています。4℃シナリオ(RCP4.5シナリオ)は、現在の各国政府の対応が継続する前提あり、移行リスクが即時に顕在化する可能性は低いものの、中長期的には温暖化の進行により、物理的リスクが高まると予測されます。一方で、2℃シナリオ(RCP2.6シナリオ)は急速に低炭素社会に移行するため、移行リスクとしては短期的に低炭素化への対応コストが膨らむ一方、将来的な物理的リスクを低下すると予測されます。また、4℃シナリオより影響は少ないものの、都市部での豪雨により内水氾濫によって保有資産が被災する可能性がありますが、営業が出来ない深刻な状況までには至らないと考えます。

 

1)宿泊事業

 当社の主力事業である宿泊事業はホテル不動産により収益が成り立つことから、不動産に対する影響が大きいと考えております。

 

・4℃シナリオの概況

 ・各国政府目標に向けて進むが低炭素化に向けた動きは一部に限定、GHG排出削減へのインセンティブは少ない

 ・省エネ技術の進展は一部にとどまる

 ・大型台風や内水氾濫による被災例が増加するにつれ、ホテルの災害対応が必要

 ・平均気温の上昇や降水量増加により資産の劣化が早まり、ビルのエネルギー効率も悪化。水害のリスクが高いホテルへの投資は避け、水害のリスクの高いホテルを売却し、資産の入れ替えが進む。古い不動産より、新しい不動産へ、積極的にポートフォリオを入れ替える検討も必要

・宿泊運営会社への影響

 ・現状の炭素税額が維持されるが、光熱費単価は下がる要因が無い場合は、高止まり

 ・入居物件に対する環境性能の関心は低く、エコな宿泊を嗜好するホテル利用者は増加しない

 ・平均気温が上昇し、猛暑日が増え、冷房運転の強化や設備増強により電力使用量が増える

 ・水害の被災による営業日数の減少、利用者の減少

・不動産のオーナー(信託受益権含む)/金融機関への影響

 ・低炭素化は投資判断に大きくは影響しない

 ・水害の被災リスクの高い物件に対する運営費用がかさむ

 

・2℃シナリオの概況

 ・高額な炭素税が設定され、所有施設で使用するエネルギー費用が上昇する

 ・自社のGHG排出削減コストの低下の観点から、グリーンビルディングを指向する

 ・再生エネルギーの価格も上がる一方で、排出権取引が増える

 ・4℃シナリオより影響は少ないものの、都市部の豪雨により被災をする可能性がある

 ・ZEB/ZEHの拡大と所有物件の省エネ改修に関連する助成金が拡大する

・宿泊運営会社への影響

 ・高額な炭素税が設定され燃料費が上昇する。再生エネルギー需要も増え、エネルギー価格も高止まり

 ・一方で、ビルの省エネ化対応が進み、エネルギー効率が向上する

 ・エコ志向のお客様が増え1泊あたりのCO2の排出量により宿泊先が選別され、ゼロCO2旅行の需要が増える

・不動産のオーナー(信託受益権含む)/金融機関への影響

 ・物件の環境性能(認証ラベルの有無)が投資判断項目としての重要度を増す

 ・GHG排出量削減等のトラックレコードが投資判断項目として重要度を増す

 ・古い不動産の省エネ改修に対する費用、投資が増える。投資の回収見込みが立たない古い不動産を売却する

 

 物理シナリオ(RCP4.5シナリオ)では1.1~2.6℃世界の平均気温が上昇するとされ、また、世界の平均海面+0.32~0.63m、日本の降水量は+8.0~16.0%と海面上昇と降水量が増加することにより外水氾濫のリスクが高まる。GHG増加による「地球温暖化」が進み、直接的な平均気温上昇による海面上昇や台風の大型化などによる洪水、高潮などの大型自然災害だけでなく、都心部のヒートアイラインド化やエルニーニョ/ラニーニャ現象の大気・海洋変動の活発化等により、ゲリラ豪雨、線状降水帯による豪雨の増加による自然災害の激甚化や発生頻度の上昇に伴い、当社の事業を運営する施設が被災することにより、営業休止や、事業資産の被災など財務的影響を受ける可能性があります。特に、内水氾濫による浸水リスクは、シナリオの選択を問わず、日本の都心部や地域にてすでに発生しているものであり、その予測は困難です。そのような状況の中、運営受託による運営ホテルを含む自社グループは、施設のある場所には、どのような災害の影響があるかハザードマップ上で想定される浸水深さの再評価を行っております。また、気候変動に限らず、一部ホテルにおいては、自治体との間で災害時の協力協定を締結するなど、自然災害とその対策について協力・協議をしております。

 次に、移行リスクについては、平均気温が1年を通じて全体的に暖かくなり、夏場の猛暑日が増えることが予測され、三菱総研株式会社が2012年に丸善プラネットから発刊した「気候変動リスクに備える」によれば、2011年に東京電力が公表した資料を基に、夏場の平均気温が1度上昇することにより0.75%の電量消費量が増える予測もあります。エネルギー効率の良い機器や、AI等を使ったエネルギー効率向上のインフラ設備も開発され、一概にその予測値通りの電力消費表が増加するとは必ずしも言えないものの、全体的にエネルギー使用量の増加が見込まれます。また、政府により炭素税(地球温暖化対策のための税)の設定、本格的なカーボンプライシングの導入も検討されており、原発の再稼働も見通せないことから、特に2度シナリオにおいて、エネルギー費用は徐々に増加方向にあると考えております。そして、気候変動に伴い、デング熱、マラリアの感染リスクが高まるほか、新たに二類感染症が蔓延するリスクがあります。そのようなケースは、外国からの訪日外国時旅行者も途絶え、新型コロナウイルスと同様に、最低限の国内移動者のホテル利用となれば、売上高が大きく減少し、激甚な財務損失を招く可能性もあります。

 

事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式

・売上高への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)

 ・異常気象の激甚化による収入減

  過年度の災害による収入減(円/年)×過年度の災害営業制限継続日を基準とした変化率(%)

 ・豪雨等の頻度の変化による避難需要の収入増

  避難需要頻度×稼働率×部屋数×平均客単価(ADR)×避難需要時の単価上昇率

 ・二類感染症の増加により収入減

  過年度のコロナ収入減(円/年)×過年度の行動制限継続日を基準とした行動制限日の変化率(%)

・費用への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)

 ・炭素税の増減による費用増減

  炭素価格(円/tCo2)×Scope1,2排出量

 ・エネルギー価格の増減による費用増減

  平均気温の変化量×燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)

  燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)

  一次エネルギー消費基準に準じる

 

・純利益への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)

 ・洪水被害

  想定浸水深×直接・間接洪水被害

  過年度の洪水被害額(円/年)×洪水に頻度増加による被害額の増加率(%)

  異常気象の激甚化被害増

 

今後、各リスクの事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式に関し、網羅的な分析・検討を行いその解決策および行動計画を策定してまいります。

 

2)霊園事業

・4度シナリオ

 霊園事業

 ・マレーシアでの平均気温の上昇により都市部の温暖化が進み、死亡率が増加する

 ・墓地需要が高まり大規模な区画の墓地よりも、納骨堂など小規模の需要が高まる

 

・2度シナリオ

 霊園事業

 ・CO2の排出観点から、現地政府からの火葬が制限される

 ・大規模な森林開発に制限が掛けられる

 ・CO2の排出権と墓地を組み合わせたゼロCO2墓地の商品が増える

 ・炭素税が増加する

 

 マレーシアにおける当社グループの霊園事業は、マレーシアの首都クアラルンプールの中心部から北西に約23km離れたセランゴール州ラワン地区にあります。同州は実体経済に支えられた中間層が多く、経済活動が活発な地域です。この霊園事業は、首都近郊の森林地帯において約250エーカーの開発許可を得て行われており、その約30%が開発されています。また、この開発は、森林再生によって周囲の自然の景観美を保つように管理されており、水源の確保、開発区域内の河川の整備など、周辺の美しい自然を保全する形で開発が進められてきました。

 近年は伝統的な土葬だけでなく、価格的にも手頃な納骨堂やニッチ(特別に設けられた恒久的な窪み)に遺骨を安置する方式も選ばれています。火葬されたご遺骨は、一定の区画の土地上により多く安置されます。これは、従来の地域の宗教観に基づく土葬ではなく、火葬が選ばれるようになってきたことを示しており、このことにより土葬用区画向けに森林地帯を大規模に造成するだけではなく、納骨堂やニッチを建設することで土地の効率的な利用につながり、開発区画をより適切な管理をもって森林開発を進めることとなり、GHG排出量を削減する環境にも優しい開発も可能になっていく可能性があると考えております。また、現地とのコミュニケーションを密にすることで、開発上や運営上にて想定されるリスクをコントロールし業績向上およびCO2削減への貢献に努めてまいります。

 

・事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式

 売上高への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)

 ・都市部の温暖化の進行により霊園需要の増加

  温暖化の温暖上昇率×死亡増加率×競合他社とのシェア×基準年利用者数×平均単価

 

・費用への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)

 ・炭素税の増減による費用増減

  炭素価格(円/tco2)×Scope1,2排出量

 ・エネルギー価格の増減による費用増減

  平均気温の変化量×燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)

  燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)

  一次エネルギー消費基準に準じる

・純利益への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)

 ・洪水被害

  想定浸水深*直接・間接洪水被害

  過年度の洪水被害額(円/年)×洪水に頻度増加による被害額の増加率(%)

  異常気象の激甚化被害増

 

今後、各リスクの事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式に関し、網羅的な分析・検討を行いその解決策および行動計画を策定してまいります。

 

3) 当社事業におけるリスクと機会

リスク項目

当社事業

評価

リスク

機会

移行リスク

法規制

炭素税の増額

東京都ゼロエミ目標

宿泊

その他投資

炭素税の増加によりコスト増加

不動産の省エネ化助成金を受給

技術

再生エネルギーを購入しない・ZEB化、技術進歩に遅れる

宿泊

その他投資

エネルギーコスト増加

不動産の省エネ化助成金を受給

市場

原油価格の変動

宿泊

その他投資

エネルギーコスト増加

エネルギーコスト減少

市場

感染症の増加

死亡者数の増加

宿泊

その他投資

特定感染症が増えると移動・宿泊制限

霊園需要が高まる

評判

環境配慮商品を求める嗜好が強まる

宿泊

その他投資

当社の環境配慮商品が見劣り競合負

環境配慮商品がヒット

物理リスク

急性

高潮、台風の大型化、外水氾濫

宿泊

その他投資

地下・地上階に浸水

宿泊施設への避難所需要増加

慣性

内水氾濫
都市部の熱帯化

死亡者数の増加

宿泊

その他投資

エネルギーコスト増加、
旅行先の変更

熱帯化、特定感染症の増加による霊園需要増加

 

4)当社事業における選択シナリオと指標

 

 

2030

2050

出所/シナリオ

2℃

4℃

2℃

4℃

移行リスク

法規制

炭素税の増額

東京都ゼロエミ目標

炭素価格:135USD/tCO2,

東京都

エネルギー消費量を35%削減(2000年度比)

炭素価格:90USD/tCO2(EU)

炭素価格:200USD/tCO2,

東京都

エネルギー消費量を35%減少(2002~2007年対比)

炭素価格:113USD/tCO2(EU)

RCP2.6

IEA WEO ASP(2℃)

RCP 4.5

IEA WEO STEPS(4℃)

東京都

技術

再生エネルギーを購入しない・ZEB化、技術進歩に遅れる

-

-

2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH4・ZEB5基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す。

-

経済産業省 資源エネルギー庁第6次エネルギー基本計画

市場

原油価格の変動

64USD/Barrel

82USD/Barrel

60USD/Barrel

95USD/Barrel

RCP2.6

IEA WEO ASP(2℃)

RCP 4.5

IEA WEO STEPS(4℃)

市場

平均気温の上昇

感染症の増加

死亡者数の増加

日本 平均気温:0.76℃

日本 平均気温:1.04℃

日本 平均気温:1.08℃

 

地球が産業革命前から2度上昇した場合、高温による年間死者数が2050年までに370%増加

日本 平均気温:2.13℃

環境省 地球温暖化と感染症-いま、何がわかっているのか?

世界銀行“Climate Change Knowledge Portal”日本-平均予測の専門家|気候変動ナレッジポータ(worldbank.org) 2023年2月更新

評判

環境配慮商品を求める嗜好が強まる

炭素価格:135USD/tCO2,

炭素価格:90USD/tCO2(EU)

炭素価格:200USD/tCO2,

炭素価格:113USD/tCO2(EU)

RCP2.6

IEA WEO ASP(2℃)

RCP 4.5

IEA WEO STEPS(4℃)

物理リスク

急性

高潮、台風の大型化、外水氾濫

洪水発生確率約2倍

降雨量
約1.1倍
流量
約1.2倍

洪水発生確率約4倍

降雨量
約1.3倍
流量
約1.4倍

洪水発生確率約2倍

降雨量
1.1倍
流量
約1.2倍

洪水発生確率約4倍

降雨量
約1.3倍
流量
約1.4倍

国交省 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会「気候変動を踏また治水契約の在り方 提言」令和3年4月改定

環境省「気候変動閉胸評価報告書」

慣性

内水氾濫
都市部の熱帯化

死亡者数の増加

日本 平均気温:0.76℃

 

平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加

日本 平均気温:1.04℃

 

平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加

日本 平均気温:1.08℃

 

日本 平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加

 

地球が産業革命前から2度上昇した場合、高温による年間死者数が2050年までに370%増加

日本 平均気温:2.13℃

 

平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加

世界銀行“Climate Change Knowledge Portal”日本-平均予測の専門家|気候変動ナレッジポータ(worldbank.org) 2023年2月更新

Phronesis08 2-044:エネルギー気候変動リスクにそなえる 三菱総合研究所編著 丸善プラネット2012

The 2023 report of the Lancet Countdown on health and climate change: the imperative for a health-centered response in a world facing irreversible harms’November 14, 2023、The Lancet

 

(4)指標及び目標

 当社のホテル運営に係るSCOPE1、SCOPE2に該当するCO2排出量として、省エネ法および東京都条例で定める温室効果ガス排出量 算定・報告・公表する制度に基づき、ホテル運営のエネルギー使用状況、省エネの進捗状況報告書を毎年提出し、環境への負荷についてモニタリングし、その低減に努めています。

 ホテルアゴーラリージェンシー大阪堺を運営する当社子会社のアゴーラホテルマネジメント堺は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律に基づき、全体のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1,500k/年度以上である特定事業者としてエネルギーの使用量およびCO2発生量を近畿産業経済局長宛に報告しており、2023年に報告したCO2の排出量は以下の通りであり、また、アゴーラプレイス東京浅草およびアゴーラ東京銀座の2ホテルが入居する不動産を保有する当社子会社のヴァルゴ合同会社は、東京都の都民の健康と安全を確保する環境に関する条例 (環境確保条例)に基づき、東京都にエネルギー使用量およびCO2発生量を報告しており、2023年に報告したCO2の排出量は以下の通りです。

提出者(注4)

事業所名(所在地)

セグメントの名称

設備の内容

tCO2

ヴァルゴ

合同会社

アゴーラプレイス 東京浅草

(東京都台東区)(注)2

宿泊事業

ホテル・事業所

280

(注)5

アゴーラ 東京銀座
(東京都中央区)(注)2

宿泊事業

ホテル・事業所

230

(注)5

株式会社アゴーラホテルマネジメント堺

ホテル アゴーラ リージェンシー 大阪堺

(大阪府堺市堺区)(注)3

宿泊事業

ホテル・事業所・店舗

3,149

(注)5

(注)1 国内子会社である株式会社アゴーラホテルマネジメント東京に貸与されております。

2 国内子会社である株式会社アゴーラホテルマネジメント堺に貸与されております。

3 いずれも不動産信託受益権を保有しておりますが、会社名は法律・条例に基づき提出者の名称を記載しております。

4 いずれも2022年の原油換算エネルギー使用量から算出したCO2を2023年に各行政窓口に提出しております。

 

 2023年の実験的な取り組みとして、国内の旅行会社と連携しホテル事業者として排出される1泊あたりのCO2排出量として会計データおよび宿泊延べ人数から算出いたしました。ホテルアゴーラリージェンシー大阪堺の2022年CO2排出量(Scope1、Scope2、Scope3)は4,354.30tco2、宿泊者1人あたり50.04㎏でした。なお、このCO2排出量は「DTS Ver.1.0」により算出しています(「DTS Ver.1.0」のCO2排出量算定システムは、ISO14064-3:2019を参考に第3者より妥当性の確認を受けている「環進帳Ver.2.1」に基づくシステムです。※DTS及び環進帳は、株式会社バックキャストテクノロジー総合研究所が開発・提供するクラウドサービスです)。ホテルの事業運営については、不動産所有直営方式、リース・テナント方式、運営受託方式など経営方式により違います。一方で、主に施設や設備のエネルギー消費により発生するCO2(SCOPE1,2)と、主に運営サービスにより発生するCO2(SCOP3)とでは発生量が大きく異なります。当社は、不動産信託受益権による資産を自社保有しつつ、ホテル運営する場合、リース・テナントとして運営する場合、運営にあたり一切の不動産や営業許可をもたず、ホテルのサービス提供部分の提供のみに特化する場合など、複数の経営方式に細分化されホテル業を運営しております。そのため当社の宿泊事業全体から排出されるCO2の集計範囲やその測定方法の妥当性の検討が必要であり、有効な削減には経営方式毎に見合った適切な方法による削減が必要と考え、今後もその適正な方法を検討してまいります。

 当社は日本政府が表明ししている2050年までの「ネットゼロ目標」を共有しております。その課題達成に向けた取組みとして、ビルの老朽化に伴い適切な設備機器の更新を行っております。当社子会社の株式会社アゴーラホテルマネジメント堺は、省エネ法に基づき定期報告を提出にもとづくエネルギー使用量の省エネ指標(ベンチマーク指標)において、ホテル業が中長期的に目指すべきベンチマークより下回ったためS評価を受けております。

 

会社名

ホテル業の
ベンチマーク

2019

2020

2021

2022

2030

S評価

S評価

S評価

S評価

目標

株式会社アゴーラ
ホテルマネジメント堺

0.723

0.65

0.533

0.511

0.534

0.64

 

2030年に向けて、ホテルアゴーラリージェンシー大阪堺は老朽化が進みますが、ホテル業が目指すべきベンチマークである0.723よりも低い0.640を目指すべく、照明のLED化、空調冷温水ポンプへの省エネルギーシステムの導入、高効率ボイラーへの更新、蒸気式給湯器を一部HO給湯器に更新するなどの施策を進めております。また、非化石エネルギーへの転換としてオフサイトPPAなどの導入も検討してまいります。また、現在、大阪府堺市において建設しているホテル(大浜北町プロジェクト)は、CASBEEに準拠した計画をおこなっており、堺市に堺市建築物環境計画書を提出しております。

 

 当社の子会社である株式会社アゴーラホテルマネジメント堺は、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第8条第1項又は第7項の規定に基づき、一般事業主行動計画を策定する事業会社であります。働きやすい職場、家庭生活と両立しやすい職場とすることを目指し、その目標を、“男女とも勤続期間を5年以上とする”とし、2023年12月に大阪労働局に提出いたしました。当社連結子会社である株式会社アゴーラホテルマネジメント堺は、常時雇用する労働者の数が301人未満であり、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づく公表をおこなっておりません。また、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づく開示項目は“男女別勤続年数の差異”としており、上記の数値を公表しておりません。なお、当事業年度に大阪労働局に提出した2022年度の“男女別勤続年数の差異”の数値は、男性従業員の勤続年数5年6カ月、女性従業員の勤続年数3年11か月でした。

 

提出者

事業所名(所在地)

セグメントの名称

設備の内容

勤続期間
男性 注2

勤続期間
女性 注2

目標

株式会社アゴーラホテルマネジメント堺 注1

ホテル アゴーラ リージェンシー
大阪堺(大阪府堺市堺区)

宿泊事業

ホテル・事業所・店舗

5年6カ月

3年11カ月

男女とも勤続期間を
5年以上とする

 

注1)当社連結子会社である株式会社アゴーラホテルマネジメント堺は、常時雇用する労働者の数が301人未満であります。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づく公表をおこなっておりません。

注2)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づく開示項目は“男女別勤続年数の差異”としており、当事業年度に大阪労働局に提出した2022年度の“男女別勤続年数の差異”の数値は、男性従業員の勤続年数5年6カ月、女性従業員の勤続年数3年11カ月でした。

 

「未来予測2040」リクルートワークス研究所,2023等では、サービス業における人材不足は予測されており、2040年に100万人の労働者不足が予測されています。グループ全体で女性の働きやすい環境、家庭生活と両立しやすい職場、適切な賃金体系を目指すべく、その目標を共有して活動を進めてまいります。

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があると考えられるリスクについては、主に以下のようなものがあります。

① 経営環境の変化に係るリスクについて

 当社グループの国内における主たる事業はホテル・旅館等の宿泊施設の運営を中核とする宿泊事業であります。当社グループの宿泊事業については、訪日外国人旅行者の増加による顧客ニーズの多様化に的確に応えることにより収益の向上に努めております。国内外の政治・経済の情勢の変化による訪日外国人旅行者への影響、民泊事業者による宿泊市場への新規参入、近年の雇用・労働法制の変化により宿泊施設の運営に影響を及ぼす可能性があります。また、その他投資事業においては、市場の需給バランス等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 災害・事故におけるリスクについて

 当社グループの宿泊事業については、大規模地震・火災など自然災害・事故等により国内事業所の営業継続に影響を及ぼす可能性があります。

③ 資産価値の変動に係るリスクについて

 当社グループは、事業上必要な不動産(事業用及び販売用)を保有しているため、地価の動向および対象となる不動産の収益状況により、資産価値が低下し評価減が必要となった場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

④ 株価変動に係るリスクについて

 当社グループは、その他投資事業を営んでいるため、当社グループに悪影響を及ぼす市場動向や急激な変動がみられた場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 海外投資に係るリスクについて

 当社グループは、海外での事業を現地通貨建で取引しているため、大幅な為替相場の変動があった場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 東南アジア他成長が見込める一部の海外市場で事業展開を行っておりますが、海外各国において予期しえない政治・経済・法制度等の変化や社会的混乱、自然災害等といった事態が発生した場合、投下資本を回収できないおそれがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 法的規制に関するリスクについて

 当社グループの宿泊事業は、「旅館業法」「個人情報保護法」等による法規制をうけており、今後、これら規制・基準等の変更ならびにそれらによって発生する事態が当社グループの業績及び風評等に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 新型コロナウイルス等感染症の拡大

 世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、わが国の経済環境は激変するとともに、多くの企業の事業運営に少なからず影響を与えております。当社グループにおきましても、今後の事業運営上、業績に一定の影響を与える可能性があります。また、今後の温暖化により、デング熱、マラリア等の流行の可能性があります。

⑧ 継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、当連結会計年度において世界的な新型コロナウイルス感染症からの回復が見られたものの、通期において完全に回復するまでには至らず、営業損失93百万円、経常損失195百万円、親会社株主に帰属する当期純損失149百万円を計上しました。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に移行されるなどの進展がある一方で、ウクライナ情勢に起因する物価上昇や人員不足などにより景気の先行きは不透明であり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。

 当社は、当該状況を解消すべく、2020年7月に当社グループが保有する賃貸不動産を、2023年3月に当社が保有する固定資産を売却したほか、2023年9月には銀座・浅草のホテル取得に関わる借入金41億円の借換えを実施するなど金融機関との良好な関係を維持しております。また、今後の営業施策として、宿泊部門ではインバウンド需要の取り込みと販売価格の向上を図り、料飲・宴会部門では新規顧客と法人需要の獲得に注力し、加えて運営の効率化とコスト削減に努めております。その他投資事業におきましても、マレーシアにおける霊園事業につきましては、積極的な営業活動をすることにより、事業活動の成長に努めてまいります。

 以上より、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における売上高は、訪日外客数の増加という外的な要因により大きく影響をうけました。特に、12月の訪日外客数は、2019年同月比108.2%となる2,734,000人と新型コロナウイルス感染症拡大後の単月過去最多となり、12月として過去最高を記録しました。そのような中、当社グループの運営する宿泊施設におきましても、旺盛なインバウンド需要を要因として売上高が増加いたしました。その結果、売上高は前連結会計年度を大きく上回る当連結会計年度における連結売上高は前期を大幅に上回る7,309百万円(前期比47.6%増)となり、宿泊事業の売上高は6,419百万円(前期比58.3%増)、霊園事業および住宅等不動産開発事業等を行っているその他投資事業の売上高は前年とほぼ同じで890百万円(前期比0.8%減)となりました。

営業費用については、継続的なコスト削減に努めておりますが、円安基調が続き、材料費の他、水光熱費、人件費等、全体的に運営コストが増加し営業損失は93百万円(前年同期は営業損失1,401百万円)となりました。また、営業外収益として為替差益75百万円等により113百万円を計上いたしましたが、支払利息91百万円が発生したこと、ホテル不動産保有会社の借入金を借換えたことによる資金調達費用67百万円が発生したこと等により営業外費用215百万円を計上した結果、経常損失は195百万円(前年同期は経常損失1,106百万円)となりました。次に、特別利益として今井荘の売却に伴う固定資産売却益等により129百万円を計上いたしましたが、法人税、住民税及び事業税132百万円等の計上の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は149百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失1,298百万円)となりました。

 

・資産、負債、純資産の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,196百万円増加し、18,231百万円となりました。これは主に、現金及び預金が712百万円、建設仮勘定が1,258百万円増加しましたが、建物及び構築物が287百万円、土地が474百万円減少したこと等によるものです。

(負債)

 当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ1,000百万円増加し、12,889百万円となりました。これは主に、長期借入金が591百万円、未払金が259百万円増加したこと等によるものです。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ196百万円増加し5,341百万円となり、自己資本比率は、18.7%となりました。

 

セグメント別の経営成績は以下のとおりです。

・宿泊事業

 当連結会計年度における宿泊事業部門におきましては、順調な訪日外客数の増加によりすべての宿泊施設の回復が進みました。主要なホテル アゴーラ リージェンシー 大阪堺においては売上高2,547百万円(前期比39.9%増)、ホテル アゴーラ 大阪守口においては売上高1,412百万円(前期比48.9%増)となりました。また、アフターコロナを見据え、アゴーラ金沢、今井荘などの非採算部門を撤退し、東京・大阪・京都などのインバウンド需要が見込める都心部の宿泊施設の運営に集中したことにより、前期を大きく上回り、宿泊事業部門全体では売上高6,419百万円(前期比58.3%増)となりました。しかしながら、インバウンド需要の増加により宿泊部門の回復は進んだ一方で、レストラン、宴会部門における人員不足の影響もあり一部のレストランの運営を休止し、効率的な人員配置となるようホテル内において適正な人員配置に努めていますが、人員不足を補うための採用コストが増加し、賞与支払により人件費が増加しております。また、資源高、円安等の影響による、材料費、水光熱費の増加等の影響を受け、2019年と比較し営業費用は増加しました。しかし、東京や京都でのマネージメントコントラクト(運営受託契約)による宿泊施設の運営を増やしたことによる利益増加が寄与し、営業利益は144百万円(前年同期は営業損失1,208百万円)となりました。なお、2023年3月31日付の今井荘の売却にともない、特別利益として固定資産売却益129百万円を計上しております。

 

・その他投資事業

 マレーシアにおける霊園事業の売上高は堅調に推移し前年とほぼ同じ866百万円(前期比0.1%減)、営業利益は111百万円(前期比38.6%減)となりました。これは、当連結会計年度においても、新規受注および引き続き既契約案件の引渡しも堅調に進捗したものの、工事、運営に伴う水道光熱費が増加したことによります。住宅等不動産開発事業は、売上高23百万円(前期比22.6%減)、営業利益14百万円(前期比38.7%減)、証券事業は営業損失20百万円(前年同期は営業損失74百万円)となりました。それらの結果、その他投資事業部門における売上高は890百万円(前期比0.8%減)、営業利益104百万円(前期比19.0%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ788百万円増加し、当連結会計年度末には2,783百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

(イ)営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動の結果獲得した資金は394百万円(前連結会計年度は使用した資金が240百万円)となりました。

 これは、主として未払金の増加額270百万円が計上されたこと等によるものであります。

(ロ)投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動の結果使用した資金は617百万円(前連結会計年度は使用した資金が763百万円)となりました。

 これは、主に有形固定資産の売却による収入を583百万円計上したものの、有形固定資産の取得による支出1,194百万円が計上されたこと等によるものであります。

(ハ)財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動の結果獲得した資金は980百万円(前連結会計年度は獲得した資金が647百万円)となりました。

 これは、主に長期借入れによる収入を4,740百万円、長期借入金の返済による支出を4,197百万円、非支配株主からの払込みによる収入を355百万円計上したこと等によるものであります。

(資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金のほか主力事業である宿泊事業における新規ホテル等の設備投資に係る資金であります。これらの財源につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入金等による資金調達を基本としております。また、資金調達に際しては、財務の健全性や安全性の確保を目指しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)が営んでいる事業はいずれも生産、受注の概念には該当しないため、「生産及び受注の実績」は記載しておりません。

 

販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額

(千円)

前年同期比

(%)

宿泊事業

6,419,039

58.3

その他投資事業

890,255

△0.8

合計

7,309,294

47.6

(注)1 総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。

2 総販売実績に輸出高はありません。

3 本表の金額には消費税等は含まれておりません。

4 本表の金額については「外部顧客に対する売上高」について記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度における売上高は、訪日外客数の増加という外的な要因により大きく影響をうけました。特に、12月の訪日外客数は、2019年同月比108.2%となる2,734,000人と新型コロナウイルス感染症拡大後の単月過去最多となり、12月として過去最高を記録しました。そのような中、当社グループの運営する宿泊施設におきましても、旺盛なインバウンド需要を要因として売上高が増加いたしました。その結果、売上高は前連結会計年度を大きく上回る7,309百万円(前期比47.6%増)となり、宿泊事業における売上高は6,419百万円(前期比58.3%増)、霊園事業および住宅等不動産開発事業等を行っているその他投資事業の売上高は前年とほぼ同じ890百万円(前期比0.8%減)となりました。

営業費用については、継続的なコスト削減に努めておりますが、円安基調が続き、材料費の他、水光熱費、人件費等、全体的に運営コストが増加し営業損失は93百万円(前期は営業損失1,401百万円)となりました。また、営業外収益として為替差益75百万円等により113百万円を計上いたしましたが、支払利息91百万円が発生したこと、ホテル不動産保有会社の借入金を借換えたことによる資金調達費用67百万円が発生したこと等により営業外費用215百万円を計上した結果、経常損失は195百万円(前期は経常損失1,106百万円)となりました。次に、特別利益として今井荘の売却に伴う固定資産売却益等により129百万円を計上いたしましたが、法人税、住民税及び事業税132百万円等の計上の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は149百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失1,298百万円)となりました。

 

③経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④資本の財源及び資金の流動性についての分析

・キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

⑤経営者の問題認識と今後の方針について

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。