第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「誇りうるナンバーワンホテルグループの創造を通じ、社会に貢献すること」を経営の基本理念としております。そしてお客様に「感動と満足を提供するホテルとなること」を目指して、「新規需要の開拓」と「マーケット毎の施策推進」を戦略の柱に、多様なお客様のニーズに対応した商品(サービス)を開発して事業の発展を図ることで「最高級のホテルとしてのブランド」を確立し、お客様・株主・従業員などすべての利害関係者が求める「企業価値」を高めていくことを基本方針としております。

 

(2) 経営環境

① 市場環境

(プラスの環境)

・大阪・関西万博の開催(2025年)

・統合型リゾート施設(IR)の開業

・なにわ筋線の開業

(マイナスの環境)

・新規開業ホテルの増加

 

② 競合他社の状況

当社グループは、ホテルの経営を主たる事業としておりますが、当該事業は比較的参入障壁が低く、中小事業者を含め、市場には多数の競合が存在します。また、他業種の新規参入が相次ぐ等、ホテル市場は供給過多が懸念されております。

当社グループは、主要ホテルがフルサービス型のシティホテルであるため、宿泊、宴会、レストラン部門などバランスのとれた売上構成であります。当社が培ってきた永年の歴史に裏打ちされた顧客基盤を有し、顧客セグメントに応じてそれぞれの部門において販売施策を講じております。

 

③ その他

社会のデジタル化が急速に進展する中で、変化にスピーディーに対応し、様々な新しい技術を積極的に取り入れ、当社グループの生産性向上・業務効率化並びにお客様の利便性向上につなげることが必要不可欠であると認識しております。

(当社グループにおけるデジタル化の取り組み)

・DXを活用した経営

・AIを有効に活用した宿泊施設管理システムの導入 等

 

(3) 中期経営戦略ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後の見通しにつきましては、雇用・所得環境の改善による社会経済活動の活発化や2025年日本国際博覧会開催等により国内外からの需要が増加する一方で、国際情勢の不安定や円安による物価上昇、原材料・エネルギー価格の高騰等、依然として不透明な状況が続くものと見込まれます。

ホテル業界におきましても、訪日外国人客数が増加するなどの明るい兆しが見えるものの、原材料費・光熱費・人件費の増加による収益の悪化が引き続き懸念されるうえ、新規ホテルの開業による競合環境の激化も予想されます。

こうした環境認識を踏まえ、当社グループは「中期経営計画2026『ReRISE』」に掲げる「ホテルブランドカテゴリーの再編成・新規展開」「ホテル事業のバリューアップ」「新規出店パイプラインの拡大」を基本戦略として、「RIHGA VISION 2035『安心のサービスと感動のおもてなしで世界中のお客様の期待を超える日本最高峰のホテルグループ』」の実現に向けて、取り組んでまいります。

 

 

  ホテルブランドカテゴリーの再編成・新規展開

当社の強みを活かしながら、将来の開発に幅広く対応できるよう、当社が設定するホテルカテゴリーをグレード別・スタイル別で整理し直すとともにバリエーションを増やすことにより、多様化するニーズにも対応可能なブランドカテゴリーに再編いたしました。新たに展開する「Xカテゴリー」では、トレンド・独自性・新しさを感じる表現を重視し、これまで当社のメインターゲットとしては捕捉しきれていなかった新規層に積極的にアプローチしてまいります。バリエーションを増やすことにより、ドミナント展開においても個々の差別化を図ってまいります。

  ホテル事業のバリューアップ

既存ホテルについては、各グループホテルへの積極的な改装投資を踏まえ、客室単価を含む各種単価の適正化を実施するほか、非効率部門でのアウトソーシング活用やホテル内遊休スペースの有効活用により収益力の強化を図ってまいります。

セールス&マーケティング・ブランド発信の強化策として、BtoB市場では、当社が強みとするMICEを柱とした営業強化や送客基盤強化を行います。また、BtoC市場では、当社会員組織「リーガメンバーズ」を軸に国内顧客基盤の持続的成長を目指すとともに、自社サイト及びSNSを通じたデジタルコミュニケーションを強化してまいります。

DXを活用した経営及びオペレーション効率の改善策としては、マネジメント・オペレーション・人事関連を中心にDXを推進することにより、経営判断のスピードアップと経営効率の改善を図り、事業環境の変化にタイムリーに対応できる会社組織にレベルアップさせるとともに、最適な人材配置を進めることで売上・利益の拡大を目指してまいります。

人的資本強化のため、現行人事制度を見直し、「ブランドを支えるプロフェッショナル人材を育成すること」「幅広い人材が活躍する機会を創出しイノベーションを推進する組織文化を醸成すること」「人事の透明性を担保し、成長実感の充足とパフォーマンスの向上を図ること」を企図し、「キャリア自律の推進」「年功的な賃金制度の是正」「多様な働き方の実現」を目指した人事制度改革を推進してまいります。

また、2024年11月に資本業務提携契約を締結し、その後同社株式を追加取得し連結子会社化した株式会社芝パークホテルとの更なるシナジー創出に取り組んでまいります。具体的には、従来手薄であった欧州を中心に複数の海外展示会への共同出展等を計画しており、更なるインバウンド需要の取り込みを図るほか、当社の法人顧客基盤に対して芝パークホテルでの宴会需要を取り込むべく協業すること等です。

  新規出店パイプラインの拡大

ベントール・グリーンオーク株式会社と締結しているパイプライン契約(同社のアセット投資について優先的にオペレータ契約を検討できる契約)を活用しながら、同社以外からの案件招聘も拡大させ、案件によってはインオーガニックな成長を視野に入れた他社とのアライアンスも検討していく等により、さらなる成長に繋げます。長年培ってきた「リーガロイヤル」ブランドとノウハウを活用しながら、出店候補地に最適なブランドカテゴリー・契約形態を選定し、国内を重点対象として宿泊主体型のホテルを中心に拠点数増加による着実な成長を目指してまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2024年5月13日に公表いたしました中期経営計画2026『ReRISE』におきまして、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な目標として売上高、営業利益、売上高営業利益率を重要な経営指標と位置付けております。

なお、2024年11月29日に株式会社芝パークホテルが当社グループに加わったこと等、足元の経営環境が大きく変化したことを踏まえ、中期経営計画を修正しております。その具体的な目標数値につきましては、2025年2月14日に公表いたしました「中期経営計画修正に関するお知らせ」をご参照ください。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社では気候変動への対応も含めたサステナビリティに関する事項(ただし、コンプライアンス及びリスク管理に関する事項を除く)を審議・議論し、方針を決定する機関として「サステナビリティ委員会」を設置しています。推進委員として本社部門長、グループホテル総支配人が任命され、サステナビリティに関する取り組みを年2回の委員会で報告しております。その内容は経営会議・取締役会へも報告され、その活動を監督しています。

 


 

(2) 戦略

当社は日本全国および海外においてホテルおよびホテル附帯事業とその新規開発を行っております。サステナビリティ活動についてはすべてのステークホルダーとのエンゲージメントを強化し、将来に亘る企業活動継続の基盤を作るため、事業活動を通じた環境保全への取り組み、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを軸とした働きやすい・働きがいのある環境づくり、地域社会との積極的な関わりによる地域の魅力発信、「安全・安心」を守る組織づくりの推進を重点課題として、これらのリスクや機会に対応することで持続可能な社会の実現に取り組んでいます。

 

1.環境

気候変動による気象災害増加は、営業活動における売上機会損失や原材料・エネルギーコスト高騰による利益圧迫など当社の事業活動に大きな影響を及ぼします。当社ではCO2排出量の軽減、食品ロスの削減等の対策により環境負荷軽減に努めます。

① CO2排出量の算出および削減

照明のLED化など省エネ効果の高い設備への切り替え、バックオフィスにおけるオフィスカジュアルの推奨による空調温度の適正化を行うことでCO2削減を図ります。また、更に削減を図る為、各事業所におけるCO2排出量の算出を推進し、CO2排出量の可視化に取り組んでいます。

② 特定プラスチック製品提供・排出量の削減

2022年4月の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」施行にあたり、当社の各事業所において特定プラスチック製品の提供合理化、再生プラスチックへの素材転換、水平リサイクル、軽量化を実施しました。これからも引き続きプラスチック製品提供・排出の削減に努めてまいります。

 

③ 食品ロスの削減

大型の宴会場やレストランを備えるホテルでは、食品ロスは大きな課題の1つとなっていますが、製造過程では野菜の端材まであますことなく使用するよう工夫しています。また廃棄食材を堆肥にする、廃食油を持続可能な航空燃料の原料に提供するなど食の循環にも取り組んでいます。

 

2.人材

サービス業全般において人材不足が課題となるなか、人的資本の価値向上が当社の企業価値の向上に不可欠であると考えています。すべての従業員が自身の能力を最大限に発揮し、心身ともに健康的に働ける「働きやすい会社」、仕事に誇りや価値を感じられ、会社・従業員同士を信頼でき、自身の成長を感じられる「働きがいのある会社」、これらの実現を通じて企業の成長を図ってまいります。

①人材育成の方針

・幅広い人材を確保する採用活動

高等学校や専門学校へ卒業生などをリクルーターとして派遣し、意欲の高い学生の確保に努めています。採用後はメンターを設置し、メンタル面のサポートを行うことでエンゲージメントの向上と離職率の低下を図っています。

専門性の高い職種においては中途採用を推進することで組織力の向上を図っています。また、外国人の採用も積極的に行い、インバウンド対応力の強化を図っています。

当社が特に重視する調理人材では、普通科高等学校の卒業生を採用し、業務に従事しながら専門的な知識・技術を教育することで人材確保に努めています。

・多彩なキャリアを支援する研修制度

階層別の研修を行うことで従業員本人のキャリア志向を具体化し、ステップアップを支援します。

調理など専門性の高いスキルを磨く研修や、経営管理能力向上のための研修など、多彩なキャリアの人材を育成することで企業の持続性を高めます。

②社内環境整備

・ライフステージにあわせた支援制度

女性・男性の育児休業取得推進や休業中・休業後の支援、介護・看護休暇などライフステージに合わせた支援制度を充実し、働きやすい環境の整備を進めています。

・女性活躍推進

女性ライン管理職へメンターをつけることで、さらなるキャリアアップを後押しし、意欲的に管理職を目指す女性が生まれやすい土壌を醸成します。

 

(3) リスク管理

当社では各事業に相当程度の影響を与えうるすべてのリスクを発見・特定し経営レベルで掌握、各々のリスクが経営に与えるインパクトを客観的に計測し、対応の優先順位を明確化することなどを目的として「リスク管理委員会」を設置しております。

「リスク管理委員会」はリスク管理における意思決定機関として、リスク管理取組全体の方針・方向性の協議・検討を実施し、必要に応じ取締役会、経営会議に諮ることで適切に監督を行っております。

 

(4) 当社にとって重要なマテリアリティのリスク・機会・対応・指標・目標 

1.環境

環境を守るための行動を常に継続します。

① CO2排出量の削減

・リスク:気象災害発生増加・激甚化による売上機会減と仕入れコスト増

・機会 :省エネ推進によるコスト削減

・対応 :照明のLEDへの変更、エレベーター稼働数制限等

・指標 :CO2排出量削減

2024年度CO2排出量(Scope1および2)実績 22,393tCO2e

※本社および連結対象子会社が直接運営する施設での排出量(但し、株式会社芝パークホテル分を除く。また、運営受託ならびにフランチャイズ施設は含まない。)

・目標 :現在、GHG排出量の削減目標は設定しておりませんが、今後の事業活動における環境負荷低減の重要性を認識しており、目標設定を含めた対応方針の検討を進めてまいります。また、Scope3の排出量についても、今後の算定体制の整備を進めていく予定です。

 

② 特定プラスチック提供量の削減

・リスク:燃料費高騰によるコスト増

・機会 :提供量の軽減・見直し・リサイクル実施によるコスト減

・対応 :原材料の転換・水平リサイクルの実施

・指標 :特定プラスチック提供量

2024年度特定プラスチック提供量実績 

 

排出量(t)

宿泊人数(人)

(※1)

原単位(g)

変化率

(※2)

2024年度

16.7

1,579,829

10.6

△44%

2023年度

18.0

1,591,407

11.3

△40%

2019年度

27.7

1,467,051

18.9

※1 特定プラスチック使用製品の提供量と密接な関係をもつ値

※2 2019年度からの変化率

集計範囲:直営ホテル、株式会社芝パークホテルを除く連結子会社直営ホテル、運営受託ホテル

 

・目標 :2025年度までの特定プラスチック使用製品の提供に係る原単位(g)を、 2019年度の提供量(※)に対して△23%(バイオマス・再生プラスチックを除く。)を継続して達成する。

※ コロナ影響前の直近年度で且つ提供量(仕入れ量・製品の重さ)の把握が可能な年度

 

2.人材

あらゆる人材が自身の人生を充実でき、能力を発揮できる環境を目指します。

① あらゆる人材が輝ける職場環境づくり

・リスク:人材の流出・獲得困難、ノウハウの逸失、エンゲージメントの低下

・機会 :生産性の向上、採用コストの削減、インバウンド対応力強化

・対応 :育児・介護休業取得の推進、女性活躍プロジェクトチーム設置、ダイバーシティ推進、

メンター・メンティ制度設置

・指標及び目標 :「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

② 能力開発のサポート

・リスク:事業の継続的成長が望めなくなる

・機会 :自己実現の機会提供による生産性の向上、多様な事業への対応機会

・対応 :各種研修実施、自己研鑽制度の整備、リスキリングの機会提供

・指標 :調理職海外研修派遣、社内コンテスト開催、各種研修実施

・目標 :現在、能力開発のサポートに関する定量的な目標は設定しておりませんが、今後の人的資本強化にあたり目標の設定を検討しております。従業員の能力開発に資する施策として各種研修や制度の充実を図っており、これらの実施状況については継続的にモニタリングを行っております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)主要なリスク

① 景気、海外情勢等

当社グループは、宿泊、宴会、婚礼、食堂等の事業を中心に展開しておりますが、一般消費者の消費動向や企業の業績動向の他、国家間の関係悪化、テロ、自然災害、流行疾患等の影響が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

その程度については、当該事象の内容により様々であると認識しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性については、2011年に東日本大震災、2019年に日韓関係の悪化、2020年に新型コロナウイルス感染症等が発生しております。 

当該リスクへの対応については、リスク管理委員会を設置し、各種リスクの分析と評価を行うとともに、対策マニュアルやBCPを策定しております。また、実際に自然災害等のリスクが顕在化した場合は、速やかに対策本部を立ち上げ、対応する体制を整備しております。

 

② 食品の安全性及び表示

当社グループは、食事の提供と食品の販売を行っており、食品の安全性及び消費・賞味期限、産地、原材料等の表示については日頃より十分な注意を払っておりますが、食中毒あるいは誤表示等、食の安全に対する信頼を損なう事態が生じた場合、信用の失墜から、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

その程度については、当該事象の内容により様々であると認識しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性については、近年において開示及び当局への届出を余儀なくされる事態が数件発生しております。

当該リスクへの対応については、社内に安全衛生管理室を設置し、衛生管理マニュアル等の整備を通じて「食品衛生法」「JAS法」「景品表示法」等の法令遵守の徹底を図るとともに、定期的な衛生検査、メニュー表示チェック等を実施し、食中毒の未然防止、食品検査の充実、メニュー・食品表示の明確化等に努めております。

 

③ 個人情報の管理

当社グループは、顧客等の個人情報を保有しており、社内教育を通じて個人情報管理体制の強化を図る等、その管理は厳重に行っておりますが、万一個人情報が漏洩した場合、信用の失墜から、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性及びその程度については、当該事象の状況により様々であると認識しております。

当該リスクへの対応については、「個人情報保護法」の趣旨に則り、社内規程の整備、情報システムのセキュリティ向上、従業員教育の充実等により、管理体制の強化に努めるとともに、保険を付保することによって業績への影響に備えております。

 

④ 労務関連

当社グループは、多くのパートタイム従業員を雇用しており、今後、社会保険や労働条件等の労務環境に変化がある場合、人件費の増加から、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、パートタイム以外の従業員の処遇等についても、関連法令や労務環境に変化がある場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

その程度については、当該事象の状況により様々であると認識しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性については、近年各種保険料率は上昇傾向にあり、多少なりとも影響が生じております。

当該リスクへの対応については、「人事運営の改革」を重要戦略の1つとして掲げ、従業員のモチベーションの向上や労働環境の整備等を進めております。

 

 

⑤ 施設の毀損、劣化等

当社グループは、事業用に相応の固定資産を所有しており、火災、台風、地震等の災害により施設の毀損、劣化等の事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

その程度については、当該事象の状況により様々であると認識しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性については、2018年に台風21号により修繕を必要とする建物被害が発生しております。

当該リスクへの対応については、計画的に建物・設備の点検・補修を行い、耐震補強等の防災対策工事を推進するとともに、保険を付保して業績への影響に備えております。

 

⑥ 財務関連

a.減損会計

当社グループは、事業用に相応の固定資産を所有しており、将来における地価の動向や収益状況によっては、減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

その程度については、当該事象の状況により様々であると認識しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性については、当連結会計年度、東京都新宿区のホテルの資産グループにおいて、回収可能価額にまで帳簿価額を減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

当該リスクへの対応については、設備投資計画時に資産性を慎重に判断したうえで、将来キャッシュ・フローが十分に見込まれる事業用固定資産を計上するように努めております。

 

b.投融資

当社グループは、国内各地でホテル展開を行っており、投融資先の個別ホテルの業績動向によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

その程度については、投融資先の個別ホテルにより様々であると認識しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性については、新型コロナウイルス感染症の影響からの持ち直しの動きがみられるため、当該リスクは高くないと認識しております。

当該リスクへの対応については、投融資先の個別ホテルに対する運営指導を徹底し、業績の向上に努めております。

 

(2)リスクへの取り組み

当社グループは、リスク管理を体系的に規定する「リスク管理規程」に基づき、取締役常務執行役員浅沼吉正を委員長(2025年6月24日付で常務執行役員坊傳康真が就任予定)とする「リスク管理委員会」を設置し、リスク管理体制の整備・運用を行っております。

当連結会計年度も、「リスク管理委員会」においては、経営層、部門長、全従業員の3ルートから、アンケート・ヒアリング等により、当社グループ内のリスクを収集し、発生可能性と重要度の観点から評価・分析しました。そのうえで、各所管部署にフィードバックを行い、各所管部署における対応策の検討状況をモニタリングするとともに、特に重要なリスクに関しては、リスク管理委員会が所管部署と協働して、対策推進に取り組んでおります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

ホテル業界におきましては、インバウンド需要の増加や法人需要の回復により、消費動向には持ち直しの動きが見られるものの、原材料費・光熱費・人件費をはじめとした各種コストの上昇により、引き続き厳しい事業環境下に置かれております。

こうした環境下、当社グループは2024年5月に、私どもが日頃から最も大切にし、また今後も揺るがすことのない価値観、存在意義をパーパス「人を、地域を、日本を、世界を、あたたかい心で満たしていこう。」として明確化し、あわせて、ホテル開業100周年を迎える2035年に目指す姿として「RIHGA VISION 2035」を策定いたしました。

また、2024年から始まる中期3カ年計画を「ブランドの再構築と新たな成長に向けた基盤強靭化の期間」と位置づけ、「中期経営計画2026『ReRISE』」を策定いたしました。中期経営計画では「ホテルブランドカテゴリーの再編成・新規展開」「ホテル事業のバリューアップ」「新規出店パイプラインの拡大」を基本戦略として掲げ、各種取組みを推進してまいりました。

「ホテルブランドカテゴリーの再編成・新規展開」につきましては、当社の強みを活かしながら多様化するニーズに応え、将来の開発に幅広く対応できるよう、ホテルのグレードとスタイル別にカテゴリーを再整理するとともに、ブランドのバリエーションを増やしました。また、これまで当社のメインターゲットとして捕捉しきれていなかった新規層に積極的にアプローチすることを目的に、トレンド・独自性・新しさを感じる表現を重視し、街の魅力を際立たせた個性あふれるホテルを展開する「Xカテゴリー」を新設いたしました。

「ホテル事業のバリューアップ」につきましては、リーガロイヤルホテル(大阪)が2025年4月1日よりIHGホテルズ&リゾーツのコレクションブランドである「ヴィニェット コレクション」に加盟し、「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション」としてリニューアルオープンいたしました。当期中においては「ヴィニェット コレクション」の導入に備え、約1,000室の客室やフロントカウンター、一部のレストランのリニューアル工事を行いました。それに加えて、ロビーや宴会場の一部、外壁のリノベーション工事を順次行ったほか、宿泊部門のユニフォームを一新する等、ブランド価値の向上に取り組みました。

2024年9月には2025年日本国際博覧会の迎賓館運営業務を受託することを発表いたしました。博覧会開催以降、国内外の賓客との国際交流の場として設置された迎賓館において賓客への接遇・飲食の提供等を行っております。これまでの賓客接遇や数々の国際会議を通じて培ってきた運営力、食へのこだわり、そしてあたたかい心から生まれるおもてなしにより、大阪・関西万博の成功の一助となるよう努めてまいります。

セールス&マーケティング・ブランド発信の強化策として当社会員組織「リーガメンバーズ」を軸に国内顧客基盤の持続的成長に取り組み、「リーガメンバーズ」の会員数は2025年3月に46万人を突破いたしました。2024年12月には今後の新規ホテル展開を踏まえ、海外団体やMICE案件のみならず、多様化し増加傾向にある外国人個人旅行客を中心としたインバウンド全体の受注強化を図るため「インバウンド事業部」を新設いたしました。訪日インバウンドに係わる業務を統括し、インバウンド需要の取り込みに注力しております。

DXを活用した経営及びオペレーション効率の改善策として、当社ではデジタル技術を活用したホテルオペレーションの変革と経営のスピード向上により、ビジネス環境や顧客ニーズの変化にタイムラグ無く対応できる組織づくりと新たな価値創出を図ることをDX戦略として掲げ、その推進に取り組んでまいりました。今年度においてはAIを有効に活用する新規PMS(宿泊施設管理システム)導入に向けた基盤づくりや多様化する業務・労働環境への対応、社内DX人材の育成等に取り組み、2024年9月には経済産業省の定める「DX認定事業者」に認定されました。

また、人的資本の強化を目的とした人事運営の改革の一環として、全社員を対象としたベースアップを行い、処遇の改善を実施いたしました。ブランドを支えるプロフェッショナル人材育成を目的として、語学研修をはじめとした各種社内研修を充実させました。調理部門の若手社員に対する育成制度も充実させ、調理専門学校の卒業生だけではなく普通科高校の卒業生も採用の対象に加えることで採用の幅を拡げ、調理人材の確保と育成に注力いたしました。また、「人」が創るあたたかなおもてなし、快適で心地よい空間をお客様へお届けするためには、スタッフ一人ひとりの心と身体の健康が大切であるとの思いから「ロイヤルホテル健康経営宣言」と「健康経営戦略MAP」に基づき、経営課題の一環として従業員の健康増進とワークライフマネジメントの推進に取り組みました。これらの取り組みが評価され「健康経営優良法人」に5年続けて認定されました。昨年度から運用を開始した社員の自律的成長を支援する公募制度「チャレンジ・キャリア制度」は、今年度においても新設部署や新規出店ホテルの業務に携わるスタッフをグループホテルから広く募集し、幅広い人材の活躍機会の創出とキャリア自律の推進に寄与しました。

「新規出店パイプラインの拡大」に関しましては、2026年春開業予定の「リーガロイヤルリゾート沖縄 北谷」、同年春頃開業予定の大阪なんば、同年秋頃開業予定の福岡博多、2027年以降開業予定の広島平和大通りと、4件のホテル開業計画を発表いたしました。それらに加えて5件の出店意向表明を提出し、新規ホテル出店に関して協議中でございます。

2024年11月には株式会社芝パークホテルと資本業務提携契約を締結し、その後同社株式を追加取得したことから同社は当社の連結子会社となりました。これにより「芝パークホテル」「パークホテル東京」の2つのホテルが当社グループに加わりました。資本業務提携を行うことにより、両社のブランドとノウハウを活用したインバウンド集客力の強化や国内顧客向けのセールス力向上、共同購買によるコスト削減と効率化の検討等、更なる事業展開等のシナジーを見込んでおります。また、ロイヤルホテルから2名の役員派遣とITインフラ整備により、スムーズな情報連携体制を構築することにより、経営面・営業面での融和を加速させ、事業・ガバナンス・人事等各セクションでのシナジー創出を推進いたしました。この資本業務提携契約締結を機に2024年5月に公表した「中期経営計画2026」の数値目標を上方修正いたしました。

この結果、当連結会計年度の売上高は、25,164百万円と前年同期比4,495百万円(21.8%)の増収となりました。これは既存拠点で増収したことに加え、2024年11月29日付で株式会社芝パークホテルの株式を取得し連結子会社化したこと等によるものであります。

損益面では、連結営業利益912百万円(前年同期比355百万円の増)、連結経常利益796百万円(前年同期比208百万円の増)となりました。特別利益に負ののれん発生益1,137百万円、段階取得に係る差益344百万円を計上したことから親会社株主に帰属する当期純利益は1,737百万円(前年同期比836百万円の増)となりました。

なお、当社グループは、ホテル経営及びホテル附帯業務を事業内容としており、事業セグメントが単一であるため、セグメント情報を省略しております。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

なお、当社グループにおきましては、2024年11月29日付で株式会社芝パークホテルの株式を取得し連結子会社化したため、客室部門の売上高が増加しております。

 

(部門別売上実績)

部門

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

客室

10,294

43.9

宴会

5,468

16.6

食堂

3,518

21.3

その他

5,882

△0.7

合計

25,164

21.8

 

(注) 受注生産は行っておりません。

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ6,793百万円増加し38,361百万円となりました。

内訳では流動資産が同1,125百万円減少し15,339百万円となりました。これは株式会社芝パークホテルの株式を取得したため現金及び預金が978百万円減少したこと等によります。固定資産は同7,919百万円増加し23,022百万円となりました。これは株式会社芝パークホテルの株式を取得し連結子会社化したため有形固定資産が7,283百万円増加したこと等によります。 

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,634百万円増加し15,325百万円となりました。これは株式会社芝パークホテルの株式を取得し連結子会社化したため繰延税金負債等が2,682百万円増加したこと等によります。

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ3,158百万円増加し23,035百万円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益、非支配株主持分の計上等によります。これにより自己資本比率は、前連結会計年度末の63.0%から56.0%になりました。

 

(3)  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、投資活動及び財務活動による資金が減少したため、前連結会計年度末と比べ1,037百万円減少し、11,184百万円となりました。

当連結会計年度の営業活動により得られた資金は、1,204百万円(前連結会計年度は1,624百万円の資金の減少)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益の増加等によるものです。

当連結会計年度の投資活動により使用した資金は、1,981百万円(前連結会計年度は478百万円の資金の減少)となりました。これは主に子会社株式の取得による支出等によるものです。

当連結会計年度の財務活動により使用した資金は、260百万円(前連結会計年度は36百万円の資金の減少)となりました。これは主に配当金の支払額等によるものです。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、2023年3月にリーガロイヤルホテル(大阪)の土地、建物の信託受益権等の譲渡により適切な資金を確保することができました。健全な財政状況を目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出により長期安定資金を確保する方針としております。

資金計画につきましては、基本的に営業活動により得られた資金を有効活用し、設備投資等に充当しております。

 

当社グループのキャッシュ・フロー指標は次のとおりであります。

回次

第95期

第96期

第97期

第98期

第99期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率

(%)

17.6

26.8

59.0

63.0

56.0

時価ベースの自己資本比率

(%)

20.5

19.8

64.6

55.0

37.1

債務償還年数

(年)

0.5

インタレスト・
カバレッジ・レシオ

(倍)

0.2

229.0

 

(注) 1 自己資本比率:自己資本/総資産 

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

2 第95期、第96期及び第98期の債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 

(4)  重要な会計上の見積り及び該当見積りに用いる仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

繰延税金資産については、将来の回収可能性を慎重に検討して計上しております。詳細は、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

2024年4月1日前に締結された契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

なお、当連結会計年度に締結した重要な契約は以下のとおりです。

 

(株式会社芝パークホテルとの資本業務提携契約締結について)

当社は、2024年11月11日開催の取締役会において、株式会社芝パークホテルの株式を取得し子会社化すること、及び同社との間で資本業務提携契約を締結することを決議し、同日付で資本業務提携契約を締結いたしました。

また、2024年11月29日付で同社の株式を取得し当社の子会社となりました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 [連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

特記事項はありません。