第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、次の経営方針を掲げ、全ての役員及び従業員が、職務を執行するにあたっての基本方針としております。

① 顧客第一主義に徹し、お客様に心の満足を提供する企業を目指しております。

② ホテル業を通じ、社会・経済の発展に貢献する企業を目指します。

③ ステークホルダー(株主・お客様・従業員・パートナー・地域等)に対する責任を果たし、社会規範に沿った事業活動を行う企業を目指します。

 

(2) 中期経営戦略

当社は、1888年(明治21年)に国際観光都市・京都で創業し、2028年には創業140周年を迎えます。 厳しいコロナ禍を乗り越えた今、持続可能なホテルを目指し、より盤石な経営基盤の確立を実現すべく 2026年3月期から2028年3月期までの3ヶ年を対象とする「第3次中期経営計画」を策定いたしました。当該第3次中期経営計画においては、以下のビジョンを掲げ、重点施策に取り組んでまいります。

① ビジョン

コロナ禍を生き抜いた今、「第二創業」の決意も新たに、お客様、お取引先、 株主、従業員、その他全てのステークホルダーにとって、「WIN-WIN HOTEL」 たらんことを目指す。

② 重点施策

(イ) 収益力強化、協働力強化

・ 商品・サービスの付加価値向上 → ※改装による施設競争力の維持強化

・ 販売価格の適正化

・ 基盤となる顧客との関係強化

・ 会員利用促進と活用

・ 多様な顧客の取り込み

・ パートナー企業やテナント等ステークホルダーと協働、WIN-WIN 関係を構築

・ 生産性の向上

 ※ 改装の概要(予定)

  工事対象: ホテルオークラ京都の客室全般

  期間: 2026年から2029年

  投資額: 約40億円

(ロ) 人材確保・定着

・ 多様な人材の確保

・ エンゲージメントの醸成

・ 人材教育

(ハ)財務基盤強化

・ 内部留保による純資産改善

・ 適正な資本配分

・ 投資と借入のコントロール

(ニ) その他

・ SDGs に係る取り組み

 

(3) 経営環境

社会経済活動の正常化が進む中で、雇用・所得環境の改善を受け、緩やかな回復基調で推移しております。一方、ウクライナや中東地域をめぐる紛争の長期化を背景とした不安定な国際情勢により、エネルギーや原材料価格の高止まりが続いております。また、物価上昇の継続による個人消費の冷え込みが懸念されるほか、米国の政策動向が国内景気を下押しする可能性もあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

ホテル業界におきましては、安定的な国内観光需要に加え、円安の後押しを受けて訪日外国人旅行者数が過去最高を記録するなど、活況を呈しております。

 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後の見通しにつきましては、雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな回復基調が継続することが予想されます。また、堅調なインバウンド需要に加え、2025年4月に開幕した大阪・関西万博には半年間にわたり国内外から多数の観光客が訪れることが見込まれ、その近隣地域にも経済波及効果が期待されています。

一方で、不安定な国際情勢により、エネルギーや原材料価格の高止まりが続いており、物価上昇の継続による個人消費の冷え込みが懸念されます。さらに、通商政策を含む米国の政策動向が国内景気を下押しする可能性もあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような状況の中、2026年3月期においては、(2)に掲げる第3次中期経営計画の重点施策のうち、「財務基盤強化」「人材確保・定着」「施設競争力の維持強化」を最重要課題として取り組んでまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、地球環境の保全が人類共通の最重要課題のひとつであることを認識して、業務を遂行する中で全従業員が環境負荷の低減等に取り組みます。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社では、従前より廃棄物量・CO2排出量の削減などを中心にサステナビリティを目的とした取り組みを行っており、2021年7月にESG推進委員会を発足いたしました。サステナビリティを巡る課題への対応に関して隔月開催の本委員会において、審議・検討を行っております。また、その内容を取締役会に報告し、取締役会が課題に対する監督、有効性の評価を行っております。

 

(2) サステナビリティに関する戦略

当社は、持続可能な地域社会・地球環境の創造に貢献することを目的に、以下の取り組みを実施いたします。

・エネルギー使用量の削減

・生ゴミ処理機導入による廃棄物削減

・環境配慮資材の導入(ストロー・テイクアウト用レジ袋)

・宿泊連泊利用者様への「清掃不要札」の活用

・食品ロスに係る取り組み

・地域の清掃活動への積極的な参加

・2R(リデュース・リユース)の取り組み推進

 

(3) 人的資本に関する戦略

当社は、より良い労働環境の醸成と積極的な社会貢献活動による包摂的企業成長を目指すうえで、以下の取り組みを実施いたします。

・接客水準の向上(グループホテルとの交流拡大・社外講師による各種研修・各種検定試験への助成・社内コンクールの実施・OJTの強化)

・ダイバーシティ(女性活躍推進チームの活動・女性管理職の積極登用・障がい者雇用の推進・高齢者の人材活用)

 

(4) リスク管理

当社は、取締役会の下に代表取締役社長を長とした常勤取締役及び常勤監査役から成る要務役員会を設けて業務の運営、管理を行っており、その要務役員会の下にサステナビリティに対するリスク管理を含む重要度の高いリスクに対応する各種専門委員会を設置し、各種リスクを管理しております。なお、リスクに対応する各種専門委員会の委員長には取締役をあて、定期的に委員会を開催し、その結果について要務役員会に報告し、重大な事項は取締役会及び監査役会に報告します。また、防犯、防災(救命)、食品衛生の各専門役の知見を元に、各種社内研修会を実施し、従業員の教育にも注力しております。

 

(5) 指標及び目標

当社では「顧客主義」「ステークホルダーからの信頼」「従業員満足の向上」の3項目を掲げ、1888年創業の歴史を大切にして京都を代表し、世界に通じるホテルを目指します。また、ホテルオークラ京都におきましては、SDGsを実践する宿泊施設の国際認証である「Sakura Quality An ESG Practice(通称:サクラクオリティグリーン)の「1御衣黄(ぎょいこう)ザクラ」を取得したことに加え、地元京都市からは、ごみの減量及びリサイクルに積極的に取り組んでいる優良事業所として認定され、「2R及び分別・リサイクル活動優良賞」を受賞しております。また、新しい取り組みとしてホテルオークラ京都では、2024年4月よりWFP国連世界食糧計画(国連WFP)の活動を支援する「レッドカップキャンペーン」に参画し、宿泊売上の一部が寄付金として国連WFPの学校給食支援活動に役立てられるとともに、アメニティの提供を減らした専用の宿泊プランを設けることで、プラスチック使用量の削減にも貢献しております。からすま京都ホテルでは、2025年1月より使用済みのアメニティ(歯ブラシ・ひげそり・ヘアブラシ)を回収して再資源化する取り組みを実施しており、プラスチック製品の廃棄削減(CO2削減)にも貢献しております。

なお、上記(3)の「人的資本に関する戦略」に記載している項目について、現状では目標設定はしておりませんが、持続的、かつ、中長期的な企業価値の向上に向け、人的資本に関する指標及び目標設定を含めて社内環境整備を推進してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1) ホテル業の売上高について

当社は日本全国及び世界各国からのお客様を受け入れていることにより、疾病及び感染症、自然災害、戦争、テロ等の影響を受ける可能性があります。

(2) 施設の毀損、劣化について

当社は停電の発生など、想定が必要であると考えられる事態につきましては、事業活動への影響を最小限化する体制を敷いておりますが、台風、地震等の天災につきましては、想定の範囲を超える事態が発生することも考えられます。したがって、このような事態が発生した場合には、当社の業績及び財務の状態に影響を及ぼす可能性が生じます。

(3) 食中毒について

当社は食事の提供及び食品の販売を行なっており、新たな病原菌や食品衛生管理の瑕疵等により食中毒事案が発生した場合、ブランドイメージの失墜により、当社の業績が影響を受ける可能性があります。これらの事案発生を未然に防ぐための設備投資及び健康管理を充実させる対応を実施しております。また、食品衛生委員会を中心に館内の巡回点検、指導や社員教育を定期的に実施し、食品管理意識の向上を図っております。

(4) 金利変動リスクについて

当社は、有利子負債による資金調達を行っており、有利子負債の割合が高くなっております。一部の借入金については、金利を固定化し、金利変動リスクを軽減するための対策を講じておりますが、金利が中長期的に上昇した場合には、金利費用が上昇し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 減損リスクについて

当社は、ホテル施設に係る多額の固定資産を保有しております。この資産が、時価の下落や収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損処理が生じることとなり、当社の業績及び財務の状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

このような状況の中、当社では前述の中期経営戦略に掲げる以下の項目を最重要課題として取り組んでまいります。

 

①財務基盤強化

2025年3月に長期借入金等(121億円)の借換えを無事完了し、当面の営業活動に必要な運転資金の確保に支障はございません。しかしながら、2024年3月に日本銀行がゼロ金利政策を解除し、段階的に金利が引き上げられていることから、今後さらなる利上げが見込まれ、金融費用の負担増が懸念されます。こうした状況下において、安定的な配当の実施・従業員の処遇改善・客室の改修工事などを着実に遂行できるよう、引き続き諸経費の見直し・節減に努め、事業年度ごとに利益を確保することで財務基盤の強化を図ってまいります。

 

②人材確保・定着

 現在、慢性的な人員不足により、レストランなど一部で営業制限を余儀なくされ、ホテル需要の拡大に十分対応できず、機会損失が発生しております。持続可能なホテル運営を実現するためには、人員不足への対応が喫緊の課題であると認識しております。まず、既存従業員の定着率向上を図るため、賃金の引き上げや福利厚生の充実など処遇の改善に引き続き取り組むほか、育児・介護に関する従業員へのサポートを拡充し、より働きやすい職場環境を整えることで離職防止につなげてまいります。また、業務内容の抜本的な見直しやシステム導入による業務の効率化・省力化をさらに推進し、従業員の負担軽減に努めるとともに、語学力や接客水準のさらなる向上を目的とした各種研修の実施や、グループホテル間での人材交流、自己研鑽に対する支援などを通じて、継続的な人材育成を推進してまいります。併せて、採用活動の強化を図るとともに、外国人を含めた多様な人材の採用も検討し、人材の確保に努めてまいります。

 

③施設競争力の維持強化

京都市内におきましては、コロナ禍にあってもホテルの新規開業・リニューアルが相次ぎ、現在もさらなるラグジュアリーホテルの誘致が進められるなど、競争環境は一層激化しております。このような状況の中、1994年に建設されたホテルオークラ京都の建物は今年で31年目を迎え、経年劣化も見られることから、2027年以降に客室の改修工事を計画しております。今後も快適な宿泊環境を提供できるよう、施設競争力の維持強化に努めてまいります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化が進む中で、雇用・所得環境の改善を受け、緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、ウクライナや中東地域をめぐる紛争の長期化を背景とした不安定な国際情勢により、エネルギーや原材料価格の高止まりが続いております。また、物価上昇の継続による個人消費の冷え込みが懸念されるほか、米国の政策動向が国内景気を下押しする可能性もあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

ホテル業界におきましては、安定的な国内観光需要に加え、円安の後押しを受けて訪日外国人旅行者数が過去最高を記録(2024年は年間で36,869千人=前年比47.1%増)するなど、活況を呈しております。しかしながら、慢性的な人員不足により営業制限を余儀なくされるホテルも多く、需給が逼迫する状況が続いております。また、エネルギーや原材料価格の高騰により運営コストが増加しており、引き続き厳しい事業環境下に置かれております。

このような状況の中、当社におきましては人員不足により一部で営業制限を継続しつつも、国内観光需要およびインバウンド需要を的確に捉え、宿泊部門を中心に売上を拡大いたしました。同時に、物価上昇に伴う様々なコストの増加に対応するため、価格転嫁による販売価格の見直しを実施し、売上および利益の最大化にも努めてまいりました。

一方で、人員不足の課題に対しては、賃金の引き上げや福利厚生の充実など処遇の改善を図るとともに、限られた人員の中でも円滑な業務運営が行えるよう、部署間の垣根を越えたヘルプ体制の強化にも努めております。

この他、当社では事業活動に加え、良き企業市民としてSDGs達成に向けた活動にも積極的に取り組んでおります。ホテルオークラ京都では、2024年4月よりWFP国連世界食糧計画(国連WFP)の活動を支援する「レッドカップキャンペーン」に参画しております。宿泊売上の一部が寄付金として国連WFPの学校給食支援活動に役立てられるとともに、アメニティの提供を減らした専用の宿泊プランを設けることで、プラスチック使用量の削減にも貢献しております。また、からすま京都ホテルでは、2025年1月より使用済みのアメニティ(歯ブラシ・ひげそり・ヘアブラシ)を回収して再資源化する取り組みを実施しており、プラスチック製品の廃棄削減(CO2削減)にも貢献しております。

これらの結果、当事業年度の売上高は9,358百万円(前年同期比2.4%増)となりました。損益面におきましては、引き続き徹底した経費節減に努めたものの、エネルギーや原材料価格の高騰の影響、業務委託費を含む人件費等の増加により、営業利益は916百万円(前年同期比3.8%減)、経常利益は676百万円(前年同期比16.2%減)、最終損益は当期純利益771百万円(前年同期比17.4%減)となりました。

 

ホテル事業の部門別の営業概況は次のとおりです。

 

(宿泊部門)

安定的な国内観光需要に加え、拡大するインバウンド需要を的確に捉え、収益性を重視した価格設定のもと、積極的な販売を行いました。

ホテルオークラ京都におきましては、客室稼働率は前年と同水準で推移したものの、個人予約の受注を増やしたことで高単価での販売を実現し、前年に続き年間売上記録を更新することができました。

からすま京都ホテルにおきましては、修学旅行をはじめとする団体客の受注は前年並みであったものの、海外からの個人客が大幅に増加したことで、客室稼働率および客室平均単価のいずれも前年を大きく上回り、年間売上記録を更新しております。

この結果、宿泊部門全体の売上高は4,104百万円(前年同期比10.6%増)となりました。

 

(宴会部門)

ホテルオークラ京都の一般宴会につきましては、受注件数・売上ともに前年を下回りましたが、会議利用の宴会需要は強く前年を上回る売上となったほか、MICE利用や祝賀会などの大型案件が受注できたことで、1件あたりの売上は前年を上回る結果となりました。一方、婚礼宴会につきましては、ブライダルの市場規模が縮小する中、当社でも厳しい状況が続いており、受注件数・売上ともに前年を大きく下回る結果となりました。ただし、下期以降は新規来館数を伸ばすことができ、2026年3月期の予約状況は復調してきております。

からすま京都ホテルにおきましては、毎年恒例の宴会が順調に受注できたことに加え、修学旅行や同窓会などの宴会需要が増加したこと、また当社主催のイベントも好調に集客できたことにより、売上を堅調に伸ばすことができております。

この結果、宴会部門全体の売上高は2,586百万円(前年同期比4.8%減)となりました。

 

(レストラン部門)

ホテルオークラ京都におきましては、年間を通じて当社の創立に関わった渋沢栄一や、2024年のNHK大河ドラマで話題となった紫式部をテーマにした新メニューの開発・販売を行うとともに、閑散期には価格を抑えながら付加価値の高いプランを展開し集客促進を図り、売上向上に努めてまいりました。また、「トップラウンジ オリゾンテ」ではこれまで休業していたディナー営業を11月より一部再開したことで、前年を上回る売上となりました。しかしながら、依然として人員不足により営業制限を実施している店舗があることに加え、前年に「カフェ レックコート」での惣菜や弁当の販売を終了した影響が重なったことで、レストラン全体の売上は前年を下回る結果となりました。

からすま京都ホテルにおきましては、「中国料理 桃李」で新料理長就任を記念した特別メニューを販売したほか、「バー アンカー」ではボトルフェアやカクテルフェアなどの企画を展開し、売上向上に努めてまいりました。これらの取り組みが功を奏し、既存顧客に加え新規顧客の利用も増加したことで、売上・入客数ともに堅調に推移しております。

この結果、レストラン部門の売上高は2,128百万円(前年同期比2.4%減)となりました。

 

(その他部門)

テナント店舗・月極駐車場の賃貸料収入や、フィットネスクラブ(ホテルオークラ京都)の会費収入など、安定した売上を計上しております。

この結果、その他部門の売上高は538百万円(前年同期比1.6%増)となりました。

 

財政状態の状況は次のとおりであります。

 当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ175百万円増加し、16,627百万円となりました。これは主に減価償却等により有形固定資産が432百万円減少したものの、売上の増加等により現金及び預金が504百万円増加したことによるものです。
 当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ495百万円減少し、13,967百万円となりました。これは主に長期借入金等の返済、借換えにより516百万円減少(一部内入れ)したことによります。なお、金融機関との良好な関係のもと、長期借入金等の借換えが無事に完了しております。

 当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ671百万円増加し、2,660百万円となりました。これは主に当期純利益が771百万円計上されたことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、売上・利益の増加により前事業年度末に比べ504百万円増加し、当事業年度末には3,477百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動の結果得られた資金は1,256百万円(前年同期は1,497百万円の獲得)となりました。これは主に税引前当期純利益669百万円および減価償却費696百万円の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動の結果使用した資金は51百万円(前年同期は169百万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が52百万円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
  財務活動の結果使用した資金は700百万円(前年同期は660百万円の使用)となりました。これは主に長期借入金等の借換え等による返済分が516百万円あったことによるものです。

 

(生産、受注及び販売の実績)

 a. 収容能力及び収容実績

(イ)ホテルオークラ京都

区分

第105期

(2023年4月1日2024年3月31日)

第106期
(2024年4月1日2025年3月31日)

室数

収容能力

収容実績

利用率

室数

収容能力

収容実績

利用率

客室

321

117,486

96,734

82.34

320

116,800

96,763

82.85

宴会

13

650,748

172,864

回転

0.27

13

648,970

153,285

回転

0.24

レストラン

7

193,038

 

319,639

回転

1.66

7

192,914

 

315,927

回転

1.64

 

 

(ロ)からすま京都ホテル

区分

第105期

 (2023年4月1日2024年3月31日)

第106期
(2024年4月1日2025年3月31日)

室数

収容能力

収容実績

利用率

室数

収容能力

収容実績

利用率

客室

231

84,546

69,586

82.31

231

84,315

74,565

88.44

宴会

4

168,280

126,490

回転

0.75

4

167,900

122,541

回転

0.73

レストラン

2

43,293

33,692

回転

0.78

2

43,064

32,521

回転

0.76

 

(注) 収容能力の内容は下記の基準により算出したものであります。

1 客室は部屋数に営業日数を乗じて算出しております。

2 宴会は正餐形式による椅子数に営業日数を乗じて算出しております。

3 レストランは椅子数に営業日数を乗じて算出しております。

 

 b. 販売実績

当社はホテル経営及びホテル付随業務の単一セグメントであるため、販売実績及び構成比を部門別に示すと以下のとおりです。 

区分

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比

(%)

金額(千円)

構成比(%)

宿泊部門

4,104,797

43.9

10.6

宴会部門

2,586,414

27.6

△4.8

レストラン部門

2,128,844

22.7

△2.4

その他部門

538,697

5.8

1.6

合計

9,358,753

100.0

2.4

 

(注)  受注生産は行っておりません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当事業年度における売上高は9,358百万円、営業利益は916百万円、経常利益は676百万円、当期純利益は771百万円となりました。

売上高の主な増加要因は、訪日外国人観光客の増加などにより、宿泊部門を中心に売上が拡大したことによります。

利益面では、エネルギー・原材料価格の高騰による水道光熱費や食料品の仕入れの負担が大きい状況が続いた事や賃上げなどにより、営業利益、経常利益、当期純利益は減少いたしました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度のキャッシュ・フローは、前期に比べ売上高が増加したことなどにより、現金及び現金同等物の期末残高は前年同期に比べ504百万円増加し、3,477百万円となりました。

当社の資金使途のうち主なものは、借入金等の有利子負債の返済のほか、運転資金として、ホテル事業における食材、用度品の購入費用及び人件費を中心とした販売費及び一般管理費等の営業費用の支払いであります。投資を目的とした資金使途は、ホテル設備の維持更新費用やホテルサービスの価値を高める改修等によるものであります。

短期及び長期の資金需要については、「営業活動によるキャッシュ・フロー」により獲得した自己資金や金融機関からの借入等により資金調達を行い対応しております。引き続き、売上拡大により「営業活動によるキャッシュ・フロー」の増大を図るとともに、有利子負債の圧縮及び財務体質の強化を進めてまいります。

なお、当事業年度末における借入金及びリース債務等を含む有利子負債の残高は12,293百万円となっており、現金及び現金同等物の残高は3,477百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社は過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積りの特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

(賃借関係)

契約会社名

賃借先

賃借物件及び内容

賃借期間

㈱京都ホテル

伊吹㈱

からすま京都ホテル建物
建物全館(地上13階 地下2階)

5年

(自 2023年4月 1日

至 2028年3月31日)

 

 

(業務提携関係)

契約会社名

提携先

契約内容

提携期間

㈱京都ホテル

㈱オークラニッコーホテルマネジメント
(㈱ホテルオークラの子会社)

業務提携契約並びに販売提携契約締結

5年

 (自 2022年4月 1日

 至 2027年3月31日)

 

 

 

(A種優先株式の発行)

当社は、2021年8月6日開催の取締役会において、DBJ飲食・宿泊支援ファンド投資事業有限責任組合との間で株式投資契約書及び総株引受契約書を締結し、DBJ飲食・宿泊支援ファンド投資事業有限責任組合を引受先として第三者割当の方法により、A種優先株式を発行することを決議いたしました。なお、2021年8月6日付で、当社及び本優先株式割当先との間で投資契約を締結いたしました。

 

1.A種優先株式の発行の概要

(1)払込期日

2021年9月30日

(2)発行新株式数

優先株式  1,000株

(3)発行価額

1株につき 1,000,000 円

(4)調達資金の額

1,000,000,000円

(5)募集又は割当方法

第三者割当の方法によりDBJ飲食・宿泊支援ファンド投資事業有限責任組合へ全ての本A種優先株式を割り当てる。

(6)その他

・本A種優先株式を保有する株主は、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会において議決権を有しておりません。

・本A種優先株式の優先配当率は年率4.0%で設定されており、本A種優先株主は普通株式を有する株主に優先して配当を受け取ることができます。

・ある事業年度において優先配当金が不足する場合、当該不足額は翌事業年度以降に累積します。

・本A種優先株式は非参加型であり、本A種優先株主は当該優先配当に加え、普通配当を受け取ることはできません。

・本A種優先株式については、普通株式を対価とする取得請求権又は普通株式を対価とする取得条項は付されておりません。

・本A種優先株式の発行要項においては、本A種優先株主は、いつでも、当社に対して、金銭を対価として本A種優先株式の全部又は一部の取得を請求することができることとされておりますが、割当先との間で締結した株式投資契約の規定により、割当先は2028年9月30日までの間、金銭を対価とする取得請求権を行使できないものとされています。

・当社は、いつでも、当社の取締役会が別途定める日の到来をもって、金銭を対価として本A種優先株式の全部又は一部を取得することができることとされております。

・本A種優先株式は、普通株式への転換権を有しておりません。

 

(注)発行と同時に資本金の額及び資本準備金の額の減少を行い、その他資本剰余金へ振り替えております。また、増加後のその他資本剰余金の一部を繰越利益剰余金へ振り替えております。

 

2.調達する資金の使途

 経営の安定化を目的とした事業資金(運転資金)としております。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。