文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
今後の見通しにつきましては、米国第2次トランプ政権の掲げる関税政策が世界経済に及ぼす影響から、景気の下振れリスクが懸念されます。また、ホテル業界においては、深刻化する人手不足があるものの、円安進行と中国人への観光ビザ緩和措置等により、訪日客のさらなる活況が期待されます。
このような経営環境の中で当社は、「培ったおもてなしの心と最高のサービスと商品の提供により、国際社会の発展と文化の向上、お客様の満足と幸福に貢献」を、企業理念の主文に掲げ経営の基本方針としております。当社はその遂行に日々努力を重ねつつ、事業を継続していくうえで妨げとなるリスクや課題に対し、人事戦略、ブランド戦略、成長戦略の3つの基本戦略をもって解決にあたるとともに、収益性向上と持続的成長により経営基盤の確立を目指してまいります。
人事戦略につきましては、人手不足が深刻化する中で、旅行需要の回復によりさらなる生産性の向上が求められることになります。当社が企業理念に基づき、最高のサービスを提供し続けるためには、①エンゲージメントの高い職場の構築による、人材の確保・定着。②ナレッジマネジメントの構築による、熟練技能・技術の伝承体制強化。③IT・デジタル技術の活用による、人的タスクの補完。以上を柱に、労働条件と労働環境の改善、若手人材の育成、女性・シニア・外国人材の活躍推進、DX推進等により組織の生産性を高めてまいります。
ブランド戦略につきましては、当社の顧客層は比較的年齢層が高く、若年層への認知度が課題のひとつになっておりました。このたび立ち上げた新ブランドの「エスワイル(S.Weil by HOTEL NEW GRAND)」では、ニューグランドのサブブランドとして、既存の顧客から若年層まで幅広いターゲットに顧客の裾野を拡大し、エントリーユーザーを次世代のニューグランドファン育成へと繋げてまいります。また、マスターブランドであるニューグランド本体につきましても、クラシックホテルの強みを活かした高付加価値なサービスと商品の展開により、期待と信頼に応えるべくブランド価値向上に努めてまいります。
成長戦略につきましては、当社は、既存事業とは異なる新たな領域での事業展開によりリスク軽減を図り、環境変化に左右されない力強い経営基盤を確立することで、収益確保と持続的成長をしていくことが重要と考え、昨年より、ホテル直営ショップの出店を開始いたしました。今後もさらに事業の展開を加速させ、収益性の向上を目指してまいります。またホテルの施設面においては、給湯・冷暖房の基幹設備やタワー館のユニットバスの更新を行い、ホテルをご利用される全てのお客様の満足度を高める設備投資を毎期継続的に実施してまいります。
以上3つの戦略を基本に、総力を結集して邁進してまいる所存でございます。株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援ご協力を賜りたくお願い申しあげます。
当社は、企業理念に「培ったおもてなしの心と、最高のサービスと商品の提供により、国際社会の発展と文化の向上、お客様の満足と幸福に貢献」を主文に掲げ、当社が果たすべき社会的役割は、歴史的建造物を維持・保存しながら持続的成長を実現し、国際都市横浜の一翼を担っていくことであると、認識しております。また、当社にとってSDGsへの取組みは、社会課題解決への貢献であるとともに、まさしく企業理念の実践であり、事業拡大と持続的な企業価値向上への道筋と考え、その遂行に努めてまいります。
当社は、SDGsの課題解決は重要な経営課題と強く認識し、社長直轄の全社レベルでの意思決定組織となる「サステナビリティ推進室」を設け、経営トップの強いコミットメントの下、サステナビリティ経営推進体制を構築し、事業を通じた社会課題の解決とSDGsの目標達成を目指しております。
サービス業界においては、常態化する人員不足の対応に苦戦している中、限られた人員で最大限の能力を発揮するため、人員自身の成長が感じられる環境を整えることが求められております。更にこの状況において、お客様の期待を超える接客をするためには、年齢・性別・国籍等を問わず、多様な人材がそれぞれの強みを発揮する必要性がございます。
以上により、当社はこの社会情勢に対応するため、以下の取組を行っております。
・キャリア・スキルアップ研修(管理職研修・グループホテル研修・料理コンテスト参加・クロストレーニング研修・フォローアップ研修・英語研修等・自衛消防操法大会参加)
・100周年プロジェクトチーム
来るべき100周年に向け、ホテルニューグランドが設立の原点である横浜を代表する高級グランドホテルとしての地位を確立することを目指し、各部門よりメンバーを人選し、プロジェクトチームでテーマを提案し実行していく。
・ニューグランドマイスター制度
横浜唯一のクラシックホテルとして歴史や伝統を受け継ぐ取り組みとして、ホテルの歴史やエピソード、近代化産業遺産である本館の建築としての様々な魅力、発祥メニューについてなど豊富な知識と接遇力を持つスタッフを認定する。
・他社視察制度
他社のサービス、料理、商品を学ぶ機会を促進することで現在の改善点や新サービスのアイディアに活かす。
・資格取得補助金制度
専門的資格の必要な業務に対し、実施期間中に資格を取得した場合、特別報奨金を支給する。また、資格保有者に対しても、若手の指導、育成が出来る経験及びサービス技術を伝承するため、対象職場に在職中は各協会の登録料を会社で負担する。
現状では具体的な目標設定はしておりませんが、従業員の満足度を上げるだけでなく、従業員が会社に貢献したい気持ちを高められる、企業価値の向上に向けた持続性のある人的資本に関する指標及び目標設定を含めた、社内環境整備を推進してまいります。
当社では、ホテルマネジメントに伴うリスクについての基本事項を、リスク管理規程により定め、その運用と全社的なリスクの抽出、対応については、社長直轄の「リスク管理委員会」にて行っております。当該委員会では、必要に応じてサステナビリティ全般に関するリスクを含む総合的なリスク管理体制に関する事項、全社的なリスクの把握およびその対応に関する事項等について検討・報告を行っており、重要なリスクに関する事項については当社取締役会に報告される体制を構築しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1)自然災害や感染症の発生
大規模地震や台風などの自然災害の発生は、当社の所有する建物、設備等に損害を及ぼし、一時的な営業停止による売上減や修復のための費用負担が発生する可能性があります。また、新型インフルエンザなどの感染症の発生や蔓延は、遠距離移動や団体行動の制限が予想され、当社の業績に影響する可能性があります。
(2)食の安全に関わる問題
当社は、平素より食に対する安全確保を使命とした「食品安全衛生対策会議」を毎月開催するなど、食品衛生管理には磐石な体制を構築しておりますが、ノロウイルスによる食中毒やBSEの発生等、食品衛生や食の安全、安心に関する問題が発生した場合、当社の業績に影響する可能性があります。
(3)個人情報の漏洩
顧客の個人情報の管理は、社内の情報管理担当が中心となり、外部への流出防止を行っておりますが、情報の漏洩が発生した場合、当社全体への信用の失墜や損害賠償等の費用負担により、当社の業績に影響する可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析の検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当事業年度(2023年12月1日~2024年11月30日)におけるわが国経済は、価格転嫁の進展と雇用所得環境の改善を背景に、デフレ脱却の動きが緩やかに進む回復基調となりましたが、一方では長期化する東欧情勢と緊迫化する中東情勢といった地政学上のリスクにより、景気の先行きは依然として不透明な状況で推移しました。
ホテル業界においては、慢性的な人手不足の問題を抱える中で、資源価格の高騰や人件費の上昇等が企業収益の下押し要因となりましたが、国内観光需要の増加と法人需要の回復に加え、円安を追い風とする訪日客数の伸長により、総じて堅調な状況が続きました。
このような環境のもと当社は、唯一無二の都市型クラシックホテルの競争優位性を駆使して需要を捉え、ADR(客室平均単価)の大幅な上昇等により業績は好調に推移いたしました。また、急速な社会経済情勢の変化の中で、今後の中長期的成長戦略の実現に向け、既存のホテル事業は勿論のこと、新規事業展開により変化に強い経営基盤の構築を目指し、ホテル直営ショップ「エスワイル(S.Weil by HOTEL NEW GRAND)」を隣接地のグランドメゾン山下公園1階にオープンいたしました。初代総料理長サリー・ワイルの名に由来する同店は“やわらかな正統派”をコンセプトに、2024年4月29日に開店以降、ニューグランドオリジナル商品に特化した飲食物販店として順調に推移し、新ブランド“エスワイル”の認知も浸透してまいりました。さらには、横浜髙島屋地下1階に2024年12月1日オープンとなるエスワイル2号店の出店準備も進めることで、商圏拡大と新規顧客開拓への足掛りを築いてまいりました。
このほか、ホテル開業100周年を迎える2027年に目指す姿を明確にするため、横断的組織となる「100周年プロジェクトチーム」を立ち上げるとともに、人手不足による影響緩和と全社的業務の効率化を図る目的として、新たに「DX推進委員会」を設置し業務運営のデジタル化を促進してまいりました。
以上のような取組みを行った結果、当事業年度の売上高は、5,856,242千円(前事業年度比9.0%増)、営業利益は254,902千円(前事業年度比10.1%減)、経常利益は244,280千円(前事業年度比5.0%減)、当期純利益は303,415千円(前事業年度比22.9%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(ホテル事業)
ホテル事業の当事業年度の業績は、売上高5,808,391千円(前事業年度比9.1%増)、営業利益218,540千円(前事業年度比11.8%減)となりました。
なお、主な部門別の売上高は、宿泊部門1,815,984千円(前事業年度比11.3%増)、レストラン部門1,393,257千円(前事業年度比5.1%増)、宴会部門2,091,800千円(前事業年度比6.3%増)となりました。
(不動産賃貸事業)
不動産賃貸事業の当事業年度の業績は、売上高47,850千円(前事業年度比0.9%増)、営業利益36,361千円(前事業年度比1.6%増)となりました。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当社の財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
資産合計は8,472,443千円(前事業年度末比518,675千円増)となりました。
主な要因は有形固定資産481,798千円の増加、投資その他の資産72,138千円の減少、現金及び預金52,919千円の増加、売掛金50,837千円の増加などであります。
(負債)
負債合計は4,937,290千円(前事業年度末比236,569千円増)となりました。
主な要因は長期借入金324,432千円の増加、未払消費税等129,552千円の減少、未払金53,459千円の増加、再評価に係る繰延税金負債55,018千円の減少などであります。
(純資産)
純資産合計は3,535,152千円(前事業年度末比282,106千円増)となりました。
主な要因は当期純利益303,415千円、配当金の支払額29,522千円などであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ52,919千円増加し、2,475,492千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の増加は390,543千円(前事業年度は609,280千円の増加)となりました。これは主に、税引前当期純利益326,111千円、減価償却費299,096千円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は656,727千円(前事業年度は141,247千円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出968,312千円、有形固定資産の売却による収入310,000千円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の増加は319,102千円(前事業年度は249,070千円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入600,000千円、長期借入金の返済による支出245,520千円などによるものであります。
当社の資金需要のうち主なものは、設備投資資金のほか、食材等の仕入や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
当社は、運転資金につきましては自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入金を基本としております。
なお、当事業年度末における借入金残高は2,692,480千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は2,475,492千円となっております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っております。
なお、重要なものについては、「第5 経理の状況 1財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。