(1)会社の経営の基本方針
当企業グループでは以下の通り「ミッション」を定めております。
・日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する。
・時代のニーズをとらえ、あらゆる世代に豊かで多様なコンテンツをお届けする。
今後もこの「ミッション」に則り、お客様の要望に応える魅力あるコンテンツやサービスを提供し、また社外とのパートナーシップを促進して、株主の皆様に信頼され続ける企業グループたることを経営の基本方針として事業活動を進めて参ります。
(2)目標とする経営指標
当企業グループの中核事業である劇場用映画及び演劇は予想と実績の乖離が大きく、このため特定の経営指標をもって経営目標とすることはせず、安定した収益基盤を着実に強化していくことが第一と認識しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
今後のわが国の経済は、雇用・所得環境の改善による個人消費のさらなる持ち直しが見込まれ、景気が緩やかに回復していくことが期待されますが、物価上昇の長期化や日銀による金融政策の動向に加え、2024年能登半島地震の影響等、当企業グループを取り巻く経営環境について、引き続き状況を注視する必要があります。
このような状況の中、当企業グループは、事態の推移を考量する中で事業を展開し、あらゆる世代のお客様に喜んでいただき、心の支えとなる映像・演劇のコンテンツを、提供して参ります。
中核部門である映像関連事業及び演劇事業においては、伝統を活かしつつ、変化するお客様の嗜好を取り込みながらも、質の高いコンテンツを継続的に製作します。これを多様な形で水平展開して、より多くのお客様に提供していくとともに、不動産事業他では、資産のより効率的な運用を行い、安定的で活力のある、収益性の高い企業グループを目指して参ります。
映像関連事業の映画製作・配給では、引き続き独自の製作力を高め自社企画・幹事作品を増やすとともに、外部幹事の作品にも積極的に参加し、宣伝・営業他社に尽力して参ります。多様な製作・出資形態による作品調達を行いながら、お客様に喜ばれる質の高い自社映画の企画・製作に一層傾注し、利益率を高めて参ります。当企業グループの充実したライブラリーの更なる活用も重要なテーマであり、ブルーレイ、DVD等既存のパッケージは勿論、配信や海外利用等のライセンスビジネスにも活用し、収益機会を拡げて参ります。映画興行では、㈱松竹マルチプレックスシアターズにおいて、より一層の収益力強化に向けて経費削減と効率的運営に努めます。また、他社との差別化につながる設備の導入を進め、お客様に選ばれるシネコンを目指して今後もサービスの拡充に努めて参ります。
演劇事業においては、歌舞伎公演は質の高い古典の上演、新しい作品の創作を続け、ベテラン俳優の至芸を見せるとともに、次代を担う俳優の活躍の場を一層広げて参ります。歌舞伎以外の一般演劇につきましては、ストリートプレイ、海外・オリジナルミュージカル等、様々なジャンルの作品に取り組んで参ります。シネマ歌舞伎では、ライブラリー作品の二次利用も積極的に展開して参ります。
不動産事業では、綿密なテナントコミュニケーションによって既存テナントとの良好な関係を構築するとともに、より好条件の新規テナント誘致にも注力することで、賃貸収益の確保に努めて参ります。また、長期的な収益向上策として、当社拠点である東銀座のブランド価値を高め、将来の開発計画も見据えた街づくりの一環としてエリアマネジメント活動においても、築地市場跡地の開発動向などエリアの発展性も見据えた地域の活性化と環境整備などに貢献すべく、積極的に取り組んで参ります。
当企業グループにおける、サステナビリティに関する考え方及び取組みは次の通りです。
<松竹グループサステナビリティ基本方針>
当企業グループでは以下のとおり「ミッション」を定めております。
・日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する。
・時代のニーズをとらえ、あらゆる世代に豊かで多様なコンテンツをお届けする。
今後もこのミッションに基づき、松竹グループの持続的成長を通じて、様々な社会課題の解決に寄与するとともに、お客様の心の豊かさに繋がる価値提供と従業員の幸福を追求して参ります。
当企業グループでは、松竹グループサステナビリティ基本方針に基づき、時代の変化を捉えながら、当企業グループの持続的成長とともに社会の課題解決や持続可能な社会の実現に寄与すべく、サステナビリティ活動を推進して参ります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当企業グループのサステナビリティ対応推進のため、松竹グループサステナビリティ基本方針や重要事項についての検討、審議の場として、サステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長、経営企画担当役員を事務局長、取締役および上席執行役員を委員として構成し、審議の内容は取締役会へ報告を行います。
サステナビリティ委員会にて審議する内容は、サステナビリティ担当取締役(管理本部担当取締役)を長とするワーキンググループにて、各事業における重要課題に沿った取組みの進捗状況の共有や情報交換、各種課題について検討議論し、集約したものをサステナビリティ委員会に報告しております。
なお、サステナビリティ委員会は、当社の規定するリスク管理委員会とも連携し、課題解決の推進とガバナンス強化を継続的に実施して参ります。
②戦略
当企業グループでは、松竹グループサステナビリティ基本方針に則り、「地球環境への配慮」「お客様と従業員の幸福」など、中長期的かつ重点的に取り組むべき課題を抽出しております。
今後も各課題に関連するリスクと機会について、サステナビリティ委員会にて継続的に議論を行って参ります。
③リスク管理
サステナビリティ委員会において各種リスク及び機会を検討、特定し、同委員会内にて課題解決に向けた取組み状況の報告および議論検討を実施しております。各種リスクのうち、サステナビリティに関し事業経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクについて、取締役会およびリスク管理委員会へ報告を行っております。
④指標及び目標
当企業グループでは、地球環境に配慮した事業活動の推進を重要課題の一つと認識していることから、温室効果ガス(GHG)排出量を指標としております。
直近の当企業グループにおけるScope1,2の排出量は下記の通りです。
2023年2月期 31,299t-CO2
2024年2月期 現在、策定中
(2)人的資本
当企業グループではミッションを実現するために、従業員一人ひとりが個性を発揮し多様性を活かせることが重要と判断し、働きがいのある職場を作り、仕事を通して喜びを感じられるウェルビーイングの実現を目指します。
①戦略
当企業グループでは「多様性」「働く環境」「育成」を人材戦略の柱として推し進めています。
[多様性]
多様性を確保するために、新卒採用のみならず中途採用も実施し、事業の特性に応じた人材を採用しております。近年では当社における男女の採用はほぼ半数であり、全体に占める女性割合も半数に近づき、管理職に占める女性の割合も経年では増加傾向にあります。
[働く環境]
従業員が心身ともに健康かつ生産性高く働けるように、フレックスタイム制、在宅勤務制度、時短勤務等を、グループ各社の事業形態に合わせて運用しております。健康管理やメンタルヘルスケアの支援に際しては、専門家によるカウンセリングや治療と就労の両立支援等を行い、働きやすい職場づくりに全グループが取り組んでいます。
[育成]
エンタテインメントを取り巻く環境の変化に対応すべく、育成面においては、当社では様々なビジネススキルを身につける研修メニューを揃えている他に、社外派遣研修、自己啓発支援を設け、従業員の自発的な学びやチャレンジを促進する仕組みも整えています。グループ全体では、全従業員を対象としたオンライン研修や、松竹の伝統や文化、事業を共有する松竹学園、グループ各社の人材を集めて当企業グループのミッションとそれぞれの事業への理解を深め合う研修などを開催しております。
②指標及び目標
[健康経営への取組み]
|
指標 |
目標 |
結果 |
||
|
2022年 2月期 |
2023年 2月期 |
2024年 2月期 |
||
|
定期健康診断受診率 |
100% |
98.1% |
94.5% |
95.3% |
|
適正体重維持者率 |
68% |
65.1% |
66.0% |
65.3% |
|
運動習慣者率 |
25% |
22.2% |
22.1% |
22.6% |
|
睡眠で十分に休養が |
70% |
66.4% |
67.1% |
64.0% |
|
喫煙者率 |
15% |
17.1% |
16.7% |
16.0% |
|
高ストレス者率 |
8% |
8.8% |
9.6% |
8.6% |
(注)連結グループにおける記載が困難であるため、当社の実績及び目標を記載しております。
[女性が活躍できる職場環境の整備]
労働者に占める女性労働者の割合 ※出向者除く正社員
2022年2月期(2022年2月末時点):46.3%
2023年2月期(2023年2月末時点):46.4%
2024年2月期(2024年2月末時点):47.9%
管理職に占める女性労働者の割合 ※出向者除く正社員
2022年2月期(2022年2月末時点):24.9%
2023年2月期(2023年2月末時点):25.4%
2024年2月期(2024年2月末時点):24.9%
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業グループが判断したものであります。
(1)感染症拡大に関するリスク
感染症の拡大により、映画館において営業時間短縮又は臨時休業等の措置が取られた場合、また当社の直営劇場をはじめとする演劇公演について中止又は延期となった場合には当企業グループの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。当企業グループでは、医療分野の専門家の意見も独自に取り入れながら、各感染症特性及び劇場特性に応じた個別安全施策も加えて感染症対策を徹底して参ります。
(2)劇場用映画の興行成績に関するリスク
映像関連事業における劇場用映画作品の興行成績は、作品による差異が大きく、不安定であり、また、各作品の興行成績を予想することは常に困難であります。当企業グループでは各種データに基づき作品の選定及び編成を行っておりますが、仮に一定の成績に達しない作品が長期にわたり継続した場合には、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)知的財産権の侵害に関するリスク
当企業グループの保有する知的財産権について、海賊版や模倣品による権利侵害が現実に発生しており、そのケースごとに適切な対応をとるように努めておりますが、海外やインターネットにおいては、法規制その他の問題から知的財産権の保護を充分に受けられない可能性があります。仮に、当企業グループが長期にわたり大規模な侵害行為を受けてそれを回避不可能な場合には、その侵害行為が当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)演劇事業の興行成績に関するリスク
当企業グループは演劇事業として歌舞伎及び一般演劇を上演しておりますが、出演俳優の健康上の理由及び不慮の事故等により出演が不可能になる恐れがあります。そのような事態に対しては、常に代役の出演が可能な状況を維持する等の対策を講じてはおりますが、場合によっては当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、常にお客様に満足していただけるような魅力ある公演を提供するよう努力しておりますが、公演及び出演俳優の話題性・認知度やお客様の嗜好の変化等により、入場者数が大きく左右される可能性があります。それに伴い当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)自然災害等の発生に関するリスク
映像関連事業、演劇事業、不動産事業、その他における映画館(シネコンを含む)・演劇劇場、飲食店舗及び事業用テナントビル等、当企業グループは、多数の顧客を収容可能な営業施設等において、自然災害や衛生上の問題等顧客の安全・健康にかかわる予期せぬ事態が発生する可能性があります。万一、そのような事態が発生した場合、当企業グループでは「危機管理計画書」「危機管理ガイドブック」等を作成し被害を最小限に留めるよう安全対策を講じておりますが、その規模等によっては、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)固定資産の減損会計に関するリスク
当企業グループが保有する固定資産において、地価の動向及び対象となる固定資産の収益状況によっては減損処理に伴う損失が発生する可能性があります。当企業グループでは、早期に減損の兆候を把握し適切な対応をしておりますが、減損損失が発生した場合には経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、固定資産の減損損失の計上にあたっての重要な会計上の見積りの前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(7)保有有価証券に関するリスク
当企業グループは、市場性のある有価証券を保有しております。保有有価証券は四半期ごとに時価評価をはじめ各種検証を行い、特に政策保有株式については、個別銘柄ごとに直近の財務状況、取引関係、配当等を総合的に検証し、定期的に取締役会に報告することによって保有の適否を判断しておりますが、将来大幅な株価下落が続く場合等には保有有価証券に減損又は評価損が発生し、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)財政状態に関するリスク
1.当社は、長期借入金として金融機関5行との間で108億円の金銭消費貸借契約を締結しており、この契約には下記の財務制限条項が付加されております。当社では、安定した経営による財務体質強化に努めておりますが、それに抵触した場合には借入金の返済を要請される可能性があります。
(イ)各年度の決算期および第2四半期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額を、前年同期比75%以上かつ2022年2月期の決算期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
(ロ)各年度の決算期および第2四半期の末日における単体の貸借対照表上の純資産の部の金額を、前年同期比75%以上かつ2022年2月期の決算期の末日における単体の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
2.当社は、長期借入金として金融機関8行との間で68億円の金銭消費貸借契約を締結しており、この契約には下記の財務制限条項が付加されております。当社では、安定した経営による財務体質強化に努めておりますが、それに抵触した場合には借入金の返済を要請される可能性があります。
各連結会計年度及び第2四半期連結会計期間の末日における連結貸借対照表上の株主資本の部の金額を400億円以上に維持すること。
(9)不動産賃貸に関するリスク
当企業グループは全国に賃貸不動産を保有しておりますが、不動産市況によっては賃貸物件の空室率が高くなることや主要テナントの撤退等により期待通りの収益を得られない可能性があります。各テナントと綿密なコミュニケーションを取りながら賃料交渉にも誠実に対応し、また撤退の際には後継テナントを誘致する等で対処をしておりますが、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)繰延税金資産の回収可能性に関するリスク
当企業グループは税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対して、解消見込年度のスケジューリング及び将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を検討した上で繰延税金資産を計上しております。解消見込年度のスケジューリング及び将来の課税所得については、経営環境の変化などを踏まえ適宜見直しを行っておりますが、結果として繰延税金資産の全額または一部に回収可能性がないと判断し、繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、繰延税金資産の計上にあたっての重要な会計上の見積りの前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の解除に伴い、社会・経済活動の正常化が進み、個人消費やインバウンド需要の増加等、景気回復の傾向が見られました。一方で、円安進行による物価上昇や原材料価格の高騰等、依然として先行きの不透明な状況が続きました。
このような状況下、当企業グループ(当社及び当社の関係会社、以下は同じ)は、より一層の効率化を図るとともに、本格的な事業再開に向けた環境整備に努めて参りました。
以上の結果、当連結会計年度は、売上高85,428百万円(前連結会計年度比9.2%増)、営業利益3,584百万円(前年同期は営業損失776百万円)、経常利益2,866百万円(前連結会計年度比110.8%増)となり、特別利益4,110百万円及び特別損失1,818百万円を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は3,016百万円(前連結会計年度比45.0%減)となりました。
|
|
売上高 (百万円) |
営業利益又は 営業損失(△) (百万円) |
経常利益 (百万円) |
親会社株主に 帰属する当期純利益 (百万円) |
1株当たり 当期純利益 (円) |
|
当連結会計年度 |
85,428 |
3,584 |
2,866 |
3,016 |
219.56 |
|
前連結会計年度 |
78,212 |
△776 |
1,359 |
5,484 |
399.30 |
|
増減率(%) |
9.2 |
- |
110.8 |
△45.0 |
△45.0 |
②財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態の状況については、次のとおりであります。
|
|
資産合計 (百万円) |
負債合計 (百万円) |
純資産合計 (百万円) |
自己資本比率 (%) |
1株当たり純資産 (円) |
|
当連結会計年度末 |
211,140 |
116,674 |
94,466 |
44.7 |
6,868.61 |
|
前連結会計年度末 |
178,803 |
92,320 |
86,482 |
48.3 |
6,289.19 |
|
増減率(%) |
18.1 |
26.4 |
9.2 |
- |
9.2 |
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、次のとおりであります。
|
|
営業活動による キャッシュ・フロー (百万円) |
投資活動による キャッシュ・フロー (百万円) |
財務活動による キャッシュ・フロー (百万円) |
現金及び現金同等物 の期末残高 (百万円) |
|
当連結会計年度 |
8,134 |
△15,236 |
11,781 |
20,692 |
|
前連結会計年度 |
6,061 |
9,706 |
△13,507 |
16,013 |
④生産、受注及び販売の実績
当企業グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であるため単価を特定できるものではなく、また受注生産形態をとるものも少ないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①経営成績の分析」における各セグメントの業績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績の分析
セグメントの業績は次のとおりであります。
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|
売上高 |
セグメント利益又はセグメント損失(△) |
||||
|
|
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
|
映像関連事業 |
41,284 |
45,810 |
11.0 |
△1,371 |
2,561 |
- |
|
演劇事業 |
22,668 |
24,356 |
7.4 |
△1,059 |
△704 |
- |
|
不動産事業 |
12,026 |
12,839 |
6.8 |
5,107 |
5,506 |
7.8 |
|
その他 |
2,233 |
2,422 |
8.5 |
△529 |
△556 |
- |
|
全社・消去 |
- |
- |
- |
△2,924 |
△3,222 |
- |
|
連結計 |
78,212 |
85,428 |
9.2 |
△776 |
3,584 |
- |
(映像関連事業)
配給は、邦画9作品、洋画4作品、アニメ9作品、シネマ歌舞伎、METライブビューイング、松竹ブロードウェイシネマなどの作品を公開しました。当社配給作品の「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」と「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(バンダイナムコフィルムワークスとの共同配給)が興行収入約40億円の大ヒットしたほか、「なのに、千輝くんが甘すぎる。」「こんにちは、母さん」が興行収入10億円を超えました。また、4月公開の「滝沢歌舞伎ZERO FINAL 映画館生中継!!」も大ヒットとなり、全国の映画館で売り切れとなる上映回が続出するなど収益に貢献しました。
興行は、㈱松竹マルチプレックスシアターズにて、各劇場で対抗館対策、注力作品での取組みなどで成果を上げており、ヒット作の回数確保や、ファミリー層、シニア層等の幅広い動員獲得を目指して参りました。上記の松竹作品に加え、興行収入100億円を超えた「THE FIRST SLAM DUNK」「名探偵コナン 黒鉄の魚影」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」をはじめ、アニメ作品が大ヒットとなり、年間興行収入の回復に貢献しました。MOVIX八尾は8月に台風7号の被害を受けた影響により現在休館しておりますが、2024年秋に営業再開を予定しております。
テレビ制作は、地上波にて、「必殺仕事人」「再雇用警察官5」「警視庁追跡捜査係」、連続ドラマ「やわ男とカタ子」、BS放送にて「悪女について」「無用案隠居修行7」「広重ぶるう」、連続ドラマ「OZU~小津安二郎が描いた物語~」「雲霧仁左衛門6」「めんつゆひとり飯」、CS放送にて「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」等を制作いたしました。番組販売は、新規放送枠としてBS松竹東急㈱に木下恵介アワー「3人家族」(全26話)他8作品を販売し、好調に推移しました。
映像版権は、DVD・ブルーレイディスク販売にて「ある男」「シャイロックの子供たち」「なのに、千輝くんが甘すぎる。」「交換ウソ日記」「こんにちは、母さん」「REVENGER」「好きな子がめがねを忘れた」などの新作やアニメーションを販売し、好調に推移しました。
配信は、定額制動画配信に関して、Leminoにて「耳をすませば」、Netflixにて「なのに、千輝くんが甘すぎる。」の独占配信をスタートさせ、売上に大きく貢献しました。都度課金型動画配信は、U-NEXTにて「ある男」「かがみの孤城」「シャイロックの子供たち」「ミンナのウタ」を先行配信する事で売上に貢献しました。権利販売に関しては、小津安二郎監督生誕120周年の当期は、様々なチャンネルで小津監督作品が放送されました。12月には「東京物語」等が3週にわたりNHK BSにて放送され、好評を博しました。国際映画祭では、北京、カンヌ、香港、ヴェネチア、東京などで小津作品が上映され、多くの観衆を魅了しました。
CS放送は、松竹ブロードキャスティング㈱において、ホームドラマチャンネルの開局25周年を記念した企画で、新規契約者獲得に努めました。また、複数のケーブルテレビ局の新規採用が決定するなど、有料放送市場におけるシェア拡大に努めました。
この結果、売上高は45,810百万円(前年同期比11.0%増)、セグメント利益は2,561百万円(前年同期はセグメント損失1,371百万円)となりました。
(演劇事業)
歌舞伎座は、歌舞伎座新開場十周年の本年度であり、新開場記念月の「鳳凰祭四月大歌舞伎」をはじめ、5月「團菊祭」、8月「納涼歌舞伎」、9月「秀山祭」、11月「吉例顔見世」、2月「猿若祭」など、月ごとに彩を変え、話題となる公演を揃えました。今期は、歌舞伎座初となる超歌舞伎の上演など、古典から新作まで幅広い演目を提供し、お客様層の拡大につなげ、2月の「十八世中村勘三郎十三回忌追善公演」を大盛況で千穐楽を迎えることができました。また、6月から一幕見席の再開に加え、前売券を導入し利便性の改善を図りました。増加傾向のインバウンド対応として、10月から英語音声ガイドを開始し、サービスの向上に努めています。
新橋演舞場は、3月の「ルーザーヴィル」、4月の「滝沢歌舞伎ZERO FINAL」、5月の「少年忍者『俺たちのBANG!!!~大劇場を占拠せよ~』」、7月の新作歌舞伎「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」、9月の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」、10月の「少年たち」、11月の「シェルブールの雨傘」、12月の新作歌舞伎「流白浪燦星」等が好成績を収めました。1月の「平家女護嶋 恩愛麻絲央源平」、2月のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」、一部公演中止のあった6月の「熱海五郎一座」、8月の「ビートルジュース」等も大変好評を博しました。
大阪松竹座は、大阪松竹座開場100周年と銘打ち、3月の「東西ジャニーズJr. Spring Paradise」、4月の「ルーザーヴィル」「垣根の魔女」、7月の「七月大歌舞伎」、8月の「One ANOTHER」、9月の「ビートルジュース」、10月の坂東玉三郎演出作品「星降る夜に出掛けよう」、11月の「キャメロット」、12月の「シェルブールの雨傘」等の公演を実施、1月の「坂東玉三郎 初春お年玉公演」を含め、開場100周年に相応しい演目が揃い、新たな顧客層の獲得及び収益増に繋げることができました。
南座は、3月の「三月花形歌舞伎」やMBSテレビとの共催となる4月「若き日の親鸞」、6月の坂東玉三郎演出作品「星降る夜に出掛けよう」、8月の「坂東玉三郎特別公演」、9月の「新・水滸伝」、10月の藤山直美出演「錦秋喜劇特別公演」、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」の効果が顕著にあらわれた11月のOSK「レビュー in Kyoto」等はいずれも好評を博しました。12月の「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」、八代目市川新之助初舞台「吉例顔見世興行」は大いに盛り上がり収益増に繋がりました。
その他の公演に関して、演劇公演では、6月の三越劇場新派公演「三婆」、10月の日生劇場のブロードウェイミュージカル「キャメロット」が、大きな収益を残しました。歌舞伎公演では、1月の「新春浅草歌舞伎」における花形俳優陣の演技が好評を得ました。巡業公演では、公文協歌舞伎巡業東西コースを4年ぶりに再開しました。
受託製作の歌舞伎公演として、2月に御園座の「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」、4月と5月に明治座の「創業百五十周年記念」歌舞伎公演、6月に博多座の「六月博多座大歌舞伎」の公演が行われました。また平成中村座は姫路城や小倉城での公演、4年ぶりの「永楽館歌舞伎」等、それぞれに彩りがあり好評を博しました。
シネマ歌舞伎は、坂東玉三郎主演・泉鏡花原作の名舞台4作品一挙上映や、宮藤官九郎作・演出の新作歌舞伎「唐茄子屋 不思議国之若旦那」を公開しました。「月イチ歌舞伎」シリーズも継続し、「わが心の歌舞伎座」や「歌舞伎NEXT 阿弖流為<アテルイ>」など幅広いラインナップを上映しました。
METライブビューイングは、2022-23シーズンではMET初演や新演出を含む7演目の上映や、恒例のアンコール上映のほか、2023-24新シーズンではMET初演の三作品を上映、意欲的な作品で新しい客層に訴求しました。
配信は、歌舞伎の同時生配信を4月の歌舞伎座「新・陰陽師」、7月の新橋演舞場「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」、12月の新橋演舞場の新作歌舞伎「流白浪燦星」、1月の「新春浅草歌舞伎」の4公演で実施しました。特に「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」は初日公演、千穐楽昼夜公演と全3公演同時生配信し、いずれも好成績を収めました。また「新春浅草歌舞伎」では、初めてイヤホンガイド解説付きの同時生配信も実施し、好評を博しました。
「歌舞伎オンデマンド」は、毎月の歌舞伎座の公演を千穐楽の数日後に配信するサービスや、2023年ローンチした海外配信も継続しました。英国アシュモリアン美術館で開催中の「坂東玉三郎歌舞伎衣裳展」と連動する等、認知度向上に努めました。コロナ禍で誕生した歌舞伎俳優によるオンライントークショー「歌舞伎家話」「紀尾井町家話」も継続し、人気コンテンツとなり、安定した収益を残しております。
この結果、売上高は24,356百万円(前年同期比7.4%増)、セグメント損失は704百万円(前年同期はセグメント損失1,059百万円)となりました。
(不動産事業)
不動産賃貸では、入居テナントとの綿密なコミュニケーションと良好な関係構築に努めることで、歌舞伎座タワーや銀座松竹スクエアなど主要物件の高稼働により安定収益を確保しました。また、収益向上を目指した資産入れ替えの施策として東銀座エリアに土地建物を取得し、賃貸稼働を開始しました。これらにより、通期では計画を上回る収益貢献となりました。
中長期戦略である東銀座エリアマネジメント活動においては、一般社団法人とまちづくり推進協議会に賛同・入会いただく企業も増え、街の賑わい創出イベントを開催するなど、地域貢献とエリアの価値向上のための取組みを一層強化しました。
この結果、売上高は12,839百万円(前年同期比6.8%増)、セグメント利益は5,506百万円(同7.8%増)となりました。
(その他)
需要の回復が見られる反面、消費行動が多様化する中、各事業におけるオンラインによる販売・配信の強化をはかりつつ、人気シリーズ作品やコア層向けの商品開発・販売を主軸に展開し堅調な推移となりました。プログラム・キャラクター商品に関しては、実写作品では「なのに、千輝くんが甘すぎる。」「東京リベンジャーズ」シリーズ等、アニメ作品では「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」等の作品を中心に収益に貢献しました。
イベント・オンライン配信は、4月に幕張メッセにて超歌舞伎2023「御伽草紙戀姿絵」を開催し、同時生配信視聴数は過去最高となりました。12月には「十二月大歌舞伎」第一部 超歌舞伎 Powered by NTT「今昔饗宴千本桜」を歌舞伎座で初上演し盛況となりました。ホラーコンテンツ「松竹お化け屋本舗」シリーズは、5月に宿泊型ホラー「インフェルノロッジ」を岐阜県のキャンプ場で開催し人気を博しました。10月には弘法大師空海御誕生1250年特別企画として松本幸四郎出演による新作朗読劇「空海、大唐冒険記」を和歌山県高野山にて上演しました。アニメ作品「ARIA」シリーズによる初のオーケストラコンサート「ARIA The SINFONIA」は、本公演に加えて3面スクリーンでのライブビューイング及び配信も実施し好評を博しました。
この結果、売上高は2,422百万円(前年同期比8.5%増)、セグメント損失は556百万円(前年同期はセグメント損失529百万円)となりました。
(売上高)
売上高は85,428百万円(前年同期比9.2%増)となりました。当連結会計年度は主に映像作品でヒット作に恵まれたことにより、売上高は増加しています。
(売上原価)
売上原価は49,450百万円(前年同期比6.8%増)となりました。これは主に配分金、仕込費等が増加したためであります。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は32,393百万円(前年同期比0.9%減)となりました。これは主に広告宣伝費が減少したためであります。
(営業利益)
上記の結果、営業利益は3,584百万円(前年同期は営業損失776百万円)となりました。
(経常利益)
営業外収益は1,455百万円(前年同期比63.0%減)となりました。これは主に補助金の減少によるものです。また、主に持分法による投資損失が増加したことにより営業外費用は2,173百万円(同20.8%増)となりました。その結果、営業外損益計上後の経常利益は2,866百万円(同110.8%増)となりました。
(特別利益及び特別損失)
特別利益は投資有価証券売却益2,956百万円、受取補償金540百万円、持分変動利益401百万円等合計4,110百万円を計上しました。また、特別損失は減損損失886百万円、災害による損失655百万円等合計1,818百万円を計上しました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は3,016百万円(前年同期比45.0%減)となり、1株当たり当期純利益は219円56銭となりました。
②財政状態の分析
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ32,337百万円増加し、211,140百万円となりました。これは主に土地、投資有価証券が増加したこと等によるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べ24,353百万円増加し、116,674百万円となりました。これは主に借入金が増加したこと等によるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ7,983百万円増加し、94,466百万円となりました。これは主にその他有価証券評価差額金、利益剰余金が増加したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,679百万円増加し、20,692百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は8,134百万円(前年同期に得られた資金は6,061百万円)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益5,158百万円の計上等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は15,236百万円(前年同期に得られた資金は9,706百万円)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出15,475百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は11,781百万円(前年同期に使用した資金は13,507百万円)となりました。これは主として、長期借入れによる収入17,000百万円、長期借入金の返済による支出3,984百万円等によるものであります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当企業グループの主な資金需要は運転資金及び設備投資資金であり、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金によって充当しております。なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は20,692百万円となっております。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
⑤経営成績等に重要な影響を与える要因について
経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社は、持分法適用関連会社であるBS松竹東急㈱に対する貸付金を株式化することを2024年3月28日の取締役会で決議し、2024年3月28日付で払込期日を2024年3月28日とする優先株式総数引受契約を締結しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。
当社は、持分法適用関連会社であるBS松竹東急㈱の第三者割当増資の引受けを2024年4月15日の取締役会にて決議し、2024年4月22日付で払込期日を2024年4月23日とする優先株式総数引受契約を締結しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。
特にありません。