第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、小林一三により設立されて以来、映画・演劇を中心に、幅広い層のお客様に夢や感動、喜びをもたらす数多くのエンタテインメント作品をお届けしてまいりました。

その経営理念は、「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を企業の存在意義(パーパス)とし、「吾々の享くる幸福はお客様の賜ものなり」を大切な価値観(バリュー)とし、「朗らかに、清く正しく美しく」を行動の理念(モットー)としております。

これらの理念に基づき、公明正大な事業活動に取り組むとともに、常にお客様の目線に立ち、時代に即した新鮮な企画を提案し、世の中に最高のエンタテインメントを提供し続ける企業集団でありたいと考えております。

 

(2)「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」について

当社グループは2022年4月に、創立100周年に向けた「長期ビジョン 2032」と、今後3カ年の具体的な施策である「中期経営計画 2025」とから構成される「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を策定いたしました。今後、本経営戦略に基づく様々な施策を展開し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでまいります。その体系と骨子は、以下の通りです。

 

1.長期ビジョン 2032

(1) コーポレート・スローガン

 


 

(2) 3つの重要ポイント

① 成長に向けた「投資」を促進  ②「人材」の確保・育成に注力  ③ アニメ事業を「第4の柱」に

 

(3) 成長戦略の4つのキーワード

① 企画&IP  ② アニメーション  ③ デジタル  ④ 海外

 

「企画&IP」をあらゆる価値の源泉として、その中でも「アニメーション」を成長ドライバーにし、「デジタル」の力で時間・空間・言語を超え、「海外」での飛躍的成長を実現すべく、果敢に挑戦していく


 

 

(4) 目指す姿(2032年の財務イメージ)

営業利益 750億円~1000億円

ROE    8%~10%程度

 

(5) 事業ポートフォリオの方向性

既存事業の3本柱である映画事業、演劇事業、不動産事業に加え、「アニメ事業」を第4の柱とする

 

2.中期経営計画 2025

 


 

3.人材と組織/サステナビリティの方針

(1) 人材と組織の戦略

基本方針

成長戦略の推進役となる多様で優秀な外部人材の採用を強化するとともに、よりクリエイティブな組織に進化すべく人材育成と働く環境の整備を推進していく

 

具体的施策

キャリア採用の拡大・強化、エキスパート社員制度の拡充

多様なキャリアパスと成長支援、公正な評価と成果に報いる処遇

エンゲージメントを高める以下の環境整備の推進

・朗らか健康経営

・TOHO WORK STYLE

・ダイバーシティ&インクルージョン

・オフィス改革

 

(2) サステナビリティの方針

基本方針

東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します

 

4つの重要課題

朗らかに ① 誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります

清く   ② 地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します

正しく  ③ 人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します

美しく  ④ 豊かな映画・演劇文化を創造し、次世代への継承に努めます

 

 

(3)経営環境についての認識

当社グループを巡る経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年2月期までは極めて順調に推移し、当社グループの主力事業である「映画・演劇・不動産」はいずれも好環境に恵まれ、順調に業績を伸長させることができました。しかしながら、2021年2月期の期初から新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言の発出や政府・自治体の要請により、主要な事業場である映画館や演劇劇場が全面休業、時間短縮、座席制限等の大きな制約を受け、2021年2月期の通期業績は、映画・演劇の両興行部門において大きな損失を計上するなど、大幅な業績悪化を余儀なくされました。

2022年2月期においても、3度目の緊急事態宣言により一部地域で映画館の休館や営業時間の短縮等を行い、宣言解除後も洋画新作の公開延期や、まん延防止等重点措置の発出など厳しい状況が継続しましたが、自然暦による2021年の全国映画興行収入は1618億円(前年比113%)となり、映画業界全体では緩やかながら前年からの回復を見せた1年となりました。

そのような情勢下で、当社グループの2022年2月期の通期業績は、主力の映画事業において、TOHO animationレーベル作品が業績を大きく牽引し、「劇場版 呪術廻戦 0」がメガヒットを記録したほか、アニメを中心とした邦画の健闘により好調な成績を収めました。また、演劇事業では、帝国劇場公演を中心にお客様の回復傾向が顕著にみられ、不動産事業はコロナ禍での業績を下支えし、事業収益に大きく貢献しました。これらにより新型コロナウイルス感染症の影響が直撃した2021年2月期からは大幅な回復を見せ、前回の中期経営戦略で「巡航高度」として掲げた連結営業利益400億円に迫る好決算となりました。

また、これまで2年以上に及ぶコロナ禍を経て、お客様の安心・安全と従業員・スタッフの健康を確保すべく興行現場・撮影現場における感染防止対策の徹底が図られ、また、そこで上映・上演されるコンテンツの供給についても、感染状況に応じた柔軟かつ臨機応変な公開・公演の方法・時期・スケジュールを設定するなど、映画館・演劇劇場の事業継続体制を維持するノウハウの蓄積が業界全体で進んでいます。

このように、当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、真に魅力的なコンテンツを提供することができれば、多くのお客様を集客できる状況まで回復しており、次期(2023年2月期)以降、新型コロナウイルスの感染状況の収束に合わせて、映画・演劇事業をはじめとしたライブ・エンタテインメント市場全体が再び拡大基調に向かっていくものと認識しています。

なお、新型コロナウイルス感染症に加え、足元では地政学的リスクの高まりを受けた世界経済の混乱がもたらす様々な影響も懸念されておりますが、当社グループへの影響は今のところ軽微であります。

以下、セグメント別に現在の経営環境等に対する認識について簡潔な説明を記します。

 

[映画事業]

映画営業事業においては、当社配給作品である邦画について、適切な感染防止策を実施することで、順調に製作・配給が可能となる状況にあります。また、洋画が軒並み公開延期となった影響もあり、興行力のある邦画コンテンツを継続的に提供できる配給会社としての当社のシェアは2021年において41%を占め、競合他社との間で圧倒的な競争優位性を維持しています。コロナ禍の影響がより深刻であった欧米の映画産業にも改善の傾向が見られ、東宝東和㈱等が国内配給を担当するハリウッドメジャーの新作についても、次期(2023年2月期)からは、これまでの延期作品も含め順調な公開が見込まれます。一方で、動画配信プラットフォーム各社が急速に会員数を増やしたことは、当社作品の二次利用等の機会創出につながる反面、それら配信プラットフォーマーが日本国内において自ら作品製作に乗り出すことにより、映画等の製作における影響力を強めていく懸念があります。

映画興行事業においては、3度目となる緊急事態宣言による東京・大阪等での休館や営業時間の短縮、座席販売の制限等の実施があったものの、自然暦による2021年の全国映画興行収入は前年比113%と緩やかな回復傾向を見せました。一方で、過去最高の興行収入を記録した2019年と比べると約1000億円も下落した状況にあり、映画業界全体としては本格的な回復には至っていないという見方もできます。今後に向けては、洋画のヒット作品の本数拡大や、ファミリー層やシニア層等の幅広い動員の回復が望まれる状況にあります。そのような状況下にありながら、TOHOシネマズ㈱は全国の主要都市の好立地にシネマコンプレックスを展開し、スクリーンシェアでは20%弱、興行収入のシェアは30%弱と業界トップを維持しており、競合他社との競争優位性に揺るぎはありません。新型コロナウイルスの収束とともに興行収入は着実に回復していくものと考えますが、洋画の先行きが不透明であることや、海外のメジャースタジオが劇場公開を取りやめ自社系列のプラットフォームでの独占配信に切り替えるケースや、一部の作品で劇場公開との同時配信を開始するケースが見られるなど、動画配信市場の動向が映画興行事業へ与える影響については、今後も注視していく必要があると認識しています。

映像事業においては、コロナ禍における巣ごもり消費の活性化もあり、アニメ関連市場が着実な成長を見せております。当社においては「僕のヒーローアカデミア」「呪術廻戦」といったTOHO animationレーベルのシリーズ作品が大きな話題となり、パッケージ・国内外の配信・商品化ライセンス等の幅広い事業を展開することによって、当社グループ全体を大きく牽引する特筆すべき業績となりました。また、市場の収縮が続くDVD、Blu-rayにおいても、「ウマ娘 プリティーダービー Season2」の販売が非常に好調な成績を収めました。㈱東宝ステラの運営するECサイト「TOHO animation STORE」においては、アニメ関連グッズの売上の急拡大が見られました。以上のように、国内外の多くの熱心なファン層に支えられ、アニメ関連市場は中・長期的な成長が期待できるものと認識しており、本年4月に策定した「TOHO VISION 2032」においても、アニメ事業を「映画・演劇・不動産」に続く「第4の柱」と位置づけ、今後の当社グループの成長ドライバーとして経営資源を集中し、多面的・重層的・長期的なビジネス展開に注力していくこととしています。また、TOHOスタジオ㈱では、映画・映像制作及びスタジオ事業の一体化を図り、外資系動画配信プラットフォームのスタジオ賃貸を誘致するなど、順調に稼働しました。一方で、㈱東宝映像美術や東宝舞台㈱では、テーマパークにおける展示物の製作業務の見直しや音楽ライブイベントの再開見通しが立たないことによる美術製作・舞台製作における受注減の影響が長期化しており、その回復の見通しについては、今後も注視していく必要があります。

 

[演劇事業]

演劇事業では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う出演者・スタッフへの感染対策を徹底するため、一部公演の中止をせざるを得ないリスクが継続しています。演劇は映画と異なり一回一回の公演が生モノであり、マスクを着用できないライブ・エンタテインメントのため、感染対策にはとりわけ困難が伴いますが、2年以上に及ぶコロナ禍を経て、事業継続体制に関するノウハウの蓄積が業界全体で進んでおり、公演を中止せざるを得ないリスクについては、徐々に低減が図られています。さらに、当社の提供する演劇公演は熱心なファン層に支えられており、多数の公演においてお客様の動員の回復が顕著に見られます。一方で、シニア層を中心にした各種団体のお客様への販売を一定程度想定してきたことから、長引く外出自粛ムードが団体動員活動に与える影響については、今後も注視していく必要があります。なお、コロナ禍において演劇の動画配信の積極的な活用等を促進しており、それらについては演劇事業における損失の補填に留まらず今後の業績拡大の機会になると認識しております。また、東宝芸能㈱では、コロナ禍にあっても所属俳優がCM・TV・映画出演等で順調に稼働しております。

 

[不動産事業]

不動産賃貸事業では、新型コロナウイルス感染症の影響によりオフィス市況の変化や商業施設の休館等で引き続き厳しい状況下にあります。不動産市況全体では、東京都心地区のオフィス空室率が6%台と高い数値で推移しており、坪当たりの平均賃料についても低下傾向が見られます。一方で、好立地が多い当社グループ保有物件の空室率は1%未満の低い水準で推移しており、平均賃料も比較的底堅い状況にあります。しかしながら、当社グループのテナントには、新型コロナウイルス感染症が事業に与える影響が大きいホテルや百貨店・飲食店等の商業施設の割合が大きく、それら業種の業績悪化が当社グループの不動産賃貸事業の賃料収入に与える影響については、今後も十分に注視していく必要があります。

道路事業においては、老朽化による道路関連のインフラ整備をはじめとする公共投資の受注は引き続き堅調であり、コロナ禍の影響はほぼ感じられず、今後も当面は順調に推移すると思われます。スバル興業㈱と同社の連結子会社が積極的な営業活動により新規受注や既存工事の追加受注による業績拡大に努めてまいります。

不動産保守・管理事業においては、連結子会社である東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱が社会全体の“エッセンシャルワーカー”としての強みを生かし、コロナ禍にあっても受注を徐々に回復させております。

 

[その他事業]

娯楽事業及び物販飲食事業においては、「東宝調布スポーツパーク」でゴルフ練習場、テニスクラブ等を運営する東宝共栄企業㈱が、コロナ禍にあっても屋外スポーツメリットを活かし利用者数を伸ばす一方、飲食店舗・劇場売店等を運営するTOHOリテール㈱は、外食需要の厳しい落ち込みが長期に渡り、先行きの回復も不透明なことから、2021年8月をもって直営飲食事業から撤退しました。

 

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、経営目標の達成状況を判断するための指標として「営業利益」を最も重視しております。

創立100周年を迎える2032年をターゲットとした「長期ビジョン 2032」においては、営業利益750億~1000億円の企業集団への成長を目指すとしております。なお、その際のROEのイメージを8%~10%程度とし、利益だけでなく資本効率を意識した経営を行ってまいります。

「中期経営計画 2025」では、営業利益において過去最高益(528億円)の更新に挑戦するとしています。また、本期間においては、コロナ禍からの回復を見極めつつ、次の「成長」を実現すべく「投資」を重視し、成長投資の金額として3カ年合計で1100億円程度を見込むとしております。その他の数値目標では、株主還元として年間40円の配当をベースに配当性向30%以上、かつ機動的な自己株式取得の実施、資本効率の指標としてROE8%以上を掲げております。

 

(5)当社グループが優先的に対処すべき課題

当社グループを取り巻く経営環境は、いまだ収束が見えない新型コロナウイルス感染症に加え、地政学的リスクの高まりを受けた世界経済の混乱がもたらす様々な影響が懸念され、先行きの見通しは不透明感を増しております。

このような不確実性の高い状況下において、当社グループがさらなる成長を遂げるためには、お客様の価値観や生活・行動様式の変化に柔軟に対応するとともに、これまで以上に長期的視点に立った経営戦略の明確化が不可欠と考えられます。

そのような認識に基づき、当社グループは本年4月、創立100周年に向けた「長期ビジョン 2032」と、今後3カ年の具体的な施策である「中期経営計画 2025」とから構成される「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を策定・公表いたしました。

「長期ビジョン 2032」においては、「Entertainment for YOU 世界中のお客様に感動を」という新たなコーポレート・スローガンのもと、成長に向けた「投資」を推進すること、「人材」の確保・育成に注力すること、アニメ事業を「第4の柱」とすることを、3つの重要ポイントとして掲げました。さらに「企画&IP」「アニメーション」「デジタル」「海外」の4つを成長戦略のキーワードとし、2032年に向け、これらをドライバーとした飛躍的な成長ストーリーを実現すべく、果敢に挑戦してまいります。

「中期経営計画 2025」においては、今後3カ年を「コロナ禍からの回復と次なる飛躍的成長への基盤固めの期間」と位置づけ、数値目標については、コンテンツや不動産関連等の「成長投資」に軸足を置きながら、映画・アニメ・演劇・不動産の各事業において、個別の事業戦略に基づいた取り組みを着実に推進してまいります。

また、これら経営戦略と連動する形で「人材と組織の戦略」「サステナビリティの方針」を策定いたしました。人材と組織については、成長の推進役となる多様な人材の採用を強化するとともに、よりクリエイティブな組織に進化すべく人材育成と働く環境の整備を進めてまいります。サステナビリティに関しては、「エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します」を基本方針とし、当社グループならではの課題と目標を明確にして取り組んでまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況及び事業運営に特に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

当社グループでは、「リスクマネジメント基本規程」に基づき、代表取締役社長を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置し、グループ全体にわたるリスクの洗い出しと評価、連絡・報告体制の整備、対応策の検討等を実施し、これら主要なリスク発生の回避及び発生時の迅速かつ適切な対応に向け、全社的なリスクマネジメント体制を構築しております。なお、特に優先すべきと考えられる新型コロナウイルス感染症に係るリスクに対しては、代表取締役社長を本部長とする「新型コロナウイルス対策本部」を別途設置し、迅速かつ臨機応変な対応が可能な措置をとっております。

なお、文中における将来に関する事項は当社グループが有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)特に優先すべき重要なリスク

≪新型コロナウイルス感染症に係るリスク≫

 製作遅延・公開延期等のリスク

当社グループの以下の事業において、新型コロナウイルス感染症の拡大による製作遅延、公開延期、公演中止等のリスクが存在します。

・映画事業:映画、アニメ等の公開予定作品の製作遅延、公開延期等の具体例として、撮影スタジオの休業、ロケーションの中止、出演者・スタッフ等への感染等のリスク。また、洋画作品についても、欧米における新型コロナウイルス感染症拡大の影響による製作遅延、公開延期等のリスク。

・演劇事業:公演の中止、延期等の具体例として、公演予定作品の出演者・スタッフ等への感染、海外招聘スタッフの渡航制限等のリスク。

これらのリスクが顕在化する可能性は、新型コロナウイルス感染症の収束まで一定程度残ると考えられますが、適切な感染防止対策の徹底及び「感染症対策」と「社会経済活動」の両立の考え方が社会全体の方針として示されることにより、徐々に低減していくものと考えられます。

また、リスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、製作投資の回収可能性の低下によるたな卸資産の評価減等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策としては、業種別ガイドライン等に基づく適切な感染防止対策や自主的PCR検査が積極的に実施されており、出演者・スタッフ等の感染リスク低減策がとられています。

 

 映画館・演劇劇場の休業等のリスク

当社グループの以下の事業において、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う政府・自治体からの要請による休業、営業時間の短縮、座席数の制限、劇場内飲食の禁止等のリスクが存在します。

・映画事業:休業、営業時間の短縮、座席数の制限、劇場内飲食の禁止等のリスク。

・演劇事業:休業、座席数の制限、劇場内飲食の禁止等のリスク。

これらのリスクが顕在化する可能性は、新型コロナウイルス感染症の収束まで断続的に残ると考えられますが、地域別の感染者数や医療体制の状況等により大きく左右されます。また「感染症対策」と「社会経済活動」の両立の考え方が社会全体の方針として示されることにより、徐々に低減していくものと考えられます。

また、リスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、映画館や演劇劇場の設備投資の回収可能性の低下による固定資産の減損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

なお、これらのリスクに対しては、業種別ガイドライン等に基づく適切な感染防止対策を徹底し、お客様や従業員等に対する感染リスクを低減することで、事業継続に向けた対応策がとられています。

 

 

 不動産市況の悪化によるリスク

当社グループの不動産事業において、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う政府・自治体からの要請により、自社で運営する商業施設の臨時休館を実施した場合にテナントに対する賃料免除が発生するほか、政府・自治体からの要請がない場合でも、保有する物件の入居テナントの業績不振に対応するため、賃料減額要請への対応、退店解約による賃料の減収、テナントの信用度の低下による貸倒れ等のリスクが存在します。また、テレワークの定着により社会全体の働き方が変化することで、オフィスの需要に変化が生じるリスクも存在します。

これらのリスクが顕在化する可能性については、新型コロナウイルス感染症の収束後においても不動産市況の回復には時間を要すると考えられるため、当面は一定程度の発生が想定されます。

また、リスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、賃貸物件の設備投資の回収可能性の低下による固定資産の減損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

なお、これらのリスクに対しては、テナントの経営状態等を冷静に分析しながら、柔軟かつ機動的な対応によりリスクの発生を最小限に止めるように努めてまいります。

 

 映画事業のビジネスモデルの変化によるリスク

当社グループの映画事業において、新型コロナウイルスの感染拡大及びその長期化を契機として、インターネットによる動画配信プラットフォームの普及が全世界的に加速しており、映画・アニメ等の映像を家庭で視聴する習慣が根づくことにより、映画館の動員が漸減していくリスクが存在します。

これらのリスクが顕在化する可能性は、コロナ禍を契機としてハリウッドメジャーの映画会社が自社系列のプラットフォームでの独占配信や劇場公開との同時配信を開始するケースが一部に見られるなど、映画館での公開をファーストウインドウとしてきた映画業界のビジネスモデルや商慣習が変化していく可能性があり、その動向を中・長期的に注視していく状況にあります。

また、リスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が漸減するとともに、映画館の設備投資の回収可能性の低下による固定資産の減損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

なお、これらのリスクに対しては、映像視聴に関する顧客動向や動画配信プラットフォーム各社の戦略を冷静に分析するとともに、これまで以上に映画館の魅力を高めることで、リスクの発生を最小限に止める対応に努めてまいります。

 

(2)その他の主要なリスク

① 自然災害や事故、火災等の発生によるリスク

当社グループの以下の事業において、不特定多数のお客様が来場される事業場における自然災害(大規模な地震・風水害など)や事故、火災等の発生により事業活動の継続に支障をきたすリスクが存在します。

・映画事業:全国各地に保有する映画館に係る自然災害や事故、火災等の発生リスク。

・演劇事業:直営劇場として保有する帝国劇場・シアタークリエに係る自然災害や事故、火災等の発生リスク。

・不動産事業全国各地に保有する商業施設等に係る自然災害や事故、火災等の発生リスク。

これらのリスクが顕在化する可能性について、自然災害に関しては、近年の気候変動による風水害の激甚化、度重なる地震の発生等の傾向から見て、顕在化する可能性が高まりつつあると考えられます。また、事故、火災の発生に関しては、長年にわたり各種予防策を徹底してきたことにより、昭和33年の東京宝塚劇場での死者3名を出した火災以降、当社グループの事業場において重大事故の発生に至った事例はありません。

また、リスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、固定資産の滅失・毀損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策は、防火・防災に対応した施設・設備管理を徹底するとともに、緊急時の連絡報告体制やお客様及び従業員の人命・安全を第一にした各種マニュアルの整備等に努めております。また、火災保険等の加入により経済的損害の発生に備えています。

 

 

② 映画、演劇公演等に係る事業の不確実性によるリスク

当社グループの以下の事業において、作品によっては十分な観客動員を果たせないリスク、作品の製作遅延や公開延期、公演中止等のリスクが存在します。

・映画事業:公開作品によっては十分な観客動員を果たせないリスク。また、出演者・スタッフ等のトラブルや撮影時の事故等による公開予定作品の製作遅延や公開延期・中止等のリスク。

・演劇事業:新作公演等の作品によっては十分な観客動員を果たせないリスク。また、俳優の健康上の理由・トラブル等により出演が不可能になり、公演が中止になるリスク。

これらのリスクが顕在化する可能性は、映画事業、演劇事業が不確実性を本質的な事業特性とする限り、一定程度、常に存在すると言えます。

また、これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、製作投資の回収可能性の低下によるたな卸資産の評価減等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策は、常に幅広い種類の良質なコンテンツの獲得に努め、年間を通じてバランスの取れたラインナップを編成してボラティリティの高い興行リスクを軽減しております。また、製作段階におけるトラブルを防止するため作品ごとの管理を徹底するとともに、万が一の場合には、速やかな代替策の実施を検討してまいります。

 

③ 知的財産権の侵害や不正転売に係るリスク

当社グループの以下の事業において、保有する知的財産権が侵害されるリスクや入場券等の不正転売等によるリスクが存在します。

・映画事業:映画、映像作品の違法動画配信や海賊版の流通、またキャラクターグッズ等での無許諾商品、模倣品等による知的財産権の侵害リスク

・演劇事業:演劇公演の盗撮による知的財産権の侵害や劇場の入場券等の不正転売リスク

これらのリスクが顕在化する可能性は、現在においても様々に発生しており、根絶することは事実上困難と考えられます。

また、これらのリスクが顕在化した場合は、損益において逸失利益が発生します。特に海外やインターネット上では、知的財産権の保護を十分に受けらず、被害が拡大する可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策は、著作権、商標権等の保護に関する各種対策を強化し、仮にリスクが顕在化した場合は、法的措置を前提に毅然とした対応をとることを徹底しております。入場券等の不正転売に関しては、電子チケットの導入を推進していくとともに、行政機関とも協力して可能な限りの対策を講じてまいります。

 

海外展開に係るリスク

当社グループの映画事業において、海外における映画・アニメ等の劇場公開、テレビ放映やインターネット上での配信、商品化権の許諾等については、当該国における戦争、政情不安や経済情勢の不確実性に加え、文化や慣習の違いに起因するビジネスリスク、知的財産権に関するリスク、SNSにおける炎上リスク、労使関係、貿易や租税を始めとする各種法的規制の変更、為替リスクなど多岐にわたるリスクが存在します。

これらのリスクが顕在化する可能性は、当社グループが海外展開を積極的に拡大する中で増加しつつあります。

また、これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少するとともに、訴訟コスト等が臨時に発生する可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策は、事前に経験豊富な専門家にアドバイスを得るなど、可能な限りリスクの低減に努めています。また、知的財産権に関するリスクについては、法的措置を前提に毅然とした対応をとることを徹底しています。

 

 

道路事業に係わるリスク

当社グループの不動産事業において、スバル興業㈱と同社の連結子会社が道路事業に係わっており、これらの事業においては、公共工事への高い依存に伴うリスク、労働人員不足のリスク、労務費及び資機材価格の高騰リスク、自然災害のリスク、建設業法等の規制に関するリスク等、道路事業特有のリスクが存在します。

これらのリスクが顕在化する可能性は、それぞれ一定程度存在します。

また、これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少する可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策は、スバル興業㈱を中心に安全管理・品質管理の徹底、優れた技術者の採用・育成・配置など、影響を最小限にするための具体的な施策が検討され、実施されております。

 

情報セキュリティに係るリスク

当社グループは、チケット販売やECサイト等におけるお客様の個人情報や映像素材のデジタルデータ等の取扱いにおいて、悪意の第三者からの予期せぬ不正アクセス、コンピュータウィルス侵入等による個人情報・機密情報の漏洩、設備の損壊・通信回線のトラブル等による情報システムの停止等のリスクが存在します。また、財務データを含む電子データが暗号化される等により、事業活動の継続ができなくなる等のリスクも存在します。

これらのリスクが顕在化する可能性は、様々な対策を実施していたとしても一定程度存在するものと思われます。また、業務のデジタル化、オンライン化が進むに連れ、顕在化する可能性が増加していくものと思われます。

また、これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少するとともに、顧客からの損害賠償請求等が臨時に発生する可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策は、2021年10月1日付で「情報セキュリティ基本方針」及び「情報セキュリティ対策規程」を制定するとともに、社内に情報セキュリティ委員会を設置して当社グループの情報システムに関する運用ルールを整備することにより、全社的な情報セキュリティマネジメント体制の構築に努めています。また、当社情報システム部を中心に、最新の技術に基づく可能な限りのセキュリティ対策やインシデント対応体制の整備、標的型攻撃メール訓練等によるユーザー教育を実施しているほか、サイバーリスク保険への加入により経済的損害の発生に備えています。

 

投資有価証券等に係るリスク

当社グループは、重要な取引先との関係を強固にするため、上場株式および非上場株式を複数保有しておりますが、将来大幅な株価下落や企業価値の毀損が起きた場合には、保有有価証券を減損処理する可能性があります。

なお、これらのリスクへの対応策は、有価証券の投資基準・保有意義を明確にするとともに、取締役会への報告を含む定期的なモニタリングを実施することで、リスクの軽減に努めています。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(経営成績の概況)

当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和されつつあるものの、景気の持ち直しに一部の弱さがみられ先行き不透明な状況が続いております。

映画業界におきましても、2021年の興行収入は1618億9千3百万円と、全国の劇場が一斉休業するなど新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前年からは回復がみられたものの、13.0%の増加にとどまりました。

このような情勢下にあって当社グループでは、緊急事態宣言により映画館や商業施設等の臨時休業・営業時間の短縮や座席販売の制限、演劇公演の中止・一部公演チケット販売の停止等をいたしましたが、一方で東宝配給作品「劇場版 呪術廻戦 0」等の大ヒットやTOHO animationレーベルの作品が業績に寄与いたしました。また、緊急事態宣言解除後も適切な感染予防の取り組みを講じたうえで、営業を継続した結果、営業収入は2283億6千7百万円(前年度比19.0%増)、営業利益は399億4千8百万円(同78.0%増)、経常利益は427億9千万円(同76.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は295億6千8百万円(同101.3%増)となりました。なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置の適用を受けた雇用調整助成金及び国や地方自治体等からの助成金等を「助成金収入」として特別利益に、劇場や商業施設等の臨時休業期間中の人件費・借家料・減価償却費等ならびに中止した演劇公演に係る製作費等を「臨時休業による損失」として特別損失に計上しております。

セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。

 

映画事業

映画営業事業では、東宝㈱において、共同製作や配給した作品のうち、「劇場版 呪術廻戦 0」「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「名探偵コナン 緋色の弾丸」「竜とそばかすの姫」「マスカレード・ナイト」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」が大ヒットを記録したほか、東和ピクチャーズ㈱との共同配給において「映画 モンスターハンター」や東宝東和㈱において「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」等を配給いたしました。これらの結果、映画営業事業の営業収入は40,439百万円(前年度比1.5%増)、営業利益は11,507百万円(同77.6%増)となりました。

なお、東宝㈱における映画営業部門・国際部門を合わせた収入は、内部振替額(4,316百万円、前年度比42.7%増)控除前で47,475百万円(同3.9%減)であり、その内訳は、国内配給収入が35,893百万円(同9.9%減)、製作出資に対する受取配分金収入が1,792百万円(同185.9%増)、輸出収入が3,706百万円(同84.1%増)、テレビ放映収入が869百万円(同36.3%減)、ビデオ収入が530百万円(同53.5%減)、配信その他の収入が4,684百万円(同5.5%増)でした。また、映画企画部門の収入は、内部振替額(842百万円、前年度比59.6%増)控除前で1,608百万円(同69.2%増)でした。

 

映画興行事業では、TOHOシネマズ㈱等において、緊急事態宣言により東京・大阪等での休館・営業時間短縮や座席販売の制限等を実施し、緊急事態宣言解除後も公開予定作品の延期やリバウンド防止措置対応など引き続き厳しい状況にありましたが、上記配給作品がヒットしたことや、前連結会計年度に比べ劇場の休館等の制約期間が短くなったこともあり、増収となりました。これらの結果、当連結会計年度における映画館入場者数は30,008千人と前年度比18.5%の増加となりました。映画興行事業の営業収入は57,673百万円(前年度比24.7%増)、営業利益は1,678百万円(前年度は1,100百万円の営業損失)となりました。

なお、当連結会計年度中の劇場の異動は、TOHOシネマズ㈱が11月17日に大阪府松原市「TOHOシネマズ セブンパーク天美」(10スクリーン)をオープンいたしました。これにより当企業集団の経営するスクリーン数は全国で10スクリーン増の712スクリーン(共同経営56スクリーンを含む)となっております。

映像事業では、TOHO animationレーベルの作品が各種事業において好調に推移いたしました。パッケージ事業において、TVアニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」が好調なセールスとなった他、TVアニメ「呪術廻戦」、「舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 大坂冬の陣」、映画「ゴジラvsコング」等を提供いたしました。アニメ製作事業におきましては、TVアニメ「呪術廻戦」「僕のヒーローアカデミア」「ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉」「ハイキュー!!」等の作品に加え、映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」「劇場版 呪術廻戦 0」に製作出資し、商品化権収入をはじめとした各種配分金収入により増収となりました。出版・商品事業では、劇場用パンフレット、キャラクターグッズにおいて、映画「名探偵コナン 緋色の弾丸」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」「劇場版 呪術廻戦 0」、TVアニメ「呪術廻戦」の販売が伸長しました。TOHOスタジオ㈱では、制作及びスタジオ事業の一体運営を図り、順調に稼働しました。㈱東宝映像美術及び東宝舞台㈱では、映画やTV・CM等での舞台製作・美術製作やテーマパークにおける展示物の製作業務に関して、一部持ち直しの兆しがみえたものの、依然として厳しい状況にありました。これらの結果、映像事業の営業収入は46,667百万円(前年度比55.0%増)、営業利益は11,708百万円(同135.4%増)となりました。

なお、東宝㈱における映像事業部門の収入は、内部振替額(8,690百万円、前年度比90.8%増)控除前で44,211百万円(同60.2%増)であり、その内訳は、パッケージ事業収入が11,396百万円(同38.4%増)、出版・商品事業収入が4,789百万円(同8.8%増)、アニメ製作事業収入が26,154百万円(同103.2%増)、実写製作事業収入が966百万円(同32.9%減)、ODS事業収入が572百万円(同10.2%減)、その他の収入が331百万円(前年度に比べ331百万円増)でした。

以上の結果、映画事業全体では、営業収入は144,781百万円(前年度比24.6%増)、営業利益は24,894百万円(同140.5%増)となりました。

 

演劇事業

演劇事業では、緊急事態宣言が発出され、公演の中止や公演チケット販売の停止・払い戻し対応等を行いました。緊急事態宣言の解除後も感染症予防対策に努め公演いたしました。東宝㈱の帝国劇場におきまして「Endless SHOCK -Eternal-」「モーツァルト!」「レ・ミゼラブル」「王家の紋章」「DREAM BOYS」「ナイツ・テイル―騎士物語―」「マイ・フェア・レディ」「ABC座 ジャニーズ伝説2021 at IMPERIAL THEATRE」「JOHNNYS' Island THE NEW WORLD」「笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-」「舞台『千と千尋の神隠し』」を上演、シアタークリエにおきましては「GHOST」「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」「CLUB SEVEN ZERO Ⅲ」「SHOW BOY」「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」「VOICARION XIII~女王がいた客室~」「GREASE」「ガラスの動物園」「リトルプリンス」「SLAPSTICKS」「ピアフ」等を上演し、その他全国へと社外公演を行いました。また、東京建物 Brillia HALLにおきまして「マドモアゼル・モーツァルト」を上演したなど、前年度に比べ公演数の増加により、大幅増収となりました。東宝芸能㈱では、所属俳優がCM出演等で好調に推移しました。以上の結果、演劇事業の営業収入は15,157百万円(前年度比90.7%増)、営業利益は2,472百万円(前年度は1,066百万円の営業損失)となりました。

なお、東宝㈱における演劇事業部門の収入は、内部振替額(193百万円、前年度比7.8%増)控除前で13,011百万円(同109.0%増)であり、その内訳は、興行収入が10,020百万円(同89.7%増)、外部公演収入が2,708百万円(同250.8%増)、その他の収入が282百万円(同64.9%増)でした。

 

 

不動産事業

不動産賃貸事業では、オフィス市況の変化や商業施設の休館等で、引き続き厳しい状況下にありました。企業集団の保有する賃貸用不動産の空室率につきましては、0.3%台で推移いたしましたが、一時的なテナントの入れ替え等もあり減収となりました。不動産賃貸事業の営業収入は27,155百万円(前年度比2.7%減)、営業利益は11,733百万円(同4.8%減)となりました。なお、東宝㈱が2021年11月1日を効力発生日として、連結子会社の萬活土地起業㈱を吸収合併いたしました。

企業集団の固定資産の含み益については、2021年1月1日の固定資産課税台帳の固定資産税評価額を市場価額として、税効果を考慮した後の評価差額のうちの東宝の持分は約3461億円となっております。(当該含み益の開示は、「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」に基づくものではなく、当会計基準とは別に、開示情報の充実性の観点から従来より引き続き自主的に行うものです。)

なお、東宝㈱における土地建物賃貸部門の収入は、内部振替額(785百万円、前年度比3.4%減)控除前で29,238百万円(同1.2%減)でした。

道路事業では、老朽化によるインフラ整備をはじめとする公共投資が堅調に推移するなか、スバル興業㈱と同社の連結子会社が、技術提案等を通じた積極的な営業活動により新規受注や既存工事の追加受注に努め、労務費・資機材価格の上昇傾向が継続する等、依然として予断を許さない状況が続きましたが、緊急応急業務にも迅速に対応すべく、安定した施工体制を堅持し収益の向上に努めました。その結果、道路事業の営業収入は28,977百万円(前年度比5.5%増)、営業利益は4,207百万円(同3.9%増)となりました。

不動産保守・管理事業では、東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱において、新規受注獲得の取り組みや経費削減に努めました。その結果、営業収入は9,699百万円(前年度比0.5%減)、営業利益は715百万円(同4.6%増)となりました。

以上の結果、不動産事業全体では、営業収入は65,832百万円(前年度比1.1%増)、営業利益は16,657百万円(同2.4%減)となっております。

 

その他事業

娯楽事業及び物販・飲食事業では、東宝共榮企業㈱の「東宝調布スポーツパーク」において利用者数が増加傾向にあり、好調に推移いたしました。TOHOリテール㈱の飲食店舗・劇場売店等においては、外食需要の厳しい状況が続き、休業や店舗の閉店をいたしました。その結果、その他事業の営業収入は2,596百万円(前年度比3.1%減)、営業損益は90百万円の損失(前年度は320百万円の営業損失)となりました。

 

(財政状態の概況)

当連結会計年度末における財政状態は、前連結会計年度末と比較して、総資産は28,727百万円増加し、502,532百万円となりました。これは主に、現先短期貸付金で5,999百万円、土地で13,818百万円、投資有価証券で8,490百万円の増加があったこと等によるものです。

負債では前連結会計年度末から8,558百万円増加し、93,351百万円となりました。これは未払金で764百万円の減少がありましたが、未払法人税等で7,493百万円、未払費用で1,329百万円増加したことによるものです。

純資産は前連結会計年度末と比較して20,169百万円増加し、409,181百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益29,568百万円の計上及び剰余金の配当6,205百万円による利益剰余金23,362百万円の増加の他に、自己株式の公開買付けによる取得等があり自己株式で4,940百万円の増加があったこと等によるものです。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ6,513百万円増加し、92,341百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益が44,481百万円、減価償却費が8,951百万円、未払消費税等の増加が2,350百万円、法人税等の還付額が2,355百万円ありましたが、売上債権の増加が2,452百万円、法人税等の支払額が6,512百万円あったこと等により、53,460百万円の資金の増加(前年度比40,948百万円の増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金は、有価証券の売却による収入が71,700百万円ありましたが、有価証券の取得による支出が65,315百万円、有形固定資産の取得による支出が26,942百万円、投資有価証券の取得による支出が15,830百万円あったこと等により、36,030百万円の資金の減少(前年度比8,804百万円の減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金は、自己株式の取得による支出が5,790百万円、配当金の支払額が6,208百万円あったこと等により、12,482百万円の資金の減少(前年度比4,737百万円の増加)となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

当企業集団の事業について生産実績を定義することが困難なため「生産の状況」は記載しておりません。

a. 受注実績

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前年同期比
(%)

受注残高
(百万円)

前年同期比
(%)

映画事業

3,035

4.3

231

9.7

演劇事業

不動産事業

27,452

9.3

6,479

25.6

その他事業

合計

30,487

8.8

6,711

25.0

 

(注) 1 当企業集団では映画事業に含まれる映像事業の内テーマパーク関連事業及び不動産事業に含まれる道路事業以外は、受注生産を行っておりません。

2 上記金額には消費税及び地方消費税は含まれておりません。

 

b. 販売実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年3月1日

至 2022年2月28日)

(百万円)

前年同期比(%)

映画事業

144,781

24.6

演劇事業

15,157

90.7

不動産事業

65,832

1.1

その他事業

2,596

△3.1

合計

228,367

19.0

 

(注) 1 上記金額には消費税及び地方消費税は含まれておりません。

2 当企業集団の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、重要性のある相手先がないため記載を省略しております。

  映画事業、演劇事業及びその他事業の販売の相手先は主に不特定の個人であり、不動産事業についても総販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。

3 映画事業の販売実績の内訳は、映画営業事業40,439百万円、映画興行事業57,673百万円、映画映像事業46,667百万円です。なお、映画営業事業の主なものは、当社の映画配給収入26,037百万円です。

 

(2) 経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)  経営成績の分析

当連結会計年度における当社グループを巡る経営環境は、緊急事態宣言による映画館や商業施設等の臨時休業・営業時間の短縮や座席販売の制限、演劇公演の中止・一部公演チケット販売の停止など厳しい状況が続いておりましたが、前期に比べて制約期間が短縮し前年同期より営業時間や公演数について増加させることができました。そのような情勢下で、東宝配給作品「劇場版 呪術廻戦 0」等の大ヒットやTOHO animationレーベルの作品が業績に寄与したこと等により新型コロナウイルス感染症の影響が直撃した前期からは大幅な回復を見せ、当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ36,419百万円(19.0%)増収の228,367百万円、営業利益は、前連結会計年度と比べ17,500百万円(78.0%)増益の39,948百万円となり、前回の中期経営戦略で「巡航高度」として掲げた連結営業利益400億円に迫る結果となりました。

現時点でも、収束が見えない新型コロナウイルス感染症に加え、地政学的リスクの高まりを受けた世界経済の混乱がもたらす様々な影響が懸念され、先行きの見通しは不透明感を増しておりますが、「TOHO VISION 2032 東宝グループ経営戦略」に基づいた取り組みを着実に推進してまいります。

 

(a) 営業収入

当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ36,419百万円(19.0%)増収の228,367百万円となりました。

(b) 営業原価、販売費及び一般管理費

当連結会計年度の営業原価は、前連結会計年度と比べ10,041百万円(8.1%)増加の133,527百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ8,877百万円(19.3%)増加の54,891百万円となりました。これは広告宣伝費が3,240百万円、人件費が1,774百万円、借地借家料が987百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。

(c) 営業利益

当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ17,500百万円(78.0%)増加の39,948百万円となりました。その内訳は、「映画事業」で前連結会計年度と比べ14,542百万円(140.5%)増益の24,894百万円、「演劇事業」で前連結会計年度と比べ3,538百万円増益の2,472百万円、「不動産事業」で前連結会計年度と比べ405百万円(2.4%)減益の16,657百万円、「その他事業」では前連結会計年度と比べ230百万円増益の90百万円の営業損失でした。

 

なお、上記事項を含む報告セグメントごとの詳細については、「第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

(d) 営業外収益、営業外費用及び経常利益

当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度と比べ903百万円(46.6%)増加の2,911百万円となりました。これは主として、為替差益が前連結会計年度に比べ858百万円増加したこと等によるものであります。

また、営業外費用は、前連結会計年度と比べ190百万円(73.2%)減少の69百万円となりました。これは主として、為替差損が前連結会計年度に比べ179百万円減少したこと等によるものであります。

この結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度と比べ18,594百万円(76.9%)増加の42,790百万円となりました。

 

(e) 特別利益、特別損失

当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度と比べて1,232百万円(46.6%)増加の3,875百万円となりました。これは投資有価証券売却益が前連結会計年度と比べ626百万円減少しましたが、助成金収入が前連結会計年度に比べ2,917百万円増加したことによるものであります。

特別損失は、前連結会計年度と比べ915百万円減少の2,184百万円となりました。これは当連結会計年度に固定資産解体費用を1,186百万円計上しましたが、前連結会計年度と比べ臨時休業による損失が1,662百万円減少したこと等によるものであります。

(f) 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税13,489百万円、法人税等調整額△46百万円、非支配株主に帰属する当期純利益1,470百万円を計上し、前連結会計年度と比べ14,879百万円(101.3%)増加の29,568百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の82.54円から167.24円に増加しました。

 
2)  財政状態の分析
(a) 資産

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ28,727百万円(6.1%)増加して502,532百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末と比べ3,838百万円(2.1%)増加して187,866百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ現先短期貸付金は5,999百万円(12.5%)増加し53,999百万円、受取手形及び売掛金が2,506百万円(12.3%)増加し22,852百万円となりました。

有形固定資産は、前連結会計年度末と比べ18,238百万円(12.0%)増加の169,865百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ、土地取得等により13,818百万円(22.4%)増加し75,438百万円、建設仮勘定が3,347百万円(158.9%)増加し5,453百万円となりました。

無形固定資産は、前連結会計年度末と比べ679百万円(11.2%)減少の5,386百万円となりました。

投資その他の資産は、前連結会計年度末と比べ7,330百万円(5.5%)増加し139,413百万円となりました。これは主に、投資有価証券が前連結会計年度末と比べ8,490百万円(7.5%)増加し121,891百万円となったこと等によるものであります。

(b) 負債

当連結会計年度末の流動負債及び固定負債合計額は、前連結会計年度末と比ベ8,558百万円(10.1%)増加の93,351百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末と比べ8,058百万円(10.1%)増加の47,531百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べて、未払法人税等が7,493百万円(331.7%)増加して9,751百万円、未払費用が1,329百万円(47.3%)増加して4,136百万円となりました。

固定負債は、前連結会計年度末と比べて500百万円(1.1%)増加して45,819百万円となりました。これは主に長期預り保証金が390百万円(1.7%)増加して22,991百万円となりました。

(c) 純資産

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて20,169百万円(5.2%)増加し、409,181百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益29,568百万円の計上及び剰余金の配当6,205百万円により前連結会計年度末と比べて利益剰余金が23,362百万円(6.5%)増加、自己株式の公開買付けによる取得等があり自己株式が4,940百万円(20.8%)増加したこと等によるものであります。なお、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末と比べ0.6ポイント減少し、78.7%となりました。

 

 

キャッシュ・フローの状況の分析・資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しているとおりであります。

(財務戦略の基本的な考え方)

当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な運転資金、設備投資等の資金は、自己資金を原則としており、不確実性が高い事業を運営するため、十分な手許資金が必要であると考えております。そのためグループ内の資金効率を向上させるべく、当社は、資金余剰が生じている子会社から借り入れる一方、資金需要のある子会社に対しては、貸付を行うことがあります。当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高92,341百万円に対し、有利子負債(リース債務含む)残高は2,205百万円と、自己資金での投資余力を高いレベルで維持しております。

(資金需要の内容及び経営資源の配分)

当社グループの資金需要の主な内容は、営業活動の支出として、劇場用映画の製作、出資やシネコンの運営資金、新規事業場の開設費、演劇興行における運営資金、製作費等及び不動産事業における設備投資及び物件の新規取得費等であります。戦略的に経営資源を配分し成長分野への投資を促進し、持続的な企業価値向上と長期的・安定的な株主還元の充実に努めております。

(資金調達)

短期的・中長期的な投資資金については、自己資金で賄うことを前提としており、中長期的な投資資金については、事業機会に即した資金調達の安定性向上に努めており、財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、高い信用格付の維持向上を目指して、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を取得しております。

なお、事業環境の変化を慎重に見極め、今後の経営課題に柔軟に対応するため、機動的な資金調達に努めております。

 

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

経営成績に重要な影響を与える要因

「第2[事業の状況]2[事業等のリスク]」に記載のとおりであります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

該当事項はありません。