文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、小林一三により設立されて以来、映画・演劇を中心に、幅広い層のお客様に夢や感動、喜びをもたらす数多くのエンタテインメント作品をお届けしてまいりました。
その経営理念は、「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を企業の存在意義(パーパス)とし、「吾々の享くる幸福はお客様の賜ものなり」を大切な価値観(バリュー)とし、「朗らかに、清く正しく美しく」を行動の理念(モットー)としております。
これらの理念に基づき、公明正大な事業活動に取り組むとともに、常にお客様の目線に立ち、時代に即した新鮮な企画を提案し、世の中に最高のエンタテインメントを提供し続ける企業集団でありたいと考えております。
当社グループは2022年4月に、創立100周年に向けた「長期ビジョン 2032」と、最初の3カ年の具体的な施策である「中期経営計画 2025」とから構成される「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を策定いたしました。現在、本経営戦略に基づく様々な施策を展開して、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでおります。その体系と骨子は、以下の通りです。
1.長期ビジョン 2032
(1) コーポレート・スローガン
(2) 3つの重要ポイント
① 成長に向けた「投資」を促進 ②「人材」の確保・育成に注力 ③ アニメ事業を「第4の柱」に
(3) 成長戦略の4つのキーワード
① 企画&IP ② アニメーション ③ デジタル ④ 海外
「企画&IP」をあらゆる価値の源泉として、その中でも「アニメーション」を成長ドライバーにし、「デジタル」の力で時間・空間・言語を超え、「海外」での飛躍的成長を実現すべく、果敢に挑戦していく

(4) 目指す姿(2032年の財務イメージ)
営業利益 750億円~1000億円
ROE 8%~10%程度
(5) 事業ポートフォリオの方向性
既存事業の3本柱である映画事業、演劇事業、不動産事業に加え、「アニメ事業」を第4の柱とする
2.中期経営計画 2025

3.人材と組織/サステナビリティの方針
(1) 人材と組織の戦略
基本方針
成長戦略の推進役となる多様で優秀な外部人材の採用を強化するとともに、よりクリエイティブな組織に進化すべく人材育成と働く環境の整備を推進していく
具体的施策
キャリア採用の拡大・強化、エキスパート社員制度の拡充
多様なキャリアパスと成長支援、公正な評価と成果に報いる処遇
エンゲージメントを高める以下の環境整備の推進
・朗らか健康経営
・TOHO WORK STYLE
・ダイバーシティ&インクルージョン
・オフィス改革
(2) サステナビリティの方針
基本方針
東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します
4つの重要課題
朗らかに ① 誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります
清く ② 地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します
正しく ③ 人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します
美しく ④ 豊かな映画・演劇文化を創造し、次世代への継承に努めます
当社グループを巡る経営環境は、2024年に入り日経平均株価が34年ぶりの最高値を更新し、賃金の持続的上昇に勢いが見られ、日銀がマイナス金利を解除するなど、経済の好循環が日本全体へ波及していくことが期待されています。一方で、世界的な物価高や深刻さを増す人手不足、ウクライナや中東情勢の緊迫化など、様々な影響も懸念されております。また、当社グループの事業環境においては、約3年に及んだ新型コロナウイルス感染症の影響は払拭されたものの、エンタテインメントを巡る選択肢は多様化し、お客様の嗜好やライフスタイルの変化のスピードは加速しているものと考えられます。
そのような情勢下で、当社グループの2024年2月期の通期業績は、主力の映画事業において、当社オリジナルIPであるゴジラの70周年記念作品『ゴジラ-1.0』を製作し、日本での大ヒットのみならず北米においても自社配給を行い、邦画実写作品として歴代最高の北米興収を記録するなど、大きな話題となりました。さらにTOHO animationの期待作『劇場版 SPY×FAMILY CODE:White』や『劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦』も大ヒットとなり、TOHO animationのラインナップを充実させるとともに、動画配信、商品化権、キャラクターグッズ、ゲーム等の展開を含めて、IPの価値向上につながる多面的な事業展開が会社業績に大きく寄与しました。そのほか、共同製作や配給した作品のうち『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が興行収入138億円のシリーズ最高興収を記録、宮崎駿監督の10年ぶりの最新作『君たちはどう生きるか』も夏興行を牽引、洋画では東宝東和㈱配給の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が興行収入140億円以上を記録する大ヒットとなりました。
演劇事業では、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類」に引き下げられて以降、正常な公演が安定的に可能となり、帝国劇場を中心に全席完売となる公演が多く見られるなど、お客様の演劇公演に対する期待が好調な業績に結びつく状況となりました。また、不動産事業は新規物件を含む全国に所有する不動産が堅調に稼働し、人手不足や資材価格の高騰の影響はあるものの、事業収益に大きく貢献しました。これらにより連結営業利益は592億円となり、「中期経営計画 2025」の2年目において、数値目標の一つであった営業利益の最高益(528億円)の更新を達成することができました。
そしてこれらの結果は、当社グループの成長戦略の4つのキーワードである①企画&IP、②アニメーション、③デジタル、④海外の4つが、今後も積極果敢にチャレンジすべきキーワードであることを証明しており、そのチャレンジを続けることで、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資することができるとの認識を新たにしています。
一方で、冒頭にも記した通り世界的な物価高や深刻さを増す人手不足、ウクライナや中東情勢の長期化による影響など、経営環境は依然として先行き不透明な状況が続いており、それらの影響についても十分に注視する必要がありますが、これらの不透明な要素が当社業績に与える影響は、今のところ軽微との認識です。
以下、セグメント別に現在の経営環境等に対する認識について簡潔な説明を記します。
[映画事業]
映画営業事業においては、実写、アニメの両方で興行力のある邦画コンテンツを継続的に提供できる配給会社としての当社の国内シェアは、2023年(自然暦)において約35%を占め、競合他社との間で圧倒的な競争優位性を維持しています。さらに『ゴジラ-1.0』を北米において自社配給することで大ヒットに結びつけることに成功するなど、オリジナルIPを良質のコンテンツとして製作することで、今後は海外の映画市場においても競争力を発揮する可能性を示すことができました。一方で、公開される作品の興行力には大きな差が見られ、いわゆる作品の“優勝劣敗”を左右するコンテンツ力とマーケティング力の強化が大きな課題です。また、コロナ禍を経て急速に会員数を増やした動画配信プラットフォームについては、競争力のある当社作品の二次利用等の機会創出と付加価値を高めることにつながる反面、それら配信プラットフォーマーが日本国内において自ら作品製作に乗り出すことにより、映画等の製作における影響力を強めていく懸念があります。さらに、東宝東和㈱等が国内配給を担当するハリウッドメジャーの新作についても、100億円を超える大ヒット作品が公開される反面、ハリウッドスタジオにおけるストライキの影響が徐々に顕在化して、短期的には十分な洋画のラインナップを確保することができないなどの影響が予想されます。
映画興行事業においては、自然暦における2023年の全国興行収入は2,214億円(前年比3.9%増)、映画入場者数は1億5,553万人(同2.3%増)と微増になりましたが、コロナ禍前の過去最高であった2019年の全国興行収入との比較では84%に留まっています。そのような状況下にあって、TOHOシネマズ㈱は全国の主要都市の好立地にシネマコンプレックスを展開し、スクリーンシェアでは約19%、興行収入のシェアは約27%と業界トップを維持しており、競合他社との競争優位性に揺るぎはありません。今後も東宝配給作品を中心にバラエティ豊かな強力作品を用意すること、的確な出店戦略により競争優位性を維持すること、適切な映画鑑賞料金施策を実施すること等が重要な課題です。一方で、エネルギー価格や人件費、建設コストなどの上昇傾向が映画館の収支構造に与える影響や、動画配信市場の動向が映画興行事業へ与える影響については、懸念すべき課題として認識しています。また、長期的には国内の人口減の影響や公開される作品の興行力の二極化のように、将来の成長を鈍化させる可能性のある要因についても注視する必要があります。
映像事業においては、「長期ビジョン 2032」において「映画・演劇・不動産」に加えて「第4の柱」としたアニメ事業がさらなる成長を続けております。当社のアニメーションレーベル「TOHO animation」は、10周年の節目を経て、「SPY×FAMILY」や「ハイキュー!!」が劇場版として大ヒット、加えて「僕のヒーローアカデミア」「呪術廻戦」といった充実したコンテンツの厚みをさらに増すべく、新たなTVシリーズとして製作した「薬屋のひとりごと」「葬送のフリーレン」等の作品もその第一期を好評のうちに終えました。またゲーム事業では、TOHO Gamesの「呪術廻戦 ファントムパレード」が400万ダウンロードを突破するなど好調に推移しました。このように、TOHO animationレーベルの各作品は、パッケージ・配信・商品化ライセンス等の幅広い事業を国内に留まらず海外にも展開することによって、当社グループ全体の業績を大きく牽引しています。また、㈱東宝ステラの運営するECサイト「TOHO animation STORE」は、アニメ関連グッズの売上の拡大に貢献しています。以上のように、国内外の多くの熱心なファン層に支えられ、アニメ関連市場は中・長期的な成長が期待できるものと認識しており、当社グループの成長ドライバーとして引き続き経営資源を集中し、多面的・重層的・長期的なビジネス展開に注力していくこととしています。
また、TOHOスタジオ㈱では、映画・映像制作及びスタジオ事業の一体化を図り、外資系動画配信プラットフォームのスタジオ賃貸を誘致するなど、順調に稼働しました。また、㈱東宝映像美術や東宝舞台㈱では、コロナ禍において中断していたテーマパークにおける展示物の製作業務や音楽ライブイベントが復活したことで、美術製作・舞台製作における受注の回復傾向が顕著に見られます。
[演劇事業]
演劇事業においては、2023年5月より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられ、すべての劇場において正常な公演が安定的に可能になるとともに、主力の帝国劇場では「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」が満席となったほか、大人気コミック「SPY×FAMILY」の初ミュージカル化など、他ジャンルの作品を演劇化することで新しいお客様を開拓するなど、シアタークリエやその他の劇場も含め積極的な営業展開に努めました。さらに本年は、2025年2月をもって建て替えのため休館となる帝国劇場のクロージング・ラインナップを上演、熱心なファンの来場が見込まれます。一方で、2025年3月以降の帝国劇場休館中においては、代替劇場での公演数の確保や建て替え後の新劇場での劇場運営等の課題に注力する必要があります。さらに、コロナ禍において積極的活用が始まった演劇の動画配信、公演関連グッズ販売などの二次利用展開、さらに本年4月から上演されている「千と千尋の神隠し」のロンドン公演のような演劇コンテンツの海外展開についても、演劇事業における今後の業績拡大の機会になると認識しております。また、東宝芸能㈱では、所属俳優がCM・TV・映画出演等で順調に稼働しております。
[不動産事業]
不動産賃貸事業においては、足元の不動産市況では、東京都心地区のオフィス空室率が約2年ぶりに5%台に低下するなどオフィスの移転・拡張需要は底堅く、空室率の上昇は限定的なものに留まると見込まれており、成約賃料についても下げ止まり感が見られます。一方で、好立地が多い当社グループ保有物件の空室率は1%未満の低い水準で推移しており、賃料も比較的底堅い状況にあります。しかしながら、建築コストの高騰、エネルギー価格や租税公課などの上昇傾向、さらには金融政策の変更等に伴う金利上昇が不動産賃貸事業に与える影響について、注視していく必要があります。
道路事業においては、老朽化による道路関連のインフラ整備をはじめとする公共投資の受注は引き続き堅調であり、当面は順調に推移すると思われます。スバル興業㈱と同社の連結子会社が積極的な営業活動により新規受注や既存工事の追加受注による業績拡大に努めてまいります。
不動産保守・管理事業においては、連結子会社である東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱が厳しい競争環境の中でも受注を回復させるとともに、価格転嫁についても積極的な営業展開に努めております。
なお、道路事業、不動産保守・管理事業の両事業においては、深刻な人手不足やインフレによる賃金上昇の影響について、注視していく必要があります。
[その他事業]
その他事業においては、「東宝調布スポーツパーク」でゴルフ練習場、テニスクラブ等を運営する東宝共栄企業㈱が、コロナ禍における屋外スポーツの一時的な”特需“は過ぎたものの、利用者数は堅調に推移しています。また、TOHOリテール㈱は、演劇事業のグッズ販売等を積極的に展開することで業績を回復しております。
当社グループは、経営目標の達成状況を判断するための指標として「営業利益」を最も重視しております。
創立100周年を迎える2032年をターゲットとした「長期ビジョン 2032」においては、営業利益750億~1000億円の企業集団への成長を目指すとしております。なお、その際のROEのイメージを8%~10%程度とし、利益だけでなく資本効率を意識した経営を行ってまいります。
「中期経営計画 2025」では、営業利益において過去最高益(528億円)の更新に挑戦するとしておりましたが、この数値目標については、2年目に当たる当連結会計年度の営業利益が592億円となり、目標を達成しております。また、本期間においては、コロナ禍からの回復を見極めつつ、次の「成長」を実現すべく「投資」を重視し、成長投資の金額として3カ年合計で1,100億円程度を見込むとしております。その他の数値目標では、株主還元として年間40円の配当をベースに配当性向30%以上、かつ機動的な自己株式取得の実施、資本効率の指標としてROE8%以上を掲げております。
当社グループは、2022年4月に公表した「長期ビジョン 2032」と、最初の3カ年の「中期経営計画 2025」とから構成される「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に基づき、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指しております。
「長期ビジョン 2032」においては、当社グループのパーパスである「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を再定義した「Entertainment for YOU 世界中のお客様に感動を」というコーポレート・スローガンのもと、成長に向けた「投資」を推進すること、「人材」の確保・育成に注力すること、アニメ事業を「第4の柱」にすることを、3つの重要ポイントとし、さらに「企画&IP」「アニメーション」「デジタル」「海外」の4つを成長戦略のキーワードとして掲げ、積極果敢にチャレンジを続けております。
「中期経営計画 2025」の2年目にあたる当連結会計年度においては、それら挑戦のいくつかが実を結び、数値目標の一つであった営業利益の最高益の更新を達成することができました。映画事業においては、「ゴジラ-1.0」において国内のみならず海外への配給を自ら手掛けた結果、世界的な大ヒットとなり、ゴジラIPと東宝ブランドのグローバルな価値向上につながりました。アニメ事業においては、「SPY×FAMILY」や「ハイキュー!!」の映画版が大ヒットし、「呪術廻戦」のスマホゲームへのチャレンジが成功を収めるなど、TOHO animationの作品ラインナップの充実のみならず、IPの価値向上につながる多面的な事業展開が会社業績に大きく寄与しました。
そして次期連結会計年度は、「中期経営計画 2025」の最終年度に当たります。当社グループは、映画、アニメ、演劇、不動産の「事業の4本柱」それぞれにおいて、積極的な投資や着実な事業展開により、さらなる成長を目指してまいります。映画事業においては、引き続き充実したラインナップを提供するとともに、将来的な海外展開も視野に入れ、自社企画・製作体制のさらなる強化を図ります。アニメ事業においては、新規IPを加えラインナップのさらなる拡充を図るほか、オリジナル作品の開発にもチャレンジし、持続的な収益拡大に努めてまいります。演劇事業では、帝国劇場のラストイヤーを大盛況で終えることを目指すとともに、舞台「千と千尋の神隠し」のロンドン公演を大成功に導くべくチャレンジします。不動産事業においては、市況の変化に注意深く対応し、保有賃貸不動産の賃料アップに努めるほか、現在進めている複数の再開発プロジェクトを着実に推進することを目指します。
また、これら成長戦略を推進していくためには、多様な人材の積極的な採用と育成、誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境の整備が極めて重要と考えております。東宝本社では現在、通年でのキャリア採用を大幅に拡充するとともに、多様なキャリアパスと成長支援、公正な評価と処遇を実現するための人事制度改革、エンゲージメントを高める環境整備の推進を課題として取り組んでおります。さらに、「エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します」という「サステナビリティの基本方針」に基づき、さまざまな社会課題に対し、エンタテインメント企業ならではのアイデアで解決策を見出して行きたいと考えています。
最後に、取締役会の実効性の確保など、コーポレート・ガバナンスの一層の充実に努め、成長戦略の推進による収益性の向上に加え、適切な株主還元を通じて資本効率の向上を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」において、「サステナビリティの基本方針」を「東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて、誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します」と定めています。また、当社グループのモットー(行動理念)である「朗らかに、清く正しく美しく」を元に4つの重要課題及びその具体的な取り組み目標を設定しております。
東宝グループが取り組む4つの重要課題
朗らかに 重要課題① 誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります
清く 重要課題② 地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します
正しく 重要課題③ 人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します
美しく 重要課題④ 豊かな映画・演劇文化を創造し、次世代への継承に努めます
当社グループでは、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」や「中期経営計画 2025」に連動する形で策定した「サステナビリティの基本方針」に則り、4つの重要課題を設定しております。当社グループのサステナビリティ活動にあたっては、これらの重要課題に沿った施策を推進し、その進捗状況については「東宝グループ サステナビリティ・レポート 2023」にて開示しております。今後も当社グループのサステナビリティ活動を通じてステークホルダーの皆さまとの対話を活性化させ、社会課題に対する解決策を見出してまいります。
「
https://www.toho.co.jp/files/223eaa008eccc7547dd4e6eeec93b98a744f55bc790a26b294620becd67e9351
当社グループでは、グループ全体の事業の継続と経営の健全性を維持するため「リスクマネジメント基本規程」を定め、代表取締役社長を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置しております。本会議は総務部が事務局を担い、年2回開催されております。気候変動に関するリスクや機会の識別・評価及び管理にあたっても同体制に包含されております。
リスクの識別・評価にあたっては、各事業所における潜在リスクを調査・把握し、グループへの影響が大きいリスクを定量・定性の両面で総合的に評価し、優先度の高いリスクを選定後、リスクの顕在化の予防とリスク発生時の対応策について検証しております。そのうえで内部監査室においてはリスク対応策の実施状況の評価を行うなど、組織的なリスクマネジメントの観点から、グループ全体でのPDCAサイクルを回しております。なお、同プロセスによって特定された気候変動に関するリスクは「サステナビリティ委員会」に報告され、同委員会を中心に議論されたのち、重要度が高いと判断されたものについては取締役会へ報告される体制となっております。
当社グループは、長期的な社会課題を幅広く検討した後、当社グループにとっての重要な要素を抽出し「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」「中期経営計画 2025」の策定と連動する形で特定した4つの重要課題<マテリアリティ>ごとに、具体的な取り組み目標を設定いたしました。
(2)気候変動
<TCFDに基づく情報開示>
当社グループは、サステナビリティの基本方針の重要課題②に「地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します」と設定し、脱炭素の実現に向け、再生可能エネルギー等を活用したCO2排出量削減、事業活動における環境負荷の少ない素材の活用や廃棄物の削減等を推進しております。
地球温暖化への適応及び脱炭素化の推進をはじめとした気候変動課題への取り組みは、2015年のパリ協定の採択や2021年のCOP26における1.5℃目標達成に向けた世界的合意も踏まえ、サステナビリティに関わる社会的な諸課題の中でも特筆して重大なテーマの一つとして認識しております。また、TCFDのフレームワークに即した気候変動リスク及び機会が及ぼす影響の評価と対応策の検討及び事業戦略への統合は、当社グループの企業価値向上と持続可能な社会の実現に資するものと考え、TCFDの提言に賛同し、このフレームワークに基づいた情報開示をいたしました。引き続き、経営の強靭化と持続可能な社会の実現を目指してまいります。
① ガバナンス
当社グループでは、執行側として、当社執行役員をメンバーとする経営会議の下部組織として、同メンバーから構成される「サステナビリティ委員会」を設置しています。同委員会では代表取締役社長が委員長を務め、気候変動によるリスクや機会の把握、リスクマネジメント上の観点から、脱炭素やエネルギー効率の向上などの気候変動に関する目標・施策の策定、進捗状況の確認等を実施しています。また、本委員会で協議した内容は、取締役会にて報告されます。取締役会は原則として月1回開催され、当社グループ全体の気候変動に関する方針の決定及び監督、進捗の確認を行っております。
② 戦略
当社グループでは、気候変動に起因して将来起こり得る不確実な影響因子及びリスクと機会の特定にあたって国際エネルギー機関(IEA)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の仮説を参考に、シナリオ分析を実施しています。2023年度時点における考察では、地球温暖化が深刻化する世界及び脱炭素化への移行が推進され2050年までにカーボンニュートラルが達成されるとした世界の2つのシナリオ(1.5℃シナリオ*1と4℃シナリオ*2)を設定し、それぞれの前提条件を踏まえた2030年時点における分析評価を実施しております。
また、当社グループでは創立100周年を迎える2032年をターゲットとした「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を発表する中で、お客様の価値観やライフスタイルの変容を踏まえた成長戦略を検討しています。さらに、各シナリオに基づき、比較的影響が大きい物理的リスクなどに対応するため、気候変動に対するレジリエンス性を確保した戦略の検討を進めてまいります。当社グループの企業価値向上には脱炭素化への貢献が不可欠と考え、CO2排出量の削減目標を設定し、LED照明への切り替えや再生可能エネルギーへの転換、新規開発物件での環境認証の取得など、その取り組みを推進しております。
(*1参考シナリオIPCC:RCP2.6 IEA2021:SDS/NZE2050 *2参考シナリオIPCC:RCP8.5 IEA2021:STEPS)
③ リスク管理
リスク管理については「(1)サステナビリティ全般」の「③リスク管理」に記載のとおりです。
④ 指標及び目標
当社グループでは、映画館運営をはじめとして、業務遂行上、保有不動産の稼働やサービスの提供に伴い電力を主として多くのエネルギーを消費しています。これらのエネルギー消費活動から多くのCO2排出量があることを認識しており、これを受け当社グループでは再生可能エネルギーの利用や保有物件の環境認証取得を通し、CO2排出量を指標とした削減努力を推進しております。
当社グループでは、近年最もCO2排出量の多かった2017年度(第129期)を基準に、毎年その排出量削減の進捗を管理しております。その結果、2022年度(第134期)時点のCO2総排出量が2030年度の当初目標であった「2017年度比30%削減」を達成したことを受け、2023年度(第135期)において新たに削減目標の見直しを実施し、2030年度の目標を「2017年度比50%削減」に変更いたしました。なお、2050年度までに「実質排出量ゼロ」を目指すという目標に変更はなく、引き続きCO2削減活動に注力してまいります。


① 戦略
1) 多様性の確保を含む人材育成方針
当社グループは、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」において、成長戦略の推進役となる多様で優秀な外部人材の採用を強化するとともに、よりクリエイティブな組織に進化すべく人材育成と働く環境の整備を推進していくことを「人材と組織の戦略」の基本方針として掲げております。
これに基づき、「キャリア採用の拡大・強化」「エキスパート社員制度の拡充」「多様なキャリアパスと成長支援」「公正な評価と成果に報いる処遇」を具体的施策として、多様性の確保を含む人材育成に積極的に取り組んでおります。
特に当連結会計年度においては「キャリア採用の拡大・強化」に力を入れて取り組み、2023年3月~2024年2月の1年間の実績で、当社では59名のキャリア(中途)採用を実施し、2024年2月末現在で従業員全体に占めるキャリア採用者の割合は31.9%(前年同期24.8%)に達しております。また、職制上の課長職以上の地位に占めるキャリア採用者の割合は20.1%(前年同期18.5%)であり、管理職への登用も進めております。今後も、事業領域の拡大や業務内容の高度化に伴い、外部でキャリアを積んだ専門性の高い人材の採用を拡大・強化するとともに、それらの人材を積極的かつ計画的に中核人材として育成・登用するための仕組みを構築してまいります。
また、当社では女性管理職比率(職制上の課長職以上の地位に占める女性割合)の目標を20%と設定し、女性活躍推進のための取り組みとして、男女の公正な配置・評価・昇格を進めるとともに、アンコンシャスバイアスに関する研修などを通じて従業員一人ひとりの意識改革にも取り組んでおります。部長職をはじめ女性の活躍が徐々に拡大しており、2024年2月末現在での女性管理職比率は14.9%となっております。
「多様なキャリアパスと成長支援」「公正な評価と成果に報いる処遇」に関しては、当社において、2025年度の実施を目指し人事制度改革を実施すべくプロジェクトを推進中です。これも「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」と連動した人材戦略の一環であり、人材の多様性拡大を前提に、新しい時代の価値観に適合した「全員活躍」のためのサステナブルな制度の構築を目指し、従来の諸制度を根本から見直すべく取り組んでおります。
2) 社内環境の整備に関する方針
当社グループでは、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」において、サステナビリティの基本方針の重要課題①に「誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります」と設定し、従業員のエンゲージメントを高める社内環境の整備について、様々な施策に取り組んでおります。
当社における具体的施策は次のとおりです。
<健康経営への取り組み>
当社では「朗らか健康経営」に取り組んでおり、「心のケア 働きがい」「生活習慣改善」「健康診断」「働き方」各項目において目標数値を設定し、その進捗状況を毎年確認しております。また社内研修をはじめとした様々な施策を実施し「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に3年連続で認定されております。
従業員が心身ともに健康で、持てる能力を最大限に発揮できる職場環境の実現が企業と従業員を共に成長させることに繋がると考えており、今後も積極的に健康経営に取り組んでまいります。
<働き方・職場環境の改善>
当社では、働き方のガイドラインである「TOHO WORK STYLE」を制定し様々な施策を通して、全従業員が“仕事も私生活も楽しむことで「朗らかライフ」を実現”することを目指しております。そのために長時間労働の是正を目的とした時間管理の徹底、有給休暇をはじめとする休暇取得促進のための社内施策「ゆうゆうProject」等に取り組んでおります。また、働く時間を自身の都合で決めることができるフレックスタイム制の導入や、働く場所を自分で決めることができるテレワーク勤務を週2日まで取得できるよう整備することで、時間と場所にとらわれない多様で柔軟な働き方を実現しております。
職場環境においては、新たな時代の多様なワークスタイルに対応するため、2022年8月から本社オフィスの改革「シン・レイアウト作戦」を実施いたしました。オフィスのフリーアドレス化により部門の枠を超えたコミュニケーションの活性化を実現するとともに、いつでも食事や休憩がとれるリフレッシュルームを新設することで従業員が適切な環境で業務に従事することができるなど、業務の効率化と生産性の向上にも取り組んでおります。
<エンゲージメントの向上>
当社グループでは、「人材と組織の戦略」において「エンゲージメントの高い職場環境の整備」を重要な基盤と位置づけており、当社では従業員の主観・感じ方の言える化・見える化とそれらに基づいた組織内の対話・コミュニケーション促進を目的として、全従業員を対象としたエンゲージメント調査を実施しております。
2022年から2023年にかけては、エンゲージメント調査結果の分析に基づき、「チャレンジ・挑戦を称賛し、失敗を責めない風土の醸成」という目標を設定し、その取り組みの1つとして、「多くの人に感知されず埋もれたチャレンジ」に光を当て全社で称賛し合うことを目的とした「TOHO CHALLENGE AWARD」を開催いたしました。また、エンゲージメント向上においては経営層と社員、部署や役職・年代を越えたコミュニケーションが不可欠であると考え、「ミッション・ビジョンを理解し共感できる機会の創出」を重要項目として注力し、経営トップと社員が対話を行うワークショップ「タウンホールMTG」を複数回実施いたしました。さらに自社の提供するコンテンツから生まれる「感動」を従業員自身が体験し共感することを目的として、当社グループ全従業員とその家族を対象に帝国劇場公演「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」への招待企画を実施いたしました。今後もエンゲージメント向上に向けて様々な施策に取り組んでまいります。
② 指標及び目標
当社グループは、サステナビリティの基本方針の重要課題①に「誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります」と設定し、多様性のある活力に溢れた組織づくりを目指して様々なKPIを定め、目標達成に向けて取り組んでおります。
なお、当社グループの連結子会社は業種・業態が多岐に渡り、現時点においては当社グループとして統一されたKPIを設定することが困難なため、当該期間では当社のみの指標及び目標としております。将来的には連結子会社を包含した指標や目標を設定できるよう努めてまいります。
また、多様性の確保を含む人材育成において、キャリア採用につきましては、当社の掲げる経営戦略及びそれに基づく事業戦略に連動する形で機動的に実施されるものと考えており、具体的な数値目標等は設定しておりませんが、年2回開催される「人材戦略会議」において、各部門の人材の需給状況について把握・検討しており、今後もキャリア採用を含めた多様な人材の確保と育成を柔軟に検討・実施してまいります。
「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」(2026年3月31日まで)
当社の女性管理職比率は、2024年2月末現在で14.9%となっており、厚生労働省発表の女性管理職比率12.7%(令和4年度)を上回っておりますが、上記KPIの20%には達しておりません。今後も引き続き、女性が働きやすい職場環境の整備に努めるとともに、女性の管理職登用の機会創出に積極的に取り組み、目標数値の達成に向けて取り組んでまいります。
「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」(2024年3月1日~2026年2月28日まで)
当社では、以前より法令を上回る育児関連諸制度を整備しておりましたが、2022年10月に育児関連休暇制度のさらなる拡充を図るとともに、「出産・育児のガイドブック」を作成・周知するなど、育児関連休暇の取得推奨に努めてまいりました。その結果、2年連続で男性育休、女性育休ともに2024年2月29日までのKPI(男性社員:休業または休暇取得率70%以上・女性社員:休業取得率100%)を達成することができました。そこで、2024年3月1日より上記のとおり新たなKPIを設定いたしました。引き続き全従業員が育児との両立を図ることができる働きやすい環境整備を推進し、目標数値の達成に向けて取り組んでまいります。
「朗らか健康経営」推進計画(2025年達成に向けて)
当社では、健康経営において2025年の達成に向けて、「心のケア 働きがい」「生活習慣改善」「健康診断」「働き方」の4項目において目標数値を設定しております。組織内の対話・コミュニケーション促進を目的として導入されたエンゲージメント調査については、「健康スコア」の項目において全職場でのスコアを50以上とすることを目標にしており、2024年3月時点で調査対象となる当社内84セクションのうち72セクションで達成しております。引き続き全職場での目標達成に向けて取り組んでまいります。また、1人あたりの時間外勤務時間の目標を月平均22.2時間以下としており、2023年(自然暦)の月平均26.3時間からの改善を目指しております。これからも従業員一人ひとりが朗らかにいきいきと働くことができる健康な職場づくりに努めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況及び事業運営に特に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループでは、「リスクマネジメント基本規程」に基づき、代表取締役社長を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置し、グループ全体にわたるリスクの洗い出しと評価、連絡・報告体制の整備、対応策の検討等を実施し、これら主要なリスク発生の回避及び発生時の迅速かつ適切な対応に向け、全社的なリスクマネジメント体制を構築しております。
なお、文中における将来に関する事項は当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 映画、アニメ、演劇公演等に係る事業の不確実性に基づくリスク
当社グループの以下の事業において、作品によっては十分な観客動員を果たせないリスク、作品の製作遅延や公開延期、公演中止等のリスクが存在します。
・ 映画事業:公開作品によっては興行収入が想定を下回るリスク。また、出演者・スタッフ等のトラブルや撮影時の事故等による公開予定作品の製作遅延や公開延期・中止等のリスク。
・ アニメ事業:出資作品によっては興行収入や配信等の各種利用料が想定を下回るリスク。また、声優・スタッフ等のトラブル等により製作遅延や公開延期、放映・配信の中止等のリスク。さらには、作品内容や表現等によって海外での利用に支障が発生し、十分な収入が得られないリスク。
・ 演劇事業:新作公演等の作品によっては十分な観客動員を果たせないリスク。また、制作スケジュールの遅延や俳優の健康上の理由・トラブル等により出演が不可能になり、公演が延期・中止となるリスク。
これらのリスクが顕在化する可能性は、映画事業、アニメ事業、演劇事業が不確実性を本質的な事業特性とする限り、一定程度、常に存在すると言えます。
これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、製作投資の回収可能性の低下による棚卸資産の評価減等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
これらのリスクへの対応策は、常に幅広い種類の良質なコンテンツの獲得に努め、映画事業・演劇事業においては、年間を通じてバランスの取れたラインナップを編成してボラティリティの高い興行リスクを軽減しております。また、コンテンツの制作段階におけるトラブルの発生や、制作スケジュールの遅延を防止するため作品ごとの管理を徹底するとともに、万が一の場合には、速やかな代替策や対応策の実施を検討してまいります。
(2) 物価、人件費等の高騰による収益構造悪化のリスク
当社グループの以下の事業において、エネルギー費・原材料費などを含む物価や人件費の高騰といった要因がもたらす収益構造悪化のリスクが存在します。
・ 映画事業:物価・人件費の高騰による全国各地に保有する映画館のランニングコスト増、及び新規出店に伴う出店費といったコスト増に伴う収益構造悪化のリスク。
・ 演劇事業:直営劇場として保有する帝国劇場・シアタークリエに係るランニングコスト増による収益構造悪化のリスク。
・ 不動産事業:全国各地に保有する不動産物件に係るエネルギーコストの高騰による収益構造悪化のリスク。
これらのリスクは、地政学上のリスク発生も含めた世界経済、社会環境の変化が発生要因であるためにコントロールが難しく、常にリスクとして存在します。
これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、設備投資の回収可能性の低下による固定資産の減損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
これらのリスクに対しては、可能な限り適切な方法で価格転嫁して収入の増加に努めるとともに、一層の運営効率化とコスト節減に努めリスクの低減を図ります。
当社グループの以下の事業において、不特定多数のお客様が来場される事業場における自然災害(大規模な地震・風水害など)や事故、火災等の発生により事業活動の継続に支障をきたすリスクが存在します。
・ 映画事業:全国各地に保有する映画館での自然災害や事故、火災等の発生リスク。
・ 演劇事業:直営劇場として保有する帝国劇場・シアタークリエ及び直営劇場以外での当社主催公演時の自然災害や事故、火災等の発生リスク。
・ 不動産事業:全国各地に保有する不動産物件に入居する商業・オフィステナント等に係る自然災害や事故、火災等の発生リスク。
これらのリスクが顕在化する可能性については、自然災害については近年の気候変動による風水害の激甚化、度重なる地震の発生等の傾向から見て、顕在化する可能性が高まりつつあると考えられます。また、事故、火災の発生に関しては、長年にわたり各種予防策を徹底してきたことにより、昭和33年の東京宝塚劇場での死者3名を出した火災以降、当社グループの事業場において重大事故の発生に至った事例はありません。
これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、固定資産の滅失・毀損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
これらのリスクへの対応策は、防火・防災に対応した施設・設備管理を徹底するとともに、緊急時の連絡報告体制やお客様及び従業員の人命・安全を第一にした各種マニュアルの整備等に努めております。また、火災保険等の加入により経済的損害の発生に備えています。
当社グループの以下の事業において、「ゴジラ」など当社が保有するIPや当社が出資した各種コンテンツの知的財産権が侵害されるリスクや、演劇公演の鑑賞券等の不正転売によるリスクが存在します。
・ 映画事業:映画、映像作品の違法動画配信や海賊版パッケージ商品の流通、またキャラクターグッズ等での無許諾商品、模倣品等による当社知的財産権が侵害されるリスク。
・ アニメ事業:アニメ作品の違法動画配信や海賊版パッケージ商品の流通、またキャラクターグッズ等での無許諾商品、模倣品等による当社知的財産権が侵害されるリスク。
・ 演劇事業:演劇公演の鑑賞券の不正転売リスク、演劇公演の盗撮や違法配信などによる当社知的財産権が侵害されるリスク。
これらのリスクが顕在化する可能性は、様々な対策を講じても一定程度発生することが見込まれ、根絶することはなかなか困難と考えられます。
これらのリスクが顕在化した場合は、損益において逸失利益が発生します。特に海外やインターネット上での知的財産権の侵害は、侵害行為の停止措置が困難な場合もあり、被害が拡大する可能性があります。
これらのリスクへの対応策は、著作権、商標権等の保護に関する各種対策を強化するとともに、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)等の業界団体とも連携し、仮にリスクが顕在化した場合は、法的措置を前提に毅然とした対応をとることを徹底しております。また、鑑賞券等の不正転売に関しては、電子チケットの導入を推進していくとともに、行政機関とも協力して可能な限りの対策を講じてまいります。
当社グループの映画事業、アニメ事業、演劇事業においては、コンテンツ制作を行う制作現場でのコンプライアンス違反、ハラスメント事案の発生、各取引業者との取引トラブル等のリスクが存在します。
これらのリスクが顕在化することによって、当該コンテンツの利用に支障を来たす可能性が高く、また当社が直接契約関係にない事業者においてリスクが発生する可能性もあり、常に一定程度のリスクは存在すると言えます。
これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの信用を毀損するだけでなく、当該コンテンツの上映、上演や各種利用が行えないといった事態が生じる可能性があります。その場合は営業収入や営業利益が減少し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
これらのリスクへの対応策は、当社グループが主導的に製作する実写映画の制作現場においては、一般社団法人日本映画制作適正化機構の審査基準を遵守することにより、適正な制作現場の実現を担保すべく努めてまいります。アニメ制作や演劇制作の現場においても、それぞれのコンテンツ制作の特性を勘案しながら、ハラスメントに関する啓発の実施や適正な就業環境や取引環境の実現を図り、持続的なコンテンツ制作が可能となるよう努めてまいります。
旧ジャニーズ事務所における性加害問題は、決して許されるものではありません。しかしながら、当社グループが当該事務所との間で長年の間、事業上の取引があったことも事実であり、その事実を改めて認識したうえで、当社グループの役員、従業員もしくはその取引先において、性加害問題に限らず、何らかの人権に関する問題が発生するリスクは今後も一定程度存在していると言わざるをえません。
このようなリスクが顕在化した場合には、当社グループの社会的信用が大きく毀損することになり、取引の停止など様々な事業活動に対して広範な影響が懸念され、営業収入、営業利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
これらのリスクへの対応策として、当社グループでは人権方針を制定し、人権侵害を未然に防ぐための教育を継続的に行うとともに、人権デュー・ディリジェンスを実施して人権に関する課題の把握を行ってまいります。また、当社グループもしくはその取引先において人権に関する問題が発生した場合には、適切な手段を通じ、その是正・救済に取り組みます。
当社では全国各地に約130物件の不動産を保有しており、飲食・物販店舗やオフィスなどの様々なテナントに対する賃貸借契約によって収入を計上し、安定的なキャッシュ・フローを創出しております。コロナ禍を経て経済活動全般は回復しているものの、在宅勤務の普及に伴うオフィス需給環境の変化や、資材価格の高騰や人手不足等による建築・設備工事費の急騰など、不動産事業を巡る事業環境は大きく変化しつつあります。それらの影響により、当社グループの既存保有物件においては、空室率の上昇や修繕費の高騰などによる賃貸収益の悪化、また、新規取得物件や再開発物件においては、工事費の高騰による投資回収期間の長期化といったリスクが存在します。
これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
これらのリスクに対し、既存保有物件においては、経費節減に努めながら賃料改定などの営業努力を継続し、新規取得物件や保有物件の再開発においては、投資回収計画のより慎重な策定などによってリスクの低減を図ります。
当社グループでは、映画、アニメ事業において、コンテンツの海外展開(海外への映画配給、配信プラットフォームへの利用許諾、商品化権の許諾等)を積極的に行っているほか、演劇事業においても、自社製作作品の海外公演を実施する予定となっております。また、2023年にはタイのアニメスタジオIGLOO STUDIO CO., LTD.及び米国の映像製作会社CJ ENM FIFTH SEASON LLCに戦略的出資を行い、CJ ENM FIFTH SEASON LLCについては持分法適用会社としております。
これらの海外展開においては、戦争、政情不安や経済情勢の不確実性といった地政学上のリスクにとどまらず、各種コンテンツの表現に対する文化や慣習の違いに起因するリスク、知的財産権に関するリスク、SNS等における炎上リスク、各種法的規制の変更に関するリスク、為替リスクなど多岐にわたるリスクが存在します。また、海外を拠点とする子会社等においては、グループ・ガバナンスが十分に行き届かないことによるコンプライアンスリスク等が存在すると考えられます。さらに、戦略的出資をしている海外の会社については、当該会社の経営成績が投資時点で想定されていた事業計画を大きく下回って推移する際には、株式の評価損リスクが生じます。
これらのリスクが顕在化する可能性は、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に基づき、当社グループが成長戦略の一環として、海外展開を積極的に拡大する中で増加しているものと考えられます。
これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。また、訴訟コスト等が臨時に発生する可能性があります。
これらのリスクへの対応策として、2023年7月に海外事業を統括する100%子会社としてTOHO Global㈱を設立し、海外拠点等に対するリスク情報の収集とガバナンスの体制を構築するとともに、グループ内での知見の共有や経験豊富な専門家にアドバイスを得るなど、可能な限りリスクの低減に努めています。また、知的財産権に関するリスクについては、法的措置を前提に毅然とした対応を行っております。
当社グループの不動産事業において、スバル興業㈱と同社の連結子会社が道路事業に係わっており、これら事業においては、公共工事への高い依存に伴うリスク、人員不足のリスク、労務費及び資機材価格の高騰リスク、自然災害のリスク、建設業法等の規制に関するリスク等、道路事業特有のリスクが存在します。
これらのリスクが顕在化する可能性は、それぞれ一定程度存在します。また、これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少する可能性があります。
これらのリスクへの対応策は、スバル興業㈱を中心に安全管理・品質管理の徹底、優れた技術者の採用・育成・配置等など、影響を最小限にするための具体的な施策を実施しております。
当社グループでは、チケット販売やECサイトでの商品販売等で取得したお客様の個人情報や、映像素材のデジタルデータ、その他業務上の重要な情報等において、悪意の第三者からの不正アクセス、コンピュータウィルス侵入等による個人情報・機密情報の漏洩、設備の損壊、社内インフラの停止等のリスクが存在します。また、財務データを含む電子データが暗号化される等により、事業活動の継続ができなくなる等のリスクも存在します。
これらのリスクが顕在化する可能性は、様々な対策を講じても一定程度存在するものと思われます。また、業務のデジタル化、オンライン化が進むに連れ、顕在化する可能性が増加していくものと思われます。
これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少するとともに、顧客からの損害賠償請求等が発生する可能性があります。
これらのリスクへの対応策として、「情報セキュリティ基本方針」及び「情報セキュリティ対策規程」に則り情報セキュリティ委員会を設置して当社グループの情報システムに関する運用ルールを整備することにより、当社グループ全体の情報セキュリティマネジメント体制の構築に努めています。また、最新の技術に基づく可能な限りのセキュリティ対策やインシデント対応体制の整備、様々なユーザー教育を実施しているほか、サイバーリスク保険への加入により経済的損害の発生に備えています。
当社グループでは、映画館や演劇においてインターネット上でチケットを販売しているほか、複数のECサイトでキャラクターグッズ等の商品を販売しております。これらの事業においては、第三者からの悪意ある攻撃によらずとも、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等の障害または人為的なミスにより、システムの運用が停止する事態が発生し、一定期間、チケットや商品の販売ができなくなるリスクが存在します。
これらのリスクが顕在化した場合は、逸失利益が発生するとともに、復旧までに相当の時間を要した場合は、お客様からの当社グループ事業に対する信用の失墜につながる可能性があります。
これらのリスクへの対応策は、過去に発生した障害の分析に基づき、的確な対応策の実施により再発防止に努めるとともに、各ベンダー等との連携を強化し、障害発生時の迅速な復旧対応の体制整備を推進してまいります。
当社グループは、重要な取引先との関係を強固にするため、上場株式および非上場株式を複数保有しておりますが、大幅な株式相場の下落や当該企業における企業価値の毀損が生じた場合には、保有有価証券を減損処理する可能性があります。
これらのリスクへの対応策は、有価証券の投資基準・保有意義を明確にするとともに、取締役会への報告を含む定期的なモニタリングを実施することで、リスクの軽減に努めています。
近年、気候変動に伴う温室効果ガスの排出抑制の取り組みは世界中で進みつつあり、映画、アニメ、演劇等のエンタテインメントを主業とする当社グループにおいても、企業の社会的責任として脱炭素や循環型社会に向けた取り組みを推進して行かなければ、信用の毀損に伴う収益の減少や株式市場における企業価値向上に支障が生じる可能性があります。
これらのリスクへの対応策として、当社グループはサステナビリティの基本方針の中の重要課題の一つとして「地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します」を掲げ、脱炭素の実現に向けTCFDに基づく情報開示やCDP評価を受けるなど第三者からの評価や視点も取り入れながら取り組んでおり、今後も再生可能エネルギー等を活用したCO2排出量削減、事業活動における環境負荷の少ない素材の活用や廃棄物の削減等を推進してまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(経営成績の概況)
当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境が改善する下で、景気は、緩やかな回復の動きがみられる一方、海外景気の下振れリスクや物価上昇の影響などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような情勢下にあって当社グループの当連結会計年度における経営成績は、営業収入は2833億4千7百万円(前年度比16.0%増)、営業利益は592億5千1百万円(同32.0%増)、経常利益は630億2千4百万円(同31.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は452億8千3百万円(同35.5%増)となり、2022年4月策定の「中期経営計画 2025」で掲げた数値目標である「営業利益の最高益(528億円)更新」を2年目で達成することが出来ました。なお、㈱東京楽天地の普通株式を公開買付けにより取得し連結子会社化したことに伴う「段階取得に係る差益」及び、オーエス㈱の普通株式について阪急阪神ホールディングス㈱による公開買付けに応募し売却したことに伴う「関係会社株式売却益」を特別利益に計上しております。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。
映画事業
映画営業事業では、東宝㈱において、ゴジラ70周年記念作品「ゴジラ-1.0」を製作し、日本及び北米等において公開、大きな話題となりました。そのほか、共同製作や配給した作品のうち、「名探偵コナン 黒鉄の魚影」が興行収入100億円超えを記録、「君たちはどう生きるか」「劇場版 SPY×FAMILY CODE:White」「キングダム 運命の炎」「劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦」「ミステリと言う勿れ」「劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』」などヒットいたしました。また、東宝東和㈱等が配給した「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が大ヒット、「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」などヒットいたしました。これらの結果、映画営業事業の営業収入は46,505百万円(前年度比13.7%増)、営業利益は17,908百万円(同32.3%増)となりました。なお、上記営業収入の主な内訳として、映画館への配給が33,630百万円(前年度比25.4%増)、劇場用映画の国内配信が1,333百万円(同60.1%減)となりました。
映画興行事業では、TOHOシネマズ㈱等において、上記配給作品のほか、バラエティに富んだ邦洋画作品を上映いたしました。当連結会計年度における映画館入場者数は40,893千人と前年度比4.2%の増加となりました。なお、TOHOシネマズ㈱では、エネルギー価格の高騰や人件費増加等により2023年6月1日から映画鑑賞料金を改定いたしました。これらの結果、映画興行事業の営業収入は78,440百万円(前年度比10.4%増)、営業利益は11,083百万円(同49.9%増)となりました。当連結会計年度中の劇場の異動につきましては、TOHOシネマズ㈱が2023年4月17日に大阪府門真市「TOHOシネマズ ららぽーと門真」(9スクリーン)、11月30日に北海道札幌市中央区「TOHOシネマズ すすきの」(10スクリーン)をそれぞれオープンいたしました。一方、オーエス㈱の経営する18スクリーンは当社グループから外れたことにより減少いたしました。これにより、当企業集団の経営するスクリーン数は全国で1スクリーン増の722スクリーン(共同経営56スクリーンを含む)となっております。
映像事業では、東宝㈱において「SPY×FAMILY」「呪術廻戦」「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー!!」「Dr.STONE」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」等、製作出資いたしましたTOHO animation作品の国内外の配信・商品化権収入に加え、各種配分金収入がありました。パッケージ事業では「すずめの戸締まり」「わたしの幸せな結婚」に加え、TOHO animation作品の「呪術廻戦」「ウマ娘 プリティーダービー」「お兄ちゃんはおしまい!」の販売が伸長いたしました。出版・商品事業では、劇場用パンフレット、キャラクターグッズにおいて、TOHO animation作品「劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦」「劇場版 SPY×FAMILY CODE:White」や「ゴジラ-1.0」「名探偵コナン 黒鉄の魚影」「映画ドラえもん のび太と空の理想郷」「君たちはどう生きるか」といった当社グループ配給作品の販売が好調に推移いたしました。また、TOHO animation作品のキャラクターグッズ販売が営業収入に寄与いたしました。ゲーム事業では、TOHO Gamesが「呪術廻戦 ファントムパレード」をリリースし、400万ダウンロードを突破するなど好調に推移いたしました。TOHOスタジオ㈱では、制作及びスタジオ事業の一体運営を図り、堅調に稼働いたしました。㈱東宝映像美術及び東宝舞台㈱では、映画やTV・CM等での舞台製作・美術製作やテーマパークにおける展示物の製作業務に関して受注持ち直しの動きに加え、原価抑制に努めました。これらの結果、映像事業の営業収入は67,849百万円(前年度比47.3%増)、営業利益は15,717百万円(同92.9%増)となりました。なお、上記営業収入の主な内訳として、アニメコンテンツの利用が29,179百万円(前年度比66.5%増)、パッケージの販売が7,094百万円(同26.8%増)、映像作品等に係る美術製作が9,166百万円(同7.1%増)となりました。
以上の結果、映画事業全体では、営業収入は192,794百万円(前年度比22.0%増)、営業利益は44,709百万円(同53.8%増)となりました。
演劇事業
演劇事業では、東宝㈱の帝国劇場におきまして、大人気コミック「SPY×FAMILY」初のミュージカル化を実現し全席完売、日本初上演として話題となった「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」が満席となりました。そのほか、「Endless SHOCK(Endless SHOCK/ Endless SHOCK Eternal)」「DREAM BOYS」「チャーリーとチョコレート工場」「LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~」「ABC座星(スター)劇場2023~5 Stars Live Hours~」「Act ONE」「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」を上演いたしました。シアタークリエにおきましては「RENT」「She Loves Me」「SHOW BOY」「M.クンツェ&S.リーヴァイの世界~3rd Season~」「のだめカンタービレ」「VOICARION XVII~スプーンの盾~」「Yuichiro & Friends -Singing! Talking! Not Dancing!-」「ATTENTION PLEASE!2」等を上演し、日生劇場では「ラグタイム」「ベートーヴェン」「トッツィー」が大入りとなりました。また、社外公演として「キングダム」「LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~」等を全国へ展開いたしました。東宝芸能㈱では、所属俳優がCM出演等で好調に推移いたしました。
以上の結果、演劇事業の営業収入は20,153百万円(前年度比10.7%増)、営業利益は3,115百万円(同12.3%増)となりました。
不動産事業
不動産賃貸事業では、新規物件の取得に加え、その他全国に所有する不動産が堅調に稼働し、事業収益に寄与いたしました。一方で、減価償却費等の費用は増加しております。賃貸用不動産の空室率は、当連結会計年度末において0.2%となりました。これらの結果、不動産賃貸事業の営業収入は29,387百万円(前年度比4.9%増)、営業利益は11,588百万円(同0.3%増)となりました。
道路事業では、公共投資が底堅く推移しましたが、建設技能者の不足に加えて、労務費・資機材価格の上昇が継続する等、依然として予断を許さない状況が続きました。このような状況の中、スバル興業㈱と同社の連結子会社は、積極的な営業活動を行うとともに、積算精度の向上や入札における総合評価方式への対応強化を図り受注増に努めましたが、前期と比べ採算性の高い工種が減少したこともあり、道路事業の営業収入は29,245百万円(前年度比1.2%増)、営業利益は4,900百万円(同3.8%減)となりました。なお、営業収入の主な内訳は、道路の維持管理・清掃等26,617百万円(前年度比0.7%増)であり、またその他の収益818百万円(同2.0%増)が含まれております。
不動産保守・管理事業では、東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱において、人手不足や人件費・原材料費の増加が継続する一方、資材の供給不足等により延期となっていた工事の実施があったほか、新規受注確保に努めました。その結果、営業収入は10,509百万円(前年度比5.3%増)、営業利益は1,122百万円(同21.1%増)となりました。
以上の結果、不動産事業全体では、営業収入は69,142百万円(前年度比3.3%増)、営業利益は17,610百万円(同0.2%増)となりました。
その他事業
東宝共榮企業㈱の「東宝調布スポーツパーク」やTOHOリテール㈱の劇場売店等において、積極的な営業活動に努めました。その結果、その他事業の営業収入は1,256百万円(前年度比8.0%増)、営業利益は174百万円(同33.3%増)となりました。
(財政状態の概況)
当連結会計年度末における財政状態は、前連結会計年度末と比較して、総資産は81,729百万円増加し、615,826百万円となりました。これは主に、現金及び預金で5,526百万円、現先短期貸付金で29,999百万円の減少がありましたが、受取手形、売掛金及び契約資産で9,153百万円、建物及び構築物(純額)で18,682百万円、土地で24,064百万円、投資有価証券で45,676百万円の増加があったこと等によるものです。
負債では前連結会計年度末から20,665百万円増加し、131,071百万円となりました。これは主に、未払法人税等で2,219百万円、繰延税金負債で11,098百万円、長期預り保証金で2,195百万円の増加があったこと等によるものです。
純資産は前連結会計年度末と比較して61,064百万円増加し、484,755百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益45,283百万円の計上及び剰余金の配当10,494百万円等による利益剰余金35,696百万円の増加の他に、その他有価証券評価差額金で17,123百万円の増加があったこと等によるものです。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ29,697百万円減少し、82,424百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益が67,002百万円、減価償却費が10,256百万円ありましたが、売上債権及び契約資産の増加が8,279百万円、法人税等の支払額が18,882百万円あったこと等により、43,350百万円の資金の増加(前年度比2,054百万円の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は、有価証券の売却による収入が76,600百万円ありましたが、有価証券の取得による支出が54,593百万円、有形固定資産の取得による支出が21,685百万円、投資有価証券の取得による支出が13,929百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が15,935百万円、関係会社株式の取得による支出が32,297百万円あったこと等により、62,706百万円の資金の減少(前年度比53,530百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は、配当金の支払額が10,490百万円あったこと等により、11,630百万円の資金の減少(前年度比7,495百万円の増加)となりました。
当企業集団の事業について生産実績を定義することが困難なため「生産の状況」は記載しておりません。
(注) 映画事業に含まれる映像事業の内テーマパーク関連事業及び不動産事業に含まれる道路事業における受注実績
を記載しております。
(注) 当企業集団の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、重要性のある
相手先がないため記載を省略しております。
映画事業、演劇事業及びその他事業の販売の相手先は主に不特定の個人であり、不動産事業についても総販売
実績の100分の10以上を占める相手先はありません。
(2) 経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行され、社会経済活動の正常化が進む中、当社グループは2022年4月に策定した「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に基づき、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し取り組んでまいりました。当連結会計年度における当社グループの経営成績は、主力の映画事業において、「名探偵コナン 黒鉄の魚影」や「君たちはどう生きるか」、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」等が大ヒットし、製作・配給した「ゴジラ-1.0」は日本のみならず北米においても大きな話題となり業績に寄与いたしました。TOHOシネマズ㈱では、ゴールデンウィーク期間の興行収入が歴代最高記録を達成するなどヒット作に恵まれたほか、映画鑑賞料金の改定もあり収益が改善いたしました。また、TOHO animation作品が大きく伸長し、「SPY×FAMILY」「呪術廻戦」「僕のヒーローアカデミア」等の国内外における配信・商品化権収入等に加え、「劇場版 SPY×FAMILY CODE:White」「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」のヒットが収益に寄与、スマートフォンゲーム「呪術廻戦 ファントムパレード」も好調に推移し、映画事業の業績に大きく貢献いたしました。演劇事業では、日本初上演「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」の帝劇3カ月公演が満席となったほか、大人気コミック「SPY×FAMILY」初のミュージカル化に取り組むなど顧客層の拡大にも努めました。不動産事業では、労務費や資機材価格の上昇による影響はありましたが、新たに取得した物件も含め、全国に保有する不動産物件が低い空室率で推移し堅調に稼働いたしました。この結果、当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ39,052百万円増収の283,347百万円、営業利益は、前連結会計年度と比べ14,371百万円増益の59,251百万円となり、中期経営計画で掲げた数値目標である「営業利益の最高益(528億)更新」を達成することができました。
当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ39,052百万円増収の283,347百万円となりました。
当連結会計年度の営業原価は、前連結会計年度と比べ17,109百万円増加の152,779百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ7,570百万円増加の71,316百万円となりました。これは人件費が3,585百万円、広告宣伝費が1,373百万円、減価償却費が359百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ14,371百万円増加の59,251百万円となりました。その内訳は、「映画事業」で前連結会計年度と比べ15,634百万円増益の44,709百万円、「演劇事業」で前連結会計年度と比べ341百万円増益の3,115百万円、「不動産事業」で前連結会計年度と比べ37百万円増益の17,610百万円、「その他事業」では前連結会計年度と比べ43百万円増益の174百万円でした。
なお、上記事項を含む報告セグメントごとの詳細については、「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度と比べ902百万円増加の3,859百万円となりました。これは主として、持分法による投資利益が前連結会計年度に比べ218百万円減少しましたが、前連結会計年度と比べ受取利息が604百万円、受取配当金が361百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。
また、営業外費用は、前連結会計年度と比べ64百万円増加の86百万円となりました。これは主として、当連結会計年度に子会社清算損を51百万円計上したこと等によるものであります。
この結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度と比べ15,209百万円増加の63,024百万円となりました。
当連結会計年度の特別利益は、㈱東京楽天地の株式を公開買付けにより取得し連結子会社化したことに伴う段階取得に係る差益2,281百万円、オーエス㈱の普通株式について阪急阪神ホールディングス㈱による公開買付けに応募し売却したことに伴う関係会社株式売却益1,866百万円等を計上いたしましたが、前連結会計年度と比べて598百万円減少の4,398百万円となりました。これは主として、前連結会計年度に助成金収入を2,729百万円計上したことや、投資有価証券売却益が前連結会計年度と比べ1,703百万円減少したこと等によるものであります。
特別損失は、前連結会計年度と比べ1,901百万円減少の420百万円となりました。これは主として、減損損失が前連結会計年度と比べ897百万円減少したことや、前連結会計年度に割増退職金を812百万円計上したこと等によるものであります。
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税20,676百万円、法人税等調整額△444百万円、非支配株主に帰属する当期純利益1,486百万円を計上し、前連結会計年度と比べ11,852百万円増加の45,283百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の190.37円から259.51円に増加しました。
当連結会計年度末の総資産は、㈱東京楽天地の連結子会社化に伴い50,920百万円の増加があったこと等により、前連結会計年度末と比べ81,729百万円増加して615,826百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末と比べ16,205百万円減少して208,503百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ現先短期貸付金は29,999百万円減少し34,999百万円、受取手形、売掛金及び契約資産は9,153百万円増加し42,075百万円となりました。
有形固定資産は、前連結会計年度末と比べ47,400百万円増加の224,851百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ、土地は24,064百万円増加し104,539百万円、建物及び構築物(純額)は18,682百万円増加し104,116百万円となりました。
無形固定資産は、前連結会計年度末と比べ2,064百万円増加の7,017百万円となりました。
投資その他の資産は、前連結会計年度末と比べ48,470百万円増加し175,454百万円となりました。これは主に、投資有価証券が前連結会計年度末と比べ45,676百万円増加し154,175百万円となったこと等によるものであります。
当連結会計年度末の流動負債及び固定負債合計額は、前連結会計年度末と比ベ20,665百万円増加の131,071百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末と比べ3,379百万円増加の69,141百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べて、未払法人税等は2,219百万円増加して12,002百万円、買掛金は1,992百万円増加して32,765百万円となりました。
固定負債は、前連結会計年度末と比べて17,286百万円増加して61,929百万円となりました。これは主に、繰延税金負債が11,098百万円増加して21,527百万円、長期預り保証金が2,195百万円増加して25,120百万円となったこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて61,064百万円増加し、484,755百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益45,283百万円の計上及び剰余金の配当10,494百万円等により前連結会計年度末と比べて利益剰余金が35,696百万円増加、その他有価証券評価差額金が17,123百万円増加したこと等によるものであります。なお、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末と比べ2.1ポイント減少し、74.5%となりました。
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しているとおりであります。
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な運転資金、設備投資等の資金は、自己資金を原則としております。そのためグループ内の資金効率を向上させるべく、当社は、資金余剰が生じている子会社から借り入れる一方、資金需要のある子会社に対しては、貸付を行うことがあります。また、必要に応じて金融機関等から機動的に資金調達を行ってまいります。
(資金需要の内容及び経営資源の配分)
当社グループの資金需要は、2022年に策定した「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」内の「中期経営計画 2025」にて成長投資を掲げており、主な内容はコンテンツ関連投資(映画・アニメ・演劇製作・新規IP創出・人材獲得)として500億円、不動産関連投資(保有物件再開発・新規物件取得)として500億円、新規シネコン出店として50億円、海外展開・DX関連ほかに50億円の計1,100億円程度の投資額を2025年までの3カ年で見込んでおります(大型M&Aに要する投資は別枠)。また、年間40円の配当をベースに配当性向30%以上かつ機動的な自己株式取得の実施により株主還元の充実に努めることとしております。
(資金調達)
短期及び中期の投資資金としては自己資金を充てることを前提としつつ、必要に応じて銀行借入等金融機関からの調達を行います。一方、大型M&Aに要する資金や大規模な設備投資資金については、案件の特性に応じた最適な手法により資金調達を行います。そのため、財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、高い信用格付の維持向上を目指して、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を取得しております。また、当社グループは当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高82,424百万円に対し、有利子負債(リース債務含む)残高は4,487百万円と、自己資金での投資余力を高いレベルで維持しておりますが、今後更なる成長投資に向け、借入及び社債による調達も検討することとしております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。
「第2[事業の状況]3[事業等のリスク]」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。