第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、小林一三により設立されて以来、映画・演劇を中心に、幅広い層のお客様に夢や感動、喜びをもたらす数多くのエンタテインメント作品をお届けしてまいりました。

その経営理念は、「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を企業の存在意義(パーパス)とし、「吾々の享くる幸福はお客様の賜ものなり」を大切な価値観(バリュー)とし、「朗らかに、清く正しく美しく」を行動の理念(モットー)としております。

これらの理念に基づき、公明正大な事業活動に取り組むとともに、常にお客様の目線に立ち、時代に即した新鮮な企画を提案し、世の中に最高のエンタテインメントを提供し続ける企業集団でありたいと考えております。

 

(2)「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」について

当社グループは2022年4月に公表した創立100周年に向けた「長期ビジョン 2032」に基づき、2025年4月に「中期経営計画 2028」を新たに策定いたしました。本経営戦略に基づくさまざまな施策を展開して、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでおります。その体系と骨子は、以下の通りです。

 

1.長期ビジョン 2032

(1) コーポレート・スローガン

 


 

(2) 3つの重要ポイント

① 成長に向けた「投資」を促進  ②「人材」の確保・育成に注力  ③ アニメ事業を「第4の柱」に

 

(3) 成長戦略の4つのキーワードと飛躍に向けた成長ストーリー

① 企画&IP  ② アニメーション  ③ デジタル  ④ 海外

 

「企画&IP」をあらゆる価値の源泉として、その中でも「アニメーション」を成長ドライバーにし、「デジタル」の力で時間・空間・言語を超え、「海外」での飛躍的成長を実現すべく、果敢に挑戦していく。

 

(4) 目指す姿(2032年の財務イメージ)

営業利益 750億円~1000億円

ROE    恒常的に10%程度以上

 

(5) 事業ポートフォリオの方向性

既存事業の3本柱である映画事業、演劇事業、不動産事業に加え、「アニメ事業」を第4の柱とする

 

 

2.「中期経営計画 2028」

 (1)「中期経営計画 2028」の位置づけ

 


 

 (2)指針

“人”が、情熱を傾けて“企画”をし、エンタテインメントを創り、“世界”に届ける。

これが、どんなに外部環境が変化したとしても、当社グループの変わることのないシンプルで本質的な価値創造ストーリーです。加えて、より持続的に成長していくためには、エンタテインメントを単に広く届けるだけではなく、世界中のお客様の好みやニーズを深く知り、お客様ともっと積極的に“つながる”ことでファンになっていただくことが大切になると考えています。

 

“人”、“企画”、“世界”、そして、お客様ともっと“つながる”

 

これを「中期経営計画 2028」の指針として当社グループは世界中のファンから愛されるエンタテインメント企業を目指して邁進していきます。

 

     (3)重点ポイントと数値目標

「中期経営計画 2028」では、「人材」「コンテンツ・IP」「デジタル」「海外」を重点領域とし、以下の通り重点ポイントと数値目標を定めました。これらの目標に向かって、グループ一丸となって各事業戦略を積極的に推進してまいります。

 


 

 


 

(4)キャピタルアロケーション

 


 

(5) 人材と組織/サステナビリティ

① 人材と組織の戦略

人材と組織のビジョン

心が動き、心を動かす仕事を通じて、幸福を得られる会社へ

 

人材と組織のキーワード

・“少数精鋭”から“精鋭多数へ”

・成長・自律・安心

 

人材と組織の方針

1.成長を推進し、変化に対応する多様な人材の獲得の強化

2.企画力あふれる東宝らしい精鋭人材の育成の強化

3.社員の強みを活かし、成長を支援する人事施策の推進

4.自らを律し、裁量をもって、安心して活躍できる組織・環境の追求

 

 

② サステナビリティ経営の推進

東宝グループは次の3年間においても、サステナビリティの基本方針に則り、各事業戦略や人材と組織の戦略を通じて、4つの重要課題を軸として、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきます。

 

基本方針

東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します

 

4つの重要課題

朗らかに ① 誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります

清く   ② 地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します

正しく  ③ 人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します

美しく  ④ 豊かな映画・演劇文化を創造し、次世代への継承に努めます

 

 

 

(3)経営環境についての認識

当社グループを巡る経営環境は、雇用環境の改善や賃金の上昇など日本経済には回復の兆しが見られるものの、米国の貿易政策をはじめとして世界的な経済情勢は不透明さを増しており、国内においても慢性的な人手不足や物価上昇などによる消費マインドの下振れも懸念される状況にあります。

当社グループの主要な事業が属する映画、演劇、ライブエンタテインメント業界は、新型コロナウイルス感染症の影響から社会活動が正常化して以降、本格的な市場回復に向かっている状況にあります。国内の映画市場においては、2024年の映画人口は1億4,444万人(前年比92.9%)、興行収入は2,069億円(前年比93.5%)と前年比で微減となりましたが、コロナ前の平均的な興行収入のおよそ9割程度まで市場は回復しております。また、演劇及びライブエンタテインメント市場はさらに力強い回復を見せ、2023年には既にコロナ禍前を上回る市場規模に達し、その後も着実に伸長していると見られます。

また、コロナ禍を経てコンテンツのデジタル化が進み、動画配信が世界的に急速な普及を見せ、映像の視聴形態、コンテンツの楽しみ方が多様化するとともに、グローバル化が進んでおります。特に、当社グループが「第4の柱」の成長ドライバーと位置付けているアニメーションにおいては、動画配信を通じて日本アニメの人気が世界中へ広がっております。日本のアニメ関連市場は2023年に初めて3兆円を超え、過去10年で市場規模が倍増し、国内市場1.6兆円に対し海外市場1.7兆円と初めて海外が国内を逆転するなど、とりわけ海外市場の伸びが著しい状況です。

一方、当社が収益基盤の一つとして重視している不動産事業は、地価の上昇、資材価格や人員不足による建設費の高騰、水道光熱費等の各種経費の増加など、非常に厳しい経営環境に置かれております。それらの影響は不動産賃貸や再開発事業を中心とした当社の事業形態にも確実に及んでおり、今後の当社グループの不動産事業の方向性を定めるうえで無視できない状況となっております。

そのような情勢下で、当社グループの2025年2月期の業績は、映画、アニメ、演劇、不動産の「事業の4本柱」が共に堅調に推移しました。

その中でも映画事業が特に好調に推移しました。当社のオリジナルIPであるゴジラの70周年記念作品「ゴジラ-1.0」が国内のみならず米国でも大ヒットし、国内・海外での配信権販売、商品化ライセンス、マーチャンダイジング、パッケージ販売等により大きく業績に貢献しました。また、自社製作作品の「変な家」が興収50億円を超えたことも製作者利益に大きく貢献しました。

映画事業の中に属するアニメ事業においては、TOHO animation作品の劇場用映画、TVアニメシリーズが非常に好調に稼働しました。興行収入115億円を超え大ヒットとなった「劇場版ハイキュー‼ゴミ捨て場の決戦」をはじめ、「僕のヒーローアカデミア」「呪術廻戦」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」「怪獣8号」等の人気タイトルを国内・海外に向けて動画配信、商品化ライセンス等で積極的に展開し、会社全体の業績を大きく牽引しました。

演劇事業では、舞台「千と千尋の神隠し」をイギリス・ロンドンで日本人キャストによる日本語でのロングラン公演を成功させるという画期的な成果を実現しました。一方で、2025年2月末には当社の基幹劇場である帝国劇場が約60年の歴史に幕を下ろすことになりましたが、そのクロージング・ラインナップは大盛況で終了することができました。

不動産事業では、厳しい事業環境の中、所有する不動産の空室率抑制、賃料アップに尽力し、堅調な成績を収めることができました。また、渋谷アクシュのグランドオープンなど、再開発事業も堅実に進めました。

これらにより連結営業利益は646億円となり、「中期経営計画 2025」で目標としたそれまでの最高益(528億円)を大きく更新し、前期に更新した最高益(592億円)をさらに上回る好成績を達成することができました。

このような成果は、当社グループが掲げている「長期ビジョン 2032」における成長戦略のキーワードである①企画&IP、②アニメーション、③デジタル、④海外の4つが、今後も積極果敢にチャレンジすべきキーワードであることを証明しており、これからも成長投資と変革を継続していくことで、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資することができるとの認識を新たにしています。

一方で、冒頭にも記した通り、世界的に不確実性を増す経済情勢や、深刻さを増す人手不足など、経営環境は依然として先行き不透明な状況が続いており、それらの影響について十分に注視する必要がありますが、これらの不透明な外部環境が当社業績に与える影響は、今のところ軽微であるとの認識です。

以下、セグメント別に現在の経営環境等に対する認識を記します。

 

[映画事業]

映画営業事業においては、2024年(自然暦)に、当社配給作品の年間累計興行収入が初めて900億円を超え、国内シェアで45%に迫る歴代1位の成績となりました。年間30本程度の強力な興行力を持つ実写、アニメ作品のラインナップに加え、音楽・舞台・スポーツなどのコンテンツを配給するTOHO NEXTレーベルも立ち上げ、豊富かつ多彩なコンテンツを継続的に提供できる配給会社として、競合他社との間で圧倒的な競争優位性を維持していると考えています。また、子会社の東宝東和㈱配給の「怪盗グルーのミニオン超変身」が大ヒットするなど、当社グループとして、東宝㈱で話題の邦画を、東宝東和㈱などで興行力のある洋画コンテンツを配給することで、国内で継続的に話題の作品を提供できる体制が確立できていると考えています。

一方で、公開される作品の興行成績に大きな差が見られるようになっており、いわゆる作品の「優勝劣敗」が拡大していると認識しています。そのため、時代の感性をとらえたコンテンツの企画力はもちろん、SNS等の有効活用などを含めたマーケティング力の強化も大きな課題となっています。

映画興行事業においては、自然暦における2024年の全国興行収入は2,069億円(前年比93.5%)と微減となりましたが、その内訳を見ると、アニメ作品が好調な邦画は1,558億円で過去最高を記録した一方、ハリウッドスタジオのストライキの影響が残る洋画は魅力ある新作に乏しく、511億円と落ち込みが顕著になりました。したがって映画興行界としては、ハリウッドを中心とした「洋画の復活」が待たれるところです。なお、2025年以降はストライキの影響から回復し、洋画の新作、大作の公開が予定されております。

そのような状況下にあって当社グループのTOHOシネマズ㈱は、全国の主要都市の好立地にシネマコンプレックスを展開し、2024年においてスクリーンシェアでは約19%、興行収入のシェアは約27%と業界トップを維持しており、競合他社との競争優位性に揺るぎはありません。今後もお客様に「選ばれるTOHOシネマズ」であるべく、バラエティ豊かな強力作品を用意すること、積極的な設備投資で最高の鑑賞環境を提供すること、コンセッション(売店)やストア等の非興行収入を拡大・強化すること、適切な映画鑑賞料金施策を実施することなどが重要な課題です。一方で、建設費の高騰や出店適地の減少等により、新規出店のペースは鈍くならざるを得なくなっており、出店による収入やシェア拡大は以前より難しい状況になっております。また、エネルギー価格や人件費コストなどの上昇傾向が映画館の収支構造に与える影響や、動画配信の普及が映画館で映画を観る習慣に与える影響についても、引き続き懸念すべき課題です。また、長期的には国内の人口減も市場の縮小につながる大きな懸念材料です。

映像事業においては、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」において「第4の柱」、成長ドライバーとして位置付けたアニメ事業が急速な成長を遂げております。TOHO animationには、「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー‼」「呪術廻戦」「SPY×FAMILY」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」「Dr.STONE」といった強力タイトルに加え、新たな作品として「怪獣8号」「狼と香辛料」「天穂のサクナヒメ」「ぷにるはかわいいスライム」などがラインナップに加わりました。これらのタイトルの国内外の動画配信、商品化ライセンス、マーチャンダイジング、パッケージ販売などの幅広いビジネス展開や、ゲーム事業における「呪術廻戦 ファントムパレード」や「ゴジラ バトルライン」などが当社グループ全体の業績を大きく牽引しています。アニメ事業については市場そのものが着実に伸長しているという手ごたえが感じられ、国内外の多くの熱心なファンに支えられ、今後も中長期的に成長を続けるポテンシャルがあると認識しています。当社グループは、これら市場の成長を確実に取り込み、アニメ事業の持続的成長を目指してまいります。一方で、強力な原作のアニメ化権の獲得については競争が激化しております。それらの競争を勝ち抜くためには、良質なアニメ・コンテンツをさらに数多く企画・製作できる人員と体制の整備、海外の地域ごとにきめ細かいライセンス販売ができる拠点・機能の整備、ゲーム事業の開発・運営等のノウハウの習得などが課題になるものと認識しています。引き続き、当社グループの成長ドライバーとして経営資源を集中し、多面的・重層的・長期的なビジネス展開に注力してまいります。

また、その他子会社においても、TOHOスタジオ㈱では、映画・映像制作及びスタジオ事業の一体化を図り、外資系動画配信プラットフォームのスタジオ賃貸を誘致するなど、順調に稼働しました。また、㈱東宝映像美術や東宝舞台㈱では、コロナ禍において中断していたテーマパークにおける展示物の製作業務や音楽ライブイベントが復活したことで、美術製作・舞台製作における受注の回復傾向が顕著に見られます。

 

[演劇事業]

演劇事業においては、建て替えによる休館のため最後の年度となった帝国劇場において「レ・ミゼラブル」「モーツァルト!」「Endless SHOCK」や、掉尾を飾る記念コンサート「THE BEST New HISTORY COMING」等のクロージング・ラインナップが連日満席の賑わいとなり、配信やライブビューイングと合わせて多くのお客様が現帝国劇場との別れを惜しんでくださいました。 

さらに「千と千尋の神隠し」は2024年4月から約4か月にわたるロンドンでのロングラン公演が大成功を収め、イギリスで最も権威のある演劇賞ローレンス・オリヴィエ賞4部門ノミネートという快挙を果たし、日本の演劇コンテンツの海外展開の可能性を感じた1年となりました。

一方で、2025年3月以降の帝国劇場休館中においては、代替劇場での公演回数の確保に注力し、一定程度の興行収入を維持・確保する必要があります。また、コロナ禍において積極的に活用し始めた演劇コンテンツの動画配信や公演関連グッズの販売等、興行収入以外の収益源の確保や、海外への作品ライセンス展開等によって収益機会の拡大に向けた取り組みが課題となります。いずれにせよ帝劇休館中において、これまでの長い歴史で培ってきた東宝演劇、東宝ミュージカルのブランドを維持し、さらに高めていくことによって、新・帝国劇場へとつなげていくことが、演劇事業に課せられた大きな課題となります。

また、東宝芸能㈱では、所属俳優がCM・TV・映画出演などで順調に稼働しております。

 

[不動産事業]

不動産賃貸事業においては、足元の不動産市況は、東京都心地区のオフィス空室率が4%以下に低下するなどオフィスの移転・拡張需要は底堅く、成約賃料についても緩やかな上昇基調が見られます。好立地が多い当社グループ保有物件の空室率は1%未満の低い水準で推移しており、賃料も比較的底堅い状況にあります。しかしながら、建築コストの高騰、エネルギー価格や租税公課などの上昇傾向、さらには世界的な関税戦争、金融政策の変更等に伴う金利上昇が不動産賃貸事業に与える影響について、注視していく必要があります。

道路事業においては、老朽化による道路関連のインフラ整備をはじめとする公共投資の受注は引き続き堅調であり、当面は順調に推移すると思われます。スバル興業㈱と同社の連結子会社が積極的な営業活動により新規受注や既存工事の追加受注による業績拡大に努めてまいります。

不動産保守・管理事業においては、連結子会社である東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱が厳しい競争環境の中でも受注を回復させるとともに、価格転嫁についても積極的な営業展開に努めております。

なお、道路事業、不動産保守・管理事業の両事業においては、深刻な人手不足やインフレによる賃金上昇の影響について、注視していく必要があります。

 

[その他事業]

その他事業においては、「東宝調布スポーツパーク」でゴルフ練習場、テニスクラブ等を運営する東宝共榮企業㈱が、コロナ禍における屋外スポーツの一時的な特需は過ぎたものの、利用者数は堅調に推移しています。また、TOHOリテール㈱は、演劇事業のグッズ販売等を積極的に展開することで業績を回復しております。

 

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、経営目標の達成状況を判断するための指標として、営業利益とROEを特に重視しております。本業の稼ぐ力(収益性)や成長性を示す営業利益と、経営全体の資本効率性を示すROEの両面から、バランスの良い数値目標の設定を心がけております。

営業利益については、「長期ビジョン 2032」において、2032年には営業利益750億~1,000億円の企業集団への成長を目指すとしております。また、2025年4月に策定した「中期経営計画 2028」においては、そのための橋渡しとして、2028年2月期までに営業利益700億円の達成を目指すとしております。

ROEについては、長期ビジョンの策定時には2032年に8~10%と設定していましたが、「中期経営計画 2028」の期間においては9%以上とし、2032年までには恒常的に10%以上と目標値を引き上げております。

なお、株主還元に関する指標としては、「中期経営計画 2028」において「年間85円の配当を下限に配当性向35%以上かつ機動的な自己株式取得の実施」としております。

また、「中期経営計画 2028」においては、2028年2月期までの3カ年を「成長投資と変革を継続する期間」と位置付け、キャピタルアロケーションにおいて、コンテンツ・IP関連のM&Aやシネコン出店などの「成長投資」として3カ年で1,200億円程度を見込むとしております。

 

(5)当社グループが優先的に対処すべき課題

当社グループは、2022年4月に公表した長期ビジョン「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に基づき、創立100周年を迎える2032年に向けたコーポレート・スローガン「Entertainment for YOU 世界中のお客様に感動を」を掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいます。

長期ビジョンにおいては、①成長に向けた「投資」を推進、②「人材」の確保・育成に注力、③アニメ事業を「第4の柱に」の3つを重要ポイントとし、成長戦略として「企画&IP」「アニメーション」「デジタル」「海外」の4つのキーワードを掲げ、これらに沿った事業展開、成長投資、資本政策を着実に実行してきた結果、「中期経営計画 2025」(FY2023-2025)の3カ年においては、数値目標として定めた①営業利益の最高益(528億円)の更新、②ROE8%以上を達成することができました。

そして、本年4月には「中期経営計画 2028」を策定・公表し、新たな3カ年計画(FY2026-2028)をスタートさせました。「中期経営計画 2028」の位置づけとしては、長期ビジョンで掲げた「企画&IPをあらゆる価値の源泉として、その中でもアニメーションを成長ドライバーにし、デジタルの力で時間・空間・言語を超え、海外での飛躍的成長を実現する」という成長スト―リーを踏襲しつつ、「成長投資と変革を継続する期間」とし、成長戦略に沿った投資や組織の変革をさらに加速させ、次なる「飛躍的成長を実現し、未来へとつなぐ期間」への着実な橋渡しとなることを目指します。

 

<「中期経営計画 2028」の指針>

“人”が情熱を傾けて“企画”をし、エンタテインメントを創り、“世界”に届ける。これが、どんなに外部環境が変化したとしても、当社グループの変わることのないシンプルで本質的な価値創造ストーリーです。加えて、当社グループがより持続的に成長していくためには、エンタテインメントを単に広く届けるだけではなく、世界中のお客様の好みやニーズを深く知り、お客様ともっと積極的に“つながる”ことで、ファンになっていただくことが大切になると考えています。

“人”、“企画”、“世界”、そして、お客様ともっと“つながる”

これを「中期経営計画 2028」の指針として、これに基づく重点ポイントや各事業戦略、数値目標、人材と組織の戦略等を策定いたしました。その概要は以下の通りです。

 

<「中期経営計画 2028」の重点ポイント>

「中期経営計画 2028」では、「人材」「コンテンツ・IP」「デジタル」「海外」を重点領域とし、以下の通り重点ポイントを定めました。これらの目標に向かって、グループ一丸となって各事業戦略を積極的に推進してまいります

 

  人材

• 少数精鋭から精鋭多数への転換

――成長の源泉である“人”を3年間で約200名採用、人への投資とエンゲージメント向上に注力

   コンテンツ・IP

• 映画・アニメ・演劇・ゲーム等のコンテンツの企画・製作、IP創出に対し、3年間で約700億円を投下

 約200タイトルの豊富で良質なエンタテインメントを提供、世界中のお客様に感動を届ける

• 2032年までにTOHO animationの人員を倍増、IP・アニメ事業の営業利益200%以上(2025年2月期比)を目指す

 ゴジラIPの開発・展開に3年間で約150億円を投下し、IPビジネスを本格的に強化する

 コンテンツ・IP領域のM&Aやシネコン出店等の成長投資として3年間で1,200億円程度を設定

   デジタル

 東宝グループの顧客データ基盤を整備する TOHO-ONE プロジェクトに対して約50億円を投資

   ――2026年春、お客様と一つにつながる“新しい会員サービス”ローンチ予定

   海外

 海外拠点の拡充を加速するとともに、新たにグループインした企業とのシナジーを創出

 2032年に向けて海外売上高比率を現状の10%程度から30%まで引き上げる

 

<「中期経営計画 2028」の数値目標>

   営業利益 700億円以上(FY2028までに達成)

   株主還元 年間85円の配当を下限に配当性向35%以上かつ機動的な自己株式取得の実施

   ROE 9%以上

 

<事業の4本柱の戦略>

当社グループは、2026年2月期より会計上の報告セグメントを「事業の4本柱」に沿って「映画事業」「IP・アニメ事業」(新設)「演劇事業」「不動産事業」に変更いたします。「中期経営計画 2028」における各セグメントの事業戦略の概要は、次の通りです。

映画事業においては、自社企画作品の製作推進、映画以外のコンテンツ配給の拡充により収益力をさらに高め、収益基盤をより強固にしていきます。また、海外グループ会社との連携により、世界を見据えた日本実写コンテンツの企画開発を推進します。

IP・アニメ事業においては、良質なコンテンツ・IPを数多く製作し世界へ展開するために、人員増による体制の拡充と制作スタジオ機能の強化を図ります。また、成長領域である海外とゲームの収益をさらに伸長させ、同事業の営業利益を2032年までに200%以上(2025年2月期対比)にすることを目指します。

演劇事業においては、外部劇場での主催公演、新会員サービス、多様なチケット価格や販売形態の多角化により、帝劇休館中の興行収入の下支えを図ります。また、既存人気作品の価値最大化、オリジナル作品開発、海外展開により、東宝演劇のブランド力を高め、新・帝国劇場へとつなげていきます。

不動産事業においては、中長期的な収益基盤の維持を図りつつ、資産効率の向上を目指します。既存物件の賃料アップに注力し物件価値の向上を図るとともに、「帝劇ビル」の再開発事業を着実に推進してまいります。

 

<人材と組織の戦略/サステナビリティ経営の推進>

以上のような成長戦略を推進していくためには、お客様に感動を届ける当社グループの社員一人ひとりが、朗らかにいきいきと働けていること、つまり“心が動く”状態であることが、なによりも大切だと考えます。そこで「中期経営計画 2028」においては「心が動き、心を動かす仕事を通じて幸福を得られる会社へ」という新たな「人材と組織のビジョン」を策定しました。また、「東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します」という「サステナビリティの基本方針」に基づき、人的資本、気候変動、人権、文化継承の4つの重要課題を軸として、持続可能な社会の実現に向け、引き続き取り組んでまいります。

 

世界中のファンから愛されるエンタテインメント企業になる。そのような未来を目指して、当社グループはさらなる成長と企業価値向上に向けて、果敢に挑戦してまいります。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

① ガバナンス

当社グループは、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」において、「サステナビリティの基本方針」を「東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて、誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します」と定めています。また、当社グループのモットー(行動理念)である「朗らかに、清く正しく美しく」を元に4つの重要課題及びその具体的な取り組み目標を設定しております。

東宝グループが取り組む4つの重要課題

朗らかに 重要課題①  誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります

清く   重要課題②  地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します

正しく  重要課題③  人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します

美しく  重要課題④  豊かな映画・演劇文化を創造し、次世代への継承に努めます

 

その推進体制として、経営会議の下にサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長、委員:経営会議メンバー、オブザーバー:常勤監査等委員)及び専任部署(コーポレートコミュニケーション部サステナビリティ推進室)を設置し、年2回程度の開催頻度でサステナビリティ委員会を開催しております。

同委員会においては、上述の当社グループのサステナビリティの4つの重要課題に関連する「①人的資本 ②気候変動 ③人権 ④文化継承」を含むリスクや機会の把握、それぞれの目標・施策の策定、進捗状況の確認等を実施しております。本委員会で協議した内容は、取締役会にて報告され、当社グループ全体のサステナビリティに関する方針の決定及び監督、進捗の確認を行っております。

 


 

 

② 戦略

当社グループでは、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に連動する形で策定した「サステナビリティの基本方針」に則り、4つの重要課題を設定しております。当社グループのサステナビリティ活動にあたっては、これらの重要課題に沿った施策を推進し、その進捗状況については「東宝グループ 統合報告書 2024」にて開示しております。今後も当社グループのサステナビリティ活動を通じてステークホルダーの皆さまとの対話を活性化させ、社会課題に対する解決策を見出してまいります。

東宝グループ 統合報告書 2024」はこちらからご確認ください。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05040/b5037ee3/0159/4dcd/a2b5/6ab42ad3e300/20241128164642256s.pdf

 

 

③ リスク管理

当社グループでは、グループ全体の事業の継続と経営の健全性を維持するため「リスクマネジメント基本規程」を定め、代表取締役社長を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置しております。本会議は総務部が事務局を担い、年2回開催されております。当社グループのリスクマネジメント体制は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]」の[リスク管理体制の整備]に記載の通りです。

当社グループにおける気候変動に関するリスクや機会の識別・評価及び管理にあたっても、同体制に包含されております。同プロセスによって特定された気候変動に関するリスクは「サステナビリティ委員会」に報告され、同委員会を中心に議論されたのち、重要度が高いと判断されたものについては取締役会へ報告される体制となっております。

また、当社グループでは、不平等を許容せず、グループ事業活動に関わる全ての人々の人権を尊重しなければならないと考え、多様性と包摂性のある持続可能な社会の発展に貢献すべく、サステナビリティの重要課題3に「人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します」と設定しております。

2023年には「東宝グループ人権方針」を制定し、グループポリシーである「東宝憲章」と当社グループの役員・従業員の行動基準である「東宝グループ行動基準」を改訂し、これを踏まえて説明会や社内研修を通じてグループの役員・従業員に周知徹底いたしました。

さらに、当連結会計年度においては、初めて人権教育および人権デュー・ディリジェンス(人権DD)を実施し、当社全社員を対象に、当社内およびサプライチェーン上での人権侵害の有無について特定・分析・評価を行いました。また、引き続き当社グループ会社を対象とした人権DDも実施中であり、今後はサプライチェーン

に対する人権DDに拡大していく予定です。なお、人権DDの過程で人権侵害の疑いのある事象が確認された場合については、適切に予防/是正・救済の措置を講じております。なお、現時点で当社グループ内において重大な人権侵害は確認されておらず、人権DDの結果については適切な方法で情報公開を行っております。これらの取り組みにより、人権リスクについての理解が深まるとともに、人権尊重の観点から適切な業務が行われ、職場

 


 

環境の改善を通じた生産性の向上が期待されております。

今後も、気候変動に関するリスク、人権に関するリスクを中心として、グループ全体でリスク管理体制を構築・強化し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

 

 

 

 

④ 指標及び目標

当社グループは、長期的な社会課題を幅広く検討した後、当社グループにとっての重要な要素を抽出し「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」の策定と連動する形で特定した4つの重要課題<マテリアリティ>ごとに、具体的な取り組み目標を設定しております。

 

重要課題 <マテリアリティ>

取り組み目標

誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります

●ジェンダー、キャリア(職歴)、年齢、国籍、障がいの有無を問わない多様性のある活力にあふれた組織の形成

●健康経営の推進と社内コミュニケーション活性化によるウェルビーイングの追求

地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します

●脱炭素の実現に向け、再生可能エネルギー等を活用したCO2排出量の削減

※削減目標:

・2030年度までに2017年度比50%削減

・2050年度までに実質排出量ゼロ

●事業活動における環境負荷の少ない素材の活用や廃棄物の削減等、環境課題の解決

人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します

●誰一人取り残すことなく、すべてのお客様がエンタテインメントを楽しめる環境づくり

●あらゆるステークホルダーの人権を尊重し、持続的に「健全な娯楽」の提供ができる体制の追求

豊かな映画・演劇文化を創造し、次世代への継承に努めます

●映像原版の保全、演劇作品の継承、知的財産権の保護に努め、日本の映画・演劇文化に貢献

●子どもたちへの原体験の提供やクリエイターの支援・育成による、将来のお客様と未来の才能の創出

 

 

(2)気候変動

<TCFDに基づく情報開示>

当社グループは、サステナビリティの基本方針の重要課題2に「地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します」と設定し、脱炭素の実現に向け、再生可能エネルギー等を活用したCO2排出量削減、不動産事業における環境認証の取得促進、事業活動における環境負荷の少ない素材の活用や廃棄物の削減等を推進しております。

地球温暖化への適応及び脱炭素化の推進をはじめとした気候変動課題への取り組みは、2015年のパリ協定の採択や2021年のCOP26における1.5℃目標達成に向けた世界的合意も踏まえ、サステナビリティに関わる社会的な諸課題の中でも特筆して重大なテーマの一つとして認識しております。また、TCFDのフレームワークに即した気候変動リスク及び機会が及ぼす影響の評価と対応策の検討及び事業戦略への統合は、当社グループの企業価値向上と持続可能な社会の実現に資するものと考え、TCFDの提言に賛同し、このフレームワークに基づいた情報開示をしております。引き続き、経営の強靭化と持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 

① ガバナンス

当社グループでは、執行側として、経営会議と同メンバーから構成される「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会では代表取締役社長が委員長を務め、気候変動によるリスクや機会の把握、リスクマネジメント上の観点から、脱炭素やエネルギー効率の向上などの気候変動に関する目標・施策の策定、進捗状況の確認等を実施しております。また、本委員会で協議した内容は、取締役会にて報告され、当社グループ全体の気候変動に関する方針の決定及び監督、進捗の確認を適宜行っております。

また、「中期経営計画 2028」に併せて導入した役員報酬制度「業績連動型株式報酬」においては、その業績指標の一つに「CO2排出量の削減率」を設定し、当社役員(業務執行取締役及び執行役員)の目標達成に向けた行動に対する適切なインセンティブとして機能するよう努めております。

 

 

② 戦略

当社グループでは、気候変動に起因して将来起こり得る不確実な影響因子及びリスクと機会の特定にあたって国際エネルギー機関(IEA)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の仮説を参考に、シナリオ分析を実施しております。2023年度時点における考察では、地球温暖化が深刻化する世界及び脱炭素化への移行が推進され2050年までにカーボンニュートラルが達成されるとした世界の2つのシナリオ(1.5℃シナリオ*1と4℃シナリオ*2)を設定し、それぞれの前提条件を踏まえた2030年時点における分析評価を実施しております。

また、当社グループでは創立100周年を迎える2032年を見据えた「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」のもと、お客様の価値観やライフスタイルの変容を踏まえた成長戦略を検討しております。さらにシナリオに基づき、比較的影響が大きい物理的リスクなどに対応するため、気候変動に対するレジリエンス性を確保した戦略の検討を進めております。

さらに2025年4月に公表した「中期経営計画 2028」においても、CO2排出量削減をサステナビリティにおける重要な課題と位置づけております。当社グループの持続的な企業価値向上のためには脱炭素化への貢献が不可欠であると考えており、CO2排出量の削減目標の達成に向けた取り組みを継続的に推進しております。それら取り組みの一環として、当社グループは、東宝スタジオにおける脱炭素化の取り組みを進めております。具体的には、2024年11月より太陽光発電などの再生可能エネルギーと国内初の商用利用*3となる発電時にCO2を排出しない水素を燃料にした火力発電を中心に構成された電気を導入いたしました。最終的には「24/7カーボンフリー電力」*4の実現を目指し、エンタテインメント業界全体の脱炭素化を牽引するとともに、持続可能な地球環境に貢献してまいります。

(*1参考シナリオIPCC:RCP2.6 IEA2021:SDS/NZE2050 

*2参考シナリオIPCC:RCP8.5 IEA2021:STEPS

*3JERA調べによる 

*4「24/7 (twenty-four seven )カーボンフリー電力」は、毎日24 時間・毎週7 日間、すなわち年間365 日にわたってCO2

を排出しない電力の名称です。なお、経済産業省の「電力の小売営業に関する指針」に従い、需要電力量の100 %について、

CO2ゼロエミッション電源を電源構成とし、非化石証書の使用による環境価値をともに供給することを意味しており、燃料の

製造・輸送等のライフサイクルを含めてCO2 が排出されないことを意味するものではありません。)

 

③ リスク管理

リスク管理については「(1)サステナビリティ全般」の「③リスク管理」に記載のとおりです。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、映画館運営や不動産賃貸をはじめとして、業務遂行上、保有不動産の稼働やサービスの提供に伴い電力を主として多くのエネルギーを消費しております。これらのエネルギー消費活動から多くのCO2排出量があることを認識しており、これを受け当社グループでは再生可能エネルギーの利用や保有物件の環境認証取得等を通し、CO2排出量を指標とした削減努力を推進しております。

当社グループでは、近年最もCO2排出量の多かった2017年度(第129期)を基準に、毎年その排出量削減の進捗を管理しております。その結果、2022年度(第134期)時点のCO2総排出量が2030年度の当初目標であった「2017年度比30%削減」を達成したことを受け、2023年度(第135期)において新たに削減目標の見直しを実施し、2030年度の目標を「2017年度比50%削減」に変更しております。なお、2050年度までに「実質排出量ゼロ」を目指すという目標に変更はありません。

今後さらに具体的な施策を進め、引き続きCO2削減活動に注力し脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

 


 

(3)人的資本

① 戦略

1) 多様性の確保を含む人材育成方針

当社グループは、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」において、成長戦略の推進役となる多様で優秀な外部人材の採用を強化するとともに、よりクリエイティブな組織へと進化するため、人材育成と働く環境の整備を推進することを「人材と組織の戦略」の基本方針として掲げました。

また、2025年4月に公表した「中期経営計画 2028」においては、重点ポイントに「人への投資とエンゲージメント向上」を掲げるとともに、「心を動かし、心を動かす仕事を通じて幸福を得られる会社へ」という新たな「人材と組織のビジョン」を策定いたしました。

さらに、そのビジョンを実現するためのキーワードとして、「少数精鋭から精鋭多数へ」「成長・自律・安心」の2つを掲げました。

具体的には、①成長を推進し、変化に対応できる多様な人材の獲得を促進、②企画力あふれる東宝らしい精鋭人材の育成を強化、③社員の強みを活かし、成長を支援する人事施策を推進、④自らを律し、裁量をもって、安心して活躍できる組織・環境を追求、の4つの方針をもって進めてまいります。

以上を今後の当社グループの人的資本に関する基本戦略として、当社グループで働くすべての社員が、余裕を持ち、朗らかに、いきいきと働ける組織づくりを追求してまいります。

 

  <新人事制度>

当社では、2025年6月の運用開始に向けて、新人事制度の準備を進めております。本制度では「成長・自律・安心」をキーワードに掲げ、一人ひとりの挑戦と自己実現を支援しながら、個人と組織の健全で持続可能な成長を目指してまいります。

本制度では、従来の人事制度の仕組みを全面的に見直し、役割基準の等級制度を導入することで、入社年次・年令・勤続年数・性別に関わらず、すべての社員が主体的かつ自律的にキャリアを形成できる環境を整えてまいります。

また、報酬や評価の仕組みについても、社員が担う役割や成果がどのように評価され、報酬に反映されるのかを明確化することで、制度の透明性を高めるとともに、市場競争力のある給与水準を設定いたします。これにより、優秀な人材の獲得と定着を促進し、社員が安心して長期的なキャリアを築ける職場を実現してまいります。

 

  <従業員エンゲージメントの向上>

当社グループでは、エンゲージメントの高い職場環境の整備を目指し、サステナビリティの重要課題の一つとして「誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境づくり」を掲げ、さまざまな取り組みを積極的に推進しております。

その一環として、当社では、社員の主観や感じ方を可視化し、これに基づいた組織内の対話やコミュニケーションを促進することを目的に、2021年より全社員を対象としたエンゲージメント調査を実施しております。その結果に基づき、注力する項目として「挑戦する風土の醸成」を掲げ、埋もれがちなチャレンジに光を当て、全社で称賛し合う「TOHO CHALLENGE AWARD」を実施し、以降も年に1回継続的に実施しております。また、成長戦略の推進に不可欠な「ミッション・ビジョンへの共感」にも注力し、経営トップと社員が直接対話するワークショップ「タウンホールミーティング」を継続的に実施しております。さらに、2024年5月には、経営陣からのメッセージを全社員が同じ場で共有し、経営方針への理解と共感を深めることを目的に、当社初の「全社員集会」を実施しました。加えて、2025年4月には「中期経営計画 2028」の方針の浸透を図るべく、社員向け説明会を開催いたしました。

これらの取り組みは着実に成果を上げており、エンゲージメントスコアも順調に推移しております。今後も、社員の声を反映した多様な施策を通じて、より良い職場環境の実現に向けた取り組みを進めてまいります。

また、「中期経営計画 2028」に併せて導入した役員報酬制度「業績連動型株式報酬」においては、その業績指標の一つに「従業員エンゲージメントスコア」を設定し、当社役員(業務執行取締役及び執行役員)に社員のエンゲージメント向上へのコミットメントを促し、適切なインセンティブとして機能するよう努めております。

 

  <ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン>

当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためには、多様性のある人材と組織が不可欠と考え、さまざまな取り組みを積極的に推進しております。

当社では、2022年4月の「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」の公表以降、その成長戦略を推進していくうえで、外部で専門性を培った人材の採用を拡大・強化することが不可欠と考え、キャリア採用に注力してまいりました。その結果、2022年3月から2025年2月までの3年間でキャリア採用による当社への入社者が150名を超え、2025年2月末時点で全社員に占めるキャリア採用者の割合は38.1%(前年同期31.9%)に達しました。また、課長職以上の地位に占めるキャリア採用者の割合も24.6%(前年同期20.1%)となりました。

さらに2025年4月に公表した「中期経営計画 2028」においては、成長を推進し変化に対応する多様な人材の獲得を促進することを方針とし、今後3年間でキャリア・新卒含め200名の採用を目標として掲げており、今後も多様なバックグラウンドを持った人材を積極的に採用し、役員・管理職を含めた中核人材としての育成・登用を積極的に進めてまいります。

また、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みも継続的に推進しており、男女の公正な配置・評価・昇格を推進することで、女性の活躍の場が広がっております。当社では女性管理職比率(課長職以上に占める女性の割合)の目標を20%に設定し、2025年2月末時点では、厚生労働省が発表した全国平均12.7%(令和4年)を上回る14.7%(前年同期14.9%)となっておりますが、引き続き目標達成に向けた取り組みを進めてまいります。

加えて、当連結会計年度より社内規程を改定し、「事実婚」および「同性婚」も結婚祝金および結婚休暇の対象に含めました。

こうした取り組みを通じて、人材の多様性を前提とした新しい時代の価値観に適合した「全員活躍」の実現を目指します。

 

2)社内環境の整備に関する方針

当社グループでは、サステナビリティの重要課題1に「誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります」と設定し、さまざまな取り組みを実施しております。社員が心身ともに健康で、持てる能力を最大限に発揮できる職場環境を実現することが、企業と社員が共に成長するために不可欠と考えております。

また、「中期経営計画 2028」においては、重点ポイントの一つに「人への投資とエンゲージメント向上」を掲げ、「心を動かし、心を動かす仕事を通じて幸福を得られる会社へ」という「人材と組織のビジョン」を実現するため、「自らを律し、裁量をもって、安心して活躍できる組織・環境を追求」することを方針としております。

 

 

  <健康経営>

当社では、「朗らか健康経営」を推進しております。その体制として、代表取締役社長を推進最高責任者に据え、人事部を中心に産業医や診療所と密接に連携しながら、社員の健康増進や労働環境の改善に取り組んでおります。「心のケア 働きがい」「生活習慣改善」「健康診断」「働き方」各項目において目標数値を設定し、その進捗状況を毎年確認しております。また、社内研修をはじめとする様々な施策を実施した結果、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に4年連続で認定されております。

さらに、当連結会計年度には、当社として初めて「プレゼンティーイズム」調査を実施いたしました。この調査を通じて、生産性向上におけるさらなる改善の余地があることを再認識する機会となりました。今後は、エンゲージメント調査やストレスチェックの結果と併せて分析を行い、より良い職場環境の実現を目指して取り組んでまいります。

 

  <働き方・職場環境の改善>

当社では、全社員が“仕事も私生活も楽しむことで「朗らかライフ」を実現”することを目指しております。この実現に向けて、長時間労働の是正を目的とした時間管理の徹底や、有給休暇をはじめとする休暇取得を促進する社内施策「ゆうゆうProject」の推進を行っております。また、当連結会計年度において、更年期の諸症状、不妊治療、妊産婦の受診などプライベートでセンシティブな事由に対応するための「ウェルネス休暇」を新設いたしました。

さらに、フレックスタイム制の導入により、働く時間を個人のライフスタイルに合わせて選択できる環境を整えております。加えて、働く場所を自由に選べるテレワーク制度も整備し、時間と場所にとらわれない柔軟で多様な働き方を実現しております。また、副業に関するガイドラインを整備するとともに、育児をしながら働く社員の負担軽減を目的としたこども家庭庁主導の「企業主導型ベビーシッター利用支援事業」を新たに導入いたしました。

職場環境においては、多様なワークスタイルへの対応やキャリア採用による社員数の増加を見据え、別フロアの増床工事の実施など、本社オフィスの改革「シン・レイアウト作戦」を継続的に推進しております。オフィスのフリーアドレス化により部門間の垣根を超えたコミュニケーションの活性化を図るとともに、業務効率化と生産性向上にも努めております。

 

 

② 指標及び目標

当社グループは、サステナビリティの基本方針の重要課題1に「誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります」と設定し、多様性のある活力に溢れた組織づくりを目指して様々なKPIを定め、目標達成に向けて取り組んでおります。

また、2025年4月に公表した「中期経営計画 2028」においては、重点ポイントに「人への投資とエンゲージメント向上」を掲げるとともに、「心を動かし、心を動かす仕事を通じて幸福を得られる会社へ」という新たな「人材と組織のビジョン」を策定いたしました。

さらに、そのビジョンを実現するためのキーワードとして、「少数精鋭から精鋭多数へ」「成長・自律・安心」の2つを掲げました。

具体的には、①成長を推進し、変化に対応できる多様な人材の獲得を促進、②企画力あふれる東宝らしい精鋭人材の育成を強化、③社員の強みを活かし、成長を支援する人事施策を推進、④自らを律し、裁量をもって、安心して活躍できる組織・環境を追求、の4つの方針をもって進めてまいります。

なお、当社グループの連結子会社は業種・業態が多岐に渡り、現時点においては当社グループとして統一されたKPIを設定することが困難なため、当該期間では当社のみの指標及び目標としております。将来的には連結子会社を包含した指標や目標を設定できるよう努めてまいります。

 

<人材の確保と育成>

1.人材獲得の促進

当社は、今後2028年2月末までの3年間で約200名(新卒・キャリア採用合計)の採用を目標とし、特にコンテンツ、IP、海外領域の人材獲得に注力します。これにより、成長を加速させ、変化に柔軟に対応できる多様な人材の確保を進めてまいります。

2. 人材育成の拡充

当社は、企画力にあふれる精鋭人材の育成を強化するため、さまざまな施策を実施してまいります。具体的には、一人当たりの教育研修費を2025年2月期対比で300%増加させます。また、企業内大学「東宝大学」を軸にした新たな人材育成プログラムを創設します。さらに、戦略的人事に注力し、経営人材やマネージャーの早期育成を進めてまいります。

 

<エンゲージメント>

当社では、2021年より従業員エンゲージメント調査を毎月実施しており、職場環境の状況を可視化し、改善に向けたアクションをとるための指標として、そのスコアの推移を重視しております。スコア自体の高低の評価よりも、調査結果に基づいて組織内の対話やコミュニケーションを促進することで、スコアが改善に向かうことを検証することを主目的として活用しております。また、特定の評価項目に着目して、具体的なアクションに注力することで、職場風土・企業文化の改善につなげていくことを目指しています。

従業員エンゲージメント調査の導入から3年を迎えた2024年8月には、全社的な「3年検証レポート」を作成しました。その中で、これまで特に注力してきた評価項目「挑戦する風土の醸成」「ミッション・ビジョンへの共感」のスコアについては、下記の通り、導入当初から継続的な改善が見られ、右肩上がりの向上となっています。

 


 

 

<ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン>

 

「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」(2026年3月31日まで)

KPI(当社)

1.  職制上において課長職以上の地位に占める女性割合を20%にする

2.  男性を含む全員(100%)が、育児関連休暇または育児休業を取得する

3.  有給休暇と夏期休暇の合計取得日数を1人あたり平均15日以上(年間)にする

 

当社の女性管理職比率は、2025年2月末現在で14.7%となっており、厚生労働省発表の女性管理職比率全国平均12.7%(令和4年度)を上回っておりますが、上記KPIの20%には達しておりません。今後も引き続き、女性が働きやすい職場環境の整備に努めるとともに、女性の管理職登用の機会創出に積極的に取り組み、目標数値の達成に向けて取り組んでまいります。

 

「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」(2024年3月1日~2026年2月28日まで)

KPI(当社)

1. 育休関連休暇取得を促進し、以下の取得割合を達成する

取得要件に該当する社員(男女共に)100%

2. 仕事と育児の両立を推進するための環境整備を継続して行う

 

当社では、法令を上回る育児関連制度を整備し、育児関連休暇制度のさらなる拡充や「出産・育児のガイドブック」の作成・周知を通じて、育児関連休暇の取得促進に取り組んでまいりました。

なお、当社の男性育休、女性育休の取得率は、昨年度まで100%を維持しておりましたが、本年度は男性育休66.7%、女性育休80.0%となりました。これは、当社事業年度末の2月に育児休暇の取得要件に該当する従業員が多く、育児関連休暇または育児休業の取得については、翌期の3月以降にずれ込むことが見込まれるためです。今後も、全従業員が育児と仕事を両立できる働きやすい環境の整備を推進し、目標の達成に向けて取り組んでまいります。

 

<健康経営>

当社では、健康経営において2025年の達成に向けて、「心のケア 働きがい」「生活習慣改善」「健康診断」「働き方」の4項目において目標数値を設定しております。

 

「朗らか健康経営」推進計画(2025年達成に向けて)

 

心のケア 働きがい

生活習慣改善

健康診断

働き方

目標

①エンゲージメント調査「健康スコア」で全職場のスコア50以上(最高スコア100)

 

②メンタル不調での1カ月以上の欠勤者0%

・運動習慣で、1日1時間の歩行と同程度の運動を行っている人の割合 60%

・食生活改善で、

血中脂質/BMI異常なしの

割合 70%

①1人あたりの時間外勤務

月平均22.2時間以下

(2019年比5%減)

 

②年次有給休暇取得日数

全員が12日以上

 

 

エンゲージメント調査については、「健康スコア」の項目において全職場でのスコアを50以上とすることを目標にしており、2025年3月時点で調査対象となる当社内93セクションのうち75セクションで達成しております。引き続き全職場での目標達成に向けて取り組んでまいります。また、1人あたりの時間外勤務時間の目標を月平均22.2時間以下としており、2024年(自然歴)の月平均25.2時間からの改善を目指しております。これからも一人ひとりが朗らかにいきいきと働くことができる健康な職場づくりに努めてまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況及び事業運営に特に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

当社グループでは、「リスクマネジメント基本規程」に基づき、代表取締役社長を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置し、グループ全体にわたるリスクの洗い出しと評価、連絡・報告体制の整備、対応策の検討等を実施し、これら主要なリスクの発生の回避及び発生時の迅速かつ適切な対応に向け、全社的なリスクマネジメント体制を構築しております。

なお、文中における将来に関する事項は当社グループが有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)当社グループの主な事業において発生可能性がある主要なリスク

    映画、アニメ、演劇各事業の不確実性によるリスク

当社グループの以下の事業において、作品によっては収入が見込みを大きく下回るリスク、作品の製作遅延や公開延期、公演中止等により、作品からの収入が見込めないなどのリスクが存在します。

・映画事業 :公開作品によっては興行収入が想定を下回るリスク。また、出演者・スタッフ等のトラブルや撮影時の事故などによる公開予定作品の製作遅延や公開延期、公開中止等のリスク。

・アニメ事業:出資作品によっては興行収入や配信等の各種利用料が想定を下回るリスク。また、声優・スタッフ等のトラブル等により製作遅延や公開延期、放映・配信の中止等のリスク。さらには、作品内容や表現等によって海外での利用に支障が発生し、十分な収入が得られないリスク。

・演劇事業 :新作などの公演によっては十分な観客動員が果たせないリスク。また、制作スケジュールの遅延や俳優の健康上の理由・トラブル等により公演が延期や中止となるリスク。

これらのリスクが顕在化する可能性は、映画事業、アニメ事業、演劇事業が不確実性を本質的な事業特性とする限り、一定程度、常に存在すると言えます。

これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、製作投資の回収可能性の低下による棚卸資産の評価減等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があり、さらには当社が提供するコンテンツに対する信頼を損なうという大きなリスクを伴います。

これらのリスクへの対応策は、常に幅広く良質なコンテンツの獲得を行うことや、年間を通じてバランスの取れたラインナップ編成によって興行のボラティリティを軽減することに加え、コンテンツの制作段階におけるトラブルの発生やスケジュールの遅延などのリスクを防止するため、各作品のリスク管理を徹底しています。また、万が一の場合には、速やかな代替策や対応策の実施を検討してまいります。

 

    コンテンツの制作現場に係るリスク

当社グループの映画事業、アニメ事業、演劇事業の各事業において当社グループが制作する各種コンテンツの制作現場では、コンプライアンス違反、ハラスメント事案の発生、各取引業者との取引トラブル等の発生のリスクが存在します。

これらのリスクは、コンテンツ制作という業務の性格上、クリエイターや俳優、技術スタッフなど多様な関係者、取引先が関わっていることから、当社と直接雇用関係にない外部の事業者、芸能関係者、フリーランス等によって引き起こされる可能性もあり、常に一定程度のリスクは存在すると言えます。

これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの信用を毀損するだけでなく、当該コンテンツの上映、放映、上演などの各種利用が行えないといった事態が生じる可能性があります。その場合は営業収入や営業利益が減少し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、当社が主導的に製作する実写映画の制作現場においては、一般社団法人映画制作適正化機関の審査基準を遵守することにより、適正な制作現場の実現を担保するよう努めています。また、アニメ制作や演劇制作においても、それぞれのコンテンツ制作の特性を勘案しながら、ハラスメントに対する啓発をはじめとして人権尊重意識の徹底を図るとともに、制作現場の適正な就業環境や取引環境の実現に向けた取り組みを今後も継続して進めてまいります。

 

    知的財産権の侵害や不正転売に係るリスク

当社グループの以下の事業において、「ゴジラ」など当社が保有するIPや当社が出資した各種コンテンツの知的財産権が侵害されるリスクや、演劇公演の鑑賞券等の不正転売によるリスクが存在します。

・映画事業  : 映画、映像作品の違法動画配信や海賊版パッケージ商品の流通、またキャラクターグッズ等での無許諾商品、模倣品等による当社の知的財産権が侵害されるリスク。

・アニメ事業 : アニメ作品の違法動画配信や海賊版パッケージ商品の流通、またキャラクターグッズ等での無許諾商品、模倣品等による当社知的財産権が侵害されるリスク。

・演劇事業   : 演劇公演の鑑賞券の不正転売リスク、演劇公演の盗撮や違法配信などによる当社知的財産権が侵害されるリスク。

これらのリスクが顕在化する可能性は、さまざまな対策を講じても一定程度発生することが見込まれ、根絶することはなかなか困難と考えられます。

これらのリスクが顕在化した場合は、コンテンツの利用に関する逸失利益が発生します。特に海外やインターネット上での知的財産権の侵害は、侵害行為の停止措置が困難な場合もあり、被害が拡大する可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、著作権、商標権等の保護に関する各種対策を強化するとともに、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)等の業界団体とも連携し、仮にリスクが顕在化した場合は、法的措置を前提に毅然とした対応をとることを徹底しております。また、鑑賞券等の不正転売に関しては、電子チケットの導入を推進していくとともに、行政機関及び各種関係団体とも連携して可能な限りの対策を講じてまいります。

 

    不動産事業に係るリスク

当社では全国各地に約130物件の不動産を保有しており、オフィス、飲食・物販店舗、ホテル事業などのさまざまなテナントに対する賃貸借契約によって収入を計上し、安定的なキャッシュ・フローを創出しております。直近ではオフィス需要の回復や物販・飲食テナントの好調な売り上げ、インバウンド需要によるホテル稼働率の上昇により、既存所有物件での収益は安定しているものの、エネルギー価格の上昇や資材価格の高騰と人手不足等による建築・設備工事費の高騰など、不動産事業を巡る事業環境は大きく変化しつつあります。

それらの影響により、当社グループの既存保有物件においては、修繕費を含めたランニングコスト負担増による収益の悪化、また、新規取得物件や再開発物件においては、物件価格の上昇や工事費の高騰による投資回収期間の長期化、開発計画の見直し・中断といったリスクが存在します。

これらのリスクに対し、既存保有物件においては、コスト削減に努めながら賃料改定の営業努力を継続してまいります。新規物件取得や保有物件の再開発においては、さまざまな想定に基づき、投資回収計画をより慎重に策定することによってリスクの低減を図ります。

 

    道路事業に係わるリスク

当社グループの不動産事業において、スバル興業㈱と同社の連結子会社が道路事業に係わっており、これら事業においては、公共工事への高い依存に伴うリスク、人員不足のリスク、労務費及び資機材価格の高騰リスク、自然災害のリスク、建設業法等の規制に関するリスク等、道路事業特有のリスクが存在します。

これらのリスクが顕在化する可能性は、それぞれ一定程度存在します。また、これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少する可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、スバル興業㈱を中心に安全管理・品質管理の徹底、優れた技術者の採用・育成・配置など継続的な人員確保への取組みなど、影響を最小限にするための具体的な施策を実施しております。

 

 (2)  当社グループの企業運営全般において発生可能性がある主要なリスク

    情報セキュリティに係るリスク

当社グループでは、チケット販売やECサイトでの商品販売等によって取得したお客様の個人情報や、役員・従業員・取引先に関する情報、映像素材のデジタルデータ、その他業務上の重要な情報等を各種の情報システムにおいて管理しておりますが、悪意のある第三者いわゆるハッカー集団からの不正アクセス、マルウェアなどのコンピュータウィルス侵入により、当社グループが保有する個人情報・機密情報が漏洩するリスク、社内基幹インフラシステムの停止などのリスクが一定程度存在します。そのようなリスクが発生した場合には、最悪の場合、財務データを含む電子データが暗号化される等により、事業活動の継続を大きく阻害することも想定されます。

これらのリスクが顕在化する可能性は近年ますます高まっており、ひとたびこれらリスクが発生し顕在化した場合は、業務のほとんどがデジタル化、オンライン化によって成り立っている現在では、事業の長期間の停止など営業収入や営業利益の大幅な減少といった重大な結果を招く可能性があります。

これらのリスクへの対応策としては、「情報セキュリティ基本方針」及び「情報セキュリティ対策規程」に則り「情報セキュリティ委員会」を設置して当社グループの情報システムに関する運用ルールを整備することにより、当社グループ全体の情報セキュリティマネジメント体制を構築しております。また、可能な限り最新の知見や技術に基づくハード的なセキュリティ対策を講じるとともに、さまざまなユーザー教育・訓練を実施しております。さらに、万が一重大な情報セキュリティインシデントが発生した場合を想定して、CSIRT体制の構築に向けた取り組みを進めております。また、サイバーリスク保険への加入により経済的損害の発生に備えています。

 

    人権問題に係るリスク

近年、芸能業界やメディア・エンタテインメント業界において、性的暴力・ハラスメントなどの人権に関わる重大事案・不祥事が相次いで発覚・報道されており、当該企業がそれらに対するリスク認識や初動対応を誤るといったことも重なって、レピュテーションも含め企業価値の多大な毀損につながるという事例が見られています。

当社グループとしても、映画・アニメ・演劇等のエンタテインメントを主業としている以上、これらの問題が顕在化した企業と同様、役員、従業員その他関係者において、人権に関する問題事案が発生するリスクが全くないとは言えません。

これら人権に係るリスクが顕在化し、当該事案に対する企業として取るべき対応を誤り、大きな社会的批判を浴びるような事態に陥った場合には、当社の社会的信用が大きく毀損するだけでなく、各方面から営業取引の停止に至る可能性があり、さまざまな事業で深刻な影響が懸念されます。それにより営業収入、営業利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

これらのリスクへの対応策としては、当社グループでは2023年3月に人権方針を制定し、お客様、役員・従業員、ビジネスパートナー、株主を含むすべての人々の人権を尊重することを宣言しております。また、人権方針に基づき、グループ内において人権デューデリジェンスや人権教育を実施するなど、人権尊重に対する取組みに力を入れております。今後はさらに取引先・サプライチェーンに範囲を拡大して人権デューデリジェンスに取り組む予定にしており、人権尊重に関しては特に注力して実効性のある体制の強化を継続して図ってまいります。

 

    自然災害や事故、火災等の発生によるリスク

当社グループの以下の事業において、不特定多数のお客様が来場される事業場における自然災害(大規模な地震・風水害など)や事故、火災等の発生により事業活動の継続に支障をきたすリスクが存在します。

・映画事業 :全国各地に運営する映画館での自然災害や事故、火災等の発生リスク。

・演劇事業 :直営劇場であるシアタークリエや当社主催公演での自然災害や事故、火災等の発生リスク。

・不動産事業:全国各地の各所有物件に係る自然災害や事故、火災等の発生リスク。

これらのリスクが顕在化する可能性について、自然災害に関しては近年の気候変動による風水害の激甚化、全国各地で頻発する地震の発生等の傾向から見て、顕在化する可能性が高まりつつあると考えられます。

また、事故、火災の発生に関しては、長年にわたり各種予防策を徹底してきたことにより、昭和33年の東京宝塚劇場での死者3名を出した火災以降、当社グループの事業場において重大事故の発生に至った事例はありません。

一方、日本の広範囲で甚大な被害が予測されている南海トラフ地震については、政府の地震調査委員会により今後30年での発生確率が80%程度に引き上げられたというように、大規模自然災害のリスクは高まっている状況と考えられます。

これらリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、固定資産の滅失・毀損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えるとともに、これらリスクの発生した場合の企業としての事後の対応によっては、企業価値の毀損につながる可能性があります。

これらのリスクへの対応策としては、日頃からの防火・防災の対策を継続的に実施するとともに、大規模自然災害への対応策として、当社グループでは「災害時基本規程」を制定し、災害発生時の行動原則や災害対策本部の設置、連絡報告体制について定めております。また、グループ各社において「災害対策計画書」や「地震対応マニュアル」の整備を進めるなど、グループ全体での防災力の向上に取り組んでおります。

 

    海外展開に係るリスク

当社グループでは、映画、アニメ事業において、コンテンツの海外展開(海外への映画配給、配信プラットフォームへの利用許諾、商品化権の許諾等)を積極的に行っているほか、演劇事業においても、海外において自社製作作品のロングラン公演を実施しております。また、2023年には米国及びタイの企業に対して戦略的出資を行い、2024年には北米を中心にアニメーションの配給を手掛ける米国のGKIDS, INC.を100%子会社化したほか、シンガポールにおいて当社の子会社(孫会社)Toho Entertainment Asia Pte. Ltd.がアジア地区の拠点として稼働を開始するなど、積極的に海外展開への取り組みを行っております。

これらの海外展開においては、紛争や政情不安、不確実性を増した世界経済の状況といった地政学上のリスクにとどまらず、各種コンテンツの表現に対する文化や慣習の違いに起因するリスク、知的財産権に関するリスク、SNS等における炎上リスク、各種法的規制の変更に関するリスク、為替リスクなど多岐にわたるリスクが存在します。

また、海外を拠点とする子会社等においては、グループ・ガバナンスが十分に行き届かないことによるコンプライアンスリスク等が存在すると考えられます。さらに、戦略的出資をしている海外の会社については、当該会社の経営成績が投資時点で想定されていた事業計画を大きく下回って推移する際には、株式の評価損リスクが生じます。

これらのリスクが顕在化する可能性は、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に基づき、当社グループが成長戦略の一環として、今後も海外展開を積極的に拡大する中で増加していくものと考えられます。

これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や各段階の利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。また、訴訟コスト等が臨時に発生する可能性があります。

これらのリスクへの対応策として、2025年2月に海外事業を統括する当社100%子会社のTOHO Global株式会社を経営統括会社として機関決定し、同社を中心にグループとしての内部統制体制の構築を図っております。今後も海外での事業展開においては、各地域におけるリスク情報の収集に努めるとともに、海外子会社のグループ・ガバナンスの実効性を高めてまいります。また、グループ内での知見の共有や経験豊富な専門家にアドバイスを得るなど、可能な限りリスクの低減に努めてまいります。

 

    物価、人件費等の高騰による収益構造悪化のリスク

当社グループの以下の事業において、エネルギー費・原材料費などを含む物価や人件費の高騰といった要因がもたらす収益構造悪化のリスクが存在します。

・映画事業  : 物価・人件費の高騰による全国各地で運営する映画館のランニングコスト増、及び新規出店に伴う出店費といったコスト増に伴う収益構造悪化のリスク。

・演劇事業   : 直営劇場に係るランニングコスト増、資材費や人件費のコスト増による公演製作費の増による収益構造悪化のリスク。

・不動産事業 : 全国各地に保有する不動産物件に係るエネルギーコストや修繕費の高騰による収益構造悪化のリスク。

これらのリスクは、地政学上のリスクも含めた世界経済、国内における政府の経済政策、社会環境の変化が発生要因であるためにコントロールが難しく、常にリスクとして存在します。

これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、設備投資の回収可能性の低下による固定資産の減損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

これらのリスクに対しては、可能な限り適切な方法で価格転嫁して収入の増加に努めるとともに、一層の運営効率化とコスト節減に努めリスクの低減を図ります。

 

    電子商取引(ECサイト)に係るリスク

当社グループでは、映画館や演劇においてインターネット上でチケットを販売しているほか、複数のECサイトでキャラクターグッズ等の商品を販売しております。これらの事業においては、第三者からの悪意ある攻撃によらずとも、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等の障害または人為的なミスにより、システムの運用が停止する事態が発生し、一定期間、チケットや商品の販売ができなくなるリスクが存在します。

これらのリスクが顕在化した場合は、逸失利益が発生するとともに、復旧までに相当の時間を要した場合は、お客様からの当社グループ事業に対する信用の失墜につながる可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、過去に発生した障害の分析に基づき、的確な対応策の実施により再発防止に努めるとともに、各ベンダー等との連携を強化し、障害発生時の迅速な復旧対応の体制整備を推進してまいります。

 

   投資有価証券等に係るリスク

当社グループは、重要な取引先との関係を強固にするため、上場株式および非上場株式を複数保有しておりますが、大幅な株式相場の下落や当該企業における企業価値の毀損が生じた場合には、保有有価証券を減損処理する可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、有価証券の投資基準・保有意義を明確にするとともに、取締役会への報告を含む定期的なモニタリングを実施することで、リスクの軽減に努めています。

 

   パンデミック発生に係るリスク

新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的なパンデミック発生から5年を経て、社会活動はほぼ完全に正常化したように思われますが、グローバル化が浸透した現代においては、新たな感染症による世界的なパンデミックの発生と、それに伴う世界的な経済活動の混乱や停滞といったことは、今後も発生可能性のあるリスクとして否定できません。

当社グループにおいても、コロナ禍では映画館・演劇劇場の休業要請への対応や、演劇事業においては出演者の感染リスクへの対応、従業員の就業制限など、さまざまなリスクに対応いたしましたが、今後も新たな感染症によるパンデミックが発生した場合には、前回のコロナ禍と同様、大きな経済的損失が見込まれ、営業収入、営業利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

これらのリスクの対応策として、従業員の在宅勤務制度やリモートワーク環境の整備は、ほぼ十分に整備されております。また、ワクチン接種などの従業員の健康管理体制や、新たなパンデミック発生時の緊急対応のあり方については、コロナ禍における経験を踏まえて引き続き課題として検討しております。

 

   気候変動に係るリスク

気候変動に伴う温室効果ガスの排出抑制の取り組みは企業活動と切り離せないものであり、映画、アニメ、演劇等のエンタテインメントを主業とする当社グループにおいても、企業の社会的責任として脱炭素や循環型社会に向けた取り組みを推進して行かなければ、信用の毀損に伴う収益の減少や株式市場における企業価値向上に支障が生じる可能性があります。

これらのリスクへの対応策として、当社グループはサステナビリティの重要課題の一つとして「地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します」を掲げ、脱炭素の実現に向けTCFDに基づく情報開示やCDP評価を受けるなど第三者からの評価や視点も取り入れながら取り組んでおります。なお、CO2排出量の削減目標としては2017年度比で2030年度までに50%削減、2050年度までに実質排出量ゼロを目指しております。

2024年には、主要な事業所である東宝スタジオにおいて日本初の取組みとして水素を燃料として発電された電力の商用利用を開始しており、今後も再生可能エネルギーの活用も含めてCO2排出量削減、事業活動における環境負荷の少ない素材の活用や廃棄物の削減等を推進してまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(経営成績の概況)

当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境が改善する下で、景気の緩やかな回復基調が見られる一方、海外景気の下振れによる景気の下押しリスクや物価上昇、アメリカの政策動向、金融資本市場の変動の影響などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような情勢下にあって当社グループの当連結会計年度における経営成績は、営業収入は3131億7千1百万円(前年度比10.5%増)、営業利益は646億8千4百万円(同9.2%増)、経常利益は644億5千5百万円(同2.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は433億5千7百万円(同4.3%減)となりました。「中期経営計画 2025」の実現に向けて取り組みを進めた結果、数値目標として掲げていた「営業利益の最高益(528億円)更新」を2年連続で達成することができました。

セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。

 

映画事業

映画営業事業では、東宝㈱において、共同製作や配給した作品のうち、「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」が大ヒット、「キングダム 大将軍の帰還」「ラストマイル」「変な家」「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」「グランメゾン・パリ」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」「劇場版ドクターX FINAL」「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」「映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記」「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」「スオミの話をしよう」「ファーストキス1ST KISS」がヒットいたしました。また、東宝東和㈱において配給した「怪盗グルーのミニオン超変身」もヒットいたしました。前連結会計年度中に公開された「劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦」も高稼働となりました。その他、「ゴジラ-1.0」の国内外における配信権収入やテレビ放映権収入が業績に寄与いたしました。これらの結果、映画営業事業の営業収入は55,958百万円(前年度比20.3%増)、営業利益は22,088百万円(同23.3%増)となりました。なお、上記営業収入の主な内訳として、映画館への配給が34,176百万円(前年度比1.6%増)、劇場用映画の国内配信が3,524百万円(同164.3%増)となりました。

 映画興行事業では、TOHOシネマズ㈱等において、上記配給作品の他、「はたらく細胞」「インサイド・ヘッド2」「モアナと伝説の海2」等の話題作を上映いたしました。当連結会計年度における映画館入場者数は38,399千人と前年度比6.1%の減少となりました。これらの結果、映画興行事業の営業収入は75,633百万円(前年度比3.6%減)、営業利益は9,772百万円(同11.8%減)となりました。当連結会計年度中の劇場の異動につきましては、2025年1月12日に関西共栄興行㈱が島根県松江市「松江東宝5」(5スクリーン)を閉館いたしました。これにより、当企業集団の経営するスクリーン数は5スクリーン減の全国で717スクリーン(共同経営56スクリーンを含む)となっております。

 映像事業では、東宝㈱において、「呪術廻戦」「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー!!」「SPY×FAMILY」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」「怪獣8号」等、製作出資いたしましたTOHO animation作品の国内外の配信・商品化権収入に加え、各種配分金収入が業績に大きく貢献いたしました。パッケージ事業では「ゴジラ-1.0」が好調なセールスとなった他、TOHO animation作品の「劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦」「葬送のフリーレン」「ウマ娘 プリティーダービー」等の販売が伸長いたしました。出版・商品事業では、劇場用パンフレット、キャラクターグッズにおいて「劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦」「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」をはじめとする当社配給作品の販売が好調に推移いたしました。また、「ハイキュー!!」「呪術廻戦」をはじめとするTOHO animation作品や生誕70周年を迎えた「ゴジラ」を中心とする東宝怪獣キャラクターのキャラクターグッズ販売が大きく伸長し営業収入に寄与いたしました。ゲーム事業では、「呪術廻戦 ファントムパレード」グローバル版の全世界配信を開始いたしました。㈱東宝ステラでは、ECサイトでの販売が好調に推移いたしました。TOHOスタジオ㈱では、制作及びスタジオ事業の一体運営を図り、堅調に稼働いたしました。㈱東宝映像美術及び東宝舞台㈱では、原価管理に努めながら、映画やTV・ライブイベント等での舞台製作・美術製作やテーマパークにおける展示物の製作業務、メンテナンス業務等を受注いたしました。これらの結果、映像事業の営業収入は77,661百万円(前年度比14.5%増)、営業利益は18,946百万円(同20.5%増)となりました。なお、上記営業収入の主な内訳として、アニメコンテンツの利用が33,881百万円(前年度比16.1%増)、パッケージの販売が6,741百万円(同5.0%減)、映像作品等に係る美術製作が9,784百万円(同6.7%増)となりました。

 以上の結果、映画事業全体では、営業収入は209,253百万円(前年度比8.5%増)、営業利益は50,807百万円(同13.6%増)となりました。

 

演劇事業

演劇事業では、東宝㈱の帝国劇場におきまして、「帝国劇場 クロージングラインナップ」として「舞台『千と千尋の神隠し』」「Endless SHOCK(Endless SHOCK/ Endless SHOCK Eternal)」「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」「モーツァルト!」「DREAM BOYS」「Endless SHOCK」「レ・ミゼラブル」「CONCERT THE BEST New HISTORY COMING」を上演し全席完売となりました。なお、帝国劇場は2025年2月28日をもって予定の公演をすべて終了し、再開発のために一時休館することとなりました。シアタークリエにおきましては「ファンレター」「Next to Normal」が満席となった他、「骨と軽蔑」「町田くんの世界」「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」「ライムライト」「VOICARION XVⅢ~Mr.Prisoner~」「tick, tick...BOOM!」「VOICARION XIX ~スプーンの盾~」等を上演いたしました。また、「舞台『千と千尋の神隠し』」「モーツァルト!」「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」等の社外公演を展開し、「舞台『千と千尋の神隠し』」はロンドン・コロシアムでのロングラン公演も大盛況となりました。その他、「CONCERT THE BEST New HISTORY COMING」のライブ配信及びライブビューイングや「Endless SHOCK」のライブビューイングなどを実施いたしました。東宝芸能㈱では、所属俳優がCM出演等で堅調に推移いたしました。

以上の結果、演劇事業の営業収入は22,890百万円(前年度比13.6%増)、営業利益は4,129百万円(同32.6%増)となりました。

 

不動産事業

不動産賃貸事業では、前連結会計年度末に㈱東京楽天地を連結子会社としており、当連結会計年度より経営成績に含んでおります。賃貸用不動産の空室率は、当連結会計年度末において0.9%となりました。再開発物件や新規に取得した物件の寄与がありましたが、建設工事費の高騰や大規模修繕費など一時的な費用の増加もあったことから、不動産賃貸事業の営業収入は37,949百万円(前年度比29.1%増)、営業利益は10,740百万円(同7.3%減)となりました。

 道路事業では、公共投資が底堅く推移しましたが、慢性的な建設技能者の不足や建設業界にも適用された「働き方改革関連法」への対応が喫緊の課題となる等、依然として予断を許さない状況が続きました。このような状況の中、スバル興業㈱と同社の連結子会社は、一般競争入札における総合評価落札方式への対応強化を図り各種工事の受注に努めましたが、大型の工事案件の受注が前期と比べ減少いたしました。その結果、道路事業の営業収入は30,274百万円(前年度比3.5%増)、営業利益は4,805百万円(同1.9%減)となりました。なお、営業収入の主な内訳は、道路の維持管理・清掃等28,056百万円(前年度比5.4%増)であり、またその他の収益980百万円(同19.7%増)が含まれております。

 不動産保守・管理事業では、東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱において、原材料価格の高騰や人手不足が継続する中、新規受注や品質向上に取り組むとともに請負金額の改定や業務の効率化等に努めました。その結果、営業収入は11,430百万円(前年度比8.8%増)、営業利益は1,280百万円(同14.2%増)となりました。

 以上の結果、不動産事業全体では、営業収入は79,653百万円(前年度比15.2%増)、営業利益は16,826百万円(同4.4%減)となりました。

 

その他事業

東宝共榮企業㈱の「東宝調布スポーツパーク」やTOHOリテール㈱の劇場売店等において、積極的な営業活動に努めました。その結果、その他事業の営業収入は1,372百万円(前年度比9.2%増)、営業利益は162百万円(同6.8%減)となりました。

 

(財政状態の概況)

当連結会計年度末における財政状態は、前連結会計年度末と比較して、総資産は37,241百万円増加し、653,068百万円となりました。これは主に、現先短期貸付金で20,004百万円の減少がありましたが、受取手形、売掛金及び契約資産で13,905百万円、棚卸資産で7,937百万円、土地で20,916百万円、のれんで16,119百万円の増加があったこと等によるものです。

負債では前連結会計年度末から27,181百万円増加し、158,253百万円となりました。これは主に、未払金で11,877百万円、繰延税金負債で6,359百万円の増加があったこと等によるものです。

純資産は前連結会計年度末と比較して10,059百万円増加し、494,815百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益43,357百万円の計上及び剰余金の配当17,212百万円による利益剰余金26,145百万円の増加の他に、自己株式が22,203百万円の増加、その他有価証券評価差額金で10,561百万円の増加、為替換算調整勘定で4,399百万円の増加、非支配株主持分で9,439百万円の減少があったこと等によるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,815百万円減少し、76,608百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
  当連結会計年度における営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益が66,065百万円、減価償却費が14,363百万円ありましたが、仕入債務の減少が5,842百万円、法人税等の支払額が21,763百万円あったこと等により、51,617百万円の資金の増加(前年度比8,267百万円の増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
  当連結会計年度における投資活動による資金は、有価証券の売却による収入が55,210百万円ありましたが、有価証券の取得による支出が16,988百万円、有形固定資産の取得による支出が32,532百万円、子会社株式の取得による支出が12,445百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が10,685百万円あったこと等により、18,465百万円の資金の減少(前年度比44,241百万円の増加)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
  当連結会計年度における財務活動による資金は、自己株式の取得による支出が20,060百万円、配当金の支払額が17,188百万円あったこと等により、39,298百万円の資金の減少(前年度比27,667百万円の減少)となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

当企業集団の事業について生産実績を定義することが困難なため「生産の状況」は記載しておりません。

 

a. 受注実績

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前年同期比
(%)

受注残高
(百万円)

前年同期比
(%)

映画事業

3,953

△7.5

420

39.8

演劇事業

不動産事業

27,942

△6.2

7,393

△1.5

その他事業

合計

31,896

△6.3

7,813

0.1

 

(注) 映画事業に含まれる映像事業の内テーマパーク関連事業及び不動産事業に含まれる道路事業における受注実績

を記載しております。

 

 

b. 販売実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

(百万円)

前年同期比(%)

映画事業

209,253

8.5

演劇事業

22,890

13.6

不動産事業

79,653

15.2

その他事業

1,372

9.2

合計

313,171

10.5

 

(注) 当企業集団の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、重要性の

   ある相手先がないため記載を省略しております。

   映画事業、演劇事業及びその他事業の販売の相手先は主に不特定の個人であり、不動産事業についても総

   販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。

 

 

(2) 経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)  経営成績の分析

当連結会計年度は、「中期経営計画 2025」の最終年度にあたり、長期ビジョンで掲げた成長戦略のキーワードである ①企画&IP、②アニメーション、③デジタル、④海外 を軸に各事業を推進してまいりました。当連結会計年度における当社グループの経営成績は、主力の映画事業において、「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」や「キングダム 大将軍の帰還」等が大ヒットとなった他、収益性の高い自社企画・製作作品の貢献がありました。また、「ゴジラ-1.0」では、配信権をはじめとした各種利用が好調となり、業績に寄与いたしました。TOHOシネマズ㈱では、邦画興行が好調に推移し、当社グループ配給作品を中心に興行を牽引いたしました。TOHO animationレーベルでは、劇場用映画「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」の劇場公開が高稼働、「呪術廻戦」「ハイキュー!!」「僕のヒーローアカデミア」といった人気シリーズの配信・商品化権収入が国内外で好調であったことに加え、キャラクターグッズ販売が大きく伸長するなど、多面的な展開が順調に拡大し、成長ドライバーとしての成果をあげました。演劇事業では、帝国劇場において「帝国劇場 クロージングラインナップ」として上演した作品が連日完売となり、盛況に推移いたしました。また、ロンドン・コロシアムで上演した「舞台『千と千尋の神隠し』」は高い評価を受け、今後の海外戦略に自信を深めることができました。不動産事業では、前連結会計年度末に連結子会社となった㈱東京楽天地の保有物件や再開発物件の稼働もあり増収となりましたが、建設費やエネルギー価格の高騰により厳しい事業環境が続いております。

この結果、当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ29,823百万円増収313,171百万円、営業利益は、前連結会計年度と比べ5,432百万円増益64,684百万円となりました。映画、アニメ、演劇、不動産それぞれが業績に寄与し、数値目標である「営業利益の最高益(528億円)更新」を2年連続で達成するとともに、長期ビジョンの実現に向けた成長戦略に手応えを感じる結果となりました。

 

(a) 営業収入

当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ29,823百万円増収313,171百万円となりました。

(b) 営業原価、販売費及び一般管理費

当連結会計年度の営業原価は、前連結会計年度と比べ15,831百万円増加168,611百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ8,559百万円増加79,875百万円となりました。これは人件費が3,147百万円、広告宣伝費が1,835百万円、減価償却費が1,531百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。

(c) 営業利益

当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ5,432百万円増加64,684百万円となりました。その内訳は、「映画事業」で前連結会計年度と比べ6,097百万円増益50,807百万円、「演劇事業」で前連結会計年度と比べ1,014百万円増益4,129百万円、「不動産事業」で前連結会計年度と比べ783百万円減益16,826百万円、「その他事業」では前連結会計年度と比べ11百万円減益162百万円でした。

 

なお、上記事項を含む報告セグメントごとの詳細については、「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

(d) 営業外収益、営業外費用及び経常利益

当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度と比べ228百万円増加4,088百万円となりました。これは主として、持分法による投資利益が前連結会計年度に比べ176百万円減少しましたが、前連結会計年度と比べ受取配当金が417百万円増加したこと等によるものであります。

また、営業外費用は、前連結会計年度と比べ4,230百万円増加4,317百万円となりました。これは主として、当連結会計年度に持分法による投資損失を4,210百万円計上したこと等によるものであります。

この結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度と比べ1,430百万円増加64,455百万円となりました。

(e) 特別利益、特別損失

当連結会計年度の特別利益は、投資有価証券売却益が前連結会計年度と比べて2,816百万円増加しましたが、前連結会計年度に㈱東京楽天地の株式を公開買付けにより取得し連結子会社化したことに伴う段階取得に係る差益2,281百万円、オーエス㈱の普通株式について阪急阪神ホールディングス㈱による公開買付けに応募し売却したことに伴う関係会社株式売却益1,866百万円等を計上したことにより、前連結会計年度と比べて922百万円減少3,475百万円となりました。

特別損失は、前連結会計年度と比べ1,444百万円増加1,865百万円となりました。これは主として、減損損失が前連結会計年度と比べ1,318百万円増加したこと等によるものであります。

(f) 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税23,024百万円、法人税等調整額△1,773百万円、非支配株主に帰属する当期純利益1,458百万円を計上し、前連結会計年度と比べ1,926百万円減少43,357百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の259.51円から254.75円に減少しました。

 
2)  財政状態の分析
(a) 資産

当連結会計年度末の総資産は、GKIDS, INC.の連結子会社化に伴い31,865百万円の増加があったこと等により、前連結会計年度末と比べ37,241百万円増加して653,068百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末と比べ6,452百万円減少して202,050百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ現先短期貸付金は20,004百万円減少し14,995百万円、受取手形、売掛金及び契約資産は13,905百万円増加し55,981百万円、棚卸資産は7,937百万円増加し21,067百万円となりました。

有形固定資産は、前連結会計年度末と比べ18,650百万円増加243,502百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ、土地は20,916百万円増加し125,456百万円、建設仮勘定は2,043百万円減少し3,694百万円となりました。

無形固定資産は、前連結会計年度末と比べ23,734百万円増加30,751百万円となりました。これは主に、のれんが連結会計年度末と比べ16,119百万円増加したこと等によるものであります。

投資その他の資産は、前連結会計年度末と比べ1,309百万円増加176,764百万円となりました。

(b) 負債

当連結会計年度末の流動負債及び固定負債合計額は、GKIDS, INC.の連結子会社化に伴い12,664百万円の増加があったこと等により、前連結会計年度末と比ベ27,181百万円増加158,253百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末と比べ21,800百万円増加90,941百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べて、未払金は11,877百万円増加して15,775百万円、買掛金は2,690百万円増加して35,455百万円となりました。

固定負債は、前連結会計年度末と比べて5,381百万円増加して67,311百万円となりました。これは主に、繰延税金負債が6,359百万円増加して27,887百万円、資産除去債務が1,294百万円増加して9,374百万円となったこと等によるものであります。

(c) 純資産

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて10,059百万円増加し、494,815百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益43,357百万円の計上及び剰余金の配当17,212百万円により前連結会計年度末と比べて利益剰余金が26,145百万円増加、自己株式が22,203百万円増加、その他有価証券評価差額金が10,561百万円増加したこと等によるものであります。なお、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末と比べ1.2ポイント減少し、73.3%となりました。

 

 

キャッシュ・フローの状況の分析・資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しているとおりであります。

(財務戦略の基本的な考え方)

当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な運転資金、設備投資等の資金は、自己資金を原則としておりましたが、今後、コンテンツ・IP関連の成長投資及び不動産事業の再開発等は必要に応じて機動的に金融機関からの借入及び社債発行等による資金調達を行ってまいります。また、グループ内の資金効率を向上させるべく、当社は、資金余剰が生じている子会社から借り入れる一方、資金需要のある子会社に対しては、貸付を行うことがあります。

(資金需要の内容及び経営資源の配分)

当社グループは、2025年に策定した「中期経営計画 2028」において成長投資を掲げており、2028年までの3年間の資金需要の主な内容は、成長投資1,200億円程度(コンテンツ・IP領域のM&Aや戦略出資等1,000億円、新規シネコン出店・既存館への設備投資/デジタル関連投資等200億円)、不動産関連投資として400億円程度の計1,600億円程度を見込んでおります。また、年間85円の配当を下限に配当性向35%以上かつ機動的な自己株式取得の実施により株主還元の充実に努めることとしております。

(資金調達)

当社グループでは、短期及び中期の投資資金としては自己資金を充てることを前提としつつ、必要に応じて銀行借入等金融機関からの調達を行います。また、政策保有株式や保有不動産の売却も検討、実施してまいります。一方、投資回収が長期にわたる大型M&Aに要する資金や大規模な設備投資資金については、案件の特性に応じて社債等の最適な手法により資金調達を行います。そのため、財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、高い信用格付の維持を目指して、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を取得しております。なお、当社グループは当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高76,608百万円に対し、有利子負債(リース債務含的)残高は3,014百万円と、自己資金での投資余力を高いレベルで維持しておりますが、今後の更なる成長投資に向け有利子負債の活用も行ってまいります。

 

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

経営成績に重要な影響を与える要因

「第2[事業の状況]3[事業等のリスク]」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。