第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは『愛される「ものがたり」を全世界に』を使命とし、東映を中心とする安定的なグループ経営のもと、映像作品をはじめとする良質なエンターテインメントを全世界に提供し続けて参ります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

 創業以来の組織変更を実施の上、グループの中長期的な成長戦略として『東映グループ中長期VISION「TOEI NEW WAVE 2033」』を2023年2月に策定し、推進しております。

 

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概要

◆使命:愛される「ものがたり」を全世界に

◆スローガン:

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◆10年後に目指す姿:世界で愛されるコンテンツを数多く創造発信している

◆成長戦略:実写、アニメ映像事業を強化・拡大し、グローバル展開を加速する

◆全体像:

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重点施策

 当社グループの強みは多様で魅力的な作品群を生み出す源泉となる企画製作力、そしてIPホルダーとして収益最大化を実現するマルチユース展開力と認識しております。その強みを活用した重点施策として、以下に取り組んでおります。

①映像事業収益の最大化

 企画製作力の強化、コンテンツのマルチユース促進、IPライフサイクルの長期化

②コンテンツのグローバル展開へのチャレンジ

 現地企業とのコラボレーション(ローカライズ作品やオリジナル作品の創出)、海外におけるファンの育成、グローバルメジャーと共同開発・世界展開、世界的ネットワークの構築

③映像事業強化のための人的投資の拡大

 企画製作力とマルチユース展開力を高める採用・配置/育成、エンゲージメントを高める評価・報酬/環境整備

④持続的なチャレンジと成長を支える経営基盤強化

 事業基盤強化に向けた投資戦略(製作設備関連投資、不動産関連投資)、コーポレート・ガバナンスの強化、サステナビリティへの取り組み、資本・財務戦略

 

<キャピタルアロケーション>

2033年に向けた東映グループでの成長投資(予定)

▼コンテンツ投資:          2,400億円

▼事業基盤強化に向けた投資:      600億円※

     ※〈内訳〉製作設備関連投資: 360億円

          不動産関連投資:  240億円

 また、株主・投資家をはじめとするあらゆるステークホルダーの皆様に当社をよりご理解いただき、適正に評価していただくため、更なる開示の充実にも取り組みます。引き続き、当社グループの企業価値ひいては全てのステークホルダー共同の利益の長期安定的な向上に努めてまいります。

 

(3)目標とする経営指標

 上記した重点施策の展開により、企画からマルチユース展開のサイクルのグローバル化を推進し、国内外でのトップライン拡大及びベースライン収益の向上を目指してまいります。

・売上構成比率における海外割合が50%

・営業利益 ベースラインとして250億~400億円

・ROE8%以上

 

(4)経営環境及び対処すべき課題

 地政学リスクの高まりによる資源価格の高騰や物価の上昇等、依然として世界経済の先行き不透明な状況が続いております。当社グループを取り巻く事業環境におきましても、コンテンツ産業は今後も世界的な成長が期待される一方、国内における少子高齢化やそれに伴う人口減少、消費者ニーズや伝達媒体の多様化等、厳しい情勢下にあります。こうした状況のなか、当社グループの経営課題として、以下を認識しております。

 

・オリジナルを中心とした新規IP創出力の増強によるIPポートフォリオの拡充

・IPのグローバル展開の加速と、国内・海外のIPマルチユース促進によるIPあたり収益の最大化

・持続的成長に向けたIPライフサイクルの長期化

 

 これらの経営課題の解決に向けて、「(2)中長期的な会社の経営戦略」に記載の通り、東映グループでは10年後に目指すべき姿を『東映グループ中長期VISION「TOEI NEW WAVE 2033」』として策定しました。本ビジョンの実現に向け、『愛される「ものがたり」を全世界に』の使命のもと、より積極的な事業展開を図り、総合エンターテインメント企業として成長を続けてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ全般

 当社グループは、「中長期ビジョンTOEI NEW WAVE2033」にも定めている以下のサステナビリティ基本方針を基に、社会課題の解決に貢献し、社会と当社グループの持続的な成長を目指すため、サステナビリティを経営の重要事項の一つとして取り組んでおります。

 

<サステナビリティ基本方針>

 当社グループは『愛される「ものがたり」を全世界に』を使命と掲げ、持続可能な社会の実現と当社グループの中長期的な企業価値向上を不可分一体の目標と捉え、重要課題(マテリアリティ)を特定し、取り組んでまいります。

 

①ガバナンス

<サステナビリティ推進体制>

 当社グループは、2022年12月にサステナビリティに関わるグループ全体の管理体系の構築と、サステナビリティ対応力の持続的向上を目的として、環境・社会に関わるサステナビリティ委員会と、ガバナンスに関わる内部統制委員会、リスクマネジメント委員会、コンプライアンス委員会、ハラスメント委員会の4つの委員会を設置しております。サステナビリティ委員会の下部組織には3つの分科会(人的資本経営分科会、D&I推進分科会、TCFD対応分科会)を設置し、具体的な課題の設定と取組みを行っております。このサステナビリティ委員会での議論の結果は、取締役会での具体的な施策の意思決定に反映されております。

 また、2025年1月にサステナビリティ推進に関する企画・統括を担う専門部署として、代表取締役直轄機関の経営戦略部にサステナビリティ推進室を新設致しました。サステナビリティ委員会の事務局機能を担い、サステナビリティ委員会や各分科会の開催に当たる調整を行います。サステナビリティ推進室の統括の下で、当社グループにおけるサステナビリティ戦略の高度化及び取り組みの強化を図ってまいります。

 

<サステナビリティ推進体制図>

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<各委員会の役割・構成・開催頻度>

種別

組織体

役割

構成

開催頻度

環境・社会

サステナビリティ委員会

持続可能な環境・社会の実現と、当社グループの持続的成長のための環境・社会課題への取り組みについて審議し、取締役会に提言を行う

最高責任者:東映㈱取締役社長

委員長:東映㈱専務取締役

副委員長:東映㈱上席執行役員1名

常任委員:東映㈱上席執行役員2名

担当委員:東映㈱社内取締役2名

東映㈱上席執行役員7名

東映㈱執行役員2名

2回/年

ガバナンス

内部統制委員会

会社法及び金融商品取引法(証券取引法)の求める内部統制環境の構築・維持運営・改善を図る

最高責任者:東映㈱取締役社長

委員長:東映㈱専務取締役

副委員長:東映㈱上席執行役員1名

常任委員:東映㈱上席執行役員2名

担当委員:東映㈱社内取締役2名

東映㈱上席執行役員7名

東映㈱執行役員2名

適宜開催

ガバナンス

リスクマネジメント委員会

当社グループにおけるサステナビリティ課題等全てのリスクを監視し可能な限り最適な方法を検討し対処する

最高責任者:東映㈱取締役社長

委員長:東映㈱専務取締役

副委員長:東映㈱上席執行役員1名

常任委員:東映㈱上席執行役員2名

担当委員:東映㈱社内取締役2名

東映㈱上席執行役員7名

東映㈱執行役員2名

2回/年

ガバナンス

コンプライアンス委員会

コンプライアンスに関する教育、研修等の計画の実施、担当委員からの報告の聴取及び検討、法令等違反行為に関する取締役社長への報告を行う

最高責任者:東映㈱取締役社長

委員長:東映㈱専務取締役

副委員長:東映㈱上席執行役員1名

常任委員:東映㈱上席執行役員2名

担当委員:東映㈱社内取締役2名

東映㈱上席執行役員7名

東映㈱執行役員2名

適宜開催

ガバナンス

ハラスメント委員会

人権侵害などを含む、各種ハラスメントの相談・調査・判断、被害者の救済、再発防止に努める

最高責任者:東映㈱取締役社長

委員長:東映㈱専務取締役

副委員長:東映㈱上席執行役員1名

委員:東映㈱上席執行役員1名

部門担当部長・マネージャー

4名

適宜開催

 

<第102期 サステナビリティに関する会議の審議状況>

開催日

組織体

サステナビリティに関連する主な議題

2024年6月18日

取締役会

・第102期リスクマネジメント計画

2024年10月22日

取締役会

・長時間労働への対応状況

・フリーランス新法への対応状況

2025年1月22日

取締役会

・マテリアリティおよび価値創造プロセスの策定

 

開催日

組織体

主な議題

2024年5月28日

第4回サステナビリティ委員会

・第101期温室効果ガス排出量データ等の報告、排出量削減に向けた取組予定の報告

・人材育成方針・社内環境整備方針の策定

・D&Iプロジェクトの活動状況の最終報告

2024年12月24日

第5回サステナビリティ委員会

・マテリアリティ及び価値創造プロセスの策定

・サステナビリティ推進室の立ち上げ

②戦略

 『愛される「ものがたり」を全世界に』という当社グループの使命のもと、「③リスク管理 イ.サステナビリティ関連リスク及び機会の識別・評価の過程について」に記載の特定プロセスを経て、「中長期ビジョンTOEI NEW WAVE2033」の実現に向けた6つのマテリアリティを2025年1月に策定致しました。社会課題の解決と企業価値向上の両立を経営の根幹に据え、目指す姿の実現に向けて、マテリアリティに対する重点施策を経営計画等に反映し、取り組みを進めてまいります。

 

<東映グループで取り組むマテリアリティ(重要課題)>

1.愛される「ものがたり」をつくり、届け続ける

2.クリエイティビティを発揮するための人的投資

3.グローバル展開を目指したIP創出力の増強

4.国内外のパートナーとの連携強化

5.知的財産の保護と活用

6.サステナビリティ経営の高度化

 

<各マテリアリティ(重要課題)における主なリスクと機会>

マテリアリティ(重要課題)

主なリスク

主な機会

1.愛される「ものがたり」をつくり、届け続ける

・作品本数増加に伴う労働時間の増加による、人件費の増加、従業員エンゲージメントの低下 など

・安定した作品本数を維持することで、売上高の増加、顧客の獲得、顧客満足度の向上 など

2.クリエイティビティを発揮するための人的投資

・労働環境が改善しないことによる、従業員エンゲージメントの低下

・差別・偏見・ハラスメントなどを放置することによる、企業イメージの棄損、顧客の離反、従業員エンゲージメントの低下

・社内やサプライチェーン上の労働環境・人権問題やコンプライアンス違反による、配給・配信の停止や商品の回収による、社会的評価の低下、売上高の低下

・人材の社外流出や確保困難 など

・対話を行い、適切な労働環境へ改善することによる、従業員エンゲージメントの向上

・人材育成・キャリア開発を行うことによる、生産性の向上

・D&I推進経営を行うことによる、競争力の向上、イノベーションの促進、企業イメージの向上、リスク管理能力の向上

・多様な人材を受け入れることによる、人材の確保の容易化 など

3.グローバル展開を目指したIP創出力の増強

・撮影所の拡充や新規機材導入等の投資による事業費の増加 など

・DX技術の活用による、撮影費や人件費の減少によるコスト削減

・映像技術の先進企業としてのブランド価値の創出 など

4.国内外のパートナーとの連携強化

・取引先との連携不足による、国内外での配給・配信本数の減少による新たな価値の提供機会の喪失、売上高の低下 など

・国内外の取引先と連携を強化することで、安定した配給・配信網・物流網の確保、商品やサービスの販売機会の拡大、売上高の増加 など

5.知的財産の保護と活用

・知的財産権の侵害による、企業イメージの棄損、売上高の低下、ブランド価値の低下

・映像原版を適切な環境で保管しないことによる、映像資産の喪失

・映像原版をデジタル化することによる、事業費の増加

・マルチユース展開(二次利用・三次利用)の遅れによる、商品やサービスを通じた新たな価値の提供機会の喪失 など

・知的財産権保護教育による、侵害リスクの低下、従業員意識の向上

・映像原版をデジタル化することで、半永久的に映像資産を次世代に残す

・適切なタイミングでマルチユース展開を行うことによる、商品やサービスの販売機会の拡大、売上高の増加 など

 

 

マテリアリティ(重要課題)

主なリスク

主な機会

6.サステナビリティ経営の高度化

・炭素税の導入による事業コストの増加

・CO2削減のための設備投資等支出の増加

・再生可能エネルギーへの転換による電力価格の変動

・気候変動がもたらす自然災害の増加により撮影所・映画館・保有不動産への物理的な損害

・気温上昇に伴う撮影所・映画館・保有不動産での空調使用量の増加

・気候変動がもたらす自然災害の増加により、映画館の休業やイベント休止等に伴う来場者数の減少、売上高の低下

・サイバー攻撃や従業員等の故意・過失による情報漏洩により、企業イメージの棄損、取引先・顧客からの信頼性の低下 など

・省エネや廃棄物削減、リサイクル、エネルギー供給源の見直し(再エネの活用)によるコストの削減

・バーチャルプロダクション・AI等DX技術の活用によるCO2排出量や廃棄物の削減

・情報セキュリティ強化による、取引先・顧客からの信頼性の向上

・情報セキュリティ教育による、情報漏洩リスクの低下、従業員意識の向上 など

 

③リスク管理

イ.サステナビリティ関連リスク及び機会の識別・評価の過程について

 当社グループに影響を及ぼす可能性のあるサステナビリティ関連課題の識別、評価は、マテリアリティ(重要課題)を特定する過程で実施をしております。国際的なガイドラインを基に、自社の財務に与える影響及び社会や環境に与える影響を鑑みて特定致しました。以下、マテリアリティ(重要課題)の特定プロセスを記載いたします。

 

<マテリアリティ(重要課題)の特定プロセス>

「マテリアリティ(重要課題)」特定プロセス

サステナビリティ課題の抽出及びロングリストへの絞り込み

SASBスタンダードなどの国際的なガイドラインや環境・社会・経済に対する影響が大きい課題から抽出した数百のテーマを、企業としての実現の是非や重複の調整などの手順で約200の課題(ロングリスト)に絞り込みました。

ロングリストからショートリストへの絞り込み

情報通信業(エンターテインメント業)の抱える問題や同業他社のマテリアリティ等を参考に、当社グループの業種においてグローバルに求められる評価基準も加味し、35の課題(ショートリスト)に絞り込みました。

重要性評価による重要課題の特定

ショートリストから、社外取締役を含む取締役にインタビューやアンケートを実施し、その結果から抽出した課題の内、外部の有識者(証券代行系コンサルティング会社)を交えながら社会的な側面及び事業的な側面でインパクトの大きな課題を特定しました。

 

マテリアリティの特定にあたり、取締役は十分なスキルを保持していると考えております。取締役のスキルマトリックスを以下に記載しておりますので、ご確認ください。

 

<社内及び社外取締役のスキルマトリックス>

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ロ.サステナビリティ関連リスク及び機会の管理体制について

 当社グループでは、企業価値毀損に繋がる、事業の持続性に影響を及ぼす、組織目標の達成を阻害する事象・要因のうち、組織横断的な対応が必要となるものを企業経営に係るリスクと捉え、リスクマネジメント規程を定め、確実に対応するためのマネジメントシステムを構築しております。

 経営管理本部担当取締役が委員長となり、各部門を統括する執行役員以上の役員が委員であるリスクマネジメント委員会では、リスク対応の優先順位づけなど、サステナビリティ関連リスクも全て含んだ全社的リスクマネジメントを実施しております。また、リスクアセスメントの過程でリスクから派生する機会も同時に識別し、評価及び管理しております。識別された機会は、事業戦略策定プロセスにおいて検討され、新たな事業機会の創出や企業価値向上に繋がるよう活用されています。

 詳細な管理体制図及び重要リスクの選別方法については「3.事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標及び目標

 当社グループは、各マテリアリティ(重要課題)において、「中長期ビジョンTOEI NEW WAVE2033」と連動する形で、以下の取組みテーマを設定致しました。具体的な指標及び目標につきまして、気候関連は「(2)気候変動 ④指標及び目標」、人的資本関連は「(3)人的資本 ④指標及び目標」に記載をしております。

その他のマテリアリティ(重要課題)に関する具体的な指標や目標につきましては、現在検討をしており、順次準備を進めてまいります。

 

マテリアリティ(重要課題)

取組みテーマ

1.愛される「ものがたり」をつくり、届け続ける

・質の高い作品の制作・提供を通して、社会に貢献する

2.クリエイティビティを発揮するための人的投資

・人権の尊重

・戦略的な採用と配置

・ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進と職場環境の整備

・「個」の強化

3.グローバル展開を目指したIP創出力の増強

・東京撮影所・京都撮影所・アニメーション製作スタジオ等の拡充

・先端映像テクノロジー、撮影設備技術への投資

4.国内外のパートナーとの連携強化

・海外ネットワークの構築

・イベント、マーチャンダイジングへの展開促進

・データドリブン/マーケティングの強化

5.知的財産の保護と活用

・著作権、商標権の保護に関する取組みの強化

・従業員に対する知的財産保護教育の徹底

・映像原版の保全

・国内外のIPマルチユース(二次利用・三次利用)の促進

6.サステナビリティ経営の高度化

・情報漏洩を防ぐためのセキュリティの強化

・脱炭素に向けた省エネ・再エネを活用したCO2削減

・プラスチック製品等の廃棄物削減

・節水など水資源の保全への取組みの強化

 

 

(2)気候変動

 当社グループは、気候変動が重要な経営課題と認識しており、マテリアリティ(重要課題)「6.サステナビリティ経営の高度化」を設定しております。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づいて、情報開示を行います。

 映画・アニメ制作、スタジオ運営、劇場興行、知的財産ビジネスにおいて、気候変動はリスクだけでなく、新たな事業機会を生み出す機会となり得ます。当社グループは、「脱炭素社会への適応」「持続可能なコンテンツ制作」「省エネルギー・再生可能エネルギーの活用」を重要戦略とし、気候変動リスクの低減と事業競争力の強化を同時に推進致します。

 

①ガバナンス

 サステナビリティ委員会の下部組織として、TCFD対応分科会を設置し、再生可能エネルギーを活用した温室効果ガスの排出量の削減や、プラスチック製品等の廃棄物の削減など環境負荷の軽減を図る具体的な取組みを行っております。

 気候変動に関わる方針及び戦略については、その重要性に応じ、サステナビリティ委員会において議論された後、重要事項については個別に取締役会に付議・報告され、全体の活動については、定期的な取締役会報告を通じて取締役会による監督が適切に図られる体制となっております。

 

<気候変動対策に関わる組織体とその役割>

組織体

役割

取締役会

サステナビリティ戦略の方針決定、重要リスクのモニタリング

サステナビリティ委員会

気候変動対応戦略の策定、指標・目標設定、KPIの管理

TCFD対応分科会

脱炭素戦略の推進、スタジオ・劇場運営におけるエネルギー管理、制作現場の環境負荷低減施策を統括、各種指標及び目標の検討及び策定

リスクマネジメント委員会

気候変動に関する全てのリスクの監視、対応

 

②戦略

 当社グループでは、劇場運営を始めとして、スタジオ運営や不動産事業活動など電力を主として、エネルギーを消費するサービス提供形態となっております。事業活動に必要不可欠なエネルギーをいかに効率よく活用し、削減するのか再生可能エネルギーの活用も含めて、引き続き、検討してまいります。また、紙製品やプラスチック製品、食品ロス等の廃棄物も気候変動への影響は甚大です。廃棄物の削減についても、積極的な取組みを行ってまいります。

 以下、各セグメントにおける、環境課題解決に向けた具体的な取り組みを実施しております。

 

<セグメント別の具体的な取組み>

セグメント

具体的な取組み

全社

・排出量調査システムを活用し、調査を実施

東映㈱及び東映アニメーション㈱事業所

・「ペーパーレス会議」「稟議書の電子化」「電子契約書」の推進

・電力に関して100%再生可能エネルギーを利用(東映アニメ㈱中野オフィスのみ)

・LED照明への順次切替

映画・アニメ制作スタジオ部門

・環境に配慮した大泉アニメーションスタジオ(建築外装・建築設備におけるサステナブルデザインの採用)

・デジタル技術の導入(AI活用・バーチャルプロダクション)

・㈱伊藤園と協同による東映東京撮影所、東映京都撮影所における使用済みペットボトルの水平リサイクル

・LED照明への順次切替

催事部門

・各種販促物のパッケージを簡素化

・チラシやフライヤーなどの印刷物を削減し、情報発信をWEB媒体へと移行することで、紙資源の使用量を抑制

・「仮面ライダーストア」にて、繰り返し使用可能な素材を用いたショッパーを採用

・催事・展覧会における紙チケットからデジタルチケットへの移行を推進

・催事・展覧会で使用する展示パネルは、木工パネルの使用を極力控え、再利用可能なシステムパネルを活用することで、木工廃材を削減

不動産部門

・保有物件のLED照明への順次切替

・保有物件の空調機器を始めとした設備の順次更新

興行部門

・紙のチケットを発行しないスマート入場システムの導入

・JBPA(日本バイオプラスチック協会)認証のバイオマスストローへの変更

・LED照明への順次切替

ホテル部門

・地産地消や食品ロス等の廃棄物の削減

・各種アメニティーを共有部に設置し、プラスチック製品の廃棄物の削減

・トイレットペーパーの使い切りを推奨

・不要な時間帯のエネルギー(電気/重油)使用の節減

・タブレットを用いた受付業務のデジタル化によるペーパーレス化

・客室シャワーヘッドを節水型に順次変更

・連泊エコプランを導入(連泊時のリネン類の交換や客室清掃を必要最小限にし、洗剤や水の使用量を削減)

・LED照明への順次切替

 

③リスク管理

 気候変動への取組みを推進するTCFD対応分科会では、当社グループ全体のCO2排出量の算定、気候変動に関する課題への対応策の検討や具体的な指標及び目標の設定及び継続したモニタリングを年1回実施しております。

 詳細なリスク及び機会の特定につきましては、環境省が推奨するシナリオ分析を用いて識別、評価及び管理を行います。気候変動における将来的な事業コストへの影響を予測し、対応策を検討するために第103期中の実施を予定しております。

 

④指標と目標

 当社グループにおいて、CO2排出量を削減していくことは、脱炭素社会の実現に向けた責務であると認識しております。第100期より現状を把握するため、連結子会社までを対象として温室効果ガスの排出量の調査を年1回実施しております。

 削減活動の推進を行い、2030年に第100期実績対比でCO2排出量▲46%の削減目標を設定し、再生可能エネルギーを使用した電力への切替等、対応策を計画、検討しております。2050年にカーボンニュートラルの達成を目指すべく、グループ一丸となって気候変動対策への取組みを進めてまいります。

 

<CO2排出量の推移>

CO2排出量

2022年度実績
(第100期)

2023年度実績
(第101期)

2024年度実績
(第102期)

2030年度目標
(第108期)

2050年度目標
(第128期)

Scope1

2,459

2,963

3,501

0

Scope2

18,929

17,202

16,589

0

合計値

21,388

20,165

20,090

11,550

0

第100期比

0%

▲5.7%

▲6.0%

▲46.0%

▲100%

※単位:t-CO2

※連結対象会社の実績合計値です。

※マーケット基準にて算定をしております。

※当社グループの事業年度(4月1日~翌年3月末)を基準に計測を実施しております。

※使用電力量等の一部には、建物オーナー側において購入・契約している電力に含まれる再生可能エネルギー由来の電力量等が含まれる可能性があります。当社としては区分可能な範囲で開示に努めておりますが、現時点においては十分な情報の入手が困難な状況でございます。

 

<Scope1及びScope2の算定プロセス>

 Scope1は直接排出(ガソリン、灯油、重油、ガス)、Scope2は間接排出(電気)であり、それぞれの使用量に対して最も適切と考えられる排出原単位を乗じて算定しています。

 排出原単位は、環境省が公表している「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」ならびに「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)」を利用しています。

 

(3)人的資本

 当社グループは、映画・アニメ・TV番組の制作・配給および知的財産ビジネスを中心としたエンターテインメント企業として、クリエイティブな人材の育成と多様な人材が活躍できる環境の整備が、持続的成長の鍵であると認識しております。

 マテリアリティ(重要課題)「2.クリエイティビティを発揮するための人的投資」を設定し、人的資本への投資を強化し、従業員の能力開発・働きがいの向上・ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進し、クリエイティブ産業としての社会的責任を果たしてまいります。

 

①ガバナンス

 サステナビリティ委員会の下部組織として、人的資本経営分科会及びD&I推進分科会を設置し、ダイバーシティ経営・健康経営の推進、人材の確保、育成、評価などの具体的な課題の設定と取組みを行っております。

 人的資本に関わる経営の方針や戦略、関連する制度については、その重要性に応じ、サステナビリティ委員会において議論された後、重要事項については個別に取締役会に付議・報告され、全体の活動については、定期的な取締役会報告を通じて取締役会による監督が適切に図られる体制となっております。

 

<人的資本経営に関わる組織体とその役割>

組織体

役割

取締役会

サステナビリティ戦略の方針決定、重要リスクのモニタリング

サステナビリティ委員会

人的資本経営戦略の策定、指標・目標設定、KPIの管理

人的資本経営分科会

人材育成プログラムの推進、社内環境整備の推進

D&I推進分科会

多様性の浸透活動の推進

リスクマネジメント委員会

人的資本に関する全てのリスクの監視、対応

コンプライアンス委員会

コンプライアンスに関する教育、研修等の計画の実施、担当委員からの報告の聴取及び検討、法令等違反行為に関する取締役社長への報告を行う

ハラスメント委員会

人権侵害などを含む、各種ハラスメントの相談・調査・判断、被害者の救済、再発防止に努める

 

②戦略

 コンテンツ産業である当社グループの持続的成長のために、すべての従業員が自発的に且つ最大限に能力を発揮できる環境を構築し、働くことに喜びを見出せる会社・組織像の実現が重要であると認識しております。従業員の多様性の尊重と個の成長を促すため、以下、2023年10月に、当社グループにおける「人材育成方針」及び「社内環境整備方針」を以下の通り策定いたしました。

 

<人材育成方針>

 メディア環境やニーズの変化へ柔軟に対応し、価値あるコンテンツを創り続けると同時に世界に届けるために個の成長を促す能力開発プログラムの拡充と挑戦機会の提供に努めてまいります。

 

<社内環境整備方針>

 ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進することにより当社グループで働くすべての人が最大限に能力を発揮できる環境を整え、ワークライフバランスの実現やハラスメント防止に努め、安心・安全な職場環境を構築することで人材が集まるグループを目指します。

 

 上記方針に基づいて、当社グループは、以下の4つの重点領域を定め、人的資本経営を推進し、従業員一人一人のエンゲージメント向上を図ることが企業の成長につながると認識しております。

 

イ.人権の尊重

 メディア業界においては、クリエイターや制作スタッフの労働環境の適正化と、ハラスメントの防止が極めて重要と認識しております。また制作現場を含めた全従業員および協力会社に対して、「東映グループ人権方針」を策定し、以下の取り組みを実施しております。これらの取り組みにより、制作現場の安全性と透明性を確保し、すべてのクリエイターが能力を発揮できる環境を整備します。

 

・ハラスメント防止規定の強化(匿名相談窓口の設置、社外監査の活用)

・ハラスメント防止やリスペクト研修の実施

・日本映画制作適正化機構のガイドラインへの対応

・制作現場における労働環境の適正化(過重労働防止のための勤務時間管理システムの導入)

・外部制作会社との契約基準の見直し(適正な契約内容の整備、公正な報酬体系の確立)

 

ロ.戦略的な採用と配置

 優秀な人材を確保し、そのパフォーマンスを最大限に引き出すための戦略的な採用と配置は、当社の競争力を強化し、長期的な成長を促進することができます。企業の成長を推進する人材を採用・登用するため、以下の施策を展開しております。

 

・新卒採用や通年採用等、採用の多チャンネル化による人材確保

・グローバル市場への展開を見据えた人材やプロデューサー等、プロフェッショナル人材採用の強化

・新人事制度の運用による、年次に関わらない登用・抜擢

・報酬・評価制度の見直し(成果主義の適正な運用と透明性の確保)

・グループ間人材交流促進による、グループ全体での戦略的配置

・部署間/事業所間の異動の促進による多様なキャリア経験蓄積

 

ハ.ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進と職場環境の整備

 クリエイターにとどまらず、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材が活躍できる組織づくりを目指し、D&I推進を経営戦略の中核に据え、さらに、長く活躍するための個人の健康づくりを支援するため、以下の取り組みを実施しております。

 これらの取り組みにより、当社で働くすべての人が最大限に能力発揮できる環境を整え、ワークライフバランスを実現し、働きやすい職場環境を構築することで従業員のエンゲージメントを向上させ、長期的な企業価値の向上を図ります。

 

・管理職における女性比率の向上

・障がい者雇用の促進(職場環境の整備、新卒採用におけるチャレンジ枠の設定、サテライトオフィスの導入)

・仕事と育児・介護・治療等の両立支援の推進

・労働時間の短縮に向けた取り組み

・フレックスタイム制・リモートワーク制度の拡充

・健康経営の推進(メンタルヘルスサポート、福利厚生の充実、「TOEI Walking Week」等イベントの開催)

 

<健康経営推進体制図>

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ニ.「個」の強化

 映画・アニメ・TV業界は、技術革新が急速に進む領域であり、人材の個の能力向上が必要不可欠です。当社グループでは、従業員の主体的な学びや成長を支援する制度や階層別研修等の能力開発支援、キャリア自律を支援する制度等の充実化を図っており、以下の施策を展開しております。

 社員一人ひとりのキャリア形成を支援し、積極的な能力開発を実施することで、業界をリードする人材を育成していきます。

 

・能力開発支援の拡充

研修

新入社員研修・

フォローアップ研修

入社前および入社後に、会社の業務内容、組織の理解、基本的な業務スキルを習得させるための研修

e-Learning

ビジネスに必要な知識を習得するため、会社がテーマを定め、課題の受講を命じる研修

職位別・等級別研修

各職位および等級に応じて、会社が期待する知識の習得を目的として実施する研修

自己学習支援

通信教育補助金

会社が指定する通信教育を修了し、優秀な成績を収めた場合に受講料を支給

自己学習補助金

適用対象者が各種学校やセミナー等の受講を希望し、会社の選考を経て承認された場合、受講料の一部を会社が支給

資格取得支援

奨励金

指定資格を取得し、会社に申請した場合、一時金として支給

検定料補助

該当部署の適用対象者が指示を受けて受験した場合の検定料を支給

資格手当

指定資格を取得した場合、毎月の給与に加算して支給

 

・主体的なキャリア形成を支援する「Toei Career Action Program」の導入

制度名称

内容

JobTry制度(申告異動制度)

様々な業務を経験する

東映マルチプレイヤー制度

所属する部署に籍を置きながら、他部署の業務に携わることを認める

キャリアチャレンジ制度(社内公募制度)

自己実現に向けて挑戦する機会を創出する

キャリアデザインシート

キャリアプラン設計やキャリア形成力を育成する

キャリア研修

 

・社内外の講師による講演を主軸とした「東映塾」の開催

・VIPO(映像産業振興機構)が運営するプロデューサー向け海外トレーニング研修の受講

 

③リスク管理

 当社グループでは、社員参加型の人材プラットフォームを活用した面談や、従業員のモチベーションを測るエンゲージメントサーベイを定期的に実施するなど、定性的・定量的に人材に関わる潜在的・表層的なリスクや課題を把握しております。その結果を基に指標及び目標の設定やモニタリングを実施し、職場環境の具体的な改善策に反映させるなど実行・管理しております。

 また、当社グループの事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権が尊重されなければならないことを当社グループの全ての役員・従業員が理解・認識し、サステナビリティリスクを識別・対処・回避するための方針・ガイドラインとして、2024年6月に「東映グループ人権方針」「東映グループ取引方針」を策定し、また、「東映コンプライアンス指針」を改定致しました。

 人権リスクへの迅速な対応に当たり、当社グループで働く役員、従業員(嘱託、契約者、アルバイト等の当社の業務に従事する者を含む。)、派遣社員、当社グループの取引先(フリーランスを含む。)が、職場や取引先、社外等で法律・社内規程等に違反する行為や反倫理的行為、またはその恐れのある行為を見たり聞いたり、感じたりしたときに報告・相談するための窓口として「東映グループホットライン」を設置しております。通報窓口は、当社グループから独立した外部の通報窓口の専門会社が担当しており、窓口で受付けた相談等の内容については、東映㈱の担当役員またはコンプライアンス委員会事務局へ報告されます。(ハラスメント事案については、コンプライアンス委員会事務局よりハラスメント委員会へ転送されます。)その後、事実調査等が行われ、問題が事実であった場合には是正措置がとられます。

 

④指標及び目標

 当社グループでは、「(3)人的資本 ②戦略」に記載の4つの重点領域に紐づく以下の各種環境指標や目標を設定し、継続したモニタリングを実施しております。人的資本投資を通じて、「中長期ビジョンTOEI NEW WAVE2033」の実現に向けた強固な組織基盤を構築し、持続的成長を支える企業文化を醸成してまいります。

 また一部を除き、当社、東映アニメーション㈱、㈱ティ・ジョイの3社での連結数値となります。その他グループ会社については、現在社内環境整備を行っており、順次開示に向けて準備を進めてまいります。

 

<人的資本経営に関わる指標及び目標>

指標

2023年実績
(第101期)

2024年実績
(第102期)

中長期目標

1.人権の尊重

ハラスメント研修受講人数

827名

1,007名

2028年:全従業員が受講

映適認定本数比率*1

100%

100%

申請作品は100%認定

2.戦略的な採用と配置

全労働者におけるキャリア採用者比率

※グローバル人材含む

49.6%

44.7%

50%程度を維持

グループ間交流人数*2

42名

55名

3.ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進と職場環境の整備

管理職における女性比率

20.8%

21.4%

2033年:30%

全労働者における男女間賃金格差

85.8%

87.0%

男性育児休業取得率

50%

43.7%

2030年:85%

4.「個」の強化

人材開発・研修の費用*3

※語学研修含む

46,080,260円

62,367,909円

エンゲージメントスコア*4

63.4

63.5

・年4回実施

・回答率80%以上

・スコア69

 

※上記の指標および目標は、東映㈱、東映アニメーション㈱、㈱ティジョイの3社連結数値。

※その他グループ会社については今後反映できるよう検討・準備を進める。

*1 実写映画対象につき当社(単体)数値。

*2 3社以外のグループ会社(東映ビデオ㈱、東映衛星放送㈱、等)含む。(グループ会社間は含まない)

*3 人的資本経営分科会を通して関連部署と取組み内容を改めて整理・精査し、今期より指標を変更。

*4 当社(単体)数値。社員が組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組める状態を数値化したもの。満点=100点。

 

<指標及び目標の算定基準>

指標

算定基準

ハラスメント研修受講人数

対象年度に受講した人数の合計値

映適認定本数比率

対象年度の申請作品に対し、認定された作品の比率

全労働者におけるキャリア採用者比率

対象年度末時点の全労働者数(契約社員、アルバイト、派遣社員も含む)における比率

グループ間交流人数

当社を起点とした対象年度末時点での出向者数および出向受け入れ者数の合計値

管理職における女性比率

対象年度末時点の管理職(等級M以上)における比率(グループ会社についてはM相当の等級)

全労働者における男女間賃金格差

対象年度末時点の全労働者(契約社員、アルバイト、派遣社員も含む)における格差

男性育児休業取得率

対象年度に子が誕生した従業員数における育児休業取得者数の比率

人材開発・研修の費用

能力開発支援の研修時間(東映塾、ハラスメント研修、海外展開トレーニングを含む)

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績又は財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして認識している事項には以下のようなものがあります。なお、当社グループのリスクのうち主なものを記載しており、現時点では予見できない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

 当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、前述の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載する方法などにより、その発生の回避及び発生時の適切な対応に向けて努力してまいる所存であります。

 文中の将来に関する内容については、当有価証券報告書提出日現在における判断に基づくものであります。

 

(1)リスクマネジメント推進体制

 当社グループでは、リスクマネジメントを企業価値の最大化と持続可能な事業運営における重要な経営テーマとして責任を持って取り組むこと、及びグループ全体のリスク管理状況の把握と向上を目的としたリスクマネジメントの統括機関である「リスクマネジメント委員会」を設置しております。

 当該委員会は代表取締役社長を最高責任者とし、リスクマネジメント担当役員及び各事業部門の責任者を委員としております。リスクマネジメント委員会は、当社グループを取り巻くリスクに関する情報の収集分析、リスクの対応方針及び目標の決定、グループ経営上重要なリスクの抽出・評価、定期的なリスク対応状況に関するモニタリングを行っております。

当社グループのリスクマネジメント体制図

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(2)リスクマネジメントプロセス

 当社グループでは、リスクマネジメントの管理体制が適切かつ健全な役割を果たすために、リスクマネジメントの管理体制及び方針のレビュー・見直しを毎年行っております。当社グループの事業に関するリスクの評価を行い、リスクの性質に基づいて「ハザードリスク」、「事業戦略リスク」、「ガバナンスリスク」の3つに区分した上で、優先的に対応すべきリスクを特定しております。各リスク項目における関係部署においてリスクの対応策を検討し、実施しております。

 なお、リスク統括部署はリスクへの対応支援及びモニタリングを実施し、定期的に実施状況や確認結果をリスクマネジメント委員会に報告します。リスクマネジメント委員会は報告に基づいて、体制の強化または改善等が必要な項目に対して審議し、意見交換を通じて取り組みを最善な方向性に調整しております。加えて、当社グループの経営に影響する可能性がある事項を適時に最高責任者の代表取締役社長及び取締役会に報告しております。

 

当社グループのリスクマネジメントプロセス

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(3)リスクの特定

 リスクの特定においては、以下のとおりに実施しております。

・リスクの識別

当社グループの事業戦略を分析すると共にそれぞれの事業部門と管理部門の責任者に対してインタビューを実施することによって、トップダウン・ボトムアップ両方のアプローチで当社グループにおける各リスクを識別。

・リスクの評価

識別されたリスクに対して、定量的かつ定性的に事業に及ぼす影響度と発生可能性を評価した後、既存の対応状況を評価。

・リスクヒートマップによる対応優先度の特定

上記2段階のリスク評価結果に基づいて、リスクヒートマップを作成し、特定されたリスクを「低」・「中」・「高」の3つのレベルに分け、「高」または「中」になるリスクを優先的に対応すべきリスクとして特定。

 最新のリスク評価の実施結果において、当社グループは40項目のリスクを識別し、「(4)当社グループにおける優先的に対応すべきリスク」に示す11個のリスク項目に分類し、対応策の検討及び実施を行っております。また、刻々と変化する事業環境に対応するため、モニタリングの結果や新たなリスクを識別した際には、リスク評価の見直しを行い、必要に応じて優先的に対応すべきリスクを更新しております。

 

(4)当社グループにおける優先的に対応すべきリスク

 当事業年度において優先的に対応すべきリスクと位置付けたもののうち、主なものを記載しておりますが、その他のリスクについても、それぞれ対応を進めております。

 また、下記のリスクは有価証券報告書提出日現在における当社グループが判断したもので、将来の業績や財政状態に与えうるリスクや不確実性は、これらに限定されるものではありません。

分類

リスク項目

対策優先度

ハザードリスク

① 災害リスク

② 感染症リスク

事業戦略リスク

③ 取引先管理に関するリスク

④ 風評リスク

⑤ 労働・安全衛生に関するリスク

⑥ 人材確保に係るリスク

⑦ 事業環境に関するリスク

ガバナンスリスク

⑧ 個人情報等の機密情報の取り扱いに関するリスク

⑨ 情報セキュリティリスク

⑩ 著作権等の知的財産権に関するリスク

⑪ コンプライアンス違反リスク

 

 

<ハザードリスク>

 

① 災害リスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループは映画劇場、テーマパーク、ホテル等多数の顧客等を収容可能な商業施設及び撮影所を含めた重要な作業施設において事業を行っております。地震、台風及び津波等の自然災害、火災や停電あるいは予期せぬ事故等が発生した場合は、顧客または当社グループの従業員の人的被害、施設及び設備の損壊等により、当社グループのサービス提供、事業運営に影響が生じ、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

対応策

当社グループは自然災害または人為的な災害の発生による被害を軽減するために、重要な事業の継続を図る体制及び計画を整備しております。また、顧客及び従業員の安全を確保するために、安否確認システムの導入、災害対応手順の文書化・周知及び定期的な訓練の実施、備蓄品の整備等の対策を講じています。

 

② 感染症リスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

感染症等の蔓延により、政府や地方自治体からの行動制限の要請、消費者行動の変容やビジネスモデルの変化の結果として、以下のような事象が発生し、当社グループの事業活動及び収益に影響を及ぼす可能性があります。

・感染の拡大や景気の後退等による商業施設の利用減少

・物価の高騰や撮影関係者の感染等による制作費用の増加

・不動産市況の低迷による不動産価値の低下

・従業員の感染による業務停滞の発生

 

対応策

当社グループは感染症等の拡大を防ぐために、業種別ガイドライン等に基づく適切な感染防止対策を徹底し、検温・消毒等による従業員・施設の衛生管理、リモートワークの導入等様々な感染拡大防止策を積極的に推進しております。

 

<事業戦略リスク>

 

③ 取引先管理に関するリスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループは個人事業主または中小事業者に映像制作等の関連業務を委託しております。それらの業務委託先が自社の財務状況等による運営が停止された場合は、当社グループの業務継続に支障が生じる可能性があります。加えて、それらの業務委託先との契約に不備があった場合、当社が提供するサービスや制作する作品の品質レベルが維持できなくなり、当社グループの社会的信用あるいはブランドイメージが毀損される可能性があります。

また、当社グループは国内外において多様な企業と取引を行っております。適切な契約条件での契約締結ができない場合は、当社グループにとって不利益な状況に陥り、事業活動及び収益に影響を及ぼす可能性があります。

 

対応策

当社グループは、公正な取引の実現と健全なパートナーシップの構築を築くため、業務委託先を含む取引先との関係において、選定管理体制の強化および契約内容の適正化に継続して取り組んでまいりました。また、これらの取り組みをより一層実効性のあるものとし、グループ全体で一貫した高い水準の管理体制を確立するため、「東映グループ取引方針」を策定しております。本方針に基づき、サプライチェーン全体のリスク低減と相互の持続的なパートナーシップの深化に努めてまいります。

 

 

 

④ 風評リスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループが事業展開を行う各種事業のサービス及び映像作品に関して、各種のソーシャルメディアを通じて、宣伝や交流等を目的とした積極的な情報発信をしております。当社グループの従業員による不適切な内容が投稿された場合は、当社グループの社会的信用及びブランドイメージが毀損される可能性があります。

また、当社グループの映像作品等の社外関係者による不祥事、または第三者による誹謗中傷が発生した場合は、当社グループまたは映像作品等が風評被害を受け、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

対応策

ソーシャルメディアにおける情報発信に関し、その内容を事前に確認・承認する管理体制を構築し、その実効性ある運用を徹底しております。また、風評被害の発生可能性を低減することを目的として、定期的な社内セミナーの開催や多角的な啓発活動を計画的に実施し、全従業員のソーシャルメディア・リテラシー及びコンプライアンス意識の向上を推進しております。加えて、万一風評被害が発生した際に、迅速かつ的確な対応を実行し事業への影響を最小限に抑制できるよう、社内における包括的な危機管理体制の構築および強化にも注力しております。

 

⑤ 労働・安全衛生に関するリスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

従業員の長時間労働は、健康障害や心身の不調につながる恐れがあり円滑な業務の遂行に支障をきたす可能性があるだけでなく、これに起因して労働災害等重篤な事故が発生すると、損害賠償等経済的な損失や、社会的信用の失墜を招く可能性があります。

 

対応策

当社グループは従業員の心身健康を守るために、長時間労働を抑制する働き方改革を推進しており、各部署における労務管理を徹底すると共にリモートワークの推進や休暇取得の奨励等の働きやすい職場環境を構築する対応策を積極的に講じています。加えて、定期的にエンゲージメントサーベイを実施し、長時間労働の発生状況等をモニタリングしております。また、労働安全衛生に関するリスクへの対応を強化することを一つの目的として、新たに「人権方針」を策定いたしました。本方針に基づき、従業員の人権尊重及び安全衛生水準の向上に取り組み、当該リスクの低減を図ってまいります。

 

⑥ 人材確保に係るリスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

少子高齢化の加速による労働人口の減少、あるいは当社グループが人材の多様性等を確保した良好な職場環境やリモートワーク等の従業員にとって柔軟な職場環境を整備できない場合は、人材獲得における競争上の優位性の確保できず、従業員の採用及び維持が難しくなり、採用コストを含めた人件費が増加し、または人員不足による業務停滞が発生する等、事業の継続に影響を与える可能性があります。

 

対応策

従業員の能力開発においては、専門人材の継続的な育成に注力しております。また、定期的にエンゲージメントサーベイを実施し、その結果を職場環境の具体的な改善策に反映させることで、従業員一人ひとりが働きがいを感じられる環境づくりを推進しています。これらに加え、従業員の自律的なキャリア形成を支援するため、各種制度の充実化も図っております。採用面では、ダイバーシティを重要な戦略と位置づけ、多様な視点や価値観を持つ人材を積極的に採用しております。さらに、事業戦略の実現に不可欠な人材を安定的に確保するため、採用チャネルの多様化を戦略的に進めております。

 

 

 

⑦ 事業環境に関するリスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループが事業展開を行う事業において、競争環境や事業環境の変化によって、以下のような事象が発生し、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

・関連する技術の研究や開発による費用の増加

・技術革新に対する対応や導入の遅れによる競争上の優位性の低下

・既存IPにおける原作終了や新たなIPの原作利用権の喪失による収益の低下

・劇場用映画の興行成績の予測が困難であることによる収益の低下

 

対応策

当社グループは2010年に映像制作におけるデジタル技術の実践を中心に研究を行うツークン研究所を立上げ、当社グループが制作した作品に映像技術の活用を継続的に取り組んできました。加えて、新たに運用を開始したバーチャルプロダクション技術を多様な作品に活用する取り組みを推進しております。

また、各作品の興行成績の予測には困難を伴いますが、可能な限りの厳密な興収予測を立て、動員力と完成度を重視した企画選定を徹底しております。加えて、幅広いチャンネルでの多様かつ良質なコンテンツの企画及び制作に努め、年間を通じてバランスの取れた興行収入を得られるような取り組みを推進しております。

 

<ガバナンスリスク>

 

⑧ 個人情報等の機密情報の取り扱いに関するリスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループでは、顧客等から得た個人情報を数多く保有しております。当社グループの従業員あるいは外部の業務委託先が保有する個人情報を適切に取り扱わず、個人情報の外部流出、あるいは不正利用が生じた場合は、当局から業務停止命令、罰金その他の処分を受ける可能性、顧客または関係企業から訴訟を提起される可能性や当社グループの社会的信用及びブランドイメージが毀損される可能性があります。

 

対応策

当社グループは保有する個人情報を適切に管理するために、個人情報の取り扱いに関するルール及びガイドラインの策定と運用の徹底に努めております。また、当社グループの従業員に対して、定期に個人情報の取り扱いに関する教育の実施と社内管理体制の整備を行い、細心の注意を払っております。

 

⑨ 情報セキュリティリスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループが事業展開を行う各種事業のサービス提供や業務遂行にあたって、様々な情報システム及びネットワークを活用しております。災害、事故または大規模なシステム障害によるシステムの停止、遅延、あるいは第三者によるサイバー攻撃または不正アクセス等が発生した場合は、当社グループが提供するサービスや業務の遂行が停止すると共に、当社グループが保有する個人情報や映像コンテンツ等を含めた重要データが漏洩、改ざん、あるいは不正利用され、当社グループの事業活動、社会的信用及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

対応策

当社グループでは、情報セキュリティ事故を未然に防止するため、情報セキュリティの推進体制整備と従業員への啓発、社内ネットワークに関する監視機能の強化や情報へのアクセスの制限等を実施しております。また、当該リスクが発生した場合は、適切な対応を即時実施の上、原因解析や影響範囲の調査を行い、再発防止並びに防御の最適化を図る体制をとっております。

 

 

 

⑩ 著作権等の知的財産権に関するリスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループの保有する知的財産権については、海賊版や模倣品等による権利侵害が現実に発生しております。それらについては、ケースごとに適切な対応をとるよう努めておりますが、海外あるいはインターネット等においては、法規制その他の問題から、知的財産権の保護を充分に受けられない可能性があります。仮に、当社グループが、侵害行為を回避できない場合は、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

一方、当社グループが所有または利用する知的財産権に関して、第三者から訴訟を提起される等の結果、損害賠償義務を負ったり、知的財産権の利用が差し止められたりする可能性があります。

 

対応策

当社グループは著作権、商標権等の保護に関する各種対策の強化に努めております。なお、第三者による侵害が発生した場合、当社グループは毅然とした対応で、法的措置を取る等の対策を徹底しております。

また、従業員による第三者が保有する知的財産の侵害を防ぐために、当社グループは知的財産の取り扱いに関する周知等を定期的に行っております。

 

⑪ コンプライアンス違反リスク

対応優先度

 

リスクシナリオ

当社グループの役員または従業員によるハラスメントや不正行為、当社グループの雇用環境に関する従業員等からの当社グループへの訴訟の提起等が発生した場合は、当社グループの社会的信用及びブランドイメージが毀損される可能性があります。

 

対応策

当社グループでは「コンプライアンス委員会」を設置しており、「東映コンプライアンス指針」を周知徹底し、コンプライアンス全般に関する啓発・研修体制の充実に取り組み、適正なコンプライアンス体制の構築及び運用を行っております。加えて、「東映グループホットライン規程」を定めており、通報窓口を活用し、不正・不祥事に関する情報収集及び即時に必要な対応を実施しており、予防・再発防止のための情報展開等に取り組んでおります。また、コンプライアンス違反リスクへの対応を強化することを一つの目的として、新たに「人権方針」を策定いたしました。本方針に基づき、事業活動における人権尊重を徹底し、法令遵守及び企業倫理の浸透を図ることで、当該リスクの低減に努めてまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、インバウンド需要の拡大や、個人消費持ち直しの動きがみられるようになりましたが、資源価格の高騰や米国の今後の政策動向等への懸念により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような状況下で当社グループは、映像関連事業を中心により一層のコンテンツ事業の強化及び効率的な活用を図り、堅実な営業施策に努めました。

 その結果、売上高は1,799億2千2百万円、営業利益は351億5千5百万円、経常利益は399億9千2百万円となり、また、特別利益として投資有価証券売却益を、特別損失として投資有価証券評価損等を計上いたしまして、親会社株主に帰属する当期純利益は157億2千2百万円となりました。

 

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

1株当たり

当期純利益

(円)

当連結会計年度

179,922

35,155

39,992

15,722

253.96

前連結会計年度

171,345

29,342

35,317

13,971

225.68

増減率(%)

5.0

19.8

13.2

12.5

12.5

(注)当社は、2024年4月1日付で普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり当期純利益を算定しております。

 

② 財政状態の状況

 当連結会計年度末における財政状態の状況については、次のとおりです。

 

資産合計

(百万円)

負債合計

(百万円)

純資産合計

(百万円)

自己資本比率

(%)

1株当たり

純資産額

(円)

当連結会計年度末

463,639

109,315

354,323

57.1

4,274.51

前連結会計年度末

411,406

95,175

316,230

57.5

3,819.35

増減率(%)

12.7

14.9

12.0

11.9

(注)当社は、2024年4月1日付で普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額を算定しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、次のとおりです。

 

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

現金及び現金同等物の期末残高

(百万円)

当連結会計年度

33,646

△17,466

△4,620

88,987

前連結会計年度

22,076

△9,805

△7,542

77,929

増減額(百万円)

11,570

△7,660

2,921

11,058

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、受注生産形態をとるものも少ないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 このため、生産、受注及び販売の実績については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①経営成績の分析」における各セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 経営成績の分析

 当連結会計年度におけるセグメント別の経営成績は、次のとおりです。

 

売上高

営業利益

前連結会計

年度

(百万円)

当連結会計

年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計

年度

(百万円)

当連結会計

年度

(百万円)

増減率

(%)

映像関連事業

125,980

134,024

6.4

26,333

33,655

27.8

興行関連事業

20,174

18,966

△6.0

1,907

782

△59.0

催事関連事業

10,085

11,203

11.1

1,422

1,269

△10.8

観光不動産事業

6,494

6,838

5.3

2,569

2,542

△1.1

建築内装事業

8,610

8,890

3.2

397

496

24.9

全社・消去

△3,288

△3,591

連結計

171,345

179,922

5.0

29,342

35,155

19.8

 

〔映像関連事業〕

 映画事業では、提携製作作品等34本を配給し、このうち、『帰ってきた あぶない刑事』『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!』『35年目のラブレター』がヒットし、『推しの子-The Final Act-』『室町無頼』『THE FIRST SLAM DUNK 復活上映』『映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク/爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』が好稼働いたしました。ドラマ事業では、『科捜研の女 season24』『特捜9 season7』『相棒 season23』『君とゆきて咲く~新選組青春録~』『仮面ライダーガッチャード』『仮面ライダーガヴ』『爆上戦隊ブンブンジャー』『わんだふるぷりきゅあ!』『新☆暴れん坊将軍』『花のれん』等を製作して作品内容の充実と高視聴率の獲得、受注本数の確保に努め、特撮キャラクターの国内商品化権営業は玩具等に関する消費者の嗜好が多様化するなか、堅調に推移いたしました。コンテンツ事業では、国内においては、新作旧作を含む劇場用映画・テレビ映画等の地上波・BS・CS放映権販売、配信事業者向けの配信権販売及びビデオ化権等の販売を行い、『十一人の賊軍』『推しの子-The Final Act-』『THE FIRST SLAM DUNK』『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』『ワンピース』『ドラゴンボール』シリーズ等の配信権販売が好調に推移したことに加え、配信向け映画である『推しの子』『七夕の国』が売上高に貢献しました。その中でも、『推しの子』は日本におけるAmazonオリジナル作品として配信後の30日間・国内視聴数歴代1位を記録しました。ビデオ化権販売においては『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が売上高に貢献し、ビデオソフト販売においては『帰ってきた あぶない刑事』が売上高に貢献しました。なお、パッケージ業界全体が縮小傾向にある中、当社のパッケージ事業を連結子会社・東映ビデオ㈱に移管することで経営資源を集約しました。更に、新作旧作を含む劇場用映画・テレビ映画等の海外向け上映権・配信権・商品化権等の販売も行い、『ワンピース』『ドラゴンボール』シリーズ、『仮面ライダー』シリーズ、『スーパー戦隊』シリーズ、『ビーロボカブタック』等が好調に稼働いたしました。その他、撮影所事業では、劇場用映画・テレビ映画等の受注製作、部分請負等を行いました。

 以上により、当セグメントの売上高は1,340億2千4百万円(前年度比6.4%増)、営業利益は336億5千5百万円(前年度比27.8%増)となりました。

 

(注)『推しの子』は全体を、『推しの子-The Final Act-』は「推しの子」部分のみを墨付括弧で囲んだものが正式タイトルです。

 

〔興行関連事業〕

 映画興行業では、連結子会社・㈱ティ・ジョイによるシネマコンプレックス(2024年9月24日に開業した「T・ジョイ エミテラス所沢」含め23サイト230スクリーン。共同経営・共同運営含む)の運営が事業の中心となっており、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』『キングダム 大将軍の帰還』『ルックバック』『ラストマイル』『はたらく細胞』等の大ヒットが業績を牽引したものの、好調だった前年度に比して反動減となりました。

 以上により、当セグメントの売上高は189億6千6百万円(前年度比6.0%減)、営業利益は7億8千2百万円(前年比59.0%減)となりました。

〔催事関連事業〕

 催事事業では、『王様戦隊キングオージャー ファイナルライブツアー 2024』『わんだふるぷりきゅあ!いっしょにあそぼ♪わんだふるワールド』『仮面ライダーガッチャード ファイナルステージ』や人気キャラクターショー等の各種催事が好調に稼働し、また、映画関連商品及び催事関連商品の販売並びにオンラインストアでの販売、仮面ライダーストア等でのキャラクターグッズの販売が堅調に推移しました。東映太秦映画村においては、リニューアル工事により営業エリアの一部を制限しているものの、季節ごとに開催している「太秦江戸酒場」や和製ハロウィン「怪々YOKAI祭」などの施策により、動員数を維持しました。

 以上により、当セグメントの売上高は112億3百万円(前年度比11.1%増)、営業利益は12億6千9百万円(前年比10.8%減)となりました。

 

〔観光不動産事業〕

 不動産賃貸業では、地方圏における人口減少によって需給バランスが崩れつつある中、全国に所有する「東映プラザ(渋谷・福岡・広島・仙台)」「新宿三丁目イーストビル」等の複合商業施設、マンション等の賃貸運営が堅調に推移いたしました。ホテル業においては、インバウンド需要や団体利用の回復が見られる反面、光熱費等の物価高の影響を受けております。このような状況のなか、価格改定やコスト管理の徹底に努めるなど収益の確保に努めました。

 以上により、当セグメントの売上高は68億3千8百万円(前年度比5.3%増)、営業利益は25億4千2百万円(前年度比1.1%減)となりました。

 

〔建築内装事業〕

 建築内装事業では、建設資材費等の高止まりや労務費の上昇等による影響があり、厳しい経営環境が続きました。このような状況でありますが、従来の顧客の確保及び受注拡大を目指して積極的な営業活動を行い、シネマコンプレックス、老健施設、障がい者支援施設の工事等を手掛けました。

 以上により、当セグメントの売上高は88億9千万円(前年度比3.2%増)、営業利益は4億9千6百万円(前年度比24.9%増)となりました。

 

 当社グループの主幹事業である映像関連事業におきましては、その中核を成す劇場用映画がヒットするか否かの予測が困難であり、その好不調がドラマ事業、コンテンツ事業等の映像関連事業全般に広く影響を及ぼすことから、収益の安定化が命題となっております。そのため、より一層の営業努力に邁進し、業界各社との強力な連携を図り、収益力を見極めた企画の選定に注力する一方で、不動産賃貸業にて保有する賃貸資産の有効活用等に努めることで、安定した収益確保に努めて参ります。

 このような状況のなかで当社グループとしては、映像関連事業を中心に、より一層のコンテンツ事業の強化及び効率的な活用に傾注し、また資産の有効活用に努めるとともに、不採算部門の見直し等により、今後も収益基盤の強化に取り組んでまいります。

 なお、中長期的な経営戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

② 財政状態の分析

〔資産〕

 当連結会計年度末における資産合計は、4,636億3千9百万円となり、前期末に比べ522億3千2百万円増加しました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が49億4千7百万円、商品及び製品が12億5千4百万円、建物及び構築物が27億3千1百万円、土地が16億3千万円、建設仮勘定が12億3千9百万円、投資有価証券が240億4千5百万円、長期預金が185億円増加し、仕掛品が27億5千6百万円、流動資産のその他が24億2千6百万円減少したことによるものであります。

 

〔負債〕

 負債合計は、1,093億1千5百万円となり、前期末に比べ141億4千万円増加しました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が60億7千5百万円、未払法人税等が22億7千5百万円、繰延税金負債が75億9千5百万円、固定負債のその他が15億5千万円増加し、長期借入金が28億5千1百万円減少したことによるものであります。

 

〔純資産〕

 純資産合計は、3,543億2千3百万円となり、前期末に比べ380億9千2百万円増加しました。これは主に、利益剰余金が139億8千2百万円、その他有価証券評価差額金が127億9千5百万円、非支配株主持分が99億1百万円増加したことによるものであります。

③ キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、営業活動によるキャッシュ・フローが336億4千6百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローが174億6千6百万円減少し、財務活動によるキャッシュ・フローが46億2千万円減少した結果、889億8千7百万円(前年同期は779億2千9百万円)となりました。

 

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

 営業活動により得た資金は、336億4千6百万円(前年同期は220億7千6百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益393億1千2百万円、減価償却費43億3千万円、棚卸資産の増減額15億4千1百万円、その他の流動資産の増減額31億7千5百万円、利息及び配当金の受取額33億7千4百万円の増加と、受取利息及び受取配当金21億2千7百万円、持分法による投資損益35億8千1百万円、売上債権及び契約資産の増減額37億6千万円、法人税等の支払額88億4千2百万円による減少があったことによります。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

 投資活動により支出した資金は、174億6千6百万円(前年同期は98億5百万円の減少)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入585億4千5百万円による増加と、定期預金の預入による支出662億8千8百万円、有形固定資産の取得による支出82億7千6百万円による減少があったことによります。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

 財務活動により支出した資金は、46億2千万円(前年同期は75億4千2百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入45億円による増加と、長期借入金の返済による支出12億7千6百万円、配当金の支払額17億3千9百万円、非支配株主への配当金の支払額35億9千7百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出20億4千9百万円による減少があったことによります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

イ 財務戦略の基本的な考え方

 当社グループは、財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことにより、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備資金を調達することが可能であると考えております。なお、映像製作設備や不動産賃貸設備に対する大型投資案件等については、内部資金に加え、必要に応じて金融機関等からの借入等により資金調達することとしております。

 また、資産の有効活用と収益基盤の強化をはかりつつ、適正な手許資金の水準について検証を実施し、企業価値向上のため、重点施策を中心とした成長投資へ優先的にフリーキャッシュ・フローを配分することを財務戦略としており、これによりROE(自己資本利益率)の向上及び長期安定的な株主還元を実現することが重要であると考えております。

 

ロ 資金調達の方法及び状況

 当社グループは、運転資金及び設備資金、大型投資案件等の資金は、内部資金又は金融機関等からの借入により資金を調達しております。また、財務基盤をより堅固なものとするべく、グループ内の資金の一元管理等を含め、資金調達コストの低減をはかり、グループ全体の有利子負債の削減に努めております。

 なお、当連結会計年度末における金融機関等からの借入金については、次のとおりです。

 

前連結会計年度末

(百万円)

当連結会計年度末

(百万円)

増減額

(百万円)

短期借入金

240

200

△40

1年内返済予定の長期借入金

1,207

7,282

6,075

長期借入金

12,779

9,928

△2,851

合計

14,227

17,410

3,183

 

ハ 資金需要の主な内容

 当社グループは、2023年2月に策定した中長期的な経営戦略『東映グループ中長期VISION「TOEI NEWWAVE 2033」』において成長投資を掲げており、2033年に向けた資金需要の主な内容として、コンテンツ投資2,400億円、事業基盤強化に向けた投資600億円(製作設備関連投資360億円、不動産関連投資240億円)を見込んでおります。

 上記のほか、運転資金需要の主な内容としましては、営業活動に係る資金支出における、劇場用映画やテレビ映画等の製作費、DVD・ブルーレイディスクの製作費、配給収入やコンテンツ事業収入に係る配分金、シネマコンプレックスの運営に関わる地代家賃、劇場用映画等の広告宣伝費、人件費等の販売費及び一般管理費があります。また、投資活動に係る資金支出においては、撮影所やシネマコンプレックス等の設備改修等があります。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。