当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「Sound of Your Life ~あなたの人生に豊かな響きを~」を企業理念として掲げ、基幹事業である映像関連事業、飲食関連事業、不動産関連事業を通じて、社会に貢献していくことを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略等
① 中期経営方針
当社グループは、企業価値の向上を目指し、消費者ニーズに沿った商品やサービスを自社で開発、創造する事業構造への転換を図るため、中期経営方針「プロデュースカンパニーへの革新」に基づき、経営に取組んでおります。
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~作られたもの、作ったものを売る会社から、 売れるもの(消費者が求めるもの)を創る会社へ~ 「プロデュースカンパニーへの革新」
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② 具体的政策
プロデュースカンパニーへの革新のため、当社グループでは、人的資本の充実により売上及び収益の伸長を見込む「ヒューマンリソース型ビジネス」を中核事業とし、以下の政策に取組んでまいります。
(映像関連事業)
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映画を中心とした「コンテンツ」への積極投資による映画制作配給事業の収益拡大 |
・映画制作配給事業においては、良質な企画を自社で手掛けることで、作品の投資回収率を安定的に高めてまいります。
・映画館を所有していることを背景に、映画だけでなく様々なジャンルへの「コンテンツ」投資を行い、配信などの二次利用収入を拡大すべくライツビジネスを強化してまいります。
・映画の出資や配給に付随して、シネアド・デジタルサイネージといった屋外広告等の周辺ビジネスを強化してまいります。
(不動産関連事業)
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中古マンション再生販売事業におけるエリア拡大 |
・中古マンション再生販売事業においては、従来の仲介会社を通じた仕入に加えて、ウェブや自社の映画館や飲食店等を活用した個人からの直接仕入れに取組み、仕入件数の増加につなげています。このノウハウを更に強固なものにしながら、仕入販売エリアを拡大し競争力を強化してまいります。
・個人向けのワンストップサービス「リノまま」ブランドによる品質にこだわった商品づくりを一層高めてまいります。
(飲食関連事業)
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飲食事業における中食・卸売ビジネスの強化 |
・飲食事業においては、所有するセントラルキッチンを活かした、中食・卸売ビジネスの強化を図り、既存資源の有効活用による収益拡大を推進してまいります。
(セグメント共通)
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ヒューマンリソース型ビジネス拡大のスピードアップ |
・それぞれの事業拡大をより迅速かつ着実なものにすることを目的として、他社とのアライアンスやM&A、資本提携などを積極的に進めてまいります。
③ 政策進捗状況
(映像関連事業)
映像関連事業では、映画を中心とした「コンテンツ」への積極投資による映画制作配給事業の収益拡大に取組んでおり、当年度は17作品を配給しました。
(飲食関連事業)
飲食関連事業では、中食・卸売ビジネスの育成に取組んでおり、当年度は「串鳥」のテイクアウト業態店舗2店を新規出店したほか、冷凍食品の卸売も開始しました。
(不動産関連事業)
不動産関連事業では、中古マンション再生販売事業のエリア拡大に取組んでおり、当年度は、引き続き関西支社での仕入れ件数及び販売件数を伸ばしております。
(3)経営環境
当年度は、内需主導による経済活動の緩やかな回復基調が続きました。一方で昨今の国際情勢に加え、昨年度に続き物価の上昇や人手不足の深刻化が見られるなど、先行き不透明な状況が続くと予想されます。
各セグメントの経営環境は以下のとおりであります。
(映像関連事業)
国内の映画市場において、2022年の興行収入は2,131億円、2023年の興行収入は2,214億円とこの2年間はほぼコロナ禍前の水準に回復して推移しておりましたが、2024年は2,069億円、対前年93.5%と2020年以来、4年ぶりに減少しました。邦画は対前年105.1%と興行収入を伸ばしている一方で、2023年に発生したハリウッドのストライキの影響を受けた洋画が対前年69.8%と大きく落ち込んだことが響き、邦高洋低の傾向に拍車がかかっています。中高年層を中心に動画配信サービスへのシフトが進む一方で、映画館での映画鑑賞は若年層のイベントとして根強い人気があり、アニメ作品や邦画の実写作品などの若年層に訴求した作品が興行収入の上位を占める傾向にあります。
ミニシアターにおいても2024年の前半はヒット作がほとんどなく苦戦が続きましたが、2024年後半以降に邦画洋画ともにヒット作が出始めており、回復の兆しが見られます。
また、定額制動画配信サービス市場(SVOD)は2024年においては対前年106%の5,710億円とやや市場の伸びが緩やかになっており、市場が拡大期から成熟期に差し掛かりつつあることが伺えます。動画配信サービスが安定拡大を続ける中で、映画制作において興行収入以上に配信サービスからの収益確保の重要度が増しています。
2024年の国内の広告市場は前年比104.9%の7兆6,730億円であり、3年連続で過去最高を更新しています。中でもインターネット広告費は前年比109.6%と拡大を続け、広告市場全体の5割に迫る47.6%までシェアを獲得しています。また、コロナ禍以降の人流回復に伴い、交通広告やイベント・展示といったリアルな場面での成長が目立っています。
(飲食関連事業)
国内の外食市場は対前年108.4%と3年連続で前年の売上を上回りました。年間を通してインバウンドが増加したことに加え、原材料の高騰による価格改定が相次いだことによるものです。そのため、一部店舗では客単価は増加したものの客数が伸び悩むなど、売上は上がっても利益の確保に苦慮するような状況は続いています。
業種別にみると「ファーストフード」以外の店舗数は微減傾向ですが、コロナ禍で大きく店舗数を減らしていた「パブレストラン/居酒屋」の店舗数が2024年終盤以降ようやく下げ止まりをみせました。
中食市場も対前年102.8%と4年連続で拡大し、過去最高の11兆円超となりました。食料品スーパー、コンビニエンスストア、惣菜専門店などが売上を伸長する一方で、百貨店や総合スーパーは減少しています。
(不動産関連事業)
都内の賃貸オフィスの平均空室率は2024年初めの5%台から回復傾向で推移し、2025年に入ると3%台まで低下し、コロナ禍以降下落基調にあった平均賃料についても2024年においては年間を通してゆるやかな上昇基調が続いています。コロナ明けの企業のオフィス回帰が本格化したことによるものですが、一方でビルの付加価値やエリア優劣による二極化の傾向も鮮明にあらわれています。
2024年の首都圏の中古マンション市場は2年連続で前年を上回る37,222件の成約件数となり、対前年103.4%と好調な売れ行きでした。1㎡あたりの成約単価においても対前年106.9%と12年連続で単価が上昇しており、この12年で201.3%と実に2倍を超える価格上昇となっております。一方で2025年に入ると東京区部以外については1㎡あたりの成約単価の下落傾向が見えつつあり、物件ごと、エリアごとの二極化傾向はより鮮明になっています。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(3)で記載した経営環境を踏まえ、次年度は以下の事項を優先的に取組んでまいります。
(映像関連事業)
当社グループの映画館は、映画館毎のコンセプトを明確にし、強力なコンテンツの確保に努めながら、新たな顧客の獲得を目指しております。映画制作配給事業は、良質な企画を自社で手掛けることで、投資回収率を安定的に高めてまいります。ソリューション事業は、シネアド売上を伸長させるとともに、映画との連携を活かした企画提案などを通して、各種イベントや広告の受注獲得に努めてまいります。
(飲食関連事業)
札幌地区を中心に展開する串焼き業態は、店舗売上の着実な拡大を優先課題とし新規出店を進めるとともに、卸売業態においてスーパー等への冷凍食品の提供やテイクアウト店舗の出店による中食・卸売を第二の柱として育成してまいります。都内を中心に展開する和・洋のバル業態は、立地毎にエリアの特性にあわせた特徴ある商品やサービスを提供しながら市場の変化に対応してまいります。
(不動産関連事業)
当社グループの所有する不動産物件におきましては、より快適なオフィス空間や質の高いサービスが求められるものと認識し、施設の保全に努めてまいります。中古マンション再生販売事業は、仕入れや販売価格の変動、建築資材の高騰・供給の遅れ、人手不足の問題といった市場の目まぐるしい変化に対応するために、仕入れから販売までの期間を適切に管理し在庫の回転を高めてまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループを取り巻く環境は変化が激しく、特に基幹事業である映像関連事業の不確実性が高いことから、業績が大きく変動する可能性が高いため、特定の指標を中期的な経営目標として設定しておりません。中期経営方針における政策の進捗を踏まえて設定する単年度目標を着実に達成するべく取組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「Sound of Your Life ~あなたの人生に豊かな響きを~」という企業理念を通じて、当社グループの事業活動を取り巻くサステナビリティを巡る課題に対処しております。当社グループは、持続可能で豊かな社会を実現するため「多様な人財がいきいきと活躍するための環境整備の推進」「事業活動を通じた環境負荷低減と社会貢献への取組」「持続的成長に向けたガバナンス強化と実効性のあるリスク管理の実践」をマテリアリティ(重要課題)として認識しております。また、マテリアリティに対する取組みの内容につきましては、当社ウェブサイト等で開示しております。(https://www.theatres.co.jp/sustainability/)
(1)ガバナンスとリスク管理
当社は、サステナビリティを経営戦略と一体的に捉え、当社グループ全体の視点においてこれを推進するため、「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティを巡る課題に対して主体的に対応する体制としております。
「サステナビリティ委員会」は、当社経営政策本部の担当取締役を委員長とし、当社グループのサステナビリティを巡る課題の対応状況等について検討・協議し、その結果について定期的に取締役会に報告を行っております。また、取締役会は「サステナビリティ委員会」から報告された内容について審議・監督を行っております。
当社は、内部統制システムにおいて、当社管理本部担当取締役を委員長とする「内部統制委員会」を設置しております。「内部統制委員会」は、リスク主管部門と連携し、当社グループの事業活動に係るリスクシナリオを想定し「リスクの発生可能性」と「損失の影響度」の評価軸に基づき、事業活動に影響を及ぼすリスクの識別を行っております。気候変動リスクを含む「物理的リスク」の他、「法的リスク」「オペレーショナルリスク」「市場性リスク」について、網羅的にリスクの顕在化状況の識別・評価を行い、これを定期的に取締役会に報告しております。これらのリスクの内、サステナビリティに関するリスクと機会については、「サステナビリティ委員会」と共有され、「サステナビリティ委員会」が、当社グループの事業に与える影響並びにその対応について、取締役会に報告することとしております。
(2)戦略
① 人財育成
当社グループは、人的資本を源泉とするビジネスの拡大を目指す「プロデュースカンパニー」への革新には、社員の「人財化」が重要であると考えています。そのため業務の実践力を高めるOJT(オンザジョブトレーニング)に加えて、取締役、執行役員が自ら主催し、より高度な専門性・トレンドを学ぶOFF-JTを多数開催しております。その他にも社員の自由な学びを支援するEラーニングや資格取得支援等、多様な学びの機会と環境を提供しております。
② 人権尊重
当社グループは「東京テアトルグループ行動基準」を周知することにより、すべてのステークホルダーの基本的人権の尊重、人権侵害の禁止を定めるとともに従業員の尊厳を守る会社の実現に向けて人権尊重に取組みます。
③ ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループは、社内に異なる経験・技術・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上で強みとなり得るとの認識に立ち、性別・国籍・採用ルートによらずそれぞれの個を尊重し、多様化する社員のキャリア意識や働き方に対する価値観の変化に対応すべく各種のダイバーシティ&インクルージョンの推進に取組んでおります。
女性活躍推進においては柔軟な働き方を進めるとともに、男女の性差に関係なく配置、評価、昇格を実施し、2024年度における管理職における女性比率はグループで10.1%となっております。また中途採用者の活用においては多様な専門性を持った人材採用に力を入れており、採用ルートに関係なく昇格を実施しており2024年度における管理職における中途採用者比率はグループで79.7%となっております。
④ 健康的で働きやすい職場環境
当社グループは、様々な社員がいきいきと健康的に働ける環境を整備することは会社の持続的成長の源泉と考え、職場環境の改善に取組んでおります。提出会社では、法定項目以上に詳細な検査項目での健康診断やオプション補助を実施しております。また管理職を対象としたメンタルヘルス、パワーハラスメント防止研修の開催や、定期的にストレスチェックの機会を提供するなど従業員の心の健康管理にも努めております。
(3)指標及び目標
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項 目 |
指 標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
|
対象会社 |
|
ダイバーシティ& インクルージョン |
|
|
10.1 |
|
連結 |
|
女性管理職比率(%) |
20.0 |
20.0 |
30.0 |
当社 |
|
|
育児・介護離職者数(人) |
0 |
0 |
0 |
||
|
健康的で働きやすい 職場環境 |
健康診断受診率(%) |
99.1 |
99.3 |
100.0 |
|
|
ストレスチェック |
87.3 |
91.8 |
100.0 |
||
|
一人当たり平均有給休暇取得日数(日) |
10.7 |
7.8 |
11.0 |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)映像関連事業の不確実性に係るリスク
映画作品の興行成績は予測が難しく、興行作品によっては一定の観客を動員できない場合があります。また、映画制作配給事業においては、出資作品によっては各種権利収入が想定を下回る場合があります。また制作遅延や公開延期、公開中止が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクによる影響を最小限とするため、映画興行事業においては機動的な番組編成や特集上映の実施によって、興行成績の変動リスクを低減するとともに、映画制作配給事業においては、良質な企画を自社で手掛けることで、作品の投資回収率の向上に努めるとともに、作品ごとに制作段階からの管理を徹底することで制作遅延の防止やリスク低減に努めております。
(2)食品の安全に係るリスク
当社グループは、食の安全確保のための取組みを徹底して行っておりますが、万が一にも食中毒などの衛生問題が発生した場合や、誤表示による商品事故などが発生した場合は、被害者への補償や一時的な営業停止、また企業イメージ悪化に伴う売上の減少や、社会的信用の失墜により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、鳥インフルエンザ等の疾病発生により食材調達に支障を来す場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、食の安全、商品の安全性確保のため品質管理、衛生管理の徹底、また複数の仕入れ先確保に取組んでおります。また製造物責任保険に加入し、万が一被害が発生した場合の補償に備えております。
(3)不動産の市況に係るリスク
不動産関連税制の変更、銀行融資金利の上昇や銀行融資の抑制等が生じた場合や、建築基準法・都市計画法その他不動産関連法制が変更された場合は、資産に対する権利の制限、所有資産の価値低下、新たな義務やコストの発生等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
不動産賃貸事業においては、賃料相場が下落した場合や入居テナントの経営が悪化した場合には、賃料収入の減少や、退去による空室率の上昇等が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
中古マンション再生販売事業においては、物件仕入れが期待どおりに進捗しない場合や販売用不動産が長期にわたり滞留した場合、時価が大幅に下落した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、不動産市場の動向を適確に分析し、市況の悪化を想定したリスク評価を定期的に実施するほか、保有物件においては、各テナントの経営状態を適切に把握し、機動的に対応できるように努めております。中古マンション再生販売事業においては、仕入れ査定基準の機動的な見直しや在庫の入替期間を適切にコントロールすることで、市況変化によるリスクの低減に努めております。
(4)所有不動産の設備等老朽化に係るリスク
当社所有の不動産は竣工後相当の年数を経過した物件が多いことから、突発的に大規模修繕等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、自社所有不動産については計画的に修繕等を実施しております。
(5)自然災害の発生に係るリスク
大規模自然災害やパンデミック、事故、火災、テロその他の人災等の発生により営業活動に支障が生じ、被害が発生した場合には、その災害規模等によって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらの自然災害等に係るリスクを全て回避することは困難でありますが、影響を最小限とするため、防災マニュアルの整備、社員安否確認システムの導入、定期的な防災訓練及び被災状況報告訓練を実施しております。また、火災保険等に加入し、経済的損失の発生に備えております。
(6)物価上昇等によるコスト増加に係るリスク
物価の上昇とりわけ原材料費及び光熱費の高騰は、映像関連事業、飲食関連事業における、映画館、飲食店、食品製造工場に係る水道光熱費等のランニングコストの上昇による収益構造悪化の可能性があります。また不動産関連事業においては、賃貸物件に係るランニングコスト、設備の維持修繕コストの上昇、建築資材の調達コストによる中古マンションのリフォームコスト上昇のリスクがあります。また、建築資材及び住宅設備の供給が滞り、工期延長等によりコストが増加した場合にも、当社グループの業績及び財政に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、適切な価格転嫁と可能な限り運営の効率化によるコスト低減に努めております。
(7)人材の確保及び育成に係るリスク
人手不足が急速に進む中で、人材の確保及び育成が計画どおり進まず営業活動に支障が出る場合や、人材の確保のために人件費が増加した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、人材の多様性を図り、健康かつ安全に、働きやすい職場環境の整備に努めるとともに、業務効率の向上に努めております。
(8)固定資産の減損会計に係るリスク
当社グループは有形固定資産や無形固定資産等の固定資産について減損会計を適用しております。当社グループは主に映画館、飲食店や賃貸不動産などの固定資産を保有しておりますが、収益性が低下し、投資額の回収が見込めなかった場合や、固定資産の市場価格が著しく下落した場合などには減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローにより資産の帳簿価額が回収可能であるか検証しており、回収不能見込額については適切に減損処理を行っております。
(9)資金調達に係るリスク
金利が上昇したり、資金調達の条件が悪化した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、固定金利による調達や金利スワップによる金利の固定化に努めております。
(10)情報セキュリティに係るリスク
コンピューターウィルス・サイバー攻撃などに対して、適切に対策を実施しておりリスク低減に努めておりますが、悪意ある攻撃や不適切な情報管理により情報漏洩やITシステム及びウェブサイトが停止した場合には、損害賠償等の費用の発生や企業イメージの悪化に伴う売上の減少等や事業活動の停止を余儀なくされることにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、社内の専門部署に情報管理者を選任し管理責任を明確にするとともに、情報の利用・保管などに関する社内ルール整備と従業員に対する情報リテラシーの向上に努めております。またサイバー保険に加入し、第三者への損害賠償責任の発生等に備えております。
(11)気候変動に係るリスク
気候変動に伴い発生する自然災害等の物理的リスクの他、気候変動抑制の為の移行リスクは、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。事業環境の急激な変化や想定以上の規制により事業運営コストが上昇した場合には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクへの対応として、当社グループは、サステナビリティ委員会を設置し、同委員会が財務への影響と対応を分析し、事業活動を通じたサステナビリティへの取組みを推進しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(以下「当年度」といいます。)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
イ.財政状態
当年度末の資産合計は、前年度末と比べて4,343百万円増加し、28,907百万円となりました。これは、現金及び預金が1,222百万円増加したこと、販売用不動産が288百万円増加したこと、土地が2,506百万円増加したこと、投資有価証券が332百万円増加したこと等によるものです。
負債合計は、前年度末と比べて1,523百万円増加し13,352百万円となりました。これは、未払金が305百万円増加したこと、流動負債その他が185百万円減少したこと、有利子負債が801百万円増加したこと、繰延税金負債が541百万円増加したこと等によるものです。
純資産合計は、前年度末と比べて2,820百万円増加し、15,555百万円となりました。これは、利益剰余金が2,967百万円増加したこと、その他有価証券評価差額金が214百万円増加したこと、自己株式が320百万円増加したこと等によるものです。
ロ.経営成績
当年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな回復基調で推移いたしました。しかし、中国経済の減速懸念や米国の政策動向、インフレ圧力の高まりなど、先行き不透明な状況が続いております。
このような状況下、当年度の連結業績は、中古マンション再生販売事業及び飲食事業が増収となったことから、売上高は18,387百万円(前年度比7.6%増)となりました。しかし、映画制作配給事業において出資作品の興行不振により配給収入を超える償却費を計上したことや、飲食事業における原材料費・人件費高騰の影響もあり、営業利益は267百万円(前年度比7.6%増)に留まり、借入費用の増加により経常利益は271百万円(前年度比7.9%減)となりました。一方、保有不動産等の売却により固定資産売却益3,529百万円を特別利益に計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は3,039百万円(前年度比1,201.9%増)となりました。
■連結経営成績(百万円)
|
|
前年度 |
当年度 |
増減 |
|
売上高 |
17,087 |
18,387 |
+1,300 |
|
営業利益 |
248 |
267 |
+18 |
|
経常利益 |
294 |
271 |
△23 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
233 |
3,039 |
+2,806 |
② キャッシュ・フローの状況
当年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前年度末より1,222百万円増加し3,623百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は197百万円(前年度は252百万円の収入)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益3,493百万円、減価償却費の調整341百万円、減損損失の調整286百万円、固定資産売却損益の調整△3,528百万円、棚卸資産の増減額△220百万円、その他の資産の増減額△175百万円となったこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、得られた資金は621百万円(前年度は265百万円の支出)となりました。この主な要因は、有形固定資産の売却による収入553百万円、有形固定資産の取得による支出3,112百万円、無形固定資産の売却による収入3,189百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、得られた資金は403百万円(前年度は173百万円の収入)となりました。この主な要因は、短期借入金の減少額600百万円、長期借入れによる収入2,939百万円、長期借入金の返済による支出1,537百万円、自己株式の取得による支出326百万円、配当金の支払による支出71百万円となったこと等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの営む業種柄、生産、受注の概念は乏しいと考えております。販売の状況については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(セグメント分析・検討内容)
イ.売上高及び営業損益
売上高は18,387百万円(前年度比7.6%増)、営業利益は267百万円(前年度比7.6%増)となりました。セグメントごとの業績概況は以下のとおりであります。
■セグメント別外部売上高(百万円)
|
|
前年度 |
当年度 |
増減 |
|
映像関連事業 |
3,557 |
3,371 |
△185 |
|
飲食関連事業 |
5,360 |
5,807 |
+446 |
|
不動産関連事業 |
8,169 |
9,208 |
+1,039 |
|
計 |
17,087 |
18,387 |
+1,300 |
■セグメント別営業損益(百万円)
|
|
前年度 |
当年度 |
増減 |
|
映像関連事業 |
△139 |
△420 |
△281 |
|
飲食関連事業 |
139 |
115 |
△24 |
|
不動産関連事業 |
1,015 |
1,403 |
+387 |
|
調整額 |
△767 |
△830 |
△62 |
|
計 |
248 |
267 |
+18 |
<映像関連事業>
(映画興行事業)
「シネ・リーブル神戸」「テアトル梅田」において改装工事を実施するなど、鑑賞環境の改善を図りました。また、上映作品では『ルックバック』『ロボット・ドリームズ』『アット・ザ・ベンチ』などが高稼働し、既存館は前年度並みの売上高となりましたが、前年度1館3スクリーンを閉館した影響から、前年度比で減収となりました。
なお、当年度末現在の映画館数及びスクリーン数は7館18スクリーンであり、前年度末から変動はありません。
(映画制作配給事業)
当年度の公開作品では『Cloud クラウド』『違国日記』『ぼくのお日さま』など17作品を配給いたしました。その中で映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』はファン層拡大に取り組み、大ヒットを記録し、配給収入は増加いたしました。一方、映画や字幕吹替の制作収入は減少し、当事業は前年度並みの売上高となりました。
(ソリューション事業)
積極的な営業活動によりシネアド(映画館CM)やテレビスポットの受注が増加し、前年度比で増収となりました。
以上の結果、映像関連事業の売上高は3,371百万円(前年度比5.2%減)となり、映画制作配給事業の減益も影響し、営業損失420百万円(前年度は営業損失139百万円)となりました。
<飲食関連事業>
(飲食事業)
前年度に開業した「レストラン西洋銀座」がフル稼働したことに加え、主力業態の「串鳥」における札幌中心部店舗での観光需要の増加や、価格・メニュー改定による客数・客単価の上昇も寄与し、前年度比で増収となりました。
■飲食店・販売店の店舗数
|
|
前年度末 |
当年度末 |
増減 |
|
|
|
焼鳥専門店チェーン「串鳥」 |
37 |
37 |
0 |
|
|
その他 |
8 |
9 |
+1 |
|
飲食店 |
45 |
46 |
+1 |
|
|
販売店 |
4 |
5 |
+1 |
|
(開店)
・2024年4月25日 炭火ビストロ&和酒「THE MARMARE」
・2024年9月13日 テイクアウト専門店「串鳥旭川春光店」
・2024年10月1日 「串鳥」すすきの西五丁目店
・2024年11月5日 SUSHI BAR「ヒコーキ雲」
・2025年2月1日 テイクアウト専門店「串鳥イオン札幌厚別店」
(閉店)
・2024年6月2日 テイクアウト専門店「串鳥工場直販所」
・2024年12月1日 「串鳥」北二十四条店
・2025年3月31日 「ドトールコーヒーショップ札幌時計台通店」(事業譲渡)
以上の結果、飲食関連事業の売上高5,807百万円(前年度比8.3%増)となりましたが、原材料費や人件費の高騰により営業利益は115百万円(前年度比17.6%減)となりました。
<不動産関連事業>
(不動産賃貸事業)
きめ細かいリーシング活動により賃貸物件が100%近い稼働率を維持し、前年度並みの売上高となりました。
また資産効率向上を目的に、所有する1物件を譲渡し、新たに商業ビル2物件を取得いたしました。
(中古マンション再生販売事業)
当年度における首都圏の中古マンション市場は、活況を呈し成約件数、成約価格ともに上昇しました。しかし堅調な需要を背景に都心部がマーケット価格を牽引する一方で、郊外では価格に頭打ち感が見え始めています。
このような市況下、ウェブを活用した仕入れの拡大や開業から2年の関西支社が成約件数を伸長し、全体の販売件数を押し上げたことにより、前年度比で増収となりました。
以上の結果、不動産関連事業の売上高は9,208百万円(前年度比12.7%増)となり、中古マンション再生販売事業の利益率上昇も寄与し、営業利益は1,403百万円(前年度比38.1%増)となりました。
ロ.販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は4,690百万円(前年度比6.8%増)となり、前年度に比べて297百万円増加しました。主に、飲食関連事業において売上増加や新規出店に伴い人件費が増加したこと等によるものであります。
ハ.経常損益
経常利益は271百万円(前年度比7.9%減)となりました。営業外収益は134百万円(前年度比35.4%増)となり、前年度に比べて35百万円増加しました。主に、受取配当金が増加したこと等によるものであります。営業外費用は130百万円(前年度比144.4%増)となり、前年度に比べて77百万円増加しました。主に、借入関連費用及び貸倒引当金繰入額が増加したこと等によるものであります。
ニ.特別損益
特別利益は3,557百万円(前年度比1,775.9%増)となりました。固定資産売却益3,529百万円を計上したこと等によるものであります。特別損失は335百万円(前年度比143.2%増)となりました。主に、減損損失286百万円を計上したこと等によるものであります。
ホ.親会社株主に帰属する当期純損益
親会社株主に帰属する当期純利益は3,039百万円(前年度比1,201.9%増)となりました。税金等調整前当期純利益3,493百万円に加えて、法人税等合計469百万円を計上したこと等によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要の主なものは、商品、商品不動産、原材料等の仕入れ、人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また投資資金の主なものは、映画館や飲食店、賃貸不動産等の設備改修や修繕、新規開発等であります。運転資金と投資資金については、営業キャッシュ・フローでの充当を基本とし、必要に応じて金融機関からの借入等の手段を通じて資金調達を行っております。
資金の流動性については、当年度末の現金及び現金同等物は3,623百万円となっており、当社グループの事業活動を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。また、金融機関との間に当座貸越契約や貸出コミットメントライン契約を締結しており、流動性に一部支障をきたす事象が発生した場合にも、一定の流動性を維持できると考えております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債及び収益費用の報告額に影響を与える見積り及び仮定を用いており、実際の結果は異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、2025年3月26日開催の取締役会において、所有する固定資産を譲渡することを決議し、同年3月27日に不動産売買契約書を締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。