(1) 会社の経営の基本方針
当社グループでは、「空間に思いを馳せ、人々の笑顔を創造する」という企業理念の下、当社が所有する公営競技場・遊園地等の「空間」に訪れる人々の安心・安全・信頼を第一に、公共性にも配慮した事業を展開してまいりました。
今後も、当社グループの企業理念に基づき、多角的に事業展開を進め、誠実かつ健全な経営体制及び経営基盤を確保・発展させていくとともに、社会課題に対して積極的に取り組むことで、すべてのステークスホルダーの期待に応え続け、社会の発展に寄与する企業であることを目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、「第3次中期経営計画~Galloping into the future~」計画期間において、収益性の観点から売上高、営業利益及び当期純利益、資本効率性の観点から自己資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)を重要な指標として位置付け、企業価値の向上に努めてまいります。
(3) 経営環境
当社グループを取り巻く環境は、国内外における物価上昇や個人消費活動・インバウンド需要の変化、米国の今後の政策動向や金融資本市場の変動等により不確実性を増している中、我が国における人口急減や少子高齢化が招く労働人口の減少や国内市場規模の縮小により、社会経済活動の不活性化・経済成長力の低下といった日本企業全体に影響を及ぼす長期的問題が顕在化しております。
このような環境下において、今後も事業環境の変化を正しく捉え、適切に対応していくとともに、各事業の推進及び課題への対応を通じてグループの成長・発展に繋げてまいります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社グループは、企業理念の実現と企業価値向上のため、2024年に迎えた創立75周年を機に、今後10年間の経営の方向性を示した「長期経営ビジョン2035」を策定いたしました。
この長期経営ビジョンにも掲げているとおり、以下の3点を、当社を取り巻く経営における重要課題として認識しております。
◆少子高齢化と働き手不足
競馬をはじめ、レジャー産業におけるお客様のニーズや構成に大きな影響があると考えます。また、働き手の不足は公営競技界においても深刻さを増すと予想されます。
◆デジタル革新
DXの進展、AIの実用化やビッグデータの活用は、経営効率化に寄与するだけでなく、事業内容そのものの変革を促す可能性があります。
◆ESGへの取り組み
持続可能な社会の実現に貢献することが一層求められるとともに、経営の透明性のさらなる向上などもより重視されると思われます。
当社独自のESG経営の考え方である「PLACE:心昂る感動空間の提供」「PEOPLE:全てのステークホルダーの笑顔を創造する」「PLANET:サステナビリティ課題解決に貢献する」と、その経営の下支えとなる「高い公共性
(公正・公平・透明性)に基づくガバナンス」の実現を目指し、今後もESGを重視した経営を行ってまいります。
これらの重要な経営課題を当社グループ一丸となって適切に対処するとともに、大井競馬のさらなる振興・発展に繋がる環境づくりを推進するべく、SPAT4の安定稼働と魅力度向上に加え、厩舎機能・設備の移転を含む大井競馬場の再整備推進にも取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
■サステナビリティ全般
(1) サステナビリティに対する基本的な考え方
当社グループは、企業理念である“空間に思いを馳せ人々の笑顔を創造する。”を実現し、笑顔あふれる“まちづくり”を牽引する空間創造企業となることを2035年の目指す姿と定め、5つの事業領域別の戦略、そして財務戦略・人事戦略・ESGの3つの機能戦略に注力しております。
人事戦略に関しては、“らしさ”を活かして、一人ひとりが笑顔の創造者となる企業を目指し、人材育成方針と社内環境整備方針のもと、人的資本経営を推進しております。
また、ESGを重視した経営を実施し、当社独自のトリプルボトムラインによる好循環サイクルの確立と経営の下支えとなるガバナンスの強化を推進することで、持続可能な社会の実現と当社グループの成長を両立してまいります。
(2) ガバナンス
当社グループは、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然環境災害等への危機管理など サステナビリティを巡る様々な課題へ対応し、社会及び当社グループの事業活動の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を推進するとともに、当社グループのサステナビリティへの取り組みに関する適切かつ効果的な情報開示を推進することを目的に、サステナビリティ推進委員会を設置しております。同委員会は、サステナビリティへの取り組みの推進強化と責任の明確化を目的に、代表取締役社長が委員長を務め、本業や経営戦略との一体化を図りながらサステナビリティへの取り組みを推進しております。四半期に1回の頻度で開催し、気候変動関連のリスクや機会をはじめとした当社グループにおける横断的なサステナビリティ課題について、サステナビリティ推進事務局※の報告を踏まえ、全社的な方針、体制、施策を企画立案するとともに、特に気候変動関連など重要なテーマは経営戦略や経営計画に反映することを審議します。同委員会の審議の結果は、年に2回程度、監督責任を持つ取締役会へ付議・報告されます。取締役会で承認された内容は、同委員会が監督するサステナビリティ推進事務局にてとりまとめ、各部署・グループ全従業員に共有し取組を推進しております。
※同委員会が監督するサステナビリティ推進事務局は、総務担当役員を事務局長とし、各社・各事業のサステナビリティの推進を担います。
(3) 戦略
サステナビリティ経営方針
当社グループは、これまで取り組んできたCSRを発展させ、提供空間及び周辺地域における環境・社会に配慮した、独自のトリプルボトムライン“PLACE,PLANET,PEOPLE”を掲げております。これは、地球環境をケアし、従業員と家族や事業を支えてくれる人々をケアし、地域社会をケアすることを意味しております。
このコンセプトに基づき、事業を通じてサステナビリティ課題に対応する「サステナビリティ経営」を掲げ、経営によるリーダーシップのもと、グループ全体で事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献すべく取り組みを行っております。

トリプルボトムラインを基に、当社グループ子会社では事業内容に合わせた個別のサステナビリティ方針を策定しております。例えば、秋川流域の自然豊かな東京都あきる野市にて50年以上にわたり、総合レジャー施設を運営している 東京サマーランドにおいては、トリプルボトムライン ”PLACE , PLANET , PEOPLE“を再定義し、取り組みを行っております。
サステナビリティ経営方針及び具体的な各種取組については、当社グループ各社の専用ページをご確認ください。
東京都競馬:https://www.tokyotokeiba.co.jp/sustainability/
東京サマーランド:https://www.summerland.co.jp/sustainability/index.php
サステナビリティ課題において、特に気候変動問題は、社会及び当社グループにとって重要な課題であると認識しており、“PLANET”そして “PLACE”の取組として、気候変動リスク及び機会が当社グループの事業活動に与える影響を評価・分析しております。
(4) リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ推進委員会の監督する事務局組織であるサステナビリティ推進事務局が、各部署・グループ会社のリスク管理責任者(各部(室)長)からサステナビリティに関するリスクの回避と軽減にかかる情報を吸い上げる体制を構築しております。同事務局にて、サステナビリティに係る重要なリスクの特定(識別)・分析・評価を実施し、同委員会にて、特定した重要なリスクの管理・モニタリングを行い、リスク管理プロセスを通して、リスク顕在化の未然防止及び最小化に努めております。また、内部統制監理室においては、サステナビリティのリスクの発生防止に係る管理体制が適切に整備され問題なく機能しているかについて、内部監査方針に基づき監査を行っております。また、その結果を統括責任者(代表取締役社長)に報告することにより、リスク管理の強化を図っております。
※リスク評価頻度は年に1回以上、対象となる時間軸は短期、中期、長期
※特に気候変動関連リスクに関しては、サステナビリティ推進事務局とサステナビリティ推進委員会が定期的に
情報共有、連携
■気候変動問題に関する情報開示
(1) 戦略
当社グループは、TCFD提言を参考に、気候変動リスク及び機会が事業活動に与える影響を特定したうえで、対応策等を検討しております。
[前提条件]
実施対象範囲
当社グループの事業の内、特に気候変動による財務的影響が大きいと思われる、公営競技事業(競馬施設賃貸のみ)と遊園地事業に加え、2024年度からサービス事業(商業施設及びオフィスビル賃貸と空調整備のみ)と倉庫賃貸事業を対象としております。
参照した気候関連シナリオ
シナリオ分析については、脱炭素社会への移行リスクが大きいと思われる「1.5℃」と、災害等の物理的リスクが大きいと思われる「4℃」のシナリオを採用しました。
IEA(International Energy Agency):国際エネルギー機構
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):国連気候変動に関する政府間パネル
時間軸、リスク重要度の評価基準
時間軸は、グループ中期経営計画実行年度及び日本の温室効果ガス排出削減目標の時間軸にあわせ、
短期2025年、中期2030年、長期2050年に設定しました。リスク重要度は、リスク管理委員会のリスクアセスメント基準を基に、影響度「小」「中」「大」の3つに分類しております。
[シナリオ分析のステップ]
公営競技事業と遊園地事業においては、分析ステップにおける③④の段階であり、すでに特定・評価したリスクと機会を見直したうえで、事業インパクト評価を実施し、対応策を検討しました。サービス事業と倉庫賃貸事業については、分析ステップにおける①として、気候変動により想定される重要なリスクと機会の特定を行い、考えうる対応策を洗い出しました。
今後は、サービス事業と倉庫賃貸事業におけるインパクト評価及び機会における影響の分析を行う予定です。
公営競技事業・遊園地事業における2030~2040年の世界観:
1.5℃シナリオでは、脱炭素社会の実現に向けて、炭素税の導入や資源循環・リサイクル規制等の政策推進に加え、顧客の環境意識の高まりが想定されます。また、環境政策の推進や電力需要の増加により、エネルギー価格の上昇や、環境負荷の少ない設備・備品(バイオプラスチック・代替燃料)等への切替によるコスト負担の増加が懸念されます。消費者行動の変化については、気候変動や自然資本に対する意識が向上により、娯楽のための外出先の選択において、EVの充電スタンドの有無や環境負荷の程度が重視されるようになる可能性があります。このシナリオでは、競馬開催やプール・遊園地の営業などを円滑に継続するため、ハード面・ソフト面への投資拡大の必要性が高まると考えられます。
4℃シナリオでは、温暖化の進行により異常気象の増加が予想され、これに対応するため、豪雨対策をはじめとする施設の防災対策が求められると想定されます。エネルギーや資材のコストの増減は限定的である一方で、極端な気象現象を起因とした食品価格の上昇や、自然災害対策の設備投資によるコスト増加の影響が大きくなるものと見込まれます。このシナリオでは、気候変動を含む大災害等に対応できるよう、BCP(事業継続計画)の重要性がより高まると考えられます。
公営競技事業(競馬施設賃貸のみ):事業インパクト評価結果
公営競技事業:事業インパクト評価を踏まえた対応策の検討
事業インパクト評価にて影響度が大きいと評価したリスクにおいては、財務への影響を整理し、影響規模の算定式と対応策を検討しました。なお、“エネルギー価格・需要の変動”リスクについては、公営競技事業における
バリューチェーン全体に影響することから、事業インパクト評価を踏まえた対応策の検討対象に加えております。
1.5℃シナリオ
4℃シナリオ
公営競技事業:機会の考え方
1.5℃シナリオにおいては、EVの普及や消費者の環境意識の高まりを背景に、環境配慮型施設への移行に向けた設備投資を行うことで、環境意識の高い顧客の集客向上が期待されます。4℃においては、激甚化する気象災害に迅速かつ適切に対応することで、ステークホルダーからの評判が向上する可能性があります。今後は、機会についても、
財務への影響と設備投資等によるコストを算出し、具体的な戦略を検討することで、機会の最大化を目指します。
公営競技事業(競馬施設賃貸のみ):足元の取り組み
<再生可能エネルギーの導入>
2021年10月より大井競馬場内の電気については、火力発電を主体とするものから、東京23区内の清掃工場で処理される廃棄物の焼却に伴い発生する排熱を利用して作られる電気(バイオマス発電)に転換いたしました。場内で使用する電気を実質再生可能エネルギー100%(一部地区を除く)とすることで、CO2排出量は大きく減少し、環境負荷の低減に貢献しております。 このことから、公営競技事業においては、炭素税やGHG排出規制によるコスト増加の影響は限定的と判断しております。
<脱プラスチックや廃棄物削減>
大井競馬場内の一部飲食サービス(及び東京サマーランド)を管轄する東京プロパティサービスでは、直営店舗ならびに入居テナントによる飲食の提供を行っており、2022年より、飲食提供用の容器類をプラスチック製から紙製・木製・バイオマス製へと順次切り替えを行っております。また、飲食の提供に伴って発生する廃棄物を、再生可能エネルギー発電の発電燃料や再生プラスチックなどへと転用を行う専門の収集業者に処理を依頼するなど、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みも実施しております。
<環境教育>
東京都競馬グループでは全役職員に対し、地球温暖化防止および節電の取り組みとして「スーパークールビズ」を実施し、従業員の環境に対する意識向上を目的とした啓発活動を行っております。
遊園地事業:事業インパクト評価結果
遊園地事業:事業インパクト評価を踏まえた対応策の検討
事業インパクト評価にて影響度が大きいと評価したリスクにおいては、財務への影響を整理し、対応策を検討しました。なお、“エネルギー価格・需要の変動”リスクについては、遊園地事業におけるバリューチェーン全体に影響することから、事業インパクト評価を踏まえた対応策の検討対象に加えております。
1.5℃シナリオ
4℃シナリオ
遊園地事業:機会の考え方
1.5℃シナリオにおいては、EVの普及や消費者の環境意識の高まりを背景に、環境配慮型施設への移行に向けた設備投資を行うことで、環境意識の高い顧客の集客の向上が期待されます。また、東京サマーランドの地理的特徴を活かした適切な環境保全活動の実施等により、地域の皆様をはじめ、ステークホルダーへの評価が向上する可能性がございます。
4℃シナリオにおいては、気候変動による夏季の温度上昇や夏季期間の長期化により、東京サマーランドの需要の増加(集客の増加)が期待されます。屋内アトラクションの人気の高まり等に伴い、新企画の導入を図ることで機会の最大化を目指します。今後は、機会についても、財務への影響と設備投資等によるコストを算出し、具体的な戦略を検討することで、機会の最大化を目指します。
遊園地事業:足元の取り組み
<省エネ対策>
東京サマーランドは、主に照明や空調設備を通じて電力エネルギーを使用しており、LED照明の導入などを通じて環境にやさしい空間づくりに努めております。
<太陽光発電設備>
自然環境に配慮した取り組みの一環として、2014年3月にお客様用駐車場の屋根に太陽光パネル3,465枚、総面積13,000㎡、約900kWの発電能力を持つ大型の太陽光発電設備を整備いたしました。発電した電力については、すべて電力供給網へ売電し、周辺地域の生活を支えております。
<植林と伐採サイクルの促進>
東京サマーランドの敷地面積の4分の3以上(約100ha)は、森林が占めており、水源涵養(かんよう)、生物多様性、健全な里山環境創出のための森林整備を実施しております。サントリーホールディングス株式会社が行う「天然水の森」の活動に賛同し、2014年より同社と協同して、敷地内の森林整備活動を行っております。また森林整備により発生した間伐材で作ったベンチをわんダフルネイチャーヴィレッジ園内に設置するなど、間伐材の有効活用を図っております。2023年には、東京サマーランド園内に天然水の森の取り組みに関するPRブースを設置し、来園者に向けて森林整備の意義や活動内容の発信を行っております。また、公益財団法人 東京都農林水産振興財団が行う多摩地域のスギ・ヒノキ林を花粉の少ないスギなどに植え替える「花粉の少ない森づくり」にも賛同し、外部の賛同企業とともに森づくりを進めており、健全な森林を次世代に継承し、地球温暖化防止にも貢献いたします。
さらに、施設の内装や備品の素材として「多摩産材」を積極的に採用しております。多摩産材は、東京都内の多摩地域で生育し、その地区で生産・認証された木材です。多摩産材の活用を進めることで、森林の整備が進み、結果的に手入れが行き届いた森が育つとともに、若木の植林によるCO2吸収が促進されると我々は考えております。これまでわんダフルネイチャーヴィレッジ内のドッグランの柵やレストラン「AZEKIRI」店内において多摩産材を活用しておりました。それに加えて、2023年に東京サマーランド1階エントランスのリニューアルを実施した際には、一部の柱の建材として多摩産材を採用し、園内店舗において多摩産材製の商品の販売を開始するなど、今後も積極的に多摩産材の活用を図ってまいります。
<再生素材製品の販売や脱プラスチック>
東京サマーランドでは、園内において再生素材を使用した製品を積極的に取り扱っております。2023年には園内で販売する一部のペットボトル飲料の容器素材を再生ペットにリニューアルし、そのほかにも再生ペットを素材とする水着の取り扱いを開始するなど、環境に配慮した商品を積極的に採用しております。また、東京サマーランド・
わんダフルネイチャーヴィレッジでは、環境保全に向けた取り組みの一環として、園内飲食店舗にて提供しているプラスチック製消費材を、紙・木製や植物由来素材を配合した製品等へ段階的に切り替えております。また、飲食の提供に伴って発生する廃棄物を、堆肥や製紙原料、再生プラスチックなどへと転用を行う専門の収集業者に処理を依頼しております。
サービス事業(商業施設及びオフィスビル賃貸と空調整備のみ):重要なリスク・機会の特定
サービス事業内の商業施設とオフィスビル賃貸は、バリューチェーン上の特徴が類似している一方で、空調設備は特徴が異なるため、リスクと機会を区分して分析しております。
※影響度は現在分析中です。「〇」は影響が大きいと想定されるもの、「△」は限定的に影響を受けるものとしています。
サービス事業:足元の取り組み
<省エネ対策>
ウィラ大井・ウィラ大森ビルでは、主に照明や空調設備を通じて電力エネルギーを使用しており、LED照明の導入などを通じて環境にやさしい空間づくりに努めております。
倉庫賃貸事業:重要なリスク・機会の特定
倉庫賃貸事業:足元の取り組み
<省エネルギー化・再生可能エネルギーの導入>
倉庫賃貸事業では、東京都品川区勝島第1・第2・第3地区、大田区平和島地区、千葉県習志野地区にて、トータル約36万㎡の物流倉庫施設を賃貸しております。大手物流企業への一棟貸しを中心に、マルチテナント型も展開しております。物流倉庫施設では、主にLED照明や高効率型空調機の導入を通じて省エネルギー化を図るとともに、勝島第1・第2地区においては、出光グリーンパワー株式会社様より再生可能エネルギー100%の電力を導入し、CO2排出量削減に寄与しております。
(2) リスク管理
気候変動におけるリスク重要度評価において、移行リスク・物理的リスクから考えられるリスクを抽出し、1.5℃・4℃シナリオ別に「リスクが発生した時の影響の大きさ」と「リスクの発生の確率」の2軸で各リスクをスコアリングしております。スコアリングの結果を「高」「中」「低」にレベル分けし、リスク重要度を決定しています。リスクのみならず機会についても気候変動の影響を識別し、分析・評価を行っております。
具体的なリスク管理プロセスにつきましては、■サステナビリティ全般(4)リスク管理をご参照ください。
(3) 指標及び目標
当社グループは、グループ事業におけるCO2排出量の把握と、2030年度までに主要2事業(公営競技事業・遊園地事業)のスコープ1・2におけるCO2排出量を2013年度(基準年度)比46%削減することを目標に、取組を進めております。
CO2排出量の把握については、当社グループの売上構成において高い比率を占める、公営競技事業(競馬場賃貸のみ)・遊園地事業・サービス事業(商業施設及びオフィスビル賃貸)・倉庫賃貸事業の4事業を対象としております。 公営競技事業・遊園地事業については、2013年度からScope1・2の排出量を把握しております。
一方、サービス事業(商業施設及びオフィスビル賃貸)・倉庫賃貸事業については、2013年度からの数値の算出が難しく、2019年度(一部2022年度)からのデータを基にCO2排出量の算出を行っております。また、当該2事業については、電力会社から購入する電力の使用によるCO2の排出が主であるとの判断から、Scope2の把握を優先しております。Scope1については、給湯室やシャワー室でのガス使用や社用車のガソリン使用によるCO2の排出があるものの、微量であると想定しております。
目標につきましては、日本政府や東京都の脱炭素政策に則り、主要2事業(公営競技事業・遊園地事業)におけるScope1・2のCO2排出量を、2030年度までに2013年度(基準年度)比46%削減することを掲げております。
足元、主要2事業における削減率は約52%に達しております。公営競技事業においては、競馬場内で使用する電気の実質再生可能エネルギー化達成(一部地区を除く)を背景に基準年度対比で既に約66%削減済みです。一方で、遊園地事業は約37%の削減に留まっており、引き続きLED照明、高効率型空調機や高断熱材などを導入することで、エネルギー使用の最適化・効率化を図り、目標の達成を目指しております。
今後につきましては、サービス事業・倉庫賃貸事業における2013年度のCO2排出量の把握が困難なことや、日本政府の新たな温室効果ガスの削減目標 が策定されていること等を踏まえて、来年度以降の目標設定の見直しを検討しております。
[CO2排出量の把握にかかる現状と今後の予定]
※勝島第三地区・平和島地区・習志野地区については契約先お客様が直接電力会社と契約しているため、Scope2の排出量は
ございません。
[CO2排出量と削減実績]
[4事業におけるCO2排出量の推移](単位:t-CO2)
※第1区は2019年度から、勝島第2区は2022年度からのデータが反映されています。
※Scope2算出対象である勝島第1区は2022年から、第2区は2023年10月から再生可能エネルギー由来の
電力に置き換えていることから、2024年度以降のScope2は0になる予定です。
■人的資本に関する情報開示
(1) 戦略
[人的資本に関する基本的な考え方]
当社グループは、競馬場をはじめ、オートレース場、遊園地、物流倉庫、商業施設などの施設(リアル)や
SPAT4などのシステム(バーチャル)が持つ「空間」を通じて、生きる喜びを提供し、人々の笑顔を創造する企業集団です。より多くの人の笑顔を創造するためには、従業員の個性や強みといった“らしさ”を活かしながら、空間に新たな価値を生み出す力が不可欠であると考えます。
従業員の力を最大化するために、より“当社らしさ”を重視した人材の採用と育成、適正な人員配置、職場環境の整備を進め、互いが高め合いながら安心して働くことができる組織づくりを推進します。そして、従業員一人ひとりが、新たな価値の創造に向けて、常に考え、提案し、行動する「笑顔の創造者」となることを目指します。
[人材育成方針]
当社グループでは、公営競技事業(競馬・オートレース)、遊園地事業、倉庫賃貸事業、サービス事業の4つの事業を俯瞰的に捉え、社会環境の変化を的確に対応し、新たな事業やサービスを創造、推進していく次世代リーダーの育成に努めております。また、グループ会社および社外との人事交流を通して、幅広い人脈の形成とそれに伴う人間性の強化を図っております。
① 採用(新卒採用/キャリア採用/地域・職種限定採用)
現在、当社グループでは入社後に様々な事業の経験を積ませる育成期間を確保するために、新卒採用を中心に採用活動を行っております。若年層の長期キャリア形成のために新卒採用は重要であると考えており、オンラインを中心とした採用活動を実施し、全国の優秀な人材の確保に努めております。また、採用ホームページの開設や早期からのオープンカンパニーの実施などを通して、学生に事業や仕事の内容について理解を深めてもらう取り組みを行っております。
一方で、事業によっては、専門的な知識やスキルが求められており、必要に応じてキャリア採用を実施しております。実績としては、SPAT4(南関東4競馬場在宅投票システム)の開発を担うSE経験者(IT人材)や経理経験者を採用しております。また、小林牧場や伊勢崎オートレース場といった東京から遠隔地にある事業所においては、
緊急時でも対応できるよう、機動的な人材を確保するため、地域・職種限定社員の採用も実施しております。
今後は、新卒採用による長期的な視点に立った採用計画を継続するとともに、事業の変化にも柔軟に対応するため、キャリア採用による即戦力人材の活用により、より強固な組織体制の整備を図ってまいります。
◆ 東京都競馬㈱における採用状況(入社年)
② 人材育成
(ア) OJTによる長期的な視野に立ったキャリア形成
当社では、大卒総合職の従業員に対して、数年おきの人事異動によるジョブローテーションを行っており、様々な業務を経験することで、幅広い知識の習得と俯瞰的な視点を持つ人材の育成、並びに業務を通じた人脈の形成を図っております。また、グループ会社間での人材交流も積極的に実施しており、人材交流を通して相互理解を図っております。
さらに、社員教育体制の一環として、中堅社員を中心に、将来当社グループを背負って立つ人材へと成長できるよう、社外研修制度(外部出向)を導入しております。外部機関(自治体や企業など)への一定期間の研修出向を通じて、多角的な視点での物事の見方を習得するとともに、異なる業種の人脈を形成するなど、社内だけでは得られない知識と経験を習得しております。
(イ) グループ共通の研修制度によるOff-JTの強化
当社グループでは、グループ共通の研修制度を導入しており、3か年計画(2022年~2024年)に基づき、「主体性の強化」を研修目標として、各種研修を実施しております。
主な研修としては、各階層において必要とされる能力(業務遂行力・対人関係能力など)を習得する「階層別研修」、当社グループの従業員として、特に強化が必要とされる能力(ロジカルシンキング・業務改善能力など)を習得する「特定能力強化研修」、当社グループの中期経営計画や社会環境などを踏まえ、全社的な共通理解を図るテーマについて、全従業員への理解を浸透させる「テーマ別研修」(DX・ITリテラシー、SDGs・ESG、ダイバーシティ&インクルージョンなど)の3種類の研修を実施しております。
また、「e‐ラーニング」を導入しており、従業員一人ひとりにあった多彩な成長機会を通して、能力向上と自律的なキャリア形成をサポートしております。
2025年4月からは、これまでの研修の成果と反省を踏まえ、新たな3か年計画を策定のうえ、社員の自主性を重視した最適な研修を行っていく予定です。
◆ 当社グループの研修体制
(ウ) 評価制度
目標管理制度(MBO)と考課表(行動評価)による総合評価で人事考課をしており、従業員が主体的に能力を発揮出来る環境を整えております。また、毎月、目標の達成状況(進捗)を確認する1on1の面談と人事考課のフィードバック面談を実施しており、従業員の心理的安全性とモチベーションアップの向上に努めております。
[社内環境整備方針]
当社グループでは、ダイバーシティ&インクルージョンを推進により、多様性を受容する組織風土を醸成し、多様な人材が活躍できる組織の構築を目指しております。そのため、従業員一人ひとりがその能力を十分に発揮することができるようにするため、仕事と育児の両立支援により、子育てをしながら仕事を続けられる職場環境を整備するとともに、ワークライフインテグレーションを意識した社内制度の充実を図っております。
① ダイバーシティ&インクルージョンの推進
(ア) 女性活躍推進に向けた取り組み
当社グループでは、性別にこだわらず、人格、能力などを重視した採用、人事を行っております。女性管理職については、現在、女性の管理職比率はグループ全体で11.9%(2024年12月末)でありますが、近年は、女性の競馬に対する関心の高まりや大井競馬場でのイルミネーションイベント(東京メガイルミ)などの効果により、採用者数に占める女性の割合が増えております。
入社後、育児休業等により長期間休業した場合でも、休業期間の長さに関係なく、本人の能力に応じた役職に復帰させるとともに、個々のニーズに合わせた適切なサポートにより、将来的には女性の管理職比率向上を図ってまいります。
また、現在、女性の技術職社員が1名となっております。そのため、女性活躍推進法に基づく行動計画では、「女性の技術職社員を現在の1名から2名に増加し、働き続けやすい職場環境を整備する」を目標とし、採用活動や各種環境整備を進めております。
(イ) 多様な人材の登用
当社では、多彩な能力を持つ従業員が、その能力を最大限に発揮するため、新卒採用(プロパー社員)と中途採用(キャリア社員)の両輪の採用を行っております。グループ全体を俯瞰的に捉える能力を有したプロパー社員と専門性の高い知識とスキルを有したキャリア社員が融合することにより、様々な人材がより高いレベルで活躍できる組織の構築を図っております。
また、定年退職者の継続雇用制度をはじめ、契約社員や派遣社員の採用、障害者雇用など、多様な人材を登用し、組織の活性化を図っております。
② 社員のエンゲージメントの向上
(ア) 一人ひとりの生活リズムに合った働き方の推進
多様な働き方に対応するため、テレワークの推進や時差出勤の推奨、半日休暇や時間休暇といった時間単位での休暇により、休暇が取得しやすい環境を整えております。これにより、従業員一人ひとりが自分の生活リズムに合った仕事のやり方を通して、最高のパフォーマンスが発揮できる環境整備を進めております。
(イ) 従業員持株会向け譲渡制限付株式報酬制度の導入
人的資本経営の考え方に基づく従業員への福利厚生の拡充策の一環として、当社が保有する自己株式を活用した本制度を導入いたしました。これにより、財産形成の一助になることに加え、経営に対する参画意識を高めることが期待されます。
(ウ) GLTD(団体長期障害所得補償保険)の導入
病気やケガにより長期間働けなくなってしまった従業員に対し、一定の所得を補償するGLTD制度を導入いたしました。従業員がより安心して働くことができる環境を整えることで、モチベーションの向上を図ってまいります。
(エ) メンター制度の活用
新入社員の職場環境への適応をはじめ、日常業務から個人のプライベートに関する相談まで、先輩社員が新入社員に向けて自己の経験等をもとに助言等の支援を行うメンター制度を導入しております。メンターである先輩社員と新入社員とのコミュニケーションを通じて、新入社員が安心して仕事に取り組める環境整備と定着率の向上を図っております。
(オ) 仕事と育児の両立支援
従業員の仕事と育児との両立を図るため、育児・介護休業法に基づく社内制度の整備はもちろんのこと、育児短時間勤務における対象年齢の引き上げや、子の看護休暇を無給扱いから有給扱いにする制度変更など、法令を超える会社独自の制度を導入しております。
また、育児休業取得対象者に向けての相談窓口による育休相談や、育児休業中のe‐ラーニングによる研修、育児休業経験のある男性社員が経験談を語る座談会の実施など、育児休業を取得しやすい環境整備と育児休業後の復帰に向けたサポートを推進しております。
(カ) 家族も含めた福利厚生サービスの充実
人間ドックの受診においては、本人のみならず配偶者への補助金の支給や、永年勤続者に対するリフレッシュ休暇と勤続年数に応じた旅行券の支給、厚生寮(熱海桃山苑)の家族利用など、家族も含めた福利厚生サービスの充実を図っております。
(キ) 従業員間の親睦と連携の強化
従業員で構成される「従業員向上会」という親睦団体があり、社内懇親イベントを定期的に実施しており、事業所や部署にとらわれないコミュニケーションの場の提供を通して、従業員間の親睦を図っております。
また、グループの全従業員を対象とした研修や同階層の従業員を対象とした研修を通して、全ての従業員が同じ環境のなかで積極的にコミュニケーションが取れる機会を提供しており、それにより事業所・部署間の垣根を越えた意見の交換や連携を図っております。
(2) 指標及び目標
[多様性の確保に向けた主な指標]
当社および当社グループにおける人的資本に関する指標は下表のとおりです。なお、同表における数値目標(KPI)の設定については、 現行の指標を踏まえ、次期中期経営計画の策定と合わせて検討中であります。
①提出会社
②連結会社
(注) 1.管理職に占める女性従業員の割合、男性の育児休業取得率、男女の賃金格差の算出に際して、出向者は出向先の従業員として集計しております。
2.管理職に占める女性労働者の割合および労働者の男女の賃金の差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律 第64号)の規定に基づき算出しています。なお管理職とは、管轄組織の責任者としてマネジメントを行う課長職以上を指しております。
3.男性の育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律 第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出しております。
4.男女の賃金の差異については、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しています。なお、賃金の差異は等級別人員構成の違いによって生じているものであり、正規雇用労働者における上位等級の男性比率が高いため差が生じておりますが、同一労働の賃金に差はありません。
5.連結子会社はいずれも、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律 第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律 第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 主要契約先への依存
当社は、「経営上の重要な契約等」に記載のとおり、大井競馬場を特別区競馬組合に賃貸しており、競馬各主催者が発売する勝馬投票券を基に一定料率により賃貸料を収受しております。当該競技場の入場人員や投票券売上高など開催状況によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 災害による影響
地震や風水害等の自然災害、事故やテロその他の人災が発生した場合には、所有資産の劣化・滅失により営業を休止しなければならない事態や、交通機関への被害により、競馬場、オートレース場及び東京サマーランド等の入場者数が減少し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 安全管理
当社は、大井競馬場、伊勢崎オートレース場、東京サマーランドなど多くのお客様が利用する規模の大きな施設を所有しており、お客様の安全を最優先課題と認識し施設の安全管理の徹底を図っておりますが、万一、重大な事故が発生した場合には、社会的信用が低下するとともに、営業の休止や施設の復旧に伴う費用が発生することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 情報システムに関するリスク
当社は、公営競技事業において、インターネット投票サービスSPAT4(南関東4競馬場在宅投票システム)を構築し、お客様の利便性向上と売上の更なる増進を目的として、適宜リニューアルを行っておりますが、今後もインターネットを利用した在宅投票の売上は増加するものと思われ、当該システムの重要性を認識し万全の対策を講じています。また、遊園地事業におきましては入園管理システムを導入し、東京サマーランドのチケット発券から売上集計業務をコンピューター・システムによって行っており、営業に影響を及ぼすことの無いよう万全の対策を講じています。しかしながら、これらの情報システムの運用について、コンピューター・ウイルス感染や外部からの不正アクセスなどにより、当該システムに障害が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 固定資産の減損
当社は、固定資産の減損に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し、減損損失の認識・測定を行っております。経営環境や事業の状況の著しい変化等により収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、対象資産に対する減損損失の計上により、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 気象・天候条件の影響
長雨や台風、降雪など天候の悪化は、大井競馬場、伊勢崎オートレース場の開催の可否及び東京サマーランド等の営業休止の可能性により入場者数等に影響を及ぼすほか、特にプール営業を主体とする東京サマーランドにおきましては、夏季の気象状況は重要な要因となるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 有価証券の価格の変動
当社グループは、市場性のある株式を保有しております。将来大幅な株価下落が続く場合には、保有有価証券に減損または評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 規制環境
当社は、大井競馬場を競馬法に基づき特別区競馬組合に、伊勢崎オートレース場を小型自動車競走法に基づき伊勢崎市にそれぞれ賃貸しておりますが、法令等に重要な改正があった場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 環境・気候変動の影響
気候変動や脱炭素社会への移行に伴う新たな法規制や社会的責任が発生した際は、法令順守等の対策費用の増加等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、気候変動に起因する異常気象の発生増加が、当社グループの事業活動全体に悪影響を及ぼす可能性がございます。これらの影響を軽減し、また変化に対応するために、サステナビリティを巡る課題については当社の重要な経営課題と位置づけ、経営戦略を策定するとともに、気候変動の予測及び変化の対応に努めてまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善や個人消費の一部持ち直し、インバウンド需要の拡大がみられ、国内景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、物価上昇や海外景気の下振れによる影響、米国の今後の政策動向、金融資本市場の変動等、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況の下、全国の地方競馬では入場者数が前年に比べ増加するとともに、インターネット投票の普及により勝馬投票券売上も増加基調を示しました。当社グループにおきましても、インターネット投票サービス
SPAT4(南関東4競馬場在宅投票システム)を中心とした公営競技事業が堅調に推移した他、各セグメントにおける新施設の稼働が収益基盤強化に寄与いたしました。
以上の結果、第101期連結会計年度の業績につきましては、売上高は40,443百万円(前期比7.7%増)、営業利益は13,926百万円(同4.2%増)、経常利益は13,912百万円(同3.9%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は9,706百万円(同14.8%増)となりました。
なお、財政状態につきましては、資産合計は122,405百万円(同5.7%増)、負債合計は31,263百万円(同7.8%増)、純資産合計は91,142百万円(同5.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
[公営競技事業]
大井競馬におきましては、開催日数は96日となりました。2024年度は、3歳ダート三冠競走がスタートし、それらの競走全てにおいて売上レコードを記録する等、多くのお客様に大井競馬場のレースの魅力を改めて発信する
1年となりました。
この間当社では、馬場の排水機能強化工事、小林牧場の馬場改修を進めた他、観客スタンド内の指定席を一部
グループ席へ改修する等、施設の機能強化と改善を進めました。
SPAT4におきましては、全国の地方競馬を15,465レース発売いたしました。この間、SPAT4公式アプリの機能強化、並びに南関東4競馬場公式ウェブサイト「nankankeiba.com」リニューアルを行う等、ユーザーの利便性や満足度向上を目的としたサービス強化を進めてまいりました。この他、SPAT4プレミアムポイントにおける各種キャンペーンの展開や、会員限定イベントを積極的に実施いたしました。これらの効果もあり、12月29日に開催された「第70回東京大賞典競走」を含む年末開催では、地方競馬における1開催あたりの売上レコードが更新されました。
この他、今期で7季目となる大井競馬場の冬季限定イルミネーションイベント「東京メガイルミ2024-2025」は、2024年11月2日から2025年1月12日までの53日間営業いたしました。企業・団体との連携イベントをはじめ、人気コンテンツとのコラボ企画やファミリー層への訴求力の高いイベントを積極的に行った結果、前期比4.9%増となる18万人のお客様にご来場いただきました。
伊勢崎オートレースにおきましては、オートレースの本場開催が130日、他場の場外発売は延べ287日実施され、勝車投票券売上は引き続き好調に推移いたしました。2024年12月には、現役オートレーサーをゲストに招きファンとの競馬予想イベントを実施し、満足度向上に努めました。
以上の結果、公営競技事業の売上高は28,669百万円(前期比4.5%増)、セグメント利益は11,137百万円(同2.8%増)となりました。
[遊園地事業]
東京サマーランドにおきましては、造波プールと流れるプールが融合した、これまでにない大迫力の新プール「MONSTER STREAM」が6月にオープンし、多くのお客様にお楽しみいただきました。また、5年ぶりのテレビCM放映やSNSの運用強化など、積極的な広告宣伝による集客増加を図ったことに加え、7月には園内デジタルマップを導入し、ウォータースライダーの混雑状況等をリアルタイムで提供することで、お客様の利便性と満足度の向上に努めました。
なお、夏季期間以外においては、駐車場や園内の一部をイベントスペースとして貸し出す等、施設の有効活用を行いました。
以上の結果、東京サマーランド及び各施設の入場人員は前期比10.3%増となる96万人、遊園地事業の売上高は3,827百万円(前期比19.5%増)、セグメント利益は534百万円(同15.2%増)となりました。
[倉庫賃貸事業]
倉庫賃貸事業におきましては、勝島第2地区のマルチテナント型倉庫においてテナント数の増減があったものの、引き続き高い稼働率を維持いたしました。
また、2024年3月に竣工いたしました新倉庫「習志野茜浜2号倉庫」も順調に稼働しており、当事業の収益基盤強化に貢献しております。
この他、平和島地区倉庫の外壁塗装替工事や勝島第3地区倉庫の屋上防水工事を実施する等、引き続き施設の維持管理に努めました。
以上の結果、倉庫賃貸事業の売上高は5,819百万円(前期比11.2%増)、セグメント利益は3,476百万円(同5.6%増)となりました。
[サービス事業]
オフィスビル「ウィラ大森ビル」や空調設備事業において安定的な収益確保に努めました。また、2024年3月に大井競馬場前ショッピングモール「ウィラ大井2号館」が完成し、以降、地域の皆様の暮らしに寄り添う店舗が続々とオープンいたしました。さらに同月、隣接地に新劇場「シアターH」も完成し、演劇やミュージカルを中心としたライブエンターテインメントの新たな発信拠点として多くのお客様にご来場いただいております。
以上の結果、サービス事業の売上高は2,283百万円(前期比2.1%増)、セグメント利益は「ウィラ大井2号館」のオープンに伴う諸費用が発生したこと等により217百万円(同8.1%減)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、15,867百万円と前連結会計年度末に比べ2,106百万円(15.3%)の増加となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益14,085百万円、減価償却費6,345百万円などの増加要因に対し、法人税等の支払額2,853百万円などの減少要因により、16,101百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ3,297百万円(25.8%)の収入増加となりました。この主な要因は、当期において公営競技事業における在宅投票システム(SPAT4等)賃貸料収入が増加したことに加え、前期において特別損失(サマーランド耐震工事関連費用)を計上したことにより、税金等調整前当期純利益が増加したことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出7,862百万円、無形固定資産の取得による支出2,575百万円などにより、8,633百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ96百万円(1.1%)の支出減少となりました。この主な要因は、当期において固定資産の取得による支出が減少したことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入2,000百万円の増加要因に対し、配当金の支払額2,709百万円、自己株式の取得による支出3,010百万円などにより、5,361百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ2,923百万円(35.3%)の支出減少となりました。この主な要因は、前期において第3回無担保社債の償還があったことによるものであります。
当連結会計年度の売上高等をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の売上高に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態の分析
当連結会計年度末における資産合計額は、122,405百万円と前連結会計年度末に比べ6,613百万円(5.7%)増加いたしました。
流動資産は23,889百万円と前連結会計年度末に比べ2,091百万円(9.6%)増加いたしました。これは、現金及び預金が1,878百万円増加したことが主な要因であります。
固定資産は98,516百万円と前連結会計年度末に比べ4,522百万円(4.8%)増加いたしました。有形固定資産については、習志野茜浜2号倉庫、大井競馬場第3駐車場劇場・商業施設新築工事が竣工したことなどにより、前連結会計年度末に比べ3,748百万円(4.5%)増加いたしました。無形固定資産については、南関ホームページ、SPAT4プレミアムポイントリプレースによる計上がありましたが減価償却により、前連結会計年度に比べ551百万円(9.7%)増加いたしました。投資その他の資産については、繰延税金資産が減少したものの、投資有価証券、長期立替金の増加により前連結会計年度末に比べ222百万円(4.4%)増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計額は、31,263百万円と前連結会計年度末に比べ2,259百万円(7.8%)増加いたしました。
流動負債は9,696百万円と前連結会計年度末に比べ1,782百万円(22.5%)増加いたしました。これは、未払法人税等が1,319百万円、未払金が573百万円増加したことが主な要因であります。
固定負債は21,567百万円と前連結会計年度末に比べ477百万円(2.3%)増加いたしました。これは、受入敷金保証金が265百万円、長期借入金が200百万円増加したことが主な要因であります。
当連結会計年度末における純資産合計額は、91,142百万円と前連結会計年度末に比べ4,354百万円(5.0%)増加いたしました。これは、期末配当金及び中間配当金の支払により2,720百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益9,706百万円の計上により、利益剰余金が6,985百万円増加したことが主な要因であります。
以上の結果、当連結会計年度末における自己資本比率は前連結会計年度末の74.9%から74.4%に下がり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の3,163.92円から3,410.48円に増加いたしました。
当連結会計年度の連結業績における売上高については、公営競技事業において、在宅投票システム(SPAT4)の売上が順調に推移していることに加えて、東京サマーランド夏季(7月~9月)入園者数の増加などにより増収となりました。この結果、売上高は40,443百万円と前連結会計年度に比べ2,899百万円(7.7%)増収となりました。
売上原価は、公営競技事業において、南関ホームページ、SPAT4プレミアムポイントリプレースによる減価償却費の増加、倉庫賃貸セグメントにおいて、習志野茜浜2号倉庫開業に伴う不動産取得税や減価償却費の増加により24,355百万円と前連結会計年度に比べ2,228百万円(10.1%)増加となりました。また、販売費及び一般管理費は2,161百万円で前連結会計年度に比べ107百万円(5.2%)増加となりました。この結果、営業利益は13,926百万円と前連結会計年度に比べ563百万円(4.2%)の増益となりました。
営業外収益については、受取配当金37百万円、未払配当金除斥益7百万円等を計上いたしました。また、営業外費用については、支払利息49百万円等を計上いたしました。この結果、経常利益は13,912百万円と前連結会計年度に比べ528百万円(3.9%)の増益となりました。
特別利益については、補助金収入206百万円、工事負担金等受入額14百万円を計上いたしました。特別損失については、東京サマーランドにおける台風被害の復旧費用として、災害による損失47百万円を計上いたしました。この結果、税金等調整前当期純利益は14,085百万円と前連結会計年度に比べ1,935百万円(15.9%)の増益となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は4,336百万円と前連結会計年度に比べ604百万円(16.2%)増加いたしました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は9,706百万円と前連結会計年度に比べ1,254百万円(14.8%)の増益となりました。また、1株当たり当期純利益は前連結会計年度の308.37円から359.94円に増加いたしました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要のうち主なものは運転資金及び設備投資資金であります。
当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、自己資金のほか、必要に応じて金融機関からの借入れ及び社債の発行により資金調達を行っております。
なお、設備投資の概要及び重要な設備の新設に関する計画につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
(注3)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利息を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループは、2021年12月期から2025年12月期までの5年間を計画期間とする「第3次中期経営計画~Galloping into the future~」において、売上高400億円、営業利益150億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円、自己資本利益率(ROE)10%以上、投下資本利益率(ROIC)8.5%以上を最終年度の目標に掲げております。
2024年2月には「長期経営ビジョン2035-未来の想像、空間の想造、笑顔の創造-」を策定し、現行の中期経営計画と連動させることで、当社グループの持続的成長・発展をより確実なものとし、さらなる企業価値の向上につなげてまいります。
なお、第3次中期経営計画の4年度目である当連結会計年度の売上高は40,443百万円(前期比7.7%増)、営業利益13,926百万円(同4.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益9,706百万円(同14.8%増)、自己資本利益率10.9%、投下資本利益率9.0%となり、売上高において、同計画で定める当連結会計年度の業績目標を上回る結果となりました。
なお、株主還元の方針につきましては、当社は安定性・継続性を踏まえ、安定配当を基本としており、原則的には金銭での配当による還元を行っております。
第3次中期経営計画の期間中は、連結配当性向30%を基準とし、年間配当90円/株を下限とすることといたします。ただし、外部環境の変化等により、親会社株主に帰属する当期純利益が大きく変動する事業年度については、その影響を考慮し配当額を決定します。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
なお、繰延税金資産につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (税効果会計関係)」に記載しております。
主要な取引契約
(注) 1 賃貸借契約 賃貸料:原則として勝馬投票券売上高の4.5%。
2 上記契約は2025年3月31日に有効期間が満了しますが、引き続き更新する予定であります。
特記すべき事項はありません。