第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの事業環境は近年大きな変化の渦中にあります。生活者はデジタル化の進展により個人化された顧客体験を求め、これに対応するため、広告会社の事業モデルは従来的なエージェンシーモデルから顧客企業とのパートナーシップへと移行しつつあります。また、価値提供の手法はテクノロジー、オートメーション、アウトソーシングの活用が進展しています。

2020年はコロナ禍がこれらの変化を加速させました。新型コロナウイルスの世界的蔓延は、生活者の行動様式と価値観を大きく変化させ、Eコマースへの急速な傾倒に代表される消費行動、メディア接触行動などに顕著な変化が認められます。また、世界的な危機に際し、社会的課題への意識が従来以上に高まっています。

企業においても、こうした生活者の意識・行動の変化への対応に加え、リモートワーク対応など企業活動の本質的な転換が迫られ、いわゆるデジタルトランスフォーメーションと呼ばれる企業経営全般の基盤のデジタル化が求められるなど、各企業の経営および事業課題は広範化・複合化し、より高度なアプローチを必要としています。国内・海外を問わず、当社グループの顧客のニーズは従来の広告・コミュニケーション領域を超え、顧客各社の事業戦略に基づいた統合的な課題解決力や、データを駆使した企画提案・実施力が求められています。それに伴い、コンサルティング業界など広告業界以外の企業と競合するケースが増えつつあり、当社グループを取り巻く競争環境は厳しさを増しています。加えて、社会課題への適切な対応が、当社グループを含む全ての企業の命題となっており、その成否が企業の存亡を左右することも広く認識されていると考えます。

こうした急速な変化に迅速に対応すべく、当社グループは2020年8月より「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と呼ぶ構造改革に着手し、2020年度中に海外事業の構造改革や保有株式の売却などの一部施策を実施してきました。2021年度は国内外でのさらなる構造改革やバランスシートの効率化に向けた施策を遂行します。

さらに、新たな事業環境に即応し、そこに見出される事業機会を的確に捉えるための事業変革と、その先の事業成長を具体化していくために、2021年度から2024年度までの4年間を対象とする「中期経営計画―構造改革と事業変革による持続的な成長の実現―」を策定し、2021年2月に公表いたしました。本計画では、既に着手している構造改革を加速するとともに、業績の回復から事業変革を通じた成長の実現と企業価値の持続的な向上を図るべく、以下の4点に注力してまいります。

 1.  事業変革による成長戦略の実践

 2.   収益性と効率性の改善

 3.   株主価値の持続的向上、財務基盤の改善

 4.   ESG経営の推進

 

 

(1)中期経営計画における4つの柱

 ① 事業変革による成長戦略の実践

高度化・複合化する顧客の課題に対し、当社グループは保有するユニークかつ多岐に渡る事業資産・ケイパビリティを活かし、それらを適切に組み合わせた統合的解決手段として提供する「Integrated Growth Solutions」による顧客事業の成長貢献を事業戦略の核に据えています。 

クリエーティビティなどマーケティング・コミュニケーションで培ったノウハウを、データとテクノロジーと融合して進化させるとともに、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」事業と位置づけた顧客企業の事業変革を支援する領域を強化し、データとインサイトによるコンシューマー・インテリジェンスを活用した統合ソリューションとして提供するモデルを確立してまいります。

当社グループは、その発展の歴史の中で、ケイパビリティを拡張し収益源を多様化してまいりました。「マーケティング・コミュニケーション」領域には、コンテンツ、メディア、クリエーティブがあり、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域には、マーケティング・テクノロジー、カスタマーエクスペリエンスマネジメント、コマース、システム・インテグレーション、トランスフォーメーション & グロース戦略が含まれます。このサービスカバレッジの多様さが当社グループの競争優位の源泉となります。更に、独自のデータ基盤に基づく、コンシューマー・インテリジェンス(生活者の行動理解に結びつけるデータ・アナリティクスとインサイト)によってこれらの幅広いケイパビリティを支えております。加えて、テクノロジー企業やプラットフォーマーとのアライアンスを構築し、これら企業のマーケティング・テクノロジーの導入支援・分析ツールの活用におけるリソースを拡充しており、その規模・質は市場において競争力を発揮しております。

これらの優位性を活かしながら、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資を通じたオーガニック成長と、成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへフォーカスしたM&A・投資によりケイパビリティとスケールを拡充し、事業変革の実現を目指します。

 

 ② 収益性と効率性の改善

包括的見直しにより、国内事業・海外事業における構造改革を進めてまいります。

国内事業では、「ビジネスフォーメーションの変革」、「人財フォーメーションの変革」、「オフィス環境の進化」を推進します。「ビジネスフォーメーションの変革」により、最高品質かつ最も効率的なバリューチェーンで顧客企業へ提供するため、現在の国内事業の事業領域である「広告」、「クリエーティブ」、「マーケティング・プロモーション」、「デジタル」、「メディア」、「コンテンツ」などを、4つの事業領域(「AX(Advertising Transformation)領域」、「BX(Business Transformation)領域」、「CX(Customer Experience Transformation)領域」、「DX(Digital Transformation)領域)」)に変革します。2021年度末までにこの変革の完了を目指します。この4つの事業領域が生み出す価値を高めるため国内事業を構成する電通ジャパンネットワーク(DJN)各社の機能を、専門領域やシナジー創出の観点からグルーピングし、バーチャル組織の設置も含めて、最適化していきます。「人材フォーメーションの変革」では人財の再配置、および新たな成長のために必要な人財を見据えた採用戦略の見直しの実施を検討しています。「オフィス環境の進化」では、汐留の電通本社ビルをDJN全体の中核となる事業拠点とし、各社が相互に繋がりシナジーを高度化し、事業を創発する場へと進化させます。DJN各社の執務・共有スペースを新しい働き方に適した設計のもとに配置することで、固定費の低減と同時に、従業員がより生き生きと効率的に働ける環境を整備します。

海外事業では、2年間で、現在160以上あるエージェンシーブランドの数を6つのグローバルリーダーシップブランドへ統合します。より統合され、効率化された組織構造に変革することで、アイデアが先導し、データが推進し、テクノロジーが実現するソリューションを、個々の顧客企業に最適な形で提供できる状態を目指します。

これらの包括的見直しを端緒とした構造改革の諸施策の着実な遂行に加え、収益性改善を恒常的な効果とするための施策を継続的に検討してまいります。ニアショア・オフショアやRPAの活用などの事業基盤構築による効率化や、国内外での事業再編を通じた重複機能の排除、業務の標準化とIT基盤の整備などを通じた管理コストの縮減を進めてまいります。また、リモートワークの浸透などを踏まえた最適なオフィス活用のあり方を再考し、不動産保有の方針も含めて検討してまいります

 

 

③ 株主価値の持続的向上と、財務基盤の改善

構造改革・事業変革に必要な資金を確保する観点から、健全なバランスシートの維持は重要な経営課題です。短期的にはコロナ禍による不透明な事業環境をマネージしつつ、中長期的な事業変革や成長戦略を支える財務基盤を維持するために適切なレバレッジ水準を設定するとともに、非事業資産の処分なども含めた総合的な施策を続けてまいります。また、より明確な株主還元を行うため、利益に応じた配当方針へ変更し、利益の回復・成長に応じた適切な還元を行います。他方、成長に向けた投資については事業環境を注視した保守的な水準を維持し、規律ある投資を行ってまいります。事業変革および投資を通じた事業成長、利益成長を通じた株主価値の持続的向上に努めてまいります。

 

④ ESG経営の推進

当社グループは、ESG経営を一層重視してまいります。当社グループ自身の取組みとして、気候変動への影響緩和に寄与する活動、ダイバーシティとインクルージョンの企業文化の醸成と機会の提供によるグループ内のすべての人財の成長支援など多様な活動を積極的に推進します。また、広告事業におけるノウハウを活用し、より良い選択を生活者に促し、持続可能な消費と生産を促進する対外的活動にも取り組んでまいります。加えて、当社グループ内と顧客に対し、協働で持続可能な社会的価値を創造し、世界の発展と成長に貢献することを目指してまいります。

コーポレートガバナンス面においても、長期的な事業成長に資するガバナンス体制の高度化を図るべく、様々な施策を検討してまいります。

当社グループの環境負荷低減活動、ダイバーシティ&インクルージョン対応、責任あるコミュニケーション・コンテンツ制作方針、SDGsアクションなど、個別活動の詳細については、「電通統合レポート」(https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/reports/)をご覧ください。

 

(2)中期経営計画の経営目標と経営方針

中期経営計画の経営目標と経営方針は以下のとおりです。

 

経営目標

・オーガニック成長率      

  2021~24年度の平均成長率で3~4%

・オペレーティング・マージン

  2021年度から2024年度にかけて漸進的に改善

・売上構成比に占めるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー構成比

  当中期経営計画期間を通じて向上させ、将来的には50%へ

・ESG経営の推進

  2030年までにCO2排出量を46%削減、2030年までに再生可能エネルギー使用率100%を達成など、

  複数の目標とアクションプランを設定

  従業員エンゲージメントスコアの向上

  従業員のダイバーシティ&インクルージョンを推進

 

経営方針

・新たな配当方針:配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を今後数年で35%へと漸進的に引き上げ

・中期的なNet Debt/EBITDA倍率を1.5倍水準(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低

  い水準)で管理

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しています。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない、または重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループではこのような経営及び事業リスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすための様々な対応および仕組み作りを行っております。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループのリスク管理体制

当社グループでは、下図のようなコーポレートガバナンス体制の下、経営目標の達成を阻害する将来の不確実な要因としてのリスクの管理を所管する内部統制・リスク委員会を設置しています。2020年は内部統制・リスク委員会を3回開催し、ERMEnterprise Risk Management: 全社的リスクマネジメント)のアプローチを基軸に、グループ経営上重要なリスクを識別・評価し、そのリスクの顕在化の予防および顕在化した場合の影響の最小化のため、リスク・スポンサーを選定、リスク対応計画の策定と実施を委任し、その対応状況のモニタリングを定期的に行っていました。

また、国内事業である電通ジャパンネットワーク(以下、DJN)に内部統制・リスク委員会、海外事業である電通インターナショナル(以下、DI)にリスク委員会を設置し、同様のリスク管理活動を行っています。2020年は、DJN内部統制・リスク委員会を6回、DIのリスク委員会を4回開催いたしました。

 

コーポレートガバナンス体制


 

 

(1) 景気変動ならびにコロナ禍が加速する社会的変革に伴うリスク

当社グループの業績は、景気によって主要な顧客である企業からの予算が増減されることが多いため、景気変動の影響を受けやすい傾向があります。とりわけ、新型コロナウイルスの世界的蔓延に伴うマクロ経済の減速の継続が、当社グループの業績に引き続き悪影響を及ぼす可能性があります。コロナ禍の影響は、経済面に留まらず、生活者の意識と行動様式の変化を加速させ、企業も、D2Cコマースのチャネル構築やデジタルトランスフォーメーションの実装など企業活動の本質的な転換が迫られる中、当社グループへの顧客のニーズは、従来の広告・コミュニケーション領域を超え、高度化・複合化しており、当社グループが適切な対応ができない場合は、中長期的な事業成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2) 中長期の視点での新たなビジネス開発に伴うリスク

当社グループは、上記のような事業環境の変化に速やかに対応し、新たな事業機会を的確に捉えるための事業変革を企図した「中期経営計画―構造改革と事業変革による持続的な成長の実現―」を策定し、2021年2月に発表いたしました。本計画では、広告マーケティングで培ったノウハウをデータとテクノロジーと融合し進化させるとともに、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」事業と位置付けた顧客企業の事業変革を支援する領域の強化による成長戦略の実践を骨子のひとつとしています。しかしながら、グループ内のイノベーションの不足、生活者動向の読み違い、過度に楽観的な事業計画、共同事業パートナーとの交渉難航などの理由で、これらのビジネス開発が中長期的に収益化できず、当社グループの業績に悪影響が出る可能性があります。また、仮に中長期的に収益化できる事業であっても、投下した資本の回収に遅延が出た場合、一時的に当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 人材に係るリスク

当社グループの成長力および競争力は、優秀な人材の獲得と維持に依存します。
そのため、労働市場の逼迫による人材不足等に起因して、当社グループが必要な人材を十分に確保できない場合、顧客への高付加価値のサービス提供ができずに当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの「中期経営計画―構造改革と事業変革による持続的な成長の実現―」の実現のためには、社員のエンゲージメントが重要であり、グループ内で、ダイバーシティ&インクルージョンなどを含めたビジョンや価値観を実行できなかった場合、あるいは社員のモチベーションを保つことができなかった場合、社員のロイヤルティが低くなり、優秀な人材を惹きつけ維持することが難しくなるリスクが存在します。
 当社グループは、長期的に目指す方向性として「an invitation to the never before.」というタグラインと8つの行動指針「8 WAYS」からなる新しいビジョン&バリューを掲げ、世界中の電通グループ内の企業・個人、さらには外部パートナーとの価値創造に向けたチーミングを推進・加速することで、多様性を競争力につなげていく企業風土の浸透に取り組んでいます。

 

(4)事業の構造改革に係るリスク

当社グループは、事業・競争環境の急速な変化に対応するため、構造改革の加速を決定しました。海外事業においては、2年間で、現在160以上あるエージェンシーブランドの数を6つのグローバルリーダーシップブランドへ統合します。また、国内事業においては、「ビジネスフォーメーションの変革」「人財フォーメーションの変革」「オフィス環境の進化」を推進します。この構造改革により、新たな事業モデルの導入を加速してクライアントへより良いサービスを提供し、従業員満足度の向上、収益の拡大およびオペレーティング・マージンの改善を目指します。しかしながら、同構造改革が想定通りに進まなかった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)既存の広告業界の競争環境と構造変化に起因するリスク

①  広告業界競合社との価格競争のリスク

当社グループは、国内・海外を問わず、競合する広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの競争にさらされており、顧客企業における潜在的なマーケティング予算削減のニーズに対し、とりわけメディアプランニング・バイイングの領域において、価格競争が激化する恐れもあります。
 当社グループは、長年の経験で培った生活者インサイトと統合されたソリューションを提供しており、このような高付加価値を引き続き提供することで、競合社との差別化が図られ、強固な顧客との関係性を維持し、過度の価格競争を回避できると考えております。

 

 

② グローバル企業の扱い喪失リスク

当社グループの顧客には、グローバルレベルで事業を展開する企業が多数含まれます。これらの顧客は、広告キャンペーンの統一性を担保する必要性や効率的な運用の観点から、グローバルレベル(あるいはAPAC等の地域レベル)で取り扱い広告会社を選定する入札(グローバルピッチ)を実施することがあります。グローバルピッチは対象となるメディア予算などの取扱高が多額になる傾向があります。
 今後、当社グループの既存顧客が実施するグローバルピッチで当社グループが敗北した場合、当社グループの収益減少につながる可能性があります。または、これらのピッチで勝利するために従来よりも低マージンでの受注を余儀なくされた場合、当社グループのオペレーティング・マージンの悪化につながる可能性があります。

一方、そういったクライアントに対して、提供する価値に対する正当な対価を得るため、全社的な取り組みを推進しております。

 

③ メディア環境の構造変化に伴うリスク

生活者を取り巻くメディア環境は、イノベーションを背景に、グローバルレベルで大きくデジタルへとシフトしています。当社グループは、このメディア環境の構造変化を商機と捉え、次世代のメディアにグループのリソースを柔軟に配分・投下し、常に最新の生活者の行動原理に合わせたマーケティングソリューションを顧客企業に提供しています。
 しかしながら、当社グループが、メディア環境の構造変化に迅速かつ適切に対応できない場合、メディアからの収益の喪失、顧客との関係性の悪化などに繋がり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、このメディア環境の構造変化は、国・地域ごとに異なる形態および時間軸で進行しており、当社グループが、一部の国・地域において、この潮流に乗り遅れるリスクもあります。

 

④ 他業種との競争の拡大

当社グループは、同業の広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの競争に加え、この数年でコンサルタント、テックカンパニーなど他業種との新たな競争にさらされています。顧客からの広告・マーケティング活動の効率化・最適化の要求が強まり、生活者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、データアナリティクス領域、カスタマーエクスペリエンス(CX)領域、コンサルティング領域の企業と競合するケースが増えております。

今後、当社グループの既存の基軸事業である広告マーケティング領域と他領域の間の境界線が今後ますます曖昧になり、他業種との競争が激化した場合、当社グループの収益の一部を他業種の競合社に奪われる可能性があります
 当社グループは、この業界構造の変化を商機と捉え、広告マーケティングで培ったノウハウを、データとテクノロジーと融合して進化させ、コンシューマー・インテリジェンスを活用した統合ソリュ―ションを提供するモデルを確立していきます。

 

⑤ 海外におけるインハウス化の潮流

この数年、海外の広告市場、とりわけ米国市場を中心に、顧客企業が従来広告会社に外注してきたマーケティング活動の一部を顧客内部で実施する潮流(インハウス化)が広がっており、旧来型の広告会社の提供サービスへの需要が減るとともに、顧客のインハウス化を支援できるコンサルティング機能への需要が高まっています。
当社グループは、CXマーケティング・サービスラインを中心にこの潮流に対応したコンサルティング機能の強化を図っておりますが、当社グループ傘下の一部の広告会社は、この潮流の影響を受けて収益が減少する可能性があります。

 

 

(6) コンテンツ事業に係るリスク

当社グループは、国内・海外を問わず、映画への制作出資やスポーツイベントの放送権の仕入販売などのコンテンツ事業を展開しております。これらのコンテンツ事業には、収入を得る前に支払が先行するもの、収支計画が多年度にわたるものが多く含まれております。また、大型のスポーツイベントの協賛権や放送権の獲得などには多額の財務的コミットメントを必要とするものもあります。
 当社グループはこれらのコンテンツ事業領域に長く従事しているため一定の精度で収支計画を立てる知見を有しており、また多くのコンテンツ事業案件をポートフォリオとして管理することでコンテンツ事業のリスク分散を図っております。
 しかしながら、コンテンツ事業の収入を左右する生活者の反応を確実に予測することは困難であり、案件が収支計画通りに進捗しない場合、また、当社グループによる仕入金額を下回る金額でしか協賛権や放送権を顧客に販売できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)DI社に係るのれんおよび無形資産の減損リスク

当社は2013年3月の英国の大手広告会社Aegis Group plc(以下、イージス社)買収後、当社グループの海外事業の推進を一本化して現電通インターナショナル社(以下、DI社、旧電通イージス・ネットワーク社)に再編しました。

当社グループは、イージス社の買収、およびその後DI社がグローバルレベルで実施した、多数の会社の買収に伴い、多額ののれんおよび無形資産を計上しております。

当社グループは、主に海外事業における業績の低迷やコロナ禍によりさらに高まる事業環境の不透明感を踏まえ、2020年は毎四半期末に減損テストを実施してきました。その結果、コロナ禍の長期化によりさらに高まる事業環境の不透明化を考慮し、2020年度決算で海外事業において1,403億円ののれん減損損失を計上しました。

今後の減損テストの結果、再び減損損失が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報セキュリティ・サイバーセキュリティに係るリスク

当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業の未公開の商品・サービス情報や事業戦略に係る情報を受領することが頻繁にあります。当社グループでは情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格を取得するなど、情報管理には万全を期しておりますが、万一情報漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
 また、想定外の外部サイバー攻撃、従業員またはサプライヤのアクションによって、重大なビジネスシステムおよびデータの機密性、完全性または可用性が脅かされ、その結果、重大な運用・規制・財務・レピュテーション上の、またはクライアントへの影響が生じる可能性があります。
 当社グループでは、セキュリティリスクへの対応を確かなものとするため、国内・海外のネットワークのセキュリティ部門を束ねるグループ・セキュリティ機能を設け、進化する脅威の需要協を継続的に評価し、ERMアプローチに沿ったリスク管理とコントロールの有効性評価を行っています。

 

(9)法規制・訴訟等に係るリスク

① 労働法規に違反するリスク

当社グループは、社員ひとりひとりが恒常的に良好なコンディションを維持できる労働環境を整えることを経営の最優先課題の1つとして取り組んでおりますが、同労働環境の整備が維持できない場合、当社グループの社員のモチベーションおよびパフォーマンスの低下、優秀な社員の外部流出、多様性ある人材の獲得の困難化などの事態が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社の完全子会社である株式会社電通を中心に2017年度から継続的に取り組んでいる労働環境改革により、国内における社員の労働環境は着実に改善されているものの、労務管理上の不祥事が再発した場合、当社グループのレピュテーションが大きく悪化する可能性があります。

 


  ② 個人情報等に係るリスク

当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業にとっての既存顧客・潜在顧客の個人情報を受領することがあります。また、顧客企業からの消費者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、パーソナルデータを利活用した商品・サービスを開発して顧客企業に提供しております。

当社グループは、国内・海外を問わず、個人情報保護法およびEU一般データ保護規則等の法令または諸規制を遵守し、また、これら法令または諸規制の改定に迅速に対応しており、現時点においてこれらの法令または諸規制が当社グループの事業に悪影響を及ぼすことは想定しておりません。しかしながら、万一個人情報の漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、今後、これら法令または諸規制が改定され、一方、倫理的な観点から、当社グループのパーソナルデータの利活用に何らかの制限が課され、商品・サービスの一部を顧客企業に提供できなくなった場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

 
   ③ 訴訟等に係るリスク

現在、当社グループは、その業績に重大な影響を及ぼし得る訴訟等を抱えておりません。しかしながら、当社グループが広範な領域にわたり遂行している事業は、国内・海外を問わず、常に顧客・媒体社・協力会社等から訴訟を提起されるリスクを内包しております。

 

(10)災害、事故等に関わるリスク

当社グループが事業を遂行または展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、パンデミックの再発、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合には、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
 当社グループでは、地域・マーケット毎に想定される上記の問題に対し、DJNならびにDIのリスク委員会において、クライシス・マネジメントや事業継続計画(BCP)を定期的に検討しております。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

(1) 財政状態及び経営成績の状況

<事業全体の概況>

2020年は新型コロナウィルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。特に2020年3月以降は、当社グループの国内外の事業にも影響を及ぼし始めました。

こうした環境下、当期(2020年1月1日~12月31日)における当社グループの業績は、収益は9,392億43百万円(前期比10.4%減)、売上総利益は8,350億42百万円(同11.1%減)、売上総利益のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は△11.1%となりました。景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は1,239億79百万円(同11.9%減)、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は14.8%(前期は15.0%)、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は698億90百万円(前期比8.2%減)となりました。

事業面では、売上総利益に占めるデジタル領域構成比がグループ全体で53.9%(前期は47.5%)へと拡大し、高成長領域への事業モデル転換が進展しました。 

一方、制度上の利益項目では、海外事業に起因するのれんの減損損失および国内外での構造改革費用の計上などにより、営業損失は1,406億25百万円(前期は営業損失33億58百万円)、親会社の所有者に帰属する当期損失は1,595億96百万円(前期は当期損失808億93百万円)となりました。

なお、調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益および一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。
 買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、

            完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用
 一時的要因の例示:構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など
 親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社の所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。

2020年8月に着手した“包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し”から導かれた施策の1つとして、既に実施中の海外事業での構造改革に加え、2021年2月に「国内事業の構造改革」の概要、また当見直しに紐づくバランスシートの効率化や株主価値の最大化に向けた施策も合わせ、新たな事業変革をベースに成長を描いた「中期経営計画 ―構造改革と事業変革による持続的な成長の実現―」も発表しました。更に、その先の持続的成長を実現していくため、2021年3月開催の定時株主総会へ推薦する新任の取締役候補者として、電通インターナショナル社のグローバルCEOであるWendy Clark(ウェンディ・クラーク)を推薦し、同株主総会において選任されました。また株主価値向上の観点から、300億円を上限とした自己株式取得の実施を発表しました。

 

     当期の連結業績(単位:百万円、△は減少)

科目

2020年度

2019年度

前期比・差

収益

939,243

1,047,881

△10.4%

売上総利益

835,042

939,385

△11.1%

調整後営業利益

123,979

140,751

△11.9%

オペレーティング・マージン

14.8%

15.0%

△20bps

調整後当期利益(親会社の所有者に 帰属)

69,890

76,120

△8.2%

営業損失

△140,625

△3,358

△137,267

当期損失(親会社の 所有者に帰属)

△159,596

△80,893

△78,702

 

 

 

<当期の連結業績のポイント>

売上総利益は前期比△11.1%(為替影響排除ベース同△9.8%)の8,350億42百万円となりました。売上総利益減少の主要因は、オーガニック成長(△1,039億25百万円、成長率(連結△11.1%、国内事業△8.4%、海外事業△13.0%))、為替影響(△143億2百万円)です。

国内事業において、デジタル領域は好調に推移しましたが、コロナ禍の影響もあり、マス4媒体市場が縮小し、前期比△8.3%の3,489億2百万円となりました。

海外事業においても、コロナ禍の影響で、ヨーロッパ、中東およびアフリカ(以下「EMEA」)、米州(以下「Americas」)、アジア太平洋(日本を除く。以下「APAC」)の全地域がマイナスのオーガニック成長となり、同△13.1%(為替影響排除ベース同△10.9%)の4,863億2百万円となりました。

売上総利益に占めるデジタル領域構成比は大幅に拡大し、連結53.9%(前期は47.5%)、国内事業34.8%(同29.3%)、海外事業67.5%(同59.9%)となりました。

 

調整後営業利益は、前期比△11.9%(為替影響排除ベース同△10.6%)の1,239億79百万円となりました。国内事業の調整後営業利益は、減収などにより、同△13.4%の627億46百万円となり、オペレーティング・マージンは18.0%(前期は19.1%)となりました。海外事業の調整後営業利益は、コストコントロールや構造改革の成果などにより、為替影響排除ベースでは若干の増益(同+0.2%)となりましたが、前期比△2.7%の665億18百万円、オペレーティング・マージンは13.7%(前期は12.2%)となりました。

営業利益調整項目は、減損損失の増加(+710億50百万円)、構造改革費用の増加(+587億12百万円)などによって損失が拡大し、△2,646億5百万円となりました。

その結果、営業損失は、前期の33億58百万円から1,372億67百万円損失が拡大し、1,406億25百万円となりました。

 

調整後当期利益(親会社の所有者に帰属)は、主に調整後営業利益の減少により、前期比△8.2%の698億90百万円となりました。

当期利益調整項目は、アーンアウト債務・買収関連プットオプション再評価損益の増加はあったものの、減損損失および構造改革による営業利益調整項目の減少が大きく、前期差724億72百万円の損失増加となり、△2,294億86百万円となりました。

その結果、当期損失(親会社の所有者に帰属)は、前期の808億93百万円から787億2百万円損失が拡大し、1,595億96百万円となりました。

 

 

<当期の連結業績:地域別>

1.国内事業

コロナ禍の影響は大きく、顧客企業によるマス広告出稿は大きく落ち込みましたが、デジタル領域では顧客企業によるデジタルトランスフォーメーション需要が継続しており、当期間を通して好調に推移しました。会社別では、㈱電通が大幅な減収(前期比13.2%減)となったものの、㈱電通国際情報サービス(ISID、同12.2%増)や㈱電通デジタル(同15.6%増)などが貢献しました。2020年2月から開始した迅速なコストコントロールと経費の適正化、並びに2017年度から実施している労働環境改革による生産性の向上などの効果はあったものの、減収を相殺するには至りませんでした。

その結果、国内事業の売上総利益は3,489億2百万円(同8.3%減)、売上総利益のオーガニック成長率は△8.4%となりました。また、調整後営業利益は627億46百万円(同13.4%減)、オペレーティング・マージンは18.0%(前期は19.1%)と前期を下回りました。

なお、第3四半期には、㈱電通において、社員に新しいキャリアの選択肢を提供することを目的とした早期希望退職プログラムの実施を決定し、第4四半期に当プログラムを実施しました。これを主な要因として、2020年度に国内事業として合計242億78百万円の構造改革費用を計上しました。また、減損損失は43億52百万円(前期は0百万円)となりました。 構造改革の概要については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)(単位:百万円、△は減少)

IFRSベース

2020年度
(1-12月)

前期差

前期比

㈱電通

187,215

△28,353

△13.2%

㈱電通国際情報サービス(ISID)

37,472

+4,082

+12.2%

㈱電通デジタル

25,102

+3,383

+15.6%

㈱CARTA HOLDINGS

20,281

△163

△0.8%

㈱電通テック

13,667

△1,876

△12.1%

㈱電通ライブ

10,223

△1,797

△15.0%

地域電通※

17,839

△4,116

△18.7%

その他・内部取引等

37,103

△2,624

△6.6%

国内事業 合計

348,902

△31,464

△8.3%

 

 ※「地域電通」は100%連結子会社の㈱電通東日本、㈱電通西日本、㈱電通九州、㈱電通北海道の4社の合計

 

2.海外事業

海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は、地域別では、EMEAが△12.4%、Americasが△11.3%、APACが△18.0%となり、全体では△13.0%となりました。

海外事業の売上総利益は、4,863億2百万円(前期比13.1%減)となりましたが、リストラによるコスト削減や、景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は665億18百万円(同2.7%減)となりました。オペレーティング・マージンは13.7%(前期は12.2%)となり、前期を上回りました。

なお、海外事業において計上した構造改革費用は541億15百万円(前期は196億82百万円)、減損損失は1,403億67百万円(前期は736億69百万円)となりました。 構造改革の概要については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を、減損損失の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (2) 重要なのれんおよび無形資産、及び、(3)のれんの減損テスト」をご参照ください。

 

EMEA:売上総利益のオーガニック成長率は、新型コロナウイルスの感染が拡大した第2四半期に大きく落ち込みました。第3四半期には回復傾向がみられたものの、第4四半期は、第3四半期までの傾向から大きな変化は見られませんでした。通年ではロシアが唯一のプラス成長となりました。コロナ禍による規制の影響が大きかったフランス、ドイツ、オランダの不調は第4四半期まで継続しました。英国とスペインは、特にメディア事業の減収が顕著となりました。第4四半期においては、CXM事業とクリエイティブ事業は比較的堅調に推移した一方で、屋外広告や経験マーケティング分野の収益は減少しました。

 

 

Americas:第1四半期にプラスであった売上総利益のオーガニック成長率は、新型コロナウイルスの感染が拡大した第2四半期には、二桁のマイナスとなりました。その後、第3、第4四半期と緩やかながら回復傾向がみられました。米国では、CXM事業で第4四半期にテック系顧客企業からの追加受注があり、またEコマースとD2C戦略を支えるファーストパーティデータに顧客企業の注目が集まっていることから、CXM事業とその中核ブランドであるMerkleは、2021年に向けて成長の兆しが見えてきました。メディア事業のパフォーマンス分野においては、12月に顧客企業のターゲティング広告出稿増により足元は順調なものの、メディア事業全体においては、2020年度の年間を通して厳しい状況となりました。クリエイティブ事業は、コロナ禍でプロジェクトベースの受注が減少しました。

 

APAC:売上総利益のオーガニック成長率は年間を通してマイナスが継続したものの、第2四半期を底に回復傾向にあります。特に第4四半期においては、プロジェクトベースのCXM、メディア、クリエイティブの各事業の受注が徐々に回復し、想定を上回る業績となりました。中国は第4四半期もマイナス成長のまま推移したものの、オーストラリアの第4四半期はプラス成長となり、インドも第4四半期において、それまでの四半期と比較して大幅な改善となりました。

 

  海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)

 

2020年度

(1-12月)

2020年度

第4四半期(10-12月)

2020年度

第3四半期(7-9月)

2020年度

第2四半期(4-6月)

2020年度

第1四半期(1-3月)

EMEA

△12.4%

△14.4%

△12.9%

△20.2%

△0.4%

Americas

△11.3%

△13.0%

△15.3%

△17.1%

+1.2%

APAC

△18.0%

△10.9%

△16.4%

△26.4%

△19.5%

海外事業 合計

△13.0%

△13.2%

△14.6%

△20.0%

△3.3%

 

 

          海外事業 サービスライン別の売上総利益・オーガニック成長率(△はマイナス成長)

2020年度(1-12月)

 

売上総利益(構成比)

(単位:百万円)

オーガニック成長率

メディア

231,657(47%)

△15.6%

クリエイティブ

110,290(23%)

△18.0%

CXM※

144,357(30%)

△3.2%

 

    ※顧客体験マネジメント(Customer Experience Management)

 

<2020年までの連結ガイドラインとその進捗について>

前事業年度の有価証券報告書に記載した当社グループが設定した2020年までの連結ガイドラインは下記のとおりです。

① 売上総利益のオーガニック成長率3%以上(2020年までの3年間のCAGR)の達成

② オペレーティング・マージンは2018年より改善

③ 株主還元については安定的な配当を堅持しつつ、今後の業績やキャッシュ・フローの状況を勘案した

  適切な利益の還元を検討

 

当期の実績をふまえたガイドラインの進捗は以下のとおりとなりました。

コロナ禍の影響による世界的な景気後退と、それに伴う広告市場の縮小により、上述のとおり当期のオーガニック成長率は△11.1%(2019年度は△1.0%、2018年度は3.4%)となりました。一方、オペレーティング・マージンについては、コストコントロールにより、14.8%(2019年度は15.0%、2018年度は16.4%)となりました。

また、2020年度の1株当たりの年間配当金は、安定性を重視しつつ、連結業績動向、財務状況等を総合的に勘案して、71.25円(2019年度は95.0円、2018年度は90.0円)となりました。なお、株主価値向上の観点から、2019年8月7日に300億円を上限とする自己株式取得の実施を決定し、その後、299億円の取得を実施いたしました。

 

 

<財政状態の状況について>

当期末は、前期末と比べ、主に、国内事業のその他の金融資産および海外事業ののれんが減少したこと等から、資産合計で4,153億16百万円の減少となりました。一方、主に営業債務が減少したことから、負債合計で1,831億36百万円の減少となりました。また、主に親会社の所有者に帰属する当期損失の計上などにより、資本合計は2,321億80百万円の減少となりました。

国内事業における、その他の金融資産の減少は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と呼ぶ構造改革に着手し、2020年度中に保有株式の売却などの一部施策を実施したためです。

また、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループは、今後の経営方針として、中期的なNet Debt/EBITDA倍率を1.5倍水準(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)で管理していく方針であります。健全なバランスシートの維持は重要な経営課題であり、短期的にはコロナ禍による不透明な事業環境をマネージしつつ、中長期的な事業変革や成長戦略を支える財務基盤を維持するために適切なレバレッジ水準を設定するとともに、非事業資産の処分なども含めた総合的な施策を続けてまいります。

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、5,306億92百万円(前連結会計年度末4,140億55百万円)となりました。主に投資活動による収入などにより、前連結会計年度末に比べ1,166億37百万円の増加となりました。

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ83億56百万円増加し、883億13百万円となりました。当連結会計年度の運転資本の増減額は△225億40百万円となり、前連結会計年度の増減額△282億54百万円と比べ、運転資本の減少額が減少しました。また、それに加え、法人所得税の支払額が減少したことなどにより、営業活動の結果により得た資金が増加しました。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ2,130億64百万円増加し、1,370億13百万円となりました。主に、有価証券の売却による収入が増加したことによるものです。有価証券の売却による収入の増加は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と呼ぶ構造改革に着手し、2020年度中に保有株式の売却などの一部施策を実施したためです。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動の結果支出した資金は、前連結会計年度に比べ888億18百万円増加し、966億22百万円となりました。主に社債の発行による収入が増加した一方、長期借入れによる収入が減少したことや、前述の社債の発行による調達資金を原資とした長期借入金の返済による支出が増加したことなどにより資金が減少したことによるものです。なお、2019年8月7日開催の取締役会において、300億円を上限とする自己株式取得の実施を決議したこと等に伴い、当連結会計年度に100億4百万円の自己株式の取得による支出がありました。

 また、2021年2月15日開催の取締役会において、300億円を上限とした自己株式取得の実施を決議しております。(取得する期間:2021年2月16日~2021年12月23日)

 

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

販売実績

当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(売上高)は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

国内事業

1,723,383

89.9

海外事業

2,774,832

85.9

4,498,216

87.4

 

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。

 

 (2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① 資本政策・財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、2021年2月に発表した中期経営計画期間において、経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のデジタル化の進展などがもたらす社会の変化と事業機会を積極的にとらえ、広く社会課題の解決に資するとともに、さらなる企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。

財務の健全性に関しては、中期的には純有利子負債のEBITDAに対する倍率が1.5倍程度(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)までに保つことで、高い信用格付を維持することを目指します。また、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化、またはコミットメントライン等により、十分な手元流動性を確保することとしております。さらに、2020年度においては、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。これらにより、急激な事業環境の変化等に対するリスク耐性が高い状態を維持できるよう努めてまいります。

M&A・設備投資等の成長投資に関しては、経営の安定性・財務の健全性に留意しながら、グループ全社にわたる成長に向けた投資を推進してまいります。

株主還元に関しては、これらの活動を通して得られる利益の適切な配分と本源的な企業価値の向上を通じて株主の皆様への利益還元に努めることとし、次期以降の配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向を今後数年で35%まで漸進的に高めてまいります。

 

② 資金需要の主な内容

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金および制作費の支払等ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。

また、2021年2月に発表した中期経営計画期間においては、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資や高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへのM&A・投資に係る資金需要が見込まれます。

 

 

③ キャッシュフローの状況

当連結会計年度のキャッシュフローの状況につきましては「(経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フロー」に記載したとおりであります。

 

④ 資金調達及び流動性の状況 

当社グループは、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、または債権流動化等の多様な手段の中から、その時々の市場環境や長期資金の年度別償還額も考慮した上で、機動的に有利な手段を選択し、資金調達を行っております。なお、2020年度の持株会社体制移行に伴い、長期資金については、原則として当社で一元的に資金調達しております。

また、緊急時の流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円のコミットメントラインを、電通インターナショナル社(Dentsu International Limited)は、5億ポンド(約699億円)のコミットメントラインを設定しております。また、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。

さらに、グループ内の資金調達の一元化・資金効率の向上・流動性の確保の観点から、資金余剰状態にある子会社から親会社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。

当社グループは、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題と認識しており、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。また、主要な内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、当社グループの事業の維持拡大、必要な運転資金の確保、成長投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。

また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態および経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

当社は、特に以下の重要な会計方針について、当社グループの財政状態および経営成績に特に影響を与える、あるいは、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りにより、大きな影響を受けると考えております。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定 (追加情報)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りについて」に記載のとおりであります。

 

① 収益の認識

「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (15)収益」をご参照下さい。

 

② 有形固定資産、のれん、無形資産および投資不動産の減損

当社グループは決算日において、棚卸資産および繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、または減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産または資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。

 

これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

海外事業におけるのれんの減損テストにおける主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (3)のれんの減損テスト」をご参照ください。

 

③ 金融商品の評価

当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチやインカムアプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式およびその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額、観察不能なインプットを用いて主としてインカムアプローチやマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。

企業結合の結果生じる条件付対価および株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。

当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 確定給付制度債務の評価

確定給付制度債務および退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。

当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、認識される費用および計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 引当金

当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。

これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除および将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。

当社グループは、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用および計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社は、2020年11月11日開催の取締役会において、当社が保有する株式会社リクルートホールディングス(東証第1部 証券コード:6098、以下、「RH社」という。)の普通株式の一部をRH社が実施する「株主による売出し」に応じて売却することなどを決議し、以下の取引等に関する契約を締結いたしました。

 

(1)引受人の買取引受けによる海外売出し

当社は、2020年12月4日に、当社が保有するRH社普通株式のうち4,337万6,000株を、海外市場(但し、米国においては1933年米国証券法に基づくルール144Aに従った適格機関投資家に対する販売のみとする。以下同じ。)における売出しのため、Merrill Lynch International及びMorgan Stanley & Co. International plc(以下、「共同主幹事会社」と総称する。)を共同主幹事会社兼ジョイント・ブックランナーとする引受人(以下、「引受人」と総称する。)に買取引受けさせ(以下、「引受人の買取引受けによる海外売出し」という。)、当社に対して売却代金として167,850,805,920円(1株につき3,869.67円)が支払われました。

 

(2)オーバーアロットメントによる海外売出し及び株式貸借取引

当社は、2020年12月4日に、Morgan Stanley & Co. International plcが、引受人の買取引受けによる海外売出しにあたり、その需要状況等に応じてRH社普通株式の海外市場における売出し(以下、「オーバーアロットメントによる海外売出し」といい、引受人の買取引受けによる海外売出しと併せて「本海外売出し」と総称する。)を行うことができるよう、同社のために行為するモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社に対して、当社が保有するRH社普通株式のうち662万4,000株を貸し出し、併せて、同株式数を上限として追加的に当社からRH社普通株式を取得する権利(以下、「グリーンシューオプション」という。)を付与しました。

同社は、同月25日にグリーンシューオプションを行使して、当社からRH社普通株式662万4,000株を買い取ったため、同月30日に、当社に対して売却代金として25,632,694,080円(1株につき3,869.67円)が支払われました。

 

(3)ロックアップについて

当社は、本海外売出しに関連して、共同主幹事会社に対し、売出価格等決定日である2020年12月2日に始まり、本海外売出しに係る受渡期日である同月4日から起算して180日目の日に終了する期間(ロックアップ期間)は、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、RH社株式の売却その他の処分(但し、本海外売出し、オーバーアロットメントによる海外売出しのためのRH社普通株式の貸付け及び移転等一定の事由は除く。)を行わない旨を合意しています。

 

 

5 【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発費の金額は、国内事業における情報サービス業の1,952百万円です。

国内事業である株式会社電通国際情報サービスを中心とする情報サービス業では、同社グループの中期経営計画の基本方針「主力事業の進化」「新規事業の創出」「事業基盤の革新」を推進するため、各種技術研究に加え、独自ソリューションの開発・強化を実施しました。主な研究開発活動の概要は以下のとおりです。

 

(1) 金融ソリューション

金融ソリューションの研究開発活動の金額は172百万円です。
 主な活動内容は、金融機関および一般事業会社に対する新規ソリューションの技術調査・研究であります。

 

(2) ビジネスソリューション

ビジネスソリューションの研究開発活動の金額は1,079百万円です。
 主な活動内容は、次世代開発基盤「aiuola」に関する技術研究および会計ソリューション「Ci*X」の開発であります。

 

(3) 製造ソリューション

製造ソリューションの研究開発活動の金額は259百万円です。
 主な活動内容は、設計開発領域における新規ソリューションの調査およびAI技術を活用した製品の開発であります。

 

(4) コミュニケーションIT

コミュニケーションITの研究開発活動の金額は38百万円です。
 主な活動内容は、RPAソリューションの開発およびビッグデータ分析基盤に関する技術調査であります。

 

(5) その他

上記に属さない研究開発活動の金額は402百万円です。
  主な活動内容は、スマートシティ実現を支援する行政プラットフォームや、AI・機械学習技術を活用したソリューションなどの研究・実証実験などであります。