(1)事業環境の変化と成長機会
当社グループを取り巻く環境は、社会とともに大きな変化の最中にあります。新テクノロジーの台頭により、生活者のメディア接触や消費行動は多様化し、生活者自身も個人化された体験にこれまで以上に価値を感じる状況にあります。生活者のこうした変化に呼応して、顧客企業から当社グループに寄せられるニーズも高度化・複合化しており、従来の広告コミュニケーション領域を超えて、事業戦略に基づく統合的な課題解決や、データとテクノロジーを活用した顧客体験全体の設計および体験価値向上への提案が求められています。
さらに別の観点では、コロナ禍による世界的危機によって、生活者の社会的課題への意識が高まり、サステナビリティを重視する価値観が定着してきています。当社グループを含む企業にとっても、ESG領域での適切な対応が重要命題となっており、その解決に向けた企業への期待が一層高まっています。
これら社会の変化と価値観の変容、それに伴う顧客企業ニーズの拡張は、当社グループにとっても新たな成長機会となります。その一方で、コンサルティング業界やITシステム業界など、従来とは異なる企業と競合するケースも増え、競争環境はより激しさを増している状況にあります。
(2)企業価値の最大化に向けて
電通グループは、顧客、パートナー、従業員そしてすべての生活者の成長に寄与することによって、よりよい社会を実現するために存在しています。この当社グループの存在理由を具現化する新しい経営方針として、2022年1月からの新執行体制のもと「B2B2S」を提唱しました。「B-to-B」のさらにその先にある「S(ソサエティ)」と向き合う「B-to-B-to-S (Business to Business to Society)」企業グループへ進化し、顧客企業との仕事を通じて、社会課題をともに解決することで、社会全体に中長期的に価値を生み出しながら、株主、顧客企業、パートナー、従業員などあらゆるステークホルダーにとっての「企業価値」の最大化に取り組むことを目指してまいります。
(3)「中期経営計画2024」の進捗およびアップデート
事業環境が激変する中で、当社グループは、2020年8月より「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」にもとづく構造改革に着手し、国内・海外事業双方でのコスト構造の改善、不動産などの非事業資産売却によるバランスシートの効率化を達成しました。
また2021年2月発表の「中期経営計画2024」における1年目となる2021年度は、コロナ禍からの需要回復と構造改革の効果により、オーガニック成長率は二桁となり、調整後オペレーティング・マージンは2020年を大きく上回りました。また既存事業で培ったクリエイティビティなどのノウハウをデータとテクノロジーで進化させて顧客の事業変革を支援する、高成長領域の「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」も二桁成長で業績に貢献し、結果として、2021年度は上場来最高額となる売上総利益、調整後営業利益、営業利益となっています。
今後の見通しとしましては、新型コロナウイルス感染症の再拡大など不透明な要素はありますが、当社グループの中核事業である広告市場は、2021年に続き、2022年も全世界で9.2%(当社グループ予測)の成長が見込まれています。2022年は、2024年までの中期経営計画において、事業変革と持続的成長のフェーズへと移行する転換点であるため、2022年2月に同計画を更新し、目標ターゲットの具体化・上方修正を行いました。
当社グループでは中期経営計画の推進において、以下の4点に注力していきます。
1. 事業変革による成長戦略の実践
2. 収益性と効率性の改善
3. 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
4. ESG経営の推進
① 事業変革による成長戦略の実践
高度化・複合化する顧客課題に対し、当社グループでは「インテグレーテッド・グロース・ソリューション」として、当社グループが保有するユニークで多岐に渡るケイパビリティを最適に組み合わせ、統合的解決を図るソリューションを戦略の核に据えます。今後は、M&Aによる強化も視野に入れた「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域の成長・拡充を梃に、マーケティング・コミュニケーション領域の多様なケイパビリティの統合を図り、顧客のトップライン成長を実現するソリューションとして一層強化していきます。
さらに新たなソリューションとして、社会への貢献を通じた事業成長を実現するビジネス・アクセラレーター「dentsu good - a sustainability accelerator(dentsu good - サステナビリティ・アクセラレーター)」を2022年4月にローンチする予定です。
当社グループは、その発展の歴史の中で、ケイパビリティを拡張し収益源を多様化してまいりました。「マーケティング・コミュニケーション」領域には、クリエーティブ、メディア、コンテンツ等があり、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域には、マーケティング・テクノロジー、カスタマーエクスペリエンスマネジメント、コマース、システム・インテグレーション、トランスフォーメーション&グロース戦略等が含まれます。このサービスカバレッジの多様さが当社グループの競争優位の源泉となります。更に、独自のデータ基盤に基づく、コンシューマー・インテリジェンス(生活者の行動理解に結びつけるデータ・アナリティクスとインサイト)によってこれらの幅広いケイパビリティを支えております。加えて、テクノロジー企業やプラットフォーマーとのアライアンスを構築し、これら企業のマーケティング・テクノロジーの導入支援、分析ツールの活用におけるリソースを拡充しており、その規模・質は市場において競争力を発揮しております。
これらの優位性を活かしながら、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資、およびスキル開発や採用など人材への投資を通じたオーガニック成長を実現します。2021年には、米国のエージェンシーであるライブエリア(PFSweb, Inc.の事業ユニットブランド)を買収してコマース領域を強化し、㈱ドリームインキュベータを持分法適用関連会社化してビジネスコンサルティングのケイパビリティを向上させました。また、2022年1月からセプテーニグループを連結子会社化して、日本市場でのデジタル広告シェアにおいてリーダーの地位を獲得しました。今後のM&A 等の資金として2024年度までに2,500~3,000 億円を想定しており、成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへフォーカスした規律ある投資行動によってケイパビリティとスケールを拡充し、事業変革の実現を目指します。
② 収益性と効率性の改善
2020年より取り組む包括的見直しにより、国内事業・海外事業における構造改革を進めてまいりました。
国内事業では、これまでの事業領域である「広告」「クリエーティブ」「マーケティング・プロモーション」「デジタル」「メディア」「コンテンツ」などを、4つの事業領域(「AX(Advertising Transformation)領域」「BX(Business Transformation)領域」「CX(Customer Experience Transformation)領域」「DX(Digital Transformation)領域)」)に変革しました。この4つの事業領域が生み出す価値を高めるため、国内事業を構成する電通ジャパンネットワーク(DJN)各社の機能を、専門領域やシナジー創出の観点からグルーピングし、バーチャル組織の設置も含めて最適化しています。2021年7月には、㈱電通デジタルと㈱電通アイソバーを合併しました。また㈱電通ダイレクトマーケティングと㈱DAサーチ&リンクを統合した㈱電通ダイレクトは、上述のセプテーニグループの連結子会社化に際して、同社グループに移管されました。国内グループのコーポレート機能についても、2022年1月に㈱電通コーポレートワンを設立し、人財と機能の集約を進めています。
海外事業では、現在160以上あるエージェンシーブランドを6つのグローバルリーダーシップブランドへ統合する取り組みを推進しています。より統合され、効率化された組織構造に変革することで、「アイデアが先導し、データが推進し、テクノロジーが実現するソリューション」を、個々の顧客企業に最適な形で提供できる体制を目指します。
今後も、実行したコスト削減や構造改革の成果を定着させるとともに、必要な施策を引き続き進めてまいります。グループ企業の再編や重複機能の整理による経営効率の改善、ニアショア・オフショアやRPAなどの活用による収益性の向上を図りつつ、統合等によりコーポレート機能の高度化・効率化を進め、管理業務の標準化やIT基盤整備などを通じて、さらに費用削減を推進する予定です。
③ 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
事業変革や成長戦略に必要な資金を確保する観点で、健全かつ柔軟なバランスシートを維持することは重要な課題です。「高成長領域への規律あるM&A投資」「コアビジネス強化に向けた設備投資」「株主還元の充実」「適切な財務レバレッジの管理」「非事業資産の見直し」などを総合的に加味した資金配分方針を定め、株主価値の持続的向上を図ってまいります。
株主還元施策としては、2022年度に上限400億円の自己株式取得を実施することを、2022年2月に発表しました。また2021年度の1株当たり年間配当金は117.5円と上場来最高となりました。今後は中期経営計画で掲げた方針に基づき、配当性向を漸進的に高める方針です。
④ ESG経営の推進
当社グループはESG経営を一層重視して企業価値向上へと繋げていきます。「2030サステナビリティ戦略」を遂行し、昨年設置した「サステナブル・ビジネス・ボード」のもと、事業成長とサステナビリティ戦略の統合を進めます。また、従業員のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)は、国内事業のチーフ・ダイバーシティ・オフィサーと海外事業のチーフ・エクイティ・オフィサーを中心に推進します。ESG経営の推進に向けて、経営幹部の報酬制度に非財務指標も反映します。
ガバナンス強化に向けては、取締役会議長を非業務執行取締役が務めることで、取締役会の監督機能の強化を図ります。
当社グループの環境負荷低減活動、ダイバーシティ&インクルージョン対応、責任あるコミュニケーション・コンテンツ制作方針、SDGsアクションなど、個別活動の詳細については、「電通統合レポート」(https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/reports/)をご覧ください。
(4)中期経営計画の経営目標
アップデートした中期経営計画の経営目標は以下のとおりです。
①事業変革による成長戦略の実践
・オーガニック成長率:2021年度を基準に2024年度まで年平均成長率ベースで4~5%
・売上総利益に占める「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域の構成比を今後50%に高めることを目指す
②収益性と効率性の改善
・2023年度まで調整後オペレーティング・マージンを17.0~18.0%のレンジで管理し、2024年度には18.0%を確保
③財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
・Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍とする (IFRS16控除ベース)
・配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を漸進的に高め、2024年度までに35%へ
④ESG経営の推進
・2030年度までにCO2排出量を46%削減、2030年度までに再生可能エネルギー使用率100%を達成(利用可能なマーケットに限定)
・従業員エンゲージメントスコアの向上
・従業員のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の強化。2030年度までに女性管理職比率を30%((電通ジャパンネットワーク:25%、電通インターナショナル:50%)へ
当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しています。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない、または重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループではこのような経営及び事業リスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすための様々な対応および仕組み作りを行っております。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社グループのリスク管理体制
当社グループでは、下図のようなコーポレートガバナンス体制の下、経営目標の達成を阻害する将来の不確実な要因としてのリスクの管理を所管するグループリスク会議を設置し、ERM(Enterprise Risk Management: 全社的リスクマネジメント)のアプローチを基軸に、グループ経営上重要なリスクを識別・評価し、そのリスクの顕在化の予防および顕在化した場合の影響の最小化のため、リスク・スポンサーを選定、リスク対応計画の策定と実施を委任し、その対応状況のモニタリングをグループ経営会議において定期的に行っています。
また、国内事業である電通ジャパンネットワーク(以下、DJN)と海外事業である電通インターナショナル(以下、DI)に各々リスク委員会を設置し、同様のリスク管理活動を行っています。

(1) 景気変動ならびにコロナ禍が加速している社会的変革に伴うリスク
当社グループの業績は、景気によって主要な顧客である企業からの予算が増減されることが多いため、景気変動の影響を受けやすい傾向があります。新型コロナウイルスの世界的蔓延に伴うマクロ経済の減速は、2021年においては回復傾向に転じましたが、コロナ禍の影響は、経済面に留まらず、生活者の意識と行動様式の変化を加速させ、企業も、D2Cコマースのチャネル構築やデジタルトランスフォーメーションの実装など企業活動の本質的な転換が迫られる中、当社グループへの顧客のニーズは、従来の広告・コミュニケーション領域を超え、高度化・複合化しており、当社グループが適切な対応ができない場合は、中長期的な事業成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 中長期の視点での新たなビジネス開発に伴うリスク
当社グループは、上記のような事業環境の変化に速やかに対応し、新たな事業機会を的確に捉えるための事業変革を企図した中期経営計画を策定し、2021年2月に発表し、また22年2月には、その内容のアップデートを行いました。本計画では、広告マーケティングで培ったノウハウをデータとテクノロジーと融合し進化させるとともに、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」事業と位置付けた顧客企業の事業変革を支援する領域の強化による成長戦略の実践を骨子のひとつとしています。しかしながら、グループ内のイノベーションの不足、生活者動向の読み違い、過度に楽観的な事業計画、共同事業パートナーとの交渉難航などの理由で、これらのビジネス開発が中長期的に収益化できず、当社グループの業績に悪影響が出る可能性があります。また、仮に中長期的に収益化できる事業であっても、投下した資本の回収に遅延が出た場合、一時的に当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 人財に係るリスク
当社グループの成長力および競争力は、優秀な人財の獲得と維持に依存します。
そのため、労働市場の逼迫による人材不足等に起因して、当社グループが必要な人財を十分に確保できない場合、顧客への高付加価値のサービス提供ができずに当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの中期経営計画の実現のためには、社員のエンゲージメントが重要であり、グループ内で、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンなどを含めたビジョンや価値観を実行できなかった場合、あるいは社員のモチベーションを保つことができなかった場合、社員のロイヤルティが低くなり、優秀な人材を惹きつけ維持することが難しくなるリスクが存在します。
当社グループは、長期的に目指す方向性として策定した新しいビジョン&バリューである「an invitation to the never before.」およびこれに基づく8つの行動指針「8 WAYS」のもと、世界中の電通グループ内の企業・個人、さらには外部パートナーとの価値創造に向けたチーミングを推進・加速することで、性別、国籍、年齢、性的志向、障がいの有無、勤続年数などにかかわらず、誰もが自分らしさを存分に発揮して働けるインクルーシブな企業文化を醸成し、多様性を競争力につなげていく企業風土の浸透に取り組んでいます。また、2021年度からは、グループ全体でエンゲージメント調査を実施し、従業員の声に耳を傾け、組織課題の発見・改善を目指しております。
(4)事業の構造改革に係るリスク
当社グループは、事業・競争環境の急速な変化に対応するため、構造改革の加速を決定し推進しております。海外事業においては、2年間で、現在160以上あるエージェンシーブランドの数を6つのグローバルリーダーシップブランドへ統合する計画が順調に進捗しています。また、国内事業においては、「ビジネスフォーメーションの変革」「人財フォーメーションの変革」「オフィス環境の進化」を推進しており、この構造改革により、新たな事業モデルの導入を加速してクライアントへより良いサービスを提供し、従業員満足度の向上、収益の拡大およびオペレーティング・マージンの改善を目指します。しかしながら、同構造改革が想定通りに進まなかった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)既存の広告業界の競争環境と構造変化に起因するリスク
① 広告業界競合社との価格競争のリスク
当社グループは、国内・海外を問わず、競合する広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの競争にさらされており、顧客企業における潜在的なマーケティング予算削減のニーズに対し、とりわけメディアプランニング・バイイングの領域において、価格競争が激化する恐れもあります。
当社グループは、長年の経験で培った生活者インサイトと統合されたソリューションを提供しており、このような高付加価値を引き続き提供することで、競合社との差別化が図られ、強固な顧客との関係性を維持し、過度の価格競争を回避できると考えております。
② グローバル企業の扱い喪失リスク
当社グループの顧客には、グローバルレベルで事業を展開する企業が多数含まれます。これらの顧客は、広告キャンペーンの統一性を担保する必要性や効率的な運用の観点から、グローバルレベル(あるいはAPAC等の地域レベル)で取り扱い広告会社を選定する入札(グローバルピッチ)を実施することがあります。グローバルピッチは対象となるメディア予算などの取扱高が多額になる傾向があります。
今後、当社グループの既存顧客が実施するグローバルピッチで当社グループが敗北した場合、当社グループの収益減少につながる可能性があります。または、これらのピッチで勝利するために従来よりも低マージンでの受注を余儀なくされた場合、当社グループのオペレーティング・マージンの悪化につながる可能性があります。
一方、そういったクライアントに対して、提供する価値に対する正当な対価を得るため、全社的な取り組みを推進しております。
③ メディア環境の構造変化に伴うリスク
生活者を取り巻くメディア環境は、イノベーションを背景に、グローバルレベルで大きくデジタルへとシフトしています。当社グループは、このメディア環境の構造変化を商機と捉え、次世代のメディアにグループのリソースを柔軟に配分・投下し、常に最新の生活者の行動原理に合わせたマーケティングソリューションを顧客企業に提供しています。
しかしながら、当社グループが、メディア環境の構造変化に迅速かつ適切に対応できない場合、メディアからの収益の喪失、顧客との関係性の悪化などに繋がり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、このメディア環境の構造変化は、国・地域ごとに異なる形態および時間軸で進行しており、当社グループが、一部の国・地域において、この潮流に乗り遅れるリスクもあります。
④ 異業種との競争の拡大
当社グループは、同業の広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの競争に加え、この数年でコンサルタント、テックカンパニーなど異業種との新たな競争にさらされています。顧客からの広告・マーケティング活動の効率化・最適化の要求が強まり、生活者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、データアナリティクス領域、カスタマーエクスペリエンス(CX)領域、コンサルティング領域の企業と競合するケースが増えております。
今後、当社グループの既存の基軸事業である広告マーケティング領域と他領域の間の境界線が今後ますます曖昧になり、異業種との競争が激化した場合、当社グループの収益の一部を異業種の競合社に奪われる可能性があります。
当社グループは、この業界構造の変化を商機と捉え、広告マーケティングで培ったノウハウを、データとテクノロジーと融合して進化させ、コンシューマー・インテリジェンスを活用した統合ソリュ―ションを提供するモデルを確立していきます。
(6) コンテンツ事業に係るリスク
当社グループは、国内・海外を問わず、映画への制作出資やスポーツイベントの放送権の仕入販売などのコンテンツ事業を展開しております。これらのコンテンツ事業には、収入を得る前に支払が先行するもの、収支計画が多年度にわたるものが多く含まれております。また、大型のスポーツイベントの協賛権や放送権の獲得などには多額の財務的コミットメントを必要とするものもあります。
当社グループはこれらのコンテンツ事業領域に長く従事しているため一定の精度で収支計画を立てる知見を有しており、また多くのコンテンツ事業案件をポートフォリオとして管理することでコンテンツ事業のリスク分散を図っております。
しかしながら、コンテンツ事業の収入を左右する生活者の反応を確実に予測することは困難であり、案件が収支計画通りに進捗しない場合、また、当社グループによる仕入金額を下回る金額でしか協賛権や放送権を顧客に販売できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)DI社に係るのれんおよび無形資産の減損リスク
当社は2013年3月の英国の大手広告会社Aegis Group plc(以下、イージス社)買収後、当社グループの海外事業の推進を一本化して現Dentsu International Limited(以下、DI社、旧電通イージス・ネットワーク社)に再編しました。
当社グループは、イージス社の買収、およびその後DI社がグローバルレベルで実施した、多数の会社の買収に伴い、多額ののれんおよび無形資産を計上しております。
当社グループは、2020年度においてのれんの減損テストを実施した結果、コロナ禍の長期化により高まった事業環境の不透明化を考慮し、DI社に係るのれんについて1,403億円の減損損失を計上しました。
今後の減損テストの結果、再び減損損失が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)情報セキュリティ・サイバーセキュリティに係るリスク
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業の未公開の商品・サービス情報や事業戦略に係る情報を受領することが頻繁にあります。当社グループでは情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格を取得するなど、情報管理には万全を期しておりますが、万一情報漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、想定外の外部サイバー攻撃、従業員またはサプライヤーのアクションによって、重大なビジネスシステムおよびデータの機密性、完全性または可用性が脅かされ、その結果、重大な運用・規制・財務・レピュテーション上の、またはクライアントへの影響が生じる可能性があります。
当社グループでは、セキュリティリスクへの対応を確かなものとするため、国内・海外のネットワークのセキュリティ部門を束ねるグループ・セキュリティ機能を設け、進化する脅威の需要協を継続的に評価し、ERMアプローチに沿ったリスク管理とコントロールの有効性評価を行っています。
(9)サステナビリティ課題に係るリスク
当社グループは、「ソーシャルインパクトとESG」を中期経営計画の4つの柱の一つに掲げ、2021年1月には、未来のすべての人々のために真に持続可能な価値を創造することを目指した「2030サステナビリティ戦略」を策定し、「持続可能な世界」「公平で開かれた社会」「デジタルにおける社会貢献」の3つの優先事項を中心に、同戦略に掲げた環境および社会性指標の目標を達成する施策を推進しております。
しかしながら、社会・経済の外部環境要因などにより、これらの目標達成が計画通りに進捗しなかった場合には、当社グループのレピュテーションなどに悪影響がある可能性があります。
当社グループでは、経営トップが推進するサステナビリティ・ビジネス・ボードを発足させ、電通グループの成長戦略、企業文化、そして事業運営の中心に持続可能性を据え、事業成長とサステナビリティ戦略の統合向けた活動を推進しています。
(10)法規制・訴訟等に係るリスク
① 労働法規に違反するリスク
当社グループは、社員ひとりひとりが恒常的に良好なコンディションを維持できる労働環境を整えることを経営の最優先課題の1つとして取り組んでおりますが、同労働環境の整備が維持できない場合、当社グループの社員のモチベーションおよびパフォーマンスの低下、優秀な社員の外部流出、多様性ある人材の獲得の困難化などの事態が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社の完全子会社である株式会社電通を中心に2017年度から継続的に取り組んでいる労働環境改革により、国内における社員の労働環境は着実に改善されているものの、労務管理上の不祥事が再発した場合、当社グループのレピュテーションが大きく悪化する可能性があります。
② 個人情報等に係るリスク
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業にとっての既存顧客・潜在顧客の個人情報を受領することがあります。また、顧客企業からの消費者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、パーソナルデータを利活用した商品・サービスを開発して顧客企業に提供しております。
当社グループは、国内・海外を問わず、個人情報保護法およびEU一般データ保護規則等の法令または諸規制を遵守し、また、これら法令または諸規制の改定に迅速に対応しており、現時点においてこれらの法令または諸規制が当社グループの事業に悪影響を及ぼすことは想定しておりません。しかしながら、万一個人情報の漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、今後、これら法令または諸規制が改定され、一方、倫理的な観点から、当社グループのパーソナルデータの利活用に何らかの制限が課され、商品・サービスの一部を顧客企業に提供できなくなった場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 訴訟等に係るリスク
当社グループ会社が広範な領域にわたり遂行している事業は、国内・海外問わず、政府機関・顧客・媒体社・協力会社等から調査・訴訟・メディア監査等に基づく請求等を受けることがあります。
なお、インドにおける偶発負債等については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 38.偶発負債 インドにおける偶発負債等について」をご参照ください。
(11)災害、事故等に関わるリスク
当社グループが事業を遂行または展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、パンデミックの再発、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合には、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、地域・マーケット毎に想定される上記の問題に対し、DJNならびにDIのリスク委員会において、クライシス・マネジメントや事業継続計画(BCP)を定期的に検討しております。
なお、2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻した影響については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 39.重要な後発事象 (ロシア・ウクライナ情勢)」をご参照ください。
(経営成績等の状況の概要)
2021年度の連結業績は、コロナ禍からの経済回復により、国内および海外3地域の全てで業績回復が見られ、連結のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は13.1%、売上総利益は前期比16.9%増となりました。また、増収に加え、国内外での構造改革及びコストコントロールの効果により、調整後営業利益は前期比44.4%増の1,790億28百万円、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は同350bps増の18.3%、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は同56.2%増の1,092億3百万円となりました。
一方、制度上の利益項目では、業績回復に加え、「電通本社ビル」を含む固定資産売却益の計上もあり、営業利益は2,418億41百万円(前期は営業損失1,406億25百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,083億89百万円(前期は当期損失1,595億96百万円)となりました。
なお、調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益および一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。
買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用
一時的要因の例示:構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社の所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。
2024年度を最終年度とする中期経営計画をアップデートし、新たな経営方針として「B2B2S (Business to Business to Society) 」を提唱したほか、成長性、収益性、資本配分、ESGの各分野でKPIの目標を具体化・上方修正しました。
株主還元については、中期経営計画で掲げた方針に基づき、2021年度は配当性向が基本的1株当たり調整後当期利益の30.0%となる1株当たり配当金額117.50円としました。また、自己株式取得については、2021年度に約300億円を実施しましたが、2022年2月14日の取締役会において、新たに2022年度に400億円を上限とする自己株式取得を実施することを決定しました。
当期の連結業績(単位:百万円)
<当期の連結業績のポイント>
売上総利益は前期比16.9%増(為替影響排除ベース同13.5%増)の9,765億77百万円となりました。売上総利益増加の主要因は、オーガニック成長(1,127億56百万円増、成長率<連結13.1%、国内事業17.9%、海外事業9.7%>)、為替影響(257億21百万円増)、買収効果(30億59百万円増)です。
国内事業においては、コロナ禍からの回復基調の中、マス広告と引き続き堅調なデジタルソリューション領域を中心に成長し、前期比19.2%増の4,159億15百万円となりました。
海外事業においても、2021年度では3地域全てでプラスのオーガニック成長となり、通期の売上総利益は同15.4%増(為替影響排除ベース同9.6%増)の5,609億78百万円となりました。
売上総利益に占めるCT&T(カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー)領域構成比は、連結で29.1%(前期比160bp増、為替影響排除ベース同10bp増)、国内事業24.4%(同0bp減)、海外事業32.6%(同290bp増、為替影響排除ベース同30bp増)となっています。
調整後営業利益は、前期比44.4%増(為替影響排除ベース同41.3%増)の1,790億28百万円となりました。国内事業の調整後営業利益は、増収に加えてコストコントロールの効果により、同52.0%増の953億61百万円となり、オペレーティング・マージンは22.9%(前期は18.0%)となりました。海外事業の調整後営業利益は、増収に加えて、2020年12月から実施している構造改革及びコストコントロールの成果により、同33.8%増、為替影響排除ベースでは同28.4%増の889億75百万円、オペレーティング・マージンは15.9%(前期は13.7%)となりました。また、これを受けて親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同56.2%増の1,092億3百万円となりました。
減損損失の縮小、固定資産売却益の計上などにより、営業利益は2,418億41百万円(前期は営業損失1,406億25百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,083億89百万円(前期は当期損失1,595億96百万円)と大きく改善しました。
<当期の構造改革費用について>
2021年度の連結業績に関して、2021年2月時点では、構造改革費用として約560億円の計上を見込んでおりましたが、実績は195億円となりました。
海外事業については、2020年12月の事業構造改革の実施決定時には、2021年度の構造改革費用の計上額を約230百万英ポンド(約315億円<当時の換算レート:1英ポンド=136.8円>)と見込んでいましたが、実績は44百万英ポンド(67億円<2021年1-12月平均レート換算:1英ポンド=151.1円>)となりました。この主な要因は、事業や会社の統合、またそれに伴う人員減に係る費用は計上されたものの、2020年度に計上した不利な不動産リース契約に関する引当金の戻入れ(134億円)により、一部相殺されたことによるものです。
国内事業については、2021年2月の構造改革の実施決定時には、2021年度の構造改革費用の計上額を約230億円と見込んでいましたが、実績は127億円となりました。この主な要因は、コーポレート機能特化の新会社(株式会社電通コーポレートワン)の発足初日からの安定稼動を優先した結果、2021年度に予定していた一部人員の新会社への転籍を一時的に出向へ切り替えたことで、転籍時期およびそれに伴う関連費用の計上を2022年度以降へ持ち越したことによるものです。
<当期の連結業績:地域別>
1.国内事業
売上総利益は、広告市場の回復、好調を維持したデジタルソリューション、また、事業変革によって強化された統合ソリューションの提供が拡大したことで、前期比19.2%増となりました。会社別の売上総利益では、デジタル領域を牽引する㈱電通デジタル(前期比41.0%増)や㈱CARTA HOLDINGS(同17.5%増)などの大幅な成長に加え、構成比の大きい㈱電通の売上総利益も前期比18.3%増となり、国内事業の増収に貢献しました。調整後営業利益およびオペレーティング・マージンは、増収とコストコントロールにより、それぞれ52.0%増、490bps増と大幅に増加しました。
2021年度は、中期経営計画に基づく事業変革を推進しました。その中で、顧客企業と社会の持続的成長にコミットする「Integrated Growth Partner(インテグレーテッド・グロース・パートナー(IGP))」への進化を加速させるべく、複数の国内事業子会社の再編や戦略的な資本関係の変更を発表・実施しました。同期間に発表した内容のうち、2022年1月には、デジタルマーケティング分野の強化を目的として㈱セプテーニ・ホールディングスを当社の連結子会社化したほか、コーポレート機能特化の新会社「㈱電通コーポレートワン」が稼動し、電通ジャパンネットワーク社長執行役員CEO榑谷 典洋をトップとする新執行体制も始動しました。なお、「電通本社ビル」を電通ジャパンネットワーク全体の事業の中核拠点とすべく、各社の同ビルへの本社移転を進めており、既に本社を置く、または移転を決定した会社は20社を超え、事業の創発・高度化に向けて着々と準備が進んでいます。
加えて、自社と社会のサステナビリティを推進する複数の取り組みを一層強化しました。直近では、「サステナビリティ・コミュニケーションガイド」の発行、第5回となる「カーボンニュートラルに関する生活者調査」の発表を行い、さらに、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進を強化するため、電通ジャパンネットワーク CDO(Chief Diversity Officer)を新設しました。
国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)(単位:百万円)
2.海外事業
全3地域が好調で、売上総利益は前期比15.4%増(為替影響排除ベース同9.6%増)、調整後営業利益は、売上総利益の増加に加え、2020年12月から実施している構造改革やコストコントロールの成果により前期比33.8%増(為替影響排除ベース同28.4%増)となりました。
EMEA:通期の売上総利益は前期比18.3%増(為替影響排除ベース同10.8%増)、オーガニック成長率は11.1%となりました。
地域別のオーガニック成長率では、デンマーク、フランス、ポーランド、スペイン、スイスで2桁成長、英国でも8.2%の成長となりました。サービスライン別では、CXMが12.1%、メディアが10.5%、クリエイティブが6.2%のオーガニック成長となりました。
Americas:通期の売上総利益は前期比14.5%増(為替影響排除ベース12.4%増)、オーガニック成長率は10.6%となりました。
オーガニック成長率について、地域別では、ブラジルでは△8.9%だったものの、米国で9.9%、カナダで22.9%のプラスであったことから、Americas全体では10.6%となりました。サービスライン別では、クリエイティブは下期を通して好調であり、メディアは広告市場の回復により18%の成長となりました。またCXMは、データ、分析、テクノロジーを活用したマーケティングへの需要が高く、コマースと経験価値マーケティング分野での好調が続きました。
APAC:通期の売上総利益は前期比11.3%増(為替影響排除ベース同4.7%増)、オーガニック成長率は4.7%となりました。
オーガニック成長率について、地域別に見ると、24.0%成長のシンガポール、20.8%成長のインドネシア、12.1%成長のオーストラリアなどが牽引したものの、インド、中国、タイでのマイナスにより一部相殺されました。中国は第3四半期以降にクリエイティブサービスラインがマイナスとなり、全体でもマイナス2.0%となりました。
海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)
海外事業 サービスライン別の売上総利益・オーガニック成長率
2021年度(1-12月)
※顧客体験マネジメント(Customer Experience Management)
<2024年度中期経営計画のアップデートについて>
2021年2月に発表した中期経営計画につきましては、初年度であった2021年度の業績等の状況に鑑み、2022年2月に目標数値の上方修正等を行いました。詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載の通りです。
<当期における中期経営計画の進捗について>
2021年度における中期経営計画の進捗は以下のとおりとなりました。
前事業年度の有価証券報告書記載の当社グループが設定した、2022年2月の中期経営計画の上方修正等を反映する前の経営目標等は下記のとおりです。
経営目標
・オーガニック成長率
2021~24年度の平均成長率で3~4%
・オペレーティング・マージン
2021年度から2024年度にかけて漸進的に改善
・売上総利益に占めるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー構成比
当中期経営計画期間を通じて向上させ、将来的には50%へ
・ESG経営の推進
2030年までにCO2排出量を46%削減、2030年までに再生可能エネルギー使用率100%を達成など、
複数の目標とアクションプランを設定
従業員エンゲージメントスコアの向上
従業員のダイバーシティ&インクルージョンを推進
経営方針
・新たな配当方針:配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を今後数年で35%へと漸進的に引き上げ
・中期的なNet Debt/調整後EBITDA倍率を1.5倍水準(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)で管理
以上の経営目標等に対し、2021年度の進捗は以下のとおりでした。
売上総利益のオーガニック成長率は、連結13.1%(国内事業17.9%、海外事業9.7%)となり、目標値の平均成長率3~4%を大幅に上回りました。
オペレーティング・マージンは、前期の14.8%から18.3%に改善しました。
売上総利益に占めるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー構成比は、前期の27.5%から29.1%に改善しました。
ESG経営の推進に関しては、2022年2月の中期経営計画のアップデートにおいて、2030年度までの女性管理職比率の目標を新たに設定しております。
配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)は、前期の28.5%から30.0%に引き上げました。また、2021年度末のNet Debt/調整後EBITDA倍率はマイナスとなっており、1.5倍水準を下回っております。
<財政状態の状況について>
当期末は、前期末と比べ、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産の譲渡により有形固定資産が減少したものの、主に現金及び現金同等物および営業債権及びその他の債権が増加したことから、資産合計は3,561億72百万円増加し、3兆7,205億36百万円となりました。また、主に営業債務及びその他の債務が増加したことから、負債合計は2,510億3百万円増加し、2兆8,110億62百万円となりました。また、主に親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより、資本合計は1,051億69百万円増加し、9,094億74百万円となりました。
当社は、当連結会計年度において、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産を譲渡し、電通本社ビルの賃借を開始しました。詳細は、「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」および「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 16.リース取引 (5)セール・アンド・リースバック取引」をご参照ください。
また、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、健全かつ柔軟なバランスシートを維持することは重要な課題であり、当社グループは、今後の経営方針として、Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍 (IFRS16控除ベース)としていく方針であります。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、7,235億41百万円(前連結会計年度末5,306億92百万円)となりました。主に投資活動による収入などにより、前連結会計年度末に比べ1,928億49百万円の増加となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ514億1百万円増加し、1,397億15百万円となりました。主に、税引前利益が増加したことによるものです。また、それに加え、当連結会計年度の運転資本の増減額は691億55百万円となり、前連結会計年度の増減額△225億40百万円と比べ、運転資本が減少したことにより、営業活動の結果により得た資金が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ1,252億13百万円増加し、2,622億26百万円となりました。主に、セール・アンド・リースバックによる収入によるものです。セール・アンド・リースバックによる収入は、当連結会計年度に、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産を譲渡し、電通本社ビルの賃借を開始したことによるものです。当社グループは、2020年8月より「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」に着手しており、資本効率の向上、財務体質の強化、および成長投資資金の確保を目的に、当該取引を実施いたしました。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記16.リース取引 (5)セール・アンド・リースバック取引」をご参照ください。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果支出した資金は、前連結会計年度に比べ1,355億67百万円増加し、2,321億89百万円となりました。主に社債の発行による収入が減少したことおよび非支配株主持分からの子会社持分取得による支出が増加したことなどによるものです。なお、2021年2月15日開催の取締役会において、300億円を上限とする自己株式取得の実施を決議したこと等に伴い、当連結会計年度に300億10百万円の自己株式の取得による支出がありました。
また、2022年2月14日開催の取締役会において、400億円を上限とした自己株式取得の実施を決議しております。(取得する期間:2022年2月15日~2022年12月23日)
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(売上高)は次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
① 資本政策・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、2021年2月に発表した中期経営計画期間において、経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のデジタル化の進展などがもたらす社会の変化と事業機会を積極的にとらえ、広く社会課題の解決に資するとともに、さらなる企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。
財務の健全性については、純有利子負債の調整後EBITDAに対する倍率の上限(期末)を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍(いずれもIFRS第16号の適用影響を控除したベース)とすることで、高い信用格付を維持することを目指します。また、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化、またはコミットメントライン等により、十分な手元流動性を確保することとしております。さらに、2021年度においては、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。これらにより、急激な事業環境の変化等に対するリスク耐性が高い状態を維持できるよう努めてまいります。
M&A・設備投資等の成長投資に関しては、経営の安定性・財務の健全性に留意しながら、グループ全社にわたる成長に向けた投資を推進してまいります。
株主還元に関しては、これらの活動を通して得られる利益の適切な配分と本源的な企業価値の向上を通じて株主の皆様への利益還元に努めることとし、配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向が2024年度までに35%となるよう漸進的に高めてまいります。
② 資金需要の主な内容
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金および制作費の支払等ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。
また、2021年2月に発表した中期経営計画期間においては、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資や高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへのM&A・投資に係る資金需要が見込まれます。
③ キャッシュフローの状況
当連結会計年度のキャッシュフローの状況につきましては「(経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フロー」に記載したとおりであります。
④ 資金調達及び流動性の状況
当社グループは、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、または債権流動化等の多様な手段の中から、その時々の市場環境や長期資金の年度別償還額も考慮した上で、機動的に有利な手段を選択し、資金調達を行っております。なお、長期資金については、原則として当社で一元的に資金調達しております。
また、緊急時の流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円のコミットメントラインを、DI社は、5億ポンド(約776億円)のコミットメントラインを設定しております。また、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。
さらに、グループ内の資金調達の一元化・資金効率の向上・流動性の確保の観点から、資金余剰状態にある子会社から当社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。
当社グループは、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題と認識しており、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。また、主要な内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、当社グループの事業の維持拡大、必要な運転資金の確保、成長投資資金の調達に関しては問題なく実施可能であると認識しています。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。
また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態および経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積りおよび仮定は、以下のとおりであります。
当社グループは決算日において、棚卸資産および繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、または減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産または資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
海外事業におけるのれんの減損テストにおける主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (3)のれんの減損テスト」をご参照ください。
当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチやインカムアプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式およびその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額、観察不能なインプットを用いて主としてインカムアプローチやマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。
企業結合の結果生じる条件付対価および株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。
当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
確定給付制度債務および退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。
当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、認識される費用および計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。
これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
不利な不動産リース契約に関する引当金の見積りの主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 22.引当金 (3)構造改革引当金」をご参照ください。
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除および将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用および計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(1) 電通八星苑および電通鎌倉研修所の譲渡
当社は、2021年3月23日開催の取締役会において、以下の通り、当社が保有する一部固定資産を第三者に譲渡することにつき決議し、2021年3月24日に譲渡契約を締結しました。
① 譲渡資産の内容
※個別資産の譲渡価額、帳簿価額につきましては、譲渡先の意向により、公表は控えさせていただきます。
② 譲渡先の概要
譲渡先は国内法人(東京都に所在する金融業・不動産業)ではありますが、譲渡先との守秘義務契約に基づき、公表は控えさせていただきます。なお、当社と譲渡先との間には、資本関係、人的関係はなく、当社の関連当事者にも該当いたしません。
③ 譲渡の日程
上記2件について、2021年4月28日に所有権の移転及び引き渡しを行いました。
(2) 電通本社ビルを含む汐留A街区不動産の譲渡および電通本社ビルの賃借
当社は、2021年9月3日開催の取締役会において、以下の通り、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産をみずほ信託銀行株式会社に信託譲渡したうえで同信託に基づく信託受益権を合同会社芝口橋インベストメント(以下「本買主」という)に譲渡し、加えて、同信託銀行から上記不動産を一括賃借する事業法人から電通本社ビルを賃借することにつき決議し、同日付で信託受益権売買契約および停止条件付定期建物賃貸借契約をそれぞれ締結しました。
① 譲渡および賃借資産の内容
※ 上記定期建物賃貸借契約に基づく賃借対象は、電通本社ビルのうち、商業施設を除く、当社および当社グループ会社が使用するオフィス部分、電通ホール、スタジオ等などです。
※ 上記定期建物賃貸借契約の賃貸借期間は、譲渡実行日から11年間です。
※ 譲渡価額および賃料額等は、本買主および事業法人との取り決めにより開示を控えさせていただきますが、競争入札による市場価格を反映した適正な価格です。
② 譲渡先の概要
譲渡先である本買主との取り決めにより、本買主の概要の開示は控えさせていただきます。なお、当社および当社グループは、本買主との資本関係、人的関係、取引関係はありません。
③ 譲渡の日程
当社は、2021年9月30日に、上記不動産を上記信託銀行に信託譲渡し引き渡したうえで、同信託に基づく信託受益権を本買主に譲渡しました。また、同日に、電通本社ビルの賃借を開始しました。
(3) 株式会社セプテーニ・ホールディングスの子会社化
当社は、2021年10月27日開催の取締役会において、当社の持分法適用関連会社であった株式会社セプテーニ・ホールディングス(本社:東京都新宿区、代表取締役:佐藤 光紀、JASDAQ証券コード:4293、以下、セプテーニHD)を当社の連結子会社とすべく当社連結子会社であった株式会社電通ダイレクトをセプテーニHDの完全子会社とする株式交換及びセプテーニHDの第三者割当による新規株式発行の引受け、並びに、株式会社電通デジタルの一部株式をセプテーニHDに譲渡することにつき決議し、同月28日付で資本業務提携契約及び株式譲渡契約を、12月29日付で株式総数引受契約をそれぞれ締結しました。
詳細は、「第5 経理の状況連結財務諸表注記 39.重要な後発事象 (株式会社セプテーニ・ホールディングスの子会社化)」をご参照ください。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、国内事業における情報サービス業の
国内事業である株式会社電通国際情報サービスを中心とする情報サービス業では、同社グループの中期経営計画(2019年~2021年)の基本方針「主力事業の進化」「新規事業の創出」「事業基盤の革新」を推進するため、各種技術研究に加え、独自ソリューションの開発・強化を実施しました。主な研究開発活動の概要は以下のとおりです。
金融ソリューションの研究開発活動の金額は166百万円です。
主な活動内容は、企業型確定拠出年金運用支援サービス「お金のシェルパ」、金融機関および一般事業会社に対する新規ソリューションの技術調査・研究であります。
ビジネスソリューションの研究開発活動の金額は679百万円です。
主な活動内容は、会計ソリューション「Ci*X」の開発および人事管理ソリューション「POSITIVE」の追加機能に関する研究であります。
製造ソリューションの研究開発活動の金額は314百万円です。
主な活動内容は、設計開発領域およびスマートファクトリー関連の新規ソリューション研究、AIを活用した新規技術開発に向けた研究であります。
コミュニケーションITの研究開発活動の金額は104百万円です。
主な活動内容は、SAP S/4HANAに関する調査・研究およびクラウドソリューションに関する技術検証であります。
上記に属さない研究開発活動の金額は469百万円です。
主な活動内容は、次世代開発基盤「aiuola」に関する技術研究、スマートシティ実現を支援する行政プラットフォームやAI・機械学習技術を活用したソリューションなどの研究・実証実験であります。