(1) 事業環境の変化と成長機会
当社グループの事業環境は近年大きな変化の中にあります。破壊的なテクノロジーの進化や、ポスト・パンデミックに向けた社会規範の変容で、生活者の行動や価値観はますます多様化し、より個人化された体験が重要になっております。
こうした変化に伴い、国内・海外を問わず、顧客企業のニーズはデータとテクノロジーを活用した顧客体験全体の設計及び体験価値の向上に拡大しております。また、事業課題の高度化・複合化に伴い、事業戦略に基づく統合的なソリューション提案、マーケティング基盤のデジタル・トランスフォーメーション、既存事業の変革や新規事業の創出を含む提案が求められております。社会的課題への関心も高まりを見せ、企業のESG領域での取り組みが一層重要視されております。
これらの変化によって、コンサルティング業界やITシステム業界などの企業と競合するケースも増えておりますが、一方で、当社グループの成長機会は広告領域のみならず、顧客企業の事業課題・マーケティング課題全般へのソリューション提供へと拡大しております。この機会を捉えるため、人財の育成、開発にも力を入れてまいります。
(2) 「グループ・マネジメント・チーム」による企業価値の最大化
このような環境変化の中で事業変革の加速と経営の更なる高度化を実現するべく、当社グループは本年1月に、「グループ・マネジメント・チーム」によるグローバル経営体制へ移行いたしました。国内事業である電通ジャパンネットワーク(以下、DJN)及び海外事業である電通インターナショナル(以下、DI)の2事業体制を解消し、今後は世界の4事業地域(日本、Americas、EMEA、APAC)を直接統括して事業運営を行います。
この度、この新体制の下、当社グループ共通のビジョンを「『人起点の変革』の最前線に立ち、社会にポジティブな動力を生み出す。」と設定しました。マーケティング、テクノロジーとコンサルティングの融合が進む当社の事業ドメインを「人起点の変革(People-centered Transformation)」と捉え直し、卓越したクリエーティビティとテクノロジーの力で新たなソリューションと社会的インパクトを生み出す企業へと進化してまいります。顧客企業とのビジネスを通じて社会課題を解決する「B2B2S (Business to Business to Society)」企業グループとして、あらゆるステークホルダーにとっての企業価値の最大化に取り組んでまいります。
(3) 「中期経営計画2024」の継続推進
2021年2月に、環境変化で見出される事業機会を的確に捉えて、持続的な事業成長を具体化していくために、2024年度までを対象とする事業変革と成長戦略として「中期経営計画2024 ―変革による持続的成長へ―」を策定しました。初年度の2021年度、及び2022年度は好調に推移し、売上総利益、調整後営業利益及び1株当たり年間配当金において上場来最高額を更新しております。
中期経営計画で定めている注力領域と、2022年2月に上方修正した目標ターゲットは以下となります。
① 事業変革による成長戦略の実践
当社グループは、高度化・複合化する顧客課題に対し、保有するユニークで多岐に渡るケイパビリティを組み合わせて統合的解決を実現する「Integrated Growth Solutions(インテグレーテッド・グロース・ソリューション)」を事業戦略の核に据えております。そして「Customer Transformation & Technology(カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー)」領域で、データとインサイトによるコンシューマー・インテリジェンスを活用したソリューション提供モデルを確立し、顧客の事業変革を支援する事業を強化してまいります。
当社グループは、その発展の歴史の中で、ケイパビリティを拡張し収益源を多様化してまいりました。「マーケティング・コミュニケーション」領域には、クリエーティブ、メディア、コンテンツ等があり、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域には、マーケティング・テクノロジー、カスタマーエクスペリエンスマネジメント、コマース、システム・インテグレーション、トランスフォーメーション&グロース戦略等が含まれます。このサービスカバレッジの多様さが当社グループの競争優位の源泉となります。更に、独自のデータ基盤に基づく、コンシューマー・インテリジェンス(生活者の行動理解に結びつけるデータ・アナリティクスとインサイト)によってこれらの幅広いケイパビリティを支えております。加えて、テクノロジー企業やプラットフォーマーとのアライアンスを構築し、これら企業のマーケティング・テクノロジーの導入支援、分析ツールの活用におけるリソースを拡充しており、その規模・質は市場において競争力を発揮しております。
これらの優位性を活かしながら、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資、及びスキル開発や採用など人材への投資を通じたオーガニック成長を実現します。またM&A等の資金として2021年度から2024年度までの3年間に2,500~3,000億円を想定しており、成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへフォーカスした規律ある投資行動によってケイパビリティとスケールを拡充し、事業変革の実現を目指します。
② 収益性と効率性の改善
2020年より取り組む包括的見直しにより、国内事業・海外事業における構造改革を進めてまいりました。国内事業では、4つの事業領域(「AX(Advertising Transformation)領域」「BX(Business Transformation)領域」「CX(Customer Experience Transformation)領域」「DX(Digital Transformation)領域)」)に再編し、これら4つの事業領域が生み出す価値を高めるため、国内事業傘下の各社の機能を、専門領域やシナジー創出の観点からグルーピングし、グループ企業の統合やバーチャル組織の設置も含めて最適化しております。また、国内グループのコーポレート機能についても、2022年1月に㈱電通コーポレートワンを設立し、人財と機能の集約を進めております。海外事業では、現在160以上あるエージェンシーブランドを6つのグローバルリーダーシップブランドへ統合する取り組み及び傘下の法人格の合理化を推進しております。より統合され、効率化された組織構造に変革することで、インテグレーテッド・グロース・ソリューションを個々の顧客企業に最適な形で提供できる体制を目指します。
今後も、不動産活用の最適化などこれまでに実行した構造改革やコスト削減を土台に、必要な施策を引き続き進めてまいります。ニアショア・オフショアのさらなる活用、コーポレート機能の統合やIT基盤整備などを通じて、恒常的に収益性改善を図ってまいります。
③ 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
事業変革に必要な資金を確保する観点から、健全なバランスシートの維持に引き続き取り組んでまいります。適切な財務レバレッジを管理し、資金配分方針に基づく規律ある投資を行うことにより、株主価値の持続的向上に努めてまいります。配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)は2024年度までに35%まで漸進的に高める方針であります。
④ ESG経営の推進
企業の社会的責任を重視し、ESG経営の一層の推進による企業価値向上に取り組みます。「2030サステナビリティ戦略」を遂行し、人財及び企業文化領域の取り組みを強化いたします。また、ガバナンス体制のさらなる高度化を図るべく、必要な施策を推進してまいります。
・中期経営計画のターゲット(2022年2月にアップデート)
① 事業変革による成長戦略の実践
・オーガニック成長率:2021年度を基準に2024年度まで年平均成長率ベースで4~5%とする。
・売上総利益に占める「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域の構成比を今後50%に高めることを目指す。
② 収益性と効率性の改善
・2023年度までオペレーティング・マージンを17.0~18.0%のレンジで管理し、2024年度には18.0%を確保する。
③ 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
・Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍とする (IFRS第16号の適用影響を控除したベース)。
・配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を漸進的に高め、2024年度までに35%とする。
④ ESG経営の推進
・2030年度までにCO2排出量を46%削減、2030年度までに再生可能エネルギー使用率100%を達成(利用可能なマーケットに限定)する。
・従業員エンゲージメントスコアを向上させる。
・従業員のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)の強化。2030年度までに女性管理職比率を30%とする。
(4) コンプライアンスの徹底
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会におけるテストイベントの入札等事業に関して、国内子会社の従業員1名(事案が発生した2018年当時は株式会社電通に所属)が、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から刑事告発され、東京地方検察庁により起訴されました。また、同法の両罰規定により、2018年当時に株式会社電通であった現在の株式会社電通グループが法人として起訴されました。
当社は、このことを真摯に受け止め、かかる事態を招いたことにより株主をはじめとするステークホルダーの皆様に多大なご心配をお掛けしておりますことを深くお詫び申し上げます。
現在、当社の監査等委員である独立社外取締役3名を委員とする特別委員会を設置しており、同委員会の主導の下、外部有識者3名で構成される「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連事案に関する外部有識者による調査検証委員会(以下、「調査検証委員会」)」を設置しました。「調査検証委員会」は、今般の事案に係る調査を行い、原因の究明と今後に向けた提言を「特別委員会」に対して行います。当社グループは、同提言をもとに再発防止策を策定・実施し、役員・従業員一同、コンプライアンスの更なる徹底を図ることにより、信頼の回復に努めてまいります。
当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない、又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループではこのような経営目標の達成を阻害する将来の不確実な要因としてのリスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすための様々な対応及び仕組み作りを行っております。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループのリスク管理体制
当社グループでは、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のコーポレートガバナンス体制図のコーポレートガバナンス体制の下、リスクの管理を所管するグループリスク委員会を設置し、ERM(Enterprise Risk Management: 全社的リスクマネジメント)のアプローチを基軸に、グループ経営上重要なリスクを識別・評価し、そのリスクの顕在化の予防及び顕在化した場合の影響の最小化のため、リスク・スポンサーを選定、リスク対応計画の策定と実施を委任し、その対応状況のモニタリングをグループ経営会議において定期的に行っております。また、2023年より、コーポレート領域で当社グループの戦略的変革を推進し、将来にわたる企業ガバナンス強化に対する説明責任を負うチーフ・ガバナンス・オフィサーを任命いたしました。
(1) 景気変動及びポスト・パンデミックに向けた社会的変革に伴うリスク
当社グループの業績は、景気によって主要な顧客である企業からの予算が増減されることが多いため、景気変動の影響を受けやすい傾向があります。新型コロナウイルスの世界的蔓延に伴うマクロ経済の減速は、2021年以降回復傾向に転じたものの、地政学上のリスクの顕在化等により、まだ不安定な状況と言わざるを得ません。
また、コロナ禍の影響は、経済面に留まらず、生活者の意識と行動様式の変化を加速させ、より個人化された体験が重要になっております。企業も、D2Cコマースのチャネル構築やデジタルトランスフォーメーションの実装など企業活動の本質的な転換が迫られる中、当社グループへの顧客のニーズは、従来の広告・コミュニケーション領域を超え、高度化・複合化しており、データとテクノロジーを活用した顧客体験の設計や体験価値の向上に拡大しております。これらのニーズに当社グループが適切な対応ができない場合は、中長期的な事業成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 中長期の視点での新たなビジネス開発に伴うリスク
当社グループは、上記のような事業環境の変化に速やかに対応し、新たな事業機会を的確に捉えるための事業変革を企図した中期経営計画を策定し、2021年2月に発表し、また2022年2月には、その内容のアップデートを行いました。本計画では、広告マーケティングで培ったノウハウをデータとテクノロジーと融合し進化させるとともに、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」事業と位置付けた顧客企業の事業変革を支援する領域の強化による成長戦略の実践を骨子のひとつとしております。しかしながら、グループ内のイノベーションの不足、生活者動向の読み違い、過度に楽観的な事業計画、共同事業パートナーとの交渉難航、投資パフォーマンスの管理不十分、事業環境変化を認識するインテリジェンスの不足などの理由で、これらのビジネス開発が中長期的に収益化できず、当社グループの業績に悪影響が出る可能性があります。
(3) 人財に係るリスク
当社グループの成長力及び競争力は、優秀な人財の獲得と維持に依存します。そのため、労働市場の逼迫による人財不足や当社グループのレピュテーションやブランディングを効果的に確立できない等に起因して、当社グループが必要な人財を十分に確保できない場合、顧客への高付加価値のサービス提供ができずに当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの中期経営計画の実現のためには、社員のエンゲージメントが重要であり、グループ内で、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンなどを含めたビジョンや価値観を実行できなかった場合、あるいは社員のモチベーションを保つことができなかった場合、社員のロイヤルティが低くなり、優秀な人財を惹きつけ維持することが難しくなるリスクが存在します。
当社グループは、事業ドメインを「人起点の変革(People-centered Transformation)」と捉えており、その推進のため、社員が性別、国籍、年齢、性的志向、障がいの有無、勤続年数などにかかわらず、誰もが自分らしさを存分に発揮して働けるインクルーシブな企業文化を醸成し、多様性を競争力につなげていく企業風土の浸透に取り組んでおります。また、2021年度からは、グループ全体でのエンゲージメント調査を実施し、従業員の声に耳を傾け、組織課題の発見・改善を目指しております。
また、この「人起点の変革(People-centered Transformation)」の加速と経営のさらなる高度化を実現すべく、グループ経営幹部の要件定義を明確にしたうえで、2023年1月から「グループ・マネジメント・チーム」によるグローバル経営体制に移行いたしました。また、新しい経営幹部の後継者計画についても、その育成システムの確立とともに進めております。
(4) 事業の構造改革に係るリスク
当社グループは、事業・競争環境の急速な変化に対応するため、構造改革の加速を決定し推進しております。海外事業においては、2年間で、現在160以上あるエージェンシーブランドの数を6つのグローバルリーダーシップブランドへ統合する計画が順調に進捗しております。また、国内事業においては、「ビジネスフォーメーションの変革」「人財フォーメーションの変革」「オフィス環境の進化」を推進しており、この構造改革により、新たな事業モデルの導入を加速してクライアントへより良いサービスを提供し、従業員満足度の向上、収益の拡大及びオペレーティング・マージンの改善を目指します。しかしながら、同構造改革が想定通りに進まなかった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、事業環境や構造改革の変化に社内体制が対応できなかった場合には、内部統制の弱体化、管理システムの不備が顕在化するリスクがあります。
(5) 競争環境と構造変化に起因するリスク
① 異業種との競争の拡大
当社グループは、同業の広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの競争に加え、この数年でコンサルタント、テックカンパニーなど異業種との新たな競争にさらされております。顧客からの広告・マーケティング活動の効率化・最適化の要求が強まり、生活者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、データアナリティクス領域、カスタマーエクスペリエンス領域、コンサルティング領域の企業と競合するケースが増えております。
今後、当社グループの既存の基軸事業である広告マーケティング領域と他領域の間の境界線が今後ますます曖昧になり、異業種との競争が激化した場合、当社グループの収益の一部を異業種の競合社に奪われる可能性があります。また、マーケティング、テクノロジーとコンサルティングの融合領域における有力なプレイヤーとしての当社のレピュテーションやブランディングを効果的に確立できなかった場合に、この領域のビジネスを十分に獲得できない可能性があります。
当社グループは、この業界構造の変化を商機と捉え、広告マーケティングで培ったノウハウを、データとテクノロジーと融合して進化させ、コンシューマー・インテリジェンスを活用した統合ソリュ―ションを提供するモデルを確立していくと共に、人財の育成にも力を入れてまいります。
② グローバル企業の扱い喪失リスク
当社グループの顧客には、グローバルレベルで事業を展開する企業が多数含まれます。これらの顧客は、広告キャンペーンの統一性を担保する必要性や効率的な運用の観点から、グローバルレベル(あるいはAPAC等の地域レベル)で取り扱い広告会社を選定する入札(グローバルピッチ)を実施することがあります。グローバルピッチは対象となるメディア予算などの取扱高が多額になる傾向があります。
今後、当社グループの既存顧客が実施するグローバルピッチで当社グループが敗北した場合、当社グループの収益減少につながる可能性があります。また、これらのピッチで勝利するために従来よりも低マージンでの受注を余儀なくされた場合、当社グループのオペレーティング・マージンの悪化につながる可能性があります。
一方、そういったクライアントに対して、提供する統合ソリューションの価値に対する正当な対価を得るため、全社的な取り組みを推進しております。
③ メディア環境の構造変化に伴うリスク
生活者を取り巻くメディア環境は、イノベーションを背景に、グローバルレベルで大きくデジタルへとシフトしております。当社グループは、このメディア環境の構造変化を商機と捉え、次世代のメディアにグループのリソースを柔軟に配分・投下し、常に最適の顧客体験を提供するための統合ソリューションを顧客企業に提供しております。
しかしながら、当社グループが、メディア環境の構造変化に迅速に対応できない場合、又は変化に適切に対応した取引条件や形態を取ることができなかった場合に、メディアからの収益の喪失、顧客との関係性の悪化などに繋がり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、このメディア環境の構造変化は、国・地域ごとに異なる形態及び時間軸で進行しており、当社グループが、一部の国・地域において、この潮流に乗り遅れるリスクもあります。
④ コンテンツ事業に係るリスク
当社グループは、国内・海外を問わず、映画への制作出資やスポーツイベントの放送権の仕入販売などのコンテンツ事業を展開しております。これらのコンテンツ事業には、収入を得る前に支払が先行するもの、収支計画が多年度にわたるものが多く含まれております。また、大型のスポーツイベントの協賛権や放送権の獲得などには多額の財務的コミットメントを必要とするものもあります。
当社グループはこれらのコンテンツ事業領域に長く従事しているため一定の精度で収支計画を立てる知見を有しており、また多くのコンテンツ事業案件をポートフォリオとして管理することでコンテンツ事業のリスク分散を図っております。
しかしながら、コンテンツ事業の収入を左右する生活者の反応を確実に予測することは困難であり、案件が収支計画通りに進捗しない場合、また、当社グループによる仕入金額を下回る金額でしか協賛権や放送権を顧客に販売できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) のれん及び無形資産の減損リスク
当社は2013年3月に英国の大手広告会社Aegis Group plc(以下、「イージス社」)を買収、その後もグローバルレベルで多数の会社の買収を実施したことに伴い、多額ののれん及び無形資産を計上しております。
当社グループは、買収案件の投資リターンの定期レビューやのれん減損テストを通じて、投資パフォーマンスの予期せぬ大規模な悪化を防ぐための管理を行っておりますが、2020年度に行ったのれんの減損テストの結果、コロナ禍の長期化により高まった事業環境の不透明化を考慮し、海外事業に係るのれんについて1,403億円の減損損失を計上しました。今後の減損テストの結果、再び巨額の減損損失が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 情報セキュリティ・サイバーセキュリティに係るリスク
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業の未公開の商品・サービスや事業に係る情報を受領することが頻繁にあります。当社グループでは情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格を取得するなど、情報管理には万全を期しておりますが、万一情報漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、想定外の外部サイバー攻撃、従業員又はサプライヤーのアクションによって、重大なビジネスシステム及びデータの機密性、完全性又は可用性が脅かされ、その結果、重大な運用・規制・財務・レピュテーション上の、又はクライアントへの影響が生じる可能性があります。
当社グループでは、セキュリティリスクへの対応を確かなものとするため、国内・海外のネットワークのセキュリティ部門を束ねるグループ・セキュリティ機能を設け、進化する脅威の需要協を継続的に評価し、ERMアプローチに沿ったリスク管理とコントロールの有効性評価を行っております。
(8) サステナビリティ課題に係るリスク
当社グループは、「ソーシャルインパクトとESG」を中期経営計画の4つの柱の一つに掲げ、2021年1月には、未来のすべての人々のために真に持続可能な価値を創造することを目指した「2030サステナビリティ戦略」を策定し、「持続可能な世界」「公平で開かれた社会」「デジタルにおける社会貢献」の3つの優先事項を中心に、同戦略に掲げた環境及び社会性指標の目標を達成する施策を推進しております。
しかしながら、社会・経済の外部環境要因などにより、これらの目標達成が計画通りに進捗しなかった場合には、当社グループのレピュテーションなどに悪影響がある可能性があります。
2023年より、気候変動リスクへの対応をはじめとする「2030サステナビリティ戦略」の実行を統括するチーフ・サステナビリティ・オフィサーを、dentsu Japan並びにインターナショナル・マーケットにおいて任命いたしました。
(9) 法規制・訴訟等に係るリスク
① 労働法規に違反するリスク
当社グループは、社員ひとりひとりが恒常的に良好なコンディションを維持できる労働環境を整えることを経営の最優先課題の1つとして取り組んでおりますが、同労働環境の整備が維持できない場合、当社グループの社員のモチベーション及びパフォーマンスの低下、優秀な社員の外部流出、多様性ある人材の獲得の困難化などの事態が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社の完全子会社である株式会社電通を中心に2017年度から継続的に取り組んできた労働環境改革により、国内における社員の労働環境は着実に改善されているものの、労務管理上の不祥事が再発した場合、当社グループのレピュテーションが大きく悪化する可能性があります。
② 個人情報等に係るリスク(データ・ガバナンス)
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業にとっての既存顧客・潜在顧客の個人情報を受領することがあります。また、顧客企業からの消費者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、パーソナルデータを利活用した商品・サービスを開発して顧客企業に提供しております。
当社グループは、国内・海外を問わず、個人情報保護法及びEU一般データ保護規則等の法令又は諸規制を遵守し、また、これら法令又は諸規制の改定に迅速に対応しており、またグループ共通の「グローバルデータ保護原則」を制定しており、現時点においてこれらの法令又は諸規制が当社グループの事業に悪影響を及ぼすことは想定しておりません。しかしながら、万一個人情報の漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、今後、これら法令又は諸規制が改定され、一方、倫理的な観点から、当社グループのパーソナルデータの利活用に何らかの制限が課され、商品・サービスの一部を顧客企業に提供できなくなった場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 訴訟等に係るリスク
当社グループ会社が広範な領域にわたり遂行している事業は、国内・海外問わず、政府機関・顧客・媒体社・協力会社等から調査・訴訟・メディア監査等に基づく請求等を受けるリスクを内包しております。
なお、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会におけるテストイベントの入札等事業に関して、国内子会社の従業員1名(事案が発生した2018年当時は株式会社電通に所属)が、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から刑事告発され、東京地方検察庁により起訴されました。また、同法の両罰規定により、2018年当時に株式会社電通であった現在の株式会社電通グループが法人として起訴されました。詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4) コンプライアンスの徹底」及び「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表連結財務諸表 注記37.偶発負債」をご参照ください。
(10) 災害、事故並びに地政学に関わるリスク
当社グループが事業を遂行又は展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、パンデミックの再発、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合には、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、地域・マーケット毎に想定される上記の問題に対し、クライシス・マネジメントや事業継続計画(BCP)を定期的に検討しております。
(経営成績等の状況の概要)
2022年はコロナ禍からの回復途上にあったものの、ロシアのウクライナ侵攻により、その様相が大きく変化しました。サプライチェーンの混乱や原材料不足、エネルギー価格高騰によるインフレ圧力の高まりとそれを受けた欧米諸国の金融引き締めなどにより、景気減速に対する警戒感が強まりました。また、堅調であった中国経済も、新型コロナウイルス感染症の感染者が急増した一部の都市でロックダウンを余儀なくされるなど、先行きの不透明感が高まりました。
当期(2022年1月1日~12月31日)における当社グループの業績は、㈱セプテーニ・ホールディングスの連結子会社化などにより、売上総利益は前期比14.4%増、売上総利益のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は3.2%となりました。調整後営業利益は同13.5%増、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は18.2%(前期は18.3%)、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は同19.1%増となりました。
制度会計上の営業利益と親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期に計上した固定資産売却益の反動や当期に計上した減損損失等により、それぞれ前期比△51.4%、△44.8%となりました。
なお、調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益及び一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。
買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用
一時的要因の例示:構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社の所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。
当期の連結業績(単位:百万円)
<当期の連結業績のポイント>
売上総利益は、堅調に推移した海外メディア事業と、カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー(以下、CT&T)領域が構造的に成長したことにより、オーガニック成長率が3.2%となったこと、さらには連結子会社化した㈱セプテーニ・ホールディングス等が成長に貢献し、為替の影響もあったことで、14.4%の増収となりました。また、構造改革の効果、適切なコストコントロールも奏功し、オペレーティング・マージンは18.2%、調整後利益項目は増益となりました。なお、売上総利益と調整後営業利益は2期連続で、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は当期に、上場来最高となりました。
日本は0.4%、米州(以下「Americas」)6.1%、ヨーロッパ、中東及びアフリカ(以下「EMEA」)5.1%、アジア太平洋(日本を除く。以下「APAC」)2.5%と、売上総利益は全地域でプラスのオーガニック成長となり、最も大きい成長となったのはAmericasでした。売上総利益の構成比は、日本の比率が前年43%から39%へ減少し、Americasが前年25%から29%へ増加しました。
なお、当社グループは、2022年3月より当社グループの方針と法的観点からロシア事業の見直しを開始し、同年8月には現地合弁会社の当社グループ保有持分の全てを現地パートナーへ譲渡することについて、同社と大枠で合意し、交渉を進めてきましたが、同年11月14日開催の取締役会において、当社グループのロシア事業を担う現地合弁会社の当社グループ保有持分の全てを現地パートナーへ譲渡することを決定し、当社グループは当該譲渡契約を締結いたしました。当該譲渡契約締結により、当連結会計年度において、制度会計上の営業利益へ約246億円、親会社の所有者に帰属する当期利益へ約251億円のマイナスの影響がありました。
今後の成長を牽引するCT&T領域の売上総利益は、前期比(為替影響排除ベース)で17.5%増加したことで、構成比は310 bps向上し、32.3%となりました。
前年に続き、国内外でCT&T領域に注力するM&Aを推進し、日本のDX領域のコンサルティング企業「イグニション・ポイント㈱」、アイルランドのSalesforceコンサルティング企業「Pexlify Limited」、インドのSalesforceのプロダクト開発を行う「Extentia Information Technology」、豪州の「Aware Services Pty Ltd」等を買収しました。
<当期の連結業績:地域別>
1.国内事業
非常に高い前期の反動はありつつも、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション需要によって好調を維持したデジタルソリューション領域の成長に加え、事業変革により強化されている統合ソリューションの提供拡大や㈱セプテーニ・ホールティングスの連結子会社化により、国内事業の売上総利益は4,387億40百万円(前期比5.5%増)、売上総利益のオーガニック成長率は0.4%となりました。増収に加え、コストコントロールの効果により、調整後営業利益は1,056億65百万円(同10.8%増)、オペレーティング・マージンは24.1%(前期は22.9%)となり、前期を上回りました。
国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)(単位:百万円)
(注) 1. ㈱セプテーニ・ホールディングスは、2022年1月4日付で連結子会社化いたしました。
2. ㈱電通テックは、2022年4月1日付で社名を㈱電通プロモーションプラスに変更いたしました。
2.海外事業
海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は、地域別では、EMEAが5.1%、Americasが6.1%、APACが2.5%となり、全体では5.1%となりました。主要国別にみると、イギリス、フランス、米国、オーストラリアなどは大きく伸びましたが、中国、ブラジルなどは厳しい状況となっております。
為替変動の影響もあり、海外事業の売上総利益は6,788億72百万円(前期比21.0%増)、調整後営業利益は1,063億35百万円(同19.5%増)となりました。オペレーティング・マージンは15.7%(前期は15.9%)となりました。
海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)
当期における海外事業 サービスライン別の売上総利益・オーガニック成長率
※顧客体験マネジメント(Customer Experience Management)
<当期における中期経営計画の進捗について>
2022年度における中期経営計画の進捗は以下のとおりとなりました。
前事業年度の有価証券報告書記載の当社グループが設定した、経営目標等は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載のとおり、以下のとおりであります。
① 事業変革による成長戦略の実践
・オーガニック成長率:2021年度を基準に2024年度まで年平均成長率ベースで4~5%とする。
・売上総利益に占める「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域の構成比を今後50%に高めることを目指す。
② 収益性と効率性の改善
・2023年度までオペレーティング・マージンを17.0~18.0%のレンジで管理し、2024年度には18.0%を確保する。
③ 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
・Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍とする (IFRS第16号の適用影響を控除したベース)。
・配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を漸進的に高め、2024年度までに35%とする。
④ ESG経営の推進
・2030年度までにCO2排出量を46%削減、2030年度までに再生可能エネルギー使用率100%を達成(利用可能なマーケットに限定)する。
・従業員エンゲージメントスコアを向上させる。
・従業員のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)の強化。2030年度までに女性管理職比率を30%とする。
以上の経営目標等に対し、2022年度の進捗は以下のとおりでした。
① 事業変革による成長戦略の実践
・オーガニック成長率:
2021年度は連結13.1%(国内事業17.9%、海外事業9.7%)、2022年度は連結3.2%(国内事業0.4%、海外事業5.1%)となり、目標値の平均成長率4~5%を、2年間の平均で達成しております。
・売上総利益に占める「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域の構成比:
2020年度は27.5%、2021年度は29.1%、2022年度は32.3%となり、継続的に上昇しております。
② 収益性と効率性の改善
・調整後オペレーティング・マージン:
オペレーティング・マージンは、2020年度は14.8%、2021年度は18.3%、2022年度は18.2%となり、18.0%を確保しております。
③ 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
・Net debt/調整後EBITDA(期末):
2021年度末及び2022年度末のNet Debt/調整後EBITDA倍率はマイナスとなっており、1.5倍を下回っております。
・配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース):
2020年度は28.5%、2021年度は30.0%、2022年度は32.0%となり漸進的に引き上げております。
④ ESG経営の推進
・2030年度までにCO2排出量削減と再生可能エネルギー100%(利用可能なマーケットに限定):
2022年度のCO2排出量の、2021年度との増減比(Scope1&2のみの2023年2月時点速報値)は以下の通りであります。
・当社グループ全体 △32%
・電通ジャパンネットワーク(DJN)△44%
・電通インターナショナル(DI) +75%
DJNの減要因は電通本社ビルの売却・賃貸利用に伴う専有部分の変化、DIの増要因は、コロナ禍でのリモートワーク体制が変わり、オフィスでの電力使用が再び増加したことによるものであります。
・従業員エンゲージメントスコアの向上(全社員対象の調査を毎年実施):
2022年度のスコアは以下のとおりとなっております。
・当社グループ全体 68(2021年度スコア68)
・DJN 60(2021年度スコア63)
・DI 71(2021年度スコア70)
・従業員のダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の強化。2030年度までの女性管理職比率向上:
2022年12月末時点における当社グループにおける女性管理職の比率は以下のとおりであります。
・当社グループ全体:19.0%
・DJN(直接出資会社):13.9%
・DI:37.2%
<財政状態の状況について>
当期末は、前期末と比べ、主に「現金及び現金同等物」が減少したものの、「営業債権及びその他の債権」及び為替影響等により「のれん」が増加したことなどにより、資産合計は208億90百万円増加し、3兆7,414億27百万円となりました。一方、負債については、主に「営業債務及びその他の債務」は増加したものの、「未払法人所得税等」及び「その他の流動負債」並びに「社債及び借入金」が減少したことなどにより、負債合計は249億62百万円減少し、2兆7,860億99百万円となりました。また、資本については、主に「在外営業活動体の換算差額」の増加などにより資本合計は458億53百万円増加し、9,553億27百万円となりました。
なお、当連結会計年度において、主に、海外事業セグメントに属するロシア事業に関する資産及び負債を、「売却目的で保有する非流動資産」及び「売却目的で保有する非流動資産に直接関連する負債」に分類しております。詳細は、「4 経営上の重要な契約等」及び「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 13.売却目的で保有する非流動資産」をご参照ください。
また、2022年11月14日開催の取締役会決議に基づき自己株式の消却を行いました。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.資本及びその他の資本項目」をご参照ください。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、健全かつ柔軟なバランスシートを維持することは重要な課題であり、当社グループは、今後の経営方針として、Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍 (IFRS第16号の適用影響を控除したベース)としていく方針であります。
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」)は、6,037億40百万円(前期末7,235億41百万円)となりました。主に財務活動による支出などにより、前期末に比べ1,198億1百万円の減少となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果により得た資金は、前期に比べ588億19百万円減少し、808億96百万円となりました。主に税引前利益が減少したことや、運転資本が増加したことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果支出した資金は、前期に比べ2,865億73百万円増加し、243億46百万円となりました。主に前期のセール・アンド・リースバックによる収入の反動減によるものであります。前期のセール・アンド・リースバックによる収入は、前期に、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産を譲渡し、電通本社ビルの賃借を開始したことによるものであります。当社グループは、2020年8月より「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」に着手し、資本効率の向上、財務体質の強化、及び成長投資資金の確保を目的に、当該取引を実施いたしました。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 16.リース取引 (5)セール・アンド・リースバック取引」をご参照ください。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果支出した資金は、前期に比べ439億96百万円減少し、1,881億92百万円となりました。主に非支配株主持分からの子会社持分取得による支出が減少したことなどによるものであります。なお、2022年2月14日開催の取締役会において、400億円を上限とする自己株式取得の実施を決議したこと等に伴い、当期に400億6百万円の自己株式の取得による支出がありました。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(収益)は次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
① 資本政策・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、2021年2月に発表した中期経営計画期間において、経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のデジタル化の進展などがもたらす社会の変化と事業機会を積極的にとらえ、広く社会課題の解決に資するとともに、さらなる企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。
財務の健全性については、純有利子負債の調整後EBITDAに対する倍率の上限(期末)を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍(いずれもIFRS第16号の適用影響を控除したベース)とすることで、高い信用格付の維持を目指してまいります。また、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化、又はコミットメントライン等により、十分な手元流動性を確保することとしております。さらに、2022年度においては、急速な外部環境変化等に万全を期すため、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。これらにより、急激な事業環境の変化等に対するリスク耐性が高い状態を維持できるよう努めてまいります。
M&A・設備投資等の成長投資に関しては、経営の安定性・財務の健全性に留意しながら、グループ全社にわたる成長に向けた投資を推進してまいります。
株主還元に関しては、これらの活動を通して得られる利益の適切な配分と本源的な企業価値の向上を通じて株主の皆様への利益還元に努めることとし、配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向が2024年度までに35%となるよう漸進的に高めてまいります。
② 資金需要の主な内容
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金及び制作費の支払等並びに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。
また、2021年2月に発表した中期経営計画期間においては、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資や高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへのM&A・投資に係る資金需要が見込まれます。
③ キャッシュフローの状況
当連結会計年度のキャッシュフローの状況につきましては「(経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
④ 資金調達及び流動性の状況
当社グループは、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、又は債権流動化等の多様な手段の中から、その時々の市場環境や長期資金の年度別償還額も考慮した上で、機動的に有利な手段を選択し、資金調達を行っております。なお、長期資金については、原則として当社で一元的に資金調達しております。
また、緊急時の流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円のコミットメントラインを、DI社は5億英ポンド(約800億円)のコミットメントラインを設定しております。また、急速な外部環境変化等に万全を期すため、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。
さらに、グループ内の資金調達の一元化・資金効率の向上・流動性の確保の観点から、資金余剰状態にある子会社から当社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。
当社グループは、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題と認識しており、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。また、主要な内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、当社グループの事業の維持拡大、必要な運転資金の確保、成長投資資金の調達に関しては問題なく実施可能であると認識しております。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。
また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態及び経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定は、以下のとおりであります。
当社グループは決算日において、棚卸資産及び繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、又は減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
海外事業におけるのれんの減損テストにおける主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表注記 15.のれん及び無形資産 (3)のれんの減損テスト」をご参照ください。
当社グループは、借手としてのリースについて、リースの開始日において、使用権資産及びリース債務を認識しております。使用権資産は開始日において取得原価で測定しております。開始日後においては、原価モデルを適用して、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除して測定しております。
当社グループは構造改革の一環として不動産の適正化を行っており、一部の不動産リース契約について、サブリースの活用を見込んでおります。当該リース契約に関する使用権資産の残高は、基本サブリース料、リース期間におけるリース支払料の想定増加率、リースインセンティブ及びサブリース開始時期を含む空室期間に仮定をおいて算定しております。市場環境の変化や予測不能な事象の発生等により上記仮定の見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度において使用権資産に係る追加の減損又は減損の戻入れが発生する可能性があります。
当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチやインカムアプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式及びその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額、観察不能なインプットを用いて主としてインカムアプローチやマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。
企業結合の結果生じる条件付対価及び株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。
当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
確定給付制度債務及び退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。
当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、認識される費用及び計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的又は推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。
これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得及び慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用及び計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(ロシア現地合弁会社の当社グループ保有持分の譲渡)
当社は、2022年11月14日開催の取締役会において、当社グループのロシア事業を担う現地合弁会社の当社グループ保有持分の全てを現地パートナーへ譲渡すること(以下、本譲渡)を決定し、当社グループは当該譲渡契約を締結いたしました。
1. 持分譲渡の理由
当社グループは、2022年3月より当社グループの方針と法的観点からロシア事業の見直しを開始し、同年8月には現地合弁会社の当社グループ保有持分の全てを現地パートナーへ譲渡することについて、同社と大枠で合意し、交渉を進めてきましたが、同年11月14日、国際的な制裁措置への準拠を確認し、本譲渡に関して正式契約を締結することを当社の取締役会にて決定いたしました。
2. 譲渡する相手会社
Pelton Finance Limited
3. 譲渡の時期
本譲渡はロシア政府委員会を含む行政機関による承認を要し、本譲渡の完了はその承認次第となります。
4.当該子会社の名称及び事業内容
名称:Hullbitt Limited
事業内容:ロシアにおける当社グループ事業の運営
5.譲渡する持分比率、譲渡後の持分比率及び譲渡価額
譲渡する当社グループの保有持分比率:75.01%
譲渡後の当社グループの保有持分比率:0%
譲渡価額:2.4百万ユーロ(約3億円)
6. 本取引による影響額
詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表注記 13.売却目的で保有する非流動資産」をご参照ください。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、国内事業における情報サービス業の
国内事業である株式会社電通国際情報サービスを中心とする情報サービス業では、同社グループの中期経営計画(2022年~2024年)の2030年に向けた活動方針「事業領域の拡張(拓くチカラ)」「新しい能力の獲得(創るチカラ)」「収益モデルの革新(稼ぐチカラ)」「経営基盤の刷新(支えるチカラ)」を推進するため、各種技術研究に加え、独自ソリューションの開発・強化を実施しました。主な研究開発活動の概要は以下のとおりであります。
金融ソリューションの研究開発活動の金額は282百万円であります。
主な活動内容は、企業型確定拠出年金運用支援サービス「お金のシェルパ」の開発、日銀決済流動性管理システム「Stream-R」の改良に関する研究であります。
ビジネスソリューションの研究開発活動の金額は291百万円であります。
主な活動内容は、会計ソリューション「Ci*X」の新機能開発、人事管理ソリューション「POSITIVE」の改良に関する研究であります。
製造ソリューションの研究開発活動の金額は316百万円であります。
主な活動内容は、設計開発領域及びスマートファクトリー関連の新規ソリューション開発に関する研究であります。
コミュニケーションITの研究開発活動の金額は80百万円であります。
主な活動内容は、クラウドベースのデータウェアハウス及びコンタクトセンターに関する技術検証であります。
上記に属さない研究開発活動の金額は770百万円であります。
主な活動内容は、開発基盤「aiuola」に関する技術研究、スマートシティ実現を支援する行政プラットフォーム等の研究・実証実験であります。