当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は、経営の基本方針である「経営理念」、「経営ビジョン」および「行動指針」を以下のとおり定めています。
「経営理念」は、長期的な視点でめざす“ありたい姿”、「経営ビジョン」は、この“ありたい姿”を実現するためにめざすべきもの、「行動指針」は、経営理念・経営ビジョンを実現するために社員一人ひとりが持つべき価値観・心構え、取るべき行動です。
◎ 経営理念
|
わたしたちは、アセットの潜在力を最大限に引き出し社会価値を創出することで、持続可能で豊かな未来に貢献します。 |
◎ 経営ビジョン
|
・ 地球環境に配慮し、独自性と進取性のある事業を展開することで、社会的課題を解決します。 ・ 世界各地の多様なステークホルダーとの価値共創を通じて、持続可能な成長をめざします。 ・ デジタル技術とデータの活用によりビジネスモデルを進化させ、企業価値の向上を図ります。 ・ 社員一人ひとりが働きがいと誇りを持ち、自由闊達で魅力ある企業文化を醸成します。 ・ 法令等を遵守し、健全な企業経営を実践することで、社会で信頼される企業をめざします。 |
◎ 行動指針
|
・ チャレンジ : 未来志向で、責任を持って挑戦する。 ・ デジタル : デジタルリテラシーを高め、変革を創り出す。 ・ コミュニケーション : 対話を通じて相互理解を深め、社内外のステークホルダーと信頼関係を築く。 ・ ダイバーシティ : 多様性を受容し、相互に尊重する。 ・ サステナビリティ : 人・社会・地球と共生し、持続可能な世界を実現する。 ・ インテグリティ : 高い倫理観を持ち、絶えず基本に立ち返る。 |
(2)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
① 経営環境
昨今の外部環境の変化は激しく、「地政学と経済」「気候変動」「テクノロジーの広がり」「人口動態」といった中長期的に内外経済の動向を左右する潮流、メガトレンドを認識する必要性が増しています。
このような外部環境の変化の中で、当社グループに求められる役割は、従来型のリース・ファイナンスに加えて、事業投資・運営などを通じた社会的課題の解決へと変化しています。また、想像以上のスピードで産業レベルでのビジネスモデルチェンジが生じるとみられ、各企業が環境変化に適応していくうえでは、アセットに関する多様な機能を有し、金融機能にとどまらない柔軟なサービスを提供する当社グループの存在意義がさらに高まるものと考えています。
② 当社グループの進むべき方向性と中期経営計画
当社グループは、10年後のありたい姿として「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」を掲げました。これは、3次にわたる中期経営計画(「ホップ」・「ステップ」・「ジャンプ」)を経て、到達をめざしていきます。2023年度(2024年3月期)からの3年間を対象期間とする中期経営計画(以下、2025中計)は「ホップ」の位置づけで、「ステップ」・「ジャンプ」に向けた飛躍につながる「種まき」と「足場固め」をキーワードに取り組んでいます。
③ 事業戦略
ビジネスモデルの進化・積層化
当社グループのビジネスを以下の5つに分類し、事業ポートフォリオ変革を実現するために「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めています。
事業戦略の前提
利益成長は、「ビジネスモデルの進化・積層化」を通じて、事業ポートフォリオやアセットの質を中長期的に転換していくことにより実現します。そのためにも、配当後のキャッシュ・フローは中長期的視点で積極的に投資していきます。
その取り組みを下支えするため、バランスシートを最適化することで中長期的な資本収益性と財務健全性を両立し、企業価値を最大化していきます。
セグメント別の事業戦略
セグメント別の事業戦略は以下のとおりです。
|
セグメント |
2025中計達成のための道筋 |
|
カスタマーソリューション |
・収益性の高いセグメント資産の増加による収益規模拡大。 ・中古半導体製造装置等のリファービッシュ※1事業やPC-LCM※2事業等の高収益ビジネスの推進。 ・外部パートナー企業との高付加価値ビジネスの市場投入を加速。 ・新顧客情報管理システムによる組織間情報連携の向上と顧客・社会課題を的確に捉えた提案手法の浸透により、データに基づく営業活動に転換。 |
|
海外地域 |
<欧州> ・主要事業の成長に加え、欧州モビリティ事業の業績回復。 ・高収益資産の積み上げ、継続的なシステム強化・デジタル投資を通じたビジネスプロセス効率化による収益性向上。 <米州> ・ベンダーファイナンス事業は、リスク管理の高度化に加え、トランスポーテーション以外の分野の拡大。 ・コマーシャルファイナンス事業は、既存事業の継続的な拡大とともにAs-a-Service、FMVリース※3といった高付加価値商品への取り組みを推進。 |
|
環境エネルギー |
<国内> ・持分容量(太陽光・風力等)の拡大と付加価値向上策の推進。 ・ポートフォリオ入れ替えと利益創出を目的とした一部太陽光発電事業等の売却。 <海外> ・European Energy A/Sを通じた再生可能エネルギー事業の展開と並行し、インフラ案件の売却によるポートフォリオの入れ替え。 |
|
航空 |
・商品多様化等の成長戦略とグループ内連携のさらなる強化によるアセット回転量・収益性の向上。 ・次世代航空技術・脱炭素化分野の研究開発を進め、将来の事業基盤を構築。 |
|
ロジスティクス |
・海上コンテナリース事業は、市況を見極めた新規投資による優良資産の積み上げ、満了契約の延長・不稼働コンテナのリース付けによる高稼働率の維持、売却益の最大化。 ・北米貨車リース事業は、高稼働率の維持・リース料値上げ・リース期間長期化による採算向上、資産回転型モデルの推進による売却益の最大化。 |
|
不動産 |
・開発機能やリノベーション・コンバージョン等のバリューアップ力の強化を通じた期中収益の向上、資産売却益の獲得。 ・アセットマネジメント事業のファンド化推進による回転型ビジネスの強化。 |
|
モビリティ |
<国内> ・EV統合型サービスの提案加速化を通じたオートリースの顧客基盤拡大。 ・オートリース会社2社の合併にともなう営業力強化による車両管理台数の拡大。 <ASEAN> ・パートナー連携により、プレゼンスの向上および提案高度化等を実現し資産獲得を加速。 |
※1 リファービッシュ:新品に準じる状態に整備、仕上げること。
※2 PC-LCM(PC-Life Cycle Management):パソコン導入時の設定・設置から故障時の修理や代替機提供まで、お客さまのさまざまなご要望にお応えするサービス。
※3 FMV(Fair Market Value)リース:リース期間満了後にお客さまが返却や買い取り、リース延長等のオプションを選択し、その際の取引価格を公正市場価格にて決定する柔軟なリース契約。
組織横断重要テーマ
組織横断的に当社グループの総力を挙げて取り組んでいくテーマを以下のとおり設定しています。
各テーマは、当社グループだけではなく、パートナー企業とともに社会的課題の解決を通じて社会価値を創造し、持続可能で豊かな未来に貢献していく、当社のありたい姿につながるものとしています。
|
|
将来のめざす姿 |
|
水素 |
低炭素水素※製造を軸とした水素サプライチェーンの構築に貢献。 |
|
EV |
EVを起点にカーボンニュートラル社会の実現に貢献。 |
|
物流 |
物流サプライチェーン上の社会的課題・顧客ニーズに対し、有力パートナーと協働し、最適な物流ソリューションを構築・提供。 |
|
脱炭素ソリューション |
脱炭素社会の実現に向けた総合サービスプロバイダー。 |
※ 低炭素水素:製造にともなって排出される二酸化炭素の量が一定の値以下で、経済産業省令で定める要件に該当する水素。
④ 経営基盤強化戦略
以下の4つの戦略を中心に経営基盤を強化しています。
|
|
2025年度計画(主な取り組み) |
|
人材の育成・確保 |
・職務類型ごとの適性人員の把握および人材情報のマッチングによる充足度の可視化。 ・業績貢献型処遇制度の運用拡充。 ・エンゲージメントサーベイ分析高度化、エンゲージメント維持・向上策の実施。 |
|
財務基盤・社内基盤の 強靭化 |
・ALM※1最適化、米国でのCMS※2導入等によるリスク管理の高度化および資金原価の低減。 ・リスクアペタイトステートメント※3の改善および他ビジネスへの展開、応用検討。 ・全社データ利活用環境の機能・用途の段階的拡張。 |
|
コーポレート・ガバナンス 体制の強化 |
・新ビジネスのリスク評価手法導入。 ・営業現場のリスクオーナーシップ強化。 ・国内外グループ全体の監査品質の向上。 |
|
ステークホルダー エンゲージメントの向上 |
・投資家向け事業別説明会の継続的実施。 ・コーポレートサイトの全面リニューアル(2026年度リリース予定)。 ・サステナビリティ経営のPDCAサイクルの確立および進捗状況の対外開示。 |
※1 Asset Liability Management:資産、負債の総合的な管理。
※2 Cash Management System:グループ全体の資金を一元的かつ効率的に管理するシステム。
※3 リスクアペタイトステートメント:事業運営に関係するリスクの種類やそれに応じたリスクテイクや
リスク管理に係る考え方などを文書化したもの。
⑤ 変革を促す仕組み
変革の実現に向けて障害となるものを取り除き、変革に向けた意識改革を実施します。
従来の延長線ではない新たな視点で各種施策においてスピード感を持って推進します。
|
|
打ち手の方向性 |
|
1 変革の土壌を「整える」 |
全社員の変革意識の醸成。 |
|
2 変革を「生み出す」 |
変革に資する取り組みが活発に生み出されるための仕組みを構築。 |
|
3 変革を「推進する」 |
効率的な意思決定プロセスや権限委譲等を進めることで、アジャイル(迅速)な検討態勢を構築し、変革を推進。 |
(3)優先して対処すべき事業上の課題
当社グループは、「10年後のありたい姿」の実現のために、データ等、有形・無形のアセットの潜在価値を最大限に活用したサービスや事業経営などを推進することで、「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めています。
この「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めていくには、社員一人ひとりの意識改革が必要だと考えています。そのための仕掛けとして、「変革を促す仕組み」を構築し、「変革の土壌を整える」、「変革を生み出す」、「変革を推進する」の3つの切り口から打ち手を実施し、従来の延長線ではない新たな視点で各種施策を実行しています。
(4)目標とする経営指標
2025中計の対象期間である2023年度から2025年度(2024年3月期から2026年3月期)において、以下の財務目標および非財務目標の達成をめざします。
(財務目標)
|
項目 |
目標 |
|
|
財務目標 (2026年3月期) |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
1,600億円(2023年3月期実績比 年平均成長率+11.2%) |
|
ROA |
1.5%程度※1(2023年3月期実績比 +0.4pt程度) |
|
|
ROE |
10%程度※2 (2023年3月期実績比 +1.8pt程度) |
|
|
配当方針 (2025中計期間) |
配当性向40%以上 |
・ 株主還元は配当によって行うことを基本とする。 ・ 利益成長を通じて配当総額を高めていく。 |
|
財務健全性 (2025中計期間) |
A格の維持 |
・ 健全な財務基盤と積極的な投資戦略の両立。 ・ 現行スタンドアローン格付※3の維持。 |
(注)ROAおよびROEの算定においては、親会社株主に帰属する当期純利益を使用しています。
※1 2026年3月期の業績予想はROA1.4%。
※2 2026年3月期の業績予想はROE8.8%。
※3 当社単独ベースの信用力評価。
(非財務目標)
|
KPI |
目標(2025中計期間) |
|
経営戦略に合致した人材ポートフォリオの 充足度(単体) |
人材ポートフォリオの枠組みを策定、充足度を可視化。 |
|
従業員エンゲージメントサーベイ結果 (単体) |
サーベイの内容を精緻化し、分析を高度化。 |
|
DXアセスメント※1「スタンダード」 レベル以上の人材比率(単体) |
80%以上 |
|
月平均残業時間(業務効率) (単体) |
14時間以下 |
|
有給休暇取得率(単体) |
70%以上 |
|
温室効果ガス排出量(Scope3※2) (連結) |
影響度の高いカテゴリーを主に分析し、Scope3※2を可視化。 |
|
温室効果ガス排出量(Scope1※2,2※2) (連結) |
2030年度:2019年度対比△55% 2050年度:ネットゼロ |
|
エネルギー使用量(国内) (単体+国内グループ会社) |
前年度比△1%を継続。 |
※1 DXアセスメント:外部業者提供のDXリテラシー水準を測るツールを活用し、結果により「ビギナー」
「スタンダード」「エキスパート」の3つのレベルに分類している。
※2 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)。
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用にともなう間接排出。
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティについての基本的な考え方
当社は、地球環境の保護や人権の尊重、多様性への対応など、サステナビリティへの取り組みは企業が担うべき重要な社会的責任と考えており、今後、企業が存続していくためには、環境・社会・経済の視点で、課題解決に向けた事業活動に取り組み、ステークホルダーからの信頼を獲得しつつ、長期的な成長をめざすことが必要になると考えています。
(2)マテリアリティ(重要課題)
当社は、当社グループが持続的に成長するうえで優先的に取り組むべきテーマとして、以下の6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。
近年における温暖化による気候変動、人口増加、都市化、資源不足といった地球規模のメガトレンドを背景に、私たちの生活や社会環境はグローバルに大きく変化しており、企業には、脱炭素社会の推進や循環型経済の構築など、多くの課題解決に向けた取り組みが求められています。
当社グループにおいては、マテリアリティの重要性を認識したうえで、課題解決に向けた実効性のある経営、事業活動に取り組んでいます。
当社グループのマテリアリティ
|
マテリアリティ |
重要性が高いと考える背景 |
SDGsとの関係 |
|||||||||
|
脱炭素社会の推進 |
・脱炭素社会の実現に向けた取り組みは、喫緊の課題として世界的に認知されており、再生可能エネルギー投資、EV化の促進などの成長・有力分野における当社グループの貢献の余地は大きい。 ・この社会的課題の解決に逆行する取り組みの峻別などは事業面における影響も大きく、重要性が高い。 |
|
|||||||||
|
サーキュラー エコノミーの実現 |
・自社ならびに社会における廃棄を減らすこと、アセットの新たな価値を最大限に活用し循環型社会に貢献することは、リース業界のリーディングカンパニーとして、その重要性が高い。 ・パートナーとの連携を強化することで、持続可能で豊かな社会の実現に貢献できる。 |
|
|||||||||
|
強靭な 社会インフラの構築 |
・修繕期や再構築期を迎えている国内インフラの整備や、さまざまなパートナーと協業する海外のインフラ支援の積極的な展開、スマートシティの構築は、多くの機会を有する領域。 ・企業間の連携を支援する仕組みの構築、サービスの提供により、その事業の多様化や高度化、効率化に貢献できる。 |
|
|||||||||
|
健康で豊かな 生活の実現 |
・当社グループを取り巻く多くのステークホルダーの健康および安全・安心・文化的な生活の保全に関わるサービスの創出と提供は、豊かな未来の実現に向けてその重要性が高い。 ・企業活動における価値と信頼の源泉は人材であり、従業員のモチベーション向上、優秀な人材の獲得などもその意義は大きい。 |
|
|
マテリアリティ |
重要性が高いと考える背景 |
SDGsとの関係 |
|||
|
最新技術を駆使した 事業の創出 |
・お客さまのDX推進におけるファイナンスニーズを捉え、自社のテクノロジーやデジタル技術の利活用によりその解決を図ることで新たな事業モデルの開発を促進する。 ・代替エネルギーの利活用にともなうサプライチェーンの構築も含めて、多様性と新規性を兼ね備えた事業創出の機会として重要性が高い。 |
|
|||
|
世界各地との共生 |
・国や地域により抱えている社会的課題は異なることから、地域密着で独自のニーズを捉え、各国・地域のパートナーとの協業などをもってその解決を図ることの意義は大きい。 ・当社グループの総合力を発揮することで、ともに成長する社会を実現できる。 |
|
※マテリアリティの特定プロセスは、以下をご参照ください。
(当社ホームページ マテリアリティ(重要課題))
https://www.mitsubishi-hc-capital.com/sustainability/materiality.html
(3)サステナビリティの基本方針
当社ではお客さまやパートナー企業とともにアセットの潜在力を最大限に引き出し社会価値を創出することで、持続可能で豊かな未来に貢献していくことを当社のありたい姿として「経営理念」に掲げ、それを実現するために「経営ビジョン」を定めています。この経営理念、経営ビジョン、さらには、特定されたマテリアリティを一体とした姿勢こそが、当社グループの「サステナビリティの基本方針」となります。
特に当社のマテリアリティのひとつとして掲げる「脱炭素社会の推進」に関連する気候変動への取り組みおよびマテリアリティの解決を実現する人的資本に関する取り組みについて適切な情報開示を推進しています。
マテリアリティと経営理念・経営ビジョンの関係性
(4)気候変動への取り組み
気候変動問題は、持続可能な社会を実現するために解決すべき重要な課題です。当社グループは、今後、企業が存続していくためには、事業活動を通じてその課題解決に取り組むことが必要になると考えています。また、適切な情報開示により、ステークホルダーからの信頼を獲得することの重要性を認識しており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同しています。
TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示
① ガバナンス
持続可能で豊かな未来に貢献する存在となるべく、当社は経営会議の諮問委員会の1つとして「サステナビリティ委員会」を設置しています。当委員会は、気候変動問題をはじめサステナビリティに関連する重要課題を審議し、その結果を経営会議ならびに取締役会に報告しています。当社は「脱炭素社会の推進」を含むマテリアリティをサステナビリティ委員会、経営会議の審議を経て、取締役会決議により特定しており、取締役会は後述の「④指標および目標」で掲げる環境目標の進捗状況を監督していきます。今後、次期中期経営計画の策定の中で環境目標の達成状況を役員報酬と連動させる仕組みを検討する等、カーボンニュートラル社会の実現に向けてガバナンスを強化していきます。
② リスク管理
脱炭素社会への移行にともなう規制変更や技術革新、ビジネスモデルの転換、または地球温暖化にともなう異常気象等は、業績悪化等による取引先の経営破綻、当社グループが保有するアセットの価値下落等、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、気候変動リスクを全社的なリスク管理における重要なリスクの一つとして認識しており、リスクを特定・評価・管理するとともに、ビジネスの機会を捉え、脱炭素社会の実現に貢献します。
a. リスクマネジメント態勢の概要
当社グループは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事業等のリスクを総合的に管理しています。管理している重要なリスクには、信用リスク、アセットリスク、投資リスク、市場リスク、資金流動性リスク、カントリーリスク、オペレーショナルリスク等があります。
考えられるリスク要因を管理対象に、各リスクの所管部門が外部環境の変化等による課題を把握し、定期的にこれらのリスクへの対策を検討のうえ、リスク管理委員会をはじめとした各委員会にて報告・審議しています。また、重要事項は経営会議・取締役会にて報告・審議する管理態勢としています。
b. 気候変動リスクの分類、影響事例
気候変動リスクには、気候関連の規制強化・技術革新等にともなう移行リスク、異常気象や気候の変化にともなう物理的リスクがあります。TCFD提言ではそれぞれを政策と法・テクノロジー・市場・評判、急性的・慢性的のサブカテゴリーに分類し、影響事例を示しています。
当社グループでは、気候変動リスクは、信用リスクやアセットリスク、投資リスク等といった既存のリスクを含む幅広い波及経路を通して、短・中・長期とさまざまな時間軸のなかで影響が発現するものと捉えています。
また、当社グループの事業活動に対する直接的な影響に加えて、当社グループの顧客を通した間接的な影響の発現も想定されます。
こうしたリスク特性とTCFD提言の内容を踏まえたうえで、当社グループのリスク管理の枠組みも考慮し、気候変動リスクの影響事例を当社グループの主要なリスクごとに整理しています。統合リスク管理態勢のもと、気候変動リスクもその他の主要リスクとの関係性を踏まえて、リスクを特定・評価、管理する体制の構築を進めています。
今後、リスク分類や影響事例は、外部環境の変化、気候変動リスクに対する分析・評価の深化に応じて、その見直しを行っていきます。
c. 全体的なリスクマネジメントへの統合状況
気候変動リスクによるその他の主要なリスクへのさまざまな影響は、リスク管理委員会にて報告・審議する態勢としています。シナリオ分析を通して判明したリスクも含めて、モニタリング体制を構築する等、リスク管理全体への統合を進めていきます。また、気候変動に関する目標・計画策定、モニタリング内容は、サステナビリティ委員会にて報告・審議する態勢としています。両委員会の審議内容は取締役会の監督体制のもと、当社グループの経営戦略全体に反映し、リスクマネジメント全体、個別リスク双方の観点から適切に対応できる態勢としています。
③ 戦略
当社は、将来の気候変動が当社グループの事業に及ぼすリスクと機会を把握するとともに、適切な情報開示や今後の施策の検討を目的に、「移行リスク」および「物理的リスク」に関するシナリオ分析を行っています。
なお、シナリオ分析は、現時点で得られる限定的な情報やデータをもとに分析したものです。分析結果を慎重に精査し、ステークホルダーとの対話を通じて、引き続きより多くの情報と関連データを入手し、分析手法の改良や分析対象事業の拡大を図ることで、適切な開示に努めていきます。
a. シナリオ分析の概要
移行リスク分析の概要
|
対象セクターおよび 主要セグメント |
対象セクター(業種) |
主要セグメント |
|
エネルギー (石油、ガス、石炭、電力会社) |
環境エネルギー |
|
|
運輸(航空貨物輸送、航空旅客輸送) |
航空 |
|
|
素材、建築物(不動産管理、開発) |
不動産 |
|
|
当社グループセグメントのうち、「カスタマーソリューション」は、日本国内を拠点とし、法人・官公庁向けファイナンスソリューション、ベンダーと提携した販売金融、不動産リース、金融サービス等、対象セクターを横断した事業活動を行っていることから分析対象セグメントに含めた。 一方で、「海外カスタマー」は、欧州、米州等海外グループ会社の事業拠点が複数に跨り、分析負荷が高いことから対象外とした。 |
||
|
シナリオ |
国際エネルギー機関(IEA)が公表しているNet Zero Emissions by 2050 Scenario(NZEシナリオ)およびStated Policies Scenario(STEPSシナリオ) |
|
|
分析方法 |
対象セクターにおける脱炭素社会に向けた機会とリスクを特定し、事業影響を評価(定性分析) |
|
物理的リスク分析の概要
|
分析対象 |
環境エネルギー事業本部、不動産事業本部、および当社グループの事業所、支店が保有する事業用資産 |
|
シナリオ |
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表しているShared Socioeconomic Pathways(SSP5-8.5) |
|
分析方法 |
事業用資産の所在地で起こり得る異常気象、気候の変化が及ぼす事業影響を評価(定性分析) |
b. シナリオ分析結果
シナリオ分析対象セグメントである、環境エネルギー、航空、不動産、カスタマーソリューションを所管する各本部および全社のリスク管理所管部署であるリスクマネジメント統括部と気候変動が及ぼす当社グループの事業影響に関する議論を行い、シナリオ分析結果と既存戦略方針との整合性を確認しました。
当社グループは、気候変動に関するリスクと機会について、短期ないし長期にわたる対応策を講じることにより、リスクの最小化および機会の最大化を図っています。移行リスク分析の結果としては、再生可能エネルギーの拡大(環境エネルギー)、高燃費航空機・エンジン等ならびにSAFや水素等の低炭素燃料への移行(航空)、低炭素建物の需要拡大(不動産)等に関連するリスクと機会に適切に対処する必要性が認識されています。また、物理的リスク分析の結果としては、発電所の被災、太陽光パネル等発電設備の劣化(環境エネルギー)、自然災害の激甚化による不動産価値の毀損、建築・運営費用・改修費用の増加(不動産)、当社グループ事業所の被災や運営費用・保険費用の増加等のリスクが想定されています。
気候変動リスクに対しては、適切な対応策を策定する一方、気候変動による機会は、事業機会の獲得を戦略に織り込んでいます。なお、気候変動関連の指標を設定し、国内外における関連動向および当社グループの取り組み状況を定期的にモニタリングする体制を整備しています。
④ 指標および目標
当社グループは、脱炭素社会の実現を喫緊の課題と認識し、国の政策目標や10年後のありたい姿等から当社グループのあるべき姿を定めました。そして、そのあるべき姿から逆算して環境目標を設定しました。これを契機として、「脱炭素社会の推進」をより重要な機会と捉え、積極的に推進しています。なお、将来的に新規事業の取り組み等により温室効果ガス排出量が大幅に増加した場合、あるいは、サプライチェーンを含めたグループ全体の温室効果ガス排出量算定を高度化するなかで数値の変動が生じる場合等においては、適宜目標設定を見直す可能性はありますが、いずれも現在設定している目標と同様に、国の政策目標等の水準に沿うよう設定する予定です。
a. 当社グループの環境目標
|
指標 |
2030年度目標 |
2023年度実績※2 |
|
当社グループの温室効果ガス排出量 (Scope1・2)※1 |
5,081tCO2e (2019年度比△55%) |
(2019年度比△42%) |
※1 当社グループの温室効果ガス排出量(Scope3)に関する目標は、以下をご参照ください。
(当社ホームページ カーボンニュートラル社会の実現に向けた移行計画)
https://www.mitsubishi-hc-capital.com/pdf/sustainability/environment/transition_plan/transition_plan2025060601.pdf
※2 2024年度実績は、集計中です。
b. 今後の取り組み
当社グループは、「脱炭素社会の推進」の実効性をさらに高めるべく、Scope1,2の目標設定以降の取り組みや進捗に加え、Scope3の中間目標達成に向けたプロセスをまとめ、「カーボンニュートラル社会の実現に向けた移行計画」を策定しました。本取り組みおよびその高度化を通じて、サプライチェーンを含めた2050年カーボンニュートラル社会の実現をめざしていきます。
(5)人権に関する取り組み
① 人権に関する基本的な考え方
当社グループでは、倫理綱領・行動規範で「人権および環境の尊重」を掲げ、行動規範の「人権の尊重」においては、「人間性の尊重という基本精神に立ち、性別、性的指向、年齢、国籍、人種、民族、思想、信条、宗教、社会的身分、門地、疾病、障がいなどによる差別や人権侵害を行いません。」と宣言しています。
また、「世界人権宣言」「国際人権章典規約(自由権規約、社会権規約)」「国連グローバル・コンパクトの10原則」「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」「ビジネスと人権に関する指導原則(ラギー・フレームワーク)」「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」「子どもの権利とビジネス原則」など、人権、労働、環境、腐敗防止などに関する国際的規範の考え方を尊重、支持しています。これらの人権に関する基本的な考え方のもと、すべてのステークホルダーの人権尊重に努めます。
当社グループの人権方針は、以下をご参照ください。
(当社ホームページ 人権方針)
https://www.mitsubishi-hc-capital.com/pdf/sustainability/various_policies/human_rights_policy.pdf
② 人権デュー・ディリジェンスの取り組み
当社グループは、2023年度に人権デュー・ディリジェンスの運用を開始しました。これは、2022年度に全社横断的な「人権対応プロジェクト」を立ち上げ、およそ1年間にわたって議論を重ね制度設計を行ったものです。その後、2024年度にも対象とする取引種類を追加し取り組み範囲を拡大しました。引き続き営業部門をはじめとする現場の意見を反映し、外部専門家との意見交換を行いながら、改善・強化を図っています。
③ 人権に関する相談・通報への対応(苦情処理メカニズム)
当社グループは、社員の人権に関する相談を、内部通報制度である「コンプライアンス・ホットライン」や「セクハラ・マタハラ・SOGIハラ等ホットライン」にて受け付けています。
社外からの相談は、一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が提供する「対話救済プラットフォーム」を活用した複数言語対応の人権通報窓口を設置し、すべてのステークホルダーからの人権に関するご相談やお問い合わせ等を受け付けています。本窓口では通報者の保護に十分配慮し、匿名での申告も受け付けることを明記しています。
(6)人的資本に関する取り組み
① 戦略の方向性
当社グループは、人的資本を蓄積し活用することが、「経営の基本方針」や「経営の中長期的方向性」の実現を通じて企業価値を向上させるうえでの重要課題と認識しています。なかでも、「経営の中長期的方向性」に示した「SX」「DX」と「事業ポートフォリオ変革」を実現し、当社グループが目標とする経営指標を達成するために、質・量ともに必要な人的資本を蓄積・活用していきます。
② 中長期的に成し遂げたいテーマと取り組み内容
人的資本の蓄積・活用に当たり、中長期的に成し遂げたいこととして、「人材ポートフォリオの充足」と「MHCエンゲージメント※の維持・向上」の2つのテーマを掲げています。これらを成し遂げるために、「人材マネジメント基盤の再構築」「MHCエンゲージメントの維持・向上の仕組み化」の2点を優先的に取り組んでいます。
※“従業員が一丸となって価値創造に取り組んでいる状態”をMHCエンゲージメントが高い状態と定義
(MHC = 三菱HCキャピタル)
a. 人材ポートフォリオの充足
|
取り組み方針 |
当社グループの戦略実現に資する人材(質・量)の確保・育成 ・「経営の中長期的方向性」の実現に必要な人材の質と量を定義し、人材ポートフォリオを可視化。 ・必要な人材と現状の人材のギャップを質・量の観点から把握し、ギャップを埋めるための施策を実施。 |
|
指標および目標 |
(2025年度決算発表時頃に公表予定) |
|
2024年度取り組み内容と実績 |
人材マネジメント基盤の再構築 ・「経営の中長期的方向性」実現のうえで必要とされる職務を定義。 ・定義した職務ごとに人材要件を定め可視化。 ・アセスメントなどの実施による人材情報(経験・スキル・コンピテンシー)の把握と可視化。 |
b. MHCエンゲージメントの維持・向上
|
取り組み方針 |
MHCエンゲージメントを構成する3要素の維持・向上 MHCエンゲージメントの定義 当社グループでは、“従業員が一丸となって価値創造に取り組んでいる状態”をMHCエンゲージメントが高い状態と定義しています。MHCエンゲージメントは行動の程度を示す「自発性」・「多様性」とそれらに影響を与える「職場環境」の3つの要素から構成されています。 |
|
|
|
|
指標および目標 |
自発性、多様性スコアがいずれも67pt(回答者の3人のうち2人が肯定的に回答)以上を「良好な状態」、いずれも50pt(回答者の半数が肯定的に回答)以上を「概ね良好な状態」とし、「良好な状態」または「概ね良好な状態」にある組織は“従業員が一丸となって価値創造に取り組んでいる状態”にあると評価。 MHCエンゲージメントの維持・向上をめざし、「良好な状態」または「概ね良好な状態」にある組織の割合を持続的に高い水準で保つための取り組みを推進。 |
|
2024年度取り組み内容と実績 |
取り組み内容 MHCエンゲージメントの維持・向上の仕組み化 ・エンゲージメントサーベイの設問を見直すなど高度化。 ・サーベイ結果を指数化。
実績 「良好な状態」または「概ね良好な状態」である組織は全体の75%(単体)
|
|
|
|
当社グループは、グローバルに事業活動を行っており、取引先の事業に必要な設備投資やサービスをリース等により提供しています。リース取引等のために保有するアセットは、事務機器や生産設備といった一般的な動産のほか、航空機等特定の産業で使用されるアセットまで多様化しています。国内外の景気の減速・後退にともない、取引先の事業環境等が悪化し設備投資需要が大幅に減少した場合、リース取引の減少等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、内部プロセス・人・システムが不適切であることもしくは機能しないこと、または外生的事象が生起することから生じる損失によっても、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事業等の主なリスクについて、全社的なリスク管理体制を構築するとともに、リスク顕在化の未然防止と発生時の影響の極小化に努めています。また、経営の健全性維持と収益性向上を両立させることで持続的な成長を図るため、「統合リスク管理」の枠組みに基づくリスク資本運営を行っています。
本項には将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)当社グループの認識している重要なリスク
当社グループでは、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性のある重要なリスクとして、以下のリスクを認識しています。加えて、足元ではロシア・ウクライナ情勢、米中対立、中東情勢等の地政学リスクや、米国の関税政策が各国経済に及ぼす影響等、事業環境の不確実性が高まっており、動向を注視しています。
① 信用リスク
当社グループは、リース取引や割賦販売、金銭の貸付等の形態による金融サービスの提供により、中長期にわたり信用を供与する事業を行っています。今後の景気動向や金融情勢によっては、企業の信用状況悪化による不良債権の増加にともない貸倒引当金の追加繰入等が必要となり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
個別案件の取り組み可否の検討にあたっては、当社グループ独自の格付制度を用いて取引先の信用状況を精査するとともに、リース対象物件の価値やカントリーリスク等を踏まえたうえで総合的に審査を行い、リスクに基づく適切なリターンの確保に努めています。また、取引開始後も継続的に取引先の信用状況をチェックし、取引先の信用状況悪化の際には必要な措置を講ずる態勢を整えています。さらに、ポートフォリオ全体として、特定取引先、業種、国・地域等に与信が集中しないよう、リスク分散を考慮した与信運営に取り組んでいることに加えて、定期的にポートフォリオの信用リスク量を計測し、これが資本の一定の範囲内に収まっているかをモニタリングすることで、経営の健全性確保に努めています。
② アセットリスク
当社グループは、国内外において、一般的な動産に加え、航空機等のグローバルアセット、建物等の不動産を保有し、オペレーティング・リース等の形態で、これらを賃貸する事業を行っています。この事業では、前述の信用リスクに加えて、アセットリスクを負っているため、アセットの運用や処分によって得られる収入の変動が当該取引の採算に影響を及ぼす可能性があります。このため、オペレーティング・リースの取り組みにあたっては、個別案件の取り組み時に、取引先の信用状況に加え、アセットの種類に応じて、その価値を慎重に見極めて審査を行っています。また、取引開始後も継続的に当該アセットに係るリースや売買市場の状況、賃借人によるアセットの利用状況等のモニタリングを行い、リスクの顕在化防止、軽減に努めています。
a. グローバルアセット
当社グループは、航空機、航空機エンジン、コンテナ、鉄道貨車等のグローバルアセットを国内外において保有し、オペレーティング・リース等の形態で、これらを賃貸する事業を行っています。グローバルアセットに関する事業では、前述の信用リスクに加えて、当該アセットの価格変動リスクを負っています。オペレーティング・リースでは、取引先からのリース料収入のほか、リース期間満了後にアセットを売却して資金の回収を図ります。また、取引先の経営破綻等の際には、当該アセットを引き揚げたうえで、別の取引先とリース取引等を行うほか、アセットを売却して資金の回収を図ります。アセットの売却に際しては、景気動向や金融情勢のほか、技術的問題に起因する大事故、技術革新による陳腐化、法律や規制等の改定、世界的な感染症の拡大やテロの懸念の高まり、あるいは自然災害や戦争・地政学的リスク等によってもアセットを取り戻せなくなるリスクやアセット売却価格が変動するリスクが生じるほか、減損損失の計上や物件管理に付随するコストの増加等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
グローバルアセットのオペレーティング・リースの取り組みにあたっては、個別案件の取り組み時に、動産を対象とする取引時の確認事項に加え、将来のアセットの流動性等を含め総合的に審査を行うとともに、信用リスクやアセットの価格変動リスクに見合った適切なリターンの確保に努めています。さらに、アセットの種別や地域・満了時期等リスク分散を考慮したポートフォリオを維持すべく、当社グループ内でクライテリアを定めて運用しています。また、取引開始後も継続的に取引先の信用状況や業界動向をチェックし、必要に応じてアセットの劣化を回復するための預かり金を取引先から徴求するなどして、取引先の信用状況悪化の際に必要な措置を講ずる態勢を整えています。加えて、リスク管理部門にて、主要なアセットカテゴリーごとに、対象業界の動向やアセットの価値変動に影響を及ぼす兆候を定点観測する予兆管理モニタリングを実施するとともに、事業部門とのリスクコミュニケーションを継続的に行っています。また、定期的に取引先の信用リスクやポートフォリオにおけるアセットの価値変動リスク量を計測し、これが資本の一定の範囲内に収まっているかをモニタリングすることで、経営の健全性確保に努めています。
b. 不動産
当社グループは、国内外において、オフィス、住宅、商業施設、物流施設、ホテル等の商業不動産に対する投融資や保有不動産を活用した賃貸および事業運営等を行っていますが、当該アセットは収入変動リスクや価格変動リスクを負っています。不動産に関する事業では、テナント等からの賃貸料収入のほか、長期保有方針以外のアセットでは、適切な時期にアセットを売却して資金の回収を図ります。賃貸料収入やアセットの売却収入については、景気動向、金融情勢、アセットの所在する個別のロケーションの賃貸市況といった市況環境によって収入が変動し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
個別案件の取り組み時に、将来のアセット価値や流動性等を慎重に見極めて総合的に判断を行うとともに、アセットの価格変動リスクに見合った適切なリターンの確保に努めています。また、取り組み後も継続的にアセットの運用状況、価格動向や業界動向をチェックし、収益の極大化を図る態勢を整えています。加えて、リスク管理部門にて、業界の動向やアセットの価値変動に影響を及ぼす兆候を定点観測する予兆管理モニタリングを実施するとともに、事業部門とのリスクコミュニケーションを継続的に行っています。また、定期的にポートフォリオにおけるアセットの価値変動リスク量を計測し、これが資本の一定の範囲内に収まっているかをモニタリングすることで、経営の健全性確保に努めています。
③ 投資リスク
当社グループは、国内外の太陽光や風力を中心とする再生可能エネルギー発電事業、事業会社やファンドへの出資等のさまざまな事業に対する投資活動を行っています。このような投資活動においては、景気変動や需要の減退といった事業環境が変化するリスク、投資先やパートナーの業績停滞等にともなって期待どおりの収益が上げられないリスクや投資額の回収可能性が低下するリスク、投資先の株価が一定水準を下回るリスクがあるほか、投資先の業績にかかわらず経済・金融情勢の急激な変化や金融市場の大きな混乱等により株価が一定水準を下回る状態が相当期間に及ぶリスク等があり、評価上の損失を含め投資の一部または全部が損失となる、あるいは追加資金拠出が必要となる場合があります。さらには、パートナーとの経営方針の相違、投資資産の流動性の低さ等により当社グループが望む時期や方法での事業撤退や事業再編が行えないリスク、あるいは、投資先から適切な情報を入手できず当社グループに不利益が発生する等のリスクがあり、そのような場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
投資案件の取り組みにあたっては、個別案件の投資額やリスクの深度等に応じて投資案件協議会を開催し、関係各部の意見を確認、幅広い視点で将来の投資価値や流動性等を慎重に見極めて総合的に判断を行うとともに、リスクに見合った適切なリターンの確保に努めています。加えて、取り組み後も継続的に投資の運用状況や業界動向をチェックし、収益の極大化を図る態勢を整えています。また、定期的にポートフォリオにおける投資価値の変動リスク量を計測し、これが資本の一定の範囲内に収まっているかをモニタリングすることで、経営の健全性確保に努めています。
④ 市場リスク
a. 金利変動リスク
当社グループの行うリース取引や割賦取引におけるリース料や賦払金は、取引対象物件の購入代金や契約時点の市場金利水準等をもとに設定され、基本的に契約期間中は変動しない取引が中心となっています。一方、リース物件等の取得資金に掛かる資金原価等は、資金調達の多様化や資金コスト低減を目的に、固定金利調達と変動金利調達とのバランスを図りながら調達を行っているため、市場金利変動の影響を受けます。したがって、金融情勢の急変によって、市場金利が急激に上昇するような場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
b. 為替変動リスク
当社グループは、海外での事業展開に積極的に取り組み、外貨建資産が増加しており、連結営業資産に占める割合も高まっています。当社グループの海外連結子会社では、原則として資産と同一通貨での資金調達を行っていますが、各社の財務諸表は現地通貨で表示されている一方、当社の連結財務諸表は日本円で表示されているため、為替相場の大幅な変動が生じた場合、日本円換算での当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、金融市場の動向を随時注視するとともに、ALM(資産・負債の総合管理)により、資産運用と資金調達の金利形態や為替等のミスマッチの状況を随時モニタリングし、金利動向を考慮しながら適宜ヘッジオペレーションを行い、金利変動リスクを管理しています。為替変動リスクへの対応としては、外貨建営業資産に合致した通貨での資金調達を原則とし、為替評価差損益を極小化するよう努めています。また、金利や為替相場が不利な方向に動いた場合に、保有ポートフォリオのポジションが、一定期間、一定の確率でどの程度損失を被る可能性があるかを過去の統計に基づいて計量的に示したリスク量を定期的に計測し、これが資本の一定の範囲内に収まっているかをモニタリングすることで、経営の健全性確保に努めています。なお、ALM委員会は四半期ごと、または状況に応じて開催し、地政学リスク、パンデミック等、さまざまなリスクファクターによるシナリオ分析、データ分析を行い、金融市場環境の動向やリスク量の状況などを踏まえてALM方針を決定しています。
⑤ 資金流動性リスク
当社グループは、リース取引に係るリース物件の取得および割賦取引や金銭の貸付等の事業を行うにあたって、内外の通貨により多額の資金調達を行っています。リース等の与信取引や投資等の期間と資金調達の期間とのバランスを図りながら調達を行っていますが、経済・金融情勢の急激な悪化や金融市場の大きな混乱、あるいは当社グループの信用力低下等により、金融機関や投資家のリスク回避姿勢が強まり、十分な資金の確保が困難になる場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
資金調達については、金融機関からの借入に加え、社債、コマーシャル・ペーパー、リース債権流動化等、市場からの直接調達により多様化に努め、かつ、長期・短期の調達バランスの調整や綿密な資金繰り管理を行うとともに、コミットメントラインの取得等により緊急時の流動性補完対策を講じ、資金の流動性確保を図っています。
また、資金流動性のステージ管理を実施しており、調達環境が悪化した場合であっても返済資金を含めた当面の必要資金が確保できるように調達構造を構築し、その流動性の状況を確認し、ALM委員会に報告する運用としています。
ALM委員会では、金利感応度分析(金利変動による収益への影響分析)を実施するほか、金融市場などにストレスがかかった場合における④の市場リスクおよび⑤の資金流動性リスクの状況や損益インパクト等を総合的に検証したうえで、市場環境を踏まえた全社戦略を実現するための資金調達戦略、リスク対応への方針を決定しています。特に、リスク管理に関しては、全社的な統合リスク管理の一環であるリスク管理委員会とも連携しています。予兆管理態勢を強化し、コンティンジェンシー・プランと合わせることで、危機に直面したときの財務構造の柔軟性と回復力の向上に努めています。
また、当社グループは近年の事業のグローバル化を支え、外貨調達力を引き上げるため、当社グループの資産残高の多い北米に地域財務拠点を設置し、資金調達の集約を含めた「グループファイナンス態勢」を敷いています。地域財務拠点では、間接金融のみならずUSコマーシャル・ペーパーや社債の発行等による多様な資金調達を実施し、北米に展開するグループ会社に対する資金の提供を行っています。
⑥ カントリーリスク
当社グループは、グローバルなビジネス展開を行っていることから、取引先や投資先の国や地域における政治・経済等の状況によって損失を被るリスクを負っています。その国における通貨・株価等の急落、国債の債務不履行といった経済情勢の変化に加え、紛争や内乱、政治情勢の変化等さまざまな要因により、ある国ないしはそこに所在する与信取引や投資等に係る貸倒引当金の追加繰入や減損損失の計上等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、各国の経済力・信用力にしたがい取引量の上限値を設定しています。加えて、カントリーリスクを内包する与信取引・投資等の残高が、上限値の範囲内に収まっているかをモニタリングしています。これにより、特定の国や地域に対する依存度を分散させ、カントリーリスクが顕在化した際の損失影響を低減するよう努めています。
⑦ オペレーショナルリスク
a. 地震・風水害・感染症・戦争・テロ等に関するリスク
当社グループは、国内外に拠点・システム等の設備を有し事業活動を行っており、地震・風水害等の自然災害や感染症・戦争・テロ等その他の突発的な事態が発生した場合、拠点やシステム等への被害、従業員が直接の被害を受けるまたは出社が制限される等により、拠点の活動が縮小または運営困難などの被害が生じ、事業活動に支障が生じる可能性があります。また、その被害の程度、あるいは当該事象の発生の長期化等によっては、システム等の設備の復旧に多額の費用が必要になる可能性や事業活動の回復に長期間を要する可能性があり、このような場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、このような事態に備え、想定されるリスク事象により所管部を定め、危機事態には対策本部を設置し対応する態勢を整備しています。また、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定、基幹システムの二重化対策、在宅勤務が可能なシステムインフラ整備による業務継続、継続すべき業務を限定したうえでの交代出社等により、業務継続態勢の整備を進めています。
b. システムリスク
当社グループは、さまざまな情報システムを利用し、会計処理、各種契約管理、取引先管理、リース物件の資産管理等を行うほか、電子メール等を利用しています。これらの情報システムについては、保守の不備、開発の不調等を起因とするシステムの停止や障害の発生による契約・回収等の業務や取引先への提供サービスの中断による営業活動の停滞、経済的損失等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループは、システムの安定稼働のため、当社および協力会社との連携による強固な保守管理態勢を整備し運用しています。障害等発生時には当該事象の社内外の速やかな情報連携・対応を行うとともに、その後の再発防止策の策定・実施も含めた一連の対応態勢を構築しています。また、システムの開発にあたっては、当社開発プロセスの標準的手法を国内外のグループ会社へも展開しグループベースでのIT統制を行っています。
c. サイバーセキュリティリスク・情報セキュリティリスク
当社グループは、さまざまな情報システムを利用し、会計処理、各種契約管理、取引先管理、リース物件の資産管理等を行うほか、電子メール等を利用しており、これらの情報システムについては、ビジネスメール詐欺、マルウェアの侵入、外部からの不正アクセス等、サイバー攻撃等を受けるリスクがあります。外部からの不正アクセスやマルウェアの侵入、人為的ミス、不正、詐欺行為等により、システムの停止や障害、金銭的被害の発生、あるいは当社機密情報や取引先情報の漏洩、不正使用等が発生した場合、契約・回収等の業務や取引先への提供サービスの中断による営業活動の停滞、経済的損失、重要情報の外部への漏洩による社会的信頼の失墜等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、これらのリスクに対し、社内に組織横断型チームMHC-SIRT(Security Incident Response Team※)を設置し、入口・内部・出口の多段階での防御とインシデント発生時の対応態勢を整備しています。具体的には、脆弱性を悪用したサイバー攻撃への備えとして、ソフトウェアを最新の状態に更新し、外部からの不正アクセスやマルウェアの侵入、サイバー攻撃等を検知し、トラブルを未然に防止する管理態勢を講じるとともに、インシデント発生時の社内外の連携態勢の整備・訓練を行い、全社員に対し標的型メール訓練や情報セキュリティに係る社内教育を継続的に実施しています。
※当社グループに対する標的型メール攻撃や不正アクセスなど、サイバー攻撃を中心とした情報セキュリティ事案への対応を行う当社内の組織横断型のチームです。(MHC=三菱HCキャピタル)
d. 法的リスク
当社グループの業務活動は、国内外の各種関連法令等の適用を受けています。主なものとして、会社法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、贈収賄関連諸法、個人情報保護法、貸金業法、割賦販売法、犯罪収益移転防止法、環境関連諸法等を遵守する必要があり、海外においては、それぞれの国・地域における法令の適用を受け、規制当局の監督を受けています。法令や社会規範・社内ルール等が遵守されなかった場合、業務の制限や停止、取引先等からの損害賠償の請求、社会的信頼の失墜等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループは、法令や社内ルールにしたがって業務活動等を行うこととしており、法令遵守のために必要な社内規程等を制定するほか、法曹資格者を含む法務室を設置し、各種法務支援、役職員への教育・研修、および連結ベースでの法的リスク管理体制の強化に努めています。
e. 制度変更リスク
当社グループの業務活動は、国内外の法令・会計・税制等、各種制度の適用を受けています。当社の業務に密接に関連する各種制度に大幅変更・改訂等が発生し、当社が当該制度変更・改訂に適切に対処できなかった場合、各種制度への不適合による罰則、商品の取扱い中止、業務活動の制限、会計上の売上減少等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、国内外の法令・会計・税制等の各種制度について、コーポレートセンター・各事業部門・国内営業拠点・各国拠点のそれぞれが、担当業務・国に係る制度等の改訂・変更の状況を継続的にモニタリングしていることに加え、外部専門家の積極的な活用により当該モニタリングを補強しながら、各種変更・改訂の早期の情報収集・対策の実施を行っています。
f. 事務リスク
当社グループは、さまざまな形態の取引を行っており、取引ごとにさまざまな事務管理が発生しています。これらの事務管理については、不適切な事務等の人為的ミス、不正等により、契約・回収等の業務や取引先への提供サービスの中断による営業活動の停滞、取引先からの信用の失墜等が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループは、取引ごとに事務管理ルールを定め、当該事務管理ルールにしたがって業務を行うとともに、同ルールの見直しを適宜実施しています。また、社内で事務事故が発生した場合の社内報告態勢を整備し、事故発生時には社内報告・発生事象への迅速な対応・事故原因の特定と再発防止策の策定・実施を行う態勢を構築し運用しています。
(2)その他の重要なリスク
当社グループでは、以下のような重要なリスクについても認識しています。こうしたリスクは、各リスクの特性や状況に応じて、統合リスク管理の枠組みで管理している各リスク項目への影響や複数のリスク項目に跨る複合的な影響を分析するとともに、当社グループとしての対応を検討、必要に応じて対応方針を策定するほか、状況に応じてシナリオ分析などを実施して、リスク耐久力に対する多面的な検証を行っています。
① コンプライアンスリスク
当社グループは、法令等はもとより社会規範を遵守し、高い倫理観をもって行動するよう全役職員にコンプライアンスを徹底しています。しかし、万が一、これらに反する行為が顕在化した場合、当社グループの信用、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社では、法務コンプライアンス部を設置し、当社グループのコンプライアンスを統括しています。また、法令等の遵守徹底を図るため、コンプライアンスプログラムを策定し、実施しています。
具体的には、基本的なコンプライアンスに対する価値観・倫理観の認識・共有を図るため、「三菱HCキャピタルグループ倫理綱領・行動規範」を定め、当社グループ役職員の指針としています。また、倫理綱領・行動規範を補完するものとしてコンプライアンスに関する各種方針や社内規程を整備するとともに、コンプライアンスに関する継続的な教育を実施しています。
また、行動規範の浸透状況や、職場環境の状態確認等を目的として、当社グループの役職員を対象に、コンプライアンス意識調査を定期的に実施しています。
加えて、役職員等が不正行為等(腐敗を含むあらゆる法令違反行為、社内規程違反行為および倫理綱領違反行為、または、そのおそれがあると思われる行為)を通報・相談する内部通報制度を整備・運用する等、コンプライアンス態勢の強化に努めています。
② コンダクトに関するリスク
当社グループでは、10年後のありたい姿である「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」に向けて「変革」をキーワードとしてさまざまな施策を実施していますが、この過程において役職員により、顧客保護、有効な競争、市場の健全性、公共の利益および社会規範から逸脱した行為等によりステークホルダーに不利益が生じた場合、当社グループの信用、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、「経営の基本方針」のなかで「社員一人ひとりが“持つべき価値観・心構え”“取るべき行動”」である「行動指針」のひとつとして、高い倫理観を持ち、絶えず基本に立ち返る「インテグリティ」をもって行動するよう定め、全役職員に徹底しています。
③ 人材確保に関するリスク
当社グループは、国内外で展開している各種事業の競争力を維持・強化していくため、十分な人的資源を安定的に確保する必要があります。当社グループでは、継続的に有能な人材の確保・育成に努めていますが、必要な人材を十分に確保・育成できない場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、新卒採用に加えキャリア採用を行い積極的な採用に努めています。採用態勢の強化として、社員紹介によるリファラル採用や、一度退職した社員を再雇用するカムバック採用を導入する等、多様な人材の採用を行っています。また、社員一人ひとりが自発的に挑戦し価値を創造し続けるために、「キャリア」「階層別」「DX」「自己啓発」等を人材育成のテーマに掲げ、各種研修の実施や資格取得支援、社員のキャリア形成に資するキャリアチャレンジ制度(社内外の各種ポジションへの公募制度)の導入等、さまざまな成長機会を提供し支援することで、社員の育成に努めています。
④ 労務・雇用管理に関するリスク
当社グループの業務には多くの従業員が従事していますが、長時間労働により、従業員の心身の健康等に悪影響を及ぼし、想定していた業務を遂行できないリスク、または雇用等に関する法令遵守事項を適切にモニタリングしていないことによって法令違反を犯してしまうリスク、加えてこれらにより社会的信用を毀損する可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループでは、DXを活用した業務改善や多様な働き方を可能とする制度(コアタイムのないフレックス勤務、在宅勤務、サテライトオフィス等)を推進し、長時間労働縮減だけでなく育児・介護の必要な社員が活躍できる環境づくりに努めています。また、ハラスメント等の労務問題についても国内外の従業員に対して、社内通報・相談窓口を設置するなど対応しています。従業員が最大限能力を発揮できるよう「働きやすい職場づくり」を当社グループの重要な取り組みテーマとして推進しています。
⑤ 事業基盤拡大・戦略的提携・M&A等に関するリスク
当社グループは、事業基盤拡大による持続的な成長を図るため、国内外で、当社グループ独自での展開に加え、各種サービスの充実に向けた外部との戦略的な提携にも取り組んでおり、また、M&Aによりグループの事業ポートフォリオの多様化・拡充を図っています。
このようなアプローチで、事業の多角化やサービスの充実に取り組んでいますが、国内外の経済・金融情勢の変化、競争の激化、提携先の事業環境の変化や戦略の変化、関連法令の変更等により、期待した効果が得られない可能性、M&Aの際に計上したのれんの減損処理を迫られる等、追加的な費用計上が必要となる可能性があり、このような場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
M&A等の案件の取り組みにあたっては、個別案件の投資額やリスクの深度等に応じて関係各部で検討を行うほか、外部の専門家を起用し、幅広い視点で投資ストラクチャーの合理性や将来の投資効果等を慎重に見極めて総合的に判断を行うこととしています。なお、M&A案件実行後においても、当社グループの規程等を適用し、適正な業務運営を行う態勢を整備するとともに、その事業計画や実績管理等のモニタリングを行い必要な対応を適時に行う態勢としています。
⑥ ビジネス領域の拡大にともなうリスク
当社グループは、法令や規制をはじめとする各種の条件で許容される範囲において、新規のビジネス領域を含めた業務範囲をグローバルベースで拡大しています。その過程において、拡大した業務範囲のビジネスが想定どおりに進展しない場合、あるいは、リスクの顕在化が合理的な想定の範囲を超えた場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
新規のビジネス領域に進出する際には、事前のリスク評価に基づき潜在的なリスクを特定し、進出前の段階で適切な対策を検討しています。なお、リスクの評価にあたっては、多面的に情報およびデータを分析し、既存ビジネスの経験や知見も生かした評価手法の高度化も進めています。加えて、拡大したビジネス領域の進捗状況や最新のリスク状況を継続的にモニタリングし、必要に応じて関係部門が連携のうえ、迅速に対応策を講じる態勢を整えています。
⑦ 競争の激化
当社グループが国内外で行っているリース取引等の各種事業では、同業のみならず金融機関等も含めた競争のさらなる激化、あるいは異業種のビジネスモデル転換や技術革新等による競争環境の変化が生ずる可能性があります。競争状況がさらに激化した場合、マーケットシェアの低下や利益の減少により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループは、競争力の維持・強化に向けて、取引先へのさらなる付加価値サービスの提供、アセットホルダーとしての価値創造力、低コストによる資金調達、デジタル戦略の推進加速などさまざまな取り組みを進めています。これらの取り組みにより、競争の激化にともなうリスクを軽減し、持続的な成長をめざします。
⑧ 気候変動リスク
脱炭素社会への移行にともなう規制変更や技術革新、ビジネスモデルの転換、または地球温暖化にともなう異常気象などは、業績悪化などによる取引先の経営破綻、当社グループが保有するアセットの価値下落など、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動リスクへの対応や情報開示が不十分であった場合、またはそのように見做された場合には、当社グループの企業価値の毀損につながるおそれがあります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループは、持続的に成長するうえで優先的に取り組むべきテーマとして、「脱炭素社会の推進」をマテリアリティ(重要課題)として認識しており、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、TCFD提言に準拠したリスクの把握・評価や情報開示の拡充に取り組んでいます。また、当社グループは、気候変動リスクを全社的なリスク管理における重要なリスクの一つとして認識しており、気候変動リスクを把握し、管理する取り組みを進めていきます。
⑨ 人権侵害リスク
企業の責任はサプライチェーン全体に及び、またサステナビリティへの取り組みが重視されるなか、企業が尊重すべきステークホルダーは、広く一般の個人や地域住民にまで及ぶという考えが主流になってきています。こうしたなか、当該ステークホルダーを軽視し、当社グループにおける人権侵害や、当社グループの取引先での人権侵害が発生し、当社グループが人権侵害を自ら引き起こした、助長した、または直接関与したと見做された場合、当社グループの企業価値の毀損につながるおそれがあります。
〔リスクに対する主な取り組み〕
当社グループは2022年9月に人権方針を定め、「人権の尊重を経営における重要課題と認識し、事業活動のすべてにおいて、その責任を果たす」ことを宣言しています。2022年10月より取り組む人権侵害リスクへの対応プロジェクトにおいて、2023年11月に人権デュー・ディリジェンスの運用を開始し、2025年1月に社外からの人権に関する相談を受け付ける人権通報窓口を設置しました。今後も、人権侵害を排除する取り組みを進めていきます。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況は次のとおりです。なお、記載のセグメント利益の合計は、連結損益計算書の親会社株主に帰属する当期純利益と一致しています。
(連結経営成績) (単位:億円)
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
増減率(%) |
|
売上高 |
19,505 |
20,908 |
+1,402 |
+7.2 |
|
売上総利益 |
3,800 |
4,626 |
+825 |
+21.7 |
|
営業利益 |
1,461 |
1,871 |
+409 |
+28.0 |
|
経常利益 |
1,516 |
1,935 |
+419 |
+27.7 |
|
親会社株主に帰属 する当期純利益 |
1,238 |
1,351 |
+113 |
+9.1 |
|
契約実行高 |
30,519 |
33,117 |
+2,597 |
+8.5 |
(連結財政状況) (単位:億円)
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
増減率(%) |
|
純資産 |
17,053 |
18,045 |
+991 |
+5.8 |
|
総資産 |
111,498 |
117,623 |
+6,124 |
+5.5 |
|
有利子負債 |
84,397 |
88,407 |
+4,010 |
+4.8 |
|
自己資本比率(%) |
15.1 |
15.2 |
+0.1pt |
- |
① 財政状況および経営成績等の状況
当連結会計年度の経営成績等は、営業面では契約実行高は前期比2,597億円(8.5%)増加の3兆3,117億円となりました。
収入面では、売上高は前期比1,402億円(7.2%)増加の2兆908億円となりました。
損益面では、売上総利益は前期比825億円(21.7%)増加の4,626億円、営業利益は前期比409億円(28.0%)増加の1,871億円、経常利益は前期比419億円(27.7%)増加の1,935億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比113億円(9.1%)増加の1,351億円となりました。
当期末の総資産は前期末比6,124億円(5.5%)増加の11兆7,623億円、純資産は前期末比991億円(5.8%)増加の1兆8,045億円、有利子負債(リース債務を除く)は前期末比4,010億円(4.8%)増加の8兆8,407億円、自己資本比率は前期末比0.1ポイント上昇の15.2%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末比445億円(13.3%)減少の2,908億円となりました。
資金が445億円減少した内訳は、財務活動により3,536億円の資金を獲得した一方、営業活動により2,968億円、投資活動により969億円の資金使用があったことによるものです。
営業活動におけるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,956億円に、賃貸資産に係る減価償却費・除却損及び売却原価6,005億円、その他の営業資産に係る減価償却費・売却原価280億円を調整した収入等を、主に新規案件の積み上げにより、賃貸資産およびその他の営業資産の取得による支出1兆200億円、貸付債権の増加による支出1,153億円等に振り向けた結果、2,968億円の資金支出となりました(前期は491億円の支出)。
投資活動におけるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却及び償還による収入320億円および連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の売却による収入104億円等に対し、投資有価証券の取得による支出1,262億円等により969億円の資金支出となりました(前期は1,433億円の収入)。
財務活動におけるキャッシュ・フローは、直接調達で3,903億円の純収入、銀行借入等の間接調達で298億円の純収入、配当金の支払560億円等により、3,536億円の資金収入となりました(前期は2,229億円の支出)。
③ 営業取引の状況
a.契約実行高
連結会計年度における契約実行高の実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
前連結会計年度
(単位:億円)
|
|
報告セグメント |
調整額 |
合計 |
||||||
|
カスタマー ソリューション |
海外地域 |
環境 エネルギー |
航空 |
ロジスティ クス |
不動産 |
モビリティ |
|||
|
契約実行高 |
9,848 |
13,896 |
228 |
4,563 |
383 |
1,520 |
143 |
△64 |
30,519 |
当連結会計年度
(単位:億円)
|
|
報告セグメント |
調整額 |
合計 |
||||||
|
カスタマー ソリューション |
海外地域 |
環境 エネルギー |
航空 |
ロジスティ クス |
不動産 |
モビリティ |
|||
|
契約実行高 |
9,199 |
13,798 |
299 |
5,475 |
2,212 |
2,016 |
116 |
- |
33,117 |
b.営業実績
連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
前連結会計年度
(単位:億円)
|
|
報告セグメント |
調整額 |
連結 損益計算書計上額 |
||||||
|
カスタマー ソリューション |
海外地域 |
環境 エネルギー |
航空 |
ロジスティ クス |
不動産 |
モビリティ |
|||
|
売上総利益 |
1,159 |
1,353 |
104 |
491 |
355 |
238 |
12 |
84 |
3,800 |
|
セグメント利益 |
381 |
166 |
73 |
273 |
178 |
119 |
27 |
18 |
1,238 |
当連結会計年度
(単位:億円)
|
|
報告セグメント |
調整額 |
連結 損益計算書計上額 |
||||||
|
カスタマー ソリューション |
海外地域 |
環境 エネルギー |
航空 |
ロジスティ クス |
不動産 |
モビリティ |
|||
|
売上総利益 |
1,120 |
1,395 |
79 |
851 |
424 |
561 |
13 |
181 |
4,626 |
|
セグメント利益 |
368 |
26 |
47 |
472 |
232 |
122 |
31 |
51 |
1,351 |
c.セグメント資産残高
連結会計年度末におけるセグメント資産残高は、次のとおりです。
前連結会計年度
(単位:億円)
|
|
報告セグメント |
調整額 |
連結 貸借対照表 計上額 |
||||||
|
カスタマー ソリューション |
海外地域 |
環境 エネルギー |
航空 |
ロジスティ クス |
不動産 |
モビリティ |
|||
|
セグメント資産 |
29,665 |
30,708 |
4,166 |
20,200 |
10,990 |
5,254 |
519 |
9,994 |
111,498 |
(注)セグメント資産は、営業資産、持分法適用会社への投資額、のれんおよび投資有価証券等です。調整額には各報告セグメントに帰属しないセグメント資産およびセグメント資産合計と連結総資産の差額である現金及び預金や社用資産等が含まれています。
当連結会計年度
(単位:億円)
|
|
報告セグメント |
調整額 |
連結 貸借対照表 計上額 |
||||||
|
カスタマー ソリューション |
海外地域 |
環境 エネルギー |
航空 |
ロジスティ クス |
不動産 |
モビリティ |
|||
|
セグメント資産 |
30,045 |
30,749 |
4,863 |
24,481 |
12,893 |
5,705 |
588 |
8,295 |
117,623 |
(注)セグメント資産は、営業資産、持分法適用会社への投資額、のれんおよび投資有価証券等です。調整額には各報告セグメントに帰属しないセグメント資産およびセグメント資産合計と連結総資産の差額である現金及び預金や社用資産等が含まれています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 連結経営成績
当連結会計年度の経営成績は、海外地域セグメントと環境エネルギーセグメントにおいて貸倒関連費用が増加したものの、連結子会社であるJSA International Holdings, L.P.およびその子会社の決算期変更にともなう決算取込期間の調整による期初計画織り込み済みの増益効果※に加え、航空セグメントとロジスティクスセグメントの好調な業績推移や、環境エネルギーセグメントの海外インフラ案件売却に係る投資有価証券売却益の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比113億円(9.1%)増益の1,351億円となりました。
これにより、連結業績予想(親会社株主に帰属する当期純利益1,350億円)を達成し、3期連続で過去最高益を更新しました。
※ 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 3. 連結子会社の事業年度等に関する事項 (3)」に記載しています。
親会社株主に帰属する当期純利益の増減要因
(単位:億円)
※1 インカムゲインの金額は、売上総利益(アセット関連損益の金額を除く)と営業外損益(償却債権取立益の金額を除く)の合計金額としています。
※2 アセット関連損益の金額は、カスタマ―ソリューション、環境エネルギー、航空、ロジスティクス、不動産の5セグメントにおける保有資産に係る売上総利益ベースの売却損益および減損等(時価評価損益を含む)の合計金額としています。
親会社株主に帰属する当期純利益の主な増減要因は、次のとおりです(記載の金額は、税金等調整前当期純利益に対する影響額としています)。
インカムゲインの増加 +416億円
アセット関連損益の増加 +403億円
貸倒関連費用の増加 △300億円
経費の増加 △99億円
特別損益の減少 △139億円
その他(税金費用等)の増加 △166億円
(主なトピックス)
2024年4月 ・太陽光発電や蓄電池などの脱炭素に貢献する設備の導入を支援するため、パシフィックパワー株式会社と特別目的会社の設立を発表。
・再生可能エネルギーおよび次世代エネルギー事業を展開するデンマーク王国のEuropean Energy A/Sへの出資が完了し、持分法適用関連会社化※。
※ 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)(株式取得による持分法適用関連会社化)に記載しています。
2024年5月 ・2024年3月期決算発表時点の「中期経営計画(2025中計)の進捗」※を公表。
※ 同6月20日に当社ホームページにて「中期経営計画(2025中計)の進捗-2024年3月期決算発表時点」資料を掲載。
(当社ホームページ 中期経営計画ページ)
https://www.mitsubishi-hc-capital.com/investors/managementplan/index.html
2024年6月 ・一般財団法人電力中央研究所ならびに株式会社ネクステムズとともに、日本初となる資源循環型の第三者保有オンサイト型水素供給モデルをめざし、宮古島でのグリーン水素製造実証事業協業の検討開始を発表。
・連結子会社である三菱HCキャピタルエナジー株式会社は、日精ホールディングスグループのサステナビリティ経営加速に向けて、同社子会社である日精株式会社の福島工場におけるPPA※を締結。
※ PPA(Power Purchase Agreement)は電力購入契約に基づき、電力需要拠点と離れた発電設備から需要拠点に電力を供給する契約形態。
・2025中計において非財務目標の一つとして掲げる「DXアセスメント※『スタンダード』レベル以上の人材比率80%以上(単体)」を前倒しで達成。
※ 外部業者提供のDXリテラシー水準を測るツールを活用し、結果により「ビギナー」「スタンダード」「エキスパート」の3つのレベルに分類している。
2024年7月 ・リース・割賦取引を通じてお客さまの脱炭素投資を支援し、お客さまが使用するリース物件が低炭素設備であることを証明するGX Assessment Leaseの提供を開始。
・航空業界の脱炭素手段として期待されているSAF※の生産拡大に貢献するため、企業間アライアンスである「Sustainable Aviation Fuel Financing Alliance」への参画と、SAF特化型ファンドの「SAFFA Fund I, LP」への出資を発表。
※ SAF(Sustainable Aviation Fuel)は持続可能な航空燃料。
2024年8月 ・三菱HCキャピタルエナジー株式会社がサムスン物産株式会社と、系統用蓄電池事業に関する合弁契約の締結を発表。
・当社ならびにグループ会社である三菱オートリース株式会社がGO株式会社と、法人向けEV用の充電インフラを整備・拡充するため、EV導入・運用に関する顧客ニーズの収集、情報連携などを含めた協業の開始を発表。
2024年9月 ・連結子会社である株式会社御幸ビルディングの全株式を譲渡。
・神奈川県横浜市に所在する大規模複合商業施設「ゆめが丘ソラトス」の清掃業務を担当している相鉄企業株式会社に清掃ロボットを提供し、同施設での本格運用を開始。
2024年10月 ・新ビジネスの開発加速を図る取り組みの一つである「Zero-Gravity Venture Lab」において、社内起業の機会を提供する「ファウンダープログラム」の第2期最終審査通過案件を決定。
・株式会社神戸新聞社と、神戸エリアの大学・高等専門学校の学内にデジタルサイネージを設置し、兵庫県内の企業を中心としたPRや認知度向上コンテンツなどを配信する実証実験を開始。
2024年11月 ・株式会社日立製作所ならびに株式会社ハピネスプラネットとともに、新たな福利厚生サービスの創出に向けた協創を開始。
・国内最大級の新事業創出アイデアソン「CLAP WakBiz」を開催。上場企業を中心に55社の新事業開発担当者と当社社員が参加。
2024年12月 ・株式会社フルタイムシステム、その子会社の株式会社フルタイムロッカーならびに日本郵便株式会社とともに、サーキュラーエコノミ―の実現および再配達削減を目的とした協業開始を発表。
2025年2月 ・東日本旅客鉄道株式会社、株式会社日立製作所ならびに日本建設工業株式会社とともに、TAKANAWA GATEWAY CITYにおける再生可能エネルギー由来の水素を用いたオフサイト型水素サプライチェーンの構築を発表。
・連結子会社である三菱HCキャピタルエステートプラス株式会社は、同社の子会社であるPT HCD Properti Indonesiaの全株式の譲渡を決定。(2025年3月25日譲渡実行)
・社内起業プログラム第1期通過案件である中古半導体製造装置のリファービッシュ※事業において、1年間の事業化検証期間を経て、新会社「MHCセミテクノロジーズ株式会社」を設立。
※ 新品に準じる状態に整備、仕上げること。
2025年3月 ・グループ会社であるJSA International U.S. Holdings, LLCが、Airbus S.A.S.に航空機50機の発注を決定。
・北陸電気工業株式会社と、フォークリフトの運転中の事故抑制や運用効率化を図る「IoTフォークリフトサービス」の提供を開始。
・当社ならびに三菱オートリース株式会社が、EV向けカーボンオフセット付きオートリースの提供を開始。
・山銀リース株式会社と、当社が提供するGX Assessment Leaseに関する連携協定を締結。
(当連結会計年度に公表済のイノベーション投資ファンド※1を活用した投資案件)
|
出資先企業名 |
事業概要 |
|
株式会社エムネス |
医療支援クラウドサービス、遠隔画像診断支援サービスの提供 |
|
株式会社MUSE |
小売店舗向けロボットの開発および販売 |
|
Formic Technologies Inc. |
米国において、製造業向けにRobot as a Serviceモデルで 産業用ロボットを提供 |
|
株式会社ソラリス |
ソフトロボティクス・メカトロニクスの研究開発・販売・ サポート、人工筋肉の開発と販売 |
|
株式会社エネコートテクノロジーズ |
ペロブスカイト太陽電池(PSCs)※2およびその関連材料の 開発・製造・販売など |
|
株式会社LexxPluss |
工場・倉庫内物流の自動搬送ロボットの開発・製造 (2025年3月に協働で、物流事業者向けロボットサブスクリプションサービスの提供を開始) |
|
株式会社AEOS |
安心・安全な生活を支えるIT環境に関する研究・開発 日々の暮らしをアシストするAIエンジンの研究・開発 人々と社会をつなぐデータモデルに関する研究・開発 |
|
SPACECOOL株式会社 |
放射冷却※3素材の開発・販売 |
|
株式会社PXP |
フレキシブル太陽電池の開発 |
|
建ロボテック株式会社 |
建設現場の省人化・省力化ソリューションの開発・提供 |
|
リノべる株式会社 |
中古不動産の流通・利活用を推進するリノベーションプラットフォームの運営 |
|
株式会社IDOM CaaS Technology |
独自の与信審査システム、AI残価予測モデルを活用した リース・レンタカー事業 |
※1 新サービスの創出や新事業開発の促進を目的に、2023年4月に運用を開始したスタートアップ企業対象の総額100億円の投資枠。
※2 ペロブスカイト構造と呼ばれる結晶構造を持つ化合物を発電層として用いた薄く、軽く、曲げることが可能な次世代太陽電池。
※3 物体が周囲に赤外線を放射し温度が下がる自然現象。
② 報告セグメント別の経営成績
報告セグメント別の経営成績ならびに主な増減要因は次のとおりです。
各セグメントの事業内容は、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載しています。
セグメント利益(セグメント別の親会社株主に帰属する当期純利益)の前期比
(単位:億円)
(カスタマーソリューション)
関係会社株式売却益の計上などがあったものの、連結子会社であったディー・エフ・エル・リース株式会社、首都圏リース株式会社ならびに積水リース株式会社の連結除外による減益影響や、貸倒関連費用の増加などによりセグメント利益は前期比12億円(3.3%)減益の368億円となりました。
(海外地域)
米州運送セクターの市況低迷を背景とした貸倒関連費用の増加や、前期にあった米州子会社再編にともなう決算取込期間の調整による増益効果※の剥落などによりセグメント利益は前期比139億円(83.9%)減益の26億円となりました。
※ 2023年4月1日付で決算期の異なる米州子会社3社を経営統合。存続会社は3月決算である一方、消滅会社2社は12月決算であったことから、前期は存続会社の2023年4月1日から2024年3月31日までの実績に加え、消滅会社2社の2023年1月1日から同年3月31日までの実績も計上したもの。
(環境エネルギー)
海外インフラ案件の売却に係る投資有価証券売却益の計上などがあったものの、国内の再生可能エネルギープロジェクト案件に係る大口貸倒関連費用の計上や、前期に減損損失を計上した国内太陽光発電案件において追加の減損損失を計上したことなどによりセグメント利益は前期比25億円(35.0%)減益の47億円となりました。
(航空)
リース料収入や売却益の増加に加え、JSA International Holdings, L.P.およびその子会社の決算期変更にともなう決算取込期間の調整による増益効果などによりセグメント利益は前期比198億円(72.7%)増益の472億円となりました。
(ロジスティクス)
船舶の売却益は減少したものの、海上コンテナリース事業と鉄道貨車リース事業のリース料収入や売却益が増加したことなどによりセグメント利益は前期比53億円(30.2%)増益の232億円となりました。
(不動産)
前期に計上した複数案件の大口売却益や株式会社センターポイント・ディベロップメントの完全子会社化にともなう段階取得に係る差益の剥落、連結子会社であった株式会社御幸ビルディングの株式譲渡に係る関係会社株式売却損の計上があったものの、同株式譲渡以前に同社で大口売却益を計上したことや、米国案件の時価評価損失の減少などによりセグメント利益は前期比2億円(2.4%)増益の122億円となりました。
(モビリティ)
持分法適用関連会社である三菱オートリース株式会社の業績が堅調に推移し、持分法による投資利益が増加したことによりセグメント利益は前期比3億円(10.9%)増益の31億円となりました。
③ 連結財政状態
当期末の総資産は前期末比6,124億円(5.5%)増加の11兆7,623億円、純資産は前期末比991億円(5.8%)増加の1兆8,045億円、有利子負債(リース債務を除く)は前期末比4,010億円(4.8%)増加の8兆8,407億円、自己資本比率は前期末比0.1ポイント上昇の15.2%となりました。
④ 資本の財源および資金の流動性に係る情報
当社グループは、リース取引に係るリース物件の取得や貸付等の事業を行うにあたって、内外の通貨により多額の資金調達を行っています。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務を除く)は、前期末比4,010億円増加の8兆8,407億円となり、負債合計は前期末比5,132億円増加の9兆9,578億円となりました。有利子負債のうち、長期借入金等の長期性の負債は前期末比4,727億円増加の5兆8,566億円、短期借入金、コマーシャル・ペーパー等の短期性の負債は前期末比716億円減少の2兆9,841億円となりました。
資金調達にあたっては、調達コストを抑制しつつ安定的に事業資金を確保していくことを念頭に、金融機関借入による間接金融と、社債、コマーシャル・ペーパー、リース債権流動化等による直接金融により、調達手段の多様化に努めています。間接金融においては、メガバンク・地域金融機関・生命保険会社等の幅広い金融機関と長きにわたって築き上げてきた良好な関係を生かし、安定した借入取引を継続しています。直接金融においては、金融機関や機関投資家からの調達のみならず、個人投資家向け社債を発行するなど、調達源の多様化も進めています。
なお、当社グループ全体の資金管理については、当社および地域財務拠点からのグループファイナンスも活用し、資金を効率的に融通する体制を整えています。
流動性の観点では、平時より綿密な資金繰り管理や、資金流動性リスクのモニタリング運営を実施しているほか、四半期ごとに開催されるALM委員会において流動性リスクについての現状および課題を把握し、リスクに対する対策を審議しています。当社グループでは、これらリスクマネジメントの取り組みを通じて、強固な財務体質をめざしています。
金融市場の混乱や、各種リスクによる調達環境の変化への備えとしては、複数の金融機関との間で当座貸越契約およびコミットメントライン契約を締結することで、緊急時の流動性補完手段を確保しています。当連結会計年度末において、当社グループにて締結しているコミットメントライン契約のうち未使用額は8,102億円となっています。
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑤ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表および財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」および「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(3)特定金融会社等の開示に関する内閣府令(平成11年5月19日 大蔵省令第57号)に基づく営業貸付金の状況
当社の営業貸付金の状況は次のとおりです。
① 貸付金の種別残高内訳
|
2025年3月31日現在 |
|
貸付種別 |
件数(件) |
構成割合(%) |
残高(百万円) |
構成割合(%) |
平均約定金利 (%) |
|
消費者向 |
|
|
|
|
|
|
無担保(住宅向を除く) |
24 |
0.30 |
19 |
0.00 |
1.97 |
|
有担保(住宅向を除く) |
- |
- |
- |
- |
- |
|
住宅向 |
5,175 |
64.04 |
22,919 |
1.58 |
1.62 |
|
計 |
5,199 |
64.34 |
22,938 |
1.58 |
1.63 |
|
事業者向 |
|
|
|
|
|
|
計 |
2,882 |
35.66 |
1,430,662 |
98.42 |
2.28 |
|
合計 |
8,081 |
100.00 |
1,453,601 |
100.00 |
2.23 |
② 資金調達内訳
|
2025年3月31日現在 |
|
借入先等 |
残高(百万円) |
平均調達金利(%) |
|
|
金融機関等からの借入 |
1,867,797 |
1.94 |
|
|
その他 |
1,983,128 |
0.95 |
|
|
|
社債・CP |
1,944,960 |
0.96 |
|
合計 |
3,850,926 |
1.43 |
|
|
自己資本 |
840,131 |
- |
|
|
|
資本金・出資額 |
33,196 |
- |
(注)1. 当期の貸付債権の譲渡の合計額は、0百万円です。
2. 平均調達金利については、借入金等の期末残高に対する約定金利による加重平均金利を記載しています。
③ 業種別貸付金残高内訳
|
2025年3月31日現在 |
|
業種別 |
先数(件) |
構成割合(%) |
残高(百万円) |
構成割合(%) |
|
製造業 |
110 |
2.28 |
52,645 |
3.62 |
|
建設業 |
10 |
0.21 |
710 |
0.05 |
|
電気・ガス・熱供給・水道業 |
39 |
0.81 |
76,455 |
5.26 |
|
運輸・通信業 |
24 |
0.50 |
259,395 |
17.85 |
|
卸売・小売業、飲食店 |
198 |
4.10 |
8,636 |
0.59 |
|
金融・保険業 |
29 |
0.60 |
37,593 |
2.59 |
|
不動産業 |
178 |
3.69 |
499,327 |
34.35 |
|
サービス業 |
396 |
8.20 |
448,270 |
30.84 |
|
農業 |
- |
- |
- |
- |
|
個人 |
3,744 |
77.58 |
22,938 |
1.58 |
|
その他 |
98 |
2.03 |
47,629 |
3.27 |
|
合計 |
4,826 |
100.00 |
1,453,601 |
100.00 |
④ 担保別貸付金残高内訳
|
2025年3月31日現在 |
|
受入担保の種類 |
残高(百万円) |
構成割合(%) |
|
|
有価証券 |
- |
- |
|
|
|
うち株式 |
- |
- |
|
債権 |
5,039 |
0.35 |
|
|
|
うち預金 |
1,718 |
0.12 |
|
商品 |
- |
- |
|
|
不動産 |
195,043 |
13.42 |
|
|
財団 |
- |
- |
|
|
その他 |
9,559 |
0.66 |
|
|
計 |
209,643 |
14.42 |
|
|
保証 |
8,474 |
0.58 |
|
|
無担保 |
1,235,484 |
85.00 |
|
|
合計 |
1,453,601 |
100.00 |
|
⑤ 期間別貸付金残高内訳
|
2025年3月31日現在 |
|
期間別 |
件数(件) |
構成割合(%) |
残高(百万円) |
構成割合(%) |
|
1年以下 |
1,009 |
12.49 |
77,386 |
5.32 |
|
1年超 5年以下 |
803 |
9.94 |
543,251 |
37.37 |
|
5年超 10年以下 |
892 |
11.04 |
553,931 |
38.11 |
|
10年超 15年以下 |
109 |
1.35 |
201,017 |
13.83 |
|
15年超 20年以下 |
272 |
3.36 |
28,619 |
1.97 |
|
20年超 25年以下 |
1,238 |
15.32 |
9,779 |
0.67 |
|
25年超 |
3,758 |
46.50 |
39,615 |
2.73 |
|
合計 |
8,081 |
100.00 |
1,453,601 |
100.00 |
|
一件当たり平均期間 |
7.25年 |
|||
(注)期間は、約定期間によっています。
(1)当社の連結子会社であるJSA International U.S. Holdings, LLCとボーイング社およびエアバス社との間の航空機の購入契約
当連結会計年度において、当社の連結子会社であるJSA International U.S. Holdings, LLCは、エアバス社との間で航空機50機を購入する契約を締結いたしました。これらの機体は2031年以降にデリバリーされる予定です。
|
契約会社名 |
契約締結年度 |
契約先 |
受領予定時期 |
契約内容 |
|
JSA International U.S. Holdings, LLC |
2019年3月期 |
ボーイング社 |
2028年まで(注)2 |
航空機の購入契約 ・ボーイング737 Max 8 22機 (注)1 |
|
JSA International U.S. Holdings, LLC |
2025年3月期 |
エアバス社 |
2031年以降 |
航空機の購入契約 ・A320neoファミリー機 (A320neoおよびA321neo) 50機 |
(注)1.2021年3月期において、当初契約における購入機数30機から22機とする変更契約を締結しています。
2.2023年3月期において、当初契約における受領予定時期(2025年まで)を2026年までとする変更契約を締結しています。また、2025年5月に受領予定時期(2028年まで)に関する通知書を受領しています。
(2)当社は、2024年8月9日開催の取締役会において、連結子会社である株式会社御幸ビルディングについて、当社および当社の連結子会社である三菱HCキャピタルエステートプラス株式会社が保有する全株式を譲渡することを決議し、9月13日付で株式譲渡契約を締結しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。
(3)当社は、2024年12月20日開催の取締役会において、2025年4月1日を効力発生日として、当社の完全子会社で不動産投資事業を手掛ける三菱HCキャピタルリアルティ株式会社に対して、当社の不動産事業部が所管する国内を対象とした不動産ファイナンス事業を承継させる会社分割を行うことを決議し、2025年1月10日に吸収分割契約を締結しました。詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」 に記載のとおりです。
特記すべき事項はありません。