第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

2022年に創立50周年を迎えた当社グループは、「人間第一」を経営の基本理念とし、「勇気・品性・誠実」を教育理念とした運営を創立以来一貫して続けております。新しい時代の波に対して積極的に立ち向かう姿勢で取り組んでおります。

時間講師の導入、私立中高受験対策、チェーンオペレーション、株式公開、都立中高一貫校受検対策、ダブル学習システムなど、時代の先端を行く革新的な手法で業容を拡大してまいりましたが、今後も大胆にチャレンジし続けてまいります。

その成果として、当社株式は2015年11月に東京証券取引所市場第一部銘柄に指定され、2022年4月にはプライム市場へ移行しております。

また、当社グループは学習塾業界のサービスの本質である「質の高い授業の実践」と「合格実績」に徹底的にこだわると同時に、的確な「受験情報の提供」により、生徒・保護者様から高い支持と信頼を獲得することを常に目指しております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、本業での収益性を表す指標として売上高営業利益率を重視しております。2022年2月に策定した2025年3月期までの3ヵ年を計画期間とする中期経営計画では、売上高営業利益率20.0%を目標として設定しました。当連結会計年度の売上高営業利益率は19.7%となり、僅かに目標を下回る結果となりましたが、同業他社と比較して高い収益性を維持しております。合格実績の伸長により生徒数を増加させることはもちろん、常にコスト削減意識を持ち、収益性の向上を目指した企業経営に取り組んでまいります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

従来から行っております受験勉強だけではない人間関係を尊重した指導と人間的教育の実践を今後も心がけるとともに、教務力の向上及び合格実績の更なる伸長だけに留まることなく、ニーズに合った学習指導と受験情報を提供することにより、生徒・保護者様からご支持いただける「日本一の私塾」を目指してまいります。

具体的な経営戦略は以下のとおりです。

 

①「都立のena」から「私立も都立も合格するena」への転換

当社では、都立中・都立高の合格実績シェア向上が経営上重要であると考え、経営資源の重点的配分を行い、いち早く都立中受検対策に取り組みました。都立中高一貫校受検対策向けのテキスト・テスト・カリキュラムの改訂、「都立のena」というブランドイメージの定着を図るためのイベント開催や番組タイアップ、テレビコマーシャル等を実施してまいりました。その結果、都立中・都立高入試において、継続して高い合格実績を上げることができております。

一方で、東京都における私立高校の授業料実質無償化の拡大を受けて、当社の強みとする都立中・都立高を目指す生徒数が減少しております。そこで、当社では、従来の都立中・都立高受験に加えて、私立中・私立高受験への取り組みを2024年度より本格的に開始しました。小学部においては、後回しになりがちな低学年対策に全力を傾注し、都立中でも最近頻出する算国理社の得点力を御三家レベルに養成してまいります。また、中学部においては、開成早慶と日比谷等、私都立高両方の合格を目指してまいります。

 

 

②新規校舎展開

当社では、東京都内を中心に「ena小中学部」の新規出校を進めてまいりました。これらの出校により蓄積した指導ノウハウと、東京都内で確立した都立中高一貫校・都立難関高合格実績No.1の強みを活かし、当連結会計年度より、千葉県及び埼玉県での出校を本格的に開始しました。東京都内で培ってきた公立中高一貫校・公立難関高の受験指導のノウハウをもとに、千葉県及び埼玉県においても合格実績を向上させ、ブランド認知度の向上と生徒数の拡大を図ってまいります。

また、不採算校舎の閉校を継続して実施し、事業構造の最適化と収益力の向上に努めてまいります。今後の新規開校計画は千葉県及び埼玉県を中心に、以下のように計画しております。

 2026年3月期:「ena小中学部」ブランド10校開校

 

③大学受験までの一貫した経営モデルの確立

都立中受検の倍率は、近年は低下傾向にあるものの依然として高倍率を維持しており、不合格者が多数出てしまうのが現状です。「ena」からの受検生は高い合格率となっているものの、不合格となる生徒も多数存在しております。そこで、当社では、不合格者に対してもう一度高校受験で挑戦する機会を提供するため、また、保護者様の経済的負担を鑑みて、一定の条件を満たした新中1生の授業料を無料としております。また、ena中学部卒業生向けの新高1継続特典を用意するなど、小・中・高の継続的な指導体制を構築しております。この継続指導による合格実績の向上と生徒・保護者様の満足度向上を通じて、生徒獲得を強化してまいります。

 

(4) 経営環境及び優先的に対処すべき課題

当社グループを取り巻く環境は、少子化による市場の縮小や教育費の抑制、異業種による教育業界への参入など、依然として厳しい状況が続いております。一方、首都圏を中心とする中学・高校受験ニーズは引き続き高く、柔軟かつ戦略的な対応が求められております。

このような経営環境の下、当社グループは2026年3月期を初年度とする新たな中期経営計画に基づき、以下の重点施策を推進してまいります。

 

(千葉県・埼玉県への進出の加速)

東京都内で確立した都立中高一貫校・都立難関高合格実績No.1の強みを活かし、当連結会計年度において、「ena小中学部」を千葉県に4校舎(柏駅前、柏東、我孫子、南柏)、埼玉県に3校舎(新越谷、大宮、蕨)開校いたしました。東京都内で長きにわたり培ってきた公立中高一貫校・公立難関高の受験指導のノウハウをもとに、2028年3月期までに、両県で合わせて50校の新規開校を計画しております。これらの新規校舎展開により、首都圏全体をカバーするドミナント戦略を強化し、ブランド認知度の向上と生徒数の拡大を図ってまいります。

 

(私立中・高受験対応の本格推進)

2024年度の「私立化宣言」を起点に、都立中・高に加えて私立中・高受験への対応を強化しております。最難関私国立中受験専門塾「極」の開校、オリジナルテキスト「EXE」の開発、さらに全校舎に私立中・高受験対応コースを設置するなど、体制の整備を着実に進めております。「都立のena」から「私立も都立も合格するena」への進化を加速し、より幅広い受験ニーズに応えてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、持続可能性の観点から企業価値を継続的に向上させるため、経営会議などの執行会議においてサステナビリティ推進について審議し、事業活動の継続・発展に必要な対応を講じております。重要な環境リスクや気候変動問題を含む社会課題については、適宜取締役会に報告し、監督される体制を構築しております。また、教育サービスの質の向上と地域社会との信頼関係の強化は、当社グループの持続的な成長に不可欠な要素と認識しており、その基盤となるガバナンス体制のさらなる充実に取り組んでおります。

 

(2) 戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

・人材育成方針

教育サービスの質は、講師及びスタッフ一人ひとりの能力と成長に支えられるとの認識のもと、授業力・面談力向上を目的とした実践型研修に加え、地区単位での事例共有や全社的な経営方針共有の場を通じて、教務力の向上を図っております。

また、多様な人材の採用とその育成が中長期的な企業価値の向上に繋がるとの考えから、女性及び中途採用者を積極的に採用しております。中途採用者については、年齢・性別・社歴・国籍にかかわらず管理職に相応しい能力、高い意識をもった者を採用しております。女性の登用については、当社において女性の取締役を2名、国内子会社において女性の取締役を1名選任するなど、管理職層への積極的な登用を進めており、多様な価値観を活かした健全な意思決定と組織運営を目指しております。

 

・社内環境整備方針

多様な人材が活躍できる環境や仕組みを整備することで、中長期的な企業価値の向上を実現するため、当社では、2024年3月期より出産育児に対する支援の強化策として、子供手当及び男性社員の育児休暇制度を導入しました。また、有給休暇の取得促進を目的として、取得奨励日の設定や取得状況のモニタリングを行うなど、働きやすい環境整備にも注力しております。今後も社会環境や社員のライフステージの変化に対応できるよう、多様な働き方が選べる制度を整備してまいります。

 

(3) リスク管理

気候変動、人的資本などサステナビリティに関するリスク及び機会については、機能組織ごとに事業活動への影響を識別し、影響度に応じた評価と管理を行っております。

特に教育サービスの品質低下や社会的信頼の毀損は重大な事業リスクと捉え、全社的に継続的な対応策を講じております。また、全社員対象のアンケートを活用し、職場環境や働き方に関する意識や課題の把握に努め、人的資本に関わるリスクの低減に努めております。一方、教育ニーズの変化や地域社会との関係性については、新たな事業機会と捉え、競争力の強化に取り組んでおります。

これらの取り組み状況については、必要に応じて、取締役会に報告もしくは諮問することとしております。

 

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

・管理職に占める女性労働者の割合

当事業年度の実績は23.8%であり、厚生労働省による令和5年度雇用均等基本調査結果における全国の企業の平均(課長相当職以上)を上回っております。今後も継続して各種取組みを実施することにより、さらなる向上を目指してまいります。

 

・男性労働者の育児休業取得率

当事業年度の実績は33.3%であります。多様な働き方の推進と両立支援の拡充により、取得率の向上を目指してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

リスク管理体制につきましては、事業所である各校舎及び管理部門等に係るリスクに関して、それぞれの対応部署にて、必要に応じて研修・指導の実施、マニュアルの作成・配布等を行う体制としております。また、グループ全体のリスクについて定期的に検討するために、リスク管理委員会が経営会議内に設置されております。新たに生じたリスクへの対応が必要な場合は、代表執行役より全社に示達するとともに、速やかに対応責任者となる執行役を中心に対策を定めることとしております。また、リスクが現実化し、重大な損害の発生が予測される場合には、執行役は速やかに取締役会に報告することとしております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 学齢人口の減少問題

学齢人口の減少は、中学、高校、大学の各段階における受験(受検)人口の減少に影響を与えるため、大きなリスクと認識しております。このような状況下においては、質の高い親身な指導と、あらゆる教育ニーズに対応できる態勢が求められます。当社グループでは、こうしたリスクを予見し、様々な教育ニーズに応えるべく進学塾ブランド(ena[集団授業]、ena最高水準[最難関中高受験指導]、極[最難関私国立中受験指導]、ena個別[個別指導]、enaオンラインclass[オンライン授業専門]、家庭教師Camp[オンライン家庭教師]、個別教師Camp[オンライン個別指導]等)を確立し対応しております。また、教育事業のその他のブランドとして、ena歯学・薬学・看護[看護医療系・歯学・薬学受験指導]、ena美術[芸大・美大受験指導]の運営を行っております。

 

(2) 参入障壁の低い業界

学習塾業界の特徴としまして、参入障壁が低いことが挙げられます。これは、進学塾の新規開業・開校と閉校・撤退・廃業、業界内での合併・統合等が頻繁に繰り返されている現状からも伺い知ることができます。それと同時に、講師の移籍・引抜や教材作成のノウハウの模倣といった幾つかのリスクに晒されていることは、業界の特異な性質であると認識しております。当該リスクを完全に回避できる保証はありませんが、学習塾(教育サービス)の本質である「授業の質」と「合格実績」を徹底的に追求し、生徒・保護者様を始めとする地域社会の信頼と信用を築くこと、それにより生徒数と校舎数を増加させ、リスク吸収に足る盤石な事業基盤を築くことが重要と考えております。

また、多くの競合先がある中で、当社グループは都立中高一貫校入試対策や都立難関高校入試対策等の強化により差別化を図り生徒数の増加に努めておりますが、合格実績が競合先より相対的に低下した場合や対象校の志望者数が減少した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 業績の四半期ごとの季節的変動

当社グループの主要事業である教育事業では、新学期がスタートして間もない第1四半期は生徒数が最も少なく、受験期を迎える第3四半期で生徒数が最も増加する傾向にあります。また、春期、夏期、冬期の季節講習が実施される時期に売上高が増大します。一方、校舎運営費用(人件費、家賃等)は通期で継続して発生します。また、新年度の生徒募集に対する広告宣伝費用は第4四半期に多く発生します。このため、第2・3四半期と比較して、第1・4四半期の収益性が低くなる傾向にあります。

 

(4) 人材の確保と育成

当社グループは、質の高い授業提供と経営計画に基づく新規校舎展開において、優秀な社員・時間講師等の人材確保と育成を最重要課題と位置付けております。現在、多様な採用チャネルの活用、体系的な研修プログラムの実施、魅力的な職場環境の整備等に取り組んでおりますが、少子化による労働人口減少や教育業界での人材獲得競争の激化により、必要な人材を十分に確保できない場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 海外事業展開によるリスク

当社グループは、日本国内のみならず、北米、欧州において事業を展開しております。連結売上高に占める海外事業の比率は低いものの、進出先地域での経済環境、為替変動、自然災害、戦争、テロ等の不可抗力により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 個人情報の管理に関するリスク

当社グループでは、多数の生徒に関する情報を有しております。そのため、情報セキュリティ基本方針を定めるとともに社内規程の整備及び役職員への啓蒙等により、情報漏洩の未然防止を徹底しております。しかしながら、万一、何らかの原因により個人情報が外部に流出した場合は、信用の低下により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 災害・感染症の発生に関するリスク

当社グループが校舎展開している地域において、大規模な地震等の災害や感染症が発生した場合は、当社グループの一部または全部の業務遂行が困難となる可能性があります。当社グループでは、災害や感染症の発生に備えた体制整備に努めておりますが、新型コロナウイルス感染症のような想定を大きく上回る規模で災害や感染症が発生した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (8) 教育制度等の変更に関するリスク

入試制度の変更や学習指導要領の改訂等、行政機関による教育制度等の変更が度々行われております。当社グループでは、これらの制度変更に対応して入試対策及び学習指導を行っております。しかしながら、これらの制度変更に早期に対応できなかった場合は、生徒数の減少を招き、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (9) 事業拠点の集中に関するリスク

当社グループが運営する校舎は関東圏、とりわけ東京都に集中しております。今後は東京都のみならず、千葉県、埼玉県を中心に建物を賃借して校舎展開をしていく方針ですが、適切な物件を適切な時期に確保できない場合は開校が計画通りに進展せず、また当該地域の人口動向や競合状況によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (10) 生徒の安全管理に関するリスク

当社グループは、教育サービスの特性上、自然災害や事故等により生徒の安全が脅かされるリスクに直面しております。

このため、当社グループでは、「生徒の安全を守るための13か条」を策定し、全社的な安全管理体制を構築しております。通塾時の安全確保については、通塾指導の徹底と通塾メールシステムにより生徒の登下校状況を保護者様と共有しております。また、「ネット授業参観」のサービスを校舎及び合宿場に導入し、教育活動の透明性と安全性の確保に努めております。合宿開催時においては、生徒の安全と健康管理を最優先に位置付け、適切な管理体制のもとで細心の注意を払って運営しております。

これまで重大な安全上の問題は発生しておりませんが、今後、万一、何らかの事情により当社グループの管理責任が問われる事態が発生した場合には、信頼性や社会的評判の著しい低下を招き、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (11) 法的規制に関するリスク

学習塾の運営に関連する主な関連法令は、特定商取引に関する法律、著作権法、不当景品類及び不当表示防止法、消費者契約法、個人情報の保護に関する法律等があります。当社グループでは、役職員に法令等の遵守の重要性及び必要性について周知するとともに、その実践の徹底に努めております。しかしながら、関連する法令等に基づいて損害賠償請求等に係る訴訟等が提起された場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 (12) 固定資産の減損に関するリスク

当社グループでは、校舎設備や賃貸用不動産等の有形固定資産を保有しているほか、企業買収に伴いのれんを計上しております。保有しているこれらの固定資産について、事業の収益性が大きく低下した場合や不動産等の市場価格が著しく下落した場合には、減損損失が発生する可能性があり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (13) 差入保証金の保全、回収に関するリスク

当社グループは、校舎展開において多くの賃借物件を利用しており、賃貸人に対して相当額の差入保証金を預託しております。賃借条件については近隣相場を参考に採算性を考慮した水準で締結し、契約締結後は定期的な賃借条件の見直しとともに賃貸人の信用状況の把握に努めております。しかしながら、賃貸人の財務状況の悪化等により差入保証金の回収が困難となった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における我が国経済は、人手不足や高い賃上げ率を背景とした雇用・所得環境の改善により、緩やかな回復基調で推移しました。一方、物価高による個人消費の低迷や地政学的リスクの高まり、さらには米国の通商政策の変更などにより、国内外の不確実性が一段と増大し、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

学習塾業界におきましては、少子化による学齢人口の減少が続く一方、大学入試改革への対応やGIGAスクール構想を受けたICTを活用した教育サービスへの需要が加速しております。また、新たな教育ニーズへの対応が求められる中、EdTech企業との連携や異業種からの参入も活発化しております。

このような状況の中、当社グループでは、全ての授業に対して単方向の映像授業も視聴可能とした「ダブル学習システム」やオンライン学習「自宅ena」など、映像やオンラインを活用した学力向上体制の強化に努めております。また、2024年5月より、安心・安全面への取り組みとして、授業の様子を保護者様がネットでリアルタイムに確認することができるサービス「ネット授業参観」をスタートさせました。当該サービスの設備を利用した社内の授業点検も同時に実施することにより、授業の質の向上を図っております。

当連結会計年度での合格実績につきましては、全都立中高一貫校11校(千代田区立九段中等を含む)の入試におい て6年連続で過去最高を更新し、1,155名(前期は1,106名)となりました。また、全都立中高一貫校の定員合計に対する合格占有率は64%(前期は61%)まで伸長し、都立中高一貫校の受検対策塾としての「ena」ブランドを確立しております。また、高校受験においても、都立進学指導重点校7校の合格実績が465名(前期は450名)となり、9年連続で全塾中№1を獲得することができました。

収益面におきましては、授業料の価格改定に加え、新年度から本格的に取り組みを開始した私立中・私立高受験対応コース設置の効果はあるものの、当社の強みとする都立中・都立高を目指す生徒数減少の影響を受けて、売上高は前年同期と比較して微増となりました。

費用面におきましては、新卒社員の大量採用と今後の出校計画に必要な新卒・中途社員の採用強化により、人件費及び採用関連コストが増加しました。また、今後の展開を見据えた積極的な投資として、コンテンツ面では私立対策のためのオリジナルテキストや模試の開発、施設面では校舎や合宿場の環境改善のための設備投資、さらに広報面ではホームページや各種パンフレット、校舎外装デザインの大幅なリニューアルを行った結果、営業費用全体としては前年同期と比較して増加しました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は13,289百万円(前年同期比0.7%増)、営業利益は2,621百万円(前年同期比2.7%減)、経常利益は2,659百万円(前年同期比2.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,862百万円(前年同期比1.9%増)となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。なお、セグメント別の売上高はセグメント間の内部取引消去前の金額によっております。

 

 教育事業

小中学生部門(ena小中学部)につきましては、生徒数は前年を下回って推移したものの、本科授業料及び季節講習料の価格改定等の影響により、売上高は前年同期と比較して微増となりました。

個別指導部門(ena個別)につきましては、閉校に伴う校舎数の減少等を受けて生徒数が前年を下回ったことにより、売上高は前年同期と比較して減少しました。

大学受験部門(ena看護、ena美術、ena高校部)につきましては、各ブランドにおいて受講者数が堅調に推移したことにより、売上高は前年同期と比較して増加しました。

海外校舎を主に展開するGAKKYUSHA USA グループ(GAKKYUSHA U.S.A.CO.,LTD.、GAKKYUSHA CANADA CO.,LTD.、ENA EUROPE GmbH及び株式会社学究社帰国教育)につきましては、海外校舎の閉校に伴い校舎数は減少したものの、グループ生徒数が堅調に推移したことにより、売上高は前年同期と比較して増加しました。

これらの結果、売上高は12,629百万円(前年同期比0.9%増)となりました。

 

 不動産事業

不動産事業につきましては、保有する賃貸用物件は安定的に稼働しているものの、一部物件を校舎用に転用したことにより、賃貸収入は前年同期と比較して微減となりました。

これらの結果、売上高は165百万円(前年同期比0.7%減)となりました。

 

 その他

インターネットによる受験、教育情報の配信サービス事業等につきましては、広告関連売上については、学校法人関連は前年同期と比較して減少したものの、一般企業等法人は前年同期と比較して増加しました。人材サービス売上については、塾訪問サービスの需要が他エリアにも広がり契約校が増加したことにより、前年同期と比較して増加しました。

これらの結果、売上高は851百万円(前年同期比3.4%増)となりました。

 

 

(2) 財政状態

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて、878百万円増加し、3,517百万円となりました。これは、主として現金及び預金、その他(流動資産)の増加等によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて、369百万円増加し、8,638百万円となりました。これは、主として建物及び構築物、投資有価証券、差入保証金の増加及び関係会社株式の減少等によるものであります。

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて、1,247百万円増加し、12,156百万円となりました。

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて、28百万円減少し、2,844百万円となりました。これは、主として未払法人税等の増加及び未払金、その他(流動負債)の減少等によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて、429百万円増加し、1,973百万円となりました。これは、主として資産除去債務の増加及び長期借入金の減少等によるものであります。

この結果、負債は前連結会計年度末に比べて、400百万円増加し、4,818百万円となりました。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べて、847百万円増加し、7,338百万円となりました。これは、主として配当金の支払い及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上等によるものであります。

この結果、自己資本比率は、60.3%(前連結会計年度末は59.5%)となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて892百万円増加し、3,143百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

            (単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

2,199,217

2,246,025

46,808

投資活動によるキャッシュ・フロー

△321,198

△110,583

210,614

財務活動によるキャッシュ・フロー

△1,571,612

△1,249,957

321,654

現金及び現金同等物に係る換算差額

15,375

6,775

△8,599

現金及び現金同等物の増減額

321,782

892,259

570,477

現金及び現金同等物の期首残高

1,929,220

2,251,002

321,782

現金及び現金同等物の期末残高

2,251,002

3,143,262

892,259

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、2,246百万円の収入(前年同期は2,199百万円の収入)となりました。

主な内訳は、税金等調整前当期純利益、減価償却費及び法人税等の支払額等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、110百万円の支出(前年同期は321百万円の支出)となりました。

これは、主に有形固定資産の取得による支出、投資有価証券の取得による支出及び関係会社株式の売却による収入等によるものであります。 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,249百万円の支出(前年同期は1,571百万円の支出)となりました。

これは、主に長期借入金の返済による支出、リース債務の返済による支出及び配当金の支払額等によるものであります。

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

 

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率(%)

42.8

49.9

54.2

59.5

60.3

時価ベースの自己資本比率(%)

150.6

171.9

203.5

212.5

194.2

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

1.5

1.3

0.8

0.8

0.7

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

336.9

333.7

191.5

185.7

179.1

 

(注)1  自己資本比率:自己資本/総資産

 2  時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 3  キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

 4  インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

(2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

(3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

(4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産及び受注の状況

当社は、生徒に対して授業を行うことを主たる業務としておりますので、生産及び受注に該当する事項はございません。

 

(2) 販売の状況

(業績等の概要)におけるセグメントの業績をご参照ください。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって必要と思われる見積りは、その時点で最も合理的と考えられる基準に基づいて実施しておりますが、見積り等の不確実性があるため実際の結果は異なる場合があります。
  当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

売上高は、13,289百万円(前年同期比0.7%増)となり、過去最高を更新いたしました。これは主に、授業料の価格改定に加え、新年度から本格的に取り組みを開始した私立中・私立高受験対応コース設置の効果によるものであります。しかしながら、当社の強みとする都立中・都立高を目指す生徒数減少の影響を受けて、小中学生部門を中心に生徒数が想定を下回って推移したこと等により、計画を下回る結果となりました。

売上原価は、8,552百万円(前年同期比1.8%増)となりました。これは主に、校舎数の増加等による家賃や減価償却費等の校舎運営費用の増加に加え、今後の出校計画に必要な新卒・中途社員の採用強化による人件費の増加、私立対策のためのオリジナルテキストや模試の開発コストの増加によるものであります。この結果、売上総利益は、4,737百万円(前年同期比1.3%減)となりました。

販売費及び一般管理費は、2,116百万円(前年同期比0.5%増)となりました。これは主に、広告宣伝手法の戦略的な見直しによる広告宣伝費の減少があったものの、新卒社員の大量採用と中途社員の採用強化に伴う採用関連コストの増加、国内子会社における新規開発案件に係る業務委託費用の増加によるものであります。この結果、営業利益は、2,621百万円(前年同期比2.7%減)となりました。なお、売上高営業利益率は前連結会計年度の20.4%から0.7ポイント下落し19.7%となり、前中期経営計画で最終年度の目標として掲げた20.0%を僅かに下回る結果となりました。

営業外収益は、65百万円(前年同期比10.5%減)となりました。これは主に、持分法適用関連会社であった株式会社市進ホールディングスに係る持分法による投資利益が減少したことによるものであります。一方、営業外費用は、26百万円(前年同期比49.4%減)となりました。これは主に、前連結会計年度において、訴訟関連費用が発生したことによるものであります。この結果、経常利益は、2,659百万円(前年同期比2.0%減)となりました。

特別利益は、116百万円(前年同期は3百万円)となりました。これは主に、当連結会計年度において、持分法適用関連会社であった株式会社市進ホールディングスの全株式を売却したことに伴う関係会社株式売却益が発生したことによるものであります。一方、特別損失は、167百万円(前年同期は50百万円)となりました。これは主に、閉鎖及び移転の意思決定をした校舎に係る減損損失が増加したことによるものであります。この結果、税金等調整前当期純利益は2,609百万円(前年同期比2.2%減)となりましたが、繰延税金資産の増加に伴う法人税等調整額(益)を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は1,862百万円(前年同期比1.9%増)となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

「3  事業等のリスク」に記載しております。

 

(4) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

「(業績等の概要) (3)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

 

(資金調達)

当社グループは、事業活動及び設備投資に必要な資金の確保を重視しており、その主要な財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出に取り組んでおります。

新規校舎の設備投資や短期運転資金については、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、不動産事業における賃貸等不動産の取得資金については、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
  当連結会計年度末の資金の流動性は十分に確保されていると認識しており、また、金融機関との間に当座借越契約の枠を設定することで、急な資金需要や不測の事態にも備えております。

なお、当連結会計年度末における当社の取引銀行との借入による資金調達余力は以下のようになっております。

 

 

当座借越契約

株式会社三菱UFJ銀行

200百万円

株式会社みずほ銀行

100百万円

株式会社三井住友銀行

200百万円

合  計

500百万円

 

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。