当第3四半期連結累計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
Ⅰ 経営成績
当第3四半期連結累計期間(以下、当第3四半期)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)に対するワクチン接種の開始によって回復の兆しが見えてくることが期待されたものの、変異株の感染拡大によって依然として厳しい状況にあると言わざるを得ない状況になりました。
このような経済環境のもと、当社は第54期に掲げた「顧客の支援に全力を傾注する方針」を継続し、システム開発やサービスの提供に努めてまいりました。
会計事務所事業部門では、当社のお客さまである税理士および公認会計士(以下、TKC会員)が中小企業の伴走型の支援者として、関与先企業の資金繰りや経営助言に取り組むための支援を継続しています。
地方公共団体事業部門では、令和2年10月23日に厚生労働省から事務連絡「新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業実施要綱」などが発出されたことを受け「予防接種台帳システムや関連システムの改修」「ワクチン接種券(クーポン券)通知作成業務の受託」「ワクチン接種予約・受付システムの提供」等により、顧客市区町村のコロナウイルス対策をご支援しました。
これらの活動の結果、当第3四半期における株式会社TKCとその連結子会社等6社を含む連結グループの経営成績は、売上高が49,587百万円(前期比3.4%減)、営業利益は11,502百万円(同15.3%増)、経常利益は11,808百万円(同15.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は7,961百万円(同17.2%増)となりました。
売上高が前期と比較して減少した理由は、令和3年4月1日以降開始事業年度から上場企業に強制適用される「収益認識に関する会計基準(以下、収益認識基準)」を当社が早期適用したことによるものです。収益認識基準を適用した結果、売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、2,019百万円減少しております。なお、当社が収益認識基準を早期適用した理由は、同基準を適用する過程で獲得したノウハウを取りまとめ、上場企業向けコンサルティング・サービスとして提供することにあります。
当第3四半期における事業部門別の売上高の推移は以下のとおりです。
1.第3四半期業績の推移
(1)会計事務所事業部門の売上高の推移
会計事務所事業部門における売上高は33,341百万円(前期比4.5%減)、営業利益は9,050百万円(同4.6%増)となりました。
なお、収益認識基準を適用した結果、売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、1,850百万円減少し、営業利益は141百万円減少しております。売上高の内訳は以下のとおりです。
①コンピューター・サービス売上高は、前期比2.2%増となりました。これは中堅企業においてDX(Digital Transformation)への取り組みが加速する中で、販売管理システムや給与計算システムといった業務システムと会計データを連携できる「中堅企業向けクラウド型統合会計情報システム(FX4クラウド)」の導入が進んでいること、会計事務所において「税理士事務所オフィス・マネジメント・システム(OMSクラウド)」と外出先・在宅で業務を遂行できる「OMSモバイル」の採用が増加していることによります。
②ソフトウエア売上高は、前期比2.6%増となりました。これは、「中堅企業向けクラウド型統合会計情報システム(FX4クラウド)」をはじめとする電子帳簿保存法の要件に完全準拠した財務会計システムの顧客数が増加したことや、令和2年4月から資本金1億円超の法人に電子申告が義務化されたことに伴い、大企業向けの「法人電子申告システム(ASP1000R)」の顧客数が順調に伸展していることなどによります。
なお、収益認識基準を適用した結果、売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、109百万円減少しております。これは、出荷時に売上高を一括して認識していたソフトウエアのうち、契約の履行義務が一定期間にわたるものについて、契約期間に応じて売上高を月別按分して認識するように変更したためです。
③コンサルティング売上高は、前年比1.5%増となりました。これは「中堅企業向けクラウド型統合会計情報システム(FX4クラウド)」の販売が堅調に推移し、立ち上げ支援サービスが増加したことによります。
④ハードウエア売上高は、前期比18.5%減となりました。これはマイクロソフト社によるWindows7のサポートが令和2年1月に終了し、前期にパソコンの買い換え需要が一巡したため、パソコンの販売台数が例年並みに推移していることによります。
⑤サプライ用品売上高は、前期比66.8%減となりました。在宅勤務用の事務機器や感染予防用品の販売は好調だったものの、会計事務所に提供している会計伝票や事務機器の取引の多くが収益認識基準における「代理人取引」に該当するため、当期からは取引額から仕入原価を差し引いた額を売上高として認識することになったためです。売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、1,546百万円減少しております。
⑥なお、営業利益が前期と比較して増加したのは、顧客のサポートおよび提案活動をWeb会議システムによるリモートサポートに切り替えたことによって出張旅費が減少したこと、新規顧客の獲得活動を対面型のセミナーからWebセミナーに切り替えたことによって、セミナー開催費用が減少したことなどによります。
(2)地方公共団体事業部門の売上高の推移
地方公共団体事業部門における売上高は13,838百万円(前期比0.5%増)、営業利益は2,298百万円(前期に対して1,193百万円増)となりました。
なお、収益認識基準を適用した結果、売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、137百万円減少し、営業利益が60百万円増加しております。売上高の内訳は以下のとおりです。
①コンピューター・サービス売上高は、前期比10.7%増となりました。これは、令和2年度にシステムを本稼働させた新たな顧客のアウトソーシングサービス売上高やデータセンター利用料が増加したこと、コロナウイルスのワクチン接種体制確保事業におけるクーポン券通知作成業務を受託したことなどによります。
②ソフトウエア売上高は、前期比13.2%減となりました。これは、前期に実施した子ども・子育て支援法の一部改正に伴う幼児教育の無償化のシステム改修など、法律改正に伴う一時的な売上高が、前期と比較して減少したことによります。なお、収益認識基準を適用した結果、売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、151百万円減少しております。
③コンサルティング・サービス売上高は、前期比15.2%増となりました。これは、ワクチン接種予約・受付システムやマイナンバーカード交付予約・管理システムなど新たなサービスの受注に伴うシステム導入支援費売上が増加したことなどによります。また、収益認識基準の適用に伴う初年度特有の経理処理(前期以前の開発原価を累積的影響額として計上)を行った結果、売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、26百万円増加しております。
④ハードウエア売上高は前期比4.0%増となりました。これは、顧客のサーバー機器や周辺機器等の更改が前期と比較して増加したことなどによります。
⑤なお、営業利益が前期と比較して増加したのは、「ワクチン接種券(クーポン券)通知作成業務の受託」や「ワクチン接種予約・受付システムの提供」に加え、顧客のサポートおよび提案活動をWeb会議システムによるリモートサポートに切り替えたことに伴い、出張旅費が大幅に減少したことなどによります。
(3)印刷事業部門(子会社:株式会社TLP)の売上高の推移
印刷事業部門における売上高は2,408百万円(前期比8.4%減)、営業利益は147百万円(同36.0%減)の業績となりました。
収益認識基準を適用した結果、売上高は同基準を適用していなかった場合と比較して、32百万円減少しておりますが、営業損益への影響はありません。売上高の内訳は以下のとおりです。
①データ・プリント・サービス(DPS)関連商品の売上高は、前期比1.0%減となりました。これは、コロナウイルス感染拡大の影響で顧客企業が販促用のダイレクトメール(DM)等の発注を抑える傾向が続いていることなどによります。
②ビジネスフォーム関連の売上高は、前期比4.5%減となりました。これは、顧客企業がデジタル化を進めたことによって、ビジネスフォームの需要が減退していることによります。
③商業美術印刷(カタログ、チラシ、書籍等)関連の売上高は、前期比15.9%減となりました。これは、コロナウイルス感染拡大の影響によるイベントなどの中止や延期、Webセミナー等への切り替えによって、イベントで必要とされる資料やチラシなどの需要が減退していることによります。
2.全社に関わる重要な事項
(1)コロナウイルスの感染防止と新しい働き方への対応
コロナウイルス感染拡大の終息が見通せない中、当社は顧客へのサービス提供を継続するため、以下の感染防止と新しい働き方への対応に取り組んでいます。
①クラウドサービス、帳表印刷サービスやヘルプデスクサービスを継続して提供できるよう、事業継続のための体制強化(重要事業所への社外関係者の立ち入り禁止、データセンターを遠隔拠点からリモート操作するためのインフラ整備)を前期から継続しています。
②在宅勤務制度、時差通勤制度を導入し、緊急事態宣言の対象地域については1週間あたりの出勤率の目標を30%未満としています。それ以外の地域については、1週間あたりの出勤率70%未満(開発部門は40%未満)を目標としています。また、顧客のサポートや商談は原則としてWeb会議システムで実施しています。
(2)ISO/IEC20000を取得
当社のデータセンターである「TKCインターネット・サービスセンター」(以下、TISC)が、ITサービスマネジメントシステムの国際規格である「ISO/IEC20000」を令和3年6月7日に取得しました。これによりTISC内に構築したTKCクラウドサービスの稼働基盤が、「品質管理」「ITサービスマネジメント」「情報セキュリティー」の面において、国際規格に則り管理・運営されていると評価されることができました。今後も当データセンターを拠点として、“安全・安心・便利”なクラウドサービスを継続的に提供し、お客さまの事業活動を支援します。
(3)当社システム利用による法人税申告処理社数が60万社を突破
当社は昭和56年に日本で最初となる法人税申告書の作成システム「法人税申告書作成システム(TPS1000)」の提供を開始しました。その後、平成元年に導入された消費税法への対応、電子申告への対応などの法律改正に対応するとともに、継続して機能性の向上に取り組んでまいりました。現在は、法人の決算申告に最適な業務プロセスを搭載し、決算から電子申告まで一気通貫で処理できる「法人決算申告システム(TPS1000)」として提供しています。また、平成14年に導入された連結納税制度に対応した「連結納税システム(eConsoliTax)」を平成15年に提供開始し、平成19年には法人税申告書の作成から電子申告まで処理できる「法人電子申告システム(ASP1000R)」を上場企業向けに提供しました。これらの法人税申告書作成システムは、多くのTKC会員事務所や上場企業にご評価いただき、令和3年5月31日に当社システム利用による法人税申告処理社数が60万社を突破しました。これは、日本の法人の4.6社に1社は、TKCの法人税申告書作成システムで処理されているということを意味します。
3.会計事務所事業部門の営業活動と経営成績
会計事務所事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第1項:「会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営」)に基づき、当社のお客さまである税理士および公認会計士1万1,400名(令和3年6月末日現在)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で事業を展開しています。
(1)会計事務所事業部門による戦略目標達成に向けた活動
①コロナウイルス感染拡大の影響を受けた中小企業の支援
当社は、当期において、TKC会員と関与先企業の支援に全力を傾注する方針を掲げ、以下の支援を行いました。
1)TKC会員への最新情報の提供
当社は、政府や中小企業支援団体から発信される中小企業支援策をTKC会員に正確かつ迅速に伝えるためTKC会員専用のイントラネット(ProFIT)で最新情報を日々提供しました。この活動は令和2年2月25日から開始し、令和3年6月末日時点で243本の情報を掲載するに至りました。
2)「TKC月次指標(月次BAST)」の提供
当社は、令和3年5月に「TKC月次指標(以下、月次BAST)」の無償提供を開始しました。月次BASTには、TKC会員による月次巡回監査で月次決算の信頼性を確認された25万社超の「月次決算データ」を収録しており、国内に類を見ない統計資料です。直近の売上高や借入金の推移などを全国・都道府県別・年商規模別・業種別に確認することができます。金融機関や行政機関等の中小企業支援者、中小企業の動向を分析する経済学者などが今後の中小企業支援策の検討に活用することを期待しています。
3)「新型コロナウイルス経営支援情報・資金繰り対策コーナー」の提供
政府、都道府県、人口4万人以上の市および金融機関の中小企業支援策を「融資」「雇用」「補助金等」「税制」の区分で確認できる特設サイトを開発し、TKC会員のホームページから確認できるようにしています。
TKC会員は、関与先企業をはじめとする中小企業に緊急資金繰り支援策を網羅的に情報発信することが可能です。令和3年6月末日時点で7,559件の支援策を掲載し、わが国最大の中小企業支援策のデータベースとなっています。
なお、このコーナーは週2回更新しており、常に最新の情報を掲載しています。
4)「緊急支援関与先チェック機能」のレベルアップ
国の緊急経済対策や政府系金融機関の特別融資など、中小企業支援策の適用の可否を関与先企業ごとに自動判定し、一覧形式で確認できる「緊急支援関与先チェック機能」を「税理士事務所オフィス・マネジメント・システム(OMS)」に搭載しています。さらに当第3四半期においては、月次支援金に対応、「事業再構築補助金」の適用条件である中堅企業の範囲の定義にも即座に対応し、対象となる関与先企業をワンクリックで抽出できる機能を搭載しました。これにより、TKC会員が迅速に関与先企業に情報提供できる体制を構築しています。また、これらの緊急経済対策を解説するオンデマンド研修も整備し、配信しています。
②TKC全国会が掲げる「戦略目標2020」の達成に向けた営業活動
TKC全国会は、創設50周年(2021年)に向けての政策課題を踏まえ、2019年から2021年の3か年の運動方針と戦略目標2020を掲げています。その内容は以下の通りです。
[TKCブランドで社会を変えるための運動方針]
a.「TKC方式による書面添付」の推進
b.「TKCモニタリング情報サービス」の推進
c.「TKC方式の自計化」の推進
併せて、TKC全国会の取り組みが多くの金融機関から注目され始めています。これを機会としてTKC会員事務所の経営基盤をさらに強固なものとするため、以下の方針を打ち出しています。
a.「TKC会計人の行動基準書」を理解し、実践しよう。
b.「巡回監査士」「巡回監査士補」を増大させよう。
c.「認定支援機関」として経営助言業務を強化しよう。
当社では、TKC全国会と連携して戦略目標2020の達成に向けた営業活動を展開しました。
1)「TKCモニタリング情報サービス」の推進
「TKCモニタリング情報サービス」は、TKC会員事務所が毎月の巡回監査と月次決算を実施した上で作成した月次試算表、年度決算書、税務申告書などを、関与先企業の経営者からの依頼に基づいて金融機関に開示するための無償のクラウドサービスです。開示のタイミングは、月次試算表の場合は月次決算終了直後、年度決算書および税務申告書の場合は税務署に対して電子申告した直後です。
また、当社は「TKCモニタリング情報サービス」の推進と同時に、金融機関に対して中小企業の決算書の信頼性は以下の3帳表で確認できることを訴求しました。
a.TKC会員が実践する「税理士法第33条の2に基づく添付書面」
b.会社法第432条が定める帳簿の適時性および決算書と申告書の連動性を株式会社TKCが過去3年にわたって証明する「記帳適時性証明書」
c.日本税理士会連合会、全国信用保証協会連合会が制定した「中小会計要領チェックリスト」
こうした活動の結果、当サービスを採用する金融機関は急速に増加し、令和3年6月末日現在で、全国全ての地方銀行(64行)を含む464金融機関に採用されています。また、令和3年6月末日現在で、27万件を超える決算書等が金融機関に開示されました。
今後、金融機関は融資先企業の業績を定期的に確認し、経営支援に取り組むことが期待されています。「TKCモニタリング情報サービス」の「月次試算表提供サービス」は、関与先企業が月次決算を行うと、その結果を金融機関に電磁的に提出できるため、多くの金融機関から注目を集めています。
2)TKC方式の自計化の推進(「FXシリーズ」の推進)
当第3四半期は、多くの中小企業が政府系金融機関および民間金融機関において実質無利子・無担保融資の返済に備える必要があることに着目し、引き続き「FXシリーズ」に搭載している「経営戦略レベル」の機能(予算登録、部門別管理、資金繰り実績表)の活用を支援しました。また、経営者がこれらの機能を有効に活用するためには、適時・正確な会計取引の入力が必要となるため、「日常業務レベル」の機能として、インターネットバンキングから取引明細を受信して仕訳に変換する「銀行信販データ受信機能」や「戦略給与情報システム(PX2)」との給与仕訳の連携などを支援しています。
さらに令和2年9月25日に提供を開始した「FXクラウドシリーズ」では、「会計で会社を強くする」機能の強化と会計事務所による「巡回監査」を支援する機能の強化を図っています。当社は、「FXクラウドシリーズ」の導入支援を通じて中小企業の財務経営力と資金調達力の向上を支援してまいります。
3)電子帳簿保存法への完全対応支援
令和2年12月21日に閣議決定された「令和3年度税制改正大綱」では、電子帳簿保存法の要件が緩和されました。これにより、国税関係帳簿の電磁的記録である「電子帳簿」は、①過去の仕訳データの加除訂正履歴(トレーサビリティ)を残している「優良な電子帳簿」(改正電子帳簿保存法の施行規則第2条及び第5条の要件を満たす電子帳簿)と、②帳簿の加除訂正履歴を保存しない会計ソフトで作成した「その他の電子帳簿」(改正電子帳簿保存法の施行規則第2条の要件だけを満たす電子帳簿)の二つとされることになりました。「その他の電子帳簿」が認められたことは、「帳簿の証拠力」を消滅させる法改正であり、帳簿を改ざんできる会計ソフトの利用を国が認めたことになります。
当社はこの問題に対処するため、「優良な電子帳簿」を作成する「FXシリーズ」の全国規模での導入支援を行ってまいります。
4)会員導入(TKC全国会への入会促進)
TKC全国会では、令和3年12月末日までにTKC会員事務所を1万超とする運動に取り組んでいます。当社はその達成に向けて、TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会などと密接に連携し、Webセミナーを積極的に開催するなど会員導入活動を展開しています。
こうした活動の結果として令和3年6月末日現在のTKC会員事務所数は9,800事務所(会員数は1万1,400名)となっています。なお事務所数と会員数に違いがあるのは、1事務所に複数会員が所属する場合があるためです。
(2)「適時・正確な記帳に基づく信頼性の高い決算書の作成を支援する」ための活動
①「中小会計要領」の普及のための支援活動
TKC全国会では、中小企業である関与先企業が準拠すべき会計基準として、平成24年2月に制定された「中小企業の会計に関する基本要領」(以下、中小会計要領)を推奨しています。
本要領は、1)自社の経営状況の把握に役立つ会計、2)利害関係者(金融機関等)への情報提供に資する会計、3)会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した会計、4)中小企業に過重な負担を課さない会計――の考えに沿って制定されています。
当社は、その普及・活用に向けたTKC全国会の運動を支援するため、教材などの整備と他の中小企業支援団体との連携に継続的に取り組んでいます。
②「記帳適時性証明書」の発行
当社では、TKC会員が当社の会計システムを利用する際に当社データセンターに自動的に保存される処理履歴データと過去の時系列データを活用して、金融機関などの第三者が客観的にTKC会員事務所の業務水準を判定するための資料となる「記帳適時性証明書」を無償で発行しています。
このサービスは、TKC会員が作成する決算書と税務申告書の信頼性を高め、関与先企業の円滑な資金調達に貢献することを目的として開発されたものです。これは過去データの遡及的な加除・訂正を禁止している当社の「データセンター利用方式による財務会計処理」の特長を生かしたものでありTKC会員が毎月、関与先企業に出向いて正しい会計記帳を指導(月次巡回監査)しながら、月次決算、確定決算ならびに電子申告に至るまでの全ての業務プロセスを一気通貫で適時に完了したことを当社が第三者として証明するものです。
(3)大企業市場への展開
当社は、TKCシステムの活用により上場企業を中心とする大企業の税務・会計業務のコンプライアンス向上と合理化に貢献するとともに、これらの企業およびその関係会社をTKC会員の関与先企業とするための活動を積極的に展開しています。
令和2年4月から資本金1億円超の大企業に法人税・消費税・地方税の電子申告が義務化されました。これに伴い、大企業は、法人税申告書の電子申告の実施に加え、その添付書類(財務諸表、勘定科目内訳明細書等)についても電子データで提出しなければならなくなりました。当社では、これらの企業が円滑に電子申告義務化に対応できるように、TKC全国会中堅・大企業支援研究会(令和3年6月末日現在の会員数は1,513名)と連携し、『電子申告義務化対応ガイドブック』をホームページに公開するとともに、「法人電子申告システム(ASP1000R)」「連結納税システム(eConsoliTax)」ユーザーの電子申告実践を支援する活動を実施しました。その結果、「法人電子申告システム(ASP1000R)」「連結納税システム(eConsoliTax)」のユーザー数は令和3年6月末日現在で7,436社となりました。約2万3,000社あるといわれる資本金1億円超の企業の約32%に達しています。
また、海外に展開している企業は、コロナウイルスの感染拡大で海外渡航が制限されているため、海外子会社の業績管理とガバナンスの確保に課題を抱えています。当社が提供する「海外ビジネスモニター(OBMonitor)」は、海外子会社の財務データを日本にいながら確認できるクラウドサービスであるため、このような課題を抱えている企業での採用が増加しています。OBMonitorのユーザー数は1,100社となり、世界37カ国で活用されています。
こうした活動の結果、「TKC連結グループソリューション」の利用企業グループ数は、令和3年6月末日現在で約4,632企業グループとなりました。なお、当社の税務申告システムは日本の上場企業の売上高トップ100社のうち89%の企業で採用されています。また、日本の上場企業における市場シェアは35%となりました。
なお、当社は、収益認識基準を早期適用したノウハウをもとに、収益認識基準への実務対応を解説するWebセミナーを開催し、当社の収益認識基準の早期適用事例をご紹介しています。このWebセミナーには延べ4,250名超の視聴申し込みがありました。
(4)法律情報データベースの市場拡大
①「TKCローライブラリー」の利用拡大
法科大学院や法律事務所を始めとするTKCローライブラリーの顧客の多くが、コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンラインで業務を遂行するようになりました。これにより、資料室や図書館などを利用した調査ができない状況が生まれており、法令・判例・文献情報に加え、主要法律専門誌の記事をいつでもどこでも利用できるTKCローライブラリーの評価が高まっています。その結果として、利用者数やコンテンツ追加の契約が増加しました。
また、令和3年6月には、TKCローライブラリーの新たなオプションサービスとして、法律、会計、税務、経営等専門書籍をPDFで閲覧できるサービス「Legal Book Search」の提供を開始しました。このサービスは、弁護士が書籍情報を無償で検索し、PDF化された書籍をタブレットやパソコンで閲覧できる定額制のサービスです。
当第3四半期においては、TKC会員事務所をはじめ大学・法科大学院、官公庁、法律事務所、特許事務所、企業法務部などへのオンライン提案活動の結果、ユーザー数は5万2,200IDを超え、令和3年6月末日現在で2万3,000超の諸機関で利用されています。
②アカデミック市場における展開
令和3年4月以降もコロナウイルスの影響で多くの大学は、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型もしくは完全オンライン型の授業を実施しています。当社が提供する「TKC教育研究支援システム」「TKCローライブラリー」などのシステムは、いつでもどこでもオンラインで利用でき、他社をしのぐ多様かつ多数のコンテンツの収録、レポートや演習、テスト機能が搭載されています。これらの特長が教員、学生のオンライン授業および学習を支えるものとして再評価されています。現在も、各大学と随時Web会議を実施し、大学の実情に応じたオンラインによる学習環境整備の支援を継続しています。
また、大学の法学部を中心に提供しているオンライン学習ツール(公務員試験、ビジネス実務法務検定、法学検定試験)は、令和3年6月末日現在で26校が利用しています。現在、多くの資格試験がCBT/IBT方式によるコンピューター利用試験を採用しています。そのため、オンラインテスト機能などコンピューター試験対策としても有効な当社のオンライン学習ツールの活用を、資格試験の実施団体や受験生に訴求してまいります。
4.地方公共団体事業部門の営業活動と経営成績
地方公共団体事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第2項:「地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営」)に基づき、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。
(1)基幹系関連サービスの開発・提供
当社は、地方公共団体(主に市区町村)に対して、「TKC行政クラウドサービス」を提供しています。これは基幹系業務と内部情報系業務を支援する「TASKクラウドサービス」と、納税通知書などの大量一括出力処理を支援する「TASKアウトソーシングサービス」から構成するクラウドサービスです。
当社の「TASKクラウドサービス」は、当社データセンターを運用拠点とした単一バージョンのパッケージシステムでありながら、複数団体による共同利用を前提に設計しています。そのため、政府が推進する「自治体クラウド」に対応する最適なシステムとして注目されており、全国12の共同利用組織に採用されています。
また、全国7社のアライアンスパートナー企業も「TASKクラウドサービス」を積極的に推進しています。この結果、令和3年6月末日現在で「TASKクラウドサービス」は、160を超える地方公共団体に採用されています。当期においては、引き続き新規受注に向けた提案活動を行ったほか、令和3年3月までに本稼働を迎えた新規受注団体及び令和4年1月に本稼働を迎える新規受注団体について、円滑なシステム移行を支援しました。加えて、「新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保事業」に顧客団体が迅速・的確に対応できるよう最新情報を提供するとともに、「予防接種台帳システム」等の改修や「新型コロナワクチン接種予約・受付システム」を提供しました。
(2)行政サービス・デジタル化への対応
当社では、自治体DX推進に貢献すべく〈書かせない・待たせない・来させない〉窓口サービスの実現を支援する「行政サービス・デジタル化支援ソリューション」を提供しています。当期においては、「TASKクラウドかんたん窓口システム」や「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」などの機能強化を図るとともに、大阪府大阪市様の協力を得ながら「TASKクラウドスマート申請システム」を開発し、本稼働させました。
これらのサービスについて積極的な提案に取り組んだ結果、「TASKクラウドスマート申請システム」は大阪市様、神戸市様、堺市様などの政令指定都市を含め10を超える団体に、「TASKクラウド かんたん窓口システム」は20を超える団体に、「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」は60を超える団体に、それぞれ採用されています。
(3)地方税税務手続きのデジタル化への対応
地方税共同機構の認定委託先事業者として、同機構が運営するeLTAX(地方税ポータルシステム)の審査システムなどの標準システムをクラウド方式で提供するとともに、当社独自の機能として各市町村の税務システムとの「データ連携サービス」を開発・提供しています。本サービスの推進にあたっては、アライアンス契約を結ぶ50社のパートナー企業と共に提案活動を展開しています。その結果、「TASKクラウド地方税電子申告支援サービス」は、令和3年6月末日現在で全都道府県・市区町村の4割以上に当たる約780団体に採用されています。
当期においては、当社独自サービスであるデータ連携サービスの機能強化に取り組むほか、パートナー企業と共に積極的な提案活動および導入支援に取り組みました。
(4)地方公会計の統一的な基準への対応
令和2年3月に総務省が公表した『地方公会計の推進に関する研究会(令和元年度)報告書』では、「財務会計システムと一体的な地方公会計システムを導入し、あらかじめ歳出科目と勘定科目の紐付けを行うことや、予算執行時に自動的に仕訳変換をする仕組みを構築することにより、日々仕訳の円滑な導入や期末一括仕訳における確認作業の軽減も可能になると考えられる。また、公有財産台帳と固定資産台帳のデータを連携・統合することにより、各台帳への登録業務を効率化することが可能になると考えられる」とされ、システム更新などのタイミングで「財務会計システムと一体的な地方公会計システム」と「日々仕訳」の導入を検討するよう促しています。
当社では、国が推奨する日々仕訳方式に対応した財務会計システムと一体的な地方公会計システムとして「TASKクラウド公会計システム」と、その関連システムとして「TASKクラウド固定資産管理システム」「TASKクラウド連結財務書類作成システム」を提供しています。
当期においては、これら地方公会計システムの公会計情報を活用した経年比較分析やグラフ表示など各種機能強化に取り組んだほか、千葉県袖ケ浦市様、栃木県鹿沼市様など多くの団体から新規に受注し、それらの円滑な立ち上げ・運用を支援しました。その結果、地方公会計システムは令和3年6月末日現在で280を超える団体に採用されています。
(5)次世代製品の研究・開発
コロナウイルスの感染拡大を機に行政分野でのデジタル化・オンライン化の遅れが浮き彫りとなったことを受けて、『経済財政運営と改革の基本方針2020』(令和2年7月閣議決定)ではデジタル・ガバメントの構築を“一丁目一番地”の最優先課題と位置付け、行政手続きのオンライン化やワンストップ・ワンスオンリー化などデジタル化を加速することとされました。令和2年12月25日には総務省から『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』が公表され、令和3年5月12日にはデジタル改革関連の6法案が成立し、令和8年3月末までを期限とした自治体の情報システムの標準化・共通化への対応が求められることになりました。
当社では、こうした顧客を取り巻く環境変化に対応するため、新製品の企画・開発を加速するとともに、最新情報の収集・発信など顧客サポートの強化に努めています。
当期においては〈行政サービス・デジタル化〉や〈業務システムの標準化〉などに関する情報収集・発信を行うことに加え、先進団体との実証事業などを通じてポストコロナ時代の“新たな日常”を支える次世代ソリューションの調査・研究、開発に取り組みました。
5.印刷事業部門の営業活動と経営成績
当社グループの印刷事業部門は、データ・プリント・サービス(以下、DPS)事業、ビジネスフォーム印刷事業および商業美術印刷事業を基軸に事業を展開しています。
DPS分野では官公庁大口物件の失注、また価格低下による受注額の減少、コロナウイルスの感染拡大によって民間企業におけるダイレクトメールの需要減少が続いています。一方で、市区町村から「コロナウイルスワクチン」接種券関連業務を受注したことにより、売上高は微減にとどまりました。また、経済活動の再開を見通して、民間企業に対するダイレクトメール案件の新規獲得に向け営業活動を実施しています。
ビジネスフォーム印刷分野では、ビジネス帳票の需要減退、主要な取引先の帳票需要の減少、またコロナウイルス感染拡大の影響でビジネス帳票の利用が減少したことなどから、売上高は減少となりました。
商業美術印刷分野(カタログ、チラシ、ページ物、書籍等)では、コロナウイルス感染拡大の影響から、イベントなどの中止や延期が続いていること、Webによるセミナー等の開催が増加したことにより、これまで必要とされた資料類、チラシなどの発注が減少した結果、売上高は減少となりました。
Ⅱ.財政状態
当第3四半期連結会計期間末における資産・負債及び純資産の状況は次の通りです。
1.資産の部について
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、100,106百万円となり、前連結会計年度末97,671百万円と比較して2,435百万円増加しました。
(1)流動資産
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は、36,571百万円となり、前連結会計年度末35,844百万円と比較して727百万円増加しました。
その主な理由は、受取手形及び売掛金が567百万円増加したことによります。
(2)固定資産
当第3四半期連結会計期間末における固定資産は、63,534百万円となり、前連結会計年度末61,826百万円と比較して、1,707百万円増加しました。
その主な理由は、投資その他の資産のその他に含まれる繰延税金資産が1,264百万円減少したものの、投資有価証券が3,041百万円増加したことによります。
2.負債の部について
当第3四半期連結会計期間末における負債合計は、17,648百万円となり、前連結会計年度末20,595百万円と比較して2,947百万円減少しました。
(1)流動負債
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は、12,318百万円となり、前連結会計年度末14,701百万円と比較して、2,383百万円減少しました。
その主な理由は、賞与引当金が2,201百万円減少したことによります。
(2)固定負債
当第3四半期連結会計期間末における固定負債は、5,330百万円となり、前連結会計年度末5,893百万円と比較して、563百万円減少しました。
その主な理由は、株式給付引当金が290百万円、その他に含まれる長期リース債務(転リース)が253百万円減少したことによります。
3.純資産の部について
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、82,458百万円となり、前連結会計年度末77,075百万円と比較して5,382百万円増加しました。
その主な理由は、利益剰余金が4,152百万円、その他有価証券評価差額金が791百万円増加したことによります。
なお、当第3四半期連結会計期間末における自己資本比率は、82.4%となり、前連結会計年度末78.9%と比較して3.5ポイント増加しました。
Ⅲ 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
Ⅳ 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費はありません。
また、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。