(1)全社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
当社は「自利利他(自利トハ利他ヲイフ)」を社是とし、「顧客への貢献」を経営理念として、会社定款(第2条)に定める次の二つの事業目的を達成するために経営を展開しています。
1)会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営
2)地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営
この会社定款に定める基本方針は、創業(昭和41年10月22日)以来のもので、その後の業容の拡大に伴い、定款には他の事業目的が追加されましたが、それらはこの二つの事業目的を補完するものであり、経営の基本方針は変わっていません。
② 経営環境
わが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行され、政府による支援と経済・社会活動の正常化により緩やかな回復基調で推移しました。一方、世界的な金融引き締めや原材料価格の上昇、ゼロゼロ融資の返済に伴う中小企業の資金繰り悪化など、依然として先行きの不透明感も漂っています。
こうした状況の中、当社グループは、このような社会環境の変化や政府の取り組みに迅速に対応したシステムの開発やサービスの提供を継続し、顧客ならびに地域・社会に貢献すべく事業を展開してまいりました。
当社グループが提供する製品およびサービスに大きな影響を与えるものは、法令等の改正とICTの進化です。法令等の改正としては、令和5年10月より開始の消費税インボイス制度や、宥恕措置が終了し令和6年1月より対応が必要となる改正電子帳簿保存法による電子取引データの電子保存の義務化、その他にも国・地方のデジタル改革の推進や自治体の情報システムの標準化・共通化、ガバメントクラウドの導入などがあり、その対応を求められています。また、ICTの進化としては、クラウドコンピューティング、FinTech、生成AIなどの技術革新があげられます。
こうした環境の変化をいち早く捉え、当社グループの提供する製品およびサービスへと展開することが重要であると考えています。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1)さらなる「顧客への貢献」に向けたイノベーションの創発
当社の顧客である会計事務所や地方公共団体を取り巻く環境は、大きく変化しており、デジタル化の推進による生産性向上や業務効率化が急務となっています。当社は最新のICTを取り入れ、法令に完全準拠しながら、より付加価値の高いシステムを提供することにより、顧客の業務を支援します。そのため今後もシステム開発体制の強化に努めてまいります。
2)AIの活用に向けた人材育成と研究開発
今後、顧客を支援する上で、AIの活用は不可欠だと考えています。そのため、令和4年1月より、AIの活用を企画・推進できる人材育成を目的として、「AIプランナー」を120名育成する研修を開始しています。
さらに当社は、AIAzure OpenAI Serviceの大規模言語モデルをベースに開発した社内向けAIチャットサービス「TKC AI Assistant」の利用を開始しました。システム開発の業務のみならず、社内事務や営業の現場などでも「TKC AI Assistant」を積極的に活用することで、社員の業務効率化・生産性向上を目指しています。
このような取り組みを通じて、将来的にはAIを活用した製品・サービスの創出につなげてまいります。
3)地球環境の保護と「安全・安心・便利」なデータセンターの運営
環境保全活動は企業の社会的責任であり、持続可能な社会の実現に不可欠であることから、平成19年に掲げた「環境基本方針」に基づきCO2削減に積極的に取り組んでいます。今後も「サステナビリティ方針」にもとづき、地域社会に貢献してまいります。
また、当社は会計事務所や中小企業、大企業、地方公共団体、金融機関、大学、法律事務所など80万件を超えるお客さまに対して、自前のデータセンターによるクラウドサービスを提供しています。50年以上にわたり培ったノウハウを結集したデータセンターで、お客様の大切なデータを保管し、事業活動を支援しているため、堅牢でセキュアなデータセンターの運営とBCP対策の実施、情報セキュリティの確保に努めています。
当社では、引き続き顧客が“安全・安心・便利”にクラウドサービスを利用できる環境の整備に取り組んでまいります。
(2)会計事務所事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
会計事務所事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第1項:「会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営」)に基づき、当社のお客さまである税理士および公認会計士(1万1,400名)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で事業を展開しています。
TKC全国会では、2022年から2024年までの3年間にわたる運動方針を次のとおり掲げています。
「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」
1)優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する 「TKC方式による自計化」の推進
2)租税正義の守護者となる 「TKC方式の書面添付」の推進
3)黒字化を支援し、優良企業を育成する 「巡回監査」と「経営助言」の推進
当社では、TKC全国会が掲げる運動方針に基づき、2024年戦略目標の達成に向けた活動を実施しています。
また、TKC全国会の「中堅・大企業支援研究会」や「海外展開支援研究会」とも綿密な連携を図り、上場企業を中心とする大企業市場向けに税務・会計システム等の提供を通じて、TKC会員の関与先拡大を支援しています。
② 経営環境
国税庁が令和5年11月に発表した「法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和4年度における全法人の黒字申告割合は36.2%でした。前年度に比べて0.5ポイント増加したものの、依然として法人の約64%が赤字となっています。
さらに、地政学的なリスクの高まりによる原材料費の高騰、新型コロナウイルスの緊急融資等の返済開始など、中小企業が経営難や赤字に陥るリスクは未だ回避できていません。多くの中小企業は先を見通せない状況下で、必要利益をいかに確保するかが大きな課題となっています。
そうした中でTKC会員事務所は、「黒字決算と適正申告」の実現に向けて月次巡回監査と月次決算、経営助言を実施し、「会計で会社を強くする」活動を展開してまいりました。また、借入金返済のための必要利益や必要売上高を算出し、経営計画の策定も支援しています。こうした活動の結果、TKC会員の関与先企業の約53%が黒字決算を実現しており、いまTKC会員事務所の指導力の高さに全国の中小企業や金融機関から大きな期待が寄せられています。
なお、令和4年1月1日に改正電子帳簿保存法が施行され、また令和5年10月1日には改正消費税法が施行されました。それにより全ての事業者が電子取引のデータ保存や、適格請求書(インボイス)への対応を迫られています。当社ではこうした法律および社会制度の改正を、TKC会員の関与先を拡大する機会と捉えています。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
会計事務所事業部門では、TKC会員事務所の社会への貢献度をさらに高め、その事業の成功を実現するために、TKC全国会の指導の下で、以下の活動を全力で支援してまいります。
1)システムの競争力の強化
当社では、以下の取り組みを通じてシステムの競争力の強化を図り、優位性を訴求することで他社との差別化に努めます。
a.当社システムの「強み」は税務と会計の一気通貫にあります。それは、財務会計システムにおいて法令および会計基準への完全準拠性を堅持し、税務情報システムと完全連動させ、会計・税務・電子申告の一気通貫を実現していることです。今後も、法令改正や制度改定に迅速・的確に対応します。
b.当社システムの最大の特長は、税務と会計の実務に精通したTKC会員がシステムの導入から運用まで、きめ細かなサポートを行い企業の適法・適正な税務と会計の処理を支援していることにあります。
こうしたTKC会員の業務の高付加価値化の支援強化を図ります。
2)自計化推進活動
当社では、TKC全国会の戦略目標達成を支援するため、「FXクラウド」における企業経営者の迅速な意思決定を支援する機能を強化・拡充するとともに、会計データの改ざんを可能とする遡及的な加除・訂正の会計処理ができないシステムの強みを生かした自計化推進活動を展開しています。
また「FXクラウド」や「インボイス・マネジャー」の利用拡大を図ることにより、今後はペポルインボイス(デジタルインボイス)の普及にもつなげてまいります。
3)TKC会員事務所1万超事務所の達成の支援
TKC全国会が掲げるTKC会員事務所1万超事務所の達成に向けて、TKC会員と連携した会員導入活動へ取り組み、TKC全国会の戦略目標の達成に貢献します。
4)TKC連結グループソリューションの強化と拡充
TKC全国会の「中堅・大企業支援研究会」や「海外展開支援研究会」と連携し、「TKC連結グループソリューション」の活用による大企業の税務、会計、海外子会社管理業務等の合理化・効率化を支援します。
5)TKCローライブラリーの利用拡大
「TKCローライブラリー」を構成するコンテンツ「LEX/DBインターネット」「出版社データベース」「LegalBookSearch」等の機能強化と収録内容の拡充および生成AIの活用を進めます。あわせて他社の「リーガルテックサービス」とも連携するAPIサービス等の提供により、利用者の利便性を高めます。こうした取り組みにより競合他社のサービスとの差別化を図り、法律事務所等へのさらなる利用拡大を目指します。
(3)地方公共団体事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
地方公共団体事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第2項:「地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営」)に基づき、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。
また、中長期の事業ビジョンとして「TKCシステムの最適な活用を通して、行政効率の向上・住民サービスの充実・行政コストの削減を実現し、地域の存続と発展に貢献する」との方針を掲げ、その実現に向けた戦略を実行しています。
② 経営環境
地方公共団体(特に市区町村)における情報化は、いま大きな転換点を迎えています。地域社会における少子高齢化・人口減少に伴う労働力不足を背景に、職員数がこれまでの半数でも持続可能な形で行政サービスを提供する「スマート自治体(デジタル社会)」への転換が、市区町村にとって重要な経営課題となっています。特に、コロナウイルス対応で行政のデジタル化の遅れが社会的課題として顕在化したことで、その動きは一段と加速しています。政府は「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)を策定し、デジタル社会の実現のためには住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割が極めて重要であるとして『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』(総務省/令和4年9月2日改定)により、全ての自治体が足並みを揃えて以下の施策に取り組んでいくことを求めました。
1)自治体情報システムの標準化・共通化
2)マイナンバーカードの普及促進
3)行政手続のオンライン化
4)AI・RPAの利用促進
5)テレワークの推進
6)セキュリティ対策の徹底
さらには、国・地方の財政状況が厳しさを増す中で、これからも市区町村が行政サービスを安定的、持続的、効率的かつ効果的に提供していくために〈持続可能な行政経営〉の確立が期待されています。そのため、市区町村では財務書類等の適切な更新・開示を行うとともに、正確な財政状況の見える化を図り、財務書類等から得られた情報を事業評価やトップの意思決定に積極的に活用することが急務となっています。
一方、地方公共団体向けビジネス・ベンダーの市場動向に目を向けると、行政サービスのデジタル化分野において他業種や新興企業の市場参入が相次いでいます。このことから地方公共団体市場における企業間競争は一段と激化し、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるシステム・サプライヤーだけが生き残っていく厳しい時代を迎えたといえます。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社では、地方公共団体における「スマート行政DX」の実現、および「持続可能な行財政改革」を支援するため、今後も最新のICTを活用した革新的な製品やサービスの開発・提供を通じて「住民サービスの充実」と「行政効率の向上によるコスト削減」を支援することが重要な経営課題であると捉え、以下の5つの重点活動に取り組みます。
1)基幹系システムの標準化への対応
a.令和8年3月末までを期限とした自治体の情報システムの標準化・共通化に対応すべく、国の策定する「標準仕様」に完全準拠したシステムの開発、およびガバメントクラウドへの移行のための準備を進めます。
b.ガバメントクラウドとは、国(デジタル庁)が用意する政府共通のクラウドサービスの利用基盤です。当社においては、TISCで運用・稼働しているシステムをこの基盤に移行し運用・稼働させることになります。
2)行政サービス(各種手続き)のデジタル化・オンライン化の支援
市区町村においては「行政サービスのデジタル化」の早期対応が不可避となっています。これを支援するため、先進的に取り組む団体の協力を得て「TASKクラウドスマート申請システム」と「TASKクラウドかんたん窓口システム」を組み合わせた窓口サービスのデジタル化に向けて一層の機能強化・拡充に取り組みます。
3)地方税税務手続きのデジタル化の支援
地方税共同機構の認定委託先事業者として、また税務情報システムの提供を通じて、税務業務の効率化を支援する関連サービスの一層の拡充・機能強化を図り、その普及促進に取り組みます。
4)庁内事務のデジタル化の支援
次世代版「TASKクラウド公会計システム」の普及・促進を図り、市区町村の内部事務のデジタル化を支援してまいります。
5)次世代製品の研究・開発
a.基幹系システムの標準化後を見据え、高付加価値な独自サービス、機能の研究・開発に取り組みます。
b.先進団体との実証事業等を通じて、行政手続きのオンライン化やワンストップ・ワンスオンリー化などデジタル化を支援する新たなソリューションの研究・開発に取り組みます。
(4)印刷事業部門(子会社:株式会社TLP)の経営方針、経営環境、及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
印刷事業部門では、「デジタル技術」と「ニーズの変化に対応した製品・サービスの提供」により、顧客企業やそのお客さまのコミュニケーションとマーケティングに貢献することを経営方針として掲げています。新型コロナウイルスの感染拡大は情報化社会における急速なデジタル化推進の流れをもたらしました。社会環境の変化やお客さまの価値観の変化に対応し、自社の生産技術を活かした製品・サービスの開発、品質改善、付加価値の向上に取り組みます。さらにお客さまの良きパートナーとして、デジタル技術と印刷物を使ったコミュニケーション環境の整備を通じて企業価値の一層の向上に努めます。
② 経営環境
行政のデジタル化や規制改革、マイナンバーカードの普及、教育のデジタル化、消費税インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正など、印刷事業を取り巻く環境は変化しています。主力商品のデータ・プリント・サービス(DPS)とビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)においては、こうした「新しい生活様式」や「新しいビジネス様式」に対応した製品・サービスの提供に努めます。
また、ビジネス帳票は長期的に需要の減退が続いておりますが、生産環境の整備、設備の統廃合や生産効率の向上によりコストを抑え、市場内でのシェア拡大を図ります。
なお、印刷事業部門の株式会社TLPでは、環境配慮を志向するお客さまが環境にやさしい紙製品をお使いいただけるよう、令和4年10月3日付でFSC®森林認証(CoC認証)を取得しました(FSC-C182216)。この認証制度は、適切に管理されたFSC認証林およびその他の管理された供給源からの原材料を用いるとともに、適切な管理と印刷加工が求められています。これを維持・管理することによって紙製品にFSC認証マークを付すことができ、お客さまの環境配慮への姿勢のアピールを支援することができるようになりました。この認証制度を活かし、お客さまの「グローバルな諸課題の解決を目指すために掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)」への対応を支援します。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの印刷事業部門では、データ・プリント・サービス(DPS)およびビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を主体とした拡販のため次のとおり取り組みます。
1)アナログとデジタルを融合した印刷技術で製品・サービスの付加価値を向上させ、顧客のダイレクトコミュニケーションへ貢献します。
2)顧客ニーズへの対応、他社との差別化による提案型の営業展開のため新技術開発へ継続して取り組みます。
3)コロナウイルスの感染拡大は顧客のアウトソーシング業務範囲を拡大させました。その受託では高品質かつ、コストの最小化、情報セキュリティリスクの低減などにより顧客の経営効率化に寄与します。
4)令和7年度末までの地方公共団体情報システム標準化対応に向けて、最適なアウトソーシングサービスの構築を目指します。
5)DPS専門工場の生産環境の一層の整備により、品質改善、品質力の強化と生産力の増強を図ります。
6)品質の向上と安定・維持、また品質障害防止のため、全商品の工程ごとの品質チェック体制を強化します。
7)全社においてデジタルトランスフォーメーション(DX)と自動化に取り組み全部門の生産性と業務品質を向上させます。
8)顧客や取引先等からの信頼獲得、および政府が進めるマイナンバーカードの普及促進に合わせ、マイナンバーの管理については「プライバシーマーク」「ISMS」に基づいた情報セキュリティ体制を一層強化します。
9)「ISO14001」取得の環境配慮型企業として、損紙の削減を図るとともに、生産性の向上と効率化によりエネルギー消費量の削減をさらに進めます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
① サステナビリティ方針
当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から、サステナビリティ方針を作成しています。
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―サステナビリティ方針―
TKCグループは、TKCの創業の理念にもとづき一貫して「顧客への貢献」に取り組み、地域社会に貢献するとともに、持続可能な社会の実現を目指して公共的使命と社会的責任を果たします。
1.「顧客への貢献」を実現する商品の開発とサービスの提供 (Contribution) お客さまの事業の成功条件を探求し、これを強化するシステムを開発し、その導入支援に全力を尽くします。お客さまへの貢献は私たちの喜びです。
2.コンプライアンスの実践 (Compliance) 創業以来「ルールによる経営」を標榜し、TKCグループの役員、社員等に法令及びその他の社会的規範への順守を求めるとともに、ステークホルダー(顧客、株主、取引先等)からの期待に応えられるよう努めています。
3.情報セキュリティの確保 (Information security) 会計事務所とその関与先企業、地方公共団体等を対象として、常に最新のICTを最適に活用して、各種情報サービスを提供しています。このため、情報セキュリティの確保を事業活動の重要課題であると認識するとともに、社会的責務であると考えています。
4.公正かつ自由な競争の維持・促進 (Fair Trade) サプライチェーンに存在するさまざまな社会的課題の解決に向けて、責任ある調達を推進します。また公正かつ自由な競争の下、適正な取引を実施することで取引先との信頼関係を強化します。なお、市民社会の秩序や安全を脅かす反社会的勢力や団体には毅然とした態度で対応します。
5.地球環境の保護(Environment)と自然災害対策 (BCP) 環境保全活動は企業の社会的責任であり、持続可能な社会の実現に不可欠であることから、2007年に掲げた「環境基本方針」に基づき積極的に推進していきます。 また、様々な自然災害の発生時においてもクラウドサービスの提供を継続するために、日本データセンター協会が制定した「データファシリティスタンダード」に基づくティア3以上に対応し堅牢でセキュアなデータセンターの運営とBCP対策を実施しています。
6.人権の尊重 (Social) 人権に関するさまざまな国際規範を理解し、基本的人権や個性、プライバシー、多様な価値観を尊重すると共に、安全で快適な職場環境を整備し従業員満足度の向上に努めます。また、人権、宗教、性別、国籍、心身障害、年齢、性的嗜好に関する差別的言動、暴力、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント等の人権を侵害する行為を行いません。 なお、人権を侵害する行為が判明した場合には、適切な処置を講じます。また、取引先等においても、人権の尊重、環境保全、法令順守等に配慮した活動を求めます。
7.コーポレート・ガバナンスの強化 (Governance) 上記に掲げる各行動を実現するため、実行あるガバナンス体制を維持し、強化します。
令和3年12月17日制定 令和5年3月14日改訂 |
② ガバナンス
当社グループは、代表取締役専務を委員長とし、業務改善委員会(取締役が推進すべきコンプライアンス経営及び業務効率の改善等を補佐する機関)の委員長等をメンバーとしたリスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会では、サステナビリティに関連するリスクを含む各種リスクを識別・評価し、優先的に対応すべきリスクの絞り込みを行い、当該リスクに関する取り組みの進捗をモニタリングしています。審議内容は、定期的に取締役会へ報告され、取締役会において当該報告の内容を管理・監督しています。
③ リスク管理
リスク管理委員会で識別し、評価した各種リスクについて、業務改善委員会等で具体的な対応を検討し、対処しています。リスク管理委員会では、業務改善委員会等での取り組み状況を継続的にモニタリングしています。
<ガバナンス・リスク管理の体制図>
(2)気候変動
当社グループでは、環境基本方針を定め、継続的に環境保全活動に取り組むとともに、上記(1)②ガバナンス、③リスク管理を通じて、気候変動リスクの識別、評価、管理を行っています。
この結果、現時点において、気候変動によるリスクや収益機会が当社グループの事業活動に重大な影響を与えると評価していません。このため、具体的な「戦略」及び「指標と目標」を定めていません。
当社では、国際的な取り組みである地球温暖化防止のため、データセンターにおいては、消費電力の削減に配慮した設備投資を行い、温室効果ガス排出の削減に努めています。事業所においては、社員の省エネ・節電の意識を高めるとともに、具体的な行動を示すため、ポスターを作成し、執務室、会議室、トイレ等に掲示しています。
また、システムマニュアルの電子化やプログラムのオンライン配布等により、顧客に提供する紙資源やプラスチックの削減に努めています。
具体的な取り組み内容や温室効果ガス排出量の削減実績は当社のホームページをご覧ください(https://www.tkc.jp/sustainability/e1)。
(3)人的資本・多様性
当社では、人的資本・多様性に関する「戦略」及び「指標と目標」に関し具体的に取り組んでいるものの、全てのグループ会社での取り組みとはなっていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の「戦略」及び「指標と目標」は、提出会社のものを記載しております。
① 戦略
1)人材育成方針
当社は、創業以来、「自利利他」を社是とし、「顧客への貢献」を経営理念として、経営を展開しています。お客様の事業の成功を支援するため、当社としても社員の学習意欲を支援することを継続し、人材を育成しています。また、「顧客への貢献」を様々な観点から実現できる人材を採用することで、多様性確保に努めています。主な取り組みは以下のとおりです。
<基礎的・専門的な知識習得を支援する取り組み>
当社は、専門知識を持つお客様が多い一方で、多様な背景を持つ社員が入社します。このため、基礎的な知識から専門的な知識習得のための機会を長期かつ充実した内容で用意しています。新入社員、入社5年目などの入社歴を対象とする基礎的な研修とともに、職種ごとに設けられた社内資格制度、公的資格取得の報奨金制度など、専門的な知識の習得を支援する制度を設けています。
<役割別スキルの習得を支援する取り組み>
会社が任命した役割に満足することなく、継続したスキル向上を促進するため、「新任マネジャ」など役割を対象とする研修等を継続して実施しています。また、部下を持つ社員を対象にした勉強会を定期開催し、「評価」や「組織開発」に関するスキル向上の機会を設けています。
<人財を育成するための取り組み>
社員各人が掲げる目標達成を支援するため、1on1や各種面談の機会を設けることを重視しています。話し合いの量と質の向上のため、全社員を対象にした面談スキル等の向上を目指したカリキュラムを実施しています。また、当カリキュラムの浸透と継続を目的として、全社員を対象にしたWebによる勉強会を定期開催しています。当勉強会は、職種、勤務地、勤続年数などを横断した社内人脈構築の機会にもなっています。また、社員個人が購入する書籍代金を当社が支援する個人図書購入支援制度や読書命令制度を設け、自己学習の基本となる読書を奨励しています。
2)社内環境整備方針
当社は、就業規則の前文において、顧客サービス(顧客満足度)の水準、市場におけるシェア、社員の待遇の3点において世界第一級を目指すことを掲げています。これらの実現にあたっては、社員一人ひとりが心身共に健康であり、高い使命感のもと、専門性を発揮し続けることが重要だと捉え、社内環境を整備しています。
主な取り組みは以下のとおりです。
<健康上の課題発見と解決を支援するための取り組み>
定期健康診断(再検査を含む)、ストレスチェックの受診促進に取り組んでいます。定期健康診断の検査項目、受診対象者は、労働安全衛生法に定める基準よりも手厚いものとしています。また、健康管理システムを導入するとともに、全ての事業所に産業医を置くことで、社員に対する保健指導等を含む健康管理体制を強化しています。
<健康保持と増進に向けた取り組み>
社員の喫煙率低下、 健康保険組合の活用(セミナー、運動施設利用)、 職場環境の改善に向けたアンケート調査などに取り組んでいます。
<女性活躍推進に関する取り組み>
女性社員の職域拡大、育児・介護等に関する両立支援制度の整備、企業内保育園の設置等を行うことよって、女性が活躍できる環境整備に取り組んでいます。
② 指標と目標
当社では、上記において記載した、人材育成方針、社内環境整備方針について、次の指標を用いています。当該指標に関する目標(令和10年9月期)及び当期の実績は、次のとおりであります。指標及び目標は、提出会社のものを記載しています。
|
指標 |
目標 |
実績 (当事業年度) |
|
人材育成方針 |
- |
- |
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社員(入社4年目以降)の「日商簿記検定2級」 取得率 (注)1 |
100% |
80.9% |
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開発職社員(入社4年目以降)の「基本情報技術者試験」 取得率 (注)2 |
100% |
57.2% |
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役割別スキル研修会の参加率 |
80% |
95.1% |
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責任者向け勉強会の参加率 |
80% |
87.8% |
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社内環境整備方針 |
- |
- |
|
定期健康診断の受診率 |
100% |
100% |
|
ストレスチェック回答割合 |
100% |
98.5% |
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健康経営優良法人の認定 |
認定 (継続) |
認定 |
(注)1.日商簿記検定2級・1級、税理士試験(簿記論、財務諸表論)、税理士、公認会計士の資格を持つ社員数(複数の資格を保有の場合は1名でカウント)から計算しています。
2.基本情報技術者試験、応用情報技術者試験の資格を持つ社員数(複数の資格を保有の場合は1名でカウント)から計算しています。
当社および当社グループの事業等に関連するリスクについては、有価証券報告書に記載した「事業の状況」および「経理の状況」等に関連して、投資者の皆さまにご承知いただくべきと思われる主な事項を以下に記載します。また、その他のリスク要因についても、投資者の皆さまのご判断上、重要と思われる事項について、積極的な情報開示を行うこととしています。
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスク発生の事前防止および発生した場合の迅速な対応に努める所存ですが、当社株式に関する投資判断は、本項に加えて本報告書全体の記載も参考にされ、十分に検討した上で行われる必要性があると考えています。また、以下の記載は、当社株式への投資に関連するリスク要因を全て網羅しているものではありませんので、この点にもご留意ください。
なお、本項において将来にわたる事項は、当連結会計年度末(令和5年9月30日)現在において当社グループが判断したものです。
(1)事業環境の変化について
会計事務所向け事業部門においては、少子高齢化の影響に伴う会計事務所の後継者不足や会計事務所職員の採用難、また厳しい経営環境下での関与先企業の廃業や倒産などにより市場が縮小する可能性があります。
また地方公共団体向け事業部門においては、政府が進めるガバメントクラウドやシステム標準化による競争環境の激化やシステム開発の負担増加等に伴い収益性が低下する可能性があります。
このような状況をふまえ当社グループは、社内の組織体制をより一層強化すると共に、卓越したマーケティングとイノベーションを志向し、顧客の事業を強力にサポートするシステムの開発と導入支援に取り組んでまいります。
(2)印刷事業部門の原材料調達費の変動について
当社グループの印刷事業部門においては、原材料の調達の大部分について、製紙メーカーから直接原紙を購入し、安定的な原材料の確保と最適な価格の維持に努めています。しかし、原油価格の高騰や国際市場での需給逼迫により、需給バランスが崩れる懸念があります。そのような場合には、当社グループの顧客との間の価格交渉を通じて対応していく所存ですが、原材料調達が極めて困難になった場合や購入価格が著しく上昇した場合は、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)クラウドサービスの安定稼働について
当社では、会計事務所とその関与先企業、中堅・大企業、地方公共団体などのお客さまが安全かつ安心なICT環境でクラウドサービスを利用し、万一の事態でも業務を維持・継続させることができるようさまざまな対策に取り組んでいます。しかし、大規模な災害や予期せぬ障害の発生は必ずしもゼロではないため、以下の対策を講じることにより早期検知・復旧、お客さまの業務への影響を極小化することに努めます。
①プログラム提供時の検証体制の強化
②災害や障害発生時のBCP対策の強化
③復旧に要する時間の短縮
④第三者機関による各種対策の有効性の評価・検証
(4)エネルギー価格の変動について
当社が運営するデータセンターにおいては、多大な電力を使用するため、エネルギー価格の変動によるリスクを負っています。コスト低減のための省エネルギー対策などリスクの軽減を図っておりますが、電力代等のさらなる高騰が経営成績およびキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(5)退職給付債務について
当社グループの従業員退職給付債務および関連費用の計上は、割引率等数理計算上で設定される前提条件(基礎率)に基づいて行っています。これらの基礎率が変更となった場合は、結果として当社グループの財政状態および経営成績の変動要因となります。当社グループは、この影響を最小限にすべく退職金制度の一部を確定拠出年金制度へ移行するなどの施策を実施していますが、その影響を完全になくすことはできません。基礎率の変更は、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)固定資産価値の減少について
金融商品取引法に基づいて、平成18年9月期から「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しています。この固定資産の減損会計の適用は、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)情報セキュリティについて
当社グループにおいては、業務上、顧客(会計事務所および地方公共団体等)が保有する法人および個人の情報を大量に預託されているほか、さまざまな内部情報を保有しています。
当社では、こうした情報の管理を徹底するため、情報管理に関するポリシーや手続きを常に見直すとともに、役社員等に対する教育・研修等を行い、情報管理の重要性の周知徹底およびシステム上の情報セキュリティ対策等を実施しています。また、情報セキュリティマネジメントシステム認証「ISO/IEC27001」、個人情報保護マネジメントシステム「JIS Q 15001」(プライバシーマーク)などの第三者認証を全社で取得するほか、TKCインターネット・サービスセンターでは、ISMSやクラウド環境における個人情報保護認証「ISO/IEC27018」、クラウドサービスセキュリティ認証「ISC/IEC27017」などの第三者認証を受けるなど、さらなる情報保護管理体制の強化を図っています。しかしながら、予期せぬ事態により、これらの情報が流出する可能性は皆無ではなく、そのような事態が生じた場合、当社の社会的信用に影響を与え、その対応のための多額の費用負担やブランド価値の低下が、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)係争事件等について
現在、当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のある係争事件等はありませんが、今後そのような係争事件が発生する可能性は皆無ではありません。
(1)当社グループの当連結会計年度の経営成績の分析
① 全社業績
当連結会計年度(令和4年10月1日~令和5年9月30日(以下、当期))におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行され、政府による支援と経済・社会活動の正常化により緩やかな回復基調で推移しました。一方、世界的な金融引き締めや原材料価格の上昇、ゼロゼロ融資の返済に伴う中小企業の資金繰り悪化など、依然として先行きの不透明感も漂っています。
当社グループは、このような社会環境の変化や政府の取り組みに迅速に対応したシステムの開発やサービスの提供を継続し、顧客ならびに地域・社会に貢献すべく事業を展開してまいりました。
会計事務所事業部門では、顧客である税理士および公認会計士(以下、TKC会員)が、中小企業の伴走型の支援者として、関与先企業の会計・税務や資金繰り支援に取り組めるよう支援しています。また、クラウド型の会計システムの提供と導入支援を通じて、後述のとおり、中小企業の「黒字決算と適正申告」を支援しています。
地方公共団体事業部門では、地方税共通納税システムの対象税目拡大(地方税統一QRコードを活用した地方税の納付)に伴い顧客市区町村が円滑に対応するための支援を展開しました。
これらの活動の結果、当期における株式会社TKCとその連結子会社等6社を含む連結グループの経営成績は、売上高が71,915百万円(前期比6.0%増)、営業利益は14,338百万円(同7.4%増)、経常利益は14,772百万円(同8.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10,826百万円(同16.2%増)となりました。
当期における事業部門別の売上高の推移は以下のとおりです。
② 会計事務所事業部門の営業活動と経営成績
1)会計事務所事業部門の営業活動
会計事務所事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第1項:会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営)に基づき、TKC会員1万1,400名(令和5年9月末日現在)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で「黒字決算と適正申告」の実現にむけて事業を展開しています。
TKC全国会は、令和4年より向こう3年間の運動方針と目標を以下のとおり掲げています。
「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」
a)優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する -「TKC方式の自計化」の推進
b)租税正義の守護者となる -「TKC方式の書面添付」の推進
c)黒字化を支援し、優良企業を育成する -「巡回監査」と「経営助言」の推進
当社は、TKC全国会の運動とその目標達成を支援するために、TKC方式の自計化推進を軸とした営業活動を展開しています。
[「黒字決算」と「適正申告」の実現に向けた活動]
a.優良企業の育成に向けた取り組み
TKCグループでは、中小企業が目指すべき指標として以下の6つの条件を定めました。
・TKC方式の自計化による月次決算の実施
・税理士法第33条の2第1項に基づく書面添付の実践
・中小会計要領への準拠
・限界利益額の2期連続増加
・自己資本比率が30%以上
・税引前当期純利益がプラス
25万社超の決算書データを収録した令和5年版「TKC経営指標(BAST)」では、この条件を充足した企業を「BAST優良企業」と定義しています。TKC会員は、BAST優良企業の増加に向けて月次巡回監査の実施と月次決算体制の構築支援に取り組んでいます。当社はこうした活動を支援するとともに、「TKC会員は地域の優良企業を育成する伴走者である」ことを社会に広くアピールしています。
b.365日変動損益計算書の活用促進
TKCの自計化システム(FXシリーズ)には、月次決算を支援する機能や経営者の意思決定を支援する「365日変動損益計算書」を搭載しています。「365日変動損益計算書」は制度会計上の損益計算書と異なり、変動費と固定費に区分して業績を確認できるため、「FXシリーズ」を利用している企業経営者は、限界利益(売上高-変動費)を意識して経営に取り組めるようになります。当社では、この「365日変動損益計算書」を経営者にとって手放せないツールにしていただくための啓蒙活動を展開しています。
なお、経営者自身が「365日変動損益計算書」を活用し、月次決算の実施により会社を成長させた事例を紹介するドキュメンタリー番組(ドキュメント「戦略経営者」/BS11)をテレビ放映し、積極的に広報活動を展開しています。
c.TKC方式の自計化の推進(「FXシリーズ」の推進)
コロナ禍において実行された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済開始や、物価、燃料費の高騰などにより、いま中小企業は厳しい経営環境に置かれています。そのため当社は「FXシリーズ」に搭載している「経営戦略レベル」の機能(365日変動損益計算書、予算登録、部門別管理、資金繰り実績表、当期決算の先行き管理)の活用を支援しました。また、経営者がこれらの機能を有効に活用するには、適時・正確な会計取引の入力と月次決算体制の構築が必要となります。そのため、インターネットバンキングから取引明細を受信して仕訳に変換する「銀行信販データ受信機能」や、「戦略給与情報システム(PX2)」との給与仕訳の連携機能など「日常業務レベル」の活用も支援しています。
こうした活動の結果、令和5年9月末日現在でFXシリーズの利用企業数は約31万社を超えました。当社は「FXシリーズ」の導入を通じて中小企業の月次決算体制を構築し「黒字決算と適正申告」の実現を支援してまいります。
d.改正電子帳簿保存法への完全対応支援
令和4年1月1日から施行された改正電子帳簿保存法により、国税関係帳簿の電磁的記録である電子帳簿は、①過去の仕訳データの加除訂正履歴(トレーサビリティ)を残している「優良な電子帳簿」(改正電子帳簿保存法施行規則第2条および第5条の要件を満たす電子帳簿)と、②帳簿の加除訂正履歴を残さない会計ソフトで作成した「その他の電子帳簿」(改正電子帳簿保存法施行規則第2条の要件だけを満たす電子帳簿)に区別されることになりました。これは「帳簿の証拠力」の消滅にもつながる法改正であり、帳簿を改ざんできる会計ソフトの利用を国が認めたことになります。当社はこの問題に対処するため「優良な電子帳簿」を作成する「FXシリーズ」の利用促進を全国的に展開しています。また、改正電子帳簿保存法により電子取引データの電子保存の義務化への対応も求められています。引き続き全ての事業者が電子取引に対応できるよう「FXシリーズ」の証憑保存機能の活用も支援してまいります。
e.消費税インボイス制度への完全対応支援
TKCシステムは、消費税インボイス制度に対応した請求書の発行はもちろん、以下の「3つのポイント」にあるとおり改正消費税法に完全準拠した会計処理を遂行できます。
「3つのポイント」
・仕入先が適格請求書発行事業者かどうかを、取引先名から自動判定
(13桁の登録番号を入力する必要はありません)
・経過措置・特例の適用の可否を自動チェックし、修正すべき仕訳を一覧表示
(経過措置の適用となる仕訳や、誤って経過措置を適用した仕訳を確認できます)
・会計帳簿から消費税申告書まで一気通貫
(平成30年改正令附則22①一および23①一の原則的な取り扱いに完全対応)
これらのポイントを伝えるため、令和5年4月よりTKC会員事務所向けに「インボイス制度直前対策研修会」を開催しました。全国200会場にて5,000事務所超、1万7,000名を超える参加があり、TKC財務会計システムの消費税インボイス制度対応について理解を深める機会となりました。さらに令和5年6月には、TKCシステムのインボイス制度への対応を完了し、関与先企業の制度対応が混乱無く進むよう支援しています。
なお、令和4年8月19日に当社は日本におけるPeppol(ペポル)の管理局であるデジタル庁、およびペポルの管理団体である「Open Peppol」(本部:ベルギー)から、国内初のペポルサービスプロバイダーに認定されました。TKCの自計化システムは、ペポルに準拠したデジタルインボイスの発行と受取を標準的に行えるよう機能強化しています。
f.「TKCモニタリング情報サービス」の推進
「TKCモニタリング情報サービス」は、TKC会員事務所が毎月の巡回監査と月次決算を実施した上で作成した月次試算表、年度決算書、税務申告書などを、関与先企業の経営者からの依頼に基づいて金融機関に開示するための無償のクラウドサービスです。
当社は「TKCモニタリング情報サービス」で送付される以下の3帳表により、中小企業の決算書の信頼性が確認できることを、金融機関に訴求しています。
ⅰ)TKC会員が実践する「税理士法第33条の2に基づく添付書面」
ⅱ)会社法第432条が定める帳簿の適時性および決算書と申告書の連動性を株式会社TKCが過去3年にわたって証明する「記帳適時性証明書」
ⅲ)日本税理士会連合会、全国信用保証協会連合会が制定した「中小会計要領チェックリスト」
こうした活動の結果、「TKCモニタリング情報サービス」は令和5年9月末日現在、485金融機関に採用されており、その利用件数は33万件を突破しました。
「TKCモニタリング情報サービス」は、経営者保証ガイドラインで示された3つの要件(法人と個人の関係を区分・分離、財務基盤の強化、財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示による経営の透明性の確保)を確認できるツールとして、中小企業の経営支援に取り組む金融機関や信用保証協会から高く評価されています。中小企業を伴走型で支援する金融機関とTKC会員の架け橋となることが期待されています。
g.会員導入(TKC全国会への入会促進)
TKC全国会は、2022年から2024年までの3年間で新規に入会する会員事務所を1,000件超とする目標を掲げています。当社はその達成に向けて、TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会との連携を強化した取り組みを展開しています。併せて新たにTKC全国会に入会した事務所に「税理士事務所オフィス・マネジメント・システム(OMSクラウド)」をはじめとしたTKCシステムを有効に活用いただくためのサポート体制も強化しています。
[「適時・正確な記帳に基づく信頼性の高い決算書の作成を支援する」ための活動]
a.「中小会計要領」の普及支援活動
TKC全国会では、中小企業が準拠すべき会計基準として、平成24年2月に制定された「中小企業会計に関する基本要領」(以下、中小会計要領)を推奨しています。
中小会計要領は、ⅰ)自社の経営状況の把握に役立つ会計ⅱ)利害関係者(金融機関等)への情報提供に資する会計ⅲ)会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した会計ⅳ)中小企業に過重な負担を課さない会計――の考えに沿って制定されています。
当社は、その普及・活用に向けたTKC全国会の運動を支援するため、教材などの整備と他の中小企業支援団体との連携に継続して取り組んでいます。
b.「記帳適時性証明書」の発行
当社では、TKC会員が当社の会計システムを利用する際に当社データセンターに自動的に保存される処理履歴データと過去の時系列データを活用し、金融機関などが客観的にTKC会員事務所の業務水準を判定する資料となる「記帳適時性証明書」を無償で発行しています。このサービスは、TKC会員が作成する決算書と税務申告書の信頼性を高め、関与先企業の円滑な資金調達に貢献することを目的として開発されたものです。これは過去データの遡及的な加除・訂正を禁止している当社の「データセンター利用方式による財務会計処理」の特長を生かしたものであり、TKC会員が毎月、関与先企業に出向いて正しい会計記帳を指導(月次巡回監査)しながら、月次決算、確定決算ならびに電子申告に至るまでの全ての業務プロセスを一気通貫で適時に完了したことを当社が第三者として証明するものです。
[大企業市場への展開]
当社は、TKCシステムの活用により上場企業を中心とする大企業の税務・会計業務のコンプライアンス向上と合理化に貢献するとともに、これらの企業およびその関係会社をTKC会員の関与先企業とするための活動を積極的に展開しています。
a.デジタルインボイスへの対応
当社はデジタルインボイスに対応したシステムの普及に取り組んでいます。令和5年4月に開催されたG7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の「デジタル技術展」に、当社はデジタル庁と共にデジタルインボイス推進協議会(EIPA)の幹事法人として出展し、デジタルインボイス(ペポルインボイス)の送受信を可能とする「インボイス・マネジャー」を展示しました。
また、令和5年8月に当社はEIPAの代表幹事法人に就任し、システムベンダーを中心とした約200の協議会加盟会社とともに、デジタルインボイスの普及活動に取り組んでいます。令和5年9月に開催された「カイシャのミライ カレッジ2023」においては、当社がデジタルインボイス推進協議会の代表幹事法人として国税庁軽減税率・インボイス制度対応室とともにデジタルインボイスの詳細について講演しました。
なお、当社が発行する請求書(売上インボイス)は令和5年10月以降、原則ペポルインボイスに変更しました。これに先立ちTKCシステムを利用しているユーザー企業に対して、ペポルインボイスで請求書を発行する旨と具体的な利用手順などを案内し、準備を進めてきました。令和5年1月から「インボイス・マネジャー」によるペポルインボイスの送受信テストを開始しており、同年9月末にはユーザー企業約90社に請求書をペポルインボイスで送信しています。当社は、今後もデジタルインボイスの普及に積極的に取り組んでまいります。
b.大企業市場でのシェア拡大とTKC会員の関与先拡大支援
令和4年4月1日以後に開始する事業年度から連結納税制度が見直され、新たにグループ通算制度が開始されました。当社は「グループ通算申告システム(e―TAXグループ通算)」の利用による申告業務をフルにサポートしたことにより、グループ通算制度の開始初年度において、すべてのユーザー企業で電子申告を円滑に完了したことを確認しています。それによりユーザー企業から高い評価を得ることができました。
このような活動の結果、令和5年9月末日現在で約2万800社あるといわれる資本金1億円超の企業の約40%において「法人電子申告(ASP1000R)」「連結納税システム(eConsoliTax)」「グループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)」をご利用いただいています。
また「TKC連結グループソリューション」の利用企業グループ数は、令和5年9月末日現在で約5,450企業グループとなりました。現在、日本の上場企業における市場シェアは43%に達しており、日本の上場企業の売上高トップ100社のうち93社(93%)が当社のシステムを利用しています。今後もさらなるシステムの普及・拡大を図ります。
[法律情報データベースの市場拡大]
a.「TKCローライブラリー」の利用拡大
当社がリーガルリサーチのスタンダードサービスとして提供する「TKCローライブラリー」は、基本サービスの判例・法令・文献等と法律専門誌等や法律専門書籍、および関連する付加情報を収録しており、業界最大となる判例収録数(33万7,000件超)を誇る日本最大級の法律情報データベースです。当社はこれらのコンテンツをセットにした「法律事務所向け」「企業法務部門向け」パックサービスの普及活動を展開しています。さらに、令和4年11月から顧客にお勧めする収録記事等の最新情報をメールマガジンで定期配信し、直接当サービスへアクセスできる仕組みを構築しました。こうした活動の結果、資料室や図書館などを利用した紙ベースのリサーチから、オンラインリサーチへの移行が進んでおり、当パックサービスの採用数が増加しています。TKCローライブラリーは、法令・判例・文献情報、主要法律専門誌および専門書籍を閲覧できる総合的な法律関連情報を網羅した唯一のリーガルリサーチサービスとして評価され、順調に契約数を伸ばしています。
当期においては、TKC会員事務所をはじめ大学・法科大学院、官公庁、法律事務所、特許事務所、企業法務部、海外の研究機関および大学などへの提案活動を実施した結果、令和5年9月末日現在で2万6,000超の諸機関で5万9,000IDが利用されています。
b.アカデミック市場における展開
多くの大学・法科大学院は、オンラインによる教材やリサーチができる学習環境のDXを推進しています。当社が提供する「TKC教育研究支援システム」「TKCローライブラリー」は、いつでもどこでもオンラインで利用できること、他社をしのぐ多様なコンテンツを収録していること、さらにレポート提出、オンライン演習、テスト機能等を搭載し、授業と自学自習を支援する仕組みとなっていることなどから、2023年度の契約では、140を超える大学で採用され、教員、学生からも高く評価されています。その結果、授業および学習を支えるオンラインシステム基盤として大学の学習環境整備に貢献しています。
c.司法試験受験生の学習支援
司法試験受験を目指す法科大学院生、修了生、予備試験合格者に対し、司法試験問題演習システムによる学習環境の提供とTKC全国統一模試の実施により、司法試験への対応を支援しています。本年の司法試験出願者4,165名に対し、TKC全国統一模試の受験者は2,598名(62.4%)となり、過去最高を更新しました。それにより6年連続で同業他社の5倍を超える受験実績となり、業界1位のスタンダード模試となっています。今後、受験者数を伸ばすためにも法務省が発表した令和8年のCBT試験移行に向けて答案入力・デジタル添削などに順次対応する準備を進めています。
2)会計事務所事業部門の経営成績の分析
会計事務所事業部門における売上高は48,749百万円(前期比4.9%増)、営業利益は11,139百万円(同1.3%減)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
a.コンピューター・サービス売上高は、前期比3.5%増となりました。これは、中堅企業においてDX(Digital Transformation)への取り組みが加速する中で、中堅企業向け「統合型会計情報システム(FX4クラウド)」の導入が進んでいること、および会計事務所向けの「税理士事務所オフィス・マネジメント・システム(OMSクラウド)」と自宅や外出先からリモートで業務を遂行できる「OMSモバイル」の採用が進み、データセンターにおけるデータ保管量が増加したことによります。
b.ソフトウエア売上高は、前期比5.3%増となりました。これは、消費税インボイス制度や改正電子帳簿保存法に対応するために、適格請求書発行事業者のチェック機能や証憑保存機能の充実した、「FXクラウドシリーズ」を新規に利用開始する関与先企業が増加したことによります。
c.コンサルティング・サービス売上高は、前期比5.5%増となりました。これは「FX4クラウド」の販売が堅調に推移し、立ち上げ支援サービスの実施件数が増加したことによります。
d.ハードウエア売上高は、前期比2.5%増となりました。これは、中小企業庁の「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」において、ハードウエアの購入費用も補助の対象となったこと、および令和5年12月末で改正電子帳簿保存法の電子取引データに関する宥恕措置終了に伴い、パソコンやスキャナーの新規購入が増加したこと、さらにIT機器の販売単価が上昇したことなどによります。
e.サプライ用品売上高は、前期比0.4%減となりました。これはリモート業務やデジタル化を支援する事務機器の販売、ならびに消費税インボイス制度や改正電子帳簿保存法に関連する書籍の販売が好調だったものの、デジタル化の進展に伴い印刷関連消耗品の需要が減少したことなどによります。
f.なお、営業利益が前期と比較して減少したのは、令和5年7月以降、消費税インボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応を支援するために、セミナー開催や各種ツール類提供を積極的に実施し、販売促進費用が増加したことなどによります。
③ 地方公共団体事業部門の営業活動と経営成績
1)地方公共団体事業部門の営業活動
地方公共団体事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第2項:「地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営」)に基づき、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。
当社は、地方公共団体に対して「TKC行政クラウドサービス」を提供しています。これは「TASKクラウドサービス」「TASKアウトソーシングサービス」の2つで構成されるクラウドサービスです。「TASKクラウドサービス」は、住民基本台帳や税務情報などを管理する「基幹系関連サービス」、財務会計(公会計)や給与計算などの「内部情報系関連サービス」、行政手続きのオンライン申請などの「行政サービス・デジタル化支援サービス」で構成しており、令和5年9月末日現在で1,140団体を超える地方公共団体(都道府県、市区町村等)に採用いただいています。
a.基幹系関連サービスの開発・提供
当社が提供する「TASKクラウドサービス」は、当社データセンターを運用拠点とした単一バージョンのパッケージシステムでありながら、複数団体による共同利用を前提に設計しています。また、サービス利用料金はサブスクリプション方式を採用しており、この利用料金の範囲内で年1回の定期バージョンアップを実施しています。「TASKアウトソーシングサービス」は、納税通知書や選挙入場券などの大量一括印刷処理を支援するサービスです。当期は新型コロナワクチン追加接種(令和5年度春、秋開始接種)に係る接種券等の印刷業務を迅速に行い、市区町村のワクチン接種事業を積極的に支援しました。こうした点が評価され、「基幹系関連サービス」は令和5年9月末日現在で約170団体に採用されています。
b.行政サービス(各種手続き)のデジタル化・オンライン化の支援
当社は、窓口業務のデジタル化「3ない窓口(行かない・待たない・書かない)」の実現を支援する「行政サービス・デジタル化支援サービス」を提供しています。当期は「TASKクラウドスマート申請システム」「TASKクラウドかんたん窓口システム」「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」の大幅な機能強化を行いました。その結果、令和5年9月末日現在、「TASKクラウドスマート申請システム」は大阪市や横浜市など政令指定都市を含む50団体以上に、「TASKクラウドかんたん窓口システム」は100団体以上に、「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」は160団体以上に採用されています。
c.地方税税務手続きのデジタル化の支援
地方税共同機構の認定委託先事業者として、同機構が運営するeLTAX(地方税ポータルシステム)審査システムなどの標準システムをクラウド方式で提供するとともに、当社独自の機能として各市区町村の税務システムとの「データ連携サービス」を開発・提供しています。
本サービスの推進にあたっては、アライアンス契約を締結した約50社のパートナー企業と共に提案活動を展開しています。その結果、「TASKクラウド地方税電子申告支援サービス」は、令和5年9月末日現在で全都道府県・市区町村の4割以上に当たる約790団体に採用されています。
当期においては、令和5年4月から開始された地方税共通納税システムの対象税目拡大に伴うシステム導入支援作業に取り組みました。
d.地方公会計制度に完全準拠した財務会計システムの開発・提供
当社では、総務省が策定した統一的な基準に基づく財務書類作成機能と「日々仕訳方式」に対応した「TASKクラウド公会計システム」と、その関連システムとして「TASKクラウド固定資産管理システム」「TASKクラウド連結財務書類作成システム」を提供しています。
当期においては、財政状況の見える化による持続可能な財政運営および電子決裁や電子請求書連携などによる内部事務のDX推進を支援する機能を拡充した次世代版公会計システムを提案した結果「TASKクラウド公会計システム」は令和5年9月末日現在で320団体以上に採用されています。
また、令和5年10月からの消費税インボイス制度の開始に伴い、会計事務所事業部門とノウハウを共有し、システムへの機能実装および市区町村等への移行支援等を実施しました。今後はお客さまのさらなる業務効率化に向けてデジタルインボイスへの対応に取り組みます。
e.次世代製品の研究・開発
令和4年10月に「地方公共団体情報システム標準化基本方針」が閣議決定され、市区町村は、令和7年度末までに基幹業務システム(20業務)をガバメントクラウド上に構築された標準化基準を満たすアプリケーション(標準仕様準拠システム)に移行することが求められています。
当社では、地方公共団体を取り巻く環境変化に対応するため、市区町村向けの「自治体DX推進セミナー」を開催し、地方公共団体情報システム標準化に関する最新情報の収集・発信などを通じて顧客サポートの強化に努めています。
また、当社が協力開発事業者(アプリケーション開発事業者)として参画するガバメントクラウド先行事業において、令和4年10月31日に埼玉県美里町の基幹業務システムが稼働を開始しました。続いて川島町も12月に稼働を開始しています。これは全国初のガバメントクラウド上での稼働事例であり、当社は先行事業で得た知見を生かし、国が定めた目標期限(令和8年3月末)までに全てのお客さまの標準仕様準拠システムへの移行とガバメントクラウドでの稼働完遂を目指しています。
2)地方公共団体事業部門の経営成績の分析
地方公共団体事業部門における売上高は20,357百万円(前期比11.7%増)、営業利益は3,059百万円(同59.2%増)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
a.コンピューター・サービス売上高は、前期比7.2%増となりました。これは、前期までに受託した新たな顧客のシステム本稼働に伴いデータセンター利用料が増加したこと、新型コロナワクチン追加接種(令和5年度春、秋開始接種)に係る接種券等の印刷業務を継続して受託したことなどによります。
b.ソフトウエア売上高は、前期比5.8%増となりました。これは、地方税共通納税システムの対象税目拡大や、前期までに受託した新たな顧客のシステム本稼働に伴うソフトウエア利用料の増加などによります。なお、当社のソフトウエアの利用料は、団体規模に応じた定額のサブスクリプション方式の料金を採用していることから、顧客数の拡大に伴って順調に推移しています。
c.コンサルティング・サービス売上高は、前期比146.0%増となりました。これは、住民基本台帳法の一部改正により開始した「転出・転入手続きのワンストップ化」や地方税共通納税システムの対象税目拡大(地方税統一QRコードを活用した地方税の納付)、新たに受託したデジタル・ガバメント関連サービス等のシステム導入支援などによります。
d.ハードウエア売上高は、前期比5.4%増となりました。これは総務省が主導する自治体情報セキュリティ対策への対応に伴い、市町村におけるネットワーク機器の導入が集中したことによります。
e.なお、営業利益が前期と比較して増加したのは、現在開発中の標準仕様準拠システムなどを資産計上したことなどによります。
④ 印刷事業部門の営業活動と経営成績
1)印刷事業部門の営業活動
当社グループの印刷事業を担う株式会社TLP(以下、TLP)では、DPS事業、ビジネスフォーム印刷事業および商業美術印刷事業を基軸に事業を展開しています。
DPS事業では、当社の「TASKアウトソーシングサービス」の顧客市区町村ならびに印刷事業部門の顧客市区町村の新型コロナワクチン接種券、価格高騰緊急支援給付金関連通知業務等を受注し、それらの行政サービスを支援しました。一方、民間企業に対しては、ダイレクトメール(以下、DM)の作成および総務、経理、人事部門の主に通知関連業務の合理化を目的としたアウトソーシング(BPO)の提案を継続しています。特に、DM作成においては、DMに印字したQRコードによりDMの効果を測定するサービスなど、顧客利用価値の向上に取り組んでいます。
ビジネスフォーム印刷分野では、ペーパーレス化の進展により、ビジネス帳票・伝票類の使用量が減少傾向にあるものの、手書き伝票を用いるケースも根強くあり、これまでに培われたフォーム印刷の技術が評価され、受注に至っています。
商業美術印刷分野(カタログ、書籍等)では、顧客企業の周年行事における印刷業務、法律改正による専門書籍の改版など、顧客企業が求める時期・内容を充足しタイムリーに製品を提供するなどの支援を継続しています。また、対面によるセミナー等の開催が増加し、配付資料作成の要請も増加しています。かつ、これらの資料作成では、デザインの作成から印刷までを一貫して受注する事例も増えています。
また、TLPは、令和4年10月3日付けでFSC®森林認証(CoC認証・FSC-C182216)を取得しました。環境配慮を志向するお客さまが増えていることを背景に、FSC認証紙の取り扱いは順調に増加しています。また、クリアファイルに代わる環境配慮製品として、紙製ファイルの製造・販売を開始しています。これら環境配慮製品の開発・製造への取り組みにより、環境配慮を志向するお客さまのニーズに対応しています。
なお、TLPは、独占禁止法に基づき公正取引委員会によるTLPに対する排除措置命令の対象となった入札談合により、既に徴収済の違約金によってもなお補填されない損害が残存しているとして、日本年金機構から令和5年10月3日付けで損害賠償請求訴訟を提起され、現在係争中です。
2)印刷事業部門の経営成績の分析
印刷事業部門における売上高は2,808百万円(前期比10.7%減)、営業利益は127百万円(同11.8%減)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
a.データ・プリント・サービス(以下、DPS)関連商品の売上高は、前期比12.2%減となりました。これは、令和3年10月の衆議院議員選挙入場券の印刷業務および前期受注した国税庁による「確定申告のお知らせはがき」などの大口の入札案件が当期はなかったことによります。
b.ビジネスフォーム関連の売上高は、前期比8.6%増となりました。これは、前期において新規獲得した顧客企業からの伝票印刷業務の受注が増加したことによります。
c.商業美術印刷(カタログ、書籍等)関連の売上高は、前期比9.8%増となりました。これは、消費税インボイス制度を解説する書籍や顧客企業の周年記念事業における印刷業務を受注したこと、およびセミナー等の対面開催の増加により配布資料作成の受注が増加したことによります。
d.なお、営業利益が前期と比較して減少したのは、利益率が高いDPS関連商品の売上高が減少したことに加え、地方税納付書へのQRコード付加に伴い外注加工費が増加したことなどによります。
⑤ 全社に関わる重要な事項
1)ガバメントクラウド先行事業において全国初の稼働開始
当社が協力開発事業者(アプリケーション開発事業者)として参画するガバメントクラウド先行事業において、令和4年10月31日に埼玉県美里町の基幹業務システムが稼働を開始しました。続けて川島町も同年12月に稼働を開始しています。これは全国初のガバメントクラウド上での稼働事例であり、当社は先行事業で得た知見を生かし、国が定めた目標期限(令和7年度末)までに全てのお客さまの標準仕様準拠システムへの移行とガバメントクラウドでの稼働完遂を目指します。
2)ペポルインボイス(デジタルインボイス)の送受信開始
当社のクラウド型システム「インボイス・マネジャー」のユーザー企業90社超において、国際標準仕様である「Peppol(ペポル)」をベースにしたペポルインボイス(デジタルインボイス)の送受信実験が実施されました。今後当社は、令和5年10月のインボイス制度の運用開始に伴い、自社の請求業務にペポルインボイスを活用し、蓄積したノウハウをユーザー企業に提供することにより、請求業務のデジタル化と経理業務の省力化を支援する予定です。
3)消費税インボイス制度や改正電子帳簿保存法に対応した「FXシリーズ」の利用が31万社を突破
令和5年6月に、「FXクラウドシリーズ」は消費税インボイス制度および改正電子帳簿保存法への対応を完了しました。会計機能に加えて販売管理機能を併せ持つ「FXクラウドシリーズ」は、サブスクリプション方式の利用料を採用しており、各種法制度改正に新たな費用を追加することなく対応することが可能です。こうした点が評価され「FXシリーズ」の利用企業数は令和5年9月に31万社を突破しました。
4)AIチャットサービスの利用開始
Azure OpenAI Serviceの大規模言語モデルをベースにTKCが開発したAIチャットサービス「TKC AI Assistant」の社内利用を開始しました。当社では、システム開発の業務のみならず、社内事務や営業の現場などでも「TKC AI Assistant」を積極的に活用し、社員の業務効率化・生産性向上を目指しています。
5)総額5%の賃上げを実施
当社は労働分配率(売上高から必要原価を差し引いた限界利益に対する人件費の割合)を50%に目標設定しています。それにより会社の業績に比例して1人あたりの人件費を毎年高めることができています。近年、資源高騰の影響による電力代や物価の上昇が続いていることから、令和5年4月より総額5%の賃金のベースアップを実施しました。
6)TKCカスタマーサポートサービス株式会社(TCSS)がHDI「三つ星」を2年連続で獲得
当社が100%出資するコールセンターサービス専門子会社のTCSSは、その電話応対についてHDI-Japanによる格付けベンチマーク「クオリティ格付け」の最高評価の「三つ星」を令和5年3月8日に獲得しました。これにより、TCSSは令和4年に引き続き、2年連続で最高評価を獲得しました。
⑥当社グループの当連結会計年度の財政状態の分析
1)資産の部について
当連結会計年度末における資産合計は、116,356百万円となり、前連結会計年度末109,225百万円と比較して7,130百万円増加しました。
a.流動資産
当連結会計年度末における流動資産は、43,173百万円となり、前連結会計年度末40,715百万円と比較して、2,458百万円増加しました。
その主な理由は、現金及び預金が2,173百万円増加したことによります。
b.固定資産
当連結会計年度末における固定資産は、73,182百万円となり、前連結会計年度末68,510百万円と比較して、4,672百万円増加しました。
その主な理由は、繰延税金資産が649百万円減少したものの、投資有価証券が3,302百万円、ソフトウエア仮勘定が1,246百万円、長期預金が1,000百万円増加したことによります。
2)負債の部について
当連結会計年度末における負債合計は、21,047百万円となり、前連結会計年度末21,899百万円と比較して851百万円減少しました。
a.流動負債
当連結会計年度末における流動負債は、16,797百万円となり、前連結会計年度末17,679百万円と比較して、881百万円減少しました。
その主な理由は、未払法人税等が729百万円減少したことによります。
b.固定負債
当連結会計年度末における固定負債は、4,249百万円となり、前連結会計年度末4,219百万円と比較して、29百万円増加しました。
その主な理由は、リース債務が90百万円減少したものの、退職給付に係る負債が150百万円増加したことによります。
3)純資産の部について
当連結会計年度末における純資産合計は、95,308百万円となり、前連結会計年度末87,325百万円と比較して7,982百万円増加しました。
その主な理由は、利益剰余金が6,146百万円、その他有価証券評価差額金が2,209百万円増加したことによります。
なお、当連結会計年度末における自己資本比率は、81.9%となり、前連結会計年度末80.0%と比較して2.0ポイント増加しました。
⑦当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末における現金および現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ2,173百万円増加し、28,793百万円になりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの概況とその主な理由は次のとおりです。
1)営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、13,067百万円増加(前連結会計年度比16百万円収入増)しました。これは、税金等調整前当期純利益15,135百万円、減価償却費3,533百万円の計上、法人税等の支払い5,424百万円などによるものです。
2)投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、5,861百万円減少(前連結会計年度比1,518百万円支出増)しました。これは、定期預金の預入4,300百万円の支出、定期預金の払戻3,300百万円の収入、有形固定資産の取得1,671百万円の支出および無形固定資産の取得3,119百万円の支出などによるものです。
3)財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、5,571百万円減少(前連結会計年度比357百万円支出増)しました。これは、自己株式の取得による支出1,090百万円、令和4年9月期期末配当(1株当たり配当42円)ならびに令和5年9月期中間配当(1株当たり配当39円)4,260百万円の支出などによるものです。
なお、当企業集団のキャッシュ・フロー指標のトレンドは、下記のとおりです。
|
|
令和2年9月期 |
令和3年9月期 |
令和4年9月期 |
令和5年9月期 |
|
自己資本比率(%) |
78.9 |
80.7 |
80.0 |
81.9 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
183.2 |
179.2 |
164.6 |
163.1 |
|
債務償還年数(年) |
0.1 |
0.1 |
0.1 |
0.1 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
6,492.7 |
27,055.7 |
8,627.1 |
11,323.4 |
自己資本比率 :自己資本 ÷ 総資産 ×100
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額 ÷ 総資産 ×100
債務償還年数 :有利子負債 ÷ 営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー ÷ 利払い
(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
(2) 生産、受注及び販売の実績
①生産実績
特に記載すべき事項はありません。
②受注実績
特に記載すべき事項はありません。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
会計事務所事業 |
48,749 |
104.9 |
|
地方公共団体事業 |
20,357 |
111.7 |
|
印刷事業 |
2,808 |
89.3 |
|
合計 |
71,915 |
106.0 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び仮定を用いている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り等については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なる場合があります。
当社グループの重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、使用される当社の見積り等が、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を及ぼすと考えられるものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
「3 事業等のリスク」をご参照ください。
③当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、経営体質の強化を図りながら持続的に企業価値を向上するにあたり、事業活動に必要な資金は、自己資金を中心とすることを基本方針としております。この方針のもと事業活動の維持に必要な手元資金を保有し、充分な流動性を確保していると考えております。
また、情報通信技術(ICT)が急速に進歩するとともに、社会の諸制度が大きく変化していく中で当社のお客さまのビジネスを成功に導きながら、市場環境の変化に迅速に対応し競争優位を実現するために、先行的な研究開発投資と積極的な設備投資を実施しております。
④当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、継続企業(ゴーイング・コンサーン)の前提の下に、毎事業年度の配当原資を当該期間利益に求めることを原則としています。この考え方に基づき、重要な経営指標として以下のものを設定するとともに管理しています。
1)連結数値に基づく経営指標
a.対前年度売上高比率:3%以上
b.自己資本利益率:8%以上
2)個別数値に基づく経営指標
a.自己資本比率:80%超
b.売上高経常利益率:8%以上
c.総合限界利益率:60%以上
※限界利益とは、売上高から売上高に比例して変動する費用(変動費)を控除した金額であり、製品ミックスにより変動します。総合限界利益率とは、この限界利益の額が売上高に占める割合を言います。
このような状況のなか、当期の連結対前年度売上高比率は6.0%(前期比3.6ポイント増)、連結自己資本利益率は11.9%(前期比1.0ポイント増)となりました。
また、個別自己資本比率は85.0%(前期比1.7ポイント増)、個別売上高経常利益率は20.8%(前期比0.1ポイント減)、個別総合限界利益率は78.7%(前期比0.2ポイント減)となりました。
引き続き高い水準を維持するために、収益構造および資本効率の改善に取り組んで参ります。
該当事項はありません。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費はありません。
なお、当連結会計年度において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。