第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)全社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

 ① 経営方針・経営戦略

当社は「自利利他(自利トハ利他ヲイフ)」を社是とし、経営理念に「顧客への貢献」を掲げ、創業時に会社定款第2条に定めた次の二つの事業目的を達成するために経営を展開しています。

1)会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営

2)地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営

今日、当社の定款には上記以外の事業目的も追加していますが、これらの事業目的はこの創業来の事業目的を補完するものであり、経営の基本方針は変わっておりません。

 ② 経営環境

わが国経済は、原材料やエネルギー価格の高騰の影響はあったものの、株価の上昇や消費拡大によって活発化し、緩やかながらも景気回復の動きが続きました。

こうした状況の中、当社グループは、相次ぐ社会環境の変化や政府の取り組みに迅速に対応したシステムの開発やサービスの提供を継続し、顧客ならびに地域・社会に貢献すべく事業を展開してまいりました。

当社グループが提供する製品およびサービスには、法令等の改正とICTの進化が大きな影響を与えます。法令等の改正としては、令和5年10月より開始された消費税インボイス制度や、改正電子帳簿保存法による電子取引データの電子保存の義務化、定額減税制度、その他にも国・地方のデジタル改革の推進や自治体情報システムの標準化・共通化などがありました。また、ICTの進化としては、クラウドコンピューティング、OSSの普及、生成AIなどの技術革新があげられます。

当社は、こうした事業環境の変化をいち早く捉え、当社グループの提供する製品およびサービスへと展開することで変化の先頭に立ち、顧客に貢献することが重要であると考えています。

 ③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

1)「顧客への貢献」に向けたイノベーションの創発

当社の顧客である会計事務所や地方公共団体を取り巻く事業環境は大きく変化しています。また、生産年齢人口の減少に対応するために、デジタル化の推進による生産性向上や業務効率化が欠かせません。当社は最新のICTを取り入れ、法令に完全準拠しながら、より付加価値の高いシステムを提供することにより、顧客の業務を支援します。そのため今後もシステム開発体制をより強化します。

2)「安全・安心・便利」なデータセンターの運営

当社は会計事務所や中小企業、上場企業、地方公共団体、金融機関、大学、法律事務所など80万件を超えるお客さまに対して、自社が雇用する社員が運用するデータセンターによるクラウドサービスを提供しています。50年以上にわたり培ったノウハウを結集したデータセンターで、お客さまの大切なデータを保管し、事業活動を支援しております。堅牢でセキュアなデータセンターの運営とBCP対策の実施、情報セキュリティの確保に努めることにより、お客さまが “安全・安心・便利”にクラウドサービスを利用できる環境を整備します。

3)持続的な成長と中長期における企業価値の向上を確かなものにする取り組み

当社は創業以来、会社にとって最大の財産は従業員と位置づけ人材育成や待遇面の向上、働きやすい職場環境の整備等に努めてきました。今後も持続的な成長を確かなものとするために、人的資本経営及び資本コストや株価を意識した経営に取り組み、企業価値をより高めてまいります。

 

(2)会計事務所事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

 ① 経営方針・経営戦略

 会計事務所事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第1項:「会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営」)に基づき、当社のお客さまである税理士および公認会計士(1万1,400名)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で事業を展開しています。

 TKC全国会では、2022年から2024年までの3年間にわたる運動方針を次のとおり掲げています。

「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」

1)優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する   「TKC方式による自計化」の推進

2)租税正義の守護者となる             「TKC方式の書面添付」の推進

3)黒字化を支援し、優良企業を育成する 「巡回監査」と「経営助言」の推進

 当社では、TKC全国会が掲げる運動方針に基づき、2024年戦略目標の達成に向けた活動を実施しています。

また、TKC全国会の「中堅・大企業支援研究会」や「海外展開支援研究会」とも綿密な連携を図り、上場企業を中心とする大企業市場向けに税務・会計システム等の提供を通じて、TKC会員の関与先拡大を支援しています。

 ② 経営環境

国税庁が令和6年11月に発表した「法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和5年度における全法人の黒字申告割合は36.0%でした。前年度に比べて0.2ポイント悪化しており、依然として法人の約64%が赤字となっています。さらに、原材料費や人件費、燃料費等の高騰により、多くの中小企業は先を見通せない状況下で、必要利益をいかに確保するかが大きな課題となっています。

そうした中でTKC会員事務所は、「黒字決算と適正申告」の実現に向けて月次巡回監査と月次決算、経営助言を実施し、「会計で会社を強くする」活動を展開してまいりました。また、借入金返済のための必要利益や必要売上高を算出し、経営計画の策定も支援しています。こうした活動の結果、TKC会員の関与先企業の約57.2%が黒字決算を実現しており、いまTKC会員事務所の指導力の高さに全国の中小企業や金融機関から大きな期待が寄せられています。

 ③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 会計事務所事業部門は、圧倒的なスピード感をもって顧客に有益な情報を提供するとともに、最新のクラウド技術の活用と法令に完全準拠したシステムの開発・提供によって、顧客の業務生産性と付加価値向上を支援します。また、TKC全国会との連携により「会計で会社を強くする」活動と「黒字決算と適正申告の実現」に取り組んでまいります。

 次期における当部門の主要な商品・市場戦略は、以下のとおりです。

1)FXクラウドシリーズの推進による「黒字決算と適正申告」の実現

2)「ペポルインボイス」の普及・促進による経理業務の省力化と月次決算の早期化支援

3)「TKCモニタリング情報サービス」の普及促進による金融機関との連携強化

4)TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会との連携による会員導入活動の強化

5)「TKC連結グループソリューション」の強化・拡充による大企業の税務・会計業務の合理化

6)「TKCローライブラリー」の利用拡大とアカデミック市場におけるDX推進

7)顧客へ提供するシステムの「品質」向上とその「サポート」強化

 

(3)地方公共団体事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

 ① 経営方針・経営戦略

地方公共団体事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第2項:「地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営」)に基づき、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。

また、中長期の事業ビジョンとして「TKCシステムの最適な活用を通して、行政効率の向上・住民サービスの充実・行政コストの削減を実現し、地域の存続と発展に貢献する」との方針を掲げ、その実現に向けた戦略を実行しています。

 ② 経営環境

地方公共団体(特に市区町村)における情報化は、いま大きな転換点を迎えています。地域社会における少子高齢化・人口減少に伴う労働力不足を背景に、これまでの半数の職員数でも持続可能な形で行政サービスを提供する「スマート自治体(デジタル社会)」への転換が、市区町村にとって重要な経営課題となっています。特に、行政のデジタル化の遅れが社会的課題として顕在化したことで、その動きは一段と加速しています。政府はデジタル社会の実現のためには住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割が極めて重要であるとして『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』(総務省/令和6年4月24日改定)により、全ての自治体が足並みを揃えて取り組んでいくことを求めました。

さらには、国・地方の財政状況が厳しさを増す中で、これからも市区町村が行政サービスを安定的、持続的、効率的かつ効果的に提供していくために〈持続可能な行政経営〉の確立が期待されています。そのため、市区町村では財務書類等の適切な更新・開示を行うとともに、正確な財政状況の見える化を図り、財務書類等から得られた情報を事業評価やトップの意思決定に積極的に活用することが急務となっています。

一方、地方公共団体向けビジネス・ベンダーの市場動向に目を向けると、行政サービスのデジタル化分野において他業種や新興企業の市場参入が相次いでいます。このことから地方公共団体市場における企業間競争は一段と激化し、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるシステム・サプライヤーだけが生き残っていく厳しい時代を迎えたといえます。

 ③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

地方公共団体事業部門は、令和8年3月末日までに、国が定める標準仕様に準拠する「標準準拠システム」への移行作業を対象となる全顧客団体において完遂する計画を策定しています。そのため、この間にシステム改修費や導入作業費などの一時的な売り上げが集中し、第59期~第60期の2年間は、システム標準化対応により業績が大幅に押し上げられる見通しです。

また、地方公共団体は、デジタル技術を徹底的に活用した業務改革による「効率的な行政運営」と「住民生活の利便性向上」が求められており、システム標準化移行後はこの流れがより一層加速するものと予想しています。当社では、こうした変化をチャンスとして捉え、最新技術を活用したイノベーションの創発を通じて新たな顧客価値の創造とサポート体制の充実を図り、システム標準化の移行完了後もさらなる成長につなげてまいります。

 

(4)印刷事業部門(子会社:株式会社TLP)の経営方針、経営環境、及び対処すべき課題等

 ① 経営方針・経営戦略

印刷事業部門では、「デジタル技術」と「ニーズの変化に対応した製品・サービスの提供」により、顧客企業やそのお客さまのコミュニケーションとマーケティングに貢献することを経営方針として掲げています。新型コロナウイルスの感染拡大は情報化社会における急速なデジタル化推進の流れをもたらしました。社会環境の変化やお客さまの価値観の変化に対応し、自社の生産技術を生かした製品・サービスの開発、品質改善、付加価値の向上に取り組みます。さらにお客さまの良きパートナーとして、デジタル技術と印刷物を使ったコミュニケーション環境の整備を通じて企業価値の一層の向上に努めます。

 ② 経営環境

行政のデジタル化や規制改革、令和6年10月1日からの郵便料金改定、マイナンバーカードの普及、教育のデジタル化、消費税インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正など、印刷事業を取り巻く環境は変化しています。主力商品のデータ・プリント・サービス(DPS)とビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)においては、こうした「新しい生活様式」や「新しいビジネス様式」に対応した製品・サービスの提供が求められています。

また、温暖化が急速に進む中で、CO2削減や環境配慮を志向するお客さまが増加しています。「グローバルな諸課題の解決を目指すために掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)」をはじめ環境に優しい製品の開発は、印刷業界においても避けては通れない重要課題だと考えています。

 ③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 印刷事業部門においては、DPS業務やBPO業務に経営資源を集中し、顧客の課題を解決するコミュニケーション実現に向けた新製品・サービスの開発に取り組みます。併せて製品・サービスのさらなる品質と付加価値の向上に努め、販路を拡大します。

 また、地方公共団体情報システム標準化を事業拡大の機会と捉え、これに対応した生産設備の充実と生産体制の強化を図ります。

なお、令和4年10月3日付で取得したFSC森林認証(CoC認証)の制度を生かし、お客さまの「グローバルな諸課題の解決を目指すために掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)」への対応を支援します(FSC-C182216)。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

① サステナビリティ方針

当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から、サステナビリティ方針を作成しています。

 

―サステナビリティ方針―

 

 TKCグループは、TKCの創業の理念にもとづき一貫して「顧客への貢献」に取り組み、地域社会に貢献するとともに、持続可能な社会の実現を目指して公共的使命と社会的責任を果たします。

 

1.「顧客への貢献」を実現する商品の開発とサービスの提供 (Contribution)

お客さまの事業の成功条件を探求し、これを強化するシステムを開発し、その導入支援に全力を尽くします。お客さまへの貢献は私たちの喜びです。

 

2.コンプライアンスの実践 (Compliance)

創業以来「ルールによる経営」を標榜し、TKCグループの役員、社員等に法令及びその他の社会的規範への順守を求めるとともに、ステークホルダー(顧客、株主、取引先等)からの期待に応えられるよう努めています。

 

3.情報セキュリティの確保 (Information security)

会計事務所とその関与先企業、地方公共団体等を対象として、常に最新のICTを最適に活用して、各種情報サービスを提供しています。このため、情報セキュリティの確保を事業活動の重要課題であると認識するとともに、社会的責務であると考えています。

 

4.公正かつ自由な競争の維持・促進 (Fair Trade)

サプライチェーンに存在するさまざまな社会的課題の解決に向けて、責任ある調達を推進します。また公正かつ自由な競争の下、適正な取引を実施することで取引先との信頼関係を強化します。なお、市民社会の秩序や安全を脅かす反社会的勢力や団体には毅然とした態度で対応します。

 

5.地球環境の保護(Environment)と自然災害対策 (BCP)

環境保全活動は企業の社会的責任であり、持続可能な社会の実現に不可欠であることから、2007年に掲げた「環境基本方針」に基づき積極的に推進していきます。

また、様々な自然災害の発生時においてもクラウドサービスの提供を継続するために、日本データセンター協会が制定した「データファシリティスタンダード」に基づくティア3以上に対応し堅牢でセキュアなデータセンターの運営とBCP対策を実施しています。

 

6.人権の尊重 (Social)

人権に関するさまざまな国際規範を理解し、基本的人権や個性、プライバシー、多様な価値観を尊重すると共に、安全で快適な職場環境を整備し従業員満足度の向上に努めます。また、人権、宗教、性別、国籍、心身障害、年齢、性的嗜好に関する差別的言動、暴力、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント等の人権を侵害する行為を行いません。

なお、人権を侵害する行為が判明した場合には、適切な処置を講じます。また、取引先等においても、人権の尊重、環境保全、法令順守等に配慮した活動を求めます。

 

7.コーポレート・ガバナンスの強化 (Governance)

上記に掲げる各行動を実現するため、実行あるガバナンス体制を維持し、強化します。

 

令和3年12月17日制定

令和5年3月14日改訂

 

② ガバナンス

当社グループは、代表取締役専務を委員長とし、業務改善委員会(取締役が推進すべきコンプライアンス経営及び業務効率の改善等を補佐する機関)の委員長等をメンバーとしたリスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会では、サステナビリティに関連するリスクを含む各種リスクを識別・評価し、優先的に対応すべきリスクの絞り込みを行い、当該リスクに関する取り組みの進捗をモニタリングしています。審議内容は、定期的に取締役会へ報告され、取締役会において当該報告の内容を管理・監督しています。

③ リスク管理

リスク管理委員会で識別し、評価した各種リスクについて、業務改善委員会等で具体的な対応を検討し、対処しています。リスク管理委員会では、業務改善委員会等での取り組み状況を継続的にモニタリングしています。

<ガバナンス・リスク管理の体制図>

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(2)気候変動

当社グループでは、環境基本方針を定め、継続的に環境保全活動に取り組むとともに、上記(1)②ガバナンス、③リスク管理を通じて、気候変動リスクの識別、評価、管理を行っています。

この結果、現時点において、気候変動によるリスクや収益機会が当社グループの事業活動に重大な影響を与えると評価していません。このため、具体的な「戦略」及び「指標と目標」を定めていません。

当社では、国際的な取り組みである地球温暖化防止のため、データセンターにおいては、消費電力の削減に配慮した設備投資を行い、温室効果ガス排出の削減に努めています。事業所においては、社員の省エネ・節電の意識を高めるとともに、具体的な行動を示すため、ポスターを作成し、執務室、会議室、トイレ等に掲示しています。

また、システムマニュアルの電子化やプログラムのオンライン配布等により、顧客に提供する紙資源やプラスチックの削減に努めています。

具体的な取り組み内容や温室効果ガス排出量の削減実績は当社のホームページをご覧ください(https://www.tkc.jp/sustainability/e1)。

(3)人的資本・多様性

当社では、人的資本・多様性に関する「戦略」及び「指標と目標」に関し具体的に取り組んでいるものの、全てのグループ会社での取り組みとはなっていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の「戦略」及び「指標と目標」は、提出会社のものを記載しております。

① 戦略

1)人材育成方針

当社は、創業以来、「自利利他」を社是とし、「顧客への貢献」を経営理念として、経営を展開しています。お客様の事業の成功を支援するため、当社としても社員の学習意欲を支援することを継続し、人材を育成しています。また、「顧客への貢献」を様々な観点から実現できる人材を採用することで、多様性確保に努めています。主な取り組みは以下のとおりです。

<基礎的・専門的な知識習得を支援する取り組み>

当社は、専門知識を持つお客様が多い一方で、多様な背景を持つ社員が入社します。このため、基礎的な知識から専門的な知識習得のための機会を長期かつ充実した内容で用意しています。新入社員、入社5年目などの入社歴を対象とする基礎的な研修とともに、職種ごとに設けられた社内資格制度、公的資格取得の報奨金制度など、専門的な知識の習得を支援する制度を設けています。

<役割別スキルの習得を支援する取り組み>

会社が任命した役割に満足することなく、継続したスキル向上を促進するため、「新任マネジャ」など役割を対象とする研修等を継続して実施しています。また、部下を持つ社員を対象にした勉強会を定期開催し、「評価」や「組織開発」に関するスキル向上の機会を設けています。

<人財を育成するための取り組み>

社員各人が掲げる目標達成を支援するため、1on1や各種面談の機会を設けることを重視しています。話し合いの量と質の向上のため、全社員を対象にした面談スキル等の向上を目指したカリキュラムを実施しています。また、当カリキュラムの浸透と継続を目的として、全社員を対象にしたWebによる勉強会を定期開催しています。当勉強会は、職種、勤務地、勤続年数などを横断した社内人脈構築の機会にもなっています。また、社員個人が購入する書籍代金を当社が支援する個人図書購入支援制度や読書命令制度を設け、自己学習の基本となる読書を奨励しています。

2)社内環境整備方針

当社は、就業規則の前文において、顧客サービス(顧客満足度)の水準、市場におけるシェア、社員の待遇の3点において世界第一級を目指すことを掲げています。これらの実現にあたっては、社員一人ひとりが心身共に健康であり、高い使命感のもと、専門性を発揮し続けることが重要だと捉え、社内環境を整備しています。

主な取り組みは以下のとおりです。

<健康上の課題発見と解決を支援するための取り組み>

定期健康診断(再検査を含む)、ストレスチェックの受診促進に取り組んでいます。定期健康診断の検査項目、受診対象者は、労働安全衛生法に定める基準よりも手厚いものとしています。また、健康管理システムを導入するとともに、全ての事業所に産業医を置くことで、社員に対する保健指導等を含む健康管理体制を強化しています。

<健康保持と増進に向けた取り組み>

社員の喫煙率低下、 健康保険組合の活用(セミナー、運動施設利用)、 職場環境の改善に向けたアンケート調査などに取り組んでいます。

<女性活躍推進に関する取り組み>

女性社員の職域拡大、育児・介護等に関する両立支援制度の整備、企業内保育園の設置等を行うことよって、女性が活躍できる環境整備に取り組んでいます。

② 指標と目標

当社では、上記において記載した、人材育成方針、社内環境整備方針について、次の指標を用いています。当該指標に関する目標(令和10年9月期)及び当期の実績は、次のとおりであります。指標及び目標は、提出会社のものを記載しています。

指標

目標

実績

(当事業年度)

人材育成方針

社員(入社4年目以降)の「日商簿記検定2級」
取得率
 (注)1

100

81.7

開発職社員(入社4年目以降)の「基本情報技術者試験」
取得率
 (注)2

100

58.5

役割別スキル研修会の参加率

80

91.0

責任者向け勉強会の参加率

80

89.0

社内環境整備方針

定期健康診断の受診率

100

100

ストレスチェック回答割合

100

98.8

健康経営優良法人の認定

認定

(継続)

認定

(注)1.日商簿記検定2級・1級、税理士試験(簿記論、財務諸表論)、税理士、公認会計士の資格を持つ社員数(複数の資格を保有の場合は1名でカウント)から計算しています。

2.基本情報技術者試験、応用情報技術者試験の資格を持つ社員数(複数の資格を保有の場合は1名でカウント)から計算しています。

3【事業等のリスク】

当社および当社グループの事業等に関連するリスクについては、有価証券報告書に記載した「事業の状況」および「経理の状況」等に関連して、投資者の皆さまにご承知いただくべきと思われる主な事項を以下に記載します。また、その他のリスク要因についても、投資者の皆さまのご判断上、重要と思われる事項について、積極的な情報開示を行うこととしています。

当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスク発生の事前防止および発生した場合の迅速な対応に努める所存ですが、当社株式に関する投資判断は、本項に加えて本報告書全体の記載も参考にされ、十分に検討した上で行われる必要性があると考えています。また、以下の記載は、当社株式への投資に関連するリスク要因を全て網羅しているものではありませんので、この点にもご留意ください。

なお、本項において将来にわたる事項は、当連結会計年度末(令和6年9月30日)現在において当社グループが判断したものです。

(1)事業環境の変化について

会計事務所向け事業部門においては、少子高齢化の影響に伴う会計事務所の後継者不足や会計事務所職員の採用難、また厳しい経営環境下での関与先企業の廃業や倒産などにより市場が縮小する可能性があります。

また地方公共団体向け事業部門においては、政府が進めるシステム標準化と並行して、法制度改正に伴うシステム改修等に対応する必要があり、突発的な法制度改正が続く場合には開発リソース不足に陥る可能性があります。

このような状況をふまえ当社グループは、社内の組織体制をより一層強化するとともに、卓越したマーケティングとイノベーションを志向し、顧客の事業を強力にサポートするシステム開発と導入支援に取り組んでまいります。

(2)印刷事業部門の原材料調達費の変動について

当社グループの印刷事業部門においては、原材料の調達の大部分について、製紙メーカーから直接原紙を購入し、安定的な原材料の確保と最適な価格の維持に努めています。しかし、原油価格の高騰や国際市場での需給逼迫により、需給バランスが崩れる懸念があります。そのような場合には、当社グループの顧客との間の価格交渉を通じて対応していく所存ですが、原材料調達が極めて困難になった場合や購入価格が著しく上昇した場合は、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)クラウドサービスの安定稼働について

当社では、会計事務所とその関与先企業、中堅・大企業、地方公共団体などのお客さまが安全かつ安心なICT環境でクラウドサービスを利用し、万一の事態でも業務を維持・継続させることができるようさまざまな対策に取り組んでいます。しかし、大規模な災害や予期せぬ障害の発生は必ずしもゼロではないため、以下の対策を講じることにより早期検知・復旧、お客さまの業務への影響を極小化することに努めます。

①プログラム提供時の検証体制の強化

②災害や障害発生時のBCP対策の強化

③復旧に要する時間の短縮

④第三者機関による各種対策の有効性の評価・検証

(4)エネルギー価格の変動について

当社が運営するデータセンターにおいては、多大な電力を使用するため、エネルギー価格の変動によるリスクを負っています。コスト低減のための省エネルギー対策などリスクの軽減を図っておりますが、電力代等のさらなる高騰が経営成績およびキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

(5)退職給付債務について

当社グループの従業員退職給付債務および関連費用の計上は、割引率等数理計算上で設定される前提条件(基礎率)に基づいて行っています。これらの基礎率が変更となった場合は、結果として当社グループの財政状態および経営成績の変動要因となります。当社グループは、この影響を最小限にすべく退職金制度の一部を確定拠出年金制度へ移行するなどの施策を実施していますが、その影響を完全になくすことはできません。基礎率の変更は、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)固定資産価値の減少について

金融商品取引法に基づいて、平成18年9月期から「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しています。この固定資産の減損会計の適用は、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(7)情報セキュリティについて

当社グループにおいては、業務上、顧客(会計事務所および地方公共団体等)が保有する法人および個人の情報を大量に預託されているほか、さまざまな内部情報を保有しています。

当社では、こうした情報の管理を徹底するため、情報管理に関するポリシーや手続きを常に見直すとともに、役社員等に対する教育・研修等の実施、システム上の情報セキュリティ対策、第三者認証等による情報保護管理体制の強化を図っています。

しかしながら、予期せぬ事態により、これらの情報が流出する可能性は皆無ではなく、そのような事態が生じた場合、当社の社会的信用に影響を与え、その対応のための多額の費用負担やブランド価値の低下が、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)係争事件等について

現在、当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のある係争事件等はありませんが、今後そのような係争事件が発生する可能性は皆無ではありません。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)当社グループの当連結会計年度の経営成績の分析

 ① 全社業績

当連結会計年度(令和5年10月1日~令和6年9月30日(以下、当期))におけるわが国経済は、原材料やエネルギー価格の高騰の影響はあったものの、株価の上昇や消費拡大によって活発化し、緩やかながらも景気回復の動きが続きました。

一方で、当社グループの顧客においては、度重なる法律・制度の改正により、その実務対応が何度も必要となりました。当社グループはその都度、法律・制度の改正に迅速に対応したシステムと研修サービスを提供し、顧客ならびに地域社会に貢献すべく事業を展開しました。

会計事務所事業部門では、消費税インボイス制度下で初めてとなる決算・申告、改正電子帳簿保存法に基づく電子取引の保存義務化への対応、そして本年6月からはじまった定額減税制度への対応など、顧客である税理士および公認会計士(以下、TKC会員)を支援しました。

地方公共団体事業部門では、令和5年9月8日に閣議決定された「地方公共団体情報システム標準化基本方針」に従い、標準仕様書への適合期限(令和8年3月末)までに、円滑にシステムを移行できるようシステム開発および移行支援に取り組んでおります。

これらの活動の結果、当期における株式会社TKCとその連結子会社等6社を含む連結グループの経営成績は、売上高が75,219百万円(前期比4.6%増)、営業利益は15,505百万円(同8.1%増)、経常利益は16,035百万円(同8.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,274百万円(同4.1%増)となりました。

なお、営業利益や経常利益が前期と比較して8%を超えて増加しているにもかかわらず、親会社株主に帰属する当期純利益が4.1%の増加にとどまった理由は、前期において非連結子会社(TKC金融保証株式会社)の吸収合併に伴う「抱合せ株式消滅差益」(特別利益)として365百万円を計上したことによります。

当期における事業部門別の売上高の推移は以下のとおりです。

 

 ② 会計事務所事業部門の営業活動と経営成績

1)会計事務所事業部門の営業活動

会計事務所事業部門では、会計事務所とその関与先企業である中小企業の持続的な発展を支援するため、TKC全国会と密接に連携し、製品やサービスの開発・提供に取り組んでいます。

また上場会社などの大企業や法律事務所、大学・法科大学院等にも各種クラウドサービスを提供しています。

[「黒字決算」と「適正申告」の実現に向けた活動]

a.TKC方式の自計化の推進(「FXシリーズ」の推進)

中小企業は、コロナ禍において実行された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済開始、インフレや円安などにより、厳しい経営環境に置かれています。そのため当社は、企業向け財務会計システム「FXシリーズ」に搭載している「経営戦略レベル」の機能(365日変動損益計算書、予算登録、部門別管理、資金繰り実績表、得意先順位月報、当期決算の先行き管理)の活用を通して経営者が戦略的な意思決定を迅速に実施できるよう支援しました。また、経営者がこれらの機能を有効に活用するには、適時・正確な会計取引の入力と月次決算体制の構築が必要となります。そのため、インターネットバンキングから取引明細を受信して仕訳に変換する「銀行信販データ受信機能」や、給与計算システム「PXシリーズ」との給与仕訳の連携機能など「日常業務レベル」の機能の活用も支援しています。特に、定額減税制度対応ではシステム対応はもとより、研修・マニュアルも迅速に提供し、17万社以上の関与先企業の給与計算事務を支援しました。

FXシリーズは消費税インボイス制度に完全対応しており、適正な消費税申告が可能です。特に、a)経過措置や特例の適用可否を自動チェックする機能を搭載、b)免税事業者との取引に関する経過措置により消費税額とみなされる額の自動転記が可能、c)青色申告決算書、消費税申告書、勘定科目内訳明細書への適格請求書発行事業者番号の自動転記が可能――の3点により、会計帳簿から消費税申告まで一気通貫で業務を完遂でき、会計事務所業務の生産性の向上と適正申告につながると高く評価されています。

こうした評価の結果、令和6年9月末日現在でFXシリーズの利用企業数は32万5,000社となりました。当社は「FXシリーズ」の導入を通じて中小企業の月次決算体制を構築し、「黒字決算と適正申告」の実現を支援していきます。

b.適時・正確な記帳に基づく信頼性の高い決算書の作成支援

当社が提供する財務会計システムの最大の特長は、TKC会員事務所が関与先企業に毎月実施する巡回監査と月次決算を前提とし、巡回監査実施後の取引データにおいて、遡及的な訂正・加除処理を禁止しているところにあります。この特長を生かし、金融機関などが客観的に会計帳簿の信頼性を判断する資料となる「記帳適時性証明書」を無償で発行しています。

このサービスは、TKC会員が作成する決算書と税務申告書の信頼性を高め、関与先企業の円滑な資金調達に貢献することを目的として開発されたものです。TKC会員が毎月、関与先企業に出向いて正しい会計記帳を指導(月次巡回監査)しながら、月次決算、確定決算ならびに電子申告に至るまでの全ての業務プロセスを一気通貫で適時に完了したことを当社が第三者として証明しています。コンプライアンス違反倒産が増加している昨今、「記帳適時性証明書」は「帳簿の証拠力」を証明できる資料であり、その重要性は今後ますます増していくと考えています。

c.「TKCモニタリング情報サービス」の推進

「TKCモニタリング情報サービス」は、関与先企業の経営者からの依頼にもとづいて、TKC会員事務所が毎月の巡回監査と月次決算を実施した上で作成した月次試算表、年度決算書、税務申告書などを、金融機関に開示するための無償のクラウドサービスです。

当社は「TKCモニタリング情報サービス」で送付される以下の3帳表により、中小企業の決算書の信頼性が確認できることを、金融機関に訴求しています。

・TKC会員が実践する「税理士法第33条の2に基づく添付書面」

・会社法第432条が定める帳簿の適時性および決算書と申告書の連動性を株式会社TKCが過去3年にわたって証明する「記帳適時性証明書」

・日本税理士会連合会、全国信用保証協会連合会が制定した「中小会計要領チェックリスト」

こうした活動の結果、「TKCモニタリング情報サービス」は令和6年9月末日現在、493金融機関に採用されており、その利用件数は34万件を突破しました。

「TKCモニタリング情報サービス」は、経営者保証ガイドラインで示された3つの要件(法人と個人の関係を区分・分離、財務基盤の強化、財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示による経営の透明性の確保)を確認できるツールとして、中小企業の経営支援に取り組む金融機関や信用保証協会から高く評価されています。

d.TKC全国会との連携による優良企業の育成

会計事務所事業部門は、TKC会員1万1,400名(令和6年9月末日現在)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で「黒字決算と適正申告」の実現に向けて事業を展開しています。

TKC全国会は、令和4年より向こう3年間の運動方針を以下のとおり掲げています。

「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう」

・優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する  -「TKC方式の自計化」の推進

・租税正義の守護者となる       -「TKC方式の書面添付」の推進

・黒字化を支援し、優良企業を育成する -「巡回監査」と「経営助言」の推進

当社は、TKC全国会の運動とその目標達成を支援するために、TKC方式の自計化推進を軸とした営業活動を展開しています。

なお、TKC全国会は、25万社超の決算書データを収録した「TKC経営指標(BAST)」を発行しており、以下の条件を充足した企業を「BAST優良企業」と定義しています。

・TKC方式の自計化による月次決算の実施

・税理士法第33条の2第1項に基づく書面添付の実践

・中小会計要領(含む、企業会計基準および中小会計指針)への準拠

・限界利益額の2期連続増加

・自己資本比率が30%以上

・税引前当期純利益がプラス

当社は、TKC会員による優良企業の育成を支援しています。

e.会員導入(TKC全国会への入会促進)

TKC全国会は、令和4年から令和6年までの3年間で新規に入会する会員事務所を1,000件超とする目標を掲げて取り組んだ結果、本年9月末にこの目標を達成しました。これはTKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会と連携した取り組みを強化したこと、また新たにTKC全国会に入会した事務所にTKCシステムを有効に活用いただくためのサポート体制も強化した成果と捉えています。

[大企業市場への展開]

 当社は、TKCシステムの活用により上場企業を中心とする大企業の税務・会計業務のコンプライアンス向上と合理化に貢献するとともに、これらの企業およびその関係会社をTKC会員の関与先企業とするための活動を積極的に展開しています。

a.デジタル・インボイスへの対応

令和5年8月に当社はデジタルインボイス推進協議会(EIPA)の代表幹事法人に就任し、システムベンダーを中心とした約180の協議会加盟会社とともに、デジタル・インボイスの普及活動に取り組みました。令和6年7月には北陸税理士会主催の「税理士業務のデジタルフォーラム」にEIPAとして出展し、当社の「インボイス・マネジャー」によるデジタル・インボイス送受信のシステムデモを実施しました。さらに7月に開催された「カイシャのミライカレッジ2024Nagoya」(ポートメッセなごや)では、国税庁デジタル化・業務改革室とともにEIPAとしてデジタル・インボイスの講演を担当しました。

こうした活動の結果「インボイス・マネジャー」は令和6年9月末日現在、中堅・大企業約1,000社に導入されています。当社は今後もデジタル・インボイスの普及に取り組んでいきます。

b.新リース会計基準対応に関する情報発信

令和6年9月13日に企業会計基準委員会より、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等が公表され、上場企業には令和9年4月から強制適用されることになりました。これにより原則全てのリースについて資産と負債を貸借対照表に計上することとなり、関連契約を洗い出して資産価値を評価する必要があることから、実務上大きな工数を要すると考えられています。当社は積極的に新リース会計基準対応に関する情報を発信しており、8月から9月に配信した「新リース会計基準における不動産賃貸借取引」セミナーは、上場企業をはじめとする経理担当者2,800名が視聴しました。当社は今後も新リース会計基準対応に関する有益な情報発信に努めます。

c.大企業市場でのシェア拡大とTKC会員の関与先拡大支援

当社が提供する「グループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)」の市場からの評価は高く、多くのグループ通算制度採用企業にご利用いただいています。令和6年9月末日現在で約2万900社あるといわれる資本金1億円超の企業の約40%において「法人電子申告システム(ASP1000R)」「グループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)」をご利用いただいています。

また「TKC連結グループソリューション」の利用企業グループ数は、令和6年9月末日現在で約5,670企業グループとなりました。現在、日本の上場企業における市場シェアは43%に達しており、日本の上場企業の売上高トップ100社のうち93社(93%)が当社のシステムを利用しています。

[法律情報データベースの市場拡大]

 当社は、会計事務所をはじめ法曹界、アカデミック市場、企業法務部門などに広く法律情報サービスを提供しています。

a.「TKCローライブラリー」の収録数やコンテンツの拡充

当社は、業界最大の判例収録数(34万6,000件超)を誇る法律情報データベース「TKCローライブラリー」を提供しています。判例情報(LEX/DB)を中心に、法令、文献情報、法律専門誌、法律専門書籍、および関連する付加情報を網羅するとともに、常時ライブラリーのコンテンツの拡充を図っています。こうした活動の結果、資料室や図書館などを利用した紙ベースのリサーチから、オンラインリサーチへの移行が進んでおり、順調に当社サービスの採用数が増加しています。

当期においては、TKC会員事務所をはじめ大学や法科大学院、官公庁、法律事務所、特許事務所、企業法務部、海外の研究機関などでの利用が進み、令和6年9月末日現在で約2万7,000の諸機関で7万IDが利用されています。

b.アカデミック市場への展開

多くの大学・法科大学院は、オンラインで教材利用やリサーチができる学習環境のDXを推進しています。当社が提供する「TKC法科大学院教育研究支援システム」は、いつでもどこでもオンラインで利用できること、他社をしのぐ多様なコンテンツを収録していること、さらにレポート提出・オンライン演習・テスト機能等を搭載し、授業と自学自習を支援する仕組みとなっていることが特長です。令和6年度の契約では160を超える大学で採用され、教員、学生からも高く評価されています。

また、司法試験受験を目指す法科大学院生や修了生、予備試験合格者に対し、TKC全国統一模試の実施により、司法試験への対応も支援しています。令和6年TKC全国統一模試の受験者数は2,500名を超え、令和6年司法試験受験予定者約4,000名の6割超を占めています。同業他社の5倍を超える業界1位の実績を誇り、司法試験のスタンダード模試として広く認知されています。今後、法務省が令和8年から実施を予定しているCBT試験移行に向けコンピューターテスト環境整備などの対応を進め、さらなる受験者数の拡大を目指します。

2)会計事務所事業部門の経営成績の分析

会計事務所事業部門における売上高は50,467百万円(前期比3.5%増)、営業利益は11,289百万円(同1.4%増)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。

a.コンピューター・サービス売上高は、前期比4.6%増となりました。これは、関与先企業において経理事務のDX(Digital Transformation)が進行する中で、「FXクラウドシリーズ」の導入が進んでいること、および会計事務所向けの「税理士事務所オフィス・マネジメントシステム(OMSクラウド)」と自宅や外出先からリモートで業務を遂行できる「OMSコネクト」の採用が進み、クラウドサービスの利用量が増加したことによります。

b.ソフトウエア売上高は、前期比4.0%増となりました。これは、消費税インボイス制度や改正電子帳簿保存法、さらに、定額減税制度にいち早く対応した「FXクラウドシリーズ」を新規に利用開始する関与先企業が増加したことによります。

c.コンサルティング・サービス売上高は、前期比2.6%増となりました。これは中堅企業向けの財務会計システム「FX4クラウド」の新規受注に伴う立ち上げ支援サービスの実施件数が増加したことによります。

d.ハードウエア売上高は、前期比6.6%増となりました。これは、中小企業庁の「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」において、ハードウエアの購入費用も補助の対象となっているため、ハードウエアの受注が堅調だったこと、およびIT機器の販売単価が上昇していることなどによります。

e.サプライ用品売上高は、前期比3.1%減となりました。これはデジタル複合機をはじめとする事務機器などの収益認識基準における代理人取引が増加した一方で、デジタル化の進展による会計用品販売等が減少したことによります。

f.なお、営業利益が前期と比較して増加したのは、利益率の高いコンピューター・サービス売上高やソフトウエア売上高が順調に伸びていることによります。

 

 ③ 地方公共団体事業部門の営業活動と経営成績

地方公共団体事業部門は、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。当社が地方公共団体に対して提供する「TKC行政クラウドサービス」は、令和6年9月末日現在で1,140団体を超える地方公共団体(都道府県、市区町村等)に採用されています。

1)地方公共団体事業部門の営業活動

a.地方公共団体情報システム標準化への対応

令和5年9月8日に閣議決定された「地方公共団体情報システム標準化基本方針」に基づき、地方公共団体は令和8年3月末までに、標準化基準に適合する基幹業務システムを利用することが義務付けられるとともに、同システムをガバメントクラウド環境で利用することが努力義務とされています。

当社が現在提供している基幹業務システム「TASKクラウドサービス」は、当社データセンターを運用拠点とした単一バージョンのパッケージシステムでありながら、複数団体による共同利用を前提に設計しています。サービス利用料金はサブスクリプション方式を採用しており、この利用料金の範囲内で年1回の定期バージョンアップを実施しています。さらに「TASKアウトソーシングサービス」の提供により、納税通知書や選挙入場券などの大量一括印刷処理を一体的に支援しています。こうした点が評価され、当社の「基幹系関連サービス」は令和6年9月末日現在で約170団体に採用されています。

当期においては、基幹業務システムの標準化を支援するため「標準準拠システム」の開発を進めるとともに、「標準準拠システム」および「ガバメントクラウド」への期限内移行の完遂に向けた顧客団体への各種支援活動を実施しています。

b.行政手続きのデジタル化・オンライン化支援

当社は、窓口業務のデジタル化「3ない窓口(行かない・待たない・書かない)」の実現を支援する「行政サービス・デジタル化支援ソリューション」を開発・提供しています。

当期においては「TASKクラウドスマート申請システム」「TASKクラウドかんたん窓口システム」の機能強化を行うとともに、今後のマイナンバーカードの利用拡大を見据えて「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」の全面リニューアルに取り組みました。

その結果、令和6年9月末日現在、「TASKクラウドスマート申請システム」は大阪市や横浜市など政令指定都市を含む60団体以上に、「TASKクラウドかんたん窓口システム」は120団体以上に、「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」は180団体以上に採用されています。

c.地方税務手続きのデジタル化支援

当社は、地方税共同機構の認定委託先事業者として、同機構が運営するeLTAX(地方税ポータルシステム)審査システムなどの標準システムをクラウド方式で提供するとともに、当社独自の機能として各市区町村の税務システムとの「データ連携サービス」を開発・提供しています。

本サービスの推進にあたっては、アライアンス契約を締結した約50社のパートナー企業とともに提案活動を展開しています。その結果、「TASKクラウド地方税電子申告支援サービス」は、令和6年9月末日現在で全都道府県・市区町村の4割以上に当たる約790団体に採用されています。

なお、国はeLTAX等を利用して地方税務手続きの「デジタル完結」を目指しており、当社はその実現に貢献すべく市区町村および関係機関を支援していきます。

d.内部事務のデジタル化支援

当社は、地方公会計一体型の財務会計システム「TASKクラウド公会計システム」およびその関連システムを開発・提供しています。

当期において、実施計画から予算編成、決算、行政評価まで“一気通貫”で支援する「持続可能な行政経営」を支援する各種機能および電子決裁システムの大幅な機能強化を行いました。その結果、「TASKクラウド公会計システム」は令和6年9月末日現在で約360団体に採用されています。現在、「TASKクラウド文書管理システム」の開発を進めており、「TASKクラウド公会計システム」と一体的にご利用いただくことで、内部事務のデジタル化および業務効率化が期待できます。

2)地方公共団体事業部門の経営成績の分析

地方公共団体事業部門における売上高は21,754百万円(前期比6.9%増)、営業利益は4,110百万円(同34.4%増)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。

a.コンピューター・サービス売上高は、前期比0.2%減となりました。これは、前期に受託した新型コロナワクチン追加接種に係る接種券の印刷業務が当期はなかったことによります。一方、地方税共通納税システムの対象税目拡大や新規顧客のシステム本稼働に伴うサービス利用料は、順調に増加しています。

b.ソフトウエア売上高は、前期比28.8%増となりました。これは、標準準拠システムへの移行に伴うシステム改修業務をはじめ、低所得世帯への給付金制度や子育て世帯の経済負担軽減策、定額減税、児童手当制度改正、マイナンバーカードにおける氏名のローマ字表記対応など各種法改正に伴う一時的なシステム改修業務が大幅に増加したことによります。

c.コンサルティング・サービス売上高は、前期比34.4%減となりました。これは、前期に受託した住民基本台帳法の一部改正により開始された「転出・転入手続きのワンストップ化」や地方税共通納税システムの対象税目拡大などの導入支援業務が当期はなかったことによります。

d.ハードウエア売上高は、前期比6.1%増となりました。これは、当期においてハードウエアやネットワーク機器の更改を迎える顧客団体が増加したことによります。

e.なお、営業利益が前期と比較して増加したのは、利益率の高いシステム改修業務の大幅な増加によります。

 

 ④ 印刷事業部門の営業活動と経営成績

1)印刷事業部門の営業活動

当社グループの印刷事業を担う株式会社TLPでは、当社会計事務所事業部門の統合情報センターで使用する

TKCコンピュータ用連続帳表やTKCコンピュータ会計事務用品の製造、当社地方公共団体事業部門のアウトソーシングサービスにおける各種税帳表等の印刷・印字をはじめ、当社顧客に提供する印刷物を製造しています。また、一般企業および官公庁、市区町村等に対しては、DPSやビジネスフォーム印刷および商業美術印刷を基軸に事業を展開しています。

DPS分野では、DMの作成および総務、経理、人事部門の通知関連業務の合理化を目的としたアウトソーシング(BPO)を提供しています。特に、QRコードの活用によりDMの効果を測定するサービスなど、顧客利用価値の向上に取り組んでいます。

ビジネスフォーム印刷分野では、ペーパーレス化の進展により、ビジネス帳表・伝票類の使用量が減少傾向にあるものの、手書き帳表や特定帳表の需要は顕在であり、フォーム印刷の強みを生かした営業活動を展開しています。

商業美術印刷分野(カタログ、書籍等)では、顧客企業の周年行事における印刷物や、法律改正による専門書籍の改版など顧客企業が求める出版物をタイムリーに提供するなどの支援をしています。またコロナ禍後、対面によるセミナーやイベント開催が増加しており、配付資料作成の需要も増えています。デザインの作成から印刷までを一貫して請け負うことにより付加価値を高め、新規取引先の拡大につなげています。

また、環境配慮を志向するお客さまが増えていることを背景に、FSC®認証紙の取り扱いは、前期比45.5%増となり順調に増加しています(令和4年10月3日付でFSC森林認証(CoC認証・FSC-C182216)を取得)。クリアファイルに代わる環境配慮製品として、新たに紙製ファイルの製造・販売を開始しており、環境配慮を志向するお客さまのニーズに対応しています。

2)印刷事業部門の経営成績の分析

印刷事業部門における売上高は2,997百万円(前期比6.7%増)、営業利益は101百万円(同21.0%減)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。

a.データ・プリント・サービス(以下、DPS)関連商品の売上高は、前期比10.3%増となりました。これは、一般企業からのダイレクトメールや健康保険の資格情報などの通知物の製造・発送業務の受注が増加したことによります。

b.ビジネスフォーム関連の売上高は、前期比1.0%増となりました。これは、顧客企業におけるデジタル化の進行により伝票印刷業務の受注が減少傾向ではあるものの、ノーカーボン紙を利用した複写式手書き伝票の需要が根強く残っていることによります。

c.商業美術印刷(カタログ、書籍等)関連の売上高は、前期比27.2%減となりました。これは、前期において受注した消費税インボイス制度を解説する書籍や顧客企業の周年記念事業における印刷業務が当期はなかったことによります。

d.なお、営業利益が前期と比較し減少したのは、個人情報を取り扱う印刷事業部門において、サイバー攻撃の脅威が増大することに備え、セキュリティ体制を刷新するための費用負担が増加したことによります。

 

 ⑤ 全社に関わる重要な事項

1)TKCのペポルアクセスポイントのユーザー数が5,600件を突破

デジタル庁よりPeppol(ペポル)サービスプロバイダーの認定を受けている当社のペポルアクセスポイントのユーザー数が令和6年9月末日現在、5,600件を突破しました。ペポルインボイスのユーザー数、送受信実績ともに順調に増加しています。

2)「デジタル・インボイスからの詳細な仕訳生成」の特許を取得

令和6年6月26日、当社は「デジタル・インボイスからの詳細な仕訳生成」に関する特許を取得しました(特許第7511098号)。本特許技術は、部門別業績管理などの目的に沿って、受け取ったデジタル・インボイスの明細単位で仕訳を生成できるものです。本特許技術に関して、その実施権を一定の条件下で無償開放し、デジタル・インボイスの普及と活用に貢献します。

3)OBMの「ビジネスマッチング契約」を締結する金融機関が21行に拡大

「海外ビジネスモニター(OBMonitor、以下「OBM」)」についてのビジネスマッチング契約を締結する金融機関が21行に拡大しました。OBMは、海外に進出している日系企業(海外子会社)の財務状況を日本の親会社が「見える化」できるクラウドサービスです。当社はOBMの提供を通じて中堅・中小企業の海外展開を支援しています。令和6年9月末日現在、累計1,630社(世界38カ国)に利用いただいています。

4)TKCカスタマーサポートサービス株式会社(TCSS)がHDI「三つ星」を3年連続で獲得

当社が100%出資するコールセンターサービス専門子会社のTCSSは、その電話応対についてHDI-Japanによる格付けベンチマーク「クオリティ格付け」の最高評価の「三つ星」を令和5年10月18日に獲得しました。これにより、TCSSは3年連続で最高評価を獲得しました。

 

 ⑥ 当社グループの当連結会計年度の財政状態の分析

1)資産の部について

 当連結会計年度末における資産合計は、124,882百万円となり、前連結会計年度末116,356百万円と比較して8,525百万円増加しました。

a.流動資産

当連結会計年度末における流動資産は、46,672百万円となり、前連結会計年度末43,173百万円と比較して、3,498百万円増加しました。
その主な理由は、現金及び預金が1,604百万円、売掛金が1,339百万円増加したことによります。

b.固定資産

当連結会計年度末における固定資産は、78,209百万円となり、前連結会計年度末73,182百万円と比較して、5,026百万円増加しました。
その主な理由は、ソフトウェア仮勘定が2,198百万円、投資その他の資産のその他に含まれる長期前払費用が1,477百万円、長期預金が1,500百万円増加したことによります。

2)負債の部について

 当連結会計年度末における負債合計は、22,705百万円となり、前連結会計年度末21,047百万円と比較して1,657百万円増加しました。

a.流動負債

当連結会計年度末における流動負債は、19,347百万円となり、前連結会計年度末16,797百万円と比較して、2,549百万円増加しました。
その主な理由は、賞与引当金1,427百万円、未払法人税等が755百万円増加したことによります。

b.固定負債

当連結会計年度末における固定負債は、3,357百万円となり、前連結会計年度末4,249百万円と比較して、891百万円減少しました。
その主な理由は、退職給付に係る負債が704百万円減少したことによります。

3)純資産の部について

 当連結会計年度末における純資産合計は、102,176百万円となり、前連結会計年度末95,308百万円と比較して6,868百万円増加しました。
 その主な理由は、利益剰余金が6,248百万円、その他有価証券評価差額金が472百万円増加したことによります。

 なお、当連結会計年度末における自己資本比率は、81.8%となり、前連結会計年度末81.9%と比較して0.1ポイント減少しました。

 

 ⑦ 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,604百万円増加し、30,397百万円になりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの概況とその主な理由は次のとおりです。

1)営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動によるキャッシュ・フローは、12,796百万円増加(前連結会計年度比270百万円収入減)しました。これは、税金等調整前当期純利益16,009百万円、減価償却費3,517百万円の計上、法人税等の支払い4,575百万円、売上債権の増加1,329百万円などによるものです。

2)投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動によるキャッシュ・フローは、5,964百万円減少(前連結会計年度比102百万円支出増)しました。これは、定期預金の預入4,800百万円の支出、定期預金の払戻3,300百万円の収入、有形固定資産の取得1,450百万円の支出および無形固定資産の取得4,066百万円の支出などによるものです。

3)財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動によるキャッシュ・フローは、5,228百万円減少(前連結会計年度比343百万円支出減)しました。これは、リース債務の返済による支出130百万円、令和5年9月期期末配当(1株当たり配当51円)ならびに令和6年9月期中間配当(1株当たり配当45円)5,019百万円の支出などによるものです。

 なお、当企業集団のキャッシュ・フロー指標のトレンドは、下記のとおりです。

 

 

 

令和3年9月期

令和4年9月期

令和5年9月期

令和6年9月期

自己資本比率(%)

80.7

80.0

81.9

81.8

時価ベースの自己資本比率(%)

179.2

164.6

163.1

159.7

債務償還年数(年)

0.1

0.1

0.1

0.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

27,055.7

8,627.1

11,323.4

17,357.9

 自己資本比率           :自己資本        ÷ 総資産 ×100

 時価ベースの自己資本比率     :株式時価総額      ÷ 総資産 ×100

 債務償還年数           :有利子負債       ÷ 営業キャッシュ・フロー

 インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー ÷ 利払い

(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

   2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 特に記載すべき事項はありません。

②受注実績

 特に記載すべき事項はありません。

③販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

会計事務所事業

50,467

103.5

地方公共団体事業

21,754

106.9

印刷事業

2,997

106.7

合計

75,219

104.6

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び仮定を用いている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り等については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なる場合があります。

 当社グループの重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、使用される当社の見積り等が、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を及ぼすと考えられるものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

 「3 事業等のリスク」をご参照ください。

③当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは、経営体質の強化を図りながら持続的に企業価値を向上するにあたり、事業活動に必要な資金は、自己資金を中心とすることを基本方針としております。この方針のもと事業活動の維持に必要な手元資金を保有し、充分な流動性を確保していると考えております。

 また、情報通信技術(ICT)が急速に進歩するとともに、社会の諸制度が大きく変化していく中で当社のお客さまのビジネスを成功に導きながら、市場環境の変化に迅速に対応し競争優位を実現するために、先行的な研究開発投資と積極的な設備投資を実施しております。

④当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、継続企業(ゴーイング・コンサーン)の前提の下に、毎事業年度の配当原資を当該期間利益に求めることを原則としています。この考え方に基づき、重要な経営指標として以下のものを設定するとともに管理しています。

1)連結数値に基づく経営指標

a.対前年度売上高比率:3%以上

b.自己資本利益率(ROE):11%以上

2)個別数値に基づく経営指標

a.自己資本比率:80%以上

b.限界利益率:70%以上

c.自己資本利益率(ROE):11%以上

※限界利益とは、売上高から売上高に比例して変動する費用(変動費)を控除した金額であり、製品ミックスにより変動します。限界利益率とは、この限界利益の額が売上高に占める割合を言います。

 このような状況のなか、当期の連結対前年度売上高比率は4.6%(前期比1.4ポイント減)、連結自己資本利益率は11.4%(前期比0.4ポイント減)となりました。

 また、個別自己資本比率は84.4%(前期比0.6ポイント減)、個別限界利益率は79.8%(前期比1.1ポイント増)、個別自己資本利益率は11.8%(前期比0.0ポイント増)となりました。

 引き続き高い水準を維持するために、収益構造および資本効率の改善に取り組んで参ります。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費はありません。

 なお、当連結会計年度において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。