当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
Ⅰ 経営成績
当中間連結会計期間(以下、当第2四半期)におけるわが国経済は、原材料価格の高騰や金利の変動、諸外国における政情不安などにより先行きの不透明感が漂っています。
このような経済環境において、当社グループは、社会環境の変化や政府の取り組みに迅速に対応したシステムの開発やサービスの提供を継続し、顧客ならびに地域社会に貢献すべく事業を展開しました。
会計事務所事業部門では、TKC全国会との連携のもと関与先企業の「黒字決算と適正申告」の実現を支援してまいりました。その結果、当社システムを利用する企業の黒字決算割合は、国税庁発表の黒字申告の割合(36.0%)を遙かに上回る57.2%を実現しています。しかし、近年さまざまなコストの高騰により、中小企業を取り巻く経営環境は一層厳しさを増しています。中小企業が持続的に黒字化を実現するためには「月次決算」に基づく業績管理が不可欠であることから、令和6年11月から新たに「月次決算速報サービス」の提供を開始しました。当サービスは、TKC会員事務所による関与先企業の月次決算体制の構築支援強化を目的としています。サービス開始後3カ月間で利用企業が6,000社を超え、その後も順調に普及・拡大しています。
また、消費税インボイス制度の施行後、中小企業から大企業に至るまで経理担当者の業務負担は一層高まっています。その解決には本格的な業務のデジタル化が必要であるため、ペポルインボイスの送受信をはじめ、証憑から日々の仕訳、毎月の試算表、決算書の作成に加え申告・納税までをデジタルシームレスで一気通貫に行えるTKCシステムのさらなる活用に向けて取り組んでいます。
地方公共団体事業部門では、令和5年9月8日に閣議決定された「地方公共団体情報システム標準化基本方針」に従い、令和8年3月末の標準仕様への適合期限までに、円滑にシステムを移行できるようシステム開発および移行支援に取り組んでいます。当第2四半期においては、栃木県真岡市(令和6年12月23日本稼働)に続く2団体目として、令和7年1月14日に埼玉県美里町で標準仕様に対応した基幹業務システム(以下「標準準拠システム」)が本稼働しました。システム移行に当たっては顧客団体の業務を止めることなく作業を完了しており、その後も安定稼働が続いています。この知見やノウハウを生かし、令和8年3月末までに全ての顧客において標準準拠システムへの切り替えを完了すべく準備を進めています。
これらの活動の結果、当第2四半期における株式会社TKCとその連結子会社等6社を含む連結グループの経営成績は、売上高が39,227百万円(前期比5.9%増)、営業利益は8,676百万円(同3.5%減)、経常利益は8,867百万円(同4.2%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は6,314百万円(同1.0%減)となりました。
なお、当第2四半期は、令和7年2月13日に開示した業績予想のとおり増収減益となりました。減益となった理由は、後述する地方公共団体事業部門におけるソフトウエア売上高とコンサルティング・サービス売上高について前期において受託した業務が当期はなかったこと、また、標準準拠システムの提供開始に伴い、資産計上していたソフトウエアに係る減価償却を開始したことなどによります。通期においては、増収増益の業績を予想しています。
当第2四半期における事業部門別の売上高の推移は以下のとおりです。
1.第2四半期業績の推移
(1)会計事務所事業部門の売上高の推移
会計事務所事業部門における売上高は25,520百万円(前期比3.6%増)、営業利益は7,000百万円(同9.0%増)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
①コンピューター・サービス売上高は、前期比5.4%増となりました。これは、「FXクラウドシリーズ」を新規に利用開始し、経理事務のDX(Digital Transformation)を進める関与先企業が増加したこと、新たに提供を開始した税理士事務所向けにセキュリティを強化したスマートフォン「TKC-Phone SE3」を利用し、自宅や外出先からリモートでTKCシステムを利用する会計事務所が増えたことでクラウドサービスの利用量が増加したことによります。
②ソフトウエア売上高は、前期比2.6%増となりました。これは、ペポルインボイスの送受信をはじめ、証憑の電子保存や仕訳の自動生成、優良な電子帳簿の作成などをデジタルシームレスで一気通貫に行える「FXクラウドシリーズ」を新規に利用開始する関与先企業が増加したことによります。
③コンサルティング・サービス売上高は、前期比0.8%増となりました。これは中堅企業向けの財務会計システム「FX4クラウド」の新規受注に伴う立ち上げ支援サービスの実施件数が増加したことによります。
④ハードウエア売上高は、前期比0.2%増となりました。これはIT機器の販売単価が上昇したことによります。
⑤なお、営業利益が売上高の前期比より高い伸びとなった理由は、利益率の高いコンピューター・サービス売上高やソフトウエア売上高が順調に伸びていること、ならびに第57期から第58期にかけて後述する統合情報センターの処理移管の実施に伴い、固定費が削減されたことによります。
(2)地方公共団体事業部門の売上高の推移
地方公共団体事業部門における売上高は12,150百万円(前期比10.2%増)、営業利益は1,680百万円(同37.8%減)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
①コンピューター・サービス売上高は、前期比0.3%増となりました。これは、令和6年10月に実施された衆議院選挙の入場券などの印刷・加工業務を受託したこと、前期までに受託したTASKクラウドかんたん窓口システムなどのサービス利用料が増加したことによります。
②ソフトウエア売上高は、前期比3.3%減となりました。これは、前期において受託した標準準拠システム移行に伴う令和5年度システム改修業務や子育て世帯の経済負担軽減策への対応など一時的なシステム改修業務が当期にはなかったことによります。なお、TASKクラウド公会計システムなどサブスクリプション型のソフトウエア利用料は、順調に増加しています。
③コンサルティング・サービス売上高は、前期比6.8%減となりました。これは、前期において受託した地方税電子申告手続きの拡充に係る導入支援業務が当期はなかったことによります。
④ハードウエア売上高は、前期比74.6%増となりました。これは、システム標準化後の庁内設置用サーバを導入する顧客の増加や、住基ネット関連ハードウエア機器の更改を迎える顧客が当期に集中したことによります。
⑤なお、営業利益が前期と比較して減少したのは、ハードウエア売上高が増加した一方で、上述の通り、利益率の高いソフトウエア売上高とコンサルティング・サービス売上高について、前期において受託した業務が当期はなかったこと、また標準準拠システムの提供開始に伴い、資産計上していたソフトウエアに係る減価償却費が増加したことなどによります。
(3)印刷事業部門(子会社:株式会社TLP)の売上高の推移
印刷事業部門における売上高は1,556百万円(前期比11.7%増)、営業損失は9百万円(前期は営業損失145百万円)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
①データ・プリント・サービス(以下、DPS)関連商品の売上高は、前期比25.5%増となりました。これは、市区町村から令和6年10月に実施された衆議院選挙に係る通知業務を受注したこと、また団体や市町村から資格確認書通知業務をはじめとした新規業務を受注したことによります。
②ビジネスフォーム関連の売上高は、前期比14.8%減となりました。これは、デジタル化の進行により顧客企業における伝票印刷業務の需要が減少傾向にあること、加えて令和6年10月から価格改定を実施したことを受けて9月に帳表・伝票類の駆け込み受注があった反動減によるものです。
③商業美術印刷(カタログ、書籍等)関連の売上高は、前期比7.6%減となりました。これは、前期において受注した消費税インボイス制度を解説する書籍の印刷業務が当期はなかったことによります。
2.全社に関わる重要な事項
(1)TKCのペポルアクセスポイントのユーザー数が7,000件を突破
当社が提供するペポルアクセスポイントのユーザー数が7,000件を突破しました(令和7年1月24日)。当アクセスポイントを経由し送受信するペポルインボイスの件数も順調に増加しています。TKCは経理業務の効率化を支援するため、ペポルインボイスの普及に向けて積極的に取り組んでいます。
(2)「海外ビジネスモニター」の内部監査支援機能で特許を取得
海外展開企業向けクラウドサービス「海外ビジネスモニター」に搭載した内部監査支援機能「仕訳承認フローの確認(令和6年8月搭載)」において、令和7年1月6日に特許を取得しました(特許第7614430号)。本機能により仕訳の承認フローを分析し不正が疑われる仕訳の抽出が可能になります。
(3)埼玉県美里町で標準準拠システムが本稼働
令和7年1月14日、埼玉県美里町で標準準拠システムが本稼働しました。栃木県真岡市に続き2団体目の事例となります。埼玉県美里町では、真岡市と同様にスムーズなシステム移行と円滑な稼働を実現しています。
(4)統合情報センターの処理移管による固定費削減
当社では、TKC会員事務所とその関与先企業が電子帳簿保存法への対応を進める中で、帳票印刷の需要が減退していくことを鑑み、帳票印刷を行っているTKC統合情報センターの統合を進めています。第57期には沖縄統合情報センターの印刷業務を九州統合情報センターに移管。第58期には中四国統合情報センターの印刷業務を関西統合情報センターに移管いたしました。さらに本年10月には、東北統合情報センターの印刷業務を東京統合情報センターに移管する予定であり、TKC会員事務所のペーパーレス化を後押しするとともに、固定費の削減による会計事務所事業部門の利益率向上に努めてまいります。
3.会計事務所事業部門の営業活動と経営成績
会計事務所事業部門では、TKC会員事務所とその関与先企業である中小企業の持続的な発展を支援するため、 TKC全国会と密接に連携し、製品やサービスの開発・提供に取り組んでいます。
また上場企業などの大企業や法律事務所、大学・法科大学院等にも各種クラウドサービスを提供しています。
(1)「黒字決算と適正申告」の実現に向けた活動
①TKC会員事務所による関与先企業の月次決算体制構築を支援
中小企業は、インフレや円安、それに伴う原材料費の高騰や賃上げへの圧力などにより、厳しい経営環境に置かれています。そのような中でTKC会員事務所による関与先企業の「黒字決算と適正申告」の実現に向けて、以下の活動を展開しています。
1)当社は、全国56カ所の営業拠点において、システム・コンサルティング・グループ(SCG)の社員が関与先企業における月次決算体制の構築に向けて企業向け財務会計シリーズ「FXクラウドシリーズ」の導入支援や運用サポート等を実施しています。
2)「FXクラウドシリーズ」には経営者の戦略的な意思決定を支援するため、365日変動損益計算書や予実管理、部門別管理、資金繰り実績表、得意先順位月報、当期決算の先行き管理等の「経営戦略レベル」の機能を搭載しています。経営者がこれらの機能を有効に活用するには、適時・正確な会計取引の入力と月次決算体制の構築が必要となります。そのため、電子取引データやペポルインボイスから自動的に仕訳を生成する「証憑保存機能」や、インターネットバンキングから取引明細を受信して仕訳に変換する「銀行信販データ受信機能」などの活用も支援しています。こうした活動の結果、令和7年3月末日現在で財務会計システム「FXシリーズ」の利用企業数は32万5,000社となりました。
なお、現在FXシリーズにおけるクラウド版の利用割合は約37%の状況です。そのためスタンドアロン版のサポート期限を2030年末に設定し、向こう5年間でクラウド版への切り替えを進めてまいります。それによりクラウド版システムに開発資源を集中し、システム開発の速度をさらに向上させる予定です。
3)令和6年11月より会計事務所による月次巡回監査の終了時に経営者のメールアドレスに月次決算の業績速報を送付する「月次決算速報サービス」を提供開始しました。これにより経営者は月次決算の結果をスマートフォンで迅速に確認可能となります。また、会計事務所は当サービスを経営助言や経営者とのコミュニケーションを強化するツールとして活用することが可能です。
②適時・正確な記帳に基づく信頼性の高い決算書の作成支援
当社が提供する財務会計システムの最大の特長は、TKC会員事務所が関与先企業に毎月実施する巡回監査と月次決算を前提とし、巡回監査実施後の取引データについて、遡及的な訂正・加除処理を禁止しているところにあります。この特長を生かし、金融機関などが客観的に会計帳簿の信頼性を判断する資料となる「記帳適時性証明書」を無償で発行しています。
このサービスは、TKC会員が作成する決算書の信頼性を高め、関与先企業の円滑な資金調達に貢献することを目的として開発されたものです。TKC会員が毎月、関与先企業に出向いて正しい会計記帳を指導(月次巡回監査)しながら、月次決算、確定決算ならびに電子申告に至るまでの全ての業務プロセスを一気通貫で適時に完了したことを当社が第三者として証明しています。コンプライアンス違反倒産が増加している昨今、「記帳適時性証明書」は「帳簿の証拠力」を証明できる資料であり、その重要性は今後ますます増していくものと考えています。
③「TKCモニタリング情報サービス」の推進
「TKCモニタリング情報サービス」は、関与先企業の経営者からの依頼に基づいてTKC会員事務所が毎月の巡回監査と月次決算を実施した上で作成した月次試算表、年度決算書、税務申告書などを、金融機関に開示するための無償のクラウドサービスです。
当社は「TKCモニタリング情報サービス」で送付される以下の3帳表により、中小企業の決算書の信頼性が確認できることを、金融機関に訴求しています。
1)TKC会員が実践する「税理士法第33条の2に基づく添付書面」
2)会社法第432条が定める帳簿の適時性と、決算書と申告書の連動性を、株式会社TKCが過去3年にわたって証明する「記帳適時性証明書」
3)日本税理士会連合会、全国信用保証協会連合会が制定した「中小会計要領チェックリスト」
こうした活動の結果、「TKCモニタリング情報サービス」は令和7年3月末日現在、495金融機関に採用されており、その利用件数は35万件を突破しました。
「TKCモニタリング情報サービス」は、経営者保証ガイドラインで示された3つの要件(法人と個人の関係を区分・分離、財務基盤の強化、財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示による経営の透明性の確保)を確認できるツールとして、中小企業の経営支援に取り組む金融機関や信用保証協会から高く評価されています。
④TKC全国会との連携による優良企業の育成
会計事務所事業部門は、TKC会員1万1,400名(令和7年3月末日現在)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で「黒字決算と適正申告」の実現に向けて事業を展開しています。
TKC全国会は、令和7年より向こう6年間の運動方針を以下のとおり掲げ取り組みを開始しました。
「税理士の4大業務を完遂し、中小企業を元気にしよう!─月次決算体制の構築がすべての基本─」
1)月次巡回監査の実施関与先を増やす
2)FXクラウドシリーズでTKC方式の自計化を推進する
3)月次決算速報サービスを活用し、自己資本比率の向上を支援する
⑤会員導入(TKC全国会への入会促進)
TKC全国会は、令和7年9月末日までに360件の新規会員増強の目標を掲げています。この実現に向けてTKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会との連携を強化し、会員増強活動と新入会員事務所のフォロー活動に取り組んでいます。
(2)大企業市場への展開
当社は、TKCシステムの活用による上場企業を中心とした大企業の税務・会計業務のコンプライアンス向上と合理化に貢献するとともに、これらの企業およびその関係会社をTKC会員の関与先企業とするための活動を積極的に展開しています。
①デジタル・インボイスへの対応
令和5年8月に当社はデジタルインボイス推進協議会(EIPA)の代表幹事法人に就任し、システムベンダーを中心とした約180の協議会加盟会社とともに、デジタル・インボイスの普及活動に取り組みました。その結果「インボイス・マネジャー」は令和7年3月末日現在、中堅・大企業約1,000社に導入されています。当社は今後もデジタル・インボイスの普及に取り組んでいきます。
②新リース会計基準対応に関する情報発信
令和6年9月13日に企業会計基準委員会より、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等が公表され、上場企業には令和9年4月から強制適用されることになりました。当社では適用準備の段階から財務諸表への影響額を把握できるようにするために「改正リース会計基準の影響額試算ツール」を開発し、令和7年1月から当社システムユーザー企業に提供開始しました。当ツールは経営者等への報告資料作成時の基礎資料としても利用でき、多くのユーザー企業から高い評価を得ています。
③大企業市場でのシェア拡大とTKC会員の関与先拡大支援
当社が提供する「グループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)」の市場からの評価は高く、グループ通算制度を採用する多くの企業に利用されています。令和7年3月末日現在で約2万社あるといわれる資本金1億円超の企業の約45%において「法人電子申告システム(ASP1000R)」や「グループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)」をご利用いただいています。
また当第2四半期は「連結会計システム(eCA-DRIVER)」をレベルアップし、EY新日本有限責任監査法人の「連結監査調書自動生成ツール(CWPG)」に連結決算データをAPI連携で共有する機能を実装しました。
こうした活動の結果、「TKC連結グループソリューション」の利用企業グループ数は、令和7年3月末日現在で約5,930企業グループとなりました。現在、日本の上場企業における市場シェアは44%に達しており、日本の上場企業の売上高トップ100社のうち91社(91%)が当社のシステムを利用しています。
(3)法律情報データベースの市場拡大
当社は、会計事務所をはじめ法曹界、アカデミック市場、企業法務部門などに広く法律情報サービスを提供しています。
①「TKCローライブラリー」の収録数やコンテンツの拡充
当社は、業界最大の判例収録数(35万1,000件超)を誇る法律情報データベース「TKCローライブラリー」を提供しています。判例情報(LEX/DB)を中心に、法令、文献情報、法律専門誌、法律専門書籍、および関連する付加情報を網羅するとともに、常時ライブラリーのコンテンツの拡充を図っています。
当期においては、TKC会員事務所をはじめ大学や法科大学院、官公庁、法律事務所、特許事務所、企業法務部、海外の研究機関などでの利用が進み、令和7年3月末日現在で約2万7,000の諸機関で7万IDの利用に及んでいます。
②アカデミック市場への展開
当社が提供する「TKC法科大学院教育研究支援システム」は、いつでもどこでもオンラインで利用できること、他社をしのぐ多様なコンテンツを収録していること、さらにレポート提出・オンライン演習・テスト機能等を搭載し、授業と自学自習を支援する仕組みとなっていることが特長です。令和7年度の契約でも160を超える大学で採用され、引き続き教員、学生からも高く評価されています。
また、司法試験受験を目指す法科大学院生や修了生、予備試験合格者に対し、TKC全国統一模試の実施により、司法試験への対応も支援しています。令和7年TKC全国統一模試の受験者数はすでに2,600名を超えており、令和7年司法試験受験者4,000名の65%を超える見込みです。なお、今後、法務省は令和8年からCBT試験への移行を予定しています。そこで令和7年4月以降、当社は「TKCデジタルテスト」導入による環境整備などを進め、大学へのサービス提供とさらなる受験者数の拡大を目指しています。こうした活動の結果、司法試験のスタンダード模試として、今後も業界1位の実績を継続する予定です。
4.地方公共団体事業部門の営業活動と経営成績
地方公共団体事業部門は、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。当社が地方公共団体に対して提供する「TKC行政クラウドサービス」は、令和7年3月末日現在で1,140団体を超える地方公共団体(都道府県、市区町村等)に採用されています。
(1)地方公共団体情報システム標準化への対応
地方公共団体は、標準準拠システムの利用が義務付けられ、それをガバメントクラウド環境で利用することが努力義務とされました。当社では、令和6年12月23日に栃木県真岡市、2団体目として令和7年1月14日に埼玉県美里町において、ガバメントクラウド環境での「標準準拠システム」への移行が完了し、システムが本稼働しています。当社の基幹業務システムは令和7年3月末日現在で約170団体に採用されており、これら全ての顧客団体を、移行期限である令和8年3月末までに「標準準拠システム」へ移行完了する計画です。なお、顧客団体の業務繁忙期を避けるため、移行作業は令和7年7月から12月にかけて本格化する予定です。
(2)行政サービスのデジタル化支援
当社は、窓口業務のデジタル化「3ない窓口(行かない・待たない・書かない)」の実現を支援する「行政サービス・デジタル化支援ソリューション」を開発・提供しています。当期においては「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」を全面リニューアルし、全ての顧客において新システムへの切り替えを完了しました。また、埼玉県三郷市と共同で、住民に身近な公共施設と本庁舎を結び、オンラインで行政サービスの相談や申請手続きができる「遠隔窓口サービス」の実証実験を開始しました。その結果、令和7年3月末日現在、「TASKクラウドスマート申請システム」は大阪市や横浜市など政令指定都市を含む60団体以上に採用されています。また、「TASKクラウドかんたん窓口システム」は120団体以上、「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」は180団体以上に採用されています。
(3)地方税務手続きのデジタル化支援
当社は、地方税共同機構の認定委託先事業者として、同機構が運営するeLTAX(地方税ポータルシステム)審査システムなどの標準システムをクラウド方式で提供するとともに、当社独自の機能として各市区町村の税務システムとの「データ連携サービス」を開発・提供しています。
本サービスの推進に当たっては、アライアンス契約を締結した約50社のパートナー企業とともに提案活動を展開しています。その結果、「TASKクラウド地方税電子申告支援サービス」は、令和7年3月末日現在で全都道府県・市区町村の4割以上に当たる約790団体に採用されています。
(4)内部事務のデジタル化支援
当社は、地方公会計一体型の財務会計システム「TASKクラウド公会計システム」およびその関連システムを開発・提供しています。
当期においては、各種機能や電子決裁システムの機能強化に加え、関連サービスである文書管理システム、人事給与システムのリニューアルに取り組みました。また、兵庫県多可町と共同で、市区町村における「ペポルインボイス」の活用による業務の有効性および効率性向上に関する実証実験を行いました。その結果、「TASKクラウド公会計システム」は令和7年3月末日現在で約380団体に採用されています。
5.印刷事業部門の営業活動と経営成績
当社グループの印刷事業を担う株式会社TLPでは、会計事務所事業部門の統合情報センターで使用する連続帳表や地方公共団体事業部門のアウトソーシングサービスにおける税帳表等の印刷・印字をはじめ、当社顧客に提供する印刷物等を製造しています。また、一般企業および官公庁、市区町村等に対しては、DPSやビジネスフォーム印刷および商業美術印刷を基軸に事業を展開しています。
DPS分野では、DMの作成および総務、経理、人事部門の通知関連業務の合理化を目的としたアウトソーシングサービス(BPO)を提供しています。特に、QRコードの活用によりDMの効果を測定するサービスなど、顧客利用価値の向上に取り組んでいます。市区町村に対しては、各種税帳表や投票所入場券などの住民に対する通知業務を支援しています。
ビジネスフォーム印刷分野では、ペーパーレス化の進展により、ビジネス帳表・伝票類の使用量が減少傾向にあるものの、手書き帳表や特定帳表の需要は健在であり、フォーム印刷の強みを生かした営業活動を展開しています。
商業美術印刷分野(カタログ、書籍等)では、顧客企業の周年行事における印刷物や、法律改正による専門書籍の改版など顧客企業が求める出版物をタイムリーに提供するなどの支援をしています。
なお、株式会社TLPは、独占禁止法に基づき公正取引委員会による排除措置命令の対象となった入札談合により、既に徴収済の違約金によってもなお補填されない損害が残存するとして、日本年金機構から令和5年10月3日付で損害賠償請求訴訟を提起され係争しておりましたが、令和7年1月29日付で和解が成立しました。
Ⅱ 財政状態
当中間連結会計期間末における資産・負債および純資産の状況は次の通りです。
1.資産の部について
当中間連結会計期間末における資産合計は、122,320百万円となり、前連結会計年度末124,882百万円と比較して2,562百万円減少しました。
(1)流動資産
当中間連結会計期間末における流動資産は、47,750百万円となり、前連結会計年度末46,672百万円と比較して1,077百万円増加しました。
その主な理由は、現金及び預金が542百万円減少したものの、受取手形、売掛金及び契約資産が1,194百万円、棚卸資産が458百万円増加したことによります。
(2)固定資産
当中間連結会計期間末における固定資産は、74,569百万円となり、前連結会計年度末78,209百万円と比較して、3,639百万円減少しました。
その主な理由は、長期預金が500百万円増加したものの、投資有価証券が1,656百万円、その他に含まれる長期繰延税金資産が1,412百万円減少したことによります。
2.負債の部について
当中間連結会計期間末における負債合計は、18,301百万円となり、前連結会計年度末22,705百万円と比較して4,403百万円減少しました。
(1)流動負債
当中間連結会計期間末における流動負債は、15,011百万円となり、前連結会計年度末19,347百万円と比較して、4,336百万円減少しました。
その主な理由は、賞与引当金が2,895百万円、未払法人税等が1,052百万円減少したことによります。
(2)固定負債
当中間連結会計期間末における固定負債は、3,290百万円となり、前連結会計年度末3,357百万円と比較して、67百万円減少しました。
その主な理由は、その他に含まれる長期リース債務が45百万円減少したことによります。
3.純資産の部について
当中間連結会計期間末における純資産合計は、104,018百万円となり、前連結会計年度末102,176百万円と比較して1,841百万円増加しました。
その主な理由は、自己株式が454百万円増加したことにより純資産が減少したものの、その他有価証券評価差額金が1,596百万円、利益剰余金が602百万円増加したことによります。
なお、当中間連結会計期間末における自己資本比率は、85.0%となり、前連結会計年度末81.8%と比較して3.2ポイント増加しました。
Ⅲ キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ542百万円減少し、29,855百万円になりました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの概況とその主な理由は次のとおりです。
(1)営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローについては、3,288百万円増加(前年同期比2,323百万円収入減)しました。これは、税金等調整前中間純利益8,871百万円の計上、賞与引当金2,895百万円の減少、および法人税等の支払2,919百万円などによるものです。
(2)投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローについては、2,441百万円増加(前年同期比5,487百万円支出減)しました。これは、定期預金の預入2,100百万円の支出、定期預金の払戻1,600百万円の収入、投資有価証券償還4,000百万円の収入および無形固定資産の取得1,015百万円の支出などによるものです。
(3)財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローについては、6,272百万円減少(前年同期比3,495百万円支出増)しました。これは、自己株式の取得3,302百万円の支出および令和6年9月期期末配当2,874百万円(1株当たり配当55円)の支払いなどによるものです。
Ⅳ 事業上及び財務上の対処すべき課題
当中間連結会計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
Ⅴ 研究開発活動
当中間連結会計期間における当社グループの研究開発費はありません。
なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。