文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社が判断したものであります。
当社グループは、1955年に岐阜県岐阜市で貸布団業から事業を開始し、その後、病院向けのリネンサプライやホテルリネンサプライ、マットやモップなどのレンタルを行うリースキン、介護ベッドや車いすといった介護用品レンタル事業など、廃棄物の抑制を図る「レンタル」というビジネスモデルを通じて、循環型社会の実現やSDGsが目指す持続可能な社会の実現の一助となるべく事業活動を行ってまいりました。
また、「清潔と健康」をテーマに、事業の選択と集中を継続的に実施し、レンタルを中心としたビジネスに加えて、現在では病院清掃や病院給食、そして基幹病院の門前での調剤薬局の展開や太陽光発電など、「医療」「介護」「環境」の3つの分野において、それぞれの事業領域における社会課題の解決に貢献する企業グループとして、成長を目指しております。
引き続き、お客様をはじめとするさまざまなステークホルダーから信頼され、必要とされる企業となるべく企業価値の向上に努めるとともに、この「医療」「介護」「環境」分野における事業活動を通じ、持続的な社会の実現に貢献してまいります。
以上のような経営の目指すべき方針のもと、当社グループは2020年よりトーカイグループが中長期にありたい姿として以下の「トーカイグループ 3つの宣言」を掲げております。
なお、当社は2022年5月に、この「トーカイグループ 3つの宣言」を当社グループの「サステナビリティ基本方針」として改めて制定しております。
(2) 中期経営計画
当社は、経営方針に掲げるトーカイグループが中長期にありたい姿「トーカイグループ 3つの宣言」の実現に向けて、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「Challenge for the new stage!」(2021年5月17日公表)を策定いたしました。本中期経営計画においては、「続ける」「変える」「創る」の3つの基本方針に沿った各種施策を実行することを通じて、持続的な成長を実現できる新たなステージを目指してまいります。なお、本中期経営計画の基本方針及び事業戦略は、以下のとおりです。
<基本方針>
① 社会の要請やお客様のニーズに応えるために「続ける」
・循環型社会に資する「レンタル事業モデル」
・医療及び介護の社会インフラを支えるサービスの安定供給
・既存のコア事業の強化及び地域シェアの向上
・お客様本位のサービス提供とさらなる専門性の追求
・差別化の要となる「人的資本」の強化
② 経営環境の変化に対応し、さらなる成長につなげるために「変える」
・ニューノーマル時代における個人、組織の新しい働き方の整備
・DXの推進による業務効率化及び生産性向上
・プライム市場にふさわしいコーポレートガバナンス
・経営人材育成と若い世代の積極登用
・多様性を重視した経営
③ 次世代につながる新たな価値を生み出すために「創る」
・ヘルスケア分野における新たな事業やサービスの開発
・DXの推進による新しいビジネスモデルの創出
・グループの経営資源の有機的な結合による新たな事業価値の創出
・成長に資する投資分野の発掘と機動的な投資実行
・働きがいや誇りを持って働き続けることができる企業風土
<事業戦略>
① 健康生活サービス
当社グループの事業基盤の根幹である医療機関・介護福祉施設との信頼関係をより一層深耕させるべく、病院関連事業においては、リネンサプライを中心とする既存の医療周辺サービスを安定的かつ高品質に提供できるよう体制を強化するとともに、戦略商品である「入院・入居セット」「ネクサージ」の高付加価値化による他社との差別化や新たな基幹アイテムの創出、デジタル化による業務改善に取り組んでまいります。
シルバー事業においては、今後の当社グループの成長をけん引する主要事業として経営資源を集中させ、物流改革やデジタル化の推進によりサービス提供のスピードを高めていくとともに、専門性の高い人材を育成していくことで、日本一の福祉用具貸与事業者としての地位を確立することを目指します。引き続き地域に根差した営業展開に努め、特に高齢者人口の増加が見込まれる都市部においてシェア№1となるべく、M&Aにも積極的に取り組んでまいります。
また、健康生活サービス全般において、在宅をはじめとしたヘルスケア分野における社会課題の解決につながる新たなサービスの開発に引き続き注力してまいります。
② 調剤サービス
基幹病院の門前を中心に展開するたんぽぽ薬局株式会社においては、市場の競争環境が激化するなか、各店舗が地域で一番のかかりつけ薬局になるための取り組みをより一層推進し、在宅を中心とした地域医療・福祉を担う多職種との連携をはじめ、調剤薬局に求められる社会的な役割と機能の追求に努めてまいります。敷地内薬局や医療モール内薬局、在宅特化型店舗など、バランスの取れた薬局形態の確立を目指すとともに、基幹病院の処方箋対応を通じてこれまで蓄積してきた高度薬学管理のノウハウを活かし、高い専門性をもって地域の皆様の健康維持・増進をサポートする薬局を目指します。
また、DXを通じた業務改革や患者様の利便性向上に寄与する取り組みの推進により、経営基盤の強化に努めてまいります。
③ 環境サービス
社会的な衛生管理ニーズの高まりに応える商品やサービスの提供を通じて、「衛生管理のプロ」としての強みにさらに磨きをかけ、中期的な成長を持続できる事業構造への変革を推進します。
リースキン事業においては、近年注力するトイレ周り商品の拡販を中心に、衛生管理ニーズに応える新たな商品分野の開発に積極的に取り組み、従来のダストコントロール商品に依存しない新たなリースキンブランドイメージの確立を目指します。
当社グループは中期経営計画「Challenge for the new stage!」において、2025年3月期の連結数値目標として「売上高1,400億円」「営業利益95億円」を掲げております。
エネルギー価格及び原材料の高騰や医薬品の需給ひっ迫、人手不足の影響など、当社グループを取り巻く経営環境は本中期経営計画を策定した2021年5月時点の想定から大きく変化しておりますが、引き続き本中期経営計画の基本方針や事業戦略に即した取り組みを推進するとともに、成長投資の維持・拡大により長期目線での成長基盤の構築を図ることで、本中期経営計画に掲げる経営目標に向け取り組んでまいります。
(参考:連結数値目標)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社が判断したものであります。
(1) サステナビリティ共通
①サステナビリティ基本方針
当社グループは、創業以来、「レンタル」を中心とする事業活動を通じて、「医療」「介護」「環境」分野における社会課題の解決、持続的な社会の実現に貢献していくことを目指して事業に取り組んでいます。
こうした経営の根幹の考え方をグループ全従業員で共有するため、2020年に以下の「3つの宣言」を掲げ、2022年5月に「サステナビリティ基本方針」として改めて制定いたしました。
当サステナビリティ基本方針に基づき、持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして、その社会的な責任を果たすとともに、更なる企業価値向上を目指してまいります。
当社グループは、「サステナビリティ基本方針」に則した企業活動を体系的かつグループ横断的に実践していくことを目的に、代表取締役社長を委員長とし、業務執行取締役および執行役員を中心に構成する「サステナビリティ委員会」を設置しています。本委員会は年2回以上開催し、気候変動リスク・機会の特定や評価、マネジメントおよび人的資本への対応をはじめとした、当社グループにおけるサステナビリティ課題の共有、各種施策の検討、実施事項の整備・運用に関する協議、ESG戦略の推進などを行っています。また、サステナビリティ委員会の下部委員会として、「リスク管理委員会」「コンプライアンス委員会」「環境委員会」を設置し、各サステナビリティ課題への対応の検討を行っています。
(体制図)

③リスク管理
当社グループは、当社グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性、当社グループの事業の継続を中断・停止させる可能性、当社グループの信用を毀損しブランドイメージを失墜させる可能性など、リスクを「企業活動を脅かす潜在的事象」と定義し、継続的な管理・実践を行うことにより、リスクの発生防止、並びに発生時の会社損失の最小化に努めております。
当社グループでは、リスク管理にかかわる課題・対応策を協議する組織として、代表取締役社長を委員長とし、取締役(社外取締役を除く)、執行役員及び主要な子会社の役員で構成されるリスク管理委員会を設置しております。
リスク管理委員会では、毎期、経営を取り巻く各種リスクの中から、特に重要性が高いリスクについて、「リスクの特定」「リスクの評価」「リスクの抑制」の観点から審議を行い、優先的に取り組むべきリスクを重点管理項目としております。これらリスク管理委員会で審議した重点管理項目は、取締役会において承認が行われ、各事業では、重点管理項目に基づき、リスクの抑制に取り組んでおります。
特に気候変動及び人的資本への対応などのサステナビリティ課題に起因する中長期的なリスクについては、各事業において設定した重点管理項目を改めて取りまとめたうえ、「サステナビリティ委員会」にて全社的な観点から評価を行っております。
なお、リスク管理の詳細は、
(2) 気候変動への対応
気候変動問題は、社会の持続可能性を脅かす喫緊の課題となっています。「人と地球の清潔と健康」を経営理念に掲げる当社グループとしても、気候変動への対応を経営の重要課題の一つと位置付け、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づいた情報開示を実施しています。詳細は、
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、「(1)サステナビリティ共通 ②ガバナンス」に記載のとおりです。サステナビリティ委員会は気候変動への対応の検討結果を、年に1回以上取締役会に報告し、取締役会は、気候変動に関するリスク・機会をはじめとしたサステナビリティに関する目標設定の監督やその進捗状況のモニタリングを行います。
なお、当社グループの2030年および2050年に向けた温室効果ガス排出量の削減目標は、当社の取締役会で承認しています。
②戦略
気候変動リスク・機会の特定および定性評価
当社グループに影響のある気候変動リスク・機会は次の通りです。
気候変動リスクの定性評価
気候変動機会の定性評価
※気候変動リスク・機会の評価における対象会社は、売上規模、工場保有の有無等から、株式会社トーカイ、株式会社トーカイ(四国)、株式会社同仁社、たんぽぽ薬局株式会社の4社における全事業(バリューチェーンの上流および下流)としました。
※気候変動リスク・機会の特定及び評価に使用したシナリオは、以下の通りです。
※発生時期:2024年を起算点として、今後5年を「短期」、10年を「中期」、30年を「長期」としました。
※影響度:グループ全体に影響する、あるいは事業停止につながる恐れがあるものは「大」、グループの事業の一部に影響があるものは「中」、影響が僅少なものを「小」としました。
気候変動リスク・機会の定量評価
当社グループにとっての気候変動リスク・機会のうち、2030年までの発生可能性が比較的高いものについては、事業への影響度を定量的に分析いたしました。事業への影響度が特に大きい、浸水等によるリスクについては、工場設備の浸水対策等を実施しています。その他のリスクについても、対応策を今後検討・実施してまいります。
気候変動リスクの定量評価
気候変動機会の定量評価
※1 洪水浸水想定区域の情報を基に、拠点の固定資産簿価に国土交通省の「TCFD提言における物理リスク評価の手引き」記載の浸水深別被害率を乗じて算定しています。
※2 過去の災害時の復旧費用の実績を参考に算定しています。
※3 WRIのAqueductの分析結果に基づき、当社として水ストレスが高いと認識している地域の洗濯工場における、井水から上水への転換に伴う費用として算定しています。
※4 外気温と設備の熱効率に関する当社分析データを基に、熱効率向上に伴うエネルギー使用量削減効果を算定しています。
③リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。
④指標と目標
当社グループは、自社の燃料使用による温室効果ガス排出量(スコープ1)及び他社から供給された電気・熱・蒸気の使用による温室効果ガス排出量(スコープ2)の合計を、2030年までに2018年度比で50.4%削減し、2050年にはカーボンニュートラルを実現する目標を設定し、目標達成に向けた取り組みを開始しています。

スコープ1およびスコープ2排出量実績(単位:t-CO2)
※目標値および実績値の算定範囲は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」及び「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」における温室効果ガス排出量の報告義務事業者である3社(株式会社トーカイ、株式会社トーカイ(四国)、株式会社同仁社)としています。
サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量(スコープ3)
サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量(スコープ3)の把握と削減についても、重要な経営課題の一つと認識しており、その算定対象範囲や算定方法については、適宜見直しを行ってまいります。
なお、当社グループにとって削減の重要性が最も高いカテゴリは、スコープ3の大部分を占めるカテゴリ1(購入した製品・サービス)であり、今後サプライヤーと協力し、削減に向けた取り組みを推進してまいります。
スコープ3排出量実績(単位:t-CO2)
※スコープ3排出量の算定範囲は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」及び「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」における温室効果ガス排出量の報告義務事業者である3社(株式会社トーカイ、株式会社トーカイ(四国)、株式会社同仁社)に、たんぽぽ薬局株式会社を加えた4社としています。
※排出原単位は、環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver3.3)」及び「IDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)」のデータを使用しています。
※カテゴリ1:レンタル資材や販売資材の仕入金額や、洗濯や配送等に係る外注委託費用をもとに算定しています。
※カテゴリ5:電子マニフェストを導入している事業所からの廃棄量のみを算定しています。
※カテゴリ8,10,13,15:該当する事業がない、もしくはあったとしても僅少のため非該当としました。
※カテゴリ9,11,12:当社はレンタルビジネスを中心に事業展開を行っているため、これらのカテゴリの排出量は僅少と推察されますが、算定対象とするか引き続き検討してまいります。
※カテゴリ14:算定方法を今後検討してまいります。
(3)人的資本への対応
①ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、「(1)サステナビリティ共通 ②ガバナンス」をご参照ください。
②戦略
ⅰ) 人材育成方針
当社グループは、「清潔と健康」に関わる幅広い事業を展開しており、「医療」「介護」「環境」分野における事業活動を通じて、社会課題の解決に寄与し、持続的な社会の実現に貢献できる企業グループを目指しております。
このような企業グループとなるために、以下3つの観点を組織基盤強化の最重要テーマとして、人材育成に取り組んでいます。
・社会の要請やお客様のニーズに応えるべく、何ができるのかを自ら考え主体性を持って取り組めるホスピタリティを持った人材
・経営環境の変化に対応し、チャレンジ精神をもって変革プロセスを描き具現化できる人材
・次世代につながる新たな価値を生み出すためにイノベーションを起こしうる人材
人が育つ企業を目指し、変化を楽しみ、やりがいをもって働くことが出来る企業風土の醸成に取り組んでまいります。
ⅱ) 社内環境整備方針
当社グループは、従業員を企業の成長を担う「人財」であり、他社との差別化を図る財産であると認識しております。人格、個性、多様性の尊重を基本方針として、従業員一人ひとりの人間力を高めるとともに、個性や能力を活かしながらキャリアプランを形成し、挑戦・活躍・成長することができる環境を整えることを目指します。また、心身の健康を保ちながら、安心して働ける職場環境を確立することで生産性の向上と、ワークライフバランスの実現を図ります。
さらに、持続的な成長の実現と企業価値向上につなげるために、専門性を高める機会の提供、次世代を担う経営層や幹部候補の育成、多様性を尊重した働き方の推進等の環境整備を推進してまいります。
ⅲ) 中核人材の多様性の確保
変化が激しい時代においては、多様な視点、価値観を経営に反映していくことが、当社グループが持続的に成長するうえで重要と認識しており、女性・中途採用者等の活躍推進を含む多様性の確保に努めております。
女性の活躍推進については、次世代育成対策推進法に基づく基準適合事業主(子育てサポート企業)取得等、従来より重要性を認識し、延長保育や病児保育の保育料補助、育休からの早期復帰者への保育手当の増額、育児時短勤務を中学校1年生の始期に達するまで可能とする等、子育て並びにキァリアパス支援等に積極的に取り組んでおります。
また、中途採用者の管理職比率は、約半数を占めている状況であり、中途採用者は女性とともに当社グループの企業価値向上には重要な人材であると認識しております。
中途採用者が企業文化や組織に馴染み、定着し、活躍できる環境整備を推進してまいります。
ⅳ) 具体的な取組み
人材投資については、人材育成方針、社内環境整備方針に則り、人間力強化のための社内勉強会の開催のほか、20代から50代までの各年代別に実施するキャリアデザイン研修、新任役職者を対象に実施する階層別研修、各事業本部で実施する業務研修、DX人材を育てるDXアカデミー、次世代幹部育成を目的とした選抜研修に加え、自らの意思で受講分野を選択できる自主選択型研修や仕事と家庭の両立を支援するワークライフバランス研修など、多彩な環境を整え、人が育ち、やりがいを持って働くことができる企業風土の醸成に取り組んでいます。
これらのほか、担当業務を超えて会社の価値向上に寄与した従業員・グループを推薦し表彰する社長表彰制度や、成長を志向する従業員に年齢や性別を問わずチャンスを与え、管理職に抜擢する管理職登用制度、広い視点で決断のできる経営幹部(次世代経営者・管理職)の育成のため事業本部間を跨ぐ異動を行う戦略的人事異動などにも取り組んでいます。
③リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。
④指標と目標(連結)
※1 2024年4月1日現在
※2 業務上必要・有益資格保有数について、対象資格を見直し、グループで統一しました。その結果、対象資格および保有者数は大幅に増加し、目標数値の修正も行いました。
当社グループは、当社グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性、当社グループの事業の継続を中断・停止させる可能性、当社グループの信用を毀損しブランドイメージを失墜させる可能性など、リスクを「企業活動を脅かす潜在的事象」と定義し、継続的な管理・実践を行うことにより、リスクの発生防止、並びに発生時の会社損失の最小化に努めております。
当社グループでは、リスク管理にかかわる課題・対応策を協議する組織として、代表取締役社長を委員長とし、取締役(社外取締役を除く)、執行役員及び主要な子会社の役員で構成されるリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会では、毎期、経営を取り巻く各種リスクの中から、特に重要性が高いリスクについて、「リスクの特定」(顕在化している、もしくは、潜在的なリスクの把握)、「リスクの評価」(損失規模・発生確率を定量化)、「リスクの抑制」(受容・移転・低減・回避等)の観点から審議を行い、優先的に取り組むべきリスクを重点管理項目としております。これらリスク管理委員会で審議した重点管理項目は、取締役会において承認が行われ、各事業では、重点管理項目に基づき、リスクの抑制に取り組んでおります。特に気候変動に起因するリスクについては、各事業において設定した重点管理項目を改めて取りまとめたうえ、全社的な観点からの評価を行っております。
2025年3月期の重点管理項目に関する取締役会での審議におきましては、資材・燃料費の高騰、社会保障制度の改定並びに人材確保に関するリスク等が依然として高止まりしていることを確認のうえ、それらを引き続き重点管理項目に設定し、リスクの抑制に向けて取り組むことといたしました。加えて、外部環境の変化に伴い、中長期的に影響を受ける可能性のあるリスクや当社グループ内で共通するリスクについてもグループ横断的な対応状況の確認が行われ、引き続き体制強化に努めております。
なお、重点管理項目の進捗・達成状況等については、期中・期末に評価を実施し、リスク管理委員会、取締役会にて確認を行っているほか、監査・モニタリング部門である内部監査室と情報共有を行い、継続的なリスクの把握・抑制に取り組んでおります。
当社グループの経営成績及び財政状態は、今後起こりうるさまざまな事象により影響を受ける可能性があります。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主要なリスクには、「社会保障制度の改定等によるリスク」、「人材確保に関するリスク」があり、以下にリスクの概要等について記載しております。
文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであり、国内外の経済情勢等の影響を受ける可能性があり、将来に渡るリスクすべてを網羅したものではありません。また、リスクへの対応策につきましても、リスクの発生防止を確約するものではありません。
(1)社会保障制度の改定等によるリスク
我が国においては、他国に例を見ないスピードで進行する高齢化を背景として、医療・介護費の抑制が喫緊の課題となる中、法改正等により社会保障制度に大きな変更があった場合、ヘルスケア業界で主力事業を展開する当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
シルバー事業においては、3年に1度実施される介護保険法の改正等により、当社が提供する福祉用具貸与等のサービス内容や保険適用範囲の見直しが図られることで、当事業の収益に影響を及ぼす可能性があります。
調剤薬局事業においては、その収益のほとんどを保険調剤売上が占めております。そのため、2年に1度の診療報酬改定及び毎年の薬価改定等の内容によっては、当社調剤薬局事業の収益構造に大きな変化をもたらし、当社グループの経営状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、リネンサプライサービスの提供などを中心とする病院関連事業のほか、給食事業、清掃事業など、当社グループは医療機関や介護福祉施設等からさまざまな業務を受託しております。これら事業においては、社会保障制度の改定等により、当社グループの顧客である医療機関等の経営状況が変化することで、受託業務の内容や契約条件の見直しなど間接的な影響を受ける可能性があります。
これら社会保障制度の改定等については、関係省庁、各種業界団体等からの情報収集に努め、事業環境の変化に適切に対応していくとともに、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営計画」に記載のとおり、事業戦略に定めた事項を実行していくことで、経営への影響の極小化に努めてまいります。
(2)人材確保に関するリスク
当社グループでは、医療機関や介護福祉施設等、高度な衛生管理が求められる場所を中心に各種事業を展開しており、衛生管理のプロとして、また、調剤薬局においては薬学の専門家として、その専門的な知識や経験を活かし、お客様にとって安心かつ安全なサービスの提供を心がけております。
当社グループの事業の多くは、「人を介したサービス・商品の提供」を通じて医療・介護の現場を支えております。これらのサービスが当社グループの強みである一方、医療・介護の現場を支える事業を維持・継続していくためには、労働力不足がますます深刻化していく状況下においても、人材を十分に確保していく必要があります。現業のサービス提供に必要な人材を確保できなかった場合、主要事業における機会損失が発生する恐れがあるほか、人材確保のための各種待遇改善等に伴う労務費が増加するなど、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
このような状況の中、当社グループでは「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営計画及び (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に基づき、多様な人材が活躍できる労働環境・働き方の整備、積極的な採用活動、専門性を高める人材育成・教育に注力することで、より高品質なサービス提供を可能にする「人的資本」の強化に努めてまいります。
また一方で、システム投資やDXの推進等により業務効率化や生産性向上を継続的に図ることで、労働力不足といわれる環境下にあっても、攻めの企業活動を推進できるように取り組んでまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上における位置づけが「5類」に引き下げられたことなどにより、経済活動が急速に正常化いたしました。一方で、エネルギーや原材料価格の高止まりなどによるさまざまなコスト上昇に加えて、あらゆる業界において人手不足が深刻化するなど、経営環境は依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような環境のもと、当社グループにおいては、2025年3月期までを計画期間とする中期経営計画「Challenge for the new stage!」に掲げる各種施策の推進に取り組むことで、より一層の事業成長を図ってまいりました。利益面については、各種コスト高や人手不足による影響など、中期経営計画策定時点の想定と大きく異なる状況が生じておりますが、リネン類の洗濯工場における生産性向上や間接部門における業務改善の推進、お客様への適正価格でのサービス提供などにより、最大限の収益確保と従業員一人当たりの付加価値向上に引き続き取り組んでおります。
2023年10月には、関東エリアの新たな基幹工場となる埼玉工場(埼玉県毛呂山町)が稼働を開始いたしました。当工場の稼働により、健康生活サービスにおいて工場立ち上げに係る一時費用や減価償却費が発生しておりますが、関東エリアにおける病院関連事業とシルバー事業の生産効率の向上及び事業拡大に取り組むことで、中長期でのさらなる成長につなげてまいります。
また、シルバー事業については、2023年9月に株式会社ケアクレスト(三重県津市)、12月には株式会社ウィズ(大阪市)の全株式を取得し、グループ化いたしました(いずれも非連結子会社)。引き続きM&Aに積極的に取り組むことで、トーカイグループとしてのサービス提供エリアの密度を高め、介護用品レンタルのサービス品質の向上とシェア拡大に一層努めてまいります。
① 前期比分析
当連結会計年度につきましては、主力のレンタル売上が好調に推移したことに加え、コロナ禍で厳しい環境が続いていた宿泊施設向けの寝具・リネンサプライ事業とクリーニング設備製造事業が大きく回復したことなどにより、全セグメントで増収となりました。利益面では、売上拡大のための資材費の増加や埼玉工場の稼働に係る費用の増加などにより健康生活サービスが減益となりましたが、お客様へのサービス提供価格及び契約内容の見直しや調剤薬局における処方箋受付枚数の増加、リースキン事業におけるグループ会社統合の効果が業績に寄与いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高138,222百万円(前年同期比8,037百万円増、6.2%増)、営業利益8,082百万円(前年同期比227百万円増、2.9%増)、経常利益8,505百万円(前年同期比424百万円増、5.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,810百万円(前年同期比296百万円減、4.8%減)となり、売上高は過去最高を更新いたしました。
(単位:百万円)
(注) 調整額は、主に事業セグメントに帰属しない一般管理費及びセグメント間取引消去であります。
病院関連事業では、戦略商品である「入院・入居セット」の介護福祉施設への営業を強化し、新規獲得に努めるとともに、サービス提供価格等お客様との契約内容見直しにも取り組みました。また、シルバー事業においては、埼玉メンテナンスセンターの開設やサービスセンターの設置により関東地域での事業基盤強化を図るなど、同エリアをはじめとした各地域でのシェア拡大に向けた取り組みを行いました。
これらの結果、病院関連事業の「入院・入居セット」やシルバー事業の介護用品レンタルの売上が好調に推移しました。また、寝具・リネンサプライ事業の売上が観光需要拡大に伴うホテル・旅館の客室稼働率回復により伸長したことに加え、クリーニング設備製造事業の売上が人手不足に起因する省人・省力化設備への投資意欲の高まりにより大幅に伸長したことから、当セグメントは前年同期比増収となりました。利益面につきましては、増収効果のほか、エネルギー原単位改善等生産性向上に努めたことによる利益貢献はあるものの、10月から稼働した埼玉工場に係る一時費用及び減価償却費等により前年同期の営業利益を僅かに下回りました。
(参考:主な指標等)
・病院関連事業
・シルバー事業
当期は7店舗の出店、2店舗の閉店により店舗数は合計154店舗となりました。また、在宅患者を対象とした訪問サービスや、かかりつけ薬剤師として、特に服薬期間中のフォローアップを積極的に行うことにより、医療機関や他職種との連携を強化するとともに、継続的な薬学管理を通じた薬物療法の質と安全性の向上に努めてまいりました。さらに、患者さまの利便性向上及び裾野拡大を目的に導入したLINEミニアプリの登録促進など、地域で一番選ばれる薬局になるための取り組みを推進しております。
これらの結果、前期に出店した4店舗を含めた新店効果に加え、既存店での処方箋枚数の増加や、かかりつけ機能強化による技術料売上の増加により、前年同期比増収増益となりました。
(参考:主な指標等)
c.環境サービス
リースキン事業では、トイレ周り商品の拡販に注力し、当該商品を切り口とした営業を強化するため、「トイレアドバイザー」の育成に努めております。また、非連結子会社1社、連結子会社1社の吸収合併による統合効果を最大限発揮するため、業務集約と効率化に取り組みました。ビル清掃管理事業では、院内感染防止のための清掃に注力し、より高い専門性が求められる手術室清掃にも取り組んでおります。
これらの結果、リースキン事業においてトイレ周り商品の売上が好調に推移したほか、非連結子会社の吸収合併により前年同期比増収となりました。利益面につきましては、子会社2社の吸収合併による統合効果が利益に貢献しました。また、ビル清掃管理事業においては、工程改善に加え、前期に発生した新規事業所立ち上げに係る一時費用等がなくなったことにより収益性が改善したほか、前期には不動産事業においても不動産売却に伴う一時的な費用の計上があったことから、前年同期比増益となりました。
(参考:主な指標等)
② 数値目標(計画:2023年5月11日公表業績予想)比分析
当連結会計年度につきましては、売上高135,609百万円、営業利益7,437百万円を数値目標として掲げ、その達成に向けて取り組んでまいりました。
売上高につきましては、環境サービスにおいて計画を下回ったものの、健康生活サービス及び調剤薬局サービスの売上伸長により、計画比2,613百万円増(1.9%増)の138,222百万円となりました。
営業利益につきましては、健康生活サービスにおける増収効果に加え、生産性向上、サービス提供価格の見直しに取り組んだことなどにより、計画比645百万円増(8.7%増)の8,082百万円となりました。
(単位:百万円)
(注) 調整額は、主に事業セグメントに帰属しない一般管理費及びセグメント間取引消去であります。
ホテル・旅館の客室稼働率の回復による寝具・リネンサプライ事業の売上伸長、省人・省力化設備への投資意欲の高まりによるクリーニング設備製造事業の売上伸長が見込を上回ったことなどから、計画比増収となりました。利益面につきましては、サービス提供価格の見直しを含めた増収効果に加え、工場におけるエネルギーコストが計画時点での見込を下回って推移したことなどから、計画比増益となりました。
処方箋単価及び処方箋受付枚数が計画を上回って推移したことから、計画比増収となりました。利益面につきましては、医薬品の供給ひっ迫などを背景とした原価上昇はあるものの、増収効果により計画比増益となりました。
リースキン事業及びビル清掃管理事業が売上計画未達となったことなどから、当セグメントの売上高は計画比減収となりました。一方、利益面につきましては、サービス提供価格の見直しやコスト低減に努めた結果、計画比増益となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の110,785百万円から4,140百万円増加し、114,926百万円となりました。これは、現金及び預金が5,084百万円、建設仮勘定が2,888百万円減少したものの、建物及び構築物が4,580百万円、投資有価証券が2,417百万円、機械装置及び運搬具が2,305百万円、受取手形及び売掛金が1,913百万円、土地が785百万円増加したことが主な要因となっております。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末の28,562百万円から425百万円減少し、28,137百万円となりました。これは、未払金が725百万円、繰延税金負債が400百万円、預り金(流動負債「その他」)が306百万円増加したものの、支払手形及び買掛金が1,357百万円、未払消費税等(流動負債「その他」)が279百万円、短期借入金が228百万円減少したことが主な要因となっております。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末の82,223百万円から4,565百万円増加し、86,789百万円となりました。これは、配当金の支払いによる減少が2,254百万円あったものの、親会社株主に帰属する当期純利益5,810百万円、その他有価証券評価差額金996百万円を計上したことが主な要因となっております。
この結果、自己資本比率は75.0%(前連結会計年度末比1.3%増)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,133百万円(14.4%)減少し、当連結会計年度末には30,407百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
当連結会計年度における営業活動により得られた資金は、8,036百万円(前年同期比555百万円減、6.5%減)となりました。
この主な要因は、税金等調整前当期純利益8,429百万円、減価償却費4,596百万円による資金増加要因が、売上債権の増加1,657百万円、仕入債務の減少1,449百万円、法人税等の支払2,556百万円による資金減少要因を上回ったことによるものであります。
当連結会計年度における投資活動により支出した資金は、10,206百万円(前年同期比3,970百万円増、63.7%増)となりました。
この主な要因は、有形固定資産の取得8,408百万円、投資有価証券の取得1,119百万円によるものであります。
当連結会計年度における財務活動により支出した資金は、3,196百万円(前年同期比763百万円増、31.4%増)となりました。
この主な要因は、長期借入金の返済530百万円、配当金の支払2,252百万円によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性について
① 資本の財源
当社グループは、当連結会計年度末において2,352百万円の有利子負債残高があります。財政基盤の強化については収益力及び資産効率の向上によることを基本としております。
② 資金の流動性管理
当社グループの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の35,541百万円に比べて5,133百万円減少し、当連結会計年度末には30,407百万円となりました。
資金の流動性については、事業規模に応じた現金及び現金同等物の適正額を維持することとしております。また、グループ内の資金効率を高めるため、余資は当社に集中し、不足するグループ会社に配分する制度を運用しております。
なお、キャッシュ・フローの関連数値は以下のとおりであります。
(5) 重要な会計方針及び見積り
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、リースキン・エンタープライズ・チェーン(以下「L.E.C.」という。)のフランチャイザーとして地方本部及び代理店と伴に全国に跨る営業網を確立し、また、永続的な互助共栄の友好関係を保持し、併せて社会環境衛生向上の一端を担うために、地方本部及び代理店とフランチャイズ契約関係を形成しております。契約の概要は次のとおりです。
(注) 1 「L.E.C.」のフランチャイズ組織は、フランチャイザーである「本部」(当社)、サブフランチャイザーである「地方本部」、フランチャイジーである「代理店」の3層構造となっており、それぞれが独立した法人によって経営されております。「リースキン代理店契約書」は独立した法人である「地方本部」と「代理店」を当事者とする契約でありますが、当社は、「本部」機能を有するとともに、「地方本部」「代理店」への指導を目的として、地方本部機能・代理店機能も同時に有しているため、当社が「地方本部」として直接代理店と「リースキン代理店契約書」を締結する場合があります。なお、2024年3月31日現在における「L.E.C.」組織の地方本部数は46社、代理店数は849店となっております。
2 ロイヤリティの徴収はございません。
(株式取得による連結子会社化)
当社は、2024年6月15日開催の役員会において、2024年7月1日付で当社の連結子会社であるたんぽぽ薬局株式会社が株式会社ミック・ジャパンから株式会社mik japanの発行株式の100%を取得することを決議しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご覧ください。
特記すべき事項はありません。