当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営の基本方針として、次のミッション、共有する価値観(Our Values)を掲げております。
<ミッション>
世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る
Connect the world’s data and make it useful for everyone
<共有する価値観(Our Values)>
・Customer Centric 現場に立ちお客様のためを考え抜く
・Proactive 自ら考え自ら行動する
・Respect 互いを尊重し会話をする
(2)目標とする経営指標
当社グループは、中長期において魅力的で稀有な高収益IT企業となり、企業価値を向上させていくことを経営の目標としており、具体的にはROE20%以上を恒常的に達成することを経営指標としております。また、中長期的な企業価値を要因として、株主の最終的な利益に整合した指標であるため、TSR(株主総利回り)を経営指標に加えております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、2024年4月1日に「株式会社セゾンテクノロジー」に商号変更いたしました。これは、現在多くの企業で進むデータ活用やDXによる社会変革はもちろん、テクノロジーを起点にした社会課題解決にさらに取組みたいという思いを込めております。当社グループは、前述のミッションのもと、人、データ連携、ガバナンス、そして地球環境に軸をおいたサステナビリティ経営を推進してまいります。
新コーポレートロゴ
新コーポレートロゴは、音をつなぐという意味を持つ音楽記号「タイ」を人の笑顔に見えるように配置することで、テクノロジーを通じて「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る」というミッションを実現し社会を笑顔にしていくという、商号変更に込めた決意を表現しております。タイの色は「スマイルレッド」と名付けました。
今後の経営方針につきましては、前連結会計年度から引き続き「4つのシフト(事業シフト、技術シフト、組織シフト、人材シフト)」を戦略として掲げ、iPaaS「HULFT Square」を基盤に、受託開発型からサービス提供型への事業構造の変革を推進してまいります。
・事業シフト(全社を挙げたデータ連携ビジネスの注力、ブランディング強化)
・技術シフト(次世代データエンジニア育成、未来を切り開くテクノロジーの探索)
・組織シフト(機能型組織への再編と強化、意思決定スピード向上)
・人材シフト(リスキリング、エンジニアリング)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、サステナビリティを巡る課題を地球規模の視点で捉え、またリスクの低減のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。中長期的な企業価値の向上の観点からこれらの課題へ対応するにあたり、サステナビリティ方針を策定の上、マテリアリティ(重要課題)を特定しております。
<サステナビリティ方針>
私たちは、「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る」というミッションのもと、地球規模の視点で未来を共創し、持続可能な社会の発展に取組みます。
<マテリアリティ>
・人 多様な人材による価値創造の促進
・データ連携 安全・安心なデータ連携により社会の発展へ貢献
・ガバナンス ガバナンスの透明性・実効性強化
・環境 地球環境・資源の保全と災害対策強化
当社グループは、この方針及びマテリアリティを踏まえて、持続可能な成長と社会の発展に貢献するため、環境や社会の変化に柔軟に対応し、ステークホルダーとの対話を通じて、より効果的な取組みを進めてまいります。
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティを日常の経営活動の一環としてより積極的・能動的に推進するため、代表取締役を委員長とした「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。同委員会は、当社グループの企業価値向上に向け、実効的なサステナビリティ経営の推進を図ることを目的としております。この実現のため、多様性を考慮したメンバーにより同委員会を構成しており、原則として月1回の定例会議を開催しております。同委員会では、重要事項(サステナビリティ方針、マテリアリティ及びKPI)の検討・見直し、KPI進捗状況のモニタリング、社内への知見普及等を議論しております。また、同委員会から経営会議及び取締役会に対して、当連結会計年度において、9回の付議・報告を実施いたしました。経営会議及び取締役会では、同委員会から付議・報告を踏まえて議論し、業務執行内容の監督・助言をしております。
サステナビリティ経営推進体制を含めたガバナンス体制については、「
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② 戦略 サステナビリティ推進委員会を中心に、マテリアリティの特定及びそれに紐づくKPI(サステナビリティ指標)を設定しております。これらは、国際基準に基づく社会課題要素と当社のミッションを踏まえてマテリアリティ候補を特定し、ステークホルダーへのヒアリングを通じて、最終的には、当社の経営会議及び取締役会で議論・審議した上で決定しております。なお、抽出された各社会課題の「リスク」と「機会」を整理し、それに基づくマテリアリティマップを作成することで自社における社会課題の重要度を定め、マテリアリティ特定の検討材料としております。マテリアリティやKPIについては、社会情勢等を踏まえ、適宜見直しをしております。 前述のマテリアリティのうち、当社グループの競争力を高めるために最も注力すべきテーマは、「人(多様な人材による価値創造の促進)」です。また、世界情勢も踏まえ、「環境(地球環境・資源の保全と災害対策強化)」に関する取組みも拡充すべきと考えております。サステナビリティ推進委員会では、これらを中心に議論しております。詳細は |
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③ リスク管理
・リスクの識別、評価プロセス
「
・リスク管理のプロセス
マテリアリティに紐づき作成したKPIは、社内ポータルサイトを活用し、社員が進捗確認できる仕組みを構築しております。サステナビリティ推進委員会は、KPIの主管部門と連携し、経営会議及び取締役会に対して必要に応じて付議・報告をしております。
また、リスク管理に向けた全社員への課題意識浸透のため、サステナビリティ推進委員会では、サステナビリ
ティ関連知見に関わる認識の共通化及び社内への知見普及も行っております。
・総合的リスク管理への統合プロセス
サステナビリティ経営において想定されるリスクは、当社経営に関わるリスクを総合的に特定・評価するための「リスク管理規程」に追加することにより、その他経営リスクと同様に全体的に管理し、必要な対策を講じております。
④ 指標と目標
当社グループは、策定した各マテリアリティにおいて、KPIと目標値を定めております。各マテリアリティにおけるKPIは以下のとおりです。なお、詳細については後述する
(2)人:多様な人材による価値創造の促進
当社グループがグローバルに事業を発展させていくとともに、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献するため、多種多様な強みやバックグラウンドを持ち能力を発揮できる人材や、自律的に未来を共創できる次世代を担う人材の採用・育成施策を実施しております。また、職場の安全と社員の心身の健康を守るとともに、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境の確保に取り組んでおります。
① ガバナンス
当社グループの人材戦略は、サステナビリティ推進委員会及び各事業責任者と人事担当部門で構成される人材開発会議を中心に議論し、策定しております。定期的に開催される会議体を通じ、社内の人材が直面する可能性のある課題の特定、価値観の共有、そして多様性と包摂性推進に関する方策が議論されます。また、これらの取組みを進める過程では、社内外のステークホルダーからの考え・意見も積極的に取り入れております。
② 戦略
・求める人物像
当社グループは、「共有する価値観(Our Values)」のもと、テクノロジーに熱意を持ち、絶えず学び続ける意欲を持つ人材を求めており、この価値観に共感し、お客様の課題や社会問題に対して積極的に技術的解決策を見出す能力を持つ人材の採用に注力しております。
・人材戦略
当社グループは、事業戦略として「4つのシフト」(事業シフト・技術シフト・組織シフト・人材シフト)を掲げ、エンジニアの成長と活躍をサポートし未来を切り開くテクノロジーの会社を目指しております。そのため、事業革新を推進できるDX・AI人材、お客様の課題に対して最適なソリューションを提案する技術営業や、製品開発などを担える高い専門的知識を持った高度エンジニアの採用・育成を積極的に推進しております。
また、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用にも重点を置き、国籍、性別、年齢、社会的背景など多様性を重視した採用活動を行っております。また、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を排除するための研修を実施し、採用プロセス全体の公平性を確保しております。
・人材育成方針
当社グループは、これまで培ってきたシステム開発のスキルに加え、データエンジニアリングに必要なスキルを習得するためのリスキリングや先端テクノロジーを見据えたアップスキリング等、個々人のキャリア開発を支援しております。さらに、次世代経営幹部候補の早期育成を図るためのプログラムや、データ連携ビジネスに不可欠な先進技術の習得サポート、データエンジニア・クラウドエンジニアの育成等、未来に向けた人材育成への投資も積極的に行っております。
・社内環境整備方針
当社グループは、在宅勤務や遠隔地勤務、フルフレックスタイム制など、全ての社員がさまざまなライフステージや価値観に応じた多様な働き方を選択できるよう働きやすい環境や制度を整備しております。また国家資格であるキャリアコンサルタントを有する社員による相談窓口を設置し、若手社員や育児・介護との両立を必要とする社員のキャリア設計をサポートするなど、充実した支援制度を提供しております。また、開かれたコミュニケーションを促進し、社員同士の相互理解を深めるためのイベントやワークショップなども定期的に開催しております。
③ リスク管理
「
④ 指標と目標
当社グループは、人的資本リスク及び機会の評価に用いる指標を「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」としております。当連結会計年度における実績値の詳細は、「
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指標 |
実績(前事業年度) |
実績(当事業年度) |
目標値※ |
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10.2 |
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50.0 |
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79.6 |
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※当社個別数値を記載しております。
※目標値はサステナビリティ推進委員会を中心に議論し、適宜見直しをしております。
(3)環境:気候変動への対応
地球規模の気候変動は、お客様、ビジネスパートナー及び当社グループ社員の生活基盤を変化させ、ひいては事業環境変化を引き起こすことが考えられます。中長期的視点において、当社サービスがお客様の事業課題改善に貢献し続けるために考慮すべき重要なリスクであると同時に、新たな事業機会であると考えております。未来にむけて豊かで持続可能な地球環境を守るため、省エネルギー化や地球温暖化防止等の取組みを積極的に進めるとともに、環境への取組みを推進してまいります。
① ガバナンス
「
② 戦略
当社グループは、「自社への影響度・発生可能性」と「ステークホルダーへの影響度」という観点から、気候関連リスク・機会を網羅的に抽出・特定し、その重要性を評価しました。その中で特に重要性が高いと評価した気候関連リスク・機会は以下のとおりです。
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リスク・機会の分類 |
気候変動関連リスク・機会 |
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リスク |
移行 |
政策・法規制 |
・カーボンプライシングの導入等、規制強化に伴う事業運営コストの増加 |
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技術/市場 |
・環境に対する社会の変化に対応できず、競争優位性・訴求力が低下して企業業績に影響を及ぼすリスク |
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・環境への取組みが不十分とみなされた場合や社会的な抑止活動に協力できなかった場合の企業価値・ブランドイメージの低下 |
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物理的 |
急性 |
・自然災害による事業所の損害、社会インフラ(電気、通信、公共交通機関)停止、社内のIT基盤の使用困難、物理的なデータの棄損 |
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慢性 |
・お客様やビジネスパートナーの事業環境変化、お客様や当社社員の生活基盤変化の発生により、事業活動が困難となる/企業業績に影響を及ぼすリスク |
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機会 |
エネルギー源 |
・省資源・省エネルギー化による事業コストの低下 |
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・災害に備えた事業活動のレジリエンス強化 |
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市場 |
・サステナビリティを重視したビジネスモデルによる企業価値の向上 |
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・高まる環境意識に対応した商品・サービスの提供によるマーケット獲得 |
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・電力調達の多様化による価格変動リスクの緩和 |
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・温室効果ガス排出量ゼロの達成により、炭素税導入時の課税リスク緩和 |
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③ リスク管理
「
④ 指標と目標
当社グループは、気候関連リスク及び機会の評価に用いる指標を「温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)」、「消費電力量に占める再生可能エネルギー電力比率」としております。なお、目標数値はサステナビリティ推進委員会を中心に議論し、適宜見直しております。
<温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)>
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実績(単位:t-CO2) |
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目標値 2030年度 |
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前事業年度 |
当事業年度 |
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Scope1 |
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0.11% |
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0.12% |
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ネットゼロ 達成 |
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Scope2 |
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21.15% |
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18.58% |
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Scope3 |
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78.74% |
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81.30% |
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合計 (Scope1・2・3) |
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100.00% |
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100.00% |
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※Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
※Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
※Scope3:Scope1・2以外の間接排出(算定事業者の活動に関連する他社の排出)
企業活動を分類した15個のカテゴリ、その他(任意)により構成
※当社個別数値を記載しております。
<消費電力量に占める再生可能エネルギー電力比率>
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前事業年度 |
当事業年度 |
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目標値 (2026年度) |
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消費電力量に占める 再生可能エネルギー電力比率 |
8.9% |
9.0% |
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100.0% |
※当社個別数値を記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
(1)情報システムの支障又は情報セキュリティ及び個人情報保護の不備に関するリスク
当社グループは、クレジット業、流通・サービス業の情報システム等の開発・運用受託及び外部パブリッククラウドサービスを利用した自社サービスの提供を行っております。そのため、当社グループは、最新の設備と強固なセキュリティを備えたデータセンターの構築、サービス提供に必要十分な要件を備えたパブリッククラウドサービスの選定及び情報セキュリティや技術面での社員教育に取組んでおりますが、万一、これらの通信ネットワークや電源系統を含む情報システムの支障又はコンピュータウイルスやサイバー攻撃等による個人情報漏洩を含む情報セキュリティ上の不備が生じた場合、当社グループにおいて、信用の失墜、お客様の喪失、損害の賠償等の影響を生じる可能性があります。
当社グループでは、当該リスクへの対応策として、ファイアウォール、VPN等、不正アクセスを防止するシステム対策を実施するとともに、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)に準拠した体制やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)構築、個人情報保護教育の実施を行っております。またグローバルビジネスへの対応のため、GDPR(EU一般データ保護規則)等、各国/地域の法規制等を考慮した社内規則等を定める等、対応強化に努めております。
(2)気候変動及び災害に関するリスク
当社グループは、サステナビリティ方針において、地球規模の視点で未来を共創し、持続可能な社会の発展に取り組むことを掲げております。地球規模の気候変動は、お客様、ビジネスパートナー及び当社社員の生活基盤を変化させ、ひいては事業環境変化を引き起こすことが考えられます。中長期的視点において、当社サービスがお客様の事業課題改善に貢献し続けるために考慮すべき重要なリスクと考えております。
また、当社グループは、データセンターを中核にしたシステム運用、サポートサービス運営において、火事、地震、戦争、感染症、セキュリティ等に関するリスクを認識しております。当社データセンターにおきましては耐震・耐火等の対策を講じており一定の安全性を確保しておりますが、大地震、火災、その他の自然災害及び設備の不具合、運用ミス等が発生した場合、サービスの提供に重大な支障が生じ、損害賠償や信頼喪失等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症等によりサポート対応する当社社員やビジネスパートナーが必要なリソースにアクセスできない場合、事業継続が不能となるリスクがあります。
当社グループでは、このようなシステム運用、サポートサービスの障害や停止を回避するために、設備投資、セキュリティ対策、ビジネスパートナーからの情報収集、社外からのリソースへのアクセス経路の確保、社内教育の充実等の諸施策を実施しております。なお、当対策はシステム運用、サポートにとどまらず、システム開発、パッケージ販売及び社内のバックヤード部門全てに実効性のあるものとしております。
(3)技術者の確保、育成に関するリスク
情報システムの設計、構築等は、知識集約型の業務であると同時に労働集約的な面があり、事業拡大のためには一定水準以上のスキルを有する優秀な技術者の確保が不可欠なものと認識しております。現時点では、当社グループの人事制度・教育制度により、必要な技術者は確保されておりますが、労働市場の逼迫により当社グループが必要とする優秀な技術者又は労働力を確保できない場合、テレワーク環境における入社者のフォローが不足した場合、又は当社グループの従業員が大量に退職した場合には、当社グループの事業展開が制約される可能性があります。
当社グループでは、当該リスクへの対応策として、応募から面接・入社までの過程における当社グループ社員との接点増強によるミスマッチの最小化、オンラインのみならず対面での社内イベント開催によるリアルコミュニケーションの活性化、エンジニア等専門職や育児・介護等のライフイベントを迎えた社員のための多様なキャリアパスや働きやすい制度・環境作りに努めております。
(4)受託開発に関するリスク
当社グループは、一定の規模以上の受託開発プロジェクトに対し「当該プロジェクトに関与しない者による見積りの適正性に関するレビュー」を実施するとともに、プロジェクト開発手法の標準化推進、プロジェクト管理者の育成等、プロジェクトの品質向上及び管理体制の強化に継続して取組んでおります。しかしながら、受託開発プロジェクトでは、受託時に適正な採算が見込まれると判断したプロジェクトであっても、開発段階におけるプロジェクト管理の問題、想定外の開発範囲の拡大及び作業工数の増加等の理由により不採算プロジェクトとなることがあり、その場合、受注損失の計上や納期遅延に伴う損害の賠償、関連する資産に係る減損損失の計上等、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、当該リスクへの対応策として、プロジェクト審議会による提案/プロジェクト計画/プロジェクト実行中のチェック(同一基準でプロジェクト状況を確認できるチェックシート(プロジェクト審議会チェックシート)導入)、関連規則等の整備、全社開発標準・開発手順の浸透等を実施しております。また、規則/手順とおりにプロジェクトが実施されているか定期的なモニタリングも行っております。
(5)新規製品・サービスのためのソフトウェア開発に関するリスク
当社グループは、市場競争力を強化・維持するための重要な投資として自社サービス・ソフトウェアの開発に注力しておりますが、特に新規サービスの開発は不確実性も高く将来収益計画の下方修正又は開発計画の遅延・コスト増等により、投資回収計画が当初計画に達しない見込みとなった場合には、固定資産に係る減損損失を計上する可能性があります。
当社グループでは、当該リスクへの対応策として、プロジェクト編成会議、マイルストーンレビュー等によるプロジェクト進捗のモニタリング、関連規則等の整備、モダン開発の推進等を実施しております。また、社内の専門会議体や経営会議では、お客様ニーズ把握のため、新規案件の状況等について、レビュー、情報共有を毎月複数回実施しております。
(6)特定の取引先の動向に関するリスク
当社グループは、株式会社クレディセゾン向けの売上高が売上高全体の30.2%(当連結会計年度)を占めており、当該企業向けの販売額が縮小した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、経営方針に掲げている新技術・新領域への事業展開を推進し、新たな市場・顧客へより収益性の高い事業を展開することで、当該リスクへの対応を図ってまいります。
(7)知的財産に関するリスク
当社グループの主力製品である「HULFT」「DataSpider Servista」「HULFT Square」等の販売において、グローバル展開とお客様DX領域への注力を推進しております。このような新技術・新領域へ事業を展開するうえで、当社グループでは独自の技術・ノウハウ等の保護・保全や第三者の知的財産権を侵害しないよう十分な注意を払っておりますが、一部地域の法的制度の違い等により、知的財産権に関する問題が起きる可能性があります。これにより、他者の保有する知的財産権を侵害したとして、損害賠償請求を受ける可能性があります。また、知的財産権等の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品、又はサービスが提供できなくなる可能性があります。いずれの場合も当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、このようなリスクを回避するために、コンプライアンス部門及び品質向上担当部門を中心とした他社の知的財産の確認及び当社グループが保有する知的財産の適切な管理を実施しております。
(8)為替変動に関するリスク
当社グループは、海外拠点への製品サービス提供や開発委託等グループ内の取引及び海外ベンダーのサービス利用等グローバルな企業活動において、急激な為替変動が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、個人消費や設備投資が持ち直す等、全体として緩やかに回復しております。一方で、地政学リスクの高まりにより不安定な国際情勢が続いており、依然として景気の先行きは不透明な状況にあります。
当社グループが属する情報サービス産業においては、グローバル化、消費者ニーズの多様化及び国内労働力人口の減少等ビジネス環境の急速な変化や不確実性への対応を目的に、企業・行政のDXに対する意欲が高まり、IT投資を後押しすることから、引き続き成長が予想されております。
当社グループは、「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る」をミッションに、50年を超えて培ったテクノロジーにより、金融業・流通小売業をはじめとする多種多様な業種向けシステム開発・運用等及びデータ連携サービスを提供しております。前連結会計年度にリリースしたiPaaS(クラウド型データ連携プラットフォーム)である「HULFT Square」を基盤として、より一層の事業構造変革を推し進めるべく、当連結会計年度は戦略として「4つのシフト」(事業シフト・技術シフト・組織シフト・人材シフト)を実行いたしました。
このような中、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高は23,864百万円(前連結会計年度比0.4%減)、営業利益は1,024百万円(同53.1%減)、経常利益は1,072百万円(同51.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は603百万円(同58.1%減)となりました。
売上高は、HULFT事業及びデータプラットフォーム事業について増収となったものの、流通ITサービス事業及びフィナンシャルITサービス事業について減収となったこと等により、減収となりました。営業利益及び経常利益は、HULFT事業が順調に増益となった一方で、流通ITサービス事業において、受注損失引当金繰入額1,805百万円を売上原価に計上したこと等により、減益となりました。営業利益及び経常利益の減益に加えて、データプラットフォーム事業の減損損失等により、親会社株主に帰属する当期純利益は、大幅な減益となりました。
当連結会計年度におけるセグメント別の業績は次のとおりであります。以下、セグメント間取引については相殺消去しておりません。
(HULFT事業)
HULFT事業は、国内データ連携ソフトウェアのスタンダードである当社の主力製品「HULFT」、「DataSpider Servista」及び関連製品群の販売・サポートサービスを提供しております。
売上高は、ライセンス販売の増加及びサポートサービスの更新が順調に推移したこと等により、9,951百万円(前連結会計年度比6.8%増)となりました。「HULFT」ライセンス販売は、レガシーシステム更改に伴う大型のデータ連携案件を獲得できたこと等により増加し、また「DataSpider Servista」ライセンス販売は、各企業内のDX化が進んだことでビジネス部門のIT活用が拡大したこと等により増加しております。当連結会計年度末現在におけるサポートサービス契約本数は、前連結会計年度より、「HULFT」は2,542本増加し62,434本、「DataSpider Servista」は303本増加し5,463本と順調に推移しております。営業利益は、売上高の増加等により、4,223百万円(同16.9%増)となりました。
(データプラットフォーム事業)
データプラットフォーム事業は、当社の強みである「HULFT」、「DataSpider Servista」、「HULFT Square」を活用し、企業内・企業間のシステムやデータとSaaSをつなぐことで、業務効率化、経営情報可視化による意思決定支援及び経営刷新に繋げる各種サービスを提供しております。
売上高は、DX領域が拡大したこと等により、2,481百万円(前連結会計年度比17.3%増)となりました。一方で、前連結会計年度までは、「HULFT Square」に関するコストを新サービスの研究開発として全社費用に計上しておりましたが、「HULFT Square」を2023年2月にリリースしたことに伴い、当連結会計年度よりデータプラットフォーム事業の原価に計上したこと等により、2,064百万円の営業損失(前連結会計年度は691百万円の営業損失)となりました。
(流通ITサービス事業)
流通ITサービス事業は、流通小売業・航空業向けシステム開発・運用等を提供しております。
売上高は、既存領域における情報処理サービスの減少等により、2,812百万円(前連結会計年度比8.9%減)となりました。また、開発を進めていた一部プロジェクトに高負荷が発生したことにより、この立て直しに必要な開発コストとして受注損失引当金繰入額1,805百万円を売上原価に計上しております。この結果、1,852百万円の営業損失(前連結会計年度は29百万円の営業利益)となりました。
(フィナンシャルITサービス事業)
フィナンシャルITサービス事業は、金融業向けシステム開発・運用等を提供しております。
売上高は、既存領域における情報処理サービスの減少等により、8,618百万円(前連結会計年度比9.1%減)となりました。営業利益は、売上高の減少等により、717百万円(同10.5%減)となりました。
(トピックス)
・iPaaS「HULFT Square」拡大と事業シフト進展
当社グループは、受託開発型からサービス提供型への事業シフトを推進しており、iPaaS「HULFT Square」をこの事業シフトの成長ドライバーとしております。当連結会計年度において、「HULFT Square」のお客様数は着実に増加しており、欧米市場向けの提供も新たに開始いたしました。また、四半期ごとの機能アップデートに加えて、CO2排出量算定・電子契約・人事データ活用等、お客様ニーズの高いユースケースにおける各種データ連携機能をテンプレート化して提供しております。これらiPaaS領域の提供規模拡大に加えて、従来の「HULFT」等パッケージ製品のライセンス・サポートサービス販売も進展した結果、データ連携ビジネス比率は52%まで成長しております。
・パブリッククラウドのコンテナサービスに対応した「HULFT」提供開始
販売から30年を迎え、データ連携のスタンダードとなっている「HULFT」のメジャーバージョンアップを実施し、新たな製品として「HULFT10」を発表しました。日々激しく変化するビジネス環境に対して、IT環境整備も急務となっており、「HULFT10」はそのような市場・お客様の声を製品に取り込みながら、開発を進めてまいりました。今回、技術シフトを進め、本製品ラインナップの第一弾として、「HULFT10 for Container Services」の提供を開始しております。「必要な時にすぐ利用開始」「リソース・コスト最適化」「外部サービスとシームレスに連携」「セキュアな通信」といった特徴があり、コンテナを使って基幹システムとのデータ連携を柔軟・安全に実行したいお客様のニーズを満たすサービスです。なお、今後はオンプレミス環境で利用可能な機能の提供も予定しております。
・人的資本の拡充
当社グループがサステナビリティ経営を推進するにあたり人的資本は特に重要であり、そのための人材採用・育成といった人材シフト及び時間・場所にとらわれることなく柔軟に働ける環境整備を進めております。当連結会計年度においても人材採用は進展し、国内で新たに94名を採用いたしました。また、全社を挙げて注力するデータ連携ビジネスを一層拡大すべく、クラウド・データ・AI等の技術教育に加えて、北米・欧州で行われる海外カンファレンスへのブース出展・視察も行いました。そのような中、当連結会計年度において4名の社員がパブリッククラウドサービスを提供する大手企業から表彰を受けるなど、技術レベルも着実に向上しております。
当連結会計年度の財政状態の概要は次のとおりであります。
a.資産
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より1,397百万円増加し、22,696百万円となりました。主な増加要因は、現金及び預金が同627百万円増加したこと、繰延税金資産が同397百万円増加したこと、退職給付に係る資産が同350百万円増加したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、売掛金が同126百万円減少したこと、無形固定資産が同124百万円減少したこと等によるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
(HULFT事業)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より86百万円増加し、3,453百万円となりました。主な増加要因は、現金及び預金が同109百万円増加したこと等によるものであります。
(データプラットフォーム事業)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より59百万円増加し、715百万円となりました。主な増加要因は、前払費用が同41百万円増加したこと等によるものであります。
(流通ITサービス事業)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より65百万円減少し、1,207百万円となりました。主な減少要因は、売掛金が同100百万円減少したこと等によるものであります。
(フィナンシャルITサービス事業)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より74百万円減少し、2,647百万円となりました。主な減少要因は、減価償却等により有形及び無形固定資産が同194百万円減少したこと等によるものであります。
b.負債
負債合計は同1,919百万円増加し、8,476百万円となりました。主な増加要因は、受注損失引当金が同737百万円増加したこと、未払法人税等が同419百万円増加したこと、前受金が同363百万円増加したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、賞与引当金が同153百万円減少したこと等によるものであります。
c.純資産
純資産合計は同522百万円減少し、14,220百万円となりました。この要因は、利益剰余金が、剰余金処分による配当財源への割当てにより同1,457百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により同603百万円増加したこと等によるものであります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末より6.5ポイント減少し、62.7%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より165百万円増加し、13,364百万円となりました。各キャッシュ・フローの増減状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,280百万円(前連結会計年度は2,203百万円の獲得)となりました。
主な増加要因は、税金等調整前当期純利益が983百万円となったこと、受注損失引当金が737百万円増加したこと、減価償却費677百万円を計上したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、法人税等449百万円を支払ったこと、賞与引当金が157百万円減少したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は759百万円(前連結会計年度は565百万円の使用)となりました。
主な減少要因は、定期預金の預入により442百万円を支出したこと、ソフトウェア開発やハードウェア購入等に324百万円を支出したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,461百万円(前連結会計年度は1,462百万円の使用)となりました。
主な減少要因は、配当金の支払1,457百万円があったこと等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月 1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
増減 |
|
|
生産高(千円) |
生産高(千円) |
生産高 (千円) |
増減率 (%) |
|
|
HULFT事業 |
9,310,485 |
9,950,838 |
640,352 |
6.88 |
|
データプラットフォーム事業 |
2,104,874 |
2,480,344 |
375,469 |
17.84 |
|
流通ITサービス事業 |
3,080,343 |
2,810,365 |
△269,977 |
△8.76 |
|
フィナンシャルITサービス事業 |
9,450,362 |
8,603,063 |
△847,299 |
△8.97 |
|
合計 |
23,946,066 |
23,844,611 |
△101,454 |
△0.42 |
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月 1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
増減 |
|||
|
受注高 (千円) |
受注残高 (千円) |
受注高 (千円) |
受注残高 (千円) |
受注高 (千円) |
受注残高 (千円) |
|
|
HULFT事業 |
9,947,214 |
4,298,478 |
10,449,533 |
4,353,687 |
502,319 |
55,209 |
|
データプラットフォーム事業 |
2,012,594 |
747,578 |
2,479,668 |
738,368 |
467,074 |
△9,210 |
|
流通ITサービス事業 |
3,406,822 |
1,856,037 |
3,281,870 |
2,257,074 |
△124,952 |
401,036 |
|
フィナンシャルITサービス事業 |
8,784,692 |
4,924,203 |
8,504,401 |
4,642,184 |
△280,291 |
△282,019 |
|
合計 |
24,151,323 |
11,826,297 |
24,715,473 |
11,991,314 |
564,149 |
165,016 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月 1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
増減 |
|
|
販売高(千円) |
販売高(千円) |
販売高 (千円) |
増減率 (%) |
|
|
HULFT事業 |
9,314,392 |
9,951,222 |
636,830 |
6.84 |
|
データプラットフォーム事業 |
2,115,701 |
2,481,758 |
366,057 |
17.30 |
|
流通ITサービス事業 |
3,086,360 |
2,812,473 |
△273,886 |
△8.87 |
|
フィナンシャルITサービス事業 |
9,482,242 |
8,618,823 |
△863,419 |
△9.11 |
|
合計 |
23,998,697 |
23,864,278 |
△134,418 |
△0.56 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しておりません。また、セグメント間の振替高を含めて表示しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月 1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社クレディセゾン |
7,527,178 |
31.4 |
7,207,510 |
30.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
・「当連結会計年度の経営成績等」及び「セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況」に関する分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
・経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
・資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、外注費や労務費等の製造経費、人件費や借地借家料等の販売費及び一般管理費によるものであります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、国内及び海外拠点における製品開発、研究開発投資等によるものであります。運転資金及び投資資金は、主として自己資金で調達しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は、リース債務9百万円となっております。また、現金及び現金同等物の残高は13,364百万円となっております。
③ 重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。
連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における資産・負債の報告数値及び当連結会計年度における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に下記の会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断等に影響を及ぼすと考えております。
a.市場販売目的のソフトウェアの減価償却の方法
市場販売目的のソフトウェアの減価償却は、製品ごとに未償却残高を、見込販売収益を基礎として当連結会計年度の実績販売収益に対応して計算した金額と残存有効期間に基づく均等配分額のいずれか多い金額で償却を行うものとしております。見込販売収益が減少した場合、ソフトウェアの減価償却費が増加する可能性があります。
b.固定資産の減損
固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損処理の要否を検討しております。資産計上したサーバー等のハードウェアやサービスの提供に用いるソフトウェア、開発仕掛中のソフトウェア等について、事業環境の悪化や開発コストの増加等で当初想定した投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合には、固定資産の減損処理を実施する可能性があります。
c.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は毎期、過去の課税所得の推移や将来の課税所得の見込等を勘案し、回収可能性を慎重に検討し計上しております。回収の実現性が低いと判断した場合には適正と考えられる金額へ減額する可能性があります。
d.進捗度の見積りに基づく収益認識及び受注損失引当金
請負契約等の顧客に対して成果物の引き渡し義務を伴う受託システム開発については、合理的に履行義務の充足に係る進捗度を見積ることができる場合には、当該進捗度に基づき一定期間にわたり収益を認識しております。
履行義務の充足に係る進捗度の見積りにあたっては、見積原価総額に対する実際発生原価の割合により測定し、それに基づき収益を認識しております。見積原価総額は、各プロジェクトの特性、遂行体制、納期、進捗状況等に基づき、作業内容や工数を主要な仮定として見積っております。
また、当連結会計年度末において将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能なものについては、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額に対して、受注損失引当金を計上しております。
受託システム開発は、契約ごとの個別性が強く、顧客要望の高度化、プロジェクトの複雑化や完成までの事業環境の変化等によって、当初見積り時には予見不能な作業工数の増加により見積りの修正が必要になることがあります。見積原価総額が大幅に変動した場合には、収益、受注損失引当金及び売上原価に影響を与える可能性があります。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中長期において魅力的で稀有な高収益IT企業となり、企業価値を向上させていくことを経営の目標としており、具体的にはROE20%以上を恒常的に達成することを経営指標としております。
当連結会計年度は、流通ITサービス事業において、受注損失引当金繰入額1,805百万円を売上原価に計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益が減少(前連結会計年度比58.1%減)いたしましたので、ROEは4.2%となり計画値8.9%を下回る結果となりましたが、今後も目標水準の到達へ向けた経営を意識してまいります。
翌連結会計年度は、当連結会計年度の流通ITサービス事業において発生した受注損失引当金の計上がなくなることから、ROEは10.5%に回復する計画です。なお、当社グループの製品サービス開発及び人的資本への費用投下は継続してまいります。
(ROE推移)
|
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
計画 |
15.0% |
14.0% |
8.9% |
8.9% |
10.5% |
|
実績 |
18.3% |
14.3% |
9.8% |
4.2% |
- |
また、当社グループは、中長期的な企業価値を要因として、株主の最終的な利益に整合した指標であるため、TSR(株主総利回り)を経営指標の1つに設定しております。
当社グループの事業構造は、システム開発・運用と自社パッケージソフトウェア販売とがバランスしており、
情報技術産業の中でも類似の事業構造を持つ企業が少ないと考えます。従って、ベンチマークとするTSRは
一定数の上場企業を含み、恣意性を排除した対象とするため、GICS(世界産業分類基準)における当社が属する
産業グループ(4510:ソフトウェア・サービス)に同様に属する国内上場企業のTSRとしております。
評価期間は、2019年3月末を基準(100%)として評価をしており、その推移は次のとおりです。
|
|
2020年3月末 |
2021年3月末 |
2022年3月末 |
2023年3月末 |
2024年3月末 |
|
当社 |
119.2% |
160.5% |
149.6% |
151.1% |
169.1% |
|
同業他社 平均 |
87.0% |
135.6% |
121.9% |
124.4% |
150.8% |
当社グループのTSRは業界平均を上回って推移しております。これは、評価期間の基準となる2019年3月末の当社グループ株価が相対的に低かったことも一因ではありますが、当社グループも含めたDXに関わる銘柄がコロナ禍を契機にTSRを押し上げたことに加えて、かねてより当社グループが進めている受託開発型からサービス提供型への事業シフトが資本市場に評価された結果だと推察されます。当社グループは引き続き資本市場との対話に努めてまいります。
当社は認識した重要な契約について、該当する期にご報告をしておりましたが、令和5年内閣府令第57号「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」による「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正趣旨に鑑み、経営上の重要な契約について、以下のとおり記載いたします。
(1)株式会社クレディセゾンとの経営上の重要な契約
当社は、株式会社クレディセゾン(以下「クレディセゾン」という。)と2008年10月1日付で「グループ経営に関する取り決め書」を、2021年11月17日付で同取り決め書に関する「覚書」を締結しております。
(本契約の内容)
クレディセゾンと当社は、密接な連携のもとにグループ運営を行うことがグループ全体の利益に資することとなるとの認識に基づき、グループ経営管理を円滑に運営することを目的として、その具体的な取り決めを行う。
(事前通知事項)
当社の経営上の基本的事項について、当社はクレディセゾンに事前通知する。
(役員派遣)
クレディセゾンは、当社の指名・報酬委員会に対し取締役の候補者2名を提案することができる。
(株式引受権)
クレディセゾンは、当社が株式等の発行、処分又は付与等を行う場合、その持分比率に応じて優先引受権を有する。
(2)株式会社メルコグループ及び株式会社メルコホールディングスとの経営上の重要な契約
当社は、株式会社メルコホールディングス(以下「メルコホールディングス」という。)と2021年10月29日付で「資本業務提携契約」を締結し、さらに、株式会社メルコグループ(以下「メルコグループ」という。)及びメルコホールディングスと2024年3月19日付で、同資本業務提携契約を3者間契約に変更する契約を締結しております。
なお、当該契約に基づきメルコホールディングスは81,000株、メルコグループは3,240,000株の当社株式を保有しております。
(本契約の内容)
メルコグループとメルコホールディングスが当社の発行する株式をそれぞれ保有することにより、両当事者間における資本提携(以下「本資本提携」という。)を行うこと、並びに、本資本提携を基礎として、両当事者グループの経営資源を有効活用することにより、相互に、事業分野及び事業規模の拡大を実現し、もって、両当事者グループの企業価値の向上を図るため、当社とメルコホールディングスにおいて製品を組み合わせた製品開発及び販売チャネルの相互活用を実施するべく、協議及び検討することを合意する。
(事前通知事項)
当社の経営上の基本的事項について、当社はメルコグループ及びメルコホールディングスに事前通知する。ただし、メルコグループ及びメルコホールディングスが保有する当社の株式に係る議決権割合の合計が20%未満となった場合にはこの限りではない。
(役員派遣)
メルコホールディングスは、当社の指名・報酬委員会に対し取締役の候補者1名を提案することができる。
(株式引受権)
メルコグループ及びメルコホールディングスは、当社が株式等の発行、処分又は付与等を行う場合、その持分比率に応じて優先引受権を有する。
当社グループは、強みである“つなぐ”技術をキーにした新技術・新市場への新たな製品・サービスの創出を推進しており、大規模言語モデル(Large Language Model)等先端テクノロジーの研究等に取り組んでおります。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は