第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、経営の基本方針として、次のミッション、共有する価値観(Our Values)を掲げております。

<ミッション>

 世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る

 Connect the world’s data and make it useful for everyone

<共有する価値観(Our Values)>

 ・Customer Centric  現場に立ちお客様のためを考え抜く

 ・Proactive       自ら考え自ら行動する

 ・Respect        互いを尊重し会話をする

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、中長期において魅力的で稀有な高収益IT企業となり、企業価値を向上させていくことを経営の目標としており、具体的にはROE20%以上を恒常的に達成することを経営指標としております。また、中長期的な企業価値を要因として、株主の最終的な利益に整合した指標であるため、TSR(株主総利回り)を経営指標に加えております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、半世紀にわたり金融・流通業界の基幹業務システムを支えてきました。お客様のことを考え抜いた開発現場から生まれた「HULFT」は、国内のデータ連携ソフトウェアのデファクトスタンダードになるまで成長し、お客様業務の安全・安心なデータ連携を支え続けております。データ利活用や生成AIの進化は加速しており、企業がAI活用のためにデータを整流化し、それを各システムに取り込むプロセスが発生することにより、データ連携基盤のニーズも高まっております。そのような中、当社グループは日本発のクラウド型データ連携プラットフォーム「HULFT Square」の提供を開始しております。今後も自社のテクノロジーを一層磨き、卓越したソリューションを提供することで、お客様のビジネスの成功と社会の発展に貢献してまいります。

 

 当社グループにおける中期的な経営方針は、システム受託型から自社製品サービス提供型に事業構造を変革させていくことであり、その実現に向け、事業戦略として、「4つのシフト(事業シフト・技術シフト・組織シフト・人材シフト)」に取組んでまいります。

 

①事業シフト

 システム受託型から自社製品サービス提供型に事業構造を変革させるべく、全社を挙げたデータ連携ビジネス(HULFT事業及びデータプラットフォーム事業)の拡大に注力いたします。データ連携ビジネスの売上比率は、当連結会計年度末で52.6%(前連結会計年度比0.5ポイント増)となりました。2028年3月期にはこの比率を70%まで高める計画です。成長ドライバーとする「HULFT Square」の機能強化に加え、これまで積み上げてきた基幹業務システムの開発・運用力も融合させることにより、当社グループならではの強みを活かしてデータ連携ビジネスを強化してまいります。

 

②技術シフト

 当連結会計年度において、シリコンバレーに拠点をもつベンチャーキャピタル「DNX Ventures」の第4号米国ファンドへの出資、Salesforce主催の「Dreamforce 2024」への出展等、海外の先端テクノロジーに積極的に触れてまいりました。社内においても組織横断の研究活動やトップエンジニア育成・社外発信活動により、パブリッククラウド大手から表彰を受ける等、技術力向上の成果が出始めております。引き続きデータマネジメント、AI、クラウド等当社事業に密接に変わる技術領域に重点を置き、先端テクノロジーに触れることで自社製品サービスを強化し、またエンジニアの育成にも取組んでまいります。

 

③組織シフト

 機能別組織への改組を通じて、エンジニア間の相互連携を強化し、これまで顧客業種ごとに行われていたシステム受託ビジネスを横断的に展開できる体制を整えてまいりました。引き続き組織リソースの最大化を図り、これまで以上に適切な意思決定を行ってまいります。

 

④人材シフト

 当社グループがサステナブルな経営を推進するためにも、人的資本の拡充は特に重要です。「技術シフト」を通じて社員の技術力向上を図り、テクノロジーカンパニーとして社会的価値を創造してまいります。また、社員一人ひとりの人生が充実することも重要であり、この両輪が機能する環境づくりに努めてまいります。

 また、ガバナンスの観点からも組織における多様性に注目しております。特に課題として認識しているジェンダー平等に向け、2030年における女性管理職比率30%を目標値として設定し、これに向けて計画的な取組みを進めております。

 

 なお、米国による関税強化の影響については、当社グループの対米輸出はもともと微小であるため、直接的な影響はないと見込んでおります。ただし、当社のお客様の投資マインドが冷えることによる悪影響はゼロではないため、引き続き注視いたします。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社グループは、サステナビリティを巡る課題を地球規模の視点で捉え、またリスクの低減のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。中長期的な企業価値の向上の観点からこれらの課題へ対応するにあたり、サステナビリティ方針を策定の上、マテリアリティ(重要課題)を特定しております。

 

<サステナビリティ方針>

 私たちは、「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る」というミッションのもと、地球規模の視点で未来を共創し、持続可能な社会の発展に取組みます。

<マテリアリティ>

  ・人      多様な人材による価値創造の促進

  ・データ連携  安全・安心なデータ連携により社会の発展へ貢献

  ・ガバナンス  ガバナンスの透明性・実効性強化

  ・環境     地球環境・資源の保全と災害対策強化

 

 当社グループは、この方針及びマテリアリティを踏まえて、持続可能な成長と社会の発展に貢献するため、環境や社会の変化に柔軟に対応し、ステークホルダーとの対話を通じて、より効果的な取組みを進めてまいります。

 

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティを日常の経営活動の一環としてより積極的・能動的に推進するため、執行役員 経営管理本部長を委員長とした「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。同委員会は、当社グループの企業価値向上に向け、実効的なサステナビリティ経営の推進を図ることを目的としております。この実現のため、多様性を考慮したメンバーにより同委員会を構成しており、原則として月1回の定例会議を開催しております。同委員会では、重要事項(サステナビリティ方針、マテリアリティ及びKPI)の検討・見直し、KPI進捗状況のモニタリング、社内への知見普及等を実施してきました。また、同委員会から、代表取締役が出席する経営会議及び取締役会に対して、付議・報告をしております。経営会議及び取締役会では、同委員会からの付議・報告を踏まえて議論し、業務執行内容の監督・助言をしております。

 サステナビリティ経営推進体制を含めたガバナンス体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 

 

② 戦略

 サステナビリティ推進委員会を中心に、マテリアリティの特定及びそれに紐づくKPI(サステナビリティ指標)を設定しております。これらは、国際基準に基づく社会課題要素と当社のミッションを踏まえてマテリアリティ候補を特定し、ステークホルダーへのヒアリングを通じて、最終的には、当社の経営会議及び取締役会で議論・審議したうえで決定しております。なお、抽出された各社会課題の「リスク」と「機会」を整理し、それに基づくマテリアリティマップを作成することで自社における社会課題の重要度を定め、マテリアリティ特定の検討材料としております。マテリアリティやKPIについては、社会情勢等を踏まえ、適宜見直しをしております。

 前述のマテリアリティのうち、当社グループの競争力を高めるために最も注力すべきテーマは、「人(多様な人材による価値創造の促進)」です。また、世界情勢も踏まえ、「環境(地球環境・資源の保全と災害対策強化)」に関する取組みも拡充すべきと考えております。サステナビリティ推進委員会では、これらの議題を中心とし、より具体的な取り組みについて議論しております。詳細は(2)及び(3)をご参照ください。

 

 

 

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③ リスク管理

・リスクの識別、評価プロセス

 「(1)サステナビリティ全般 ②戦略」を参照ください。

・リスク管理のプロセス

 マテリアリティに紐づき作成したKPIは、社内ポータルサイトを活用し、社員が進捗確認できる仕組みを構築しております。サステナビリティ推進委員会は、KPIの主管部門と連携し、経営会議及び取締役会に対して必要に応じて付議・報告をする体制を整備しております。

 また、リスク管理に向けた全社員への課題意識浸透のため、サステナビリティ推進委員会では、サステナビリ

ティ関連知見に関わる認識の共通化及び社内への知見普及も行っております。

・総合的リスク管理への統合プロセス

 サステナビリティ経営において想定されるリスクは、当社経営に関わるリスクを総合的に特定・評価するための「リスク管理規程」に追加することにより、その他経営リスクと同様に全体的に管理し、必要な対策を講じております。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、策定した各マテリアリティにおいて、KPIと目標値を定めております。各マテリアリティにおけるKPIは以下のとおりです。なお、詳細については後述する「(2)人:多様な人材による価値創造の促進 ④指標と目標」及び「(3)環境:気候変動への対応 ④指標と目標」を参照ください。

 

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(2)人:多様な人材による価値創造の促進

 当社グループがグローバルに事業を発展させていくとともに、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献するため、多種多様な強みやバックグラウンドを持ち能力を発揮できる人材や、自律的に未来を共創できる次世代を担う人材の採用・育成施策を実施しております。また、職場の安全と社員の心身の健康を守るとともに、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境の確保に取組んでおります。

 

① ガバナンス

 当社グループの人材戦略は、サステナビリティ推進委員会及び各事業責任者と人事担当責任者が出席する経営会議を中心に議論し、策定しております。定期的に開催される会議体を通じ、社内の人材が直面する可能性のある課題の特定、価値観の共有、そして多様性と包摂性推進に関する方策が議論されます。また、これらの取組みを進める過程では、社内外のステークホルダーからの考え・意見も積極的に取り入れております。

 

② 戦略

・求める人物像

 当社グループは、「共有する価値観(Our Values)」のもと、テクノロジーに熱意を持ち、絶えず学び続ける意欲を持つ人材を求めており、この価値観に共感し、お客様の課題や社会問題に対して積極的に技術的解決策を見出す能力を持つ人材の採用に注力しております。

・人材戦略

 当社グループは、事業戦略として「4つのシフト」(事業シフト・技術シフト・組織シフト・人材シフト)を掲げ、エンジニアの成長と活躍をサポートし未来を切り開くテクノロジーの会社を目指しております。そのため、事業革新を推進できるDX・AI人材、お客様の課題に対して最適なソリューションを提案する技術営業や、製品開発などを担える高い専門的知識を持った高度エンジニアの採用・育成を積極的に推進しております。

 また、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用にも重点を置き、国籍、性別、年齢、社会的背景など多様性を重視した採用活動を行っております。また、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を排除するための研修を実施し、採用プロセス全体の公平性を確保しております。

・人材育成方針

 当社グループは、これまで培ってきたシステム開発のスキルに加え、データエンジニアリングに必要なスキルを習得するための研修やデータマネジメントの国際的知識体系であるDMBOKに準拠した全社員向け研修、先端テクノロジーを見据えたアップスキリング等、個々人のキャリア開発を多面的に支援しております。さらに、次世代経営幹部候補の早期育成を図るためのプログラムや、データ連携ビジネスに不可欠な先進技術の習得サポート、データエンジニア・クラウドエンジニアの育成等、未来に向けた人材育成への投資も積極的に行っております。

・社内環境整備方針

 当社グループは、在宅勤務や遠隔地勤務、フルフレックスタイム制など、全ての社員がさまざまなライフステージや価値観に応じた多様な働き方を選択できるよう働きやすい環境や制度を整備しております。また国家資格であるキャリアコンサルタントを有する社員による相談窓口を設置し、若手社員や育児・介護との両立を必要とする社員のキャリア設計をサポートするなど、充実した支援制度を提供しております。また、開かれたコミュニケーションを促進し、社員同士の相互理解を深めるためのイベントやワークショップ、ランチサポートなども実施しております。

 

③ リスク管理

 「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」を参照ください。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、人的資本リスク及び機会の評価に用いる指標を「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」としております。当事業年度における実績値の詳細は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」を参照ください。

 

指標

実績(前事業年度)

(注)1

実績(当事業年度)

(注)2

目標値

(注)3、4

管理職に占める女性労働者の割合(%)

12.8

15.3

30(2030年度)

男性労働者の育児休業取得率(%)

57.1

64.3

100(2026年度)

全労働者の男女の賃金の差異(%)

81.8

82.7

80以上(2030年度)

(注)1 管理職に占める女性労働者の割合は2024年4月1日現在の実績、その他の指標は前事業年度の実績を記載しております。

2 管理職に占める女性労働者の割合は2025年4月1日現在の実績、その他の指標は当事業年度の実績を記載しております。

3 当社個別数値を記載しております。

4 目標値はサステナビリティ推進委員会を中心に議論し、適宜見直しをしております。

 

 

(3)環境:気候変動への対応

 地球規模の気候変動は、お客様、ビジネスパートナー及び当社グループ社員の生活基盤を変化させ、ひいては事業環境変化を引き起こすことが考えられます。中長期的視点において、当社サービスがお客様の事業課題改善に貢献し続けるために考慮すべき重要なリスクであると同時に、新たな事業機会であると考えております。未来にむけて豊かで持続可能な地球環境を守るため、省エネルギー化や地球温暖化防止等の取組みを積極的に進めるとともに、環境への取組みを推進してまいります。

 

① ガバナンス

 「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」を参照ください。

 

② 戦略

 当社グループは、「自社への影響度・発生可能性」と「ステークホルダーへの影響度」という観点から、気候関連リスク・機会を網羅的に抽出・特定し、その重要性を評価しました。その中で特に重要性が高いと評価した気候関連リスク・機会は以下のとおりです。

 

リスク・機会の分類

気候変動関連リスク・機会

リスク

移行

政策・法規制

・カーボンプライシングの導入等、規制強化に伴う事業運営コストの増加

技術/市場

・環境に対する社会の変化に対応できず、競争優位性・訴求力が低下して企業業績に影響を及ぼすリスク

・環境への取組みが不十分とみなされた場合や社会的な抑止活動に協力できなかった場合の企業価値・ブランドイメージの低下
・国内外ビジネスパートナー及び調達先のESG方針不備又は不徹底によるリスク

物理的

急性

・自然災害による事業所の損害、社会インフラ(電気、通信、公共交通機関)停止、社内のIT基盤の使用困難、物理的なデータの棄損
→データセンター運用の不具合の発生
→業務の遅延・延期・停止や不履行が発生し、顧客・取引先との関係悪化、損害賠償請求、契約解除等により、当社業績に大きな影響を及ぼすリスク
→データの正確性が損なわれるリスク

慢性

・お客様やビジネスパートナーの事業環境変化、お客様や当社社員の生活基盤変化の発生により、事業活動が困難となる/企業業績に影響を及ぼすリスク
・社員やビジネスパートナーの健康状態悪化のリスク

機会

エネルギー源

・省資源・省エネルギー化による事業コストの低下

・災害に備えた事業活動のレジリエンス強化

市場

・サステナビリティを重視したビジネスモデルによる企業価値の向上

・高まる環境意識に対応した商品・サービスの提供によるマーケット獲得
・気候変動に起因する感染症リスク増加への対応による新たな成長機会の獲得

・電力調達の多様化による価格変動リスクの緩和

・温室効果ガス排出量ゼロの達成により、炭素税導入時の課税リスク緩和

 

③ リスク管理

 「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」を参照ください。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、気候関連リスク及び機会の評価に用いる指標を「温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)」、「消費電力量に占める再生可能エネルギー電力比率」としております。なお、目標数値はサステナビリティ推進委員会を中心に議論し、適宜見直しております。

 

 <温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)>

 

実績(単位:t-CO2)

 

目標値

(2030年度)

前事業年度

当事業年度

 

Scope1

13.41

0.12%

13.76

0.18%

 

ネットゼロ

達成

Scope2

2,032.56

18.58%

1,160.76

15.39%

 

Scope3

8,892.38

81.30%

6,367.25

84.43%

 

 

合計

(Scope1・2・3)

10,938.35

100.00%

7,541.77

100.0%

 

 

  ※Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

  ※Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

  ※Scope3:Scope1・2以外の間接排出(算定事業者の活動に関連する他社の排出)

       企業活動を分類した15個のカテゴリ、その他(任意)により構成

  ※当社個別数値を記載しております。

  ※当事業年度分より温室効果ガス排出量の算定方法を変更し、Scope3の一部カテゴリについては総排出量配分方式を採用しております。

 

 <消費電力量に占める再生可能エネルギー電力比率>

 

前事業年度

当事業年度

 

目標値

(2026年度)

消費電力量に占める

再生可能エネルギー電力比率

9.0%

20.6%

 

100.0%

  ※当社個別数値を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。

 

(1)情報システムの支障又は情報セキュリティ及び個人情報保護の不備に関するリスク

 当社グループは、金融業、流通小売業のシステム受託事業及び外部パブリッククラウドサービスを利用した自社サービスの提供を行っております。そのため、当社グループは、サービス提供に必要十分な要件を備えたパブリッククラウドサービスの選定及び情報セキュリティや技術面での社員教育に取組んでおりますが、万一、これらの通信ネットワークや電源系統を含む情報システムの支障又はコンピュータウイルスやサイバー攻撃等による個人情報漏洩を含む情報セキュリティ上の不備が生じた場合、当社グループにおいて、信用の失墜、お客様の喪失、損害の賠償等の影響を生じる可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクへの対応策として、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)に準拠した体制を構築し、グローバルビジネスへの対応のため、GDPR(EU一般データ保護規則)をはじめとする各国/地域の法規制等を考慮した社内規則を定める等、対応強化に努めております。予防策として、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)構築、個人情報保護教育、セキュリティインシデント対応手順の整備、定期的な訓練、最新事例による社内への啓発等を実施しており、不正アクセスや情報漏洩につながる設定不備の検知などの対策としてCSPM(Cloud Security Posture Management)サービスを導入するとともに、重要なサービスでは、インシデント検知・通知策を実施しております。

 

(2)気候変動及び災害に関するリスク

 当社グループは、サステナビリティ方針において、地球規模の視点で未来を共創し、持続可能な社会の発展に取り組むことを掲げております。地球規模の気候変動は、お客様、ビジネスパートナー及び当社社員の生活基盤を変化させ、ひいては事業環境変化を引き起こすことが考えられます。中長期的視点において、当社サービスがお客様の事業課題改善に貢献し続けるために考慮すべき重要なリスクと考えております。
 また、当社グループは、システム運用、サポートサービス運営において、火事、地震、戦争、感染症及びセキュリティ等に関するリスクを認識しております。データセンターにおきましては耐震・耐火等の対策を講じており一定の安全性を確保しておりますが、大地震、火災、その他の自然災害及び設備の不具合、運用ミス等が発生した場合、サービスの提供に重大な支障が生じ、損害賠償や信頼喪失等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症等によりサポート対応する当社社員やビジネスパートナーが必要なリソースにアクセスできない場合、事業継続が不能となるリスクがあります。

 当社グループでは、システム運用、サポートサービスの障害や停止を回避するために、セキュリティ対策、ビジネスパートナーからの情報収集、社外からのリソースへのアクセス経路の確保、社内教育の充実等の諸施策を実施しております。なお、当対策はシステム運用、サポートにとどまらず、システム開発、パッケージ販売及び社内のバックヤード部門全てに実効性のあるものとしております。

 

(3)技術者の確保、育成に関するリスク

 情報システムの設計、構築等は、知識集約型の業務であると同時に労働集約的な面があり、事業拡大のためには一定水準以上のスキルを有する優秀な技術者の確保が不可欠なものと認識しております。現時点では、当社グループの人事制度・教育制度により、必要な技術者は確保されておりますが、労働市場の逼迫により当社グループが必要とする優秀な技術者又は労働力を確保できない場合、テレワーク環境における入社者のフォローが不足した場合、又は当社グループの従業員が大量に退職した場合には、当社グループの事業展開が制約される可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクへの対応策として、応募から面接・入社までの過程における当社グループ社員との接点増強によるミスマッチの最小化、オンラインのみならず対面での社内イベント開催によるリアルコミュニケーションの活性化、エンジニア等専門職や育児・介護等のライフイベントを迎えた社員のための多様なキャリアパスや働きやすい制度・環境作りに努めております。

 

(4)受託開発に関するリスク

 当社グループは、一定の規模以上の受託開発プロジェクトに対し「当該プロジェクトに関与しない者による見積りの適正性に関するレビュー」を実施するとともに、プロジェクト開発手法の標準化推進、プロジェクト管理者の育成等、プロジェクトの品質向上及び管理体制の強化に継続して取組んでおります。しかしながら、受託開発プロジェクトでは、受託時に適正な採算が見込まれると判断したプロジェクトであっても、開発段階におけるプロジェクト管理の問題、想定外の開発範囲の拡大及び作業工数の増加等の理由により不採算プロジェクトとなることがあり、その場合、受注損失の計上や納期遅延に伴う損害の賠償、関連する資産に係る減損損失の計上等、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクへの対応策として、プロジェクト審議会による提案/プロジェクト計画/プロジェクト実行中のチェック(同一基準でプロジェクト状況を確認できるチェックシート(プロジェクト審議会チェックシート)導入)、関連規則等の整備、全社開発標準・開発手順の浸透等を実施しております。また、規則/手順どおりにプロジェクトが実施されているか定期的なモニタリングを実施しております。

 

(5)新規製品・サービスのためのソフトウェア開発に関するリスク

 当社グループは、市場競争力を強化・維持するための重要な投資として自社サービス・ソフトウェアの開発に注力しておりますが、特に新規サービスの開発は不確実性も高く将来収益計画の下方修正又は開発計画の遅延・コスト増等により、投資回収計画が当初計画に達しない見込みとなった場合には、固定資産に係る減損損失を計上する可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクへの対応策として、プロジェクト審議会、マイルストーンレビュー等によるプロジェクト進捗のモニタリング、関連規則等の整備、モダン開発の推進等を実施しております。また、経営会議では、お客様ニーズ把握のため、新規案件の状況等について、情報共有を実施しております。

 

(6)特定の取引先の動向に関するリスク

 当社グループは、株式会社クレディセゾン向けの売上高が売上高全体の28.4%(当連結会計年度)を占めており、当該企業向けの販売額が縮小した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
 当社グループでは、経営方針に掲げている新技術・新領域への事業展開を推進し、新たな市場・顧客へより収益性の高い事業を展開することで、当該リスクへの対応を図ってまいります。

 

(7)知的財産に関するリスク

 当社グループの主力製品である「HULFT」「DataSpider Servista」「HULFT Square」等の販売において、グローバル展開とお客様DX領域への注力を推進しております。このような新技術・新領域へ事業を展開するうえで、当社グループでは独自の技術・ノウハウ等の保護・保全や第三者の知的財産権を侵害しないよう十分な注意を払っておりますが、一部地域の法的制度の違い等により、知的財産権に関する問題が起きる可能性があります。これにより、他者の保有する知的財産権を侵害したとして、損害賠償請求を受ける可能性があります。また、知的財産権等の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品、又はサービスが提供できなくなる可能性があります。いずれの場合も当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、このようなリスクを回避するために、コンプライアンス担当部門及びリスク管理担当部門を中心とした他社の知的財産の確認及び当社グループが保有する知的財産の適切な管理を実施しております。

 

(8)為替変動に関するリスク

 当社グループは、海外拠点への製品サービス提供や開発委託等グループ内の取引及び海外ベンダーのサービス利用等グローバルな企業活動において、急激な為替変動が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における国内経済は、緩やかな回復基調にありますが、米国の通商政策等による不透明感がみられます。先行きについては、米国の通商政策、物価上昇に伴う個人消費へのマイナス影響など景気下振れリスクがありながらも、雇用や所得環境の改善等により、国内経済は緩やかな回復継続が期待されております。当社グループが属する情報サービス産業においては、国内経済の緩やかな回復を背景に、企業等のデジタル活用(いわゆるデジタルシフト)がより一層進展し、企業内あるいは社会課題の解決を目的としたIT投資が引き続き拡大するものと予想しております。

 このような中、当社グループは、「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る」をミッションとし「4つのシフト(事業シフト・技術シフト・組織シフト・人材シフト)」を戦略として掲げ、HULFT事業・データプラットフォーム事業を中心としたデータ連携ビジネスの更なる拡大に取組んでおります。

 当連結会計年度における当社グループの業績は、下表のとおりです。

 (単位:百万円)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度

24,383

2,141

2,160

1,506

前連結会計年度

23,864

1,024

1,072

603

増減率

2.2%

109.1%

101.4%

149.7%

 

 増収の主な要因は、フィナンシャルITサービス事業が縮小した一方、流通ITサービス事業におけるシステム開発案件の検収に伴う一時的な売上高の増加及びデータ連携ビジネス(HULFT事業・データプラットフォーム事業)の拡大があったこと等によるものです。増益の主な要因は、前連結会計年度に受注損失引当金を計上している一方、当連結会計年度においては受注損失等の臨時的要因に伴う影響は少ないこと等によるものです。なお、「DNX Ventures」第4号米国ファンドへの出資における管理費用の発生等に伴い営業外費用に投資事業組合運用損を計上しておりますが、他方で、営業外収益に受取利息及び一部のお客様向けサービスの中途解約に伴う違約金収入を計上しております。

 当社グループが事業シフト進捗を測る指標として設定しているデータ連携ビジネス売上比率は、52.6%(前連結会計年度比0.5ポイント増)となりました。流通ITサービス事業の一時的な売上増加があったものの、それ以上にデータ連携ビジネスが拡大いたしました。

 当連結会計年度におけるセグメント別の業績は次のとおりであります。以下、セグメント間取引については相殺消去しておりません。

 

(HULFT事業)

 当事業では、国内におけるデータ連携ソフトウェアのスタンダードである当社の主力製品「HULFT」、「DataSpider Servista」及び関連製品の販売・サポートサービスを提供しております。

 売上高は、一部製品(「DataSpider Cloud」等)の販売終了に伴う影響を受けたものの、サポートサービスの更新が順調に推移したこと等により、9,998百万円(前連結会計年度比0.5%増)となりました。当連結会計年度末現在のサポートサービス契約本数は、「HULFT」は63,941本(前連結会計年度末差1,507本増)、「DataSpider Servista」は5,570本(同107本増)と順調に推移しております。営業利益は、売上高の増加に加えて、販売費及び一般管理費の減少等により、4,478百万円(同6.0%増)となりました。

 

(データプラットフォーム事業)

 当事業では、当社の強みである「HULFT」、「DataSpider Servista」及び日本発クラウド型データ連携プラットフォーム「HULFT Square」を活用し、企業内・企業間のシステムとSaaSのデータを連携することで、業務効率化及び経営刷新を図るサービスを提供しております。

 売上高は、「HULFT Square」の売上高の増加等により、2,828百万円(前連結会計年度比14.0%増)となりました。一方で、サービスの立ち上げフェーズである「HULFT Square」の原価の計上及び要員拡充に伴うコスト増等により、2,605百万円の営業損失(前連結会計年度は2,064百万円の営業損失)となりました。

 

(流通ITサービス事業)

 当事業では、主に流通小売業・航空業向けに、情報処理サービス、システム開発・運用サービスを提供しております。

 売上高は、システム開発案件の一時的な売上高の増加等により、3,730百万円(前連結会計年度比32.6%増)となりました。なお、前連結会計年度に受注損失引当金を計上しましたが、当連結会計年度においては受注損失等の臨時的要因に伴う影響は少ない一方、収益性の低下等により、75百万円の営業損失(前連結会計年度は1,852百万円の営業損失)となりました。

 

(フィナンシャルITサービス事業)

 当事業では、金融業向けに、情報処理サービス、システム開発・運用サービスを提供しております。

 売上高は、システム開発案件の減少等により、7,825百万円(前連結会計年度比9.2%減)となりました。営業利益は、売上高の減少等により、343百万円(同52.1%減)となりました。

 

 

(トピックス)

・「HULFT Square」を成長ドライバーに「事業シフト」が加速

 当社グループは、システム受託型から自社製品サービス提供型への事業シフトを推進しております。その成長ドライバーとして「HULFT Square」の開発・提供をしております。当連結会計年度では、市場ニーズを取り入れアップデートし、特にエンタープライズ企業向け大規模データ連携に必要となる機能を順次拡充してまいりました。サービス利用件数は、前連結会計年度比314.3%になるまで拡大し、今後も一層のサービス拡大に全社を挙げて取組んでまいります。

 

・先端テクノロジーに触れ、「技術シフト」を推進

 北米・日本を中心にB2Bスタートアップへの投資を行っているベンチャーキャピタルである「DNX Ventures」が運営する第4号米国ファンドへの出資を6月より開始しております。また9月にはアメリカのラスベガスで開催されたSalesforce主催の「Dreamforce 2024」にブース出展いたしました。このような活動を通じて、先端テクノロジーに積極的に触れ、先端技術を自社製品サービスに取り込むとともに、次世代人材の育成にもつなげております。

 

・テクノロジーカンパニーに向けて「人材シフト」が進展

 当社がサステナビリティ経営を推進するにあたり、人的資本は特に重要です。トップエンジニア育成や、外部メディアを活用したエンジニアによる情報発信を積極的に進めてまいりました。その結果、アマゾン ウェブ サービス(AWS)より、AWS認定資格の取得数が200を超える企業として「AWS 200 APN Certification Distinction」に認定される等、技術力向上の成果も出てきております。

 

 

(今後のセグメント開示について)

 当連結会計年度において、報告セグメントは「HULFT事業」、「データプラットフォーム事業」、「流通ITサービス事業」、「フィナンシャルITサービス事業」としていましたが、翌連結会計年度より「流通ITサービス事業」と「フィナンシャルITサービス事業」を統合し、「システム受託事業」とすることといたしました。これにより、セグメント区分は「HULFT事業」、「データプラットフォーム事業」、「システム受託事業」に変更されます。

 当社は、事業戦略の一環として「組織シフト」を掲げ、機能別組織への改組を通じて、エンジニア間の相互連携を強化し、これまで顧客業種ごとに行われていたシステム受託ビジネスを横断的に展開できる体制を整えてまいりました。流通ITサービス事業における大型案件が2025年3月期に終息したことを受けて、組織リソースの最大化を図り、これまで以上に適切な意思決定を行うために、セグメント区分の変更をすることといたします。

 

 

 当連結会計年度の財政状態の概要は次のとおりであります。

 

a.資産

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より1,517百万円減少し、21,179百万円となりました。主な増加要因は、投資有価証券が同409百万円増加したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、現金及び預金が同999百万円減少したこと、契約資産が同440百万円減少したこと、繰延税金資産が同309百万円減少したこと等によるものであります。

 

 セグメントごとの資産は、次のとおりであります。

(HULFT事業)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より211百万円増加し、3,664百万円となりました。主な増加要因は、売掛金が同256百万円増加したこと等によるものであります。

 

(データプラットフォーム事業)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より554百万円増加し、1,270百万円となりました。主な増加要因は、契約資産が同273百万円増加したこと、売掛金が同215百万円増加したこと等によるものであります。

 

(流通ITサービス事業)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より663百万円減少し、544百万円となりました。主な減少要因は、契約資産が同640百万円減少したこと等によるものであります。

 

(フィナンシャルITサービス事業)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末より711百万円減少し、1,935百万円となりました。主な減少要因は、売掛金が同414百万円減少したこと、減価償却等により有形及び無形固定資産が同147百万円減少したこと等によるものであります。

 

b.負債

 負債合計は同1,531百万円減少し、6,944百万円となりました。主な増加要因は、前受金が同224百万円増加したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、受注損失引当金が同728百万円減少したこと、未払法人税等が同700百万円減少したこと、支払手形及び買掛金が同341百万円減少したこと等によるものであります。

 

c.純資産

 純資産合計は同14百万円増加し、14,235百万円となりました。この要因は、利益剰余金が、剰余金処分による配当財源への割当てにより同1,457百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により同1,506百万円増加したこと等によるものであります。

 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末より4.5ポイント増加し、67.2%となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より538百万円減少し、12,826百万円となりました。各キャッシュ・フローの増減状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は1,188百万円(前連結会計年度は2,280百万円の獲得)となりました。

 主な増加要因は、税金等調整前当期純利益が2,149百万円となったこと、減価償却費721百万円を計上したこと、売上債権及び契約資産が416百万円減少したこと、前受金が225百万円増加したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、法人税等1,114百万円を支払ったこと、受注損失引当金が728百万円減少したこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は249百万円(前連結会計年度は759百万円の使用)となりました。

 主な増加要因は、定期預金の払戻による収入464百万円があったこと等によるものであります。また、主な減

少要因は、投資有価証券の取得により434百万円を支出したこと、ソフトウェア開発やハードウェア購入等に218百万円を支出したこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は1,460百万円(前連結会計年度は1,461百万円の使用)となりました。

 主な減少要因は、配当金の支払1,456百万円があったこと等によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

増減

生産高(千円)

生産高(千円)

生産高

(千円)

増減率

(%)

HULFT事業

9,950,838

9,998,766

47,928

0.48

データプラットフォーム事業

2,480,344

2,828,999

348,655

14.06

流通ITサービス事業

2,810,365

3,724,346

913,980

32.52

フィナンシャルITサービス事業

8,603,063

7,828,997

△774,065

△9.00

合計

23,844,611

24,381,110

536,498

2.25

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しておりません。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

増減

受注高

(千円)

受注残高

(千円)

受注高

(千円)

受注残高

(千円)

受注高

(千円)

受注残高

(千円)

HULFT事業

10,449,533

4,353,687

10,896,078

4,861,790

446,544

508,103

データプラットフォーム事業

2,479,668

738,368

3,203,487

1,113,378

723,819

375,010

流通ITサービス事業

3,281,870

2,257,074

2,039,829

566,763

△1,242,041

△1,690,310

フィナンシャルITサービス事業

8,504,401

4,642,184

7,717,281

4,301,649

△787,120

△340,534

合計

24,715,473

11,991,314

23,856,676

10,843,582

△858,797

△1,147,731

(注) セグメント間の取引については相殺消去しておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

増減

販売高(千円)

販売高(千円)

販売高

(千円)

増減率

(%)

HULFT事業

9,951,222

9,998,766

47,544

0.48

データプラットフォーム事業

2,481,758

2,828,477

346,718

13.97

流通ITサービス事業

2,812,473

3,730,139

917,666

32.63

フィナンシャルITサービス事業

8,618,823

7,825,851

△792,972

△9.20

合計

23,864,278

24,383,235

518,956

2.17

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しておりません。また、セグメント間の振替高を含めて表示しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社クレディセゾン

7,207,510

30.2

6,935,724

28.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

・「当連結会計年度の経営成績等」及び「セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況」に関する分析・検討内容

 「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

・経営成績に重要な影響を与える要因

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

・キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

・資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、外注費や労務費等の製造経費、人件費や借地借家料等の販売費及び一般管理費によるものであります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、国内及び海外拠点における製品開発、研究開発投資等によるものであります。運転資金及び投資資金は、主として自己資金で調達しております。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は、リース債務6百万円となっております。また、現金及び現金同等物の残高は12,826百万円となっております。

 

③ 重要な会計方針及び見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。

 連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における資産・負債の報告数値及び当連結会計年度における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に下記の会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断等に影響を及ぼすと考えております。

 

a.市場販売目的のソフトウェアの減価償却の方法

 市場販売目的のソフトウェアの減価償却は、製品ごとに未償却残高を、見込販売収益を基礎として当連結会計年度の実績販売収益に対応して計算した金額と残存有効期間に基づく均等配分額のいずれか多い金額で償却を行うものとしております。見込販売収益が減少した場合、ソフトウェアの減価償却費が増加する可能性があります。

 

b.固定資産の減損

 固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損処理の要否を検討しております。資産計上したサーバー等のハードウェアやサービスの提供に用いるソフトウェア、開発仕掛中のソフトウェア等について、事業環境の悪化や開発コストの増加等で当初想定した投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合には、固定資産の減損処理を実施する可能性があります。

 

c.繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産は毎期、過去の課税所得の推移や将来の課税所得の見込等を勘案し、回収可能性を慎重に検討し計上しております。回収の実現性が低いと判断した場合には適正と考えられる金額へ減額する可能性があります。

 

d.進捗度の見積りに基づく収益認識及び受注損失引当金

 請負契約等の顧客に対して成果物の引き渡し義務を伴う受託システム開発については、合理的に履行義務の充足に係る進捗度を見積ることができる場合には、当該進捗度に基づき一定期間にわたり収益を認識しております。

 履行義務の充足に係る進捗度の見積りにあたっては、見積原価総額に対する実際発生原価の割合により測定し、それに基づき収益を認識しております。見積原価総額は、主として開発工数と工数単価により見積もられる労務費及び外注費等によって構成されております。プロジェクトの開発工数は、プロジェクトを構成する機能開発ごとに、過去の類似する開発実績を基礎として、その他プロジェクト固有の特性、遂行体制、納期、進捗状況等を総合的に勘案して見積もっております。

 また、当連結会計年度末において将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能なものについては、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額に対して、受注損失引当金を計上しております。

 受託システム開発は、契約ごとの個別性が強く、顧客要望の高度化、プロジェクトの複雑化や完成までの事業環境の変化等によって、当初見積り時には予見不能な作業工数の増加により見積りの修正が必要になることがあります。見積原価総額が大幅に変動した場合には、売上高、受注損失引当金及び売上原価に影響を与える可能性があります。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、中長期において魅力的で稀有な高収益IT企業となり、企業価値を向上させていくことを経営の目標としており、具体的にはROE20%以上を恒常的に達成することを経営指標としております。

 当連結会計年度は、流通ITサービス事業におけるシステム開発案件の検収に伴う一時的な売上高の増加及びデータ連携ビジネスの拡大があったこと等により、ROEは10.6%となり計画値10.5%を上回る結果となりました。今後も目標水準の到達へ向けた経営を意識してまいります。

 翌連結会計年度は、データ連携ビジネスのさらなる売上拡大による収益改善等により、ROEは11.2%を目指す計画です。なお、当社グループの製品サービス開発及び人的資本への費用投下は継続してまいります。

(ROE推移)

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

2026年3月期

計画

14.0%

8.9%

8.9%

10.5%

11.2%

実績

14.3%

9.8%

4.2%

10.6%

 

 また、当社グループは、中長期的な企業価値を要因として、株主の最終的な利益に整合した指標であるため、TSR(株主総利回り)を経営指標の1つに設定しております。

 評価期間は、2020年3月末を基準(100%)として評価をしており、その推移は次のとおりです。

 

 

2021年3月末

2022年3月末

2023年3月末

2024年3月末

2025年3月末

当社

134.7%

125.4%

126.7%

141.8%

134.9%

同業他社

平均※

170.2%

149.2%

147.1%

173.9%

176.2%

※GICS(世界産業分類基準)の4510:ソフトウェア・サービスに属する国内上場企業の平均値

 

 当社グループのTSRは業界平均を下回って推移しております。これは、評価期間の基準となる2020年3月末の当社グループ株価が相対的に高かったことも一因ではありますが、「HULFT Square」等の開発に伴う費用投下によりEPS(1株当たり当期純利益)が低い水準で推移しており、それが当社グループの株価及びTSRを引き下げている要因と推察しております。当社グループは、この取組みが将来の利益成長につながることをご理解いただけるよう、引き続き資本市場との対話に努めてまいります。

 

5【重要な契約等】

 当社は認識した重要な契約について、当連結会計年度に締結した重要な契約はありません。過年度に締結した重要な契約は以下のとおりです。

 なお、令和6年4月1日施行の「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日 令和5年内閣府令第81号)第3条第4項の経過措置により、この府令に規定された記載すべき事項のうち、府令の施行前に締結された契約に係るものについては、記載を省略しております。

 

(1)株式会社クレディセゾンとの重要な契約

 当社は、株式会社クレディセゾン(以下「クレディセゾン」という。)と2008年10月1日付で「グループ経営に関する取り決め書」を、2021年11月17日付で同取り決め書に関する「覚書」を締結しております。

 

(本契約の内容)

 クレディセゾンと当社は、密接な連携のもとにグループ運営を行うことがグループ全体の利益に資することとなるとの認識に基づき、グループ経営管理を円滑に運営することを目的として、その具体的な取り決めを行う。

 

(事前通知事項)

 当社の経営上の基本的事項について、当社はクレディセゾンに事前通知する。

 

(役員派遣)

 クレディセゾンは、当社の指名・報酬委員会に対し取締役の候補者2名を提案することができる。

 

(株式引受権)

 クレディセゾンは、当社が株式等の発行、処分又は付与等を行う場合、その持分比率に応じて優先引受権を有する。

 

(2)株式会社メルコグループ及び株式会社メルコホールディングス(現株式会社バッファロー、以下「バッファロー」という。)との重要な契約

 当社は、バッファローと2021年10月29日付で「資本業務提携契約」を締結し、さらに、株式会社メルコグループ(以下「メルコグループ」という。)及びバッファローと2024年3月19日付で、同資本業務提携契約を3者間契約に変更する契約を締結しております。

 なお、当該契約に基づきメルコグループは3,240,000株、バッファローは81,000株の当社株式を保有しております。

 

(本契約の内容)

 メルコグループとバッファローが当社の発行する株式をそれぞれ保有することにより、両当事者間における資本提携(以下「本資本提携」という。)を行うこと、並びに、本資本提携を基礎として、両当事者グループの経営資源を有効活用することにより、相互に、事業分野及び事業規模の拡大を実現し、もって、両当事者グループの企業価値の向上を図るため、当社とバッファローにおいて製品を組み合わせた製品開発及び販売チャネルの相互活用を実施するべく、協議及び検討することを合意する。

 

(事前通知事項)

 当社の経営上の基本的事項について、当社はメルコグループ及びバッファローに事前通知する。ただし、メルコグループ及びバッファローが保有する当社の株式に係る議決権割合の合計が20%未満となった場合にはこの限りではない。

 

(役員派遣)

 バッファローは、当社の指名・報酬委員会に対し取締役の候補者1名を提案することができる。

 

(株式引受権)

 メルコグループ及びバッファローは、当社が株式等の発行、処分又は付与等を行う場合、その持分比率に応じて優先引受権を有する。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、”つなぐ”技術をキーにした新技術・新市場への新たなサービスの創出を推進しており、シリコンバレーの「DNX Ventures」が運営する第4号米国ファンドへの投資を通じ得られた情報をAI活用に応用するなど、先端テクノロジーの研究に取組んでおります。

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は235百万円であります。特定のセグメントに区分できない研究開発費の各セグメントへの配賦額を含めたセグメント別の内訳は、HULFT事業119百万円、データプラットフォーム事業53百万円、流通ITサービス事業21百万円、フィナンシャルITサービス事業40百万円であります。