第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは創業時より、企業理念である「祈りの経営」のもと、世の中の人に喜ばれる「喜びのタネまき」を実践してまいりました。今後も、「世界一ひとにやさしいダスキン」を目指した取り組みで、地域の人々と喜びを分かち合い、物も心も豊かな暮らしに貢献することを通じて、継続的な企業価値の向上を実現してまいります。

 

2024年3月期に創業60周年を迎え、また2025年3月期に長期戦略「ONE DUSKIN」を終えたことを機に、ここからの将来を見据え、変わる時代の中でも変わらぬ価値を届けていく未来の想いを込めパーパスとビジョンを策定しました。

①パーパス

変わる時代の中でも変わらぬ価値を届けていく未来への想い「人に社会に寄り添い、安心と喜びのある豊かな明日を創造します。」

②ビジョン

パーパス実現のための担うべき役割「人と人、人と社会、人と明日をつなぐ笑顔の環を届けます。」

③バリュー

ビジョン実現のための大切な価値観「想いを今、動かせ。」

 

(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

パーパス、ビジョンの策定に合わせて、それらを実現するための長期戦略「Do-Connect」を同時に策定いたしました。

①長期経営戦略「Do-Connect

人と人、人と社会、人と明日をつなぐ、これら3つのつながりで「喜びのタネまき」を実践し、パーパス・ビジョンの実現を目指すために、3つの「シン化」(新たな事業への「新化」、周辺事業への「進化」、既存事業の「深化」)への挑戦と挑戦する人材育成、並びに後押しする企業風土醸成に注力します。

 

②「中期経営方針2028」2026年3月期~2028年3月期

長期経営戦略「Do-Connect」の3つの「シン化」に、経済・社会価値創造の源(原動力)となる「経営基盤の強化」を加えた4つの経営テーマのもと、経営の根幹である「道と経済の合一」、すなわち社会価値と経済価値の両面において価値向上を目指し、「人と社会に寄り添い、安心と喜びのある豊かな明日の創造」を進めます。そのために、お客様との対面での関係性を大切にするとともに、それを支えるデジタル技術の向上にも努めてまいります。

 

長期経営戦略「Do-Connect」の第1フェーズに当たる2026年3月期を開始期とする「中期経営方針2028」を2025年5月15日に公表しております。

<目標(2028年3月期)>

連結売上高

207,800百万円

親会社株主に帰属する当期純利益

10,600百万円

ROE

7%以上

 

「中期経営方針2028」策定、並びに株主還元方針及び配当方針の変更に関するお知らせ

https://www.duskin.co.jp/ir/news/2025/pdf/20250515_03.pdf

 

(3)対処すべき課題

①経営環境の変化並びに経営課題の認識

我が国の経済は、緩やかながらも回復基調にあります。その一方で、海外の政情不安、不安定な外国為替相場、自然災害の激甚化等、先行きは不透明で不確実性が高い状況が続いております。円安や物価上昇は企業のコスト構造に影響を与え、消費者の購買意欲にも影響を及ぼし、インバウンド需要の回復が期待される一方で、国内消費は引き続き厳しい状況が続くものと想定しており、その対応策の構築は急務であります。また、日本の就労人口は少子高齢化の影響で減少傾向にあり、労働力不足が深刻な課題となっております。同時に進むデジタル技術の進展も相俟って、様々な事業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、生成AI技術や自動運転・自動配送技術を使ったビジネスモデルの変革が求められます。

更には、昨今頻発する巨大地震や豪雨災害、そして切迫性が高まる「南海トラフ地震」の発生等を勘案すると、事業継続計画の整備も緊急を要するものと認識しております。

 

②経営課題に関する今後の取り組み

企業価値向上に向けた戦略展開(資本コストと株価を意識した経営の実現に向けて)・事業方針としましては、「新たな事業への新化」(新規事業開発、M&A、ベンチャー出資、海外事業の拡大、新業態開発)、「周辺事業への進化」(ビジネスモデル変革、周辺事業領域の開発、新たな地域への進出)、「既存事業の深化」(成長事業への投資、商品・サービスの開発強化、顧客接点強化、生産性向上)、「経営基盤の強化」(企業風土変革、人的資本・技術資本の強化、ブランド価値の向上)を掲げております。

財務方針につきましては、政策保有株式の縮減、金融資産の活用等、積極的な成長投資を支える資金調達を行うと共に、株主資本の最適化を意識した株主還元を推進することを基本方針とし、サステナブル方針としましては、企業のサステナビリティの追求(コーポレートガバナンス体制強化、事業継続力強化、企業情報開示の強化、市場・投資家との対話の推進)、社会のサステナビリティの追求(地球環境保全に配慮した活動、地域社会への参画と貢献)を目標として、社会価値創造に努めることを掲げております。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

当社グループは、企業として社会から求められる期待に喜びをもって応え、社会のお役に立ちながら持続的に成長するためのサステナビリティ方針を掲げております。この方針を実現するためには、ステークホルダーの皆様との対話を通じて取り組むべきESG課題を特定すると共に、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する多様な視点・側面からの取り組みを推進していくことが重要だと考えております。こうしたサステナビリティへの取り組みについて、期待と信頼に応えるべく継続して改善を図り、更なる企業価値の向上と持続可能な社会の実現に貢献する企業を目指しております。

 

<サステナビリティ方針>

創業以来、社会から求められる期待に喜びをもって応え、社会のお役に立ちながら持続的に成長することを追求する、「道と経済の合一」を経営の根幹としております。そこで、社員一人ひとりが守るべき行動の原則を定め、それによって自らの行動を律しております。

1.持続可能な成長   私たちは、「喜びのタネ」をまき、社会の信頼に応え続けます

2.人権尊重      私たちは、一人ひとりの人権を守り、個性を尊重します

3.環境保全      私たちは、あらゆる活動を通して、地球環境の保全に努めます

4.対話・交流     私たちは、人を思いやり、より良い社会を目指します

5.商品・サービス   私たちは、お客様に喜ばれる商品・サービスを提供します

6.職場環境の向上   私たちは、誰もが公正に個性や能力を伸ばし、働く喜びが得られる職場を築きます

7.コンプライアンス  私たちは、相手の身になって考え、行動します

8.情報管理      私たちは、情報の取り扱いに細心の注意を払い、適正に管理します

9.危機管理      私たちは、緊急時には生命の安全を最優先し、地域一体で助け合います

 

①ガバナンス

当社は、企業としての成長と持続可能な社会の発展への貢献を両立する重要性を認識し、グループ全体でCSV経営を推進しております。2017年よりサステナビリティの観点を経営に統合するため、サステナビリティを推進する経営企画部担当執行役員を委員長とし、執行役員、社外役員を委員とする「サステナビリティ委員会」を取締役会の諮問機関として設置しております。

当委員会は年2回開催し、サステナビリティに関わる基本方針や重要なリスクと機会への対応策の検討、指標と目標の設定の他、主要な年次活動の特定、未対応課題への取り組み等の検討・審議・評価・改善を担い、重要な決議事項は取締役会に報告しております。

 

0102010_001.png

 

②リスク管理

サステナビリティ関連のリスクと機会への対応を管理・強化していくに当たり、サステナビリティ委員会は、経営企画部門と共に各リスクと機会の重要性を評価しております。

外部環境の変化と事業への影響を踏まえ、将来的に当社グループが直面し得るリスクがバリューチェーンのどこにあるのか、今後マテリアルな課題になり得るのか、といった点を検討し、重大な財務上又は戦略的な影響を及ぼす可能性があると評価したリスクについては、具体的な対応策を講じておくことで、リスクを回避又は最小化することに努めております。

③戦略

当社では、外部環境を政治・経済・社会・技術の観点から整理・分析することで、各ステークホルダーの視点でそれぞれリスクと機会を特定し、企業としての成長と持続可能な社会の発展への貢献を両立するために必要なマテリアリティ(重要課題)を認識しております。

その1つである「人的資本・多様性」においては、事業ポートフォリオ変革に必要な人材育成方針・社内環境整備方針を整理し、維持・向上するための指標と目標を設定しております。

また、「気候変動への対応」においては、世界的に共通したサステナビリティ課題であり、また時間軸や規模等の観点で不確実性が高いため、この緩和・適応策の検討に特に注力し、優先的に取り組みを推進しております。なお、気候関連財務情報開示の質の向上を目指してTCFD提言に賛同しており、当該提言に沿って随時情報開示を拡充しております。

 

視点

マテリアリティ

KPI

達成

期限

お客様

顧客体験価値

(CX)の最大化

顧客ロイヤリティ向上による売上高の成長

2028年

3月期

・全国チェーン店お客様売上高

4,910億円

加盟店

共に成長し

競争力ある

事業の拡大

持続的な発展に寄与するビジネスモデル(新規出店3年間)

2028年

3月期

・ケアサービス5事業

300拠点以上

・レスキューサービス事業

100拠点以上

・ミスタードーナツ事業

120店舗以上

社員

多様な人財が

いきいきと

活躍できる

環境づくり

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

2031年

3月期

・女性管理職比率

30%

・男女間の賃金格差縮小に向けた取り組み

社員の成長とキャリア実現支援

・一人当たり年間研修時間

20時間以上

・エンゲージメント「自己成長・キャリア感」

80%以上

ウェルビーイングの充実

・健康経営優良法人認定

29法人

・エンゲージメント「やりがい・仕事の満足度」

90%以上維持

取引先

安全・安心で

持続可能性に

配慮した調達

製造委託先食品工場の定期監査実施率

100%

2028年

3月期

サステナブル調達の推進

地域

社会

地域社会との

共存・共栄

子どもたちに掃除の大切さを伝える出前授業

400回/年

2026年

3月期

・教員向けセミナー

25会場/年

防災サポートサービス 自治体との協定締結

130件

地球

環境

事業活動を

通じた

環境負荷の

軽減

循環型社会づくりへの貢献

2031年

3月期

・食品ロス量(2001年3月期比)

50%減

・食品廃棄物リサイクル率

75%

・モップ・マットの再商品化率

97%維持

・容器包装プラスチックリサイクル率

60%

・化石資源ワンウェイプラスチック

(2021年3月期比)

25%減

気候変動への対応(ダスキングループ拠点)

・軽商用車EV比率

30%

・再生可能エネルギー利用率

50%

CO2排出量(2014年3月期比)

46%減

株主・投資家

持続的な

企業価値の

向上

資本コストや株価を意識した経営

2028年

3月期

・資本コストを上回る収益性の向上(ROE

7%以上

・株主総利回り(TSR)の向上

ステークホルダーエンゲージメトの向上

・機関投資家との対話

年間100回以上

GPIF採用すべてのESG指数銘柄に選定

継続選定

 

(2)人的資本・多様性に関する方針

当社において連結グループにおける人材育成方針・社内環境整備方針の記載は、連結グループでの方針整備に取り組んでいる現状に鑑み、現時点においては連結グループにおける主要な事業を含む会社単体での記載としております。

 

①戦略

イ.人材育成方針

当社では、あらゆるサービスの基本は「人」であると考えております。お互いに支え合い、成長を目指し調整できる人作りを重視し、知識と技術に心が伴った人材の育成に取り組んでおります。また、「祈りの経営」の理念を理解し、全ての行動の源とできる人材を育成するため、様々な教育や研修を推進しております。一人ひとりが必要な知識やスキルを修得し、役割を効果的に果たせるように、新入社員を含めて階層別に研修を実施している他、加盟店を活性化するエリアマネジャーの育成にも注力しております。また、公的資格の取得や通信教育による自己啓発を奨励し、自主的に学ぶ姿勢を大切にしております。

ロ.社内環境整備方針

当社では、多様なキャリア・社会的背景(性別、年齢、国籍、ライフスタイル等)を持つ社員が最大限能力を発揮できるように、各種制度の整備を行っております。2023年3月期より新人事制度を導入しており、専門職の設定や早期に責任職に登用できる仕組み等を採り入れております。新人事制度導入を通じて、今まで以上に各人のキャリア志向に応じてステップアップしていくことが可能な環境を整えております。また、当社では社員とその家族の健康維持・増進にも取り組んでおり、健康且つ豊かな発展を実現する環境作りも推進しております。時間外労働の削減を通じてワーク・ライフバランスの実現だけでなく、健康経営にも注力しており、社員とその家族の健康に関するプログラムも積極的に実施しております。

 

0102010_002.png

 

②指標及び目標

人材育成方針・社内環境整備方針を維持・向上するための指標とその現状・目標は以下のとおりになります。

 

■目標(2031年3月期)

・意識調査「自己成長・キャリア感」 80%以上

・意識調査「やりがい・仕事の満足度」 90%以上維持

・社員一人当たり年間研修時間 20時間以上

・女性管理職比率 30%

・健康経営優良法人認定 29法人

・男女間の賃金格差縮小に向けた取り組み

 

■実績

指標

2025年3月期

目標

2023年3月期

実績

2024年3月期

実績

2025年3月期

実績

意識調査「キャリア充実度」

全世代80%以上

77.5%

73.0%

71.6

社員一人当たり年間研修時間

20時間以上

18.6時間

19.5時間

20.8時間

女性管理職比率

13%以上

13.1%

14.3%

17.6

男性育休取得率

100%維持

100.0%

100.0%

100.0

社員一人当たり年間労働時間

1,800時間以下

1,811時間

1,804時間

1,812時間

 

指標と目標については、中期経営方針との連動を図る観点から、3ヵ年毎の見直しを原則としております。

 

(3)気候変動への対応(TCFD提言への取組)

①戦略

イ.短期・中期・長期の気候関連リスクと機会の特定

気候関連の外部環境の変化を踏まえ、当社にとって重大な財務上又は戦略的な影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会を認識しました。これらのリスクと機会に対して「顕在化時期」及び「事業への影響度」の2軸により優先度をスクリーニングすることで、特に焦点とすべき3つのリスクを特定しております。

 

0102010_003.jpg

 

0102010_004.jpg

 

ロ.気候関連リスクと機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響

特定した優先度の高い3つのリスクに対して気候関連のシナリオ分析を実施することでより詳細な財務影響額を算出し、分析結果を経営戦略に反映させるべく、各リスクに対する対応方針を策定しております。

事業リスク

顕在化時期

事業影響度

財務影響

(億円)

対応方針

農産物(小麦、コーヒー、パーム油)の生産量減少、原材料の高騰

中期

3.3~14

・サプライヤーとのリスク共有と対策の共同検討

・複数産地からの調達を前提とした商品開発・設計(調達産地の複線化)

工場・店舗の浸水頻度

中期

5.2~9.2

・災害時の早期復旧に向けたBCPの定期的な見直し

・定期見直しに基づく計画的な設備投資

・定期的な災害訓練と緊急物資の確保

炭素税上昇による租税コストの増加

中期

1.3~4.3

・環境目標2030「CO2排出量46%削減」必達による租税コストの抑制

・2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み

 

 

 

 

②指標と目標

戦略とリスク管理に即した気候関連のリスクと機会の評価に使用する指標(スコープ1、スコープ2のCO2排出量)

優先度の高いリスクのひとつである「炭素税上昇による租税コストの増加」リスクの評価に使用する指標及び目標を以下のように設定しております。

 

■目標(2031年3月期) ダスキングループ拠点

・再生可能エネルギー利用比率 50%

CO2排出量 46%減(2014年3月期比)

・軽商用車EV比率 30%

 

■CO2排出量実績(単位:t-CO2)

 

2014年3月期

(基準年)

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

基準年比

スコープ1

18,936

16,225

15,230

14,786

△21.9%

スコープ2

(マーケット基準)

20,381

15,368

15,516

12,487

△38.7%

スコープ2

(ロケーション基準)

20,381

16,460

16,698

15,391

△24.5%

スコープ1+2合計

(マーケット基準)

39,317

31,593

30,746

27,273

△30.6%

※1 スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

※2 マーケット基準:使用電力の種別毎の排出係数を用いて算定

ロケーション基準:全国の平均排出係数をもとに算定

 

なお、情報開示の正確性・透明性を確保するため、CO2排出量及び再生可能エネルギー利用率について第三者保証を取得しております。

https://www.duskin.co.jp/sus/library/opinion/

 

 

 

3【事業等のリスク】

以下におきまして、当企業集団(当社及び当社の子会社)の事業展開及びその他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。これらのリスクの可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく、記載したリスク以外のリスクも存在します。係るリスク要因のいずれにおいても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ビジネスモデル(フランチャイズ方式)に関するリスク

①加盟店との関係性について

当企業集団における事業展開は、主としてフランチャイズ方式を中心に展開しており、当企業集団及び加盟店の収益向上のために必要な新商品・サービスの開発・導入、新規出店、既存店の改装等の施策を計画、実施しておりますが、これら施策の実行には加盟店の理解・協力、資金負担等が必要な場合があり、加盟店の理解等を得られない場合には、計画の中止又は遅延の場合もあります。

また、加盟店との間にトラブル等が発生した場合、加盟店の離脱、訴訟の発生又は、加盟店の法令違反、不祥事等により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

②法的規制について

当企業集団は、フランチャイズ方式による店舗展開に関して中小小売商業振興法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)及び「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(改正:2021年4月28日公正取引委員会)等の規制を受けております。従いまして、これらの法令等の改廃、新たな法令等の制定により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(2)経営環境の変動リスク

①事業環境について

訪販グループの主要事業であるクリーンサービス事業は、家庭市場においては、使い捨て商品の普及等により、また、事業所市場においては、企業の経費削減意識の浸透等により、市場規模は減少傾向にあると推測しております。一方、同グループで展開するケアサービス事業は、家庭市場、事業所市場共にアウトソーシングニーズの増大による市場拡大を見込んでおります。クリーンサービス事業では、衛生領域商品の開発、販売チャネルの拡大、決済方法の多様化への対応、ケアサービス事業においては、同じく衛生領域商品の開発、新規加盟店の募集等により事業拡大を図っていく方針でありますが、各事業に関連する市場動向、競合の状況、お客様ニーズの変化等によって、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

フードグループの主要事業であるミスタードーナツ事業では、郊外・都市立地等への新規出店、利用動機や立地環境に応じた店舗の改装・再配置、時間帯別に応じたメニューや付加価値の高いメニューの開発、アジア市場への進出等により事業拡大を図っていく方針でありますが、市場動向、競合の状況、消費者の嗜好の変化や原材料等の高騰等により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

②法的規制について

クリーンサービス事業の商品は洗浄工程等を経て複数回のレンタルを行っております。洗浄工程では薬剤と大量の水を使用しておりますが、当企業集団及び委託先では、薬剤の使用量削減と水の再利用等による環境負荷の低減に努めております。しかしながら、当企業集団又は委託先において水質汚濁防止法等の法的規制に違反する事象又は何らかの問題が生じる、或いは、環境保護に係る法的規制等が強化された場合、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

ケアサービス事業は、「化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)」等の法的規制を受ける場合があります。

また、当企業集団で展開する事業は、食品衛生法、不当景品類及び不当表示防止法、下請代金支払遅延等防止法等の法的規制を受けております。従いまして、これらの法令等の改廃、新たな法令の制定、当企業集団の違反に対する行政指導等により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(3)製商品の安全性に関するリスク

①製商品の安全性について

訪販グループで展開する事業では、環境衛生用品・清掃用資器材、キャビネットタオル、トイレタリー商品、天然水等のドリンク商品、家庭用電気製品、化粧品や健康食品等について安全性を確認した上でレンタル又は販売を行っておりますが、これら製商品に何らかの品質上の問題が発生した場合、当企業集団に対する信用の低下等により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

②食品の安全性について

フードグループで展開する事業では、食品衛生法の改正に合わせ、国際標準の衛生管理手であるHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point:危害分析重要管理点方式)の考え方を取り入れた衛生管理ガイドの整備、自主的に外部検査機関を使った定期検査を実施する等、食品の安全性を確保するための社内体制を構築し、運用しております。しかしながら、当企業集団又は加盟店の店舗において食中毒が発生したり、食品衛生法等の法的規制に違反する事象が生じた場合、損害賠償金の負担の発生、これらの店舗の全部又は一部の営業停止や当企業集団に対する信用の低下等により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(4)サービスの品質に関するリスク

訪販グループで展開するライフケア事業の利用者は、主に高齢者等であり、サービス提供による不測の事故が起こる可能性もあります。事故の発生防止や緊急時対応等、教育研修による徹底的なスキルアップ、マニュアルの整備等に積極的に取り組んでおりますが、万一サービス提供中に事故等が発生し、過失責任が問われるような事態が生じた場合は、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

また、ケアサービス事業では、サービススタッフは一定の技能を必要とすることから、研修制度、ライセンス制度によりサービス品質の向上及び均一化を図っております。更に、サービスの提供に用いる資器材等については安全性を確認した上で、研修を受けたサービススタッフが用いることとなっております。しかしながら、サービススタッフが提供するサービスに瑕疵があった場合やサービスに用いる資器材等に何らかの問題が発生した場合、更に、これらのサービスを原因として健康被害等が発生した場合には、当企業集団への損害賠償請求や当企業集団に対する信用の低下等により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(5)特定の製品の製造元に関するリスク

当企業集団における主要製品については、製造技術に関する特異性等の観点から特定の関係会社及び外部企業に製品の製造、取引等を依存しております。これら製造業者の被災等の有事に早期復旧を可能とするため、複数購買・類似品代替品対応等の事前対策を講じております。しかしながら、予期せぬ天災地変等で製品の製造が困難になった場合は、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(6)自然災害・感染症に関するリスク

当企業集団は、地震、台風、洪水、津波等の自然災害や気候変動に伴う異常気象等の災害に対して、発生時の損害を最小限に抑えるため、安否確認体制の構築、自然災害対応マニュアルの作成、事業継続計画の整備に努め、災害発生を想定した訓練を実施しております。しかしながら、日本全国に事業を展開していることから全ての被害や影響を回避することは困難であり、また、大規模な災害が発生し、被災地域における営業活動の停止、被害を受けた設備等の修復、電力・燃料・水等の供給停止が生じた場合は、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。また、新型ウイルス等の感染症拡大に対しては、お客様と従業員の安全を最優先に考え、国(政府・関係省庁)及び各都道府県等の方針に従うことを原則として対策を推進しております。

 

(7)情報セキュリティに関するリスク

当企業集団及び加盟店は、事業運営に当たりお客様の個人情報を取得、利用しております。「個人情報保護規程」をはじめとする諸規程の制定、役員・従業員への研修の実施、加盟店を対象とした勉強会の開催、システムのセキュリティ対策等個人情報の管理体制を構築・運用しており定期的に監査も実施しております。しかしながら、外部からのサイバー攻撃等で、システムに不正にアクセスされることにより、個人情報の流出等の重大なトラブルが発生した場合、当企業集団への損害賠償請求や当企業集団に対する信用の低下等により、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(8)人材の育成と確保に関するリスク

当企業集団では、あらゆるサービスの基本は、お客様を始めとする様々なステークホルダーに対して、人にしかできないホスピタリティを実践できる人材だと考え、さまざまな教育や研修を通じて人材の育成を進めております。また、新卒者の安定的採用や専門的知識・経験を持ち即戦力となる中途採用により、計画的に人材の確保を図っております。現時点では当企業集団の人事制度・教育制度により、必要な人材は確保されております。しかしながら、今後の労働市場の逼迫により人材の確保が困難になる、又は、優秀な人材が流出した場合には、競争力や効率性が低下し、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(9)海外展開に関するリスク

当企業集団は、アジア圏の国と地域において、クリーンサービス事業及びミスタードーナツ事業等を展開しております。これらの国と地域において政治・経済の混乱及び想定していなかったテロ・労働争議の発生等といった障害に直面し、日本外務省からの現地退避勧告が発令された場合、若しくは身の危険を感じ、退避が必要と判断した場合には、速やかに日本若しくは近隣の安全な国・地域に退避を指示する方針です。

また、法令や各種規制の制定若しくは改正がなされた場合、事業活動が期待どおりに展開できない可能性があります。こうした海外における障害に対しては、人事コンサルティング会社及び経理財務協力会社等から事前に情報提供を受けられるように、問合せ窓口を一覧表で管理し、案件毎にその回避策を講じてリスク管理に努めておりますが、完全に回避できるものではなく、リスクが顕在化した場合には、当企業集団の事業及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日、以下「当期」という。)における我が国経済は、雇用・所得環境の改善等を背景に社会経済活動の正常化が進み、個人消費も持ち直し傾向となる等、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢は長期化し、中東情勢も更に悪化する中で、エネルギー価格や原材料価格は高値で推移しました。第4四半期には米国大統領が交代し海外経済の不確実性も高まり、先行きの不透明感は一段と増した感がありました。

 

そのような環境の中で当社は、10年間にわたる長期戦略「ONE DUSKIN」を終えました。その最終第3フェーズ「中期経営方針2022」(2023年3月期~2025年3月期)の最終年度である当期は、訪販グループにおいては、サステナブルな洗浄・物流体制構築のための最重要戦略投資と位置付けたマット・モップへのRFID(電子タグ)の取り付けを前期中にほぼ完了し、読み取り機を使用した検数作業を開始、運用をスタートさせました。他方、クリーンサービス事業(ダストコントロール商品のレンタルと販売)においては、家庭用営業専任組織の加盟店への拡大展開やWEB施策の強化等、新たなお客様作りに注力しました。また、近年の自然災害の増加に対応するために、レントオール事業(日用品・イベント用品等のレンタル)を中心に、ヘルスレント事業(介護用品・福祉用具のレンタルと販売)、クリーンサービス事業、ケアサービス事業(役務提供サービス)が連携し、災害発生時に自治体への資材供給及び衛生管理をサポートする「防災サポートサービス」を推進しました。更には、レスキューサービス事業(鍵の交換や修理等に対応)の拡大に向けた準備も進めました。

フードグループにおいては、ミスタードーナツは新商品の開発・導入や出店強化に注力し、また、既存ブランドとは異なる立地・客層・利用動機等に対応する業態開発として、北関東を中心にイタリアンレストラン「ナポリの食卓」等を展開する株式会社ボストンハウスの持株会社である健康菜園株式会社(2025年4月1日付で、株式会社ボストンハウスが、その子会社である株式会社美食工房及び健康菜園株式会社を吸収合併、以下、「ボストンハウス」という。)を前期に子会社化する等、新たなマーケットの獲得にも注力しました。

その一方で、マット・モップの製造工場が使用する電力を実質再生可能エネルギーに切り替える(NTTアノードエナジー株式会社とバーチャルPPA(仮想電力購入契約)締結)等、持続可能な社会実現に向けた取り組みにも注力すると共に、自己株式の取得、政策保有株式の縮減等、株主価値向上に向けた施策も進めました。

 

当期の業績につきましては、全てのセグメントが増収となったことにより連結売上高は前期から100億8百万円(5.6%)増加し1,887億91百万円、増収に伴う売上総利益の増加に加えて、前期中にRFID取り付けが概ね完了したこと等により原価率も改善したことで、連結営業利益は前期から21億84百万円(43.0%)増加し72億68百万円となりました。更に、前期に株式会社JPホールディングスを持分法適用関連会社化したこと等により持分法投資利益が増加し、連結経常利益は前期から28億19百万円(35.8%)増加し106億97百万円となりました。また親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、政策保有株式の売却を進め投資有価証券売却益を計上したこと等により、前期から42億19百万円(91.9%)増加し88億8百万円となりました。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

前  期

(2024年3月期)

当  期

(2025年3月期)

増  減

 

増減率 (%)

連結売上高

178,782

188,791

10,008

5.6

連結売上総利益

76,554

83,549

6,995

9.1

連結営業利益

5,084

7,268

2,184

43.0

連結経常利益

7,878

10,697

2,819

35.8

親会社株主に帰属する

当期純利益

4,589

8,808

4,219

91.9

 

<セグメント毎の状況>

セグメント別売上高

 

(単位:百万円)

 

 

 

 

前  期

(2024年3月期)

当  期

(2025年3月期)

増 減

 

増減率 (%)

 

 

訪販グループ

107,464

108,438

974

0.9

 

 

フードグループ

58,437

66,747

8,310

14.2

 

 

その他

15,646

16,486

840

5.4

 

 

小計

181,548

191,673

10,124

5.6

 

 

セグメント間取引消去

△2,766

△2,882

△116

 

 

連結売上高

178,782

188,791

10,008

5.6

(注)各セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高を含んでおります。

 

セグメント別営業利益

 

(単位:百万円)

 

 

 

 

前  期

(2024年3月期)

当  期

(2025年3月期)

増 減

 

増減率 (%)

 

 

訪販グループ

4,142

5,721

1,579

38.1

 

 

フードグループ

6,916

8,556

1,639

23.7

 

 

その他

440

511

70

16.0

 

 

小計

11,499

14,789

3,289

28.6

 

 

セグメント間取引消去

及び全社費用

△6,415

△7,520

△1,105

 

 

連結営業利益

5,084

7,268

2,184

43.0

(注)各セグメントの営業利益は、セグメント間の取引を含んでおります。

 

イ.訪販グループ

訪販グループは、主力のクリーンサービス事業が減収となったものの、ケアサービス事業他、その他の事業がいずれも増収となったことにより、売上高は前期から9億74百万円(0.9%)増加し1,084億38百万円となりました。利益面につきましては、原材料費等の高騰影響があったものの、RFID取り付けが前期中に概ね完了したことに伴い原価が減少したことにより、営業利益は前期から15億79百万円(38.1%)増加し57億21百万円となりました。

 

訪販グループ主力のクリーンサービス事業は、家庭向け、事業所向け共に減収となりました。

家庭向けの中心商品であるモップ商品の売上は、全体としては減少したものの、前期3月に発売した新商品「ペット用おそうじモップセット」(ペット用フロアモップとモップクリーナーのセット)は順調に推移しました。加えて、営業専任組織の活動やデジタルチャネル施策での受注件数が前期に比べて増加し、新たなお客様作りに成果を挙げた結果、減収幅は前期に比べて縮小しました。その他の商品では、レンジフードフィルターや前期新発売だった「ミッキー&ミニー台所用スポンジ」や寝具関連商品等の売上が反動により減少しました。事業所向け商品は、新発売した「抗菌エレクトロン」の売上寄与によりモップ商品売上が増加しましたが、中心商品であるマット商品は、高機能マットが引き続き好調に推移したものの、その他商品の売上は減少し、全体では減収となりました。また2023年5月に新型コロナウイルス感染症が五類移行したことに伴い、大型施設等のエアクリーン商品売上等が減少しました。

ケアサービス事業につきましては、「サービスマスター」(プロのお掃除サービス)、「メリーメイド」(家事代行サービス)等の一部のメニューで価格改定を行った影響もあってお客様売上は増加しました。事業別では、「ホームリペア」(住まいのピンポイント補修)は減少したものの、エアコンクリーニングが好調に推移した「サービスマスター」を始め、「メリーメイド」、「ターミニックス」(害虫獣の駆除と総合衛生管理)、「トータルグリーン」(緑と花のお手入れサービス)は増加しました。

訪販グループのその他の事業につきましては、催事等の各種イベント増加等により増収となったレントオール事業他、ヘルスレント事業、化粧品関連事業、ユニフォーム関連事業、ライフケア事業(ご高齢者の暮らしのお手伝い)、レスキューサービス事業、全ての事業が増収となりました。

 

ロ.フードグループ

フードグループは、主力事業であるミスタードーナツの全店合計お客様売上が増加し、原材料売上、ロイヤルティ売上が増加したこと及び前期1月に子会社化したボストンハウスの売上高計上等により、売上高は前期から83億10百万円(14.2%)増加し667億47百万円となりました。利益面につきましては、売上増加に伴う売上総利益の増加等により、営業利益は前期から16億39百万円(23.7%)増加し85億56百万円となりました。

“さらにおいしく”にこだわり、2024年7月に定番の人気商品群のリニューアルを実施すると共に価格改定を行ったミスタードーナツは、来店お客様数、お客様単価とも前期を上回っており、1店あたりのお客様売上は前期を上回りました。加えて新規出店により稼働店舗数が増加したことで、全店合計のお客様売上も前期を上回りました。商品別に見ますと、第1四半期の「misdo meets 祇園辻利」「フロマージュ・ド」、第2四半期の「“ミニオン”はちゃめちゃドーナツ」「白いポン・デ・いちごみるく」「さつまいもド・くりド」「MISDO HALLOWEEN×ブラックサンダー」、第3四半期の「ミスタードーナツ台湾ゴハン祭り」「ポケットモンスター」とのコラボレーション企画等に続いて、第4四半期には、チョコレートブランド「ピエール マルコリーニ」との共同開発商品「misdo meets PIERRE MARCOLINI」「桜もちっとドーナツ」を発売、いずれもお客様の支持を得て、売上増加に寄与しました。しかしながら、当期に仕組みを大きく変更した年末恒例の「ミスド福袋」は、販売数が減少しました。

フードグループのその他の事業、とんかつレストラン「かつアンドかつ」は、2024年12月に一部メニューの価格改定を実施したこと等により前期の売上を上回りました。また、ボストンハウスの主力業態である「ナポリの食卓」は、セットメニューの価格改定等により、前期の売上を上回りました。

 

 

ハ.その他

国内連結子会社、海外事業とも前期の売上高を上回ったことで、その他全体の売上高は前期から8億40百万円(5.4%)増加し164億86百万円、営業利益は前期から70百万円(16.0%)増加し5億11百万円となりました。

国内連結子会社につきましては、ダスキン共益株式会社(リース及び保険代理業)は増収増益となったものの、株式会社ダスキンヘルスケア(病院施設のマネジメントサービス)は、増収ながら人件費が増加し減益となりました。

海外事業につきましては、中国でダストコントロール商品のレンタル・販売を展開している楽清(上海)清潔用具租賃有限公司、マレーシアを中心にドーナツ事業を展開しているBig Appleグループとも、円安に伴い前期の売上を上回りました。また、2023年に進出したミスタードーナツシンガポール、2024年に進出したミスタードーナツ香港が好調に推移していることに伴って、海外へのドーナツ原材料売上が大きく増加しました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末の200億24百万円から9億60百万円増加し209億85百万円となりました。各々のキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

イ.営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、166億83百万円の資金収入(前期は110億93百万円の資金収入)となりました。その要因は、税金等調整前当期純利益130億13百万円、減価償却費76億77百万円等の資金増加要因に対し、投資有価証券売却及び償還損益28億77百万円、持分法による投資利益17億75百万円等の資金減少要因によります。

ロ.投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、50億74百万円の資金支出(前期は166億4百万円の資金支出)となりました。その要因は、有価証券及び投資有価証券の取得による支出116億67百万円、有形固定資産の取得による支出58億57百万円、無形固定資産の取得による支出40億36百万円等の資金減少要因に対し、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入176億88百万円等の資金増加要因によります。

ハ.財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、107億53百万円の資金支出(前期は57億43百万円の資金支出)となりました。その要因は、配当金の支払額55億21百万円、自己株式の取得による支出50億1百万円等の資金減少要因によります。

 

③生産、受注及び販売の実績

イ.仕入実績

 セグメントの名称

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 増減

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

増減率

(%)

訪販グループ

30,592

45.1

31,188

43.5

595

1.9

フードグループ

33,267

49.0

36,066

50.3

2,799

8.4

その他

4,043

5.9

4,424

6.2

380

9.4

合計

67,903

100.0

71,679

100.0

3,776

5.6

(注)訪販グループでは生産を行っており、主なものは下記のとおりであります。

(訪販グループにおける生産実績)

 区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 増減

回数

(ワッシャー)

構成比

(%)

回数

(ワッシャー)

構成比

(%)

回数

(ワッシャー)

増減率

(%)

マット

1,139,645

86.4

1,126,542

86.6

△13,103

△1.1

モップ

144,381

10.9

140,648

10.8

△3,733

△2.6

ウエス

24,205

1.8

23,722

1.8

△483

△2.0

ロールタオル

10,607

0.9

10,061

0.8

△545

△5.1

合計

1,318,838

100.0

1,300,973

100.0

△17,865

△1.4

 

ロ.受注実績

該当事項はありません。

 

ハ.販売実績

 セグメントの名称

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 増減

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

増減率

(%)

訪販グループ

106,821

59.7

107,786

57.1

965

0.9

フードグループ

58,426

32.7

66,742

35.4

8,315

14.2

その他

13,534

7.6

14,262

7.5

728

5.4

合計

178,782

100.0

188,791

100.0

10,008

5.6

(注)セグメント間の取引につきましては、相殺消去しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営成績の分析

(イ)全国チェーン店お客様売上

フランチャイズ方式を中心に事業展開する当社は、国内外の直営店・子会社等及び加盟店推定売上の合計値である「全国チェーン店お客様売上(以下「お客様売上」という。)」の状況・推移を最も重要視しております。

 

当連結会計年度の全社ベースのお客様売上は、引き続き好調を維持しているミスタードーナツを中心とするフードグループ他、全てのセグメントで増加しました。

お客様売上の約60%を占める訪販グループは、主力のクリーンサービス事業の売上が減少したものの、引き続きエアコンクリーニングの受注が好調に推移したサービスマスターをはじめとするケアサービス事業、介護用品のレンタル「ヘルスレント」等の売上が増加し、訪販グループ全体でもお客様売上は増加しました。

フードグループは、引き続きお客様からの支持を得たミスタードーナツのお客様売上が大幅に増加した他、とんかつレストラン「かつアンドかつ」の売上も増加しました。前期子会社化した株式会社ボストンハウスは、その主力業態である「ナポリの食卓」における価格改定効果等により、子会社化前の前期と比べて増加しております。

海外の売上を含む「その他」セグメントにつきましても、病院等の施設の衛生管理サービスを展開する子会社である株式会社ダスキンヘルスケアの売上が増加した他、海外事業も円換算ベースのお客様売上は増加しました。

海外事業を個別に見ますと、取り扱い店舗数が減少したインドネシアこそ減少したものの、新たに進出した香港、シンガポールをはじめその他の展開国が好調に推移したミスタードーナツのお客様売上は増加しました。一方、マレーシアを中心にドーナツを販売するBig Appleは、マレーシア国内消費の低迷影響を受けて苦戦しましたが、円安に伴い円換算ベースでは前期の売上を上回る結果となっております。海外の訪販事業につきましては、清掃等の役務サービスが好調に推移した台湾のお客様売上が増加しましたが、大口取引先の解約があった上海のお客様売上は減少しました。しかしながら、上海についても円換算ベースでは僅かながら前期対比プラスとなっております。

 

<全国チェーン店お客様売上推移>                       (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

訪販グループ

253,178

265,659

270,081

267,783

269,555

フードグループ

80,148

95,031

107,388

126,729

141,908

その他

26,255

28,698

34,302

37,941

42,590

合計

359,582

389,388

411,772

432,454

454,055

(注)全国チェーン店お客様売上には、一部、推定値が含まれております。

 

(ロ)収益性

当社が収益性の指標として重要視しているROEの推移は以下のとおりであります。

 

ROE推移>

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

ROE(%)

2.0

5.5

4.8

3.0

5.8

純利益(百万円)

2,821

8,132

7,196

4,589

8,808

自己資本(百万円)

145,508

150,661

151,360

154,122

151,197

(注)純利益:親会社株主に帰属する当期純利益

 

当連結会計年度は、増収に伴う粗利増加、RFID取り付け原価の減少、政策保有株式売却に伴う売却益の計上等により増益になったことに加えて、株主還元方針に沿って100%を超える株主還元を実施したこと等により、ROEは前期から2.8ポイント上昇し5.8%となりました。当社は、CAPM等により株主資本コストを5%前後を認識しておりますところ、この水準は超過した一方で、「中期経営方針2022」の目標としていた6%には僅かに届かない結果となりました。

「中期経営方針2028」におきましては、ROEの目標を「7%以上」において、PBRの更なる向上を目指してまいります。

ロ.財政状態の分析

(イ)流動資産

当連結会計年度末における流動資産残高は605億94百万円となりました。前連結会計年度末と比較して12億89百万円増加しております。その要因は、現金及び預金が36億61百万円、未収入金が8億55百万円、流動資産その他が4億93百万円増加したことに対し、有価証券が42億12百万円減少したこと等であります。

(ロ)固定資産

当連結会計年度末における固定資産残高は1,427億24百万円となりました。前連結会計年度末と比較して65百万円減少しております。その要因は、投資有価証券が43億67百万円、有形固定資産が3億28百万円減少したことに対し、退職給付に係る資産が21億22百万円、無形固定資産が15億99百万円、投資その他の資産その他が8億95百万円増加したこと等であります。

(ハ)流動負債

当連結会計年度末における流動負債残高は420億97百万円となりました。前連結会計年度末と比較して53億18百万円増加しております。その要因は、未払法人税等が26億40百万円、流動負債その他が11億13百万円、賞与引当金が7億28百万円増加したこと等であります。

(ニ)固定負債

当連結会計年度末における固定負債残高は96億78百万円となりました。前連結会計年度末と比較して11億68百万円減少しております。その要因は、退職給付に係る負債が6億14百万円、長期借入金が5億50百万円減少したこと等であります。

(ホ)純資産

当連結会計年度末における純資産残高は1,515億42百万円となりました。前連結会計年度末と比較して29億26百万円減少しております。その要因は、利益剰余金が33億86百万円、その他有価証券評価差額金が24億39百万円減少したことに対し、自己株式の消却等により自己株式が20億74百万円減少(純資産は増加)したこと等であります。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

当社グループの主な資金需要は、各事業の営業活動に必要な原材料・製商品の仕入、販売促進活動等の営業活動費用並びに工場設備の維持更新投資、店舗の出店・改装投資及び成長が見込まれる分野への投資等であります。これらの必要資金については、主として自己資金で賄っておりますが、機動性及び長期安定性の確保、企業価値向上に資する成長投資のため、金融機関からの調達も想定に含めております。株主に対する利益還元を経営の重要課題と位置付け、持続的な成長と企業価値向上のための投資や様々なリスクに備えるための財務健全性とのバランスを考慮した上で、業績に応じた利益配分を行うことを基本方針とし、毎期の普通配当額は、連結配当性向60%又は自己資本配当率(DOE)2.5%のいずれか高い額としております。

なお、2026年3月期以降は、連結配当性向60%又は自己資本配当率(DOE)3.0%のいずれか高い額を毎期の配当額としてまいります。

また、災害等のリスク発生時には、当社グループの事業継続のための資金需要が見込まれます。このような不測の資金需要に対して資金調達の機動性を高めるため、主要取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。今後も安定的な外部調達能力の維持向上のため、強固な経営基盤を維持しつつ、事業継続及び拡大に注力してまいります。

<キャッシュ・フロー指標のトレンド>

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率(%)

76.1

76.6

76.3

74.4

時価ベースの

自己資本比率(%)

67.1

78.3

78.6

84.0

キャッシュ・フロー

対有利子負債比率(年)

0.1

0.1

0.1

0.0

インタレスト・カバレッジ

・レシオ(倍)

43,519.1

65,517.1

1,812,974.6

16,140.8

(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により、それぞれ下記の算式により算出しております。

自己資本比率 :(純資産-新株予約権-非支配株主持分)÷総資産

時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額÷総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率 :有利子負債÷営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー÷利払い

2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

5.利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

(1)フランチャイズ契約

当社は、加盟店と共に全国的な営業網を確立し、永続的な信頼関係を保持するために、事業内容の基本的な事項並びに相互の利益と本部及び加盟店の権利・義務等を明確にすることを目的として契約を締結しております。主な契約は次のとおりであります。

セグメント名称

契約の名称

契約期間

訪販グループ

ダスキン愛の店ダストコントロールフランチャイズチェーン契約

締結日から3年間 (注)1

(ただし3年目の途中で3月31日を迎える場合はその日まで)

ダスキン・フランチャイズチェーン支店契約

締結日から3年間 (注)2

(ただし3年目の途中で3月31日を迎える場合はその日まで)

ダスキンサービスマスターフランチャイズチェーン契約

締結日から3年間 (注)2

(ただし3年目の途中で3月31日を迎える場合はその日まで)

フードグループ

ミスタードーナツチェーン契約

5年間 (注)3

(新コンセプト店舗については、締結日から8年経過後に到来する3月31日まで (注)4)

 (注)1.期間満了30日前までに当社又は加盟店の何れか一方からの異議がない場合は1年間自動更新。

2.期間満了3ヵ月前までに当社又は加盟店の何れか一方からの異議がない場合は1年間自動更新。

3.期間満了6ヵ月前までに当社又は加盟店の何れか一方からの異議がない場合は2年間自動更新。

4.期間満了6ヵ月前までに当社及び加盟店協議の上、合意が成立した場合には再契約。

(2)技術提携契約

契約

会社名

相手方

契約名称

契約概要

契約期間

名称

国名

当社

三井物産株式会社

日本

業務提携契約

両者の持つ経営資源やノウハウを結集し、両者対等の立場で協力関係を構築することによって両者の企業基盤の拡充と競争力強化を図り、より一層の発展を期する。

2009年9月7日より

1年間

以降1年毎の自動更新

当社

シーバイエス株式会社

日本

業務提携契約

洗剤、ワックス等の製品の開発・販売に関する契約

自 1998年1月1日

至 2002年12月31日

以降1年毎の自動更新

当社

統一超商股份有限公司

台湾

合弁契約

合弁事業契約(合弁企業名:楽清服務股份有限公司)

- (注)1

当社

株式会社ニップン

日本

取引基本契約

原材料ノウハウの開示及び製造委託に関する契約

自 1972年4月1日

至 1974年3月31日

以降1年毎の自動更新

当社

統一超商股份有限公司

台湾

合弁契約

合弁事業契約(合弁企業名:統一多拿滋股份有限公司)

- (注)2

 

 

契約

会社名

相手方

契約名称

契約概要

契約期間

名称

国名

当社

株式会社モスフードサービス

日本

資本・業務提携契約

それぞれの加盟店及び顧客の利便性の向上、それぞれの得意分野や経営資源の有効活用により、両社の外食事業を一層発展させる。

自 2008年2月20日

至 2009年2月19日

以降1年毎の自動更新

当社

ServiceMaster Clean/Restore SPE

LLC

米国

住宅・商業施設クリーニングサービス製品製造ライセンス第二更新契約

サービスマスター業務の実施許諾契約

自 1993年12月31日

至 2003年12月31日

(注)3

当社

ARAMARK MANAGEMENT

SERVICES LIMITED

PARTNERSHIP

米国

ヘルスケアマネジメントサービス国際ライセンス更新契約

ヘルスケアマネジメント業務の実施許諾契約

自 1992年4月1日

至 2002年3月31日

(注)3

当社

The Terminix Company, LLC

米国

ターミニックスサービス国際ライセンス更新契約

ターミニックス業務の実施許諾契約

自 1997年5月11日

至 2007年5月10日

以降10年毎の自動更新

当社

Merry Maids SPE LLC

米国

メリーメイドサービス国際ライセンス更新契約

メリーメイド業務の実施許諾契約

自 1998年11月12日

至 2008年11月11日

以降10年毎の自動更新

当社

株式会社サカイ引越センター

日本

業務提携契約

相互の専門分野を有効に組み合わせて新たなサービスを創出する、及び需要を発掘する。

自 2008年1月28日

至 2009年3月31日

以降1年毎の自動更新

当社

株式会社ナック

日本

資本業務提携契約

ナック(加盟店)における当社との間で新たに締結するフランチャイズチェーン契約に基づくナック既存事業の追加、及び新規事業展開

自 2018年8月30日

至 2020年8月29日

以降1年毎の自動更新

当社

株式会社クラシアン

日本

業務提携基本契約

自社の顧客に対する相手方サービスの提供、及び両社の経営アセットを活用した新サービスの共同展開

2022年11月8日から

2年間

以降1年毎の自動更新

当社

株式会社JPホールディングス

日本

業務提携基本契約

両社間の協業関係を構築することにより、「子育て支援」の領域において、社会課題の解決とお客様への新たな価値提供により両社の企業価値向上を実現する。

2023年10月27日から

2年間

以降1年毎の自動更新

 (注)1.契約締結日は1994年8月25日であり、期間の定めはありません。

2.契約締結日は2004年8月17日であり、期間の定めはありません。

3.契約終了時の2年前までに当社から本契約を更新する旨の書面による通知を行うことにより10年間更新。

 

6【研究開発活動】

当企業集団では、主に当社が提供する商品及びサービスに関連する清掃及び洗浄関連商品と加工技術の研究開発に取り組んでおり、品質・環境対策を重視した活動を行っております。

 

(1)研究開発方針

当社は、消費者に対して当社が届けるトータルクリーンケアに関する商品・サービスについて、安心且つ信頼のおけるダスキンブランドの確立を目指しており、基盤技術深耕、新商品技術開発、商品の品質向上及びSDGsへの対応を中心とした研究開発活動に取り組んでおります。

この目的達成のために、清掃・衛生関連分野において、生活者を第一に捉え、下記5項目を実践し、社会に対して健康で快適な暮らしを提供することを基本方針として研究開発に取り組んでおります。

・常に社会・家庭の実態を把握し、お客様の困りごとを分析して研究開発の優先度を決定します。

・新規性、進歩性、独自性に富んだ研究や技術開発を行います。

・社会・人・自然に対して、安全・安心が担保できる商品を開発します。

・環境保全に寄与し、省資源化が可能な原材料を使用した商品を開発します。

・市場に導入された商品は、常に改良を図り、顧客・生活者に最適な機能とご満足をお届けします。

また、研究開発活動を広く知っていただくために、各種学会や団体主催のセミナーで衛生分野やホコリ分野の研究成果を継続して発表しております。

 

(2)研究開発体制

2025年3月31日現在、開発研究所は生活者や事業者に密着し、環境衛生分野における新しい事実や法則性を見つけ、明らかにする実験的研究を担う「基礎研究室」、基礎研究で得た知識や新たな素材・技術を元に実用化に向けた研究を行う「応用研究室」、モップ・マットを中心とした新たなレンタル商品素材や製造・加工方法を研究・開発する「ダストコントロール研究室」、化成品・フィルターを中心とした衛生関連商品素材の製造・加工方法を研究・開発する「ハイジーンコントロール研究室」の4部門構成であり、部長を含め45名の体制となっております。

 

(3)当連結会計年度における主な成果

①基礎研究関連

ハウスダスト中の健康阻害物質(ダニアレルゲン、食物アレルゲン、カビ、花粉)の実態把握とエアコンクリーニングと空気清浄機の有効性に関する研究を行っております。この研究結果は、2025年3月12日に発刊された呼吸器内科臨床医および研究医向けの「診療のガイドライン」に反映されました。2023年度から取り組んでいる清掃方法の行動認識技術を応用し、ダスキンミュージアムに学びのアトラクションとして「モップ拭きの達人」を2025年2月13日から公開しております。これに合わせ、報道メディア向けに「ほこり・花粉に関するセミナー」を実施いたしました。また、健康阻害物質の簡易可視化・数値化技術の研究にも取り組んでおります。

②応用研究関連

基幹事業であるモップ・マット構成素材の新素材や製造技術研究、吸着剤の機能開発に取り組んでおります。モップ分野では、ダスト捕集性とリリース性の両方の性能を有したペット用フロアモップパイルの開発、払拭対象面に抗菌性能が4週間持続する抗菌コーティング技術の開発を行いました。商品の衛生性能訴求のため、家庭用モップ、事業所用モップの「抗ウイルス加工」と「抗菌防臭加工」に続き、事業所用の一部の商品で「制菌加工」と「消臭加工」のSEKマークを新たに取得いたしました。マット分野では、原料のリサイクル化に向けて、廃棄となったマットを素材ごとに分離する技術やケミカルリサイクル技術の研究や、素材メーカーと協力して、リサイクル素材の商品活用についての研究を行っております。

③ダストコントロール研究関連

既存モップ・マットの軽量化や高耐久化に向けた研究開発に取り組むと共に、モップ分野ではペットと暮らす方の掃除の負担、時間、手間の軽減が可能な家庭用のペット用フロアモップや、モップクリーナーとモップケースが1つになったケース付きモップクリーナーを導入いたしました。新たに家庭用の高機能なウエットモップや、使い勝手を向上させた事業所用モップの研究開発を行っております。マット分野では、除塵・吸水性能を追求した高性能商品の研究開発や、マット性能を可視化することを目的とした人流による汚れ予測の研究を行っております。

④ハイジーンコントロール研究関連

既存洗剤類の「安全・安心」の向上や除菌、抗ウイルス等の「機能性」の向上のための研究開発に加えて、新たな付加価値を提供する商品の研究開発、芳香剤や脱臭剤、浄水器等水関連分野の研究開発を継続して進めております。また、環境配慮の観点から主要な洗剤のボトルに使用している樹脂の削減にも取り組んでおり、2024年度は、「洗濯用洗剤」「柔軟剤」の全面リニューアルを実施し、基本性能アップに加えて容器をボトルから紙パックに変更することで使用樹脂を削減しました。加えて、ツールやレンジフードフィルター等の商品パッケージフィルムの薄肉化や再生プラスチックへの切替を検討しており、レンジフードフィルターの一部商品の導入を開始しております。

 

(4)研究開発費

当連結会計年度の研究開発費の総額は636百万円であります。